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宇宙の夢の悪夢の中で、ただ一人夢を見る

No.17 23/12/31 20:47
小説好きさん0
あ+あ-

≫16

氷子は現実から逃げたかった。この世が夢であればいいなと思っていた。今まで疑いもなく存在していた世界が夢から覚めると瞬時に消えてしまうように、この世もそうであればいいと願っていた。 
氷子は常に同じことを繰り返していた。
水星や金星が同じ軌道を描いて延々と同じ場所を廻り続けるように、廻る星をなぞるように氷子も同じ軌道を歩いていた。
それは輪になっていた。その輪は私を苦しめた。人生の全てがデジャヴに感じた。

ふと、生と死の狭間から声が聞こえてきた。

「私は愛されるために自分自身を偽ってしまった。それほど皆から愛されたかった。
私は本当に本当に誰からも嫌われたくなかったんだ。
たとえ夢の中の出来事だとしても、誰かから嫌われることは耐え難い苦痛だ。

愛される要素を見つけるべく、またそれを身につけるべく、私の魂は虚飾を重ねていった。それが今の不幸を形成したんだ。ここまできたらもう戻ることはできない。私は自分が誰だか分からなくなってしまったんだ。

私の心臓は私の一部だが、私と個別した存在だろうか。そんなことはあるまい。私の心臓は私のものだよ。心臓が私を主張したらたまったものじゃないだろう。」

カチューシャは言った。

「あなたは物事を複雑に見る天才なのね。」

その声は返した。

「それが人間の天性の才能だよ」

「同じように私も、もっと大きなものの一部なのさ。だから私、私と思い上がるなんて烏滸がましいことなんだ。」

氷子には、その言葉が妙に胸につかえた。

人生に逃げ場はないが、それでも辛いことから逃げてしまおう。逃げても辛い。生きている限りは辛い。ただ家でジッとしているのも辛い。そんな時は外へ出て、人のいない場所へ行く。空や雲や、遠くの景色を眺める。野花や、野鳥を見る。川の淵に延々と佇む。私は、確かに自然は美しいと思う。でも、心がこの世界を厭んで止まない。疲れた。あらゆることに疲れた。際限のない欲望に疲れた。満たされない心に疲れた。煩わしい人間関係に疲れた。生きることに疲れた。

私はただ、自然豊かなところでボーッとしていることに幸せを感じる。でも、人生なんていつ終わってもいい、本気でそう思ってる。私は満足した。苦しみを味わい尽くしたから。

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