幽体離脱日記**ゆり17歳**
∮フィクション小説∮
刺激に飢えたら
読んでみてね❤
★1話完結編★
1話の内容は何度かその都度更新します..
それでは
どうぞ❤
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あたしはゆり。
いま17歳。高校は…ごく普通なレベル高校で…去年辞めた(自主退学ね)
おもしろくないわけじゃなかったけど。
友達ともうまくやってた、それなりに仲良くね…でもグループってゆうか、どこにも入れず…無所属?ってゆうのか?深い友達っていなかったけど。
まあ辞めて遊んでる友達がうらやましくてってのも最大理由(何時までに起きなきゃってないし夜遊べるし)
辞めてからはひとり暮らし。
自分で稼いで(身体で稼いだり夜したり)敷金すぐ貯めた!
(`・ω・´)
いばるとこだからね。笑
父親は中2んとき逝った、それから母親と弟と暮らしてきた。
母親は仲良くない。
弟はそれなりに可愛いけど。
父親逝ってから(いや逝く前からか)うち超貧乏。だから退学してさっさと家出たから母親も本心、助かったなとか思ってるかも。(いや、そうだな絶対)
いや!!
まあそんな話よかさ、あたしすごいひとなんだよ!マジで!!笑
ヾ((◎д◎)ゝ
実は、特殊な機能が備わってて…カラダにね!笑
去年、ひとり暮らし始めてからさあ、幽体離脱ってゆうの?カラダが浮くんだよ。夜な夜な。
本当にね…(-o-;)
カラダ離れてマジで夜空飛んでくの。
月に10日くらいは飲み屋出てるんだよね、あとはまあ…たまにカラダ提供してたり。笑
それで楽に生活してけてる。
飲み屋や夜遊びしてなくてさ、普通に夜寝るじゃん?したら夜空飛んでける。…で、まあ何日間かウロウロ。でもでも、戻ったら8時間程度寝た状態の遅い朝なんだよね…昼前だったり。
意味分かる?
だから変だけどね!
L(・o・)」
幽体離脱して(飛ぶってゆう)…飛んで世の中を何日間も透明人間でウロツクじゃん?飽きたらカラダ戻るじゃん?したら睡眠時間自体は8時間くらいなわけ(日付も同じね)…
変だよね!!
世の中見渡して何日もたってんのに。
もしかして
夢かな?とか思うんだけど
ピュアだから…こうゆうふうになってんのかなって
勝手に納得してる。笑
幽霊見るのもスレテないとよく見るってゆうじゃんか。
子供とか特に。
人の、他人の、たくさんの…人生。何シーンも見た。
あたしだって自由に飛びたい。
だけど。
飛ぶ進路?は決まってるみたいでね。飛んでる間はさあ…あーまたか。。どこ着くんだろか?みたいな。
あたしだって性格悪いから、好きな人とか友達の裏見たいわ。←最低(笑)
でも行き先はなぜか決まってる。
そしてなんだか…
その人(当たりと呼ぶ)…当たりの場所に行き着き、しばらく当たりの生活見てるうち、モヤモヤして。なんだか考えさせられるんだよなあ…。そして目覚めるわけ。
8時間程度の睡眠(笑)
当たりの1ヶ月間?とか見てんのに…
なんだかあたし、人より長く生きてる気分だわ。てか長いよなあ…
目覚めたら当たりが気になって気になってしょうがない。だって感情移入するもん。心配になるし捜したくなる…。でも地域とかどこの誰なのかなんて、目覚めたら全く分からない。それだけは虚しいよ…
日記ってわけでもないんだけど、伝えるよ。これから。
★第1話★
さとしの秘密
さとしは中2らしい。両親は銀行員の父親に専業主婦の母親。真っ白な外壁の今風とゆうか出窓の可愛い洋風なおうち。柵からのガーデニングがよく映える。
さとしはひとりっこだ。進学校のレベルの高い高校を目指してるみたいだ。部活は帰宅部、学校と塾の往復。
おうちではママが手作りのおやつを毎日作ってくれて、軽食程度の食事を取り、学校から帰ってまもなく塾だ。
頭いいんだろな~
親も金持ちらしいし優しそうなママ。ひとりっこだから甘え放題だし。こいつの顔は可愛い。と、ゆうか…男らしくない。そこらの女よか可愛い顔立ちじゃないか?部屋もこんなに片付いて…ママが毎日掃除してるんだろなー。
9時か。
ママとさとし帰ってきた。ママの車で。
『さとし。今からすぐに食事用意するから…お風呂入ってなさい』
『はい、ママ』
お風呂から上がりさとしは食事を取る。
『食べちゃったら0時くらいまで軽くお勉強なさいね…。もう時間ないのよ?この夏が勝負なのよ?今がみんなの分かれ道…さとしが勝ち組になるのかが決まるのよ。分かっているわよね?さとしは本当にお利口さんだから…』
『…分かっているよ、ママ』
さとしは部屋に行く。
さとしの部屋は片付いていてキレイだ。母親の毎日の掃除が行き届いてる。
ここの母親は言い方雰囲気は優しいし外見も品があるキレイな人だが、あたしはガサツで下品でうるさい自分の母親のがいいと思った。なんでだろ、わかんないけど…ここの母親は明らかにさとしに押しつけがましい。言い方は優しい口調だが、きっつい内容だ。
さとし楽しいか?
決められた道進んで親の言う通り動いて…びっしり参考書や図鑑、地理、小説など詰められた本棚を見上げながら、なんだか悲しくなってきて、机にいるさとしを後ろから抱きしめてあげたくなった…
かわいそうに。中2って反抗期だろうに。こいつ、反抗なんかできないだろうな…優しいんだろ、お母さん、悲しませたくないんだよな?
パソコンをいじりながら、立ち上がったさとしはクローゼットを開けた。
ん?…大きな紙袋が3つ。さとしはベッドにドスッと袋を置いた。あたしはさとしが動くたびによけちゃう…透明なんだが…(笑)
そしてドアに鍵をかけた。
???(・ω・)
なんだなんだ?
あああ!!
((((;゜Д゜)/
分かった!!
エロ本だ!エロDVDだ!だってここ4~5日いるだろうけど、さとし、自分処理してないじゃーん!
やっぱ中2ってゆったら処理ピークだよねッッ!←少し喜んで最低(笑)
でも…それなら…
部屋でよう。
やっぱ人としていくら透明人間でも見るのは絶対良くない。
人の秘密の時間じゃん…性欲なんか本能であって女だってあるし。あたしもたまに●イプシーン想像しながら処理するし…人の携帯や日記は絶対見れない性格のあたしは←意外(笑)、ドアを抜けようとした。
『ああーこれ初めて着ちゃうな…本当に可愛いなあ…』
??!!
(゜Д゜ノ)ノ
………え。。
さとしがピンクのワンピ当てて背鏡見てる。
え!?女装趣味があったのか…
こいつ、コレがストレス発散だったわけ?!
ちょっと…いや、かなりビックリしたけど、さとしにピンクワンピが似合いすぎて、普通に可愛いー!って思ってしまった!!
本当に女の子みたい。目はクリクリ二重だし、まつ毛がツケマみたい。顔ちっちゃいし色白。これでウィッグかぶせたら本当に女の子じゃんか…あたしよか良くない?(笑)
でも内容はそんな軽い問題じゃなく
シビアだった。
紙袋には大量に女服、コスメ、ウィッグなどが詰め込まれていて、2冊の本が混ざっていた。
【性同一性障害とは】
【体は男の子・だけど私は女の子】
…さとし……
本当は女の子だったんだね。
女装趣味だなんて思ってごめん…
さとし、あんた性同一性障害なんだね?体は男の子だけど、中身は女の子なんだね?だからそんなに可愛いんだね?…
ワンピを着たさとしは、頬もピンク色になって、背鏡を見ながらグロスを塗ってる。
なんてワクワクしてときめいてる顔。さっきまでのさとしじゃないじゃんか…。
さとし、お母さんに今まで言えなかったんだよね。もちろん毎日遅く帰るお父さんにも。
お小遣いで女装して買い集めた服やコスメ…これ全部可愛い。さとしはよく似合う色合いやデザインを分かっている。
でも…
毎日掃除するだろう母親に、クローゼットの中、整理されるのも…時間の問題だろ、さとし。
中2だとそこまで疑わないか?頭いいのとは別かな…
お母さんは一体どう受け止める?
想像つかない。
可愛い可愛い我が子。大切なさとし。
立派なおうちの長男。父親も上なほうだろう…
ひとりっこのさとしは、実は心が女の子だった。
お母さん。お願い、この子を責めたりしないで。
あたしはたださとしを傷つけたくなかった。
[時間の問題]
は、驚くほどすぐだった。
さとしのいない昼間、母親はクローゼットをあけた。風通しのためか…出窓ふたつは全開だ。
さとしは奥に紙袋を隠してる、大丈夫だろう…あたしは緊張した。
『もう…綺麗に直さないんだから…』
整頓しだしたとき紙袋が見えた。
あ、見つかりそう…
ヤバイよ、さとし…
『何かしら。。こんなに詰めて』
母親はたくさんの女服、コスメ、ウィッグを取り出した。
そしてちょっと目がギョッとしていたが、すぐに直し、整頓もせずクローゼットを閉めた。
え?
あまり動揺してないじゃん…まさか、知ってた??
あたしは拍子ぬけした。
まあさとしが怒鳴られたりしないなら…良かった。
さとしが学校から帰ればまたいつものように軽く食事を取り、塾に出かける。母親もいつもと変わらない。そして8時半に車で迎えに出て、9時にさとしと帰宅する。
さとしがお風呂に入ってまた食事を取る。
『ねえ、さとし…』
深刻な口調。
まさか…お母さん、何か言うつもり?
さとしはキョトンとして肉じゃがを食べてる。
『お母さん、前にあなたの部屋で化粧品見つけたのよ、グロスとかアイシャドウとか…。でも彼女できたのかなとか思ってた。塾もサボらず行ってるようだし、おうちにも連れて来てないし…きっと図書館なんかで彼女の忘れたもの持ってるのねとか思ってたのよ。』
さとしはビビッてない。顔は堂々とした感じだ。
『でも今日クローゼットでたくさん服や化粧品見つけて…一体どうゆうこと?彼女の物を預かるようになってるの?中学生なんだしあんなに化粧品いらないでしょ?まさか不良な子じゃないでしょうね…?この時期、彼女ってゆうだけでも辞めてほしいのに…学校しか会わないならいいとは思ってたんだけど…もう大変な時期なんだし、とにかく恋愛は辞めなさい。分かった?』
??彼女?
がいるって前から疑ってたわけ?…なるほどね、だからそんな動揺してなかったんだ。てか…そんなふうに取るだろう。女装趣味とも取らないだろうし。
…さとし。
大丈夫か?
うつむいたさとしは何にも言わない。
しばらくまた食べた後、さとしが箸を置いた。
『ママ…僕さ…彼女いないよ』
『?!そうなの?じゃあ誰の物を?』
『……。僕のだよ。お小遣いで月々買ってた。…僕、多分性同一性障害だ。小2くらいからだんだん分かったんだ…好きになるのは男の子ばかりだし、なんで下にこんなん付いてるんだって不思議なんだ……ごめん、ママ…』
言った…!!さとしがカミングアウトした。あたしは泣けてきそうだった。お母さんはボーッとしている。
『え…?じゃああなたは女の子って言いたいわけ?!』
『うん、そうだよ』
『あなたは男の子!!今は時期も時期だし、受験勉強のストレスで変なのよ…もう全く…つまらない発散方法ねえ…まだ変なゲームのがましだわ。さとし、今は精神的に一杯一杯なのよね…。分かったわ。明日は塾お休みしなさい。ね?』
『いや違うんだママ!!!僕、本当に前から身体に違和感がある!!僕男の子じゃないんだ!!女の子なんだよ!!』
さとしが声荒げた。ビックリしながら親子を見つめる。また今日も父親は遅い…毎度ながら電話もない。お母さん、それでも平気なんだ…せめていつも電話くらい入れてもいいじゃん…
お母さんはうつむく。
しばらく黙り込んだ母親は、ニコリと微笑んだ。さとしとあたしは驚く。
『あの女が現れて3年…ママの生き甲斐はあなただけだった。パパは狂ったゴミ人間よ?今さらあたしと別れるなんて出来ないでしょうがねえ…こっちは精神的にまいってんのよ。あげくの果てにできのいい素直な可愛いひとり息子が…性同一性障害?……ふふ、笑わせんじゃないわよ。あのひとの血は入ってるけどねぇ…あんたまで狂ったゴミなわけ?あたしにできのいい息子でいてくれなきゃ、意味がないのよ…さとし。分かる?あんたまで裏切るの?心が女?いつも女の事ばっか考えてるから頭やられたのよ!!勉強だけしてりゃいいのに!!馬鹿になってあたしを困らせて!!』
母親はダイニングテーブルをたたいてリビングに移動した。
さとしは震えている…
そして
『ママ…僕もあんたにはうんざりなんだ』
フラフラ流しに行き包丁を取る。
!!!
さとし?!
…やめな!!
あたしはさとしに叫んだ。届かない声で何度もやめなって叫んだ。
ソファーに座る母親に背後からゆっくり近づく。
さとし!!
お願い!!
やめてっっ!!
あたしは泣き叫ぶ。
『…ひとりで毎晩アンアンしやがって…勉強しててもうるせえんだよ…玩具の音も…声も…ざけんなよな…おめえみたいなうるせえババア…親父もいつまでも相手するはずねえだろうが…いい加減死ねやババア…!!死ね!!!』
振り向いてギョッとする母親が喋る間もなく、さとしは母親の胸に包丁を突き刺し、そしてグルリと刃を一回転させた…
飛び散るシャワーのような赤い大量の血は、綺麗な花柄のソファーカバーにたくさん飛び散る。
さとし…
計画していた?
中学生が刃を回すなんて…勉強していたとしか考えられない。
たくさんシャワーのような血を浴びたさとしは、任務を果たしたような…安心した顔つきだった。
さとし…
なんでそこまで…
涙がひたすらこぼれる。悲しい、悔しい、同情、さとしへの情…抱きしめてさえあげられない。
目の前が急にセピア色になって眠気がきた。…もう時間だ。
『……さとしっ!!!』
目覚めると見慣れた汚い部屋。汗だくだくなあたしは、戻ったか…と現実に還る。
飛んだ旅から還るといつもこういう変な気持ちになる。
モヤモヤしてテンションは下がり、悲しくなり切なくなる。
さとし。お母さん殺しちゃった…。これからどうするんだろうか。“当たり”の今後はいつも気になってしまう…
その日の夕方、全国ニュースでさとしんちが出た。父親は銀行員、中学2年生長男が母親を刺殺。刺殺後、自主通報することなく、お風呂に入り、部屋でお菓子を食べていたなど、日常生活と変わらなかった模様。精神鑑定か。など、ニュースはキチガイな中学生扱いだった。事情を知るあたしは知っていても止められなかった腹立たしさで身体が熱くなる。
さとしはきっと、何年も耐えたんだ…母親のこと、母親の毎晩の自己処理のこと、身体が男で本当は女だとゆうこと。ずっと悩んでた、悩みながら勉強し成績を下げることもできなかった。
性転換手術でもしない限り、さとしは一生自分自身に不信感を抱き生きていくんだろう..
罪を償った後の人生は決して甘くはないだろう。
あたしは考えさせられた。頭は悪いけど、母親のこと、将来子供ができたらのこと。
父親が温かくさとしを見守り続けてくれることを祈る。。
★第2話★
花音ちゃん
花音ちゃんは小学5年生。お父さんは長距離トラックの運転手さん。帰宅は2週間に1回、2~3日。お母さんは専業主婦、2歳の弟に育児奮闘中。お父さんは優しいけど、あまり帰って来ないし、お母さんは弟につきっきり、異性心からか息子に溺愛だ。花音ちゃんもオムツ換えや着替えなど、たくさんのお手伝いを進んでお世話する。弟のゆうくんはすごく可愛い。でも……お母さんを独り占めなゆうくんがたまに憎くなる。
このおうちの母親は男の子を望んでいたらしい。お父さんの帰宅中、花音ちゃんとゆうくんが寝たあと、お父さんとお母さんはビールで晩酌しながら、語りあっていた。
『私ね、花音がお腹にいたとき、ずっと男の子だって思ってて…エコーで女の子だろうって言われたけど、生まれるまで男の子って何故か信じてたわ』
『ああ…俺も、息子だったらいいなって。花音が生まれて娘って可愛いけど、やっぱり息子は欲しかったよ。ゆうができるまでなかなかできないし…もしかしてもうダメなのかなって…。妊娠したときはそりゃ嬉しかったよ。息子がいい!男の子だ!って。生まれたときは男の子って感動したよ』
『ゆうくんは本当にお利口さんなのよ…こないだね、公園で同じくらいのいつも遊ぶリンちゃんに、お砂場セットのシャベルをね、貸してあげて遊んでたのよ~!まだ2歳なのに!みんなママさん優しいわね~ゆうくんはって!それでね昨日なんか…』
ふたりの会話は長男の話ばかり。たまに帰宅する父親も息子が可愛くて仕方ない様子だ。こんなに姉弟の年齢差があれば珍しくないんだろうか…いや、そんなこともないだろう。
あたしは弟がいるけど、お母さんが異性だし素直な弟を溺愛しているのは分かってたし、あたしも寂しく思えたこともあったけど、今思えばあたしのことにも色々手をかけてくれてた。。
花音ちゃんの切なさは理解できるし、多感な時期だろうし…難しい年頃かもしれない。
あたしは花音ちゃんにまた感情移入してしまう。花音ちゃんだってパパママに甘えたいだろうに。かわいそうな花音ちゃん。
きっと花音ちゃんは分かってる。
ゆうくんは悪くないって…
あたしも弟を妬んでも、弟は悪くないんだって分かってた。可愛いと思えてた。
花音ちゃんは、身体の異変に戸惑っていた。
小さな膨らみの乳房に違和感を持ち、なんだか痛い。お腹は下痢が続いて痛い。
(お母さんに言わないと…)
ゆうくんとベッタリなお母さんになかなか伝えられない。
スーパーに買物へ3人で出掛ける前に、相談してみた。
『お母さん、わたし、最近お腹が痛い。少し血も出てるの…』
『ええ~?なんて?ちょっと待って~!ゆうくんの靴はかせてるから…』
もう。こんな話してもゆうくんゆうくんって…お母さんはあたしのことなんかどうでもいんじゃないか…多分…生理なのに。ゆかちゃん言ってたもん、なったんだって。ゆかちゃんナプキン持って来てた。お母さんがナプキンの使い方教えてくれてご馳走作ってくれたって…なのにうちのお母さんは…
家はまだ新しいアパートの3階だ。
お母さんはゆうくんの靴をはかせて、花音ちゃんが靴をはく。
『はやくしなさいよ、もう…』
話はなあに?って聞き返してもくれず、ゆうくんを抱っこしながら頬をすりつけてる。
お母さん…。あたしもうお母さんはいらないや。
『お母さん、ゆうくん歩くのもうすごく上手だからおろして?お母さんと手をつないで階段降りる練習しなきゃ…』
『ん?ああ…そうねえ…、じゃ…ゆうくん!歩こうか?』
お母さんがゆうくんをおろした。そしてすぐにゆうくんの手を引っ張る。
ドンッッッ!!!
花音ちゃんは思い切りお母さんを押した。
ああッッッ!??
ぼーっと後ろから眺めてたあたしは、ビックリして叫んだ。
花音ちゃんは微笑みながら
『ゆうくん!わたしがゆうくんのママになるからね!お姉ちゃんじゃなくてママになるんだよ!』
キョトンとしたゆうくんには、将来母親の記憶はないだろう。
階段から転げ落ちた母親の流血は激しい。主には頭部からのようだ。
確かにここのアパートの階段はゆるやかではない。
愛情不足が引き起こした事故。
これは事故だ。
あたしは視界がまたモノクロな世界になり、眠気が襲ってきた。
時間だ…
目覚めるとまた憂鬱な寝起きに嫌気がさす。
★第3話★
ひがんだ主婦
亮子さん(29)
この人は24で結婚したらしい。結婚生活6年目。旦那は3つ上の32らしい。
亮子さんは結婚を機に退職。すぐにでも子供が欲しかったが、いま現在まで授かれないらしい。
旦那さんは平日は帰りが遅く、土日はつきあいゴルフやパチンコなどで、あまり亮子さんとお出かけしてくれるような旦那さんでないらしい。
(どうしてあたしには授かれないの。イライラするし、あの人もあまり帰らなくなって…ここ1年本当にレスだわ。基礎体温もつけれないし。ゴルフやパチンコで気晴らしできていいわね全く…あたしには掃除か買物か料理くらいよ。食べるのかも分からないし。種あんのかしら…こんなにできないなんて。ダラダラするし食べるから結婚して8㎏も太ったわ…働く気にもなれない。家庭内を聞かれるのはゴメンよ。もう…辛いわ)
亮子さんのおうちはオシャレな賃貸マンションだ。1階の2LDK。外観とは真逆に部屋はかなり散らかり、物は散乱している。とても綺麗に片付いてるとは言えないし、テーブルは物がひっちゃかめっちゃかな状態で空いたスペースはない。脱いだ服はソファーにたくさんあるしクシやドライヤ-やスプレーはダイニングテーブルに散乱している。
亮子さんは見た目、細かそうとゆうか神経質っぽく、部屋とギャップが激しい。
旦那さんがあまりうるさくないんだろうな…
あたしの部屋と大差ないぢゃん(・ω・)
亮子さんちのリビングには白いキャビネットに結婚式の写真が飾ってあり、見てみると、亮子さんは今よりすごく細く顔つきも穏やかで柔らかい。綺麗だ。
(あのひと…あたしが常にイライラしてるし、妊娠のことばっか考えてるから、うるさく言われるだろうからってあまり帰って来ないって…勝手に解釈してたけど…あのひともしかして、女とかいるんじゃないわよね…大体、処理しなくちゃ…いい加減たまってると思うけど…どうなのかしら)
遅くに帰宅すれば旦那さんはシャワーを浴びるときもトイレでも寝るときも、常に携帯を持ち歩いていた。あたしは17だし、恋愛中毒とゆうのか…考えがまだまだ甘いだろうから、勘づくのかもしれないけど、ここに着陸してすぐに旦那さんの匂いは怪しんでいた。あたしが普通で亮子さんが鈍感なのか…?とゆうよりも、亮子さんには今は赤ちゃん願望が強すぎて、周りがよく見えてないのかもしれない。旦那さん自身を雑に扱うとゆうか…旦那さんは
【赤ちゃんを作るために必要なひと】
って見てる感じがした。17のあたしが生意気だけど、でも逆を言えば17のあたしでさえ感じる夫婦の溝。
亮子さんはかわいそうだけど…なんだか旦那さんも同じくらいかわいそうだ。
朝、亮子さんが洗濯物を干していると、寝室からゴーゴーゴーと、バイブ音が響いた。床に響く。
亮子さんは床に落ちた携帯を拾った。
あのひと、携帯忘れたんだわ。会社に届けたほうがいいわよね…。
なんとなく開いて受信メールを見た。
【おはよう❤まさくん❤今日は待ちに待った金曜日だよ❤夜ご飯何作ろうかな❤まさくんの好きなハンバーグかな❤あ~赤ちゃん今日も元気にお腹蹴ってるよ💦早く会いたいよね❤赤ちゃんもパパが来るから嬉しいって言ってるよ❤じゃあ夕方連絡ちょうだいね❤絵理❤】
⁉⁉⁉⁉⁉⁉
………
ええ⁉⁉
覗き見したあたしは驚いた。。
赤ちゃん⁉
お腹を蹴る⁉
パパ⁉
一体なんなの⁉⁉
多分旦那さんの不倫相手が妊娠してるんだろうけど…。
亮子さんは手が震えだし、携帯を落とした。顔が青ざめた。呆然として、座りこんだ…
『…なんなのよ…どういうことよ……は?……』
亮子さんは携帯の電源を切った。
昼過ぎまでボーーっとしていた亮子さんは、干しかけてた洗濯物も気にせず、TVを見ていた。内容でなくただ画面を見ているだけだろう。。
16時を回り、亮子さんは着替えだした。そして出掛けた。
どこに行く?買物?
亮子さんは怒ったような泣き出しそうな…複雑な顔つきだった。
歩いて20分。。着いたのは大きな会社のビルだった。
…多分旦那さんの会社だよね?
入り口から離れた自販機の影に隠れた。そして人の出入りをずっと見ている。
旦那さんを尾行する気なのは分かった…
旦那さんはどうしたのだろう。
これはヤバいでしょう…
本妻に子作りしないわ愛人に子を作るわ…
あたしは胸くそ悪い。旦那さんがムカついて仕方なかった。
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