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作家志望さん
20/07/16 20:07(更新日時)

修学旅行のペア決めが行われた。
私は普段から仲良くしている子たちとペアを組み、その合図としてその場に座って見せる。みんながそうする中、マキだけはその場に立ち続けていた。けれどもみんなはマキなどいないかのように彼女の存在から目を逸らす。
仕方ないんだ。自分に言い聞かせる。
こうなったのはマキが悪いんだ。マキが、みんなを下に見て命令ばっかりしたから。私のことを無視したりしたから。マキが意地悪だからこうなったんだ。インガオウホウ、だ。
「あのさ、くじ引きにしない?」
かつてのクラスの女王様は毅然とした態度でそう言い放つ。もちろん誰もマキの言うことに耳を傾けない。
一向に怯まないマキに苛立った誰かがぼっち、と小声で言う。けれど彼女は前を向いたままだった。
が、その瞳が一瞬私の方を向いたーー気がした。私は視線を遠くに、マキがいない方向に投げてみる。
私が彼女を助けてあげる義務なんてない。みんな、マキが『意地悪』で『サイテー』なやつだと知っている。先生も、男子も、もちろん私も。私と今ペアを組んでいる子だって、みんなそうだ。
その時、鐘が鳴った。休み時間が始まったと気づくやいなや、みんなその場を離れて自由に動き出す。マキの方は、誰も見ない。
マキは教室から出て行った。私も後に続いてみる。なぜだか、マキの様子を見てみたかったのだ。
マキは渡り廊下に出た。私も彼女に続く。渡り廊下のプラスティックの天井から、灰色の空が覗いていた。
みんなから見放されたマキは真っ先に私を頼ってきた。かつてあんなに横暴な態度を取っていた私を頼るなんて、マキのプライドは壊れていただろう。それでも香ちゃん、と媚を売る彼女の声にーー私は優越感を感じていなかったろうか。
やがて人気のないところについた。何をするのだろうと思っているとーー彼女は泣き出した。大声を出して、子供みたいに泣いていた。マキがどんな顔をしているかはわからない。けれど肩の震えでわかる。
マキだって、怖かったし、悲しかったんだ。
その姿が、いつしかの私と重なろうとする。それを見た私はーー走り出した。
マキが見えなくなるまで、彼女から背を向けて無我夢中で下がっていく。
私はマキが嫌いだ。彼女がかつて私に向けた光のない冷たい瞳の色は今でも忘れていない。
なのに。激しく慟哭するマキの姿は、いつまでも私の脳裏に焼き付いていた。

No.3102669 20/07/16 20:07(スレ作成日時)

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