怖い話
実体験、聞いた話、良くある話、作り話など、自分が知っている怖い話をつらつらと書き記します。
ヤバくなったら封鎖しますのであしからず。
皆様、どうぞ自己責任のもとでお読みください。
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>> 100
彼女は「Aさんは引き寄せやすい体質だから気をつけて」と言ったそうだ。
それから一月。
再び送られてきたファンレターに、『また霊が憑いたようです』と書かれていた。
しかしライブが忙しく、彼女とは会えなかった。
その数日後、Aさんは突然の熱で倒れた。
原因は不明。
Aさんは無理を押して練習に顔を見せたが、見る影もなく衰弱していた。
「毎晩金縛りに遭うんや。部屋の隅に誰か立ってて……あの子が言ってた霊かも」
幽霊を信じていなかったAさんが、そんなことを言う。
「このままやったら殺される」
すると、スタジオに居合わせた音響の男性が、
「今すぐ霊感強いやつ呼んだるわ」と言ってくれた。
現れた女性は、Aを一目見るなり「生霊やね」と言った。
「今、お守りにしてる物ある?」
彼女に言われて、Aは以前ファンの子と買ったお守りを出した。
すると彼女が言った。
「原因これやわ」
「えっ?」
「女の子の生霊。これに宿ってる」
なんと、
生霊はあの女の子だという。
ファンレターの話は、Aに近づくための嘘だった。
そして、彼女自ら生霊となってしまったのだそうだ。
おわり
第六十五話 屋根に
これは有名な話だと思います。
若者数人が、車で肝試しに出かけた。
しかし、結局幽霊をみることはなく、肩透かしを喰らった気持ちで帰路についた。
「帰って酒でも飲むか」
そんな軽い気持ちで山道を下り、長いトンネルにさし掛かる。
すると突然、後ろから、
プップー!
クラクションを鳴らされた。
振り返ると、後続車はずっと離れている。
走行妨害をした覚えはない。
にもかかわらず、
プー!
ププププー!
異常なまでにしつこい。
「うるせぇな、何なんだよ!」
若者たちはトンネルを抜けると、路肩に車を停めた。
後続車もその後ろに停まり、乗っていた老人が窓から顔を出した。
「さっきから、何なんですか!」
若者が怒鳴ると、老人は青ざめて言った。
「あなたたちの車の屋根に、男がしがみついていたんだ。
危ないと思って鳴らしたんだが、トンネルを抜けたら消えてしまった……」
おわり
第六十七話 寄ってくる
友達に聞いた話ですが、元ネタはネットらしいです。
女子中学生のAとBは、放課後学校に隠れて残り、夜の教室で怖い話をする計画を立てた。
計画は上手くいき、2人は日が暮れた教室にろうそくを立て、怪談を始めた。
お互いの話に震えながら話を進めていると、
不意に、廊下からぞろぞろと大勢の足音が聞こえた。
「なになに!?」
2人は震え上がる。
足音は教室の前で止まり、ガラッと扉が開くと……
そこには、バレー部の女子がずらっと立っていた。
「ちょっと、あんたたち何してんの?」
部員たちは目を丸くしている。
2人は胸をなでおろした。
バレー部員は、合宿から帰ったところだという。
怪談話をしていることを告げると、彼女たちも「面白そう!」と言って仲間に加わった。
人数が増え、話も盛り上がった。
しかし、しばらくして。
「そういえば、怖い話をすると霊が寄ってくるって言うよね……」
部員の1人が言い、皆は我に返ったように怖くなった。
「もう帰ろう」
そう言って、皆が教室を出ようとしたときだった。
続く
>> 104
「ねぇ、帰らないの?」
部員の1人が教室に向かって言う。
AとBが教室を振り返ると、そこには見知らぬ女の子が残っていた。
「AとBの友達?」
部員が尋ねる。
しかし、AもBも見たことがない子だ。
「バレー部の子じゃないの?」
Aが言うと、
「違うよ。私たちが来たときには、既にあんたたち3人だったじゃない」
と言うのだ。
ゾッとして、もう一度女の子を見る。
その女の子の足は、地面についていなかった。
首から天井に向かってロープが伸び、ギリリ、ギリリと軋んでいる……。
「ぎゃああああ!」
皆は一目散に駆け出し、それぞれの家に逃げ帰った。
家に着いたAは、帰りが遅かったことを親に咎められ、逆にホッとした。
そして、安心して夕食の準備をしていると、Bから電話が掛かってきた。
Bは取り乱して「テレビ見た!?今すぐ見て!」という。
言われたとおりにテレビをつけると、山間の映像とともに、アナウンサーがニュースの解説をしていた。
「本日、正午。○○中学校のバレー部員を乗せたバスが崖から転落し、乗っていた12人全員が死亡しました――」
おわり
第六十八話 迷子
本で読んだ話だったと思います。
中古ながら、念願のマイホームを手に入れた若い夫婦。
しかし一週間もすると、夫が神妙な顔で、
「夜な夜な男の子が布団を横切るんだ。お前は気付いてないみたいだけど」
と言い出した。
仕事で疲れてるのよ、と妻は取り合わなかったが、夫は「仕事の疲れが家でも取れない」と不機嫌だ。
そんなある日。
夫は出張で、妻は1人で布団に入った。
すると、
ス、スー……
寝室のふすまが開く音がする。
あれっ、と思っていると、トットットッと畳を歩く子どもの足音。
彼女は恐ろしさのあまり固まった。
見たことのない男の子が、彼女の身体を踏み越えて、反対側へ歩いていく。
そして、部屋の隅でスッと消えた。
さすがに恐怖を覚えた夫婦は、知り合いの除霊師に相談した。
除霊師は「このロウソクを、男の子が消えた辺りに灯しなさい」と言い、太いロウソクを渡した。
部屋の隅にロウソクを灯すと、炎は30センチ近くも長く伸びて燃えた。
そして火が消えると、
ロウソクは、正座した母親が子どもを抱きかかえているような形になっていたそうだ。
おわり
第六十九話 桜の守り人
女友達の体験談です。
彼女が小学生のとき、地元の人たちに取材をして地域新聞を作ろうというという授業があった。
彼女の班は、学区内にある古い町屋を取材することになった。
うなぎの寝床だとか、おくどさん(かまど)などを家主のおじさんに説明してもらい、中庭に出ると、
そこには立派な桜の木があった。
季節も春で、桜は美しく咲き誇っている。
「うわぁ」
思わず見とれていると、桜の根元で庭の手入れをしていたお姉さんが、せっせと土をいじりながら、
「ウチのお父ちゃんが植えたんよ」
と説明してくれた。
「すごく綺麗ですね」
と、友達が言うと……
「大正時代に植えられたんやで」
背後からおじさんが言った。
ええ?
大正時代?
小学校高学年なので、時代のことは授業で習っている。
若いお姉さんのお父さんが、大正生まれというのはおかしい……。
そう思って桜を見たが、既に彼女の姿はなかったそうだ。
「当時の娘さんが大切に育ててたんやろね。たぶん、今も」
と、友達は振り返る。
おわり
第七十話 お稲荷さん?
母に聞いた話です。
俺が5歳くらいのとき、夜中に突然泣き出したことがあった。
母は俺をなだめながら「どうしたん?何が悲しいん?」と尋ねた。
すると俺は、
「お稲荷さんに会いたい、狐さんとこ行く」
と泣きながら言った(らしい)。
「なんで?」
と尋ねても、「白い狐さん」と言ってメソメソ泣くばかり。
このとき、母は俺が赤ん坊のときのことを思い出した。
とある稲荷神社にお参りするのを、俺は頑なに嫌がって、ギャーギャー泣き喚いたことがあった。
その翌日、些細なことで俺がダダをこねたときに「そんなこと言うんやったら、お稲荷さんに連れて行ってもらうよ!」と叱ったところ、
突然、部屋の電気がバチバチ!と鳴って消えたそうだ。
もちろん俺もおお泣きだし、逆に母がびっくりしたらしい。
なんとなく気になった母は、俺をお稲荷さんには極力連れていかないようにしていたそうだ。
もちろん、この話を俺はまったく覚えていない。
その後稲荷神社に行ったことはあったが、別段何ともなかった。
……オチのない話ですみません。
おわり
第七十一話 話がある
有名な話を載せます。
幼い一人息子のいる、若い夫婦がいた。
あるとき、些細なことから夫婦喧嘩になり、頭に血が上った父親が母親を殺してしまった。
父は息子の将来を案じて、母の死体を床下に埋めて隠してしまった。
「お母さんは遠くに仕事に行った」と嘘をついて。
しかし、息子がある程度大きくなる頃には、父は罪の意識に苛まれ、精神的に病んでいた。
そこで、ついに息子に真実を打ち明ける決心をした。
「お前に話しがある」
そう言って息子を呼ぶと、息子は神妙な顔をして、
「ちょうど良かった。僕も話があるんだ」
と言う。
そこで父親は「なら、お前から話せ」と促した。
すると息子は頷き、父親の背後を見つめた。
「お父さんは、どうしていつもお母さんをおんぶしているの?」
おわり
第七十二話 ちょっと最近
いつもイヤホンで音楽を聴きながら『怖い話』を書き込むんやけど、最近女の人か子どものような声が聞こえるようになりました。
気のせいだとは思いますが(ていうか気のせいなんですが)、なにぶんビビリなんで……怖いよう。
今日の更新、おわり。
第七十三話 帰れない
サークルの先輩に聞いた話です。
ある夜、Aはサークルの男友達と夜の神社へ肝試しに行った。
その帰り。
車で家まで送ってもらった彼女は、その足で近くのコンビニに立ち寄った。
買い物をして店を出ようとガラス戸に手を伸ばすと、
ガラスに映った自分の後ろに、背の高い男が立っている。
彼女はドアを押し開いて外に出ると、その男性のためにドアを持って脇に避けた。
ところが、男性どころか誰も出てこない。
見間違いかな、ということにして、彼女は帰路についた。
しかし、妙なことが起こった。
一向に、家に辿り着かないのだ。
いつのまにか、周りは見たことのない住宅街になっていた。
どの家にも明りがなく、真っ暗に寝静まっている。
たった5分の距離なのに、すっかり道に迷っていたのである。
彼女はさすがに怖くなり、携帯で同じマンションに住んでいる友達に電話をした。
「もしもし?迷子になったかもしれん」
ところが、携帯は電波が悪いのかザラザラと雑音が聞こえるばかり。
つづく
>> 112
「もしもし?聞こえてる!?」
耳に携帯を押し当てる。
すると、雑音の一つ一つが、はっきり聞き取れた。
それは、掠れるような男の囁き声の集合体だった……
旨い旨い旨い旨い旨い
Aには、そう聞こえたそうだ。
Aは悲鳴を上げて電話を切り、走り出した。
だが、どれだけ走っても、明りの消えた住宅街から抜けられない。
そのとき、携帯が鳴った。
友達からだ。
Aは恐怖を覚えたが、恐る恐る電話に出た。
「もしもし?さっきの変な電話、何?」
迷惑そうな友達の声に、胸をなでおろす。
友達に事情を話しながら歩いていると、見覚えのある店を見つけた。
そこまで友達に迎えに来てもらい、どうにか家に帰れたそうだ。
ちなみに、友達に掛けた電話の内容を聞くと、
「何言ってるんか全然わからんし、男の声もしたから、彼氏と一緒にふざけてるのかと思った」
とのことである。
おわり
第七十四話 トイレの前に
これは聞いた話……だと思います。
うろ覚えですが。
友達と酒を飲んだ帰り道、Aは友達と別れてすぐに、下痢に見舞われた。
家まで我慢しようと思ったが、とても持たないだろうと思い、コンビニか公園を探して足を速めた。
しかし、閑静な住宅街にはコンビニどころか店も無く、Aは脂汗を浮かべながら、これは路上でもやむを得ないか……という境地に陥った。
だが、やがて目の前に小さな公園が現れた。
Aは間一髪公衆トイレに駆け込み、事なきを得たのだった。
便器にしゃがみ、ほっと一息ついたときだった。
ジャリッ ジャリッ
トイレの外の砂利を踏む足音が聞こえる。
足音はトイレに入ってきて、ドアの前で止まる気配があった。
誰かが用を足しにきたのかと思ったが、一向にドアを叩いてこない。
しゃがんだままドアの下を覗くと、黒い長靴の先が並んでいた。
Aは不意に怖くなった。
こんな時間にトイレの前にじっと立っているなんて、普通の人間ではない。
変質者か、あるいは……。
つづく
>> 114
Aはそっとズボンを上げると、思い切りドアに体当たりした。
ドアごと人物を突き飛ばして逃げる――つもりだったのだ。
しかし、ドアの前に人はおらず、Aは危うく転びそうになった。
そこには長靴が二本倒れているだけで、濁った水がどろりと流れ出していた。
Aは気持ちが悪くなり、すぐにその場を離れた。
だが翌日になると、あれは誰かのいたずらだったのではないかと思うようになった。
水を入れた長靴をドアの前に置いて、自分は足音を忍ばせて逃げたのではないかと。
そこで、昨日のトイレを探しに出かけた。
しかし、どれほど歩き回っても、公衆トイレは愚か公園すら見つけられなかったという。
ただ、関係があるかどうかは定かではないが、もともとこの町には埋め立てられた池があり、その上に公園が作られたことがあったそうだ。
現在は公園も潰され、アパートが建っているという。
おわり
第七十五話 もう一人の俺
これは、前にバイトしていたスナックでの話。
Aさんという男性がアルバイトとして雇われることになった。
見た目は40歳くらいに見えるのだが、驚いたことに27歳だった。
そんな彼には、少し奇妙なところがあった。
彼はすぐに俺達と打ち解けたが、雑談のさなか、「おい、聞いたかぁ?」と自分の隣に向かって言うのだ。
隣には、誰もいない。
「誰に言ってるんですか?」
あるとき、俺はAさんに尋ねてみた。
すると彼は、
「ここに、もう一人俺がおるんや」
と、平然と言ってのけた。
変な人だ……と、そのときはそう思った。
つづく
>> 116
ところが、数日後。
営業前の準備中に、棚に割れたグラスが入っているのをママが発見した。
「誰か、昨日の営業中に割ったんを、そのまま棚に戻したやろ!」
すると、Aさんが真っ青になって名乗り出た。
「すみません、俺が前の出勤のときに割りました」
Aさんは、三日前の出勤の日に、グラスを割ってしまったという。
さらに、
「実は、他にもあるんです」
Aさんは、あの皿も割りました、ソファーのクッションを汚しましたと、次々に告白するのである。
そして、どれも本当だった。
それから数日後、Aさんは自らバイトを辞めた。
だが、Aさんが去った後に、先輩たちがこんなことを言い出した。
「Aさんの告白聞いて気になってたんやけど、ホンマにあのグラス、三日間もあそこにあった?」
「俺も思ってた。ママが発見する前日も出勤してたけど、絶対なかった」
だとすると、誰がグラスを割ったのか。
なぜAさんは自分だと言い張ったのか。
俺達は、「もう一人のAがやったんちゃうか?」と思わずにはいられなかった。
今となっては確かめようもないのだが……。
おわり
第七十六話 消えない手形
テレビで放送されたという、怖い話です。
友達からの又聞きなので少し違っているかもしれませんが、ご容赦ください。
とある若手お笑い芸人が、友達数名と肝試しに行った。
場所は山中にあるトンネルで、有名な心霊スポットである。
目的地に向かって真っ暗な山道を走っていると、一人が「なんか気持ち悪い」と言い出した。
さらには、エンジンがガタン、ガタンと妙な音を立てはじめた。
車内に緊張が走る。
だが、運転していた友達は霊感が無く、「エンジン調子悪いなー」の一言で片付けてしまったのだった。
しかし、いよいよトンネルの前まで来たとき、
ドンッ!
と、車に何かがぶつかったような衝撃が走った。
慌てて車を止め、何事かと思って前を見ると……
フロントガラスのど真ん中に、手形が一つ。
続く
>> 118
「やっぱり引き返そう!」
怖くなったメンバーはそう言ったが、
「でも、ここまで来たら引き返すよりもトンネル突っ切ったほうが早い」
ドライバーはそう言って、猛スピードでトンネルに突入した。
その途端。
うおおおおお
わあああああ
トンネルを走行する際に出る反響音が、無数のうめき声になった。
さらに、まるで大勢が車を叩くような音がする。
バンバンバンバン!
さすがのドライバーも真っ青になり、とにかく夢中でトンネルを走りぬけた。
無言のまま山道をくだり、やがてガソリンスタンドに到着した。
店の明りに照らされた窓には、無数の手形がびっしり。
改めて心霊スポットの恐ろしさを実感した。
そのままにしておくのも気味が悪いので、スタッフに
「すみませんけど、汚れてしまったので拭いてもらえますか」
と頼み、窓を拭いてもらうことに。
だが、窓を拭きはじめたスタッフは首をかしげた。
「あれ?」
「え、どうしたんですか?」
「この手形、内側からついてますね」
おわり
第七十七章 虫の報せ?
昨日、高校からの友達5人と飲みに行った。
大学に入ってからもちょくちょく集まるメンバーで、それほど懐かしい再会でもない。
その中で、今日地方から帰ってきたAが「そういえば深夜、霊感あったっけ」と話をふってきた。
「どうやろ、最近はあんまりやで」
と言いつつ、怖い話を期待する俺。
「え、なになに?怖い話?」
メンバーもみんな怪談好きだ。
Aはうーんと首をかしげた。
「いや、そんな怖くもないけどな。
先週な、妹から電話かかってきたんや。
仏壇の花がいきなり倒れたんやて」
「へぇ」
「まぁそれだけやったら、風とか振動とか、考えられるやん?
けど次の日に、今度は“チーン”て鐘が鳴ったって言うんや」
「まじで」
「うわー寒っ。虫の報せってやつちゃうん」
「さぁ、わからん。けど、それからも度々聞くらしい」
Aは、ヤバいやろ、というように俺達を見回した。
「まさか、それでこっち帰ってきたんか?」
と尋ねると、
「まぁ、それもある。気になるやん?」
とAは言った。
果たしてAには聞こえるのか。
現在、連絡待ちである。
おわり
第七十八話 旅館の人形
Aの話を聞き、すっかり怪談モードになったのは言うまでもない。
俺が今まで聞いた怖い話は、たいていここに集っている連中から流れてくる。
その中から、森久美子さんがテレビで言っていたという怖い話。
若い頃、森さんは友達と山登りに行って旅館に泊まった。
けれども、あてがわれた部屋がどこか妙な雰囲気で、
床の間には、一メートルほどのガラスケースがあり、花を抱えた日本人形が飾られていた。
なんとなく気味が悪いので、彼女達はそれを隅にどけてしまった。
その夜。
森さんが寝つけずにいると、バサッ、バサッと布が擦れるような音が聞こえてきた。
何の音だろう、誰かの寝返りかな。
などと考えているうちに、眠ってしまったそうだ。
しかし翌日、霊感の強い女の子が「昨日の夜、見た……?」と震えながら言う。
「何かあった?」
と尋ねたが、彼女はこの部屋にはいたくないと言って部屋を出てしまった。
つづく
>> 121
それから食事をしに出かけ、その席で改めて、
「何があったの?」
とその子に尋ねた。
すると彼女は、
「昨日の夜、バサッバサッて音聞こえなかった?」
と言う。
「ああ、そういえば聞いたよ」
なんと、森さん以外の友達も全員聞いていた。
「あれ、何の音だったの?」
すると、霊感の強い子が話はじめた。
「日本人形がね、
ゆっくり手を持ち上げて、
バサッ……
バサッ……
って、手を振り下ろしてたの。
それから、目だけをグリグリ動かして、私を見つけて「ウゥ~」って唸ったのよ」
「えー!嘘だぁ!」
あまりに怖いので、みんな「寝ぼけてたんだよ」と取り合わなかったが、
部屋に戻ってみると。
人形のポーズが変わっている。
花を抱えていたはずの人形の手が、ダラリと下におりていたのだそうだ。
おわり
第七十九話 虫の報せ?~Aからの報告
報告があったので載せておきます。
『仏壇の鐘は鳴らんかったけど、なんかカタカタ音がしてたらしい。
けど俺にはわからんかった。
ってか寝たし』
寝たんかい。
と思いつつも、そんなもんだな、と思う。
何か意味があるのかが気になるところだけど、今のところ身内の不幸といった連絡はないそうだ。
おわり
第七十九話 夢
一週間ほど前に見た夢の話です。
夢の中で、「これは夢だ」と思うことがある。
その夢もまさにそれだった。
俺は祖母の家にいて、居間のコタツに座っていた。
目の前には、五年前に死んだ祖母がいる。
夢で会いに来たんだと、はっきりわかった。
だが、俺が何か言おうとする前に、祖母が言った。
「あんたは霊感があるのに、なんで気付かんの」
「えっ?」
「あんたは霊感があるのに、なんで無いと思い込む」
そんな調子で、祖母は質問を繰り返した。
目を見開いて、すんごい怖い顔をしている。
「でも俺……」
と言いかけた途端、祖母が俺の腕をガシッと掴んだ。
その瞬間、電気ショックを受けているような、身体の中から何かがせり上がってくるような、気持ちの悪い感覚に襲われ、
読んで字のごとく飛び起きた。
たったそれだけの夢です。
なんだか嘘くさいと言いますか、自分でもバカバカしい夢だなと思い、そのときはココに書き込むのはやめておこうと思っていました。
ところがそれから数日後、兄が事故に遭って入院した日の夜に、久々の金縛りに遭いました。
第八十一話 金縛り
気になっていることがあった。
それは飼い猫が、ベッドの横をじっと見上げること。
猫が何も無いところを見つめるのはよくあることだが、最近はそこばかり見つめている。
気のせい気のせい、と、自分に言い聞かせていたのだが。
兄が入院した日の夜。
眠っていると、不意に「金縛りだ!」と気付き、目が覚めた。
そして、本当に金縛りに遭っていた。
見たくないが、見てしまう。
ベッドの横に……
人が居た。
白装束の女の人だ。
髪は肩くらいで、頭に白い布を巻いている。
声を上げようにも喉が詰まって出ないし、見たくないのに目は釘付けになる。
女の人は雛人形のように床に座り、正面を見つめていた。
その顔がゆっくり動いて、俺のほうを向く。
表情はぼやけて見えないが、ひどく顔色が悪いのはよくわかった。
俺は声を絞り出しながら、心の中で「無理!俺には無理!」と叫び続けた。
やがて女の人はスーッと消え、金縛りもとけた。
思えば、丁度猫が見上げていた位置が、その女性の顔の位置だった。
夢と関係があるのだろうか。
あるいは全てが思い込みなのか……。
第八十二話 6話目の怪談
中学の修学旅行のときに耳にした話ですから、かれこれ何年前でしょうか。
旅行先は長崎だった。
修学旅行というと豪奢なホテルに泊まれるでもなく、生徒達は安っぽい、どこか陰気な旅館に詰め込まれた。
そんな中、ある女子の6人グループがあてがわれた部屋は、とりわけ奇妙な部屋だった。
形は台形、むしろ三角に近いんじゃないかというほどだ。
6人分の布団を敷いても余裕があるくらいだから、広さはあるのだが、どうも落ち着かない。
しかし、なにせ中学生の修学旅行である。
広い部屋が当たってラッキーだと、彼女達ははしゃいでいたそうだ。
消灯時間が過ぎても、彼女達は枕元に懐中電灯を一つ置き、顔を寄せて暴露話をしていた。
暗がりの中で、お互いの顔も良く見えない。
そんな状態だったからか、恋話はやがて怖い話しへと移ろっていった。
つづく
>> 127
そして、6人全員が話し終わったとき――。
バキッ!
天井の隅の方で、大きく柱が鳴った。
パキッ、ベキベキッ!
天井板をはがすような、大きな音だ。
彼女達は震えあがり、慌てて布団に潜った。
やがて、何事も無かったかのような朝が訪れた。
しかし、目を覚ましてみると、
一人足りない。
布団はシワ一つなく、まるで一度も使われていないように綺麗だ。
着替えや洗面を済ませても、彼女は戻ってこなかった。
心配になった彼女達は、先生の部屋へ向かった。
すると、6人目の女の子が、先生の部屋で布団を敷いて眠っているではないか。
「もう、心配したやんか!」
メンバーの一人が咎めると、彼女は具合が悪そうに答えた。
「昨日の夜、気分が悪いから先生のところ行くって言ったやん。布団、5人分でいいからねって」
5人は真っ青になった。
つまり、消灯時間の段階で、彼女は部屋にいなかったのである。
皆自分の布団しか敷かないのに、一体誰が6人目の布団を敷いたんだろう。
6話目の怖い話は、一体誰が……。
しかし誰一人として、6話目の怪談の内容を思い出せなかったそうだ。
おわり
第八十三話 指のない男
稲川氏の話です。
あるタクシー運転手が、長距離の客を降ろした帰りのこと。
辺りはだだっ広い田舎で、時間も遅く真っ暗だ。
そのとき、運転手は抗い難い睡魔に襲われた。
やむなく路肩に車を寄せ、彼は仮眠をとることにした。
しばらくして、彼はコツコツという音に目を覚ました。
見ると、男が車中を覗き込んでいる。
そして、「携帯電話をかけてもらえませんか?」という。
突然の申し出に「はぁ?」と尋ね返すと、男は手を差し伸べて言った。
「私、指が無いものですから」
見ると、黒ずんだ男の手には指が無い。
運転手は気持ち悪いな、と思いつつも、承諾して電話を探った。
そしてふと気になった。
辺りは一面田んぼで、しかも夜中である。
「ところであなた、どこから来られました?」
すると、男は指の無い手で遠くを指した。
草原の向こうに線路があり、さらにその脇に、何かが点々と並んでいる。
目を凝らすと、花束だ。
運転手はぞっとした。
「そういえば、ここはあの大きな電車事故のあった……」
最後まで言わないうちに、彼は口を噤む。
そこに、男の姿はなかった。
おわり
第八十四話 愛車
本で読んだ話です。
大学生のA君が中古車を買った。
車体を低く改造した、派手な車だ。
彼はその車を気に入って、仲間を誘っては車に乗せドライブに出かけていた。
しかし暫く経って、彼の友達の間で、妙な噂が立ち始めた。
「アイツの車、何かおかしくないか?」
誰かがそう言い出したのを皮切りに、なんとなく気味が悪いとか、乗っていると頭痛がする、といった意見が出てきた。
だが、車を気に入っているA君には言えない。
さらにあるとき、友人の一人がこう切り出した。
「何度か、バックミラーにヤンキー風の若い男が映るのを見た」
やがて、A君は小さな事故を起すようになった。
ガードレールにぶつけるといった些細な事故なのだが、頻度が高い。
友達はみな心配になったが、それでも、A君には言い出せないでいた。
それから数日後のことだ。
友人達が連れ立って歩いていると、大学の駐車場で、A君が車を洗っている後姿が見えた。
声をかけようかと思ったが、ドライブに誘われたらと思うと気が引ける。
彼らは気付かなかったことにして、その場を通り過ぎた。
つづく
>> 130
すると。
何と、前からA君が歩いてくるではないか。
「あれ?お前、駐車場で車洗ってなかった?」
「いや、今戻ったばっかりだけど?」
駐車場に戻ってみると、車に洗車の跡はなかった。
皆は顔を見合わせる。
考えてみれば、車を洗っている男の顔を見たわけではない。
あれは、A君ではなかったのだ。
ついに、友人達はA君に事情を打ち明けた。
それを聞いたA君が中古車ディーラーに問い合わせると、「車は売値で買い取るから、このことは内密にして欲しい」という返事だった。
そういうわけで、A君は車を手放した。
それから数ヶ月経ったときだった。
A君は新しい車を買い、皆でドライブをしていると、偶然にも、以前A君が手放した車を見かけた。
「あっ俺の車!」
そう言って目で追っていると、車の様子がおかしい。
反対車線にはみ出して、道路の真ん中を走っているのだ。
「危ない!」
次の瞬間、車は中央分離帯に突っ込んで大破してしまった。
後に聞いた話では、車に乗っていたのはA君と同い年くらいの若い男性で、即死だったそうだ。
「あの車に乗ってなくてよかった」と、A君は呟いた。
おわり
第八十五話 迷子
くだらない体験なのですが、大学三回生のとき、本気で迷子になったことがあります。
それも生まれ育った町、京都で(笑)
春休みのことだ。
自転車で西京区にある知人の店に出かけた。
俺の家は北区なので片道一時間は掛かるのだが、天気が良かったので散歩気分だった。
昼過ぎに到着し、用事を済ませて帰路につくころには夕方になっていた。
帰り道には桂川という広い河川があり、実に眺めがいい。
俺は夕焼けを眺めつつ、川沿いに北へ進むことにした。
その道は初めてだったが、ここは京都。
方角さえ解っていればどうにでもなる、そう思っていた。
これが、大きな間違いである。
日が完全に沈むと、途端に辺りは真っ暗になった。
狭い道路にはポツポツと街灯が灯るばかりで、家に明りはなく、コンビニもない。
いきなり深夜になったかと思うくらい、寂しい道だった。
景色も綺麗でなくなったので、俺は川を離れて北東の方角に進んだ。
ところが、行けども行けども知っている道に出ない。
相変わらず、暗い住宅街が続くばかりだ。
つづく
>> 132
迷ったかな、と思いつつ走り続けると、不意に視界が開け、巨大な鳥居が現れた。
『松尾大社』という有名な神社だ。
ということは、ここはまだ西京区である。
やっぱ迷ってたんや。
でも、ここからは道がわかる。
ホッとして時計を見て、驚いた。
18時に店を出たはずなのに、夜中の0時を回っている。
俺、6時間も彷徨ってたん!?
疲れと呆れで、とにかく早く帰ろうと思った。
しかし、また住宅街に迷い込んでしまった。
おかしいな、知ってる道のはずやのに。
そのままこぎ進むと、なんと再び巨大な鳥居……松尾大社。
なんで?
時計をみれば、なんと2時。
時間が飛ぶように過ぎていた。
あかん、ホンマに帰れへん。
その場で彼女にメールし、起きているのを確認して電話をした。
「迷子やねん、助けて」
「はぁ?」
電話しながら走ったら、あっさり家に帰れましたとさ。
おわり
第八十六話 ベビーカーがついてくる
友達の体験談です。
その日、大学生のAはサークル活動が長引いて、夜遅くに帰宅した。
大学から電車で3駅、あとは徒歩で15分の道のりだ。
駅を出て線路沿いに歩いていると、カラカラと車輪の音が後ろから聞こえてきた。
ベビーカーの音だ、と、すぐに思ったそうだ。
振り返ると、その姿はまだ遠く、小さな影にしか見えない。
なんとなく不気味さを覚えたAは、歩調を速めた。
カラカラカラカラ……
ベビーカーはずっとついてくる。
Aより速さがあるのか、だんだん近くなる。
何か、やばい。
Aは思わず走り出し、そのまま家に飛び込んだ。
(気持ち悪かった。何やったんやろう)
そう思いつつ、安堵した。
その夜。
Aは夢を見た。
ぐちゃぐちゃに大破したベビーカーが、グルグルと彼の周りをまわっていた――。
後日駅員に尋ねてみたところ、過去にベビーカーを巻き込む人身事故があったのだそうだ。
おわり
第八十七話 鏡越しについてくる
ついてくるシリーズ(?)
先輩の話です。
用事で出かけた帰り、先輩は地下鉄に乗るために、駅の中を進んでいた。
駅の壁には、ところどころ大きな鏡が設置されている。
混雑時に正面衝突が起きないよう、角の向こうや階段の折り返し先が見えるようになっているのだ。
人気は無かったものの、先輩は髪などが気になって、無意識に鏡を見た。
すると鏡越しに、作業服の男がものすごい勢いで近づいてくるのが見えた。
ぶつかる!
咄嗟に立ち止まる。
しかし、角から男は出てこなかった。
「あれ?」
不審に思いつつ、さらに進むと、再び鏡に男が。
でもやっぱり、角の向こうに人はいなかった。
怖くなった先輩は鏡を見ないように駅を進み、電車に乗った。
自宅近くの駅で降り、足早に地上に向かう。
しかし、コの字に折れ曲がった階段の踊り場で、うっかり鏡を見てしまった。
階段の向こうには、
……誰もいない。
「よかった~」
安心して、鏡の前を過ぎようとした、その瞬間。
横目で見た鏡には、
自分の背後にぴったりついて歩く、男の姿が映っていたそうだ。
おわり
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