夢の中で――🌠。
出来れば知りたくなかった。
可愛い息子に愛する旦那……
普通に生きて行きたかった。
でも私は知ってしまった。
あの光景が脳裏にやきつき――――
離れない…………。
※フィクションです。初心者の為、誹謗中傷など控えて頂きたいです…。ストーリー性などあまり自信ありませんがこれから読んで頂けるならばお手柔らかによろしくお願いします🙇※
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蒸し暑い初夏のある日…
私はタンスとベットしかない寝室の隅っこでうずくまっていた。
シンプルな部屋はただの淋しい空間に化し、蒸し暑い筈なのにこの空間だけはヒンヤリとしている気がしていた。
“何でこんな事に……
どうして………???”
頭を抱え込んだまま
自問自答を繰り返していた…。
数時間前まで私の頭の中は普通の平凡な主婦だった。
ご飯何しよぅかな…
特売してないかな…
もうすぐ三十路を迎えるどこにでもいる、そんな主婦。
この日もいつも通りに過ごし、買い物したり銀行行ったり………
子供が帰って来る時間までには戻る予定だった。
そぅ、数時間前
私が病院に行くまでは――――。。。
―――数時間前―――
いつもの様に買い物へ出掛けようと家を出た私は、大事な事に気が付いた。
息子の持病のいつももらっている薬が残り僅かだった。
家事も早く終わり、いつもより早く家を出た私は、薬だけもらいに病院へ寄る事にした。
かかりつけの病院へは車で10分ほど。
すごく大きな病院ではないが、一応総合病院で、でもいつも待ち時間は短いから通う事が苦にならない。
子供が学校から帰って来るのは4時過ぎ。
“まだしっかり特売品見極める時間はあるな…。
いつもと違うスーパーでも寄ってみるかな…。”
そんな事考えながら車を走らせてるとすぐ着いた。
家の周辺はどちらかと言うと県内では都会な方で、大きな道路が通り、色んなビル、色んなお店、大型のアミューズメントパークなどがたくさんあり、交通量も多くて人がたくさんいた。
でも何故かその病院は、大きな道路を少し脇に入り、山を登った所にある。
何故かは知らないが、理由はちゃんとあるらしい。
その山自体が病院の敷地かと言う程広い。
外来は正面玄関からすぐだが、入院なんてした日には病棟まで行くのが大変そうだ。
―――受付を済ませた私は、売店でコーヒーを買ってから待合室へ行こうと、長い廊下の奥にある売店へと向かった。。。
外来を抜けて長い廊下に出た。
…相変わらず薄暗く、通い慣れた私でも夜は到底通れないだろう…。
ここは山だから外灯も外には見当たらない…
一面窓の続く廊下でも、真っ暗な山の景色は余計に恐怖心を煽る様な気がする。
廊下の先にようやく売店の看板が見えた。
売店の少し手前に、外に出るドアがある。
そんな景色の中、ふと目線が止まった。
見覚えのある顔の若い女性がいた。
「…京子!?…どうしたのこんな……っ??!!」
“どうしたのこんな所で”
言いかけたが止まってしまった。
京子は泣きながら窓の向こうを見ていた。
>> 5
まだ昼過ぎだと言うのに何故かこの辺りは薄暗い。
曇り気味な空が一層不気味に感じさせる。
少し遅いテンポで私に気付いた京子は見た事のない恐怖の様な動揺の様な…そんな表情をした後
私に返事を返す事もなく廊下のドアを走って出て行った。
京子とはもう十年の付き合いになるがここ1年程忙しく、あまり連絡をとっていなかった。
“何かあったんだわ…”
この状況でそう思わない訳がない。
もしかしたらそっとしておいてあげるべきなのかとも思ったが…
控えめな京子の性格を考えると、こっちから聞かないと話して来ないだろうと、私は後を追った。
考えてみるとそこからは駐車場に行けない筈だから、帰った訳ではない。
…かと行って、何かある訳でもない。
一度何年か前に子供が入院した時、迷ってドアの向こうに行った事があるが………
そこはたくさん木があるただの山の斜面だった。
ドアを開けるとすぐに草がたくさん生えていた。
ここは患者も来ないし関係者も来る事はないだろう。手入れされてないのは一目で分かった。
中には私の腰程まである草達。
その中に微妙に細い道の様な物がある。
既に姿の見えない京子を追い、
草を分ける様にして道の様な地面を進んだ。
“………京子!!!???”
姿は見えなかったが
小さな声で何か喋る声が聴こえた。
何だかとても嫌な予感がしていたが
京子の姿が見えたと同時に
予感は現実へと変わった――――。
京子は私より早く結婚したが、私が独身時代に京子の旦那も一緒によく飲みに行ったりしていたから京子夫婦の事はよく知っていた。
だから………
京子の隣にしゃがみこんでる男が旦那さんだと
後ろ姿からでもすぐにわかった。
でも
その前にいた人間…
“置かれていた”人間は
知らない人間だった……
京子の旦那の前の
“それ”は
目玉がえぐれる様に飛び出て垂れ下がり
大きく真っ黒な黒目は
ギョロッとこちらを見ている
息が止まりそうになりながら
生唾を飲み
ゆっくりと目線を下げると
力なくグッタリと内股になった足の間には
真っ赤な血に泳ぐ
淡いピンクの様なグチャグチャしたモノが見える
完全に思考回路が止まった私を見つめる京子――――
ゆっくりと
こっちを振り向く旦那―――――
そして目が合った瞬間…
再び動き始めた私の思考回路は
“逃げなきゃいけない”
そう判断を下した。
助けを呼ぶべき
誰もがそう思うだろう。
そして私もそう思ったが何かが引っ掛かる―――――
“チャリン”
そう。
私は家の鍵を落とした。
長い廊下を走り渡るまでのわずかな時間………
混乱するほど色んな事を考えていた。
今―――逃げている。
京子も旦那も、私に気付いた。
鍵を落とした音にも気付いているはずだ。
……。
私が通報したり誰かに助けを呼んでも
その間にもしも鍵を拾い、逃げていたとしたら………???
目撃した私の存在は京子達にとって
消すしかない存在だ…。
警察に説明したとしてもちゃんと信用してもらえるだろうか…
病院の裏庭で惨殺死体を見たなんて…。
そしてそれが友達夫婦だったなんて…。
警察が守ってくれるなんて保証はどこにもない―――――。。。
私は走る足を止めた。
周りは外来患者や医師――
いつもと変わらない風景の中にいた。
そぅ…
この時 警察を信じ、
叫んでいれば良かった…
一人こんなに恐怖に怯える事はなかったかもしれない。。。
――――――――――
病院の中で一人呆然としながら
少しずつ頭の中を整理し、僅かに冷静さを取り戻した。
“やっぱり警察には言えない………。”
それは私の過去………
私と京子の旦那との出会い、付き合いを思い出したからだった。
それは私が18歳の誕生日を迎えた直後の事だった。
子供は一歳の誕生日を迎える………
そんな頃離婚を経験し、焦っていた私は その歳で風俗を始めた。
そして そこにスタッフとして入って来たのが京子の旦那“かずき”だった。
かずきは店が用意していた寮で生活していたが、勘当同然で都心の実家から来ていた為、本当に貧乏だった。
とてもお笑い好きで楽しい人だった。
男女の関係は全く無く、意識した事もなかったが、とても仲良くなった。
そして若かった私は店長にレイプされ…
一番に相談したのもかずきだった。
そんな時に新人で入店して来たのが京子だった。
かずきが上手くやってくれたお陰で私は店を辞める事ができた。
そしてしばらくしてかずきは店長になり、更に自分で店を持つまでになった。
京子はかずきの女になり、めでたく五年前に結婚した。。。
―
―――――
―――――――――
警察に話せばその過去が全て明らかにされる…
せっかく掴んだ幸せを手放したくない…
そして本当にあれはかずきが殺した死体だったのか……
間違いないはずだが
信じたくなかった……。
ふと
視線を感じ―――
後ろを振り返る
……が、誰もいない。
さっきの出来事など知らずに
売店へ向かっているであろう松葉杖をつき歩く中年男性…
車椅子を看護師に押してもらう老人…
忙しそうに時計を気にしながら足早に通りすぎる医師…
会計待ちの患者達…
安心したのだろうか……
私は振り向くとそのまままた売店へ続く廊下へと引き返した。
惨殺死体の待つ
裏庭へ―――――――――――
そう…鍵を拾いたいだけの事…
もう逃げていないはずだ…
万が一まだいたとしてもまさか私が戻って来るなんて思ってもないはずだ……
いなければ鍵を拾い、すぐ帰ればいい。。。
もしいたら……
気付かれない様に忍び寄り…気付かれてもまた逃げればいい。。。
勇気を振り絞り、
裏庭へのドアを開けた―――――――
“カチャン”
こんなに静かな音に敏感に反応してしまう…
……………え…??…!!!
そこには
既に京子もかずきも姿が見えず………
あの惨殺死体の姿までもが跡形もなく
消えていた。
“おかしい…確かにこの目で見たのに…!!!”
たった数分間の間に移動させたと言うのか…???
でもどうやって……???
ここから車で出入りする事は不可能なはずだ…
二人で抱えて斜面を降りて行ったとでも言うのか……???
“まだ近くにいるかもしれない…”
鍵を拾い、とりあえず人のいる場所へ行きたくてまた外来へ戻った。
“幻だった”と強く言い聞かせている反面………
“確かに見た…”
と言う「事実」が葛藤し、頭のほとんどが不安で埋め尽くされていた。
どんなに言い聞かせても一人で解決できる問題ではない。
―――旦那に聞いてもらおうかな…。―――
そう思ったがすぐに諦めた。
そう。
旦那は典型的なモラハラ夫だった。
過去にかずきの職業を言って、二人との縁を切れと言われ、携帯の番号まで変えさせられそうになった事がある。
もちろん本当の関係は話していなかったし、“京子の旦那が…”と言う伝え方をしただけだったが……。
「そんな仕事をしている奴や、その家族なんてろくな人間じゃない。
家でも知られた日には大変な事になる。」
それが彼の言い分だった。
でも会った事もないのに私の長年付き合って来た友達夫婦をそんな風に言うなんて…。
そして彼の友達にも同じ職業の友達がいたから納得いかなかった。
人格否定や暴言を聞くのはもう嫌だ。
京子に声をかけ、後を追ってしまった事を本気で後悔した。
誰かに聞いてもらいたい……
そして
「きっと疲れてたんだよ」
って言って欲しい。
そんな事を考えながらも家に着いた。
買い物もせず、すぐに帰って来てしまった。
食事の用意なんてできる状態じゃない。
“良かった…今日旦那の夕食は用意しなくて良いんだ……”
偶然にも今日ある旦那の会社の飲み会に感謝して少し横になった………。
―――――――――
「…さん…母さん!!!っ」
いつの間にか寝ていた私は帰って来た子供に起こされた。
「あ~ごめんね~疲れてたぁ~」
「もぉっ!玄関開いてたから良かったけど閉まってたら俺入れなかったじゃん!」
少し膨れっ面の子供が言った言葉に疑問を抱いた。
「え??そう言えばそうだよね…鍵… 開いてたの…??」
「???…開いてたから俺ここにいるんだけど…??」
そんな訳ない!!!
帰って来て怖くて怖くて鍵は閉めたはずだ!!!
しかも何度も確認したはずなのに………
やっぱり私はおかしくなったのか………
子供を怖がらせる訳にもいかず
「そっかそっか、母さん寝ぼけてたね」
なんて、言ったけどね…。。。
不安になった私は
子供を友達の家に遊びに行かせた。
そしてすぐに鍵を閉め、家の中に変化がないかどうか確認する為、家中走り回った。
おかしい………
荒らされてるとか……
現金や通帳が無くなってるとか……
それなら泥棒だったかもしれない。
何の変化もない家の中が
今の状況では異常に不気味に思えた。。。
とりあえず家の中の安全だけは確認できた。
もう子供が帰って来ても大丈夫だろう…。
確認したつもりでもあの時は気が動転していたから勘違いしていただけなのかもしれないし。
また自分を言い聞かせて気持ちを落ち着かせた…。。。
夕食の用意ができた私は
子供を呼びに行こうと
玄関で靴を履いていた。
“スリッパでいいゃ…”
スリッパを出そうと靴箱に手をかける。
“…………ん???”
靴箱には小さなフックが3つ取り付けられており、左から順番に
私、旦那、子供……と、それぞれキーケースなどがかけられる様になっていた。
だが、私のキーケースが何となくいつもより少し平たい感じがした。
家、車、裏口…
私のキーケースはいつもパンパンなのに、今日は妙に平たい。
今日は細かい事でも気になる………
とりあえず開けて確認する事にした……………。
………
開けて中を確認した私は
家の鍵が一つ無くなってる事に気付いた。
と言うのも
実は前から鍵が壊れていて、前日新しい鍵がついたばかりで、3つ同じ鍵を業者からもらったが、一つは旦那に渡して2つは私が持っていた。
………………!!!!!!!
気のせいじゃなかった…
鍵が開いてたのは
気のせいじゃなかったんだ!!!
いつから無くなったのか分からない…
でも思い当たる節と言えば
あの時…
病院で…落とした時…
それ以外には無かった。
だとしたら
私が落とし、拾いに行くまでの間…
かずきもしくは京子が私の鍵に気付き、家の鍵を一つ取った…
と言う事になる。
なぜキーケースごと持ち去らなかったのか…。
きっと“鍵を取られた”と気付くのを遅らせる為だろう…。
また頭が真っ白になった―――――。。。
あらゆる妄想の中で
新たな疑問が浮かんで来た。
今日は分からない事だらけだ………。
もしかしたら全てが幻覚なのではないかとさえ思えた。
でも
家の鍵がなくなり
私が寝ていた間に誰か侵入した形跡さえあるのに
家の中に変化がない。
“鍵変えるのもう少し待ってれば良かったな…”
どこか冷静な私が呟いた
――――――――
“とりあえず子供を迎えに行って…おばあちゃんちにでも連れて行こう…。”
幸い、私の実家は小学校のギリギリだが学区内だった。
だから泊まらせたとしても荷物さえ持って行けば学校は何とかなる。
今まで泊まらせた事はなかったが………
今我が家がこれほど危険な状態で帰らせる訳には行かない…
そんな事を考えながら靴箱に手をかけ
開く………………
が、 開かない。
何かがひっかかっている様だ。
私は力を込めてぐっと開いた…………
“ガンッッ…”
無理矢理引っ張ったせいか、取っ手の部分が外れて下に落ちた。
私の目線は下へと向く。
―――ゴンッ…
何かに押される様に私は倒れてしまった。
“いった~ぁぃ…”
かなりの勢いで押されてしまったから思いっきり倒れてしまった…
しかも傘がこめかみの辺りにささりそうになったじゃないの…
“あぁ…この中古い灯油缶入れてたっけ…”
何かの拍子でそれが落ちて来たのだろう…
そう思いながら痛い目をゆっくりと開けてみる。
………!!!!!
「い゛や゛~ッッッ!!!!!」
悲鳴にもならない声をあげた。
もはや
“怖い”
と言う感情ではなくなっていた。
金縛りにでもあった様に腰が抜けて動けない。
誰でもそうなるだろう。
私が病院で見た惨殺死体――――
私は
下駄箱から出て来たその人と
目があったんだもの――――――。
そう………
あの消えた惨殺死体と―――。
意識が遠退きそうになりながら
いや、息が止まりそうになりながらも
とっさの判断でキーを取り子供の部屋へと向かう。
“子供を帰らせてはいけない!!”
それだけだった。
適当にリュックに服や制服、下着など衣類を詰め込む……
ランドセルに全ての教科書やノートなどを詰め込む…
そして
2つを持ち急いで裏口から出て車に乗り、
子供を迎えに行った。
「ごめん!少しこの子お願い…!!!」
実家に着いた私は
“突然どしたの?”と聞きたそうに 目をキョトンとした母親に一言だけ残し
また
あの 死体の待つ 家に
向かう―――
実家へ向かう車の中で
子供にも理由を聞かれたりしたが
それどころじゃない。
「いいから…今日は母さんの言う通りにしてて…」
それが精一杯だった。
子供ながらに
“聞いてはいけない事”
と悟ったのだろう…
それ以上は何も聞かないでいてくれた。
そんな事を思い出しながら子供に申し訳ない気分になりながら………
家に着いてしまった―――――。
外はもう
日が暮れかかっている
夏の日は長い。
冬場ならとっくに真っ暗な時間だ。
時計を見ると、あと少しで7時…
震えながら
また裏口から入り
二階の寝室へと駆け込んだ。
…と同時に涙が溢れた。
“怖い…
怖いよ……”
まだ冷静になんてなれなかった。
現実を 現実として捉える事すら出来ていなかった。
“もしかしたら幻覚かもしれない…”
未だそんな“期待”をしている自分がいた。
ドアを背に
へたりこむ様に座り込み
そして自問自答を繰り返していた――――。
“ピンポーン”
玄関のインターホンが鳴る。
…と同時に頭を抱え込む腕が、肩が、“ビクッ”となる。
このタイミングに驚いて一瞬涙も止まった。
帰って来てからどのくらいの時間が過ぎていたのかは分からない…
一秒が何時間にも思えていたはずだ。
もしかしたらあまり時間は経っていなかったのかもしれない。
何はともあれ、このタイミングの来客は気になる…
部屋の窓のカーテンをそっと開けて玄関を覗いた。
…………が、
誰もいない。
いつも日が暮れるまで遊ぶ子供達も
既に帰っている様で
ズラッと立ち並ぶ住宅街も
静まり返っていて人気はない。
……………。
僅かな安心に胸を撫で下ろす。
“じゃ…誰が…???”
ホッとしたのも束の間、インターホンを誰かが鳴らしたのは事実だった。
誰が…。
いたずら…???
その時だった。
“プルルルル……プルルルル…”
僅かな時間、力が抜けていた体に再び力が入る。
“出なければならない”
そんな衝動にかられた私はこの部屋にある子機を持ち上げ、耳にあてた。
「……はい。」
「……………。」
「…誰なの…?」
「……フフ… プ・レ・ゼ・ン・ト」
「…プレゼントッ?!」
「…フフフッ…オ・マ・エ・ノ・ミ・ラ・イ…ハハハ…ガチャ」
しばらく受話器は離せずにいた―――――。。。
「プレゼント」
「お前の未来」
確かにそう言っていた…
ボイスチェンジャーか何かで変えられた声からは
性別も年齢も、全く想像がつかない…。
疑いたくない…
そんな事あって欲しくない…
でも………
考えられるのは かずきか京子しかいなかった。
ただのイタズラ電話な訳もなかった。
このどうしようもない想いに押し潰されそうになりながらも
今自分がおかれている状況を冷静に判断し始めた私は
ようやくこのままでは取り返しのつかないと言う事に気付いた。
“過去を旦那に知られる訳には行かない”
そんな気持ちからの現実逃避は
家庭だけでなく、全てを崩壊してしまうだろう。
プレゼントとはあの死体の事に違いない。
お前の未来とは…
その死体の姿が私の未来と言う事だろう。
単なる“脅迫”ではなく
“殺人予告”
紛れもなくソレに違いなかった――――――――――。
気温は暑いと言うのに
全身の鳥肌には自分でも驚く……。
受話器を手に
“110”
……………………
………………………
“ツー―――――――”
………????
かけているのに繋がらない。
話し中の音じゃない
電話機そのものが機能していない。
頭の悪い私でも、電話線が切られているであろう事は予測できた。
それと同時に、
今この家に誰かが潜んでいるかもしれないと言う事も簡単に予測できた――――。
身の危険に気付いた私は
家を出ようとした。
しかし、家のどこかに潜んでいるかもしれない奴に
いつ襲われるか分からない…
この部屋から出る事すら危険だと思えた。
でもここは二階………
窓から出る訳にも行かないが、他に出る方法などない。
唯一、窓の外にあるベランダの下は小さな庭があり、地面はコンクリートみたいに固くなくただの土だと言う事が救いだ……
他に方法が無かった私は
携帯だけをジーンズのポケットに入れ、ベランダに出た。
外は真っ暗………
ここから飛び降りても誰にも見られないだろう…
幸か不幸か…
手を伸ばせば届きそうな程の距離のお隣さんは
家中電気がついてなく、お留守の様だった。
“とにかく急がなきゃ…”
ベランダの柵の上に座り、深呼吸し………
私は飛び降りた――――――。。。
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