小説・王族な猫2👑🐱
猫妖精ケット・シーと、妖精王クー・フーリンの息子、ルー・フーリンの戦いと冒険を描いた王道ファンタジー『王族な猫』をこれからもよろしくお願いします🙇
ではでは😸ニヤリ
>> 2
《ガラクタじゃと――》
アモンの顔が徐々に変形してゆく。アンドラスと同じくフクロウの頭部に、狼の牙と眼をした姿となった。
《崇高なる宝石の美を理解せぬデリカシーのない悪魔め! 構わぬアンドラス、殺ってしまえ!》
アブラクサスは逃げる間もなく、一刀のもとに首を瞬断された!
血飛沫が飛び、アンドラスは宙に舞ったアブラクサスの首をひっつかみ小脇に抱えた。
「そうそう、兄上は宝石を集めているけど、僕は生首を集めているんだよ、アブラクサス」
床に倒れたアブラクサスの首なし死体を、アンドラスがまたがっている黒狼がかぶりつく。
「おやおや、ジル――こんな下級の悪魔を食べて、お腹こわしても知らないからね」
>> 6
「さすがはベルゼビュート様――目のつけ所が違う」
と、豹頭人身の悪魔・オセが言った。
【さっぱり、わかんな~い!?】
と、爪を噛みながらレオナール。
「知っての通り、ビュート様は己れの食した魔獣や悪魔の能力をコピーすることが出来る。つまり、だ――猛禽(もうきん)の飛翔能力と肉食獣の蛮性を宿した魔獣にして聖獣であるグリフォンの能力を入手するためにやって来られた、と言うことだ」
〈さすがだな、オセ――いつもながら、お前の深い洞察力には感服する〉
「き、恐縮です」
オセは幾分、照れた。
〈さて、この俺に魔獣の能力を提供してくれるヤツを探さねばな――〉
- << 10 その頃、グフはインテリジェンス・アックスをクチバシでツンツンしていた。 〔――何をやってけつかるのですか、グフ様!〕 斧リサは怒りをこらえながら訊いた。 〈いやぁ、口もねぇのに、どーやってしゃべってるんかなって思ってさ〉 と、その会話に老グリフォンが割り込んできた。 《グフよ、その武器は生きているのじゃ。口はなくとも、我らの精神に語りかけることが出来る――おまけに業物でもある》 〈ワザモノ?〉 《即ち、優れた武器と言うことよ》
>> 8
天界・アリーナの庭――
そこでは、堕天した悪魔に裁きの鉄槌を下す裁天使の候補生らが日々、修練に励んでいた。
闘技場と中庭とが、上手く融合したアリーナでは、今まさにカイイリエルとサブナックことサブナキエルが剣を交えようとする所だった。
得物は互いに精霊の加護を受けたエンリュミオン・ソードである。
イメージを具現化し、大気中のエネルギーから武器を創造することをピグマリオン・マジックと呼ぶ。大天使クラスの能力を持つ者は、例外なく、その魔法を行使することが可能なのだ。
言わば、それは即席の錬金術なのである。
裁天使長ラドフィエルの管理の下、候補生二人による試合の幕が切って落とされた。
- << 20 裁天使長ラドフィエルは、この一戦でカイイリエルかサブナキエルを悪魔討伐のためのチームに配属するか否かを決めようとしていた。 天界の最高司令官であるメタトロン直々の要請である。 急増する、人間界に侵入せんとする悪魔や妖魔を狩る、ディアボロス・ハンター(悪魔狩人)の選出は、常に慎重を期さなければならぬ急務であった。
>> 7
「さすがはベルゼビュート様――目のつけ所が違う」
と、豹頭人身の悪魔・オセが言った。
【さっぱり、わかんな~い!?】
と、爪を噛みながらレオ…
その頃、グフはインテリジェンス・アックスをクチバシでツンツンしていた。
〔――何をやってけつかるのですか、グフ様!〕
斧リサは怒りをこらえながら訊いた。
〈いやぁ、口もねぇのに、どーやってしゃべってるんかなって思ってさ〉
と、その会話に老グリフォンが割り込んできた。
《グフよ、その武器は生きているのじゃ。口はなくとも、我らの精神に語りかけることが出来る――おまけに業物でもある》
〈ワザモノ?〉
《即ち、優れた武器と言うことよ》
>> 10
〈全然、そうは見えねぇけんども……〉
グフは疑いの目を、壁に掛かった一振りの斧に向けた。
〔ムカっ! この斧リサの切れ味をお疑いなら、試してごらんなさいな。たとえ鉄だろうが、何だろうが真っ二つにしてみせますとも!〕
と、鼻息荒くリサ。
〈んにゃ、どうせ使わねーし、オカラの持ち腐れだ〉
〔それを言うなら、宝だろうが! このアホ!〕
こうして、ボケとツッコミは運命的な出逢いを果たしたのだった。
- << 26 ガルフォンはグフをグリフォン族の指導者に据えようと考えていた。 あるいは、次代の精霊王エンリュミオンとして……どちらを選択しようとも、ガルフォンはその選択がグフの幸せにつながるのならば、構わなかった。 たとえ、グフが第三の選択肢を選んでも、ガルフォンは一向に構わなかった。ただ、将来に備え、最低限の帝王学を仕込む必要があった。無理矢理にでも叩き込んだ知識が、必ず孫・グフの力になる日が来るはず、とグリフォン族の長老は固く信じていた。
>> 18
パラソルが一瞬、たわんだ――刹那、無数の超高圧縮された水の槍がルシドラシルに取り付く悪魔めがけ放たれた。
ジャベリンは執拗に悪魔たちを狙い、その心臓を貫くまで追尾した。
巨大樹のあちこちから断末魔の叫びが上がり、ブロケルはその悲鳴や怒号を肴に、プリンを味わった。
『身の程知らずの下級悪魔さんたち、もうお終い……だったら、最初から刃向かうんじゃねぇっての。オメーラの考えは、このプリンより甘っちょろいぜ!』
- << 24 一部始終を静観していたアスタロトは、ブロケルの仕事に満足げな笑みを浮かべた。 《ご苦労だった、ブロケル。褒美をやろう》 アスタロトはレヴィヤタンのピアスを、ブロケルに放った。 ダジャレ系ゴスロリ少女は嬉々として、海竜のピアスを左耳へとつける。 『ありがとうございます、アスタロト様!……腹は出てないけど、太っ腹ですな』 (これさえなければ、かわいいヤツなのだが……) アスタロトは軽い頭痛を感じた。やはり、寒いシャレは人間界・魔界を問わずに脱力感を感じさせるものらしかった。
>> 22
メタトロンは、そのルビーのように光る紅い眼で二人の裁天使候補生を観察した。
腕を組んだ姿は、帝王然として軍神の風格を見る者に感じさせる。背中には限られた天使のみが持つ六枚の翼――と、数多(あまた)の悪魔を地獄へと誘った大剣・バハムート。すべてが天界において輝きを放っていた。
軍神は肩まで切りそろえられた髪をかきあげ、
《さて、どちらが俺の部隊にふさわしいか見極めさせてもらうぞ》
- << 28 試合は膠着状態が続いていた。 再度、刃と刃が絡み合うと、かすかな異変が起こった。 サブナキエルの刀身には雷が、カイイリエルの刀身には炎がわずかながら巻きついているのである。 《ほう、戦いの最中に無意識の内にギフトを表出させるとはな》 メタトロンは獰猛な虎のような目つきで、赤毛と金髪の天使を見た。 《に、しても雷に炎とは、どちらも物騒な属性だな》 軍神は呵々と笑った。
>> 19
パラソルが一瞬、たわんだ――刹那、無数の超高圧縮された水の槍がルシドラシルに取り付く悪魔めがけ放たれた。
ジャベリンは執拗に悪魔たちを狙い、…
一部始終を静観していたアスタロトは、ブロケルの仕事に満足げな笑みを浮かべた。
《ご苦労だった、ブロケル。褒美をやろう》
アスタロトはレヴィヤタンのピアスを、ブロケルに放った。
ダジャレ系ゴスロリ少女は嬉々として、海竜のピアスを左耳へとつける。
『ありがとうございます、アスタロト様!……腹は出てないけど、太っ腹ですな』
(これさえなければ、かわいいヤツなのだが……)
アスタロトは軽い頭痛を感じた。やはり、寒いシャレは人間界・魔界を問わずに脱力感を感じさせるものらしかった。
>> 24
《それでは、ディナーをいただくとするか》
ふいにアスタロトの絹糸のような長髪が四方八方へと伸び、無数の悪魔たちの遺体を串刺しにした。
《吸い取れ、ラプンツェル!》
アスタロトが特殊能力を発動させた。
ラプンツェルは、死した悪魔の亡骸から魔力を吸い取る能力なのだった。
悪魔や天使の持つ特殊な能力をギフトと呼ぶ。
文字通り、それは神が与えた贈り物であった。
魔力を吸収された悪魔らの遺体は、あるものは溶けさり、あるものは骨のみとなり、あるものは蒸発した。
《ごちそうさま。愚かな下級悪魔の諸君――味はいまいちだったが、量だけは納得出来るものだったよ》
美貌の公爵は残虐で妖艶な笑いを浮かべた。
- << 34 《さて、この私を亡き者にしようとした身の程知らずの悪魔を探すとするか》 アスタロトは嬉しそうに笑った。いかに魔界が下剋上の世界であるとはいえ、表立って行動に出る悪魔は少数である。 それは下級悪魔らも、72柱の魔神との実力の差の開きを承知しているからに他ならない。 その上で牙を剥いてくる相手は、腕に覚えがあるか、相当の野心家か、ただのうつけである。 アスタロトは野心家が好きだった。何より上級魔神を退屈させない出来事は、常に喜ばしいことであった。
>> 11
〈全然、そうは見えねぇけんども……〉
グフは疑いの目を、壁に掛かった一振りの斧に向けた。
〔ムカっ! この斧リサの切れ味をお疑いなら、試して…
ガルフォンはグフをグリフォン族の指導者に据えようと考えていた。
あるいは、次代の精霊王エンリュミオンとして……どちらを選択しようとも、ガルフォンはその選択がグフの幸せにつながるのならば、構わなかった。
たとえ、グフが第三の選択肢を選んでも、ガルフォンは一向に構わなかった。ただ、将来に備え、最低限の帝王学を仕込む必要があった。無理矢理にでも叩き込んだ知識が、必ず孫・グフの力になる日が来るはず、とグリフォン族の長老は固く信じていた。
>> 26
ふいに――
ざわり、とした悪寒を老グリフォンは感じた。
何か得体の知れぬ禍々しい気が、グリフォンの谷全体に降り立ったかのようだ――それは、生まれついての悪魔のエリートたるベルゼビュートらの波動であった。
〈ジ、ジイちゃん……何だか、アベル草原の方から、やな気を感じるだ!〉
グフの鋭敏な知覚が、悪魔の出現を感知した。
《うむ、わしもそれを今、感じていた》
不吉な予感をガルフォンは感じていた。
老グリフォンは、斧リサをじっと見つめた。
なぜか、彼女の力が近いうちにグフにとって、必要となる気がしていた。
- << 51 アベル草原―― 魔界からティル・ナ・ノーグへと降り立ったベルゼビュートと、従者二人は、どこから手をつけてよいものか思案していた。 能力を採取するグリフォンを探すにしても、広大な妖精界をやみくもに探索するのは、時間と労力のムダだ。が、しかし、その心配は無用だった。 魔界からの来訪者たちの視界には、天空を飛翔する老グリフォンの姿が写っていたのだった。 〈これは、これは――飛んで火に入る何とやらだな〉 悪魔のエリートは、口の端を上げ、シニカルな薄笑いを浮かべた。
>> 29
サブナキエルとカイイリエルの実力が拮抗しているため、なかなか勝敗がつかなかった。
が、一人だけ勝負の行方を予見している者が居た――その人物とは、メタトロンであった。
《剣の腕前なら、あの金髪坊やだな。赤毛のヤツは、発展途上と言ったとこかな》
すでに人間界の時間にして二時間が経過している。
だが、両者の戦いは生き物のように変動し、メタトロンとラドフィエルとを魅了してやまない。
「まさか、二人の実力がこれほどとは……稀に見る逸材……メタトロン様、二人とも裁天使の資格は充分すぎるほどですぞ!」
興奮してラドフィエルが言った。
《そのようだな。だが、俺の意に添うヤツは一人で良い》
>> 32
メタトロンは二人を眼前に並ばせ、品定めするような目つきになった。
物騒な属性を持つ、二人の裁天使候補生は緊張のあまり、軍神を直視することが出来ずにいる。
《――素晴らしい戦いだった。カイイリエル、サブナキエル――お前らのような若い天使が育っていることを嬉しく思う》
〈あ、ありがとうございます!!〉
金髪と赤毛の天使の声が被る。
《ついては、カイイリエル……お前を、堕天使狩りのメンバーにスカウトしたいのだがな》
サブナキエルの心に驚愕が走った。
(勝ったのは、俺なのに……)
当のカイイリエルも驚きのあまり、茫然自失となっている。
軍神は三度、呵々と笑った。
- << 42 《では、な――》 歩み去ろうとする軍神を、サブナキエルが呼び止める。 〈待って下さい! メタトロン様……勝ってたのは俺なのに、納得出来ません!〉 メタトロンは金髪の裁天使の言動を予期していたかのように、おもむろに振り向いた。 カイイリエルとラドフィエルは、状況を見守っている。 《悪魔討伐には、お前の方が相応しい、とでも言いたいのかな》 〈そうです! 俺しかいません!〉 軍神は銀色の髪をかき上げ、 《うぬぼれるな、小僧!》 《先ほどの戦闘の最中に、私が打った柏手がお前に聴こえたか!?》 猛虎が如きメタトロンの一喝が轟いた。 〈いえ……〉 《あの戦闘の最中、カイイリエルは音を拾い、後方へ飛んだ――こいつには周りが見えている。だが、お前は必殺の一撃を叩き込むことだけしか考えておらず、周囲のことなど、お構いなしだ!》
>> 25
《それでは、ディナーをいただくとするか》
ふいにアスタロトの絹糸のような長髪が四方八方へと伸び、無数の悪魔たちの遺体を串刺しにした。
《吸い…
《さて、この私を亡き者にしようとした身の程知らずの悪魔を探すとするか》
アスタロトは嬉しそうに笑った。いかに魔界が下剋上の世界であるとはいえ、表立って行動に出る悪魔は少数である。
それは下級悪魔らも、72柱の魔神との実力の差の開きを承知しているからに他ならない。
その上で牙を剥いてくる相手は、腕に覚えがあるか、相当の野心家か、ただのうつけである。
アスタロトは野心家が好きだった。何より上級魔神を退屈させない出来事は、常に喜ばしいことであった。
>> 38
《エキドナ――》
アスタロトの唇から、エメラルド色の大蛇が吐き出される。
蛇怪・エキドナは二又の舌をチロチロさせ、アドラメレクの顔面をなめ回した。
「ヒィ!!」
次の瞬間、大蛇はアドラメレクの口の中へと踊り込んだ!
声なき叫びを孔雀の悪魔は発した。
「グ……ギ……」
エキドナはアドラメレクの内臓を食い破り、右目の眼球をくわえながら体内から這い出てきた。
その血に濡れた眼球は、主であるアスタロトの元へと届けられ、彼女は陶器のような指先で、それをつまみ上げる。
《私の大好物は、生きた眼球でね》
ニヤリと笑ったアスタロトはアドラメレクの目の前で、見せつけるかのように眼球を噛み砕いた。
>> 40
アスタロトはニヤリと笑うと、右手を差し出した。
《では、忠誠の口づけをするが良い》
いましめを解かれた孔雀の悪魔は、アスタロトの眼前にひざまづき、恐る恐るキスをした。
《よかろう! アドラメレク――貴様の真の名は?》
「マ、マラカイト……」
と、アドラメレクは震え声で、真の名を告げた。
(これで、まずは一人)
アッピンの書の力を借りずに、魔界を統治する方法――それは、各個撃破であった。一人一人の悪魔を倒し、真の名を集め、確実に支配下に収める。これがアスタロトのプランだったのである。
時間と労力は消費せざるを得ないが、確実に駒を手に入れられる手段の一つであった。何より、バールゼフォンことベールゼブブの目が、ティル・ナ・ノーグに向いている内には、時間がある。彼女の心には、魔界に君臨する女帝アスタロトの未来の絵図が描かれていた。
>> 33
メタトロンは二人を眼前に並ばせ、品定めするような目つきになった。
物騒な属性を持つ、二人の裁天使候補生は緊張のあまり、軍神を直視することが出…
《では、な――》
歩み去ろうとする軍神を、サブナキエルが呼び止める。
〈待って下さい! メタトロン様……勝ってたのは俺なのに、納得出来ません!〉
メタトロンは金髪の裁天使の言動を予期していたかのように、おもむろに振り向いた。
カイイリエルとラドフィエルは、状況を見守っている。
《悪魔討伐には、お前の方が相応しい、とでも言いたいのかな》
〈そうです! 俺しかいません!〉
軍神は銀色の髪をかき上げ、
《うぬぼれるな、小僧!》
《先ほどの戦闘の最中に、私が打った柏手がお前に聴こえたか!?》
猛虎が如きメタトロンの一喝が轟いた。
〈いえ……〉
《あの戦闘の最中、カイイリエルは音を拾い、後方へ飛んだ――こいつには周りが見えている。だが、お前は必殺の一撃を叩き込むことだけしか考えておらず、周囲のことなど、お構いなしだ!》
>> 44
《聞こえたなカイイリエル――もう一度、サブナキエルと仕合え! ただし、次のお前の得物は槍にするんだ、良いな!》
〈は、はい……〉
誰もがメタトロンの意図を読めずにいた。
当惑しながらも、裁天使候補生の二人は準備に取りかかる。
〈アースゲイル!〉
カイイリエルが剣を錬成し、一振りの長槍を出現させた。
大気中の物質から、己れのイメージ通りのモノを創り出す、ピグマリオン・マジックであった。
反対にサブナキエルは剣をレイピアのように細く改良し、スピードと刺突に特化した武器を錬成した。剣を軽量化することによって、スピードは格段に上がる。逆に斬れ味という点では落ちてしまうが、相手を戦闘不能にすることが目的の場合はサブナキエルの戦法が最上のものと思われた。
とにもかくにも、再び、裁天使の座を巡って、戦いの火蓋は切って落とされたのであった。
>> 45
一部始終を静観していたラドフィエルが、おもむろに口を開いた。
「メタトロン様、なぜカイイリエルの武器を替えさせたのですか?」
軍神はニヤリと笑い、
《直にわかる》
と言いおいた。
サブナキエルが居合いの構えを取った。
〈裁天使になるのは俺だ!〉
抜刀し、カイイリエルへと斬りかかる!
が、赤毛の槍の一撃の方が早く、サブナキエルは右肩を浅くえぐられた。
金色の髪の天使は信じられない、という顔をした。
メタトロンは、またしてもニヤリと笑い、傍らのラドフィエルに語りかけた。
《間合いだ。サブナキエルの剣撃は、その間合いにおいては他の追随を許さないが、有効射程圏外では攻撃力は半減し、崩される、もろい砂の城と化す!》
「なるほど、それでリーチの長い長槍へとスイッチさせたのですな!」
《そういうことだ》
- << 48 カイイリエルは武器をアースゲイルに替えた途端に、サブナキエルの動きに精彩が無くなったことに気づいた。 右から左から、フェイントを交え、金髪の剣を翻弄する。 (こんな、バカな!) 驚愕するサブナキエルは、蛇のように伸びる槍の一撃、一撃を捌くのが、やっとだった。 ついには、赤毛の矛先がサブナキエルのエンリュミオンソードを弾き飛ばした! 長剣は放物線を描いて地面へと突き刺さる。 《これで、分かったろう。お前の剣技は間合いを乱されただけで、このザマだ。あくまで剣にこだわるのであれば、どんな敵と相対しても、ねじ伏せるだけの実力を身につけるのだな!》 軍神はサブナキエルへ言い放った。
――人間界の時間と空間が乱れた。その時空を乱した者は、藤原京子と夜神麗子が姿を消した一週間後の世界に来ていた。
時の裂け目からは、巨大な一体のドラゴンが現れた。
その背には、魔術師のフードを目深に被った魔女が佇んでいた。彼女は銀色に光る魔法陣を空中に描き、古代の呪句たるルーンを唱えた。
「……これで良いわ。これで――京子と麗子の存在した痕跡は、すべて無くなった――」
魔女の声音は弱々しく、消え入りそうだった。
「帰りましょう、メリュジーヌ。ティル・ナ・ノーグへ」
魔女はドラゴンを促した。
『はい、スカハサ様――』
そこは件の工事現場だった。特殊な結界を張り巡らしているので、魔女とドラゴンの姿は人間に視認することは出来ない。
魔女スカハサは見納めというように、もう一度、人間界に一瞥をくれた。
>> 46
一部始終を静観していたラドフィエルが、おもむろに口を開いた。
「メタトロン様、なぜカイイリエルの武器を替えさせたのですか?」
軍神はニヤリと…
カイイリエルは武器をアースゲイルに替えた途端に、サブナキエルの動きに精彩が無くなったことに気づいた。
右から左から、フェイントを交え、金髪の剣を翻弄する。
(こんな、バカな!)
驚愕するサブナキエルは、蛇のように伸びる槍の一撃、一撃を捌くのが、やっとだった。
ついには、赤毛の矛先がサブナキエルのエンリュミオンソードを弾き飛ばした!
長剣は放物線を描いて地面へと突き刺さる。
《これで、分かったろう。お前の剣技は間合いを乱されただけで、このザマだ。あくまで剣にこだわるのであれば、どんな敵と相対しても、ねじ伏せるだけの実力を身につけるのだな!》
軍神はサブナキエルへ言い放った。
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