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宇宙の夢の悪夢の中で、ただ一人夢を見る

No.18 24/01/01 08:40
小説好きさん0
あ+あ-

≫17

生きているし死んでもいる。それはカチューシャの言ったこと。心地よい音楽が流れる。酔っているのかしら。氷子はお酒を飲まないのに。言葉が消えていく。言葉が出る前の、脳内に浮かんでくる言葉の素材が朧気に消えていく。私はもはや喋ることもない。激情は姿を隠した。そんなことは駄目よ、あなたの今までの想いを無下にするつもりなの?いつかの私の叱責。カチューシャの叱責。

歩いてる内に5年の月日が過ぎた。カチューシャが悲しんだので、私たちは道を戻り二年だけ若返った。

ああ、私たちを引き留める声がするよ。
あれは鳥の歌じゃないよ。本当に泣いてるんだよ。

悲しい泣き声はよしてくれ。行き倒れの男がいる。彼は何一つ負い目はなかった。ただ自分が何をすればいいのか分からなかった。夢を抱いていたのだけど、彼にはそれを叶える力がなかった。夢を見失った人間は惰性に生きる。いや、生きていない。ただ死んでないだけ。人生には定められた時があるという。笑う時、悲しむ時、怒る時、落胆する時、愛する時、全ては星の元に定められている、と。私はいつかその星の支配者にあいたいと思った。

夢は美しい。なぜならいつかは覚めるものだから。儚いから美しい。移ろい行くものは美しい。終わりがあるものは美しい。ひとつの物語だから。宇宙で比類するものなき、唯一の物語だから。その人が生きた軌跡だから。土がそうだ。土は幾万もの死者の体を含んでる。私は土の中からたくさんの声を聞いた。そこには無念があった。心残りがあった。呻きがあった。泣き声があった。平和を望む祈りがあった。愛する人への祝福があった。世界を讃える讃歌があった。喜びがあった。至福があった。私はいつかのカチューシャの声も聞いた。

ふと空を見上げた。降り注ぐ炎の雨が見えた。暗闇を明々と照らす。綺麗に街を燃やしていく。ああ、なんて美しいんだろう。夢であればなんでも美しい。遠くに聞こえる悲鳴は、美しい。それが夢であるならば。その男は美しく燃えた。顔を歪ませて、呻きながら。それが男の、人生で最後の嘆願だった。



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