- 注目の話題
- 出会いがない場合
- 出来が悪すぎる娘の障害発覚
- 男性として生まれれば、
あっけない最後
この話は私の過去の恋愛話です。
タイトルの通り、最後は呆気ないですが、どうしても忘れられないので、投稿しました。
初めてなので、誤字脱字、支離滅裂な文章になったらすみません(>_<)
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季節は変わり、冬がきた。
私の住んでいるところは、昔より雪が降らなくなっていた。
でも、その日は大雪だった。
珍しく道に5㌢ほど積もっていた。
仕事をしながらワクワクして見ていたら、店長が話しかけてきた。
「お前のところ山やろ?帰れなくなったら困るから今日はもう帰ってええよ。」
確かに、私の自宅は山奥。道も登り下りが半端ない。狭い道で、スリップでもしようものなら、無事では済まない…
私はお言葉に甘えて帰ることにした。
みんなに挨拶して、帰ろうとしたら松田さんが声をかけてきた。
松田「マジ、気をつけて帰りなよ?」
私「車傷つけないように、気をつけます(笑)」
松田「ばっか。車より、桜が大事!本当大丈夫かぁ?」
私「大丈夫ですよ!lowで帰りますから(^-^)」
(やっぱり優しいなぁ)(笑)
そんなやり取りをして、帰路についた。
県道から、我が家に続く山道を上る。
雪の積もり方が変わっていた。
「うわ、凄いなぁ…
ワクワクするぅ」
なんて、独り言を言いながら更に上る。
その時、タイヤが滑った。
「ヤバイ!上らないかも!!頑張れ!カド!」カド←車に付けてたあだ名です。
ノロノロ運転で、なんとか上りきる。
一安心も束の間、今度は下りが待っている。
更にスピードを落とし、ギアをlowに入れる。
心の中で、滑るな滑るなと、呪文のように唱えながら下る。
ここが一番の難所。
落ちたら無事じゃ済まない。
だが、難なく下りきり、ホッとする。
そして、また上り、家に到着。
あ~、疲れた。
でもちゃんと帰れた。
まだ雪が降っている。
明日仕事行けるかなぁ~
クリスマス
休日だった為、バイトの人達が昼から入っていた。
年末ということもあり、店内はお客様で賑わっていた。
忙し過ぎて、あっという間に時間が経つ。
夕方の休憩時間になると、店長からケーキの差し入れがあった。
とても美味しかった。
閉店時間。
お疲れ~
と言ってみんなそれぞれ帰っていった。
でも、私と松田さん、山本さんは駐車場で話をしていた。
三人の中で誰が一番早く走れるかと競争した。
一番は山本さんだった。
二番は私(笑)
最後は松田さん…
運動音痴と判明した。(笑)
松田さんは私より背は高かったが、体格がよかった。
決してデブではないが…
そんな楽しい一時を過ごしていた。
私が着いても、松田さんはまだ来ていなかった。
「今着きました」
メールを送る。
♪~
「ごめん、ちょっと待ってて、すぐ行くから!」
10分ほど待っていた。
そして、松田さんがやってきた。
松田さんは、いつもは原チャに乗っていた。
でも、今日は車だ。
初めて運転している彼を見て、カッコよく見えた。
彼の車に乗るように言われた。
「ごめんな、遅くなって…」
「いえ、大丈夫です。何かありました?」
そう聞くと、彼は後ろの座席から箱をとり、私にくれた。
「え?これってケーキですか?!」
「うん、プレゼント。
何もないのもアレかなって思って急いでかってきた(笑)」
「ありがとうございます!嬉しいです!」
「ごめんな、そんなプレゼントで、まさか出掛けるなんて思ってなかったし、
ケーキ屋も、閉店間際だったから、それくらいしかなくて…」
「そんなことないです。ありがとうございます!
ホントすいません…
でも、こんな大きいの一人じゃ食べれないですよぉ(笑)」
「あとで一緒に食べよう!」
そう言うと、松田さんは、車を発進させた。
突然助手席の戸が開いた。
松田「わっ!!!」
私はびっくりした。
「もう!松田さん!止めてくださいよ!
心臓飛び出るかと思ったじゃないですか!」
「あはは」
松田さんは笑っている。
まるで、恋人同士のようだった。
駐車場に戻ってきた。
ふと、無いものに気付く。
あれ、鞄がない?!
店を出るときにはあった。
どこかで降りたっけ?!
なんで?どこいった?
財布も携帯も鍵も全部入ってる。
私は焦った。
どうしよう…
松田「あの、夜景のところかもしれない。
行ってみよう。
大丈夫、絶対あるって!」
急いで戻る。
私は不安だった。
誰かに盗られていないだろうか、ちゃんと見つかるだろうか…
本当に焦っていた。
駐車場に着くと、外灯はあるが薄暗いなかにポツンと黒い塊を見つけた。
私の鞄だ!
「よかった~あった…」
ホッと胸を撫で下ろす。
「って!松田さんが驚かすから、その時落ちたんですよ!
もう!!焦ったじゃないですか!」
「ごめんて~(笑)
でも。あって良かったね(笑)」
怒った私に彼は笑いながら謝る。
とにかく、あって、ホントに良かった。
そんなことがあっても、楽しい気持ちに変わりはなかった。
司郎に別れを告げれずにいた。
誰かに相談したかったが、誰にも言うことはなかった。
そんなある日、私は休みで家にいた。
♪~
メールが届く。
バイト中の松田さんからだった。
「休みなのに、メールしてごめん。
今日何してる??」
そんな内容だった。
何もしてないと、返信するとすぐ返事がきた。
「星でも見に行かない?」
私は誘いにのった。
松田さんが終わるのを駐車場で待っていた。
松田さんが来た。車に乗せてもらい、星が有名な町にいく。
昼間に行ったことはあったが夜行くのは初めてだった。
観測をしている天文台に到着した。
辺りは真っ暗だ。
目が暗闇になれてきた。道がなんとなくわかるくらい。
二人で天文台へと向かう。
もちろん中には入れない。私たちはその建物の前にある丘に横になりながら星を眺めた。
散りばめられた宝石のように、キラキラキラキラ輝いている。
なんて、綺麗なんだろう。
しばらく会話がないまま空を見上げていた。
1月の夜だ、さすがに寒い。
「さむっ。戻ろっか(笑)」
お互い納得して車に戻り、温かい飲み物で冷えた身体を温める。
二人きりで話をするのも、久しぶりだった。
自然とお互いの恋愛の話になる。
松田さんは彼女とは最近会っていない、肩書きだけの状態だと言っていた。
私も、別れようと思ってることを話した。
自分は、エッチが苦手なこと、腕枕してもらうだけで幸せだということも話した。
色々話していると、0時を越えてしまった。
眠いはずだ…
大きなアクビをしてしまった。
「大丈夫??(笑)どうする?帰る?
てか、帰れる?眠いだろ?
危ないよな…
それか…
後ろで寝る??」
ドキっとした。
夜、車の中、男女二人。
そんな空気のなかで、私も変な気持ちになっていた。
「じゃあ、ちょっとだけ…」
彼の車は後ろをフラットにすれば充分寝れる広さになる。
私たちは後ろに異動し、横になる。
緊張している。鼓動が早くなる。
「腕枕してやろっか?(笑)」
彼が言う。
照れながら私は彼の腕に頭を乗せる。
「落ち着く?」
「はい…(照)」
落ち着くわけない。
ドキドキが止まらない。
「寝ていいよ?
俺も寝るから」
そんなこと言われても寝れるはずかない。
でも、目を閉じてなんとか寝ようとしていた。
寝れない(笑)
彼の匂いがする。
ふと目を開けると顔が近い!
でも、彼も目を閉じている。
寝ているのか?
寝息?
よくわからない。
私は再び目を閉じた。
あのキスされた日から松田さんとは休みがずれて、会っていなかった。
だから司郎と別れたことも言えずにいた。
私が休みの日、松田さんから話があると言われ会うことになった。
この日は私の車だった。
とある、温泉施設の駐車場に止まって話をした。
「桜…オレ…
この間…
その…
お前にキスした。」
彼が神妙に言った。
私は驚いたふりをして、
「え、
そうなんですか…
でも、なんで?」
「ごめん、可愛かったから…
オレ、桜が好きかもしれない…」
「え?
嬉しいです。ありがとうございます。
私も松田さんが好きですよ。」
「え?でも、彼氏は?」
「あ…この間、別れました。まだ彼の家にある私のものを取りに行かなきゃいけないんですけど…」
「そうなんだ。
なんだ、オレ、悪いことしたと思って、ずっと悩んでたのに…はぁ~
でも、いいの?俺で?
ホントに?」
「松田さんこそ、彼女いいんですか?」
「今度言うつもり。
だからちょっと待っててくれる?
そしたら、また言うから。」
「…はい。
わかりました。待ってます。」
まさか、こんな話になるなんて思ってもみなかった。
後、松田さんは彼女に別れを告げた。
彼女は泣いていたそうだ。
私は申し訳ない気持ちになった。
圭ちゃんの仕事が始まるまで、私たちは毎日のように会っていた。
圭ちゃんと初めてのお泊まりの日。
圭ちゃんは実家暮らし。泊まりに行くには遠慮があった。
圭ちゃん家にはちょっと離れた別宅がある。普段そこには誰もいない。
そこに泊まることにしていた。
夜、二人で買い物をした。
まるで夫婦になったような感覚だ。
(いつか本当にこうなれたらな…)
そんな風に思っていた。
買い物を済ませ、家に向かう。
人里離れた場所で静かだった。
二人で夕飯を作る。
フライパンを持つ彼に見とれていた。
ついでにお風呂の準備もした。
スパゲッティと、サラダ、スープを作り早々に食べ終えた。
しばらく、休んで、先に私がお風呂に入る。
さすがに緊張してきた。
大丈夫かな?
不安になる…
もし、ダメで断ったら嫌われたりしないだろうか…
私は自分に自身がない。
もちろん体にも…
見た目はスレンダー。
回りにスタイルいいよね。って言われてはいたが、本人はこんな体が嫌いだ。←これは今でも…
もちろん胸はない。
スッピンの私を見て彼が言う。
「可愛いね(笑)」
照れる…
私は化粧をとっても、あまり変わらないくらい薄化粧だ。
次に圭ちゃんがお風呂に入る。
上がってきた彼と、買ってきたお酒を飲む。
私は酒に弱い。直ぐに顔が赤くなるのが嫌でお酒を飲むのも久しぶりだった。
案の定、体が火照ってきた。
頭が回らない。
そんな私を見て、心配する圭ちゃん。
布団に横になった。
薄暗い部屋で二人でイチャイチャする。
彼が私にキスをする…
彼に身を任せる。
「無理だったら止めるから言ってね。」
優しい圭ちゃん。
「大丈夫…
大好き…
圭ちゃん…」
お酒のせいだろうか、全然嫌じゃない。
むしろ、気持ちがいい。
こんなの初めてだった。
-8月-
その日私は前の職場の友達と三人で海水浴に来ていた。
初めての海ということもあり、テンションが上がる。
昼過ぎ、一人は砂浜で休むといって、寝ていた。
私ともう一人の友達は、遊び足りず、海に入る。
浮き輪に掴まり波に乗って漂っていた。
ふと気付くといつの間にか足がつかないところまで来ていた。
横を見ると誰もいない。
遠くにサーファーが見えた。
「ねぇ、足が付かないけど大丈夫かな!?」
ちょっと焦りながら私が言った。
「え~大丈夫だよぉ~」
のんきに友達が言った。
でも、岸を見るとかなり遠い。
波も高い。
「ね、戻ったほうがいいって!」
私のあまりに真剣な顔に友達も、ようやく岸に戻ろうとする。
でも、泳いでも泳いでもどんどん岸から離れていく。
私達は手を繋いで、離れないように一生懸命だった。
「桜ちゃん、疲れるから平泳ぎがいいよ!
一斉に泳ごう!せーの!!」
二人で必死に泳ぐ。
でも、駄目だった。
岸が波で見えなくなる。
「誰かぁ!助けてぇ!!!!!」
悲痛叫びは波に消されて、誰にも届かない。
「誰かぁ!!」
いくら手を降っても波は私達を簡単に隠してしまう。
もう死ぬんだ…
このまま沖に流されて、サメに襲われるか、岩肌にぶつかって死ぬか…
もうそんな事しか頭になかった…
(神様!助けてぇ…)
そう心で願った瞬間。
ザッパーン!!!
凄く大きな波が私たちの体を押した。
少し岸に近づいた!!!
「もうちょっと!!もう一回!!
波来てぇ!!!」
そう、叫んだと同時にまた、波が体を岸へ押しやった。
あんなに離れていたのに、二回の大きな波のお掛けで足がつくところまで帰ることが出来た。
「あっ!足が足がつくよ!!
もう、ちょい!」
ひたすら泳いだ。
確実に足がついて、急いで浜に上がった。
二人で喜びあった。
「良かったね、良かったね!」
私たちが着いた浜は、もといた場所より300㍍ほどは離れていた。
家に帰ってから、圭ちゃんに電話をした。
今日のあの、怖い経験を事細かに話した。
「ふーん。そうなんだ…」
え??それだけ???
…………………あれ?なんかいつもと違う…?
冷たい…?
と、思いつつも、
「……何かあった?疲れてる?」
と聞いた。
「いや?…………ちょっと眠いだけ……」
「……………そっか、ごめんね…
じゃあ。休んでね…
おやすみ…」
「おぅ。おやすみ…」
…………………???
やっぱり何かおかしい…
いつもなら、もっと心配してくれるはず。
私が風邪引いたときも、ワザワザ家まで色々買ってきてくれた。
お腹が痛くて横になってたときも、ずっとさすってくれてた。
そんな圭ちゃんが、死ぬ思いをした私にあれだけ??
腑に落ちない…
でも、疲れてるんだよね?
私は遊んでて、圭ちゃんは働いてたから、そりゃ疲れるよね…
そう、私は自分に言い聞かせていた。
毎年地元で行われる盆踊り。
私が行きたいと言ったときは嫌な顔をした圭ちゃんが、会社の人達が誘ってきたからと、行く気になっていた。
そこで初めて会った圭ちゃんの会社の先輩。
タケルさんと、ジュンさん夫婦。
この夫婦は後に色々お世話になる人達だ。
そして、子連れで来ていたユウさん。
旦那さんも同じ職場だが、今日は仕事だった為、タケルさん夫婦と一緒に来ていた。
そう。このユウと言う女こそ、憎くて堪らない女になるのだ。
(この名前は、もちろん偽名ですが、今でも大嫌いな名前です。殺意が芽生えるほどに、大嫌いです。)
初めて見たときは、可愛い人だなぁと思った。
ホントに顔も雰囲気も可愛い人。
悔しかったけど…
背も低くて、おしとやかで、守ってやりたくなるような女だった。
だが、軽く挨拶を交わしたとき、満面の笑みでユウが私に言った。
「圭一君の彼女さんて、強そうだね。(笑)」
は?
初対面で、何を言う??
こいつ、可愛い顔して、なんか嫌な感じがする。
ザワザワとしたところでのセリフだったせいか、みんな聞こえていないのか、私は一人氷ついていた。
「あ…はは…
見た目キツいんで……………はは…」
笑うしかなかった。
さすがに、年に一度の祭り。人、人、人。
夜店の通りを歩いているとき、圭ちゃんは、ユウの息子を肩車していた。
嬉しそうに…
その隣には私ではなく、ユウ。
私は一人、後ろからついて歩いた。
私だけ、会話にすら入れず、ノケ者みたいだった。
前を歩く二人を見ていた。
楽しそうに会話している。
たまにチラチラ私を見るのは、ユウ…。
でも、また視線を圭ちゃんに戻し、笑っていた。
何か敵意にも似た視線…
私は全然楽しめなかった。
帰って、明日も行きたいと言うと、圭ちゃんは嫌な顔をして、
「オレ、あーゆうところ嫌いなんだよ。
勘弁して。」
と、言った。
さっきまであんなに笑ってたのに???
あの盆踊りの日以来、ユウに違和感を感じていたが、今日の圭ちゃんのマヌケな姿を見て安心した。
(あんな可愛い人が圭ちゃんを相手にするわけないよね。(笑))
なんて思った。
縄跳びが終わり、圭一が出てきた。
みんなと盛り上がっている。
そこに私が近づいたとき、ちょうど、圭一が振り返って私に気づいた。
「うわっ!ビックリした!
なんだ、来たの?!
言えよな、恥ずかしいだろ~??」
「ごめん、驚かそうと思って(笑)
でも、それウケるんだけど(笑)」
「ウソっ?
メッチャ似合ってるだろ?(笑)」
「変態みたい(笑)」
私と圭一が会話をしているのを見た同僚が話しかけてきた。
「何々?
彼女かよ~?
メッチャ美人じゃん!(笑)
やるなぁ、圭一~!!」
「でしょ~
美人だからって、手出すなよ?(笑)」
「あはははは~」
そんなことを言ってくれた圭一に、彼への不信感も消えてしまった。
圭一に、このあと片付けと打ち上げがあると言われ、私達は楽しい気持ちのまま、その場をあとにした。
そう、楽しかった思い出は、この日が最後。
圭一を信じていたのも、この日が最後。
向かう途中、妙な胸騒ぎがしていた。
やっぱり変だ。何かある!
私は心なしか焦っていた。
家に着くと、圭一のおばあちゃんがいた。
圭一は?と聞くと、珍しく自分の部屋じゃない下の和室で寝ていると言った。
私が部屋に行くと、圭一はイビキを立てて寝ていた。
「来たよ?」
私が声をかけると、少し目を開けたがまた寝てしまった。
すると、圭一の携帯が鳴った。
メールだ。
圭一は、携帯を開き、返事を打つなりまた寝てしまった。
(私には返さないくせに!)
と、ちょっとムカついた。
すると、またすぐに携帯が鳴る。
だが、圭一は起きない。
相当眠かったらしい。
私は女の勘が働き、携帯が無性に気になった。
見てはいけない…と思いつつ私は地獄の扉を開けてしまうのだった。
圭一に気付かれないように、恐る恐る携帯を開く。
受信BOX…
送信者を見た瞬間、身体中に電流が流れたような感覚に陥った…
鼓動が早い。冷や汗が出る。身体が小刻みに震えていた。
〇〇ユウ……………
あの人だ!
内容を見る。
「今日も会えて嬉しかった♪♪♪♪♪
明日は圭一くん、休みだから寂しいよ~
早く会いたいなぁ♪」
返信は……………
「オレもユウに会えて嬉しかった♪♪♪
ユウに会える日は仕事が楽しいよ!
オレも早く会いたいよ♪♪♪♪♪♪」
ゾッとした。
もう、訳もわからず私は部屋を飛び出した。
(まさか、ウソでしょ!?
圭一!?
ユウさんて、結婚してるじゃん!
なんで?どうして?!)
もう頭の中はパニック状態。
頭に血がのぼっているような………
何も考えられない…
(何がどうなってるの!!?)
(♪←すいません、絵文字が入らないため、これを使いました。ハートを♪で表現させてください。)
圭一の家に戻り、寝ている圭一の隣に座る。
深呼吸して、圭一を起こす。
「圭ちゃん、…ねぇ、圭ちゃんてば…」
なかなか起きない。
体を揺すってみる。
「…んぁ………………………何??」
ダルそうに圭一が起きる。
「ごめんけど、携帯みた………」
「はぁっ?何?」
「だから、圭ちゃんの携帯見たの!」
「…なに、勝手に見てんだよ…」
心臓がバクバクし過ぎて、今にも飛び出しそうになる。
この場から逃げ出したい!!!
もう一度深呼吸。
(落ち着いて!)
「……それは悪かったと思ってるけど、
でも、何?あのユウさんとのメール…
二人はそんな仲なの…?」
「はんっ、違うよ。只の社交辞令だよ…
一応先輩だし、返さなきゃ今後やりにくいだろ?
…………はぁ~」
ちょっとイラついたように圭一は言った。
腕で顔を覆いながら、ダルそうな態度。
今にも泣きそうな私は、
「ほ、ホントに!?
信じていいの??」
「あぁ…
旦那が同じ職場なのに、そんなことするわけないだろ…
オレだって、嫌々やってんの…」
そんな圭一の態度。
本当は携帯を見られたことに焦っていたのに、私は、その時、ユウとのメールがホントに面倒なんだと、思ってしまった。
私は……………………馬鹿だった………………
圭一のメールを見てしまってから、1週間。
その日は友達の誕生日。
私はその友達を祝うため、他の友達三人と一緒に県外に遊びに出掛けていた。
圭一は仕事で、夜は学生時代の友達と飲みに行く予定だった。
あの日から圭一の行動が気になってはいたが、学生時代の友達ということで安心していた。
私達は夕方まで遊び帰ってきた。
夕飯何にしよう?と、話をしていたとき、まだ時間があったため、圭一にメールをした。
『もう、飲みに行ったのかな??』
♪~返事はすぐにきた。
『行ってない。』
なんともあっさりしたメールだった。
『じゃあ、これから??』
♪~
『いや、行かない』
???
どうしたんだろ?
ドタキャンでもされたか??
でも、メールをみても落ち込んでいるというのがわかった私は、圭一に電話をかけた。
すぐに圭一に電話をかけた。
でも電源が切られていた。
絶対ユウのところに行ったんだと思った。
どうしようもない不安にかられ、泣き出してしまった。
メグちゃんに、もしかしたら違う人の所に行ったのかもよ?と言われ、一番仲の良い山本さんが浮かんだ。
すぐさま、山本さんに電話をした。
でも、違った…
これはもう確定だ…
優しい圭一なら泣いてるユウをほっとくわけない。
私は更に泣いた。
経緯は忘れたが、ナゼか山本さんに会うことになった。
山本さんは町を出ていた為、中間地点にある、コンビニで待ち合わせた。
そこで、山本さんにも今までのこと話した。
もちろん泣きながら…
山本さんは、
「圭一はそんなことするような、奴じゃない。」
と言った。
友達思いは感心するが、そんなことするような奴だから、今こんな目に合ってるんだろ!!?ばかぁ!!
って言ってやりたかった…………………
眠れないまま朝がきた。
圭一は帰っているのか??
すぐに、服を着替えて圭一の家に行った。
車を見た瞬間、少し安心した。
部屋に入ると圭一は寝ていたが叩き起こしてやった。
びっくりしていたが、そんなことはどうでもいい。
私は遠回しに聞いた。
「昨日どこか行った?」
「は?………行ってないよ。」
正直に言ってくれることを期待していたが、惚けた圭一に腹が立った。
「うそっ!!
車なかったの知ってるんだよ!!」
怒った私に観念した圭一は渋々、ユウに会いに行ったことを認めた。
「会って何したの?
キスしてやったんかい??
それとも抱きしめてあげた?(笑)」
なんでこんな言い方になったかはわからないが、私にはこんな言い方しか出来なかった。
口は笑っていたが、目はマジだった。
単なる強がりだ。
「キスはしてない!!!」
そこはすぐ否定した。
私「キスは、ね…………」
しばらく沈黙。
「抱きしめた…………けど………」
「………………(怒)はっ。
そう。随分と優しいのね。
じゃあ、なに?
私と別れて付き合う気?」
「いや!付き合わない!
咲とも別れたくない!!」
(咲とは、私の下の名前)
「でも、浮気したじゃん!」
「違うっ!
だって、泣くから……………」
「はん??
泣けば誰でも抱きしめるんかい…………
私も泣きたいんですけど?
抱きしめてくれるんですか? (怒)」
ホントに抱きしめようとする圭一を突き放す。
「バカじゃないの!?
他の女抱きしめた奴が私に触らないで!!!」
怒っている私に圭一は何も言わない。
「で?(怒)
これからどうするの?」
「わからない。
でも、仕事には行かなきゃ…」
どうもハッキリしない態度。
私もそれ以上何も言えず、仕事の時間がきてしまった。
店長が話を聞いてくれた。
「アホやなぁ…圭一…
ま、絶対帰ってくるわ、心配すんな桜!」
「そうは言うても辛いわな。
今日はもう帰り。
しばらく休んでええからな!」
そんな優しい言葉にまた泣き出してしまった。
私は自分の仕事だけ片付けて帰ることにした。
帰っても頭の中は圭一の事だけ。
仕事行ってるけど、またユウと一緒なのかなぁ…………
そんな事しか考えられず。
ずっと泣いていた………
私はその日から食べ物を一切口に出来なくなってしまった。
そんな私をみて家族も心配してくれた。
理由は言ってなかったが、薄々気付いていたと思う。
普段無関心な父も声をかけてきたくらい、私は変わり果てていた。
でも、私が元気になることはなかった…
私は、圭一とは連絡をとり続けていた。
何か進展があれば絶対教えて!
と、お願いをしていた。
もう、一生懸命だった。
次の日の夕方、仕事終わりの圭一に電話をかけた。
「今日、これから話し合いするから。」
と、言われた。
ユウの旦那のマナトさん達と話をすることになったようだ。
「私も行く!!!!!」
私は関係ないが、どうしても二人のことが気になり、その場に居たくて、圭一に絶対行くから!と言った。
圭一も、私がいた方が心強いと言って、相手側に了承を得てくれた。
向こう側からしたら、私がいた方が話の穴埋めが出来ると思ったようだ。
ボロボロの顔に化粧をした。
負けない!負けたくない!
と意気込んでいた。
家を出るとき丁度、母が帰ってきた。
驚いて、
「どこ行くの!?」
と言われた。
「ちょっと行ってくる!!!!
大丈夫だから!!!!」
と大きな声で答え、車を出した。
あのときの私はホントに怖いほどだった。
と、後に母に言われた。
「ど、どういうこと?」
「だから、俺はお前と居たことになってる。」
「は?………意味がわからないんだけど。」
「だから!マナトさんから電話かかってきて、家に来いって言われて、その時にどこにいるか聞かれたから、お前が落ち込んでるから、お前んちにいるって言った。」
「!!?………………
あ…そう…
で、ホントはどこに居たの………?」
「海……………………………」
「一人じゃないでしょ?」
「………ぁぁ
………………ユウと……………………」
やっと理解できた。
この男は、私に嘘の片棒を担がせる気だ…………
本当なら、ここでキレるのが普通なのかもしれないが。
私は「わかった。」と言ってしまった。
なんでだろ。
今思い出してもオカシイよね。
私よりユウの側にいた。
しかも、私は利用されている。
なのに、何故?
圭一の為になるなら。
とでも思ったのか…
それは今でもわからない……………
呼び鈴を鳴らす。
しばらくして、男の人がで出てきた。
「あぁ、来たか。
入れ…………」
トーンが低くて怖い……………
初めて見るマナトさん。
かなりのイケメン…
夫婦揃って美男美女。
(こんなにカッコいい人が旦那なのに、
なんで、圭一なんかと………………)
ユウが益々わからない。
部屋に通されると、そこにもう一人男性がいた。
マナトさんの兄、シンさん。
入るなり圭一を睨んだ。
見た目からして怖いとわかった。
その場に冷たい空気が流れる。
怖い!!!!!
私は悪くないのに、怖かった………
二人で正座。
だが、もう一人が来ない。
早く来いよ!!
心の中で叫ぶ。
後に知ったのだが、シンはヤクザがらみの人で、可愛い弟の一大事だと駆けつけてきたらしい。
一番関係ない彼が、一番イライラしていた。
ユウはなかなか帰って来なかった。
マナトさんは誰かと頻りに連絡をとっていた。
聞こえて来た言葉から推測すると、ユウは帰るのを渋っていて、マナトさんからの電話に出ない。その為近所の友達夫婦に協力してもらい、ユウに帰るよう説得してもらっているようだった。
そんな中、私達は会話すらなく、ひたすら沈黙。
シンさんの、目を盗み、チラチラと部屋の中を観察していた。
物が散乱した部屋。明らかに子供がいるからではなく、荒らしたような感じだった。
部屋に入るときに見えたキッチンにはお弁当の残骸が山のようにあった。
あのメールの事で、この部屋で何が起きたのか、おおよそ検討はついた。
ユウが、帰りたくない理由もなんとなくわかったような気がした。
それから、30分くらい経っただろうか。
友達夫婦の奥さんに付き添われて、ようやくユウが、帰ってきた。
ユウを見るなり、私は明らかに顔が引きつった。
さぁ、地獄の宴会の始まりだ。
ユウは私達の前を横切り、奥に座る。
座ったと同時に怒ったように言った。
ユウ「なんで、ここにシンくんがいるの?」
シン「え?」
ユウ「シンくんには関係ないじゃない!
出てってよ!!!!!」
シン「いや、でも。」
ユウ「マナト君はいつもそうよ!!
二人の問題なのに、なんでいつも、シンくんが来るのよ!!
そういうのが嫌なのよ!!!!!!!」
マナト「ユウ!落ち着け!!」
ユウ「シンくんがいるなら、私は話し合いなんてしない!
出てく!!!!」
そう言うと立ち上がり、部屋を出ようとした。
マナトとシン、友人の奥さんが必死に止めた。
奥さんに、なだめられ嫌々だったが、また座った。
私と圭一はただ、そのやり取りを見ているしかなかった。
マナトが切り出す。
マナト「圭一。お前どういうつもりだ?」
圭一「あっ………………、俺はそんなつもりでメールしたわけじゃないです…
こんな事になって、すみませんでした!」
そう言われてもユウは下を向いたまま、黙っていた。
マナト「気持ちがなくても、俺はお前を許せない。
……………会社辞めてもらうからな。」
圭一「………!
は…い………わかりました。………すみませんでした…」
「ちょっと待ってよ!!!!」
ユウが突然大声で言った。
ユウ「圭一君は悪くないよ!!
圭一君が辞めるなら私も辞める!!」
マナト「何言ってんだよ?
圭一はお前に気持ちがないんだぞ?」
ユウ「えっ?
本当なの?圭一くん…」
圭一「……はい…すみません…
俺は咲が大事です………………」
私はこれで終われると思った。
だが、ユウのセリフが場を一転させる。
ユウ「圭一くんと二人で話させて!!」
はい!??
しばらくして二人が帰ってきた。
だが、圭一は私の隣に座らず、ユウと並んで座った。
神妙な顔でうつ向いていた。
マナト「何話したかは知らないが、決着はついたんだろうな?」
頭をかきむしりながら、圭一は何やら悩んでいたが、
圭一「はい……………
あの、俺……………
咲と一緒に、います………………」
私はほっとした…………良かった…………。マナトも、きっとそう思ったはず。
だが、そう思ったのも束の間……
「圭一くん、さっきと言ってること違うよ…」
澄んだ声でユウが言った。
?????????????????
うつ向いたまま、圭一がユウを見た。
そして、絞り出すようにこう言った。
「あ……………いや…………
俺、すいません………………
ユウさんと………………一緒に、……………
います…………………」
はぁ?????????????????
誰もが耳を疑った。
さっき私といるって言ったのに????
私は背中がゾクッとし、目が点になってしまった……………。
マナト「ふざげるな!
何言ってんだ!
ユウ!!お前もそうなのか!???」
ユウは静かに頷く……………
マナトはそのあとも、何か口にしていたが、私はもう、耳に入ってなかった…………
頭が真っ白。
何も耳に入らない。
どういうこと?
何も考えられなくなってしまった。
鼓動が早くて、息が苦しい……………
圭一が、私を捨てる??
マナトは何かを怒鳴っていたが、
圭一とユウは下を向いたまま、何も言わない。
私はそんな光景を見ながらボーッとしていた。
だが、自然と口が開いた。
「圭一………
私妊娠してるかも知れない……………」
場が静まり返った………
ハッと圭一が、顔を上げ、初めて私の顔を見た。
「あっ………俺やっぱり咲といる!」
ユウ「圭一くんっ!!?」
圭一「いや、……やっぱりユウと……………」
私「圭一???」
圭一「いや……………咲と…………………」
圭一はもはや自分がどうしたいかわからず、私とユウを行ったり来たりしていた…………
なんて優柔不断な男。
私は悲しいと同時に呆れていた………
優柔不断な圭一の態度にマナトは立ち上がりイライラして、部屋を歩き回っていた。
シンは顔を引きつらせたまま黙って経過をみているようだった。
私は圭一に聞いた。
「その人と一緒になって、どうするの?」
「え………………仕事辞めて一緒にユウの実家(県外)に行く………………」
「お腹の子は??」
「あっ、………やっぱり咲と一緒にい………ます…………」
同じ返事を繰り返していた圭一に業を煮やしたマナトが圭一の前にきた。
バッッッシーン!!!!!!!!
圭一の眼鏡が飛んだ。
マナトの平手打ちが炸裂。
あまりにも突然で、圭一は驚いて固まっていた。
その無様な圭一の姿に私は一瞬笑いそうになった。
殴られて当たり前だ。ざまぁみろ。
そんな風に思った。
ユウは圭一の心配をし、マナトに当たる。
マナトは怒りで、圭一を部屋から追い出してしまった。
ユウは圭一に着いて行こうとしたが、マナトに止められ言い争いを始めた。
シンや友人の奥さん等になだめられ、ユウは奥さんと部屋を出ていった。
私も、さっきの平手打ちで我に帰っていた。
私はなんでここに来たんだろう?
その場その場で上手いことを言っていた圭一。
そうだとも知らず、その言葉を信じてここまできた。
いや、内心疑っていた。信じたい気持ちもきっとあったはずだが……
ただ、それを受け入れて自分が独りになるのが怖かった。
圭一を取られたくなかった。
だから、圭一の側に居た。
どうにか、圭一を取り戻そうと必死だった。
眼鏡が飛んだ圭一の姿はあまりに情けなく、私が好きになった人ではない。
今の圭一なんて、しらない。
さて、これからどうしよう…………
私は置いてきぼりだし…。
するとマナトが言った。
「もし、裁判になったら、あんたにも証言してもらうから。
携帯番号教えといて。
今のやり取り見てたんだから、それ言えばいいから。」
「はい。」
裁判かぁ。
益々情けない。
ユウを切ればこんなことにならなかったのにね…………
本当バカなやつ…………
私は付け加えてこう言った。
「さっきも、私と居るって言ったのウソですから。
彼はユウさんと一緒にいましたよ。」
もう。どうだっていいや。
真夜中の3時。
私の思考回路は正常ではなかった。
それを聞いたマナトはやっぱりかと言うような顔をしてシンと隣の部屋へ行ってしまった。
私は出るタイミングを逃し、一人部屋で座っていた。
聞こえてきた二人の会話で、圭一とユウは友人宅にいるようだった。
しばらくして、マナトは落ち着きを取り戻し、二人を呼び戻そうとした。
私はもうこれ以上話を聞きたくなかった。
スッと立ち上がり、マナトに断りをいれ、部屋から失礼した。
団地を出て、少し離れたとき、二人が部屋に戻っていくのが見えた。
私はその場にうずくまってしまった。
すると、友人の奥さんがやって来て、私の横に座った。
「彼女さんも、大変なことに巻き込まれちゃったね…
お腹大丈夫??」
「あ、はい、まだ妊娠してるかわかんないし………」
「そっか………」
奥さんは話を続けた。
「ユウはね、昔からあぁゆう子なんだ。
マナトくんと上手くいってなくて、優しく声をかけてきてくれる男にすがってはいつも喧嘩してた。
マナトくんも、悪いんだよ。
自分のこと棚に上げて、なにもかも、ユウのせいにして…
でも、今回はユウが悪いから。
マナト君は、ここぞとばかりに責めてるんだよね。」
「そうなんですか…」
どうでもいい話をありがとう。
私はそんな女に圭一を奪われたのか……………
圭一もバカだが、私もバカだ。
あ~、だから祭りの日、彼女は私に敵意むき出しだったんだ………
と、妙に納得してしまった。
空は段々と明るくなってきていた…
もうすぐ夜が明ける……………
私は結果だけ知りたくて、団地内をウロウロしながら圭一を待っていた。
じっとしては居られなかった…
立ち止まれば、何かがキレてしまいそうで……
完璧に夜が明けた頃、圭一が、出てきた。
その後を追い、車に乗り込んだ。
車に乗り込んだと同時にハンドルにうなだれた圭一。
疲れきっていた。
が、構わず聞いた。
「どうなったの?」
「仕事は辞める…………
ユウも、俺も。
これから会社に言いに行く。
あー!!なんで俺が辞めなきゃならねぇんだよ!!!」
途中から逆ギレ。
これは、私だけの解釈だが………
圭一は自分とユウは悪くなく、マナトがユウを大事にしないのが、悪い。
と思っているように見えた。
きっと、ユウにマナトの愚痴を聞かされて、可愛そうに思っていたに違いない。
私はそっちのけで…
私はさらに聞いた。
「で?ユウさんと一緒になるの?」
「ならないよ。」
「私とは?」
「わからない。」
あっさり言われ、返す言葉がなかった。
私ともわからない?!
あれだけ話して、結局答えは出ず…………?
なんだったんだ。あの時間は……………………
アホらしくなった。
ムカついたので、告げ口したことを話した。
「ハァ?なんで言うんだよ!?」
「あんたに言われたくないわ!!!!!!」
キレた私に圭一は、反論してこなかった。
近くの広場に車を止めて、朝っぱらから店長に電話をかけてしまった。
しばらく泣きじゃくっていた。
店長は、仕事に行く時間になり、
「また、ゆっくり聞いてやるから、ごめんな、桜。」
と、電話をきった。
少しスッキリした私はどうにか家に帰れた。
その日の昼間、圭一の母親から電話が掛かってきた。
「今、マナトさんて言う人から電話があったんだけど、圭一何かしたの!?
圭一のせいで別れることになった、って酷く怒ってたわ。
裁判させてもらって慰謝料もらうからって、言われたんだけど、
咲ちゃん、本当なの??!」
「はい、…本当です。
圭一はそんなつもりじゃないって言ってたけど、昨日の話し合いで認めちゃったんで…………」
「そうなの?!
圭一ったら……
今からね、お父さんと一緒に相手方にお詫びに行こうかと思って、
咲ちゃんはお家知ってる?
教えてくれない??」
そう言われ私は家の場所を教えた。
家族まで巻き込んで………
バカ圭一。
圭一の母親も戸惑っていた。
無理もない。
だが、私のことは?
私のことには一切触れず電話は終わった。
少しショックだった。
一人になると、圭一が気になって仕方がなかった。
今日も、仕事してるのだろうか?
ユウもいるのだろうか?
上司には話したのだろうか?
私達のことはちゃんと考えてるのだろうか?
圭一のことで頭が一杯で、嫌なことだけ考えてしまう…………
何かしなきゃ、何かしなきゃ。
私はとある場所に電話を掛けていた。
圭一の職場。
タケルさんを呼び出してもらった。
圭一のことを尋ねた。
「俺も今朝聞いたばかりで、ビックリしてる。
とりあえず今日の夜、上司交えて話をするつもり。
もちろんユウちゃんと、圭一、両方から話を聞くから。
心配だろうけど、大丈夫だよ。」
と、言われた。
この頃の私はストーカーのような行動をしていた。
本当どうかしてた。
夕方、また私は車を走らせ、圭一の職場に向かっていた。
増えていくキズを見ながらこのままじゃいけないと思い、私は外で待つことにした。
外は雨。
私は傘をさして、隠れるように車の陰に座った。
辺りは真っ暗になってしまった。
でも、圭一は出てこない。
雨が止んだ。
私は圭一が私に気付くように、傘を圭一の車のミラーに掛けた。
私は車に戻り、少し窓を開け、座席を倒して目をつぶっていた。
それからしばらくして、砂利を踏む足音が聞こえてきた。
ハッと起き上がる。
街灯に照らされて見えた人影。
顔は見えないが、シルエットで圭一だとわかった。
真っ直ぐこちらに向かっていた。
私はまた淡い期待をしていた。
圭一は私の車の前を通る。
気付くかもしれない…
もし、気付かなくても、私の傘には絶対気付く!!
と………。
だか、期待は外れた。
圭一は気付くことなく、私の車の前をスタスタ歩いて行ってしまった。
そして、車に乗り込みエンジンを掛けてしまった。
傘は!?
と思ったが、車が発進したため、私は急いで圭一の車の前に飛び出した。
「うわっ!
何やってんの?!」
窓を開けながら圭一が言う。
「何じゃないよ!
どうなったか心配で来たんじゃん!」
泣いてしまった。
「まだ決まってないよ。
とりあえずあったこと全て話して…
ユウと、俺の気持ちも聞かれて…………」
圭一はこの話し合いで、ユウには、ハッキリ意志が無いことを伝えたみたいだ。
ユウは泣く泣く、承諾をしたらしい。
だが、私に対しては何も言ってくれなかった。
仕事のことが決まってからだと言葉を濁していた。
圭一は、私に「とりあえず今日は帰りなよ。」と言って、さっさと帰ってしまった。
また置き去りにされた私。
傘のことなどすっかり頭になかった。
タイミングよく、止んでいた雨がまた降りだした。
私はしばらく雨の中、一人立って泣いていた
…
(傘なんですが、後に圭一に聞いたところ、圭一は知らないと言いました。が、多分その時に捨てられたんだと思います。
かなりお気に入りだったんですが(T-T))
私の話を聞いた姉はこう言った。
「あんたもくだらん男捕まえたね…
そんな男、こっちから捨てたらいいのに。
男の傷は男で癒すって言うし、次見つけたら?
でも、出来ないんだよね…わからなくもないけどさ。」
姉の言うこともわかった。
確かに自分から捨てることも出来た。
でも、ダメだった。
私には圭一が全てだったから………
離れることが嫌だった。
捨てられたくない。
捨てられたくない!!!!
嫌だ。絶対嫌だ。
一人にしないで。お願い。
私だけ見て………
帰ってきて!圭一!!!
それしか考えられなかった。
話も済んで、部屋の明かりを消して、布団に横になった。
気分が変わるかもしれないと、姉は音楽をかけたままにしてくれた。
暗い部屋に、コンポの明かりがユラユラ揺れている。
静かな音楽が流れていて、益々孤独を感じてしまった。
私はまた一睡も出来なかった。
朝。
何か食べた方がいいと言われたが、欲しくなかった。
でも、姉が心配そうな顔で見てきたため、スープを一口だけ飲んだ。
が、すぐ気持ちが悪くなってしまった。
何も食ていないせいが、体に力が入らない。
頭の回転も悪い。
フラフラしていた。
姉の仕事の時間が来たため、そんな体にむち打ち、私も帰ることにした。
何とか家についた頃、圭一の母親から電話があった。
話し合いで、裁判をしない代わりに、慰謝料として30万払うこと。
あと、圭一は仕事を辞めることが決まったようだ。
母親は、圭一のせいで離婚になるから、慰謝料は仕方ないが、マナトの態度が腑に落ちないようだった。
ユウが圭一に言い寄ってきたのに、全て圭一が悪いと言われたらしい。
私はどうでも良かった。
圭一さえ、私のところに帰ってくればなんでも、良かった。
でも、この電話でも、母親は私と圭一の今後のことについては何も言わなかった。
圭一は家にいた。
部屋に入ると圭一はソファーにうなだれていた。
「仕事辞めるんだってね…」
「あぁ、お金まで取られて最悪だよ!
聞いた話だと、マナトは友達に、近々大金が入るって嬉しそうに言ってるんだとよ!」
「何それ?
もしかして、上手く利用されたんじゃない?
ま、でも圭一だって悪いんだから仕方ないよ。」
「そうだけど…
なんか腹立つわ。」
全く悪びれた様子はない。
さも、自分が被害者だと言わんばかりの態度だった。
「ところでさ…
もう仕事も辞めるって決まったし………
ユウさんとも話がまとまったんでしょ?」
話を変えて、確信に迫ろうとしたとき、圭一の携帯が鳴った。
ユウだった…
今さら何!?
まだ圭一にすがるつもり!?
私は電話を切るように圭一に目で訴えたが、圭一は悪い!と手で謝ってユウと話を続けた。
私は何も出来ず、圭一の隣で耳をすませるしかなかった。
「も、もしもし?」
「グズッ…」
泣いている。
(………なんで私が!!!!!
しかも、泣いてるし、どうしろっつーの!!?
あー!もう!!!!!!!!!)
気を取り直して聞く。
「オホン…あの…何かあったんですか?」
「………グズッ………ご、ごめんなさい、
彼女さんには関係ないんだけど…………ヒック……
マナトくんと離婚することになって、それから、子供に会わせてもらえなくて…ヒック…………
子供はマナトくんの実家に居るんだけど、門前払いで……ヒック…
マナトくんは二度と会わせないって言ってて………
もう、どうしたらいいかわかんなくて………ヒック……」
……………うん、確かに私には関係ない。だけど圭一にも関係ないだろ……。
しかも自業自得。
マナトさんは怒って当然だろ…………
………と。そうは思っても、バカな私は泣いているユウに冷たく出来なかった。
私はやけくそになって、ユウを励まし始めた………
「裁判して例え旦那さんにお子さん取られたとしても、会えないってことは絶対ないですから!
母親のほうが親権は強いから大丈夫ですよ!」
とか何とか、私の知る限りの知識でユウを励ましていた。
しばらく励ましていると、ユウは泣くのをやめて、私の些細なジョークに笑えるようになっていた。
(もう、大丈夫かな?)
そう思った私は圭一に電話を代わった。
ところが!
電話を代わって、ほんの数秒。
「ユウ?ユウ?
泣かないでよ!
大丈夫だから!
死ぬなんて言うなよ!!
ユウ!
聞いてる?
ユウ!?」
!?
さっきまで笑ってたよね?
なんでまた泣き出す??
これが、ユウの本性だ。
男の前では弱いフリをして、守ってアピール。
圭一は、こんな女に騙されて、旦那に慰謝料とられて…情けない!!
私をバカにしてるのか?
どいつも、こいつも!!!
プチ…………
私は何かがキレたように、目の前にあったハサミを取った。
ハサミを持つ手が震えていた。
ここで私自身を刺せば、圭一は私に向いてくれる。
ユウに負けたくない!
圭一の心は渡さない!!!
目をつぶり、勢いよく刺そうとした!
「何やってんだよ!!!」
圭一が私の腕を掴んだ。
目を開けると同時に涙があふれた…………
「ごめん、ユウ!
咲がおかしいから切るね!!!!」
ユウの圭一を呼び止める声が電話越しに聞こえたが、圭一は電話を切った。
そして、私に言った。
「お前まで俺を苦しめるなよ!!!!
頼むよ…………」
「だって、圭一が………………
ユウさんも……
うわぁん………………」
圭一の前で初めて声をあげて泣いた。
だが、圭一は、下を向いたまま冷たく言った。
「こんなんじゃ、俺、お前とも無理だよ…
頭が破裂しそうだ…」
え?
「なんで?!
なんで私ともダメなの?
ユウさんがいいの?!」
「そうじゃないけど、今の俺じゃ、お前を傷つけてばかりだし……
まだ気持ちの整理が着かない。」
「やだよ!
圭一と離れるなんて出来ないよ!」
「ごめん………
帰って………………」
「………そんなの、ひどいよ…
私のこと嫌いなの??」
「そうじゃない!
けど………
今の俺じゃ付き合えない……」
「そ…………」
私は何か言いかけたが、圭一の真面目な顔を見ると言えなくなってしまった。
しばらく沈黙が続いた。
心臓はドキドキとわかるくらいに脈打っていた。
だが、頭の中は冷静だった。
(もうダメか……………)
私は静かに口を開いた。
「わかった…
……………………じゃあ、バイバイだね……………」
「……………………」
何も言わない圭一を横目に、私は立ち上がり、部屋を出た。
「待って!……………………………
行かないで……………」
圭一は泣いていた。
足が止まる。
「な、なんで俺と咲が別れなくちゃならないんだ……………」
私は立ち止まったまま聞いていた。
今引き止めてくれたら、私は……………
「………ごめん、………………………………………………
やっぱり帰って……………」
引き止めてくれなかった。
もう、ほんとに終わりなんだ…………………
その言葉を聞いて私は、小さく「さよなら」と言って階段を降りていった………
フラれたと実感がわかない。
明日になればまたいつものように、圭一と会って、バカな話で盛り上がれる。
そうだ、久々にあの夜景のところにいこう。
そして、二人で手を繋ごう。
たまには近くを散歩しよう。
そう、目が覚めたらきっといつも通りの二人だ…
そんな事を考えれば考えるほど、涙が流れてくる。
夢じゃない。
一人は寂しい。
圭一のバカ………
私のバカ………………
この孤独感。
耐えられない。
苦しい。
助けて。
私はこの日、大切なものを2つ無くした。
一つは圭一。
もう一つは二人で買ったピアス…
無我夢中で探したが、見つからなかった。
もう、神様が諦めろと言っているような気がした…
2つで1つだったのに…
これ以上仕事は休めないと思い、私は次の日から仕事に行くことにした。
店長にまだ休んで構わないと言われたが、誰かと接していたほうが気が紛れた。
1週間ほど休んでいたため、みんな心配してくれた。理由を知っているのは店長とメグちゃんくらい。
痩せた私にみんな驚いていた。
休憩中にお菓子をくれたりしたが、まだ食べれそうになかった。
その日、タケルさんから呼びだされた。
仕事のあと、レストランに行った。
ジュンさんも来てきた。
そこでいろいろ教えてくれた。
圭一が仕事を辞める日のこと、ユウも仕事を辞めること。
二人は、圭一と私が別れたことも知っていた。
タケル「圭一に、落ち着いたら、咲ちゃんともう一度考え直すように言っておくから。
だから咲ちゃんもあまり落ち込まないようにね!」
私は嬉しかった。
圭一が帰ってくるように、促してくれると言うタケルとジュンさん。
私はもう圭一に何も出来ないから、二人を頼るしかなかった。
その話で、少し希望が湧いた。
まだ諦めないと決めた。
すると、急に下腹部に痛みを感じた。
生理がきた!どうやら、過度のストレスで遅れていただけだった。
だが少し、残念だった。
もし、妊娠していたら、圭一を振り向かせることが出来ると思っていたから。
でも、やっぱり生理がきて良かった。
ホッとした。
仕事に復帰してから毎日棚卸しの準備で忙しかった。
でも、携帯だけは肌身離さず持っていた。
仕事中もメールをチェックしていた。
タケルさん達から圭一に関するメールが来ると、仕事中であってもやり取りをしてしまった。
ジュンさんから、
「圭一は落ち着いたら、咲ちゃんに連絡するって言ってたよ」
とメールがきた。
それからは益々携帯が気になった。
上司に見つかり、注意されたこともあった………
この頃の私は社会人としてダメだった。
棚卸しの日、外で店長とかと話をしながら休憩していた。
そこに、見慣れた車が店の前を通った。
圭一だった。
店のほうは一切見ずに通りすぎて、同じ駐車場内にある携帯ショップに入っていった。
店長「あれ?今の圭一やなかったか?」
私「やっぱり?!
でも、こっち全然見ませんでしたね(怒)」
店長「そりゃ、桜、気まずいからやわ」
私「じゃあ、わざわざ店の前通らなくても、別の所から入れるじゃないですか(怒)」
店長「そんなん、お前が気になるんちゃうか?
でも、気まずいからこっち見れんかったんよ。
あほやなぁ圭一は(笑)」
笑うなよ(怒)
こちとら毎日圭一のことで苦しんでるのに!!
10月になり、私の誕生日がきた。
圭一のいない誕生日は寂しかった。
でも代わりに友達が祝ってくれた。前の職場に遊びに行ったとき、上司がケーキでも食べるといいとお金をくれた(笑)
甘いケーキを食べながら、友達とたわいもない話で盛り上がる。
圭一の話になり、別れた理由も聞いてもらった。
みんな励ましてくれた。
すぐに次が見つかるよ!なんて言われたが、軽く流してしまった…
まだ期待しているとは言えなかった…
でも、みんなに感謝した。
夕方、家に帰っていたとき、ジュンさんから電話があった。
どうやらこれから圭一と食事に行くらしい。
私は何気に、今日が誕生日だと話した。
話が終わってしばらくすると、一通のメールが届いた。
『新しい携帯にしました。
今日誕生日だと聞きました。
おめでとう。
咲が産まれて来てくれて本当に嬉しい。』
圭一からだった。
(ジュンさんが言ってくれたんだ。)
でも、何故か敬語…
嬉しくはなかった。
私が欲しいメールはこの内容ではない。
ハッキリ嬉しくないと返事をしてしまった。
でも、返事は来なかった。
私は寂しくなり、夜景のところに行くことにした。
余計に辛くなってしまうのだが…
一人で見る夜景。切なく流れる歌。
泣いていた。
でも、今日で泣くのを最後にしようと決めた!
いつまでもグジグジしててもダメだ!!
明日からは昔の私に戻るぞ!!
だから…
今日だけは…
泣かせてね…圭一………
それから一ヶ月。
寂しくて、辛くて苦しくなるときもあったが、泣かなかった。
泣いても圭一が帰ってくるわけじゃない。
ジュンさんから、圭一が仕事を辞めたと聞いた。
ユウとも切れたと聞いた。
どうやら次のターゲットを見つけたようだった。
なんて軽い女だ。
そんな話を聞いたからか、私は色々回復していった。
11月、朝晩が肌寒く感じる頃。
この頃には私は元気一杯仕事をしていた。
店長とも、圭一の話を笑いながら出来るようになっていた。
そんなある日の朝、いつものように出勤していた。
なぜだか気持ちが良い朝で、気分も明るい。
ノリノリで運転していた。
(なんだか良いことがありそう☆)
そんな風に思っていたら、メールが届いた。
このメールで、幸せな一日が始まる…
その日は一日ご機嫌だった。
店長「どないしたんや?桜ぁ、今日はご機嫌やん。
圭一か!?」
「え?わかります?(笑)
圭一から連絡があって、話があるって言われて、今夜会うんですよぉ」
「そうかぁ、良かったやん(笑)
でも、まだわからんで~」
「もう!なんてこと言うんですか!?
ひどぉい!
そんな話じゃないですよぉ!!!」
どうやら、顔に出ていたらしい。
店長に何を言われても嬉しい気持ちに変わりはなかった。
時間が過ぎるのが早く感じた。
退社時間になり、焦る気持ちを押さえながら、一度家に帰り身なりを整えた。
まだ少し時間があったため、閉店間際の店に寄った。
店では店長が外の売り場の片付けをしていた。
私に気付いた店長は、笑いながら言った。
「おー、桜!
決まってるやん(笑)
戦闘服やな!」
「えっ?
そんなつもりないんですけど…(照)」
「いやいや、可愛い可愛い(笑)」
そう言われ嬉しくなった。
圭一に会うのは久し振り。
あードキドキしてきた!!!
時間がきた。
待ち合わせの場所につくと、圭一は先に来ていた。
ドキドキしながらも、車を止め、降りる。
すると、圭一は車の窓をあけ、何も言わず、
手を私に差し出した。
久し振りに見た圭一は以前の圭一のまま。
やっぱり好きだ。と思った。
真っ直ぐ私の顔を見てくれている。
今にも泣いてしまいそうだった。
差しのべている手に触れたい…………
でも、ダメだ!
簡単に許しちゃダメ!
そう思い、私は腕を組んだ。
「ちゃんと、全部話してくれるまで嫌だから。」
そう言うと
「まぁ、乗りなよ…」
私は言われるまま車に乗った。
「元気してた?」
「してない。」
「….。
ごめん、待たせて…
ジュンさんたちに、咲はずっと待ってるって聞かされて、すげぇ嬉しかった。
お前が待っててくれたから、俺頑張れた気がする。」
「うん。ずっと泣いてたけどね…」
「本当ごめんな。
でも、もう全部終わったから。
だから、こうやって咲のところに帰ってこれた。」
「もう、あんなことしないでね。
絶対!」
「うん、もう二度と悲しませないから。」
そう言って、手を出してきた。私は組んだ腕をとき、その手に触れた…
暖かい…
圭一の温もり…
たった一ヶ月だったのに、もう、何年も感じていなかったように思えた。
本当はこんなに簡単に許すはずじゃなかった。
罵声を浴びせて、土下座させて、一発殴ってやろうと思っていたのに…
目の前にいる圭一。
私を見つめる圭一。
私の手を握る圭一。
もう、それだけで十分だった。
しばらく車の中で話をした。
あれからどうなっていたか、ジュンさん達から聞いていた事もあり、所々にあった溝を埋めることが出来た。
一通り話を聞いた後、圭一の家に行くことになった。
久し振りに入る圭一の部屋。
前と変わらない。
荒れた布団に、服が投げてあるソファー、所々に物が散乱している。
机の上には、私が無くしたピアスの片割れがあった。
「ごめん、圭一。
私このピアス無くしちゃったんだ…」
ちょっと落ち込み気味に言った。
「そうなの?
でも、気にするな。」
優しく頭を撫でる。
「俺はこれを見ながら、お前を思ってた。
これからは、俺がした過ちの十字架として持っておくよ。
だからまた、新たに買おう。やり直しの記念にな。」
私は嬉しかった。
過ちを背負ってやっていくつもりの圭一が。
これからが楽しみだった。
新たに買うピアスも…
帰り際、次はボードに行こうと誘われた。
それまでに圭一の仕事を見つけようと二人で話した。
何日かして、圭一は前の職場の同期達と飲み会に行くと言った。
仲の良い女の人もいる。
私は不安になったが、束縛は良くないと思い、笑顔でいいよと頷いた。
でも、その日になると、やっぱり不安で堪らなくなった。
本当に飲み会なのかな?
仲の良い女の人いるんだよね?
ユウはまさかいないよね?
怖い…
でも、圭一には言えない。
私は我慢出来ず、ドライブに行くことにした。
途中通らなくても良い場所を通ってしまった。
ユウの住んでいた街。
不安が一層強くなってしまった…
一番近くの海についた。
一人日が暮れかけた海を眺めていると、あの事を思い出す。
きっと、圭一とユウもこの海に来たんだろうな…なんて思いながら。
結局、ユウと会っていた時の事は聞いてない。
いや、聞けなかった。
聞いてもし、何かあれば私は圭一を許せなかったに違いない。
何もしていないと言う圭一が真実だ。
もう、それでいい。
周りには仲良さげなカップルが増えてきた。
そんな中、私は一人で感傷に浸っていて、恥ずかしくなりその場を後にした。
そのあと、色々走った。知らない道も走って、意外と楽しんでいた。
そんなとき、メールが届いた。
圭一からだった。
『今◯◯だよ。
咲は何してる?』
『海に行ってたよ。今はドライブしてる』
『一人で?
ごめん、俺、咲を不安にさせた?
やっぱり行くの止めたらよかった』
『ううん!違うよ!暇だから(笑)
気にしないで楽しんで!』
『ごめん、そんな時に側にいなくて…
咲の側に居たかったな。』
不安だった気持ちがこのメールで吹き飛んだ。
私を大切にしてくれてる。
私を想ってくれてる。
本当に嬉しかった。
それからまた数日経った。
その間も圭一は職を探していた。
近場に良いところが見つかり面接に行くことになった。
私も着いて行った。
一時間くらいして、圭一が手応えがあったと嬉しそうに帰ってきた。
その結果はすぐに来た。
再就職が決まった。
二人で喜んだ。簡単にお祝いもした。
前と同じような内容の職場だが、今度は夜勤ではなく、宿直があった。
私は喜んではいたが、ちょっと不安もあった。
圭一が仕事で、夜いない日があるのは仕方ない事。
職場に女の人がいるのも仕方ない。
でも、もしまた同じような事があったらどうしよう…
と。
「圭一、お願いがあるの…」
私は恐る恐る圭一に言った。
「ん?なに?」
「あのね、言いにくいんだけど…
まだ私完全に消えたわけじゃないの…
その…
圭一にされたこと…」
「うん。
それで?」
「だからね、次の職場も、女の人いるでしょ?
だから不安なの…」
優しく圭一は笑った。
「大丈夫だよ!
もう仕事上でしか付き合わないし。」
「うん。
でも、もう女の人と連絡先とか交換してほしくないの…!」
頭をポンポンされた。
「しないよ。
大丈夫だって。同じ過ちはしないから!
交換し合う必要もないしね。
あっ、でも、仕事場には教えとかないといけないし、それは許してね。」
「それは仕方ないことだから、気にしないよ。
ありがとう、圭一。」
私はそう言う圭一を信じた。
嬉しくなり圭一に抱きついた。
圭一は変わったんだ!
もう大丈夫!!
また繰り返すなんて思いもせず…
私は喜んでいた…
圭一が仕事に行くようになってから、会えない日があったが、圭一が家にいる日は、必ず会いに行っていた。
側にいないと、不安で仕方なくなってきていた。
今、どこで、何をしているのか…
圭一の全てを把握しておかないと気がすまない。
でも、圭一はそんな私を安心させるために、電話やメールは欠かさなかった。
一度間違ったことしたんだし、当然だよね。
なんて思うようになっていた。
年末、相変わらず仕事は忙しかったが、お正月は休みを貰っていたため、頑張った。
大晦日、仕事はいつもより早く終わる。
みんな一斉に退社。
この日は珍しく雪が降っていた。
家に帰るまでは良かった。
でも、それから一時間もしない間に、当たり一面真っ白になった。
圭一に会いに行くつもりだった私は出掛ける準備をしていた。
それを見た母が、
「あんた、こんな天気にどこいくの??」
「え?圭ちゃんのとこ」
「止めなさい!危ないわよ?」
「大丈夫だよ~」
しつこく、止められた。
でも私は言うことを聞かなかった。
仕方なく母は、父に送るように頼んでいた。
父にも小言を言われたが、送ってくれるようだった。
その事を圭一に話すと、途中まで迎えに行くと言ってくれた。
そして、暗い吹雪のなか、父に送ってもらい、圭一に無事会うことが出来た。
私は圭一の車に乗り込んだ。
圭一「無理して会わなくていいのに。」
「うん、でもX'masのこともあるし、謝りたくて…」
私はどうしても圭一に会いたかったのだ。
…………………………………………………………………………
遡ること一週間前。
今年はX'masが、休みで連休だった。
圭一も休みで、タケルさん達と出掛けることになっていた。
私は二人で過ごしたかったが、圭一が断りきれないと泣く泣くOKした。
場所は、県外。有名なイルミネーションがある。
夕方くらいに着くように出掛けた。
目的地までは車では行けず、ひとつ前の駅付近に車をとめて、電車で行くことになった。
さすが都会。人、人、人。
酔いそうだった。
電車に乗り、目的地に着いた。
まだ、時間があったため、近くのデパートに入った。
デパート内の宝石店の前を通ったとき、ジュンさんが言った。
「圭一、あんたX'masだし、咲ちゃんに何か買ったの?」
「いや、まだっす。」
「おそっ!何やってんの!
あ、これなんていいんじゃない??」
と、言って手に取ったのはネックレス。
私はそれを見て可愛いと思った。
でも、値段を見た瞬間、イヤイヤ無理無理、
と思った。
でも、タケルさんまで、圭一に買うように促してきて、圭一もその気になりかけていた。
「圭ちゃん!いいよ!こんな高いの…」
私は小声で圭一に言った。
「え?なんで?
いいじゃん、俺何もしてないし。
咲はマフラーくれたじゃん?」
確かにマフラーはあげた。でも、全然高くないし。値段が違う。
私は本当に買おうとしている圭一を必死に止めた。
だが、それがいけなかった。
会場に着いても、圭一はタケルさん達とばかり話をしていた。
私のせいだとは思っても、圭一の態度は辛かった。
イルミネーションはとても綺麗だった。
カップル達は手を繋ぎ笑い合っている、タケルさん達も、仲良さげに歩いている。
なのに、私達は手も繋がず、ただタケルさん達の後ろを着いて歩くだけだった。
交わす会話は、感想くらい。
イルミネーションを過ぎると、屋台が出ていた。
お腹が空いた為、色々買った。
その間も私だけ孤立していた。
沢山の人で、着いて行くのに必死だった。
でも、圭一は私のことなんて振り返りもせず、ただひたすらにタケルさん達と楽しそうにしていた。
(もし、このままはぐれても誰も気付かないだろうな…)
なんて、思っていた。
少し、また少しと三人と距離が離れていく。
ふと、とある屋対が気になり、足を止めてしまった。
買いたくなり、圭一に待ってもらおうと前を見た。
あれ?
みんなは?
前を歩いていたはずの三人がいない。
私は本当に迷子になってしまったのだ。
圭一達にも連絡がつき、二人が帰ってきた。
タケル「いやぁ、良かったよ。
気づいたらいないんだもん。
ごめんなぁ、ほったらかしにして…」
私「いや、私がよそ見したから。
すいませんでした!」
恐る恐る圭一の顔を見る。
明らかに怒っている。
仕方ない。私のせいだ。
「ごめん、圭ちゃん…」
圭一「たく、心配かけやがって!」
タケル「まあ、まあ、見つかったんだから。
でも、お前が俺らと話ばっかりしてるからだろ?ちゃんと咲ちゃんの隣にいろよ~」
圭一「え?俺のせいっすか?」
ジュン「そうだよ~(笑)」
そう言われると、圭一は私の手を握った。
圭一「これならいいんでしょ!」
タケル、ジュン「そうそう(笑)」
私は、突然のことに、申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちとごちゃごちゃになっていた。
それは一瞬の出来事だったが、私の中ではスローモーションのような感覚だった。
後ろのタイヤが右に大きく振れた。
タケルさんが体勢を建て直そうとハンドルを切る、すると今度は左に…
私は、事故る!と心の中で思い、隣にいた圭一の手を強く握った。
多分、妙な声が出ていたと思う。
でも、タケルさんは至って普通…
焦ることなく、
「おっ、ごめんごめん。」
なんて言いながら体勢を立て直した。
スゴく格好良かった(笑)
すぐに車を停めた。
「やっぱり四駆にしなきゃ危ないなぁ(笑)
ごめんな、ビックリさせて(笑)」
と、笑いながら四駆に切り替えた。
ジュンさんも笑っていた。圭一もタケルさんの運転技術を絶賛していた。
言葉を発していなかったのは、私だけ。
心臓バクバク。体はガタガタ。
私は、圭一の手を握ったまま、顔が引きつっていた。
朝、起きた圭一は時間を確認するため、携帯を見た。
少し操作していた。
昨日のはどうやらメールだったようだ。
それを見ながら、
「夜中にメール?」
と私から切り出した。
「あぁ、友達の〇〇。」
あっさり返事がきた。
「ふーん、でも携帯鳴った?」
「いや?音消してるから。」
「なんで?いつもバイブじゃん?」
「だってゆっくり寝たいしさ。」
「そう…」
明らかに不安な顔をしたのだろう。
すかさず圭一が手を握ってきた。
「大丈夫だって!本当に〇〇だし!
なんなら見る??」
「えっっ、い、いいよ!」
とっさの事で私は、拒んだ。
(大丈夫だよね?
圭一、堂々としてたし…
まさか…ね…
うん、やっぱり私の思い過ごしだよね!)
そう思うことにした。
また嘘だとは知らずに…
「圭一、起きて。
携帯鳴ってるよ!」
「えっ?嘘っ?」
パッと起き上がり、少し焦ったように携帯を開いた。
「あれ?音鳴った?」
「いや、たまたまメール来たの見たから。ごめん、ボタン押しちゃった。」
「え?………………あ、そう。」
一瞬空気が止まった。
一通り読んだあと、携帯を閉じた。
私は少し間を空けて聞いた。
「友達?」
「あ、うん、◯◯」
………………………………!!
やっぱり嘘ついた。
「………嘘つき………」
「え?なに?」
「嘘つき!!!!!」
「えっ?どうしたの??何だよ?
もしかして、見た?」
「うん。見た。」
「はぁ?また見たのかよ!?」
少し不機嫌そうに言われ、私も頭にきた。
「はぁ?って何が!嘘ついてたのそっちじゃん!!
平気な顔して、また女とメールして!
この間のもそいつとじゃん!!
私言ったよね!?
アドレス交換しないでって!!
また同じことしてんの?!?
まだそんなに時間経ってないのに!!ふざけんな!!」
私は怒りをぶつけていた。
一通り怒りをぶつけたあと、圭一はめんどくさそうに言った。
「お前がそんな風になるから嫌だったんだよ!」
「ちょっと何よそれ、私がいけないの?」
「言ったら不安になるだろ?!」
「当たり前じゃん!!もうしないって言ってたのに!」
「仕方ないだろ?!聞かれたら答えないわけにいかないだろ!!」
「じゃあ、また繰り返すのね!?」
「してないだろ!!ただメールしただけ!!俺だってバカじゃない!同じ事繰り返すわけないだろ!!」
「どーだか!」
「疑うなら疑えばいいだろ!?でも今更メール止めれないからな!」
呆れた。
約束を破ったことを謝ることすらせず、開き直り。
でも、私は圭一が好きだから、我慢するしかなかった。
それがいけなかったのだが。
その日の夜、圭一の休憩時間に電話をかけた。
「もしも~し」
「あは、眠そうだね」
「あぁ、やっと休憩だよ。今から三時間寝るよ」
「大変だね、ちゃんと起きれるの?(笑)」
「目覚ましあります。大丈夫~」
と、ここまではいつもと同じだった。
すると突然…
「圭一くーん。まだぁ??早くおいでよ~」
??
圭一の後ろから女の声がした。
「あっ…」
「あ、ごっめーん、電話中??
早くきてね~」
私との間に沈黙が走った。
「…夜勤、仕事だよね?」
私は静かに言った。
「あ、当たり前だろ!」
「誰、今の。今から何するの…?」
「いや、……あ、…お茶飲みに…」
「は?今から寝るんじゃなかったの?」
私はここまで冷静だった。
「いや、だって、誘われたから…」
この言葉で私はキレた。
「はぁ??なんで嘘つくの?!!私に隠すくらいやましいことすんの!!!!?」
「だから!なんでそうなるんだよ!!!」
「あんたが嘘つくからでしょ!!?」
「あ゛ぁー!!!!もう!!!!!いい加減にしてくれ!!!!」
「何!?逆ギレ???意味わかんない!」
「もう、いいよ!!!
…………………………俺行くから。じゃ。」
プチ……………
「ちょ!圭一?!」
すぐさまかけ直したが、電源を切られていた。
なに、…何なの…今の誰………
仕事って…
もしかしてこれも嘘??
もう、何も考えれなかった。
しばらく茫然としていた。
一時間くらいしてメールが入った。
『今日はほんとに仕事だから』
メールを読みすぐ電話したが、電源が切られていた。
私はその日、一睡もすることが出来なかった。
薄暗い部屋。
私は考えていた。
(もう、終わりなのかな…
そういえば、最近嘘ばかりだったなぁ。
この間も家にいるから行ったら、パチスロ行ってたし…
私がいけないのかな。
束縛だよね。これ…
でも、圭一は私に償うべきなのに…
あ…重いんだ。私。)
私は気付いていた。もう圭一を信じていないこと。
信じることが出来ないこと。
きっとこれからもずっと疑う。
でも、それを受け入れたら…
私は…
圭一との別れが近づいていた。
朝
寝てない私はフラフラしながら仕事へ行った。
店長やみんなが心配してくれた。
でも、私はもう圭一の話はしなかった。
休憩時間、メールが来た。
『昨日はごめん。でも咲が心配するようなことは絶対してないから。』
私は圭一を問い詰めることはしなかった。
また会ったときにゆっくり話そう。
そう思った。
でも、それからの圭一は益々素っ気なくなっていた。
だから電話をしても、ついキツい言い方をしてしまっていた。
そして、やっとお互いの休みの日が重なった。
私は圭一に会いたくて連絡をした。
圭一は夜勤明け、でもその日は歯医者に行くと言われた。
でも、話がしたくて圭一の行く歯医者に行くことにした。
大型店舗に隣接している歯医者。
駐車場も兼用。
私は圭一の車を探した。
でも見つからない…
歯医者の前に車を止めてしばらく待った。
でも、圭一は来なかった。
30分…1時間…
携帯にかけても繋がらない…
何度も何度も電話をかけた。
そして、やっと繋がった。
「もしもし!?」
「…ぁい」
「何?寝てるの??」
「………ぅん。何だよ?」
「歯医者に行くんじゃなかったの?!」
「…あぁ、止めた…」
「は?また?…待ってんのに」
しばらく沈黙…
「じゃあ今から行っていい?」
「ごめん。今日は無理。」
「え?なんで?」
「………………ごめん。用がある…」
「え?だって今歯医者行かないって」
「いや、…ちょっと…」
「何?なんの用があるの?」
「…もう、いいだろ。…………
しばらくほっといてくれよ。
今咲とは話したくない。
ごめん…………………じゃあ」
プチ…
「ちょ!圭一?!」
かけ直したが電源が切られていた。
私は泣いていた。
もう、…終わり???
「おー!桜!元気??久々♪」
ハイテンションの竜也。
私は泣いているのを悟られまいと明るく返
す。
でも、長い付き合い、すぐ気づかれた。
訳を聞かれ、言わずに渋っていたが、しつこさに負けた。
話を聞いた竜也は「すぐ来い!」と私を誘った。
行きたくはなかったが、また、負けた…
竜也のいる街は一時間くらい離れている。
途中、竜也が聞いてきた。
「イケメンで物静かな奴と、顔は普通で俺みたいな奴(明るくバカ)どっちがいい??」
と。
意味がわからなかったが、「イケメンさんは苦手」と言ったら、「おっけー♪」と電話を切られた。
この時点で気付くべきだった。
竜也が男を紹介してくれるなんて…
しばらくして竜也から電話がきた。
「ごめん!なかなか抜け出せなくて!今着いた。どこ?」
居場所を教えると、歩いてくる人影が見えた。
でも、一つじゃない、二つ…
一つの影は途中で止まり、もう一つは近づいてきた。
「おっつー!」
相変わらずのテンションの竜也。
酒臭い…
「飲んでる??」
「うん♪でも、桜の為に抜けてきた(笑)」
「あ、ありがとう…」
そう言うと、竜也は後ろを振り返り
「後輩連れてきた(笑)
桜が泣いてるって言ったら、俺も励まします!って言って着いてきた(笑)」
ちょっとビックリした私。
あ、だからあんな質問したのか…
後輩くんのほうに目をやる。
暗くてよくわからなかったが、とりあえずデカイ…
熊かと思ってしまった…
頭は仕事帰りでボサボサ、身長は190近い…
名前を「祐介」と言った。
「あ、竜也…私紹介されても困る…」
小さな声で言った。
「いやいや、違うよ!
友達として紹介したいだけ!
今はとりあえず話し相手がいるだろ?
俺が聞いてやりたいけど、彼女いるし、ずっとは無理だから、あいつ(祐介)だったらいいかなって。
女友達ほしいって言ってたし(笑)」
そんなこと言われても…と、戸惑う私に、竜也は祐介を呼び、お互い挨拶を交わした。
そして、遊びに行こうと言われて、カラオケに行くことになった。
祐介は私より二つ年下。
でも、明るくて面白い子だった。
カラオケは楽しかった。
圭一を忘れられるくらい二人は盛り上げてくれた。
特に祐介は私が泣いている理由をよく知らないのに、私を笑わせてくれた。
イイ人だと思った。
帰り際、竜也が祐介のアドレスを教えてくれた。
帰ってからお礼を兼ねてメールをした。
それからはたまにメールをする仲になっていった。
「竜也さんに任されたからね!」
なんて言いながら…
私の鼓動は早くなっていった。息苦しく、胸騒ぎが収まらない。
怖い!今すぐにでも電話を切りたい。
受話器を持つ手が震えていた。
しばらく沈黙のあと、一言圭一が言った。
「わからない…」
………………
いつも!いつも! 大事な答えはあやふや!
「自分のことがわからないの?!」
私は声が大きくなった。
「だから、お前のそういうところが……!!」
「な、なによ…
もう私の事嫌なわけ…………??」
「いや、…………」
「じゃあ、…………なんで……………?」
沈黙。
「わからない………………」
「嫌だから話したくないんでしょ?」
「嫌いとかじゃない!」
「じゃあまだ好きでいてくれてるの!!?」
「いや、……………わからない…」
「……………何それ、意味わかんない!」
「……………………」
「ねえ、一度会おうよ……………」
「……………ごめん。会うのは無理……………」
私のこと、好きか嫌いか…
それすら答えてくれない。
でも、それは私自身もそうだった。
圭一を好きか嫌いか…
もし聞かれていたら、答えは出なかったからだ。
でも、それでも、やっぱり圭一に「好き」だと言ってほしかった。
こんなやり取りを繰り返し、圭一の煮えきらない答えに私はついにあのセリフを言ってしまう。
そのまま電話を切った。
「別れよう」
この言葉を言ったら、私はどうなるんだろう。不安で仕方なかったのに。
でも、心は妙に落ち着いていた。
これで良かったんだ………
このまま一生、疑わずに済む。
もう苦しまなくていい。
うん。
これで良かったんだ……………
もう一度鳴ると思っていた携帯はそれから一度もなることはなかった。
それがどういう意味か…
圭一も本当は別れたかった。
そうなんだよね?
だけど、私が言うまで圭一が言わなかったのは、私にしたことを負い目に感じていたからでしょ?
私が圭一を嫌いになるまで待ってたんだよね?
じゃないと、私がいつまでも引きずると思ったから。
だからだよね?
そんな優しさいらないよ。
って、思いたい。
完
読んで下さった皆様へ
短い話なのに書かない日々が続いてすみませんでした。文章能力もなく、お恥ずかしいかぎりです。
しかもあんな終わりかた(--;)
「あっけない最後」
なので、お許しください。
本当はあの電話のあと、かけ直してくることを期待していた自分がいます。
自分からも連絡しようと思ったこともあります。
でも、しませんでした。
寄りが戻ったとしても、私はきっと圭一を信じることが出来なかったでしょうから。
圭一が「別れよう」って言わなかった理由を「優しさ」という言葉で書いたのは、この話を書いていて、そうだったらいいなって思ったからです。
実際は私がただ面倒くさかっただけなんでしょうけど(笑)
これを書くまで圭一のことを恨んだりしてましたけど、なんかスッキリしました。
今では一つの思い出として、心の奥底にしまえそうです。
あ、でもやっぱり一発殴っておきたかったな(笑)
書いて良かったです。
ありがとうございました!
あと、追記なんですが、私は実はあの時に出会った祐介と結婚しています。
私は別れてからというもの、男性を信じれなくなってました。
でも、彼はそんな私を二年という月日をかけて信じさせてくれました。
その後、結婚し、二人の子供にも恵まれ今は幸せに暮らしています。
祐介は浮気をしないと、今でも信じていられます。
結婚まで、別のことで色々ありましたけどね(笑)
最後の最後まで、読んで下さって、本当にありがとうございました。
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