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サプライズ

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ナルシスト( 84wJh )
15/04/01 23:45(更新日時)

彼はサプライズが大好きな人!

14/11/13 10:17 追記
サプライズにお付き合い頂きありがとうございます。

感想はナルシストの部屋でお待ちしております。

……★ナルシスト★……

No.2150227 14/10/21 17:41(スレ作成日時)

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No.1 14/10/21 17:48
ナルシスト ( 84wJh )

私の名前は沙友理。
彼は裕太。
私達は些細な事からの出逢い。
私がコンビニのバイトをしていた頃のお客さんだった裕太。
付き合い始めて1年。


彼も私も今は社会人になった。
いつも場所でいつもの時間に待ち合わせる。
私達の日課になった。

ただ彼は私を驚かす事が大好き!
だから彼のサプライズにどれだけ驚いたか!
私の驚いた顔が好きなんだって!
意地悪でしょう?

そんな彼が大好きな平凡な社会人の私。
今日も彼を待つ私。

No.2 14/10/21 18:06
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「裕太いつもなんだから」

彼を待つのは慣れてきたよ。
もう何分待たされるの?

人混みの中私は裕太が来るのを待っていた。

いきなり私をすくい上げた誰か!
沙友理
「キャー」

顔を見れば…
裕太
「お待たせ…」

裕太が私を抱き上げ笑っていた。

またやられた!
裕太のやる事全ておどろく事ばかり。(O_O)

No.3 14/10/21 18:20
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「ビックリした?」

沙友理
「もう 裕太ったら、私心臓いくつあっても足りないよ!」

裕太
「ずーっと見てたんだ!」

沙友理
「えっ?」

裕太
「あそこの影で…さ」

沙友理
「私…帰るよ…」

裕太
「ごめん、ごめん」

いつもこんな感じで裕太に遊ばれていたのか?
すぐ許してしまう私。

No.4 14/10/21 18:36
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「本当にごめん、今日は沙友理の好きな物食べに行こうか」

このビックリがなかったら優しい裕太。
悪趣味なんだから。
ずーっと悪趣味のままだったらね。

沙友理
「裕太のごめんなさいで、今日はハンバーグにしてあげる!」

裕太
「オーケイ、ハンバーグに出発だ!」

幸せだったよ。
今思えば…
幸せだった。

涙が一筋…流れた…

No.5 14/10/21 18:42
ナルシスト ( 84wJh )

2人はいちゃつきながら、ハンバーグのお店に着いた。
店内はいっぱいだった。
メニューだけ店員さんに渡された。

裕太
「沙友理はこれ喰えよ!」

沙友理
「嫌だ!私はこのチーズ入りがいい!」

裕太
「沙友理はわがままだなぁ?」

沙友理
「じゃあ裕太はおろしポン酢に決定だね!」

裕太
「ほら、沙友理はわがままだ!」

懐かしい風景よね!
今となっては。
何だったのか?
沙友理と裕太の会話は……

No.6 14/10/21 20:23
ナルシスト ( 84wJh )

裕太は出版社に勤めていた、だから中々2人がある事が難しかった。
私に逢うために頑張って仕事してくれた。
私は書店に働いてる。
2人の会話は尽きなかった。

本の話やどんな作品が好きなのか?
裕太は馬鹿な事も多いが、尊敬出来る事も沢山ある。
速読術を持ってる人。

裕太
「沙友理まだ読んでないの?」

沙友理
「普通まだでしょう?」

裕太
「俺、全部読んだぜ!ラスト教えてやろうか?」

沙友理
「ダメ~楽しみにしてるから…」

そんな尊敬出来る一面も持っている。

定員さん
「お待たせ致しました78番のかた」

沙友理
「はい、78番です、裕太行こうか」

裕太
「よし来た、死ぬほど食うぞ!」

No.7 14/10/21 21:04
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「でさぁ…」

裕太
「うめー」

沙友理
「聞いてるの?」

裕太
「ちゃんと聞いてるよ!」

沙友理
「裕太こっち向いて…子供みたい、口に付いてるよ」

裕太
「ほんとだ…ガキみたいだ俺…」

楽しかった。
裕太の何もかも全て許せた。

裕太
「俺の休み決まったら旅行行こうか?」

沙友理
「行きたい…裕太との旅行初めてだ!」

2人はたわいもない会話だけでも楽しかった。
裕太の事大好き★★

No.8 14/10/21 23:27
ナルシスト ( 84wJh )

裕太は食事後ここで待っててと言い残し、私から離れて行った。
数分その場所から離れなかった。

沙友理
「はい、お花!」

裕太
「これ私に?」


「嬉しい、なんで?」

裕太
「沙友理の喜んでくれる顔見たくて…」

裕太の小さなサプライズ!
1つ1つ嬉しかった。

花束貰えば結婚したくなる。
裕太との結婚に憧れていた。

まだ結婚までは早い年齢、でも裕太と住みたかった。
玄関開けたら、裕太がただいまー。
私は苦手な料理を苦戦して作る。

裕太はうめーってがっついてくれる。
それを笑顔で見てる私。

いつか現実になれればの私の夢。
裕太分かってるかなぁ?

No.9 14/10/22 04:12
ナルシスト ( 84wJh )

裕太は優しく笑いかけてくれた。
沙友理
「いつも色んな事考えてくれて…」

裕太
「今からどうする?」

沙友理
「見たい映画あるんだけど、切なくては見れない」

裕太
「どうして?」

沙友理
「主人公の彼女と彼氏が別れちゃうの」

裕太
「だから…」

沙友理
「切なくない?」

裕太
全然~俺には沙友理がいるから、次のデート映画にしょうぜ」

そして私達はホテルに入り、裕太は私の首筋を愛撫し始めた。
いつも優しく、唇を重ね、沙友理って呼んでくれるの。
裕太の温もりを感じる時間。
私はこれから何回裕太の温もりを感じれるのか?
裕太に一生付いて行くから……
裕太、大好きだよ★★

No.10 14/10/22 04:20
ナルシスト ( 84wJh )

裕太と愛の営みが終わると必ずお風呂まで、お姫様抱っこしてくれる。
私の身体の隅々まで綺麗に洗ってくれる。
付き合いだして、すぐには身体の関係にはならなかった。

裕太
「沙友理を大切にしたいから」

最初の記念の関係の場所は、裕太がサプライズで、少し高めの高級ホテルに、ルームサービスを頼んでくれて、2人でワイン乾杯したよね?

突然のサプライズに、お金の心配しちゃった。
高級ホテルだったから。

そんな真っ直ぐで、気取らない裕太が大好き★

No.11 14/10/22 12:09
ナルシスト ( 84wJh )

裕太はすぐ私のオデコにチューして来る。
裕太の私に対するクセなのか?

そしてオデコとオデコを引っ付けて、クニュクニュしてくる。
裕太私幸せだよ!

裕太
「沙友理可愛いよ!」

沙友理
「裕太大好き」

楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。
何故同じ時間でも楽しく、幸せな時間は早いのか?

私達は洋服に着替えて、お互いの家路に帰った。
裕太
「また、時間空いたら電話するよ」

沙友理
「メールでもいいよ!」

お互いの家はそんなに離れていない。
でも帰る方向は別々
顔が姿が見えなくなるまで、裕太は大きく手を振ってくれた。

私は優しい裕太が。
 ★大好き★

No.12 14/10/22 12:44
ナルシスト ( 84wJh )

裕太のぬくもり今も私の身体に残ってる。
裕太と会う時は私が一番幸せを感じる時間。
さっき別れた筈なのに、また会いたくなる切ない思い。

裕太ちゃんと帰れたかなぉ?
ちゃんと会社行けるかなぁ?
裕太も同じ気持ちで考えてるかなぁ?

帰り道なんてあっという間だった。
私は父親が待つ家まで坂道を歩いていた。

沙友理
「ただいま」

父親
「お帰り」

私は母親の仏壇に手を合わせ、今日の裕太とのデートを報告した。
母親は2年前乳癌で亡くし、今は父親と2人、ひっそりと生活している。

No.13 14/10/22 15:06
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「沙友理、夕食は?」

私は母親の仏壇から離れ。

沙友理
「済ませてきた・・ごめんね」

父親
「連絡くらいしなさい。」

お母さんの仏壇には、イカと里芋の炊き合せをしていた。

母親が亡くなるまで、台所なんて立つ人じゃなかった。
母親が乳癌になり、一番こたえたのは、父親だったのであろう。

父親は母親が亡くなり、仕事も辞めてしまい、今は早く帰宅出来る仕事に変わった。
かなりのショックだったんだと思う。

母親が病に伏せてから、お父さんは益々無口になった。
だから私は父親が心配で、裕太との結婚に踏み切れない。

裕太もその事は知っている。
だからお互いに結婚話は慎重になっていた。
母親が生きて居れば、安心して裕太の元に行っていた。
裕太だってサプライズプロポーズしてくれていただろう。

No.14 14/10/22 15:57
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「お父さん、私が結婚したら・・寂しいよね?」

父親
「嫌、母さんが居るから・・相手居るのか?」

沙友理
「何となく・・いつか居なくなるんだよ・・私・・」

父親
「母さんに見せてやりたかった…」

それ以上聞けなくなった。
一番寂しいんだよね。

お父さんが…


「お風呂入ってくるわ・・」

父親
「・・・」

お母さんが残ってくれて居れば、私はお母さんに沢山、相談出来たのに…

お父さんなんて全く相談相手にならないし、どう接して行けばいいのか、分からない。

お母さんの仏壇には、笑顔の写真が飾っていた。

No.15 14/10/22 16:06
ナルシスト ( 84wJh )

湯船に顎まで浸かり、裕太の事を思っていた。
裕太もお風呂かなぁ?

次は映画に誘おう。
見たい映画は、彼氏と彼女が別れてしまう。
切ない内容みたい。
裕太は全く関係ないと言っていた。

観たい映画だった。
でも現実に観て私達も……

そんな事なんてないよ!
私と裕太は同じ強さで握っていたよ。
離れないと思ってた。
2人の手は…

ダメダメそんな事考えちゃ!
好きになればなる程不安になってしまう。
もう付き合って1年なんだよ?

1年の絆があるんだよ。
何故そんなに不安なのか?

大切な人を亡くして余計に別れる事が不安に繋がってた。
母親が死ぬなんて考えた事もない。
ずーっと私の側に居ると思ってた。

No.16 14/10/22 19:10
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「まだ入ってるのか?」

色々な事考えていたら、かなりの時間が経過したのか?
父親は母親が亡くなってから、気持ち弱くなり、心配性になっていた。
自分1人取り残されやしないかと。

沙友理
「すぐ上がるね…」

私と父親は話す事もなく、私は部屋に入って行った。

携帯を鞄から持ち出し、裕太からのメールがないか?
確認した。

裕太の性格なら、携帯から、は~い!裕太の登場で~す。
なんてサプライズしても可笑しくない。

私は裕太に。

「沙友理で~す、裕太帰りましたか?」
メールを送信した。

いつもならすぐ返事があるんだけど。
お風呂何だと思い、テレビを見てた。
裕太からの返信はその日はなかった。

No.17 14/10/22 19:45
ナルシスト ( 84wJh )

心配だったけど彼にも彼の用事があるんだ!
明日電話で話せばいい事!
私は部屋の明かりを消した。

沙友理朝だぞ!
裕太の声だと思ったら父親の声だった。

沙友理
「おはよう」

父親
「あぁ」

沙友理
「支度すぐするね!」

父親
「あぁ」

私はお父さんの食事の用意と、自分のお弁当を作り、先に洗濯を済ませ、お父さんを見送り、会社である、本屋さんに向かった。

No.18 14/10/22 20:01
ナルシスト ( 84wJh )

毎朝は私の戦争である。
父親のご飯の支度、父親を会社に送り、私は洗濯と軽く掃除機をかける。
先に帰った方が洗濯物を入れる、ざっとそんな流れで毎朝が始まる。

今日も本を求めてくるお客さんの受け付け。

沙友理
「いらっしゃいませ」
軽く会釈をしてレジに並ぶ。
時間を見計らって、棚の補充や、新しい本の入れ替えなど。

本屋さんって暇なイメージだけど、案外する仕事が多い。
特に私の勤務先は、本店で、たまに作家さんのサイン会までこなす、大手の会社。

毎日、好きな本に囲まれた仕事は、私の念願でもあった。
出版社の裕太と知り合ったのも、サイン会での出逢いだった。

No.19 14/10/23 10:22
ナルシスト ( 84wJh )

会社では有名タレントさんの出版した本の握手会や有名作家さんのサイン会など私の会社では行っていた。
裕太との出逢いは有名作家さんがイベントで来られた際に出逢った。

やけに明るく、楽しい男性だった。
彼から連絡先を聞いて来て、私達が付き合いをスタートした。

もう1年近くなる。
裕太と出逢い。
裕太は本当に天然なのか?
冗談なのサプライズなの?
そんな経験すらない私。

母親が亡くなりまだ立ち直れなかった私。
人の死を直面する事がなかった私には、母親の病気と向き合えれず、これが初めての身内の悲しみに、笑う事すら忘れていた。

そんな私を自然と笑える様にしてくれたのが、今の私の大切な存在の裕太だった。

No.20 14/10/23 11:00
ナルシスト ( 84wJh )

初めてのデートで裕太は夜にレストランに連れて行ってくれた。
まだ暗かった性格の私だった。
食事中レストランのボーイさんが皆さん集まってくれて、拍手してくれ。
ボーイ
「裕太さん、沙友理さん、初めてのデート記念日、おめでとうございます」

びっくりしたよ!
裕太は笑ってた。
初めてのデートくらいで裕太なりの元気と私に労うサプライズ、嬉しかった。

拍手なんて経験した事なかった。
サプライズって誰しも予知しない事、相手は忘れられない思い出なんだよね。
裕太のサプライズ今も忘れない。

No.21 14/10/23 20:53
ナルシスト ( 84wJh )

会社の休み時間に裕太に連絡した。

沙友理
「( ゚∇^)] モシモシ裕太?昨日どうしたの?」

裕太
「沙友理、ごめんな!」

沙友理
「連絡ないから心配したよ」

裕太
「ばぁちゃんが体調悪くて夜中に病院に連れて行っててさ、連絡出来なかったんだ」

沙友理
「大丈夫だったの!」

裕太
「大丈夫、大丈夫、大袈裟なんだよ」

私は1人心配してた。
勝手に…
裕太の言葉も…
全て…
信じてたんだよ?

No.22 14/10/23 20:58
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「心配だね?」

裕太
「まぁ一応お袋が今日病院連れて行ってるから」

沙友理
「なら…良かった」

裕太
「ごめん、連絡出来なくて…」

沙友理
「仕方ないよ、当たり前だよ!」

裕太
「また連絡するから…」

沙友理
「分かった…お大事に…」

裕太
「ありがとう」

本当些細な事なんだよね?
でも裕太の元気な声聞けただけでも嬉しかった。
私は安心して仕事に戻った。

No.23 14/10/23 23:10
ナルシスト ( 84wJh )

仲間
「沙友理ちゃん悪い、そこの本補給お願いね」

沙友理
「はーい」
裕太のお祖母さん大丈夫なのか?
裕太から連絡は来なかった。
凄く心配になったが、仕事の邪魔にならないか?
気になった。

そうだ!
裕太の会社を覗いてみよう!
帰る時間帯なら、迷惑にならないだろう。

私は裕太の出版会社に足を運んだ。

沙友理
「すいません、村上裕太さん、いらっしゃいますか?」

受付
「村上裕太ですか?失礼ですが?」

沙友理
「家族の者です……」

受付
「少しお待ち下さいね」

沙友理
「はい」
家族なんて嘘付いたけど、裕太に叱られないかなぁ?

受付のもう1人の女性から声を掛けられたら。

受付B
「あの……村上裕太さんの御家族さんですよね?」

私は思わず裕太の会社まで、心配で寄った事に、この女性の声かけで、失敗したと感じた。

沙友理
「妹です」

受付B
「村上さん、妹さんなんて居ましたっけ?」

何故そんなに突っ込んで聞いて来るの?
嫌な気分だった。

No.24 14/10/23 23:20
ナルシスト ( 84wJh )

余りにも怪しそうな顔付きに何なの?
裕太が私を見てくれたら分かるわよ!

裕太
「ごめんね、お待たせ、びっくりしたよ!」

さぁ出ようと裕太は私を外に出した。

沙友理
「ごめんね、あんまり連絡ないから…」

裕太
「バタバタしていて、心配かけたね、沙友理、有り難う」

オデコに優しくキスしてくれた。 
これだけで安心した。

沙友理
「ご飯でも食べる時間ある?」

裕太
「会社に一度荷物取りに帰るから、少しだけ待っていてくれるか?」

沙友理
「わかった」
沙友理
「裕太!無理ならいいよ!」

裕太
「沙友理が会社まで訪ねてくれたんだから、何が合っても来るからさ!」

裕太は元気に会社まで、走って行った。 
裕太の走る後ろ姿……
裕太、大好き★

No.25 14/10/23 23:28
ナルシスト ( 84wJh )

裕太は慌てて私の元に戻って来てくれた。
にっこり笑う裕太の顔に。
ほっぺにぎゅーとつねってやった。

裕太
「沙友理痛いよ!」

沙友理
「連絡くれない罰だよ~」

裕太
「沙友理、愛してるよ、あのさぁ沙友理映画見たいって言ってただろう?」

沙友理
「うん」

裕太
「今から行こうか!」

沙友理
「お祖母さん大丈夫なの?」

裕太
「落ち着いてるから」

私は裕太と映画の話はしたが、今から映画見れるなんて思わなかった。
裕太はまた優しく裕太に戻ってくれた。

2人は走りながら映画館に入って行った。

No.26 14/10/24 11:12
ナルシスト ( 84wJh )

裕太は私の手をぎゅーと握りしめて走った。
裕太が繋いでくれてる手の温もり。
私も裕太の手をぎゅーと握り替えした。

この手は離れないと思ってた、離さないと思ってた。
映画館に着き。

裕太
「大人2枚!」

沙友理
「観たかったんだ!」

裕太
「良かったじゃんか!」

沙友理
「なんか切なくなっちゃう」

裕太
「じゃあ止める?」

沙友理
「裕太…大好き…」

2人は映画館の中に手を繋ぎ入って行った。
平日の夜なので好きな席を選ぶ事が出来た。
裕太と沙友理は真ん中の席を選んだ。

No.27 14/10/24 11:50
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「楽しみだね」

沙友理
「観たかったの…ずっと…」

映画の予告編が次々流れていく、サスペンスやホラー、アニメなど。

………★ビィ★…………

沙友理
「始まるよ、裕太!」

裕太の肩にもたれかかり、裕太は私の肩を抱いた。
映画が始まった。

……………★映画内容★………………

美紀と優作は恋人同士、優作は美紀の事を大好きだ。
美紀は綺麗な容姿なので、凄くモテる悪魔的な女性であった。
優作は美紀が外的に合わないか?
守りに守り抜き、美紀を振り向かせたかった。

そんな事お構いなしの美紀は、違う男性と出逢い、恋に落ちた、優作は美紀を取り戻したかった。
だが、その優作の願いは届かなかった。
優作は1人の女性と巡り会い、それぞれの道を歩き始めた。
    
   2ペース目に続く。

No.28 14/10/24 12:02
ナルシスト ( 84wJh )

…………★映画内容の続き★………………

2人は違うお互いの道を選択したと思っていたが、美紀は幸せでない事を知る。
優作は美紀の事が心配になり、優作はその事がキッカケで今の彼女と別れてしまう。

心に傷を負った美紀の前に優作が表れる。
美紀を思いっ切り強く抱きしめる優作。
やはり美紀には優作が必要だったのだ。
2人は付き合い始めた頃にタイムスリップし、昔の思い出の場所に次々訪れて、2人の思い出アルバムを作り出した。

…………★映画内容でした★…………

沙友理
「ハッピーエンドで良かった……」

裕太
「…」

沙友理はこの主人公優作の気持ちが、裕太とかぶさった。
別れても、何故かやり直せる。 
服でもほつれれば、針と糸で直せばいい。
2人は離れたいと思ってた。
裕太と沙友理は永遠に………

No.29 14/10/24 12:48
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「裕太?」

裕太
「すやすや」

沙友理
「裕太…………」
少し寂しかった。
裕太とこの映画観たくては、裕太に感想聞きたかった。

でも毎日疲れた身体に付き合ってくれてるんだから、裕太は私の肩にもたれすやすや寝ていた。

いきなり。
裕太
「良かったよ!俺感動したよ!」

嘘も可愛いと思えた。

裕太
「飯食いに行くか!」

沙友理
「うん」

映画館から出た2人は手を繋ぎ歩いた。
裕太ありがとうね。

2人はラーメン屋さんに行き、裕太は映画を見ていた様に感想を話し出した。

裕太
「主人公のあいつ誰だった?」

見てない事知ってるよ!
私は笑いながら裕太の全く説明出来ない感想を聞いていた。

No.30 14/10/24 12:55
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「中々奥の深い映画だったな!」

沙友理
「そうね」

私があの映画の美紀だったら、裕太は彼女と別れて、私の元に現れでくれるかなぁ?
あの映画の2人を自分に重ねてた。

沙友理
「裕太、美味しいね、ラーメン」

裕太
「もっとニラ入れろよ!」

沙友理
「うん」

このたわいもない会話に子供が加わり、また新しい家庭への会話に繋がるのかなぁ!

裕太は父親になっても、おじいさんになっても、こんな無邪気な人なのかなぁ?

裕太は必死にラーメンをすすってた。

No.31 14/10/25 05:52
ナルシスト ( 84wJh )

裕太の笑顔が大好き!
沙友理
「裕太、私達もう付き合いだして1年だね」

裕太
「2年目指そうな!」

沙友理
「結婚だよ」

裕太
「もう少し待てよな」

沙友理
「急がないよ」

裕太と2人手を繋ぎ駅まで歩いた。

裕太
「送って行こうか?夜道危ないから」

沙友理
「大丈夫だよ、裕太今日はありがとうね。」

裕太
「また連絡すっから、さ」

沙友理
「ありがとう、待ってるね」

私達は駅でバイバイした。

電車の切符を買う為に財布を探してたら、あれ?

手紙が鞄の中に入っていた。

沙友理へ。

裕太が1年の記念日サプライズに手紙を私の鞄に忍ばせたんだ。
電車に乗りすぐ手紙の中を見たかった。

No.32 14/10/25 06:02
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理へ。

ふとした出逢いで付き合って1年くらいかなぁ?
沙友理の満足なデートも出来ずごめん。
沙友理とこれから、沢山の思い出も作り、こんな俺だけどいつも沙友理が、俺の側に居てくれよな。
簡単な内容だけど、今の俺の気持ち。
1年のお祝いしょうぜ!
これからもよろしく。

裕太。

電車の中で泣いてしまった。
周りは泣いている私に視線を感じた。

裕太らしい、私へのサプライズ。
高価な物より、手書きのサプライズ。
嬉しいよ。

私こそ一生裕太に付いていくからよろしくね。
帰りの電車はウキウキな気分だった。

私の宝物。
裕太の手紙、裕太の気持ち、大切にするよ。
裕太 ★大好き★

No.33 14/10/25 06:18
ナルシスト ( 84wJh )

好きになれば好きになる程会いたくなる。
好きになればなる程別れる事が不安になる。

好きだから誰にも取られたくない。
これから、私達の未来が知りたくなる。

これが同棲でもしていたら、違ってたかも、知れない。

お互いの家に帰れば、また不安になる。
私には裕太しか居ないんだよね。
裕太以外考えられたいんだよ。

沙友理
「ただいま」

父親
「付き合っている男性居るのか?」

沙友理
「また連れてくるね?」

父親
「あぁ」

母親の仏壇には、ひじきと薄アゲが炊き物が供えてあった。

私は裕太の手紙を何度も、何度も、読み返していた。

私も返事書かなくっちゃ!

この日中々眠れなかった。

裕太は思いがけない、恋のこもったサプライズをしてくれる。

大切にされてる実感を感じる。

No.34 14/10/25 23:07
ナルシスト ( 84wJh )

裕太の手紙を胸に抱きしめる私は眠っていた。

父親
「沙友理朝だよ!」

沙友理
「はぁーい」
また毎日の繰り返したが始まった。
朝の用事を済ませ、会社に向かった。
目に付く男性の結婚指輪。

幸せなんだろうなぁ?
私も早く裕太とお揃いのリングはめたいなぁ?

沙友理
「おはよーございます」

同僚
「沙友理ちゃん元気だね!良いことあった?」

沙友理
「ラブラブですから…」

同僚
「朝から刺激てき~♪

沙友理
「ありがとうございます」


今日だけ幸せなきもちで仕事したかった!

No.35 14/10/25 23:16
ナルシスト ( 84wJh )

気分が良いと仕事までたのしくなる。
大好きな本が愛おしく思えたり、お客さんにも笑顔で接しられる。

沙友理
「いらっしゃいませ」

「あの…いつも綺麗ですね」

沙友理
「えっ?」

「いつも見ていました」

それが多田さんと言う男性であった。

沙友理
「いつもお見かけしてました、本お好きなんですか?」

多田
「本ではなく、貴女の事が…」

沙友理
「クスッ」

多田
「笑いましたね?」

沙友理
「だっていきなりの直球なんですから」

これが多田さんとの出会いであった。

No.36 14/10/26 15:26
ナルシスト ( 84wJh )

多田さんは良く私の書店に来て下さる男性。
良く見る顔だけのお客さん。

多田さん
「すいません、突然話しかけて…」

沙友理
「少し驚いただけです」

多田さん
「本をダシに毎回貴女に会いに来てました」

沙友理
「本に失礼ですよ」

多田さん
「ですよね」

沙友理
「はい」(^^)

多田さん
「お昼休み…ご一緒出来ませんか?」

沙友理
「交代制なので…お気持ちだけ、頂きます」

多田さん
「僕、消防士なんです」

沙友理
「素敵なお仕事ですね、頑張って下さい」

私は本の話題に変えた。

No.37 14/10/26 15:34
ナルシスト ( 84wJh )

多田さん
「どんな本売れてますか?」

沙友理
「中学生や高校生に、爆発的に読まれている本は、山田悠介の本ですね?」

多田さん
「内容は?」

沙友理
「エグいです、と言うか怖い内容です」

多田さん
「そんなに売れているんですか?」

沙友理
「私も7年前から読んでますが、最初から最後まで恐怖でした。」

多田さん
「読んで見ます、ありがとう」

沙友理
「ミステリー楽しんで下さい、夜1人で読まない方が良いですよ、怖すぎます」

といって多田さんは私の会話の作者の本を買って帰った。

沙友理
「ありがとうございました」

嬉しい言葉だったが、私には裕太が居る。
冷やかしなら気分悪いけど。

No.38 14/10/26 18:36
ナルシスト ( 84wJh )

裕太に連絡したが仕事の現場なのか?
連絡が取れなかった。
手紙のお礼に食事誘いたかったのに。

仕方なく会社に戻り仕事をした。
大丈夫何だろうか?
裕太のおばあさんのご病気。

何度も携帯に連絡したが、折り返しの連絡もなかった。
今日は珍しく、仕事も早く済んだので、駅前のスーパーに買い物に行った。

少し…何かを…感じる…人の…気配が…

私の被害妄想なのか?
買う物、買う物、付けられている。
振り返ると誰もいない。

  疲れているのかなぁ? 

No.39 14/10/26 19:05
ナルシスト ( 84wJh )

買い物は終わり帰ろうとしたが、やはり誰かが付けて来ている。
怖くて、怖くて、声を出そうとした瞬間。

「付き合って下さい」

怖くて声も出ない。
恐る振り返ると!
「逮捕する!」
と裕太が私の手を握って来た。

沙友理
「裕太だったんだ!怖かった」

裕太
「驚いた?」

沙友理
「それ無しだよ!」

裕太
「仕事で連絡出来なくって、沙友理が見えたがら、しかしスリルあったなぁ!」

沙友理
「悪趣味だよ!それは無しだよ!」

安心したよ。
裕太だったんなら。
 子供みたいな裕太が大好き。

No.40 14/10/26 19:13
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「重いだろう?」

沙友理
「重いより、怖かったよ」

裕太
「そんなに怒るなよ」

沙友理
「ごめん…手紙嬉しかった」

裕太
「俺のサプライズかなぁ!」

沙友理
「手紙は嬉しいけど、もう止めてね」

裕太
「もうしないよ!」

と言いながら裕太はスーパーの袋を持ってくれた。私達は家の近くまで帰って来た。
 
沙友理
「お父さん居ると思うけど、入って行って」

裕太
「次にするよ、次に、じゃあ、な」

裕太は帰って行った。
2度とこんな驚く事はしないと思っていた。

No.41 14/10/26 21:46
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「あれ?お父さんまだなんだ!」

今日くらい私が食事作らないとね!
今日はお父さんが大好きな、ブリ大根を作った。

お母さんの仏壇にブリ大根をお供えした。
チーン。
お母さんブリ大根美味しいかなぁ?
お母さんの味には勝てないけどね?

すると家の電話が鳴った。

沙友理
「もしもし、今市ですか?」


「お帰り…早かったね?」

沙友理
「どちら様ですか?」


「ブリ大根上手く焚けた?」

沙友理
「裕太なの?悪趣味は止めてって言ったよね?」


「……………ギャチン」

ブープープー

誰なの?
裕太なの?

裕太の携帯番号にすぐに連絡した。
繋がらない。

何故?
誰?

No.42 14/10/26 21:56
ナルシスト ( 84wJh )

裕太にメールした。

「電話した?私の自宅に?変なん電話があったの、怖いよ、裕太なの?連絡して下さい」

1時間立っても、2時間立っても、裕太からの返信はなかった。

父親
「ただいま」

沙友理
「お父さん、家に電話した?」
 
父親
「してないぞ、何かあったのか?」

沙友理
「彼かも知れないけど…変な電話があったの」

父親
「間違い電話だろう?」

これが私の最初の恐怖だった。

父親
「おぅブリ大根だ!」

沙友理
「お母さんの味には勝てないけどね」

怖かったよ。
裕太は最近連絡が取れない事があったが、裕太の手紙が私の不安を消してくれた。

No.43 14/10/26 22:03
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「旨い!中々旨いよ」

沙友理
「良かった」

裕太なのか?
あの電話の主は?
でも裕太の声じゃなかった!

私はお風呂に入り、誰かに見張られてる、被害妄想になっていた。

父親
「沙友理…大丈夫か?」

沙友理
「もうすぐ上がるから……」

嫌な気分だった。
お風呂に上がり、携帯を開いた、裕太の返信はなかった。

裕太何してるの?
最近裕太の連絡が途切れ途切れになる。
決まって夜になると、裕太からの、返信は少なくなってきた。

裕太なら、悪質過ぎるよ!

No.44 14/10/27 19:15
ナルシスト ( 84wJh )

夜何故か気になった、いったい誰なのか?
台所まで行くと台所の蛇口がホタホタと音が異常に響き渡った。

沙友理
「お父さん…寝た?」

お父さんは寝ているのか?
返事がないので覗いて見た、お父さんはスヤスヤと眠っていた。

部屋に帰り時計を見れば、午前2時だった。
迷惑だと分かっていたが、裕太にメールしてみた。

………★………
  裕太
ごめんなさい。
裕太、何故連絡くれないの?
  会いたい

   沙友理

メールを送った。
寝ていても明日は連絡あるよね?
不安になってきた。
裕太と離れないか…
裕太の気持ちが飛んで行かないか?
こんなに人を好きになるなんて思わなかった。

No.45 14/10/27 19:21
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「お父さん!おはよう」

父親
「珍しいなぁ」

沙友理
「私だって早く起きる事もあるんだから!」

父親
「そんな事すらなかったぞ」

早く起きたんじゃない。
怖くて眠れなかっただけ。
裕太からの連絡もなく、朝はバタバしていた。

父親
「沙友理、行って来るよ」

はっとした。
沙友理
「気をつけてね」

私も急がなきゃ!

沙友理
「電気よし!ガスよし!」

鍵もよし!
さぁ仕事行って来まーす!

No.46 14/10/27 21:47
ナルシスト ( 84wJh )

会社に着くまで誰かに見張られていないか?
私は知り合いに会うまでドキドキしていた。

先輩
「沙友理さん、おはよう」

沙友理
「おはようございます」

先輩
「顔色悪くない?」

沙友理
「聞いて下さい!」
昨日の夜誰だか分からない電話の話をした。

先輩
「本当に知り合いじゃないの?」

沙友理
「父親と同じ事言わないでくださいよ!」

信じて貰えないのか?

裕太から電話があった!

裕太
「ごめん、沙友理、昨日連絡出来なくって!」

沙友理
「何故?連絡くれないの?」

裕太
「ばぁちゃんの体調悪くて、入院したんだよ」

少し安心した。

沙友理
「ごめんなさい、裕太昨日電話した?」

裕太
「ばあちゃん騒ぎで電話なんて出来ないよ!」

沙友理
「やっぱり……」

裕太
「どうしたの?」

沙友理
「何でもないよ」

これ以上裕太に心配掛けたくない。

No.47 14/10/27 21:52
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「ばあちゃんの事落ち着きそうだから、今日会おうか?」

沙友理
「嬉しい」

裕太
「沙友理…泣いてる?」

沙友理
「大丈夫だから……裕太?」

裕太
「どうした?」

沙友理
「愛してる……」

裕太
「おぅ……」

私達は仕事が終わるといつもの時間といつもの場所で待ち合わせをした。
早く裕太に会いたい。

  ★裕太の事大好き★

No.48 14/10/27 22:01
ナルシスト ( 84wJh )

少し気持ち楽になったかも知れない。
気持ちに余裕が出来たのか?
お客さんを笑顔で迎える事が出来た。
裕太の存在が私にとって大切なエネルギー源だった。

沙友理
「いらっしゃいませ!」

良く本を見に来てくれる多田さんだった。
多田さんは消防士だと言っていたので、昨日の電話の話をした。

多田さん
「そんな電話可笑しいよ」

沙友理
「多田さんだけです、信用してくれるのは!」

多田さん
「証拠も何もなければ、警察は動いてくれないよ」

沙友理
「ですよね…」

多田さん
「何かあれば僕に言って」

多田さんは自分の携帯番号をポケットからメモして、私に渡してくれた。

警察官じゃないけど、消防士なら近い存在かも?

沙友理
「ありがとうございます、助かります」

No.49 14/10/27 22:07
ナルシスト ( 84wJh )

多田さん
「この前のお勧めの本怖かったよ」

沙友理
「凄く怖い物語でしょう?」

多田さん
「でも現実的な内容じゃないから」

沙友理
「あんな話しは現実には有り得ませんよ」

多田さん
「だよね?」

多田さんの連絡先も私にはお守りだった。
ただの本好きなお客さんと店員の関係だったが、私には理解してくれる人が必要だった。

多田さん
「あの作者のファンになったから、違う内容読んで見るよ」

沙友理
「彼のコーナーがあります」

私は多田さんに作者のコーナーに誘導した。

No.50 14/10/27 22:13
ナルシスト ( 84wJh )

私は父親が心配で父親の携帯に連絡した。

沙友理
「お父さん、変わった事ない?」

父親
「大丈夫だけど…今日は珍しい事だらけだな」

沙友理
「失礼ね!あっ今日遅くなるから」

父親
「それは珍しくないかなぁ」

沙友理
「変わった事あったら、連絡してね?」

父親
「大丈夫だ!早く帰って来なさい、昨日変なん事言ってたから」

沙友理
「分かったよ」

父親も何もないみたいだし、安心した。
裕太と会える事が一番の嬉しさと楽しみだった。

No.51 14/10/28 13:17
ナルシスト ( 84wJh )

会社が終わり裕太と会う為に慌てながら着替えた。

沙友理
「お疲れ様でした」

先輩
「お疲れ様…気をつけて」

ドキッとした。
気をつけて…その言葉に。
凄く恐怖になっていた。


慌てて裕太との待ち合わせ場所に走って行った。
裕太が来てくれる事がどれだけ楽しみなのか?
自分でも不思議だった。

裕太
「沙友理!ごめん待たせて!」

沙友理
「裕太!」

私は裕太の胸に抱きつき。
沙友理
「裕太、会いたかった!裕太の事愛してる!裕太の事好きなんだもん」

裕太
「沙友理?どうしたの?」

沙友理
「裕太の事好きなんだもん」

裕太
「泣いてるの?」

No.52 14/10/28 13:23
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「裕太、お願い離れないでね」

裕太
「沙友理、どうしたの?」

沙友理
「怖いの!」

裕太は何も聞かず抱きしめてくれた。
もう2人っきりになりたかった。

裕太
「2人になろうか?」

沙友理
「うん。怖い」

私と裕太は食事もせず、ホテル街に歩いて行った。

ドアが閉まると同時に裕太に会いたかった気持ちと、恐怖感とが混じり合い、裕太の胸に抱きついた。

裕太
「会いたかったよ」

沙友理
「私だって」

2人は熱い口づけを交わした。

No.53 14/10/28 13:29
ナルシスト ( 84wJh )

裕太の唇が私の耳に伝わり、思わず声が出た。
沙友理
「あぁ…裕太…」

裕太
「沙友理…」

こんなに自分が燃えるなんて産まれて初めての経験だった。

沙友理
「好きなの…愛してるの…」

裕太の手は私の顔全体を包み込んでくれた。
安心出来た。

裕太
「沙友理……」

沙友理
「裕太…気持ちいいわ~」

裕太は私の身体を愛撫し始めた。

沙友理
「あぁぁ……うぅん…」

熱い物が私の身体に入ってくる。

沙友理
「あぁぁ………」

裕太は必死に腰を降り出した。

No.54 14/10/28 13:36
ナルシスト ( 84wJh )

裕太とは何回も営みは経験してるが、今日は最高の気分である。

沙友理
「裕太! 凄く…気持ちいい…わ!」

裕太
「はぁ…はぁ…沙友理は…最高…」

沙友理
「もっと激しく…して…」

裕太
「はぁ…あぁ……駄目だ…で…で…出ちゃう…」

沙友理
「やだ……まだ…いかないで…」

裕太の腰は凄い勢いで私の身体を突きまくった。

裕太
「気持ち…いいよ…はぁ…はぁ…」

沙友理
「もっと…突いて…」

No.55 14/10/28 13:43
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「沙友理…体位変えようか?」

沙友理
「うん」

裕太
「沙友理、後ろ向いて…」

私は裕太に背中を向け、裕太は私の身体に、入って来た。

沙友理
「はぁー……うん………」

裕太
「沙友理…はぁ…気持ちいいか?」

沙友理
「ダメ…壊れそう……ダメだよ……」

裕太
「よし……うぅ…壊して…や…る…」

私はシーツをわしづかみし、壊れそうな身体を、必死でこらえてた。

沙友理
「裕太…まだ…いかないで……」

裕太
「いき…そう…だ…」

No.56 14/10/28 13:55
ナルシスト ( 84wJh )


「ただいまー」

母親
「ふみちゃん…最近お盛んね…デート?」


「まぁね~」

母親
「何食べて来たの?」


「イタリアンかなぁ?」

母親は娘に彼氏が出来たと勘違いしている。
麺は麺でも、スパゲティじゃないんだよ!
食券のたぬきそばなんだから!
夢を壊しちゃーお終いさ!

部屋に寂しい気持ちで入った。
わたしゃー今からタロットの勉強すんだよ!

私の老後はタロット占いで生計立てるんだよ!
明かりを点けたら、タロット占いの解読書が、おかえりーふみちゃんと待っていてくれた。

寂しいねー!
ちくしょー!

No.57 14/10/28 14:39
ナルシスト ( 84wJh )

スレ間違いです。
引き続きサプライズお楽しみ下さい。
………★お詫び★………

No.58 14/10/28 14:50
ナルシスト ( 84wJh )

   ↑↑↑
 迷惑なレスでした。

2人は汗だくになりながら、愛情を確認した。

裕太
「顔見せてくるよ!」

沙友理
「うん…裕太 愛してる」

裕太は沙友理の顔を見ながら、思いっきり腰を振り、終わってしまった。

裕太
「ふぅ~沙友理、風呂入るわ」

少し寂しかった、少しはベットで裕太の腕枕で、話したかった。

裕太に沢山話を聞いて貰いたかった。
裕太は先にお風呂に入った。
メールが送信されたのか?
裕太の携帯はテーブルの上で光ってた。

気になっていた。
誰なのか?
裕太はそんな様子すら気にする事なく私を呼んだ!

裕太
「沙友理も一緒に入らないか?」

沙友理
「今行くね!!」

レインボーに輝く裕太の携帯。

No.59 14/10/28 14:55
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「こっち向いて…沙友理綺麗だ!」

沙友理
「裕太?本当に昨日電話してない?」

裕太
「沙友理のメールも返信出来なかったぐらいだぞ!」

沙友理
「そうよね~」

裕太
「お前気にし過ぎなんじゃないか?」

さっきの2人の行為が嘘かのごとく、現実の2人に変わっていた。

裕太はそんな事考えてくれる様子でもなかった。

No.60 14/10/28 15:03
ナルシスト ( 84wJh )

お風呂から出てから、虚しくなる。
お互いに服に着替え、会計チェックをする。
新鮮な気持ちはベットの中だけ。

裕太
「家まで送ろうか?」

沙友理
「おばあさん大変なんだから、私は大丈夫だよ」

裕太
「ごめんな」

沙友理
「また連絡するね」

裕太
「俺もするよ」

私達は別々に帰って行った。
裕太と食事をする事もなく、父親が待つ家に帰った。


玄関のドアに紙袋が下げてあった。

メッセージカード
   ★沙友理★
 楽しかったかい?
  君を抱きたいよ!

凍りついた!
やっぱり誰かが居るんだ!

No.61 14/10/28 20:52
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は恐る恐るその紙袋を捨て家に逃げたかった。
父親がまだ帰宅していない家。
沙友理は恐怖感が増していた。
慌てながら鍵を探すが、恐怖のあまり鍵が見当たらない。

「誰だ!」

その声にドキッとした沙友理。
沙友理
「お父さん……」

父親
「沙友理なのか?」

沙友理
「怖い……」

父親
「どうした?」

沙友理
「………紙袋……………」

父親
「悪質ないたずらだ!」

メッセージカードを破ろうとした父親に。

沙友理
「ダメ……!!」

父親
「いたずらなんだぞ!」

沙友理
「警察の証拠にするから……」

父親は沙友理にメッセージカードを渡した。
ガクガク震える沙友理に、父親は沙友理を抱きしめた。

No.62 14/10/28 21:00
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「大丈夫か?」

沙友理
「お父さん…やっぱり変だよ!」

父親
「落ち着いて早く家に入るぞ!」

沙友理は父親に寄り添いながら明かりを付けてくれた家に入った。

父親
「沙友理…さぁ…」

沙友理
「うん」

父親は家の周りを見に行ってくれたが、何もなかったと帰って来た。

サプライズなんて言葉は今は驚かすプレゼントみたいな風習になっているが、サプライズの意味は、驚き、不意打ち、と言う意味である。

彼はサプライズが好き!
沙友理の彼氏裕太の事など言っていない、ただどの彼なのか?

沙友理の周りに住んで居るのは、彼氏裕太なのか?
サプライズが好きな男性だけは変わりない!

No.63 14/10/28 22:22
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「間違いないでしょう!」

父親
「悪質すぎるなぁ?」

沙友理
「昨日の電話信じてくれる?」

父親
「あぁ……沙友理?」

沙友理
「なに?」

父親
「心当たりはないのか?」

沙友理
「知らないわ…って言うか誰なの?」

父親
「様子を見よう……」

父親も私もそれしかなかった。
誰なの?

No.64 14/10/28 22:28
ナルシスト ( 84wJh )

さっき別れたはずなのに、裕太に会いたくなった。
早く父親と会い裕太と結婚したかった。
私は部屋に入り、裕太にメールした。

…………★裕太へ★………
 裕太?
 沙友理です。
また怖い事がおきたの!
 お願い連絡して!
私怖くて眠れないよ!
 裕太愛してる。

………★送信★………

裕太からの連絡を待っていた。
お風呂に入る時も、ずーっと待っていた。


裕太からのメールも電話も来なかった。
私達、もう駄目なの?
私を抱いた意味は愛されてないの?

No.65 14/10/28 22:33
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「沙友理…大丈夫か?」

裕太の連絡を待っていたが、裕太は昨日も連絡をくれなかった。

沙友理
「お父さん…ごめんなさい」

父親
「沙友理が謝る事じゃないよ」

沙友理
「ありがとう」

父親
「今付き合っている男性は知ってるのか?」

沙友理
「話したよ…軽く流された…」

父親
「一度連れて来なさい」

その言葉の瞬間何故か?
無理な事なのか……感じてた。

No.66 14/10/29 13:11
ナルシスト ( 84wJh )

最近の裕太は何か変だと思ってた。
でも自分からは聞けなかった、聞けば別れる事になるかも知れない。

昨日の2人のラブホで愛を確認した筈だったのに。
裕太は何故?
連絡くれなくなったのか?

私は慌てながら会社に出掛けた。

先輩
「沙友理さん、おはよう」

沙友理
「おはようございます」

この先輩は私より3歳年上の男性社員。
口数も少なく、仕事は信頼している。

沙友理
「昨日…また変なん事があり…」

先輩
「無言電話の事?」

沙友理
「昨日は…メッセージカードなんです」

先輩
「怖いねー気をつけて」

やはり誰も親身になってくれそうにない。

エプロンの下のズボンに、バイブが震えた。

    裕太だ!


「裕太?」

裕太
「ごめんな!連絡出来ずに、すまん」


「裕太…今日…会えない…?」

分かった。
裕太は迷ってたんだよね?
後の言葉が怖かった。

No.67 14/10/29 13:43
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「ちょうど俺も沙友理に話したい事あったんだよ」

沙友理
「そう……」

とうとう裕太から別れ話しが来たかと覚悟していた。

裕太
「じゃあ…いつもの場所で、な!」

沙友理
「うん、後でね」

これがサプライのプロポーズならどれだけ嬉しい事だったか。
既にそのサプライなどない事くらい分かってた。

先輩
「沙友理さん、本出すの手伝ってくれる?」

沙友理
「はぁーい」

仕事場に戻った。
まだ本屋の仕事は融通が利く。
これが内勤の勤務なら、裕太との会話も出来ない。
裕太からの別れの言葉を吐かれたら、私はどうすれば良いのか?

No.68 14/10/29 14:00
ナルシスト ( 84wJh )

先輩
「沙友理さん、悪いけど、この本上げるから、脚立しっかり持っていてくれる?」

沙友理
「はぁーい」

先輩
「ごめんね、しっかり支えてくれるかなぁ」

沙友理
「先輩、すいません、大丈夫ですか?」

先輩
「もう少しだけ我慢してね」

「お似合いのお二人さんだね」

と声を掛けて来たのが、白髪の男性で、元大学の先生の井上さんだった。

井上さん
「若いっていいね?」

沙友理
「井上さん、お久しぶりです」

井上さん
「今市さんお久しぶりです、わしが楽しめる本出た?」

沙友理
「井上さんは文系の本がお好きだから、レベル高いんですよね~」

井上さん
「レベル高いのか?」

沙友理
「中々井上さんのレベルの本は発掘出来ていません」

井上さん
「今市さん、嬉しい事言ってくれるね?」

先輩、井上さん、そして私、和やかに過ごした。

No.69 14/10/29 14:08
ナルシスト ( 84wJh )

夕方になると高校生の女子がファッション雑誌を立ち読み。
サラリーマンやOLなど沢山の本好きが集まり出してくる。

夕方は必ずと言っていい程、小さな子供連れの主婦が集まる。
今は毎年変わるヒーローやキャラクターで子供達の気持ちを注いでいる。

先輩
「沙友理さん、顔色良くないよ?」

沙友理
「大丈夫です」

裕太の話を聞く事も怖かった。
夜になると裕太より怖いサプライズが怖かった。

現実を受け止めるしかない。
沢山の子供達がキャラクターに必死に語り合ってる。

近年活字離れだと囁かれているが、まだまだ本好きな人は多い。

No.70 14/10/29 14:19
ナルシスト ( 84wJh )

夕方になれば、私は時計が気になる。
裕太との待ち合わせは、後2時間立った。

本を買って下さった方に、カバーを付けたり、会計をしたり、文具用品もあるので、たまに小学生が、友達のプレゼントなのか?

ラッピングをお願いされる。
色んな本がある様に、時間帯などでお客さんの、顔や特徴も変わる。

だいたい常連のお客さんの名前は分かる。
本がきっかけで、本の話が尽きない人もいる。

気取らない本屋さんの仕事は、私に合っているのかも知れない。

沙友理
「いらっしゃいませ」

ようこそ本の世界に起こし頂きました。
内心では、そんな気持ちなんですよ。

No.71 14/10/29 19:36
ナルシスト ( 84wJh )

待ち合わせ時間が近付くにつれて、1分が長く感じる。
私自身も落ち着きがなくなり、1人そわそわしてた。

先輩
「沙友理さんはデートかなぁ?」


「はい、裕太と待ち合わせなんです」

先輩
「時計の針が早くなる方法の本があればうれしいよね」

本当にその通りだ!
裕太に話したい事もあるし、今後の私達の事も、裕太の話も早く聞きたい。

焦れば空回りする事はよくある。
失敗して残業なんて絶対に嫌だから!

No.72 14/10/29 19:42
ナルシスト ( 84wJh )

後1分30秒。
長いよ………!

先輩
「今日だけ、おまけだ!」

沙友理
「ありがとうございます」

先輩
「頑張れよ!」

沙友理
「はぁーい」

私は慌てて服を着替えて、裕太との待ち合わせ場所に向かった。

沙友理
「裕太?少し早く着くから」

裕太
「俺も時間空いたから、すぐ行くよ」

2人の事を邪魔する者はない。
私は必死で走った。
裕太の待っている、あの場所に。

No.73 14/10/29 19:47
ナルシスト ( 84wJh )

人込みかき分けて走った。

沙友理
「ちょっとすいません」

沙友理
「すいません」

裕太はあの場所で待っていてくれた。

沙友理
「裕太!」


裕太
「沙友理」



沙友理
「裕太!会いたかった!」
裕太の顔にうずくまり。

裕太
「沙友理!」

お互いに抱きしめ合った。

信号機が変わる音楽が微かに聞こえていた。

No.74 14/10/29 19:54
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「裕太に会いたかった、裕太の事が好き、離れたくない、ねぇ駄目?」

裕太
「ありがとう、沙友理」

私は裕太を愛する気持ちと、あの恐怖が混じり合い、普通ではなかった。

裕太
「食事にする?2人になる?」

沙友理
「食事なんて要らない、2人になりたい」

裕太
「行こうか?」

沙友理
「うん」

裕太となら毎日でもいい。
結婚すれば当たり前の事なんだから。
私は裕太の腕をぎゅっと握りしめた。

そして私達はホテル街に入って行った。

No.75 14/10/29 20:01
ナルシスト ( 84wJh )

ドアが空くなり、裕太にキスをした。
裕太も私に熱いキスを交わしてくれた。

沙友理
「裕太、愛してる!」

裕太
「沙友理」

裕太は思いっきり私をベットに押し倒し、強姦でもする勢いで、私の服を脱がせた。

沙友理
「裕太、裕太、愛してるの」

裕太
「沙友理、沙友理、沙友理」

沙友理
「裕太、早く来て…」

裕太
「沙友理、入るぞ……うっ」

沙友理
「あぁ、あぁ、あぁ、………」

裕太の腰はピストンの様に振りまくっていた。

沙友理
「裕太……あいしてる…はぁ」

裕太
「気持ちいいよ~~」

沙友理
「あぁ……」

裕太
「い-き-そ-う-……沙友理イク……あぁ……」

No.76 14/10/29 21:52
ナルシスト ( 84wJh )

裕太の身体の力が抜けたのか?
裕太は私の身体に全体重を乗せて来た。

沙友理
「裕太!重いよ!」

裕太
「ふぅ~ごめん」

沙友理
「裕太の話って何?」

今言わないと、今聞かないと。

裕太
「俺、転勤かも?」

沙友理
「転勤?」

裕太
「まだ指令は出てないけど…」

沙友理
「そうなんだ……」

意外な答えに驚いた。

裕太
「沙友理は?」

沙友理
「裕太…結婚しない?」

裕太は少し困った顔をした事は見逃さなかった。

裕太
「結婚ねぇ~」

沙友理
「お父さんが合わせろって」

裕太
「時間くれないか?」

沙友理
「そうだね……転勤の事もあるし…おばちゃんの事もね」

沙友理は感じてた、深い付き合いなら、男性側から話す事だと。
裕太の全てが軽い人間に見えてきた。

No.77 14/10/29 23:22
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「沙友理の話は結婚の事だけ?」

沙友理
「あのさぁ…このカード見て」

裕太
「何なんだよ!キモイぞ!」

沙友理
「裕太?私達、終わりなの?」

裕太
「だから、時間くれって」

沙友理
「何なの?時間って…2人に時間が必要な訳?」

裕太は黙ってしまった。

沙友理
「ごめん」

裕太
「嫌………」

沙友理
「裕太を責めているんじゃないの?何故時間が必要なのか?意味分からない」

裕太
「ごめん」

私達は初めて喧嘩した、お互いに今日会った、熱烈な気持ちは一気に冷めていた。

No.78 14/10/29 23:30
ナルシスト ( 84wJh )

今日も虚しかった。
お互いにシャワーを浴び、ホテルから出た。
不倫でもしてるカップルみたいな虚しさ。

沙友理
「じゃあ」

裕太
「大丈夫か?」

沙友理
「大丈夫じゃなかったら?裕太守ってくれるの?」

裕太
「………」

沙友理
「帰ります」

私は裕太がどんな顔で私を見守っているかなんて振り向きもしなかった。

私の目は涙で全く見えない状況だった。
何故?
こんなに大好きなのに……
こんなに愛しているのに…
裕太が全て1番なのに…

私だけなの?
裕太をあいしてるのに…

裕太は私の事…
あいしてないの?
遊びでのサプライズだったの?

涙が止まらない。

No.79 14/10/29 23:38
ナルシスト ( 84wJh )

電車に揺られ駅に付き、お父さんが家にいるか、確認だけした。
今日は早く帰って来ていた。

私はうつむきながら坂を上っていた。
あっ?

人が後ろに歩いている…
同じ歩幅で…
少しだけ急いだ…
後ろの人も同じように……

怖い…
振り向けない…
誰なの…

私はダッシュした…
息が切れるくらい…

後ろを振り向いた…





誰も居なかった。 
家には明かりが付いていた。
ほっと
玄関を開けようとしたら。

箱にリボンが掛かったプレゼント。
怖かった。


「お父さん!お父さん!」

No.80 14/10/29 23:49
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「沙友理、お帰り」

沙友理
「お父さん…この箱…」

お父さんはそのリボンが掛かった箱を家に入れた。

沙友理
「何なのその箱……」

父親
「メッセージが書いてあるぞ」

……※笑えないピエロ※……

父親
「何だ!」

沙友理
「笑えないピエロ?」

父親
「開けるぞ!」

沙友理
「お願い…怖い」

箱の中から木製のピエロの人形が入ってあった。
よく見れば、真っ赤な鼻のピエロで、洋服は布で着せられ、ピエロの目は涙が沢山こぼれてた。

父親
「誰だ、こんな悪質なイタズラをする奴は!」

笑えないピエロ?
私の事なの?

偶然でも裕太と初めて喧嘩して、何時間もたたないのに、笑えないピエロなの?

誰が何の為に、何が目的なのか?

No.81 14/10/30 18:06
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「ねっ、だから言ったでしょう…」
沙友理はかなり怯えていた。
当然の事だろう。
見えない何かに見張られている気持ちは。

父親
「悪質だが、証拠がない…」
父親も同様、どうすれば良いのか?
分からない筈だ。

沙友理
「明日警察に言って来る、このカードと人気を持って…」

父親
「お父さんもついて行こうか?」

沙友理はカレンダーを見た。
沙友理
「私もお父さんも休みなんだね?」

父親
「だから行こうかと言ってるんだ」

沙友理
「明日お願いします」

沙友理は今日裕太と会い裕太に時間が欲しいと言われた事すら忘れていた。

2人を急に襲った出来事。
メッセージカードの主はサプライズだと楽しんでいるのか?

沙友理をあざ笑うかのごとく書かれたヒントなのであろうか?

No.82 14/10/30 18:21
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「沙友理、今考えても仕方ない、食事の支度してくれ」

沙友理
「はい」

沙友理は父親の大好きな、高野豆腐を炊き、焼き魚を焼いていた。

もう時計の針は午後10時は過ぎていた。
沙友理の家の時計は、ジャストになれば、ボーンと音が鳴る。

沙友理
「お父さん…その時計の針…鳴らないようにして欲しいの」

父親
「怖いか?」

父親は椅子に上がり、沙友理の食事の支度に、針が鳴らないようにセットした。

父親
「母さんが亡くなって以来だなぁ、この時計に触るのは」

沙友理
「何故かお母さんの思い出が1つ消えたみたい」

亡くなった沙友理の母親はこの時計の針を合図に食事の支度をしていたらしい。

鳴らなく鳴った時計は、家族が見ないと、合図すら出来なくなった。

No.83 14/10/30 18:28
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「お父さん、ご飯出来たよ」

父親
「あぁ、ありがとう」

二人
「頂きます」

沙友理
「お父さん、ごめんね」

父親
「何が?」

沙友理
「心配かけちゃって」

父親
「あの人形どうする?」

沙友理「………気持ち悪いから…押し入れに突っ込んでおくわ」

父親
「しかし、得体の知らない事などなるんだなぁ」

奇妙な人形のお陰で、親子の会話が成立するなんて馬鹿げていた。

No.84 14/10/30 18:35
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「久しぶりだね」

父親
「本当だ、沙友理と話す事もなかったな」

沙友理
「ここに、お母さんが居れば、もっと楽しかったね」

父親
「母さんの仏像にお供えして置いてくれ、母さんがこの沙友理の手料理を見たら腰抜かすぞ」

沙友理
「全部お母さんに頼っていたから」

父親
「お前も料理くらい出来たんだ」

沙友理が次のセリフを吐こうとしたら、家の電話が鳴りだした。

沙友理
「お父さん……」

父親
「うん……分かってる」

沙友理
「先に電話に出るから……」

父親
「よし、分かった」

何度も何度も、出るまで鳴り続ける電話機。

沙友理
「もしもし…………」

No.85 14/10/30 18:36
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「お父さん、ご飯出来たよ」

父親
「あぁ、ありがとう」

二人
「頂きます」

沙友理
「お父さん、ごめんね」

父親
「何が?」

沙友理
「心配かけちゃって」

父親
「あの人形どうする?」

沙友理「………気持ち悪いから…押し入れに突っ込んでおくわ」

父親
「しかし、得体の知らない事などなるんだなぁ」

奇妙な人形のお陰で、親子の会話が成立するなんて馬鹿げていた。

No.86 14/10/30 18:51
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「もしもし…………」

「♪♪♪♪♪♪♪♪」

沙友理
「あの……………」

「♪♪♪♪♪♪」

赤とんぼのオルゴールが聞こえた。

父親
「君!誰なんだ!」

父親が変わるとすぐサプライズは切れた。

沙友理
「お父さん…赤とんぼだった」

父親
「赤とんぼ?」

沙友理
「あれは確かに赤とんぼのオルゴール」

父親
「オルゴールを受話器に当てているのか?」

沙友理
「しかない…怖い…」

父親
「それも明日警察に言おう」

沙友理
「お父さん」

父親
「大丈夫だ、沙友理には、父さん、母さんが付いているから」

今の沙友理にはお父さん1人が唯一の心許せる存在だった。

あのオルゴールの主は笑っているのかも知れない。

No.87 14/10/30 19:08
ナルシスト ( 84wJh )

一部不快なレス申し訳けありません。
引き続き サプライズ お楽しみ下さい。

   ★ナルシスト★

No.88 14/10/30 20:59
ナルシスト ( 84wJh )

凄く怖かった。
ただの悪戯ではなかった。
音に敏感に反応してしまってた。
父親
「沙友理大丈夫だ!」

沙友理
「お父さん、私誰かに恨まれてるわ」

父親
「沙友理はそんな娘じゃない」

沙友理
「怖い…」

父親
「誰なんだ!何の為にするんだ」

沙友理
「お父さん、今日お父さんの横で寝ていい?」

父親
「いいよ、沙友理がそうしたいなら」

沙友理
「ありがとう」

この親子に微笑む存在は誰なのか?

No.89 14/10/30 23:20
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「お父さんと布団並べて寝るなんて何年ぶりかなぁ?」

父親
「何十年ぶりだろう」

沙友理
「お父さんとお母さんは良く布団の中で話してたの?」

一瞬お父さんは言葉が止まった。

父親
「母さんがこんなに早く逝っちゃうと分かっていたら、前の仕事もっと早く辞めていたよ」

沙友理
「だよね、お父さん単身赴任が長かったから」

父親
「お前と母さんを無理矢理でも連れて行ってたよ」

沙友理
「そうだね」

父親
「母さんはいつも沙友理の鞄や体操服のゼッケン付けてた、あまり2人で話した記憶がないよ」

とても後悔してるお父さんの話し。

沙友理
「お父さんは私がお嫁に行くと寂しい?」

父親
「…………」

沙友理
「お父さん、お母さんが居なくなって、寂しい?」

沙友理
「お父さん?」

お父さんからの返事はなかった。
眠ったふりをしているのだろう。

私はそこからお父さんに質問しなかった。
おやすみなさい。

No.90 14/10/30 23:28
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「沙友理、起きれるか?」

沙友理
「お父さん、おはよう」

父親
「大丈夫か?起きれるか?」

沙友理
「お父さんは年寄りだから早起きなの?」

父親
「規則正しいだけだ!」

沙友理
「すぐご飯用意するね」

父親
「じゃあお父さんは布団しまっておくから」

沙友理
「今日も明日もお父さんと寝ちゃ駄目?」

父親
「いつまで沙友理と布団並べられるかなぁ?」

沙友理
「寂しい事言わないで、私はお父さんを連れて、お嫁に行くから」

父親
「嬉しいよ、沙友理の気持ちが」

私達はお互いに分担しながら、警察に行く準備をしていた。

No.91 14/10/31 15:19
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「お父さん、車で行くの?」

父親
「車で待ってるから、忘れるなよ」

あの気持ち悪い人形とメッセージカードを確認した。

沙友理
「お待たせ」

父親
「行こうか?」

沙友理
「安全運転してね」

父親
「警察はどう対応してくれるだろうな」

沙友理
「まずは被害届きを出すわ」

父親
「無言電話とオルゴールは証拠にならんな」

沙友理
「まずは人形とメッセージカードを見せて話するしかないね」

父親
「そうだなぁ」

親子でも娘と父親なんて、話す事すらなくて、お父さんと笑う会話などなかった。

この事件がキッカケで少しだけ会話が出来た。
母親が居ればどれだけ、話のネタ合っただろう?
お母さんが居れば、お父さん、まだ単身赴任してただろう。

No.92 14/10/31 17:56
ナルシスト ( 84wJh )

私達は近くの警察署に向かった。

警察
「今日はどの様な要件ですか?」

沙友理
「被害届け出しに来ました」

父親
「実は最近娘に嫌がらせで、このメッセージカードとこの人形なんです」

警察官はそのメッセージカードとピエロの人形を見ていた。

父親
「なんせ女の子なので心配なんです」

警察官
「このカードや人形だけでは、ストーカーとは断言出来ませんね!」

沙友理
「何故なんですか?」

父親
「娘宛ての奇妙なこれが、ストーカーだと言えない?証拠もあるんたぞ!」

警察官
「例えば、殺意の内容や、殺すとは書いていません、ただの悪戯範囲内ですね」

沙友理
「被害届も無理なんですか?」

警察官
「相手が特定出来ているなら、注意は出来ますが」

父親
「もし、娘に何かあったら、警察は責任取れるのか?」

警察官
「市民を守る義務はあります、しかしまだ脅迫までいかないのでね、困りましたね」

父親
「娘に少しでも何か起きたら、警察に責任取って貰うからな!覚えおけ!」

警察官
「お父さんが娘の心配をされる気持ちは良く分かりますが、今の発言は脅迫まがいな言葉ですよ」

沙友理
「お父さんあります、もう行こう」

父親のあの怒った言葉を聞くのは初めてだった。
それだけ私は大切にしてもらってる実感をした。

No.93 14/10/31 18:04
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「何が市民を守る警察官だ!」

沙友理
「てっきり被害届けを出して夜中のパトロールくらいして欲しかった」

父親
「これから駅まで迎えに行ってあげるから」

沙友理
「大丈夫だよ、いつ帰るか、分からない私に、つき合わせられないよ」

父親
「沙友理に何かあれば、母さんに合わす顔もないよ」

沙友理
「大袈裟ね」

父親
「父さん1人にしないでくれ……寂しいよ」

沙友理
「お父さん……」

そのお父さんの、1人にしないでくれ、の言葉が胸を熱くした。

No.94 14/10/31 18:12
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「警察は残念だったけど、お父さんとお昼食べて、久々に親子デート、悪くないよね?」

父親
「沙友理は子供だなぁ!よし昼ご飯食べに行くか」

沙友理
「お父さんのおごりで、お寿司だね」

父親
「廻る寿司か?」

沙友理
「スポンサーが居るのに、廻るお寿司は嫌だ!」

父親
「はい、はい」

何十年ぶりで外食するのかなぁ。
お父さんと。
お父さんは私が腕を組と凄く恥ずかしがる。
何なんだろう?
娘との腕組み、嬉しくないのかなぁ?

No.95 14/10/31 18:31
ナルシスト ( 84wJh )

お父さんとショッピングモールで食事して、洋服を買って貰ったけど、店内には絶対入って来ない。
沙友理
「これ似合う?」

父親
「派手じゃないか?」

沙友理
「ジャーン、これは?」

父親
「胸元が空きすぎてる」

結局お父さんのオーケイが出たのは、ありきたりの、お嬢様の洋服だった。

父親
「お父さん、沙友理の好み分からないから、お小遣いで我慢してくれ」

お父さんは私に2万円を手渡した。

2人夕食の買い物をして車で家に帰った。

沙友理
「お父さん…玄関に何か……あるよ」

父親
「沙友理は車の中で待って居なさい」

お父さんは玄関のドアの下に置いてある紙袋の中を確認していた。

沙友理
「何なの?」

父親
「カードと人形だよ」

また何だ!
誰がそんな悪戯するの?
カードの内容は……

No.96 14/10/31 19:59
ナルシスト ( 84wJh )

…★笑えないピエロ★…

  信じる者は
 
  救われない

No.97 14/10/31 20:10
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「どういう事なの?」

父親
「沙友理、またあの人形だぞ!」

沙友理
「信じる者は救われない?」

意味が分からない、何を信じては行けないって事?
何を信じ、何を信じては行けないの?

父親
「沙友理、気にするな!家に入るぞ」

沙友理
「やっぱり狙われてるの?私」

父親
「沙友理、入りなさい!」

あの気持ち悪いピエロの人形。
あれ?

沙友理
「ピエロの人形の洋服が違うよ」

と沙友理が言うと父親はその人形を見た。

沙友理
「違うでしょう?」

父親
「違うなぁ」

2体の人形を並べて見たら、男性と女性のピエロになっていた。

沙友理
「この人形にも意味あるのかしら?」

父親
「そんな薄気味悪い人形に意味などない」

お父さんは度重なる不気味な現状に怒っていた。

父親
「その薄気味悪い人形をすぐに捨てなさい!」

お父さんが怒鳴るなんて初めてだった。

No.98 14/10/31 21:01
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「こんな悪戯に纏わされるな!!」

お父さんはメッセージカードを破り、人形を足で踏み、笑えないピエロは、粉々になってしまった。

沙友理
「お父さん…」

父親
「お母さんが残してくれた、大切な娘まで、こいつは壊すつもりなのか!」

と言いながら、お父さんは私を、守ってくれた。
お父さん…ごめんね。
辛い思いさせちゃって、ごめんね。

父親
「さぁ沙友理、先お風呂に入りなさい」

沙友理
「お父さんごめんね」

父親
「早く入りなさい」

お父さんはお母さんの仏壇の前に座ってた。
お父さんの顔は背中向けていたので、私はお父さんの顔が見えなかった。

No.99 14/10/31 21:38
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「沙友理大丈夫か?」

沙友理
「ありがとう、あっすぐ支度するね」

父親
「ゆっくりでいいよ」

お風呂に浸かりながら、信じる者は救われない。
何なのか?
信じる?
裕太?

まさか裕太は時間が欲しいと言ってただけ。
転勤になるのかなぁ?
転勤になれば、先にお父さんに、会わせる方がいいよね?

転勤してからの結婚式だって出来るし。
籍だけ先に入れちゃえば良いこと。
裕太との喧嘩少し後悔してる。

お風呂に上がったら、裕太にごめんね、のメールしよう!

沙友理
「お父さん、上がるから、入ってね!」

No.100 14/10/31 21:51
ナルシスト ( 84wJh )

私は部屋着に着替えて、メールを開けようとした。
受信メール1件。
誰だろう。

えっ!
笑えないピエロ

私の携帯にも来ていた。

……★笑えないピエロ★……

 信じる者は救われない。
 最後に傷つくのはお前だ!


私はそのメール主に返信した。

………☆笑えないピエロさん☆……

あなたは誰ですか?
荷物もカードもあなたなんですか?
悪質な行為なら警察に通報します。

………☆送信☆…………

すぐ私のメールを待つかのごとくメールが来た。

………★笑えないピエロさん★……

  警察に通報しても無理です。

   必ず後悔しますよ。

……涙が良く似合います……


何なのよ!
このメールを保存した。

お父さんはこれでもかなり参っている。
これ以上心配掛けたくない。

裕太にメールをした。
…………●沙友理です●………

裕太忙しいと思うけど、連絡待っています。
今日じゃなくてもいつでもいいから、時間を下さい。
大切なお話があります。
では仕事頑張ってね。

   沙友理

………●送信●…………

No.101 14/11/01 11:24
ナルシスト ( 84wJh )

再度笑えないピエロに送信した。

  何が目的なんですか?   
  何故私が最後に泣くのですか?

………☆送信…………

すぐに返事が来た。

……………笑えないピエロさん…………

  最後のメッセージ

    サプライズ

…………☆返信☆………

何なのまだメッセージカードが来るって事?
私は再度メールをした。
すると エラー になっていた。

サプライズ、サプライズって喜ばせる意味だと思っていた。
私と関連ある人で私にこんな細かい個人情報を知っているのは、裕太しか想像出来なかった。

裕太が私に悪戯するなんて有り得ない。
連絡すらして来ない裕太に、また何の為にそんな悪戯するメリットも無いはず。


     一体誰なの?

No.102 14/11/01 13:29
ナルシスト ( 84wJh )

お父さんにはこの事だけは言えない。
お母さんを亡くしてからお父さんは私が居なくならないか?
凄く気にしている事すら良く分かる。

沙友理
「お父さん、今日は出来合いで済ませてもいい?」

父親
「単身赴任で慣れてるから、思い出すよ単身赴任を」

お父さんの顔は後悔していたかの様に曇っていた。

父親
「電話番号…変えようか?」

沙友理
「どうして?」

父親
「覚悟したよ、変えよう」

沙友理
「駄目だよ…またお母さんとの思い出無くすの?」

父親
「母さんは分かってくれるよ」

沙友理
「嫌だ!これ以上相手の思うツボにはまるの?」

父親
「もう過去を清算する為にもだよ」

沙友理
「無理だよ…お母さんの思い出を消すなんて、もし、お母さんが電話したくても、出来ないんだよ」

父親
「過去より、父さんは今の沙友理が心配なんだよ」

沙友理
「嫌だ…時間下さい…」

父親
「うん……」

お父さんの口から初めて聞いた、過去の清算。
あの男は私達親子に恨みを持って居るのか?

No.103 14/11/01 13:37
ナルシスト ( 84wJh )

冷めたお惣菜をレンジで温め私達親子は無言で食事をしていた。

恐怖に怯えながら、いつ電話の音が鳴るか分からない隣りの部屋で。

沙友理
「お父さん、お布団引いておくらか、早くお風呂入ってね」

父親
「ありがとう」

私は電話の受話器を外した、今晩はあの恐怖から逃れられる。

反対に良く眠れる安心感すら湧いていた。

父親
「気持ち良かったよ」

沙友理
「お父さん、後ろの髪の毛まだ、濡れてるよ、タオル貸して」

父親
「後ろに目がないから、分からないよ」

何だかお父さんが小さく見えた。
私は裕太と結婚しても、お父さんは私が引き取ろうと思ってた。

父親
「沙友理、くすぐったい、やめてくれ」

No.104 14/11/01 14:12
ナルシスト ( 84wJh )

お母さんが私を起こしてくれた、食事の支度をしてくれた、合図の時計は鳴らない。

私達親子が必要としていた時計の役目はおわったのか?

今は腕時計で確認するようになってしまった。
固定電話も携帯のお陰で必要なくなって来ている。
お母さんの思い出は時間と共に薄れてくるのか?

父親
「沙友理、今日会社に行くのか?」

沙友理
「うん」

父親
「大丈夫か?」

沙友理
「平気よ」

全く平気ではなかった。
お父さんが心配するから、何よりもそれが心配だった。

沙友理
「お父さん、今日は早く出かけるね、戸締まりと火のチェックお願いね」

父親
「何かあればすぐ連絡しなさい」

沙友理
「ありがとう、行って来ます」

私はある場所に行きたかった。

No.105 14/11/01 14:23
ナルシスト ( 84wJh )

電車に乗り連絡が来ない裕太の会社に向かった。
続々と入って行く社員さん。

受け付け
「いらっしゃいませ」

沙友理
「今市沙友理と言います」

受け付け
「今市沙友理様ですね」

沙友理
「小池裕太さんおられますか?」

受け付けの人は部署帳を見ていた。

受け付け
「本日は直接に現場に行ってますね?」

沙友理
「人事異動はこの時期ですか?」

受け付け
「うちは少し時期が違って……何か?」

沙友理
「小池さんは転勤ですか?」

受け付け
「それは…教え出来ません」

沙友理
「もう1人の受け付けさんは?」

受け付け
「寿退社なんですよ」

沙友理
「ありがとうございました」

私は裕太が来るのを待っていたが、現場なら会えないだろう。

会社から離れて、裕太にメールした。

………………………・・…………

おはよう裕太!
今日現場なんだってね!
あの…連絡欲しいの。
話したい事があってね?
待っています。

沙友理

   送信

No.106 14/11/01 15:55
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理はそのメールを送り会社に向かった。

沙友理
「おはようございます」

先輩
「おはよう」

沙友理
「あの…先輩は何人兄弟ですか?」

先輩
「妹が居るんだよ」

沙友理
「私一人っ子だから羨ましいです」

先輩
「沙友理ちゃんの兄貴みたいなもんだよ」

沙友理
「ありがとうございます」

先輩
「今日は体調大丈夫なの?この間顔色悪かっから」

沙友理
「大丈夫です」

「こんにちは」

沙友理
「多田さん、お久しぶりです」

多田さん
「今市さんのお勧めの本怖すぎるね」

沙友理
「夜は見ない方がいいですよ」

多田さん
「夜勤に見てるんだよ」

沙友理
「多田さんに聞きたい事あるんですが」

沙友理
「先輩すいません、休み時間今使っていいですか?」

先輩
「暇だからいいよ」

私は多田さんに聞いておきたい事があった。

No.107 14/11/01 18:24
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「多田さん、すいません」

多田さん
「どうしたの?あれからなんかあった?」

沙友理
「メッセージカードや、ピエロの人形と不審な電話など」

多田さん
「警察は?」

沙友理
「相談に行きました」

多田さん
「何て言ってました?」

沙友理
「脅迫でもないからと、取り合ってくれませんでした。」

多田さん
「僕は消防なので、警察とは全く違いので」

沙友理
「そうなんですか?」

多田さん
「消防隊員と救急車は同じ部署ですが、消防隊員は救急隊とも又違ってるんです」

沙友理
「警察と一緒だと思ってました」

多田さん
「すいません、ただ僕の友達が警察官なんで、相談しておきます」

沙友理
「お願い致します」

多田さん
「住所聞いてもいいですか?」

沙友理
「はい」

多田さん
「それと……」

No.108 14/11/01 20:00
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「すぐメモしますから」

多田さん
「その人をすぐ信用するのが駄目なんですよ」

沙友理
「ご指摘通りです」

多田さん
「僕だからいいけど、僕かも知れませんよ」

沙友理
「えっ?」

多田さん
「犯人が」

沙友理
「そうなんですか?」

多田さん
「あいにく今市さんの携帯も、住所も知りません」

沙友理
「びっくりさせないで下さいよ」

多田さん
「今の所被害がないなら、次回にします」

沙友理
「すいません」

先輩
「沙友理さん、文具整理お願い」

沙友理
「はぁーい」

沙友理
「多田さん、ありがとうございました」

多田さん
「また何かあったら、携帯に電話してください。僕は待ってる側ですから」

沙友理
「ありがとうございました」

先輩
「ごめんね、少し整理品が届いたから」

沙友理
「融通聞いて貰って、すいません」

多田さんの表れるタイミング、理解者は父親と多田さん。

No.109 14/11/01 20:06
ナルシスト ( 84wJh )

ポケットの携帯のバイブが震えた。
裕太だった。

トイレに入り、裕太と話した。
裕太
「沙友理、ごめんね」

沙友理
「裕太じゃないよね?」

裕太
「何が?」

沙友理
「会えないかなぁ?」

裕太
「今日?」

沙友理
「明日じゃ無理?」

裕太
「時間作るよ」

沙友理
「明日休む予定」

裕太
「どこか悪いの?」

沙友理
「違うの…用事」

裕太
「明日連絡するよ」

私は分かっていた、裕太が私に本気なのか?
    知りたかった。

No.110 14/11/01 20:17
ナルシスト ( 84wJh )

在庫の整理と発注した商品の整理をしていた。

沙友理
「先輩、明日突然なんですが、お休み頂いて、いいですか?」

先輩
「明日ね~シフトにバイトの人が入るから、構わないけど、どうしたの?」

沙友理
「父親の体調が悪くて、今も連絡が来ました」

先輩
「お父さん、大丈夫なの?」

沙友理
「母親を亡くしてから、駄目になっちゃって」

先輩
「それなら尚更だね」

沙友理
「すいません、突然で」

先輩
「お大事にね」

私の人生は明日にかかっていた。
裕太との人生も私の人生も。
泣いてなんて居られない、お父さんは私が守る。

No.111 14/11/01 21:10
ナルシスト ( 84wJh )

帰り道にスーパーに寄るのが私の日課。
今日は何にしょうかなぁ?

多田さん
「今市さん!」

沙友理 
「えっ?」

何故多田さんが私の駅に居るの?

多田さん
「すごーい偶然って本当にあるんですね?」

沙友理
「びっくりしました」

多田さん
「僕もびっくりです」

沙友理
「どうして?」

多田さん
「この駅だったんですか?」

沙友理
「はい」

多田さん
「今日話してた警察官の連れがこの駅に居るんですよ、相談しようと思って」

沙友理
「気にかけさせて、すいません」

多田さん
「お買い物ですか?」

沙友理
「はい」

多田さん
「お母さんの体調が悪いとか?」

沙友理
「いえ、母は亡くなっています、父親と暮らしています」

多田さん
「寂しいですね」

沙友理
「慣れました」

多田さん
「気をつけて下さいね」

沙友理
「ありがとうございます」

私達はわかれた、偶然なの?

No.112 14/11/01 21:17
ナルシスト ( 84wJh )

スーパーの後から多田さんが付けていないか?
買い物どころではなくなった。

私は早足しで家に帰った。
お父さんはまだ仕事から帰って居なかった。
段々近付く私達の家、一歩、一歩、近づいた。


スーパーの袋と私の鞄は、バザーっと音が鳴った。
凍りつく恐怖で手に力が抜けていた。

    玄関のドアの前に


   真っ赤なピエロ
    涙も真っ赤に
     泣いてた
   


…………★サプライズ★………

   もうすぐ君は泣くよ

    真っ赤な涙で

No.113 14/11/01 23:59
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「ぎゃ………」

「大丈夫ですか!」

沙友理
「誰か!怖い……」

「もう大丈夫ですよ!」

私の視界に入ったのは多田さんだった。

沙友理
「多田さん?貴方なの?」

多田さん
「違いますよ…声がしたから…」

沙友理
「多田さん、教えて…誰なの…誰…」

多田さん
「今市さん、落ち着いて、ね、落ち着いて」

沙友理
「多田さんじゃないなら、誰なのよ!」

多田さん
「友達呼びますから…今呼びます」

沙友理
「もう……嫌…嫌なの…」

多田さん
「すぐに来て欲しいんだ、住所は……今市さん、話せますか?」

沙友理
「怖い…怖い…お願い…助け…て…」

多田さん
「落ち着きましょう、まずここの番地だけ、教えて下さい」

沙友理
「○丁目○○番地」

多田さん
「今市さん、今市さん、大丈夫ですか!」

No.114 14/11/02 00:19
ナルシスト ( 84wJh )

多田さん
「今救急車呼ぶから、頑張ってくれる」

沙友理
「お父さんが帰ってないから……」

多田さん
「お父さんには警察から連絡させるから」

沙友理
「お父さん…」

多田さん
「救急車1台、住所は○○丁目○○番地」

多田友
「多田どうしたんだ?」

多田
「これなんだよ」

多田友
「これ酷いなぁ」

多田
「救急車呼んだから、後頼むわ」

多田
「今市さん、大丈夫ですよ」

真っ赤に泣いているピエロは多田さんの友達が持って帰った。

救急車に多田も乗り、病院に沙友理は、運ばれた。

No.115 14/11/02 00:28
ナルシスト ( 84wJh )

ピーポー、ピーポー、ピーポー、ピーポー。
多田
「すまない、知り合いなんだよ」

救急隊員
「多田さんのお知り合いですか?」

多田
「かなり恐怖で興奮してるから」

救急隊員
「心拍数が少し早いだけで、血圧は大丈夫です」

多田
「良かったよ」

救急隊員
「大丈夫ですか!すぐ病院に着きますから」

多田
「まだ帰ってない、父親を心配してるんだ」

多田
「お父さんには連絡するからね」

隊員
「意識レベルは」

多田
「どうなんだ」

隊員
「かすかに聞こえてると思います」

隊員
「聞こえますか?」

救急車の中でかすかに聞こえていた。

No.116 14/11/02 00:56
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「お父さん、お父さん」

ストレッチャーに運ぶ

  せぇのぉーーーーー

多田
「今市さん、着きましたよ」

沙友理
「多田さん…ありがとうございます」

多田
「大丈夫ですからね、心配ないですから」

沙友理
「裕太にも、裕太来てよ」

多田
「彼氏ですか?」

沙友理
「はい」

多田
「明日は帰れますからね」

沙友理
「ありがとうございました」

沙友理はすぐに処置室に入り点滴をした。

夜勤の勤務医が担当していた。

医師
「大丈夫ですか?」

沙友理
「多分…私…妊娠しています」

医師
「病院は?」

沙友理
「明日行く予定です」

医師
「なら余計に大事を取らないと」

沙友理
「父親が来ても内緒で」

医師
「明日、専門医に受診して下さい」

沙友理
「ありがとうございます」

医師
「看護師さんお父さん来られたら案内してあげて」
 
看護師
「分かりました」

No.117 14/11/02 01:06
ナルシスト ( 84wJh )

かすかに段々聞こえて来たお父さんの声。

父親
「今市沙友理の父親です」

看護師
「今処置室で点滴をしています」

父親
「すいません」

看護師
「先生のお話がありますから」

父親
「先生、お世話になりました」

医師
「緊張と恐怖感による、発作みたいなもので、命には関わりません、点滴が終われば帰って下さい、お大事に」

父親
「沙友理、びっくりしたよ、大丈夫か?」

沙友理
「怖いの」

父親
「多田さんだったかなぁ?友達の警察官の人に、連絡を貰った、びっくりしたよ」

沙友理
「ごめんね、お父さん」

父親
「大した事なくて、良かったよ」

その人形は一応多田の友達が持って帰ったが、有力な手がかりはなかった。

No.118 14/11/02 09:33
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は天井を眺めて考えていた。
沙友理
「そんな事はない、絶対にある訳がない、確信がない、そんな事をする確信が、」

父親は心配そうな沙友理の点滴が終わる事をずっと側で眺めていた。

沙友理
「お父さん、点滴終われば帰っていいみたい、明日私大切な用事あるから、出掛けるね」

父親
「もう会社も辞めていいから」

沙友理
「仕事は続けます、続けないと困るの」

父親
「お前1人くらい食わせれるから」

沙友理
「もしかしたら、また1人増えるかも?」

父親
「どうしたんだ?何なんだ?」

沙友理
「会えば分かるのあの人に……」

No.119 14/11/02 12:15
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「お父さん、もう帰って、明日会社だから」

父親
「心配だから」

沙友理
「もう大丈夫だし、タクシーで帰るから」

父親
「沙友理無理しなくていいんだよ」

沙友理
「1人になって考えない事があるの」

父親
「そうかぁ、分かった」

沙友理
「お父さん…ありがとう」

父親
「必ずタクシーで帰って来いよ」

沙友理
「うん」

父親は処置室のドアに向かっていた。
何故か悲しそうな後ろ姿だった。

No.120 14/11/02 12:52
ナルシスト ( 84wJh )

裕太からの連絡もない、裕太何か隠してる。
早く点滴終わらないかなぁ?
裕太との出逢いから、今までを考えていた。
裕太は私に都合を合わしてくれてた。

朝、昼、夜、必ずメール返信もくれていた。
なのに何故裕太は返信をしなくなったのか?

裕太が転勤の話をたもちだしたのも突然。
辞令が出れば必ず知らせてくれるはず。
出版社に転勤なんてあるのかなぁ?

裕太とのセックスも、そう言えば、愛してる、結婚しようぜ、なんて言わなくなった。
反対に親に会う事を避けている様に感じた。

何故裕太は変わってしまったのか?
犯人と裕太?

確信はない。
でもあの人に間違いない。
何故あの彼が私をこんな目にあわすのか?

あの優しい笑顔の奥で、残酷卑劣な行為。
同じ人物とは思えなかった。

No.121 14/11/02 21:22
ナルシスト ( 84wJh )

看護師さん
「今市さん、点滴終わりましたね」

沙友理
「気持ち楽になりました」

看護師さん
「良かったです。針抜きますよ」

私は点滴の針を抜いた腕からの真っ赤な血が、あの真っ赤なピエロと同じ色をしていた事に気づいた。

あの真っ赤に染まった、真っ赤な涙の、ピエロ。

背筋が凍りついた。

看護師さん
「少しの間、押さえておいて下さいね」

沙友理
「ありがとうございます」

看護師さん
「血が、止まったら、このシール貼ってくださいね、お大事に」

私は病院を後にしようと思ってたら。

多田さんが来てくれた。

多田
「今市さん大丈夫ですか?」

沙友理
「本当にお世話になりました。」

多田
「体調はどうですか?」

沙友理
「少し楽になりました」

2人の会話を聞いている?
ピエロの主さん。

No.122 14/11/02 21:34
ナルシスト ( 84wJh )

多田
「今市さん、あの例の人形なんですが」

多田さんは私に気遣いながら話してくれた。

沙友理
「あの人形ですよね?」

多田
「警察の友達が被害届け出してくれました」

沙友理
「えっ?被害届け出せたんですか?」

多田
「すいません、今市さんの住所で、勝手しました」

沙友理
「助かります」

多田
「あれはやばいですね?」

沙友理
「犯人は誰だか分かりませんか?」

多田
「全く手掛かりがなくて」

沙友理
「私も探してみます」

多田
「ストーカーかも知れませんから、夜のパトロールも頼みました」

沙友理
「何から何までありがとうございます」

多田
「今日のご予定は?」

沙友理
「確認したい事がありまして…」

多田
「僕の携帯にいつでも連絡下さい」

沙友理
「ありがとうございました」

私は被害届けが出された事に少し安心した。
ストーカーなんて思いもよらなかった

No.123 14/11/02 22:20
ナルシスト ( 84wJh )

朝から行きたかった場所は、そう産婦人科。
分かってたの、身体に異変がある事は。

診察よりもうお腹の中が何ヶ月なのか?
裕太との愛の証のお腹の子供を。

待合室に検査問診票を提出してその時を待っていた。

看護師さん
「今市さん、どうぞ」

沙友理
「すいません」

先生
「4ヵ月に入りました」

沙友理
「ありがとうございます」

先生
「エコーしましょう」

機械から流れる、子供の心音。

ドク、ドク、ドク

繰り返される裕太との子供の心音。

今の先生はこう聞くのか?

先生
「どうされますか?」

沙友理
「産みます」

先生
「また健診に来て下さい」

驚きも戸惑いもなかった。
あんなに大好きな裕太の子供を、私が手離す筈がない。
裕太は照れながら嬉しい表現を、身体いっぱいに表せてくれるかなぁ?

もしかしたら抱きかかえてくれるかなぁ?
嬉しかった!
裕太と私の赤ちゃんが、お腹にいる事を。

No.124 14/11/02 22:39
ナルシスト ( 84wJh )

妊娠に希望が満ち溢れていた。
裕太に話すタイミングを探していた。

裕太の好きなサプライズなんかもいいかも!
   
   サプライズ

   サプライズ

私と裕太には関係ない、サプライズ
きっとストーカーに違いない。
多田さんも言ってくれてたよね?
パトロールに回る事を、少しだけ安心だった。

都合良く、裕太からの電話。

沙友理
「もしもし」

裕太
「遅くなってごめん」

沙友理
「大丈夫だよ」

裕太
「今から会える?」

沙友理
「私も話があるの!」

裕太
「いつもの場所だぞ」

沙友理
「分かった!」

私は早く裕太に子供の事を伝えたかった。
裕太びっくりするよ!

No.125 14/11/02 22:54
ナルシスト ( 84wJh )

裕太といつも待ち合わせの場所には大きな時計の下だった。
裕太は走りながら私に近づいて来た。

裕太
「はぁはぁ沙友理、お待たせ」

沙友理
「裕太はいつもなんだから」

裕太と同じ強さで握ってた手は今日は私の方が少し強めだった。
肩にもたれかかり、何を食べようか!
なんて話してた。

ちらっと人気を感じた。

沙友理
「怖い!」

裕太
「どうしたの?」

私の勘違いなのか?
人気がしたように思った。

沙友理
「人違いかも?」

裕太
「何に食う?」

沙友理
「とんかつ!」

裕太
「よし、豚カツ、出発!」

沙友理
「進行!」

No.126 14/11/03 10:41
ナルシスト ( 84wJh )

裕太の顔を見れば安心感が私の心を癒やしてくれた。
沙友理と裕太は食堂ターミナルに足を運んだ。

裕太
「うーん、このお店にするか?」

沙友理
「美味しいだね」

裕太
「ここに入ろうっか!」

沙友理
「うん」

付き合い始めた当初から沙友理は益々裕太の事が好きになっていた。


裕太
「タイミング悪かったかなぁ、満席だよ」

沙友理
「待てばいいじゃん、私待つこと嫌いじゃないよ」

裕太
「俺は無理」

沙友理
「待つこと嫌いじゃなかったら、裕太と付き合えないよ」

裕太
「……」

沙友理
「怒った?」

裕太
「違うよ」

沙友理
「なら、何に?

少し気まずいムードになり、無言で準備を待っていた。

No.127 14/11/03 10:48
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「後2人だなあ」

沙友理
「食事したら話したい事があるの」

裕太
「俺もなんだ」

沙友理
「何?今話して」

裕太
「こんな人混みで話せないよ」

沙友理
「そうね」

裕太
「次だよ」

沙友理
「本当に」
 
裕太の話って転勤の話しくらい分かってた。

No.128 14/11/03 10:58
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「よし!行こうか、沙友理」

私達はようやく、豚カツ定食にたどり着いた。 

沙友理
「裕太、少し食べてくれる?」

裕太
「どうした?体調悪いのか?」

沙友理
「私が食べたいって言ったのに、ごめんね」

裕太
「ラッキー!頂きまーす」

無邪気に食べている姿見ていると、お腹の子供の父親とは思えない。

沙友理
「美味しい?」

裕太
「ばかうま!」

沙友理
「裕太、ごめん、トイレに行くわ」

裕太はもくもくと食べていた。

トイレに走り込んだ沙友理は、つわりか?
トイレで吐いていた。

沙友理
「苦しい」

No.129 14/11/03 11:22
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「お待たせ」

裕太
「遅かったなぁ、大丈夫なの?」

沙友理
「病気じゃないから」

裕太
「食べちゃったぞ」

沙友理
「行こうか!」

裕太
「沙友理、食べてないじゃんか」

沙友理
「裕太の顔見たら、お腹いっぱいになったから」

早く裕太の話も聞きたかったし、私も裕太に沢山話したかった。

裕太
「行こうか!」

沙友理
「出よう!」

裕太
「どこに行く?」

沙友理
「ゆっくり話せる所がいい!」

裕太
「行っちゃう?」

沙友理
「行こう」

裕太はラブホと考えているだろう?
どこでもいいの、2人で話せるなら。
私の目的はセックスではない、裕太との時間が欲しいの。

No.130 14/11/03 12:33
ナルシスト ( 84wJh )

昼間からホテル街に歩く2人。
裕太
「ゆっくり話せるだろう?」

沙友理
「反対にここしかないかも?」

裕太
「真剣な話しあっから」

沙友理
「私も」

裕太
「入るぞ」

沙友理
「うん」

2人はギュッと手を繋ぎホテルに入って行った。

………★いらっしゃいませ★………

ご希望のお部屋のボタンを押して下さい。

裕太
「一番安い部屋でいいよな」

沙友理
「うん」

……★302号室、ごゆっくり★……

裕太
「沙友理」

沙友理
「ありがとう」

いつも裕太と愛情を確認するホテル、今日は生々しいホテルの、雰囲気は違って見えた。

No.131 14/11/03 14:41
ナルシスト ( 84wJh )

裕太とやっと2人っきりになれたんだ!
裕太に沢山聞いて貰いたかった、裕太に怖い事沢山あった事話したかった。

裕太
「沙友理」

沙友理
「裕太!ずーっと、ずーっと離さないで、お願い怖いの」

沙友理のその言葉に裕太の手は力がなくなった。

沙友理
「裕太?」

裕太
「…」

沙友理
「裕太?どうしたの?」

裕太
「ごめん…」

沙友理
「裕太?何謝ってるの?」

裕太
「すまない…」

沙友理
「何がすまないの?愛してるんだよね?」

裕太
「ごめん」

沙友理
「意味分からないよ…」

裕太
「……」

沙友理
「何黙ってるの?」

沙友理
「答えてよ!」

No.132 14/11/03 14:54
ナルシスト ( 84wJh )

裕太
「転勤になってさぁ」

沙友理
「そうなんだ」

裕太
「会えなくなるね」

沙友理
「何故?会えないの?」

裕太
「転勤するし……」

沙友理
「私も引っ越すよ、会社も辞める」

裕太
「終わりに…しよう」

沙友理
「何が?終わりなの?」

裕太
「ごめん」

沙友理
「ごめんじゃ分からないよ?」

裕太
「別れて欲しい……んだ」

沙友理
「サプライズかなぁ?」

裕太
「本当の…サプライズ…」

沙友理
「何で?」

裕太
「結婚した…」

沙友理
「結婚して下さいでしょう?」

裕太
「結婚した、他の女と…」

沙友理
「またまた、サプライズ?」

裕太
「まじ」

沙友理
「私と付き合ってたんだよね?」

裕太
「そのつもり…だった」

沙友理
「他にもいたの?」

裕太
「酔った勢いで抱いた…女…」

沙友理
「1回だけ?」

裕太
「そう…一度だけ…」

沙友理
「その人が何故?結婚なの?」

裕太
「出来た…」

沙友理
「何が?」

裕太
「ガキ」

2人の会話はホテルとは程遠い小さな声だった。

No.133 14/11/03 18:03
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「何? 訳分かんない? どう言う事?」

裕太
「ごめん」

沙友理
「ごめんじゃ分からないって聞いてるの!!」

沙友理の声は荒々しい、また暴言のごとく、裕太の身体全体に響き渡った!

沙友理
「何よ!一回寝た女に子供が出来たがら、結婚しました?」

裕太
「……」

沙友理
「何だったのよ!私達の1年少しは?馬鹿にしないでよ!」

沙友理の目は何筋もの涙が床にこぼれていた。

沙友理
「あのね!今私の気持ち分かる?裕太に?」

裕太
「相手の家族に呼び出され、俺ノイローゼ状態だった」

沙友理
「だから私のお父さんにも会えなかったの?あのピエロも貴方なの?」

裕太
「ピエロ?」

沙友理
「どれだけ嫌がらせするつもり?」

裕太
「俺、知らないよ!」

沙友理
「昨日も救急車で運ばれたんだよ!この腕に点滴したんだよ?わかる?」

裕太
「知らないって!」

沙友理
「ふざけないでよ!」

裕太
「落ち着いてくれよ!沙友理」

沙友理
「気安く名前呼ばないでよ!」

裕太
「……」

沙友理
「死んで下さい、一緒に死ぬ?」

No.134 14/11/03 18:19
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は護衛用に小さなペティナイフを鞄がら出した。
沙友理
「いつ、襲われるかと、護衛用に持ってたの、一緒に死のうか?私は怖くないわよ?裕太?」

裕太
「本当にごめんなさい」

床に土下座する裕太に、ビクともしない沙友理。

沙友理
「ねぇ、おばあさんの病気も嘘なの?」

裕太
「相手の家に毎日呼び出されてた」

沙友理
「だから電話もメールも返せなかったのね!」

裕太
「後悔してる、でもどうしようもなくて」

裕太が沙友理に土下座し、言い訳している姿に、沙友理は。

沙友理
「こんな最低な男を好きだったなんて、私も見る目無かったわね」

裕太
「許してくれるのか?」

沙友理
「これだけ教えて、その女と私、どっちを愛してた?」

裕太
「沙友理だよ、沙友理に決まってる!」

沙友理
「これで、ゆ・る・し・て・あ・げ・る・」

裕太
「おぃ、待て、待ってくれ!お願いします、お願い、ギャー」

No.135 14/11/03 21:52
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「貴方とのサプライズ~」

裕太の髪の毛をナイフでズタズタにしていた。

沙友理
「私が恐怖だった事これで分かった?」

裕太
「わかった、わかった、わかった」

沙友理
「奥さんの名前教えて?」

裕太は沙友理の耳元で囁いた。

沙友理
「好きなの?後悔してる?」

裕太
「後悔してるよ~あんな女に捕まって!」

沙友理
「なら、いいのよ~可哀想な村上裕太君~」

裕太
「はい、はい、はい」

裕太は恐怖のあまり漏らしていた。

沙友理
「どこに、行っても、忘れないでね、私の事」

裕太
「忘れません、忘れません」

裕太の髪の毛は床一面に切り落とされていた。

No.136 14/11/03 22:30
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「もう裕太君と会えなくなるね~」

裕太
「ごめんなさい」

沙友理
「どこに転勤するのかなぁ~」

裕太
「嘘です、嘘なんです」

沙友理
「今幸せなんだ~」

裕太
「地獄です、地獄なんです!」

沙友理
「無責任男の成れの果て、かしら?」

沙友理のナイフは裕太の髪の毛をギリギリと捌いていた。

裕太は床一面の髪の毛と下半身は失禁でベトベト状態だった。


沙友理
「裕太!私に顔見せて?裕太顔忘れたくないから」

裕太
「はい、すいません、すいません」

沙友理
「ありがとう、ね」

沙友理は裕太にナイフを放し、裕太は慌てふためいて、ホテルから、逃げて行った。

放心状態の沙友理は裕太のナイフで切った髪の毛を拾いながら。

沙友理
「離れていても、別れても、またやり直せると思ってた」

1人寂しく呟いていた。

No.137 14/11/03 22:40
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理が部屋から出れば清掃員は驚くだろう。
沙友理のこの先はまだまだ続いて見守りたい。

ピエロの犯人はまだ未解決だった。
沙友理は今後どうするのか?

サプライズとの題名はこの後続くのか?
サプライズ、不意の出来事。

沙友理のお腹の子供を今後どうするのか?

今の沙友理に誰も何も聞くことは出来ない。

人生が奈落の底に落とされ、またピエロの犯人は誰なのか?


あの真っ赤なピエロの涙は沙友理と裕太の別れを予知していた涙だったのか?


引き続き、サプライズ、お楽しみ下さい。

No.138 14/11/03 22:49
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は裕太の髪の毛を鞄に入れ、電車に揺られていた。
鞄からはみ出た髪の毛を見た乗客は、危険人物扱いで沙友理を見ていた。

家に帰る間沙友理は全く記憶すら無くなっていた。
父親が帰宅し、声を掛けるまで、茫然と座っていた。


父親
「沙友理?帰ってるのか?」

父親
「沙友理?」

沙友理の顔色は真っ赤な血で埋め尽くされていた。

裕太の髪の毛を切った時に、怪我したのか?
裕太の頭皮に傷をつけたのか?

沙友理の顔はどちらかの血で赤く染まっていた。

父親
「沙友理?どうしたんだ?その顔は?」

沙友理
「お父さん、真っ赤なピエロは私なの?」

No.139 14/11/04 00:19
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「沙友理?」

沙友理
「ピエロになっちった」

父親は沙友理を抱きしめ。

父親
「あの犯人が…許さない」

沙友理
「お父さん、お父さんの娘でごめんね」

父親
「心配するなぁ、お父さんが沙友理を守るから」

沙友理
「お父さんは私から離れないよね?」

父親
「沙友理から絶対に離れないよ」

沙友理
「お父さんとこうしてると、安心してきたわ、眠いよ」

父親
「お風呂だけ、沸かすから、入って寝なさい」

沙友理
「眠い……」

父親
「沙友理のその姿が、お父さんは、辛いよ」

沙友理
「5分だけ、このままでいて、約束守るから」

ずっと沙友理を抱きしめ、その日は何も聞かなかった、沙友理の父親だった。

No.140 14/11/04 00:25
ナルシスト ( 84wJh )

父親
「沙友理、お風呂沸いたぞ」

沙友理は父親の背広を掛けて眠っていた。
何分いや、何十分寝ていたのか?

沙友理の為に、お粥を作っていた父親。

娘と父親の関係は、どこの家庭でも、同じなのか?
会話すらないが、父親にとって、娘は宝物な存在だろう?

沙友理の為に、お風呂を沸かし、お粥を作る事が、娘への最大の愛情だと思った。

No.141 14/11/04 00:41
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理はお風呂から上がって来たら、父親は母親の仏壇の前に座っていた。

父親
「昨日から大変疲れて、寝ていないんだろう?」
 
沙友理
「大丈夫だよ」

沙友理の大丈夫は、父親を気遣う、娘からの愛情であった。

父親
「お父さんの部屋でねるだろう、布団引いてあるから、先に寝なさい」

沙友理
「お休みなさい、お父さん、ありがとう」

沙友理はあのピエロ事件から、父親と同じ布団を並べ寝ていた。

沙友理が床に付いても、父親は母親の仏壇から、離れる事はなかった。

なくなった妻に何を語りかけていたねか?

仏壇の部屋は電気が消える事も、沙友理の隣りの布団に入る事なく、じっと一晩中、亡くなった、沙友理の母親の仏壇に、無言で、夜を明かしてした。

不器用な父親とはそんな愛情表現しか出来なかった。

仏壇に飾られたら、遺影の笑顔の、母親に何を語りかけていたねか?

No.142 14/11/04 20:33
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「おはようお父さん」

父親
「良く眠れたか?」

沙友理
「少し楽になったわ」

父親
「なら…良かった」

沙友理
「お父さん昨日眠れなかったの?」

父親
「久しぶりに、母さんと話しをしてた」

沙友理
「今日早く帰れる?話があるの」

父親
「彼を連れて来るのか?」

沙友理
「私達の今後の話し」

父親
「寂しくなるが……仕方ない事だ、なるべく早く帰るよ」

沙友理
「お願いします」

沙友理と父親の会話は、父親が娘を手離す話だと、思っていた。

No.143 14/11/04 20:39
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「おはようございます」

先輩
「お父さんの体調はどう?」

沙友理
「心配かけました…大丈夫です」

先輩
「いつでも言ってよ、力になるから」

沙友理
「はい、有り難う御座います、私文具の整理して来ます」

先輩
「お願いするね」

沙友理
「はぁーい」

私は子供達がよく買っていく、交換ノートや、シール、鉛筆などを整理していた。

先輩
「沙友理さん、沙友理さんにお客さんだよ」

沙友理
「はぁーい」

沙友理を訪ねたのはあの男性だった。

No.144 14/11/04 22:35
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「こんにちは多田さん、お世話になりました」

多田
「今市さん大丈夫どうですか?」

沙友理
「お陰様で何とか…」

多田
「今日仕事終わりにお時間ありますか?」

沙友理
「父と話し合う予定なんです」

多田
「また改めてと言う事に…」

沙友理
「多田さん?」

多田
「はい」

沙友理
「多田さんのご家族は?」

多田
「今は1人暮らしですが、両親と姉、妹がいます」

多田
「賑やかすぎて、女に囲まれて、親父と僕は肩身が狭いです」

沙友理
「羨ましいです、沢山の家族がいて」

多田
「姉が最近結婚してやっとでした。ではまた。」

沙友理
「本当に有り難う御座いました」

と多田さんは帰って行った。
沙友理は何故多田の家族構成を聞いたのか?

No.145 14/11/04 22:51
ナルシスト ( 84wJh )

先輩
「多田さん、今市さんの事好きなんだと思うよ」

沙友理
「止めて下さいよ!からかうのは!」

先輩
「男だから分かるんだよ」

沙友理
「先輩には彼女居ないんですか?」

先輩
「今は居ないかなぁ?」

沙友理
「妹さん居ましたよね?」

先輩
「結婚してるよ、兄貴より、先越されたよ!」

沙友理
「先輩なら素敵な彼女すぐ見つかりますよ」

先輩
「有り難う」

沙友理
「文具整理終わりましたから、赤本見て来ます」

先輩
「頼んだよ!」

沢山ある中学受験、高校受験、大学受験、の赤本を整理していた。
何故沙友理は先輩にも家族構成を聞いたのか?

No.146 14/11/05 00:11
ナルシスト ( 84wJh )

いつもなら、裕太からの連絡があり、あの大きな時計の、待ち合わせ場所、もう裕太と会う事もなくなった。

裕太との付き合いは、今となれば、ピエロが運んだ、意味合いの、付き合いだったのか?

1年少しの付き合いの結末は、杜撰な結末になってしまった。

お腹の子供は、唯一裕太と、愛した証。
絶対に産みたい。

こんなに好きな男性は裕太だけ。
人をこんなに愛する事が、死にたい位辛かった。

愛する事って苦しかった。
ピエロ事件でも、流産しなかったのは?

お腹の子供は産んで欲しいと願っている。
お父さんにどういう風に話をしたら良いのか?

お父さんに今のありのままを話すしかない。

沙友理は父親と話し合う為に、父親の待つ家に帰って行った。

ポストを開けると、切手に消印付きの、「今市沙友理様」と書かれた、封筒が入っていた。


……★メッセージカード★……

  ピエロのサプライズ

     終了

   楽しかったかなぁ!

    楽しかったよ

   真っ赤なピエロ沙友理

私は誰だかわかった、でも今は黙ってる。

男性なのか、裕太なのか、多田なのか、他の誰かなのか?

沙友理は驚く事はなかった。
お腹をさすりながら、沙友理は玄関を開けた。

No.147 14/11/05 09:53
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理
「ただいま」

父親は沙友理のピエロ事件から、さらに心配症が悪化したのか?

父親
「誰にもつけられてはいなかったか?」

沙友理
「大丈夫よ、もう大丈夫だから」

父親
「心配なんだよ」

沙友理
「心配かけてごめんね」

沙友理はすぐ台所に立ち、夕食の支度をし出した。
不器用な父親は沙友理が声を掛けるまで新聞を読んでいた。

父親
「沙友理、またストーカーの事件が新聞に乗っているぞ!物騒な世の中になったなぁ?」

沙友理
「お父さん、今日はカレーにするね」

父親
「嬉しいよ、2杯お代わりするか!」
 
沙友理の後ろ姿を見た父親は、沙友理がどんなに、恐怖体験した、可哀想な我が子に、映っていた。

No.148 14/11/05 11:08
ナルシスト ( 84wJh )

久しぶりに静かな夜を迎えるこの親子に笑いすらうまれていた。

「お父さんに話があるの」
と沙友理が父親に口にした。

父親は娘が深刻な話をする事を察していたのか?
沙友理の話す内容は父親も聞きたくない事くらい予想していた。

少し疑いながら
「何の話しなんだ?」

「私…妊娠してるの…今4ヵ月…」

沙友理は父親の顔をゆっくりと見た。

明らかに動揺している父親は、冷静を保とうと必死だった。

「相手の、いや、お腹の父親は何と言ってるのか?」

「別れたの…もう会う事もない」

父親の顔色が急に変わった。
「別れた男の子供なぞ、認めない!」

沙友理は父親のそばに寄り添った。
「彼ね、結婚しちゃったの」」

沙友理の頬を殴るな父親!
「男もお前も無責任な事をするからだ!」

怒りは当然だと沙友理は覚悟をしていたが。
「私は産みたいの!このお腹の父親を愛してるの」

肩を震わせる父親は。
「不倫してたのか?沙友理は」

大い被せるように沙友理は
「違うわ!お互いに真剣な付き合いだったの、彼が事情で、……結婚してしまったの」

少し笑う様に。
「沙友理はその男に捨てられたのか?」

「そうお父さんの言う様に捨てられたの」

父親は怒りが収まらないのか?
「そんな男の子供、さっさとおろしなさい!」

No.149 14/11/05 11:21
ナルシスト ( 84wJh )

「亡くなったのはお母さんじゃなく、お父さんだったら良かったのよ」

一瞬静まり返った部屋には、笑顔の母親の遺影の部屋だった。

黙り込む父親は沙友理のその子供をどう受け取っていたのか?

「お母さんが生きていてくれたら、絶対に私の気持ち、分かってくれたわよ!」

沙友理のその言葉に何も言い返せないだろう。

「本当に母さんなら、産ませるだろうか?」

「好きな人の子供なら、命がけで守りなさい、お母さんなら言ってくれるわ」

沙友理は父親に説得しているのか?
自分の気持ちをぶつけた。

「先に寝る」
と言い残し、父親は部屋に入った。

No.150 14/11/05 12:30
ナルシスト ( 84wJh )

私は仏壇の母親の前に座った。

「お母さん、こんな結果になっちゃったけど、お母さんなら、応援してくれた?好きな人の子供産みたいの、私の今の幸せなの、それも諦めないといけないの?」

沙友理は裕太をこれ程愛した事はない、裕太と会う時も不安だらけ。

愛情が深くなるにつれ、益々この関係がこわれないかと、不安も感じていた。

沙友理の別れてもいつかまた、やり直せると思ってた。
沙友理が努力すれば、裕太は戻って来てくれると、信じていた。

同じ強さで握った手は、離れないと思ってた。

父親が部屋から出て来た。

「沙友理早く寝なさい」

「お父さん、さっきはごめんね、お父さんとお母さんは私が産まれて嬉しかった?」

「当たり前だ」

「私も嬉しいの、お腹の子供が、産まれる事が」

父親は沙友理の真剣な言葉に重みを感じていた。

「私会社辞める、そして少し融通のきく、バイトにする、これからお父さんとの時間も大切にしたいの」

沙友理が涙を流し、話している姿に。

「本当に母さんなら、応援していたかなあ?」

と父親の口から出た言葉に、壁に掛けてある、沙友理の母親の写真が、ガタッと傾いた。

「沙友理の言う通りかも知れないな、沙友理お腹の子供が心配だから、早く寝なさい」

と父親は沙友理を布団まで連れて行った。

「母さんこれで良かったのか?」
と呟きながら、妻の写真を真っ直ぐになおしていた。

No.151 14/11/05 18:00
ナルシスト ( 84wJh )

父親は寝なかったのか、眠れなかったのであろう。
沙友理は仏壇の前で寝てしまっていた父親に、私がお父さんと、お腹の子供を守るからと誓った。

「お父さん、おはよう」

父親は昨日の興奮から冷めやり。

「沙友理、おはよう」

と笑顔で沙友理に返事をした。

「辞表届け出してくる」

突然の沙友理の行動に。

「働けるならもう少し後でもいいんじゃないか?」

「辛いの、今の仕事が…」

裕太と会う事も、大好きだった、本に囲まれた仕事が、沙友理には辛かったのであろう。

No.152 14/11/05 18:09
ナルシスト ( 84wJh )

裕太との出逢いの場所、沙友理がこよなく愛した本、大好きだった仕事を辞めてまで、沙友理には裕太の思い出は、儚く残酷な結果で幕を閉じた。

沙友理は気持ちを切り替えたのか?
明るく辞表届けを出した。

一身上の都合

これしか便箋に書いていなかった。
上司にお礼を言い、今月末での退職が決まった。

「おはようございます」

何も知らされていない先輩は。

「沙友理さん、おはよう」

「今月末で急なんですが、退職します、長い間ありがとうございました」

先輩は濡耳に水のように。

「えっ?辞めちゃうの?会社には?」

「はい、辞表を出して来ました」

沙友理の顔は吹っ切れたのか?
明るい笑顔に戻っていた。

No.153 14/11/05 18:17
ナルシスト ( 84wJh )

「ちょっと待ってよ、悪い冗談はなしだよ」

にっこり、ふくみ笑いなのか?
「辞めるんです、辞めたいんです」

少し引いた顔の先輩は。
「そうなんだ、お客さん悲しむよ」

「大丈夫です、本を愛してる、お客さんなら」

と言いながら、沙友理はエプロンをかけだした。

「在庫室に行って来ますね」

と沙友理は在庫室に歩いて行った。

在庫室には沢山今か今と自分の出番待ちの本達と、文具用品が並んでいた。

No.154 14/11/05 18:54
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理さん~お客さんだよ」

「はぁーい」

在庫室にどれだけの時間を過ごしたのか?
時計を見るとお昼前だった。

沙友理は在庫室から出て、沙友理のお客さんだと言う人を見た。

「多田さん」

「こんにちは、大丈夫ですか?」
多田はあの事件以来沙友理の事が心配なのか?
よく覗くようになっていた。

「今市さん、お昼休み、時間取れませんか?」

沙友理は少し多田を待っていたのか?

「先輩、お昼休み頂けますか?」

多田と沙友理の関係が気になっているのか?
複雑な気持ちの沙友理の先輩は。

「ゆっくりして来ていいよ」

「私も多田さんにお話があったので、良かったです」

「そうなんだ~少し話せるね」
 
沙友理はお昼休みの許可が出たので、着ていたエプロンを脱ぎ、鞄を持ち店を後にした。

No.155 14/11/05 19:06
ナルシスト ( 84wJh )

2人はお昼ご飯を食べて、ゆっくり話したかったが、あいにくお昼前で、どこも混み合っていた。

「お弁当買って公園に行きませんか?」

「それはいい考えだ」

2人はお弁当を売っている店に立ち寄った。

「今市さんは何弁当?僕は唐揚げ弁当にする」

沙友理は何を食べようかまよっていたが。

「幕ノ内弁当にします」

お金を払おうとする沙友理に、多田は財布を出し、2人分のお金を定員に渡した。


「多田さん、だめですよ、私 多田さんに沢山お礼言わないといけない立場なんだから」

困った顔をする沙友理に

「あの心配の事思ったら安い物です」

2人はビニール袋に入ったお弁当とお茶を持ちながら、公園へと歩いて行った。

どう見ても他人から見れば、たわいもない、どこにでもいる、カップに見えるだろう。

No.156 14/11/05 20:13
ナルシスト ( 84wJh )

「今市さんあのベンチに座りませんか?」

多田が指指したベンチは木製の日焼けしたベンチだった。

「多田さんあそこにしませんか?」

屋根がある場所にこじんまり座れるスペース。

「女性は紫外線が敵ですからね?」

「紫外線は嫌いです」

落ち着く場所を確保し、2人はそれぞれのお弁当の、ふたを開けて話した。

「あれから…嫌がらせありませんか?」

多田は沙友理の事が心配なのか、あの凄まじい光景を見た、経験者なのであろうか?

「最後のメッセージが来ました」

「最後のメッセージ?」

うんと頷く沙友理

「郵送でした……」

「なんて?」

少し笑顔で沙友理は答えた。

「ゲーム終了だと」

多田は食い入るように沙友理に聞いた。

「犯人は?」

「分かりました」

「なら、警察に行きましょう」
多田は慌てるように沙友理に警察を進めた。

「終了なんてしていません、私には」

お互いに持っていた、箸が止まった。

「サプライズはまだ終了してません、しません」

沙友理は何を見ているのか?
視線は一点を見ていた。

No.157 14/11/05 20:23
ナルシスト ( 84wJh )

「多田さん、あの人形とメッセージカード、警察にありますよね?」

「はい、●●警察署になると思います」

沙友理は何かを確認するかの様に。
「犯人がもし触っていたら、指紋付いてますよね?」

「はい、犯罪者リストからは、見つからなかったみたいです」

ニヤリと
「初犯なら、見つけにくいですよね?、でも指紋が一致すれば?」

「それは…捕まえれますが…今市さん犯人を知って居るんですか?」

沙友理は
「ええ、分かっています、今は黙っておきます。
あっすいません、多田さんのお話しは?」

多田はこの話の後話しづらいのか?

「はい……」

「多田さん?」

「話しづらいです」

首を傾げて多田を見る沙友理だった。

No.158 14/11/05 20:45
ナルシスト ( 84wJh )

「ごめんなさい、変な雰囲気にさせて…ごめんなさい」

多田は話しづらいのか、下を向いてしまった。

「多田さんの奢りのお弁当美味しいです!」

「今市さん僕と真剣に付き合って貰えませんか!」

沙友理のお箸も止まり
「多田さんと1年前に知り合いたかった…私会社辞めるんです…」

「何故? 突然に……」

多田が驚くのは無理な事ではない突然沙友理から聞いた言葉だけに

「私、彼の子供がお腹に居るんです」

多田はひたすらお茶を飲み、自分を落ち着かせていた。

「彼と結婚されるんですか! それはおめでとうございます」

「いえ、裏切られました、と言うか、捨てられました」

「えっ? 捨てられた? その人がピエロの犯人ですか?」

びっくりするのも当然である。

「いえ、犯人は関係者です」

「なら、警察に突き出しましょう!」

「だから、ゲームは終了していません」

多田は沙友理の犯人も何故突き出さないのかも、ゲーム終了ではない意味すら分からなかった。

No.159 14/11/05 20:56
ナルシスト ( 84wJh )

「今市さん、今市さんの意味が僕には、分かりません、何故なんですか?」

「ある時期と時間が解決してくれます…そう、今は待つしかないんです」

多田は沙友理に覆い被さる様に
「お腹の子供さんは、沙友理は産むのですか?」

「勿論人生で一番愛した彼の子供ですから…」

2人のやり取り、時間がどれだけたったのか?

公園の鳩が一斉に飛び出した。

沈黙が続く気まずい雰囲気に

「最低な女でしょう? 私って?」

「いえ、最低だとは思いません」
多田の沙友理に対する気持ちは違う方向に向いてしまったのか?

多分本人の多田ですら分かっていないであろう。

No.160 14/11/05 21:09
ナルシスト ( 84wJh )

「今市さん、あのお店にはいつまで?」

「今月末で退職届けも出しました、多田さん沢山の本が喜んでくれました」

「なら、今市さんとプライベートで会えますか?」

沙友理は多田の気持ちが嬉しかった。
「お腹に子供が居るんですよ? 私には」

「今市さん、時間を待って見ませんか?」

沙友理は少し驚き
「えっ?」

「傷を直すにも時間が必要に、僕を見るにも、時間が要りませんか?」

「多田さんのお気持ちは有り難く、今日の胸にしまわせて下さい」

「あっ、お昼休憩終わりましたから」

沙友理は食べかけのお弁当をビニール袋に入れ、走り去って行った。

沙友理の目には沢山の大粒の涙が溢れていた。
もっと早く多田と知り合っていたら、裕太との出逢いがなければ、こんなに涙する事など、なかったであろう。
沙友理が一番感じているだろう。

No.161 14/11/05 23:27
ナルシスト ( 84wJh )

走り去る沙友理を眺める多田は、こぼしたお茶の缶を拾い、ため息を付いていた。

ずっと沙友理の事が好きだった多田には、やるせない気持ちだろう。

多田は唐揚げがほとんど残っている弁当を、丁寧に片付け、ゴミ箱に自分の気持ちと、弁当に、さようなら、と捨てた。

夕方になると皮肉にも、カラスが多田の唐揚げを餌にたかるのだろうか?


沙友理は店に慌てて帰って来た。

「すいません…遅くなりました」

本棚近くにいた先輩が振り返った。
「沙友理さん、心配してたけど、大丈夫だった?」

「すいません、話が盛り上がっちゃって」

すぐ沙友理は荷物を置き、エプロンをかけた。

「沙友理さんが居なくなるのは寂しいよ」

後ろのヒモをむすびながら
「良い人が入ればいいですね」

「沙友理さんには、ファンが沢山いたから」

「すぐにお客さんも慣れますよ」

「あっ、その雑誌はこっちにして」

沙友理は笑顔で
「はい」

と本の移動をしていた。

駅前にある沙友理の本屋には、電車が通過する音が鳴っていた。

No.162 14/11/05 23:40
ナルシスト ( 84wJh )

この本に囲まれた仕事が大好きだったのに、今は早く辞めない気持ちだった。

多田さんに悪い事したかなぁ?
沙友理は多田さんの、傷を直すにも時間が必要との言葉に、多田さんの言う通りだと思っていた。

さぁ気持ち切り替えないと。
私は1人じゃないんだから。

「しらっしゃいませ」

「その本は左から2列目です」

お腹を触り母となる沙友理には、今しか考えれなかった。
過去を振り返るなら、見えない未来を信じたかった。

No.163 14/11/06 09:02
ナルシスト ( 84wJh )

勤務時間も終わり沙友理は家の近所にあるスーパーに駆け寄った。

「お父さん、何たべるかなぁ?」

食材をかんがえながら
「たまには奮発して、すき焼きにしよう!」

少し材料は思いが、お腹の子供に声をかけ
「少しだけ、我慢してね、お母さん頑張るね」

よいしょ、よいしょ、と坂道を歩いていた。

家の玄関にたどり着いて、一瞬息を飲んだ沙友理。
まだあの恐怖から立ち直っていないのか?

恐る恐るポストにてをかけた。

ポストの中には、沙友理行きつけの、カットサロンの割り引きのハガキが入っていた。

「もう、来ないわ、来たって怖くない」

何をそう思える様になったのか?
沙友理が一番分かっている。

No.164 14/11/06 09:12
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理のお腹は見た目ではまだ分かりにくいが、洋服を着替える時に、若干出て来ている。

「すぐに成長するよね、頑張って生きてね」

洋服を着替え家庭用のエプロン姿で野菜を切っていたら、父親が帰宅した。

「ただいま」

「お父さん、おかえりー」

お父さんの帰りを今かと待っていた沙友理。

「今日もお疲れ様でした」

「会社に辞表出したのか?」

父親の鞄を持ちながら

「うん、今月末に退職する」

「そうかぁ…晩ご飯は鍋か?」

「ハズレ!すき焼きでした~」

クスクス笑う沙友理に父親は少し顔が優しくなった。
現実昨日の沙友理の話に納得も、良かったとは喜べない。

No.165 14/11/06 09:28
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、お風呂沸いてるよ」

「先に飯にするか!」

慌てながら
「すぐに支度するからね」

父親は母の仏壇に手を合わせていた。

「さぁ!誰にでも作れる、すき焼き、頂こうか!」

「失礼だわ、むかつく」

と怒りながら、鍋に材料を入れだした。

「沙友理?今後どうするんだ? 働かなくても、お前1人くらいなら、食べさせれる」

野菜を入れながら沙友理は
「子供をちゃんと産んでから、私がまたフルで働いて、お父さんには、お腹の赤ちゃんを見て欲しいの、ゆっくり孫と暮らして欲しいの」

びっくりした父親は
「孫の面倒? 勘弁してくれよ~」

「別にいいじゃんか」

「お父さんはまだ、心の整理すら付けてない、結婚も出来ない、相手の男に捨てられた、孫なんて……」


沙友理は箸を置いた
「ごめんなさい、でも気持ちは変わらないの、お腹の父親を愛しているの、私は前しか向かない事にしたの!」

父親は黙って器の卵をかき混ぜていた。

No.166 14/11/06 12:16
ナルシスト ( 84wJh )

久しぶりにお父さんと笑える会話が出来た。
あれからピッタリメッセージカードも、ピエロ人形も贈られて来なくなった。

沙友理は「わかってんのよ」

洗い物をしながら1人呟いていた。

「お父さん~時計の音大丈夫だよ~またお母さん復活させてよ~」


「沙友理? 何か合ったのか?」

沙友理の洗い物の手が一瞬止まり

「怖くなくなっただけ」

また洗い物を洗い出す沙友理であった。

父親はまた椅子に乗り、時計の裏を触りだし、時計の時間になれば、鳴りだす設定にした。

「よし!またこれから鳴り出すぞ!母さんの時計だ!」

嬉しそうに時計を眺める父親に沙友理も安らいだ。

No.167 14/11/06 12:36
ナルシスト ( 84wJh )

時計の時間がやってきた、ボーン、とキッチリ役目を果たす時計に、思わず拍手する沙友理。

「お母さん~復活したわよ~ごめんね。」

「母さんは大丈夫だ!」


「お父さん、今日から自分の部屋で寝るね、お父さんもゆっくり眠れるでしょう?」

「沙友理と昔の話したのしかったぞ」


「お父さんから解放してあげるわ」

お風呂の用意をしながら沙友理は父親に話しかけた。

「お父さん?」

「お父さん?

「体調悪いの?」

「お父さん?」

「沙友理…胸が苦しい」

父親は心臓辺りを両手で押さえている。


「お父さん、大丈夫だから、すぐ救急車呼ぶから、待っててね」

沙友理は慌てながら電話を持ち
「救急車って、110だっけ?119だったっけ?」

パニックになってしまっていた。

深呼吸をし。
「すいません、救急車お願いします、住所は○○市○○番地です、すぐにお願いします!


「お父さん、今から救急車来てくれるから、大丈夫だよ、私もここに居るから!」

苦しそうに胸を押さえる父親。
そばで何もしてあげれないもどかしさを感じていた。


すうく救急車のサイレンが沙友理の家に近付いて来た。

「お父さん、大丈夫だよ、もう少し頑張ってね」

沙友理は父親を抱きしめ救急車の到着を、今か今かと待っていた。

No.168 14/11/07 00:14
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、お父さん、大丈夫だからね」

大丈夫と自分自身にも言い聞かせていた。
お父さんは苦しそうだが

「大丈夫だ」

救急隊に
「急に胸を痛いと言い出して」
沙友理はどうすれば良いのか?

「娘さんですか?」

「はい、娘です、大丈夫ですか?」

救急隊は父親の意識レベルを確認しながら、受け入れ先の病院を探していた。

ピーポー、ピーポーとサイレンの音とガタガタ震える救急車。

「そこの車救急車が通過します、端によけて下さい」

救急車は他人事で見ると、早い気がするが、搬送される家族には、決して早い速度ではない。

救急隊
「詳しい詳細教えて下さい」

「今市さん、大丈夫ですよ、少しの辛抱です」

救急隊は父親の意識レベルの確認と、沙友理には父親の状況を聞いていた。

早く受け入れ先の病院に着いて欲しい。

2人の救急隊は役割分担で狭い車の中で必死に対応していた。

沙友理は父親の手を握り締め、ガタガタと揺れる救急車に耐えていた。

No.169 14/11/07 00:26
ナルシスト ( 84wJh )

「普段からこんな発作はありましたか?」

沙友理は泣きそうな声になり
「いえ、初めてです、大丈夫ですか?」

救急隊は患者の脈拍、血圧、意識レベルを確認すると、搬送されるであろう、病院に報告していた。

「お父さん、お父さん」

救急隊
「大丈夫ですよ、あまり興奮しないで下さい、本人さんは、意識がありますから」

ガタガタが中途半端ではない。

急速な上に曲がる角度が付いて行かないのか?
ガタガタが恐怖さえ感じる。

「今市一生さん、57歳、男性で、意識は少しあり、受け答えの反応あり」

救急隊は沙友理の父親に終始声掛けをしていた。

沙友理は父親がこのまま亡くなってしまうのか?
「お父さん、1人にしないで!お願い!」

「大丈夫ですから、興奮しないで下さい」

何時間救急車に乗っているか?
錯覚するぐらい、沙友理には長い恐怖だった。

No.170 14/11/07 01:41
ナルシスト ( 84wJh )

受け入れ先の病院は父親を待っているかのごとく、病院のストレスに移り、処置室に入って行った。

沙友理は待ちあい室で、医師からの説明まで、待つしかなかった。

1人になってしまうふあんと、恐怖に怯えていた。

看護師さん
「今市一生さんの御家族ですか?」

沙友理は覚悟していた。

「はい、娘です」

「先生の説明がありますから、中に入って下さい」

息を飲んだ、沙友理は、ゆっくり処置室に入った。

医師
「今回今市一生さんの発作は、心臓に疾患がありました、命に別状はありません、ただいつ発作があるか?分かりませんので、念のため検査してみましょう、かなりストレスも原因かもしれません、明日検査しましょう、今日は点滴処置出来ました、再度受診して下さい、お大事に。」

夜間の処置はあくまでも緊急の手当てだけだった。
本格的な検査は明日以降だとの事、点滴が終われば帰れそうだ。

少し安心した。

もうお父さん以外私には見方はいない。

そして沙友理は父親の病気が自分にも責任があると責任を感じていた。

処置室に入り父親に。

「お父さん、胸の痛み楽になった?」

「沙友理、心配かけたね」
その父親の気遣いに胸が痛かった。

「お父さん、一度検査受けようね? お父さん頑張り過ぎたね、有り難う」

父親は娘のその言葉に

「孫を見るまで、死ねないよ、母さんは迎えにこないから、安心しなさい」

沙友理には一番嬉しい言葉だった」

「孫の顔見るまで死ねない…」

父親の本当の言葉に

「必ずお父さんの孫頑張って産むからね」

場所は病気だったが、2人の決意は、固まっていた。

No.171 14/11/07 12:44
ナルシスト ( 84wJh )

お父さんと向き合い話すなんて想像もしていなかった。

何をどう相談すれば良いのか?
いつも相談事は裕太の役割だった。

信頼していた、父親より愛していた裕太に裏切られ、親って可哀想な存在なのかなぁ?

黙っていても一番心配してくれるのは親なんだとつくづく今回で味わった。

お腹の子供も私を悩ませ、心配させるのかなぁ?
お腹をさすりながら考えていた。

私とお父さんは夜深夜に帰宅した。

「お父さん、仕事辞めてくれない?」

体調が思わしくない父親に問いかけた。

「大丈夫だよ、通院すれば良い話だ」

「私が働くし、お母さんが残してくるた、貯金もあるから」

父親は母親の仏壇に目をやり

「母さんの残してくれたお金使いたくない」

少し怒った口調になった。

「お父さんの治療の為に使うんだよ、お母さんの気持ち分からないかなぁ?」

「分かるから、手を付けたくない」

「お母さんの幸せは、私達が元気で暮らす事なんだと思うよ、違うかなぁ?」

一瞬父親は言葉を詰まらせた。

沙友理は父親の気持ちを確認するかの様に話した。

「お父さんに、今までご苦労様でした。ってお母さん言っとるよ、私には聞こえるけど、お父さん聞こえない?」

仏壇を眺め
「本当にそう思ってるのか?」

お母さんの写真は笑っていた。

No.172 14/11/07 13:01
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、今日は疲れたでしょう?」

肩を落として黙っている父親の背中が小さく見えた。
男性って弱いのね。
お父さんはお母さんがいないと駄目なんだね。

声には出せないけど私はそう感じた。

「おじいちゃん、早く寝て元気でいないと、孫抱けないよ」

冗談半分でおじいちゃんと呼んでみた。

「おじいちゃん、か…悪くないな」

少し笑ってくれた、お父さん。

「沙友理は強いなぁ!」

「だってお母さんの娘だから」

少しお母さんの自慢もしないとね。

2人は別々の部屋に入り、残り少ない明日の時間を過ごした。

お互いに離れて寝ていても、同じ事を考え、眠れなかったのかも知れない。

No.173 14/11/07 13:59
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、早く起きて!今日必ず病院に行ってね! 分かった!」

うるさいと言わんばかりに

「はい、はい、行きますよ!まるで母さんみたいだ」

私は会社に少し事情を話したいので、慌てて家を飛び出した。

会社に行っても父親の病気が心配な沙友理だった。

「おはようございます」

昨日徹夜で寝れなかった沙友理だが、笑顔だけは絶やさなかった。

「先輩…すいません、勝手なお願いなんですが」

先輩は本を両手に持ち

「沙友理さん、おはよう、どうしたの?」

「父親が昨日倒れまして、明日から2日間休ませて貰えますか?」

本を置き、スケジュールを見た先輩

「バイトに連絡してみるよ、大丈夫なの?」

「うわー助かります、月末の予定なのに、すいません」

「沙友理さんも大変だね~」

「有り難う御座います」

沙友理は頭を下げ、エプロンを掛け始めた。

No.174 14/11/07 16:10
ナルシスト ( 84wJh )

本屋さんは昨日の出来事など知る事もなく、夜勤明けの本好きな常連さんなどがパラパラと入って来た。

多田も事情を知っていたのか?

「今市さん、昨夜大変でしたね」

と入ってきた。

沙友理さ少し驚いたのか?

「多田さんご存知なんですか?」

「ええ、前にも話しましたよね?消防と救急は同じ管轄なんですよ」

誰しも知らない事だろう。

消防と救急は同じ管轄でも、消防は救急車には乗れない。
同じ場所にいるだけで、それぞれの役割は全く違う。

しかし消防と救急は同じ部署により、情報くらいは耳に入っても、全く可笑しくない。

多田は救急隊から沙友理の父親の話をきいたのであろう。

「お父さん、大丈夫でしたか?」

沙友理は少し警戒しているのか?

「はい、大丈夫でした、多田さん何故そんなに詳しいのですか? 何故そんなに気にしてくれるんですか?」

多田は沙友理に誤解されていると思ったのか?

「今市さんの事が話になって…………」
 
沙友理は冷たく
 
「個人情報もないのかしら?」


「すいません…内部の話に首突っ込む僕が間違っていました……」

2人は黙り込んでしまった。
 

「大変だったの?」

気まずい雰囲気を消してくれたのは先輩の言葉だった。

No.175 14/11/07 18:53
ナルシスト ( 84wJh )

「いえ、大丈夫なんですが、大事を取りたくて」

沙友理は混乱していた。
多田の情報と先輩の声かけに…

先輩
「緊急の時は相談してくれよね」

沙友理にはいつも笑顔で仕事では良き兄貴的な存在だった。

多田はバツが悪いのか、沙友理の言葉に困ったのか?

「今市さん、すいません…余計な事まで話してしまい」

「心配して下さる気持ちだけ、頂きます」

先輩
「仲がいいんだね、お2人は…」

多田にやきもち焼いているかのようなタイミング、冷やかしているのか?

「多田さん、ちょっと」

沙友理に誘われた多田は、店の隅で話し始めた。

「すいません、多田さん、私の携帯番号教えても良いですか?」

「はい、喜んで」

ポケットから買い物でもしたのであろう、レシートの裏に書き込もうとした。

「多田さん、それレシートですね」

沙友理は多田を見て、クスリと笑った。
多田は困ったのかの様に苦笑いをしていた。

店内は時間帯もあり、まだガラガラの状態で、2人の事を先輩は眺めていた。

No.176 14/11/07 21:53
ナルシスト ( 84wJh )

「では、また連絡します」

「多田さん…」

沙友理はお腹をさすり多田にサインを出した。

「分かってます」
何かに吹っ切ったのか?
多田の気持ちは揺るがない笑顔を見せた。

「先輩、すいません」

職場に戻って行く姿を見届けると多田は本すら手にしないで帰って行った。

先輩は多田がいない事を確認するかの様に

「あれ? 多田さん帰ったの?」

沙友理は多田が何を用事に来たのか把握していなかった。
ただ、仕事の邪魔にならない様に連絡先を渡したのだろう。

「さぁ? 何の用事なのか?」

首を傾けた。

「いらっしゃいませ!」

沙友理の明るい声が店内をより一層明るくしてくれた。

電車の音も時間帯により変わりだした。

No.177 14/11/07 22:09
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理さん、お昼休みしてくれていいよ」

時計を見ると11時30分に針が止まっていた。

「お先に休憩させて頂きます」

沙友理はまず父親に連絡を入れていた。

「あっ、お父さん?病院に行った?」

「行って来たよ、なぁ沙友理、今の病院は遠くて、父さん通えないから、近所のお医者さんに、紹介状を書いて貰ったんだ」

沙友理は多少遠くても大きな病院が安心だったように。 

「大丈夫なの? 町のお医者さんで?」

「先生も定期的に様子見ようって言ってくれてるから」

少し機嫌が悪い沙友理は

「お父さんがいいならそうすれば」

投げやりの言葉になってしまった。 

「大丈夫だ!沙友理は大丈夫なのか? お腹の調子は?」

「だから、お母さんの生まれ変わりだから、大丈夫よ、あっ明日から2日間お休み貰ったの!」

朝そんな話しすらゆっくり出来ていなかった父親は、少し驚いた様子だった。

「退職するのに、大丈夫なのか? 会社に迷惑かけてないのか?」


「心配症なんだから、お父さんは」

少し鼻で話す口調は母親似だった。

No.178 14/11/08 00:02
ナルシスト ( 84wJh )

「気をつけて帰ってこいよ」

「じゃあね!」

お父さんは私がどれだけ心配なのか、分かってるのかなぁ?

父親は沙友理の一連のピエロ事件を引きずりながら仕事に向かった。

お互いに話す話題は暗い事ばかり。
あのピエロの犯人を確実の物にするには、沙友理のあの確認が必要だった。

沙友理の今の楽しみはやはり読者だ。
沢山の恋愛小説を読みあさり、自分と裕太を重ねていた。

沙友理が今手にしている本の題名は、貴方の裏切り、沙友理が今体験している事を知っているかのごとく、大切に鞄の中にしまっていた、その本には、途中で読み止まっている、しおり、が挟んであった。

「私が作者なら結末は、こうならないわ」

クスッと笑いながら、しおりを取り出し読み始めた。

No.179 14/11/08 00:15
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理のお昼休みは人と会わない時は、手作り弁当を食べ、本が今か今かと待ちわびる、在庫の部屋の片隅で、読書を楽しんでた。

有名作者や自主出版の作者の並ぶ倉庫である。

沙友理の携帯が鳴りだした。

非通知。

「ごめんなさい、全て分かってるから」
 
鳴り続ける非通知に沙友理は出る事はなかった。

「赤トンボでしょう?」

ほら聞こえて来たわよ。

赤トンボが…

怖がる様子すらなく、反対に挑発したいくらいの沙友理の目つきに、強い意志が固まっていた。

No.180 14/11/08 00:25
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は赤トンボの主に。

「まだ、出番ではないのよ」
と囁きながら、鞄の奥に携帯を入れていた。

沙友理はまた裏切られた主人公の世界に入り込んだ。

時計を見て。

「あっ!時間だ!」

お腹を触りながら、裕太との再会を夢見ていた。

「お母さん頑張って来るからね!」

エプロンのシワを直し、後ろ紐をくくり直し。

「先輩、お先でした~」

ドアを開け。 
「いらっしゃいませ!」

沙友理には今気になるのは父親の病状だけであった。

No.181 14/11/08 11:05
ナルシスト ( 84wJh )

夕方近くになると電車の本数も通過する電車の数も増えてくる。

ここからが店のお客さんとの戦いである。
やはり週末は混み合い、万引きの数も多くなる。

現行犯逮捕は先輩の役目であった。

「あの主婦のおばさん、鞄に何か入れそうですよ」

先輩は背伸びをして沙友理の言う主婦を見ていた。

「ひと目気にするのは、怪しいなぁ」
 
「私と目が合っちゃいました!」
 
なかなかの常習犯はすぐに手出しはしない。

沙友理は本を片付ける振りをしてその主婦に近づいて行った。

エプロン姿なので店の人間だとは直ぐわかる。

主婦は何もなかったように店から出て行った。

No.182 14/11/08 12:05
ナルシスト ( 84wJh )

最近小学生など低年齢の万引きも増えている。
文具類も置いてあるコーナーには、沢山の子供達が喜ぶ魅力的なキラキラシール。

友達同士で流行っている交換手帳など。
子供の万引きは至ってシンプル。


ほとんどの親は連絡すれば、逆切れされる。

「あのね!家の子供が万引きなんてする訳がないわよ! ムカつく書店だわ!2度と来ないわこんな店!」

毒説吐いてお金はトレイに置いて行く。
おつりは要らないからとトレイのお札は言っている。

やるせなくなる事も沢山あった。

仕事終わりの合図の様に、先輩が声を出した。

「沙友理さん上がってくれていいよ」


「お疲れ様です、2日間わがままさせて頂きます」

「気をつけて……」

私はエプロンを外し、買い物を済ませ、家路に急いだ。

あの赤トンボは私に何を伝えたかったのか?

電話に出れば良かったかなぁ?

沙友理のビニール袋には、おでんの材料が入っていた。

No.183 14/11/08 14:17
ナルシスト ( 84wJh )

ビニール袋を2つ両手に抱え坂道を歩いていく。

後ろから人が歩く足跡が沙友理の耳に入ってきた。
歩幅数が違うのでやけに恐怖にかられる。

私なの?
ピエロの主なの?

携帯が鳴った。
関係ないのだが、どきっとした。

「今市さん発見」

「えっ?」

笑いながら
「後ろ、う し ろ ですよ」
 
沙友理は恐れながら振り返ると

「重いでしょう」

両手を出して微笑む多田の姿が見えた。

「驚かさないで下さいよ」

ビニール袋を持ち返しながら

「連絡1号です、偶然です、家まで送りますよ」

沙友理はこの多田が少し怖かった。

偶然が多すぎる、でも仕事は消防士は、間違いない。

「多田さんは不思議な人ですね?」

「そうですか?」

沙友理の疑問を質問してみた。

「多田さんのお仕事、お休みが多くありませんか?」

多田はクスリと笑い。

「1日勤務で2日休みなんですよ」

沙友理はまた質問した。

「例えば火事があれば勤務体制かわりますよね?」

多田と沙友理は歩きながら

「筋トレや練習はありますよ、救急隊より出番が少ないだけ、まだ日本は治安が良いって事です」

分かる様な分からない様な。

No.184 14/11/08 19:43
ナルシスト ( 84wJh )

「足元気をつけてくださいね」 

多田は重いスーパーの袋を両手に持ち囁いた。

「多田さんって不思議な方ですね?」

口元が緩む多田が

「いたって普通だと自覚してますが、不思議ですか?」

「ピエロの時も……」

「今市さんとは何か縁があるんですかねぇ?」

多田のその言葉の意味すら沙友理は分からなかった。

「お父さん帰ってるみたいです」

沙友理を待つかと家には明かりがついていた。

沙友理は少し笑顔で

「多田さん、有り難う御座いました」

「せっかくなので家まで運びますよ」

慌てた様子の態度に多田は沙友理が少し迷惑なのかと感じていた。

後何歩の家までの距離。

父親が玄関の扉を開け、沙友理の帰りを待っていた。
これも親子の感なのか?

沙友理は父親の顔を見て多田の顔を見て
「多田さん、有り難う御座いました」

玄関の扉から半分身体を出した父親が

「沙友理?」

2人が何故一緒なのか?
父親は驚いた顔をしていた。

No.185 14/11/08 19:57
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、ただいま」

多田が持っているスーパーの袋を沙友理は持ち

「お父さん、多田さん、お店のお客さんで、ピエロの時にもお世話になったの」

「それはお世話をお掛けしました、沙友理の父親です、どうぞ」

父親は多田を家に招こうてしていた。

沙友理は少し困った顔で

「お父さん、多田さんにご迷惑だから」

「多田さん? ご迷惑ですか?」

嬉しそうな笑顔で

「迷惑どころか、反対に良いんですか?」

父親と多田の関係など、面識すらない、何故知らない多田を沙友理の父親は招くのか?

「多田さんでしたね? 汚い家ですがどうぞ」

多田は沙友理の顔を見る事もなく

「では、お言葉に甘えて、お邪魔しま~す」 

沙友理より先に多田は家に入って行った。

呆れ顔の沙友理は後から黙り玄関のドアを閉めた。

誘導する父親

「さぁ、さぁ、沙友理がお世話になりました」

テーブルにおでんの材料が置かれ、沙友理は無言で台所に立ち始めた。 

父親と多田はお互いに自己紹介を始めていた。

夕食の支度をし始めた沙友理は、2人の会話を台所から聞いていた。

No.186 14/11/09 09:34
ナルシスト ( 84wJh )

「そうなんですか?消防のお仕事を」

「救急隊からお父さんが運ばれた話し聞きましたが体調如何ですか?」

多田のアピールなのか?
ただの野次馬なのか?
沙友理は多田を台所からチラリと見ながら、お鍋がぐつぐついいだしたので、火を緩め2人の元へ入って行った。

「何盛り上がってるの?」
 
自分だけ会話のはみごになっていると思っている。

「誠実な青年だね多田さんは」
 
お父さんは多田を褒めだした。

裕太がその存在なら分かるが、お腹の子供の父親ではない多田を何故父親は多田を受け入れるのか?

「沙友理、飯の支度出来たなら、多田さん沙友理のご飯食べてやって下さいよ」

沙友理は父親の気まぐれですぐ帰るものと思っていたのでびっくりしていた。

「えっ? はい」

「何か図々しいですよね、僕…」

多田に遠慮と言う言葉はないのか?
父親と会話の中で意気投合しているのを聞いた沙友理は複雑な思いだった。


沙友理は妊娠していて、それは多田も知っている。 
知らない男性の子供を身ごもり、会社も辞める沙友理に、何故多田は近づいて来たのか?

沙友理のピエロ犯人の正体は、あの人のはず。
沙友理の勘違いなのか?
ピエロ犯人は?

No.187 14/11/09 09:50
ナルシスト ( 84wJh )

2人に熱々のおでんと、母親の自慢料理のいかなごの佃にを小鉢に入れ、茶碗に軽くご飯を入れた。

「お代わりしてして下さいね」

「美味しいです! 竹輪大好きなんです」

「案外こう見えてもって、沙友理は飯は上手いんです」

2人に褒めて貰っても、あまり嬉しくない。

多田さんが裕太だったら、私の気持ちも嬉しかったのに…

沙友理はまだ裕太を引きずっている。

覚悟を決めて子供を産む位だから、沙友理に取って裕太は忘れる事はない存在だった。

父親と多田は、上手い、と口に出す2人を見て。

「2人共、大きな子供みたい」

と2人に聞こえる様に言葉を投げかけた。

今市家は時には笑い声が聞こえていた。

沙友理の携帯が鳴りだし、テーブルから離れて、携帯を見た、非通知、沙友理は、ピエロの主なの?

もしかしたら?
裕太なの?

勇気を出して、非通知の電話に出た。

「もし、もし、」

No.188 14/11/09 10:05
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理が電話に出ると非通知は電話を切った。

誰だのだろう?

裕太なの?
今どんな暮らししてるの?

沙友理は父親と多田の事などうでも良かった。

この電話の主が知りたかった。

隣では父親と多田が楽しく食事をし、楽しく笑う会話が弾んでいた。

何年も前から、甥と叔父さんみたいな、距離まで近づいた関係みたい。

「お父さん、病気の原因は?」

大根を口にしながら

「軽い心筋梗塞で、大した事はなくて、町医者に見て貰い、定期的に総合病院に、検査に行く程度」


「安心しましたよ」

多田に笑顔が出た。

2人共、ましてや、多田はお酒は飲まない。
仕事柄のせいなのか?

アルコールは一切飲まない。

「今市さん、まだいたずらの連絡あるんですか?」


「いえ、間違いない電話でした。」
聞いているんだこの人。

No.189 14/11/09 11:03
ナルシスト ( 84wJh )

早く帰って欲しかった。
時計は9時にボーンと鳴りだした。

「お父さん、多田さん、明日仕事よ」

「すいません、話が弾んで、また来て下さいな」


「こちらこそ、甘えてしまい…今市さん、ではまた」

多田は父親に礼を言い帰って行った。

沙友理は待ってましたの様に父親を突き放す発言をした。 

「何故、多田さんを家に入れたの? 初対面で、いきなり、失礼だわ、あの多田さんも失礼な人だわ!」

沙友理に叱られ少し反省するかの様に父親は話し出した。

「彼は良い人だと思ったんだ、父さんが居なくなれば、多田さんなら沙友理を任せられる」


「私妊娠してるのよ? 多田さんの子供じゃないんだよ? 分かってるの?」

「人間性だよ、沙友理の彼は父さんに、挨拶に来た事あるか? 妊娠させておきながら、親に謝る事もなく、沙友理を捨てた男に未練あるのか?
沙友理はそんな事も分からない女性なのか?」


だからって多田を沙友理のわがままで、多田の人生を狂わせるのか?

ただ、多田が沙友理の親に会うと言う事は、沙友理の妊娠も含めての、正直な気持ちなんだろう。

No.190 14/11/09 11:18
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さんは多田さんにお腹の父親になって欲しいと思ってるの?そんな浅はかな考え方なんだ!」

「沙友理は1人っ子だ、多田さんなら、自分に家庭を持っても、沙友理を妹の様に、気にかけてくれる。 沙友理は父親探しをしているのか?」


お父さんの言葉には納得した。

「明日お医者さんなんだから、早く寝てよね!」

沙友理は父親の気持ちとは全く考えを想像していた事が恥ずかしかった。

お兄さん的存在ねぇ…

会社の先輩はまた違う兄貴的存在だった。

お父さんもお父さんなりに、心配してくれてたんだぁ…

ごめんなさい。
お父さん。

No.191 14/11/09 15:23
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理はお父さんの気持ちと多田に対する誤解を考え直していた。

荒いものをしながら。
水道は沙友理が手を止めていても流れていた。

多田の優しさは同情なのか?
そして会った事も偶然なのか?

沙友理は未来など分からなかった。
誰も沙友理の今後など分かる筈がない。


「沙友理 風呂空いたぞ!」

止めていた手の周りは水浸しになっていた。 

「やっちゃった!」

沙友理はタオルで飛び散った水滴を拭いていた。

明日は父親とお医者さんに行くのので、早くお風呂に入り、部屋の電気を消した。

No.192 14/11/09 15:39
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、支度出来た?」
 
沙友理は、父の顔を見て笑った。
 
「お父さん髪の毛、後ろはねてるよ! 子供みたい」

「そうかぁ?」

髪を触りながら、照れくさそうに、沙友理の目を見ていた。

「保険証と紹介状もったわね?」

ぶっきらぼうに父親は
 「母さんみたいな台詞いうな!」

少し気分が悪くなったのか?
無言で靴を履くお父さん。

沙友理はお母さんみたいに父親を急かした。

「はい、はい、早く行くわよ」

首を傾けて
「何故女の子は父親にキツい事平気で言えるのかねぇ…」

2人は紹介状を持ち小さな病院に足を運んだ。

総合病院と違って、往診もしてくれるので、父親はそこを希望したのだと、沙友理は少し安心した。

診察室に2人が入ると先生の説明は始まった。 

白髪の父親より少し年配だが、言葉の優しさが安心させてくれる。 

「今回は軽い心筋梗塞でしたが、お薬は必ず服用して下さいね。 年に1度は総合病院にお願いしましょう」

父親がお礼を言う前に

「今のところ命には別状はないんですね?」

その沙友理の質問に母さんみたいだなぁ?
と感じてた父親一生の顔が笑っていた。

No.193 14/11/09 16:31
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、良かったね、感じのいい先生で」

「家から近いのが一番だよ」

沙友理は半歩父親より先に歩いている。

父親はその沙友理の姿をどう思ってるのか?

父親なんて所詮娘には弱い生き物なのか?
会ってもない男性の子供を身ごもり、娘が男性と性行為した現実を、父親として何より辛い気持ちだろう。

それを承知で沙友理に寄り添う多田は父親としては、大切な存在なのであろうか?

沙友理は父親の胸の内など考えもしていないであろう。

少しお腹が若干ふっくらしてきたように父親一生は感じてた。

一生の知らない男性…
我が娘を捨てた男性…

娘の身体を汚した男性…
憎くて当たり前な筈ですある。

沙友理から妊娠を告白された時、一生は父親として、1人の男性として、どう感じだのだろう。

「沙友理、せっかく外出したんだから、出産の用意買いに行こうか?」

一生の精一杯の沙友理への愛情だった。。

No.194 14/11/09 20:53
ナルシスト ( 84wJh )

「ありがとう、明日行こうと思ってたの」

一生の顔は少し曇っていた。
娘が哀れなのだと。

「沙友理、後悔しないか?」

一生の出す言葉はその後悔と言う重みを沙友理は覚悟しているのか?

「後悔はしていない、お父さんも、私が産まれた時、後悔した?」

一瞬沙友理の言葉に戸惑った。
沙友理はシングルマザーを望んでいる。

母さんがいてくれたら、俺はこんなに悩まなかった。
多分母さんに、おろさせろ、と投げていたと思う。

頑固親父で娘に嫌われていただろう。

そんな事を思いながら沙友理とベビー用品店に向かっていた。

沙友理は父親がベビー用品店など苦手なんて気にもしていなかった。

「お父さん、こっち、こっち」
 
手招く沙友理
 
「父さんは外で待ってるよ」

「1人は寂しいよ」

その沙友理の言葉に、1人で産み、1人で育てる我が娘が哀れだった。

一生は沙友理に手を引っ張られ店内に入って行った。

はっきり言って嫌だった。
本来なら沙友理の隣りにいる父親の存在はいない。
諦めるしかなかった。

No.195 14/11/09 21:02
ナルシスト ( 84wJh )

ベビー用品店の店内は女性で溢れてた。
男性がたまにチラホラ居るだけ。

一生には場違いの雰囲気だ。
幸せに子供服を探す女性や、2人目を待ちわびる若夫婦。

「お父さん、これどうかなぁ?」

少し視線を感じていた。
親子で来てるが、父親と娘の光景に、自然と違和感らしい視線を。

「沙友理の好きな服選びなさい、父さんやっぱり外がいいよ」

沙友理に一万円札を2枚渡し、一生は逃げる様に店内から出て行った。

一生の目は涙がこぼれそうだった。

No.196 14/11/10 10:48
ナルシスト ( 84wJh )

どれだけ沙友理を待っていたか?

「ごめんね、お待たせ」

沙友理の手には3袋を両手で下げて嬉しそうな顔で店内から出て来た。

「お父さんが持つから、かしなさい」

沙友理は父親に紙袋を2個渡した。

「お父さん、大丈夫?」

父親の体調も考え沙友理は1袋だけ手元から離さなかった。
見えない娘の気遣いなのか?

「お金足りたかい?」

「大丈夫だったよ、ありがとうね」

この会話は父親と娘の距離なのか?

母親ならもっと弾けた会話であったと思うと沙友理は感じていた。

「沢山買えたよ、お父さん、ありがとう」

「何か栄養のつく食べ物食べよう」

そんな不器用な父親は沙友理の顔も見ず歩いて行った。

不器用な父親の愛情である。

No.197 14/11/10 12:08
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、ここで食べようか?」

セルフサービスの食堂を指差した。

「おぃ、もっと肉なんかでいいんじゃないか?栄養取らないと…」


「これから沢山お金も掛かるから、贅沢な事出来ないよ、お父さんの好きな、焼き魚もあるし、快適なくらいよ」

娘の口が節約だの身体を労ってくれる言葉に、一生は、病気も時には悪くないかもと心の隅に思っていた。

「ほら、お父さん早くしてよ」

沙友理は父親の事などそっちのけのように歩いていた。
さっきの気持ちはどちらに?
一生はキツい事を言うが父親思いの娘に黙って着いて行った。

親から見ればいくつになっても可愛い娘、お父さん大好き! 大きくなったらお父さんと結婚するの! 世の父親も必ず幼い頃の娘の言葉を、忘れないでいると思う。

沙友理とセルフサービスのお店に入り、一生の好きな物をトレイに乗せた。


「お父さん美味しいでしょう?」


「なかなか旨い」

「卵焼きいただき!」

「沙友理の唐揚げ貰うぞ!」

たわいもないこの一時が一生には嬉しかった。

沙友理は無邪気に一生から取り上げた卵焼きを必死に食べていた。

この沙友理にあの残酷なピエロ時間が合ったとは思えない無邪気な顔をしていた。

No.198 14/11/10 13:56
ナルシスト ( 84wJh )

「ご馳走さまでした!」

沙友理の携帯が鳴りだした。

「また非通知だわ」
 沙友理が電話に出るとすぐ切れた。

「間違い電話か?」

「違うの非通知設定されていて誰だか分からないの」

ピエロの主がかけてきているのか?

一生にとって一番避けたい相手は違っていた。

「沙友理の、その…お腹の父親かもしれないぞ」

沙友理は、裕太からの連絡を待っていた。

席からバサッとと言う表現が一番適している。

「沙友理携帯屋さんに行こう」

沙友理はいきなり父親から携帯ショップの言葉が出た事に驚いた。


「どうしたの? いきなり…」

「もう 過去と縁を切れ」

裕太からの少しでも光が消えてしまう、裕太との繋がりがなくなってしまう。

沙友理の気持ちを確かめたかった。


「沙友理はその男に未練があるのか? いつか沙友理を迎えに来ると思っているのか?」

今まで沙友理が見た事がない口調で父親は沙友理を睨みつけていた。

No.199 14/11/10 14:52
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理が今から歩んで行く意味とはそう言う事だと自覚しているのか?」

そんな事まで考えていなかった。
まだ裕太が迎えに来てくれると…

「お父さん、明日私が行くから…」

「父さんと行けない理由でもあるのか?」

行き止まりでバックも避ける道もない車のような気持ちだった。


父親と歩きながら、裕太、もう、さようなら、なんだよ。

裕太と歩んで行きたかったし、まだ本当に吹っ切れ…いないのか…

沙友理の前を歩くお父さんは、力強く携帯ショップに向かい歩いていた。

No.200 14/11/10 15:29
ナルシスト ( 84wJh )

私とお父さんは携帯ショップに行き、いきなり番号札も取らずに


「この子の携帯番号を変えてくれ!」

「お父さん、番号札取らないと…」

憎いのであろう。
娘を捨ておきながら、無言電話をする相手。

一生にはその無言相手が裕太と思い切っている。

カウンターに座り、沙友理の携帯番号は、変わった。

裕太との連絡は完全に閉ざされた沙友理。

裕太…
さようなら…

「さぁ、これですっきりした」

父親は長い携帯ショップの話の疲れと、沙友理には近寄って欲しくない、存在がいなくなり、ドアが開くなり、両手を大きく伸ばした。

No.201 14/11/10 22:56
ナルシスト ( 84wJh )

寂しかった…
裕太の番号はあのホテルで髪をナイフで切った時には、1時の感情で削減ボタンを押してしまった。

残して置けば良かった。
お父さんを裏切る事は出来ない。

「沙友理…辛いだろうが、過去とお別れするんだぞ」

お父さんは沙友理の為、そして父親のいない、現実に前向きに歩いて欲しい願いだった。

「大丈夫だよ、背中押してくれて、ありがとう」

2人は違う気持ちで家路に向かった。

いつの間にか父親の手には、紙袋が3袋ももっていた。

「沙友理、良く頑張ったぞ!」

その父親の言葉に、お父さん、ごめん、しか沙友理の心にはなかった。

休みはあっけないく過ぎ、沙友理は会社に、後は沙友理が退職まで働く毎日がやって来た。

No.202 14/11/11 12:38
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理が会社を辞める事を知った常連客は、本をこよなく愛し、沙友理をこよなく愛した人達だった。

毎日沙友理の退職を寂しく思う常連客が会いに店に訪れて来た。

「沙友理ちゃん寂しくなるよ」

「ありがとうございます、私より若い人が入りますよ」

年配者に人気だった沙友理は孫が居なくなるようなとてつもない気持ちになっていた。

「沙友理ちゃんが居ないと、毎日の張り合いがなくなるよ」

「ありがとうございます。私を大切にして貰って、たまに顔出します、今度はお客さんで」

沙友理がどれだけお客に可愛がられ愛された事は、一緒に働いて沙友理を見てきた、先輩が一番分かっているだろう。

「沙友理さんは人徳だったね」

「はい、幸せでした。」

「送別会を計画してるんだよ」

沙友理は嬉しそうに


「ありがとうございます、気持ちだけで結構です」

少し意外だったのか?
 「なんで?」

沙友理

「余計に辛くなりますから」

先輩はそれ以上送別会の話はせず、違う話に切り替えた。

「なら、沙友理さんに、何か記念にプレゼントしようかなぁ?」

「いいんですか!是非先輩から欲しい物があるんです」

沙友理は嬉しさのあまり、先輩を店の3階に連れて行った。

「先輩、私これが欲しいんです」

沙友理は1つの品物を指をさした。

「これ………こんなのでいいの?」

笑いながら沙友理は

「これがいいんです、これしか要らないんです」

2人は品物の前で数秒間沈黙が続いた。

No.203 14/11/11 13:02
ナルシスト ( 84wJh )

「こんな物でいいの?」

沙友理は笑顔で

「これが嬉しいんです」

先輩は困った顔でその品物を手に取り。

「後でレジ打って買っておくね」

「先輩!もう1つお願いしていいですか?」

まだあるの?
と思っていただろう。

「沙友理さんのお願いなら」

「私に一言メッセージ書いてくれませんか?」

えっ?
「構わないよ、沙友理さんがお望みなら…」

沙友理は先輩の事を兄貴的存在だったと、慕っていた、最後に先輩から特別な事をして貰いたかったのか?

沙友理には何か先輩に対する違う意味があったのか?

嬉しそうに微笑む沙友理だった。

No.204 14/11/11 15:49
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理はこの会社に勤めだして先輩には沢山フォローして貰った人物。

「先輩には沢山お世話になりました。」

「止めてくれよ、まだ何日かあるんだから」

勤務時間が終わったのか?
沙友理はエプロンを脱ぎながら先輩に話しかけてた。

「もう少しで終わります、先輩も頑張って下さいね」

「沙友理さんに話したい事がありました」

沙友理は先輩の気持ちが分かっていたのか?

「今は社員です、辞めればまた来ます、その時まで、先輩の続きの言葉を聞かせて下さいね、今日はお疲れ様でした」

「お疲れさま」

沙友理には分かっていた、先輩の私に対する気持ちが。

夕食の買い物をしている沙友理に声をかけてきた男性。

「今市さん、お疲れ様」

今市さんと呼ぶのは多田しか居なかった。

驚く事もなく、沙友理は多田に笑顔を返した。

「また偶然ですね?」

両手を広げて荷物をお持ちしましょうか?
多田の優しさなのか?

No.205 14/11/11 20:27
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は多田の気持ちが少し怖かった。
人生なそんなに偶然なんてある訳がない。

「多田さんご好意は嬉しいんですが、私何回も話しましたよね?」


「はい、男性の子供さんがお腹にいる事ですよね」

分かっていて、何故そんな態度を取れるのか? 沙友理を見張っているのか?


多田の態度はなんら変わらない。

「今市さんお持ちしますよ」

「多田さん、迷惑なんです、多田さんの行動が」

多田は沙友理の荷物を持ちながら、歩き出したて。
「今市さん…好きに理由が要りますか?」

沙友理は多田の言葉につまった。

「今市さんはお腹の父親を愛した事に理由要りましたか?」

下を向き多田の言葉にどう返すか悩んでいた。

「愛なんて自然に好きになるんです、探す物でもなく、お腹の父親は誰だっていいんじゃないですか?」


「あの……意味が分かりません」



「僕の事嫌いですか? ストーカーは嫌ですから」

沙友理は多田の横顔を見ていた。
ショートヘアーで耳がハッキリ見えて、男性独特の骨格を。

「いえ…すいません…迷惑だなんて言って」

多田の骨格が笑顔に変わった。

No.206 14/11/11 22:20
ナルシスト ( 84wJh )

多田は沙友理の少しだけ前を歩き話を続きを口にした。

「ただ好きになった女性がたまたまですよ、お腹に子供が宿ってる…それだけの事だけです」

沙友理は黙り多田の荷物を持っている姿を見ていた。
 
急に多田が振り返り
「駄目ですかね?」

急に振り返られた多田の顔は真剣な顔をしていた。

「駄目ですか?」

駄目だけですかなんて言われても困る沙友理だった。

「気持ちに余裕がありませんし、時間頂けませんか?」

「そうですよね!いきなり言われても困りますよね!」

多田は自分の思いを沙友理に押し付けてしまったと思ったのか、冗談口調で誤魔化した。

「はい、時間かけて僕を見て下さい」


「多田さん…ありがとうございます」

2人は数日前の光景と同じく沙友理の自宅を歩いていた。

沙友理の言葉を発してからお互い無言で歩いていた。
多田は荷物を両手に持ち。
多田の後ろ姿は決して軽率に口にしていないよ、アピールするがごとく堂々と歩いていた。

No.207 14/11/12 01:01
ナルシスト ( 84wJh )

「多田さん、多田さんが思って下さる、わたしではないんですよ」

「そうなんですか?」

軽いタッチで返答する多田。

沙友理は別の知らない男性との間に出来た自分を簡単に、愛に理由が要りますか?

本当にこの人は器の広い人なのか?
多田との接触も、ただの本屋での会話だけで、何故そんな決断が出来るのか?

不思議な人だった。

玄関の鍵を開け
「多田さん、助かりました、ありがとうございました」

ここで多田と別れたかった。

後ろから

「沙友理か?」

父親が帰宅して来た。

「多田君も一緒だったんだ、中に入って沙友理と食事付き合ってくれるか?」

多田は嬉しそうに

「またご馳走になっていいんですか!光栄です」

父親は多田の事を気に入っているみたいだった。

お父さんも何を考えているのか?

沙友理は不思議だった。

No.208 14/11/12 12:03
ナルシスト ( 84wJh )

「多田君どうぞ」

多田を迎える父親は反対に嬉しそうだった。
父親は招いているかの様に多田を家に入れていた。

2人に聞こえないように。
「2人何考えてんのよ~」

沙友理は多田の後に家に入り込んだ。

「すいません、手土産もなくて……」

多田は申し訳けなさそうに、沙友理の父親に話した。

「手土産は沙友理の荷物を持ってくれてるではないか!」

沙友理は父親のその言葉に驚きと、父親の愛情を感じていた。

台所に立ちふと2人を振り返ると、父親が多田を息子が実家に帰って来た、親の嬉しそうな風景に見えた。

「多田君、座布団」

多田は亡くなった母親の仏壇に手を合わせていた。

座布団を持ちながら微笑む父親の顔、沙友理は裕太ならどれだけ悩まなかったか実感していた。

No.209 14/11/12 12:17
ナルシスト ( 84wJh )

夕食の支度をしていると2人の会話が聞こえてきた。

多田は自分の父親と仲が良くないらしい。
多田は自分の父親が頑固な性格で、父親とどう向き合えば良いのか?
悩んでいるみたいだ。

「駄目ですね? 僕が折れればいい話なんですが……」

沙友理の父親は親として気持ちが分かるのか?

「多田君が悩んでいるのはお父さんは知っているのか?」

多田は父親の座布団に正座をしていた。

「まず、話しすら聞いてくれません」

腕組みする一生の顔は立派なカウンセラーのように、沙友理の目は映った。

クスリと笑う沙友理は、この会話に入れない何かを感じていた。

お父さんは本当は息子がほしかったのかなぁ?
娘でも他人のましてや父親の知らない男性の子供を妊娠した娘なんて、親不孝そのものだったと感じた。


携帯番号を無理やり変えさせたお父さんの気持ち良く分かったよ。

そして多田は沙友理が携帯番号を変えた事を知らないのか?
それに触れる事はなかった。

No.210 14/11/12 12:42
ナルシスト ( 84wJh )

「お話し中ですが食事出来ましたよ」

沙友理の優しい声で2人は沙友理を笑顔で見ていた。

「さぁ多田君、食べようか」

多田は父親が立つタイミングを見計らい父親をサポートするかの様に介助した。

病気以来父親は少し身体が弱くなり、沙友理には一番心配だった。

「沙友理は案外料理は上手いんですよ」

「おでん美味しかったですから」

一度しか口にしていないおでんに多田は褒め言葉を一生に伝えた。

一生は娘の料理を褒めて貰い少し自慢げに

「多田君、毎日でも来てくれていいんだよ」

沙友理はその言葉に驚いた


「お父さん、冗談でも駄目よ!」

多田に叱られた顔を見せる父親は、沙友理が初めて見る子供の様な顔だった。

3人で食べる夕食はやはり明るく楽しい一時であった。

茄子とししとうの煮物に、さんまの開き、大根とワカメのお味噌汁、たわいもない夕食。

でも2人で食べる夕食より遥かに美味しく楽しく食べれた。

母親の仏壇には煮物がまだ湯気がたっていた。

1人加わる事で私達の夕食は明かりがさしていた。

No.211 14/11/12 16:01
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理さん、お父さん、今日もご馳走さまでした」

「多田君いつでも待っているから」

私はお父さんに話した。

「そこまで多田さんを送ります」

多田は沙友理の意外な言葉に少し驚いた

「僕は大丈夫ですよ」

笑い声で

「私が多田さんにお聞きしたい事があるの」

父親は2人に任せた

「少し沙友理さんをお借りします」

父親は手でどうぞ、と多田と沙友理に無言て手招きした。

夜の坂道は危険だと感じた多田は坂道の手前で沙友理の内容を聞く事を待っていた。

「多田さんは恋愛した事ないのですか?」

多田は足で地面を蹴る仕草と口にした。

「ありますよ、恋愛くらい」

沙友理の目は多田から離さなかった。

「何故? 結婚しなかったの?」

「縁がなかったのかなぁ? その彼女は気が強くてね、熱しやすく冷めやすかったとでもいいますか、人の者を欲しがる女性でした」

「彼女さんは?」

「人の彼を取り結婚しました」

「悔しくないんですか?」

「初めは悔しかったですよ、でもね、そのお陰で彼女より幸せな人見つけられました、反対に去ってくれて良かったと、今更ながら感謝しています」

「そうなんですか?」

「僕の過去の恋愛話に理由ありますか?」

「いえ、聞きたかっただけです、すいません」

多田は沙友理の肩を叩き


「そろそろ帰らないと、お父さん心配してますよ」

多田は笑顔で兵士の様に敬礼をして坂道を下って行った。

沙友理はその話を聞き、多田さんは大人なんだと思いながら、多田の帰る後ろ姿を眺めていた。

No.212 14/11/12 21:46
ナルシスト ( 84wJh )

多田さんの大人の言葉を沙友理は何度も頭の中でリピートしていた。

愛する事に理由はない。
その言葉に私だって裕太を好きになり、子供を産む事に理由などなかった。

考えながら家路に帰った。

「多田君とどんな話があったんだ?」

「ただ、いつもお世話になってるから……」

沙友理は父親に相談した。

「お父さんはお母さんと結婚を決めた理由は?」

えっ?
「愛していたからだよ、理由なんてないさ!」

多田の理由のない愛が本当の愛なのかなぁ?

「お父さん、私介護ヘルパーの資格を取りたいの」

父親は初めてヘルパーの仕事を考えている沙友理の言葉に驚いた。

「急にどうしたんだ?」

夕食の片付けをしながら沙友理は父親に相談した。

「子供が産まれたらお父さん仕事辞めてくれないかなぁ?」

「俺はまだまだ元気だぞ、年寄り扱いするな!」

一生は沙友理に老後の心配をかけたくなかった。

「自由が効くから…子供とも一緒に居られるでしょう?」

「うぅ……ん」

「孫を独り占めに出来るんだよ、よっ幸せなおじいちゃん」

父親を持ち上げているのか。

「長い目で見れば介護士やケアマネも頑張れるし、どう?」

年寄り扱いされたのではなく、沙友理は先の生計も考えていた。

「頑張りなさい、目的があるのはいい事だ!」

さっきまで怒っていた父親が手のひら返す言葉に沙友理は可笑しく思っていた。

「お父さん、子供みたい」

水道の水の音で一生に聞こえないように呟いた。

No.213 14/11/12 23:15
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理の会社は明日が退職になった。

沙友理のファンは後を絶たない。 

「やっぱり辞めちゃうの?」

先輩がか細い声で沙友理に再確認を聞いてきた。

「はい、お世話になりました。」

「無理なのかなぁ?」

沙友理は次の目標も決めているので強い口調で

「無理です。 また先輩には必ず会いに来ますから」

「本当に?」

「はい、本当に…」

「いらっしゃいませ…山田さん、お久しぶりです」

先輩は沙友理の強い口調に止めでも無理だと諦めた。

残り少ないこの会社とお客さんにお別れを言う様に沙友理の笑顔は輝いていた。

No.214 14/11/13 12:35
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理の携帯は番号を変えてから非通知の連絡はなくなった。
明日この会社とこよなく愛した本達に

「沢山思いが詰まった本さん、ありがとうね」

本棚に並ぶ本に手をつけて別れを惜しんでいた。
それを先輩は悲しそうに沙友理を見ていた。

赤本コーナーでは

「受験生の皆さん、合格出来ますように」

沙友理は赤本に頑張れポーズに本を励ましていた。

文具用品のコーナーには

「沢山のお友達の繋がりを作ってあげてね」

3階には

「立て笛さん、ハーモニカさん、ピアニカさん、綺麗な音色聞かせてね」

倉庫には

「沢山の作者さん、1人でも多くの読者さんに、目にとまって貰ってね」

やはり沙友理はこの仕事が大好きだった。

でもこの仕事が沙友理を苦しめていた。

No.215 14/11/13 12:44
ナルシスト ( 84wJh )

3階から降りて来た沙友理に先輩は近付いて来た。

「明日だね…」

「はい、明日までは、さようなら言わないですから」

沙友理の存在がどれだけ必要だったのか、先輩は口数も少なくなった。

「嫌だ! 先輩! 会いに来ますって!」

寂しくしけた顔の先輩の肩を軽く叩いた。

「ごめんね。」

「何謝ってるんですか?」

沙友理は可笑しな事を言う先輩に笑顔で答えた。

「会いに来ますから」

「では、お先に上がらせて頂きます」

ぺこりと頭を下げエプロンを脱ぎ始めた。

No.216 14/11/14 18:27
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理のお腹は少しふゎっとしたレースのワンピースでエプロンをしていて妊婦だと分かりにくかった。

お気に入りのサマンサの鞄を持ち、いつものスーパーに立ち寄った。

肉や鳥や豚肉のコーナーをカートを引き、野菜コーナーにまわった。

「お父さんは身体の考えれば魚かなぁ?」

1人小さな声で夕食の献立を考えていた。

多田の姿はそこにはなかった。

「あっ! サラダ油買い忘れたわ! 駄目ね」

カートをユータウンさせ、乾物のコーナーに立ち止まった。

毎日の献立にウンザリしていた。

レジを通過すると
「今日はいないよね?多田さんは…」

スーパーから出ると微かに消防のサイレントが沙友理の耳に聞こえてきた。

「火事かしら? 多田さん大丈夫かなぁ?」

自然に多田の事が無性に気になっていた。

火事は消防隊であろうと命がけの仕事だ。
いくら訓練していても、火事の危険はつきものだ。

沙友理は多田に何か起こらないか? 
坂道を上りながら気になっていた。

「変な私……」

クスクス笑いながら家路を急いだ。

No.217 14/11/14 18:38
ナルシスト ( 84wJh )

今日は沙友理の帰宅の方が早かった。

「あれ?」

ポストに切手に印が押してある。

   今市沙友理様。

封筒が配達員からポストに投函されていた。
封筒の裏は白紙だった。


「誰かしら?」

慌てて鍵を開けスーパーの袋をテーブルに置き、封筒をハサミで切ると………

………★悲しいピエロ★……

   愛しているよ。

   沙友理が好きだ。


沙友理は笑いながら
「今更遅いのよ…」

裕太が後悔して送って来たのか?

多田なのか?

先輩なのか?

他に犯人が居るのか?

沙友理はその封筒とカードを大切な宝物の引き出しになおして夕食の支度を始めた。

No.218 14/11/14 20:02
ナルシスト ( 84wJh )

「お帰りなさい」

濡れた手をエプロンで拭きながら、沙友理はあの封筒の事は口にしなかった。

「いい匂いだ!」
 
「今日の晩ご飯当ててみてよ~」

父親は会社の鞄を置き、まず仏像の前に行き。 

「鯖の味噌煮と、白菜と揚げの煮物かなぁ?」

「お父さんってズルいね」

父親は沙友理が母親の仏像にお供えする事など良く知っていた。

母親が亡くなっても、3人分は用意している。

だから多田が突然訪問しても困らない筈だ。 

「お父さん、今日近くで火事があったみたい」

洋服をスエットに着替えている父親に話し始めた。

「そうかなぁ…」

「心配にならない?」

スエットに着替えた父親も心配そうだった。

「多田君の勤務時間帯でない事を祈るよ」

「私後で………」

様子が変な沙友理に

「電話してあげなさい」

沙友理は父親の元に行き

「新しい番号教えていないの、多田さんからも聞かれないし」

「そんな事言ってる場合か!」

久しぶりにお父さんは不機嫌になった。

私は迷っていた。
変な誤解受けたり、迷惑かけないか…

No.219 14/11/14 20:32
ナルシスト ( 84wJh )

父親は自宅の電話から多田さんの勤務している消防署を調べ電話し始めた。

何故父親はそこまでして多田の事が気になるのか?

「やはり多田君、火事現場に行っているらしいぞ」

沙友理は父親と多田の関係性が全くわからない、本当の息子を心配するかの様に。

「お父さん、多田さんの事どう思ってるの? 私にはお父さんの気持ちが分からないわ!」

そこから沙友理の質問に答える事もなく、父親と沙友理は無言で食事を済ませた。


火事から2時間は経過していただろう?

「沙友理…多田君の携帯番号教えなさい」

えっ?
「私は連絡しないよ」

「父さんの電話から連絡する!」

何故そんな事までする父親に沙友理は少し気分が悪かった。

「なんなのよ! 娘より可愛いの!」

沙友理は父親が多田を特別扱いする事にヤキモチを焼いていた。

No.220 14/11/14 20:49
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理はふてくされたように

「はい、これが多田さんの番号よ!」

何が良いのか?

むかつく!

父親は少し老眼がきていて、眼鏡をかけて、多田さんの携帯に電話した。

「沙友理…留守電だ!」

「あっそう!」

「留守電にいれようか?」

「お好きにどうぞ!」

父親は留守電に直立不動で

「沙友理の父親の今市です…大丈夫ならいいんだが……」

「沙友理!留守電終わっちゃったよ~」

沙友理は可愛いその困った顔の父親に笑いがこみ上げて来た。

「お父さん宿題忘れた子供みたい!」

沙友理の言葉より多田の心配をしている一一生だった。

サイレントが鳴り止んでも消防士の仕事が終わった訳ではない。

そんな大変な仕事をしていても、多田は沙友理と一生の心配はしていた。

No.221 14/11/15 09:57
ナルシスト ( 84wJh )

「多田君大丈夫なのか?」

座敷をうろうろしだし落ち着きがない父親

「何故そんなに多田さんの事が気になるの?」


「彼は人の気持ちを思いやれる優しい青年だからだよ」

沙友理が父親が気持ちを思いやれる優しい青年と言葉にした事に


確かに人を思いやる気持ちに理由なんてないと感じた。

その日は多田からの連絡はなかった。

沙友理は裕太の事を思い出した。
裕太も夜いくら連絡しても次の日でないと連絡がつかなかった事を。

時計の針は12時を過ぎていた。
裕太の連絡と多田が連絡出来なかった理由は違う筈なのに、沙友理は多田を好きになってはいけない人のリストにこの夜頭に入れていた。


朝になり最後の勤務の為沙友理は出勤支度をしていた。

父親の携帯が鳴っていた。

「お父さん~携帯鳴ってるよ~」

父親は待ち人来るかの様に携帯のふたを開けた。
多田からの連絡であったのであろう。

「無事で良かったよ、忙しいところ、連絡ありがとう、ゆっくり休みなさい」

沙友理は父親の会話で多田は元気なんだと安心した。
沙友理の心の中は何故か複雑な気持ちだった。

「別に多田さんの事好きでもないし…」

沙友理は心に言い聞かせていた。

No.222 14/11/15 10:08
ナルシスト ( 84wJh )

電車の中で沙友理は考えていた。
多田の事を……

違う男性の子供を身ごもる自分に、多田を好きになる資格なんてない事を。

人を好きになる資格は誰もある訳ではない。

沙友理はお腹を庇いながら最後の仕事先に向かった。

「おはようございます」

先輩は沙友理が今日最後の勤務に寂しさを感じていたのか?
いつもの笑顔はなかった。

「沙友理さん、とうとう最後の日が来ましたね」

沙友理はエプロンをかけながら

「最後だから思い残す事なく、目いっぱい頑張りますね!」

笑い顔のない先輩に言葉をかけた。

朝のラッシュが落ち着き始めた電車の通過は少しマシになっていた。

沙友理はお客さんが店内に入って来ては


「いらっしゃいませ!」

満面の笑みで最後の勤務を務めていた。

No.223 14/11/15 10:29
ナルシスト ( 84wJh )

昼前に多田が沙友理の本屋さんに現れた。

「今市さん、こんにちは♪」
 
沙友理はびっくりした
笑顔で沙友理に会いに来てくれた多田に。

「昨日はお疲れ様でした。」

「すいませんでした、ボヤくらいなら、すぐに連絡出来たんですが、全焼でして…」

多田は頭をかきながら照れ笑いをしていた。

「そうなんですか! お疲れじゃないんですか?」

「訓練では慣れていますが、毎回の現場は戦場ですね」

多田の肩を他の場所に誘導するかの様に沙友理は店の端に多田を招いた。

「睡眠取らないとダメじゃないですか!」

少し怒り口調の沙友理は心配なのか?
キツい言葉を多田に吐いていた。

「お父さんと今市さんに、心配かけたので、顔だけ出しました、理由要りましたか?」

父親が思いやる気持ちを口にした意味が沙友理には理解出来た。

「今日が最後の今市さんの勤務お疲れ様でした。
では帰って仮眠します」

その言葉を残し多田は帰って行った。

多田の後ろ姿を沙友理は眺めていた。

No.224 14/11/15 10:53
ナルシスト ( 84wJh )

多田の後ろ姿を見ていた沙友理はゆっくり多田に気持ちが入っていた。

裕太との恋愛は楽しく明るく刺激的な恋だった。
多田はお客さんから始まり、本の共通点の話題だけ、多田が書店を訪れない限り会う事もなかった。

スーパーの袋を、お持ちいたしましょうか?
両手を広げて笑う多田の顔を沙友理は思い出していた。

沙友理は多田の姿を見送り、元気良く店内に戻った。
じわじわ恋する気持ちと、裕太のお腹の出産に沙友理の心は痛かった。

雑誌やポエム、情報紙、週刊誌、売れ筋の本の補充など、思いを込めて綺麗に並べる沙友理。

「沙友理さん、お昼休みして下さい」

先輩の声にはっと我に帰った。

「ありがとうございます、お先です」

沙友理は慌てて近くの喫茶店に入り父親に連絡した。

「お父さん、多田さんお店に来てくれたよ、元気そうだった」

用件を伝えて沙友理がこの喫茶店で好きだった、ハンバーグランチを食べ、愛読していた、復讐の物語の本をゴミ箱に捨てた。

私には必要ないかも?

多田に恋していても絶対に諦める覚悟の沙友理の気持ち。

私は復讐なんてしない。
でも犯人と裕太にはプレゼントをするだけ。
沙友理の決意は固かった。

No.225 14/11/15 12:08
ナルシスト ( 84wJh )

店内に帰り鞄を置き、エプロンに着替えた沙友理。

「先輩、お先でした。」

在庫品の箱を持ちながら先輩は振り返った。

「では、では、食事してくるね?」

「後は任せて下さい!」

沙友理は先輩の休憩に、3階に上がり、文具用品の整理をしていた。

夕方から混み合う店内、お母さんがこの時期に購入するのは、小学校で使う、立て笛、ピアニカ。

最近売れないのが、そろばん、今は必須ではない為売れないらしい。

「沙友理さん、沙友理の希望していた品です、カードも書きました」

沙友理が指差した品にはカードが入って入るのか?
赤いリボンで包んでいたプレゼントだった。

「うわぁー嬉しいです! 大切にさせて頂きます!」

本当に嬉しい先輩からのプレゼント。 

「喜んでくれますか?」

「はい、嬉しいです!」

「沙友理さん、携帯番号変えました?」

沙友理はドキッとした。
携帯番号を変えたのを知るには、電話を掛けて来たと言う事だ!

「何か用品でも?」

「話したい事がありまして…」

「また来ますから、先輩には沢山助けて頂きました、本当にありがとうございました」

「さぁ、最後に沢山の商品にお別れを言って来ます!」

先輩と沙友理との会話は短く、深く理由なども聞かなかった。

No.226 14/11/15 15:15
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は最後の仕事を終えた。

「先輩、本当にお世話になりました」

「沙友理さん、本当に長い間お疲れ様でした、顔見せて下さいね、好きでした」

初めて先輩に言われた、好きでしたを沙友理は

「もっと、もっと、早くに聞きたかったです」

先輩に掛けた言葉だった。

沙友理は次の人生に明るく生きて行くかの様に、一礼し会社を後にした。

「あ~気持ち良かった!」

迷う事なく沙友理は成し遂げた気持ちで家路に帰ろうとした。

お腹が張り痛くなった。

「痛い…」

その場でうずくまってしまった。

「痛い…助けて~」

沙友理は携帯を取り出し電話をした。

電話主はすぐに電話に出てくれた。

「多田さん、すいません、お腹が痛いの…」

「今市さん、今どこ?」

「痛い…今から電車乗る駅前です、痛い…」

「すぐに行きます、我慢出来ますか?」

何故沙友理はあれだけ拒んでいた多田に連絡をしたのか?

数分後多田は仮眠していた、スエットに薄手のジャンバーを羽織り走って来た。

沙友理を抱えるように多田が訪ねた。
「行きつけの病院に行きましょう」

2人はタクシーで沙友理の通う産婦人科に向かった。

No.227 14/11/15 23:52
ナルシスト ( 84wJh )

「多田さん、すいません」

多田は沙友理の言葉を聞きタクシーを探していた。

「今市さんすぐタクシー来ますから、我慢出来ますか?」

多田はタクシーに止まってくれ!
大きく手を上げた。

多田が沙友理に肩を貸してタクシーに乗り込んだ。

「運転手さん、梶本産婦人科まで、急いで下さい」

タクシーの中で痛いと言う沙友理を心配する多田だったが、火事の現場ではなく、産婦人科の現状にどうすれば良いのか?

「今市さん、もうすぐ、もうすぐ」

としか言えなかった。

仮眠してすぐに飛び起き、駆けつけてくれた多田は沙友理の救世主であった。

タクシーは梶本産婦人科に到着した。

多田に付き添われた沙友理は診察室に入って行った。

多田は診察室の前の長椅子で心配そうに待つしかなかった。

No.228 14/11/16 00:04
ナルシスト ( 84wJh )

看護師さんが多田に近付いて来た。

「中にお入り下さい」

多田は迷った、ただの友人と言うか?
中に入れば父親役をしなくてはいけない、ご主人様ですか?
と聞かれたらなんて答えれば良いのか?

「はい」

と立ち上がり診察室に入った。

案の定医師から

「ご主人様ですか?」

と尋ねられたら。

「まだ籍は入れていませんが、父親です」

多田は大人なのか?

医師から告げられた。

「流産の心配はありません、ただ安静にしてあげて下さい、出血等の異常があればすぐ来て下さい」

続いて告げられた

「子供さんの心音お聞きになりますか?」

多田の子供ではない。

「はい、是非お願いします」

沙友理には多田と医師の会話は全て聞こえていた。

沙友理は多田の優しさに涙した。

No.229 14/11/16 01:01
ナルシスト ( 84wJh )

多田は自分の子供でもない沙友理の子供の心音をどんな気持ちで聞いていたのか?

医師の

「赤ちゃんの心音聞きますか?」

複雑な気持ちであったろう

「ドク、ドク、ドク、ドク、」

多田はその音を聞き先に部屋から出て待っていた。

「多田さんごめんなさい辛かったでしょう?」

初めての体験でした、ありがとう」

裕太の子供で多田の子供でもない。
なのに多田は沙友理のお腹の子供の父親と名乗り。

その多田の気持ちを考えると、裕太が憎くなった。
憎まないと思うように覚悟してたのに……

多田の後ろ姿に彼はどう感じ、傷つけてしまったのか?

産婦人科のドアが閉まると沙友理は号泣してしまった。

多田ともっと、早く知り合いたかった。

そしてこの先2人には共通点があり、多田自身もその共通点を知る事はなかった。

これが2人の運命なのか?
偶然なのか?

No.230 14/11/16 12:55
ナルシスト ( 84wJh )

「今市さん、大事に至らなくて安心しました」

「多田さんにご迷惑おかけしました」

多田は沙友理の顔をクルッと回して

「今市さんからの連絡嬉しかったです」

お腹をさする沙友理の姿を見て微笑む多田

「時間いるんでしょう? 僕には」

「えっ?」

「でも今日は僕は選ばれし存在だったって事、凄く良い風に取りました、1分くらい時間縮まりましたか?」

多田の沙友理に対する気持ちは中途半端な気持ちではなかった。

人から見れば他人の子供を妊娠している女を好んで好きにはならない。

普通の神経なら子供を下ろしてくれと言うだろう。

多田自身そんな沙友理を受け入れる性格の広さに、沙友理は惹かれ頼ってしまったのか?

No.231 14/11/16 16:46
ナルシスト ( 84wJh )

多田さんとタクシーに乗り帰った。

「多田さん、今日はありがとうございました」

多田はタクシーから降りる沙友理の身体を支えながら一緒に降りた。

「お家まで付き添います」

沙友理のいえに帰るまで坂道があり、タクシーは家の前までは止まれないのである。

「大丈夫です、ありがとうございます」

沙友理の気持ちは凄く辛かった、多田に優しくされる事が。

「今市さん…僕は今市さんの事いつから好きになったのか? ご存知ですか?」

坂道を上がりだした時に多田は言い出した。

「振り返るときけんです、そのままで聞いて下さい」

坂道の手すりを持ちながら、沙友理はその場所に止まっていた。

「ずーっと今市さんを見ていました、ここ何年も、それだけ待っていたから、まだこれからも待っていられます」

沙友理が多田に時間を下さいと話した返事なのか、公園で話した沙友理の言葉。

「私は多田さんが思って下さる女じゃないんです、人を恨み凄く嫌な女なんです!」

大きな声で多田に訴え沙友理は小走りで坂道を走って行った。

沙友理の目は真っ赤になり、沢山の涙がこぼれていた。

No.232 14/11/16 17:01
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理はそのまま家に帰り部屋で寝ていた。
父親が帰って来たのか玄関の鍵が空いた。

玄関には沙友理が帰って来ている靴を見た父親が

「沙友理~帰ってるのか~」

沙友理はベットの中で泣いていた。

食事の支度もしていない沙友理に父親はふあんになり、沙友理の部屋に近づいた。

「お父さん、ごめんね、今日お腹痛くなってね、安静にしてって言われたの」

ドアのノブに手をかけていた父親だったが

「そうかぁ、大丈夫だったのか?」

「夕食作れなくて、ごめんね」

「大丈夫だから、ゆっくり休みなさい」

せっかく会社を退職出来、父親からもお疲れ様との労いの言葉も、その沙友理の身体の状況では、そんな会話も出来ないまま。

2人の夜は終わってしまった。

No.233 14/11/16 21:03
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理~体調どうだ! 父さん仕事行くぞ」

沙友理はベットの中に布団にくるまってた。
眠る事が出来なかった。

「ごめんね、お父さん気をつけて!」

父親が仕事に行き玄関のドアが閉まる音が聞こえた。

ゆっくりと沙友理は母親の仏壇に向かい

「お母さん、私どうすればいいの?」

悩みに悩みきっている沙友理。

「お母さんだから話せるの、私……」

「多田さんの事好きみたい……」

仏壇の母親の顔は笑っていた。

「裕太の時の好きな気持ちが違うの…馬鹿よね?」

仏壇の母親の写真は変わらず笑っている。

「子供は絶対に産みたいの、でも多田さんが好きなの…贅沢?」

沙友理は沙友理なりに自分の素直な気持ちをお母さんなら、どんな言葉かけてくれただろうと、母親に問いかけてた。

沙友理は鞄から携帯を取り出し電話をした。

No.234 14/11/16 21:12
ナルシスト ( 84wJh )

「おはようございます、突然すいません、多田さんですか?」

「今市さん、体調どうですか?」

いつも明るく優しい口調

「あの…多田さん」

「はい」

「もう私多田さんとお会い出来ません…」

「今市さんなんで?」

その自然になんで?と答えた多田の優しい言葉に沙友理は泣いてしまった。

「苦しいんです……多田さんにお会いするのが、ごめんなさい、お幸せに」

多田が何か話しかける前に沙友理は電話を切ってしまった。

携帯を握りしめ沙友理は母親の仏壇の前で泣いていた。

No.235 14/11/16 21:26
ナルシスト ( 84wJh )

「ごめんなさい、多田さん」

お腹をさすりながら

「元気で産まれて来てね、お母さん待ってるから」

ゆっくりと部屋に帰るが、多田のなんで?が頭から離れない。

裕太の時は離れられる気持ちが苦しかった。

今は離れて行く事がどれだけ苦しいのかと沙友理は感じていた。

携帯は鳴った。

多田からの連絡だった。

沙友理は多田の携帯が鳴り止むと電源を切った。

「多田さんにはもっと、もっと、相応しい女性が必ず現れる、私みたいな女は相応しくないのよね」

1人呟きながら、沙友理は自分を説得していた。

No.236 14/11/17 12:57
ナルシスト ( 84wJh )

父親にお腹の張りがあり、多田に助けて貰った話をした沙友理。

「多田君にお礼いわないとなぁ」

「止めて! 私が言ったから…」

不思議そうに沙友理の態度が気になり一生は沙友理に聞いた

「多田君と何かあったのか?」

父親から顔をそむける沙友理

「もう関わってはいけない人なのよ…私達と」

父親は少し驚いていた、多田が沙友理に行為を持っている事は薄々感じていたが、沙友理が多田を意識し始めている事は見抜いていなかった。

「多田君が訪ねて来たら、父さんは追い返さないよ」

それだけ口にして一生は部屋に入ってしまった。

黙ってその場で座っている沙友理。

時計の針は午後10時30分を指してた。

No.237 14/11/17 14:29
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は寝付けなかった、父親が多田が訪ねて来たら、追い返さない、その言葉に。

多田の優しさが辛いのは、ピエロの犯人に対する復讐も持っていたから。

私は多田さんが思い描いてくれている人間ではない。

本当は残酷悲恋な人間なんだと。
必ずそれを実行する日を待っている。

時間が必要なの。
ピエロの主と裕太に。
一生懲らしめてやる。

多田の優しさが本音の私を見れば必ず多田は傷つく事を沙友理の気持ちの裏腹は多田にとっても残酷な結果になるに違いない。

そんな事を考えている沙友理。

多田の優しさが沙友理の心を悩ませ、苦しませていた。

沙友理の部屋の電気が消えたのは午前2時だった。

No.238 14/11/17 14:46
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さんおはよう」

沙友理は明るく父親に挨拶した。

「大丈夫なのか?」

エプロン姿で台所に立つ沙友理

「もう平気よ!」

「無理するなよ」

「お父さん早くしないと、時間、時間、」

一生は時計を見て慌てて茶碗を置き仕事の支度を始めた。

「沙友理、父さんが出たら鍵閉めるんだよ」

「分かったよ、行ってらっしゃい」

土間で靴を履く父親の後ろ姿が沙友理には小さく感じた。

父親の一生が玄関を出てすぐに

「沙友理……花束だよ……」

沙友理は裸足で玄関に向かった。


      今市さん

    体調如何ですか?

 綺麗なお花を見て元気になって下さい。

      多田祐治

多田が朝早く沙友理に送った初めてのプレゼントだった。

「多田さんらしいわね」

そのメッセージの紙は多分職域で貰ったのであろう生命保険会社のメモ帳の一枚であった。

一生は沙友理の肩をポンと叩き無言で坂道を歩いて行った。

多田の優しさは不器用だが、沙友理にはその不器用な性格が合っているねかも知れない。

ポストを開けると。
今市沙友理様。

沙友理はすぐに家に入りハサミで封を開けた。

No.239 14/11/17 20:40
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理はその封筒をハサミで切り中身を確認した。

    沙友理へ

   後悔してるよ。


  沙友理に涙は似合わない


……☆悲しいピエロ☆……

そのメッセージカードをテーブルに捨てるように置き。

「もう…遅いのよ…」

沙友理は母親の仏壇の前に座り、笑顔の母親の写真に多田から貰った花束を見せて呟いた。

「お母さん、見て多田さんから頂いたの、でもね、多田さんとは結ばれない運命なの、お腹の子供はお母さんの産まれ代わりだから、私は子供を産むのよ」

沙友理は子供は母親の産まれ代わりで、また自分の元に帰って来てくれる事を願っていた。

静まり返った部屋で沙友理は何を考えているのか?
時計が10回沙友理に知らせるように鳴っていた。

No.240 14/11/17 20:51
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理はそのピエロのカードを大切な場所に入れ、買い物に出かけた。

お腹も少し膨らみ普段の服が困難になり、マタニティ服を買いに出掛けた。

「これ可愛いかも~ こっちも~」
1人寂しく買い物をする沙友理。

携帯が鳴った。

多田からの連絡だった。

沙友理は多田の電話に出る事もなく、1人で子供の必要品、これから必要だろうと思う物をカゴに入れ、会計に足を運んだ。

携帯を握りしめ

「多田さん、ありがとう、私には多田さんは勿体ない男性なの、素敵な恋をしてね」

「すいません、これも買います~」

沙友理は紙袋3個持ちながら、少しだけ吹っ切る努力をしていたのだろう。

No.241 14/11/18 00:17
ナルシスト ( 84wJh )

父親の帰宅まで沙友理は夕食の支度をしていた。

多田から貰った花は綺麗に花瓶に飾られ、母親の仏壇の側で鮮やかに咲いていた。

一生が帰宅した。

「沙友理、ただいま」

座敷に紙袋を置いていたのを見た一生は沙友理に話しかけた。

「買い物に行ってたのか?」

テーブルをふきんで拭きながら

「洋服があわなくなったから」

「そうか……」

「お父さん、あのね、もう多田さんとお別れしたいの」

鞄を置きかけた父親が少し驚いた。

「多田君の事嫌いなのか?」

沙友理はお腹を突き出し

「このお腹の子供は多田さんの子供じゃないんだよ! 多田さんには幸せになって欲しい、ただそれだけ」

哀れな娘の姿に一生は辛かったであろう。

「沙友理、お腹の子供なんたが……」

「止めて! それ以上言わないで」

父親は沙友理の気持ちが痛い程分かっている。

「もっと早く知り合えたら沙友理も悩まなかっただろう?」

父親はびっくりしていた。

沙友理の目は真っ赤になり、自然と涙が零れていた。

多田との出逢いがもっと、もっと、早く出会えていたらこんなに苦しまなかった。


妊娠の事実を知り、それだけで、多田には相応しくない女なんだと、沙友理は多田に感じていた。

No.242 14/11/18 00:35
ナルシスト ( 84wJh )

毎日の生活は何も変わらず過ぎて行った。
ただ変わったのは多田からの連絡もスーパーで出会う事もなくなっていた。

多田は沙友理を諦め、沙友理の元から離れて行った。

沙友理はお腹の子供の胎動を感じるようになった。

母親として、お母さんの産まれ代わりを楽しみにしていた。

段々お腹も膨らみ、定期検診、母子手帳を持っていたが、父親の名前は空欄だった。

最近一生は良く携帯で話している。

一生の人生にも新しい伴侶は出来てもおかしくない年齢だ。

会社が休みの時は1人で出かける事も多くなり、少し沙友理は父親を取られた気持ちに駆られていた。

外出から帰宅した父親に

「お父さんの人生に口は挟まないけど、お母さんを裏切る行為は許さないからね」

「おぃおぃ、何を疑ってるのか?」

「デートしてたの?」

「デートしてたよ」

「そのお相手の人、好きなの?」

「大好きだよ、人間として」


「あっ、そう、結婚は許さないからね」

「しませんよ~沙友理焼いてくれるのか?」


「焼いてなんていません~お母さんが可哀相なだけ」

沙友理はかなりそのデート相手に怒っていた。

「晩ご飯勝手にどうぞ!」

沙友理はその言葉を一生に言い、自分の部屋に入って行った。

No.243 14/11/18 11:26
ナルシスト ( 84wJh )

「母さん沙友理があんなにやきもち焼きだとは知らなかったよ」

妻の写真に投げかけた一生。
写真の妻は笑っていた。

「母さん許してくれるかなぁ?」

一生のデート相手にイライラする沙友理は、携帯の着信履歴を1日何度も確認していた。

多田からの連絡はあれ以来沙友理の携帯に鳴る事はなかった。

離れて分かる本当の恋。

タイムスリップ出来るなら、多田との出逢いを楽しめたはず。


「仕方ないよね」

沙友理の気持ちは苦しいくらい多田に寄り添っていた。
裕太の恋も辛かったが、多田の恋は恋とはこんなに苦しいのか、それぼと沙友理の気持ちは多田に向いていた。

No.244 14/11/18 20:00
ナルシスト ( 84wJh )

お腹の赤ちゃんも成長し、沙友理は誰が見ても立派な妊婦さんだった。

それに伴い近所でも噂の種になっていた。
ゴミを捨てに行く時の近所の刺さるような目。

「あら、沙友理ちゃんいつご結婚されたの?」

噂好きな主婦達には楽しい3時のお菓子のネタになっていた。

一生の耳にも入って来たのだろう。

「沙友理、気にするな、ゴミは父さんが出してやる」


「お父さん……ごめんね」


「沙友理それを承知で産む覚悟しているなら、そんな噂くらいでへこたれるな!」

「そうよね~」

お腹を突き出して一生の話を真剣に聞く沙友理。

「負けないわ!」

「それでいいんだ」

沙友理にはお父さんだけが唯一の見方だった。

No.245 14/11/18 20:07
ナルシスト ( 84wJh )

一生が休みの時は時々出かけている。

「お父さん、今の交際相手の人とどんな関係なの?」

「相手は結婚を望んでいるらしい」


「はぁ? 馬鹿な事言わないでよね!」

「まだそこまでの話はしてない」

「お父さんが結婚するなら、私この家出て行くから」

沙友理は部屋に戻り泣いていた。
お父さんだけは私の見方だと思っていたのに。

娘から見れば父親は父親。
男性の姿など想像もしたくない、またそんな目で見れない。

女性と父親が手を繋ぎ歩いている光景など。

No.246 14/11/18 20:13
ナルシスト ( 84wJh )

一方一生の気持ちは。

「母さん、俺は沙友理に軽く見られたもんだ、沙友理の今後を彼に託したいだけなんだが~」

父親の言葉足らずと、娘が父親を独占したい気持ちの相違である。

父親とは主語、述語、修飾語が苦手な生き物なのか!

沙友理に誰と会ってる名前を上げれば良いのに。

父親と母親の持って産まれたDNAが違うのか?

一生の言葉足らずがただの性格なのか?

No.247 14/11/18 21:18
ナルシスト ( 84wJh )

「母さん今沙友理にも多田君にも考える時間を与えてるんだよ、沙友理はこれから多田君を頼れるか、多田君もこんな条件の沙友理を支えてくれるかとね」

一生は妻の仏壇に向かい呟いていた。

沙友理の今後の人生を一生なりに…

他人の子供を宿した娘を多田は本当に支えきれるのか?

また沙友理は裕太の子供を多田に遠慮しながら育てて行けるのか?

多田に沙友理との連絡を当分断ち切って欲しいと頼んだのも、沙友理の気持ちを知りたい一生の考えだった。

親として簡単に好きだの愛しているだので、片付ける問題ではないと…

一生は長い単身赴任の負い目もあり、沙友理との親子関係も悩んでいた。


「母さん、やはり多田君は良い青年だよ」

その言葉を残し部屋に入っていった。

「お父さん、お父さんの目は正しいわよ、さすが私が愛した旦那さんだわ~」

と仏壇の母親は一生を話しかけていた。

時計の針が時間を知らせてくれた。

No.248 14/11/19 10:26
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理のお腹は益々大きくなり

「よいしょ」

立つ時座る時によくこの言葉が出てくる。

父親が会社に出かけて沙友理は家の用事も済ませ。

出かける準備を初めていた。

「お母さん少し出かけて来ます、会いに行ってくるね」

にっこり笑いながら沙友理は自宅を後にした。

そんな遠い距離ではない。

遠くから見る救急車と消防車がある場所に。

オレンジ色のつなぎ服にヘルメットをかぶり、はしごを何回も登り降りする練習。

腕立てふせや腹筋を何百回重ねている多田の姿を沙友理は遠くから眺めていた。


「多田さん頑張ってるんだ~現場は戦場だといってたものね。」

多田が沙友理に気付く事はない。

また多田も沙友理が会いに来てくれてるなんて思ってもいない。

集団で行われる練習。

火事に備えての練習は中途半端ではない。

消防隊の命はもちろん、現場の被害者の命を預かる仕事。

真冬の消防隊の練習はかなりの汗をかく程の訓練なのだ。

No.249 14/11/19 11:02
ナルシスト ( 84wJh )

必死に練習に打ち込んでいる多田の姿を沙友理はどう感じたのか?

いつも多田と会う時は私服でたわいもない本の話をするのみ。

その違った姿の多田を見て沙友理の胸はどう映っているのか?

「多田さん、辛いです、苦しいです、でも幸せになって下さいね」

沙友理は数分多田を見てその場所から去って行った。

もう少しで臨月を迎える沙友理は多田とお別れするかのように。

そして何故多田に時間を下さいと言った沙友理には、絶対にしなくては、確認しなくてはいけない問題があった。

沙友理はその時期を消してまで多田との付き合いはしないと強く感じていた。

多田が沙友理を諦め多田の新しい出逢いが出来ても仕方ない。

一生が多田と接触している事すら知らない沙友理。

沙友理は十分多田に助けられた、でもこうして多田に会いに行く気持ちは、素直な沙友理の気持ちだろう。

No.250 14/11/19 12:23
ナルシスト ( 84wJh )

帰り道沙友理は裕太との恋愛を思い出していた。
一度きり、間がさした相手を妊娠させ、その家族からの攻撃で沙友理から逃げ出した裕太。

「結局私の事なんてお構いなしだったんだ…」

裕太と同じ道を歩き、握った手の強さは同じだと思ってた。

「馬鹿みたい」

本当に私の事を好きならその相手に説得して私の元に戻って来てくれたよね?

携帯の連絡すらなく、転勤だと騙し、結局は私は裕太に捨てられた。

たわいもない会話のお客さんの多田さんは、いつもそばにいてくれた、お持ちしましょうか?

両手を出して微笑んでくれた。
子供がいる私に好意を持ってくれた。

私は全て失った。
そして唯一の見方のお父さんまで離れて行く。

「いったい私何してたんだか?」

作り笑いをしながら沙友理の心は泣いていた。

No.251 14/11/19 17:26
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は何度も携帯を空けその指で多田の番号を押そうか悩んでいた。

「苦しいね」

と溜め息をつき。

スーパーにいても多田が現れてくれたいか?

「ない、ない、そんな都合よく会うなんて、偶然はもう来ないよね」

裕太との思い出より、多田との偶然に…

スーパーの中は沢山の主婦でいっぱいだった。

「腰がだるくなってきた」

もうすぐ予定日
重い身体で沢山の買い物袋を持ち歩く。

「妊婦さん発見!」

「えっ?」

笑顔で、お持ちいたしましょうか?

多田が沙友理の後ろに立っていた。

多田の姿を見て沙友理の気持ちはいっぱい、いっぱいになり、大粒の涙がこぼれていた。

No.252 14/11/19 17:46
ナルシスト ( 84wJh )

「今市さん駄目ですよ、お母さんが泣いていたら」

多田は多田なりの精一杯の思い遣りなんだろう。
少し首を傾げて困った顔をする多田。

「母は強しでないと!」

沙友理のスーパーの紙袋を全て多田が持ってくれた。

2人は歩きながら沙友理が先に口にした。

「多田さん……苦しいの」

「今市さん、僕はもっと苦しいです」

沙友理は多田の顔を見たが多田は真っ直ぐ前を向けていた。

「すいません、子供の事ですよね…」

「あのね、赤ちゃんの心音って一番誰が聞くか知ってますか? て言うか、誰に聞いて貰うか?」

多田が明るい声で質問して来た。

沙友理には多田の質問の意味が分からなかった。

「えっ?」

「だから、子供の心音を初めて聞いた人が子供の親なんですよ、理由要りますか?」

「多田さん……」

その補足説明で少し勘違いかも知れないけど、何となく沙友理には伝わった。

No.253 14/11/19 18:02
ナルシスト ( 84wJh )

「今市さんは嘘がつけない人ですね」

多田の後ろを歩く沙友理

「今市さんの事を好き歴何年かなぁ~」

「恋愛話はしましたよね? あの別れがあってから~」

「すいません、多田さん」

「お父さんには内緒ですよ、僕が子供の親なんて」

「多田さん……」

多田は軽やかやステップで歩き出した。

でも沙友理は明るく振る舞ってくれる多田の姿がもっと辛かった。

多田は多田で沙友理の気持ちに答えてあげれない自分が苦しかった。


苦しいならお互いに別々の道を歩けば済む話しだが、そこには愛が邪魔していた。

No.254 14/11/19 19:04
ナルシスト ( 84wJh )

「今市さん…あのぉ…赤ちゃん産まれたら抱かせて貰えますか?」

「えっ? 抱いて下さるんですか?」

スーパーの袋を持っている右手を上げて

「抱かせて下さい…心音のドクドクちゃんを…」

嬉しい言葉にただ泣く沙友理。

「ドクドク、ドクドク」

と口ずさみながら歩く多田。

それ以上の沙友理には最高の愛情表現だった。

腰がだる重くなって来た沙友理。

座り込んでしまった。

多田は無邪気に遊んでいたが沙友理の異変に気がついた。

「今市さん?」

「沙友理さん! 大丈夫ですか?」

沙友理は陣痛が来始めたのか腰に手をやり

「腰が痛くてだるいんです」

荷物を落とし慌てる多田。

No.255 14/11/19 19:17
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多田は携帯を取り出して沙友理の父親に連絡した。

「お父さん、多田です、今市さんが産気づいたみたいで…すぐに連れて帰ります!」


「多田さん、大丈夫です、まだ産まれないと本に書いてありました。」

男性は経験ないので、誰もがうろたえる、女性の初産も不安だが、妊婦さんは必ず本で知識を得ている。

多田は片手で荷物を持ち、反対の肩を沙友理に介助した。

どう見ても多田の方が産気づいた妊婦さんのように1人焦っていた。

「今市さん、大丈夫ですからね…」

No.256 14/11/20 00:10
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「今市さん、大丈夫だから、2人の歩く速度合わせましょう」

多田は荷物だけで大変なのに、沙友理の体重まで多田の負担に肩が壊れそうだった。


「今市さん、はい、1・2・1・2・」

2人は沙友理の家に到着した。

父親はまだ帰宅していなかった。

「多田さん、もう大丈夫です、ありがとうございました」

多田はスーパーの袋をテーブルに置き、沙友理に何をしてあげれば良いのか?

ただうろたえ
「今市さん、大丈夫です」

数10分たち一生が帰宅した。

玄関を入るなり、慌て靴は捨て脱いでいた。

「沙友理、痛むのか?」

「まだ我慢出来るくらい、かも?」

「多田君ありがとう助かったよ、明日仕事だろ?」

「多田さんありがとうございました」

多田は思いもよらない事を口にした。

「勤務までに生まれなかったら帰ります、居ては迷惑ですか?」

一生は多田のその顔を真剣に見ていた。

「多田君が居てくれれば心丈夫だ、なぁ沙友理」

多田にこれ以上迷惑掛けたくない、多田の気持ちは痛いくらい沙友理の心に届いている。


「お父さんまず、梶本産婦人科に連絡しないと」

多田が何故娘の産婦人科を知っているのか?


「お父さん早く連絡して下さい」

一生は言われるままに娘が産気づいたと連絡を入れた。

No.257 14/11/20 00:37
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一生の車に乗せて多田と乗り込み沙友理。

後部座席に多田が先に乗ったのも、沙友理は先に降りやすい配慮だった。

多田にしがみつき痛そうな沙友理。

多田と沙友理の手はしっかり握り締めていた。

診察室に入ると先生が

「子宮口がなかり開いていますから、案外早くの出産になると思います、我慢出来なくなったら、ナースコール押して下さい」

沙友理は病院に入り陣痛の感覚が短くなり子宮の伸縮に苦しんでいた。

「多田さん、お願い背中と腰の辺り、さすって貰えますか?」

「分かりました、ここですか?」

「はい、そこです、すいません」

この2人の会話を聞いた一生は安心した。

「後は笑い者に任せるか!」

一生を待合室に腰をかけて

「母さん、やっと産まれるよ、僕が愛した母さんの産まれ変わりに…母さん見守ってあげてくれよ」

2人の風景は固い愛情で結ばれている事を確認して安堵した一生だった。

部屋の中では沙友理の、痛い、助けて、と聞こえいた。

でも一生は病院に入る事なく静かに産まれ代わりを楽しみにしていた。

No.258 14/11/20 01:12
ナルシスト ( 84wJh )

「もう、出来ない痛いよ…」

沙友理はベットにあるナースコールを押した。

看護師さんたのか?
助産師さんなのか、

「分娩室に入りましょうか?」

看護師なのか、助産師なのか?

多田に

「ご主人様ですよね?」

「父親です」

「立ち会いされますか?」

多田は待合室で腰を掛けていた一生に

「今市さんの立ち会いして良いですか?」

一生は多田の肩を軽く叩き。

「お願い致します」

立ち会いするにはそれなりの格好を渡された。

女性の立ち会い分娩室など初めての経験の多田は沙友理の手を握り締め

「今市さん、頑張って! 僕が側にいますから」

彼の沙友理に対する気持ち、沙友理より辛かった気持ちがようやく分かる気がした。

沙友理より多田の愛する気持ちは強かった。

必死で力む沙友理

「もう3回お腹のおへそを見ながら力んで下さい。」


「もう、限界です!」

「後 2回だけ痛みが出ればおへそ見て力んで、赤ちゃん出掛かってますよ」

「うぅ……ハァハァ」

「頭が見えました、後はラクに力んで!」

「うぅ……」

子供がオギャと泣いた声が聞こえた。

「今市さん、元気な男の子ですよ」

同じ強さで握ってくれた多田さん


今市さん、お疲れ様でした、感動をありがとう♪」

「多田さんお仕事なのに……」

看護師さんが

「お父さん抱かれます?」

「はい、抱きます」

3100グラムの元気な男の子。

「看護師さん、彼女のお父さんは待機してまして……」

「僕が先に子供を抱いた事は内緒でお願いします」

これも多田の配慮だった。

No.259 14/11/20 17:29
ナルシスト ( 84wJh )

真っ赤なクシャクャの赤ちゃん。

看護師さんに

「はい、お父さんおめでとうございます」

タオルにくるまれた赤ちゃん。

「初めまして、お父さんです」

多田は赤ちゃんの頬と自分の頬を引っ付けた。
指で赤ちゃんの口を触る多田の姿は本当の父親の顔になっていた。

「外でお父さんが待っているので、一番先に抱いてあげて下さいと言ってあげて下さい」

多田はもう少し抱いて居たかったが、一生を気を使い看護師さんに手渡した。


「今市さん、おめでとうございます、元気な男の子ですよ、娘さんがおじいちゃんに一番最初に抱いて欲しいと言ってます、抱いてあげて下さい」

看護師さんの手から一生を渡された赤ちゃん。

「有り難う御座います、立派な顔つきは、俺ににていますかねぇ!」

子供の顔を待て。

「多田君らしいよ、ダテに年は取っていないつもりだ」

1人事を呟いた。

「母さんが男の子なら仕方ないか」

ゆらゆらと赤ちゃんを揺らしながら一生の目に、うっすら涙を浮かべていた。

No.260 14/11/20 17:52
ナルシスト ( 84wJh )

多田は分娩室から出て来て。

「お父さんありがとうございました、おめでとうございます、では仕事に行って来ます」

「多田君、君に感謝しているよ」

 
一生は多田に握手を求めた。

多田は数歩歩き

「今市さんの選択は間違っていないと僕は思います!」

その言葉を残して階段を降りて行った。

「多田君、ありがとう、沙友理は幸せ者だよ」

昨日の夕方から始まった陣痛、多田は出産まで付き添い、一睡もしないまま、あの過酷な訓練に居ぞむ。

沙友理を愛し見守り、沙友理より、会えなかった事が、どれだけ多田は苦しかったのだろう。


唯一の救いは初めて抱けた沙友理の子供。
多田も人間である、他人の宿した事実を、簡単に受け入れるまでの葛藤はあった。

しかし子供の顔を見て、抱いた事でその葛藤から脱出出来だのあろう。

これから沙友理と多田の関係はどうなるのだろうか?


沙友理には絶対に許せない、まだ課題が残されていた。

このままピエロ犯人を消す事は出来ない。
あの沙友理を悩ましたピエロ犯人は笑っているかも知れないから。

No.261 14/11/20 20:12
ナルシスト ( 84wJh )

一生は沙友理の病室に入った。

「お父さん、お母さん男の子になっちゃった」

床を見ながら少し困惑が隠せない一生。

「可愛いよ、母さんなら、沙友理……」

沙友理はベットから起き上がりかけた。

「どうしたの? 赤ちゃん嬉しくないの?」

一生は起き上がる沙友理を寝かせて話した。

「父さんが会っていたのは多田君だ」

「えっ? 多田さんだったの?」

沙友理にはそれがどういう意味か分からなかった。

「子供の父親になると言ってくれてる、子供の事も考えて、2人を籍に入れないか?」


「ちょっと待ってよ!」


「今多田君と結婚すれば、子供は多田君の子供になる、多田君とも何度も話し合いをした、多田君の希望もそうだと聞いている」


「少し待って」

多田君が嫌いなのか?」


「大好きよ……」

「なら、問題ないだろう?」

「時間が欲しいの…」

一生の怒りが爆発した!

「多田君の何がいけないんだ!」

No.262 14/11/20 20:25
ナルシスト ( 84wJh )

「多田さんに問題はないわ…あるのは私」

「沙友理の何に問題があるんだ?」


「私は絶対に許さないの、あのピエロに」

「もう忘れろ!あんな事に関わるな! 沙友理の幸せを考えるなら……忘れなさい」

「忘れない…いつか必ず探してやる!」

「お前は多田君の気持ちが分からないのか?」


「分かってるわよ! 私は多田さんが思って下さってる女じゃないのよ!」

「勝手にしなさい」

この言葉を残し父親は病室から出て行った。

沙友理には父親の気持ちも多田の愛情も痛い程分かっていた。

ただ自分がピエロの主に接触して、その沙友理の気持ちに絶望される事が怖かった。

全ての犯人の証拠は掴んでいる。
ただそれを実行するには時間が必要だった。

裏切り捨てられ残酷な仕打ちをした犯人に。
必ず沙友理は接触したかった。

「犯人が誰だか分からなかった方が幸せだったわ」

No.263 14/11/20 21:31
ナルシスト ( 84wJh )

「今市さん、赤ちゃんの授乳のお時間ですよ~」


「はぁ~い」

嬉しそうに沙友理は赤ちゃんを抱きしめ授乳をしていた。

「こんにちは、お母さんですよ~」

沙友理も母親がこんな風に私を眺めて幸せを感じていたと思っていた。

お母さんどんな気持ちだったのかなぁ?
絶対に子供が愛しく、眩しい存在だったのかなぁ?

なんて自分がお腹を痛めた子供はこんなに可愛いんだろう。
 
そう思うと男性は可哀想かも?
この愛情は母親しか分からないよね~

「勝手にしなさい」

このお父さんの気持ちも父親が娘に対する愛情なのかなぁ?

沙友理の子供は男の子、お父さんの気持ち派。
父親のその言葉に沙友理は複雑な気持ちだった。

「おじいちゃん、怒りっぽいでしゅね?」

無邪気で心が真っ白な赤ちゃんは沙友理のお乳を必死に飲んでいた。

No.264 14/11/20 22:29
ナルシスト ( 84wJh )

入院して4日目に沙友理の父親と多田が沙友理に会いに来た。

「今市さん赤ちゃん見て来ました」

一生は浮かない顔つきで多田と沙友理に提案した。

「多田君再度沙友理の前で確認させて欲しい、多田君は本当に沙友理と子供の父親になってくれるのかない?」

何の迷いもなく

「はい、沙友理とお父さんが認めて下さるなら」


「沙友理、多田君の誠実な気持ちに感謝しないとな」

沙友理の気持ちは違った。

「お父さん、多田さん、本当に私は幸せ者です、私は多田さんが思って下さってる女ではありません、多田さんは幸せになって下さい」

一生は座っていた椅子から立ち

「お前は多田君の気持ちに何を考えてるんだ!
まだあの男の事を思ってるのか!」

一生は産まれて初めて沙友理を頬を殴った。

「お父さん、興奮しないで下さい!」

多田は沙友理をかばう様に2人の間に入った。

一生の興奮は止まなかった。

「お前は母さんに恥ずかしくないのか! そんな娘だとは思わなかった!」

「まぁお父さん、沙友理の話しも聞いてみましょうよ」

一番傷ついているのは多田だった。
全て心の受け入れをしていた多田。

幸せになって下さい。

多田にはその言葉がこたえたはず。
でも親子の間に入り、仲裁をする多田の心は折れそうだったと思う。

No.265 14/11/20 22:39
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理、多田君みたいな心の広い男性はもう2度と現れないぞ、お前が今多田君に言った言葉を改めろ!まだあの男を引きずってるのか!」


「違うの、多田さんごめんなさい、私は多田さんが思って下さってる女ではないんです」


「まぁお2人は興奮しないで下さい、お父さん、今市さんは産後ですから」

一生の怒りは止まらない

「父親なしで子供を育てるというのか! ならお前1人で育てろ!多田君の気持ちも組めない娘なら、父さんは沙友理は要らん!」


「お父さん、すいません、この状態では話は無理ですから、今市さんが退院してからでも?」


「沙友理は家に入れない!もう帰って来なくてよい、多田君済まなかった」

多田に深々と頭を下げ病室から出て行く一生。

No.266 14/11/21 12:33
ナルシスト ( 84wJh )

「多田さん、気を悪くさせてしまって……」


「今市さんをそんなに苦しめる理由があるのですか?」

多田は精一杯でもう例えるなら、食器のコップが流れが止まらない位の気持ちであろう。

「愛に理由はありませんが、憎しみには理由が必要です…」

沙友理の目は真剣だった。


「多田さん、私が憎しみを持ち、かりに多田さんが傷つく事を見てしまっても、結婚して後悔ありませんか?」

多田は沙友理のその言葉の後数分黙り込んでいた。

「それは僕を裏切るって事ですか?」


「多田さんが裏切られたと思われるなら裏切る事になるかも知れません」

沙友理のその言葉で沙友理は軽々しく物事を考えていないと気づいた。


「僕を裏切る…ですかぁ…」


「残酷な女なんです、私は」


「今市さんのお腹の中ではずっと火事状態なんですか?」

「もう今にも放火したい気持ちです」


「裏切る前に僕に話してくれませんか?」


「えっ?」

「裏切られると傷つきます、なら先に裏切る事を僕に話してくれませんか?」


「多田さん…」

確かに多田の提案は彼の愛情だ。

「放火犯を先に逮捕して火事をなくすのは消防士の僕の役目でもあります、理由要りますか?」

多田はにっこりと笑い沙友理を見つめた。

No.267 14/11/21 14:53
ナルシスト ( 84wJh )

「あっこんな時間になりました、今からお父さんをなだめに言って来ます、後は僕に話せるかは、今市さんが考えて下さい」

沙友理は多田の勇気ある言葉に何も言えなかった。

帰りかけていた多田が沙友理に

「赤ちゃんの出生届けは14日間ですよ」

にっこり応えた多田


「何故そんなに詳しいんですか?」

男性が出生届けの事など、独身の多田が発する事に驚いた。

「父親なら当然でしょ!理由はなしです、では」

「はい……」

多田は部屋から出て行った。
たわいもない会話だが、沙友理と子供の事を、どれだけ守りたいか!

多田は多田なりの覚悟を決めている。

決して曖昧に沙友理を愛し支えて来てはいない。
父親と同様なくらい沙友理を愛する気持ちだろう。


「多田さん、ありがとう、あなたに逢え…良かった」

沙友理の頬から感謝の涙がこぼれた。

No.268 14/11/21 15:14
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理の気持ちは揺れ動いていた。
ピエロさえなければ沙友理は多田の胸に飛び込んでいただろう。

ピエロの主と本当のピエロの人間に。
多田に全て打ち明けても良いのか?

もし自分が多田の立場なら傷つく事が、多田を傷つけ平然と子供を多田に押し付ける事は出来ない沙友理の気持ち。


客観的に考えれば言わないと相手の気持ちなんて分からない。
受け身の人間がどうとらえるかの問題であり、沙友理が考えるのではなく、本当は多田が考えて結論を出す問題である。


それを自分に置き換える不器用で真面目な沙友理に、多田は好意を抱いているのかも知れない。

少しだけ、ほんの少しの考え方の違いが、お互いを苦しめ、また悩ましているのだと思う。

 
一生は一生なりに父親として、娘の幸せを一番に考えている、沙友理との接触も多田に絶たせ、沙友理の本当の気持ちを考えさせる、父親にしては出来過ぎた親だと思う。

沙友理の人生を狂わせた裕太とピエロの主。
この存在がなければどうであったか?

人間の運命は恋をすれば全て幸せとは限らない。

恋をしている時は未来がこんなに苦しいなんてその時はまだ知らずにいた。

No.269 14/11/21 17:32
ナルシスト ( 84wJh )

多田は沙友理の退院1日前に沙友理に会いに来た。

「赤ちゃんってすぐ大きくなるんですね」

その言葉は多田が沙友理の子供を見て来たと、また沙友理より子供を優先しているかも知れない。


「多田さん、全てお話しします、聞いて下さいますか?」

沙友理がその話が終わると同時に多田の携帯が鳴った。

「またですか…」

多田はその携帯の主から飽き飽きしている様子だった。

「出ないんですか?」

「出る必要のない方なので、すいません」

「必要のない方が何故電話してくるんですか?」

少し沙友理の質問に困った多田が。

「理由も必要性がないからです、非通知にされると困るんですよね?」

沙友理は思い出した。

「非通知ですか?」

「非通知です」

「オルゴールの音は?」

多田は沙友理が何か勘違いしていると思って。

「今市さん、この非通知の相手は分かっています」

「誰なんですか?」

少し非通知の相手を馬鹿にしたように話す多田。

「熱しやすくて冷めやすい、人の物を欲しがる人」

沙友理は多田の過去の恋愛相手の話を忘れていた。
「誰ですか?」

「過去の恋愛話の相手ですよ、もうその話は止めましょう、お話し聞かせて下さいますか?」

沙友理には多田の過去の話しなど気にしていなかった。

沙友理は多田に自分のこれからの全てを話した。

ただ多田にはピエロの主の名前は伏せていた。

本人が認めない可能性も、また沙友理の勘違いかも知れないので。


「お話は良く分かりました」

「駄目ですか?」

「構いませんよ、ただし条件を付けさせて下さい」

「条件ですか?」

「はい、理由付けの条件です」

沙友理の話を聞いて、多田は顔色1つ変えなかった。
反対に沙友理から聞き安心して笑顔をみせる多田だった。

No.270 14/11/21 17:50
ナルシスト ( 84wJh )

多田から話し出した。
「今市さん過去の男性を今でも愛してますか? 気持ちに引きずってますか?」

「全くありません、子供は母親の産まれ代わりと思っています」

「今市さんがなさりたい気持ち良く分かります、ただ子供は1回会う事になりますね?」


「……だから私は多田さんが思って下さる」


「はい、そこまで!子供は一度だけ会わせます、ただし、一度だけですよ、相手がどう接触してきても僕は防御します、そしてお互いの親には内緒です、子供の名前は僕とお父さんで決めさせて下さい、僕の親にも僕の子供だと言っています、僕の子供で通して下さい」

沙友理はこんな真剣で少し怖い顔の多田を見たことがなかった。

「………」

「一番大切な事を条件です」

沙友理は生唾を飲み込んだ。

「今市さんにも時間が必要な事分かりました、子供はいつか成長すれば巣立ちます、今市さんは僕が年を重ねても僕の支えになって下さいますか?」

沙友理は何もかも返事が出来なかった。

私の条件を全て飲んでくれ、一番辛い本当の父親に会わす事を許してくれた多田に、一度でも会わす事を認めてくれた多田。

No.271 14/11/21 19:15
ナルシスト ( 84wJh )

多田の会話の中で過去の男性と言葉を選び話す気配りは沙友理への愛情なのか、自分が父親だと覚悟しての発言だった。

「今市さん、あの件は了解しました、僕も過去がない訳ではありません、後は今市さんの返事を待ちます、お父さんには今市さんの了解を得ています、明日も仕事なので、ホストに婚姻届け入れて置きます、数日後にお返事下さい、入ってなければ、きっぱり今市さんを諦めます、今市さんのお返事お待ちしてます」


「多田さん、ありがとうございました」

深々と頭を下げる沙友理

「子供見てから帰ります、じやぁ」

凄く長い台詞を口にして多田は帰って行った。

多田さんに甘えても良いのか?

私は簡単な条件しか出されていないのに。

当たり前の事。

夫婦は白髪が生えても添い遂げる事なんて。

ただ多田の非通知が気になりだした。

元彼女さんが今更多田さんに連絡してくるのか?

多田自身うんざりしていたのに?

熱しやすくて冷めやすい女性なんだ?

2人には越えられない過去の共通点が隠されているなんて、沙友理も多田も知らなかった。

No.272 14/11/21 20:09
ナルシスト ( 84wJh )

退院の日父親一生は浮かない顔で迎えに来た。

「多田君と話し合ったか?」

沙友理は子供を抱きしめていた。

「多田さんに申し訳けなくて…」

荷物を持ち一生は

「少しは多田君の気持ちも考えてあげなさい」

子供を揺らしながら

「後、1日待って欲しいの…」

鞄を持つ手が強くなる一生

「まだそんな事言ってるのか!」

「大声出さないで! 子供が泣くから…」

一生は子供の顔を見て

「名前すらない子供が不憫じゃないのか?」


「えっ?」

「戸籍も名前もないお前の子供なんだよ、今抱いているのは、良く考えなさい」

一生はその言葉を吐き車に乗り込んだ。

私…多田さんに甘えてもいいよね。
多田さんがお父さんなら間違いなく、この子は産まれて来て良かったと思ってくれるよね。

車に乗った父親に

「お父さん、背中押してくれて、ありがとう」

「うん」

2人は沙友理の母親が待って我が家に帰って行った。

沙友理の顔は全て吹っ切れた顔に変わっていた。

No.273 14/11/21 21:39
ナルシスト ( 84wJh )

「坂道に気をつけなさい」


「ありがとう、お父さん」

「さぁ、沙友理、母さんの産まれ代わり見せてあげなさい」

父親は荷物を座敷に置き子供を抱いてくれた。

「お母さん、ただいま、子供で帰って来てくれて、ありがとう」

仏壇の母親は「沙友理お帰り、子供として帰ったわよ、よろしくね」

と挨拶するかのような笑顔の写真。

「沙友理、気持ちが決まったなら、多田君のお母さんに子供を連れて挨拶に行って来なさい」


「多田さんのお父さんは?」

「亡くなられてる、この子の事も楽しみに待って下さってる」


「えっ? お父さん何故そんなに詳しいの?」

「多田君に会わせて貰った、多田君の子供として」

2人のデートは多田と父親が多田の母親と会い、多田の子供を産む事を事前に話し合っていた。

だから多田は母親には嘘を突き通して欲しい。
多田の母親は息子の責任を遅くなったと一生に謝罪した。

一生は多田の母親に謝罪された時の気持ちは、穴があれば入りたかった、嫌、人生で一番恥ずかしく、心が痛かったであろう。

「お父さん、沢山心配かけたね、親孝行するね」


「あちらのお母さんに孝行しなさい」

一生は子供を揺らしながら、本当は孫が可愛くて仕方ない姿だった。

No.274 14/11/22 00:29
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、多田さんに、婚姻届けポストに入れて置いてって言われたの」

「沙友理の気持ちは決まったのか?」

「私この子と多田さんに付いて生きたい」

父親の顔は嬉しそうであり安心していた。

「この子の名前教えようか?」


「決まってるの?」

「あぁ多田君と決めたよ」

一生は子供を揺らしながら

「祐一、ゆういち、父さんの名前が入ってる」

「多田さんの祐とお父さんの一生の一で祐一」

「あちらさんのお母さんには申し訳ないが、婚姻届けはポストに入れる馬鹿はいるか! 直接電話して、手渡ししなさい。」

沙友理は子供のお乳を飲ませながら

「祐一なんだ、お母さんとも繋がったね」

必死に沙友理のお乳を飲む祐一。

「明日多田さんに連絡してみる」

「くれぐれもあちらのお母さんにつかえる事だぞ」

「あちらのお母さんを大切にします」

「さぁ、沙友理、疲れているだろう、早く休みなさい」

「祐一君、ママと寝ようね」

沙友理も一生も疲れていた。

祐一をお風呂に入れて

「お父さん、祐一を引き取って!」

バスタオルを広げて待っていた一生は立派な沙友理の救世主だった。

祐一の夜泣きは大変だった。

たまに一生が助けてくれた。

こんなに幸せな沙友理。

こんな愛情たっぷりの父親と一生に感謝していた。

No.275 14/11/22 00:43
ナルシスト ( 84wJh )

次の日沙友理は多田に連絡んした。

「今市さんの答えは?」

「一生多田さんを支えて行きます」

「今市さん、明日休みなので、会いに行きます、そして婚姻届けと子供の出生届け、出しましょう、後悔はないですか? 迷ったいませんか?」


「多田さんがよぼよぼのお爺さんになっても、多田さんの側に居たいです」

「明日夜勤明けなので手続き済ませましょう、お迎えに行きます、僕の祐一に会いにいきます、母子手帳忘れないで下さいね」

多田の思いが沙友理に届いたのか

「守る人が出来て、仕事に張りができました、今市さん、決断に嬉しいです」

多田の声は明るく弾んでいた。

No.276 14/11/22 10:21
ナルシスト ( 84wJh )

「祐一ごめんね、名前明日付けに行くからね」

祐一はすやすや沙友理に抱かれ眠っていた。
夜泣きのせいか沙友理は大きなあくびをした。

「お父さん帰れば報告しよ~っと!」

沙友理は素直で優しい性格。

多田にとって沙友理のその真面目な性格がすきなのである。

多田自身人間の器が広く、過去の事を気にしないのは、沙友理の純粋な気持ちに惹かれていたのだろう。


「じぃじぃ帰って来たらお風呂入ろうね」

祐一は幸せなのかも知れない。
裕太みたいな優柔不断な男性と結婚していたら、父親一生と上手く付き合えたのあろうか?

沙友理が一番心配なのは、多田の仕事である。

人の命を救う仕事。
消防士などいつ巻き込まれ命を落としかねない仕事に、サイレンが鳴ると沙友理の心拍は早くなる。

反面沙友理の誇れる伴侶なのかも知れない。

No.277 14/11/22 10:39
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理、祐一ただいま」

祐一を抱き走り寄る沙友理。

「お父さん、明日多田さんと、婚姻届けと出生届け、出して来ます」

「そうか! それはおめでとう!戸籍見せてくれるか?」


「ちゃんとお父さんとお母さんに報告するよ」


「沙友理、役所の帰りに多田君の家にご挨拶してきなさい」

「そうだったね」

「あちらには大変迷惑かけているんだから、沙友理に言いたい意味分かるだろ?」


「分かってる、誠心誠意見せて来ます」

お父さんは少しやつれて疲れた顔をしていた。

やっと娘が落ち着き、また心の優しい男性に巡り会い、不出来な娘を歓迎して貰う、多田の家族に感謝していた。

「先に祐一の風呂入れるよ」


一生は多田の子供ではないが、祐一は愛する娘が産んだ子供。
血の繋がりとは、そんなものなのか?

「祐一、じぃじぃとお風呂入ろうな」

沙友理に鞄を渡し直ぐに祐一とお風呂場に向かった。

「祐一はじぃじぃみたいな男前になるよ、な」

沙友理は溺愛の孫をあやす父親を見て。

「お父さんみたいな親になりたいわ、私も」


長く時間が経過した、多田と沙友理のお付き合い。
明日沙友理は今市から多田の姓に変わり、名無しの子供も多田祐一に名前が付く大切な1日になる。

一生の熱く娘を見守って来た気持ちと、ここまでたどり着くまでの努力が一気に疲れさせたのか?

No.278 14/11/22 10:56
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理、上がるぞ!」

バスタオルを大きく広げて待っている沙友理。

「じぃじぃとのお風呂気持ち良かった?」

「気持ち良い事分かってる、聞くな」

沙友理は一生が見ていたい時に舌をだした。

「可愛げないじぃじぃだね」

「お腹空いたよ、沙友理の夕食ももう終わりだなぁ?」

寂しく呟く一生。

そう、一生は沙友理は多田の家に嫁がせると考えていた。
一生は亡くなった母親と過ごす事を考えていた。

「お父さん、それは私と多田さんで話し合うから」

「馬鹿か!お前は多田君の家族と暮らすんだ、お母さんにつかえなさい!」

お箸を置き沙友理は父親に

「私は一人娘なんだよ? それは多田さんも分かってくれてる、それを理解してくれないなら、私1人で子供育てる」

「父さんは覚悟は出来てる、多田君にそれを望んではいけない、沙友理を嫁に貰ってくれるだけで、父さんは感謝している」

と言いながら一生は夕食を口にしていた。

「私にはお父さんが心配なの、だから多田さんには話す」


黙々と夕食を食べる一生が一言

「その沙友理の言葉だけ、感謝してるよ」

それ以来沙友理と一生は会話する事はなかった。

時計の時間を知らせる音が鳴った。

沙友理の母親は2人に何かを伝えたかったかの様に。

No.279 14/11/22 11:42
ナルシスト ( 84wJh )

「おはようございます」

多田は明るく挨拶をして玄関に立っていた。

「多田さん、おはようございます」

「祐一おはよう」

多田は祐一をすぐ抱きしめた。

「お父さんは?」

沙友理は出かける支度をしていた。

「仕事なの、多田さんによろしくって」

「お父さんに聞いて貰いたい事もあったんですが」

沙友理は沢山の荷物を持ち靴を履いていた。

「何の話しですか?」

「今市さんとこれからの住まいです」

「えっ?」

「僕の母親とも相談してましてね」

まさしく昨日沙友理と一生が話をしていた内容だった。

「で、どんな内容なんですか?」

沙友理の荷物の多さを見た多田は祐一を沙友理に預け荷物を持ち出した。

「お父さん1人にしとけないし、まだ妹も家にいますし、良く帰ってくるんですよ、姉が、母親は今市さんが可哀想だし、一人娘なんだからと、僕が厄介になりたいと」

沙友理は簡単に口にする多田の内容に涙が出た。

「今市さん? 今市さんって泣き虫さん?」


「はい、泣き虫です、今市さんではありません、多田沙友理です…」

何故こんなに優しいの?

多田は人を嫌ったり、憎んだりした事はないのか?
天使みたいな心の広い多田。

「お父さんには僕からお願いします、さあ行きましょうか!祐一行くぞ」

坂道を下れば多田の車が待っていた。

多田は車に沙友理と祐一を乗せて。

「まず、梶本産婦人科で出生届けを貰い役所に行きましょうか」

「産婦人科ですか?」

「会社の同僚に産婦人科で出生届けの紙を貰ってから行く方が楽みたいです、だから皆さん奥さんの入院中に、届けだす人が多いらしいです」

全て調べあげ多田はこれから長い人生を沙友理と祐一、もしかすれば新しい家族が増えるかも知れない、多田の人生をしっかり守り抜く覚悟が出来ていた。

No.280 14/11/22 12:01
ナルシスト ( 84wJh )

「多田さん、あのー、多田さんは人を憎む事ないんですか?」

「どうしたんですか?急に」

軽やかにハンドルを握る多田。

「多田さんも人間だから、嫌いな人居ないんですか?」

多田は笑顔で。
「嫌いな人? 人生で1人います」

沙友理は驚いた
「誰なんですか?」

鼻で笑うかのように
「もう、忘れましょう、僕には関係ありません」

それ以上沙友理は何も聞けなかった。

多田にも居る、人生で嫌いな人が。
嫌いなのか、憎んでいるのか?

この物語はピエロ探しではない、サプライズの題名である。

作者からのヒントです。

「僕が産婦人科に行って来ます、少し待っていて下さい」

多田は沙友理が祐一を産んだ産婦人科に駆け足で入って行った。

多田さんにも居るんだ、嫌いな人が。
でも名前や関係など沙友理に明かす事はなかった。

また沙友理もその事に触れる事はしなかった。

沙友理に抱かれ目を開けている祐一。
少し裕太に似ているかも知れない。

思い出したくない沙友理の過去。
でも裕太に似てくる事が怖い沙友理。

消す事は出来ない過去。

「お待たせ」

多田が明るい声で車に戻って来た。

沙友理はその優しい多田の笑顔に罪悪感を抱いていた。

多田さんごめんね、こんな私で。

「さぁ多田沙友理さん、多田祐一さん、なりましょう」

車は祐一の負担にならない程度にゆっくり走り出した。

No.281 14/11/22 19:16
ナルシスト ( 84wJh )

「今市さん、僕のそばから離れないで下さいね」

役所の駐車場で多田が確認するかの様に話し掛けた。

「はい、条件の一番大切な事ですから」

「ありがとう、じゃあ戸籍いれましょう」

多田は沙友理のドアを開け祐一を抱きしめた。

「祐一のお父さんになるからね」

沙友理は多田のそばにいる事が何故確認するかの不思議だった。

多田は礼儀正しく育ちが良いのか?
全く裕太とは違っていた。

「多田さん、終わればお母さまにお会いしたいわ」

多田は家族も大切にしているみたいだ。
「分かりました、行きましょう、ただ…」

「何?ただ?」

「今市さんから公園で祐一の話を聞いてから、母親には話しています、話し合わせてくれますか?」

沙友理は少し驚いた。
多田から好意を持っていると言われ、お腹の子供の話をしただけなのに、多田はその時点で親に沙友理との交際をしていると話している事に。

「多田さん、それかなり前の話しですよね?」

祐一を抱きながら
「はい、でも勘違いしないで下さいね、ただ交際はしているとだけ伝えました」

未来の事を先に予言出来るのか?
多田は沙友理が何が何でも欲しかったのか?

「分かりました」

沙友理はそれだけ告げて2人役所に入って行った。

祐一をずっと抱きしめる多田。

2人は戸籍も祐一の戸籍も全て多田の元に入った。

「あの……」

多田が沙友理に恥ずかしそうに。

「今まで今市さんでしたが、沙友理さん、呼びにくいです」

にっこり笑い

「私が多田さんの事パパ、私はママは?」

満面の笑みの多田は。

「はい、パパ、ママで行きましょう」

にこやかに2人は多田の実家に向かった。

「あっ、多田さん、違ったパパ、あのケーキ屋さんに止まって!」

沙友理は手みやげを考えていたのだ。

嬉しそうに微笑む多田

「ありがとう、ママ愛しています」

沙友理は祐一を多田に預けて

「ミルフィーユ2個とモンブラン2個とブルーベリーを2個お願いします」

定員さんに注文した。

ガラスばりの店ドアの外には祐一の頬を指で撫でているパパの姿だった。

「パパありがとう」

微笑む沙友理。

No.282 14/11/22 19:43
ナルシスト ( 84wJh )

「ママこれが僕の実家です、本当に後先が遅くなってごめんねママ」

多田の実家は立派に植木の手入れも綺麗にされていて、沙友理の家より遥かに凄い豪邸だった。

「パパ、パパの実家凄いのね」

多田は祐一を抱きただいまと玄関を開けた。

「母さんママと息子の祐一が帰ったよ」

多田の母親は綺麗な容姿で沙友理の憧れになる存在の人だった。

「沙友理さんなの?」

沙友理に抱きつき

「ごめんなさいね、祐治に事で苦労かけさせて」

多田の母親は泣いていた。

「ごめんなさいね、ごめんなさいね」

何度も繰り返す多田の母親。
多田は祐一を抱きながら微笑んでいた。


沙友理には想像などしなかった対面にどう返せば良いのか戸惑っていた。

「お母さま、私こそ、宜しくお願いします」

「母さんママが困ってるだろう、中に入れてくれよ」

沙友理には何が何でも場違いに感じていた。

多田がこんなお金持ちの息子さんだなんて。
凄く嬉しそうに笑う多田。

「祐一君なのね?」

「僕の息子の祐一だよ」

多田は母親に祐一を抱かせ

「ママ入ろうか!」

沙友理にベッタリの多田。

苦笑いする沙友理。

「お邪魔します」

沙友理は多田の誘導で多田家に入って行った。

沢山あるであろう部屋のドア。

沙友理は本当に多田家の皆さんと馴染めるのか?
心配だった。

「ママ、こっちに座って」

多田の隣りの席に指差され、多田の隣りに座った。

祐一を抱きながら涙する多田の母親。

多田は沙友理の事をどのように話していたのか?

そして沙友理は見てしまった。

多田が母親に余計な事は口にするな!
一瞬睨みつける多田の顔を。

No.283 14/11/22 20:07
ナルシスト ( 84wJh )

「祐一君の話は聞いていたのよ、嬉しいわお父さんが帰って来てくれたみたい!」

「母さん祐一は僕とママの子供なんだよ」

「沙友理さん、本当に祐治の事許してあげてね」

沙友理は訳が分からない。

「パパ、いえ、祐治さんは最高に素敵な男性です」

多田に子供を渡しお茶の用意を初めた多田の母親。
少し感じた多田の目つきが。

勘違いかも知れないと自分に言い聞かせる沙友理。
「お母さま、ケーキ買って来ました、私もお手伝いさせて下さい」

母親は多田の顔をチラッと見た。

笑顔でそのサインを返す多田。

沙友理は何かあるのか?
初めて気になった。

多田の携帯が鳴った。

多田は出る様子すらなく、沙友理の隣りに座っていた。

「パパ? 電話ですよ」

「ママ大丈夫だよ、心配しないで」

慌てた様子の母親が
「祐治にイタズラが多いから、祐治何とかしなさいよ!」

「何にもしないよ、僕はママと祐一がいるから」

母親と沙友理は対面キッチンに立ちお茶の用意をしていた。

携帯が止んでもまた携帯が鳴りだした。

多田はその携帯に出る事はなかった。

その違和感だらけの雰囲気を消すかのように。

「沙友理さん、美味しそうだわ!」

「ママが選んだケーキだから美味しいよ」

これまで盛り上げる多田。
多田は沙友理を本当に心の底から愛していた。

多田の父親の仏壇に手を合わせて、沙友理達は楽しい話を初めた。

「祐治をお願いします、週末や沙友理さんと祐一君だけでも顔をだしてね」

「はい、本当にいいのですか?」

「お父様ともお話ししてますから、お父様1人は可哀想だわ。娘も居るから私には」

やはり多田の話し通りだった。

父親と暮らせる事を確認出来た多田の母親の言葉に。

「パパ、ありがとう」

「僕にはママがいてくれるなら何も要らないよ」

多田の優しさに感謝する沙友理。

No.284 14/11/22 21:14
ナルシスト ( 84wJh )

「さぁ今日はママも祐一も疲れているし、お父さんも待ってるから帰るよ」

「パパ、もう少しお母さまと話がしたいわ」

多田は沙友理の荷物を持ち立ちだした。

「ママ、まだ僕達の人生は始まったばかりだから、帰ろう、ね」

多田の言葉に反論する気持ちもなかった。

「お母さま又来ます、本当にいいですか?」

にっこり笑い
「沙友理さん本当に祐治の事お願いしますね」

「はい、パパの事は私に任せて下さい、ありがとうございました」

「ママは祐一を抱いて、僕は荷物を全て持つから」

「いつでも来てね、祐一君またね」

お母さまに送られ私達は父親の待ってる家に帰って行った。

「ねぇ、パパ、私お母さまに嫌われてないかしら?」

多田はハンドルを握り。

「絶対にないよ、僕が選んだ奥さんなんだから」

祐一は沙友理の腕の中でスヤスヤと寝ていた。

「パパ?」

「何?」

「何故携帯出なかったの?」

多田のハンドルを握る手が強くなった。

「僕にはママが世界で一番大切なんだよ、だから他に理由はないんだよ」

「前の彼女なんでしょう? その相手は?」

急に路肩に止めた多田。

「ママ、過去に引きずられたくない、ただそれだけだよ、ママを一生愛する事を誓います」

多田は沙友理に右手を上げて違った。

「ママは祐一と僕どっちが好き?」

急にそんな質問された沙友理

「どっちも、でも祐一が離れたらパパかなぁ?」

「僕の目は間違って居なかったよ、ありがとう、ママ」

沙友理は今まで見たことのない多田の一面を見たと実感した。

何故多田はそんなに私に優しいのか?
沙友理は知る事は絶対にない。

多田、嫌、母親以外知る事はない。

ただサプライズを最後までご覧頂いた方だけは知る事は出来る。

No.285 14/11/22 21:32
ナルシスト ( 84wJh )

「ママ、約束は守ってくれるよね?」

沙友理は多田との約束が何だったのか忘れていた。

「約束?」

「そう、僕は家族が一番大切なんだよ、だから祐一を会わすのは一番だけ、祐一に何かあれば相手は選ばない、勿論ママも、約束ですよね?」

相手を選ばない…

「約束は必ず守るわ、パパを一生愛する事を誓います」

沙友理は多田に右手を上げて誓った。

「僕が今怖いのはそれだけ、ママを信用してるよ」

怖い…
多田さんなの?
今までの私の知ってる。

「さぁ、お父さんが待っているから帰ろうね」

車を走らせた多田。

多田の隠された過去に何があるのか?
何故携帯の相手をそんなに避けるのか?

携帯番号を変えれば済む話し。
多田には他に隠された女性が居るのか?

多田の性格なら不倫や浮気は考えられない。

沙友理の過去と多田の過去。
同じ運命で偶然の出逢いに。

2人には共通の過去。
神様のいたずらなのか?

「ママ、坂道気をつけて」

「パパありがとう」

多田の優しさは時には沙友理を疲れさせる。

誠心誠意沙友理に尽くす多田。

「お父さん、今帰りました」

沙友理の家を初めて義理の息子として開けた、初めての言葉だった。

No.286 14/11/22 22:14
ナルシスト ( 84wJh )

ここで視線を変えて沙友理を捨てたあの残酷な裕太の生活にスポットをあてたいと思います。

興味ないですか?
沙友理を捨てた裕太の生活に?
ピエロの主がこの物語の内容ではありません。

……★サプライズ★……

裕太の生活に入ります。

「裕太!泣いてるわよ!」

裕太の妻愛がかん高い声で裕太を呼んでいる。

「また俺かよ~」

リビングは洗濯物が散乱していた。

「あのさぁ~子供泣くんだから仕方ないじゃん」

愛はソファーに寝転び裕太に足で指示した。

「ごめんね、すぐミルクつくるからね」

真新しく裕太の年収ギリギリで買った一戸建て。

「裕太!あれもお願いね」

台所には山済みの洗い物が沢山あった。

裕太の性格は優柔不断で気が弱い。

だから愛との結婚を妊娠とした理由で迫られ追い詰められ、挙げ句の果てに、沙友理を捨て愛との結婚を選んだ。

No.287 14/11/22 22:38
ナルシスト ( 84wJh )

愛と裕太はただの一夜の関係であった。

元々愛は男好きな女性で、とっかえひっかえ彼氏が変わる性格。

そんな愛の性格を心配した家族が妊娠させた裕太と結婚へ進めた。

裕太には少しキツい性格の愛だが、裕太に甘える技を持って居るのか?

「ねぇ裕太、私と赤ちゃん大切よね~」

裕太はその甘え声に弱いのか?

「愛の事好きだから結婚したんだよ!」

裕太の肩にもたれかかり

「愛は裕太が一番好きだよ!チュ」

裕太はチュの頬を撫でながら

「愛は可愛いよ!最高!」

てな感じて愛に乗りかかり裕太は腰を振った。

「裕太、あぁめっちゃ気持ちいぃ!」

裕太の顔は終わりの顔
「愛、俺、イク………」

その隣りで愛と裕太の子供

娘 理利香 が泣いている。

「裕太、愛、疲れちゃった、ミルク?」

下着を着る裕太。

「また、俺?」

「だって裕太の子供産んだんだよ、愛は?」

「分かりました、ミルクだね、理利香!」

理利香の事が可愛くて仕方ない裕太。


男親は女の子が可愛いのはこんな最低な裕太でも許せる。

「おぃ、愛、タバコ辞めろよな」

愛はヘビースモーカー。

「明日止める~」

「お前の明日はいつなんだよ!」

理利香は裕太にミルクを貰いゴクゴクのんでいた。

「理利香は将来パパと結婚しまちゅね~」

それをタバコをくわえ微笑む愛の姿。

No.288 14/11/22 23:58
ナルシスト ( 84wJh )

裕太の朝はいつも1人。

愛は理利香の世話だと言ってお昼まで寝ている。

母乳よりミルクの方が赤ちゃんの腹持ちが良いと言う理由と、胸の形を変えたくない。

裕太は朝ご飯抜きで、空の玄関に

「言って来ます」

と声かけしてから鍵を閉める。
ゴミの日も裕太が家のゴミを集めて会社に行く前に指定の場所に運ぶ。

たまに裕太

「はぁ~」
とため息をつき会社に向かう。

昼過ぎに起き出す愛、携帯をいじりながら、理利香に片手でミルクを飲ませ、男に電話する。

必ず裕太のいない時間帯に。

「あぁぃ~愛で~す」



「愛ちゃん復帰して遊ぼうよ」

「だよね、今さぁ、旦那に飽きて来ちゃった!」


「子供旦那に渡して、俺と住もうよ」

「はい、無理~あんたに先の保証ないもん」

そんな男は愛にはどうでも良かった。

愛に声を掛ける男には興味なし。

あいつに電話しよっと。

相手の携帯を呼び出す音はしてる、でも絶対に愛の電話は出ない。

「またかよ!」

裕太には内緒だけど、理利香のお父さん、あいつかも?

高笑いする愛。

理利香はスヤスヤ眠ってる。

あいつは絶対に今でも私を愛している。

「愛の感は当たるんだよ、辛くて出れないの?」

またタバコを吸い、赤ちゃんにタバコは悪い環境だと分かりながら。

「あ~美味しい」

まだ新築の家だが、禁煙者が訪問すれば、タバコの臭いがする。

裕太の帰れない日は実家に子供を預けて、裕太以外の男性と肌を重ねていた。

結婚してもあまり変わらない愛の性格に諦めていた家族。

裕太の今の生活の幸せは娘の理利香。

理利香を抱いてたまに沙友理を思い出す。

ベランダで理利香を抱き、沙友理幸せかなぁ?

まさか裕太の子供を産んだ事すら、沙友理から聞いていない裕太。

もし裕太の子供を妊娠したと沙友理が伝えても、結果は同じ。

裕太はその時もう愛を籍をいれていた。

裕太には愛がお似合いだ!

沙友理は真面目で沙友理と祐一、お父さんを大切にしてくれる多田がそばにいる。

ベランダでたまに沙友理に申し訳けなかったよなぁ!
呟く裕太の後ろ姿がやけに悲しそうだった。

No.289 14/11/23 11:33
ナルシスト ( 84wJh )

裕太が沙友理を思い出すのは月に1回は必ず思い出す。
髪を切りに行くと沙友理のあのナイフでギリギリに裂かれた裕太の恐怖。

沙友理の事を決して良い思い出でもなかった。

怖い存在でもあった、裕太が沙友理の思い出を。


ここまでが、沙友理を捨てた裕太の生活でした。

沙友理の生活に戻りたいと思います。

「お父さん、今帰りました」

多田が明るく声をかけた。

「多田君、沙友理、お帰りなさい」

父親はすぐに沙友理の胸の祐一を抱き。

「ちゃんと手続き完了したか?」

「お父さん、心配おかけしました、完了しました、祐一も沙友理さんも僕に託して下さいました」

「良かった、良かった」

荷物を置きながら。

「沙友理さん、あぁ、ママって呼びます、実家に挨拶に行ってくれました、嬉しかったです」


「あちらのお母さんは沙友理の事気に入ってくれただろうか?」

「優しいお母さまだったわ」

父親は安心したのか?
ほっとしていた。

「お父さん、今日から僕も宜しくお願い致します」

「多田君、こちらこそ、よろしくな」

男同士握手を交わした。

沙友理の家庭は2人から多田と祐一が加わり、賑やかな家庭に変わった。

夜布団に入る時、沙友理が多田に。

「パパ…ごめんね、まだパパと……」

腕枕を沙友理にしている多田は。

「ママ、大丈夫だから、体調が戻れば求めるから」

多田と沙友理はまだ1度も身体の関係はなかった。
沙友理はその事が心配だった。

「ママの温もりだけで、今は感謝してるよ」

沙友理の頬に軽くキスをして2人は眠った。

No.290 14/11/23 11:51
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理の家族は益々忙しい朝と賑やかな家庭が当たり前になっていた。

祐一も寝返り、はぃはぃが出来るまで。

父親と多田は本当の親子みたいな関係。

沙友理と父親が口喧嘩すると、多田は必ず父親の肩を持ち、影では沙友理に

「ママ、さっきはごめんね、ママは間違っていないよ」

フォローは必ず口に出す多田。

祐一はパパが一番大好き、2番がじぃじぃ。

多田は我が子以上にまた異常な程祐一を溺愛していた。

何もかも文句無しの多田の行動。

しかし沙友理の悩みの種は。

夜の夫婦の営み。

「ママ、今日大丈夫?」

「大丈夫だよ、パパ」

ここまでは普通なのだが…

「ママ、うっ~過去の男と僕とどっちが気持ちいぃ?」

沙友理の上に乗り腰を振る多田が必ず聞く言葉。

「あぁ~パパが一番よ~」

「過去にも居たの?」

「えっ?」

「ママは僕だけのママだよ」

「産まれて初めての男性がパパよ~」

「だったら、いいの~ママ、愛してるよ」

沙友理にはその言葉が怖かった。

初めての男性なら祐一は存在しない。

毎回夜の営みで聞かれる多田の質問。

「ママがこの世で一番愛してる人は?」

「パパ、多田祐治だよ」

多田は何を恐れているのか?
何を確認して沙友理の答えを求めているのか?

結婚して1年半近くなっても、夜の営みには必ず聞く言葉。

No.291 14/11/23 12:58
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は多田の深い愛情に包まれ幸せな日々を過ごしていた。

結婚前から、嫌、結婚後の方が沙友理を支え、家族を大切にしてくれた。

多田から父親にこんな提案をして来た。

「お父さん、今まで家族の為に頑張って来て下さり、有り難う御座います。お父さんの身体が心配なんです、僕が今市家を守ります、お父さんは、これからの僕達の助っ人をお願いしたいのです」

父親は体調を壊してからずっと、沙友理の今後を心配して来た。


通院も未だ欠かせない身、多田はそれを心配していた。

「多田君、有り難う」

一生には何より嬉しい言葉だった。

「祐一もいますし、ママとも2人目考えています、ね、ママ」(^_-)

「お父さんが居てくれないと困るの私達には」

「お父さんの今後も全て僕とママで協力していきます、ママを育てて下さった事への感謝です」


一生は涙もろくなったのか?

目に涙をため。

「そうさせて貰うよ、有り難う祐治君」

部屋に戻った2人は。

「パパ、有り難う、感謝しています」

「ママは僕の宝なんだよ、だから宝のママのお父さんを大切にしないと」


「パパは最高の男性よ」

沙友理は多田の心配は仕事だった。

火事の現場に入る多田に、もしもの事がないか?

多田は沙友理家族には絶対的な存在だった。

たまに祐一を多田の実家に連れて行く沙友理。

その行動にも多田は沙友理に感謝していた。

多田に心配な事、怖い事、そして気になる事。

多田は非通知の電話が忘れた頃に鳴る。

絶対にその電話だけは取らない。

「パパ、またあの電話鳴ってるよ!」

「大丈夫だよ、心配しなくても~」

「電話番号変えてよ~」

「何も僕は悪くないから」

いつもそれで終わる会話。

沙友理は気になって仕方なかった。

でもその電話はこの先ずっと続かない事は作者しか分からなかった。

No.292 14/11/23 14:15
ナルシスト ( 84wJh )

多田が沙友理をこよなく愛す様に沙友理も完全に多田を必要としていた。

多田と沙友理は口喧嘩などすらない。

多田の穏やかで器の広い性格に。

「パパ、また祐一とお菓子食べてる、ダメだって言ったよね? 今日はじぃじぃのお疲れ様会なんだから」

「ごめんね、ママ、祐一パパ叱られちゃったよ」

この程度で済む会話。

沙友理自体穏やかな性格なので、多田と口論なんて。

一生の一番の親孝行だった。

沙友理が心配する仕事現場の話は必ず腕枕で眠る沙友理に話をしていた。

毎日、仕事で夜勤や緊急以外は腕枕は沙友理の枕だった。

今日はじぃじぃ、一生が会社を退職し、最後のお疲れ様会を沙友理の手料理でもてなす設定。

唐揚げを揚げたり、ブロッコリーを茹で、生ハムをキュウリとかいわれ、カニかまで巻き、綺麗なオードブルを作っていた。

「パパ、祐ちゃん、抱っこ!」

祐一が多田に抱っこをおねだりしている。

「祐一は一番は誰?」

「パパ!」

「パパは一番はママ!」

祐一を抱きクルクル回すと祐一は大声で笑い出す。

少しづつ話せるようになった祐一。

「パパ、パカパカして!」

「よし!祐一乗りなさい」

母親の仏壇がある座敷でお馬さんごっこをする多田。

それをエプロン姿で振り向き笑う沙友理。

「ただいま…」

「じぃじぃ。帰って来たよ祐一。」

2人は先に一生が帰って来た玄関に走った。

沙友理は揚げ物をしていたので、手が離せなかった。

「お父さんお帰りなさい、お疲れ様でした!」

沙友理だけ台所から大きな声で出迎えた。

No.293 14/11/23 17:18
ナルシスト ( 84wJh )

みんなが一生の勤続のお疲れ様を感謝していた。

一生は少し恥ずかしそうに照れ笑いをしていた。

娘婿や孫沙友理に労いの言葉を掛けられ、一生には嬉しい夜であった。

「パパ、お願いします」

母親の仏壇のあるテーブルには、沙友理の手作りの豪華なオードブル。

一生は祐一を膝に乗せていた。

「お父さん、本当にお疲れ様でした、後はママと祐一と僕を支えて下さい、では、お父さんに乾杯!」

多田は嬉しそうに、また一生を労い、一生のお疲れ様会を楽しんだ。

「天国のお母さん、お父さんに乾杯!」

一生には申し分のない沙友理の旦那さん。

一生も多田をこよなく愛し信頼する男性だった。

「多田君には感謝しか言葉はないよ」

沙友理に微笑む一生

「パパ、ありがとうね」

「パパ、パパ」
祐一が一生の膝から多田の元に移動した。

「祐一、今日はじぃじぃが主役だよ」

「パパ、パパ」

祐一は多田が大好きで、多田から離れない祐一。

その夜は楽しくまた笑いが絶えない夜になった。

「俺は幸せ者だよ」

一生はまさに誰が見ても泣いていた。

泣いている顔を触る祐一。

じぃじぃは祐一に涙を拭いて貰っていた。

沙友理も多田も泣いていた。

沙友理は洗い物、多田は祐一とお風呂。


「母さん、無事に終わったよ、多田君に甘えてばかりだよ、幸せだよ、沙友理も俺も祐一も」

時間を知らせる時計の音。 

「あなた本当にお疲れ様でした、私が居なくて、ごめんなさいね、あなた有り難う」

時計の音がそう一生に話しかけていた。

No.294 14/11/23 17:40
ナルシスト ( 84wJh )

祐一と多田がキャーキャーと楽しくお風呂に入っていた。

多田の携帯が鳴った。

沙友理は見てはいけない事は分かってた。
でも鳴る多田の携帯。

多田にバレない様にフタを開けた。

   非通知

沙友理はすぐにフタを締めた。

「パパ……」

「ママ~祐一が上がりま~す」

気にしない、気にしない。

「はぁ~い」

沙友理は多田に相談があった、そして多田も沙友理に相談したかった。

祐一ははしゃぎ過ぎたのか?

2人の寝室でスヤスヤ休んでた。

一生も幸せな気持ちで部屋で寝ていた。

2人はもう寝る準備で布団に入った。

沙友理は多田に相談の話をしたかった。

多田は後で話すつもりだった。

腕枕の沙友理に。

「ママ、愛してるよ~いい?」

「パパ、御話が…」

沙友理の口を多田の口でふさぐ。

「あぁ…パパ…」

「ママの最初の男性は?…はぁ~」

首を多田の唇を伝う!

「はぁ~パパ~よ~あぁ……」

腰を動かし

「沙友理は誰の物~~オォ…」

「パパの…物よ…」

最高に達しながら

「パパって~誰~」

「多田……祐治…」

多田の質問は全く変わらない、毎回同じ質問。

多田は沙友理の中に入ったのか?

絶対に沙友理の上で倒れない。

沙友理に体重の重みは乗せない。

多田は終わると必ず沙友理の処理すら自分がする。

沙友理はそんな処理より、毎回の質問が少し不満と言うか怖い。

にっこり沙友理に笑顔を見せる多田は、一番この世で幸せな顔を。

No.295 14/11/23 18:22
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理はパジャマを直しながら。

「パパ?私ヘルパーの資格を取りたいの?ダメ」

沙友理を抱きしめて離れない多田。

「大丈夫だよ、心配しなくても、僕が働くから」

「違うの!これからお互いの親の事も考えて」

多田はもっと沙友理にべたつき。

「沙友理はどうしてそんなに素敵な奥さんなの?」

また多田は沙友理に愛撫し始めた。

「パパダメ?」

多田の口は沙友理の身体を舐めまわす。

「最高の僕の宝だよ、沙友理は、離れないよね?」

「パパ~あぁ…以外の男性なんて考えれないわ」

多分多田は沙友理の優しい言葉に興奮するのか?

「ママ、僕も消防の階級上げるよ…」

沙友理の中に入る多田。

「あぁ…パパ…階級ってあるの?」

腰を動かし真剣な顔を沙友理に見せ

「階級資格があるんだよ……はぁはぁ」

「そう…なん…だ…」

「沙友理、10段階まで…だよ……」

「沙友理イクよ……あぁ」

「頑張って…ね…」

「沙友理が一番好きな人は?……」

「多田……祐治…」

「ママ…愛して…イク…」

沙友理は少しぞーっとしていた。

夜の営みは平気なんだが、沙友理の言葉で興奮する時は2回がある。

その度に毎回同じ事を聞かれる事が。

沙友理を取られたくない気持ちは分かるが、多田の場合は異常だ。

沙友理の事は絶対だし、沙友理を守る為なら、容赦しない多田の沙友理に対する思い。

多田は沙友理を絶対に裏切らない、その熱意が反面に変われば怖い存在である。

祐一や家族以上に沙友理に対する愛情は異常だ。

非通知の事すら聞けない沙友理。

普通なら聞く事でも、多田の沙友理に対する愛情で、沙友理は聞けない。

沙友理が祐一を愛するより、沙友理の事を愛する多田。

多田が居る時は必ず朝まで腕枕の沙友理。

多田が軽く寝息を吐いた。

腕枕の沙友理には、多田のあの過酷な訓練なのに、多田は家庭でも手を抜かない人。

多田の身体を一番心配していた。

No.296 14/11/23 21:27
ナルシスト ( 84wJh )

毎朝お父さんと多田を送り出していた沙友理。

今はお父さんは祐一の面倒を見てくれ、多田は沙友理を独り占め出来る朝に変わった。

「ママ、愛してるよ、チュ」

「パパ、お仕事頑張ってね、チュ」

一生は見ていられないであろう。

新婚なら別だがもう2年半は過ぎでも、この多田の沙友理への思いが冷めない事を。

沙友理が心配なのは、多田の火災での出動要請。

家族は皆さん心配だろう、無事に帰って来るか?

沙友理は父親にも相談して、ヘルパーの資格を取りに、講習を予約していた。

祐一も手がかからなくなって来たので。

「沙友理が前向きなら、父さん応援するよ」

「祐一はじぃじぃが好きだから、大丈夫よね」

祐一とじぃじぃは良く電車を見に一生が自転車に乗り、遊びに連れて行ってくれた。

「じぃじぃ散歩行こ!」

一生は祐一を抱き。

「じぃじぃと出発行こうか?」

「じぃじぃ。大好き!」

「お父さん、あまり甘やかさないでよ!」

「ママ、あかんべー」

2人であかんべーをされ、笑うしかない沙友理。

沙友理の携帯が鳴った。

「パパだわ! はい、パパ?」

「えー!本当に!」

多田は沙友理との結婚式も挙げていない事を気にしていた。

写真屋さんで衣装を借り、家族写真を撮りたいと話してきた。

沙友理と多田の結婚指輪も作りたいと。

沙友理は嬉しかった。

「沙友理、多田君は本当に世界一の旦那さんだね」

「祐一のパパ最高!」

「パパ一番!」

祐一が言うと。

「じぃじぃ。は?」

「じぃじぃ。一番!」

沙友理は祐一が成長して行き、多田との約束ももうすぐ。

あのピエロのあの人に会いに行くつもり。

必ず吐かせてやる。

祐一の父親とも一度限りの沙友理からのサプライズ。

No.297 14/11/24 00:17
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん今からヘルパーの講習に、行って来ます」

夜勤明けでふらふらの多田は講習会場まで沙友理に付き添う。

「パパ遅くなるけで良いかなぁ?

「待っている間昇格の本読んでるよ、だからゆっくり講習受けて来て、頑張ってね」


多田は仕事以外沙友理から離れない。

1人買い物もショピンクも楽しみたい。

講習を受けながら必死にメモする沙友理。

かなりの時間が掛かろうが、多田は文句1つ言わない。

少し沙友理は多田の事を重いと感じてた。

そう、皇室の生活みたいな自由がない沙友理。

疲れた身体に夕食の準備をする沙友理。

多田はあまり外食を好まない。

沙友理の手料理が多田のご馳走。

疲れいる時は外食したかった。

何よりも嫌なのは、この夜の営み。

多田の質問に全て多田を喜ばす言葉を言わなければいけない事。

体力を鍛えているから、夜の営みは1度だけならと願っていた。

ヘルパーの講習に、くたくたの沙友理。

課題やレポートのまとめに、沙友理は時間が欲しかった。

沙友理を誰かに取られまいと、必死な多田の姿勢に沙友理は彼が一番の安らぎを求めてくる行動に断れなかった。

今日はじぃじぃ。と寝る祐一。

「パパ?記念写真撮れば、あの実行していい?

「分かった、ただし、一番だけの条件だよ!

「先にあの件を調べさせて頂きます。

「分かったよ、約束はまもるから」

多田はその沙友理の不安から、夜の営みの質問内容が変わった。

「沙友理も祐一も僕の物だよ。」

「その沙友理を捨てた男に未練や同情は抱かない事」

「ママが僕の永遠の奥さんだよ」

「沙友理に近づく男がいたら俺はそいつを殺す」

「沙友理が一生愛した男性は僕しかいない」

「僕も人生で愛した女性は沙友理だけ」

そんな事を確認し続けて何年たったのか?


営みに満足した多田は

「ママ、明日楽しみだね

沙友理に腕枕をして眠った。

多田とのセックスで妊娠しなかったのが不思議だった。

明日は私達の結婚式に嬉しさが隠しきれない沙友理は部屋の電気を消した。

腕枕の隣りで沙友理は目を閉じた。

No.298 14/11/24 11:34
ナルシスト ( 84wJh )

「ママ、支度大丈夫?」

「パパ、祐一の洋服お願いね~」

「沙友理祐一は俺が着替えさせるよ」


「お父さんお願いします」

今市家では多田と沙友理の記念写真の用意に朝からバタバタしていた。

「お父さん、沙友理と祐一お願いします、僕は母親を迎えに行って来ます」

祐一の着替えをさせながら。

「多田君、頼んだよ!」

祐一ははしゃぎ中々洋服を着ない、バタバタと部屋を回り、じぃじぃと鬼ごっこ的な感覚。

「祐一!」

沙友理が祐一を叱った。

ウェーンと泣きだす祐一。

「沙友理、祐一、行こうか?」

「電気よし!ガスよし!水道よし!」

「お父さん緊張するわ~」

「あっ!お母さまの写真持った?」

ハンドルを握る一生は。

「忘れる筈などない!父さんはボケてない!」

祐一は沙友理の膝で抱かれていたが、じぃじぃに抱かれたい様子だった。

「祐一!」

多田がこの場に居たなら必ず沙友理のフォローをするだろう?

3人は衣装付きの写真屋さんに向かった。

今では結婚式より写真屋さんでも立派なドレスが沢山並んでいる。

手ぶらで行き、豪華な式場みたいなセッティングなど今の写真屋は進化していた。

全て多田が探し、沙友理の為のご褒美なのか!

多田は母親を連れて写真屋に先に来ていた。

「沙友理ちゃん、祐一!」

沙友理と多田の母親は凄く仲良し。

祐一をこよなく愛す多田の母親。

「ばぁー」

と多田の母親に飛びつく祐一。

「ママ、行ってらっしゃい」

ドレスの着替えに送り出す多田。

数分後皆が叫ぶくらい綺麗な沙友理。

頭にはキラキラ光る☆彡ティアラが沙友理の綺麗さを引き立たせた。

祐一はいつものママと違い少し怖かったみたい。

「ママ、綺麗だ!」

沙友理に抱きつく多田。

その異常な光景に誰も注意出来ない。

やはり皆も多田の異常は認識していた。

何故そんな異常なのかは、多田の母親だけが知っていた。

No.299 14/11/24 11:58
ナルシスト ( 84wJh )

多田はグレーの正装に白い手袋。

一生は黒の正装に多田の母親も留め袖、祐一は可愛いスーツ姿。

一生は沙友理の母親の写真を持ち。

多田の母親も多田の父親の写真を持つ。

カメラマンが一番手こずるのは子供である。

子供の好きなキャラクターをカメラマン視線に合わす。

「祐一君、これ、これ、はい撮ります!」

数十枚フラッシュが光る、ここで子供に泣かれると困る。

完全に主役は祐一だった。

後は多田と沙友理の指輪交換の光景を写す。

「ママ、世界一綺麗だよ!愛してるよ」

カメラマンに恥ずかしくないのか?

多田は沙友理を褒めまくる。

「パパ、後でいいから、恥ずかしいわよ」

こんな馬鹿カップル初めてのお客さんだと思っているだろう、カメラマンは苦笑いしていた。

疲れた写真撮影の後、皆で外食に出掛けた。

楽しく沙友理も疲れていたので、助かったであろう。

祐一は多田の母親に抱かれ、やはり女親は手慣れている。

沙友理にとっても多田の母親は自分の母親みたいな頼りになる先輩だった。

「今日は僕と沙友理の為にありがとうございました」

多田が一生と母親に労いの言葉を掛けた。

「多田君ありがとう、沙友理の綺麗な姿見せて貰ったよ」

「本当に沙友理ちゃん、可愛かったわ」

多田の母親は少し涙ぐんでた。

「沙友理ちゃん、祐治の事お願いします」

「お母さん、私はパパに沢山支えて貰い幸せです」

多田は母親に笑顔でかえす。

あの鋭い睨む目はそこにはなかった。

沙友理は見逃さない、あの鋭く睨む目はなんだったのか?

楽しい昼食会で祐一は寝てしまった。

多田の母親の胸で眠る祐一。

血の繋がりもない祐一を可愛く抱く多田の母親。

沙友理の胸は痛かった。

多田の母親に優しくされればされる程沙友理の胸はかきむしられた気持ちだった。

「沙友理旨いね」

一生は沙友理の胸の内を庇うように口にした。

No.300 14/11/24 12:28
ナルシスト ( 84wJh )

「今日はご馳走様でした!」

皆一斉に多田にお礼を言った。

多田は全て仕切り全て多田のお小遣いからのサプライズ。

毎月多田にお小遣いを渡す沙友理。

仕事の時は多田は愛妻弁当。

多田はコツコツお小遣いを貯め全て家族に還元する。

沙友理と多田の左の薬指は多田が沙友理と考えて特別注文の結婚指輪が光っていた。

「お父さん、すいません、母親送って来ます、ママと祐一をお願いします」

「沙友理ちゃん、また祐一と来てね」

「お母さんありがとうございます、必ず」

多田は母親を乗せ実家に帰った。

この時初めて一生が沙友理に質問して来た。

「沙友理? 多田君沙友理に異常じゃないか?」

祐一を抱き沙友理も

「ずーっと結婚してからも、少し疲れるの」

「新婚なんてつかの間の気持ちだが、多田君は少し異常だよ、多田君浮気してるとかないのか?」

車のハンドルを握る手で心配する一生。

「浮気なんてとんでもないわ、私に依存してるの」

「なら、いいんだが……」

沙友理には良くない。

沙友理には分かってた、今日の夜は異常に求めてくるであろう多田は。

家に付き祐一が起き出した。

「じぃじぃ。電車」

「沙友理、祐一と電車見てくるよ」

「気をつけてね」

沙友理は母親の仏壇に話し掛け、立とうとすると多田が帰宅して来た。

「お父さんと祐一は?」

「電車見に行ったよ」

その言葉を聞くなり沙友理に抱きつく多田。

「パパ、やだ、夜にして」

「ママが綺麗過ぎて我慢出来ない」

やはり異常だ!

「いやだ、部屋に行きましょう」

沙友理をお姫様抱っこをして2人の部屋に行く多田。

「ママは何故そんなに綺麗なの?」

「パパ、待って、お願い、ね、」

砂糖に群がる蟻の様に沙友理を舐め回す多田。

「ママが僕を裏切ればママを殺して僕も死ぬ」

腰を動かしながら叫ぶ多田。

「えっ?」

なんなのこの人段々怖くなる沙友理。

「ママ、世界一大切な人は?」

「あぁ…パパです…多田祐治です…」

裕太の家庭も残酷だが、沙友理の多田も恐怖である。

No.301 14/11/24 14:43
ナルシスト ( 84wJh )

営んでいる最中に多田の携帯が鳴った。

沙友理の頭の線がブチっと切れた。

「パパ…もう嫌だ!」

多田の身体を突き放す沙友理。

沙友理は多田の携帯を持ち。

「もぅいい加減にして下さい、パパは私の物ですから!」

沙友理が初めてキレた瞬間に多田は茫然と見ていた。

「ママ? どうしたの?」

「私殺される前に自殺しそうだわ!」

興奮のあまり肩で息する沙友理。

「パパの優しさは過去の人に対してでしょう?」

「沙友理? 意味わからないよ」

「異常だわ、パパは!」

「沙友理……」

「私はパパに感謝もこれから何があっても付いて行きます、携帯番号も変えてくれない、またピエロみたいに私を苦しめるの?」

「沙友理が過去の男に取られないか心配なんだよ」

沙友理の膝で初めて泣いた多田。

「パパ以上の男性なんてこの世にいないわ」

「本当に?」

「一度だけの祐一の場所にパパも来てくれる?
私がその男を愛していない証拠を」

「沙友理……」

「祐治さん、お願い、信じて、お願い」

沙友理を抱きしめ。
「ママ、ごめんね、気をつけるよ、携帯番号変えるよ、ごめんね、」

沙友理が過去から離れられないのではなく、多田が過去のしがらみに離れていなかっただけ。

以前より依存はマシになり、同僚との関わりも少しずつ増えた。

多田は昇進をした。

消防には10段階の階級がある。

①消防士 ②消防副士長 ③消防士長 ④消防司令補 ⑤消防司令 ⑥消防司令長 ⑦消防監 ⑧消防正監 ⑨消防司監 ⑩消防総監


なかなか準備までの道のりは遠いが、多田はまず消防副士長に昇格した。

消防士では現場のリーダー的存在だ。

沙友理は父親の助けを借りヘルパーの講習に足を運んだ。

多田も携帯番号を変えてあれからは取らない、鳴らない携帯へと変わり少しずつ生活も変わりだした。

沙友理には楽しい毎日だった。

多田は沙友理の事は相変わらず大好きだった。

気持ちに余裕すら見えてきた。

良かった、良かった、今市家では落ち着いた毎日のはずだった……

No.302 14/11/24 16:01
ナルシスト ( 84wJh )

ヘルパーの資格を取る為に始めた講習は、今は沢山の講義レポートを出さないと行けない。

座敷の向こうは少し小さな庭がある。

祐一が庭で遊んでいる光景を微笑んで見守る一生。

沙友理からは一生の後ろ姿しか見えない。

「お父さん、講義行って来るね」

一生は黙っている。

いつもなら背中を丸めて。
「気をつけて行くんだぞ」

今日は無言の一生に祐一が。

「じぃちゃん!」

右肩を祐一が押した。

「やだ! お父さん、たら」

「お父さん?お父さん?」

例えるならだるまさんが転んだまま立ち上がれない。

沙友理は直ぐに一生のそばに寄る。

「お父さん! お父さん!」

嫌な予感だった。

沙友理は直ぐに携帯で多田に連絡した。


「パパ、パパ、パパ……」

「ママ、どうしたの?」

「お父さん…動か…な…い…の…」

「ママ、慌てるな!あっ、心臓マッサージ、分かる?」

「嫌だ…パパ…助け…て…」

「心臓とみぞおちの間を三回押すんだ、分かるだろ!ママ落ち着いて!」

「パパ…パパ…」

泣き叫びながら沙友理は心臓マッサージをした。

肩と顎で携帯を挟み。

「今から救急車をそっちにやる、お父さんのかかりつけの病院にも連絡して!早く!」

「1、2、3、お父さん分かる?」

携帯をかかりつけの連絡に変えた沙友理。

「今市一生の家族です、先生に来て貰えますか?
父親が動かないんです」

「1、2、3、お父さん頑張って!」

「1、2、3、お父さん…嫌だ…嫌!」

救急車の音がうっすら聞こえて来た。

救急隊員が沙友理に変わり心臓マッサージを始めた。

すぐに病院搬送されなかった。

沙友理が一生のかかりつけの医者が来るまで。

一生のかかりつけの医者が一生の死亡確認をした。

救急隊員は明らかに死亡確認した人は救急車には乗せない事知って居ますか?

沙友理の心臓マッサージはもし、肋骨を折ったとしても罪にはならない。

静かに痛くもなかったのか?

かかりつけの医師の判断で、持病による死は、警察は関与しない。

多田はその事を知っていて、沙友理にかかりつけに連絡しろと指導した。

No.303 14/11/24 16:24
ナルシスト ( 84wJh )

「お父さん、冗談は止めてよ、ね、お父さん」

沙友理は泣きながら一生に話しかけた。

「まママ抱っこ!」

「うるさいわね!祐一あっち行ってよ!」

祐一を放り投げた沙友理。

祐一はわんわん泣いている。

「お父さん?痛くなかった? 辛くなかった?」

両手で一生の顔を撫でる沙友理。

「今市さんは楽に逝かれたと思います、すいません、午前11時43分死亡確認しました」

一礼する一生の主治医。

救急隊員も一礼して音を鳴らさず帰った。

「沙友理です、お母さん?、沙友理のお父さん亡くなりました、祐一の事お願いできますか?」

わんわん泣く祐一に。

「うるさいわね!」

沙友理には祐一を見る余裕がなかった。

「お父さんに沢山心配かけたよね、ごめんね」

「お父さんはいつも沙友理の見方だったわね、ごめんね」

涙を流しながら、沙友理は一生に話しかけていた。

「至らない娘で反省しています…遅いよね」

一生は少しだけ笑っている様に見えた。

1時後に多田の母親が駆け込んで来た。

「沙友理ちゃん……」

祐一を呼ぶ多田のお母さん。

多田の母親は多田に連絡を入れ、当分一生と沙友理だけにしてあげた。

「お父さんいないと寂しい…よ」

沙友理の頬は一生の頬につけ、一生を抱きしめる沙友理。

現実にこんな事が来るなんて思わなかった。

お父さんは永遠に存在すると思っていた。

享年65歳は短すぎる人生。

沙友理の幸せを見届けて、祐一と楽しく遊べた一生。

「沙友理楽しかったよ、沙友理幸せになるんだよ」

一生の顔は沙友理にそう願う顔だった。

No.304 14/11/24 18:03
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理ちゃん、お葬儀屋さん頼もう、か」

多田の母親は優しく沙友理に声かけた。

「お母さん…私…親不孝者でした…」

沙友理を抱きしめる多田の母親

「お父さん喜んでおられたわよ、今お母さんとお会いしてるわよ」

「お母さんと……」

「私も早く主人の元に逝きたいわ…」

「お母さんまでそんな事言わないで…」

「お父さん、気持ちよく…お送りしましょうね」

葬儀屋さんの連絡をして、お母さんの月参りのお寺さんに連絡した沙友理。

お父さんはこの家から出してあげたい。

「ママ!…ママ…」

飛びこんで来た多田。

「パパ…パパ…ごめんなさぃ」

沙友理を抱きしめる多田。

「ママはよく頑張った!」

多田に食らいつき泣く沙友理。

「大丈夫だ!偉かった!」

沙友理の頭を撫でる多田。

葬儀屋さんは見る見る内に祭壇を組み。

沙友理の父親の葬儀の家が完成した。

沙友理は放心状態、多田に抱えて貰わないと歩けない状態。

祐一の全てを多田の母親がサポートする。

家族愛とはそんなものだと思う。

大切な肝心な時こそ、助け合うのが家族だと。

次々一生の友達や会社の関係者、沙友理の母方の親戚。

多田の会社関係者、同僚など次々弔問に訪れた。

2人は支え合いながら、多田の母親のサパートされながら、一生を見送る。

家族の有り難さは失う何かがあれば再確認する事もある。

作者自体親と兄弟との絶縁関係。←今も絶縁。
最愛のパートナーとの離婚で一生の死の文章を書く事は涙した。

今市一生さんの御冥福をお祈り致します。

      合掌

No.305 14/11/24 19:01
ナルシスト ( 84wJh )

一生のダビを見ながら

「お父さん、お母さんにあったかしら?」

沙友理の肩を軽く持つ多田。

「お母さんが迎えに来てるよ、必ず…」

「パパ? 私はパパが一番大好きょ」

沙友理から多田にそんな甘い言葉を吐く事はなかった。

「ママは僕の宝物だよ…」

多田に寄り添う沙友理。

祐一を抱きながら

「祐治にもやっと落ち着ける人が来たわ」

2人に気づかれない様に囁く多田の母親。

多田自身真面目で思いやりのある性格、だから過去の女性が許せなかった。

忘れてしまう遠い記憶。

多田の母親は一番心配だった。

祐一は多田の息子だと信じている母親。

3歳になれば幼少期の記憶も残る時期。

沙友理はピエロの主に会い、あの事をサプライズしたい。

沙友理の執念は多田より深いのか?

余計な事さえしなければ沙友理は普通に生活したであろう。

裕太の子供を産んでいないかも知れない。

多田と沙友理が結婚前に交わした約束。

ただ、約束の内容が変わったのは、沙友理のサプライズに、多田が加わる事。

沙友理は1人で実行するつもりだった。

辛いであろう、沙友理を捨てた男を見る多田。

沙友理がサプライズするにあたり、必ず提出したい、3年半前の大切な、あれ。

とうとう出番がやって来たのか?

沙友理の大切な物が入っている引き出しに。

もうすぐ、出番待ちをしている、あれ。

No.306 14/11/24 20:19
ナルシスト ( 84wJh )

「パパ、お父さんの49日が過ぎれば節目でまずあれ、していぃ?」

多田は少し考え

「ママ、焦らないで、さ」

「もう待てない、祐一の気持ちもあるし…」

2人は沙友理のあの約束を進めたい。

正直多田はもうそんな事しなくても良いと思っていた。
「ママ、もう辞めようよ、ね」

沙友理にベタつく多田。

多田の髪を撫でる沙友理。

「もう、時間がないわ、必ず…」

多田は沙友理を見て。

「ママ~2人目作ろう~ね、ママ…」

沙友理は多田を拒む事はない。

要を済ませ、あれ、を引き出しから出した沙友理。

「もうすぐなの、もうすぐ、あなたの出番よ」

ニヤリと笑う沙友理。

その、あれ、を持ち上げ笑う沙友理。

「パパ、ごめんね、私はやるわょ」

沙友理は多田に腕まくらで明かりを消した。

「嫌だ、またパパったら~」

真っ暗でスリルなのか?

多田が沙友理をまた犯しだした。

お好きなのね?

No.307 14/11/24 20:40
ナルシスト ( 84wJh )

祐一は規則正しい生活を過ごしていた。

時計の音が9回鳴った。

「お父さん、お母さん、ごめんね、」

仏壇に手を合わすてパソコンを開いた。

「う~ん」

沙友理が検索しているのは、DNA鑑定の依頼先であった。

沢山ある依頼先。
近くの病院でも可能みたいだ。

NPO法人 遺伝子情報解析センターに目がいく沙友理。

多田は今日は夜勤で家にいない。

沙友理は何故?DNA鑑定が出来るのか?

裕太との最後の夜、裕太をナイフでギダキダにした毛髪と3年前の失禁付の毛髪を持っていた。

あれ、とはその毛髪だった。

検索すれば祐一の唾液だけでも大丈夫だと書いているが、沙友理は祐一の髪の毛をハサミで切り、祐一が寝ている唾液を取り出した。

郵送で送り、郵送の結果を待つ方法を選んだ。

多田を思う気持ちを優先したい沙友理。

DNA鑑定の依頼が半分は他人の子供と現在は報告されている。

疑われる人は要注意だ。

カーソルを回して結果結果の日にちをみた。

案外早く分かるらしい。

テーブルに肩肘付き考えている沙友理。

ピエロの主は簡単。

その主を吐かせて、からの鑑定結果を出す。

確実に裕太とその妻に見せてやる。

沙友理のサプライズはこれであった。

先にDNA鑑定の結果でピエロの主に会いに行く。

「もうすぐだゎ、村上裕太さん」

1人囁きながら沙友理は笑っていた。

沙友理の両親も、沙友理頑張れと、10回の時計の音で応援していた。

No.308 14/11/24 21:05
ナルシスト ( 84wJh )

人間の心理とは、恐怖や心に傷を持つと、その現場に遭遇したり、嫌な記憶が蘇る。

被災した人の恐怖も、無差別の殺害現場、列車事故などもそうであろう。

一生が亡くなり、多田との約束は、沙友理には、怖いものはなくなってしまった。

多田に結婚前に自分の心の悪意を全て話せた事は、沙友理には良かった結果であった。

沙友理の勇気ある行動は、結果多田を傷つける事はなく、それでも良いと承諾して貰い、沙友理には、かけがえのない存在である。


忘れられる心の傷と、思い出したくなくても、忘れられない心の傷。

沙友理を挑発したのは、やはりピエロの悪戯。

裕太は忘れていても、沙友理は忘れない。
祐一を産み育てる限り。

裕太との楽しい思い出より、裕太からの突然残酷な裏切りに。

まだ沙友理には、メッセージカードと、後主が騙されない物を持っている。

ピエロの主は沢山のヒントを沙友理に残していた。

マヌケなピエロの主。

沙友理の復讐、嫌、サプライズなのか?


読者さんと作者は裕太の杜撰な生活を知って居はるが、沙友理は知らない、沙友理には知った事ではない。

裕太の杜撰な生活なんて。

何も知らない沙友理のサプライズに。
多田は今日も沙友理の事を思い仕事をしている。

「さぁ、お会いしましょうね、ピエロさん」

No.309 14/11/25 10:02
ナルシスト ( 84wJh )

ここで予期せぬ事が発覚した。

沙友理は妊娠をしたと事に気づいた。

2人目の妊娠、多田との子供である。

祐一の時よりつわりが酷い。

「ママ、どうしたの?」

心配そうに沙友理のつわりに背中をさする多田。

「多分妊娠してるゎ、パパとの赤ちゃんを」

多田の顔色が変わった。

「ママ? 本当に!」

「パパ、愛してるゎ、パパとの赤ちゃん」

祐一を振り回しながら喜ぶ多田。

祐一はゲラゲラ笑い、多田の人生はばら色。

多田は自分が種なしだと思っていた。
だから沙友理に依存し、沙友理があの男に取られまいかと必死だった。

確かにお好きな2人に遅い妊娠である。

「ママ? 本当に?」

沙友理は鋭い目で多田を睨んだ。

「パパは信じられないの? パパってそんな人?」

沙友理の怖い顔。

「嬉しいよ~ママ! 大事に育てようね」

沙友理は祐一には悪いが祐一より、多田との子供に愛を感じていた。

沙友理は産婦人科に足を運んだ、勿論多田も一緒に、心音は初めて聞いた人が親である、あの多田の優しい言葉を沙友理は忘れていなかった。

多田が沙友理に掛けてくれた、優しい言葉を、沙友理は絶対に忘れていない。

裏切りも忘れないが、優しさも忘れない性格だったのね。

赤ちゃんの心音を聞く多田。

「祐一! お兄ちゃんだぞ!」

「祐ちゃんお兄ちゃん!」

沙友理はすぐに知らせない相手に連絡をした。

「あっ、お母さん? 私2人目出来ちゃいました!」

多田の母親である。

多田の母親に負い目を感じていた沙友理のサプライズ。

「沙友理ちゃん、有り難うね…」

電話の向こうで泣いている多田の母親。

多田に取って一番嬉しい沙友理の愛情表現。

「パパとやっと本当の絆が強くなれたゎ」

「ママ、もぅ子供の事かんがえて止めないか?」

沙友理は多田に笑いながら

「パパ   意味不明ょ」

その沙友理の顔を見た多田は凍り付いていた。

No.310 14/11/25 10:27
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理の妊娠をキッカケに多田の態度が変わりだした。

妻の身体を労り、仕事の意欲も上がり、祐一を今まで以上に可愛がり、そして…

「ママ、過去はわすれよぅ」

この言葉を沙友理に発するようになった。

せっかく多田の念願が叶ったのだ、守りの体勢でいたい多田。

今は確実に多田は沙友理の傘の下の存在に変わり始めた。

反対に沙友理は多田との子供を宿し、多田に対する愛情がより深くなった。

あの異常だった多田の夜の営みも、多田は沙友理の身体を心配し、遠慮がちになっていた。

「パパ、今日は大丈夫ょ~」

「ママ…安定期まで心配だよ…」

「パパ…溜まってるでしょう?我慢させたくないの、必ず産むわよ…ね…パパ…」

「ママ…本当に…大丈夫?」

「パパが私を裏切れば、私はパパと死ぬから…」

沙友理の愛情は深くなり、復讐、サプライズは近い日に決行する。


裕太にお婆さんが体調不良だと騙され続け、沙友理に転勤だと嘘を疲れて、挙げ句の果てに、一夜の女と結婚報告を受け。

沙友理の過去が寝た子を起こす勢いで過去の残酷な思い出が、次々と蘇らせていた。

キット資料の申し込みをし、DNA鑑定の結果はまもなく届く。

沙友理には分かっている、裕太との子供である事は、沙友理を愛する多田には、鑑定結果を見せなくない。

沙友理は今の多田との生活は壊したくない。

一生も、そして多田の母親まで巻き込んだ沙友理の幸せを絶対に壊さない。

壊れて行くのは。

村上裕太。

あなたなの…

No.311 14/11/25 12:55
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は携帯から非通知設定をしてあいつに連絡をした。

「こんにちは、お久しぶりです、今市沙友理です」


「あれ? お久しぶり!沙友理さん!」

突然の沙友理で電話に驚いた様子の声。

「明日、会いに行ってもいいですか?」

「僕に……」

「そう、約束しましたよね、必ず会いに行く…」

一瞬の空気が沙友理に伝わった。

「大丈夫だよ、久しぶりだね」

にっこり笑う沙友理。

「待ちに待ちました、お会い出来る事を…」

「嬉しいよ~待ってるよ」

「何時が都合良いですか? 外で会える時間帯」

「う~ん、2時くらいなら」

「あの近所の喫茶店に2時でお願いします」

「楽しみにしてるよ」

「私はもっと楽しみです」

沙友理は電話を切り、トイレに駆け込み吐いた。

「うぅ…ゲロ…」

あの声を聞くだけで吐いてしまう沙友理。

すぐに連絡をした。

「お母さん? 沙友理です、すいません、明日大学の友達と会う連絡が来て、祐一お願い出来ますか?」


「沙友理ちゃん、大丈夫よ、体調どう?」

「パパの愛情ですくすくに順調です!」

「そっち行こうか?」

「お父さんの仏壇に会いに行きます。」

「沙友理ちゃんは本当に優しいわね」

「パパの優しさには負けてます」

「では、お母さん明日お願いします」

沙友理は電話を切った。

多田は明日も朝からの仕事。

多田には知らせなかった、沙友理が多田が傷付く事が嫌だった。

祐一は妖怪ウォッチ体操で遊んでいた。

もうすぐ、私の気持ちの整理とサプライズ。

明日全て判明する。

私の心の整理、過去との整理。

ピエロ主はどんな顔で現れるのか?

沙友理は必ず吐かす材料を用意しだした。

村上裕太と会う一歩手前。

No.312 14/11/25 13:15
ナルシスト ( 84wJh )

「ただいまー」

「あっパパだ!」

祐一は帰るなりパパに抱きついた。

「パパ、お帰りなさい、チュ」

「ママ、祐一、ただいま、チュ」

「ママ変わった事なかった?」

家族思いの多田の言葉はいつもそう。

「祐一の赤ちゃん元気ですか?」

沙友理のお腹を触る多田。

「パパの子供は元気よ!さぁ夕食しましょうか!」

多田は沙友理の両親の仏壇に手を合わせ。

「今日も無事帰宅しました」

微笑む沙友理。

「今日はパパと祐一が好きなハンバーグとシチューにしたの」

多田の着替えを手伝う沙友理。

お互いには完璧過ぎる夫婦だ。

労う気持ちを持ち、相手を気分良く接する2人は、運命的な出逢いであったのだろう。

少しのボタンの掛け違いから、修正して、新たな立派な洋服に完成された2人。

多田の気分はこの生活で満足だった。

祐一は我が子。
そして新たに増える本当のお腹の子供。

多田は失いたくなかった。
このまま水平線で落ち着いた多田の精神も。

過去に受けたトラウマは多田自身忘れていた。

沙友理は多田より、この家族を守りたかった。

理解ある多田の愛に包まれ、お腹の子供の誕生。

あのピエロさえ居なければ。

あのピエロのお陰でまた2人の絆は深まる。

ピエロのお陰?

そう。

ピエロのお陰なんだよ。

多田祐治、沙友理、祐一、多田の子供。

幸せの階段を歩いて行って下さいね。

ハンバーグとシチューを食べながら。

No.313 14/11/25 14:14
ナルシスト ( 84wJh )

夜多田の腕枕で眠る光景は今も結婚当初から変わらない。
現実にそんな多田みたいな男性にめぐり逢いたい作者。

「パパ、明日祐一をお母さんに預けて、学生時代の女友達に会ってくるね、みんな立派なママしてるのょ、驚き、」

「ママの体調いいなら構わないよ、楽しんでおいで」

「あっパパ、明日お母さんの家で夕食甘えようかしら?」

沙友理のおでこにキスする多田。

「なかなかのママの思い遣りに感謝するよ」

2人のいちゃいちゃなどどうでも良い。

2人はお互いに違う道を進んでいるとは多田は知らなかった。

部屋の電気は消えた。


「パパ、お仕事気を付けてね、チュ」

「ママ無事に帰ります、チュ」

「祐一行って来まーす」

「パパ行ってらっしゃい!」

多田は仕事に出かけ、沙友理もあいつに会う為に、昔からのお気に入りの鞄に、メッセージカード、そして沙友理が退職日に記念に買って貰った、あいつからの、オルゴールを入れた。

沙友理の本屋では3階が少しだけ、音楽品がある、かなりの前のページに記載している。

ピアニカ、縦笛、3種類のオルゴール。

赤トンボ、ふるさと、エリーゼのために。

そう、あの電話での赤トンボのオルゴール。

ピエロの主は沙友理に贈った人物。

分からないと思って渡したのか?

覚悟の上で沙友理の退職品に断れなかったのか?

ミスだらけのピエロの主。

沙友理の会社では文具も扱ってる、ページ検索して下さいね。

女の子達の交換手帳も、そしてメッセージカードも。

沙友理は文具の整理をしている時から気づいていた。

ただ、ピエロの人形だけは分からない。

あいつが認めないと…

最後の取手はあの言葉で脅すしかない。

沙友理は多田の母親に祐一を預け、あいつとの約束の喫茶店に約束の2時に向かっていた。

No.314 14/11/25 14:41
ナルシスト ( 84wJh )

懐かしいこの風景、そして電車が通過する音。

楽しい反面、裕太との思い出、多田との出逢い。

何もなかったように本屋に入る客、そして電車が通過する。

沙友理とあいつが会う場所は、沙友理のお昼休憩だった喫茶店。

沙友理の本好きは退職日以来開いていない。

こよなく愛した本屋さんに裏切られ、また多田と出会えた。

あいつは先に待っていた。

「沙友理さん、お久しぶりです」

「お久しぶりです、先輩」

「今日はどうしたの? 本当に約束守ってくれたね!」

眩しい顔で沙友理の顔を見る先輩。

「先輩? ご結婚されたんですか!」

「うん、半年前に、ね」

「沙友理さんもだ!」

「私は3年になります」

「そうなんだ、おめでとう!で、子供さんは?」

先輩の顔の反応は見逃さない沙友理

「1人、裕太さんの、子供、村上裕太さんの」

先輩の顔が引きづった。

「分かりますよね、村上裕太さん、先輩の妹さんの旦那さんです」

コーヒーを持つ手が震えだした。

「僕の妹?」

「村上裕太さんの奥さん」

少しとぼけて聞く先輩

「何故? 村上裕太さんの奥さんが僕の妹なの?」

小馬鹿にした沙友理
「2人の苗字が珍しいんですよ」

続けて話す沙友理
「詳しく言えば村上裕太さんの会社の受け付けの女の人かしら?」

沙友理は怖がる、恐れるものはない。

「小金丸さんなんて居ませんよ、なかなか」

ページ検索して下さいね。
沙友理が裕太を1度会社に訪問している。

ネームプレートに小金丸 書いてあった事を沙友理は見逃さなかった。

「あの、ね」

先輩は観念したのか?

「何をどうしたの?」

開き直りするのか、とぼけるのか?

沙友理の顔を見てにっこり笑う。

小金丸先輩がいた。

No.315 14/11/25 15:05
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理さん、待って下さい!」

沙友理は首を傾けた

「あれ?ピエロの主さん、小金丸先輩ですよね?」

「悪い冗談は止めてくれよ!裕太君の子供?」

「はい、妹さんの旦那さんは私の恋人だったんですよ、捨てられましたよ、子供も一緒に、」


「旦那さんにバレてもいいの?」

反対に脅してきた

「全て承知してくれてます、まぁ反対に捨てられて良かったかしら?」

沙友理は先輩の顔に近づいた、完全に冷や汗をかいている。

「ピエロって何?」

「まず、裕太さんの妹さんは先輩の?」

「妹は裕太君の奥さんです」

やっと認めた。

「メッセージカードと電話のオルゴール、赤トンボです」

「それは違うんだよ!」

睨みつける沙友理

「半年の結婚生活にピリオド打ちますか?」

沙友理の根性は中途半端ではない。

「確かに、確かに、俺がメッセージカードも、オルゴールも渡した、ただピエロの主ではなぃ」

「協力はしましたよね? 社員の私の個人情報を漏らしましたね? 違いますか?」

水を持つ手は完全に神経まで達していた。

「はぃ、妹に全て話しました、でもそんな酷い事まで、 するとは……本当に…すいません」

テーブルに頭を下げたがゴツンとテーブルに鳴った。

「で、ピエロを細工したのは、妹さんですか?」

「妹が哀れで…」

「妹さんが哀れ? はぁ? 笑わせないでよね!」

「裕太の子供と捨てられた私は? 理解ある人に救われ、毎日感謝してる私は、幸せなの?」

喫茶店の客は一斉に沙友理達を見た。

「知らなかったんだよ! 本当に」

「あなたの妹は知ってるわよ!悪魔な妹はね!」

テーブルを思いっきり叩く沙友理。

「妊婦に沢山攻撃受けて、どんな恐怖を味わったか!あなたの奥さんにも味わって貰いましょうか! 小金丸さん!」

沙友理は怒りが収まらない。

「本当にすいません」

「村上裕太の連絡先、書いてよね! あなたの連絡先も!」

黙り込んでしまった小金丸先輩。

No.316 14/11/25 15:33
ナルシスト ( 84wJh )

「沙友理さん、落ち着いて!ねぇ!」

「再度確認します、ピエロの人形と電話のオルゴールはあなたではない?」

「違います…後で聞いたら…エグい事したと…だからピエロの続きを…」

「あのオルゴールは?」

沙友理は自分のオルゴールを開けた。
赤トンボは流れた…

「電話と同じトーンなの、この赤トンボが」

「昔…妹に…あげました…」

沙友理は最後の釘刺し

「赤トンボもピエロも妹さんね、私からもお返ししないと、ね」

クスクス笑い出した。

「私の家族に少しでも近づいたら、容赦なく殺してやるわ、よ」

沙友理はメモ帳とボールペンを差し出し

「あなたの誠意書いてくださいね、裏切ればあなたも家族も路頭に迷うわよ」


先輩の字は震えだしたいた。

「読めない、見えない!」

メモ帳を破りまた書かせる、何度も何度も。

「あなたの妹だけ幸せなんかにさせない」

「沙友理さん、お願いだから、そっと…」

「はぁ? 何言ってんの、一番は私を拾ってくれた旦那なんだから、さ」

「………」

「そこら辺の男と同じように思わないでよ、ね」


「あんたみたいなカスも裕太の馬鹿も、お前の悪魔な妹より、はるかに出来過ぎた旦那なの」

「必ずピエロのお返しはさせて貰うわ、あっ、妹には内緒にしてね、サプライズだから、さ」

「………」

「妹にバラすとお前も覚悟しとけよ、な」

「本当に…すいませんでした」

「謝って済むなら、警察要らないんだよ!」

沙友理はお茶代を置き。

「これ、馬鹿な裕太の髪の毛を あ・げ・る・」

テーブルに裕太の髪の毛をパラパラまき沙友理は喫茶店を出た。

茫然とテーブルに散らばる裕太の髪の毛。

沙友理から先輩へのサプライズなのか?

何も知らない祐一と祐治の母親。

沙友理の為家族の為に頑張る多田。

沙友理は何故? 多田の事を口にしなかったのか?
家族を守る為だろう。

先輩は沙友理と多田の面識はある。

恐怖のあまり立てない小金丸先輩。

喫茶店の中は迷惑だから、帰って欲しい、雰囲気に包まれていた。

No.317 14/11/25 16:54
ナルシスト ( 84wJh )

沙友理は小金丸先輩と別れ駅のトイレに飛び込み、えずきだした。

「うぃ…うぅ…」

1つハードルが越えたのか、毒を吐くようにえずいた。

「パパ…ごめんね…」

多田の母親の家に向かい電車に乗った。

沙友理はえずく位勇気がいり、過去のフラッシュバックなのか。

「お母さん、すいませんでした」

祐一と遊んでいた多田の母親

「楽しかった?」

「みんな立派にお母さんしていました」

沙友理には多田の母親には何もかも合わす顔がなかった。

「沙友理ちゃん少し顔色悪いわよ」

「大丈夫です、お母さん今日甘えて良いですか?」

「本当に! 嬉しいわ~」

沙友理に抱きつく多田の母親。

沙友理は心の中で多田の母親を本当の母親のようにこれからも尽くして行きたいと思っていた。

「パパもこっちに帰って来ますから」

「祐一!ばぁちゃんと買い物に行こうね」

祐一の手を繋ぐ多田の母親。

「沙友理ちゃん少し休んでいてね」

多田自身も優しいが多田の母親も温かい人。

「あっ! お母さん私も手伝います!」

「沙友理ちゃんは大切な身体なんだから、さぁ祐一行こうね」

色んな人生を歩んできた沙友理だが、本当に幸せを掴んでいる。

後は検査結果を待ち、裕太への、悪魔へのサプライズ。

それが終われば多田との家族と前向きに歩いて行こう。

沙友理の気持ちにピリオドを打つ。

多田の母親より先に多田が帰宅した。

沙友理は多田に思い切り抱きつき。

「パパ…愛してる…世界で一番大好き…」

「ママ? どうしたの?」

沙友理は黙って小金丸に会った罪悪感にかられていた。

言えない。
でも検査結果が出れば、多田と悪魔退治をする。

多田が隣りに居てくれたら、沙友理は怖い者はない。

祐一を犠牲にしても悪魔退治をする。

それだけ沙友理には捨てられた気持ちが強かった。

確かに振った相手より、振られた相手は傷付く。

裏切りとは恐ろしい。

傷付けば傷付く程優しく出来る事もある。

このサプライズは彼はサプライズが大好きな人。

これが最後の本当の作者の作品である。

No.318 14/11/25 18:30
ナルシスト ( 84wJh )

多田の気持ちがやっと分かりだした沙友理。

多田は沙友理が裕太と会わないか?
多田には裕太には負ける祐一と言う子供の存在に。

だからあれだけの営みで質問責めにした多田。
沙友理の妊娠で気持ちが軽くなった筈。

めっきり普通になった多田。
沙友理は反対にピエロの小金丸に会い不安が襲った。

小金丸の人間性、裕太の人間性、悪魔の人間性。
多田の愛情は誰にも勝てない沙友理への愛情は。

沙友理の妊娠までの間多田は不安だらけで今市家族を支えて来た。

多田の過去はもう少し後の説明に書き残す。

「沙友理ちゃん、どう?食べれそう?」

多田の母親は妊婦の沙友理を気遣う。

「お母さんの手料理は最高です!」

「祐一?ばぁばぁのご飯美味しいね」

祐一はお箸を持ち。

「お兄ぃやん、美味しい!」\(^o^)/

お兄ちゃんとの認識が出来ないのか?

これ以上待てない。
祐一が記憶に残る前に済ませたい。

帰宅すればポストに投函されているであろう。

裕太と祐一のDNA検査結果が…

そんな事も知らない、多田の母親。

多田自身も気づいていないかも?

帰れば分かる。

ピエロのメッセージカードが入れたポストにDNA検査結果が。

祐一と多田は実家でお風呂に入り、沙友理と母親は沢山多田の父親の話で盛り上がっていた。

裕太と祐一のDNA検査結果はポストで2人の帰りを待っていた。

★DNA検査結果のサプライズ★

No.319 14/11/25 18:50
ナルシスト ( 84wJh )

「祐一ばぃばぃ、沙友理ちゃんまた甘えてね」

多田は荷物を持ち祐一の手を繋ぐ。

「お母さん、今後の事、パパと話し合います」

「えっ?沙友理ちゃん……」

「1人にはさせません、パパのお母さんなんだから」

涙もろい母親。

「さぁ、ママ帰ろうか!」

「お母さんには沢山甘えさせて貰います、ありがとうございました」

沙友理と祐一は多田の車に乗り、あのポストのお留守している家に向かった。

「ママ、ありがとうね、気持ちが嬉しいよ」

「やだゎ、パパのお陰なんだから」

内心沙友理は、パパごめんなさぃ。

あの封筒は1人でこっそり開ける。

もう多田には見せれない、あのサプライズも、私1人で行くわよ。

パパとの約束破っちゃうけど。

裕太と会わせたくない。

この幸せを壊したくない。

邪魔する悪魔なら殺してやる。

祐一は車の中ですやすや眠っていた。

沙友理の今日も疲れた…

気が抜けない…

あの封筒を手にするまでは…

「ママ? 今日どうだった?」

「あっ、とっても楽しかったわ」

「良かったね」

「凄く充実出来たわよ、パパ? 私の事愛してる?」

「どうしたの? ママがこの世で一度大切だよ」

不安な時は皆さんそんな気持ちになりませんか?

愛を確認する時は?

愛されてる確認を。

もうすぐ今市家にたどり着く。

さりげなく隠そう。

あの封筒を…

パパ、ごめんね。

No.320 14/11/25 19:13
ナルシスト ( 84wJh )

車は坂道の近くに停めた多田。

「ママは先に降りて、祐一は僕が連れてあがるから…」

パパ、その言葉を待っていたのよ。

「パパ、ごめんね、祐一お願いします」

沙友理は駆け足で坂道を歩きだした。

沙友理より上手の多田は見逃さない。

「だから、ママは可愛いんだよ」

少し息を吐くように笑う多田。

多田には分からないように封筒をポストから手に取る沙友理。

「早くしないと……」

「祐一、パパが抱っこだよ!」

沙友理には分からないように時間稼ぎをする多田。

沙友理は仏壇の引き出しに封筒を入れた。

数分後

「ママ! 祐一重くなったよ!」

家に入る多田。

「パパ お布団敷いたから…」

どこに隠した?
ママの過去は?

「パパ、お疲れ様でした」

早く寝かせて見たいんだろぅ?

ママの過去…

俺は最初から全て受け入れいるよ。

今更びっくりなどしないよ…

祐一とママを捨てた男…

なんて名前なんだよ…

僕の奥さんを傷つけた男…

殺めてやりたい…

もう少しでそいつに会いに行く…

済まないなぁ…

ママは俺の大切な人…

さぁママ…

見せておくれ…

沙友理の男だった奴の証拠を…

俺は絶対許さない…

沙友理を泣かせたお前に…

反対にお礼を言うよ…

沙友理を捨ててくれて…

ママ、愛している…

誰よりも…

世界一の沙友理…

俺の沙友理…

No.321 14/11/25 23:22
ナルシスト ( 84wJh )

「パパ、今日はお疲れ様でした」

「ママ、寝る?」

「疲れちゃた」

沙友理を力強く抱きしめる多田。

「ママ、夫婦は助け合うだよ、分かる?」

沙友理の顔色が変わった。

「出して、さぁ、ママ」

涙が目から沢山溢れ出す沙友理。

「ママの苦しみ、僕が半分にしてあげるょ」

沙友理は泣くだけ。

「ママは僕が苦しむ事耐えれる?」

首を振る沙友理。

「ママの全て受け止めてるのは、僕の勘違ぃ?」

首を振る沙友理。

「パパ、お願い、見ないで、パパを苦しめたくなぃの」

耳元で囁く多田。

「見ない方が苦しいよ…僕はそんな存在?」

時間がかかると多田は思った。

「祐一は僕の子供なんだょ、だから大丈夫だょ」

沙友理はゆっくり仏壇の引き出しを開け、祐一のDNA鑑定の封筒を多田に差し出した。

「ママ、ありがとうね」

2人で開ける封筒。

差出人。

NPO法人 遺伝子情報解析センター

「ママ、開けるょ、いいね」

封筒にハサミをいれる多田。

一面に出た鑑定報告書

  村上裕太様、多田祐一様。

   親子鑑定結果

 
  親子の確率

  99.99%


沙友理は泣き崩れた。

沙友理を支える多田。

「ママ、大丈夫だょ、大丈夫だょ」

多田も辛かった、でも覚悟はしていた。

「ママ、これ渡すの?」

「ごめん…なさい…」

ただ泣く沙友理を抱きしめるしか出来ない多田。


おぼえてろよ…

村上裕太…

「パパ…ごめん…なさい…」

多田の怒りは多田の胸に納める。

「ママは悪くなぃ、悪くないょ、ママ…」

No.322 14/11/25 23:54
ナルシスト ( 84wJh )

「ママ、現実は受け止めよう…いつ…行く?」

「パパ…ごめんなさぃ…本当に…」

「泣かなくていいからね、ママ、いつ行く?」

沙友理の涙は多田のの洋服がベトベトになる位の涙だった。

「僕も行くよ、ママのサプライズに」

「パパ、ピエロの人に会ったの」

多田の顔色は変化した。

「誰なんだ!ピエロは!」

「ごめんなさぃ、小金丸さん」

「小金丸?」

「あの…妹……」

多田の怒りはあの女に向いていた。

「ごめんなさぃ、ごめんなさぃ」

「ママ、近々都合付けるよ」

「あの…女かょ…」

「パパ? どうしたの?」

多田の復讐は村上裕太とその妻に向いていた。

やっと分かった、沙友理と多田の共通点が。

「あの…小金丸かょ…」

沙友理には絶対にこの事は知られたくない。

人の者を取り、熱しやすく冷めやすい女かょ。

読者さんだけのヒント。

多田は本屋さんに通っている時に小金丸の妹、愛、を紹介された。

多田は真面目な性格。

愛は繰り返し浮気をしていた。

結果裕太に取られ泣き寝入り。

多田の過去の女。

それは裕太の妻の愛。

多田の過去を苦しめた女、愛。

多田の過去の傷を心配していた、母親。

真剣な交際を考えていた多田は、実家に連れて帰った。

だから多田の母親は愛の素行の悪さに沙友理には何も言えなかった。

多田の過去のフラッシュバック。

必ずこの目で村上裕太と愛を見届ける。

自分も味わった苦しみを、愛する沙友理にも、悲しませた、村上裕太と愛。

多田の気持ちは沙友理以上の苦しみに変わった。

必ず2人の過去を清算してやる。

さぁ沙友理と多田に幸せが訪れるのか?

No.323 14/11/26 00:55
ナルシスト ( 84wJh )

「ママ、大好きだよ、愛してる」

多田の腕枕でうずくまる沙友理

「パパ、あの結果はあくまでも形だけなの」

「何も言わなくていいょ」

沙友理のサプライズに付いて行き、愛が沙友理のピエロの主と現場で知るより気持ちは楽だったのか?

「祐一とお腹の子供だけの心配だけして」

沙友理の髪を優しく撫でる多田。

多田は眠れない筈、一夜は沙友理の枕かわり。

サプライズ……

驚き。
不意打ち。

不意打ちの意味。
不意に相手に襲いかかる。

出し抜けにあいての予測しない事を行う。

今の日本のサプライズは相手に気付かれない、喜びを、びっくりした事を楽しむ。

本当の深い意味な案外深刻とも取れる。

サプライズなんて楽しいゲームだ!

多田は沙友理が裕太に鑑定結果を渡す事で、過去との別れを決めている。

愛する沙友理には、これ以上傷つけたくない、

多田のサプライズは、愛に沙友理を苦しめた、お返しだ。

村上裕太と男癖の悪い愛には多田のサプライズがお似合いだ。

「ママ、つかれたね、僕がいるから、ゆっくりお休み」

この2人の巡り合わせは、運命的な出逢いなのかも知れない。

そして沙友理を悩ませた非通知の相手は、愛、勘違い女。

多田に裕太との生活によって飽き、次々他の男に連絡していた、愛の私生活を、読者様限定の作者からのサプライズ。

裕太に祐一を会わせて、なんら得はない。

裕太の妻の愛を苦しめたい。

沙友理の苦しみに賛同した、多田は間違っていなかったのか?

時間がない、祐一を使うしか方法はない。

胸が痛い多田。

愛する沙友理が気持ち良く残酷な過去を消す為には幼少期に実行する。

もう少し沙友理の行動が早ければ良かった。

祐一を裕太に接触させる約束は一度だけ。

多田の不安はあちらが祐一に近づいて欲しくない。

全て僕に任せてくれ。

沙友理全て話してくれてありがとう。

沙友理を僕は一生掛けて守る。

大切な僕の愛する祐一も守るよ。

沙友理は疲れたのか?

多田に抱かれ薄く魘されている。

もう1人で抱えこまないで。

多田は一睡目も出来なかったかった。

愛に対する過去のフラッシュバックに。

No.324 14/11/26 15:02
ナルシスト ( 84wJh )

「ママ、行って来ます、大丈夫だね」

沙友理を強く抱きしめる多田。

「パパ、居なくならないでね」

「ママ、僕は居なくならないょ、愛してるょ」

多田に抱きしめられた沙友理。

「祐一、ママの事頼んだよ」

「はぁーぃ」

とはじゃく祐一。

では、行って来ます」

「パパ、気をつけてね、愛してるゎ」

包容し合う2人

多田は坂道を下りて行き、車に駆け込んだ。

助手席には愛妻弁当を乗せ。

多田の向かう先は会社を通過した。

多田は今日行く為に、そしてあれを手に入れ。

会社から遠く離れたあの場所。


何も知らず、愛する旦那さんを心配する沙友理。

過酷な訓練を重ね、火災現場に要請がかかる事を心配する沙友理。

益々沙友理の心配症が増えて来た。

ハンドルを握り。
「村上裕太と愛、愛、お前なんだよ!」

「沙友理には僕がお似合いだ、村上裕太には、あの最近な下の緩い愛がお似合いだょ」

1人言を話す多田のハンドルは軽やかにカーブを曲がる。

もうすぐ目的地に着く…

「待ってろょ、愛、愛、お前を地獄に落としてやる」

目的地に着くと昨日は一睡も出来なかった疲れなのか?

頭を何回も降り、頬を三回叩き、気合いを入れ。

店内に入って行った。

店内は親子連れや年配者で賑わっていた。


多田の目的地のあれは、多田の来店を待つかのように、並んでいた。

「う~ん」

陳列された、あれ、沢山の種類が並んでいた。

あれ、を眺めて微笑む多田。

「いらっしゃいませ!」

店員の声すら反応しない真剣な多田の顔。

腕組みしながら物色している。

会社を休んでまで、あれ、を求める多田。

「すいません、これと、これと、これ、下さい」

「愛、お前にはお似合いのサプライズだょ」

レジがあれ、を通過する音が大きく響いた。

「待っていれょ、村上裕太、愛、」

店員が少し恐怖感にかられていた。

決してお祝い事に使うのではないと…

No.325 14/11/26 15:34
ナルシスト ( 84wJh )

「お買い上げ有り難う御座います」

「えっ、そんなに高いんだ、カードで…」

丁寧に綺麗に包装される、あれ。

「御自宅ようですか?お祝い事ですか?」

「自宅ようです」

定員は驚きを隠せなかった。

自宅ようにそんなに要らない、あれ。

多田の顔色は一切変わらない、反対に余裕である。

そのあれ、を持ち違う売り場に行く多田。

2ヵ所周りきりその場所を後にした。

そして車の中であれを恐怖感でいっぱいさせ、また多田はある場所に向かった。

車を止めて懐かしい電車が通る沙友理との出逢いの場所。


「いらっしゃいませ」

「あぁ、お久しぶりです、多田さん、お元気でした?」

小金丸の店。

愛を会わせた愛の兄に会いに行った。

「結婚しました、素敵な妻です」

「おめでとうございます、本当に何年振りですかね?」

にっこり笑い

「愛さん、お元気ですか?」

小金丸も愛と多田の事は一番耳が痛い。

「お陰様で……結婚…しました」

「そうですか! 他の女性から、取っておきながら……」

「えっ! はぃ?」

小金丸の手が震えた。

「愛さんは本当にだらしない女性でした」

「……」

「今日は妻の御礼に伺いました…」

「はぁ?……」

意味が分からない小金丸。

「今市沙友理と言えばお分かりですかねぇ…小金丸さんには、大変妻がお世話になりました」

小金丸はその場に立ちすくんでしまった。

「多田…さんの…奥さん…が?」

「今は愛する多田沙友理ですが、何か?」

「……」

「僕は貴方に用事はないのです」

「沙友理さんから、聞いていますか?」

「沙友理は優しい女性ですから、僕が傷つく事はしません、出来すぎた妻です、沙友理は…」

「……」

「愛さんの連絡先、教えて下さい」

小金丸を見る多田の顔は嬉しく楽しい笑顔だった。

No.326 14/11/26 16:10
ナルシスト ( 84wJh )

「あの……」

「何か?」

「昨日沙友理さんとお会いしました」

「妻は僕を傷つけない女性です」

「裕太君との…事…も…」

「はい、聞いています、沙友理はそんな妻なんです、用件だけ、お願いします」

「ちょっと待って下さい!」

「何を待つのですか?」

「………」

「愛さんとその男性の連絡先です」

昨日沙友理と会った恐怖感がまた多田の来店で蘇った小金丸。

「僕は妻が世界一です、分かりますよね、愛する人を守る男の気持ち!」

小金丸は観念して裕太と愛の住所を書いた。

「あっ、家の番号か?男の携帯もお願いします」

多田は冷静沈着で話しかけていた。

人間の心理は怒鳴られる事は恐怖だが、冷静沈着の言葉は殺意的にもかられる。

小金丸は携帯を開き、裕太の携帯番号を紙に書いた。

「有り難う御座いました、妻と仲良く生活しています、頑張ります」

一列をして多田は店から出て行く前に一言。

「あっ、愛さんの子供の父親、本当にその男性の子供か? 分かりませんよ、だらしない愛さんだから」

小金丸は産まれて初めて愛を憎く思った。

多田は車に戻りメモを見てエンジンをかけた。

「案外近くなんだ!」

愛妻弁当を乗せて。

今から向かう先は。

「多田先輩、お疲れ様です!」

勤務先の消防署に帰った。

多田の仕事はやはり今も年功序列で、多田はこのチームのリーダーだ。

愛妻弁当を片手に食堂に向かう、1人だけ、多田は会話しない男がいた。

愛にちょっかいを掛けて愛と寝た男。

多田が現れると居なくなる男。


会社で地図を見て愛妻弁当を口にする多田。

「僕の出動範囲ギリギリだ、ここ」

沙友理のお弁当を美味しく、嬉しく食べる多田。

「さて、あっ、お前、頼みがあるんだよ」

愛を寝取った男に、

「1日だけ、僕の勤務変わって、最後のお願いだよ」

「分かりました」

「では、また明日……」

多田は車に乗り次のターゲット先に向かった。

No.327 14/11/26 16:39
ナルシスト ( 84wJh )

カーナビが知らせてくれた。

♪目的地周辺に近づきました、案内を終了します♪

「この辺かなぁ?」

新興住宅地に裕太と愛の家があった。

良く似た建物ばかりで、裕太の家の近くに公園があり、その公園に大きな木が一本立っていた。

「何故こんな近くに居るんだ!」

周辺を見渡し「村上」の表札を探す多田。

「だらしない女の家らしいぜ!」

家の周りは自転車やゴミ袋などで散乱していた。

「ママとは大違いだ!」

間違いがないか?

確認する多田。

「ここに間違いない!」

車に戻り、あれ、を手にした。

「さぁ、君の出番だよ、君は高価なんだから、必ず成功させてくれよ、1号ちゃん」

多田はその1号ちゃんにメッセージカードを結びつけ、村上の表札の玄関横に置いた。

「さぁ、頑張ってくれ、行くんだ!」

多田は車に戻り1号ちゃんの活躍を見るまで待機していた。

夕方5時過ぎ、愛はタバコを口に加え、理利香をベビーカーに乗せようとしていた。

「ギャ~」

近所周辺に響き渡る愛の叫び声!

玄関横に置いてある。

市松人形。

髪の毛はハサミでギダギダに捌かれ、片目は完全に潰れ、もう片目は真っ赤な涙を流す、市松人形。

メッセージカードには。

……★泣いてる女の子★……

君達は幸せになんてなれないよ。

   私を助けてね。


……★サプライズ★……

思わず恐怖のあまり愛は理利香を置き、家に入った。

「よく、頑張ったょ、1号ちゃん」

それを見届けた多田はエンジンを掛けて、愛する沙友理の待つ家路に向かった。

「まだまだ続くよ、僕のサプライズは…」

No.328 14/11/26 17:06
ナルシスト ( 84wJh )

市松人形3体買い、後残り2体をタイヤの補助ボックスに納めた。

「あの人形が1万7千8百円、痛い出費」

あの糞女にはもったいない金額の市松人形。

定員も驚く筈だ、そんなに沢山買う人もいないだろう。

「ママ、帰りましたょ」

沙友理のお腹は安定期に入ったのか?
少しだけふっくらしていた。

「祐一、ただいまー」

祐一を抱きしめる多田。

「ママの次に祐一も好き好き!」

「パパ、無事で良かったー!」

沙友理と祐一に抱きしめる多田。

「祐一、ごめんね、ママが一番!」

今日の出来事なんて何も知らない沙友理。

「パパ、お弁当箱、お願いね…」

「ママのお弁当は会社でも自慢だよ」

沙友理、今日1度目のサプライズ成功。

あと2回成功させる。

ママ、小金丸に会っていたんだね。

言わないママの優しさ、僕は嬉しいよ。


優しいママ。


もう怖くないよ。

全て僕が取り除いてあげる。

ママの過去の男。

祐一のDNAの男。

僕が祐一の父親だ。

ママ、恐れなくていいょ。

ママを苦しめた。

あの糞女に。

僕は許さない。

ママは僕が幸せにする。

過去は忘れなさい。

もうすぐ実行するょ。

あいつらに天罰が来る。

幸せになんてなれないよ。

市松人形さん。

また頼むよ。

愛を苦しめておくれ。

悲鳴に興奮したよ。

今日はママを求める。

あの悲鳴。

ママが愛おしい。

No.329 14/11/26 18:41
ナルシスト ( 84wJh )

恐怖の市松人形を目にした愛は

「裕太、早く帰って来てょ!気持ち悪いのがあるのよ!理利香外だし……」

「理利香が外? 早く家に入れろょ!」

「いゃだ怖いから……」

「んーんすぐ帰る、理利香頼んだぞ!」

震えながら理利香を外に放置して、タバコに火を付ける愛。

「何なのあのきしゅい、人形は!」

さすがに気の強い愛でも、あの人形は恐れるはず。

愛より執念深いのは多田が勝っているかも。

温厚で家庭一番の多田の裏の顔。

理利香を放置して、家から出れない愛。

裕太は人形より、愛より、理利香が心配。

理利香はベビーカーに乗ったまま放置されていた。

慌てて帰る裕太。

人形を見て腰を抜かす裕太だが、我が愛娘の放置に怒り爆発の裕太。

「お前それでも母親かなぁ!」

「あんな人形怖くて出れないよ」

灰皿を見た裕太。

「理利香を放置して、タバコは吸えるんだなぁ!」

「気分落ち着かせたかったんだから」

「こんな悪質な事しやがった奴、おぃお前の連れか!」

「愛の連れじゃないわょ、裕太の女でしょう!」

2人の喧嘩のやり取りは近所周辺聞こえていた。

「パパ、ママ、うぇーん」

泣き出した理利香。

「うるさいガキ!」

愛が理利香に怒鳴る。

理利香を抱きしめる裕太。

「理利香、大丈夫だからな!」

裕太は愛を睨みつける。

「何なのよ!」

裕太の一言。

「お前みたいな女と結婚しなきゃ良かった!」

「裕太の子供産んでやったのよ、愛は!」

「お前が妊娠したから、仕方なかったんだよ!」

「はぁ? ならエッチするなよ!」

2人の夫婦関係はとっくに終止符を打っている。

理利香がこの世に居なければ愛とは結ばれて居なかった。

こんな運命もありの今の世の中。

No.330 14/11/26 19:29
ナルシスト ( 84wJh )

あれくれた裕太の家庭と違い多田家では、市松人形に追い討ちをかけ、祐一を最初で最後のサプライズを話していた。

「ママ、近々行こう」

「そうね、祐一にどう話すの?」

「大丈夫だょ、祐一は僕に任せて」

「パパ、お願いします」

「相手が休みの時、僕も休むからね」

「パパ、ありがとう、愛してるゎ」

「最初で最後だよ、1度だけの約束だょ」

「はい、守ります、パパには感謝しています」

「早くしょう、今週の日曜日に……」

「カレンダーを見る沙友理。

「パパ、今日…水曜日ょ」

「祐一の事を一番に考えよう……」

「えぇ……」

「これでママの苦しみも、さようなら、だょ」

多田が小金丸に会った事、沙友理も小金丸に会った事、裕太の自宅も知ってる事、市松人形を仕掛けた事、全て沙友理には内緒で、一生心に秘めておくと覚悟を決めていた。

裕太を寝取った相手が多田の過去の女と知れば、沙友理は多田との生活に耐えれない女性だと、多田が一番知っている。

せっかく掴んだ幸せ、多田には沙友理しかいない、沙友理も多田が一番お似合い。

2人の絆をより深めてくれたのは、祐一の存在かも知れない。

あどけない祐一の寝顔を見た多田は。

「祐一が一番好きな事を最後のチャンスに使うからね、祐一は楽しく行くんだよ」

血の繋がりのない多田だが、3年も祐一を見ていて、最近の祐一の楽しみをあの、残酷な裕太家族に投げ込む考え。

祐一が自然に楽しみ遊び感覚で、裕太夫婦を壊す方法。

日曜日まで4日のみ。

沙友理が苦しんだ気持ちから解放してあげたい。

尻軽る女の愛の子供は本当に裕太との子供なのか?

多田の復讐はどこで止まるのか?

このサプライズの結末は?

No.331 14/11/26 22:07
ナルシスト ( 84wJh )

「愛、俺疲れたよ、お前と居る事が…」

理利香を寝かしつけた裕太。

「はぁ? 何言ってんの今更…」

裕太の顔に吹きかけた煙り。

「誰なんだよ、え、この人形はさぁ!」

「愛にも分からない、きしょい人形!」

「理利香を1人にする愛に疲れたよ」

「裕太? 私から逃げるの? 愛、寂しい」

愛のお決まりパターン、裕太の身体にへばり付き、裕太と重なり合って、裕太の負けのこの行動。


「愛、お願いだから、理利香には優しくしてやってくれょな。」

腰を振りながら愛に囁く。

裕太自身諦めと、妥協の生活。

理利香が居なければ、愛など、ゴミ箱行き。

毎回騙されるふりをして腰を振り、自分と理利香の為に我慢してるだけ。

「愛は、裕太の事愛してる」

昼は男あさりの毎日に、裕太も薄々感づいてる。

気の弱い裕太は黙って理利香の為に働いて居るだけ。

「愛、お願いだから、理利香の事頼んだよ」

裕太の胸を押す愛。

「理利香、理利香ってうるさいんだよ!」

「理利香は俺達の子供だよ?」

「産んだのは私、愛ですから」

少し可愛いからって全てが鼻につく口調に、裕太は妊娠させた負い目なのか?

「そうだよ、分かってるよ、愛が理利香を産んでくれた事、感謝してるよ!」

「2度と逆らわないでよね」

「理利香が起きるから、静かにしてくれよ」

「明日ゴミだから、あのキモイ人形捨ててよね」

「明日出して置くよ」

裕太は下着をはき、2階の寝室にあがった。

長い爪で綺麗にネイルされた爪を噛む愛。

「もしかして?ピエロのあいつ? あの女なの?」

裕太ピエロの凄まじい詳細は知らない。

うっすら沙友理が裕太に話した記憶すら忘れていた。

「あの女しかいない、待ってろ、今更あの女、何様?」

綺麗な爪が、パキっと静かな部屋に鳴り響いた。

No.332 14/11/27 01:08
ナルシスト ( 84wJh )

裕太は朝誰も起きない普段の生活。

市松人形の恐ろしい顔。

「ひぇーこえいょ」

片目は完全に潰れ、もう片目は真っ赤に泣く、市松人形。
髪の毛はギザギザにさかれた人形。

メッセージカードも破り捨て、人形から目を離し、ゴミ袋にいれる裕太。

「誰なんだょ、この人形の悪戯」

震えながらゴミ袋に入れた。

ふっと裕太の脳裏に蘇った、沙友理のホテルでの恐怖のフラッシュバック。

髪の毛を沙友理のナイフで刻まれたあのシーン。

失禁までした裕太の恐怖が裕太を襲う。

愛は、相変わらず裕太を見送る事もなく出て来ない。

近所でも有名なくらい、裕太の妻は評判は悪かった。

近所付き合いもしない愛。

それでも、理利香の為に我慢する裕太。

近所の主婦すら、おはようございます、と声を掛けてくれる、ゴミ置き場で。

日曜日に、多田と沙友理のサプライズすら、想像もしていない裕太。

理利香の事だけが心配な裕太。

愛は、母親らしい事もなく、子供を1人で外に放置する愛にうんざりしていた。

理利香の為に辛抱しているが、日曜日には裕太の生活が壊れるなんて、思いもよらなかった。

着実に日曜日の沙友理の過去を清算させてあげたい、多田の気持ち。

多田の復讐はそれからだ。

裕太との生活を覗くと可哀想に感じれるが、裕太の優柔不断から始まった、沙友理の苦しみ。

愛は沙友理が仕組んだ事だと、思い切っている。

愛が全ての人間を不幸にしておきながら、愛こそ罰を受けるべきな女。

多田の真面目な性格に裏切り、沙友理との裕太を取り、ピエロの恐怖を与えた女。

今は裕太だけが寂しい生活を送らせ、裕太を責め沙友理を憎む愛の性格は悪魔だ。

多田が沙友理と結婚したなんて、全く知らない。

多田と連絡が取れなくなったくらいの感覚。

愛はまだ多田が愛に愛情があると勘違いしている、自分はきれいで、多田は失恋で今も苦しんでいるくらい。

大した根性に誰もが感心するよ。

No.333 14/11/27 10:21
ナルシスト ( 84wJh )

「パパ、祐一大丈夫かしら?」

「ママ、俺達の祐一だから大丈夫だょ」

祐一は益々げんきで、エネルギーが有り余っている。

DNA検査の鑑定解析結果の用紙を片手に持って沙友理。

用紙の多田の名前だけ、油性マジックで両面塗りつぶしていた。

沙友理の個人情報も全てマジックで塗りつぶし、パソコンで多田の考えでまとめた、文面の今後沙友理達の事に関わるなと警告書も同封されていた。

さぁ沙友理が待ち望んでいた、決行の日曜日。

沙友理達を応援するかの様に、今日の天気は快適な青空である。

「祐一、パパのお願いたのんだょ」

にっこり笑う祐一

「祐ちゃん!頑張る!」

幼子に託す2人。
お互いに心が痛いのは感じている。

坂道を下りあの悪魔一家に近づく多田の家族。

「そのメモらしき家はあれかなぁ?」

沙友理が小金丸から脅し書かせたメモの住所。

多田が市松人形のサプライズなんて沙友理は知らない。

「あそこの筈ょ」

あそこに決まっている。

多田は確実に裕太と愛の住みかを確認しているのだから。

「祐一、パパ達はこの公園で、祐一の大好きなお使い遊び見ているから、あの家からおじさんが出て来たら、おじさんにこの封筒渡すんだょ」

子供はお使いやお買い物が好きな時期だと楽しむ事を知っている。

祐一は大好きなパパがお使いを頼まれた事が嬉しいらしぃ。

「祐ちゃんお使い頑張る」

両手を上げて頑張るポーズの祐一。

村上家から裕太が理利香を抱きしめる荷物沢山を抱え、愛は手ぶらで浮かない顔のサプライズ夫婦が玄関から出て来た。

もぅ何年も会って居ない裕太の顔を見た沙友理は思わず走り出し、嘔吐してしまった。

「ママ! 大丈夫か?」

背中をさすり心配な多田。

沙友理にはあの情けない裕太と、かなり過去からかけ離れた彼の姿に、精神的に裕太に拒絶反応を示したのか、嘔吐してしまった。


「パパ、あの男、無理、」

「大丈夫だょ、さぁ祐一頑張ってお使い頼んだょ」

祐一は裕太夫婦に喜び駆け足で走って行った。

ちら見の沙友理の

「サプライズ~」

No.334 14/11/27 11:00
ナルシスト ( 84wJh )

公園にある大きな木の影で見守る多田と沙友理。

祐一は元気いっぱいに走り初めてのお使いに嬉しそうだ。

両手にしっかり鑑定結果の封筒を持ち。

「はい、パパとママからのお使い」

裕太を見て微笑む祐一。

「えっ?おじさんに?」

「祐ちゃんのお使い、へ、へ」

「誰? このガキ? 何?」

「お使いどうぞ」

封筒は完全に裕太の手にわたった。

NPO法人 遺伝子情報解析センター

裕太には全く訳が分からない差出人。

「愛、理利香お願い」

封を開ける裕太

「えっ? 君祐一君?」

「お兄ちゃん、祐一君」

固まった裕太が手にしている書類を見た愛。


「裕太!出掛ける事中止!何なのよ!」

「ばぃばぃ、おじさん」o(^▽^)o

祐一は立派に多田パパのお使いを果たし、多田に抱きついて来た。

「よぉーし、祐一、よく頑張った、偉かったなぁ、パパちゃんと祐一の事見ていたょ」

「パパ、祐ちゃん、頑張ったょ」

「ママ、祐一を褒めてあげてね」

「祐一…ごめんね、良くがんばったね」

沙友理は祐一を抱きしめながら涙した。

「さぁ、ママも祐一もお疲れ様!外に食べに行こうか!」

「祐一が一番食べたい物にしようね」

祐一と多田は血の繋がりはないが、あの情けない裕太でなくて良かった。

多田に救われ、多田を愛した事に間違いはなかった。

過去の裕太に全く未練の欠片も感じなかった沙友理。
何だったのか?

悩み苦しんだあの毎日の裕太との思い出は。

沙友理にはこのサプライズで過去とさよなら出来た事が一番嬉しかった。

パパ、祐一、ありがとう。

2人のお陰で楽しい今からの生活を送れるわ。

2人は楽しそうに沙友理の前を歩いている。

「パパ、私を置いて祐一と歩くなんて、許さない!」

振り向く多田。

「パパ、愛してるわょ」

No.335 14/11/27 11:32
ナルシスト ( 84wJh )

裕太の家庭では大変な事になっていた。

「DNA検査って、何なのよ!裕太!私の他に子供居たんだ! 裕太! 許さない!」

理利香を投げ飛ばし、愛は家中の物を裕太に投げつけた!

「愛、落ち着け!俺は知らなかったんだよ!沙友理に子供出来てたなんて!」

裕太が沙友理と口にした瞬間愛はブチ切れた。

「いい加減にしてよね、私と理利香を裏切ってたんなよ、裕太は!」

「愛、なんかの間違いだよ!こんな会社あるわけないよ!でっち上げなんだよ!」

理利香が愛に突き飛ばされ泣いていた。

「うるせぇー」

理利香にテレビのリモコンを投げた。

「愛、理利香に手を出すな!」

「はぁ? 外に女作ってガキ産ませた男に言われたくないわ、よ!」

裕太の顔に愛の生唾が飛んで来た。

それでも我慢する裕太。

「理利香、パパの所においで、さぁ」

理利香を抱きしめる裕太。

「理利香と少し出掛けてくるよ」

裕太は理利香を連れて愛の興奮が冷めるのを待った。

「沙友理…妊娠していたのか?」

理利香を抱き独り言を呟く裕太。

「俺には何も言ってくれなかったよなぁ、だからあんな仕打ちされたのかぁ?」

愛の興奮は絶頂に達してた。

「お兄ちゃん、私、愛、聞いて裕太に子供居たんだよ! あの女がガキに検査して、今日ガキ来たんだよ!」

「………」

「聞いてるの? お兄ちゃん? 仕返ししてやる、ねぇ聞いてるの?」

「プープー」

小金丸は沙友理と多田の恐怖で、愛に関われば自分にも被害を及ぼす事が怖かった。

沙友理にも、多田にも、脅す条件がない。

多田が沙友理が裕太の子供を認めているのだから。

小金丸はもう愛にもうんざりだ。

あの残酷なピエロの手伝いは懲り懲りだ。

No.336 14/11/27 14:00
ナルシスト ( 84wJh )

理利香を抱き外を歩く裕太。


「理利香は、パパは好き?」

「パパ、大好き!」

頬を寄せる2人。

「んじゃ、ママは?」

「嫌い、理利香ママきらぃ」

即返答した理利香。

「沙友理、ごめん、俺知らなかったよ、沙友理にも俺の子供がいたなんて」

「理利香、パパは駄目なパパなんだょ」

理利香の小さな手はしっかり裕太にしがみついていた。

沙友理の事が気になる裕太。
 
あの男の子が俺の息子なんだと…
嘘しゃない、本当の息子…

沙友理に無性に会いたくなった裕太。
さすがに多田はそこまでの計算は出来なかった。

理利香を連れ沙友理の坂道まで来る裕太。

坂道を上がる勇気は裕太にはない。

多田と沙友理達は多田の母親を誘い食事に出掛けていた。

あいにく多田家は留守で真っ暗に裕太も安心した。

「今更沙友理に会えるはずはない、よな」

理利香を連れてあの悪魔のいる家に帰る裕太。

玄関には凄まじい靴やゴミで溢れ返っていた。

「はぁ~」

とため息をつきリビングに入った。

喧嘩の残害は酷く、テーブルは倒れ、投げた押した椅子の脚は潰れていた。

リビングのドア硝子はヒビか入り、そのヒビの間から外の風が入ってきた。

「理利香、腹減ったよな、ラーメン作るか」

「パパ、ラーメン」

流し台の散乱した、汚れ物を掻き退け、裕太はインスタントラーメンを作っていた。

鑑定書を見ながら、祐一との親子関係、99.99%

「俺と沙友理の息子……」

ラーメンが沸騰して、鍋から泡が吹き出ていた。

「沙友理と結婚してたら、悩む事なかったょ、俺は」

「理利香、もうすぐラーメンできるから、待ってろょ」

「パパ、ラーメン」

嬉しそうにお椀を持つ理利香。

「可愛いなぁ、理利香は…」

裕太にも優しさがあるのか。

裕太と理利香の親子関係は?

No.337 14/11/27 15:22
ナルシスト ( 84wJh )

「おぃ、愛起きろよ、理利香の事頼んだよ」

「酒飲まなきゃなってられないよ、裏切り者」

あれから愛は酒を飲み、裕太の帰りすら待てなく寝てしまっていた。

裕太はラーメンを食べさせ、理利香をお風呂に入れ、理利香の髪を撫でながら、汚い部屋の空間で夜を明かした。


愛の態度は見る見る内に変わり、騙された可哀想な愛の演出に酔いしれていた。

裕太は理利香が心配でならない。

会社に連れて行く事も出来ない、愛の親に泣きついたが、愛の親も小金丸から聞いたのか、あれ以来関わりたくないと逃げている。

娘の素行の悪さが、小金丸の話しで怖くなった愛の親。

自分の親に頼れない裕太。
愛との結婚に反対して、親から見離されている裕太と実の親。


「なぁ、頼むから理利香の事お願いな!」

「あんたなんかどこかに行けよ、糞役立たず!」

「なんだと!」

「家のローンと生活費だけでいいのよ!」

裕太の手は今にでも愛を殴るくらい裕太はマックス。

「他に女作る最低野郎!」


それを言われると何も言えない裕太。

そして何故こんな結果になったのか?

ピエロが沙友理に攻撃しなかったら良かった話し。

要は自分の首を絞めた愛の自爆だ!

愛は自爆を全て裕太のせいにする悪魔。

「理利香、パパお仕事行くね、ごめんね、」


「パパ、ばぃばぃ、」

後ろ髪引かれる思いで会社に向かう裕太。

「理利香!」

「うぇーん」

鳴き声は近所でも有名であった。

また叱られてる、村上さんちの理利香ちゃん。

可哀想に…

No.338 14/11/27 15:51
ナルシスト ( 84wJh )

家庭が上手く行かない影響なのか、裕太は仕事への意欲を無くしていた。

「村上先輩最近やたらとため息ついていますね」

会社の同僚にも会社の関係者にも相談出来ない。

裕太はただ、我が娘理利香が心配なだけ。

あれ以来開き直り、態度が益々デカくなる愛。

あるべく残業なしで、買い物に行き帰宅する。

「なんだょ、こ、こ、こ、れ、」

市松人形が両目に釘が刺さり、人形の原形がない状態の市松人形。


……★村上裕太様★……


 君の本当の子供ではない。


  DNA鑑定必要あり。


……★サプライズ★……

裕太は持っていたスーパーの袋をバサッと落とした。

「また、また、また、サプライズ、きた、きた、きた、」

家を後ずさりする裕太。

「こぇ、こぇ、こぇ、こぇ、こぇ、だょ」

尻もちをつき、地面は手を動かして、腰が抜けてしまったのか?

失禁した裕太の周りは液体で丸く円を描いていた。

「誰なんだょ、やめてくれょ、こぇ、だょ」

「沙友理なの? なら、謝るから、さ」

「すいません、すいません、」


「どうさたんですか?」

声を掛けてくれた人にしがみつい裕太。

「凄いですね!大丈夫ですか!」

ありがとうございます」

「何なんですか?このメッセージカード」

「知りません、分かりません、」

「立てますか?大丈夫ですょ」

裕太の肩に手を置き、助けてあげたのは。


多田祐治。

にっこり笑い。

「大丈夫ですか?」

「助けて頂いてありがとうございます」

多田の助けに笑い返す村上裕太。

No.339 14/11/27 18:24
ナルシスト ( 84wJh )

「わぁ…悪質な悪戯ですね~」

多田は自分が仕掛けた人形を持った。

「すいません、捨てますか?」

裕太は多田の片足にしがみつき。

「すいません、お願いします」

人形を持った多田は裕太の顔に近づけ。

「ゴミ袋お願いします…」

裕太はすぐさま家に戻り、着替えをしてビニール袋をもってきた。

「あっ、このカード取りますね」

「本当にありがとうございました、助かりました」

「僕も帰り道で、びっくりしましたょ」

「お近くですか?」

「その先の木下と言います、よろしく」

裕太は。

「本当に助かりました、ありがとう」

多田と裕太は面識がない。

多田にとって憎き相手、でも家族を守る為に現れた。

「カードの内容酷かったですね、本当の子供さんじゃないんですか?」

「俺の娘ですょ、まったく」

「今のこのご時世、確かに男性では分かりませんよ、本当の子供なんか、では、」

「はぁ…」

最初のパンチはこれくらいかなぁ!

冷静沈着な多田。

村上裕太、お前がママの上に乗り、ママに腰何回動かしたの?

ママの喘ぐ声聞いたの、僕よりも先に。

僕のママに液体入れたんだね?

だからママは妊娠したんだょ、そして大切なママを捨てたんだね。

気持ち良かったかぃ、ママとのセックス。

ママは最高だっただろう、気持ちいいんだょ、ママの胸もあそこも。 

後悔している?

ママを捨てあの悪魔を選んだ事に。

僕は助かったょ、あの悪魔からにげれてね。

早く検査しないと、もっとお前を虐めてやる。

僕がママを1番大切な存在なんだから。

君に1度だけチャンスをあげるょ、

あの悪魔から逃げれるチャンスを。

最後は君に助けて貰うょ。

最初で最後のサプラ~イズ~★

No.340 14/11/27 19:55
ナルシスト ( 84wJh )

「ママ、ただいまー」

祐一が走り多田に抱きついた。

「祐一、ただいまーママに何もなかった?」

「パパお帰りなさい~」

「ママ、お腹目立って来たね、祐一はお手伝い出来たかなぁ?」

多田家は明るく楽しい笑い声が幸せの証として近所中に漏れていた。


裕太の家では。

「おぃ、愛、お前誰かに恨まれてるょ」

「パパ~お帰り~」

理利香が裕太に飛び付く。

「理利香、お利口さんだから、少し遊んで居てくれょ」

愛のタバコを投げ捨てる裕太。

「お前と一緒になって、俺は全て無くしたんだ!」

「馬鹿みたぃ、私が何をしたのょ、て言うか、愛は裕太の子供産んであげたんだょ」

興奮する、裕太。

「何か言えば、産んでやった、本当に俺の子供なのか? 理利香は…」

「何1人興奮してんの? はぁ?」

「人形がまた来たんだょ、あの人形が、お前の子供じゃないってょ!」

「意味不明だゎ、裕太疑ってるの? 愛の事?」

「お前の兄さんも、親も、急に態度変えてさぁ、俺困ってんだょ」

またタバコに火を付けた愛。

「止めろって言ってんだろぅ! 理利香の身体気にならないのか? お前母親だろうが!」

「はぃ、はぃ、愛が産んだのは、理利香だから」

裕太がこの愛との生活に少しノイローゼになりかけていた。

「お、す、き、に、」

愛は理利香をスルーして2階に上がった。

「パパ、お腹空いた……」

「えっ、理利香まだ食べてないの?」

「パパ、理利香まだ、お腹空いた」

裕太は理利香の顔を見て、本当に俺の子供なのか?

一夜だけのお酒で抱いた愛との子供。

嫌、理利香は俺の愛娘だょ。

木下と名乗る男とあの市松人形のメッセージカード。

「理利香、パパと食べに行こうな!」

「パパ、大好き~」

2人は愛を残し外食に出掛けた。

愛の周りの理解者は全て愛を恐れ、愛には話し相手すら居なかった。

裕太と理利香が出掛けた玄関の閉まる扉の音にむかつく愛。

No.341 14/11/27 22:05
ナルシスト ( 84wJh )

裕太は帰る事が無性に嫌だった。

理利香がいるから我慢しているだけ。

家の近くで理利香と遊ぶ裕太。


「こんにちは、あれから大丈夫でしたか?」

多田が裕太に話し掛けた。

「あっ、木下さんですよね、先日は助かりました」


「お子さんですか?…可愛ぃですね」

多田と裕太が話す前で理利香は砂遊びをしていた。

「羨ましいなぁ!」

「木下さんには、子供さんは?」

「3年過ぎて、ようやく訪れてくれました」

「まだ、性別分からないんですか?」

「産まれるのが、怖いんですょ…」


「どうして?」

「本当に自分の子供になのか……」

「大丈夫ですょ、木下さんの子供ですょ」

「実はね、会社の同僚で、分かったんです…」

「何が、ですか?」

「奥さんが不倫相手の子供を…産んだ…事を」

「大変ですね、それは、」

「知っていますか? DNA鑑定って、」

裕太は沙友理のサプライズの結果の用紙を思い出した。

「木下さん、その…DNA鑑定って、簡単なんですか?」

裕太は多田の言葉に乗った。

「今は唾液だけでも、分かるらしいです。」

裕太は沙友理がどうして調べたのか分からなかった。

「すぐでも、大丈夫みたいですよ、個人情報を家族に、バレない様に、会社送りにも出来ます」

「そうなんですか……」

「あっ、知ってました? あの検査する人の半分は他人の子供らしいです。」

「えっ、そうなんですか……」

理利香の遊ぶ姿を見て考え込む裕太。

No.342 14/11/27 22:45
ナルシスト ( 84wJh )

「可愛い娘さんは、大丈夫ですょ」

「木下さんこそ、大丈夫ですょ」

「妻は真面目な性格ですが、調べないと分からない時代ですよね……」

「そうですかぁ……」

「他人の子供、知らずに育てるんですょ、馬鹿なのは、男性ですょ、全く……」

多田は立ち上がり

「長話ししました、あっこれ僕の携帯番号です、いつでも、相談して下さい、あの気味の悪い人形友達として……」

「じゃあ…俺も…村上裕太と言います。」

「木下浩です、では、また、お嬢ちゃん、ばぃばぃ、」

裕太は多田が離れてじっくり考え込んでいた。


ママ、あの男と話したよ…

最低な男だね…

村上裕太って…

馬鹿で…

ママを守れないよ…

あの男なら…

祐一も…

あんな男のどこが良かったの…

男のクズだよ…

あの男に…

最後の…

サプライズ…

させてやる…

あいつも…

それを…

望んでる…

はず…

悪魔退治…

あいつも仲間に…

入れてやる…

悪魔退治を……

しょうね…

本当は…

あいつも…


計画が変わったよ…

そして…

奴も…

僕達の前から…

姿を消す……

いい方法を見つけた…

さぁ、村上裕太…

僕が背中を押してやる…

村上裕太…

感謝しろよ…

必ず後悔するょ…

悪魔との出会いに…

出逢いじゃない、出会い…

村上裕太…

沙友理は…

僕の……

宝物…

あの子供の…

検査は必ずするょ…

村上裕太の意志で…

愛するママに…

興奮するよ…

ママを愛しすぎる…

僕には……

今日も……

ママを求めるよ…

待っていてよ…

世界一のママ…

大好きな……

ママ……

裕太が理利香か遊んでいる顔は愛への疑惑に変わっていた。

理利香が実の娘では、ないと知れば、必ず裕太は、精神状態が悪くなる。

精神的に追い詰められた裕太。

ただ、裕太は木下浩と名乗る多田に助けて貰い、仮名の木下浩を信用している。

人間関係を深める絶好の相談相手には違いない。

No.343 14/11/28 10:50
ナルシスト ( 84wJh )

今まで携帯に無頓着な多田だったが、携帯が鳴れば場所を変える。

その光景に沙友理は不安になった。

多田が浮気して沙友理は捨てられないか?

「パパ、最近良く鳴るわね、携帯が…」

祐一と遊ぶ多田。

「会社に後輩が配属になり、僕を気に入ってくれてるだけだょ」

「本当に…」

「ママ? 妬いてくれてるの! なら、電話の相手に出ても構わないょ、嬉しいなぁ!」

多田は内心電話を代われば裕太だと知られる事が怖かった。

裕太の声を聞けば沙友理なら必ず分かるはずだから。

開き直り沙友理を信用させるしかない。

隠されると知りたくなる、でも堂々とされる方が、疑った事は悪かったのか?

人間の心理ではないだろうか?

「あっ、こんにちは、はい、大丈夫ですょ」

部屋から移動する多田。

「パパには有り得ないゎよね」

裕太からの電話である。

「木下さん、すいません、やはり検査しようかと…」

「良く考えて下さいょ、大切な事なんですから、人生が変わるんですょ」

提案して少し考えさせ、また不安感を持たせる。

材料なんてゴロゴロしている、責めの一方なら、多田は疑われる、少し引く事でまた相手は木下を名乗る多田を信用する。

そして最後にあれを送り、裕太を潰しにかかる。

「木下さん、もう生活に疲れましたょ」

「奥さん誰かに恨まれていますょ、君は悪くないです、やはりその男性ではないですか?」

「最近俺も思います、人形の相手は……」

「どうしたんですか?」

「俺の嫁さんの……」

「奥さんの?」

「子供の……父親か、と」


「ちょっと待って下さい、少し飛びすぎてませんか?」

「どうしてですか?」

「親子鑑定もしないでぇ……」

「………」

「鑑定すれば分かる事ですょ」

「はい、そうなんですが…」

「怖くて出来ないモヤモヤの生活と、もし、もし、子供さんが本当の子供だと分かれば、明るい人生か…」

多田の最後の警告。

No.344 14/11/28 12:24
ナルシスト ( 84wJh )

裕太と愛の夫婦関係は崩壊していた。

託児所に理利香を預けた裕太。

少し安心して仕事が出来た裕太。

託児所に迎えに行き、買い物を済ませ、悪魔のいる愛の待つ家に帰る。

託児所を提案してくれたのは、裕太が信頼している、木下=多田である。

「木下さんには、助けてもらったぞ! 託児所なんて知らなかった!」

理利香は前かごに乗り、嬉しそうに裕太と話す


「パパ、体操楽しかった、理利香、はめられたょ」

「そうか! 良かっな! 理利香!」

笑う理利香の顔を複雑な気持ちで頬笑み返す裕太。

本当に俺の娘なのか?

理利香は…

あの裕太が頑張ってギリギリにローンを組んで買った我が家。

外壁ですら同じ時期に建てた人より老朽化している裕太の家。


理利香は託児所に入れてから少し明るくなった。

愛の顔色ばかり伺っていた理利香だが、木下のお陰で子供らしさが戻って来た。

家の横に自転車を置き、裕太の恐怖は全開に達した。

段ボール箱に書かれた「村上裕太様」

真っ赤なマジックつで、裕太名指しの文字。

「理利香はお家に入ってろ!」

深呼吸を何度もする裕太。

ガムテープを恐る恐るめくる。

市松人形の首は取れていて、残酷な姿に納められてはいた。

    村上裕太


  お前の子供ではない。

  お人好しな村上裕太


……★哀れな男に乾杯★……


……★サプライズ★……

もう裕太の精神状態はマックス、嫌、気が狂い掛けていた。

怒りの矛先は、愛、そして、理利香。

「もう耐えれない! 何故なんだょ! 覚えてろょ、愛と俺の子供なのか!理利香は!」

人形を足で踏み、即座に家に駆け込む裕太。

テレビを観て笑いこけている愛の胸ぐらを掴み。

「お前、上等な根性だなぁ!お前の正体暴いてやる!」

「お前宛てに来てるんだ、よ、な、!」

「何ょ、な、な、な、なんなの、これ?」

No.345 14/11/28 13:48
ナルシスト ( 84wJh )

その残酷な首なし市松人形を見て嘔吐する愛。

「気持ち悪いょ、ど、ど、どこかに捨てて来てよ」

「愛、お前の正体なんだょ、これが、な!」

メッセージカードを愛に投げつけた!

「な、な、何ょ、それ、私が悪ぃちゅうの!」

愛にまた胸ぐらを掴み。

「俺の、子供、何だよ、な、理利香、は、産んで、やったん、だよ、な、俺、の、子供を、」

裕太の手を必死で払いのける愛。

「そうょ、産んで、あげた、わょ、愛が、」

愛は裕太の目線を合わせない。

「理利香には、申し訳ないけど、検査するぜ、俺の、子供を、産んで、やった、理利香、」

「馬鹿な事言わないでょ、もし、本当の娘なら、裁判してやる」

薄笑いする裕太。

「心配するな、理利香は俺が育てる、」

愛の内心は本当に裕太の子供なんて分からなかった。

たまたま、裕太と被っていたのか?

どの男の子供か?

祐治かも……知れない。

愛はタカを括っていた。

裕太の実の子供が現れ、裕太には隠し玉みたいに、裕太には本当の子供が居る、それを黙って黙認してあげてる、妻、を演じていたのか?

愛の計画は全てオジャン。

「愛、お前の帰る家、探しとけょ、な、」

裕太は理利香を連れ、外に出掛けて行った。

慌てふためく愛は携帯を取り出した。

「お兄ちゃん、助けて~」

「お兄ちゃん~」

「この番号は現在使われていません…」

携帯を落とす愛。

床にべったり座り込む愛。

「お兄ちゃんも携帯変えた…」

「祐治……」

裕太は愛を連れファミレスに入った。

美味しそうにお子様ランチを食べる理利香。

それを愛おしく見る裕太。

理利香、理利香がもし、もし、俺の子供でなくても、俺は理利香のパパだょ。

俺も沙友理にして来た事が、自分にも罰が当たったんだょ。

沙友理の息子は俺の子供…

沙友理は今幸せなのか?

結婚したのかなぁ?

1人で育てて居るのかなぁ?

沙友理、ごめんな。

「理利香、旨いか?」

「パパ、美味しい!」

お前だけだょ、その笑顔に癒されるょ。

No.346 14/11/28 14:50
ナルシスト ( 84wJh )

あれ以来愛は裕太を恐れていた。

アルコールに逃げる毎日、少し片付ける努力はしているが裕太のDNA鑑定は自信がなかった。

裕太との一夜だけの営みで本当の子供なのか?

頻繁に男を変えて肌を重ねていた愛には、何ら証拠もない、誰の子供すら分からない。

ただ、祐治の子供か?
愛の心は祐治の事でいっぱい、祐治も携帯を変えて、連絡も付かない。

祐治=多田祐治。

沙友理と幸せに生活しているなんて予想もしていない、祐治と裕太が会っている事すら知らない愛。

会社からDNA鑑定の依頼をして返送は会社宛てにした裕太。

木下=多田に何度も相談して決意を固めた裕太。

もし、理利香の父親でなくても、理利香を育てる覚悟の裕太。

「木下さんのおかげだょ」

ポスト投函をして、鑑定結果を待つだけ。

裕太は何かに吹っ切れた気分だった。

疲れた身体で理利香のお迎えをして、酒浸り愛を無視する生活。

子供の鑑定に恐れて酒に溺れる愛。

そんな哀れな姿を冷静な目で見る裕太。

後は鑑定結果のみ。

お前と離れられるチャンス。

一方多田家は沙友理のお腹も益々大きくなり、多田は相変わらず沙友理の腕枕をしている。

「パパ、最近楽しそうね」

「ママ、こんな楽しい生活エンジョイしているょ」

「祐一も本当にお兄ちゃんになれるかしら?」

「大丈夫だょ、ママと僕の子供なんだから」

「お仕事だけが気になるのょ」

「心配要らないよ、ママ、愛しているょ」

「私もパパから離れないわょ」

2人は、嫌、多田は裕太の地獄行きの切符を買ってあげた。

その切符で裕太は地獄行きの列車に出発している。

毎日村上裕太宛ての鑑定結果を会社で待つ裕太。

「おせぇなー」

裕太の気持ちは揺るぐ事はない。

ただ、愛を家から追い出したい。

たまに沙友理を思い出す裕太。

この鑑定結果をどんな気持ちで出したのか?

あの息子との再会を沙友理はどんな気持ちでいたのだろうか?

村上さん、郵便です。

裕太はごくりと唾を飲んだ。

DNA鑑定の依頼の封筒が裕太の手元に届いた。

No.347 14/11/28 17:26
ナルシスト ( 84wJh )

裕太の元に届いた封筒。

彼は鑑定の依頼の人に茶封筒に入れ送ってくれと依頼していた。

DNA鑑定会社は個人情報をキッチリ守る。

薄い茶色い封筒、この中に理利香の全て、裕太が信じて結婚した愛の過去なのか?

裕太は愛の親、兄にコテンパンにされ、ノイローゼ状態になり、沙友理まで捨て、愛との結婚までを思い出していた。


毎日、毎日、愛の親の前に正座して、ひたすら謝ったあの光景。

愛にもまた小金丸に説教をされ、何度も逃げ出したかった、あの光景。


愛と結婚して全て愛の操り人形みたいな生活。

産んであげた、産んであげた、口癖の愛。

自分の親との壮絶な喧嘩。

何もかも全て絶えて来た、裕太の気持ち。

この封筒を開けばあのメッセージカードの哀れな男。

君の子供ではない、あの予告カード。

愛との生活に愛の気ままなペースに我慢して来た。

沙友理を捨て、沙友理はどんな気持ちで、裕太の子供を育てたのか?

沙友理の親にも会わず、汚物扱いをして捨てた、沙友理の気持ち。

悪魔である愛を取り、沙友理を捨てた罰なのか?

未来が予測していたなら、沙友理を選んでいた。

沙友理にギリギリにさかれた髪の毛。

それが裕太の初めての恐怖だった。

その沙友理が成した事など、可愛いもんだょ。

裕太の緊張と精神状態は普通ではなかった。

会社の資料室に入る裕太。

冷たいコンクリートに囲まれた資料室。

電気がないと真っ暗な資料室。

夏場でも冷房など必要ない、暗くて冷たい資料室。

「俺の人生を左右するのには、ここが一番だよな!」

封筒には二重に裕太の依頼通りに重なり合った封筒。

資料室に鍵を掛け。

両目はつぶり、怖い物を見るかな様に、乱雑に開けた。

一枚の報告書は紙が少しぶ厚い。

「理利香は俺の娘であってくれよな!」

ぶ厚い報告書は裕太の手から上がってきた。


   村上裕太様。 村上理利香様。


     親子鑑定結果

 
     親子の確率


     0・00%


「マジかょ…」

「理利香の父親じゃないの?…俺は?」

No.348 14/11/28 20:00
ナルシスト ( 84wJh )

冷たいコンクリートの壁にもたれていた裕太はズルズルと滑りながら。

「俺の人生は0か1の0なんだょな」

鑑定結果の用紙に力が入る。

「0の人生に我慢してなんだょ、俺…」

コンクリートの床にポタポタと裕太の涙が零れ落ちた。

鑑定結果を持ちフラフラ歩く裕太。

通り人に身体が当たりながら…

デスクに帰り、すーっと鞄を持ち姿を消す。

自分で何をしていいのか、分からない。

ズボンのポケットから携帯を開ける。

理利香と裕太のツーショットの待ち受け。

「俺の、子供、じゃ、なぃん、だ、理利香」

周りは裕太の無断外出に声をかけても、裕太の耳には入らなぃ。

「0の人生に…マイナス…か、ょ、」

裕太が一番信頼する、木下に連絡した。

「木下さん…俺、もぅ、駄目っす、」

「村上君? どうしたの?」

「木下さん…今から、あえます、かぁ…」

「分かったょ、今から行くょ」

携帯を閉じた多田は。

「おぃ、お前の出番だよ!最初で最後の、な、分かるだろう? 今日夜勤変われ」

あの愛と寝た消防士に首根っこ掴み。

「明日の夜勤は、僕がする」

頑丈がらめにされた消防士。

「はい、夜勤交代しま、す」

「あっ、お前あのだらしない女と何回寝たの?」

右手を3本出した。

「あの淫乱に3回も、お前が父親かもな」

多田は訓練するくらいの肉体美である。

今までの内容だとか細い男性のイメージだが、身長も185センチ、筋肉もりもり、肉食系かも知れない。

顔は優しい顔付きだ。

裕太は170センチ前後の少し小太り。

携帯でやり取りした、木下=多田が現れた。

ちょんと座っている裕太。

誰も信用出来ない、信じられない神経だろう。

最後は木下しか…

木下に胸の内を聞いて貰いたぃ、裕太がいた。

「村上君…」

悲しそうに、寂しそうな、裕太が木下に振り向いた。

No.349 14/11/28 20:58
ナルシスト ( 84wJh )

いかにも鳴きそうな裕太。

「木下さ、ん…」

席に座りながら裕太を見る多田。

「村上君、どぅしたの? びっくりしたょ」

裕太は無言で鞄から鑑定結果の封筒を出した。

「何? これ?」

うつむくだけの裕太。

「見て…下さい…」

封筒を多田=木下に渡した。

「見て、いぃの?」

封筒から鑑定結果を見た木下=多田。

「えっ、   これ、  」

裕太は先にきた珈琲を飲み。

「木下さん、の、言う、通り、でした、」

多田の心の中では、お前もわかったかなぁ?

遅いんだょ、馬鹿が。

「大変だね、で、これから、どうするの?、あっ、コーヒーね。」

「分からないっす、て言うか、どうすれば、いいのか、」

多田はそのってか、この言葉使いが大嫌い。

「村上君、君の気持ち、分かるょ~」

「えっ、分かりますっか!」

その話し方嫌いなんだよ!

「君の痛み、良く分かるよ」

裕太は木下=多田にテーブルを挟み手を握った。

「ありがとうございます…木下さん」

落ち着けょ、きもいんだょ。

「まぁ、まぁ、落ち着いて」

やっと気持ちの通じ合う人に出会ったと思う裕太。

「どうするの? これから」

「今日、話します、今日」

多田の夜勤は明日、明日にして欲しい。

「今日は匂わす程度で、奥さんの様子見たら?」

「毎日酒浸りなんですょ、多分今日も…」

酒浸りなんだ、あの淫乱女。

「で、なんだけど、奥さん、え、タバコ吸う」

多田との付き合いの時もよく喧嘩になった。
1かばちかに賭けた多田。

「子供の母親のクセにタバコ吸うんです」

よっしゃ! 提案とキップ売ってやる。

「奥さん、嫌いなの? 多分離れないょ、君の話し聞いていたら」

腰を椅子に深々反る裕太。

「もう、無理です、あいつ、とは、」

もう一押し。

「お酒飲んだ人が、火の不始末、多いらしいょ」

裕太は真剣な顔をして、木下の顔を見た。

「今の、話し、聞いてませんし、聞こえません」

「僕は何も言ってないょ、」

数分沈黙が続いた……

お酒にはタバコは禁物ですょ。 (笑)

No.350 14/11/28 21:34
ナルシスト ( 84wJh )

多田の心理分析で、今の裕太なら何をしでかしても、不思議ではない。

家を燃やす事など。
多田の思い通りに事は運んでいる。

本当のサプライズはここから。

不意打ち。
驚き。
不意に相手に襲いかかる。
出し抜けに相手の予期しない事を行う。

さて最終へと進みます。

最終サプライズをした人は誰なのか?

最後までお付き合い頂いた方だけが見れるシーンです。

どの彼がサプライズが大好きな人なのか?

裕太と木下=多田が沈黙から解放された。

「村上君、あのさぁ、お酒飲むなら、中途半端じゃ、駄目だょ」

「その為に明日まで溜める方がいいですか?」

「聞いた、聞いた、話し、だよ、」

「はい…」

2人は顔を引っ付け話した。

「知り合いに消防士が居るんだよ」

「まじっすか?」

っかは、辞めろ!

「不審火は司法解剖にまわるらしいよ、」

「解剖なんっすか?」

裕太の話し方が苦手な多田は。

「不審火は、司法、行政、承諾、解剖が警察による、消防士は火災が終われば、関係ないらしいょ」

数秒考える裕太。

「もう、少し分かんないんですが、例えば、例えば、」

「どうしたの? 例えば?」

「例えば、嫁が酒に酔い、タバコを落としたら?」

「ただの火災事故でしょう、僕は消防士じゃないから、分からないよ」

「分かりました!」

いきなり立ちだした裕太。

「今日はこの話を匂わします、後はあいつの運に任せます!」

慌てる多田。

「あくまでも、あくまでも、冗談だよ」

明るい顔付きに変わった裕太。

「分かっていますよ、冗談なのは…解剖やら、警察やら、教えて頂きました!」

「村上君、子供さんは、どう、するの?」

「あいつに預けれません、俺が引き取ります」

「村上君、やはり男だね、君の気持ち、僕は良く理解してるよ、」

「木下さんに、出会え…良かったっす!」

早く行けよ、ボンクラ野郎が!

「応援してるよ、村上君!」

晴れやかな顔で裕太と木下=多田は店を後にした。

「さぁ、悪魔退治に、お前も加えてやるょ、サプライズ~††」

No.351 14/11/28 23:29
ナルシスト ( 84wJh )

「ママ、祐一ただいま~」

明るい声で出迎えた沙友理。

「あれ? パパ、今日夜勤だよね?」

祐一が多田の足に食らいつく。

「祐一、お利口にしていたか?」

お腹を突き出し不思議そうな顔の沙友理。

「今日は、後輩が交代して欲しいと言われたんだ」

沙友理には消防士の仕事など分からない。

「パパ、凄く蹴るのよ、お腹の赤ちゃん」

「祐一ももうすぐにお兄ちゃんだぞ!」

少し慌てる沙友理。

多田が夜勤の時は夕食を手抜きしているから。

「パパ、ごめんなさい、すぐに作ります」

沙友理の背後から抱きつく多田。

「ママが居れば、全てご馳走だょ」

「パパの胸が大きいから、私好きなの!」

「祐一も抱っこしような!」

祐一を抱きしめ沙友理は台所に立つ姿を笑顔で見つめる多田。

ママ。

もうすぐだょ…

君を苦しめた…

本当のピエロ…

あの馬鹿男も…

今じゃ、僕の言いなり…

本当に仕事…

消防士で良かったよ…

あの女に…

最初で最後に会ってやる…

俺は、あの女に…

最高の…


サプライズ…

考えている…

さぁ明日…

あの男は…

潰れるんだ…

僕は…

彼の勇気に…

待つよ…

出動要請…

何時頃かなぁ…

沙友理…

もう怖くないよ…

全て明日に…

賭けている…

ママと本当に…

笑える日が…

明日来るよ…

沙友理を捨てた男…

最低なクズ野郎だ…

あいつも他人の…

子供を…

育てて見ろ…

どんなに…

辛いか…

味わえ…

一生賭けて…

償え…


「パパ、ごめんね、夕食出来たわよ」

多田を見て笑う沙友理。

「世界一の僕のママだょ」

多田の好きな料理を即座に作った沙友理。

「祐一、パパは幸せだょ」

「ママ、最高!」

お腹をさする沙友理は明日の多田のサプライズなど、想像もしていないだろぅ。

No.352 14/11/29 13:34
ナルシスト ( 84wJh )

裕太は木下=多田からヒントを貰った。

理利香のお迎えを済ませ。

憎き愛が堂々と待ち構える家路に向かう。

理利香と途中で夕食を済ませた2人。

「理利香、パパ、ママと話しあっから、風呂はいれるだろぅ? シャンプーハットつけろよな」

お風呂のバスタオルを洗濯していない籠からかき出す、理利香。

楽しそうに託児所で習った歌を無邪気に歌う理利香。

「おぃ、起きろょ、話しあっからさ」

裕太の足で愛を起こす。

「又、酒かょ、おぃ、愛、お前が産んでやった、理利香の父親誰なんだょ」

酔っ払い意味が分からない愛。

何、行ってんの、愛は…理利香を、産んだょ」

完全に酒の深さで理解出来ないのか?

「明日は俺達3人のお別れ会だ!」

「愛、意味分かんないょ、お別れ会?」

「しっかりしろよな!離婚なんだよ!」

「離婚って…何を証拠に…」

「DNA鑑定に俺は理利香の父親じゃないんだょ」

愛の髪の毛を引っ張り、俯きかけていた顔を裕太の顔にちかづけた。

「付き合いだして四年近く、お前は何食わぬ顔して、こき使い、虐めてくれた、最後の晩餐会だよ」

「裕太、鑑定したの?」

「1か0の選択したよ」

「結果は?」

「マイナーだった、0より深いマイナス」

愛の顔色が真っ青になった。

「明日役所に行って離婚届け、貰ってくるわ」

逆ぎれの愛の言葉。

「裕太のあの女は言い訳? 人の旦那横取りして、あの女は許せるの!」

「沙友理はお前と違う性格の女なんだよ!」

「やれる物なら遣りなさいよ」

「お前とは明日でさようなら、さ」

理利香がお風呂から出て来た。

洗濯もせず、使い古しのバスタオルで身体を拭く理利香。

「パパ、理利香の見方だからな」

荒れ果てたソファーのテーブルに缶ビール、リキュール、カクテル酎ハイは、タバコの灰皿に、タバコの燃えカスと一緒に愛の好物でいっぱいだった。

No.353 14/11/29 19:32
ナルシスト ( 84wJh )

「パパ、気をつけてね」

鞄を持ち玄関の扉の前で靴を履く多田。

「今日は出動要請が来るかも?」

「本当に?」

沙友理の不安通り多田の計算は実行されるのか?

祐治は会社を休み役所に離婚届けを2枚貰っていた。
役所の用事を済ませた裕太。

即自宅に帰る裕太。

理利香は託児所に預け、愛に話し合いをする為に自宅に帰った。

「おぃ、愛、俺達の結婚生活のピリオドだ!」

離婚届けを愛に突きつける裕太。

「愛が書かなきゃ離婚なんて無理なんだよ!」

「俺、もう、ギリギリ、マックス、気持ちが」

「仕方ないんだよ、愛も犠牲者かもしんなぃ」

テーブルの上に乗ったアルコールを全て裕太はさらいのけ。

「お前、1度でも、奥さんらしい振る舞いしたのかょ!」

何も動じない愛。

「裁判だ、裁判に持ち込む、家庭裁判た!」

ソファーにふん吊り帰っていた愛が起きあがった。

「裕太は私を選んだよ、愛は悪くなぃ」

「俺がどれだけ、お前の親や兄に攻撃受けたかった? 知ってるだろうが!」

「そうだったかなぁ?」

そのふてぶてしい態度の愛。

「もぅ、解放して、くれよ、俺を、」

「考えて、あげる…」

裕太は家から出ていった。

「ふん?」

離婚用紙をチラチラ見る愛。

「サプライズ~☆」

愛はまたアルコールを口にし出した。

夜遅く裕太と理利香は帰宅した。

愛は深いアルコールに揺り起こしても起きない。

「おぃ、愛、起きろよ、離婚届け、書けよ、愛、」

「愛、愛、もう少し飲めよ、愛、」

眠りについた愛の口にきつい、アルコールの度数のポーランド製のスピリタス、アルコール度数、96度数。

普通の人間でも二口呑めば急性アルコール中毒になるだろう。

愛の口に流し込む裕太。

意識状態が薄い愛に、スピリタスを口からこぼれ落ちくらい流し込んだ。

その時点で愛は死亡したのかも知れない。

理利香を抱きしめ、午前2時の時計を確認した裕太。

愛の灰皿に近づき、禁煙化の裕太は、タバコに火を付けた。

No.354 14/11/29 20:16
ナルシスト ( 84wJh )

裕太の家のカーペットはポリエステル100%の絨毯を引いていた。

愛が昏睡状態の下にはポリエステル100%の絨毯をひいたソファーに眠っている。

安くて軽くて温いフリースを纏い。

全て火災してすぐに燃えやすい状態の愛。

「ゴホン、ゴホン、コホン」

愛に咳込んだソファーにタバコを2本を置く裕太。

見る見る内に煙が出てきた。

「愛が書名しないから、だぞ、さようなら」

裕太は理利香を連れて、自分の家に火災が起きた事を近日中に叫びだした。

余談話しですが。

怖い事や助けなんて言葉は、誰も家から出て来ない。
火事だと叫べば、隣人や、通り道の他人さんは、出てくる心理知っていますか?

近隣の住民は皆、裕太の火災に驚き、消防署に連絡した。

多田のカンはぴったり当たりだ!

緊張が走る火災出動要請。

★★市★★町5町 近郊で火災発生通報。

一般一戸建て、住民の生存確認2名

家内に1名取り残されていると報告あり。

火災発生時刻午前2時10分

消防出動お願い致します。

真っ赤なランプにクルクル回る消防車。

反射光のついた、消防服、グレーの消防服はキラキラ光っている服に着替える多田。

昔の鎧をイメージする消防服の姿の多田は、今からあの戦場に向かう勇ましい姿。

裕太のサプライズからのメッセージ、多田自身巻き込まれる危険性もある。

毎日の訓練はあくまでの体力の訓練。

毎回の消防出動要請は多田に取って命かけの仕事。

真っ赤な消防車に乗り込み、愛の自宅に向かう多田。

到着すると消防士でも家内に入れないすざましい、光景の裕太の自宅。

天井は炎が飛び出し、パキパキとけたたましい音が消防士すら入る余地なし。

まずは素早く沈下させる為に、太き水圧のホースを必死で抱える消防士たち。

水圧が激しい為、肉食系の多田でさえ、1人では持てない。

必死で家内に入りたい多田。

火の勢いが少し大人しくなり。

「家内に1名被害者が居る、僕が中に入るから、そのまま消化活動継続頼む」

多田は鎧を纏いあの悪魔退治の為、火災現場の家の中に突入していった。

No.355 14/11/29 21:39
ナルシスト ( 84wJh )

多田が炎かした裕太の家に突入した。

消防士の服は特殊加工され、熱にも強いが、やはり致命傷は、一酸化炭素の死亡。

家の中では煙りに包まれ、硝子がパキンパキンと音を立て飛んできた。

天井からの木材が炎と共に落ちてくる。

消防士には手のつけれない現場化である。

愛の事が本当に好きだったのか?

復讐、サプライズの為に命を張ったのか?

掛け分け、押しのけ、多田は目的の愛を探す。

命がけで探す愛。

沢山の天井から落下する炎の残骸。

ヘルメットに付いているライトと手に持つライトだけが多田の見方。

少し人間らしい物体を発見した多田。

もうこの世のではない、焼死寸前の愛の物体。

多田は天井から落下した残骸などお構いもない。

「淫乱女に要らない、これ、したかったんだょ」

愛はうつぶせになり、黒い人間の形の愛に。

「旦那に仕組まれた、哀れな女、愛、愛していたょ、本当は…」

多田の足は愛の左のくすり指をぎゅーっと踏みつけた。

「愛、お前が大好きだった、サプライズ~★」

その多田に踏まれた愛の左のくすり指は粉々に崩れていた。

愛の遺体を運び事は出来ない、運び出せない状況だと推測する。

多田はこれ以上この場にいる事は困難と判断し、炎の中から脱出した。

多田は裕太が理利香を抱いて泣いている姿に近づき、肩を2回叩いた。

声がこもっているので、裕太は木下=多田の事に気づかない。

茫然と立ち自分のした事の罪を感じた裕太。

理利香は大嫌いな母親でも

「ママ、ママ、」

泣きじゃくる理利香。

なんて恐ろしい事をしてしまったのか?

裕太は精神状態が普通、嫌、冷静になっていた。

周りの野次馬達が、裕太と理利香に同情していた。

沢山の我慢を繰り返して来た裕太だが、この火災事故の同情が忘れられない裕太の思い出に変わる。

火災事故から2時間後に鎮火した。

警察の検問が入り出したのは、午前6時頃を回ったいた。

多田の愛へのサプライズ、反対に裕太から届いたサプライズだったのか?

左のくすり指を足で踏んだのは、結婚指輪の位置。

くすり指が一番心臓に近い動脈が通っていると言う意味で結婚指輪は左のくすり指なんだ。

No.356 14/11/29 22:10
ナルシスト ( 84wJh )

鎮火した煙りを眺める多田にはうっすら涙がこぼれていた。

愛には沢山嫌な思いさせられたょ。

あの愛の男を見下した言葉は嫌いじゃなかった。

本当は女の一番汚く、汚れた部分を見せた、愛が人間らしい僕が好きな所だったのかも?

消防士の仕事はここまでだ。

後は警察隊に任せる事になる。

余談話し。

火災保険には皆さん加入していますが、火災保険はその火災した家にだけ有効。

隣り近所に火が移る場合、適応外なんです。

火災が起これば、近隣とのトラブルになりがち。

個人賠償責任保険。

重過失による延焼被害には、損害賠償責任が発生する。

例えば、天ぷらを揚げたまま、キッチンをはなれる行為など。

裕太の火災は近隣と揉め、ローンはそのままで、裕太の責任は警察より厄介な問題になっていた。

愛を裕太の手で殺めていない、愛がアルコールだとの証言も近隣から聞いた警察は、不審火ではなく、あくまでも、事故死と断定した。

消防士の多田は疑われる事はない。

また裕太も木下=多田とは知らない。

肩を2回叩いて下さった、優しい消防士さん。

裕太は今後の近隣への補修代金を追われる生活になるのだろぅ。

愛の身内も裕太を責める事は出来ない。

サプライズとは日本では、驚く楽しい言葉に進化しているが、本当にサプライズはどうかなぁ?

多田は愛する沙友理の元に、首をパキパキと鳴らし帰って行った。

数日後。

木下に会いに行く裕太。

「妻が亡くなりました…」

「大変だったね、お疲れ様、でした…」

「娘とひっそり、暮らします」

「人の子供…育てるのは…大変だよね」

「はい、覚悟は、しています、」

「僕みたいに、覚悟、だょ、覚悟、」

「えっ?」

「沙友理の…旦那、なんだょ、僕は、」

持っていたコーヒーカップを床に落ちて割れてしまった。

「沙友理に、近づかないでよね、目の前から、消えろ! 村上裕太! おまえが!」

床に落ちて割れたカップから流れるコーヒー。

「村上裕太に、★サプライズ~★」


……★完結★……

No.357 14/11/29 22:20
ナルシスト ( 84wJh )

長い物語にお付き合い頂き有り難う御座いました。
このサプライズは、世にも奇妙な物語を見て、自分ならのサプライズを書き込みました。

毎年12月に火災が多いと聞いています。

私事ですか、治安も悪口なり、警察のパトロール隊など回っています。

12月は自殺、火災、強盗が、多いと聞いています。

日本のサプライズに楽しんでください。

長期に渡り、沢山の励まし、感想を頂戴致しました。

読者さんのレスに大変感想してサプライズを完結させて頂きました。

次作を試行錯誤を気をつけて予定しています。

また覗いてあげて下さいませ。

感想を頂けましたら、ナルシストの部屋でお待ちしています。

サプライズ有り難う御座いました。

追伸。

誤字脱字申し訳けありませんでした。

……★ナルシスト★……

No.358 15/02/21 01:47
ナルシスト ( 84wJh )

サプライズご覧頂きます有り難う御座います。

書き手ナルシストは縁あり


「文芸社」「エラーベイビ」の単行本を今年9月に出版する事になりました。

サプライズも候補に上がりましたが、今回ミクル未作品の「エラーベイビ」作者「ナルシスト」

で御座います、増刷の予定は未知数で作品すり皆様のお手元に確実にお届けさせて頂きます。


出版社「文芸社」

「エラーベイビ」

「ナルシスト」

で誤字脱字のない、ミクル作品とは内容は全く違います。

先のおはなしですが、書籍お取り寄せ、ネット販売、直接出版社への発注が出来ます。

部数は沢山愛読頂けば増刷可能です。

ミクル小説欄から始まったナルシスト。

皆様の温かい感謝を込めて愛読して頂ける事お待ちしております。

宜しくお願い致します。

ナルシスト。

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