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雨が降っていた2
以前「雨が降っていた」を投稿していた者です。
こちらの都合で中途半端になってしまっていました。読んでくださっていた方がいたらごめんなさい。
新たにこちらで続きを書きます。
どうか引き続きよろしくお願い致します。
23/12/14 17:30 追記
感想スレあります ご意見頂けたら嬉しいです
トイレに立った麻耶を追いかけるようにして話しかけた。
「麻耶、よかったら今夜泊まってかない?兄も泊まると思うけど、麻耶は私の部屋使っていいから。」
麻耶は先程兄に見せた笑顔で私を振り返った。
「そうさせて貰おうかな。琴乃のお兄さん、面白いんだもん。話弾んじゃった。」
などと無邪気に言う。
「兄の相手疲れないかな?なんだか今日は余計に喋ってるから、うるさかったら釘刺しとく。」
と気を使うフリをして兄の印象を探ってみた。
麻耶は一瞬だけ『ん?』という表情になって、すぐにまた笑顔になった。
「なんで?凄い楽しいよ。お兄さん、絶対気ぃ使って喋ってると思うよ。」
麻耶はここで急に声を低くした。
「妹の『彼女』に会いに来たんでしょ?心配してさ。気も使うよね。」
そう言って洗面所に消えた麻耶を、私は複雑な思いで見送った。
今話した感じだと、兄の第一印象は悪くはないと確信できた。ただ兄が友香を、こう言ってはなんだけど、<品定め>に来たと思われたのは何だか嫌だった。
リビングでは兄が、今度は友香を相手に調子良く喋っていた。友香の笑い声はさっきの麻耶を思い出させる。
私はわざと友香に体ごとぶつかるようにして隣に座った。二人の会話が止まって、友香が私の顔を覗き込むように見た。
「おいおい、別に友香さんを口説いてた訳じゃねーよ。何だぁ?焼きもちかぁ?」
いつものように兄はからかってくる。
「そんなんじゃ、コンパとかどうすんだ?いちいち嫉妬してたらストレスになんぞ。」
「琴乃はあまり嫉妬なんてしてくれませんよ。コンパ行って機嫌が悪くなるのはむしろ私ですもん。だから出来るだけ行かないようにしてるんです。琴乃の地元の彼氏のせいにしたりして。」
兄の軽口を友香が受けてくれた。私はやや温くなったグラスを口へ運ぶ。麻耶が言ってた通り、口当たりのいい美味しいワインだ。
麻耶が戻ってきて、泊まるつもりだから一回コンビニに行くと言い出した。
兄は帰るつもりだったみたいだが、私が『泊まってけば?』と言うとすんなり言うことを聞いた。
それなら今夜は飲み明かそう!と誰が言い出したかは定かではないのだがそうい
うことになって、兄は麻耶とコンビニに
お酒を買い足しに行った。
二人きりになって、私はなぜか気恥ずかしくなってきた。さっきキスした時の大胆な私はどこかへ行ってしまったみたいだ。
麻耶を泊める為に部屋を片付けてくるね、と私は自室に入って、ドアを閉めるとため息をついた。
お酒のせいではなく、ドキドキしていた。さっきと違って、友香の顔をまともに見られない程に。
やだ。付き合う前みたいじゃない。二人きりになるのがこんなに恥ずかしいなんて。
私はベッドのシ-ツを取り替えたり新しく毛布を出したりしながら、いつもの自分を取り戻そうとした。
コンコンとノックの音がして、友香がするりと部屋に入って来る。
収まりかけた鼓動が、再び大きくなるのを感じた。兄と麻耶が早く帰って来て欲しいような、欲しくないような、妙な気分になる。
「さっきの続き、しよ?」
友香は私を真っ直ぐに見つめて、間を詰めて来る。
「え?ちょっと待って、さ、流石に今は無理でしょ。二人がいつ帰って来るか分かんないよ?」
しどろもどろになって後ずさるものの、狭い部屋では逃げる場所もなくあっという間に友香に抱きしめられていた。
「大丈夫。麻耶にはコンビニ2件回って来てって言っておいたから。すぐには戻って来ない。」
熱い吐息と一緒に友香が耳元で囁いた。
言い終えた途端に耳たぶを唇で挟む。身体がピクンと反応してしまう。
私の心臓はもはや早鐘を打っていて、ドキドキとうるさい位だ。
「こ、ここでは嫌・・・今夜麻耶が使うのに。」
ここ以外ならいいと認めたようなものだ。入って来た時とはうってかわって、バタバタと大きな音を立てて友香の部屋に入り、突き飛ばされるように友香のベッドの上に転がされた。
「貴女のキスのせいよ。」
友香の一言で、ひとかけら残っていた理性が何処かにふっ飛んだ。
前歯がぶつかる程に性急なキスのあと、引きちぎるように服を脱ぎ捨ててお互いの身体を引き寄せて抱き合う。
何故今夜なのか、いけないと分かっているから余計に燃えるのか、身体が火照っている訳を、身体の中心が呆れるほどに濡れている訳を、知りたいとも考えたいとも思うのに、今はただこうして抱き合えればどうでも良かった。
私の中心は友香の指をずぶずぶと飲み込み、はち切れる程膨らんだ蕾は友香の指の腹でかするように触れられただけで気持ちが良すぎて、私は思わず目を瞑って天を仰いだ。
友香が一度そこから指を離して、ぬるぬると光る指を愛おしそうに口に含んだ。自らの指についたその液体を舐めとりながら、挑発する様な視線を向けてくる。
私は友香の手首を掴んでその行為をやめさせた。友香の視線を受け止めたままキスをしてお互いの舌を絡める。
私の身体から溢れ出たそれの味がした。思ったよりも塩気も酸味もなく、薄い塩水のようだ。
友香の中心に触れると、友香がしたように指の腹で友香の蕾に触れた。手首を掴んだ私の手を振りほどいて友香の指が再び私の中心を捕らえた。
舌を絡ませたまま、二人で同じような吐息を漏らしていた。友香の指が容赦なかったし、私だってそうだったからだ。
その部分以外の愛撫をほとんどしていない、と気付いたのは、程なく二人で絶頂に達した後だった。
どのくらいの時間がたったのか?と時計を見て、麻耶達が出て行ってからまだ15分も経っていないと分かって思わず笑みがもれた。
あと5分だけ、と私達は抱き合って離れられずにいた。
「今夜はこうして、抱き合ったまま眠りたい。」
友香の言葉が可愛い。
「そうね。私もそうしたい。」
私は友香の鼻先にキスをして、それを機に身体を離した。服を着る私を、友香がじっと見ている。背後からの視線を、振り返らなくてもひしひしと感じる。
下着を着ける私の背中は綺麗だろうか?ブラの跡なんて付いてないよね?
ヒップラインは?
ああ、照明もっと暗くしておけば良かった。
「友香、着替えは見ないで。恥ずかしいよ。」
とうとう我慢できなくなって振り返ると、友香はベッドにうつ伏せになってニヤつきながら私を見ていた。
背中からお尻にかけてのカーブが何度見ても美しくて、その先にしなやかに伸びる脚と共に手を触れたくなってしまう。
「何で?見せてよ。全部着るまで見ていたいの。」
「だから恥ずかしいって言ってるでしょ?嫌よ。」
私は服を手にして下着のまま自室に戻った。さっき履いたばかりのショーツを脱いで新しいものを着ける。
濡れてしまった下着は漏らしてしまったみたいに染みを作っていて、さっきは仕方なく履いたが早く替えてしまいたかった。
今の短い時間の睦み合いも、時間をたっぷりかけてするそれも、どちらも同じように心地よいものだった。むしろ時間がない、兄達が今にも帰って来るかも知れないというスリルは、官能に拍車をかける事はあっても歯止めにはならなかった。きっと友香もそうだったに違いない。
私達は多分いい意味で似てきているのだ。友香に似るのなら、真似ではなく似てきているのなら、それは間違いなく嬉しいと思えるのだった。
友香と二人で片付けをしているうちに、買い物に出ていた二人が戻って来た。
恋愛経験が豊富な(私達よりは)二人に、さっきの私達の行為がバレはしないかと内心びくついていた。バレたら恥ずかしいどころじゃない。
麻耶にどこで眠ればいいか聞かれ部屋に案内すると、意味深な眼差しを送ってくる。
「せっかく2人きりになれたんだから、その時間もちろん有効活用したよね?」
「え?何言ってんの?・・馬鹿じゃない?」
「照れなくてもいいよ。友香に言われて時間作ったんだから、何かあったんでしょ?」
「そんなの言える訳ないよ。ねぇホントどうしたの?やめてよ。」
麻耶がこんな風に絡んでくるのはほぼ初めてじゃないかと思う。だから私はそんな麻耶をどう扱っていいのか分からないのだ。
意味深な表情も片方だけ口角を上げた微笑も、いつもの麻耶とは違い過ぎて私は怖いとさえ思った。
「何してるの?麻耶大丈夫?」
友香が心配そうにドアを開けて覗いた。
友香の登場は救いだった。
「ああ助かった。麻耶が絡んでくるの。助けてよ。」
「ええ?」
友香は信じられないと言うような顔をして麻耶の肩に触れた。
「どうしたの?大丈夫?」
麻耶をベッドに腰掛けさせると、隣に座った。
麻耶はヘラヘラと笑っている。間違いなく酔っ払いの仕草だった。
「知らなかった。麻耶ってば酒癖悪かったのね。」
私は麻耶の背中をさする友香に苦笑いを向けた。
「こんな風になったのは初めてよね?」
私は友香の問いに頷いた。私達は全員飲酒歴は一緒だけど、確かにこんな風になる麻耶は初めてだった。
私は友香に麻耶を頼んで、リビングに戻った。兄はテレビを見ていた。
「お兄ちゃん!麻耶に何かした?」
つい声が荒くなってしまう。
兄は訳が分からないというように眉を寄せていたが、ぱっと顔つきが変わった。
「あー、あれか。さっきコンビニで買った酎ハイの話してたら、2人でフライングして飲みませんか?って誘われて、そこの公園で飲んだんだよ。2人で1本を分け合ってさ。俺としては断る理由は無いし、2人きりの時間が長くなるならな。」
兄はそこまで話して
「もしかして、麻耶さん具合悪くなったのか?」
とソファーから腰を浮かせた。
「具合悪くはなってないけど、なんか変な様子なんだよね。ハイっていうか、絵に描いたような酔っ払いってやつ?」
私は麻耶がそうまでして帰りを遅らせてくれたことに後ろめたさを覚えた。
「いや、俺が強いヤツ薦めたから・・・俺が気を遣うべきだったんだ。お前たちはまだ自分の許容量知らないんだもんな。2人でいられるのに夢中になって、調子乗っちまった。」
兄はコンビニの袋から酔い止めを取り出して麻耶に飲ませるように言った。
「お兄ちゃんはさ、麻耶と話してみてどう思った?」
兄にビールを手渡して、私は聞いた。兄は器用に泡を立ててグラスに注ぐ。たっぷり時間をかけて。
キレイに泡立ったグラスから私に視線を移して、兄は私の質問に一言で言い切った。
「ますます、好きになった。」
ニヤッと笑ってビールをゴクリと飲んだ。
思わず友香と顔を見合わせて、二人で満面の笑みを浮かべた。肩をすくめた友香が可愛かった。
「マジであの子がフリーなの、信じられねえわ。あんなに可愛いのに凄え話しやすくて、聞き上手で、素直で、気の利いた受け応えができて、礼儀わきまえてて、それから・・・」
「ちょっと待って、もう分かったから、そのくらいでいいよ。」
いつまでも続きそうな麻耶への褒め言葉の羅列を遮って、私は兄を止めた。
「あ・・・悪い。つい・・。でもとにかく、凄え性格のいい子だってちょっと話しただけで分かったわ。」
今まで兄と恋愛について話をしたりした事がなかったけど、話してみるとこうも面白いものかと思った。
けれど、それは兄の好きな相手が麻耶だからで、私の良く知らない女性ならどうでもいいやってなるのだろう。
「でもなぁ、片想いって思った以上に・・・何ていうか・・・切ないもんだな。」
独り言のように呟いて、どこを見るでもなく視線を漂わせている兄は、初めて見る男の人みたいだった。
兄は家に連れて来るほど仲の良い彼女がいても、その付き合いはどこか冷めているような感じがしていた。妹の私がそう思っていたのだから、当事者の彼女はどう感じていたのだろう。
前に一度だけ、兄が彼女と喧嘩をしている場面に遭遇した。と言っても、兄が電話しているのを聞いてしまっただけだが。電話の内容から察するに、彼女よりも友達との予定を優先させたい兄に彼女がキレたらしかった。
『俺は〇〇(彼女の名前)も大事だけど、同じくらい友達も大事なんだよ。だから次は〇〇(友達の名前)達と遊びたいんだ。お前だっていつも俺だけじゃなくて、友達と居たい時だってあるだろ?』
まだ高校生の兄の言い分は、確かに正論に聞こえたけれど、いつもいつもお前にだけ構っていられるかよ、とも聞こえた。
兄が舌打ちしながら通話を終えた後、側にいた私に気付いて決まり悪そうに苦笑いを浮かべた。私は余計な事と知りつつ、声を掛けずにはいられなかった。
「お兄ちゃんさ、彼女にちょっと冷たくない?も少し優しくしてあげたら?」
兄はうんざりだという風に大げさにため息をついた。
「なんだよー。お前まで・・。」
面倒くさいなと言わないあたりが兄の優しさだ。
「うん、お節介かもだけど、彼女と男友達を同列にしたらいけないと思うな。彼女はお兄ちゃんの『特別』でいたいのに、お前も友達も大事、なんて言ったら特別感無くなっちゃうよ。」
「じゃあ何て言えば正解なんだよ。」
「う-ん例えば・・『今回は譲ってくれないか』でいいじゃん。」
「えぇ?男友達と遊ぶのにそんな下から伺い立てなきゃなんねぇの?面倒くせぇ。」
「こんなので面倒とか言っちゃダメだと思うけどなぁ。好きなんでしょ?」
兄は私の『好きなんでしょ?』には答えなかった。くるりと私に背を向けると、
「まぁそう言って機嫌直してくれるんなら言っとくわ-。」
と言ってその場を去った。
兄はそれから一か月くらいでその彼女と別れ、別の子と付き合い出した。その子とも同じような言い合いをしていて、進歩してないなと思った。
「もう寝ちゃう?」
「うん」
うんと答えた友香が立ち上がるのを待っていたが、友香は私の肩に頭を乗せたまま動かなかった。私はそれが心地よくて、重ねた指で友香の手の甲を撫でていた。
着替えてベッドに入り、ギュっと抱き合いたいとも思うけれど、こうして寄り添っているだけでなんて心地よいのだろう。
「友香 私、こうしてるだけで幸せ いつまでもこうしていたい」
友香が手を裏返して、手の平を合わせてきた。指を絡ませて握ってくれる。言葉にしなくても、私の言葉に応えてくれて嬉しかった。
きっと付き合いたてならこんな風には思わなかっただろう。言葉には言葉で返して欲しくて、物足りなく思っていた筈だ。
「さあ もう寝よ」
そう言って立ち上がると、私は一旦麻耶の様子を見に自室に戻った。起こさないよう気をつけて様子を伺うと、麻耶はすやすやと寝息を立てて眠っていた。改めて見ると本当に綺麗な顔立ちをしている。こんなに美しくても恋愛に不器用なんて、この世は矛盾に満ちている。
着替えて友香の部屋に戻ると、友香は既にベッドに入っていた。こちらに背を向けている。私は出来るだけ静かに友香の隣に横たわった。友香の体温が暖かくて、何故か嬉しくなった。
友香の体を後ろから抱きしめようとした時、友香が体ごとこちらを向いた。私達は抱き合って静かに唇を重ねた。性的な興奮は起こらない。今夜はできないと思っているから、という意識があるのはもちろんのことだが、これだけで充分満たされてしまっているのだ。
男女のカップルならこうはいかないだろうと思うと、微かな優越感を覚えた。男だったらこんな風に抱き合ってしまったら、最後までいかなくては気が済まなくなりそうだ。彼女がこのままで居たいと思っていても。
私達はそうして何度もキスを交わした。
どこかで物音がしたような気がして、私は目を覚ました。目の前には友香の可愛い寝顔がある。いつの間にか二人共眠ってしまったみたいだ。私は友香を起こさないようにゆっくり起き上がって部屋を出た。
廊下に出るとリビングから少しの灯りが見えた。兄が間接照明を付けたまま眠っているのかもしれないとリビングを覗いてみるとリビングのソファに居たのは麻耶だった。兄は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して二つのグラスに注いでいた。2人の位置から私は死角になっていて見えていない。
いけないとは思ったが2人がどんな会話をするのかが気になって息をひそめてしまう。
兄がグラスを麻耶に渡して、「大丈夫?」と声を掛けた。「ありがとうございます。大丈夫です。」答えながらグラスを受け取る麻耶の声が思いの外にしっかり聴こえて私は安心した。
「琴乃達はもう寝ちゃったんですか?」
麻耶が水を一口飲んで兄に尋ねた。少しそわそわしているように見えるのは私の気のせいだろうか?
「うん。二人共眠くなったから寝るって。」
兄としては麻耶との二人きりの時間を少しでも長く引き延ばしたい筈だ。どんな風にして話を続けるのか気になる。
「気分はどう? 俺が強いやつ薦めたのが効いたみたいだよね。ごめん。」
「いえ、私も楽しくてついハイペースになってしまったから・・お兄さんのせいじゃないです。」
「麻耶さんは本当に車好きなんだね。俺の友達より詳しいし。」
「はい。だから車の話が出来て嬉しくなったんです。女友達だと車好きの人ってあまりいないですから。」
よく分からないけれど麻耶と兄の会話はなんだかとてもスムーズに感じた。少なくとも私と友香が友達になった頃よりもずいぶん気心が知れているようだ。兄も麻耶もコミュニケーション能力は高いからそう感じるのかもしれないけど、兄は麻耶が好きなのに少しも照れたり恥じらったりしていないのはさすがだなと変に感心してしまった。
友香は私が出て行った時のまま眠っていた。私は友香の温もりがするベッドに入り込んで、ほっと息をついた。
兄と麻耶はあっさり仲良くなったみたいで、妹としては嬉しい。兄が嬉しそうにしているのが何よりだ。(良かったね、お兄ちゃん) 私は心からそう思った。
ふと隣を見ると美しい寝顔の友香がいる。私は指先で友香の頬に触れた。私、今とても幸せ。こんなに幸せでいいんだろうか?
自分の恋愛傾向についてはっきり自覚した時は絶望した。どうにもならない思いを抱えて泣きたくなった。その時はまだ好きな人はいなかったけれど、いつか好きな人ができたらそれは地獄の日々の始まりなのだと怖くもあった。だって、その恋は叶うはずもないのだから。
女子大に進学したいと思ったのは、自分と同じ嗜好を持つ人に出会う確率が少しでも高くなるのを期待したからだった。私を受け入れてくれるなら、外見など妥協したって構わないと思った。なのに、入学式でいきなり私は高嶺の花に心を奪われてしまった。
幸運にも友達になれたけれど、今度は友香に好きな人が出来たらどうしようとそればかりを気にするようになった。麻耶には常に男がいたし、何よりこんなに綺麗な友香を男達が、そして時には女も、ほっとくはずがないと思っていた。
友香と一緒にいる時は嬉しかったり楽しかったりしても、1人になるとため息ばかりついていた。友香が誰かに告られたりした時は尚更だった。友香が男を作らないのは高望みをしているからで、いつかは誰かと付き合うのだと、その時が来るのを恐れていた。
目を覚ました時はもう朝になっていた。隣にいた友香は既に居なくて、私はそれが少しさみしく感じた。
起き上がって伸びをする。みんなはもう起きているだろうか。
部屋を出るとコーヒーの匂いがした。
「おはよう」
リビングにいた友香と兄に声を掛ける。兄がコーヒーを淹れてくれたみたいだ。
「今起こそうと思っていたんだ。何か食べる?」
先にコーヒーを飲んでいた友香がカップを持って来てくれた。私はありがとうと言って受けとる。隣に腰掛けた友香の腰に手を回しかけてやめた。危なかった、兄がいるんだった。
3人でコーヒーを飲んでいると麻耶も起きてきた。一晩寝てスッキリしたのかいつも通りの麻耶に見えた。兄が朝食の支度をしてくれて、片付けまでやってくれた後に帰って行った。友香と麻耶に好印象を与えたみたいで私は安堵した。家族と大事な人が仲良くなってくれるのは嬉しい。
しばらく3人で他愛もない話をしていたが、麻耶が
「ちょっといい?」
と切り出した。少しそわそわしているように見える。
「二人に話さなくちゃいけない訳じゃないんだけど、一応言って置くね。私、昨夜尊流さんにモーターショーに誘われたんだ。」
友香と私は顔を見合わせた。
「なになに?それってデート?」
友香がはしゃいだ声を上げて麻耶の方に身を乗り出した。
「わー!展開早ーい!」
私も友香に合わせてみた。自然と声が浮き立つ。
「そんなんじゃないよ。車の話で盛り上がってたら今度一緒に行かない?ってなっただけ。尊流さんの友達も一緒だし、何なら二人も一緒に行こうよ。」
「なーんだ、つまんないの。」
「私は車に興味も無いし、お断りしておくね。」
「琴乃が行かないのなら私も行かない。」
私と友香はあからさまに興味を無くして麻耶の誘いを断った。兄がどんな友達を連れて来るのか分からないが、兄の邪魔だけはしたくなかった。
「でも摩耶だけ女の子1人じゃ嫌か。逆にお兄ちゃんと二人のほうが良くない?」
私はさりげなく兄をアシストしてみた。我ながら兄思いだと思う。
「それは悪いよ。私は後からメンバーにねじ込んでもらったんだし。」
麻耶は遠慮しているが、もう一押しすればどうにかなりそうだった。
「お兄ちゃんには私が言うよ。」
私は麻耶が何かを言い出す前に兄に電話をして、モーターショーには二人で行くように話をつけた。むしろ兄は私に感謝すべきだと思う。
その夜、私は夕べのように友香と一緒に眠りたかったし、セックスもしたかった。だけど昨日もしたし、今日もしたいと言ったら性欲が強いと思われて引かれたら嫌だな、などと悶々としていた。
友香と日課のストレッチをしながら、誘うなら今かなぁと思っていたら、友香がさらりと口にした。「この後一緒にシャワーを浴びよう」
お湯で煙った浴室に友香と2人で入ると、私達は堪らずに抱き合った。胸と胸が圧迫されるこの感覚はやはり何とも言えず気持ちが良かった。友香が「洗ってあげる」とボディーソープを手に取って、私の背後から抱きつくように私の全身を撫でてきた。私は浴室の壁に手をついて腰がくだけるのを防ぐ。友香は私が背中が弱いのを知っている。背筋をなぞられると「っはあっ」と思わず声が漏れた。
友香の部屋に入り、ベッドに二人で倒れ込んだ。友香の身体を隠していたタオルを外すと友香も私のタオルを外した。裸の私達は抱き合ってキスを求める。友香に覆い被さると私はキスを下に滑らせていった。胸からお腹に、更にその下へと、丁寧にキスしていく。
私が友香の足を開くと、友香が恥ずかしそうに視線を逸らせた。「可愛いわ、大好きよ」そう言って友香の中心に舌を伸ばした。襞を指で左右に広げ、剥き出しになった小さな突起を舌で柔らかく弾いた。友香が大きく吐息を漏らす。強さと速さを変えてあくまで優しく舐めていると、友香から溢れ出た愛液がシーツを濡らしていた。私はわざと大きな音を立ててそれを吸った。「ああっ」友香の声が大きくなり、私は舌をめちゃくちゃに動かして友香をいかせた。
友香が荒い息をしてぐったりしている。私は唇を指で拭うと友香の隣に横になった。友香が私の肩に頭を乗せた。たまらなく愛しくて、私は友香の髪を撫でた。まだ全然乾いていない。私はタオルを取って友香の髪を包んだ。
友香が頭を上げてキスをせがんだ。軽いキスを何度もかわす。友香が上半身を起こして髪のタオルを取って、手櫛で髪をかき上げた。なんてセクシーなんだろうと私は目を細めて友香を見つめた。友香が再び唇を合わせてくる。今度はじっくり舌を絡めて。友香の指が首筋から胸元を掠めた。思わずびくんと身体が反応する。
友香が耳を噛んだ。右手の指は私の乳首をつまんで優しく転がしている。私は自分の身体が再び熱くなるのを感じた。友香は耳元で「好きよ」と囁く。その唇が下へ降りて、私のもう片方の乳首を咥えた。指とは違う柔らかな感触を感じる。くすぐったいが凄く気持ちいい。私は堪らずに吐息を漏らした。
私は肘をついて上体をおこし、友香を見つめた。ベッドから降りた友香と目が合った。私のローズピンクに塗った爪と、友香の唇の色が重なって、そこから伸びた舌が親指と人差し指の間に柔らかく差し込まれた。感じたことの無い感覚と興奮を感じ、私は思わず大きく息をついた。
友香は私を観察するように見つめたまま、舌を動かしていく。どこまでも柔らかく湿って、ぬるりと温かく、なんて気持ちいいんだろう。友香の私を見る眼差しすら快感に変えて、私も友香から目を離さずにいた。友香は両足の指を舐め尽くすと、キスを今度は上に向かって移動させていった。私の足を愛おしそうに撫でながら、キスを繰り返している。
「ねえ もう・・お願い」
私はたまらなくなって、友香にねだってしまった。もっと確実で強い快感が欲しい。私の中心は友香の愛撫を待ってもう十分に濡れていた。
友香は嬉しそうに笑うと、「まだよ」と短く言い、私にうつ伏せになるように言った。
言われるままにうつ伏せになると、友香が私の髪を撫でた。そして肩先から舌を這わせ始めた。「好きよ 大好き」「今夜も凄く綺麗ね」友香の囁きを背後から全身に受け、私は身も心もトロトロに溶けていく。背骨を指でなぞられて、「ひっ」と思わず声が漏れてしまう。背中は脇腹と同じくらいに弱いのだ。そして友香もそれを知っている。
「ねえ キスして」私は身体を起こして友香を抱きしめた。友香の唇を貪っていると、友香の指が私の一番触れて欲しい部分に分け入っていった。友香は指の動きと舌の動きの緩急を使い分け、私を確実に快感へと導いてゆく。私が高まってきたのを感じ取り、ついにその部分に舌を付けた。
切ない程の快感が全身を駆け巡っていく。友香の舌の動かし方が、私を頂点まで導いてゆく。私自身も知らない快感のツボを、友香はどうしてこうも容易くついて来るのか。「あっ ああっ いいっ!」私はひときわ高い声をあげて、ついに頂点に達した。目を開けることさえ出来ない。私は目を瞑って肩で息をした。
友香が隣に横になった気配がした。
何とか目を開けて、友香を抱き寄せた。しっとりと汗をかいて、私の手の平は友香の肌に吸い付くようだった。「良かったよ 凄く良かった」私がそう言うと、友香は「私も」と言い私の足に自分の足を絡ませた。ぴたりと肌を寄せて、私達はただじっとお互いを全身で感じていた。
「ねえ」友香に呼びかけられて、我に帰った。このまま眠りに落ちてしまうところだった。
「うん?」改めて強く肩を抱こうとすると、友香はするりと身体を離してベッドに腰掛けた。顔をこちらに向けて「琴乃の誕生日、どうする?」と聞いてきた。
来週は私の20歳の誕生日だった。「どうって、友香と一緒ならそれでいいよ」私は本当にそれで良かった。それ以上のプレゼントなど無い。「私が、何かしたいの。外で食事とかどう?」友香がそう言うのなら、甘えてもいいかもしれない。「いいね、どこにする?」私の答えに友香は微笑んで、「それも含めて私に任せてくれない?」と言う。何だかとても楽しそうだ。もちろん断われるはずも無かった。
誕生日の日、私が早めに帰宅すると友香はまだ帰っていなかった。麻耶にもらったプレゼントを開けると、ブルーのマフラーだった。肌触りがとても良い。私はすぐにお礼のメッセージを送って、出かける準備を始めた。
化粧を直して、もらったばかりのマフラーを手に取る。それにしても友香はまだ帰って来ない。そろそろ帰って来て支度しないと、時間が無くなってしまわないか?と時間を見ようとすると、スマホにメッセージが入った。地図が添付されている。ここで待ち合わせしようと、ただそれだけのメッセージだった。私は時計を見て、まだ充分に時間があるのを確認すると、戸締りをして外に出た。冬の夕暮れは早く、灯りがともり始めた町を楽しみながら私は駅へ向かった。
「お待たせ。もう少し早く来ればよかったね。」男の去っていった方をちらりと見て、私は友香に笑いかけた。「大丈夫だよ、ひたすら無視してたから」そう言って友香は私の腕を取った。「そのマフラー、いいね。凄く似合ってる」「あ、これは麻耶から貰ったの。誕生日プレゼント。」「さすが麻耶だね、あの子センスいいから。」友香の方がはしゃいでいるように見えて、微笑ましく感じる。友香の案内で、私達は目的のお店に着いた。看板も出ていない、普通の大きなお宅のようだ。ここを指定されても、私は辿り着けないに違いなかった。
友香についてお店の中に入ると、タキシード姿の男性がスッと近づいてきて、「お待ちしておりました、高階様」と友香に会釈した。「こんばんは、今日はよろしくお願いします。」友香も会釈を返し、私達はその男性に案内されて個室に通された。お店全体が黒を基調にした高級そうな造りで、置いてある調度品も品が良かった。明らかに高そう、私は少し緊張していた。
友香の話し方が私の緊張をほぐそうとしているのがわかる。いつも以上に私に気を遣ってくれている。友香のそういう心遣いを感じて、私は次第にリラックスしていった。料理もサービスも一級品で(そして恐らくお値段も)素晴らしいこの空間を、余す所なく楽しみたいと思えるようになっていた。
「今夜のあなた、いつもよりも素敵よ。」私は素直に友香に告げた。「ありがとう、あなたも素敵。」友香の返事に私は笑顔になり、友香も微笑を返してくれた。
コースも滞りなく進み、あとはデザートを残すのみという所で、友香はテーブルの上に小さな包みを置いた。「誕生日おめでとう、琴乃。」そう言って友香は優しい目で私を見つめた。
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皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 123HIT 永遠の3歳 -
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酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 125HIT 小説家さん -
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1391HIT 檄❗王道劇場です -
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今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 509HIT 旅人さん
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サブ掲示板
注目の話題
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☆ダブル不倫15☆
スレがいっぱいになったので新しいスレを作ったよ☆ 大切な仲間の皆んな、これからもよろしくね♡ …
426レス 24225HIT りあ (40代 女性 ) -
妻の過去について
私と妻は現在50代。妻は私より4歳年下です。私と付き合う前に付き合っていた彼との関係について知りたく…
7レス 389HIT 匿名さん (50代 男性 ) -
ディズニーの写真見せたら
この前女友達とディズニーに行って来ました。 気になる男友達にこんなLINEをしました。ランドで撮っ…
26レス 570HIT 片思い中さん (30代 女性 ) -
おばさんイジリされる職場
私は40代の女性会社員です。 会社は男性が多く昭和な社風です。 一応、私は役職もついていますが下…
32レス 1112HIT 社会人さん -
彼氏にカマかけたらクロ 別れるべきか
こんな時間ですが、緊急で悩んでいます 彼氏と別れるべきか真剣に悩んでいます 私は成人済み…
10レス 234HIT 一途な恋心さん (10代 女性 ) -
スカートの丈が床につきます
レーススカートが欲しいのですが試着したら裾が床についてしまいました(泣) 可愛いデザインだっただけ…
11レス 248HIT 解決させたいさん (30代 女性 ) - もっと見る