裏切りのこちら側
不倫する父親
精神崩壊していく母親
浮気する兄
浮気する義理姉
そして私は…。
家庭という小さい世界は崩壊していく。
ノンフィクションかフィクションか?
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泣いている。
母親が泣いている。
何故?
父親の車の中から
女と一緒に写っている写真とコンドームがでてきたからだ。
父は認めた。
あたしが15歳からの付き合いらしい。
今、あたしは19歳。
浮気ではない。
不倫だ。
『るい…お父さんが…』
あたしに泣きつかないで。崩れないで。
女にならないで。
強い母親の姿をみせて。
あたしは泣かない。
父の相手。
最悪だ。
あたしの中学の先輩の母親。
学校の役員同士。
もちろん母親も顔見知り。疑わしい事は何回もあった。
パチンコと言っている割にはタバコの臭いもせず、
女の臭い。
その時は発覚前だった。
でも、母は父のいない時にその時着ていたワイシャツを燃やした。
高校生の時はパチンコ屋に探しに行かされた事もある。
でも、まだ確信がなかった。
母は信じようとしていた。信じることで、
自分を保っていた。
あたしはどうでも良かった。
『別れる』
父が言った。
『別れられるの?』
ヒステリックに母は言う。母の妹夫婦も同席。
父は女に電話して何やら話している。
『今から別れてくる』
『るいもついていって見てきて』
泣き声で母はあたしに言う。
嫌だけど仕方ない。
兄は仕事でいない。
そして、あたしは父と一緒に女が待つ場所に向かった。
あたしはまだ19歳。
こんな役目をさせる母が嫌い。
女の車だ。
暗がりのあまり通りのない道に停まっていた。
少し離れた後方に車を停めた。
母はちゃんと別れるのか見てこいと言ったが、あたしは車の中に残り、
父だけで行った。
何かもめている。
長い時間が流れた。
父が帰ってきた。
『カッターだしてきて死ぬって言われた』
『マジ』
結構人事だ。
『だけど説得して別れてきた』
『そうなんだ』
嘘…別れてないでしょ。
これがあたしの本心。
無言のまま帰宅。
妹夫婦はまだいる。
母は泣き腫らした顔だ。
『どうだったの』
声にならないような声で母が聞く。
『別れた』
『本当なの…?るい?』
あたしに振るな…。
『車の中にいたけど別れたんじゃない』
母の顔色が安堵から不安な顔色に変わった。
そして、あたしを睨んだ。『なんでなんでちゃんと見てこなかったの?るいに行ってもらった意味がないじゃない』
泣いている。
泣きたいのはこっちだ。
母親ならあたしの気持ちも察しろ。
母の妹はあたしに目で合図する。
我慢しろって事らしい。
あたしはいったい何なんだ。
この人達は誰だ。
あたしが喚きたい。
でも、心を殺した。
『ごめん』
母に一言だけ言った。
疲れた。
リストカット。
母は死ねないくせに
剃刀を引いた。
あたしはおどろかなった。そんな態度のあたしが
母は気に入らない。
心配してほしくて、気を引きたくてリスカする。
疲れる。
兄もあたしと同じ。
冷たい態度だ。
あたしは兄と仲が良い。
それも母は気に入らないらしい。
自分はダンナに浮気された可哀相な女なんだから、
みんなが自分に気をつかわなければいけないんだ…と変な考えがあるらしい。
そんな事言われても
あたしも兄も困る。
こんな精神状態の中、
気晴らしになればと義理姉と母が出かけた。
最悪のタイミング。
相手の女と鉢合わせしたのだ。
気の強い母は近づいた。
『泥棒猫!!』
言ってしまった。
『何言っているんですか』女は白を通す。
殴った!
母は平手打ちをした。
醜い。
義理姉が制止させた。
義理姉には感謝の気持ちでいっぱいだ。
母は母親ではなく、
完全な女になった。
せめて、あたしや兄の前では禀としてくれよ。
あたしの中の家族は兄と義理姉だけになった。
女の母。
父とあたしの会話を違う部屋で聞いている。
あたしの笑い声が気に入らないと
ヒステリックになった。
娘の笑い声が気に入らない母親。
実の娘にそんなことを言える母。
ああ、この人は誰なんだとあたしは真面目に考えた。考えると心は暗くなった。だから、
心を捨てた。
楽だから。
二度目のリスカ。
また切った。
いい加減にしてくれ。
あたし達にどうしてほしいの?
『お母さんは被害者よ。可哀相ね。
でも頑張って』
とでも言ってほしいの?
言わないよ。
だってあなたは
あたしの母親じゃないから。
毎日毎日責められる父。
家事をあまりしなくなった母。
暗い顔。
病んでる心。
父は精神科に連れていきカウンセリングを受けさせた。
自分の不始末を医師に伝えた。
当たり前だ。
別れきれていないのに、よく話せたものだ。
医師に家族の事を聞かれると母は泣いた。
『息子は冷たく娘はドライすぎる』
『あたしに関心がない』
自分勝手な人。
あたし達の気持ちは
どうでもいいんだね。
父の携帯。
絶対誰にも触らせない。
あたしは父がお風呂に入っている隙にみた。
やっぱりね!
朝晩ご丁寧に同じ番号の履歴。
笑えた。
別れた。な~んて嘘じゃん。
母の精神状態を心配しているのは何で?
世間体?
本当に自殺されたら困るから?
偽りの家族。
『親父…今日仕事だよなぁ。』
兄が言う。
『だね』
『でもさぁ。俺見たよ。女もいたし』
『まぢ』
『まだ切れてないな、きっと』
兄に携帯の事を言った。
『また、お袋発狂だな』
疲れたように言った。
『あたし達が被害者だよね』
あたしも疲れたように返した。
こんなに崩壊寸前でも
女と別れられない理由は何だ?
何をお互い求めているんだ。
19歳のあたしには
理解不能だ。
変な手紙がきた。
定規で書いた文字。
内容は
もっと妻を大事にしろ
俺は影で奥さんをみている支援者的な事。
あたしも父も兄も
母の自作自演だと直ぐに解った。
何故なら
母は初めての相手が父。
それから今まで父の事しか見てきていない。
それは痛い程知っているから。
気持ちが追い詰められているのだろう。
何通かきて、父がいい加減やめてくれないかと母に言った。
母は
『知らない』
と言ったが
それから手紙は来なくなった。
精神状態は更に不安定に。
父は毎日仕事が終ると母に電話をしてきた。
会社を出て家に着くまでの時間が
少し遅くなると母の目が虚になる。
そして父は責められる。
その繰り返しだ。
『電話してもでない。何してるんだろう』
知るかそんなの…あたしは心で呟く。
『るいの携帯ならでるかも。ねえ、電話して』
鬼の形相。
嫌とは言えない空気。
仕方なくかけた。
出るなよと思いながら…。
『もしもし』
あ~あ、でちゃったよ。
『何で何で。あたしだとでないで、るいだとでるの』
また泣いている。
泣かれても困る。
そんな事言われても困る。このことは
あたしにも嫌な方向に向かった。
友達と家電で話てると
突然何も聞こえなくなった。
何?故障?と思ったら
電話のもとを抜かれたらしい。
あたしが電話しているのが気に入らなかったらしい。何故か涙がでた。
感情を捨てたつもりだったのに涙がでた。
とまらなかった。
あたしの存在は母の中では邪魔だったのだろう。
そして、あたしは自分の存在を全否定されたように思えた。
父親へ愛を求めすぎ、廻りの存在は邪魔なのだろう。
あたしは誰なんだ…?
あんたの最愛の娘じゃないのか?
父親に裏切られたのに
母は父を恨みきれない。
辛い気持ちをぶつける矛先。
それはあたしだった。
あたしは疲れた。
疲れすぎた。
二日間彼氏の家に避難した。
義理姉から電話。
『るいちゃん、お義母さんが捜索願い出すって言い始めているから帰って来て』
『ごめん帰るね』
あたしは家に帰った。
母は自分をぶつける相手を戻したかっただけだった。
ガンガン!ガンガン!
ガンガン!ガンガン!
凄い音がする。
何だよと思いながらキッチンへ。
狂ったように包丁で
キッチンのステンレスの部分を叩いている。
止めるのも面倒だ。
父を呼んだ。
父が止めさせた。
きっと母は自分の存在価値を示しているのだろう。
他に表現方法はないなかと思うが
話たくない。
リスカされるよりマシか!
みんなが疲れている。
あたしが仕事でいない時間、母と過ごす義理姉とその子供二人。
さらにうちには母の実母もいる。
義理姉もストレスが溜まりげっそりと痩せた。
兄は義理姉に感謝しつつ、話を聞いたり慰めたりやはりストレスだ。
あたしも同じような状況。
父に関しては何を考えているのかさっぱり解らない。父は仕事が終ると急いで帰ってくる。
しかし付き合いで飲みに行く時もある。
そんな時は大変だ。
きまって過呼吸になるのだ。
そしてきまってばあちゃんが大声で言う。
『るいちゃん、なみちゃん大変だよ!』
渋々行くあたし。
急いで行く義理姉。
行かないとばあちゃんが倒れそうだから。
あたし達が行くと、自作自演のような過呼吸は暫くすると終る。
みんな心底辛くなってきた。
逃げたい。
ここから。
多分みんなが思っている。兄の帰りが遅くなり始めた。
何か怪しい。
でも、少しほおっておこう。
見て見ない振り。
何故か自由にさせてあげたい。
お姉ごめん…と思いながら。
予感的中。
兄は罪悪感からかあたしに言ってきた。
『好きな女ができた』
げっ好きになっちゃってるんだ。あたしの感想。
『何処の誰?』
ためらいながら兄は口を開いた。
『ソープ嬢…』
あまり驚かないあたし。
この辺は少し車を走らせると風俗街に行ける。
以前行っていたことも知っている。
『どの位好きなん?』
『一緒に暮らしたいくらいかな』
『お姉は知ってるん?』
『いや、近いうちに言うつもり』
こんなやりとりが続いた。別に兄に嫌悪感はない。
それが兄の選んだ道なら良いのだろう。
熱が冷めて冷静になるかもしれない。
静観しておこう。
あたしの考えだ。
ただ母には知られたくない。
それだけ。
『好きな人がいる』
兄が義理姉に言う。
義理姉は黙っている。
『その人と一緒に暮らしたい』
沈黙の時間。
『生活費はいれて』
義理姉の答はこれだけ。
『なみに言ったんだ』
早いよ言うの…
『で?』
『生活費はいれてって』
『さすがお姉…』
義理姉は
肝が据わった人。
美人で気立ても良い。
多分、兄の性格を良く把握している。
長続きせずに
戻ってくると。
『るいちゃん、ソウタから聞いてる?』
義理姉が聞いてきた。
『うん、ごめん少しだけ』『浮気はムカつくけど、ソウタ多分戻ってくるよ』
『戻ってきたら許せるの?』
『あたしはお義母さんみたいに取り乱したくないからさぁ』
『だね』
ススッとスリッパの動く音。
あたし達はあさはかだった。
一番知られたくない人に知られた。
その日の夜。
仕事から帰って来てお風呂に入り
出かけようとする兄。
行き先は
決まっている。
庭にでた時、
『一緒に死のう』
包丁を持った母だ。
『何言ってるの?』
『あたしがこんなに苦しんでいるのに
何であんたはお父さんと同じ事をするのよ』
『なみちゃんが可哀相よ!!』
包丁を振り回す。
泣いている。
父が急いで止めにはいった。
『親子で同じ事して恥ずかしくないの』
泣きながら母は言う。
二人共無言だ。
そして、兄は行ってしまった。
母の精神状態は最悪になっている。
夜中まで
責め続けられる父。
いったいいつまで続くんだ。
そんな中、兄帰宅。
母は兄にも罵声を飛ばしたが、
無視していってしまった。
その行動が更に母を刺激した。
兄の友人が二人来た。
みんなで花火をすることになり、
兄、義理姉、姪二人、あたしの彼氏、友人で外にでた。
後方から足音がする。
母だ。
何か兄の友人達に罵声。
『いい加減にしろ、無視して』
と、兄。
なんでか兄が浮気しているのは
この友人達にそそのかされたからと
妄想していたらしい。
その場はしらけ
花火は中止。
姪が悲しげ。
あたしは姪と三人で手持ち花火だけした。
線香花火が寂しそうに
灯を落とした。
『るいちゃん』
姪の4歳の子がきた。
『どした』
『あのね、おばあちゃんたまに変な顔するの』
『恐いから遊ぶのイヤー』
『大丈夫だよ。おばあちゃんはおばあちゃんだから怖くないよ』
とは言ったものの、
孫にまで気づかれるとは母は重症だ。
母の心からの笑顔は
どんなだったのだろう。
あたしは思い出せない。
『なぁ、ヤクザに知り合いいる?』
兄だ。
唐突に何?
『いるよ~。すぐ動ける人?で、何で?』
『実は彼女にヤクザの男がいたんだ。俺の知り合いは金さえ払えば動いてくれるけど、あとが面倒なんだ』
『危なくなったら言ってよ。けどさぁ、お兄潮時でしょ』
『そうだな。俺は親父みたいに両方にいいかおできないしな』
父は何も失いたくないのだろう。
地位も名声も家も財産も。
ひとつ完全に消滅したのは
………絆………だ。
暫くして兄は女と切れた。
何事もなくすんだみたい。
女が兄を庇いただのお客だと言い張ったらしい。
多分、
女はソープをやめられないだろう。
お互い短い期間を真剣に愛しあったと思う。
自営業の兄は女の口座にこっそりお金を振り込んだ。それが違った愛の形と償いなのだろう。
兄と義理姉は普通の生活に戻った。
兄を受け入れた姉は凄いと思った。
少し違うのは義理姉が働きたいと言い出した事だ。
母と祖母と過ごす日中が辛いというのが理由だ。
二人の姪は保育園に入れる。
母は大反対した。
だか、姉の意志は固かった。
そして、働き先も見付かり義理姉は外の世界にでた。
義理姉のいない日中。
母は姉にきた封書の手紙を開けて読んだり、兄や父のように怪しい行動はないかチェックしていた。
母は誰の事も信じてはいないようだ。
手紙を見ても悪びれた様子もなく、
開封した封書を姉に渡す。
夫の裏切りで常識も消えてしまっているようだ。
あたしの中に母親像など
ない。
何故、そこまで父に執着しているんだろう。
今では父だけでなく、兄、義理姉、あたしの行動を全て知りたいらしい。
母からの電話は必ず最初の言葉は
『今、何処!』
電話に出るのが嫌になる。
父はあたし達の気持ちなどお構いなしだ。
『俺は俺でお母さんをケアしている』
偉そうに言うな。
誰のせいでこうなったと思っているんだ。
まだ、週一で会っているくせに…。
父の会社は平日固定休。
平日二日休みがあるのに
片方一日は会社に行くと出ていく。
そんなのは女に会っているとあたしたち兄弟は知っている。
兄の取引先の会社と父の会社がつながっているからだ。
父はばれていないと思っているが、
世間は狭い。
知らないのは母だけだ。
知られてはいけない。
賢明に嘘を塗り固めていく父。
会社が休みの日でも
『行ってきます』
と家を出て行き、いつもの時間に帰ってくる。
上手く立ち回っていると思っているのだろう。
滑稽だ。
いつかはばれるのに。
ばらすのは簡単。
でも、母がこれ以上病むのは困る。
あたし達に
被害がくるから。
父の帰りが一時間近く遅くなった。
母は何回も携帯にかける。
しかしドライブモードで父はでない。
母のイライラは頂点に達したのだろう。
がちゃがちゃ裁縫箱をさぐりだした。
タチバサミ。
今度は何?
肩より長い髪。
えっ?
自分でバサバサ切りはじめた。
そして
また泣く。
父が帰ってきた。
『なんで電話でないの?まだあの女と別れてないの?』
正解!
『道が混んでて』
嘘!
父は母の髪をキレイに切り心を落ち着かせた。
上辺の愛の夫婦。
この人達は幸せなのか?
過呼吸!
いつもの如く
ばあちゃんに大声で呼ばれた。
面倒臭い。
正直な気持ち。
父は飲み会でいない。
義理姉が母の背中を摩り
呼吸を整えさせる。
どっちが娘かわからない。
ばあちゃんが泣いている。『どうしてこんなになっちゃったんだろ…』
ばあちゃんの呟きにも刃は飛んだ。
『あたしの…気持ちなんてわからない…くせに…』
『誰もわかって…くれない』
哀しい顔のばあちゃん。
困った顔の義理姉。
あたしはどんな顔をしているんだろう。
きっと
感情のない冷めた顔…。
ギスギスした家族。
母は
相変わらず笑顔が消えている。
そして酒の量が増えた。
父の帰りを待つ時間
飲まないといられないらしい。
ビールの空いた缶が何本も。
目は虚。
ろれつもおかしくなる。
『お父さん…遅い』
独り言。
そんな日が続いた。
そして父に
『俺が悪いのはわかっているがいい加減にしろ』
一喝!
『あたしなんてどうなってもいいの』
車の鍵を持ち外へ行った。今度は飲酒運転かよ!
『ほっとけ』
お前の責任だろ!
捜しに行こうとしない父。オロオロするばあちゃん。
『るいちゃん、お願いだから捜しに行って』
涙目のばあちゃん。
ばあちゃんの為にあたしは行く。
兄にも連絡した。
見つからない。
少しすると
母の妹から電話が。
『うちに来たから迎えにきてあげて』
『うん、ごめんね』
ばあちゃんに電話し安心させて、
あたしは呼吸を整えた。
何か息苦しい。
妹の家に着いたのは夜中の12時を廻っていた。
虚な目の母を連れて帰り寝かせた。
嫌になった。
あたしは気持ちを解放して泣いた。
母の酒はとまらない。
まるで、
キッチンドランカーだ。
『アル中になるぞ!』
兄に言われた。
『あたしは親だ!何だその言い方は!』
つかみ掛かる母。
壊れている。
力で敵うわけもなく
兄に座らせられた。
『あたしの事を馬鹿にして。お父さんもあの女も…お前達も…』
泣いている。
泣き顔は見飽きた。
あたしは小さい時
お母さんが大好きな子だった。
あの大好きなお母さんはいない。
この人のことをお母さんと呼びたくない。
『心のよりどころある?』義理姉に聞かれた。
『彼氏かなぁ、お姉は?』『あのね、内緒だよ。好きになってはいないけど安心していれる人がいるの…』
あたしは兄・義理姉それぞれと仲良しだ。
お互いが知らない事もあたしは知っているくらいだ。義兄弟というより親友のような関係。
母はとても気に入らないらしい。
『好きじゃないの?』
『好きなのはソウタ。これも浮気なのかなぁ』
『あたしはお姉の好きなように生きてほしい。けど、絶対に知られないで』
『わかっている…』
知られたら最後だ。
きっとまた包丁を持ち出すだろう。
『見られたかも』
義理姉が困った顔で言う。
『まぢ。で、誰に』
『ゆりこさん』
ゆりこさんとは母の数少ない友人だ。
『少し様子をみようよ』
『うん…』
不安な表情だ。
あたしは気の利いた言葉が見つからなかった。
けど、
守りたいと思った。
あたしんちの中の色んな事に我慢してきた義理姉を
守りたい…………。
遅かった。
ゆりこさんは既に母に電話していた。
『なみちゃん、昨日車に一緒に乗っていたのは誰なの。』
『何の事ですか?』
しらをきる。
『誰が言ってたの?』
横槍を入れるあたし。
『誰だっていいでしょ!』
怒りに満ち溢れている。
父も同じ部屋にいるのだか無言。
自分に矛先が向かないようにだろう。
ずるい大人だ。
義理姉は黙っている。
母の中で何かが切れたのだろう。
平手が飛んだ。
『ふざけんな!誰のせいで家が目茶苦茶になったんだよ!』
言ってやった!
あ~気分がいい。
『それとこれは別問題だ』ここで父が始めて口出ししてきた。
何言ってるんだ、この人。目茶苦茶にした張本人が。
『夫婦の事は二人で解決しろよ』
さらに気持ちいい!
『話をすり替えるな!親を馬鹿にするのか!』
父がエキサイトしてきた。話にならない。
『私が悪いんです。あの人は友達です。
軽率でした。すみません』
姉は大人だ。
あたしは感情を殺すことはできるけど
大人になれない。
義理姉が低姿勢で謝り続けその場は納まった。
あたしは納得できない。
自分は不倫していて、
姉を責めようとした父。
まだ別れてないくせに!
あたしに同じ血が流れている。
汚い。
腹が立つ!
あたしは再び父がお風呂に入っている隙に携帯をみた。
メール。
『話すだけじゃなくて早く逢いたい』
気持ち悪い。
『焼きおにぎりを作ったの。あなたに食べさせたい』勝手に食べさせろ。
『体調崩さないでね』
倒れろ。
父がお風呂からでてくる前に
女のアドレスをあたしの携帯に送った。
痕跡が残らないよいにして戻した。
いったい
いつまで続けるつもりなんだ。
そんなに愛があるならお互い離婚して一緒になれ。
勇気がないくせに…
陰でこそこそ…
馬鹿にしているのはお前だ!
父の携帯電話には
女の名前が
男性の名前になっていた。そんな事しても
中身みたらばれるのに。
電話は朝晩。
通勤中に。
メールも沢山あった。
でも、あたしは見た事を後悔した。
最低な行為。
凄く嫌な人間になっている事に気づいたから。
きっと
あたしの顔は嫌な女。
兄はまだお金を振込み続ける。
義理姉はたまに癒しの人に逢う。
何故かあたしは二人の事は許せる。
二人の事が人間的に大好きだからだ。
そして
二人は家庭では一切その匂いを持ち込まない。
両方知っているのはあたしだけ。
だからお互い知らない。
仲の良い夫婦だ。
そんなの偽りと批判する人間もいるかもしれないが、それも愛だ。
父は家庭に持ち込み過ぎた。
崩壊への穴を開け塞ごうとしない。
自分の妻さえ救えない男が他人の妻の支え。
笑える。
泣ける。
地に堕ちろ。
あたしに偉そうに話すな。あたしはどんどん嫌な奴に変わっていく。
助けて。
『嘘だと言うなら自分で奥さんに聞いて下さい!!』
何?
『じゃあ調べたら!』
まさか…。
『主人に近づけないで』
やっぱり。
母は受話器を置いた。
相手は女の旦那。
地元の人間。
あたしの中学の先輩の親。恥をさらしているだけだ。
母は父が終りにしていない事に気づいていたのだろう。
『私、今日向こうの旦那に電話したから…』
母が父に言う。
父の顔は紅潮していく。
『お前は…』
『仕方ないじゃない。あなたは別れたっていっても不安なの』
『あなたは私には見えない事が多過ぎる』
泣きながら訴える母。
『だからって向こうの家族に教える必要はないだろ』
『もう終ったんだ』
嘘のうわぬり。
母は言い返す気力を失い遠い目をしている。
あたしは父を蔑んだ目でみている。
父は誰の目もみない。
何処に向かえば終らせられるのだろう………。
電話が鳴った。
『はい』
『新井ですが。
娘さん?久しぶりだね。
お父さんいる?』
相手の旦那。
先輩のお父さん。
『お久しぶりです。
お待ち下さい』
ドキドキしている。
落ち着け…。
『新井さんから』
父にぶつけるように言った。顔色が曇った。
『お電話かわりました』
会社か?
『いや~お久しぶりです』何言ってんだ?
『妻がご迷惑かけちゃって。すみませんでしたね』
お前だろ!
迷惑かけているのは。
『妻は今軽いうつ病でして少し被害妄想気味なんですよ』
わっと母が泣きだした。
『新井さんの奥さんと役員やったからって理由みたいで』
事実だろ!
『本当にすみませんね。妻には誤解だと言ってるんですがね』
ここまでくると役者だ。
何回か謝り電話を切った父。
『もう、かけるなよ』
逆切れか!
こんな家でたい。
愛のある場所に行きたい。あたしの今の願いだ…。
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小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
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80レス 2421HIT 蜻蛉玉゜
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