注目の話題
なにも言わないのが大人?
息子の嫁が精神障害者
タンパク質を食べる頻度を週7から2にしたらワキガが治りました

小説・王族な猫2👑🐱

レス71 HIT数 10613 あ+ あ-

豹牙鬼( ♂ CSn8h )
13/07/24 13:47(更新日時)

猫妖精ケット・シーと、妖精王クー・フーリンの息子、ルー・フーリンの戦いと冒険を描いた王道ファンタジー『王族な猫』をこれからもよろしくお願いします🙇


ではでは😸ニヤリ

No.1162334 09/09/15 21:51(スレ作成日時)

投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.1 09/09/16 00:40
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

老人の姿のアモンは指をパチリと鳴らし、趣味の悪い私室に弟・アンドラスを招き入れた。
「お呼びですか、兄上?」
悪魔アンドラスは、フクロウの頭部をした裸体の少年の姿で現れた。背中には天使であった頃の名残りの翼が見える。そして、彼は漆黒の狼にまたがっていた。腰には細身の剣――レイピアを差しており、いつでも抜刀できる状態にしているのは明らかだった。
《そこの悪魔二人がワシをバールゼフォンの配下へと引き抜きに来おったのじゃが、アンドラス――そなたは、どう思う?》

No.2 09/09/19 09:20
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 1 「兄上のお好きなように、なさって下さい。僕はどこまでもついて行きます」
《そうか。実はワシは魔界の権力争いなど、どうでも良いと思っている。ワシの関心事は趣味である宝石を集めることでしかない》
悪魔にも個性はある。すべての悪魔が争いを望んでいるわけではない。中にはアモンのように趣味に生きる変わり者も存在するのだ。
「では、両者に不干渉と言うことで――」
〔ちょっと待った! アモン殿、真ですか!? 魔界での地位より、こんなガラクタ収集が良いなどと……〕
アブラクサスは知らなかった。今の一言がアモンの逆鱗に触れたことを――

No.3 09/09/19 09:43
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 2 《ガラクタじゃと――》
アモンの顔が徐々に変形してゆく。アンドラスと同じくフクロウの頭部に、狼の牙と眼をした姿となった。
《崇高なる宝石の美を理解せぬデリカシーのない悪魔め! 構わぬアンドラス、殺ってしまえ!》
アブラクサスは逃げる間もなく、一刀のもとに首を瞬断された!
血飛沫が飛び、アンドラスは宙に舞ったアブラクサスの首をひっつかみ小脇に抱えた。
「そうそう、兄上は宝石を集めているけど、僕は生首を集めているんだよ、アブラクサス」
床に倒れたアブラクサスの首なし死体を、アンドラスがまたがっている黒狼がかぶりつく。
「おやおや、ジル――こんな下級の悪魔を食べて、お腹こわしても知らないからね」

No.4 09/09/20 05:14
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 3 アンドラスはアガリアレプトを見、
「ご苦労だった、アガリアレプト。また一つコレクションが増えたよ」
アガリアレプトは膝まずき、
『いえいえ、アブラクサスのヤツ、情報操作する前に、すでにアモン様へと目をつけていたようで』
「それは手間が省けたね」
「――ねえ、アガリアレプト……バールゼフォンの首にも興味があるんだけど」
アンドラスは極上の笑みを浮かべた。
全身赤一色の悪魔は、青ざめた顔をした。
『そ、その内に、また潜入してバールゼフォンの内情を探ってきます』
「ありがとう。また、頼むね」

No.5 09/09/20 05:27
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 4 《バールゼフォンの首か――それも面白いかも知れぬ。ワシも協力してやろう。その代わり、アンドラス――そなたもワシの求めるものを得るのに協力してほしいのじゃが》
と、アモン。
「僕たちは二人きりの兄弟じゃないですか。兄上の喜びは、僕の喜びでもあります。相身互いと言うではありませんか。水くさいです、兄上――このアンドラスめ、いかなる協力も惜しみません。して、兄上の求めるものとは!?」
アンドラスが訊いた。
《ワシの求めるは妖精界の生ける至宝、リア・ファルじゃ!》

No.6 09/09/24 02:18
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

グリフォンのグフが、武器となったファリサールことリサと出逢っている頃――グリフォンの谷近くのアベル草原に降り立つ一団があった。


燃え立つ魔法陣から現れたのは、金髪緑眼の悪魔・ベルゼビュートと、その側近であるレオナールとオセであった。
三本角の山羊の頭部をした人の姿のレオナールは、自慢の長い爪にネイルアートを施しながら、ベルゼビュートに話しかけた。
【ねえ、ビュート様ぁ――こんなネイルサロンも無いような妖精界の田舎に、何の御用があるんですかぁ?】
ベルゼビュートはニヤッと笑い、
〈俺は、魔獣グリフォンの能力を手に入れるために来た!〉

No.7 09/09/24 14:31
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 6 「さすがはベルゼビュート様――目のつけ所が違う」
と、豹頭人身の悪魔・オセが言った。
【さっぱり、わかんな~い!?】
と、爪を噛みながらレオナール。
「知っての通り、ビュート様は己れの食した魔獣や悪魔の能力をコピーすることが出来る。つまり、だ――猛禽(もうきん)の飛翔能力と肉食獣の蛮性を宿した魔獣にして聖獣であるグリフォンの能力を入手するためにやって来られた、と言うことだ」
〈さすがだな、オセ――いつもながら、お前の深い洞察力には感服する〉
「き、恐縮です」
オセは幾分、照れた。
〈さて、この俺に魔獣の能力を提供してくれるヤツを探さねばな――〉

  • << 10 その頃、グフはインテリジェンス・アックスをクチバシでツンツンしていた。 〔――何をやってけつかるのですか、グフ様!〕 斧リサは怒りをこらえながら訊いた。 〈いやぁ、口もねぇのに、どーやってしゃべってるんかなって思ってさ〉 と、その会話に老グリフォンが割り込んできた。 《グフよ、その武器は生きているのじゃ。口はなくとも、我らの精神に語りかけることが出来る――おまけに業物でもある》 〈ワザモノ?〉 《即ち、優れた武器と言うことよ》

No.8 09/10/04 07:01
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

リンドブルムとの戦いの最中、突如として現れた二人の悪魔――彼らの意図をカイイリエルは知る由もなかった。
赤毛の裁天使を見つめるサブナックは、かつて共に武を競い合っていた、あの頃へと記憶を呼び覚まされるのであった。

No.9 09/10/04 07:23
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 8 天界・アリーナの庭――


そこでは、堕天した悪魔に裁きの鉄槌を下す裁天使の候補生らが日々、修練に励んでいた。
闘技場と中庭とが、上手く融合したアリーナでは、今まさにカイイリエルとサブナックことサブナキエルが剣を交えようとする所だった。
得物は互いに精霊の加護を受けたエンリュミオン・ソードである。
イメージを具現化し、大気中のエネルギーから武器を創造することをピグマリオン・マジックと呼ぶ。大天使クラスの能力を持つ者は、例外なく、その魔法を行使することが可能なのだ。
言わば、それは即席の錬金術なのである。
裁天使長ラドフィエルの管理の下、候補生二人による試合の幕が切って落とされた。

  • << 20 裁天使長ラドフィエルは、この一戦でカイイリエルかサブナキエルを悪魔討伐のためのチームに配属するか否かを決めようとしていた。 天界の最高司令官であるメタトロン直々の要請である。 急増する、人間界に侵入せんとする悪魔や妖魔を狩る、ディアボロス・ハンター(悪魔狩人)の選出は、常に慎重を期さなければならぬ急務であった。

No.10 09/10/17 06:18
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 7 「さすがはベルゼビュート様――目のつけ所が違う」 と、豹頭人身の悪魔・オセが言った。 【さっぱり、わかんな~い!?】 と、爪を噛みながらレオ… その頃、グフはインテリジェンス・アックスをクチバシでツンツンしていた。
〔――何をやってけつかるのですか、グフ様!〕
斧リサは怒りをこらえながら訊いた。
〈いやぁ、口もねぇのに、どーやってしゃべってるんかなって思ってさ〉
と、その会話に老グリフォンが割り込んできた。
《グフよ、その武器は生きているのじゃ。口はなくとも、我らの精神に語りかけることが出来る――おまけに業物でもある》
〈ワザモノ?〉
《即ち、優れた武器と言うことよ》

No.11 09/10/17 06:35
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 10 〈全然、そうは見えねぇけんども……〉
グフは疑いの目を、壁に掛かった一振りの斧に向けた。
〔ムカっ! この斧リサの切れ味をお疑いなら、試してごらんなさいな。たとえ鉄だろうが、何だろうが真っ二つにしてみせますとも!〕
と、鼻息荒くリサ。
〈んにゃ、どうせ使わねーし、オカラの持ち腐れだ〉
〔それを言うなら、宝だろうが! このアホ!〕
こうして、ボケとツッコミは運命的な出逢いを果たしたのだった。

  • << 26 ガルフォンはグフをグリフォン族の指導者に据えようと考えていた。 あるいは、次代の精霊王エンリュミオンとして……どちらを選択しようとも、ガルフォンはその選択がグフの幸せにつながるのならば、構わなかった。 たとえ、グフが第三の選択肢を選んでも、ガルフォンは一向に構わなかった。ただ、将来に備え、最低限の帝王学を仕込む必要があった。無理矢理にでも叩き込んだ知識が、必ず孫・グフの力になる日が来るはず、とグリフォン族の長老は固く信じていた。

No.12 09/10/26 23:06
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

魔獣の森・東方――


ベールゼブブと別れたアスタロトは巨大樹ルシドラシルに向けて、何者かが近づいてくる気配を察知していた。
一つではない……かなりの数の悪魔が集結しているようだ。
数分後、魔界樹を包囲するかのように、無数の悪魔が陣を敷いていた。
その中の一匹の戦士の姿をした悪魔が、美貌の公爵へと声を掛ける。
「そちらにおわすのは、魔界の大公・アスタロト殿であるか!?」
《いかにも――》
戦士がニヤリと笑い、
「それでは、お命頂戴つかまつる!」
一斉に悪魔どもがルシドラシルめがけ、押し寄せた。

No.13 09/10/26 23:19
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 12 アスタロトは悪魔たちの意図がわかっていた。
幽閉された手負いのアスタロトを、力を取り戻す前に、抹殺しようと言う腹積もりなのだ。
フッと魔界の大公は鼻で、悪魔どもを笑った。
《なめられたものだな――貴様ら雑兵が束になったとて、魔王衆の誰一人として、殺害は出来ぬと言うのに》
アスタロトは、その陶器のような指を二回パチリと鳴らした。
《貴様らの相手なぞ、私の使い魔で充分――出でよ、我が忠実なる僕、ブロケル!》

No.14 09/10/27 16:42
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 13 アスタロトが指を鳴らした途端、魔界樹の上空に突如として、一人の少女が現れ出でた。
『喚ばれて飛び出た魔法少女・ブロケルちゃん! アスタロト様に危害を加える悪い子は……脳みそカチ割るぞ、ゴラァ!』
それは少女の姿をした悪魔だった。
黒を基調としたゴスロリの衣装と、水色の肌とがアンバランスな印象を与えている。
おまけに彼女は二重人格だった。

No.15 09/10/27 17:04
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 14 通常、異なる空間から手足となる使い魔を召喚するには呪文の詠唱が必要である。
が、アスタロトほどの上級魔神になると、それを必要としない。なぜならば、指にあらかじめ刻んでおいた呪句をこすり合わせることで召喚が可能だからである。
上級の魔神とは、常に魔力を起動しやすいようにカスタマイズしているのだ。それは自身が、いつ、いかなる時も生命の危険にさらされているからであった。
魔界は下剋上の世界である。
下級の悪魔が虎視眈々と、上級――あるいは中級の悪魔の寝首をかくのを付け狙っているのだった。

No.16 09/10/31 08:09
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 15 魔界樹ルシドラシルに次々と、様々な形状の悪魔が取り付いた。
使い魔・ブロケルは颯爽と、フリル付きのピンクのパラソルを取り出し、呪文を唱える。
『雨雲さん、いらっしゃい🎵』
すると、どこからともなく一筋の雨雲が出現した。
そして、ゴスロリ少女は指をパチリと鳴らし、亜空間からプリンを出した。
『下級悪魔の皆さ~ん。ブロケルちゃんの特殊能力マイ・スイーツハートをご存知かしら?』

No.17 09/10/31 08:22
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 16 『マイ・スイーツハートは糖分を魔力に変えますの。それもスイーツが極上であれば、あるほど増幅されますことよ……って、せっかく、このブロケル様がダイエットして、糖分は当分控えてたってぇのに――この虫けらどもが死にさらせ!』
少女の顔が瞬時に、夜叉の形相となった。下級悪魔らは、まるで軍隊アリであるかのように、異常なまでの統率で、巨大樹のアスタロトめがけ登って行く。

No.18 09/10/31 08:35
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 17 『あらぁ、このプリン、カラメルソースが掛かってないわぁ……てな、わけで、オメーラの血を絡めると良い感じかもなぁ! 食らいやがれ、アクア・ジャベリン!』
雨雲が急激に活性化し、雷雨を呼んだ。
雨粒がすべてパラソルに一点に収束され、ブロケルは柄の所にあるトリガーを引いた。

No.19 09/11/03 08:04
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 18 パラソルが一瞬、たわんだ――刹那、無数の超高圧縮された水の槍がルシドラシルに取り付く悪魔めがけ放たれた。
ジャベリンは執拗に悪魔たちを狙い、その心臓を貫くまで追尾した。
巨大樹のあちこちから断末魔の叫びが上がり、ブロケルはその悲鳴や怒号を肴に、プリンを味わった。
『身の程知らずの下級悪魔さんたち、もうお終い……だったら、最初から刃向かうんじゃねぇっての。オメーラの考えは、このプリンより甘っちょろいぜ!』

  • << 24 一部始終を静観していたアスタロトは、ブロケルの仕事に満足げな笑みを浮かべた。 《ご苦労だった、ブロケル。褒美をやろう》 アスタロトはレヴィヤタンのピアスを、ブロケルに放った。 ダジャレ系ゴスロリ少女は嬉々として、海竜のピアスを左耳へとつける。 『ありがとうございます、アスタロト様!……腹は出てないけど、太っ腹ですな』 (これさえなければ、かわいいヤツなのだが……) アスタロトは軽い頭痛を感じた。やはり、寒いシャレは人間界・魔界を問わずに脱力感を感じさせるものらしかった。

No.20 09/11/07 04:26
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 9 天界・アリーナの庭―― そこでは、堕天した悪魔に裁きの鉄槌を下す裁天使の候補生らが日々、修練に励んでいた。 闘技場と中庭とが、上手く融合… 裁天使長ラドフィエルは、この一戦でカイイリエルかサブナキエルを悪魔討伐のためのチームに配属するか否かを決めようとしていた。
天界の最高司令官であるメタトロン直々の要請である。
急増する、人間界に侵入せんとする悪魔や妖魔を狩る、ディアボロス・ハンター(悪魔狩人)の選出は、常に慎重を期さなければならぬ急務であった。

No.21 09/11/07 04:43
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 20 ラドフィエルが、おもむろに右手を上げた――のが、試合開始の合図であった。
だだっ広い闘技場には、三つの人影しかない。
金色の髪とエメラルドの瞳をした少年の姿の天使がサブナキエルだった。肌は浅黒く、陽に灼けたような印象がある――彼はソードを正眼に構え、相手を観察した。
対するカイイリエルは赤毛の天使だった。こちらも少年の姿だ。天使の成長は、精神の成長と連動している。心の成長のない天使は、常に少年の姿のままなのだ。

No.22 09/11/07 05:04
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 21 先にサブナキエルが仕掛けた。
金色の獅子が赤毛の懐に入り込む。
ガキーン!
緊張感を伴った金属音が木霊し、両者は互いの剣を交差させ、鍔競り合いの格好となった。
力で押せぬと判断した二人は、瞬時に後方に飛びすさり、距離を取る。
《やってるようだな》
ラドフィエルの肩に手が置かれ、
「メ、メタトロン様!」
振り向くと、そこには漆黒の鎧をまとう銀髪の軍神が立っていた。

No.23 09/11/07 05:29
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 22 メタトロンは、そのルビーのように光る紅い眼で二人の裁天使候補生を観察した。
腕を組んだ姿は、帝王然として軍神の風格を見る者に感じさせる。背中には限られた天使のみが持つ六枚の翼――と、数多(あまた)の悪魔を地獄へと誘った大剣・バハムート。すべてが天界において輝きを放っていた。
軍神は肩まで切りそろえられた髪をかきあげ、
《さて、どちらが俺の部隊にふさわしいか見極めさせてもらうぞ》

  • << 28 試合は膠着状態が続いていた。 再度、刃と刃が絡み合うと、かすかな異変が起こった。 サブナキエルの刀身には雷が、カイイリエルの刀身には炎がわずかながら巻きついているのである。 《ほう、戦いの最中に無意識の内にギフトを表出させるとはな》 メタトロンは獰猛な虎のような目つきで、赤毛と金髪の天使を見た。 《に、しても雷に炎とは、どちらも物騒な属性だな》 軍神は呵々と笑った。

No.24 09/11/14 08:31
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 19 パラソルが一瞬、たわんだ――刹那、無数の超高圧縮された水の槍がルシドラシルに取り付く悪魔めがけ放たれた。 ジャベリンは執拗に悪魔たちを狙い、… 一部始終を静観していたアスタロトは、ブロケルの仕事に満足げな笑みを浮かべた。
《ご苦労だった、ブロケル。褒美をやろう》
アスタロトはレヴィヤタンのピアスを、ブロケルに放った。
ダジャレ系ゴスロリ少女は嬉々として、海竜のピアスを左耳へとつける。
『ありがとうございます、アスタロト様!……腹は出てないけど、太っ腹ですな』
(これさえなければ、かわいいヤツなのだが……)
アスタロトは軽い頭痛を感じた。やはり、寒いシャレは人間界・魔界を問わずに脱力感を感じさせるものらしかった。

No.25 09/11/14 08:52
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 24 《それでは、ディナーをいただくとするか》
ふいにアスタロトの絹糸のような長髪が四方八方へと伸び、無数の悪魔たちの遺体を串刺しにした。
《吸い取れ、ラプンツェル!》
アスタロトが特殊能力を発動させた。
ラプンツェルは、死した悪魔の亡骸から魔力を吸い取る能力なのだった。
悪魔や天使の持つ特殊な能力をギフトと呼ぶ。
文字通り、それは神が与えた贈り物であった。
魔力を吸収された悪魔らの遺体は、あるものは溶けさり、あるものは骨のみとなり、あるものは蒸発した。
《ごちそうさま。愚かな下級悪魔の諸君――味はいまいちだったが、量だけは納得出来るものだったよ》
美貌の公爵は残虐で妖艶な笑いを浮かべた。

  • << 34 《さて、この私を亡き者にしようとした身の程知らずの悪魔を探すとするか》 アスタロトは嬉しそうに笑った。いかに魔界が下剋上の世界であるとはいえ、表立って行動に出る悪魔は少数である。 それは下級悪魔らも、72柱の魔神との実力の差の開きを承知しているからに他ならない。 その上で牙を剥いてくる相手は、腕に覚えがあるか、相当の野心家か、ただのうつけである。 アスタロトは野心家が好きだった。何より上級魔神を退屈させない出来事は、常に喜ばしいことであった。

No.26 09/11/18 06:06
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 11 〈全然、そうは見えねぇけんども……〉 グフは疑いの目を、壁に掛かった一振りの斧に向けた。 〔ムカっ! この斧リサの切れ味をお疑いなら、試して… ガルフォンはグフをグリフォン族の指導者に据えようと考えていた。
あるいは、次代の精霊王エンリュミオンとして……どちらを選択しようとも、ガルフォンはその選択がグフの幸せにつながるのならば、構わなかった。
たとえ、グフが第三の選択肢を選んでも、ガルフォンは一向に構わなかった。ただ、将来に備え、最低限の帝王学を仕込む必要があった。無理矢理にでも叩き込んだ知識が、必ず孫・グフの力になる日が来るはず、とグリフォン族の長老は固く信じていた。

No.27 09/11/18 06:25
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 26 ふいに――
ざわり、とした悪寒を老グリフォンは感じた。
何か得体の知れぬ禍々しい気が、グリフォンの谷全体に降り立ったかのようだ――それは、生まれついての悪魔のエリートたるベルゼビュートらの波動であった。
〈ジ、ジイちゃん……何だか、アベル草原の方から、やな気を感じるだ!〉
グフの鋭敏な知覚が、悪魔の出現を感知した。
《うむ、わしもそれを今、感じていた》
不吉な予感をガルフォンは感じていた。
老グリフォンは、斧リサをじっと見つめた。
なぜか、彼女の力が近いうちにグフにとって、必要となる気がしていた。

  • << 51 アベル草原―― 魔界からティル・ナ・ノーグへと降り立ったベルゼビュートと、従者二人は、どこから手をつけてよいものか思案していた。 能力を採取するグリフォンを探すにしても、広大な妖精界をやみくもに探索するのは、時間と労力のムダだ。が、しかし、その心配は無用だった。 魔界からの来訪者たちの視界には、天空を飛翔する老グリフォンの姿が写っていたのだった。 〈これは、これは――飛んで火に入る何とやらだな〉 悪魔のエリートは、口の端を上げ、シニカルな薄笑いを浮かべた。

No.28 09/11/24 22:11
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 23 メタトロンは、そのルビーのように光る紅い眼で二人の裁天使候補生を観察した。 腕を組んだ姿は、帝王然として軍神の風格を見る者に感じさせる。背中… 試合は膠着状態が続いていた。
再度、刃と刃が絡み合うと、かすかな異変が起こった。
サブナキエルの刀身には雷が、カイイリエルの刀身には炎がわずかながら巻きついているのである。
《ほう、戦いの最中に無意識の内にギフトを表出させるとはな》
メタトロンは獰猛な虎のような目つきで、赤毛と金髪の天使を見た。
《に、しても雷に炎とは、どちらも物騒な属性だな》
軍神は呵々と笑った。

No.29 09/11/24 22:31
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 28 ギフトは常に進化し続ける。アスタロトの能力・ラプンツェルは、ただ単に魔力を吸収する手段ではない。特殊能力を行使する使用者が意識を傾注することによって、攻撃へと転化することも可能なのである。
稀に複数のギフトを有する者が居たり、悪魔に至ってはギフトを奪う者まで居る。ある一定の条件さえ満たせば、ギフトは他者へと送られる真のギフトと化す。
メタトロンは両者の戦いに、ギフトの兆しを見いだしていた。そして、特殊能力ギフトを有する者は、突出した潜在能力を眠らせている者がほとんどであった。

No.30 09/12/02 21:01
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 29 サブナキエルとカイイリエルの実力が拮抗しているため、なかなか勝敗がつかなかった。
が、一人だけ勝負の行方を予見している者が居た――その人物とは、メタトロンであった。
《剣の腕前なら、あの金髪坊やだな。赤毛のヤツは、発展途上と言ったとこかな》
すでに人間界の時間にして二時間が経過している。
だが、両者の戦いは生き物のように変動し、メタトロンとラドフィエルとを魅了してやまない。
「まさか、二人の実力がこれほどとは……稀に見る逸材……メタトロン様、二人とも裁天使の資格は充分すぎるほどですぞ!」
興奮してラドフィエルが言った。
《そのようだな。だが、俺の意に添うヤツは一人で良い》

No.31 09/12/03 04:44
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 30 二人の裁天使候補生に疲労の色が見える。
サブナキエルが後方に下がり、かなりの距離を置いた。
次の一撃にすべてを賭けるつもりなのだ。
金色の髪の天使がかぶりを振り、ニヤリと笑う。
カイイリエルは必殺の一撃に備え、エンリュミオンソードを正面に構える。
〈はあぁぁ!〉
居合いの構えから、一挙動で赤毛の間合いへと踏み込む。
その時、パァンと軍神が柏手(かしわで)を打った!
音を拾ったカイイリエルが、さらに後方へと跳ぶ。が、サブナキエルは気づかずに必殺の剣撃を、赤毛に叩き込んだ!

No.32 09/12/05 03:27
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 31 サブナキエルの攻撃を予期していたにも関わらず、カイイリエルはソードで受けるのが、やっとだった。
ついには、サブナキエルの剣撃が赤毛を弾き飛ばした!
〈がはっ!〉
吹っ飛ばされ、尻もちをついたカイイリエルを、勢いづいた金色の髪の戦士が襲いかかる!
そこへ、二人を仲介するかのように、大剣バハムートが地面に突き刺さった!
《両名とも、そこまでだ! この戦い――見事であった》
軍神は、またしても呵々と笑った。

No.33 09/12/22 17:24
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 32 メタトロンは二人を眼前に並ばせ、品定めするような目つきになった。
物騒な属性を持つ、二人の裁天使候補生は緊張のあまり、軍神を直視することが出来ずにいる。
《――素晴らしい戦いだった。カイイリエル、サブナキエル――お前らのような若い天使が育っていることを嬉しく思う》
〈あ、ありがとうございます!!〉
金髪と赤毛の天使の声が被る。
《ついては、カイイリエル……お前を、堕天使狩りのメンバーにスカウトしたいのだがな》
サブナキエルの心に驚愕が走った。
(勝ったのは、俺なのに……)
当のカイイリエルも驚きのあまり、茫然自失となっている。
軍神は三度、呵々と笑った。

  • << 42 《では、な――》 歩み去ろうとする軍神を、サブナキエルが呼び止める。 〈待って下さい! メタトロン様……勝ってたのは俺なのに、納得出来ません!〉 メタトロンは金髪の裁天使の言動を予期していたかのように、おもむろに振り向いた。 カイイリエルとラドフィエルは、状況を見守っている。 《悪魔討伐には、お前の方が相応しい、とでも言いたいのかな》 〈そうです! 俺しかいません!〉 軍神は銀色の髪をかき上げ、 《うぬぼれるな、小僧!》 《先ほどの戦闘の最中に、私が打った柏手がお前に聴こえたか!?》 猛虎が如きメタトロンの一喝が轟いた。 〈いえ……〉 《あの戦闘の最中、カイイリエルは音を拾い、後方へ飛んだ――こいつには周りが見えている。だが、お前は必殺の一撃を叩き込むことだけしか考えておらず、周囲のことなど、お構いなしだ!》

No.34 10/01/01 06:30
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 25 《それでは、ディナーをいただくとするか》 ふいにアスタロトの絹糸のような長髪が四方八方へと伸び、無数の悪魔たちの遺体を串刺しにした。 《吸い… 《さて、この私を亡き者にしようとした身の程知らずの悪魔を探すとするか》
アスタロトは嬉しそうに笑った。いかに魔界が下剋上の世界であるとはいえ、表立って行動に出る悪魔は少数である。
それは下級悪魔らも、72柱の魔神との実力の差の開きを承知しているからに他ならない。
その上で牙を剥いてくる相手は、腕に覚えがあるか、相当の野心家か、ただのうつけである。
アスタロトは野心家が好きだった。何より上級魔神を退屈させない出来事は、常に喜ばしいことであった。

No.35 10/01/01 06:46
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 34 永遠に近い寿命と、絶対的な強さを併せ持つ上級魔神らの最大の敵は退屈である。
それゆえにアラストールは、一万人の悪魔を虐殺した。その理由は退屈で仕方なかったからだ。
血で血を洗う魔界の権力闘争も、魔神バールと帝王サタンの和解で幕を閉じた。が、水面下では、魔界の支配権を巡って、魔神たちの思惑が錯綜していた。サタンの死によって、今まで隠れていたことが、単に表面化したにすぎないのである。

No.36 10/01/01 07:04
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 35 《ラプンツェルを索敵モードに移行――発見次第、攻撃形態メデューサを発動》
アスタロトの絹糸のような髪が、瞬く間に全方位へと展開した。
この一連の組織だった行動には、影で下級悪魔らを操った存在がいると、アスタロトは当たりをつけた。首謀者は近くにいて、彼女の様子を探っているはずだ。
ふいにアスタロトの黒く艶やかな髪に異変が起こった。何と、毛髪のすべてが蛇と化し、ある物体へと襲いかかった!
《見つけたぞ、ネズミめ! このアスタロトに牙を剥いたこと、必ず後悔させてやる》
アスタロトが唇をなめ回し、指をパチリと鳴らした。

No.37 10/02/15 04:58
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 36 ラプンツェルは魔界樹の一つに擬態した悪魔を、とぐろを巻いて絡め取った。
無数の蛇が蠢く球体の頂上に、苦しそうにもがく悪魔が顔を出した。
「た、助けてくれ! い、息が……」
その悪魔は上半身が孔雀の、ロバの顔と剣歯を持つ、人型をしていた。
《ほう、アドラメレク――貴様だったか!? 集団催眠の手際は見事だったが、噛みつく相手が悪すぎたな》
アスタロトは妖艶な笑みを浮かべた。

No.38 10/02/15 05:19
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 37 「ヒッ!」
アドラメレクの喉が鳴った。
残虐という言葉は、アスタロトのために存在する。その昔、彼女に逆らった一人の悪魔が居た。アスタロトは彼を見せしめのために、両目をつぶし、手足の腱を切り、殺さぬ程度に拷問し、壁に塗り込め、生けるオブジェとした――そんな彼女のエピソードを知るアドラメレクは、これから自身の身に起こる出来事を想像し、恐怖に凍りついた。
《さて、どうやってお仕置きしたものかな》
彼女は血を引いたかのような、真っ赤な唇をなめ回した。

No.39 10/02/15 23:33
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 38 《エキドナ――》
アスタロトの唇から、エメラルド色の大蛇が吐き出される。
蛇怪・エキドナは二又の舌をチロチロさせ、アドラメレクの顔面をなめ回した。
「ヒィ!!」
次の瞬間、大蛇はアドラメレクの口の中へと踊り込んだ!
声なき叫びを孔雀の悪魔は発した。
「グ……ギ……」
エキドナはアドラメレクの内臓を食い破り、右目の眼球をくわえながら体内から這い出てきた。
その血に濡れた眼球は、主であるアスタロトの元へと届けられ、彼女は陶器のような指先で、それをつまみ上げる。
《私の大好物は、生きた眼球でね》
ニヤリと笑ったアスタロトはアドラメレクの目の前で、見せつけるかのように眼球を噛み砕いた。

No.40 10/02/20 08:14
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 39 「あ、あ、あ、俺の右目がァ……」
アドラメレクは悲痛な声を上げた。
これはアスタロトの演出であった。彼女は、こうして敵に絶対的な恐怖を植え付けたのだった。
《アドラメレク――まだ、私の首が欲しいか?》
妖艶な悪魔公爵は、髪をかきあげながら訊いた。
即座に首を振るアドラメレク。
《貴様の行為は許し難い――が、私は貴様の野心は気に入った。どうだ、私の使い魔にならないか?》
てっきり殺されるものと思っていたアドラメレクは、残った目でアスタロトに訴えかける。
「よ、喜んで……」

No.41 10/02/20 08:38
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 40 アスタロトはニヤリと笑うと、右手を差し出した。
《では、忠誠の口づけをするが良い》
いましめを解かれた孔雀の悪魔は、アスタロトの眼前にひざまづき、恐る恐るキスをした。
《よかろう! アドラメレク――貴様の真の名は?》
「マ、マラカイト……」
と、アドラメレクは震え声で、真の名を告げた。
(これで、まずは一人)
アッピンの書の力を借りずに、魔界を統治する方法――それは、各個撃破であった。一人一人の悪魔を倒し、真の名を集め、確実に支配下に収める。これがアスタロトのプランだったのである。
時間と労力は消費せざるを得ないが、確実に駒を手に入れられる手段の一つであった。何より、バールゼフォンことベールゼブブの目が、ティル・ナ・ノーグに向いている内には、時間がある。彼女の心には、魔界に君臨する女帝アスタロトの未来の絵図が描かれていた。

No.42 10/03/03 05:58
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 33 メタトロンは二人を眼前に並ばせ、品定めするような目つきになった。 物騒な属性を持つ、二人の裁天使候補生は緊張のあまり、軍神を直視することが出… 《では、な――》
歩み去ろうとする軍神を、サブナキエルが呼び止める。
〈待って下さい! メタトロン様……勝ってたのは俺なのに、納得出来ません!〉
メタトロンは金髪の裁天使の言動を予期していたかのように、おもむろに振り向いた。
カイイリエルとラドフィエルは、状況を見守っている。
《悪魔討伐には、お前の方が相応しい、とでも言いたいのかな》
〈そうです! 俺しかいません!〉
軍神は銀色の髪をかき上げ、
《うぬぼれるな、小僧!》
《先ほどの戦闘の最中に、私が打った柏手がお前に聴こえたか!?》
猛虎が如きメタトロンの一喝が轟いた。
〈いえ……〉
《あの戦闘の最中、カイイリエルは音を拾い、後方へ飛んだ――こいつには周りが見えている。だが、お前は必殺の一撃を叩き込むことだけしか考えておらず、周囲のことなど、お構いなしだ!》

No.43 10/03/03 06:15
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 42 《悪魔討伐には必ずチームを組む。敵が一人なら、いざ知らず――どこから悪魔どもが出現するかも分からぬ状況下では、迂闊に動けぬ――周りが見えていないヤツがチームの一員なら、そいつは仲間を危険にさらす……つまり、お前のことだサブナキエル!》
メタトロンは人差し指でサブナキエルを差し示す。
驚愕するサブナキエルは手に持っていた剣が滑り落ちるのにも気づいてはいなかった。

No.44 10/03/31 21:32
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 43 〈……ですが、俺はカイイリエルに勝ちました。要は悪魔や堕天使どもを倒せば良いだけの話でしょう!? 違いますか、メタトロン様!〉
拳を握りしめるサブナキエル。
メタトロンは若い金髪の天使を見、
《そうだな。お前の言うことにも一理はある。では、もう一度カイイリエルと戦ってみろ。ただし、今度は赤毛の武器を替えさせる。それで、お前が勝てたら悪魔討伐のチームに入れてやる。どうだ、やるか?》
〈望むところです〉

No.45 10/03/31 22:01
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 44 《聞こえたなカイイリエル――もう一度、サブナキエルと仕合え! ただし、次のお前の得物は槍にするんだ、良いな!》
〈は、はい……〉
誰もがメタトロンの意図を読めずにいた。
当惑しながらも、裁天使候補生の二人は準備に取りかかる。
〈アースゲイル!〉
カイイリエルが剣を錬成し、一振りの長槍を出現させた。
大気中の物質から、己れのイメージ通りのモノを創り出す、ピグマリオン・マジックであった。
反対にサブナキエルは剣をレイピアのように細く改良し、スピードと刺突に特化した武器を錬成した。剣を軽量化することによって、スピードは格段に上がる。逆に斬れ味という点では落ちてしまうが、相手を戦闘不能にすることが目的の場合はサブナキエルの戦法が最上のものと思われた。
とにもかくにも、再び、裁天使の座を巡って、戦いの火蓋は切って落とされたのであった。

No.46 10/04/19 07:23
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 45 一部始終を静観していたラドフィエルが、おもむろに口を開いた。
「メタトロン様、なぜカイイリエルの武器を替えさせたのですか?」
軍神はニヤリと笑い、
《直にわかる》
と言いおいた。
サブナキエルが居合いの構えを取った。
〈裁天使になるのは俺だ!〉
抜刀し、カイイリエルへと斬りかかる!
が、赤毛の槍の一撃の方が早く、サブナキエルは右肩を浅くえぐられた。
金色の髪の天使は信じられない、という顔をした。
メタトロンは、またしてもニヤリと笑い、傍らのラドフィエルに語りかけた。
《間合いだ。サブナキエルの剣撃は、その間合いにおいては他の追随を許さないが、有効射程圏外では攻撃力は半減し、崩される、もろい砂の城と化す!》
「なるほど、それでリーチの長い長槍へとスイッチさせたのですな!」
《そういうことだ》

  • << 48 カイイリエルは武器をアースゲイルに替えた途端に、サブナキエルの動きに精彩が無くなったことに気づいた。 右から左から、フェイントを交え、金髪の剣を翻弄する。 (こんな、バカな!) 驚愕するサブナキエルは、蛇のように伸びる槍の一撃、一撃を捌くのが、やっとだった。 ついには、赤毛の矛先がサブナキエルのエンリュミオンソードを弾き飛ばした! 長剣は放物線を描いて地面へと突き刺さる。 《これで、分かったろう。お前の剣技は間合いを乱されただけで、このザマだ。あくまで剣にこだわるのであれば、どんな敵と相対しても、ねじ伏せるだけの実力を身につけるのだな!》 軍神はサブナキエルへ言い放った。

No.47 10/04/24 06:31
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

――人間界の時間と空間が乱れた。その時空を乱した者は、藤原京子と夜神麗子が姿を消した一週間後の世界に来ていた。


時の裂け目からは、巨大な一体のドラゴンが現れた。
その背には、魔術師のフードを目深に被った魔女が佇んでいた。彼女は銀色に光る魔法陣を空中に描き、古代の呪句たるルーンを唱えた。


「……これで良いわ。これで――京子と麗子の存在した痕跡は、すべて無くなった――」
魔女の声音は弱々しく、消え入りそうだった。
「帰りましょう、メリュジーヌ。ティル・ナ・ノーグへ」
魔女はドラゴンを促した。
『はい、スカハサ様――』
そこは件の工事現場だった。特殊な結界を張り巡らしているので、魔女とドラゴンの姿は人間に視認することは出来ない。
魔女スカハサは見納めというように、もう一度、人間界に一瞥をくれた。

No.48 10/05/04 08:24
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 46 一部始終を静観していたラドフィエルが、おもむろに口を開いた。 「メタトロン様、なぜカイイリエルの武器を替えさせたのですか?」 軍神はニヤリと… カイイリエルは武器をアースゲイルに替えた途端に、サブナキエルの動きに精彩が無くなったことに気づいた。
右から左から、フェイントを交え、金髪の剣を翻弄する。
(こんな、バカな!)
驚愕するサブナキエルは、蛇のように伸びる槍の一撃、一撃を捌くのが、やっとだった。
ついには、赤毛の矛先がサブナキエルのエンリュミオンソードを弾き飛ばした!
長剣は放物線を描いて地面へと突き刺さる。
《これで、分かったろう。お前の剣技は間合いを乱されただけで、このザマだ。あくまで剣にこだわるのであれば、どんな敵と相対しても、ねじ伏せるだけの実力を身につけるのだな!》
軍神はサブナキエルへ言い放った。

No.49 10/05/13 07:21
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 48 〈ぐっ!〉
サブナキエルは四つん這いの格好で、悔しさに身を震わせた。
立ち去ろうとしたメタトロンが、ふと思い直したように金髪に問いかけた。
《サブナキエル……お前は、どこまで強くなりたい?》
しばしの逡巡の後、サブナキエルが口を開いた。
〈俺は、メタトロン様――あなたの強さに近づきたい!!〉
軍神はニヤリと笑うと、今度はカイイリエルに同じ質問を投げかけた。
〈――オレは、いつかメタトロン様……あなたを越える強さを身につけたい!〉

No.50 10/05/13 07:38
豹牙鬼 ( ♂ CSn8h )

>> 49 《そうか――》
《サブナキエル――お前がカイイリエルに負けたのは、私に近づこうとする者と乗り越えようとする者の意識の差だ!》
メタトロンの一喝は、サブナキエルの戦士としてのプライドを打ちのめした。
《聞け! 二人とも!メタトロンとは、常に天界最強の者に贈られる称号のことだ。この称号が欲しくば、奪うだけの実力を身につけて来い!》
そして、軍神は呵々と笑いながら悠然と歩み去った。
ふと、サブナキエルの背中の羽根から一枚の小さな羽がふわりと落ちた。
その羽は悪魔の持つ黒い羽根の色であった。

投稿順
新着順
主のみ
付箋
このスレに返信する

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧