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空を見上げて( ♀ DSIe )
09/01/16 19:01(更新日時)

✨始めに(注意事項)✨

🍀主な登場人物や場所等の名称は仮名・もしくはイニシャルで話を進めていこうと思います。

🍀この話は自分が経験した過去の出来事から回想を始め、今という時間を経由してこれからいずれなる三十路のまでの話を書いていこうと思います。経験談と架空の話を織り交ぜて書くので宜しくお願いします。

🍀毎日更新は出来ないかもしれません。時折、間が空く事もありますが御理解下さい。

🍀約束事として誹謗中傷はやめて下さい。

ではこれからスタートです🙋

No.933031 08/09/29 12:50(スレ作成日時)

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No.1 08/09/29 12:58
空を見上げて ( ♀ DSIe )

夏のある日、携帯片手に暇に任せてメル友を探していた。この日、あるサイトで偶然知り合ったYと私はたまたまメールのやり取りで意気投合し、ノリと勢いでメル友になった。

No.2 08/09/29 13:22
空を見上げて ( ♀ DSIe )

サイト内ではあるが、Yと何度もメールのやり取りをする内にYが直メ交換をしたいと言い出した。その時、私は素直にこの申し出に応じる事にした。このサイト内でのやり取りの期間が約3月。季節はすっかり秋を迎えていた。そう出会いの季節到来である。

No.3 08/09/29 14:35
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それから更に数日が過ぎ、直接メでのやり取り内でYは今度は私の顔が見たいと言ってきた。この時、メールと一緒に1つの添付データが送られきたが私の機種が古いせいか?データの容量が重いのか?携帯からその画像を見る事は出来なかった。文章から推測しておそらく自分の顔写真をYが送ってきたものだと思われる。

No.4 08/09/29 14:43
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見てもわかるように、こんな拙い文を書く私は文章というものが苦手である。文脈がたどたどしく、誤字や雑字も目立つと思われる。Yと出会った当時の頃を書いているが、実はこのYという人物は私にとって衝撃的な存在へと発展する。

No.5 08/09/29 15:09
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周辺に飲食店が建ち並び、人通りも多い国道線沿い。その道の脇で私は通り過ぎる車ばかりを眺めていた。ちょうどイチョウの葉が風に吹かれて舞い散るような時期である。あれから色々と更に話が進み、遂にYと会う事になったのだ。

No.6 08/09/29 15:18
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結局、互いの顔はわからずじまいのまま会う事になったのだ。今思えば無鉄砲にも程がある。ある意味賭けでもあった。唯一、互いが知る情報と言えば、当日の服装やどの辺で待ち合わせるか、どんな容姿なのかというこの3つぐらいだ。

No.7 08/09/29 16:20
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待ち合わせ場所に到着すると少しして私の目の前に一台の白い軽自動車が止まった。その軽自動車の左窓がゆっくりと開き、一人の若い男が窓から顔を覗かせ声を掛けてきた。「Sさんですか?」と。私は思わず目を丸くした。

No.8 08/09/29 16:43
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Sさんと呼ばれ、驚きながらも私は頷いた。Yはこちらを向いて笑っている。「えっと…Yさん?」私は戸惑いながらも尋ねるとYは嬉しそうな顔で頷いた。ファーン…。Yが止めた車の後方からクラクションが鳴らされた。場所的に人通りも多ければ、交通量も多い場所だったため、あまり長いは出来ない。「ここにいつまでも車を止められないからとりあえず乗って」そう言うとYは私を助手席に促した。

No.9 08/09/29 17:52
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私の人生の中で関わった事のないタイプの男が今、隣の運転席にいる。Yの印象は今の表現で例えると俗に言うイケメンと呼ばれる系統だ。それに比べ、私はというと自虐的だが、月とスッポンというべきか隣にいるYとは明らかに不釣合いとしか思えない。自分で言うのも変な話だが月並みな女であるのだ。こんな人物とまさか自分がメールのやり取りをしていたなんて想像すら出来なかった。

No.10 08/09/29 18:21
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車に乗車した時、一瞬車内は静まりかえった。だがすぐにYは沈黙を破った。運転している最中だったので視線は前方を向いたままだったが、車を走らせながら照れくさそうに話かけてきた。「すぐわかるか自信なかったけどわかって良かった」どうやら見つけられるか当日まで不安だったらしい。初対面なら尚更かもしれないが、見た目とのギャップにまた私は驚いた。メールでのやり取りはあんなに積極的だったのに、実際はかなりシャイな模様。少し私は安心した。

No.11 08/09/29 20:38
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昼過ぎに会ってから時間が経つのは早いもので車窓から見える景色は茜色の空へと変わりつつあった。しばらくドライブをしていたが、この時間もあと少しで終わりを告げる。初めは二人とも慣れぬ場に緊張していたが、お互いの年齢が近いせいもあり、次第に話せるようにはなっていた。しかし私は話ながらも“おそらく今日でYと会うのは最後だろう、メールももうこなくなるだろう”無意識に思い始めていた。今に思えば傷付かないための予防策だったかもしれない。

No.12 08/09/30 07:30
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ドライブの途中、息抜きにコンビニでお菓子や飲物を買い、また車を走らせた。走っているとしばらくして海が見え、私は海を窓越しから眺めていると静かに車は止まった。Yは何も言わず、コンビニで買ったものを持ち、外に出ると私も外に出るよう合図した。

No.13 08/09/30 08:12
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何もわからず外に出たのはいいが、私は見知らぬ地に少し不安を感じていた。目の前の風景といえば、少し遠目にアウトレットらしき建物が見え、自分の周辺には海が広がり、子供が遊ぶ遊具などが幾つか見えた。海辺のせいか冷たい潮風が頬にふれる。何度か見渡して把握した事といえば、どうやら今いる場所は臨海公園のようだ。ちゃんと場所の把握をしたかったので私はYに聞く事にした。「ここはどこ?」だと。

No.14 08/09/30 08:30
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Yは「N市にあるRタウンだ」「ここは自分のお気に入りの場所でよくここで夕日を眺めてる」とすんなり答えた。そしてコンビニで買った飲物を口にする。私も買った飲物を渡されたので自分のものを口にした。確かに夕日を見るのには絶景の場所だ。今、ちょうどいい感じで夕暮れの空が広がり、夕暮れの景色を楽しむには最高だった。周りには人と距離を置くようにカップルの姿が点々と目立っていた。Yと私も知らない人から見ればカップルに見えるのだろうか?そんなバカな事を私は少し考えながらまた飲物を口にした。

No.15 08/09/30 19:13
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夕日も沈み、辺りは少しずつ暗くなっていた。気付けば街頭の明かりがポツポツと光を宿す。晩に加え、海辺という事もあり気温は一気に下がり、思わず身震いしそうになったが私はぐっと堪えた。そんな姿を横で見ていたのか「車に戻ろう」とYは言ってくれたのが有難かった。

No.16 08/09/30 21:05
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それからYとは昼過ぎに待ち合わせた場所で別れた訳だか、私にはもう1人メル友がいた。名前はNである。Yは私より1つ年上だが、Nは私より3つ年上で私はYと会う前より先に実はNと会っていた。私は当時男友達が欲しかった。友達重視にしていたため、恋人という目線では到底見る事は出来ない。自分の意思表示をハッキリさせた上で互いの利害が一致したのがYとNであった訳だが夢物語というべきか、男女の友情など所詮有り得ないのか?この当時の私は何もわかっていなかった。

No.17 08/09/30 22:06
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NとはYほど大してメールでの会話が盛り上がった訳ではないが、比較的2人ともこまめにメールをくれるので何気に会話は不自由しなかった。これがもし途切れ途切れのやり取りならとっくに自然消滅していたに違いない。これは2人に共通した事であるが、メル友を始めていきなり会おうとは言ってこなかった。会ったのはある程度の時間をかけた上である。普段会話した事といえば、日常の当たり障りない事だったり、仕事や趣味、テレビの話題だったり様々でそれなりに有意義だった。特に面白く感じたのはやはり男ならではの見方や考え方といった点だろうか?色んな意味で勉強になる事もあった。

No.18 08/10/01 07:34
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話は少し遡りある市内某所、私はこの日、Nと会う約束をしていた。Yと同様、顔もわからない。この時の待ち合わせ場所は誰でも知っているような観光としてメジャーな所で待ち合わせしようという事になっていた。

No.19 08/10/01 20:23
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メジャーな所とあってわかりやすい場所だったため、この時も意外にNとすんなり会えた。Nは私と初めて会ったのにも関わらず、どこで遊ぶか、どの辺でお茶をするかとかどうも細かく計画を立ててたみたいだった。私にすれば“なんで初対面の人間にこんなに気合い入れてるんだろう?”これが正直な感想である。

No.20 08/10/01 20:47
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掲載している文章を読む限り、私に対して危っかしいと感じた人もいるとは思うが当時、サイト内で見つけたメル友に人知れず私は警戒していたのはいうまでもない。“自分は女だ。普通に考えて女が男の力に敵う事などそうそうない。何かあれば一溜まりもないだろう。何より会うにしろ、変な所に連れられ帰れなくなるのは困る”などと思い、Nには申し訳ないがNの計画の大半を私はさり気なく流す事にした。

No.21 08/10/01 21:00
空を見上げて ( ♀ DSIe )

因みにNの外見はごく普通で友達として見れば緊張せず話せるようなタイプであった。月並み程度の私からすればピッタリな相手かもしれない。まだ互いに慣れないせいか時々会話が噛み合わない事もしばしばあり、会った時間は3時間少々であったが、休日にも関わらずNには仕事があったため、早めに切り上げないといけなかった。

No.22 08/10/01 21:48
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Nとはとりあえず次もお互いの都合が会う約束を交わし、その場で別れた。だがこの約束も本当に果たせるかはわからない。そんな事を思っていたが、直接会ってからも相変わらずNとYはメールをしてくれた。

No.23 08/10/01 22:18
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Nとのやり取りは相変わらずのペースで変わる事はなかったが、Yに至っては信じられない事に寧ろ互いのメールのやり取りは倍に増えていった。Yの場合、もう会ってくれる事はないだろうと思っていたので次の会う約束はしていなかったが、お世辞なのか?また会いたいと私に言ってくれた。いずれにせよ、警戒してた割に顔も知らないクセに無鉄砲にも会うという思い切った賭けはこの時点では成功したと言えよう。

No.24 08/10/02 06:32
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男友達に拘っていたのには実は理由があった。“恋人を探すよりも友達でいる方が少しでも長く付き合っていけるだろう、気持ち的にもその方が気構えする必要もない。”つまり癒しというよりも気楽を求めていた訳だが、次の機会にNとYに会った時、事態は急展開し始める。

No.25 08/10/02 07:34
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人にはモテ期と呼ばれる時期があるとどこかの雑誌で読んだ事がある。だがそれは可愛いとか美人という人種であって、そもそも自分は論外と思い切っていたが、まさかその自分にモテ期が到来するだなんて誰が予想するだろう?いや、これはドッキリではないか?それとも悪戯だろうか?悪戯ならそれはそれで悪質である。バカなものであれこれ自問自答している自分が今ここにいた。

No.26 08/10/02 07:56
空を見上げて ( ♀ DSIe )

冬が目先に見えてきた深夜12時を回る頃、Yが夜遅くにメールをしてきた。偶然起きていた私は携帯を開き、内容を確認すると驚く内容がそこにあった。『今、深夜のドライブをしています。近くまで来ているので以前会った場所で今から会いたいな』という内容が綴られていた。

No.27 08/10/02 12:23
空を見上げて ( ♀ DSIe )

どういう訳か会いたいという気持ちが先行したが明日の仕事が控えている。何より夜も遅い、流石に無理だ。Yにその事を伝えると残念そうなメールがまた届いた。非常識にも思えるが『わかった。無性に何故か会いたくなったんだけどこのまま帰ります。』この文章はどういう意味だろう?流石に身も蓋もないなと思い、『急には動けないけど事前に言ってくれれば空けるようにする』この文章をYに返す事にした。

No.28 08/10/02 18:42
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とある市内の中心街に私はいた。周辺には商店街やデパート、大型家電量販店などが建ち並び、人の数も凄かった。前回Nと会った場所も観光地というだけあって凄かったが今回も同じである。そしてあるデパートの入口で待ち合わせていた。
この日もやはりNは計画を立てており、性格的に計画を立てるのが好きなんだと私は思い込んでいたが実は違っていた。

No.29 08/10/02 19:20
空を見上げて ( ♀ DSIe )

知っている街並みだったため、かなりの土地勘が私にはあった。知っている店も多いせいか、今回はNの計画に少し応じる事にした。色んな場所を見て回った後、お茶をするため喫茶店に入ったまでは良かったが…

No.30 08/10/02 20:55
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丁度おやつの時間帯ぐらいだったため、店はそれなりに繁盛していた。なんとか座れる場所を確保し、席につくと互いに飲物だけを注文した。数分後、温かい飲物が目の前に置かれ、一息ついたのも束の間でティーカップをテーブルに置こうとした矢先、Nは突然「付き合って欲しい」と言い出した。

No.31 08/10/03 06:08
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「カチャ…」テーブルに置いた時、ティーカップの音が大きく鳴り響いた。そして互いに次の言葉が出るまでに少しの間が生じた。だが黙っている訳にもいかない。話す言葉を選びながら私はメル友になった理由を言い聞かせるようにNに述べた。

No.32 08/10/03 07:19
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Nは私の言葉を否定するように首を振り「それはわかってるがそれでも好きになった」と強い口調で言い切った。正直私は困惑を隠せない。そんな時、カバンの中に入れてた携帯が振動した。

No.33 08/10/03 19:52
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神の助けとばかりにすぐにカバンを開け携帯を手にした。席を一旦離れるチャンスが出来たのだ。申し訳なさそうな顔を作り、職場から電話がきたとNに嘘をついて私はその場を離れる事にした。そうでもしないと場の空気に耐えられないからだ。

No.34 08/10/03 20:17
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携帯が鳴ったのはいいが、電話ではなくメールだった。Yからだ。「今何してるの?」短い文だったがこのメール見て不思議と安堵した。不覚にもこの時、私は自分の想いに気付いてしまったのだ。

No.35 08/10/03 22:30
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「あぁ…」短い声が漏れた。Nの視界に入らないよう私は壁に隠れるようにすると壁に背をつきその場に崩れた。自分自身が望んだ展開と真逆にも程がある。自分の思惑とここまで違うと寧ろ滑稽だ。やっぱり異性同士の友情なんて…友達同士の関係なんで成立しないのか?頭の中でぐるぐると色んな想いが巡ったが、今はこの場を逃げる訳にはいけない。

No.36 08/10/04 07:57
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意を決してNの待つ席へ私は戻る事にした。当初は気を遣ってくれたのか?それともただの計画好きか?と思っていたが、今に思えばNの計画した場所のいずれもデートスポットだ。なんですぐに気付かなかったのだろう?ニアミスだが起きてしまった事は仕方ない。気付かれないよう、そっと息を深く吸い後、「スイマセン、待たせてしまって…」私は恐る恐るNに声を掛けた。

No.37 08/10/04 10:34
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「あの…」勢い任せで私は次の言葉を話そうとしたその時、声を塞ぐようにNが言い出した。一瞬目が合ったが、咄嗟に私の視線を避けようとしたのか?Nの視線は不自然な方向に向いたかと思うとゆっくりと地面へと視線が落ちた。「ゴメン、流石にいきなりすぎるよね…困らせるつもりはないんだ…」「返事は急がないから、でも考えて欲しい…」言葉が詰まりつつも、Nの真剣さは言葉の端々から伝わった。

No.38 08/10/04 15:09
空を見上げて ( ♀ DSIe )

それなら尚更いい加減な事は出来ない。時間が経てば余計に気まずくなるだろう。好意は有難いがその好意を受け取る事は出来ない。いい訳も見苦しいだけだ。「ゴメンなさい…」シンプルな言葉で私は深々と頭を下げた。告白を断った事なんて人生の中でないため、どうしたらいいかわからない。自分なりに考えたこの行動が正しいという答えなんてないだろう。

No.39 08/10/04 23:14
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「そっか…」Nは苦笑いを浮かべ、テーブルに置かれた紙を手にし、席を立った。「もう会う事はないけど…じゃ…」平静を装うようにして最後にその言葉を残し立ち去った。私はそんなNの姿を静かに見送り、視線を元に戻すとNが口にしたカップがふと目についた。中の液体はNが立った時に揺れたのか?まだ少し揺らめいていた。ぼんやりとその揺らめいた液体を眺めながら私は心の中で何度もNに謝った…。そしてこの日を機にNからのメールは来なくなった。

No.40 08/10/05 07:51
空を見上げて ( ♀ DSIe )

自分の気持ちに気付いたのはいいが、私はYにその想いを伝えようとはしなかった。自信もなければ勇気もなかったからだ。だが次の会う約束はしていた。意識し出すとこうも緊張するものか?会う約束の日が近付けば近付く程、胸の高鳴りは増すばかりだ。心臓に悪いというか、たかがメールのやり取りさえ、一喜一憂してしまう。何故か自分が恋する乙女のように感じてしまい、携帯片手に一人でバカだと笑ってしまった。

No.41 08/10/05 09:58
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Yとの二度目の再会の日がやってきた。運良く澄んだ青空が広がり、凛とした空気が体温を少しずつ奪っていく。冬の到来だ。以前と同じ場所で今回も会う事している。少し早く着いたのはいいが、手足が時々悴むので待ってる間、以前待ち合わせた場所から近いコンビニで暖を取る事にした。コンビニの窓から丁度国道線沿いの道路を見る事が出来る。もしYが到着した時に気付かなかったら困るので到着したら連絡するようにと事前に伝えている。

No.42 08/10/05 12:28
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あれからどれぐらい待ったのだろうか?カバンの中に入れた携帯はなかなか鳴らない。不意に不安になり、コンビニの壁に吊された時計をチラッと見た。約束の時間はとうに過ぎている。嫌な予感がした。“このまま来ないのだろうか…”と。

No.44 08/10/05 15:32
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気になったのでカバンの中の携帯を手にした。まさかと思い、センターに問い合わせる。『新着メールを受信しました』と表示が表れ、開いてみるとYから少し遅れるという内容のメールが届いていた。どおりで携帯が鳴らないはずだ。返信を返そうとメールを打ち込もうした矢先、私の右肩に誰かが触れた。振り返るとYがそこにいた。

No.45 08/10/05 17:34
空を見上げて ( ♀ DSIe )

車でYは来なかったため、今日の移動は電車を使い、とりあえず街に出ようと市内の中心部に向かった。街に到着するとYは「ゲーセンで遊ぼう」と言ってきた。そして主に対戦ゲーム中心に遊ぶ事にしたのだが、とにかく二人して子供のようにしゃいでいた。そんな時、私は記念に何か残したいと思い、プリクラを撮ろうとYに提案してみた。

No.46 08/10/05 22:36
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プリクラ機の前にはカップルや女子中高生が数人並び、台の中でも楽しそうな声が聞こえてくる。並んでいる台は新しいのか?それとも人気があるのか?結構待たないといけないため、空いてる台で撮影する事にした。周りにたくさんの台があったため、二人で見渡しながら周囲を探す。「あそこにあるのはどう?」私に呼びかけ、Yは店の隅にあった台に向かい指を差した。「確かにあそこならすぐ撮れるね」少々古い台のようにも思えたが迷わず向かう事にした。

No.47 08/10/06 07:14
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中に早速入ると硬貨を入れ、撮影順調を始める事にした。「どれにする?」Yに尋ねながら私は手慣れた手つきで画面上のタッチパネルを押す。Yは「あまりやった事がない」と言うため横でその操作を見ていた。操作を一通り終えると撮影開始だ。撮影ポーズをするもののお互いどこかぎこちない。身体を密着する事もないので互いに微妙な距離が出来る。それでもなんとかギリギリまで近付くとそれがどこかもどかしく感じた。

No.48 08/10/06 18:13
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撮影が終了し、プリクラ機に落書き出来るコーナーが設置されていたので台の裏に移動した。店からすれば完全に死角になるような場所だ。私はタッチペンを手に画面に色々と遊びながら書き込む事にした。Yも不器用ながらも書き込んでいる。制限時間が長いのか?結構色々書き込む事が出来た。

No.49 08/10/06 19:05
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「ねぇ…」画面を見ているせいか、俯き加減でYが横から私を呼ぶ。「何?」書き込む作業を中断し、私はYが書き込んでいた画面を覗いた。どこから見つけたのか相合い傘のフレームにペンで書き込んだのか?『好き』という文字が書かれてあった。思わず私は顔を上げた。狭い場所で作業をしているため、Yとの距離が…Yの顔が…凄く近い。

No.50 08/10/06 20:25
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これは夢…?まさかYが私と同じ事を想っている…?色んな想いが巡る中、「どういう意味?」と勇気を振り絞り尋ねてみた。Yは「画面通りの意味」と顔を赤くして言う。「だからどういう意味?」また私は同じ事を言うと「場所を変えようか?」とYが照れくさそうに言った。ゲーセンを出ると少し歩く事にした。冬なので日が沈むのも早かった。

No.51 08/10/06 21:15
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まだクリスマス当日ではないが、街はクリスマスムード一色だ。並木道を歩くと街路樹に装飾を施しているのに気付く。夜になればとても綺麗だろう。西の空を見ると日が暮れようとしているため、なんともいえない美しい色合いの景色を見る事が出来た。しばらくして高層ビルが建ち並ぶ場所に辿り着く。その中の一角には展望台が設置されたビルがある。時間が時間なのか閉館前ので人は少ない。展望台に入れるかわからないがエレベーターで上がれるだけ上がれる事にした。互いに緊張しているのか、そのしばらくYも私もずっと無言だった。

No.52 08/10/07 07:03
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やっとの思いで展望台に到着すると既に閉館していた。周辺を見るも座れる場所もなく店もない。私はエレベーターにまた乗ろうとしたが、Yは1つ下の階に階段で降りようとするので私は慌ててYを追いかけた。1つ下の階に降りてみると窓越しから景色を眺めるような広いスペースがあり、数ヵ所に椅子も設置されていた。「さっきの続きだけど…」さっきまで無言だったYが静かに話始めた。

No.53 08/10/07 12:30
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「俺と付き合って欲しい」Yの口から遂に聞きたかった事が聞けた。私は返事をしようとした矢先、Yにそっと抱き締められて、二人の口が重なった。それと同時に顔が…手が…冬なのに身体が熱くなっていく。身体が熱に侵されているような感じだが、味わった事のない幸福感が込み上げてきた。緊張していたので頭が真っ白になったのか?自分でどういう返事をしたのかハッキリと覚えていないがこの日が二人の記念日となった。

No.54 08/10/07 19:17
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Yと付き合う事になったそんなある日、私は古くからの友人Eに彼氏が出来た事を報告する事にした。Eとは同じ年齢ではあるが、恋愛経験では彼女の方が上であり、知識も豊富だった。それにEには長い付き合いになる彼氏もいる。EとはEの彼氏の手前もあり、気を遣って私からあまり連絡をする事もなくなりつつあったが、私が連絡をするとすぐにEから『どうせなら会って話そう』という返事が返ってきた。そして早速翌日に会う事にした。

No.55 08/10/07 20:53
空を見上げて ( ♀ DSIe )

久々に会ったEの髪は最後に会った時のセミロングからロングへと変わっていた。メールで時々連絡はしていたが直接会ったのは数年振りである。私の髪といえばショートからセミロングになっており、互いの服装の好みも見る限り変わった感じがした。ボーダーやデニムを好むさらっとしたカジュアルシンプルな服装の私と真逆でEは小物を上手く使い、ワンピやポンチョといった服装でフェミニンな雰囲気を醸し出している。昔からのEを知ってるだけに変われば変わるものだと私はこの時素直に思った。

No.56 08/10/07 22:22
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どういう訳か報告をするつもりが、ひょんな事からカラオケボックスの一室で何故かEから恋愛指導を受ける事になった。Eは凄く乗る気まんまんだ。私はそんなEの様子に戸惑いつつも、Eから最初に色んな質問を受ける事になった。私はEに見せるために事前にプリクラを用意していたので“最初に見せた方が口より説明が早い”と思い、1枚のプリクラをEに手渡した。Eはそれを受け取るとプリクラに写っているYを見る。少しの間、静かになったがしばらくして「えぇーーッ!?」という声がカラオケボックスの室内から響き渡った。

No.57 08/10/08 07:08
空を見上げて ( ♀ DSIe )

とにかくEは凄いで驚いていた。何度も「なんで?なんで!?」と同じ事を繰り返す。どうやらその驚きは半端ではないようだ。好みの問題も勿論あるとは思うが、世間一般的に見てもやはりYはイケてるらしい。現に私がYと並木道を一緒に歩いた時、Yに対する周りの女子の視線は凄かった。幾度となく人と行き交う度に「うそッ?」「あの人が彼女!?」って会話でさえ耳にしたぐらいだ。私もこんな経験をした事がないのでどういう態度を取ればいいかわからないが、その時は出来る限り気にしないように心掛けていた。

No.58 08/10/08 12:47
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ここでちゃんしたYの容姿の話を…。髪の長さはショートで髪質はねこっ毛。髪色は少し色の落ちたアッシュブラウン。体力を使う仕事柄のお陰でそれなりにいい感じで筋肉はついているが嫌味を感じない爽やかな感じだ。全体像を一言で例えるならワイルドという言葉がよく似合う。「どこで知り合ったの!?」Eは食いつくように聞いてきた。実はEも今の彼氏とはサイトで知り合ったのを知っていたので私は「Eと状況は同じだ」と言った。しかしEは首を左右に振り、「全然違う!」と力強く主張した。

No.59 08/10/08 18:59
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Eと久しぶりに会って色々と質問責めをされたが、これを機に互いに恋愛の相談をよくするようになった。ただ時折、Eが相談する内容は過激であり刺激が強過ぎる事もよくあった。「ただ長く人と付き合うとマンネリも生じるよ」とよくこの言葉をEは口に出していた。しかし私の場合、Yと関わる度に常に刺激の連続だった。何度振り返ってもこんな事を経験したのはこの当時しかない。いつかこの話を物語に出来るのではないか?と当時は思っていたが今、それがこの掲示板で現実になっている。

No.60 08/10/08 22:02
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待ちに待った付き合い始めて初デートの日。いつになく、二人してオシャレに余念がなかった。何故なら世間はクリスマス。赤や緑のクリスマスカラーの配色が街全体を彩り、イルミネーションの光が夜になれば幻想的な輝きを見せる。街の至る所からクリスマスソングが流れ、それだけでも自然と心も弾むものだ。もっと早くから付き合っていればクリスマスディナーの予約やプレゼントの用意も出来ただろうが、クリスマスの数日前に付き合う事になったのでそれも叶わず、それなりにクリスマスムードを二人で満喫する事にした。

No.61 08/10/09 08:28
空を見上げて ( ♀ DSIe )

街を散策しているとある看板に目をとめた。そもそもここはなんの建物だろう?看板の先では何か人が賑う声が聞こえてくるが道が狭いのか人の姿が見えない。よく意味のわからぬまま、Yと私はふらりと中に入ってみた。看板より先へ進むと道はカーブを描いており、曲がらなくてはならない。“このせいで人が見えなかったのか”と思い、先に進むとたくさんの人だかりが見えてきた。その人だかりを向こうには公開生放送中のラジオ局のスタジオがあり、「なるほど」二人声が揃う。これにYと私は納得した。

No.62 08/10/09 19:50
空を見上げて ( ♀ DSIe )

しばらくスタジオを見学する事にした。まだまだ公開生放送はずっと続く模様だ。スタジオ中はラジオのDJやスタッフのみでゲストらしい人物が見当たらない。しばらく立ち止まり、聴いていると夕方からゲストが出るという情報を手に入れた。それならその時に改めてこようという事になり、一度その場を離れる事にした。

No.63 08/10/09 21:51
空を見上げて ( ♀ DSIe )

それまでの間、結構待ち時間があった。時間的にも小腹が空く時間だ、軽食を摂ろうと店を探す事にしたがどの店に行っても混雑している。「どうしよう?場所(エリア)離れてまた探す?」私は何気なくYに問い掛けた。すると「あのさ…行きたい所があるんだけど…」どこが歯切れが悪く、私の様子を窺うように上目遣いでYは言ってきた。「あ、どこかあるの?」とまた問うと私の耳元で「したい…」とYは囁いた。「……」耳元が熱い感じになり、思わず耳元を押さえながら静かに私は頷いた。今いる場所から少し離れた所にホテル街が見えていた。

No.64 08/10/10 07:12
空を見上げて ( ♀ DSIe )

いつかこうなる事は予測していたが実際行くと緊張する。事前情報としてEから店の仕組みや男女の過激な話は聞いていたが、私は初めてという事もあり、とにかく内心落ち着かなかった。店に入ると幸か不幸か空いている部屋がまだ残っていた。

No.65 08/10/10 18:36
空を見上げて ( ♀ DSIe )

部屋が決まり、中に入って荷物を置こうとした矢先、後ろからYに抱き締められた。私は緊張のあまりビックリして身体が一瞬硬直する。それに気付いたのか?Yは両腕で私を持ち上げた。「きゃっ!」小さいなりにも驚きの声が出てしまい、私の身体は宙に浮く。これが噂に聞くお姫様だっこなのか?こんな状況の中でも思わず感動してしまった。「嬉しい?俺のお姫様」私の様子を見ていたYは笑顔で言ってきたので、恥ずかしさのあまり条件反射でYの頭を軽く叩いた。

No.66 08/10/10 20:08
空を見上げて ( ♀ DSIe )

人を本気で好きになるとここまで違うものなのか?突き動かす動力の源となったこの愛情を私は信じられずにいた。Yと知り合って皮肉にも自分の世界の狭さに気付く。肌で知る温もりや触れる悦び、感じる力強さを今まで知らずに生きてきた。これが愛されるというのならこの上ない幸せなのだろう。Yの手によりこの日、私は少しずつ開花し始めた。

No.67 08/10/11 12:54
空を見上げて ( ♀ DSIe )

触れられる度に吐息が漏れた。互いの鼓動が高鳴り合い加速する。息も出来ぬ程、口を重ね合った。「S…」Yは何度も何度も私の名前を呼ぶ。素肌を重ねれば重ねるほどに互いの身体の熱さを感じ、熱を帯びる。そしてYのしなやかな腕が私の身体を包み込んだ。もうそれだけでも自分のキャパを越えそうだった。

No.68 08/10/11 23:46
空を見上げて ( ♀ DSIe )

きっと色んな人と経験したのであろう、どこか扱い慣れた感じのYに翻弄されながらも優しくリードされた。服を一枚ずつ脱がされ、互いに自然な姿になっていく。「首筋に手を回して…」「大丈夫だよ…」何も知らない私に丁寧に教えてくれた。Yが慣れているのは今までの経験があるからだ。そう思うと苛立った。「慣れててなんか悔しい…」Yの耳元でそう囁くと私は軽くYの耳に噛んだ。

No.69 08/10/12 09:28
空を見上げて ( ♀ DSIe )

気が付けば私は抱き締められたままYの胸の中で眠りに落ちていた。Yも寝息を立てながらよく眠っている。目が覚めた私はYの腕を払い除け、Yの寝顔を覗き込む。端正な顔立ち、長い睫毛…全てが愛しく想える。そんな時、ふと以前Eに会った時に言われ事を思い出した。

No.70 08/10/12 14:04
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Eの恋愛指導でこんな事があった。愛し合った時の男の態度についてだ。一通り終了後、相手の気遣い、すぐに女の側を離れる男は浮気をしている可能性がある。Eの経験談なのか?或いは何かの受け入りかは不明だが、そんな事を私は思い出していた。そんな時、寝惚けながらYは手探りで何かを探している事に気付いた。

No.71 08/10/12 17:08
空を見上げて ( ♀ DSIe )

70回目に突入しました。のんびりペースで進めてるので話の展開は遅いですがまだ続けても良いですか?😂🆘

No.72 08/10/12 19:41
ピノ ( 20代 ♀ LliO )

>> 71 毎回更新楽しみにしてます😃✨
ぜひ続けて下さい😃

No.73 08/10/12 19:44
匿名 ( DKUKh )

私もとても楽しみにしています😄
続けて下さいm(__)m!

No.74 08/10/12 22:17
空を見上げて ( ♀ DSIe )

有難うございます!
ピノさん!匿名さん!✨話の展開は地味かも?ですが、これからも宜しくお願いします🐥✨

No.75 08/10/13 06:12
空を見上げて ( ♀ DSIe )

何故か内緒で寝顔を見てた事がバレるとマズイと思い、Yに背を向ける形で慌てて私は寝直した。すると後ろからそっと抱き寄せられ、“私を探していたのか?”とそう思った瞬間、身体の身動きが上手に取れなくなっていた…(あとはご自由にご想像を💖)

No.76 08/10/13 08:15
空を見上げて ( ♀ DSIe )

その後、店を出ると日もすっかり沈み、イルミネーションの明かりも点灯されていた。店を出たのはいいが、身体の熱がまだ残っているのか?手を繋ぐ事で精一杯だった日中に比べ、まるで互いの体温を確かめ合うように自然に二人とも寄り添い、肩を寄せ合ってた。再びラジオ局へと戻るとタイミング良くそろそろゲストの紹介が始まる頃であった。

No.77 08/10/13 12:18
空を見上げて ( ♀ DSIe )

ガラス越しではあるが、スタジオからゲストを見る事が出来る。スピーカー越しにDJの軽快なトークは進み、ゲストの紹介に進むに連れ、次第に周りの観客達のボルテージも上がってゆく。今でもゲスト登場後の観客の悲鳴にも似た叫び声は忘れられない。興奮冷めあらぬ中、観客の前に登場したのは人気絶頂の某女性アーティストだからだ。(※因みに彼女はこの時から数年経った今もその人気を不動のものとしている。)

No.78 08/10/13 14:48
空を見上げて ( ♀ DSIe )

…ただYとはそれから年を跨ぎ、翌年の梅雨の時期まで付き合っていたが、あの楽しかったクリスマスの時から次第に歯車が狂い出していた。それから後も楽しい時期は勿論あったが、寧ろ辛い時期が徐々に増えていったような気がする…。

No.79 08/10/13 19:19
空を見上げて ( ♀ DSIe )

ある日を境に私はYといる時の安心感よりも不安感の方が募り始めていた。苦労しなくても良いような苦労があったからだ。極端に例えるなら人気アイドルグループの男性(Y)が一般女性(私)との交際をスクープされた時ぐらいの大変さだろうか?とにかくYは容姿のお陰でよくモテてていた。それに比べ私は知らない人から反感や恨みを買われ、嫌がらせを受ける回数も増え始めていた…。

No.80 08/10/14 18:50
空を見上げて ( ♀ DSIe )

直接被害を受けた訳ではないが、どこから調べたのか?私宛てで知らないアドレスから苦情にも似た悪戯メールが届く事もあった。その時はすぐに着信拒否設置をし、淡々と対処したが、Yの過去についてはいずれ多少は知らないといけないような気がしていた。そんな考えが浮かび上がったその時、カバンの中に入れてあった携帯が鳴り響いた。

No.81 08/10/14 19:12
空を見上げて ( ♀ DSIe )

とある郊外。見晴らしも良く、海が見渡せるファミレスで魚介類をメインしたランチバイキングをYと二人で楽しんでいた。携帯が鳴った時、次のデートはここにしようと決めていたのだ。互いにトレイを持ち、好きな食べ物を皿に盛り合わせていく。体力仕事の仕事柄、当然Yは食欲旺盛で食べる量も豪快で凄かった。私もバイキングという事もあり、いつも食べる量より少し欲張った。そんな状況の中で、Yに以前付き合ってきた人の話を聞く事にした。

No.82 08/10/14 21:50
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「あのさ…私と付き合う以前って何人ぐらい付き合っていたの?」パンを片手に食べながら聞いてみた。Yは口の中いっぱいに食べ物を含んでいたので飲み物を手にするとすぐに流し込むようにする。軽く咳払いし、「17歳から人と付き合い出して6人…」とさらっと言った。「じゃあ…私は7番目?」と咄嗟に言葉を走らせるとYはスープを飲みながら頷いた。この当時、互いに23歳の頃である。同じ年ではなくYは私より1つ年上だが、早生まれのせいで誕生日がくるのが遅かった。

No.83 08/10/15 07:14
空を見上げて ( ♀ DSIe )

“単純計算しても1年単位で付き合っている人が変わっている…”私はそう思ったがもう少し深く聞く事にした。「最高と最低と平均でどれぐらいの付き合い?」今後はパスタとサラダを交互に食べながら質問する。Yは御飯を一口食べると「最高は3年で年上の人で、最低はすぐに振られて一週間ぐらいかな?」今度は新たに取ってきたフライ物に手を伸ばしつつ、「平均はよくわらかん」と言うとポテトフライを食べ始めた。

No.84 08/10/15 19:29
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私もYと一緒にポテトフライを食べ始めると「一応振られた経験もあるんだね」と言いながら笑った。Yはなんで?っといった顔つきで「今まで昔の事なんか聞いた事もなかったのにどうしたの?」と今度は質問された。「今まであんまり興味なかったけどなんか聞きたくなったから」と言うと、誤魔化すために私はYの口に向かいポテトフライを差し出した。Yは条件反射でそれを食べてくれたので私は笑顔になった。

No.85 08/10/16 06:33
空を見上げて ( ♀ DSIe )

桜がまだ花咲く前の蕾の頃。Yと海辺に向かった。駐車場に車を止め、しばらく砂浜を歩きながら散歩を楽しむ。風は冷たいが日中なので陽射しは温かい。ここは以前付き合う前にも訪れたN市にあるRタウンである。正確にはRタウンの端に位置する場所で、前回いた中心部から少し離れていた。中心部を外れると遊具などはなく、ベンチが点々とあるのみでどこか殺風景な気がしたが、よく見ると近くにはサイクリングロードがあり、サイクリングやペットと散歩する人達の姿を見る事が出来た。時間が静かに流れるような穏やかな休日だった。

No.86 08/10/16 18:17
空を見上げて ( ♀ DSIe )

この穏やかな日を…幸せを…いつまでも噛み締めて生きていきたい。ただ側にいてくれるだけで良かった。小さい願いかもしれないが心からそう願った。だが心とは裏腹に別れのカウントダウンはこの日から始まっていたかもしれない。普段ならデート中に携帯を触らないYであったが最近では私が側にいるのにも関わらず頻繁に携帯を触るようになっていた。

No.87 08/10/16 21:10
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Yの携帯には何度か触れる機会があった。勿論、無断ではなく本人の許可を得た上でだ。見た内容はメールのやり取りなどではなく、主に画像を見る事がよくあった。Yは携帯のデータ整理をしていないのか?写真のデータだけでも凄い量で、その写真を遡ると自然と今まで知らなかった事実が見え隠れしていた。過去のY…、Yが過去に目にした風景…、そしてこれまでYが関わってきた人々…私はYの横である人物を思い出した。

No.88 08/10/17 07:02
空を見上げて ( ♀ DSIe )

もしかしたら私は携帯越しにYが付き合ってきた歴代の彼女を見てきたかもしれない。もしそれが事実なら写真以外にもまだアドレス帳に歴代の彼女の連絡先も残しているかもしれない。そう思うと怖くなった。身体が震えたかもしれない。信じたくなかった。後ろからYに寄り掛かるように抱きついた。

No.89 08/10/17 20:14
空を見上げて ( ♀ DSIe )

この日が身体を重ねた最後の日になった。いつもと違う悲しい終わり方…。あんなに愛された日は遠い夢のようで、側にはYはいない…。重ねた後すぐにベッドから離れ、Yはソファに座っていた。“普段なら私の側を離れなかったのに…”私はYの考えさえももうわからなくなっていた。皮肉にも以前、Eが話した通りになってしまっていた。Eはこういう経験をしたんだ…。まさにそういう状況下にいた。“浮気か…”自然とその言葉が頭を掠める。でも私は問い詰める事はしなかった。それは遅かれ早かれ終わりを意味するからだ…。

No.90 08/10/18 01:35
空を見上げて ( ♀ DSIe )

あれから春は駆け足で通り過ぎ、新緑の季節を迎えていた。木々が若葉色に染まり、命の息吹を感じる季節…。しかし私はその季節に反し燻っていた。時刻は深夜の事。Yといつもやり取りしていたメールも日が経つとともに回数は減少していた。メールに始まり、メールで終わらせる気なのだろうか?そんな事だけは手に取るようにわかっている自分がいた。ただメールではなく、“最後になるなら直接会って別れを告げたい”そう覚悟を決めたその時、ついにこの日がやってきた。

No.91 08/10/18 18:20
空を見上げて ( ♀ DSIe )

偶然手にしていた携帯が鳴り出した。Yからだ…。メールを確認すると、『好きな人が出来たから別れたい』と短い文章で綴られていた。『こんな形で終わるのは嫌だ』と私はすぐにYにメールを返す。だがなかなか返事が返ってこない。しばらく待ったが待つ時間が辛くなり、耐えられなくなった私はYに電話をかけた。やっとの思いでYに繋ると「もしもし…」弱々しい声ながらも私は話し出す。「はい…」電話に出たYの声は泣き声にも近い声だった。もしかしたら泣いていたかもしれない…。「会いたい…」やっとの想いで声を出したのはいいが私も堪えていた涙が溢れそうになっていた。「…わかった」しばらく長い沈黙があったがYから返答を聞く事が出来た。深夜の電話はこれで終わった。長い夜の幕開けだ。“今日は眠れぬ夜を迎えそうだ”

No.92 08/10/19 09:07
空を見上げて ( ♀ DSIe )

翌日の早朝、始発の電車が運行を始める頃にある駅で待ち合わせる事になった。ただ今日は平日だ。平日は互いに仕事のため時間的にも慌しいが、Yが早朝に会う事を提案した。互いに話は早い方がいいと判断したからだ。ただYが車を所持していたらまた状況が変わっていたかもしれない。生憎、Yの車は車検が切れたのと同時に古い車を廃車していたのでこの時ばかりは仕方がなかった。始発の電車に揺られ、眠い目を軽く擦ると車内の窓から朝日がようやく見えてきた。ドア越しなので日の光が肌に当たる。ドアに寄り掛かるようにもたれていると次第に目的の駅が見えてきた。「はぁ…」小さく溜息が出る。“ここからが正念場だ”と自分に言い聞かせて目的の駅で下車をした。

No.93 08/10/19 16:15
空を見上げて ( ♀ DSIe )

改札を降りると、指定の場所に既にYはいた。「待たせたかな?」なんとも声を掛けにくい状況の中、私は無理に声をかけた。「いいや、そんなには…」心此所に在らずといった感じでYは答える。少し間を置き、話せる所に移動する事になった。移動中にも関わらず私は思い切って聞く事にした。「好きな人って誰なの?」いきなり核心を突く質問にYは迷わず答え始めた。「Sの前に付き合ってたコから久々に連絡があった」「最初は互いに近況報告する程度だったけど、何度か連絡を貰う内に気になり始めて…」誰かは不明だが、歴代の彼女の内の1人には間違いなかった。私の予感的中してしまった。

No.94 08/10/19 22:49
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「元カノのアドレス残していたの?」私は更に深く追求した。「うん…」Yは頷く。「なんで…?自分からまさか連絡してたの?」咄嗟に口元に手を当て私は怒りを堪えた。「自分から元カノに連絡した事はない。元カノから連絡があって…以前の気持ちが甦った」Yの口から出た言葉に私は落胆した。「会ったんだね…いつ…?」責め立てるようにYに言うと「今年に入ってすぐぐらいに一度だけ…」Yは私の目を合わさず答える。「信じられない…!」遂に私の怒りは爆発した。別れ話をされているクセに本人を目の前にすると何故か泣く事が出来なかった。何故だろう…?もしかしたら私は自分のプライドが許せなかったかもしれない…。

No.95 08/10/20 07:39
空を見上げて ( ♀ DSIe )

駅から近いコンビニの裏で1時間少々話をした。Yの気持ちは変わる事なく私も既に悟っていたがこの時は「別れたくない」と言ってYを困らせた。すんなり別れて元カノの元に行かせたくなかったからだ。悔しい気持ちが嫌な女にさせたかもしれない。私は言った。「別れたいなら最後に私のお願い聞いて…」Yは私を見た。「何…?」「最後になるなら最後のデートをしたい」私は無茶な要望をYにぶつけたがYは最後ならと了解した。

No.96 08/10/20 20:02
空を見上げて ( ♀ DSIe )

ラストデート当日、空はあまりいい天気とは言えない曇空、まるでYと私の心境を表すような天気だった。空気が湿気ている、梅雨のせいもあるだろう。最後のデートと言っても特に変わった事をする訳ではなく、何も普段と変わりはなかった。Yは私を嫌った訳ではないらしく、別れるのも辛くて泣いた…とこの時初めて明かした。“きっと以前、別れ話をした深夜の電話の時だろう”私は“タイミングが違うだろ…”と思い、Yに向かって苦笑いを浮かべた。

No.97 08/10/21 08:00
空を見上げて ( ♀ DSIe )

梅雨が明けて夏がくれば私は24歳の誕生日を迎える。メールで知り合ったのは誕生日を迎える前の22歳。知り合って1年、付き合って半年の付き合いだったが考え深い1年だと思う。本当ならYに誕生日も祝って貰う予定だったがもうそれは叶わない。口には出さないが私の中で色んな想いが巡り巡った。そんな時、雨が降ってきた。二人とも傘を持っていない。道端にいたため、急いで雨宿り出来る場所を探した。

No.98 08/10/21 19:43
空を見上げて ( ♀ DSIe )

5メートル程先に駐車場が見えた。屋内駐車場らしく、雨宿りも出来る。Yと顔を見合わせ頷くと駆け足で向かった。大して濡れる事はなかったが互いに服についた雨粒を払う。元々天候が悪かったせいか?駐車場には周囲の人影すら見当たらない。二人っきり…。私はYと少し距離を置こうとした。「ゴメン…」突然そう言うとYが人目を避けるように壁際に私を引き寄せた。あまりに急な事に私は受身も取れず倒れそうになる。幸いYが支え、なんとか体勢を立て直したのはいいが、私はそのまま抱き締められた。

No.99 08/10/22 07:03
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「痛い…離して…」あまりに強く抱き締められるので身体が痛い。振り解こうとしたその時、口が重なった。私は抵抗しようとしたが、まるで何かを刻み込むような激しさに最後の別れを噛み締める事した。“時間が止まればいいのに…”と思ったが時間は無情にも過ぎてゆく…。「さようなら…」抱擁が終わるとYが嫌いな言葉を私は耳元で告げた。Yに対する私なりの精一杯の皮肉だ。「元気でな…」Yはそんな私とは真逆の態度を取り、私の頭に頬を寄せるとそっと頭を撫ぜた。Yの肩越しから外を見ると気が付けば雨は止んでいた…。

No.100 08/10/23 06:41
空を見上げて ( ♀ DSIe )

家路に着くとすぐに部屋に入った。部屋に入った途端、暗闇の中で私は自覚した。

側にはYはいない。もうYの声を聞く事も笑顔を見る事も触れる事も出来ない。全てが終わった今頃になって私の中で何かが弾けた。

地面に崩れ落ち、Yの前で最後まで流れなかった涙が止めどなく溢れた。ただ気が済むまで泣く事にした。その後も幾日も幾日も気が済むまで泣き続けた。

この時に気付く、私は“Yに依存していたかもしれない”と…。

この経験を踏まえた上で時間はかかるかもしれないが自分に自信がつく何かを見つけようと心に誓った。
 

No.101 08/10/23 07:23
空を見上げて ( ♀ DSIe )

100回目突破&5000hitを達成しました🎉
ここまで如何だったでしょうか?第一部完結って感じです。

続きが気になる方は
🌱今後の私🌱感想書込板があるのでそちらにお知らせ下さい📝
 

No.102 08/10/24 21:51
空を見上げて ( ♀ DSIe )

全く感想頂けないものと内心思っていましたが、意外に感想を頂けたので、早速週明けから第二部を開始したいと思いま~す🙌🙌🙌🎊

感想等も引き続きお待ちしておりますので宜しくお願いします🙋💕 

No.103 08/10/27 07:09
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「S!おめでと~!」真夏のある晩、数少ない友人達に祝って貰い、小さな店の一角で私の誕生日会が開催された。

バースデーケーキが用意され、周囲にいた客からも拍車を貰った。

友人の中にはEもいて、誕生日会という名目で私を含めた女4人で久々に飲んで騒いで楽しんだ。

私とEは中学の頃からの友人で、同じ高校に進学して新たに出会ったのが今いるメンバーのKとTである。

高校卒業後、4人とも進学や就職をして進む道は違ったが、今でもこうしてたまに会っていた。
 

No.104 08/10/27 19:01
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Kはモデルのような長身でスレンダーなイメージに対して、Tは背が高くも低くもなく、容姿や服装の好みも私と類似する点があった。

Eは相変わらずフェミニンさを失わず、小柄で可愛さにより磨きがかかったような気がする。

私と言えば特に容姿が変貌する訳でもなく、これまで通りで、ただ以前より更に髪が伸びただけの変化であった。
 

No.105 08/10/28 00:47
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「Sはどこまで髪伸ばすの?」Eが私の頭を撫ぜながら聞いてきた。

「特に決めてないな~…」ソファに寄り掛かると、ふと天井を見上げるようにして私は答える。

テーブルを挟み、ソファ席にEと私、KとTが隣同士で座っていた。

「あのさ、二人とも…」Eと私の会話が終わるのを待っていたかのようにTが言い出した。

そんなTを肘を立てながらKは横から眺めるように見ていた。
 

No.106 08/10/28 08:04
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「同窓会?!」

T以外の3人が声をハモらせ驚いた。

私は高校時代の友人が少ないため連絡網があまりなく、Eは今だに長い付き合いの彼がいるため、高校時代の友人とは疎遠になりつつあった。

「あれマジでするの?」Kは顔を上げ、姿勢を正すと何か知っているような言い方をする。

「えっ?」Eと私は互いに顔を見合わせ2人してKを見た。

「同学年全クラスじゃないんだけど…」Kは話しながら頭を掻きつつ今度はTに視線を送る。

Tは頷くと「仲間内だけで同窓会しないかって話があるの」Kの話を引き継ぐように話始めた。
 

No.107 08/10/28 19:36
空を見上げて ( ♀ DSIe )

誕生日から数日たったある日、Kから1通のメールがきた。『開催決定~✌盆休みに集まれるメンバーだけで👍🌟』

“なんか文章がハジけてるな~…”と思いつつ、『了解~、詳しい詳細求む✋』と私はKにメールを送った。

すると『当日は一緒に行こうね~🎵』とまたKからすぐにメールがきた。

後日談だが、どうやらKは私の誕生日会があったあの日、Tが同窓会の話をする前から風の噂で知っていたらしい。

ただKはホントに同窓会を開催する気でいた事は知らなかったらしく、
ビックリしたとこの時、私に話していた。
 

No.108 08/10/29 02:14
空を見上げて ( ♀ DSIe )

また後日、今度はTからメールで詳しい詳細を明された。当日は30人近く来るらしい。

“盆休みにも関わらず、1クラス分程の人数をよく集められたな”と感心した。

同窓会の日が刻々と近付く中、日差しの強い炎天下の下、私は自転車に乗り馴染みの美容院に行く事にした。

どうせなら少しでも変わった姿を久々に会う同級生達に見せようと思い付いたからだ。
 

No.109 08/10/29 19:09
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「今日はSさんどんな髪型にしますか~?」

馴染みの美容院で美容師が私の髪を触りながら聞いてきた。

席に座り、美容院にあるヘアカタログの本を手にしながらサッと探す。

「これって私の髪質でも大丈夫ですか?」

写真を見ながらあるページに指を差して美容師に尋ねてみた。

私は思いつきで、ゆるふわウエーブヘアに挑戦しようとした。

美容師は私の髪を見つつ、雑誌を丹念に確認すると「そうですね~…」「長さも割とあるし、大丈夫ですよ~」と言い、笑顔で答えてくれた。
 

No.110 08/10/30 01:15
空を見上げて ( ♀ DSIe )

美容院を出る頃には日中の暑さも多少は和らぎ、夕方になりつつあった。夕方といっても外はまだ明るい。

店の前に止めてあった自転車に乗り、私はペダルを走らせた。

髪が軽やかに風に靡く。単純な発想だが、初めてのパーマに女子力がアップしたかのような気分になっていた。

運良く自分のイメージ通りにヘアスタイルが決まったからかもしれない。

まだ別れた時の傷が癒えた訳ではないが私は久々に心弾んだ。
 

No.111 08/10/30 19:14
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Yと付き合っていた頃、私の世界の中心はYだった。その頃は恋愛のみに全てを費やし、それ以外に夢中になるものがなかったのかもしれない。

別れた日に心に秘めた
自分に自信がつく何か…をまだ私は見つける事が出来ずにいる。

別れてからまだ日は浅く、そう簡単に見つかれば苦労はしないだろう。

ただ心に何か変化があるとすれば、自分の誕生日の日に何かが私の中で生まれたのは確かで、

同窓会の話を聞いたあの日、この気持ちに対して今後のヒントが隠されているような気がしてならなかった。
 

No.112 08/10/31 01:15
空を見上げて ( ♀ DSIe )

盆休みに当たる8月中旬、晩の午後7時半にチェーン店の居酒屋の一部を貸切、高校を卒業してから6年振りに仲間内だけで同級生が集まった。

私はKと一緒に行く約束をしていたので2人で同窓会が開かれる居酒屋にやってきた。店に入り、店員に案内されると目の前には既に懐かしい顔触れが何人かいる。

顔を合わすなり、「元気~?」「久しぶり~!」と似たような言葉が飛び交う中、私とKは空席を見つけるととりあえずそこに座る事にした。

因みにTは私達2人よりも早くに違うグループと到着しており、楽しそうにそのグループと談笑している最中だった。

Eは彼の手前もあるので…っていう理由で不参加だった。
 

No.113 08/10/31 08:06
空を見上げて ( ♀ DSIe )

同窓会開始の時間より遅れてくる者もいたが、
予定の人数全員が集まる頃には開始から1時間程過ぎようとしていた。

貸切時間は120分、
飲み放題付きのコースを頼み、料金は各自折半する事になっている。

男女の比率は男が4で女が6ぐらいの割合だろうか?当初は30人近くと聞いていたが実際集まったのは24人だった。

正直この人数で120分は物足りないとさえ感じてしまう。

どうやらそれは周囲も感じていたようで2次会に来れるメンバーだけで、また飲もうという話が出始めつつあった。
 

No.114 08/10/31 19:33
空を見上げて ( ♀ DSIe )

KもTも思い思いに色んな人と話していた。

2人とも違う場所に席を移動して盛り上がっていたため、私は当初いた席に取り残されたような形になってしまった。

“私も席を移動しよう”

そう思った矢先、「Sは2次会参加すんの?」と後ろから声をかけられ、私は後ろを振り返った。

そこにいた人物は見覚えのない男だった。
 

No.115 08/11/01 03:11
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「……?」

しばらく無言になり、首を傾げる私に対しては

「あれ?もしかして誰かわかってない?」と男は慌てるように言う。

「…あっ!Aッ!?」私はようやく思い出すと苦笑を浮かべながら

「マジで気付いてなかった?」とAは言った。

私は「卒業して以来会ってないし、なんか雰囲気違うからわからなかった」と冗談混りに言うと

「そんな変わったか~?」とAは笑いながら答えた。
 

No.116 08/11/01 12:42
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Aとは特に親しい友人という訳ではないが、Eと同じで中学からの同級生でもあった。

Aは高校生になった途端、持前の愛嬌とその容姿から全学年の女子から人気があり、ファンクラブも発足されたという伝説さえ残っている。

確かに相変わらず格好良いと言えば格好良いが、私は特にAには今も昔も興味はない。

当時はどういう訳か
「Sちゃん」と呼ばれ、
何度か同じクラスの女子からAとの関係について呼び出される事もよくあった。
 

No.117 08/11/01 19:51
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「変われば変わるもんだな~…」マジマジとAは私を見てきた。

テーブルには私とA以外にも数人が席に座っており、Aの言葉に席にいた何人かが反応した。

「確かショートだったりセミロングだったりだよね~?」皆、端々から言葉が出てくる。

誰かが「昔と比べたら垢抜けたよ」と言った言葉に私は内心手応えを感じていた。美容院に行った甲斐がある。

例えその場凌ぎでも
「全然変わってないね」
…なんて言葉だけは聞きたくなかった。
 

No.118 08/11/01 21:07
空を見上げて ( ♀ DSIe )

会計を済ませ、居酒屋を出ると相変わらずの外の暑さと色んな意味を含めてうんざりした。

ただ暑さだけではなく、既に酒に酔い潰れた者も何人かいるからだ。足は千鳥足だったり、笑い上戸だったりして愉快な事になっている。

私はあまりお酒が得意ではないため、こういう時は素面で淡々としていた。携帯で時刻を見ると結構いい時間のように思える。

Aに2次会の事を聞かれなければとっくに帰っていたが、KもTも2次会に行くと聞いたので私も友人の付き合いで行く事にした。
 

No.119 08/11/01 23:23
空を見上げて ( ♀ DSIe )

時刻は夜10時を回ろうとする頃、居酒屋から駅に向う方向に数分程歩いた先にカラオケ店があり、そこで2次会を始める事になった。

人数は更に減りまだ13~4人程残っている。団体なので次の居酒屋に行っても席があるかもわからなければ、予約もしていない。となればカラオケ店が妥当な線だろう。

店に到着すると待ち時間もなく、運良くすぐに部屋に案内された。 

No.120 08/11/02 09:28
空を見上げて ( ♀ DSIe )

席に座れると何故かAが私の隣に座った。
さっきまで別行動をしていたKとTも私の近くに座る。

面白い事になんだか2人共、ソワソワしてるように見えた。

ここだけの話だが、私とKとTが友人になったキッカケはなんとAである。Aはその事を知らないが、当時KとTはAのファンだった。

なんだか久し振りに見るその光景に高校時代の懐かしい思い出が私の中で甦ってきた。
 

No.121 08/11/02 20:17
空を見上げて ( ♀ DSIe )

今まで連絡先も知らなければ、仲が凄く良かった訳でもなかったが、この同窓会の日をキッカケに互いにメアドを交換し、Aとメールをするようになった。

心の傷がまだ塞ぐ事のないまま、少しずつまた新たに自分の世界が広がっていく。

Aとの再会を機に偶然にも私には目的が2つ出来たのでだった。
 

No.122 08/11/03 07:11
空を見上げて ( ♀ DSIe )

24歳ぐらいからそろそろ結婚適齢期に入る頃だろうか?この時点で相手もいなければ、そんな予定など私には到底ない。

小さい頃はこのぐらいの歳には結婚していると思っていたが世の中そんなに甘くはなかった。

楽しかった同窓会もあっという間に過ぎた。自分の中では真夏のメインイベントが誕生と同窓会だったからだ。

夏が過ぎ、秋に入ったばかりの頃、Aと2人で会う約束を交わしていた。丁度その日が今日であり、Aは私の住むマンションまで車でやってきた。

互いに住んでいる家は知っており、まだ地元に住んでいたため、会うには便利が良かった。
 

No.123 08/11/03 15:26
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Aの車に乗ると市内中心部まで向かった。向かった先は有名なホテルが建ち並ぶオフィス街に近い場所だ。

その周辺にはそれなりに歴史のある建築物の美術館もあり、更に周辺には個展を開いている所も幾つか目にした。

実は同窓会があったあの日、当時生徒から慕われていた恩師も来ていた。今日はその恩師が個展を開いているとの事で招待された訳である。

開催時刻は午後1~5時まで。開催開始時間に間に合わせるため、Aは車を走らせた。
 

No.124 08/11/04 07:20
空を見上げて ( ♀ DSIe )

恩師は国語の教諭で、
趣味で油絵や写真を撮っていた。数年に1度のペースで個展も開いており、メジャーな雑誌に載った事もある。

しかしながら掲載された雑誌は主婦向けのマイホーム雑誌であり、
旦那は趣味でこんな事をしてますって感じの紹介記事だった。それでも当時学生の頃、散々自慢されたような記憶が私の中で残っている。

個展が開かれている小さな展示場に着くと「また珍しい組み合わせだな~!」と言いながらAと私を恩師は笑顔で出迎えてくれた。
 

No.125 08/11/04 19:25
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「Sはわかるが、Aはどうした?」

恩師は笑いながらAの頭を豪快に撫でた。
Aは芸術には無縁なタイプだからだ。

今の時代の教科の種別はわからないが、当時私が高校生だった頃は選択科目というものがあり、美術・音楽・書道のどれか1つを選ばないといけない教科があった。

「Sは昔から授業中もノートに絵(落書き)描いてたもんな~」

Aの次に今度は私がターゲットにされそうになり、慌てて私はその場を離れるように逃げ出した。
 

No.126 08/11/05 07:08
空を見上げて ( ♀ DSIe )

昔、私は絵を描くのが好きだった。昔は趣味でコミックタッチのイラストや水彩を使った風景画、油絵も描いていた。

写真も好きで、
撮影から現像まで手掛けた経験もある。恩師が写真の機材(一眼レフ等)を貸してくれた事もあるぐらいだった。

だが、働き始めた頃には絵を描くのも写真を撮るのも私は時間がない事を理由にその趣味を辞めてしまっていた。
 

No.127 08/11/05 20:32
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「2人共、今なんの仕事をしてるんだ?」
恩師がAと私に質問を投げ掛けた。

「俺は建築現場で働いてるけど」「私は総合病院で受付の仕事してるよ」とそれぞれ答えた。

Aも私も高校卒業後、就職の道を選んだが互いにどんな職業に就いたのかは今初めて知った。

私の場合、受付の仕事が初めての職場ではない。初就職した時は製造関係の会社で3年近く事務の仕事をしていた。

今の職場は21歳の頃に就職してもう3年を過ぎた頃だった。 

No.128 08/11/06 08:10
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「Aについてはわからなくもないが、Sの場合は予想外だったな~…」
恩師は顎を掻きながら呟いた。

「なんで~?」その言葉に私は反応した。

「絵が好きだったからそういう仕事すると思ってた」そう恩師が言った。

“どういう仕事だ?”とも思ったが、恩師にしては何気ない一言だったのかもしれないが私の中で電撃が走った 。

No.129 08/11/07 06:45
空を見上げて ( ♀ DSIe )

恩師とは同窓会の時に席が離れていたため、
会話も満足に出来なかったが、個展を覗きにやってきて本当に良かったと思う。

恩師は全員ではないが、生徒の数人に個展のチケットを渡していて、Aも貰った内の1人だった。

同窓会の席では結構な人数がいたので個々に全員に渡す事は出来なかったらしい。

恩師はその渡した数人に数枚のチケットをまとめて渡していたお陰でこうやって私は個展にくる事が出来た。
 

No.130 08/11/08 07:36
空を見上げて ( ♀ DSIe )

時刻は午後3時を回った頃、恩師の個展を後にしてまたAと車で走り出した。

まだ昼食を摂っていなかったため、遅めの昼食を摂る事になったのだ。

Aは行きたい店があると言い、私は特に要望がなかったので快諾して今その店に向かっている最中だった。
 

No.131 08/11/08 15:05
空を見上げて ( ♀ DSIe )

店に到着したのはいいが、市内中心部に程近い場所にあると思えない程、小さく古ぼけた感じの店だった。

中に入ると外観と印象は全く変わらず、一層年季が入った感じがする。

私の様子に気付いたのか?「職場の先輩に教えて貰った店だけど、味はお墨付き!」と自慢気な顔してAは言った。

「ふ~ん‥‥」
それに対して素っ気ない返事をしたものの、私は内心“ホントか?”とAを疑ってしまった。
 

No.132 08/11/08 23:32
空を見上げて ( ♀ DSIe )

意外にも客入りは多く、時々店の外を見ると客が並んでる事もあった。

Aと私はそこで店の定番メニューを注文した。デミグラスソースのかかったオムライスが目の前に置かれると恐る恐る一口口にした。

「…旨ッ!!」

私のその反応に笑いながらAは私の頬を軽く突いた。昼食後、Aとはあっさり別れた。

しかし中途な時間に食事を摂ったので昼食というより、夕食に近いような気もする。その加減で晩になってもお腹が減る事はなかった。
 

No.133 08/11/09 08:17
空を見上げて ( ♀ DSIe )

紅葉の葉が少しずつ紅く染まろうとする頃、Aとよくバイクの話をするようになっていた。

私は元々車より、バイクに興味があったので話だけでも充分楽しかった。Aから電話が掛かってきた時の事である。

「Sってなんか免許持ってたっけ?」

「車の免許ならあるよ」

互いに些細な日常会話が進んでいく。

「そんなに興味あるならバイクの免許取れば?」

「それが~…」

私はAの問いに対して言葉を詰らせた。
 

No.134 08/11/09 21:54
空を見上げて ( ♀ DSIe )

昔、車の免許が取れる歳になった頃、車より先にバイクの免許を取ると私の親に伝えると、

「危ないから!」

と親に猛反対され、
渋々車の免許だけを取った苦い思い出が私にはあった…。

当時、私は親に反対された話をAに話すとAはサラリと言いのけた。

「それなら内緒で免許取ればいい」

「バイクの免許は取った者勝ちだし!」

私はAのその言葉に目から鱗だった。こんなに簡単な事に今まで気付かなかったというなんとも間抜けな話である。
 

No.135 08/11/10 07:21
空を見上げて ( ♀ DSIe )

秋が深まりつつある日、親に内緒で私は昔通った教習所に電話で問い合わせる事にした。

教習所の受付の話ではバイクの場合、倒れたバイクを起こせないと受講資格がないらしく、
教官の前でバイクを起こせるか試しに来て下さいと言われた。

その時、私は念のために受講資格がある場合の手続きの詳細も聞いておいた。受講資格は当然のものと何故か自分の中で確信していた。
 

No.136 08/11/10 19:07
空を見上げて ( ♀ DSIe )

空が澄んだ秋晴れの中、仕事が休みの日に久々に教習所を訪れた。

ここにはもう来る事はないと思っていただけに懐かしい。

教習所内に入ると早速、受付に向かった。教習所の教官に案内され、バイクを起こしに向かう。

教官からバイクの起こし方のコツを聞くとすぐに起こさせるか試す事になった。
 

No.137 08/11/10 22:07
空を見上げて ( ♀ DSIe )

初めての経験だったが実際に体感してみて予想以上にバイクは重かった。

起こす事に運良く成功するとそれを確かめた教官から「良かったですね、今日手続きされますか?」聞かれたので「はい!」と私は直ぐさま返答した。

この日を機にまた教習所にしばらく通う事になった。
 

No.138 08/11/11 06:08
空を見上げて ( ♀ DSIe )

教習所に通い始まると私の中で不思議と充実感があった。

好きなバイクに乗れる嬉しさと小さい事かもしれないが前に進むための目的が出来たように思えたからだ。

今まで夢も目的もなく、ただ時間だけが流れる毎日を送っていたのが嘘のようで、

目的が出来ただけでここまで心境の変化が表れたのにも私自身が驚いた。 

No.139 08/11/11 12:58
空を見上げて ( ♀ DSIe )

季節が過ぎるのは早いもので教習所に通い始めてから季節は秋から冬へと移り変わっていた。

外に出ると当然のように北風が吹き荒れ、時々雪がちらつく日もあった。

そんな天候の中、私は凍える手をカイロで温めながら地道にバイクの講習をこなす日々をまだ続けており、こんな日々を続けていたせいか?

気が付けば世間では既にクリスマスの装飾が施され、クリスマスの時期が到来していた。 

No.140 08/11/12 07:25
空を見上げて ( ♀ DSIe )

年末の慌しさが見え隠れしつつもきっと子供達を始め、家族や恋人達にすれば楽しい季節だろう。

私はというと、クリスマスに予定を立てる事もなければ、仕事か教習所のどちらかしかない毎日を送っていた。

そう、今年は一人ぼっちのクリスマスを迎えようとしていたのだ…。

真冬の夜、仕事から家に帰ると家の明かりは燈っておらず私は自分の手で部屋の明かりを付けた。
 

No.141 08/11/13 00:03
空を見上げて ( ♀ DSIe )

クリスマスイブ当日、
家族は旅行に出掛けており、私だけが仕事の都合で家族と予定が合わなかった。

仕事以外に予定を立てれなかった私は、コンビニで小さなケーキを買ってきて1人で食べようとしていた。

去年と違い、なんとも寂しいクリスマスである。

テレビの電源を入れ、賑やかそうな番組を選ぶと外に出る気もせず、私は呑気に家で寛いでいた。
 

No.142 08/11/13 08:11
空を見上げて ( ♀ DSIe )

こんな日に誰に連絡しても繋がらないと思っていたからだ。そうは思いつつも携帯を手にしてみる…。

“あれ‥‥?”

携帯には知らないアドレスから1件のメールが届いた。見覚えがないだけに恐る恐るメールを開いてみると…

『メリークリスマス』

なんとも簡素な文が添えられ、メールの中には1つの添付データが入ってて、開くとクリスマスソングがオルゴールの音で優しく流れてきた。
 

No.143 08/11/13 19:11
空を見上げて ( ♀ DSIe )

この憐れな私を不憫に思い、誰かが気を利かせた悪戯メールでも送ってくれたのだろうか?

時期が時期だけにやさぐれモード全開だ。

しかしアドレスを変えてまで手の込んだ事をする人物も思い浮かばない。

疑問に思い、もう1度メールの内容を確信してみた。よく見ると文章にはまだ続きがあった。
 

No.144 08/11/14 01:43
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「嘘‥‥」大袈裟かもしれないがクリスマスの奇跡と言うべきか?私は信じられずにいた。

『メリークリスマス』の文章の後に長い改行が続き、スクロールバーを下ろしていく。

『元気にしてたか?』

また続きがあり短い文章が添えられていた。

送り主不明で最終的に誰が送信したものかメール内容では明さずに終わっているが、私はようやく最後の文で気付く事が出来た。




この送り主はYからだと。
 
 
 

No.145 08/11/14 07:25
空を見上げて ( ♀ DSIe )

別れてから互いに連絡は一切取らずにいた。

私はメアドを一切変更する事はしなかったが、Yは別れてからすぐにメアドを変え、私から連絡が出来ないようにしているはずだと思っていたからだ。

現にメアドが変わっているのはその証拠であるが、何故今頃になって私にメールを送ってきたのか?その事に対して私は不思議に思った。
 

No.146 08/11/14 20:00
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私はこの謎のメアド先に返信しようか迷った。Yからだと思うものの確証がない。

それにもしYだったとしても元カノと寄りを戻しているはずなので、逆にこんな時期に私に連絡する事もないだろう。

でも何故かわからないがこの機を逃すと私はYとは一生連絡する事は出来ないと感じていた。

Yとは梅雨の時期に別れてからもう半年になる。まだ想いがあると言えば正直私の中でまだ残っていた。
 

No.147 08/11/14 22:40
空を見上げて ( ♀ DSIe )

散々迷い、それでも連絡を取る事にした。

『もしかしてY?』

私は短い内容のメールを送信する。すぐにはメールが返ってこなかったが数時間後、今度は電話がかかってきた。

日付は変わり、24日から25日へと変わった深夜の事である。

まるでサンタの贈り物のような心境で見覚えのある番号の電話に出る事にした。電話の主が誰だか断定されたからだ。

色褪せる事も風化する事もなく、今だに色鮮やかに色んな思い出や当時の想いが残っている。

懐かしくもあり、切なくもあるその気持ちを私はまだ抱いており、久々に聞いたYの声は私の心の奥で深く浸透していった。
 

No.148 08/11/15 19:50
空を見上げて ( ♀ DSIe )

年が明け新年を迎えた、三が日が過ぎた4日目。私はこの日、ある歩道橋の上にいた。

街中にいる訳だが正月休みという事もあり、普段より人で溢れてはいない。前方を見ると私のいる橋の反対側から見覚えのある姿が見えてきた。

心の整理が出来ないまま、Yとの距離がどんどん近付いてゆく。

そしてYは一度私と擦れ違い、至近距離にいるにも関わらず私に気付いてくれなかった。

クリスマスの日に電話越しで再会を約束した訳だが、待ち合わせ場所にお互い到着してその距離僅か1メートル足らず…。

何かアクションを起さないと話は進まず、Yが私に気付かれない事に業を煮やした私は自分から思い切って声を掛ける事にした。
 

No.149 08/11/15 23:17
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「久しぶりだね‥」

私なりに精一杯考えて出た言葉は至って単純なものだった。

「え‥‥?」

かすかに声が漏れたかと思うと私を見てYは小さく瞬きをする。

「S‥‥?」

私を指差し、自分の口元にYは手を当てた。

「へぇ~‥‥」

まるで感心したかのような声を出すとYは私をあらゆる角度から見た。

「何してるの…?」

久しぶりの感動?の再会なのだが、意表を突かれた私はその場に立ち尽くした形になる。

「全然わからなかった、変わり過ぎて…」

Yは自分の腕を組みながら私にそう言ってきた。
 

No.150 08/11/16 08:16
空を見上げて ( ♀ DSIe )

この時の私の容姿は夏頃にかけたゆるふわウエーブヘアの髪型のままだった。

髪も相変わらず伸ばし続け、髪色は夏と比べれば少し明るめの色になっている。

Yと付き合ってた頃はストレートのセミロング。付き合っていた頃、あまり履かなかったスカートも別れてからたまに履くようになっていた。

因みにYは私と別れてから髪を染めていなかったみたいで、髪の長さは以前と同じだが、別れてから私と離れていた分だけ頭の天辺の黒髪が伸びた感じだった。
 

No.151 08/11/16 13:49
空を見上げて ( ♀ DSIe )

少し歩道橋で互いの感想を述べ合うと場所を変える事にした。

歩道橋を渡り、百貨店やショッピングモールを通り抜け、少し歩くと住宅街が見えてきた。

住宅街の入口近くで小さな公園を見つけると公園の近くにある自販機で飲物を買い、2人してベンチに腰を掛ける。

公園周囲には人影はなく、人混みを避け、静かな場所でゆっくり話をしたかったので丁度良い。

再会を祝して軽くジュースで乾杯するとゆっくりと互いの近況報告を話し始めていった。
 

No.152 08/11/16 18:16
空を見上げて ( ♀ DSIe )

クリスマスのメール件、元カノとのその後、
Yと私の現在を2人して色々話した。


「クリスマスになんで連絡くれたの?」
「元カノとあれから上手くいってる?」
ずっと気になっていた事を私は言葉にした。


「元カノとは付き合っていない…」
しかしYの口から出た意外な言葉だった。


“じゃあ、なんのために私と別れたの?”
心の声が自分の口から出そうになった。


「しばらく連絡は取り合っていたけど…」
その事を口にした途端、Yの顔が複雑そうになる。それから私はYから聞いた話の全貌を整理する事にした。


私と別れ、元カノと数回会う機会はあったが特に大きな進展はしなかった事、クリスマスのメールについては別れてから私の事がずっと気になっていたらしく、連絡をしたとYは語った。
 

No.153 08/11/17 01:21
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Yが私を気にしたのは私に対する罪悪感からだ…。Yの様子を見てすぐに私は悟った。

結局、言葉にする事なく私は自分の想いに蓋をした。切ないが報われないからだ。再び実る可能性は限りなく低かった…。

「自分で聞いてて複雑だったけど、元気そうで良かったよ」

笑顔を作り、私はYにそう言った。

「‥‥有難う」

少し間を置いてYも答えてくれた。

この後、少し店に立ち寄り、ショッピングをした後にまたYと別れを告げた。別れはとてもあっけなかった。
 

No.154 08/11/17 18:13
空を見上げて ( ♀ DSIe )

🎆10000hit🎆突破しました。まさかこんな事になるなんて‼😲

続けてこれたのはホントに応援や感想が励みになったからこそです‼

これからもこんな私にパワーを下さい💪🌟
 

No.155 08/11/17 20:48
空を見上げて ( ♀ DSIe )

去年の終わり頃から新年にかけて、私はある計画を着々と進める手配をしていた。

勿論退職する時期も頃合を見なければいけない。

普通、1~3月頃に退職する人が多いと思うが、まだ職場の人間に口外していないものの、私は今年の5月に退職する予定を立てていた。

目的の1つ目はバイクの免許を取る事であるが、これについては去年の暮れに免許を取得する事が出来た。

更に2つ目の目的は将来、自分がやりたいと思う職業に就く事だった。
 

No.156 08/11/18 07:15
空を見上げて ( ♀ DSIe )

やりたい仕事を見つけた私は転職するためにスクール探しを始めていた。

当初は今の職場を辞めて当分は失業手当に頼りながら、予算が安く済む事からハローワークが実施する職業訓練の募集に応募しようと考えてたが、人気の職業の募集は競争率が高い上、学べる内容や実施期間に制限があるようだったので諦める事にした。

予算は掛かるかもしれないが、どうせ通うなら好きな曜日や時間に合わす事が出来るフリーレッスン制のスクールの方が私には都合が良い。

今の職場を辞めてハローワークに通い出す事になれば教育訓練給付金の活用も視野に入れていた。

※教育訓練給付制度の説明は省略します。

No.157 08/11/18 19:50
空を見上げて ( ♀ DSIe )

去年の夏、誕生日会を開いてくれた友人達、同窓会に出席して偶然再会したA、個展に招待してくれた恩師には感謝の言葉が尽きない。

友人達が開いてくれた私の誕生日会の席で【同窓会】という話がなければ、きっとずっと私は何も変わらずにいたと思う。

誕生日に自分の中で何かが生まれたのは【自分の生きていく道を切り開く予感】だったのかもしれない。

そして恩師は私に今後のヒントとなる言葉をくれた。筆やペンで絵を書く才能には恵まれなかったが、違う分野で私は絵を描く方法を見つける事が出来たのである。

初心忘れるべからずというべきか?恩師の言葉は運良く自分を見つめ直すチャンスにも繋がった。
 

No.158 08/11/18 21:14
空を見上げて ( ♀ DSIe )

スクールをようやく見つけたのは3月に入った頃だった。

雑誌で見つけて一番初めに訪れた所が結局、立地条件や環境、設備的にも良かったからだ。体験入学した時のスタッフの気さくさも大きなポイントになった。

それから退職の旨を上司に伝えたのは4月に入ってすぐの事。そして5月の給料締めの日に私は退職する事になった。
 

No.159 08/11/19 06:29
空を見上げて ( ♀ DSIe )

5月の終わり頃、事前に見つけておいたスクールの受講手続きをようやく行った。

職場を辞めてからは毎日のようにスクールに通い、制限日数内で最低限度の知識を付けるために私は必死だった。

総合病院の受付だった頃は病院専用にプログラムされたソフトを使っていたため、ワードやエクセルといったオフィス系のソフトですらまともに使った経験がない。

それは製造業で事務をしていた時も製造管理用のデータベースが既にあったため同じであり、何よりパソコン操作に於いて私が唯一出来た事はタイピングだけであった。
 

No.160 08/11/19 21:44
空を見上げて ( ♀ DSIe )

当時の私は、パソコン自体を持っていなければ、インターネットの繋ぎ方すらわからなかった。

超初心者の私はまず最初にパソコンの基本操作から学び、仕組みが分かり始めると今度は専用ソフトの使い方から活用方法等を勉強して地道に努力を積み重ねていった。

当時のこの話を業界の人間に話すと大層驚かれるが、そんなに驚く事なのか?と今でも私は思っている。

全てにおいて無我夢中だったというか…気が付けば、次の転職先が決まるまでに3ヵ月の期間を要する事になった。
 

No.161 08/11/20 08:28
空を見上げて ( ♀ DSIe )

新年が明け、久々の再会を果たしてからというもの、Yと時々会う事があった。連絡も毎日ではないが割とよくしていた方だと思う。

転職を決めてから私の日常はかなり変わっていったが、そんな傍らYと会っていた時は切なさだけが残る恋に焦がれるような気持ちになる時間だった。

チョコに例えるならビター味のチョコレート。
この気持ちをそっとチョコの中に流し込んで出来た甘くほろ苦いチョコレート…。

Yと私の関係は溶けて口の中で消えてしまうそんなチョコのような関係だったのかもしれない。
 

No.162 08/11/20 20:46
空を見上げて ( ♀ DSIe )

25歳になった頃、私は無事に就職先が決まった訳だが、24歳の最後の日はとても胸が苦しくなる日となった。

この日、偶然にもYと会う機会があったからだ。度々重なる程の頻度ではないが、何度か会う内に既に私の想いに気付いたのか?ずっとYは気付かない振りをしていた。

Yは多分、それがお互いのためだとわかっていたのだと思う。そして24歳の最後の夜、私はYと2人で飲みに行く約束をしていた。

Yが新しく購入した車で居酒屋に向かい、些細な事で居酒屋で盛り上がり、それなりに楽しむと「酔いを冷ますために散歩でもしよう」とYが言い出した。
 

No.163 08/11/20 22:48
空を見上げて ( ♀ DSIe )

居酒屋を出るとしばらく歩いた所に小さな丘があり、そこから海が見渡せる形でベンチが設置されている場所があった。

Yの車は居酒屋から少し離れた駐車場に止めたままだ。車を置いたまま、酔いを冷ますために丘を登り、ベンチまで近付くとそこから海を眺める事にした。

水平線上に街の明かりが見えるものの、夜の海という事もあり漆黒の闇が辺り一面に広がりを見せる。

ずっとそんな海を見ていると闇に吸い込まれそうな感覚に私は陥りそうになった。
 

No.164 08/11/21 07:16
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私はベンチに腰を掛けずに立ったまま海を眺めていた。

「疲れない?座ったら?」というYの声に我に返えると私はYの隣に腰を下ろす。

しばらく無言で2人で海を眺めていると別れてから初めてYが私の肩に手を回してきた。



この場所に人はいない。Yと2人きり…。



「明日なんの日か覚えている?」



私はそう言うと久しぶりの温もりにYの肩に寄り添う事にした。
 
 

No.165 08/11/21 20:46
空を見上げて ( ♀ DSIe )

肌に馴染む温もりのはずだった…。


違和感を感じるのは久し振りだからだろうか?Yの肩に寄り添ったのはいいが、私の中で以前記憶したYの温もりではなくなっていた。

温もりを確かめつつも、私は私の問いにYがどう答えるのかを黙って待っていた。そして…


「‥‥わからない」


考える様子を見せつつもYは短く答えた。

打ち寄せては引いてゆく小波のようなYのもどかしい態度に私はがっかりした。
 

No.166 08/11/21 22:28
空を見上げて ( ♀ DSIe )

元恋人の誕生日さえ、別れて1年以上も経てば簡単に忘れてしまうものなのか?

離れるためにYの腕から擦り抜けようとするとYが私を抱き締めた。

「何…?!」

手を振り解こうとしながらも、私は抱き締められた体勢で咄嗟に言った。

すると散々煮え切らない態度を通してきたYが耳を疑うような事を口にした。



「S…、俺ともう1度やり直さないか?」




私の目を見てYは確かにそう言った。
 
 
 

No.167 08/11/22 08:07
空を見上げて ( ♀ DSIe )

しかしYの言った言葉は、私が今一番欲しい言葉ではなかった。

Yに対する自分の想いに蓋をした私だが、無意識に行動や言動に好きという気持ちが出ていたからもしれない。

今、Yの腕の中で去年祝える事さえ出来なかった私の24歳の誕生日のリベンジをしたかった。



『おめでとう』と一言言って欲しかった…。



ただそれだけを切望し、それを聞けただけで心が満たされたのに…。その願いはまたも叶わず、皮肉にもYの腕の中で日付が変わった。

今宵は満月が美しい夜、私の25歳の誕生日はこんな形で幕を明けた。
 

No.168 08/11/22 21:58
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私と別れ、元カノとも上手くいかず、現状の寂しさから出た言葉なのか?

酔いに任せて‥?それとも罪悪感から私の想いを無視出来なくなり出た言葉かわからない…。

ただYの言葉はもう私の心に何一つ響かなくなっていた。

私の25歳の誕生日が過ぎて以来、私はYとの連絡を極力避けた。

あれからYとは1度も会っていない。あれが本当に最後となった。



互いに擦れ違い、Yと私は元には戻らなかった…。元に戻れなかった…。
 
 
 

No.169 08/11/23 07:29
空を見上げて ( ♀ DSIe )

それなりに自分の中では理由があった。Yは私に対して大きな過ちを冒し、私はそれに対して許す事が出来なかった。

私と会って数日後に誕生日の件で『本当は覚えていた』なんてメールで言わなければ、もっと違う未来が待っていたかもしれない。

私の器が小さいと思う人もいるだろう。でも小さなズレが大きな歪みになる事だってある。

壊れた物が元に戻らないのと同じ道理というべきか?私は激怒し、怒りに任せて携帯からYのアドレスを削除した。

本当にやり直したい気があるならどんな手を使っても追い掛けてくればいい。だがYは私に何もしてこなかった。

Yが私に本気じゃないのが充分伝わった。同情されたのだ。同情なんて愛情ではない。

バシッ!自分の頬を叩き、気合いを入れた。そう前を見据えて歩くために。
 

No.170 08/11/23 15:20
空を見上げて ( ♀ DSIe )

第二部完結です✏
ここまでのご愛読有難うごさいます🙇

しばらく休憩を挟みますが久々に【ブラックボックス】の話を近日再開させる予定ですのでそちらも宜しくお願いします。

🌱今後の私🌱感想書込板の方ではコメントを頂いた方に今後の話の予告等をそっとお知らせする場合もあります。

意外と必見かもです⁉
🙈キャッ🌟(笑)
 

No.171 08/12/01 08:27
空を見上げて ( ♀ DSIe )

彼氏いない歴1年半以上。当面新しい彼氏を作る気も更々なかった。

「25歳お肌の曲がり角」と言う人もいるが、まだまだイケると思うし、今はお洒落が楽しくて仕方のない年でもあった。

新しい靴やバック、新製品のコスメのチェックや可愛い服を着飾る事が楽しくて仕方のない。小さな事がワクワクした。

新しい就職先は派遣会社からの紹介で派遣社員として入ったのはいいが、社員よりも派遣社員の方が多い職場だったので気楽さがあった。

運良く人間関係にも特に悩む事なく穏やか毎日を過ごしていた。
 

No.172 08/12/01 20:34
空を見上げて ( ♀ DSIe )

派遣の登録をしてから更新が半年を過ぎようとする頃。派遣先で仲良くなった同じ派遣会社から派遣できたIに合コンに誘われた。

Iは私より2つ年上だが、気心の利く友達でもあり先輩でもあった。

この年になって生まれて初めての合コンに戸惑いながらもその誘いに私は快く快諾した。

季節はちょうどバレンタインが過ぎて間もない頃だった。
 

No.173 08/12/02 07:40
空を見上げて ( ♀ DSIe )

誘われてから数日後、
生まれて初めての合コンは会社帰りにする事になった。

I以外にも同じ職場の仲間数人と一緒に待ち合わせ場所に向かった。

Iの大学時代からの友人(男)が、Iの職場のコを誘って合コンしないかという話から今回実現した話を聞かされたのは合コンが始まり、チューハイやビールなどで乾杯した時だった。
 

No.174 08/12/02 18:35
空を見上げて ( ♀ DSIe )

最年長のIを筆頭に27歳から下は22歳までの女性4人に対して、
Iの友人は最年長で先輩にも当たる35歳から下は25歳までの男性4人だった。

Iの友人で職場の先輩の一人でもある今年三十路を迎えるという29歳の男性と私は合コンの席で仲良くなった。

彼氏を作りにきた訳ではないが、興味本位できたこの場所でまさかまた新たな彼氏が出来るとはこの時、夢にも思わなかった。
 

No.175 08/12/03 07:08
空を見上げて ( ♀ DSIe )

合コンとは出会いの場というより、飲み会の場として成立する事が多いと思われる。

だが初対面にも関わらず、インスピレーションというか、合コンの席で仲良くなったMという名前の男性に私は何かを感じた。

もう少し詳しく例えると“この人だ…”という感覚だろうか?

説明不足で申し訳ないが、それはこの小説をご覧の皆様の想像力を働かせて貰いたい。
 

No.176 08/12/03 18:58
空を見上げて ( ♀ DSIe )

正直この新たな出会いから始まる第三部を書くのに私はためらった。

それが少し更新期間が空いた理由の一部でもあるが、これから始まる話はどんどん描写を含め、感情的になってゆく面が多々ある事を事前にお許し頂きたい。

現在に近付いていくこの話を私は時々更新に躊躇してしまう事がある。

過去との対峙は時折苦い思い出も呼び起こすが自分を見つめる大事な作業だと私は思っている。書く事で情緒不安定に陥る事も勿論あるがそれでも頑張って書こうと思う。

何よりこの話の結末を貴方はどう思うのだろう?そして私はどう終わらせるのだろう?そんな事を思いもするが、悔いのない終わり方をしたいものである。 

No.177 08/12/03 23:05
空を見上げて ( ♀ DSIe )

話は脱線したが元に戻り、初めての合コンは先輩や後輩がいたため、
多少の緊張はあったがそれなりに楽しめる事が出来た。

特に楽しめたのは普段見ない態度の職場の仲間達であり、見ているだけでも実に面白かった。

誰の提案か?開催された場所も面白く、
飲んでいる場所は閉ざされた牢獄の中であり、店員の接客や衣装も変わっていた。

薄暗いライトの下、
テーブルに置かれたメニューを見ると品物の名前や実際の品も色んな意味で笑いを誘うものが多かった。

勿論、奇抜さと斬新さの絶妙な組合せがいいのか?客入りも絶える事がなく、初めて訪れる者なら早々厭きはこない場所であろう。
 

No.178 08/12/04 07:21
空を見上げて ( ♀ DSIe )

合コン開始から3時間近くが経過し店を出る時間になった。合コン定番?のメアド交換も皆、思い思いに行い、その後解散となった。

そして皆がそれぞれの家路へと帰ってゆく。私も寄道する事なくすぐに駅のホールへと向かった。

帰路の途中、電車に揺られるとお酒の酔いからか眠気が襲う。座席に座ると電車の揺れが眠りへと誘うような感覚に私は陥った。

携帯などを鞄の中に入れ、鞄を膝の上に置いた形で私は席に掛けていた。

すると膝辺りに揺れを感じ、遠のいた意識から我に返ると、私は数秒程眠っていた事に気付いた。
 

No.179 08/12/04 20:04
空を見上げて ( ♀ DSIe )

慌てて周囲を見渡すと運良く最寄りを通り過ぎていない事に安心した。ほっとした矢先、携帯を確認すると数件メールが届いていた。

Iからは『良い人いた?』いう文章のメールがあり、他は合コンで知り合った人達の社交辞令的な文章のメールであった。

私はとりあえず適当に皆にメールを返信を返した。Iはともかく、合コンで知り合った人達とはこの先付き合いはないとこの時は思っていた。


たった一人を除いては…。
 
 

No.180 08/12/05 06:41
空を見上げて ( ♀ DSIe )

ある事だけを除いては、色んな事がとにかく猛スピードで展開されていった事を今でもよく覚えている。

私自身もここまで早い展開を迎えるだなんて予想だに出来なかった。なんと合コンから一週間後、合コンの時に仲良くなったMと遊園地で遊ぶ事になったのだ。

合コン解散後、帰宅途中にMからもメールを私は貰っていた。他の人と違い、Mだけが私に対しては社交辞令的な言葉を使わなかったのだ。

飾り気のない日常的な話というそのスマートな内容に私はMに話やすさを感じていた。
 

No.181 08/12/05 21:11
空を見上げて ( ♀ DSIe )

今年、誕生日を迎えればMが三十路で私が今年26歳になる。年の差は4つだ。

Mとは年が離れているが、直接話しても不思議と抵抗感を感じず話す事が出来た。それはメールでも変わる事がなかった。

合コンの日を皮切りに何故か毎日メールもするようになっていた。Mは違和感なく私の日常にすんなり馴染む…そんな感じの人と例えれば良いのだろうか?

とにかく最初の第一印象が良かっただけにこの後、幕を開ける波乱に私は悩み、苦しみ、困惑し、憔悴しきる事態へと追い詰められる。

今でも思う事だがあんな事は二度とあって欲しくない。もう懲り懲りだ。
 

No.182 08/12/06 13:56
空を見上げて ( ♀ DSIe )

季節は2月がもう少しで終わりを迎え、次にホワイトデーが近付いてくる頃、私はMと駅で待ち合わせをし、遊園地に向かう事になった。

まさかホントに遊園地に行く事になるなんて思いもしなかった。そもそものキッカケはメールのやり取りで私がある遊園地に行った事がないと言ったのが始まりである。


当然まさかまさかの展開に私は驚いた。
 
 

No.183 08/12/07 19:17
空を見上げて ( ♀ DSIe )

思い起こせばこれがMとの初デートの日になった。今でもよく覚えているが、Mのシチュエーションの中では私にどう告白するかは、この遊園地に来るのが決まった時から決っていたらしかった。

ただやはりそこは番狂わせという言葉も存在する訳で、私の突飛な行動に、その当時のMには想像出来ない事も多かったのは事実である。
 

No.184 08/12/07 21:10
空を見上げて ( ♀ DSIe )

チケットを窓口で買い、遊園地内に入場と遊園地内はまるで何処か異国の国と思わせるような作りになっており、異国の国を散策するような気分で遊園地内の各施設をMと2人で巡る事にした。

私は初めての場所で当然右も左もわからなかったが、Mはこの遊園地に何度か足を運んだ経験がある事から各施設に詳しく、効率良くアトラクションやショーなど様々な催し物を楽しむ事が出来た。
 

No.185 08/12/08 00:35
空を見上げて ( ♀ DSIe )

個人的に会ったのも今回が初めてなのにも関わらず、2人がいきなり向かった場所は遊園地…。

遊園地内に入ったばかりの頃は合コンの時やメールの時とは違い、互いにどういう訳か上手く話す事が出来なかった。

今更ながら互いに緊張もしていたが、ただそれもテーマパークならではの周囲の歓喜や賑いに次第に緊張感もほぐれていったのは言うまでもなかった。
 

No.186 08/12/08 07:28
空を見上げて ( ♀ DSIe )

夜になればこの遊園地ではナイトパレードが開催されるらしい。その話を知ったのは遊園地内にある飲食店でMと軽食を取っていた時だった。

覚えがないだけの可能性も高いが、私はパレードというものも見た事がなかった。パレードには興味があるが、人混みが苦手という理由から極力避けたイベントの1つでもあった。

そのパレードにMが行こうと私に提案してきた。私は初めてきたこの場所に、今度はいつ来れるかもわからないという理由からその提案に乗る事にした。
 

No.187 08/12/08 19:21
空を見上げて ( ♀ DSIe )

ナイトパレードまでにはまだ時間があった。飲食店を出た頃には空は紅く染まり、夕焼け空へと変わっていた。

日中散々遊んだ事がまるで嘘で、私は西の空を見ながら時間の流れが早いような気がしてならなかった。

そんな時、Mと私は食後の散歩と称し、水辺のある所へ向かうと階段になっている所に2人で腰をかけた。時間的にタイミングが良かったのか?夕陽が辺りを照らし、水面に反射すると水辺はキラキラと輝いて見える。

遊園地内の異国のような構造の建物が重なり、また普段見ぬ景色が場のムードを高めゆくのだろう。周辺には所々にその光景を楽しむ者も何人か見受けられた。
 

No.188 08/12/09 07:09
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私も周りに便乗してか?そのムードに少し酔いしれていた。

「綺麗だね、夕陽…」私はポツリと呟いた。

「そうだね…」Mもそう答えてくれた。

ここ(遊園地)でMに告白される事は何故か私の中ではわかっていた。ただまだMは一向にその素振りを見せない。そんなMの態度に私は徐々にやきもきしていた。

「ねぇ、どうして今日ここに連れて来てくれたの?」

私はMに少し意地悪な質問をした。何故かこの場で私はMに告白の催促を促すような発言をしてたのだ。
 

No.189 08/12/11 19:35
空を見上げて ( ♀ DSIe )

主です。皆様更新が少し開いてしまってスイマセン…😔

メインを余所に違う話だけ何故更新してるんだ!と機嫌を損ねた方がもしおられるなら皆様…本当にスイマセン😔

身勝手かもしれませんが気長に待って貰えれば今は凄く助かります。その理由も元々ここで書く予定でした。

でも本当にこのまま続けていっても良いのか?と今はそれすら迷い始めているのが現状です…。そんな気持ちのままで書くぐらいなら、新たに気持ちを整理した上で書くという事だけに取り組みたかったのも事実です。だから少し時間を置いていました😔

支離滅裂な話かもしれませんが、皆様に私の今の現状を伝えた方が良いと思い、この文章を書きました😔
 

No.190 08/12/14 18:22
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私は自分の言葉にハッとした。ただもう口から出た言葉に訂正は利かなくなっていた。

後頭部を少し困ったように掻いた後、Mは私の顔を真剣に見据えたとこう言った。

「俺と良かったら付き合ってくれませんか?」

その頃、夕陽は地平線に半分隠れた状態になっていた。
 

No.191 08/12/14 20:13
空を見上げて ( ♀ DSIe )

夕陽はどんどん地平線へと沈んでゆく。そんな夕陽とは逆に私の想いは加速していった。

「私で良ければ…」

私は照れくさそうにそう言うと私もMの顔を見据えた。

周辺にいた人々はそろそろ場所の移動を開始する。夕陽が沈めば用はないといった感じだろうか?夜になれば季節的にもまだ冷え込むのでその場にじっといても仕方がない。
 

No.192 08/12/14 21:29
空を見上げて ( ♀ DSIe )

だが人気が少なくなった場所にMと私はまだその場所にいた。

しばし見つめ合うとMと私は当然のような自然な流れで口を重ねた…。

口を重ねると共に日は沈み、辺りは夜へ変わってゆく…。

闇に溶け込むように伸びた影がライトに照らされ、2人の陰影もまた重なっていった。
 

No.193 08/12/15 03:10
空を見上げて ( ♀ DSIe )

この後、ようやく自然に手も繋げるようになり、繋いだ手のまま待っていたナイトパレードを鑑賞する事となった。

夜の闇を照らすライトが色とりどりに眩しく光り、華やかなパレードの世界に人々の現実という世界を瞬間に忘れさせてゆく。

人工的な光りであれど、人の手で作り上げた幻想的な世界はとても美しかった。

その中、パレードのフィナーレに花火が数発打ち上げられる。

時折、花火の硝煙により折角の花火が見づらくなる事もあったが、寒い夜に打ち上げられる花火もそれはそれで良い味を醸し出していた。
 

No.194 08/12/15 07:26
空を見上げて ( ♀ DSIe )

今現在、私が25歳だった2月から3月に掛けての話を進めているが、話を少し戻し、この年の新春を迎えた頃にあえて戻る事にする。

実は合コンの話が出る前の話なのだが、学生時代の友人と2人で私はとある縁結びで有名な神社に初詣に来ていた。

その時、縁結びで有名な事から御利益があると信じていた友人の真似をして、そこで私も縁結びの御守を購入にする事にした。
 

No.195 08/12/15 20:04
空を見上げて ( ♀ DSIe )

縁結びの祈願についてだが恋愛成就だったり、
人と人との繋り(人間関係)の上での縁結びだったり様々な縁があるだろう。

恋愛面での淡い願いも私の中で少なからずあったが、次の就職先に縁があるようにという願いの方が強かったため、就職祈願にと購入したこの御守をこの日から肌身離さず持ち歩く事にした。
 

No.196 08/12/16 08:06
空を見上げて ( ♀ DSIe )

話を戻し、遊園地のデートから2日後。
この日は平日に当たり、Mと私は仕事帰りに落ち合う約束をしていた。

当然、時間も時間という事もあり、短い時間の中でのデートである。

待ち合わせた後、即居酒屋に向かい、仕事帰りに一杯のビールで乾杯。
「はぁ~~‥‥」
2人揃って同じ言葉が出て共に笑い合う。

一時を旨い物を食べて談笑しながら楽しみ、その後、後は帰るだけだと私は思っていた。 

No.197 08/12/16 19:48
空を見上げて ( ♀ DSIe )

この日に聞かされた事であるが、Mは酒の肴に私に告白しようとした計画をここで初めて教えてくれた。

ビールを一口含みMは言った。「実は遊園地の時の告白だけど…」私の向かいに座っていたMは悪戯な笑みを浮べると更に話を続ける。

「ナイトパレードあったでしょ?」居酒屋のテーブルに頬杖をつく体勢で私はMの話を聞き入れていた。そしてMの話に相槌を打つ。

「じゃあもうわかるよね?」「一番その時の思い出になるかなって考えてて」普段から鈍い私も流石に気付く事が出来た。

“ナイトパレードという最高の場面でか!”とその場でようやく気付き、2人で顔を見合わせると照れ笑いした。
 

No.198 08/12/16 20:56
空を見上げて ( ♀ DSIe )

平日なので互いにそんなに大した量のお酒は飲んでいない。意識もそれなりにしっかりしていた。

楽しい食事の時間はあっという間に過ぎ食事後、店を出ようとする間際にMがこう言った。


「一緒にまだ居たい…」


私はドキッとした。まだその時期ではないだろうという気持ちが素早く過ぎる。合コンから知り合って1週間、付き合ってからまだ3日目である。

いくらなんでもまだ早い。そんな軽い女に見られたくないという気持ちも同時に高まってゆく…。
 

No.199 08/12/17 19:19
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「明日また仕事もあるし、他の店も締まり始めるよ?」

Mの言葉の意味を察したが気付かない振りをし、見当違いの言葉を私は言った。これで察して欲しいという願いもあった。

「‥‥ダメ?」

しかし無情にも願い叶わず、更に深くMは言う。万事休すというべきか、付き合い始めの駆け引きはそれはそれで難しい。また付き合う前とも違う難しさがそこにあった。

私は言葉を詰らせ瞬時に悩み込んだ。

「まだ日が浅いし‥‥」

渋々言いたくなかった言葉を私は切札にしてみる。試されているのだろうか?これを断ったらすぐに別れを告げられるような気がしてならなかった。
 

No.200 08/12/18 21:51
空を見上げて ( ♀ DSIe )

悩みに悩みながらも私はMに身体を許してしまった。

その気持ちの強さが伝わったのか?いざという場面になってMは役に立たなかった。

暗闇の中ではあるが肌を見られ、込み上げる恥ずかしがありつつも私は心底安心した。


結局結ばれたのはそれから一か月先の事であった。
 
 

No.201 08/12/19 07:31
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私は正月時に購入した縁結びの御守に密かに願掛けをしていた。

普通願掛けとは願いが叶うまで何か(自分の好物など)を絶つ事が主流だと思うが私の場合は少し違った形を取っていた。

願掛け中の頃は誰にもその願いを明かせなかったが、願いが叶った今なら明かせられる。

願いは2つ。その内1つを話す事にしよう。 

No.202 08/12/19 14:16
空を見上げて ( ♀ DSIe )

それは恋愛方面である。もし次に恋人が出来たらどんな事があっても1年は付き合い続けると、固く自分の中で誓いを込めていた。

私は人との別れを経験し、別れた後の1年半以上臆病になった。考えも後ろ向きで、付き合いが1年すら満たない恋愛しか出来ないのは自分に原因があるのだと悩んでいた。

だが自分が努力する事で1年以上、人と付き合う事が出来れば、今後自分の自信に繋がるとその頃の私は信じて疑わなかった。
 

No.203 08/12/19 17:16
空を見上げて ( ♀ DSIe )

期間は1年。
とにかく私はこの1年を耐え抜いた。自分でもよくやったと思っている。

その当時、同じ派遣仲間で友人でもあったIには本当にMの件で相談に乗って貰い、相談する度に

「信じれない」
「別れた方がいいよ」

という言葉がIの定番台詞になった程だ。
ただIにも言えなかった事をここだけで書こうと思っている。
 

No.204 08/12/19 19:17
空を見上げて ( ♀ DSIe )

25歳の春、付き合って2か月になる頃までは本当に順調だった。ただ幸せを感じる穏やな日が続いていた。

ただ更に2か月が過ぎてからMの態度は豹変してゆく。季節は夏を迎えようとしていた頃である。

誰もが些細だと感じる出来事がMの琴線に触れた。その時、私に今まで見せなかったMのもう一つの顔が現れた。

元々繊細で掴みにくい性格だな…っと薄々感じ始めていた矢先の出来事だった。
 

No.205 08/12/20 05:46
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Mと会っていた殆どの日は休日だった。

互いの仕事の休みが同じだったためその方が私も都合も良かった。

休日の日は私なりに元々Mに気を遣っていた部分が結構あった。
 

No.206 08/12/20 08:13
空を見上げて ( ♀ DSIe )

自分の仕事の事は勿論、Mの仕事の事も極力聞かないようにしていた。

理由は簡単だ。
折角の休日、日頃のストレスを発散させるために骨休めをしている最中に仕事の話なんて話したくもないだろうと思っていたからだ。

“無粋な真似だ”と思って気を利かせた事が逆に仇となってしまった事に、Mが怒りを表すまで私は気付けなかった。
 

No.207 08/12/20 11:04
空を見上げて ( ♀ DSIe )

両手を掴まれ、ベッドに押し倒される形で私は倒れた。いつも違う扱いに私は戸惑った。

「俺の事、ホントは興味ないんだろう?」

湿度が高くジメジメした暑い日の夜、Mと私はいつものように休日の日中に会ってデートをし、今はホテルの中にいた。
 

No.208 08/12/20 12:54
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「何?どうしたの??」

Mの言う言葉がいきなり過ぎて何を言っているか私は本当にわからなかった。

「普通、俺の仕事の事とか身体の心配をなんでしてくれないの?」

掴んだ私の手首に向かって、Mは徐々に力を込めて握ってゆく。
 

No.209 08/12/20 17:49
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「いっ…痛いよ!ちゃんと答えるから離して!」

私はベッドの上で身体を捩り、腕を払い除けようと荒がいた。

「俺、お前に遊ばれたんだよな?」「お前さ、俺の金目当てだったんだろ?」

それでもMは私の腕を離さず、私に向かい信じられない事を怒りに任せて言い出した。
 

No.210 08/12/21 10:01
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「何言ってるの?私がそんな奴に見えるッ!?」

「俺には見えるよ…」

その言葉を言った途端、無理矢理Mは私を抱き始めようとした。

その時、さっきまで掴まれ手が緩む。そして気が付くと私はMの顔をはたいていた。





…今でもあの時のMの冷たい顔とその言葉を私は忘れられずにいる。
 
 
 
 
 

No.211 08/12/21 12:17
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Mの頬に平手打ちするとMは私を抱き始める事を止め、私をベッドから突き飛ばした。


ガタンッ


「‥‥ッ!」


突き飛ばされた拍子に壁に背を打ち、私は少し蹲った形になった。

その時、Mはベッドから立ち上がり、私の元に近付くと数枚の札を私に向かい投げ付けてきた。
 
 

No.212 08/12/21 20:57
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私の目の前で札が舞う。


「やる気も失せたし、それで足りるだろ?」

「釣りやるから後払っててよ」

その言葉を残し、Mは私を残して外に出ようとした。

目の前で札が舞う…、その瞬間での出来事だったかもしれないが、私の中では限り無くスローモーションで札が舞ったように見えていた。
 

No.213 08/12/22 07:15
空を見上げて ( ♀ DSIe )

休日の醍醐味でもある楽しいデートのはずが、まるで天国から地獄へ突き落とされるようなそんな感覚を覚えた。

“何故私はここまで言われないといけない?”

“何故こんな扱いを受けないといけない?”

心の中でそう思うと私はMの後を直ぐさま追い、ドアに向かった。

料金を払う機械がドアの近くに設置されていないため、オートロックではなく鍵さえ開ければドアは簡単に開く。

今いるこのホテルは受付の所で料金を払うそんなシステムだ。そしてMは既にドアノブに手を掛け開けようとする寸前だった。

「‥‥待ってよ!」
そんな中、ドアを開けようとする寸前で私は背後から慌ててMの服を掴んだ。
 

No.214 08/12/22 19:22
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Mは不機嫌な顔で振り返り私を見る。

「こんな一方的なの納得出来ないよ!」

「ちゃんと話し合おうよ!」

私は必死になっていた。なんとかこの日はどうにか無事に収まる事が出来た。しかし本格的に夏の到来とともにまたも同じような事が起きてしまった。
 

No.215 08/12/23 08:12
空を見上げて ( ♀ DSIe )

その日はとても耳障りなぐらい蝉が喧しく鳴き、あまりの暑さに外に出るのも億劫になった。こんな季節に私は生まれた。

そんな季節の夏、花火大会に向かうべくMと2人で郊外に出た。Mの車に乗ると、車を走らせ花火会場に向かう。

いい場所で見るためには数時間前から場所を確保しなくてはならなかった。
 

No.216 08/12/23 11:15
空を見上げて ( ♀ DSIe )

『現地に到着したらまずは場所取りに向かう』とMと事前に私はメールで打ち合わせをしていたが、実際にはその予定と異なる形となった。

Mが運転する車内で他愛もない事を互いに言い合い、笑い合ったのも束の間でMの顔がまた曇り始めつつあった。
 

No.217 08/12/23 13:07
空を見上げて ( ♀ DSIe )

助手席に座っていた私はすぐにMの機嫌が悪くなりつつあるのに気付き、


“また私何かしたか?”


と内心思うものの、自分に思い当たるフシもなく、私はその事を口には出さずにいた。

ふと前方を見ると前方から車が連なり、どうやら渋滞に巻き込まれようだ。Mの機嫌が悪くなったのは渋滞のせいだとわかると私は胸を撫で下ろした。
 

No.218 08/12/23 18:36
空を見上げて ( ♀ DSIe )

長い列が続き、車はなかなか進まない。Uターンするにも後ろにも車の列は続き、Mの車は板挟み状態だった。

どうやら工事中のようで交通規制がかかっているのか、とにかくスムーズには車が進められなかった。

車内ではラジオを掛けていたのでいくらか気が紛らわす事が出来たが、時間が長引くとそれも効力が半減する。

話す会話も途切れ始めたその時、Mがスピーカーのボリュームを突然上げ出した。
 

No.219 08/12/23 22:04
空を見上げて ( ♀ DSIe )

…ッ!…ッ!…ッ!!


激しい音に耳が痛く、
私の心臓はビックリした。Mは平気な顔で前を見ている。

「ちょ…っ…」

あまりの音に私の声は書き消された。当然、Mの耳には私の声は届いていない。私は堪り兼ねてボリュームを下げた。

「いきなりビックリするでしょ!」

音を下げた事でようやく私の声がMに届く。
Mは露骨に舌打ちするとこう言った。

「最近調子乗ってない?自分?」「何様な訳?」

“またこのパターンか”と私は思った。
そして車内の場は凍り付き、冷戦体勢となった。 

No.220 08/12/24 07:32
空を見上げて ( ♀ DSIe )

こんな狭い場で喧嘩しても分が悪いのは私の方だ。私はMの暴言を現地に着くまで堪える事にした。

Mの機嫌が収まるまで私は無言を押し通そうとした。だが火が付いてしまったMの暴言は止まらない。

「自分の都合が悪ければ無視ですか?」
「人の話聞けよ、お前」

こんな調子で色んな言葉が飛び交い続ける。その時、私の中で異変が起き始めていた。
 

No.221 08/12/24 08:19
空を見上げて ( ♀ DSIe )

始めはギュッと締め付けられるような胸の痛みがあった。

それをなんとか堪えていると今度はどんどんなんだか息苦しくなってゆく。私は必死になって息を吸おうした。

時折、自分にしか聞こえない程の小さな音が喉元でヒューヒューと鳴っている。

そんな状況下の中で、ようやく長かった車での移動も終わりを告げる。目の前には屋外の駐車場が目前だった。 

No.222 09/01/01 21:32
空を見上げて ( ♀ DSIe )

屋外駐車場に着くなり、私は車からすぐに離れようとした。急いで車のドアを開ける。密室の中、Mとこれ以上いるのが耐えられなくなっていた。

だがそんな自分の気持ちとは裏腹に、私の身体は車から出ると地面に崩れ落ちてしまった。Mは不機嫌ながらも反対のドアから車を出た後、そんな私の元へ近付いてきた。

「車酔いしたのか?」

一応心配する素振りは見せるものの、まだ機嫌が悪いのか?Mの口調は少し荒々しさが残ったままだった。 

No.223 09/01/02 04:07
空を見上げて ( ♀ DSIe )

ぎこちない形ではあったが、Mは私の腕を掴むと私を立ち上がらせようとした。

身体に力が入らない私は、まるで操り人形のような形でMの手により立たされようとしていたが、Mは途中で私を立たすのを諦めた。

そしてまた私は地面にゆっくり崩れるようにしゃがみ込む。

そんな状態の中、やっとの思いでMを見ようとした時にはMの姿は遥か前方で私の目からは小さく映る程、既に遠く離れた距離にいた。

“こんな状態の私を置いていくんだ…”と思うものの、動く事も声を出す事も出来ず、そのままずっと私はその場にしゃがみ込んだままだった。
 

No.224 09/01/03 00:09
空を見上げて ( ♀ DSIe )

ほんの一瞬気を失いそうになった時、偶然にも私の異変に気付いてくれた通りすがり女性が私の側にやってきた。

「ちょっとどうしたの?大丈夫?!」

女性は私より年上で中年層ぐらいの人だ。だが、女性の問いにも私は声を出す事が出来ずにいた。

息が思うように出来ず、どんどん苦しさばかりが増してゆく。

そんな時、通りすがりの女性は持っていた鞄から袋を出すなり、私の口元に押さえ始めた。
 

No.225 09/01/03 19:36
空を見上げて ( ♀ DSIe )

突然の女性の行動に私は驚いたが、助けられているのには変わりはない。私はただ女性の指示に従った。

「袋の中でゆっくり息吸ってごらん」
「大丈夫、落ち着いて大丈夫よ」

と優しい声で女性は私に言い聞かせるように言った。

この時は自分でも自分の状態を認識する事が出来ず、それから数日経過した後に、あるテレビ番組の特集で自分の症状に気付く事になった。
 

No.226 09/01/04 07:35
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私自身、ストレスからくる心因性の過呼吸になるとは当時は夢にも思わなかった。

女性のお陰でしばらくすると次第呼吸もスムーズになった。

ようやく声も出るようになると私は女性に感謝の気持ちを伝えた。 

No.227 09/01/04 21:56
空を見上げて ( ♀ DSIe )

その後女性が去り、他にも幾多の人が私の前を通り過ぎた。私はというとMの車の横でただただじっとしていた。

Mを待っていた訳ではないが、帰ろうにもどう帰ろうかと思案している最中だった。

女性が去ってしばらくした後、Mがジュースを片手に戻ってきた。

「待たせたか?飲み物買ってきた」

どうやら車酔いをしたのだと勘違いしたまま、Mは私に冷たい物を飲ませようと缶ジュースを買いに行ったらしかった。
 

No.228 09/01/05 08:10
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Mから缶ジュースを受け取るととりあえず一口口にした。

Mに自分の怒りをぶつけようとするフツフツとした感情の乱れはあったが、私は怒りを鎮火させるように、黙ったまま黙々のジュースを飲み続けた。

花火大会については良い場所を確保する事が出来、眺めの良い場所で夜空に見事に咲き乱れる大輪の華を見る事が出来たが、その鮮やかな花火とは逆に、私の心の中は不発に終わった爆弾が残ったままとなった。


ここまでがIにも話していない事である。
 
 

No.229 09/01/06 00:48
空を見上げて ( ♀ DSIe )

因みにこの拙い小説内では度々誕生日の話を登場させているが、
私の26歳の誕生日の日は散々なもので、誕生日にも関わらずロクな思い出が正直ない。

今まで私が生きてきた中で歴代のワースト1である。極端な言い方をすると私の中では人生の汚点とも言ってもいい。

誕生日当日もそうだったが、Mが豹変してからというもの、毎月のように別れ話が頻繁に出るようになった。
 

No.230 09/01/06 07:11
空を見上げて ( ♀ DSIe )

別れ話が度々出ると正直心身共にどっと疲れた。

別れるという事にエネルギーが注がれる訳だが、それはマイナスの力が強く働く訳だ。

マイナスの力に引かれるように仕事面でもこの頃から上手くいかなくなっていた。

すんなり別れられたらどれだけ楽になれただろう。

何故別れ話がこんなに頻繁に出るのに別れなれないのか、私自身ですらわからなくなっていた。
 

No.231 09/01/06 20:42
空を見上げて ( ♀ DSIe )

何度も別れ話が度重なっていたが、私はMと別れる事が出来ずにいた。

更にこの頃の私は悩みも頂点に達し、ノイローゼになっていた。

仕事も上手くいかず、恋愛ですら上手くいかない。ストレスで過呼吸になる頻度も増えつつあった。
 

No.232 09/01/06 22:19
空を見上げて ( ♀ DSIe )

身体に変調がきたのはそれだけに止まらず、原因不明の湿疹にも悩まされ、湿疹による痒みで睡眠不足にも陥る事が度々あった。

病院にも通うようになり、薬漬けのような毎日に嫌気が差した。

実際にはしていないが、“病院で処方された睡眠薬を全て飲んでしまおうか…”などとバカな事をよく考えていたもんだ。
 

No.233 09/01/07 13:00
空を見上げて ( ♀ DSIe )

花火大会以降、まともに仕事が出来なくなった私は派遣の契約を1年で打ち切る事にした。

仕事を辞めてからしばらくは身体の休息に時間を当て、一か月が過ぎようとする夏の終わり頃から就活始めた。幸い秋頃には就職が決まり、今度は社員として働く事になった。

派遣の頃はデザイン用のソフトが数多くなく、折角スクールで習ったソフトもあまり使えずにいたが、今度の職場は私がスクールで習ったソフト全てが使える環境が整っていた。 

No.234 09/01/07 19:26
空を見上げて ( ♀ DSIe )

気になっている方がいるのかも不明であるが、派遣の頃の仕事と社員になってからの仕事内容を当たり障りない程度に触れようと思う。

派遣の頃はとあるサイトの制作を手掛けていた訳だが、これについては自分がしたかった事と若干ズレた事をしていた。

寧ろ社員になってからの仕事の方が自分がずっとしたかった事で、チラシやパンフレットなどの制作を主な生業とした。
 

No.235 09/01/08 06:19
空を見上げて ( ♀ DSIe )

次の仕事も決まり、それから数か月が過ぎた日の事だが、季節は新年を迎えた真冬の頃。

吐く息は白く、風は凍り付くように冷たく、
あまりの寒さに心臓が止まるのでは!?と思わず思ってしまう程の時期だった。

以前、就職祈願にと購入した縁結びの御守については有難い事に就職面での願いが叶い、
あとは恋愛での願掛けのみとなった。

そんな時、私は派遣時代の仲間Iから連絡を受けた。
 

No.236 09/01/08 20:28
空を見上げて ( ♀ DSIe )

1月の中旬頃だっただろうか?連絡はよくしていたが、派遣を辞めてからIと会うのは数か月振りであった。

Iとメールでバーに行こうという事になり、
Iと2人で久々に夜の街に出た。


この頃、Mの中で何かが変化しつつあった。


だがそんな事など露知らず、私は“春が来たら絶対今度こそ別れる!”という決意を胸に息巻いていた。
 

No.237 09/01/09 06:53
空を見上げて ( ♀ DSIe )

バーに着くとカウンターに腰を掛けた。Iは出だしからカルアミルクを頼み、私はジンライムを注文する。

オーダーが通され、お目当てのものがくるとまずは再会を祝して軽く乾杯した。アルコールが喉に通ると互いに気も緩む。

「早いもので私、今年27歳になるよ~」

「何言ってる?まだ若いじゃん!私なんで20代最後よ!」

なんて言いつつ、Iと2人でお酒を嗜みながら話に花を咲かせていった。
 

No.238 09/01/10 22:58
空を見上げて ( ♀ DSIe )

微酔い気分でバーから出ると駅に向かってIと2人で歩き始めた。

「あれ?ちょっとS!」

帰路の途中、Iが私を呼び、ある店の方向に向かい指を差す。

「ん~?」

何か面白い物でも見つけたのかと思い、Iの言う店に私は視線を向けた。

「はぁ…?!」

間抜けな声を上げ、そしてある光景に私は目を疑った。
 

No.239 09/01/13 07:18
空を見上げて ( ♀ DSIe )

ある居酒屋の店裏で、Mが居酒屋の従業員の格好をして、何か荷物を運んでる最中だった。

距離が少し離れていたのと、店の近くに止められたトラックが運良く死角となり、Mは私とIがいる事に気付いていない。

確かMはメーカー勤務のはずだ。何故こんな所で働いているのか、私には皆目検討がつかなかった。

この後、無事に駅に着いたのはいいが、見てはいけないものを見たような気まずさに微酔い気分は冷め、Iとは後味の悪い形でのその日は別れた。
 

No.240 09/01/13 07:50
空を見上げて ( ♀ DSIe )

Iと別れてから更に日数だけが経ち、気が付けば春はもうそこまでやっていた。季節は出会いと別れが交差する卒業式のシーズンである。

そういえば最近になってMとデートの回数が少くなり、会う時間も短くなったような気がする。

別れ話が毎月出れば自然とそうなってもおかしくない。自然消滅でもこの際いいと思ったが、私は何故かMの行動を次第に気になり始めていた。 
 

No.241 09/01/13 20:58
空を見上げて ( ♀ DSIe )

目撃した居酒屋の件については生憎、私には調べる術がない。何よりMにも聞けずじまいだ。

まさか私の知らない所で、実は会社を辞めたのだろうか?別れ話が頻繁に出るようになってからは、互いにじっくり話す機会さえなくなりつつあった。

あまりMと話さなくなったのは“また別れ話だったらどうしよう?”などと私から避けていた部分もある。

自分が傷付くのが怖くて要は【聞く事も言う事もせず逃げていた】のである。これがすぐに別れる事が出来なかった理由にも繋がった訳だ。

人は嫌な事があると逃げたくなる。楽になりたいから逃げる。傷付きたくないから逃げる。理由はどうであれ、逃げてばかりだとなんの解決策にもならないのだ。
 

No.242 09/01/13 21:13
空を見上げて ( ♀ DSIe )

私は何故別れ話が出るのか、Mからちゃんとした理由を一度も聞こうとしなかった。

自分から別れ話をした時は、嫌な事は聞きたくない、ただ楽になりたい一心だった。

Mとはちゃんと話をしよう。私の思っている事もちゃんと話そう。何も言わずに終わって後悔だけが残るのは嫌だ。

時間もかかり、なかなか前に踏み込めずにいたが、ようやく私の中で決心がついた。

そして待ち望んだ日が…遂にこの日がやってきた。Mと付き合い始めてようやく1年を迎えた。

私にとっては長く、
とにかく長く感じた1年だった。
 

No.243 09/01/13 21:21
空を見上げて ( ♀ DSIe )

この日、桜を見るためにMと2人で花見をしに遠方に出掛けた。

お目当ての場所は言わずと知れた桜の人気スポットだ。流石、人気があるだけある。咲き誇る桜は独特の風情があり、とても美しい。

桜並木が続くメインストリートは大勢の花見客に溢れ、人波も凄いかった。桜に見取れる者や撮影をする者、そんな人達がとにかく多いので、道を進むにも思うように進めないのは無論である。

一方、Mと私は桜並木から少し外れたモダンな雰囲気の喫茶店で、休憩がてらにお茶をしていた。そしてこの店で本格的な話が始まった。
 

No.244 09/01/14 07:16
空を見上げて ( ♀ DSIe )

注文したホットコーヒーくるとMと私は同じ飲物を軽く口に含む。

店は観光客や花見客で賑わっていたが店の中にも関わらず、私は臆する事なく開口一番をこう口にした。

「あのね、なんで別れたいと思ったの?」

あまりにストレートな私の言葉だったがMも躊躇がない。

「別れたいからだよ」

この言葉に私はダメージを受けたが、怯んではダメだ。

「何故別れたいの?今日こそちゃんと話したいの。私に何か欠点でもあった?」

私の踏み込んだ問いにMは首を左右に振り即答した。

「Sに欠点なんてないよ。寧ろ俺に欠点があるんだよ」

私は目を丸くした。Mの欠点ってなんだろう?彼に悩みがあっただなんて知りもしなかった。
 

No.245 09/01/14 19:51
空を見上げて ( ♀ DSIe )

コーヒーカップを両手で包み込む手に無意識に力が入る。

「もしかしてそれ(欠点)が、別れ話に繋がる原因だったりするの?」

私は更に深く聞く事にした。私を一瞬見たかと思うとコーヒーを少し飲み、Mは頷いた。

窓際の席に座ったのはいいが、陽の光が逆光し、Mを照らすがその表情は読取りづらい。

だが、踏み込まないと同じ事(別れ話)の繰り返しになってしまう。人と関われば、いずれ波(衝突)が起きるのは当たり前の事なのだ。

今まで入った事のない領域に入らなければ2人の更に強い絆は生まれない。ここで逃げれば、これ以上歩む事もないのだ。
 

No.246 09/01/14 19:54
空を見上げて ( ♀ DSIe )

ここでいつものMなら暴言を吐く所だが、この日ばかりは流石に違った。

「俺、以前女に裏切られた事がある…」

次の言葉が出るまでに多少の間はあったがMが話始めた。私は傍らでただ静かに耳を傾けた。

「Sと知り合えて嬉しかったけど、前の事を思い出すと怖くなった」

「また裏切られるんじゃないかと思うと…Sは悪くないに…俺は…」

声にどんどん覇気がなくなってゆくM。そしてただ見ている私。この時、“怖い”と感じいたのは自分だけじゃないんだと思った。

Mを見ていると鏡に映った自分を見ているようだった。
 

No.247 09/01/14 20:01
空を見上げて ( ♀ DSIe )

どんなに恋をしてもその出会いに寄って、プラスにもマイナスにもなる。私にも苦い思い出があるが、それはMも同じみたいだった。

2人の欠点を上げるならば、過去の恋愛で自信を喪失した私。以前付き合っていた人の裏切りで、自分を守るために過剰防衛するしかなかったMといった感じだろうか?

こんな2人が出会ったのは何かの縁なのか?どんどん暗い話しかしなくなるMを見ていたが、気付けば私はそんなMを余所に笑ってしまっていた。
 

No.248 09/01/14 21:38
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「俺、真剣に話してるんだけど何が面白いの?」

笑った私を見てMは少しムッとした顔したが、私は左右に手をヒラヒラさせながらMの言葉を遮った。

「散々別れ話ばかりで辛くて泣いたし、私も何度も別れたいって思ってたけど‥‥」

喫茶店に入ってからMは暗い言葉ばかりで、後ろ向きな発言しかしていなかったが、その言葉の端々に愛されているんだなと感じる煌めくものがあった。

きっと私にしか気付かない小さな煌めきのカケラだ。

「こんなに捻くれた愛され方されたの初めてだよ!」

とMに向かい私はとりあえずそこで言葉を結んだ。
 

No.249 09/01/15 08:09
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「S、俺の話ちゃんと聞いてたか?」

私の予想外の言葉に、Mは不意を突かれたような顔した。

「聞いてたよ、簡潔に言うと好きって事だよね?」

Mとは逆に私の声には張りがあった。こんな瀬戸際でまさか自分に自信が生まれるとは誰が予想するだろう?私ですら驚きだ。

Mはしばらく黙ってしまったが最後に私はMに問う事にした。

ここで勇気を持って素直な気持ちを出さないともう2人が歩む事はないだろう。私にすれば最後のカケと言ってもいい。

私は笑うのを止め、真剣なまなざしでMを見た。
 

No.250 09/01/15 19:03
空を見上げて ( ♀ DSIe )

「これが最後だよ、Mは私と今後どうしたい?」

「それは‥‥」

一瞬言葉が止まったが、Mは私の気持ちに気付いたのか、私に向かって手を差し出してきた。

「俺とまだ一緒にいてくれるか?」

その言葉に頷くと、
私は差し出された手を握り締めた。

その後、店を出た私達は桜の木の下で互いの気持ちを確かめ合うように抱き締め合った。




空を見上げると、まるで紙吹雪のように舞い散る桜の花びらが、Mと今後の私に幸あれと祝福しているように思えた春の日の出来事で、今はこの話を終える事にしよう。




END
 
 
 
 

No.251 09/01/15 19:06
空を見上げて ( ♀ DSIe )

あとがき📖✏


長い間有難うございました。如何だったでしょうか?

🌱今後の私🌱感想書込板のスレッドもあるので感想頂けると嬉しいです😃
 
 

No.252 09/01/16 19:01
空を見上げて ( ♀ DSIe )

一身上の都合により、閉鎖します。長い間有難うござました。

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