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乳~転落~(再)

レス72 HIT数 36163 あ+ あ-

かなかな( ♀ iQ3Eh )
11/12/01 21:28(更新日時)

2年半前に
「乳~転落」というタイトルで書いていました。

実生活にとらわれ、途中で立ち消えてしまった初めての小説

少しずつ書ける精神状態に戻ってきました。

やっとの再筆。
過去スレが古過ぎて、加筆出来ない為、新規スレ立たせて頂きます。すみません。

また、ご感想スレも同時に立ち上げました

感想スレ「乳~転落~(再)」です
タグ
不倫・崩壊・出会い系

どうぞ気長に よろしくお願いします🙇

No.1701938 11/11/09 21:42(スレ作成日時)

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No.51 11/11/21 18:41
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C49



「ママ~」



ハッっとした。



今……何時?



目が開かない。



声は……左から?



瞼が重い。



感覚を頭で考えている。



考えている。。。



考えているという意識をハッキリと自覚出来るほど、時間をかけてゆっくりと、声の主を探した。



右を下に横向きに寝ていた。


左半身が重い。


背中側から、こちらの肩あたりに、顎を乗せて密着する可愛い小さな顔。



コンタクトをしていなくても、この至近距離なら表情まで読み取れる。



「おはよー」



パッチリとした澄んだ瞳がまっすぐこちらに向いている。



時折、鼻息をかけながら、私の様子を伺って。



いったい昨日は何が起こったんだろう。



娘の方に向き直りながら、小柄な娘を抱き締めた。



嬉しそうに、にやけた表情を隠そうとしながらも、抱き締め返してくる暖かな体温。



左手の甲に鈍い痛みが走った。


その痛みが、少しずつ、記憶を呼び覚ましに小百合の脳へ駆けて行った。



No.52 11/11/21 18:48
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C50



いつ、どうやって布団に入ったのか



全く記憶がなかった。



小百合は、お酒は得意ではないが、酒量を心得ているというか記憶がなくなる程飲んだ事などもなかった。



記憶が無い。



多分、人生で、初めての出来事。



「ママー痛い?」



宙音は、急いでベッドから跳び降りると、電話台の抽き出しあたりを探るゴソゴソという音を出し始めた。



手の傷口を凝視した為に、宙音が気付いたらしい。



どんな物に擦ったら、こんなに腫れて赤くなるんだろう。



小百合の白い小さな左手の甲は、赤いボールペンで何本もランダムに描きなぐった画用紙のようだった。



ミミズ腫れという名は浮かばなかった。



《流星群》



盛り上がった放射線状の赤い線を眺めながら、漆黒の夜空に走る、流星群を思い出した。



確か・・・しし座だったかな?


「流星群、見に行かない?」



祐一郎にメールでそう誘われた。



正直、夜に誘い出す文句にしてはベタだなぁと心では舌を出していた。



漆黒の空に、放射線状に何度も何本も明るい光の線が描かれては消えた夜。



No.53 11/11/21 18:50
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C51



狭いオープンカーの2シーター。



タイプではない祐一郎と、ロマンチックな雰囲気になるのを避けたくて、ひたすら話し続け、ムードを壊し続けた記憶。



でも、流れ星には、ウブな少女のように、たくさん願い事を込めた。



次から次へと現れる流れ星に、節操もなくいくつもいくつも願った。



あの時の願い事は・・・ひとつは叶ったかもしれない。



《結婚》



相手は、祐一郎と特定しなかったけど。。。



《結婚するなら、好きな人より、愛してくれる人の方が幸せになれる》



都市伝説じゃないけれど、どこかで聞いてインプットされてしまっていた。



祐一郎の事は、好きではないが、とにかく私を一番にして、愛してくれる。



誠実で、裏切りからは一番遠い所にいる。



そう確信して結婚した。



昨夜まで、揺るぎようのない信頼だった。



知ってしまった裏切りは、小百合の人生感を完全降伏させ、生まれながらの正義感は、現実という黒い塊に、ひれ伏してしまった。



手の甲を眺めながら、一瞬で回想した思考を閉じると、ベッドから体を起こして端に座った。



No.54 11/11/21 18:57
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C52



ゆっくりと顔をあげた。



カーテンを閉めきったままの薄暗い部屋は、寝息と体温で温まった朝の匂いが充満していた。

いつもすぐに窓を開け、新鮮な空気を入れたがる小百合も、今朝はカーテンを開ける気になれなかった。



部屋の姿見鏡には、薄暗闇に猫背でベッドに腰掛けるシルエットが浮かんでいた。



メガネをかけると、泣き腫らし、むくんだ瞼を張り付けた、憔悴しきった女の顔が黒いシルエットに浮かぶようについていた。



「ママー、はいっ」



一大事でも起こったがごとく、全力で廊下を走って来た娘が、手に絆創膏を握り締めて、すっと私の手を取った。



「血ぃ 痛い?」



「ううん、もう止まってるから大丈夫よ」



「じゃあ 貼ったあげる」



3歳にしては、本当に言葉も上手に話せて、優しい気遣いのある娘に育ってくれた。



そう、3歳になるまで、夜起きてぐずり眠らなかった事以外では、育児で困った事はなかった。



集団にいても、何をしても、抜きん出て出来る自慢の娘。



拙い小さな指で一生懸命絆創膏を貼る娘を眺めて、自然と涙が溢れてしまった。



「ママまだ痛いの?」



「そうね まだズキズキする」



そう答えるのが精一杯で、溢れる涙を堪えきれず、大粒の涙をティッシュで拭った。



そう ズキズキするの



ここがね・・・




胸を押さえて、そう心で囁いた。



心の声が娘に漏れ聞こえないよう、強く唇を噛んだ。




No.55 11/11/22 21:31
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C53



夫の鞄と靴は玄関になかった。


もう会社?


そんな時間?


リビングの時計は8時を回っていた


「なんで起こさないんだよ」


そんな風に私を責める事は今までもない。


逆に、「疲れている時は寝てていいよ」と


夜中にほとんど寝られない宙音をあやす私を気遣う優しさがあった。



無理やり作った笑顔で、宙音との朝ご飯


何を食べても味なんかしない。だが、無性に何かが食べたい。


何でもいい。



まただ。



強いストレスを感じると、食に走ってしまう。



止められない。


口に入るものなら何でも良かった。



1日中、食べ物を探し、1日中、口を動かしていないと狂いそうだ。



食パンを一切れ残らず食べ尽くした所で、昨夜必死に転送したメールが気になった。



会社支給のパソコンを開く。



インターネットは家に引いていない。


会社発信カードを利用して、接続する。


だから、主人が会社にいる間に接続すれば、おかしな事態に陥る。


時計を確認した。


9時。



始業時間をフレックスにしている主人は最近、10時出社が多い。


懸けてみよう。



大丈夫。あと30分



昨夜、必死で転送したメールと同時に夫の会社アドレスのメールソフトを開いた。


受信メールに怪しいものは見当たらなかったが、送信ファイルに、あのnyantomoのアドレスを見つけた。



「へぇ館林に住んでるんだ!?何だか美味しいものがたくさんありそうだね、俺は……」


多分、あの泊まってる不倫相手への付き合う前のメールだろう。



会社アドレスから女にメールなんて、何を考えているのか。


会社名がドメインにバッチリ入っているのに。


もう、嫌になってしまった。



気付くと、わけのわからない大声を出していた。



「どうしたの?」



パソコンをいじっていると、必ず私も~と自分も触りたがる娘。



別室で大好きなビデオをつけ、遠ざけていたのに。



しまった



落ち着いて



落ち着くのよ



「何でもないの」



「ビデオ面白い?」



「うんっ」



忘れてた!という顔で、宙音は急いでビデオのついている部屋へ戻って行った。



とにかく、これも、夫が知らないアドレスへ送って保存しよう。


No.56 11/11/22 21:35
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C54


印刷もしなくちゃ。



昨夜の写真も



印刷しなくちゃ!



プリンターから、少しずつ、夫と女の胸元からジーコッジーコッと機械的な音とともに、小百合の世界を一変した弾頭が姿を現す。



うっとりした夫と知らない女がお互いの首を傾げ、唇を合わせている。



夫の左手が女の頬を包んでいた。



写真サイズになって、肌の色や頬のホクロまでクリアになると、写真が、急にリアルさを増した。



うっ


また吐き気だ。



そのままトイレに駆け込んだ。


トイレから出て来ると、プリンターから出たはずの写真が消えていた。



おそるおそる宙音がいる部屋を覗くと、白い紙を手に持ちひらひらさせて遊んでいた。



「返しなさいっ!」



大声で叫んで、宙音から汚れた写真を奪い取った。



「えーーん」



急に怒鳴られ、玩具を奪われた事に驚き、宙音は泣き始めた。


転んでも、嫌な事があっても、滅多に泣かない娘が泣いていた。


小百合はうろたえて、我にかえった。



「ごめんね」



「これはね、インクが毒で出来ててね・・・」



ごまかす為の嘘を必死に探して、娘を抱きしめると、何故か小百合も一緒になって泣いてしまった。



母娘は、暫く抱き合いながら、わんわんと声を上げて涙を落とした。



あれからまだ半日も経っていない。


だから、夢心地のこの状態が声を上げて泣くことで、悪夢から脱出する扉が出現する鍵に思えたのかもしれない。



幼稚園プレがお休みの日で良かった。



かなり参っている。


いつも身綺麗で、読者モデルをしたり、スカウトに声をかけられるママ達の中に、こんな状態では出られなかった。



きっと、余裕のない酷い顔で宙音から、あの汚物を奪い取ったに違いない。


いつもと違う母親の雰囲気を、子供は敏感に感じ取ったのだ。


しっかりしなきゃ。


この娘を守れるのは私だけ。


例え不倫女が乗り込んで来ても、守る為に戦えるのは私だけ。


でも 今は 心が 泣きなさいと命令する。


あなたが壊れないように。


今は思い切り 泣きなさいと。


No.57 11/11/22 21:47
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C55



「祐ちゃん、何か私に言いたい事ない?」



あれから3日。



宙音は、今日、実家へ連れて行った。



私が寄り添わずに眠るのは、宙音にとって人生初めての出来事。


きっと不安な夜だろう。



電話では平気そうだったが、ちゃんと眠りについたのだろうか。



往復6時間。



1日がかりだった。



落ち着いて話す為、宙音に気が散って、万が一聞かれるのは、避けたかった。



印刷した写真を封筒に入れ、ダイニングチェアのクッション下に滑り込ませてある。



「え?ないけど……何?」



夫がいつものように深夜帰宅した、夕飯を食べ終わった1時半、こう切り出した。



まだ、お風呂に入っていないので、苦手な臭いが鼻をつくが、構っていられない。



このタイミングを逃したら、お酒を飲んで寝てしまう。



ダイニングに隣接した、今は夫の寝室となった和室で、布団に転がろうとした夫の背中に、静かだが、厳しい声で、もう一度質問をぶつけた。



No.58 11/11/23 12:23
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C56



「何か言いたいこと。私に隠してる事……ない?」



「ないけど」



背を向け即答する夫に



「じゃあ、これ、何?」



あのキス写真をテーブルに置き、夫を近くへ呼び寄せた。



顔を見たかった。



どんな顔で写真を目にして、どんな表情で私に視線を移すのか。



刑事が犯人に、動かしようのない証拠を突きつける。



どうかしたら陶酔してまいそうな快感が湧き上がる。



「ちょっと待って、喉渇いたから。」



この期におよんで、何とか時間稼ぎしようとしている。



見苦しい。


コポコポと冷えた麦茶をコップに注ぐ音だけが響く。



沈黙は苦手だが、これからの戦いに備え、夫が飲み干すまで黙って待った。



「ん~?」



何かある事に感付き、ごまかそうとするワザとらしい優しい声色を発しながら、テーブルに近づいて来た。



そうよ・・・見なさい。



甘い悪事の瞬間を。



妻ではない女と唇を合わせている自分を。



「座って」



こちらも優しい声で対応した。


写真の前の椅子を指差す。



人はヤマシイ事があると、視線を絡めない。



夫は、黙ってテーブルの角を挟んで小百合の斜め前に座った。


目の前に居る人間とは対峙の姿勢。



交渉を上手く勧めるには、横か斜めに座る事。



大学の心理学から派生して、何かの本で得た知識。



私は冷静だわ。



大丈夫。



そっと 静かに 口を開いた。



「誰?」



No.59 11/11/23 12:26
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C57



「誰なの?」



困った顔を想像していた。


しかし、夫は怒りを湛えた目で、私をにらみ見返した。



その夫の顔に、さっきまでの冷静さは一気に噴き飛んだ。



「何よ!」



「何も言わないつもり!?」



「誰なのよ!」



夫がこの女とどうなりたいかなんて、今はどうでも良かった。



知りたい。



自分の、女としてのプライドをボロボロにした、薄汚い女の正体を知りたい。



「いつから?」



「1年前くらい」



やっと口を開いた。



まだ私の目を睨み返している。



何て人なの!



反省してる、すまない事をした人間の顔じゃない。



「名前は?」



「な・ま・ え!」



「ともこ」



「どういう字?」



「知らない」



ウソだ



智子という女に送ったメールがあったはず。



「ウソつかないで!」



「とも兄さんの智に、子供の子。」



血が沸いた。



薄汚い女の名前を教えるのに、私の大好きな兄の名前を出した。



崇高で清らかな兄の名に、薄汚れた女の絵の具が垂らされた。



「ふざけないで!」



これ以上、汚れた轍が広がらないよう、大声で叫んでいた。



「苗字は?」



「さ、さいとうです。」



いきなりスゴんだ小百合に驚いたのか、祐一郎は弱く言葉を吐いた。



No.60 11/11/25 21:56
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C58



さ い と う と も こ
→斉藤智子



小百合の中で変換した文字が、手にした赤い手帳にすらすらと文字となって現れてきた。



深呼吸する。


再び静かで厳しい口調に戻した。




「どこに住んでるの?」



「群馬県」



祐一郎は観念したのか、聞かれた事に答え始めた。



「群馬のどこ?」



「覚えてない」



「覚えてない訳ないでしょ!」



「館林って所じゃないの?」



ギョッとした夫の顔気味が良かった。



会社メールの送信ファイルにあった。



やっぱりあの女だったんだ。



No.61 11/11/25 21:59
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C59



「知ってるなら、聞かなきゃいいじゃん!」



耳を疑った。



逆ギレ。



よくも……



許さない。



小百合の中で黒い塊が噴き上がった。



「あなた、自分がどんな事をしたか、わかって口を聞いてるのよね?」



「不倫でしょ?」



「不倫てどういう事かわかってるの?」



「あのエッチしてる動画は?」



「動画を撮ってたあの女は誰よ!」



止まらなかった。



言葉も。



涙も。



「ふざけないでよ!」



あの映像が・・・



夫のモノをくわえる女。



生々しい女の秘部のアップ。



黒く光るそこへ少しずつ埋め込まれる尖った肌色の太い棒。



後ろから女の腰を掴み、出し入れする度に揺れる画面。



振り払っても、振り払っても、小百合の脳裏から離れてくれない。



出来るなら、言葉でだけでも、振り払いたかった。



「っざっけんな!って言ってんだよ!」



爆発した。



怒り、悲しみ、プライド、涙、口調、全てが入り混じり津波になって小百合を襲った。


呑み込まれる負の感情波。



兄弟が反抗期に使っていた相手威嚇する口調。



怒りと共に解放された不思議な気分で、祐一郎を罵倒した。




No.62 11/11/25 22:21
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C60



「どこで知り合ったの?」



「サイト」



「どんな風に?」



「相手が載せてたから、メールした。」



「どういうサイトなのよ」



「夫婦関係がなくてっていう掲示板に」



「出会い系って事でしょ?」



「大きく捉えれば、そうなんだけど、スタービ○チって所で……あれ?エ○サイトだったっけそこは出会い系っていうより」


「言い訳はいいの!」



裕一郎を最後までしゃべらせたくなかった。



ごまかしを混ぜた言い訳は聞きたくなかった。



馬鹿にして!



どんな所だろうが、夫婦関係がないって公言するのは、言い換えれば、W不倫しましょうだ。

そんな事もわからないお子ちゃまじゃないだろう?



最近は言葉を綺麗に置き換えて自分を正当化する人間が増えている。



援助交際なんて言っているが、ただの売春。



「夫婦関係がないから、さみしいから、話しましょう?」



「淋しさをまぎらわすって、どういう事になるか、どういう事を目的に募集するか、わかるでしょ?」



「性欲処理なのか、恋なのかなんてどうでもいいけど。」



「不倫でしょ!」



「フ リ ン!」



「他人のせいにするな!」



「どんな言葉が書いてあったって、その裏には《夫とのコミュニケーション力が自分になく、性欲処理に困っています。後腐れがなく秘密も守り易い既婚者同士で、性欲処理しませんか?でも、家族や社会的地位は無くしたくないんです。》でしょ?」




「どんな女なの。」



小百合の圧倒的な言葉の量に観念したのか、今まで見せた事のない態度に恐怖を感じたのか、途中で言葉を遮られたせいなのか。



いつもの無口な裕一郎からは想像が出来ない程、ペラペラと流暢に喋り始めた。




No.63 11/11/26 21:51
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C61



もう、いつもの上品な小百合は消えていた。



「その人、結婚してるんでしょ?」



「今は離婚して、実家で暮らしてる。」



「その人、子供はいるの?」



「二人、小学生」



「何年生?」



「2年生と5年生」


裕一郎は指を折ながら、たどたどしく答える。



「男の子?女の子?」



「男の子だって」


女は……特に子供がいる女は、浮気なんて相当身体も心も鈍感な者しか出来ないはずだ。


それは、身体が拒否するはずだから。


それは母乳を与えて初めて確信した小百合の中の真理だった。


乳首……触られただけで声が上がってしまう敏感で柔らかな突起。


それまでは、《性》の象徴であった箇所が、別の個体を生み落とした瞬間から、その先に小さな穴を開け、個体にくわえさせろと、命令する。



身体の中心から乳首へ向かい、寝ている間も休むことなく、体液を送り続けろと無意識の脳が勝手に命令を下す。


乳首から出してやらなければ、乳房が石のように硬く膨らみ、悲鳴を上げる。


自然に出て行ってなどくれない。

《お前がくわえさせろ、お前が絞れ、母親になれ、母性を鍛えろ》と命令する。



女は、妊娠で身体を変え、出産でまた新たな進化を迎え戸惑う事を、子を授かった喜びで凌駕しようと理性が強引に包み込む。


昆虫は芋虫、サナギ、成虫と形を変える。


変態。


女は、最後の変態を乳首という小さな箇所で起こす。



《性》の場所であった乳首が《生》の場所へ。



男に吸われていた乳首を我が子が、生きる為に吸う。


知覚の混乱。


わかっていても、慣れるまで、頭が混乱する。



そして、乳首の穴から白い生命の液体を噴出し、身体の中心の2つの膨らみは、次の《生》の為の機能だと、全身で納得して母親となる。


故に、我が子が含んだ神聖な《生》の場所を、夫以外の男が含んだ瞬間、母親という存在は、瞬時に赤子であった我が子の温もりをフラッシュバックさせるのだ。



だから、子持ちで不倫する女は、赤子の温もりという母性愛を振り払ってまで、情事に溺れることの出来る自己愛な女か忘れる機能が極めて優れた頭の悪い女だけなのだ。



No.64 11/11/26 21:54
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C62



~乳~人間を堕落させない為に神が与えた白き美しき液体



しかし、この女は、己の欲愛に我が子の温もりを振り払った。


いや、やはり頭が悪いのか。



こういう女は我が子より自分を選ぶ。



何をするかわからない。



知らなければ。



自分の常識から逸脱する人間を。



でなければ、これから、何を起こすかわからない。



小百合の中で、危険だ、近づいてはいけないと感じる人間に対しての恐怖が静かに鳴る。



「何してる人?」



「工場の秘書とか……」



間違いない、やはりあの女だ。


nyantomoのアドレス



夏休みに泊まっていた女。



確かこんなメールがあった。

――――――――――――――
おはよ💕今起きたとこ😉
早寝早起き頑張ってみました✨
仕事は全然わからないけど大丈夫な気がするよ。まずは流れを知る為に一通りやるみたい。
でも営業本部を全部まとめている、社長の弟である専務の秘書っていう事で 長年つとめて来た事務の女の人達と 微妙に立場が違うからか…
ちょっと怖い。あきらかに「へぇーこの子ねぇ~」って目だよ⤵
気に入ってくれて採用されたんだから 私は気にせず明るく頑張るね✨
ありがと☺ ぎゅっと抱きしめて欲しい気持ちです…
――――――――――――




そう、でも、その抱き締めて欲しい人には、妻と当時2才の子供がいて……知っていたよね?小学生の我が子2人を忘れて、乳首を裕一郎に含ませた自己愛女さん。



No.65 11/11/26 22:01
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C63



「何で離婚したの?」



「理由はよくわからないけど、離婚は、その、自分から離婚したみたいだし……慰謝料も、払ったって。」



女が自分から離婚を。慰謝料も払った?



つまり、裕一郎と再婚出来る勝算が立ったからなのか……



「裕福なのね」



「婿養子だったから、旦那にやらせてた実家のレース工場をそのままあげて慰謝料にしたって」



「あなたと一緒になるつもりなの?」



「いや、離婚はするつもりだって言ってたから……こっちが、その、重くなっちゃって、俺から別れたんだよ」




「別れたのに、何でまた会ってるのよ、相手はいつ離婚したの?」



「1月だって」



今年のお正月……



「また会うようになったのは?」


「春……だったかな……」



「そうね、離婚してから、会ってるわよね、8月20日にも!」


日付を確定されて、動揺に拍車がかかったのか、祐一郎は、聞かない事まで話し始めた。



No.66 11/11/29 22:20
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C64



「どれ位会ってたの?」



「月に1~2度。」


何ヶ月か別れていたという話を信じたとしても、単純計算で、月一で12回、月2で24回は会っている。



会った時に1回きりのエッチで済むものか!




わざわざ、小学生の子供をおいて……会っているのだ。


一度に2回なら24回。



二度なら46回。



夫は女と重なった。



妻である私とよりも……遥かに多い……



急に……惨めな気持ちになった。



勢い良く膨らんでいた風船の人形が、穴を見つけ、クネクネとその場に丸まり失速する。



足元からではなく、全体にしわを作り、縮んで行く。



小百合は自分の惨めな夫婦生活を呪った。


そもそも新婚生活らしいものがなかった。


結婚して一週間で転勤。


まだ電機製品も入れる前に。


引っ越しの挨拶をした翌々日に、また引っ越しの挨拶。


今思えば、大掃除だけして、新しいガスレンジ台や給湯器を買って付けただけのリフォーム業者のようだった。



新しい勤務先、ガラッと変わった仕事内容。



ヘトヘトの深夜帰宅。



新婚の夫婦生活は初めから、月1回あれば良い方になってしまった。



あれから5年。


相変わらずの終電帰宅。



夫婦仲は悪くない。



しかし、セックスに関しては。


元々、肌を合わせる事で愛情を計る癖のある小百合には地獄だった。



何度熱く疼く体を自分で慰めた事か……



何の為の結婚なの?


裕一郎が平日の深夜0時過ぎに帰宅して、夕飯を取る間しか話も出来ない。


朝はギリギリまで寝て、バタバタと出て行く。



元々無口な裕一郎ゆえに、拍車がかかった。



セックスレスと淋しさで、新婚半年で、小百合はノイローゼ気味になった。



寂しいと泣いた。



そんな私を求めずに、祐一郎は、他の女との狂宴をビデオに撮る余裕まである程楽しんでいた。



あれほど望んだ体の繋がりを。


No.67 11/11/29 22:30
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C65



「どこで……会ってたの?」



声に弱さが宿った。



「一応、中間地点の・・・」



「どこ?」



「足立区になるのかな」




「車は・・・使った?」



今ある車は、小百合が結婚祝いに兄から貰ったアルファロメオしかない。



ブランド好きな祐一郎が、女に見栄を張る為に使用した可能性は十分ある。



「俺が川越の駅まで行って、そこから向こうの車で。」



「ホテルって事?」



「どこの?」


「……」



「どこの何てホテル?」



「だから、足立区のブルーパレス」


弱い口調で質問し始めていた小百合だったが、裕一郎の逆ギレ口調はいちいち気に障る。


何が、だからだ。と思いながら、小百合は淡々とノートに書き留めて行った。



「そう」



「費用は?」



「ワリカンで」



何だか、サスペンスドラマの刑事のようだと思ったが、この時の小百合はそれ以上塾考出来なかった。



大抵、すらすらと自供する犯人は、答えに重大な嘘を一つ二つ折り混ぜて刑事を混乱させる。


全てを知る神は、耳で捉えられない声で言う。



『小百合、真実に埋もれる嘘が一番厄介なんだぞ』と。


No.68 11/11/29 22:47
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C66



ラブホテルにはあまり縁がない。



学生時代の記憶を辿れば、確か一回7000円位はしたと思う。



交通費、食事、何だかんだで1万円。



月に1回から2回。



最低1、2万円だ。



祐一郎のどこにそんなお金が?


毎月のお小遣いはタバコとお酒に消えている。



クレジットカード?



色々細かい買い物には目をつむって来たが、何万も現金をへそくり出来るレベルではない。



飲んで帰るような友人の名を聞いた事もない。



祐一郎の言葉を信じれば、そんな余裕がある仕事量ではないはず。



普通に考えれば、小遣いでは不倫は出来ない。



それが、小百合が祐一郎を信じきっていた背骨にもなっていた。


軍資金がなければ、悪さも出来る訳がない。



一体、どこからそんなお金が……?


【祐一郎の話には、どこかに嘘がある。】



先ほどの神の声を捉えたのか、小百合に裕一郎の話への疑いの芽が顔を出した。



信じたくはないが、夫の嘘の綻びまでも、不倫相手を探るのと同時にしなくてはならないのか。


既に許容範囲を越えそうな小百合の思考は悲鳴を上げ始めた。



No.69 11/11/29 23:01
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C67



しかし、目の前で、嘘を散りばめながらとはいえ、ペラペラと流暢に裕一郎が喋っている。


新鮮だった。



普段の無口な姿からは想像しがたい。



この人、こんなに話せるんだ。


とりあえず、聞けば何かしら答える。


投げたボールを拾いに走る飼い犬みたい……



今、お手って言えば、するのかしら?



人は究極の状態に追い詰められると、心理的に、どうでも良い事を考え思考の逃避を始める。


いけない、と首を振り、



「どんな事を二人で話してたの」



考える素振りを大袈裟にするジェスチャーなのか、裕一郎は、瞳を斜め上に移し、思い出す仕草を顔で表していた。



「子供が、旦那との子じゃないって事とか」



「旦那の子じゃない?連れっ子って事?」



連れっ子なら判るという訳ではないが、お腹を痛めて産んだ子供を置いて、長い間不倫なんて……酷い母親。



どんな精神構造で、女の顔から母親の顔へ戻るのだろうか。



子供も気付かなかったのか。



「違うって」



「え?違う?じゃあ、自分の連れ子なの?」


裕一郎はハエを顔だけで振り払うかのごとくブンブンと大きく首を横に振った。



「じゃあ、一体、誰の子なの?」



情けないが、単純に相手の家庭に、興味が沸いてしまった。



No.70 11/12/01 21:19
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C68


旦那さんとの子でもなく連れ子でもないという【子供】


誰の子なのか?



その答えは小百合の中には用意出来なかった


「不妊治療だってさ。色々、体外受精とか試したけどダメで、他の男の精子で作ったって」



え???


他の男の精子?




不倫をするだけに、モラルを求められない相手という事はおおよそ感じていた。


旦那さん側の問題での不妊もわかる。


しかし、不倫相手の旦那という他人にその物語を巡らして、小百合は何だか妙な同情心を抱いてしまった。



婿養子になった。


妻の実家のレース工場で義父の下で働く……


排卵日の儀式的セックス。




不妊治療や検査は病院でマスターベーションを強要される。


昼間の個室で精子を絞り取る。


究極の羞恥心と戦い、コップに採取した生温かい白濁の液体を差し出す



看護士の気配を気にしながら、そっと差し出す砕かれた男の誇りと共に。


そして……トドメは


《あんたの遺伝子ダメなのよ》


絶望の宣告



じゃあ、他人の精子で子供を作るわ



妻の子宮に戻される見知らぬ男と細胞分裂を始める受精卵に立ち会い。



日に日に大きくなっていく見知らぬ男との卵を抱いた妻の腹を毎日眺め。



棘(イバラ)の道程を経て、ようやく腕に抱いた子に、何を思ったのか。



血の繋がらない息子達に。



その息子二人と不倫妻の為に、一生妻の実家で働いていく男。


境遇の悲哀さに同情した。



挙げ句の妻からの離婚宣言。


奴隷だ。



不妊治療には詳しくない小百合だが【倫理】人間として、この女は間違っている、人して冷酷だ。



どんな思いで、旦那さんは切り出された離婚に承諾したのだろうか。



待って、子供は体外受精なの?


こういう女なら、私ね、子供が出来なくて可哀想でしょという顔で



「行って来ます」と涙声を作り、子作りの為に、他の男とセックスに出かけたかもしれない。



唇を噛んで他の男に抱かれに行く妻を見送る旦那。



有り得なくもないわ。


No.71 11/12/01 21:23
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C69



異文化の相互理解でさえ、最低のモラルがつきまとう。



この女には、常識や人の痛みは絶対に通用しないのではないか。


小百合の中で、ぼんやりとした確信が曇り空の灰色の雲のように形になっていく。



きっと、何だかんだと理由をつけて、全て自分が可哀想で正当化して、思考が回る女。



一番近い旦那でさえ、奴隷扱いだ。


人の心の痛みには、まるで考えが及ばないであろう。



恐い。



普通じゃない。


普通の生活、普通の顔を持つ人間が連続殺人犯である事が多いように、この女は手ごわい普通の仮面をつけた狂人だ。



ただ、こんな込み入った家庭の秘密話を誰にでもする女なのか。


気を許した上でのピロートークなのか。



祐一郎の腕枕で、事が終わり天井を仰ぎながら、自分の身の上話を、私って可哀想な女なのぅとチラつかせて裸の肌をすり寄せ話す、きっとそんなイヤらしい女だ。



背筋につうっと冷たい汗が下りて行った。



この女がキレたら、会社や家に乗り込み、祐一郎の社会的地位を脅かしかねない。


裕一郎は構わないが、もし、自宅を割り出され、宙音ちゃんに何かあったら!?



最悪の事態を想定し、小百合は静かに考えを巡らせた。



宙音の為に、この女とは、静かに、出来るだけ穏便に別れさせなければ。




No.72 11/12/01 21:28
かなかな ( ♀ iQ3Eh )

C70



自分の心の傷よりも、家族を、とりわけ子供を守ろうという母親の強い意識が、心の傷から流れ続ける鮮やかな赤い血を、一時的にでも止めるダムの役目を果たそうと、血に赤く染まった濁流を母性だけが食い止め始めた。



その一方で、全てを捨てても、相手の女を破滅させてやりたい、というどうしようもない黒い衝動にも駆られていた。



ふと自分の手を握った瞬間、絆創膏に指が触れた。


宙音が拙い指で貼ってくれた、かわいらしいキャラクター付きの絆創膏。



黒と白とを行き交う小百合の心が、絆創膏にシンクロする。



流れ出る血を止める物。



宙音を守らなきゃ。



祐一郎なんて……家族を裏切っていた男なんて、もうどうなっても良いわ。



宙音を、そらねを……守れるのは私だけ


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