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二人のブルー・ボード

レス45 HIT数 5326 あ+ あ-

葉月( AmcTnb )
15/02/18 16:56(更新日時)

微妙に距離がある、陶子と石川和也。
つながりたいけどつながらない、この関係性の、行きつく先は、どこ…?




No.2104837 14/06/12 14:51(スレ作成日時)

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No.1 14/06/12 15:02
葉月 ( AmcTnb )

 春恒例の、公園の花見の終わりがけに、ほろ酔いの部長が、突然こう言った。
「来月、新しく2、3人、入ってくるから」
 一同は、一瞬、ぴたっ、と缶ビールを持つ手を止め、そのあと、いっせいに部長に質問を浴びせた。
「どっ… どこからやってくるんですか!?」
「若い子? 若い子ですよね!?」
「もしかして、うちからもトレードで、誰か出るんですかっ?」
「写真ないんですか、写真!」
 満開の桜の下で、つまみやビールが散乱したブルーシートの上、全身、桜の花びらにまみれた一同は、ハチの巣をつついたような騒ぎだ。

No.2 14/06/15 15:06
葉月 ( AmcTnb )

 顔をほんのり上気させ、ネクタイをゆるめ、あぐらをかいた部長は、上機嫌でほほえんでいる。
「東北支社と、中部と、あと、四国かな。みんな、将来有望な若者だからな。なかなか、いい感じみたいだぞ。うちからは、外に、出しませんっ! っていうか、代わりに出せるような人材も、余裕も、ないでしょう? なあ?」
「ええっ、そんなこと、ありませんよおっ!」
「私、アメリカ行きたい、部長、アメリカ!」
 お開きになりかけた花見の席が、再び、盛り上がりはじめる。

No.3 14/06/22 11:54
葉月 ( AmcTnb )

 さきほどから、いきおいよく何杯もビールを飲み干していた陶子は、きちんとセットしていたはずの髪のウェイブはくずれかかり、もはや視点もあやふやで、定まってない。
「ちょっと陶子、あんた飲み過ぎなんじゃない?」
「そんなことないわよっ」忠告に従わない陶子の缶ビールのプルタプは、開けられてしまった。
「新しくやってくる人たちに、カンパイ!!
ねー、部長、歓迎会は、いつ、やるんですかぁっ…… 」

No.4 14/06/26 17:18
葉月 ( AmcTnb )

 街灯に、ぼんやりとかすんだ月が、見え隠れする。
 あまりのやかましさに、周囲の花見客は、そそくさと帰り支度を始めつつある。



「‥…石川、和也です。まだまだ実績はありませんが、当社の発展に全力を尽くしたいと思ってます。前の部署での経験を生かし、頑張りますので、よろしくお願いします」
 よく通る低めの声で、まだちょっと学生の面影が残る顔立ち。すらりとスレンダーなルックスで、おしゃれなスーツをきっちりと着こなしている。

No.5 14/07/01 16:48
葉月 ( AmcTnb )

 女子社員の間に、ひそやかなざわめきが広がる。
「ちょっと、あのバンドの、ベースの人に似てない?」
「それよりさ、昨日のドラマに出てた人、ほら、あの、名前なんていったっけ、あの人にそっくりじゃん」
「ねぇ、だれか、彼女いるかどうか聞きなさいよ」
 妙齢の女子社員たちがざわめいているあいだに、石川和也は、男子社員のなかにまぎれてしまった。
 陶子は、薄いダークブラウンのスーツを着た石川和也から、目がはなせなかった。
 陶子の理想を絵に描いて服を着せたら、まさにそれが、彼、石川和也だった。

No.6 14/07/05 13:35
葉月 ( AmcTnb )

(……うそ、こんなかっこいい人が、うちの会社にいたの?……今までいろいろあったけど、安易に寿退社やら転職やらに走らなくて、よかったあ…… )
 ふと気づくと、まわりの女子社員たちも、あらかた同じ想いのようで、うっとりと横目で石川和也を見ているか、ひそひそとおしゃべりを続けている。
「……どこに配属されるのかしら」
「となりの課長さんが、人手が足りないって言ってなかった?」
「えー、やっぱり営業じゃない? ああいう人からすすめられたら、もう、いやとは言えないわよぉ」
「なんか、会社に来る楽しみができたわ♡」
「私も! 明日から、ちょっと早めに来ようかな」

No.7 14/07/09 16:16
葉月 ( AmcTnb )

 彼女たちの熱いまなざしと期待をよそに、石川和也は、じっと背筋を伸ばし、部長の「今期の方針説明」を聞いている。




 結局、彼は、陶子たちと同じ部署になった。
「石川くん、さっそくで悪いけど、前の人のデータ、あらためて打ち直してもらえる?」
「はい。わかりました」
 黙々と、まるでピアニストのようにパソコンを打つ石川の姿に、まわりのデスクの社員から、ひそかに感嘆のため息がもれる。
「石川、こっちのデータ、処理できる?」
「あ、はい、これだったら、前にやったのと同じですよね。1時間くらいで、できると思います」
 有能な先輩からの仕事も、軽々とこなす。

No.8 14/07/12 13:54
葉月 ( AmcTnb )

 陶子はといえば、毎日、石川の姿を見るために出社しているようなものだった。
 なんとなく勤めはじめて、はや10年近く。同期の女の子たちが、どんどん新しい職場や、結婚生活へと新天地を求めて退社していく中、はっ、と気がついたら、自分は新入社員と同じ仕事をしていたりする…… 年は上なのに。
 まるでぬるま湯のような会社での居心地のよさが、体質的にも合っているのか、なかなか、抜け出ることができない。
( なにか…なにかが、足りないのよね、今の私の現状。変化とか、刺激とか? あー、でも、もう恋愛でゴタゴタするのも、いいかげんめんどくさいしなあ… )
 そう思い続けていた矢先、石川和也の登場である。
 ( これはきっと、この人と出会うために、今まで辞める決定的なきっかけがなかったにちがいない。何か、運命の大きな力が、はたらいているんだわ )と、思う。
 出社する時も、丁寧に、メイクに気合いを入れ、肩まで伸びた髪を内巻きにブロウして、「今シーズンのトレンド!」のアクセサリーや服に身を包み、なるだけ若い子と違和感がないようにナチュラルにふるまう。
 ( そういえば、学生の頃は、憧れの人のクラスの前を通る日なんか、こんな感じでおしゃれして登校したなぁ…‥ )

No.9 14/07/16 14:23
葉月 ( AmcTnb )

 しかし、今現在、陶子と石川の年齢の差は、どうみても3、4才、いや、4、5才は、ひらいている。
 相手は、社内のひそかなアイドルなのだ。
「あーあ、あと、5年遅く生まれてくればよかったなぁ…‥ 」
 パソコンを打つ手を止め、ため息まじりにつぶやくと、
「えっ? 何? 株でもやってるの?」と、同僚の男性が尋ねてくる。
「は? ……あ、何でもない。ちょっと疲れて、ひとり言がでちゃっただけ」
「そう? 売れ筋情報とかさ、わかったら教えてね」
とりあえず、仕事の続きをこなし、ふと、パソコンの画面から目をはなして、それぞれのデスクで、それぞれの仕事をこなしている女子社員を、ぼんやり見つめる。
 ブランド風のスーツを着た男子社員たちにまぎれて、つやつやした髪をきれいに結いあげた子、ゆるくウェーブのかかった髪を、小さなエルメス風のハンカチで束ねている子‥…
 いちおう、制服はないのだが、みんな、ファッション雑誌から切り抜いたような、控えめなスーツを着ている。
 しかし、どんな服を着ても、「若さ」というのは、それだけで、ちょっとがんばれば、かわいくきれいにまとまってしまう。

No.10 14/07/24 11:38
葉月 ( AmcTnb )

 今の自分は─陶子は考える─ なんだか、だんだん、おしゃれしているつもりでも、気がつくと、授業参観に出席している母親のようなたたずまいのような気がする。
 奮発して買ったダークグリーンのスーツも、ティファニーのネックレスも、「彼氏」がいなければ、味気なく見えてしまう。
( 髪の毛染め変えるのも飽きたしなぁ…‥ それに傷むし )
 あいかわらずぼんやりと空想にふける陶子に、男子係長の大きな声が、飛んできた。
「米沢! ヒマだったら、コピーして! 50部! 次の会議で使うから」
「えっ…‥ あ、50部? えー でも、こっちのコピー機、調子悪かったんじゃないかなぁ…‥」

No.11 14/07/29 14:56
葉月 ( AmcTnb )

 あたふたして、イスから立ち上がる陶子のそばを、涼やかな声が、通り抜けていく。
「僕が、ついでにやっておきます」
 ふりむくと、石川和也だった。
「え? でも… 」
「これですよね」
 陶子の手元にきた書類を、パッ、と手に取り、いつのまにか、もうコピー機の前まで移動している石川。
「あ、いいんですよ、それ、私が頼まれたから…」
 あせった陶子が、デスクの間をくぐり抜けて石川の横にたどり着いても、彼は、顔色ひとつ変えない。
 コピー機のボタンの操作に集中していて、すぐ近くにいる陶子の存在に、気づいていないようだ。

No.12 14/08/06 17:26
葉月 ( AmcTnb )

 間近に見ると、石川は、すこし茶色がかったきれいなサラサラの髪で、スーツの襟首のあたりできちんと切りそろえている。
 そこへ、メガネをかけてシャツの腕をまくり上げた、なじみの男子社員が通りかかった。
「あれ、石川くん、それ、直りそう?」
「はい、このタイプの紙づまりは、経路をたどったら案外簡単に元に戻りますから」
「そうなんだよね、時間があれば、ちゃんとやっときたかったんだけどねえ、悪いね、こっちも手がはなせないんで、じゃ、後、よろしく!」
「はい」

No.13 14/08/15 14:05
葉月 

 男子社員が立ち去った後、黙々とコピー機のメンテナンスを続ける石川のそばで、陶子は、遠慮がちに声をかけた。
「あの… 石川くん、ごめんね、私、あっちでコピーしてこようか?」
 陶子が、コピー機の上の書類を手に取ろうとすると、石川は、怪訝(けげん)な表情でふりむき、
「いいです。すぐ済みますから。どうぞ、仕事に戻って下さい」
と言って、再びコピー機と向かい合った。
 石川がスイッチを入れると、リセットの緑色の小さな光が点滅する。
 しかたなく、陶子は、自分のデスクへ戻った。

No.14 14/08/24 18:50
葉月 

 デスクの波を抜け、はるかななめ前方に見えかくれする石川の姿を─すでにメンテナンスは終わり、コピーの紙が次々に受け口に排出されている─ふたたびぼんやりと眺める。
( 私の顔なんて、覚えてないよねぇ…‥ )
 コピーを完了し、石川は、書類の束を手に、つかつかと歩き、白いドアから出ていった。



「陶子、あんた、ぬけがけしたらだめよお」
「え? ぬけがけって?」
「石川くんよお。コピー機の前で何か話してたじゃん。この部署のアイドル君なんだからさあ、ひとりじめしようなんて考え、おこさないでよね」 

No.15 14/08/29 16:39
葉月 

 ざわめく社員食堂で、陶子たちは、4人掛けのテーブルで、コロッケ定食やらサバ味噌定食やらをそれぞれ食べている。
「そんなことできるわけないわよぉ」
「ね、彼って、独身でしょ?」
「当たり前じゃない。まだ大学出て2、3年じゃないの?」
「そうね… でも、恋愛は、年なんて関係ないわよね」
 何気なくそう言ってお吸い物を口にした陶子に、あとの3人が、いっせいに箸を止め、表情をこわばらせた。
「ちょっと、陶子、彼に、ひとめぼれなんてしてない‥… わよね?」
「この間飲みに行った時、当分仕事に生きるって言ってたじゃない」
「あの手のタイプは、年上なんて相手にしないわよ」
「いや、あの、別に、あくまでも、一般論よ、一般論」

No.16 14/09/03 15:17
葉月 

 それぞれしばらくお茶を飲んだりソースを取ったりして黙り込んでいたが、やがて、陶子のとなりの女子社員が、向き直ってしみじみと言う。
「陶子、たしかに恋愛は自由よ。私たちも反対しない。でもね、人には、身の丈を知るっていうのが必要な時もあるのよ」
「……は?」
「アイドル君と、お局(つぼね)様候補は、しょせん、会社を出れば、他人よ、他人」
 その言葉にショックを受ける陶子。あとの2人も、神妙な顔つきでうなずいている。
「お局様って… いつの時代の言葉よ?」
「私たちはね、しょせん会社の日影に咲く、あだ花。幸せになろうなんて思っちゃ、ダメよ」
「ちょっと、あんた、時代劇の見すぎじゃない?」

No.17 14/09/06 16:33
葉月 

 食堂のあちこちから、食器の重なりあう音が聞こえ、洗い場のカウンターに、トレイをかかえた人々が集まり始める。
「ま、とにかく、石川君の情報がわかったら、教えてね♡」
「そうだ、陶子に探ってもらえばいいじゃない、好きな女の子のタイプとか。そーいうの、得意でしょ?」
 それぞれが、勝手なことを言って、席を立ちはじめる。
 テーブルに残された陶子は、このあいだのコピー機の前での石川の怪訝な表情と視線を思い出し、
( ……そんな簡単には、いかないと思うけどな… )
と、箸を置く。




 それからしばらくは、会議で決定した新しい企画の準備で、あわただしい日々が続いた。
 石川も、すっかり男子社員の中にまぎれ、そつなく仕事の業務をこなしている。

No.18 14/09/18 16:06
葉月 

 時に、他の会社からやってくる派遣社員らしき女性に、石川がいろいろ質問されたりしている姿を見かけたりする。
 なんといっても見かけが「ワンランク上」である。現に、部長や課長があいまいにお茶をにごすような質問にも、石川は、確実にきちんと、クールに答えている。
 会社の中でも、確実に石川のファンは増え続け、用もないのに、陶子たちの部署に出入りする女子社員の数は、日ごとにじわじわと多くなっていく。

No.19 14/10/01 16:46
葉月 

「石川、お前、ほんとに彼女いないの?」
 ある日の休憩時間、声の大きな男子社員が発した一言に、みんなの耳が、ピン!と、研ぎ澄まされる。
 「はい」
「えー、なんで? 転勤の時、置いて来ちゃったとか?」
「いいえ、もともと、いません」
「そんなわけないでしょ、それともなに? もしかして男のほうが好きってやつ?」
男子社員から、ドッと笑い声があがる。
 石川は、あいかわらずクールに微笑んで、缶コーヒーを持ち、排気口に向かってタバコの煙をゆっくりと吐いている。

No.20 14/10/05 14:00
葉月 

(ほんとに、彼女いないのかな。あんなにかっこいい人に、いないわけないと思うんだけど… )
 仕事中も、陶子の頭の中からは、雑念が消えない。
 その日のお昼。陶子は、なかなか仕事の区切りがつかず、いつものメンバーと休憩時間がズレてしまった。
 社員食堂に来てみると、他の部署の人たちや、時々見かける他の会社の人たち、業者の人たちが、それぞれのテーブルに分かれてランチやお弁当を食べている。
 空いたテーブルを探して、陶子がキョロキョロしていると、ふと、一人で食べている石川和也の姿が、目にとまった。 

No.21 14/10/15 16:12
葉月 

 陶子の胸の鼓動が、急速に高鳴っていく。
(これは… お近づきになる、チャンスかも…!)
 ほかにテーブルが空いていないこともあって、陶子は意を決し、石川のテーブルへと向かっていった。
「石川くん、ここ、座ってもいい…?」
 彼は、ご飯の入ったお椀をゆっくり下に置き、陶子をちらっと見て、「どうぞ」と言った。
 あせる心をおさえつつ、陶子は石川のななめ前の席に座り、できるだけ優雅に…と意識しつつ、ハンバーグ定食を食べ始める。
 やわらかいハンバーグに箸を入れ、極力、口のまわりにつかないように一口大にきざんで、ご飯と交互に食べる。

No.22 14/10/24 17:01
葉月 

 ざわざわと、あちこちから、新製品の名前や、新しく発売された化粧品の種類について話す声が、聞こえてくる。
 石川は、小鉢に入った煮物を、黙々と食べている。
「あの… 」
 陶子は、箸を止め、石川に話しかけた。
「はい?」かわいた声で、石川が返事をする。
「このあいだ、ありがとうございました‥… 」
「僕、なんかしました?」
「えっと、あの、コピー機の修理…… 」
「ああ、いいですよ、あのくらい」
 会話が、とぎれてしまった。陶子は、一口、野菜スープを飲んで、あきらめず再び話しかける。
「今日、なんだかバタバタして、大変だったでしょ?」
「ええ、まあ。でも、大丈夫です」

No.23 14/10/29 14:06
葉月 

「お昼休みも、時間がズレ込んだみたいね… 私なんか、こういう時間帯に食べるの、慣れてるけど。仕事の段取りが悪いのかなあ… 
あ、でも、石川君は、もう、バリバリだもんね、なんか、部長からも、頼りにされてるしさ」
 話しながら、陶子は、かなりあせっていた。そういう時は、いつも口が勝手に動き、何をしゃべってるか、わけがわからなくなってくる。
 石川は、無表情で、ご飯を食べ、陶子の顔を見つめ、
「僕は、新人ですから」と、言った。
 ななめに向かいあって、あらためて目を見ると、石川の顔は、年若いのに均整のとれた迫力のようなものがあり、思わず陶子は、圧倒されてしまった。
 何を言っていいのかわからなくなり、でも先輩として、何かいろいろと話したいことがありそうな気持ちもあり、頭の中でぐるぐると思いをめぐらしているうちに、ななめ前の石川は、茶碗と、二本の箸を、トレイの上に置いた。
「お先に、失礼します」
 そっけなく、席を立つ石川。

No.24 14/11/01 15:05
葉月 

 後に残された陶子は、思わず肩の力が抜け、ひじをテーブルについて、残りのハンバーグ定食をたいらげる。
 いつのまにか人もまばらになった社員食堂の中に、午後の日ざしがさしこんできて、遅い昼食をとる人たちが、それぞれのテーブルでゆっくりと箸をすすめている。



 陶子に、またもや、チャンスがめぐってきたのは、仕事も一段落ついた初夏の頃だった。
 その日、会社の企画が大成功したとかで、会社のおえらいさんたちは、上機嫌で飲み会をひらいてくれた。
 デートや習い事を理由に逃げ出す若い社員たちもけっこういたが、別に何の予定もない陶子たちは、上司たちのいきおいに押され、居酒屋へとなだれ込んだ。

No.25 14/11/04 10:01
葉月 

 奥座敷のもうもうとした熱気の中で、できるだけカロリー控えめのウーロンハイや野菜サラダを中心に飲み食いしたものの、やはり、年とともに、酔いのまわるのは、はやいものだ。
「ねぇ… 陶子ぉ… そろそろ、ひきあげ時じゃない?」
 同僚の女子社員が、盛り上がっている上司たちを横目に、そっと耳打ちする。
「そうね、タクシーも、つかまらなくなっちゃうよね、じゃ、今のうちに、抜け出そうか… 」
二人で抜き足、差し足、ストッキングに包んだ足で、無造作に放り投げられたスーツの上着の波をくぐり抜けていると、上司の一人が、
「おい! そこの二人! 君たち! 帰っちゃうのー!?」
と、大きな声をかけてきた。

No.26 14/11/07 11:49
葉月 

「はい… 明日に、差し支えますので… 」
 同僚が、愛想笑いでうまくごまかそうとすると、赤ら顔でやや巨体の上司が、缶チューハイを両手に一本ずつ持って、にこにこと近寄ってくる。
「はい、おみやげ。持って帰っちゃって!!」
「えっ… でも… 」陶子たちが、顔を見合わせているのにもかかわらず、上司は上機嫌で言う。
「いいから、いいから! 遠慮して、あんまり飲んでないでしょ? もー、無礼講だって言ってんのに、ヘンなところでひかえめなんだから。彼氏の部屋で飲んでもいいし、一人寝のナイトキャップでも… 」
「おーい、あんまりそんなこと言ってると、セクハラ裁判で訴えられるぞおっ」
「いやいや、これはね、おじさんの好意! やましい心は、一切、ないからね! 缶チューハイも、きれいでかわいいおねえさん方に飲んでもらったほうが、うれしいに決まってるって、なあ!?」
 上司たちのあいだで、なんだかよくわからないが、笑い声と拍手がおきる。 

No.27 14/11/10 14:22
葉月 

「‥‥わかりました、じゃ、いただいて、帰ります!」
開きなおった陶子たちが、無理に笑顔を作り、やや巨体の上司から缶チューハイを受けとる。
「またねー、お疲れさまー」という声を後に、二人は、パンプスをはき、居酒屋の、のれんをくぐった。
 道路は、まだまだ車やタクシーの渋滞が続いている。
 「陶子、これからどうする?」
「うーん、なんか、小腹が減ってるのよね…」
「私も。ちょっと、軽いもの食べて帰ろうか?」
ということで、目についたスイーツのお店で、それぞれフルーツパフェやプリンアラモードを食べることになった。
「ダイエット、いつからするの?」
「今度の企画が終了したら、とりあえず計画表作るけど」
「私もねー、パソコンに体重表打ち込んだはずなんだけど、もう取り出せないのよね」
 ムダ話をしていると、テーブルの上の甘いものはすぐになくなってしまう。

No.28 14/11/14 14:04
葉月 ( AmcTnb )

「じゃあ、おつかれ! …‥ああ、そうだ、このチューハイ、あんたにあげるよ。私、飲まないから」
 お店を出た後、同僚は、陶子に、金色の缶チューハイを押しつけた。
「なんで? もしかして、禁酒ダイエット?」
「それは難しいでしょ、つきあいがあるから。だから、とにかく、家では飲まないことにしたの。持ち込むのもダメ。みんなにも言っとかなきゃ、ついつい、冷蔵庫にたまっちゃうでしょ?」
「そうね。じゃ、いただいておくわ」
「それじゃね、明日、遅刻するなよぉ」と、笑いながら、同僚は、携帯電話をバックから取り出して、歩き出した。
 ほろ酔いで歩いていると、パンプスのかかとが、まるで草原を歩いているように、ふわふわと舗道の上を踏みしめている。

No.29 14/11/18 11:58
葉月 ( AmcTnb )

 ドーナツショップの前で、いい匂いにつられてショーウィンドウの中をのぞきこむと…
 見覚えのある、スーツ姿の男がいる。
 え?
 じっと、目をこらすと、その男は、ゆっくりと、陶子がたたずむ窓側へと、ふり返った。
 石川和也だった。
( うそ、なんでここに? …‥1人で? あの人、ドーナツなんか、食べてるの? )
 頭の中がぐるぐると回り始めた陶子は、迷わず、ドーナツショップの自動ドアをくぐった。
「石川くん…‥?」
 石川は、いつものクールな表情で、陶子を見つめた。
「お疲れ様です」

No.30 14/11/22 15:07
葉月 ( AmcTnb )

「…‥え? あ、そっか、飲み会、出てなかったもんね、石川くん。デートの、待ち合わせ?」
「ちがいます」
「…‥そうよね、いろいろと忙しいよねぇ、仕事のあとも」
 酔いがまわり、だんだんと、顔が赤くなっていくのがわかる。
 陶子は、この場をどうやって切り抜けようか、ちょっとパニックになっていた。
 ショルダーバックの肩ひもを外し、中を探ると、先ほどの缶チューハイが2本、指先にあたる。
「…‥これ、あげるよ、おえらいさんからもらったから、飲み会に出てない人がもらったほうがいいと思うし、石川くん、よく仕事してくれてるしさ、はい、どうぞ!!」
 一緒、石川の表情がくずれ、あきらめたように、彼は、ドーナツの入ったトレイを、テーブルの片方に寄せた。
「米沢さんこそ、立ってないで、座って下さい」
 陶子は、缶チューハイを両手に握りしめたまま、「じゃあ‥…」と、イスに座りこんだ。

No.31 14/11/26 13:21
葉月 ( AmcTnb )

 石川は、シナモンのドーナツをナプキンに包み、なんでもない様子で、マグカップのコーヒーを手にとる。
 店の中は、いろいろな人種の話し声や笑い声で、ジュークボックスのようにざわついている。
「コーヒーのおかわりは、いかがですか?」
 いつのまにかそこにいる、ピンク色の制服を着た店員が、石川のカップを見つめる。
「いただきます」
 石川がカップを持つと、茶髪のおさげ髪の店員は、サーバーからコーヒーを注ぎ込み、にっこりと、陶子に微笑みかけ、
「ご注文は? 何になさいますか?」
と、聞いてきた。
 三者とも、テーブルの上の缶チューハイ2本を、できるだけ見ないようにしているのが、お互いに伝わってくる。 

No.32 14/11/29 16:06
葉月 ( AmcTnb )

「じゃあ… ドーナツセットを‥…」
「AコースとBコースとありますが、どちらになさいます?」
 茶髪のおさげ髪の店員は、あいかわらずにっこりと微笑んでいる。
「…Aコースで、お願いします」
 店員は「Aコースですね」と復唱し、サーバーをかかえて、かろやかに立ち去っていった。
「あの…‥ 」
 陶子は、上目ずかいに、石川の顔色をうかがいながら、聞く。
「私って、ここにいていいの?」
「……は?」
 今度は石川が、よくわからない、という感じの、驚いた表情になった。
「だって、こんな時間にこういう所にいるって、誰か待ってるんでしょ? 私、ドーナツ食べたら、すぐ帰るから… 」
「待ってるのは、人じゃなくて、バスです」
「バス?」
「はい、お待たせしました、Aコースのセット、お持ちしました」
 いきなり、先ほどのおさげ髪の店員が、トレイにドーナツやらマグカップやらシュガーやらシロップなどをのせて、二人のテーブルにやってきた。 

No.33 14/12/03 17:11
葉月 ( AmcTnb )

 会話を中断された陶子と石川は、店員がピンク色のスカートをなびかせて立ち去ったあと、とりあえずお皿の上のドーナツを食べることにした。
「…‥バスって、石川くん、バスで通ってるの?」
「はい。この時間帯はすいてるし、料金も安いんです」
「ふうん。そうなの。残業の日は、たいていタクシーで帰るから、知らなかった」
「米沢さんは、ご自宅はどちら方面なんですか?」
 陶子は、カップの中のコーヒーを飲みかけて、思わず口をつぐんだ。
 初めて、石川のほうから質問してくれた。
「私は、東回りなんだけど… 中央線で行くと速いんだよね。今は、一応、都内に住んでて、最近できた新興住宅街の公団にいるんだけどね」

No.34 14/12/08 13:28
葉月 ( AmcTnb )

「よかったら」
 石川は、ナプキンで手をぬぐい、アタッシュケースの中から小冊子を取り出した。
「これ、あげますよ。バスの路線図です。残業で遅くなった時は、バス使ったほうがいいと思いますよ」
 陶子は、思わずカップを置いて、小冊子を受け取った。
「へぇ… ありがとう、じゃ、いただきます」
 石川は、また、少しだけ表情をくずした。
「ところで」
 二人のテーブルの上には、食べかけのドーナツや、シロップのカラや、ナプキンが散乱している。
「この缶チューハイ、どうするんですか?」



「……米沢さん、ほんとに、大丈夫ですか?」
 深夜の舗道。陶子のパンプスの不規則なかかとの音と、時おり通り過ぎる車の排気音が、あたりにこだましている。
「大丈夫! もうちょっと歩こうよ、バスに乗り遅れたら大変だから、今日は、私が、石川くんをバス停まで送ってあげる!」
 ドーナツショップで缶チューハイはあけなかったものの、お店のメニューにカクテル系があったのがいけなかった。
 時間つぶしにかるくリキュールサワーを飲んだつもりが、陶子は、完全に、酔っぱらった状態になってしまった。

No.35 14/12/12 16:09
葉月 ( AmcTnb )

「ごめんねぇ、今日は、愚痴ばかり聞かせちゃって… もう、忘れて! 明日から、またしっかり仕事するからさぁ」
「いや、僕はいいんですけど、ちゃんと家に帰れるんですか?」
「あ、いいのよ、別に。私、帰巣本能があるから。ほっといても、ちゃんと不思議に帰りついてるのよねぇー、いつのまにか」
 二人の歩くリズムに合わせて、携帯の着信音がテンポよく流れてくる。
 歩きながら、石川が携帯を開いて、しばらく黙って、また閉じた。
「時間、間に合う?」
「はい。あと3、40分はあります。米沢さん、もうこのへんで戻っていいんですよ」
「いいよー、ついでだから。どうせコンビニのおにぎりでも買って帰るだけだし、バスの停留所まで行きたいし!……あー、そういえば、新入社員の頃、よく寝過ごして、バスの終点まで行っちゃってたなあ~」

No.36 14/12/18 14:37
葉月 ( AmcTnb )

 ふと、石川が足を止めた。
「そこですよ」
 目の前には、広々と半円を描くバスの停留所があった。
 薄青く立ち並んだ木立の影が、夜の月の光の中で、しんと息をひそめているように見える。
「へぇ、こんな場所があったんだ。今度、昼間に来てみたいな」
「あっちに、イスがありますから、座ってて下さい」
 陶子がふり返ると、石川は、タバコの自動販売機に向かって歩き出していた。
 闇の中で、ぼんやりと青い掲示板を見上げると、区画ごとに色わけされたバスの路線図が、複雑に絡み合ってあちこちに伸びている。

No.37 14/12/31 21:47
葉月 ( AmcTnb )

「ーーこんなふうに、つながってるのかあ。今度、家に帰る時に、乗って見ようかな」 
 陶子が路線図をたどっていると、石川がやってきて、青いイスに座った。
「石川くん、会社にもう慣れた?」
 話しかけながら、陶子も、黄色いイスに座る。
「はい」
「家とか、ちゃんと連絡してる? 家族の人とか、元気?」
「ええ。来年は、弟の受験があるから、たぶん家中、受験モードに入ってます」
「ああ、そうよねえ、うちもそうだった。うちの弟もさあ、一浪した時は大変だったけど、でもちゃんと次の年がんばっていい所に入ってね、妹もねえ、婚約者と結婚するのやらしないのやら、もう2、3年かかってて、いろいろと両親も悩みの種がつきないらしいのよねぇ」
「そうですか」

No.38 15/01/05 16:26
葉月 ( AmcTnb )

「まあ、私のことは、どうでもいいんだけどさ、石川くん、エリート社員だもんね。学生時代も、成績良かったんでしょう?」
「いいえ… そんな、優等生じゃなかったです」
「そう? 何か、部活とかしてたの?」
 石川は、少し黙って、イスの上で背中を丸めて前かがみになった。
「いろいろ、やってました。アルバイトとかもしてたし。同級生と一緒に、文化部の手伝いもやってて、けっこう楽しかったです」
「あ、私もやってた。一年くらい、お料理クラブに入ってたな。なんか、続かなくて、途中でやめちゃったけどねぇ」
 陶子は、バックの中から缶チューハイを取り出し、プルタブを引いた。
「僕は、なんでも屋みたいな事、いろいろ引き受けてました。茶道部でお茶会がある時は、倉庫から道具を引っ張り出してきたり、華道部で展示がある時は、それぞれの花にかける水の確保とか… おかげで、女の子たちとも、だいぶ仲良くなって、彼女もできたんですよ。
でも、いろいろ、トラブルもあって、こっちもそのころは要領悪かったし、うまく対処できなかったですね」
「トラブル?」
「はい」

No.39 15/01/10 16:38
葉月 ( AmcTnb )

 石川は、前かがみのまま、顔を上げて、バスの路線図を見上げて話を続けた。
「彼女に、学校の先輩を紹介したんです。そしたら、なんか、先輩のほうが相性がよかったみたいで… まあ、僕がフラれたんですよね。で、ちょっとボロボロになって、発表会の時に失敗したんですよ。展示のことで。
米沢さん、なんか、パネルの搬入とか、したことあります?」
「パネル? 文化祭とかで使うやつ?」
 陶子の缶チューハイは、半分ほどになっていた。二人の間のもう一本の缶チューハイは、イスの上に置かれたまま、手つかずの状態になっている。

No.40 15/01/14 16:39
葉月 ( AmcTnb )

「はい。段取りが悪くて、少し、入り口の丈が足りないのに、無理してギリギリの空間に押し込んで、それが、展示品に当たっちゃって…
最悪でした。みんなの作品が、めちゃくちゃになって。
不幸中の幸いというか、ほとんどはスケッチ画だったんで、同級生の分は間に合わせで描き直してもらったりしたんですけど、中に、数点、高価な素材の作品があって‥‥
いろんな人に、迷惑かけました。しまいには、自分の親のことまで、悪く言われちゃって。オヤジの車で搬入してもらったんです、パネル。
まあ、いろいろ世話になった仲間には、後であやまって、卒業文集とかにもボロクソに書かれて、それで済んだような感じですけど、ちょっとゴタゴタしていた時、別れた彼女とか、その友達たちからも文句言われたのが、さすがに、こたえましたね。僕も、まだその頃は、ガキだったし」

No.41 15/01/18 15:36
葉月 ( AmcTnb )

 缶チューハイを持った陶子の手が、ふるえだした。
「…‥そんな、ひどいよ、そんなこと、別に、石川くん、悪くないじゃない、ただ一生けんめい、がんばってただけじゃない、何も、失敗しようと思って失敗したわけじゃないんだもん、人間誰でも、トラブルの一つや二つ、あるわよお、それを悪く言うこと、ないじゃないー……」
 ポロポロと、陶子の目から、涙があふれだした。
 石川は、黙って、横目で、泣き出す陶子を見ている。
「石川くん、悪いことなんてしてないよお、がんばって、搬入してたんでしょう? パネルが倒れて、あやまったんでしょう? それでも許してくれないんだったら、もう、しかたないじゃない── 」
 ついに陶子は、イスからくずれおち、停留所のコンクリートにひざをついて座り込んだ。

No.42 15/01/24 15:59
葉月 ( AmcTnb )

「…‥米沢さん、こんなところで、泣き出さないで下さい」
「私、私だって、今まで一生けんめい、ここまで仕事してきたんだよ。それこそ、誰もやらないような残業だって引き受けて、朝だって、通勤ラッシュの時間帯にシフト組んで、具合が悪くなったってがんばってきたんだよ。そんな、一生けんめいやってきたことで、人からどうこう言われる筋合いは、ないわよぉー…‥ 」
 石川は、イスの上で脚を組みかえ、手つかずの缶チューハイを右手で持ち上げた。
 陶子は、座り込んだまま、泣き続けている。
「米沢さん」
 石川が呼びかけても、かまわず、陶子は缶チューハイを頬にあてて、メイクが流れ落ちるのも気にせず、涙をボロボロ流している。
「米沢さん」

No.43 15/01/30 16:49
葉月 ( AmcTnb )

「バス、もうすぐ来ますから、そこの角の交差点まで、歩きましょう」
 石川は、立ち上がり、陶子の腕をとって、舗道を歩き始めた。
 さわさわと、夜の木々のすき間から、ゆるいそよ風に吹かれて葉ずれの音がしている。
 ゆっくりと、ロータリーの先のブロックから、車のライトの光が、暗闇に差し込んできた。



 会社では、次の企画の打ち合わせで、毎日大わらわだ。
 陶子と石川は、それぞれの職務のミーティングの連続で、顔を合わせる機会が減っていった。

No.44 15/02/10 16:01
葉月 ( AmcTnb )

 ある日の昼休み。自動販売機の前でソファーに座り、陶子がぼんやりしていると、石川が書類を持って通りかかった。
「お疲れ様」
 陶子が声をかけると、石川はゆっくりと足を止めて、「お疲れ様です」と、別のソファーに座り込んだ。
「調子はどう?」
「まあまあです。─こっちは、夏、熱いですね。外回りなんか、汗だくです。そちらは、企画、進んでますか?」
「全然ダメ。もう一歩も動けない。みんな、もう、投げ出す寸前みたい」

No.45 15/02/18 16:56
葉月 ( AmcTnb )

「そうですか。僕達も忙しいから、手伝いもできませんけど─」
 石川は、書類を手に取り、ネクタイを少しゆるめた。
「今度の企画は、米沢さんたちと組もうかな」「え、やめたほうがいいよ、残業増えちゃうよ」
「そしたら、米沢さんの分も、僕がやりますよ」
「うん─」
 陶子は、大きく伸びをして、ソファーに座りなおす。
「いつか、ペアを組めたらいいね」
 石川は、ゆっくりと立ち上がり、「そのうち、お願いします」と、笑って、エレベーターのほうへ歩き始めた。
 陶子は、ソファーに座ったまま、小さなイヤリングの揺れる響きに、耳をかたむけた。




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