裏切りのこちら側
不倫する父親
精神崩壊していく母親
浮気する兄
浮気する義理姉
そして私は…。
家庭という小さい世界は崩壊していく。
ノンフィクションかフィクションか?
新しいレスの受付は終了しました
泣いている。
母親が泣いている。
何故?
父親の車の中から
女と一緒に写っている写真とコンドームがでてきたからだ。
父は認めた。
あたしが15歳からの付き合いらしい。
今、あたしは19歳。
浮気ではない。
不倫だ。
『るい…お父さんが…』
あたしに泣きつかないで。崩れないで。
女にならないで。
強い母親の姿をみせて。
あたしは泣かない。
父の相手。
最悪だ。
あたしの中学の先輩の母親。
学校の役員同士。
もちろん母親も顔見知り。疑わしい事は何回もあった。
パチンコと言っている割にはタバコの臭いもせず、
女の臭い。
その時は発覚前だった。
でも、母は父のいない時にその時着ていたワイシャツを燃やした。
高校生の時はパチンコ屋に探しに行かされた事もある。
でも、まだ確信がなかった。
母は信じようとしていた。信じることで、
自分を保っていた。
あたしはどうでも良かった。
『別れる』
父が言った。
『別れられるの?』
ヒステリックに母は言う。母の妹夫婦も同席。
父は女に電話して何やら話している。
『今から別れてくる』
『るいもついていって見てきて』
泣き声で母はあたしに言う。
嫌だけど仕方ない。
兄は仕事でいない。
そして、あたしは父と一緒に女が待つ場所に向かった。
あたしはまだ19歳。
こんな役目をさせる母が嫌い。
女の車だ。
暗がりのあまり通りのない道に停まっていた。
少し離れた後方に車を停めた。
母はちゃんと別れるのか見てこいと言ったが、あたしは車の中に残り、
父だけで行った。
何かもめている。
長い時間が流れた。
父が帰ってきた。
『カッターだしてきて死ぬって言われた』
『マジ』
結構人事だ。
『だけど説得して別れてきた』
『そうなんだ』
嘘…別れてないでしょ。
これがあたしの本心。
無言のまま帰宅。
妹夫婦はまだいる。
母は泣き腫らした顔だ。
『どうだったの』
声にならないような声で母が聞く。
『別れた』
『本当なの…?るい?』
あたしに振るな…。
『車の中にいたけど別れたんじゃない』
母の顔色が安堵から不安な顔色に変わった。
そして、あたしを睨んだ。『なんでなんでちゃんと見てこなかったの?るいに行ってもらった意味がないじゃない』
泣いている。
泣きたいのはこっちだ。
母親ならあたしの気持ちも察しろ。
母の妹はあたしに目で合図する。
我慢しろって事らしい。
あたしはいったい何なんだ。
この人達は誰だ。
あたしが喚きたい。
でも、心を殺した。
『ごめん』
母に一言だけ言った。
疲れた。
リストカット。
母は死ねないくせに
剃刀を引いた。
あたしはおどろかなった。そんな態度のあたしが
母は気に入らない。
心配してほしくて、気を引きたくてリスカする。
疲れる。
兄もあたしと同じ。
冷たい態度だ。
あたしは兄と仲が良い。
それも母は気に入らないらしい。
自分はダンナに浮気された可哀相な女なんだから、
みんなが自分に気をつかわなければいけないんだ…と変な考えがあるらしい。
そんな事言われても
あたしも兄も困る。
こんな精神状態の中、
気晴らしになればと義理姉と母が出かけた。
最悪のタイミング。
相手の女と鉢合わせしたのだ。
気の強い母は近づいた。
『泥棒猫!!』
言ってしまった。
『何言っているんですか』女は白を通す。
殴った!
母は平手打ちをした。
醜い。
義理姉が制止させた。
義理姉には感謝の気持ちでいっぱいだ。
母は母親ではなく、
完全な女になった。
せめて、あたしや兄の前では禀としてくれよ。
あたしの中の家族は兄と義理姉だけになった。
女の母。
父とあたしの会話を違う部屋で聞いている。
あたしの笑い声が気に入らないと
ヒステリックになった。
娘の笑い声が気に入らない母親。
実の娘にそんなことを言える母。
ああ、この人は誰なんだとあたしは真面目に考えた。考えると心は暗くなった。だから、
心を捨てた。
楽だから。
二度目のリスカ。
また切った。
いい加減にしてくれ。
あたし達にどうしてほしいの?
『お母さんは被害者よ。可哀相ね。
でも頑張って』
とでも言ってほしいの?
言わないよ。
だってあなたは
あたしの母親じゃないから。
毎日毎日責められる父。
家事をあまりしなくなった母。
暗い顔。
病んでる心。
父は精神科に連れていきカウンセリングを受けさせた。
自分の不始末を医師に伝えた。
当たり前だ。
別れきれていないのに、よく話せたものだ。
医師に家族の事を聞かれると母は泣いた。
『息子は冷たく娘はドライすぎる』
『あたしに関心がない』
自分勝手な人。
あたし達の気持ちは
どうでもいいんだね。
父の携帯。
絶対誰にも触らせない。
あたしは父がお風呂に入っている隙にみた。
やっぱりね!
朝晩ご丁寧に同じ番号の履歴。
笑えた。
別れた。な~んて嘘じゃん。
母の精神状態を心配しているのは何で?
世間体?
本当に自殺されたら困るから?
偽りの家族。
『親父…今日仕事だよなぁ。』
兄が言う。
『だね』
『でもさぁ。俺見たよ。女もいたし』
『まぢ』
『まだ切れてないな、きっと』
兄に携帯の事を言った。
『また、お袋発狂だな』
疲れたように言った。
『あたし達が被害者だよね』
あたしも疲れたように返した。
こんなに崩壊寸前でも
女と別れられない理由は何だ?
何をお互い求めているんだ。
19歳のあたしには
理解不能だ。
変な手紙がきた。
定規で書いた文字。
内容は
もっと妻を大事にしろ
俺は影で奥さんをみている支援者的な事。
あたしも父も兄も
母の自作自演だと直ぐに解った。
何故なら
母は初めての相手が父。
それから今まで父の事しか見てきていない。
それは痛い程知っているから。
気持ちが追い詰められているのだろう。
何通かきて、父がいい加減やめてくれないかと母に言った。
母は
『知らない』
と言ったが
それから手紙は来なくなった。
精神状態は更に不安定に。
父は毎日仕事が終ると母に電話をしてきた。
会社を出て家に着くまでの時間が
少し遅くなると母の目が虚になる。
そして父は責められる。
その繰り返しだ。
『電話してもでない。何してるんだろう』
知るかそんなの…あたしは心で呟く。
『るいの携帯ならでるかも。ねえ、電話して』
鬼の形相。
嫌とは言えない空気。
仕方なくかけた。
出るなよと思いながら…。
『もしもし』
あ~あ、でちゃったよ。
『何で何で。あたしだとでないで、るいだとでるの』
また泣いている。
泣かれても困る。
そんな事言われても困る。このことは
あたしにも嫌な方向に向かった。
友達と家電で話てると
突然何も聞こえなくなった。
何?故障?と思ったら
電話のもとを抜かれたらしい。
あたしが電話しているのが気に入らなかったらしい。何故か涙がでた。
感情を捨てたつもりだったのに涙がでた。
とまらなかった。
あたしの存在は母の中では邪魔だったのだろう。
そして、あたしは自分の存在を全否定されたように思えた。
父親へ愛を求めすぎ、廻りの存在は邪魔なのだろう。
あたしは誰なんだ…?
あんたの最愛の娘じゃないのか?
父親に裏切られたのに
母は父を恨みきれない。
辛い気持ちをぶつける矛先。
それはあたしだった。
あたしは疲れた。
疲れすぎた。
二日間彼氏の家に避難した。
義理姉から電話。
『るいちゃん、お義母さんが捜索願い出すって言い始めているから帰って来て』
『ごめん帰るね』
あたしは家に帰った。
母は自分をぶつける相手を戻したかっただけだった。
ガンガン!ガンガン!
ガンガン!ガンガン!
凄い音がする。
何だよと思いながらキッチンへ。
狂ったように包丁で
キッチンのステンレスの部分を叩いている。
止めるのも面倒だ。
父を呼んだ。
父が止めさせた。
きっと母は自分の存在価値を示しているのだろう。
他に表現方法はないなかと思うが
話たくない。
リスカされるよりマシか!
みんなが疲れている。
あたしが仕事でいない時間、母と過ごす義理姉とその子供二人。
さらにうちには母の実母もいる。
義理姉もストレスが溜まりげっそりと痩せた。
兄は義理姉に感謝しつつ、話を聞いたり慰めたりやはりストレスだ。
あたしも同じような状況。
父に関しては何を考えているのかさっぱり解らない。父は仕事が終ると急いで帰ってくる。
しかし付き合いで飲みに行く時もある。
そんな時は大変だ。
きまって過呼吸になるのだ。
そしてきまってばあちゃんが大声で言う。
『るいちゃん、なみちゃん大変だよ!』
渋々行くあたし。
急いで行く義理姉。
行かないとばあちゃんが倒れそうだから。
あたし達が行くと、自作自演のような過呼吸は暫くすると終る。
みんな心底辛くなってきた。
逃げたい。
ここから。
多分みんなが思っている。兄の帰りが遅くなり始めた。
何か怪しい。
でも、少しほおっておこう。
見て見ない振り。
何故か自由にさせてあげたい。
お姉ごめん…と思いながら。
予感的中。
兄は罪悪感からかあたしに言ってきた。
『好きな女ができた』
げっ好きになっちゃってるんだ。あたしの感想。
『何処の誰?』
ためらいながら兄は口を開いた。
『ソープ嬢…』
あまり驚かないあたし。
この辺は少し車を走らせると風俗街に行ける。
以前行っていたことも知っている。
『どの位好きなん?』
『一緒に暮らしたいくらいかな』
『お姉は知ってるん?』
『いや、近いうちに言うつもり』
こんなやりとりが続いた。別に兄に嫌悪感はない。
それが兄の選んだ道なら良いのだろう。
熱が冷めて冷静になるかもしれない。
静観しておこう。
あたしの考えだ。
ただ母には知られたくない。
それだけ。
『好きな人がいる』
兄が義理姉に言う。
義理姉は黙っている。
『その人と一緒に暮らしたい』
沈黙の時間。
『生活費はいれて』
義理姉の答はこれだけ。
『なみに言ったんだ』
早いよ言うの…
『で?』
『生活費はいれてって』
『さすがお姉…』
義理姉は
肝が据わった人。
美人で気立ても良い。
多分、兄の性格を良く把握している。
長続きせずに
戻ってくると。
『るいちゃん、ソウタから聞いてる?』
義理姉が聞いてきた。
『うん、ごめん少しだけ』『浮気はムカつくけど、ソウタ多分戻ってくるよ』
『戻ってきたら許せるの?』
『あたしはお義母さんみたいに取り乱したくないからさぁ』
『だね』
ススッとスリッパの動く音。
あたし達はあさはかだった。
一番知られたくない人に知られた。
その日の夜。
仕事から帰って来てお風呂に入り
出かけようとする兄。
行き先は
決まっている。
庭にでた時、
『一緒に死のう』
包丁を持った母だ。
『何言ってるの?』
『あたしがこんなに苦しんでいるのに
何であんたはお父さんと同じ事をするのよ』
『なみちゃんが可哀相よ!!』
包丁を振り回す。
泣いている。
父が急いで止めにはいった。
『親子で同じ事して恥ずかしくないの』
泣きながら母は言う。
二人共無言だ。
そして、兄は行ってしまった。
母の精神状態は最悪になっている。
夜中まで
責め続けられる父。
いったいいつまで続くんだ。
そんな中、兄帰宅。
母は兄にも罵声を飛ばしたが、
無視していってしまった。
その行動が更に母を刺激した。
兄の友人が二人来た。
みんなで花火をすることになり、
兄、義理姉、姪二人、あたしの彼氏、友人で外にでた。
後方から足音がする。
母だ。
何か兄の友人達に罵声。
『いい加減にしろ、無視して』
と、兄。
なんでか兄が浮気しているのは
この友人達にそそのかされたからと
妄想していたらしい。
その場はしらけ
花火は中止。
姪が悲しげ。
あたしは姪と三人で手持ち花火だけした。
線香花火が寂しそうに
灯を落とした。
『るいちゃん』
姪の4歳の子がきた。
『どした』
『あのね、おばあちゃんたまに変な顔するの』
『恐いから遊ぶのイヤー』
『大丈夫だよ。おばあちゃんはおばあちゃんだから怖くないよ』
とは言ったものの、
孫にまで気づかれるとは母は重症だ。
母の心からの笑顔は
どんなだったのだろう。
あたしは思い出せない。
『なぁ、ヤクザに知り合いいる?』
兄だ。
唐突に何?
『いるよ~。すぐ動ける人?で、何で?』
『実は彼女にヤクザの男がいたんだ。俺の知り合いは金さえ払えば動いてくれるけど、あとが面倒なんだ』
『危なくなったら言ってよ。けどさぁ、お兄潮時でしょ』
『そうだな。俺は親父みたいに両方にいいかおできないしな』
父は何も失いたくないのだろう。
地位も名声も家も財産も。
ひとつ完全に消滅したのは
………絆………だ。
暫くして兄は女と切れた。
何事もなくすんだみたい。
女が兄を庇いただのお客だと言い張ったらしい。
多分、
女はソープをやめられないだろう。
お互い短い期間を真剣に愛しあったと思う。
自営業の兄は女の口座にこっそりお金を振り込んだ。それが違った愛の形と償いなのだろう。
兄と義理姉は普通の生活に戻った。
兄を受け入れた姉は凄いと思った。
少し違うのは義理姉が働きたいと言い出した事だ。
母と祖母と過ごす日中が辛いというのが理由だ。
二人の姪は保育園に入れる。
母は大反対した。
だか、姉の意志は固かった。
そして、働き先も見付かり義理姉は外の世界にでた。
義理姉のいない日中。
母は姉にきた封書の手紙を開けて読んだり、兄や父のように怪しい行動はないかチェックしていた。
母は誰の事も信じてはいないようだ。
手紙を見ても悪びれた様子もなく、
開封した封書を姉に渡す。
夫の裏切りで常識も消えてしまっているようだ。
あたしの中に母親像など
ない。
何故、そこまで父に執着しているんだろう。
今では父だけでなく、兄、義理姉、あたしの行動を全て知りたいらしい。
母からの電話は必ず最初の言葉は
『今、何処!』
電話に出るのが嫌になる。
父はあたし達の気持ちなどお構いなしだ。
『俺は俺でお母さんをケアしている』
偉そうに言うな。
誰のせいでこうなったと思っているんだ。
まだ、週一で会っているくせに…。
父の会社は平日固定休。
平日二日休みがあるのに
片方一日は会社に行くと出ていく。
そんなのは女に会っているとあたしたち兄弟は知っている。
兄の取引先の会社と父の会社がつながっているからだ。
父はばれていないと思っているが、
世間は狭い。
知らないのは母だけだ。
知られてはいけない。
賢明に嘘を塗り固めていく父。
会社が休みの日でも
『行ってきます』
と家を出て行き、いつもの時間に帰ってくる。
上手く立ち回っていると思っているのだろう。
滑稽だ。
いつかはばれるのに。
ばらすのは簡単。
でも、母がこれ以上病むのは困る。
あたし達に
被害がくるから。
父の帰りが一時間近く遅くなった。
母は何回も携帯にかける。
しかしドライブモードで父はでない。
母のイライラは頂点に達したのだろう。
がちゃがちゃ裁縫箱をさぐりだした。
タチバサミ。
今度は何?
肩より長い髪。
えっ?
自分でバサバサ切りはじめた。
そして
また泣く。
父が帰ってきた。
『なんで電話でないの?まだあの女と別れてないの?』
正解!
『道が混んでて』
嘘!
父は母の髪をキレイに切り心を落ち着かせた。
上辺の愛の夫婦。
この人達は幸せなのか?
過呼吸!
いつもの如く
ばあちゃんに大声で呼ばれた。
面倒臭い。
正直な気持ち。
父は飲み会でいない。
義理姉が母の背中を摩り
呼吸を整えさせる。
どっちが娘かわからない。
ばあちゃんが泣いている。『どうしてこんなになっちゃったんだろ…』
ばあちゃんの呟きにも刃は飛んだ。
『あたしの…気持ちなんてわからない…くせに…』
『誰もわかって…くれない』
哀しい顔のばあちゃん。
困った顔の義理姉。
あたしはどんな顔をしているんだろう。
きっと
感情のない冷めた顔…。
ギスギスした家族。
母は
相変わらず笑顔が消えている。
そして酒の量が増えた。
父の帰りを待つ時間
飲まないといられないらしい。
ビールの空いた缶が何本も。
目は虚。
ろれつもおかしくなる。
『お父さん…遅い』
独り言。
そんな日が続いた。
そして父に
『俺が悪いのはわかっているがいい加減にしろ』
一喝!
『あたしなんてどうなってもいいの』
車の鍵を持ち外へ行った。今度は飲酒運転かよ!
『ほっとけ』
お前の責任だろ!
捜しに行こうとしない父。オロオロするばあちゃん。
『るいちゃん、お願いだから捜しに行って』
涙目のばあちゃん。
ばあちゃんの為にあたしは行く。
兄にも連絡した。
見つからない。
少しすると
母の妹から電話が。
『うちに来たから迎えにきてあげて』
『うん、ごめんね』
ばあちゃんに電話し安心させて、
あたしは呼吸を整えた。
何か息苦しい。
妹の家に着いたのは夜中の12時を廻っていた。
虚な目の母を連れて帰り寝かせた。
嫌になった。
あたしは気持ちを解放して泣いた。
母の酒はとまらない。
まるで、
キッチンドランカーだ。
『アル中になるぞ!』
兄に言われた。
『あたしは親だ!何だその言い方は!』
つかみ掛かる母。
壊れている。
力で敵うわけもなく
兄に座らせられた。
『あたしの事を馬鹿にして。お父さんもあの女も…お前達も…』
泣いている。
泣き顔は見飽きた。
あたしは小さい時
お母さんが大好きな子だった。
あの大好きなお母さんはいない。
この人のことをお母さんと呼びたくない。
『心のよりどころある?』義理姉に聞かれた。
『彼氏かなぁ、お姉は?』『あのね、内緒だよ。好きになってはいないけど安心していれる人がいるの…』
あたしは兄・義理姉それぞれと仲良しだ。
お互いが知らない事もあたしは知っているくらいだ。義兄弟というより親友のような関係。
母はとても気に入らないらしい。
『好きじゃないの?』
『好きなのはソウタ。これも浮気なのかなぁ』
『あたしはお姉の好きなように生きてほしい。けど、絶対に知られないで』
『わかっている…』
知られたら最後だ。
きっとまた包丁を持ち出すだろう。
『見られたかも』
義理姉が困った顔で言う。
『まぢ。で、誰に』
『ゆりこさん』
ゆりこさんとは母の数少ない友人だ。
『少し様子をみようよ』
『うん…』
不安な表情だ。
あたしは気の利いた言葉が見つからなかった。
けど、
守りたいと思った。
あたしんちの中の色んな事に我慢してきた義理姉を
守りたい…………。
遅かった。
ゆりこさんは既に母に電話していた。
『なみちゃん、昨日車に一緒に乗っていたのは誰なの。』
『何の事ですか?』
しらをきる。
『誰が言ってたの?』
横槍を入れるあたし。
『誰だっていいでしょ!』
怒りに満ち溢れている。
父も同じ部屋にいるのだか無言。
自分に矛先が向かないようにだろう。
ずるい大人だ。
義理姉は黙っている。
母の中で何かが切れたのだろう。
平手が飛んだ。
『ふざけんな!誰のせいで家が目茶苦茶になったんだよ!』
言ってやった!
あ~気分がいい。
『それとこれは別問題だ』ここで父が始めて口出ししてきた。
何言ってるんだ、この人。目茶苦茶にした張本人が。
『夫婦の事は二人で解決しろよ』
さらに気持ちいい!
『話をすり替えるな!親を馬鹿にするのか!』
父がエキサイトしてきた。話にならない。
『私が悪いんです。あの人は友達です。
軽率でした。すみません』
姉は大人だ。
あたしは感情を殺すことはできるけど
大人になれない。
義理姉が低姿勢で謝り続けその場は納まった。
あたしは納得できない。
自分は不倫していて、
姉を責めようとした父。
まだ別れてないくせに!
あたしに同じ血が流れている。
汚い。
腹が立つ!
あたしは再び父がお風呂に入っている隙に携帯をみた。
メール。
『話すだけじゃなくて早く逢いたい』
気持ち悪い。
『焼きおにぎりを作ったの。あなたに食べさせたい』勝手に食べさせろ。
『体調崩さないでね』
倒れろ。
父がお風呂からでてくる前に
女のアドレスをあたしの携帯に送った。
痕跡が残らないよいにして戻した。
いったい
いつまで続けるつもりなんだ。
そんなに愛があるならお互い離婚して一緒になれ。
勇気がないくせに…
陰でこそこそ…
馬鹿にしているのはお前だ!
父の携帯電話には
女の名前が
男性の名前になっていた。そんな事しても
中身みたらばれるのに。
電話は朝晩。
通勤中に。
メールも沢山あった。
でも、あたしは見た事を後悔した。
最低な行為。
凄く嫌な人間になっている事に気づいたから。
きっと
あたしの顔は嫌な女。
兄はまだお金を振込み続ける。
義理姉はたまに癒しの人に逢う。
何故かあたしは二人の事は許せる。
二人の事が人間的に大好きだからだ。
そして
二人は家庭では一切その匂いを持ち込まない。
両方知っているのはあたしだけ。
だからお互い知らない。
仲の良い夫婦だ。
そんなの偽りと批判する人間もいるかもしれないが、それも愛だ。
父は家庭に持ち込み過ぎた。
崩壊への穴を開け塞ごうとしない。
自分の妻さえ救えない男が他人の妻の支え。
笑える。
泣ける。
地に堕ちろ。
あたしに偉そうに話すな。あたしはどんどん嫌な奴に変わっていく。
助けて。
『嘘だと言うなら自分で奥さんに聞いて下さい!!』
何?
『じゃあ調べたら!』
まさか…。
『主人に近づけないで』
やっぱり。
母は受話器を置いた。
相手は女の旦那。
地元の人間。
あたしの中学の先輩の親。恥をさらしているだけだ。
母は父が終りにしていない事に気づいていたのだろう。
『私、今日向こうの旦那に電話したから…』
母が父に言う。
父の顔は紅潮していく。
『お前は…』
『仕方ないじゃない。あなたは別れたっていっても不安なの』
『あなたは私には見えない事が多過ぎる』
泣きながら訴える母。
『だからって向こうの家族に教える必要はないだろ』
『もう終ったんだ』
嘘のうわぬり。
母は言い返す気力を失い遠い目をしている。
あたしは父を蔑んだ目でみている。
父は誰の目もみない。
何処に向かえば終らせられるのだろう………。
電話が鳴った。
『はい』
『新井ですが。
娘さん?久しぶりだね。
お父さんいる?』
相手の旦那。
先輩のお父さん。
『お久しぶりです。
お待ち下さい』
ドキドキしている。
落ち着け…。
『新井さんから』
父にぶつけるように言った。顔色が曇った。
『お電話かわりました』
会社か?
『いや~お久しぶりです』何言ってんだ?
『妻がご迷惑かけちゃって。すみませんでしたね』
お前だろ!
迷惑かけているのは。
『妻は今軽いうつ病でして少し被害妄想気味なんですよ』
わっと母が泣きだした。
『新井さんの奥さんと役員やったからって理由みたいで』
事実だろ!
『本当にすみませんね。妻には誤解だと言ってるんですがね』
ここまでくると役者だ。
何回か謝り電話を切った父。
『もう、かけるなよ』
逆切れか!
こんな家でたい。
愛のある場所に行きたい。あたしの今の願いだ…。
電話の件以来…
父と母の立場は逆転。
すぐ逆切れし話を終らせようとする父。
捨てないで
愛して
あたしを見て
側に居て
話を聞いて
と、縋る母。
父に対しては女。
自分の気持ちをあたし達に投げてくる時は鬼。
酒を飲み絡んでくる。
『るいには私の気持ち解らない』
『解るわけないし、つ~かあたしは取り乱したくない』
ビールの缶が飛んできた。何も言いたくない。
『自分で片付けて』
あたしは自分の部屋へ行き涙をこらえた。
泣きたくなかった。
泣きたくないから
鏡を見て造り笑顔をした。笑えてなかった…。
『最近笑顔無いね』
彼氏に言われた。
『に~って笑って』
『に~』
無理がある笑い。
あたしは20歳になった。
あたし達は結婚する事を望んでいる。
でも、
結婚式はしなくていい。
あの人達に祝福されたくないから。
彼氏の事は大好き。
でもそれだけで結婚したいのではないかも。
あの嫌な空間から逃れたい。
姓を変えたい。
新しい自分になりたい。
とにかく離れたい。
あたしの小さな願い。
『この家を出たい』
兄夫婦。
『何?』
『長男夫婦が何を言っている』
ここは田舎だ…。
話は平行線。
お互い譲らない。
何故、この黒い家から離れたい気持ちがわからないのか。
そんなに世間体が大事?
みんなの気持ちが壊れるより大事?
結局、
何日かの話し合いの結果、兄夫婦が折れ同じ敷地に家を建てる事に決まった。
あたしには結婚という逃げ道がある。
兄夫婦の逃げ道はなくなった。
きっと家は別になってもプライバシーはないだろう。そして、あの人達に振り回され続けるだろう。
家の設計が始まった。
あれこれ口出しする母。
気に入らないと
ヒステリックになる。
自分の家じゃないのに。
何処までも
自分の思い通りにしたいのだ。
思い通りにならない夫の代わりか?
母には心を寄せる場所がない。
だから
無理矢理作りだそうとしているのだろう。
ある程度は母の要求を聞いていた兄だが
『俺らの家だから。俺らで考える』
『あたしを抜け者にするつもり………』
『お父さんと同じ…あたしを抜け者にする…』
住宅メーカーが持ってきた設計図
ビリビリ
ビリビリ
破いた!
『ふざけんな!今後一切口出すな』
兄は怒った!
当たり前だ。
義理姉は母を宥める。
あたしは見てた。
みんな
気持ちがボロボロだ。
何処かに逃げたい。
でも、今逃げたら母は狂ったように捜すだろう。
怖くてできない。
そんな弱い自分も嫌。
兄の家の建築について口出しできなくなった母。
顔つきが恐い。
半分位家が建ちはじめた頃、
『合鍵を一本ちょうだい』『何で?』
怪訝な顔で兄が聞く。
『何かあった時の為…』
『無理だな。
別々の家に暮らす意味解ってる?
生活は別って事』
その通りだ。
母は諦めなかった。
姉に同じ事を言う。
姉はやんわりと断る。
まだ、諦めない。
住宅メーカーの営業に言う。
営業が施主以外に渡す訳がない。
執念だ。
この執念深さが
父が戻らない原因かもしれない。
渡さなくて正解。
プライバシーなど一切なくなる。
敷地は同じでも
ここから抜けれる兄達が
羨ましく思えた。
消えたい………。
兄の家は無事完成した。
義理姉が子供をおいて出かけた時
心配でばあちゃんに鍵を預けた。
母は何であたしにじゃいの?と怒った!
その後の鍵の行方。
解りきった事。
母の家にある。
ばあちゃんはあまりの迫力で渡してしまったと
悔やんでいた。
『ばあちゃんは悪くないよ』
こんなありきたりの事しか言えないあたし。
…ごめんね…ばあちゃん…
あたしは妊娠した。
彼氏の子。
ユウキ(彼氏)はすぐ結婚して育てようと言ってくれた。
でも…
あたしは…
母親になる恐怖・嫌悪感。産みたいのに産みたくない。
涙が止まらない。
どうしていいのか解らない。
あたしの家の事や状況を知っているユウキは
『大丈夫だから。
俺は裏切らない。
ずっと一緒にいて幸せにする』
嬉しい…
でも、恐い…
あたしは、母親になれるのか…
涙は止まらない。
抱きしめられていて
温もりを感じるのに…。
言い出せない。
父と母に言えないでいた。『俺が挨拶に行って言うよ』
両親にユウキが来る事を伝えた。
世間体が大好きな二人は家の人間以外には良い顔をするので、
ユウキはすんなり迎え入れられた。
『あの…るいさんのお腹の中に赤ちゃんができまして…』
『すぐにでも結婚したいと思っています』
ありがとう………。
父が口を開いた。
『いいんじゃないですか』
えっ?
何?
そんな答えかたあり?
やっぱり
そんなもんだったんだと
痛感した。
『おめでとう』なんて言われたら何て返そう…
そんな事を少しでも思った自分が
恥ずかしい。
この場から
消滅したい…。
『結婚式はしないよ』
『駄目だ』
父…
『何を言ってるの。
いくら妊娠しているからって結婚式はして』
母…
やっぱり世間体か……。
式を挙げないと家から出してくれなそうな空気。
ユウキと相談して
結婚式をする事にした。
式場の指定…
出席者の指定…
引き出物の指定…
誰の式?
あたしは勝手に引き出物をかえた。
やられた……!!
式場に提出する筈の
席順表がない。
何処?
あたしは探した。
グチャグチャになって
ごみ箱の中に入っていた。
頭にきた。
でも、そのあとは哀しみ。
『なんでこんな事するの?今日持って行くんだよ』
『勝手に決めたのはるいでしょ。
私は結婚式なんて出ない!!好きに何でもすればいい!』
何も言いたくなかった。
あたしは
グチャグチャの席順表を手で平にのばしながら
泣きたくないのに
泣いていた。
式場もここでは一番のところにした。
出席者も友人を削り親類を増やした。
引き出物くらい自由にしたかった。
祝福はしてくれないの?
ねえ、お母さん…………。
諦めた。
引き出物も母に譲った。
でも、あたしは
ひとつ決めた事がある。
式の最後に
両親への感謝の気持ちを伝えるスピーチや手紙を
カットする事…。
だって
あたし
言う事がない。
手紙も書く事がない。
世間体が大好きな二人は落胆するか怒るかだけど
どうしても
やりたくなかった。
やらなくても
プロの司会者は上手く進めてくれるだろう。
花嫁になる女性の心は綺麗な色だろう。
あたしは黒に近いグレー。
お腹が張る。
少し出血。
調度、検診日。
安静にしていないと
切迫流産の危険がある。
医師から言われた。
病院から帰ったら母の妹が玄関に居て帰るとこ。
叔母にあたしは病院の話をした。
叔母が帰った後
母の顔はみるみる怖くなった。
理由がわからない。
『何かした?』
『………………』
『………………』
母はキッチンに行き
シンクの中に
今まで飲んでいた湯呑み茶碗や急須を叩きつけた。
耳に残る割れる音。
『るいちゃんがお母さんより先に身体の事をおばちゃんに話たからだよ』
『話している時、何で自分には言わないんだって…』ばあちゃんが言った。
辛い。
身体も心も辛い。
あたしが謝らないと
母はもっと堕ちていく。
『ごめんね……』
悪いのはあたしなのか?
>> 72
大変申し訳ありませをが、私はそのような意見を聞きたくて書いているのではありません。
もしも相談したかったのなら私は違う板にスレッドをたてたと思います。
私にはうつがあり、たまに顔をだします。
誰も知らないここで
心の中を出して捨てれたら少し楽になるような気がしてスレッドをたてました。
母が一番辛いとありますが、あの家に関わっていない人にはわからないと思います。
ここには書いていない事もあります。
書いていない事でひとつ書くなら
産まれる筈のない子…
兄と義理姉は私の手を引いていてくれた存在です。
長々とすみませんでした。読んでくれているみなさん、不快に思いましたらレスして下さい。
閉鎖しますので。
みなさん、ありがとうございます。
応援してもらえて
ジーンとしました。
更新したいとすごく思いました。
読みづらい文章、理解しづらい文章あると思いますけど、お付き合いしていたたける方は宜しくお願いします💦
三ヶ月後には結婚式。
早く住む場所を決めないと。
あたしには気掛かりな事があった。
ばあちゃんの事。
凄く離れた場所に住みたかった。
でも、どうしても
ばあちゃんの事が気になって家から15分ぐらいのところにアパートを借りた。
その頃、ユウキは自分で仕事を始めたばかりで
とても忙しく、こつこつ必要な物を一人で揃えていった。
何でも一人で大変だったけど楽しかった。
母はあたしというあたる場所が無くなりかけた辺りから、ばあちゃんにあたるようになった。
『関係ない』
『話にはいらないで』
『早く寝ちゃえば』
『ここで横にならないで』あたるというより存在を無視しているのに近い。
酷いのは父も一緒に言う事。
ばあちゃんは黙っている。この二人は人間としての何かが壊れている。
あたしはばあちゃんの部屋でばあちゃんと沢山話した。
『出てもばあちゃんの顔見に来るよ』
ばあちゃんとあたしは泣きながらお茶を飲んだ。
結婚式当日。
妊娠六ヶ月。
兄に式場まで送ってもらい一人で式場に入った。
ユウキは車に乗れない両親と一緒に来るので少し遅い。
何組か式を挙げる人がいたが一人の式場入りはあたしだけだった。
無事に式も終り、
友人達が二次会を用意してくれていたので、
両親にことわり行こうとした時……
『ちょっと』
母に呼ばれた。
『何』
『二次会は遅れていって家に来なさい』
『なんで?』
『親戚やご近所に挨拶しないでどうするの!』
またか………。
『だって、こっちもみんな待っているし』
『いいから帰って挨拶して!』
この場でこれ以上怒らせられない…
仕方なく友人達に何回も謝って家に向かった。
ユウキにも謝った。
家につくと親戚と近所の人達で宴会が始まっている。
『主役が帰ってきたよ』
誰かが言う。
父も母も満足そうだ!
あたしは不満足。
少ししてから
『もういいかな?』
いいだろ………。
『まだみんな飲んでいるんだから』
『母親になるんだから自分勝手なことばかり言わないの!』
何言ってるの?
勝手なのはあなた達。
『行かせたっていいじゃん』
兄だ!
無視している母。
またあたしは諦めた。
そして、結局最後まで付き合わされた。
勿論、二次会は終った。
友人達やユウキに申し訳ない。
誰の結婚式だっんだろう。寂しくその日は終った。
新しい生活。
本当に嬉しかった。
幸せはこういうものなんだと思った。
普通の生活。
幸せ……。
……甘かった……
あたしが居なくなり
父は糸が切れたらしい。
仕事の帰りが遅くなった。
家電がなる。
実家の番号。
もう11時近い。
出ないあたし。
すぐに携帯がなりだした。出ない訳にはいかない。
『もしもし』
『お父さんが帰って来ないの』
『パチンコじゃないの?』『じゃあ見てきて』
えっ?
あたしは妊娠七ヶ月だよ…『帰ってくるよ』
『見てきて!』
『わかった、じゃあ』
電話を切った。
家はでたけど
かわらなかった。
ユウキの運転でいつものパチンコ屋に行ったがいない。
家に着いた頃
携帯が鳴った。
『帰ってきたの。会社にいたんだって』
単純・純粋?な人だ。
父の言う事は信じるのか。あたしはまたユウキに謝った。
ユウキは優しい人。
甘えてごめんね。
妊娠八ヶ月。
家を出て二ヶ月が過ぎた。
毎日電話がくるようになった。
必ず
『今何処?』
と聞いてくる。
父の気持ちのようにあたしも
離れていくと思っているのだろう。
電話にでなければ良いのかもしれないが
でるまで何回もかけてくるので最後はでてしまう。
母はあたしに何をしてほしいのだろう。
あたしには母の気持ちがわからない。
解ろうともしていない。
もう、本当に疲れていたから。
静かにそっと息もせず
横になりたい。
お腹に赤ちゃんがいなければ死にたかった。
死にたいって思っていたのはあたしだけじゃなかった。
ばあちゃんも…………。
母には会いたくなかったがばあちゃんが心配で実家にいった。
ばあちゃんも疲れた顔をしている。
痛々しい。
ばあちゃんの部屋でお茶飲んだ。
『もう可哀相で』
母心……。
『楽にしてあげて私も死にたい…』
言葉が返せない。
『ごめんね、るいちゃん』あたしはばあちゃんと手を繋いだ。
黙ったまま
ずっと繋いでいた。
あたしが死にたいって思ったことは言えない。
ばあちゃんをこれ以上苦しめられないから。
あまり長い時間
ばあちゃんのところに居ると
…抜け者にして…と
勘繰ってくる。
『行くね。また来るよ』
ばあちゃん生きて。
笑って。
あたし、もっと近くにいれるようにするから。
ばあちゃんの切ない気持ち。
あたしはユウキに実家の近くに行きたい事を言った。
ユウキは考え込んでいた。『それって辛くない?
覚悟を決めて言ってるなら家を建てるか?』
『俺は仕事で昼間いないからお義母さんの事は気にならないけど、るいは辛いと思うよ』
覚悟………
決まっていない……
でも、ばあちゃんが自転車で来れる距離の場所に行きたかった。
逃げ道を作ってあげたかった。
田舎なので実家の近くにはアパートは一棟もない。
家を建てるしか方法はなかった。
沢山考え悩み
家を建てたい事をユウキに伝えた。
『ひとつ嫌な事聞くけど。ばあちゃんはるいより先に亡くなると思う。
その後るいはお義母さんと大丈夫なの?』
大丈夫じゃない……
けど、今を大事にしたい…『大丈夫……じゃないかも。でも、その頃は普通になってるかも』
ユウキには素直に言える。他の人には
『大丈夫!』と答えるだろう。
家を建てる。
ユウキの両親にこちらの実家の側に建てる事を許してもらった。
ユウキの両親は羨ましいくらい仲良し。
『二人で老後を楽しむから、あなた達も楽しんで』
そう言ってくれて嬉しいがごめんなさいと思った。
そして、
あたしの両親にも言った。二人共
どうぞって感じ。
何もわかっていない。
ばあちゃんと兄夫婦は近くになる事を喜んでくれながら心配もしてくれた。
覚悟が決まった…………。
ユウキと兄が動いてくれたので家の事は順調に進んでいった。
頼らないあたし達に腹を立てていた両親。
頼りたくなかった。
母は毎日イライラしていた。
『何で何も言わないの?』電話口で母の声。
臨月でイライラしていたあたしは
『ほっといて』
言ってしまった。
後悔しても遅い。
母は号泣。
受話器の向こうで泣きながら父に何か言っている母。
『親を馬鹿にするな!』
突然の怒鳴り声。
『お前のせいでお母さんがまたおかしくなったじゃないか!!』
あたしのせい……?
母をうつに追い込んだ人は誰?
あたしのせい………。
そのあとも何か言われたが覚えていない。
その日は
どんなに電話が鳴ってもでなかった。
でたくなかった。
朝、破水!!
初めてのことで最初は何か解らなかった…。
えっおもらし?と思ったが歩く度に出る。
破水って解ったのは妊娠の本を見て。
急いでユウキに電話したがユウキは仕事で県外にいた。
『お兄さんに電話するから待ってて。ダメならタクシー呼ぼう。るいはお義母さんに電話しな』
母に電話した。
『破水したの』
『今は行けないよ』
母の答え。
あたしは突き落とされた。
すぐに兄夫婦が車で来てくれた。
車の中で陣痛が始まった。
病院に着き
兄夫婦に付き添われ
分娩室へ。
産まれる前にユウキも来てくれた。
ユウキのお母さんも来てくれた。
一人じゃないからとユウキが声をかけてくれ
嬉しかった。
無事、出産。
出産後
個室に入りウトウトしていると
母が来た。
母はユウキのお母さんが居る事にばつが悪かった。
『ご近所に配るお赤飯炊いていたら遅くなっちゃって』
あたしは眠いと目を閉じ泣かないように頑張った。
今日からお母さん……。
強くなる…
泣かない…
入院中の四日間。
毎日母は来た。
あたしの為ではなく
代わる代わるくる親類の為。
そして………
『里帰りするんでしょ?』したくない……
『お母さんが大変だからいいよ』
本心ではない……
『何言ってるの?うちの辺はみんな帰ってくるのに、あんたが帰って来なかったら変に思われるでしょ』
孫の為じゃないのか……
『解った…ユウキに言っとく』
これで満足?
世間体は保たれた?
無事退院。
ユウキが迎えに来てくれて息子と一度アパートに帰った。
携帯が鳴る。
また母…。
『まだ来ないの?ご近所がまだって聞きに来たのよ』『あ~一度アパートにもどったから』
水入らずにさせて…。
『そう』
怒っているのが解る…。
『すぐ行くよ』
休まらない…。
ユウキはやり取りを聞いていてすぐに送ってくれた。
…ごめんね…
…毎日顔見に行くよ…
そんな会話をしながら実家に向かった。
待ち兼ねたように三人の近所のおばちゃん達がいて
息子は取り上げられた…。
ユウキとあたしはニコニコしていたが少なくともあたしは偽りの笑顔…
心からなんて笑えない…
やっぱり母は満足そうだ。
ばあちゃんはご近所さんにも母にもあたし達にも気を使い大変そうだった。
ばあちゃんを気遣う余裕があたしにはなかった。
ごめんね………。
父の帰りは遅かった。
孫の顔より
女が良いのだろうか?
とっくに会社は出ているらしい。
母が会社に電話して聞いていた。
今日は何て言い訳するのだろう。
母はビールを飲んでいる。目がすわってきた。
11時過ぎ帰ってきた。
『何してたの?私会社に電話したのよ!6時には出たって言われた!』
『会社には電話するなって言ってるだろ!
疑って楽しいのか!』
逆ギレか?
この人達はこんな会話をいつも繰り返しているのか?愛を求める母
義務と同情の父
女と別れるつもりがないのならせめて誰も苦しまないように立ち回ってほしい。
『あんな綺麗じゃない女の何処がいいのよ!』
酒の力か母は止まらない。『別れたって言ってるだろ』
『ねえ、もうやめなよ』
『お前には関係ない!』
そっか関係ないんだ。
好きで関わっている訳じゃないのに…。
『別れていないのはわかっているのよ!』
母が子機を持ちフラフラ落ち着きなく話している。
相手はあの人だ……。
『はっきり言いなさいよ!!』
女は何て答えているのか?
『そこに住めないように周り中に言ってやるから!』そろそろとめたほうがいいのか…………。
きっと女は白をきっているだろう。
『家庭を壊して楽しいの?もう一切会わないで下さい!』
母は電話を切った。
抑えられないんだろう。
周りにある物を投げはじめた。
勿論、子機は最初に投げた。
やらせておこう。
片付けはあたしとばあちゃんだけど…。
父は女と別れず
母は病んだまま
何も変わらないまま
里帰りも終り
あたしは戻った。
もうすぐ家も完成に近づいてきた時
ばあちゃんが倒れた。
緊急入院…………。
脳溢血……。
体力も落ち
血圧も異常に高い。
具合が悪いのにニコニコして我慢していたのだ。
意識不明になり
入院して四日後
亡くなった……………。
あたしは病室で声をあげて泣いた…
ばあちゃんは辛いのをがまんしていたのに
最後まで
辛いまま
逝ってしまった。
本当に本当に
ごめんなさい………
………葬儀………
田舎の葬式は家で行う。
お見送りの参列者も本当に多い。
その中に居たのだ。
女が………
地元の人間だから来て当たり前なのだか……
母はまだ気づかない。
今日は
何もおこさないで。
私の願い。
私は兄夫婦叔母夫婦に教えいつでも制止できる位置をとった。
大勢の参列者の前で
喪主の父が挨拶をした。
あたしたち血縁者は参列者を前に横一列で整列したので
母は気づいた………
出棺になる直前
母が女のところへ行こうとした!
兄が腕を掴み
あたしと姉は前に立ち
叔母夫婦は後に立った。
『止めて。
静かに送り出して』
小声で淡々と言った。
母は泣いている。
参列者はばあちゃんへの哀しみで泣いていると思っているだろう。
半分は女への憎しみだろうが。
父は何を思っているのか
全然理解できない。
何事もなかったような顔をしている。
あたし達の新居への引越
ばあちゃんの一周忌
どんどん時間は過ぎているのにあの家だけは
変わらない。
黒い陰に包まれたまま……
ほっとけない自分
ほっとけばという自分
あたしはどうすれば
いいのだろうと
考え込む毎日。
母が人間ドックに行く…
父は送って帰って来るという。
ここしかない………
あたしは実家へ行った。
父がいた。
お茶を入れ
気持ちを落ち着かせた。
『ねえ、なんでこんなになっても一緒に居るの?』
穏やかに聞いた。
少し間を置き父が口を開く。
『ここは田舎だからなあ』『離婚は中々できなかったよなあ』
以外だ。
普通に答えてきた。
『じゃあなんであの人と別れないの?』
さっきと同じ口調で聞いた。
『落ち着けるんだよな』
母は美人だが気性が荒い。
あの人は美人とは程遠い小綺麗な人受けするおばさん。
『お母さんが辛そうにしているのは平気なの?』
『平気じゃないな…』
『平気じゃないのになんで続けるの?』
『この家には俺の居場所はないからな………』
父も寂しかったの………?
居場所がないから不倫…
それで壊れていった家族
……………絆………………
『まだ続けるの?』
『わからないな』
『だってみんな壊れちゃうよ』
『お母さんもみんな』
『あたしだって限界だよ』少しずつ涙が出てきた。
泣きたくないのに。
黙っててズルイ父…
『解ってる
……ごめんな……』
謝るなら
もう止めて…………
父の本心が聞けた。
父もまた寂しく哀しい人だった。
あの人と付き合ってもう少しで10年。
今すぐ別れるのは無理だろう。
『別れられないなら
それでもいいよ……』
『けど、誰にも気づかれず悟られないでほしい』
『お母さんには別れたって言ってほしい』
『もうみんなを楽にしてあげてほしい』
黙って父は頷いた………
あれから父は少し変わった。
母を気遣うようになった。
母の気持ちを落ち着かせる為
色々なところへ行った。
まだ別れてはいないが
母には
完全に別れたと言った。
母のうつ病は治っていないが
以前よりは確実に良くなっている。
父はあの人とは
あまり会わないようにしている。
夜も家にいる。
母は父と一緒に居る時間は安定してきた。
あたしの家族は壊れたが
あの人の家族はどうだったんだろう。
あの人に聞く事は一生ないが気になる。
裏切りは
廻りの人間の心を閉ざす。母は以前の
裏切りの前の母には戻らないだろう。
でも
父と残りの人生を歩む。
あたしは見守る。
そこに愛があるかないかはわからないけど
見守り続ける。
裏切られても
壊されても
父と母に
変わりはないから………。
>> 136
終わっちゃったんですね😢
もっとこれからいろんなことあるだろうと思ったけど、にゃおんさんも、自分の家庭を持ったことだし、もうあんまり父と母の…
みきおさん、レスありがとうございました。
昨日
ばあちゃんに貰ったランタナが今年も咲き
穏やかな気持ちになりました。
相手の女の人は
夫婦で商売をしていて地元では有名な会社です。
体裁があるので
離婚は絶対にないと思います。
- << 151 相手の家は商売してるんですか、なら壊すのはやりやすいですね、私なら自分の手を汚さずに相手の家を壊しにかかるでしょう。多分自分が迷惑被った程度の仕返しくらいはやりたいですね、鬱になるくらいなら、それくらいの意気込みで、元気になりたい💦💦 おかしいですか?わたし。
>> 170
RM.mamaさん、
レス
ありがとうございます。
『裏切り~』を
完結させた時に書く事で少し心が軽く感じ、
『好き?~』を
書こうと思いました。
私が書いたのは
この二作です。
現在も
『裏切り~』の続きの生活を送っていますが
ここに書くだけで
私は救われた気持ちです。
二作とも
読んで頂いて
ありがとうございました。
幸せ願望さん、レスありがとうございます。
お辛いですね。
大丈夫ですか?
私もウツをもっているので解りますが本人でないと苦しみは解りません。
どうか前向きに生きて幸せを取り戻して下さい。
私は先日、電話で母に泣かれました。
『何年も裏切り続けられて何年も二人(父と相手)に騙され続けられて一緒に暮らすのが辛いの。
離婚したいの。』
私は何年も不倫で病んでいた母の心の叫びを初めて聞いたような気がして切なくなりました。
母は私に溜まったイライラをぶつけるだけで
心は開かなかったからです。
今日、これから実家に行き話を聞いてくるつもりです。
幸せ願望さんは
息子さんには話せないでしょうか…?
母は私が話を聞くことで少し心を落ち着けます。
私は母の手を離しません。離せば母は堕ちていってしまうので。
幸せ願望さん、どうか自分を追い込まないようにしてください。
あなたが正しいのだから光は射しますから…
新しいレスの受付は終了しました
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
タイムマシン鏡の世界4レス 109HIT なかお (60代 ♂)
-
運命0レス 68HIT 旅人さん
-
九つの哀しみの星の歌1レス 76HIT 小説好きさん
-
夢遊病者の歌1レス 91HIT 小説好きさん
-
カランコエに依り頼む歌2レス 95HIT 小説好きさん
-
神社仏閣珍道中・改
(続き) この日、お宮参りの赤ちゃんとそのご家族がみえました。 …(旅人さん0)
274レス 9562HIT 旅人さん -
私の煌めきに魅せられて
私の初恋の続き、始まったかもしれません。。。 「それにしても玲ち…(瑠璃姫)
55レス 602HIT 瑠璃姫 -
北進ゼミナール フィクション物語
勘違いじゃねぇだろ飲酒運転してたのは本当なんだから日本語を正しく使わず…(作家さん0)
15レス 194HIT 作家さん -
仮名 轟新吾へ(これは小説です)
想定外だった…て? あなた達が言ってること、 全部がそうですけ…(匿名さん72)
196レス 2927HIT 恋愛博士さん (50代 ♀) -
タイムマシン鏡の世界
そこで、私はタイムマシン作ること鏡の世界から出来ないか、ある研究所訪ね…(なかお)
4レス 109HIT なかお (60代 ♂)
-
-
-
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②4レス 136HIT 小説好きさん
-
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?11レス 142HIT 永遠の3歳
-
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令1レス 151HIT 小説家さん
-
閲覧専用
今を生きる意味78レス 523HIT 旅人さん
-
閲覧専用
黄金勇者ゴルドラン外伝 永遠に冒険を求めて25レス 973HIT 匿名さん
-
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 136HIT 小説好きさん -
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 142HIT 永遠の3歳 -
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 151HIT 小説家さん -
閲覧専用
おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1405HIT 檄❗王道劇場です -
閲覧専用
今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 523HIT 旅人さん
-
閲覧専用
サブ掲示板
注目の話題
-
美人や可愛い子は恋愛で苦労しない
男性が彼女候補を選ぶ時って顔やスタイルなどの容姿がクリアしたら内面を見ていくって感じじゃないですか?…
151レス 5342HIT 恋愛したいさん (30代 女性 ) -
妻子を養ってあげてる。結婚してる男性
私は男で妻と子どもがいます。子どもは現在6歳です。子育ては大変ですが自分も手伝ってます。妻は専業主婦…
25レス 993HIT 相談したいさん -
働いてないのに働いてると嘘をつく母親たちの心理は?
母親は離婚しシングルになり私は母親に引きとられました。 母親は実家に依存し私の子育てもほとんど祖母…
6レス 233HIT 育児の話題好きさん (30代 女性 ) -
自然消滅?ご意見お願いします!!
返信がない彼氏。 お互いアラサーです。付き合って3ヶ月の彼氏がいます。 GW明けにLINEで…
6レス 206HIT 恋愛好きさん (20代 女性 ) -
これからの時代子ども作っても大丈夫?
まだ子どもいない新婚ですがこれからの時代子ども作っても損しそうで心配 昔は子育てにお金かけず子…
9レス 340HIT 育児の話題好きさん (30代 女性 ) -
神社仏閣珍道中・改
【神社仏閣珍道中】 …御朱印帳を胸に抱きしめ 人生いろいろ、落ち込むことの多い年頃を迎…
274レス 9562HIT 旅人さん - もっと見る