もしも…【運命】
もしも…
あの時…
あなたに出逢わなければ…
もしも…
あの時…
あなた達の小さな手を
振り払っていたら…
運命…?
これが運命だというのなら
…私は…
※ある女性の人生を書きます
半分フィクション
半分ノンフィクションです
良ければお付き合いください
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お聞かせできるならば
もしも…意見・感想
までお願い致します
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3日経っても帰ってこない
お小遣いなんてたいしてあげてないし
あればあるだけ使うタケルが、お小遣いを貯めていて計画的に出て行ったという事はまず考えられない
そろそろ持ち金はないだろう
人様に迷惑をかけてないだろうか…
また恐喝をしてるんじゃないか…
“他人に迷惑をかけているかも”
私の頭の中はそれだけ
タケルの安否なんて全然心配しなかった
私はトモに言った
『兄ちゃんのこと言って
父ちゃんに家に帰ってきてもらって!』
ゼンは女とどこかで生活している
ゼンはトモだけに連絡先を教えていた
「めんどくせぇ」
と言いながら、トモはゼンに電話をかけた
数時間後
1年振りにゼンが家に帰ってきた
“夫”としてではなく
“父親”として…
その証拠に女と一緒に来て、女は車の中で待っている
私に嫉妬とか怒りとかはもうなかった
『タケルが帰ってこない…警察に電話しようかな?』
「組の者にタケルを探させてるから、直に見つかる。心配せんでいい」
…組!?
あぁ…
この人ヤクザやめてなかったんだ…
もう…
どうでもいいや…
『そう…』
それしか言えなかった
今日は帰ると言って
ゼンは女と行ってしまった
息子は家出
旦那は女を連れてくる
ヤクザをやめたと3年間嘘をつかれていた
最悪なトリプルショック
…私は一体なんの為に生きてるのかな…
こんな思いする為に生きてるのかな…
ゼン…
“今日は帰る”
…?
あんたの“帰る”家はココじゃないの?
家族の居る家じゃないの?
ゼンにとって私は何?
自分の子の母親…?
はは…
ほんとそれだけだね
…疲れた………
次の日は朝から大雨だった
私は仕事を休んで家に居た
ゼンが傷だらけのタケルを連れて帰ってきた
『お前!また喧嘩してたの!?勝手に家出て勝手に喧嘩して!!!』
声を荒げる私に
「うるせークソババア!
他に言うことねぇんか!」
はぁ!?
他に何を言えばいいの!?
子供の気持ちなんて
全然わからなかった
今ならわかる
心配して欲しかったんだよね
こっち向いて欲しかったんだよね
『心配したよ』
そのひとことを言えなかった母ちゃんを許してね……
それからしばらくして
ゼンが女と別れたらしく
家に帰ってきた
家に父親の存在があるということは
すごくありがたかった
タケルが悪い仲間と
盗んだ単車を無免許で
隣の県まで暴走した時
捕まった警察署まで行き
ゼンは警察官の前で
タケルをあり得ないくらい殴った
警察官に止められてもやめなかった
引きずるように車に乗せ
そのまま家の近くの行きつけの床屋にタケルを連れていった
夜だからもう店は閉まっているのに店主を呼び出し
金髪にしているタケルの頭を坊主にさせた
母親の私にはできないことをやってのける父親の権威は絶大だった
それでもタケルは懲りなかった
人様に迷惑をかける悪さを懲りることなく続けているタケル
中学を卒業した途端、女のところへ転がりこみ、あまり帰ってこなくなったトモ
その中で
ゼンはまた女を作った
私は仕事と家事とタケルの尻拭いで疲れきっている
ある日
ヤクザとつるむタケルを見た
タケルがヤクザ…
不思議でも何でもなかった
息子がヤクザになっても動揺しない私の心は
きっと壊れてた
タケルに問うとすんなり認めた
“親父がヤクザやってるのに、俺もヤクザで何が悪い?”
という感じだった…
ある夜
組のヤクザが集まるらしく
タケルも行くらしい
『母ちゃんも行く』
と言ってついて行った
…笑っちゃうね
そんなこともあったね…
母ちゃんなりにタケルに近づこうとしてたのかなぁ
その時のタケル
「はぁ~?」
とか言いながら嬉しそうな顔してたような気がするのは
母ちゃんの勘違いかな…
今回ゼンは
女を作っても家に居た
相手が実家暮らしか
一緒に住めない理由があるのか知らないけど
ゼンは家に居た
これほど苦痛なものはなかった
平気で女から電話がかかってくる
そして夫に不倫相手からの電話を繋ぐ私も居る
「おう!今から行く!」
そう言って鏡を見て
パンチパーマの髪型をチェックして
「じゃあ行ってくるわ」
『いってらっしゃい』
不倫相手のところへ行く夫を見送る妻…
その夫婦関係を間近で見る思春期の息子たち…
泣いてすがりついて
止めることもできない…
キレて離婚用紙を突きつけることもできない…
タケル…
トモ…
こんな母ちゃんを…
どう思ってる?
私以外の女に触れている
ゼンの手
ゼンの唇
ゼンの体…
私のものじゃない
女のところから帰ってきて、洗濯カゴに入れられてる服やパンツ…
触るのも汚らわしい
けれど洗濯をする私
切り裂いてゴミ箱に捨てる根性もない
せめて私と息子の物と別々に洗うことが必死の抵抗…
二層式の洗濯機でぐるぐる回るゼンのパンツ…
私の頭もぐるぐる回る
汚い…
汚い……
まだ汚い…
あぁ、汚れが消えてく…
ふふ…私も…
…消えたい……
そして終わりは
すぐそこまで来ていた
いつものように
女から電話がかかってきた
ゼンに取り繋ぐ私…
電話を代わり
ゼンは声を弾ませた
「そうか!今から行く!」
…また出るんだ…
…もう慣れたけど…
ゼンが電話を切った後…
私の壊れた心は
これ以上壊れ様がないくらい粉々になった
「女が子供できたから離婚だ!」
…子供?
妊娠…?
………ゼンの…?
離婚…?
…………離婚……
…
……
………
「親父、女 孕ませたんか」
!!
タケルの声で我に帰った
頭が真っ白で思考回路が停止していた…
「まぁ、そんなことになると思ってたけどよ」
…タケル……
「俺もそう思ってた」
…トモ……
タケル…
トモ…
母ちゃん、
我慢しなくてもいいかな?
親の勝手なことをしてもいいかな?
頑張らなくてもいいかな?
…もう…いいよね……?
『父ちゃんと母ちゃん離婚してもいい?』
その問いに
「別れろ別れろ~!
もう楽になれよ!」
タケルが言った
「兄貴がそう言うんならいいんじゃね?」
トモもタケルに同調した
『父ちゃんと母ちゃん、どっちについてくる?』
その問いに
「親父は俺のこと要らねぇだろ(笑)お前と暮らすわ」
タケルがそう言うと
トモは 兄貴についていく
と言った
そう…
両親が他人同士に戻っても
兄弟は兄弟…
あなた達は引き裂けない
私がゼンの仕打ちに耐えて守ってきた形が崩れようとしている中でも
この子達の絆は強い
母親冥利に尽きる瞬間だった
その日
離婚届を用意した
サインと捺印…
これに名前を書くのは2度目
ゼンと2度めの離婚をする時がきた…
タケルが小学生で
トモが幼稚園児の時に再婚して
それからの11年間
心の休まるときなんてなかった
ゼンの度重なる浮気と
タケルとトモの素行の悪さに悩まされ続けてきた
それでも逃げなかった
家庭を壊したくなかった
だから頑張ってきた
…耐えてきた…!!!
…子供の為に!!!!
その苦労を簡単に壊そうとするゼン
“不倫相手に子供ができたから離婚”
…こんなに簡単に壊されるなんて…
ゼン…
あなたを恨んでもいいですか…?
ゼンは私が用意した離婚届に
簡単にサインした
私と離縁すること
私が子供の親権をもつこと
それを一瞬で承諾してサインをしているその姿を見て
私は情けなくて涙が出た
私が守ってきた家族が
こんなにも簡単に壊れるなんて…
私がしてきたことって何?
無駄なことだったの?
ひとり空回りしてただけ?
意味がないこと?
ゼンが離婚届にサインをしたことで
私のしてきたこと
すべてを否定されたような気がした
ほんと私って…
……なんなんだろう……
ゼン 39歳
私 35歳
タケル 17歳
トモ 15歳
私たちは離婚し
家族はバラバラになった
ゼンと女の手によって…
私は家にある家財道具一式、何一つ渡さなかった
慰謝料や養育費は全くない
ゼンは長年かけてきた
家族の生命保険証書を持って行った…
離婚した後の
私と子供たちの生活なんて何も考えてない
そんな男にしがみついてきた自分が情けなかった
でも本当に
私はよくやったと思っている
ゼン…
あなたに振り回された18年間…
大変な思いをしてきたけれど
いろんな苦労を乗り越えてきた分
私は強くなった
私はあなたに強さをもらいました
これから先
どんなことがあっても頑張っていけそうです
ありがとう……
『幸せになってね…』
離婚後
ゼンと女はどうやら近くに住んでいるらしく
良く見かけた
会いたくない人に限って良く会う…
タケルやトモも良く会うみたいで
「今日も親父と女見たぞ!」
わざわざ報告してきた
文句を言う為に近づくと
女はお金を渡してきたらしい
意味がわからない…
何のお金?
ふざけるな…
突き返さない息子にも呆れる
汚い女…
さすが泥棒猫…
見かけるたびに
お腹が大きくなっている
彼女の肩を抱いて
幸せそうに寄り添い歩く姿…
その光景を見るたび
私の中は醜い感情でいっぱいになる
若い女に惚けて
父親放棄した最低男
若いだけで綺麗でもなんでもない女
お前もゼンから暴力や暴言を受ければいい
その仕打ちに耐えられず別れたらいい
私から夫を奪った罪
子供たちから父親を奪った罪
2つの罪を背負って生きていけばいい
泥棒猫
メスブタ
死ね
2人揃って地獄へ堕ちるがいい
心の中で思うだけで
ゼンにも女にも
恨み言はひとことも言わなかった
言わなかったのは
ゼンに
“最後までいい女だった”
そう思わせたいから
腹の中までわざわざ見せることはない
それは愚かな女がすること
…
あんな男…
私が捨ててやったんだ
くだらない女に
くれてやったんだ
そう自分に言い聞かせることで
弱虫な自分をごまかした
離婚後も変わらず
タケルとトモは荒れていた
タケルが傷害事件を起こし鑑別所へ入った
今まで何度も事件は起こしてる
警察と顔見知りになるくらい
それでも今までなんとか
のらりくらりとかわしてきた
いつかこうなると思っていた
親の言うことを聞かず
好き勝手やってきた罰
頭を冷やすのには丁度いい
被害者、その家族に
何度も頭を下げた
頭を下げるのはもう慣れた…
お金を工面するのが大変だった
“もう帰ってこなくていい”
と思ったが1年足らずで
タケルは出てきた
保護観察がついているからおとなしくしていたけど
どうせまた繰り返す
私は一生この子の尻拭いをして生きていくのだろうか…
…なんとかしなければ…
私の人生…
息子に食い潰されてしまう
不思議とタケルが鑑別所へ入ってる間
ゼンには会わなかった
あまりにもパッタリ見かけないようになり
なんだか少し気味が悪かった
でも
会ってしまえばまた醜い感情が沸き上がってくる
神様が
そっとしておいてくれたかもしれない
私が穏やかな感情で居られるよう
配慮してくれたのかもしれない…
その中で私は
もうひとつの人生を見つけた
離婚したことにより
私の視野は広がり始めた
他を見る余裕が出てきた
ずっとしたかったことができるようになった
仕事仲間とゆっくりお茶したり
家では好きなテレビも観れるし
せかせか夕飯の支度をしなくてもいい…
トモはタケルの存在がないから結構おとなしくしてるし
タケルは鑑別所の中で
反省しているだろう
鑑別所の中では悪いこともできないから
毎日ヒヤヒヤして過ごさなくていい
なにもかもから解放された気分だった
これが自由なのかな…
生活は決して楽じゃなかったけど
充実した毎日を過ごしていた
そんな日々の中
私の勤めている工場の近くには
もうひとつ小さな工場があって
そこの事務員らしき女性に声をかけられた
「あなたうちで働かない?」
?
なに?
「うちの主人がね
あ、ここの社長なんだけど。あなたのこと気に入っててね~」
…
意味がわかりません(笑)
「まぁ転職する気があったらいつでも声かけてねー」
…とにかく意味がわからなかったけど
このことがきっかけで
私の第2の人生が始ることになる
気に入ってる…
私を?
ふと鏡を見てみる
自分で言うのもなんだけど
かわいい顔してる
ゼンとの生活で苦労してきたけど
今はいい笑顔が作れてる
ゼンと居る時は
化粧なんてひとつもしたことなかった
すると言ったら
特別な日に口紅を塗るくらい…
別れてからは
軽くファンデーションと口紅を毎日欠かさずしてる
私もまだ若い
まだイケる
私を気に入ってくれてる
工場の社長さんは
どんな人なんだろう…
…
と言うか
その人奥さん居るし…
と言うか
なんで奥さんにそんな話をするのだろう…
と言うか
私にそれを伝える奥さんも一体なんなんだろう…
……
宣戦布告…?
もしかして
もうすでに自分の夫と私になんらかの関係がある
そう思ってるとか?
それとも
自分の夫が自分の知らないところで私に近づくのが嫌で
先手を打っておいたとか?
それで私に宣戦布告?
夫は渡さない
私が妻よ!
みたいな?
…
…わからない……
わからないから私の妄想は膨らむ一方だった(笑)
久しぶりに
見知らぬ男からだけど
“女”として見られてる
それだけで舞い上がってしまった
私は次の日から
仕事にも買い物にも
バッチリ化粧をして行った
いつどこで出逢いがあるかわからない
私のことを気に入ってくれてる社長も
どこで私を見ているかわからない
私の人生これからだ
まだ捨てたもんじゃない
それからしばらく経ったある日
仕事を終えて帰るとき
近くの工場の作業服を着ている男の人に声をかけられた
40歳くらいだろうか
背は私より20㎝くらい高く
ものすごく優しい顔してる
話し方も優しくて
物腰の柔らかい人
それでいて包容力のありそうな人…
…
多分この人が
こないだの奥さんの旦那…
私の直感は当たる
これが私とヒロの出逢いだった
そして
不倫の始まり……
私たちが一緒に過ごす時間は
すごく短く
すごく貴重な時間だった
強引で自己中のゼンとは正反対で
私の全てを包み込んでくれているような優しさを持ったヒロ…
でもヒロには奥さんが居る
高校生の子供も居る
家庭がある
最初から知ってる
だから?
だから何…?
かつては
夫であるゼンに不倫を繰り返され
妻としての屈辱を浴びてきた
そんな私が今は“不倫相手”
邪魔者
泥棒猫
既婚者と知っていて付き合っている
奥さんとも面識がある
泥棒猫の名がぴったり…
パートナーに裏切られる辛さを
身を持って知っているはずの私に
罪悪感がかけらもない
最低な女に成り下がった
ヒロには生活費を援助してもらっていた
毎月15万
小さな会社とはいえ
社長さん
妻に内緒で自由になる金はいくらかある
物欲のないヒロはお金を持て余してる
最初は
悪いかな とか思ってたけど
いつからか
当然
そう思うようになった
ヒロに恋してたのか
お金に恋してたのか
…
後者かもしれない
ヒロとの関係が始まってしばらく経つと
鑑別所からタケルが出てきた
また悩みの種がひとつ増えるということになるけれど、タケルも少しは改心しているかな…
ヒロとのこと
タケルにもきちんと話しておかなければ…
トモには言わず黙って付き合っていたけれど
これを機に
付き合っている人が居ることを
息子たちに話しておこう…
相手が既婚者だということを隠して……
言えるわけない
…言えるわけないじゃない
タケルとトモに
付き合っている人が居ることを話した
「いいんじゃねぇか?
親父も勝手にやってんだからお前も好きなようにやれよ」
そうタケルが言った
「俺らには別に関係ねぇ」
トモは顔を伏せて答えた
トモはゼンにかわいがられてたし
少し複雑なのかもしれない
一応 認めてくれた反応だった
でも
相手が既婚者って知ったら…
今と同じように認めてくれるだろうか
母親の不倫を………
やっぱり全部は言えなかったけど
付き合ってる相手が居るということは伝えたから
心が少し落ち着いた
…自己満足だけれど……
それから数ヶ月後
タケルが家に女を連れてきた
何かと思えば
“女が妊娠した”
…
ため息がでた
どうしたいのかを聞くと
結婚して子供も産ませるという
女も産みたいと言っている
こんなバカ息子が父親になれるわけない
こんなバカそうな娘が母親になれるわけない
…タケルが親?
は?
笑わせるな!
親の目盗んでは悪いことを繰り返して
鑑別所まで入って
終いには女を孕ませただと?
産ませたところで育てれるわけがない
こんなこと許せるわけがない
親をバカにするのもたいがいにしろ
向こうの親御さんも反対したことで
子供を堕ろさせた
もうタケルの好き勝手にはやらせない
振り回されるのはもうまっぴらだ!
私はヒロという新しい光を見つけた
ヒロさえ居たら
生活も楽
もうタケルには振り回されたくなかったから
向こうの親御さんが反対してくれてよかった
女の気持ちは何も考えなかった
気持ちを汲み取ろうなんて思わなかった
今思うと
ただ息子を盗られたくなかっただけかもしれない
ヒロには家庭のことを全て話していた
タケルの彼女の中絶費用もヒロが出してくれた
私はヒロの経済力に甘えていた
ほんとうに助かったし
好きなものを買えるようになったことが
ほんとうに嬉しかった
そしてだんだんと楽を覚え始めていた……
ある日
私とヒロが不倫関係だということを知られる…
……息子たちに………
「おい!お前おっさんに嫁が居るの知っとんのか!」
帰ってくるなり
大きな声で私に問いかけたタケル…
あぁ…
知られてしまった……
『どうしたの?』
精一杯冷静を装って聞いた
「どうしたじゃねぇだろ!知っとるか知らんか聞いとるだろ!!」
…もうごまかせない
『知ってるよ。最初からね…』
その後散々私を責めたあげく
「あのジジイ…殺すぞ」
怒りの矛先がヒロにむかった………
私は必死で止めた
それだけはやめてくれ、と…
ヒロに迷惑がかかるのは嫌…
タケルは私に内緒で
ヒロの会社まで行ったらしく
私が付き合っている男がどんな男か見たくて…
あいつか~ と思っているところに奥さんと息子たちが居たらしい…
それはそう…
家族で会社経営してるのだから……
私は息子に不倫をしていることがバレてなんとも言えない気持ちになったが
恥ずかしいとは思わなかった
これが私の生き方だから
あんたたちにとやかく言われる筋合いはない
タケルは軽蔑しただろう
トモも軽蔑しただろう
…関係ない
お前たちの父親…ゼンに
苦労させられた母親の私…
いいじゃない
少しくらい楽したって…
いいじゃない
少しくらい自由を手にしても…
いいじゃない
いいじゃない…
…それがヒトのモノでも
ある日
職場に私への電話がかかってきた
…警察からだった
警察が何を言っていたのか…
よく覚えていない
『はい…
はい…
はい……』
他人事のように話を聞いていた
はっきりしているのは
タケルが…
タケルが拳銃を発砲したということ
相手が重症だということ
タケルが逮捕されたということ
息子が…
息子のタケルが人を撃った…?
…
電話をもったまま
私はその場で倒れた
気づいた時には病院
職場の人が
私のかかりつけの病院まで運んでくれたらしい
あぁ…私倒れたんだっけ…?
なんで倒れたんだっけ…
考えようとすると
天井がぐるぐるまわり始めて
私はまたベッドの上に倒れた
医師が症状を聞いてきた
診断名は
メニエール
私は精神病になってしまった
私はこの日から10年余り
精神安定剤を飲み続けることになる
タケルには
実刑判決7年
執行猶予3年
という刑が言い渡された
もう何がなんだかわからなかった
母親としての毅然とした対応なんてできなかった
被害者家族への慰謝料は
親戚からかき集め
ヒロから借りて
なんとか支払うことができた…
なんてことをしたの…
タケル…
なんでこんなことに………
…タケル……
お前はもう
私の子じゃない
要らない………
私はそれからしばらく塞ぎ込んだ
精神が病んでしまい
仕事なんて到底できる状態じゃない
世間様に顔向けできない
もう私の人生終わったも同然…
もう嫌…
なにもかも嫌……
首を吊って死のうか
手首を切って死のうか
毎日死ぬことばかり考えていた
そんな自暴自棄な私を支えてくれたのは
ヒロ…
あなただった…………
家庭がある身で私を
心身、金銭面共々に支えるのは並大抵なことではなかったはず
タケルの逮捕と共に
女のところへ転がり込んだトモ
家には帰ってこなくなった
だから
ヒロは私の家に毎日来て
毎日優しくしてくれた
ヒロ…
この時のこと
本当に感謝しています…
ヒロが支えてくれなかったら
私は今、生きていないかもしれない
…でもね、
今 生きていてもいいことないんだ…
せっかくヒロに救ってもらった命
無駄にしてる
私も落ち着いてきた
それでもヒロは
毎日毎日きてくれた
たまに泊まって行く日もあった
そんなことを繰り返しているうちに
ヒロの奥さんに知られてしまった
2人の空間は紛れもない
“恋人同士”
奥さんにそれを知られてしまった瞬間に
“不倫”
現実をたたきつけられた
そうだ…
この人には
ヒロには奥さんが居たんだった…
ヒロのあとをつけ
私の家に来て
部屋にまで上がってきた奥さん
私に釈明の余地はなかった
待っていたのは修羅場だった
奥さんは泣きながら罵声を浴びせてくる
ヒロには殴りかかっている
私に手をあげようとした瞬間に
ヒロがとっさに私を庇う
その姿が更に
奥さんの怒りを増強させ
奥さんは泣き叫ぶ
泥棒猫!!!
何度言われただろう
…知ってるよ
私には“泥棒猫”が良く似合う
知ってるけど
それでも私はヒロが必要なの
別に捕って食ったわけじゃないじゃない
無理矢理会ってるわけじゃない
別にいいでしょ
だんだんと
泣き叫ぶ奥さんが滑稽に見えてきた
夫が他の女に盗られてそんなにくやしい?
あんたがそんなんだから
男が窮屈になるんじゃないの?
泣いてすがって
バカじゃないの?
おかしくて
おかしくてたまらない
…私はそんなことしなかった!
夫に不倫され
泣いてすがらなかった自分とヒロの奥さんを比較し
勝者のような気分でいた
本当に哀れなのは私なのに
それから私たちは1年間同棲した
ヒロを家には帰らせなかった
それでもヒロは
仕事で奥さんと一緒だ
おもしろくなかった
私はヒロを責めたてた
ヒロは私だけのモノじゃない…
最初から知ってて
認めたくなくなってきていた
おもしろくない…
それだけの理由で
私はヒロを束縛した
私たちの同棲生活は
ヒロの奥さんと息子たちの手によって
終了させられた
紙切れ一枚が厚かった
私は“妻”に勝てなかった
かつて
ゼンの妻だった
私は“愛人”に勝てなかった
負けてばかり…
私の何がいけないんだろう…
…私は何も悪くない
私は間違っていない…
ヒロとは別れたふりをして付き合い続けた
“妻”に負けない“愛人”
それになればいい
私の思考は歪んでいた
18歳になったトモが
突然彼女を連れて家に帰ってきた
…
彼女のお腹が大きい
私には反対されると思い
黙ってたらしい
確かにこんなに大きければ出産を反対することはできない
「兄貴と同じようなことはさせない。俺はこいつと結婚する」
トモは16歳の女と結婚した
…勝手にすればいい
私には関係ない
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私36歳、彼女(便宜上)40歳、彼女の娘16歳です。 彼女は数年前に離婚し、半年ほど前に知り合…
27レス 1004HIT 匿名さん (30代 男性 ) - もっと見る