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ツクヨミ( DdUN )
08/03/23 04:05(更新日時)

大学生五人が廃墟へ行く事になった。老婆の幽霊を撮影するために…

武志

政人
麻子
香奈

この五人に一体何が起こるのか…。

No.925706 08/02/10 02:56(スレ作成日時)

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No.51 08/02/17 20:51
ツクヨミ ( DdUN )

「行くわよ!麻子!」
香奈は振り絞るように声を発した!
「あ…足が動かない」
完全に身体の制御と心の信号が交差できず、麻子はうろたえていた。

「麻子!早く!」

香奈は麻子の腕を引っ張り、強引に動かせた。

「武志が死んじゃう!」
麻子はすでにグシャグシャに泣いていた。

香奈も一瞬胸が苦しくなるが、何も言わずに麻子を力強く引っ張る。

No.52 08/02/17 21:00
ツクヨミ ( DdUN )

小太りの男が中腰になった瞬間だった。
素早く忍びよった武志は消火器を振り下ろす!
(死ね!!)
19年の月日の中で、本気で人への殺意に満たされた瞬間だった。

「ガッ!!」

鈍い音と共に小太りの男は倒れ込む。

「テメー!!」

背の高い男は拳銃を武志に向け発砲した!

「ダン!!」

No.53 08/02/17 21:21
ツクヨミ ( DdUN )

武志と男は殺意が全身を支配していた。心境は全く同じ、目の前の相手を殺す事に無我夢中になる
背の高い男が発砲した弾丸は、武志の左肩を貫く
武志は体当たりして、相手の右腕を掴む。拳銃が目の前で閃光を放つ。

「ダン!」

弾丸が窓に当たり、バリンと割れる。

男は武志を殴り、殴り、殴った。

No.54 08/02/17 21:42
ツクヨミ ( DdUN )

3階の階段を下り始めようとした香奈と麻子は、発砲音と乱闘の音を聞いた。そして、武志が逃げる余裕の無い事を悟る。
逃げるのか?助けに向かうのか?瞬時に迷う…。
「武志…」
「香奈!武志を置いて逃げれない…」

香奈は数秒考え込み、麻子と目を合わせて言った
「行こう!」
一欠けらの勇気を振り絞り、二人は武志の元へ駆け出した。

No.55 08/02/17 22:14
ツクヨミ ( DdUN )

武志は左目に血が入り、視界が狭まる。

拳銃を持つ男の右腕を両手でしっかり掴むと、床の出っ張りに叩きつけた「ガッ!」

拳銃と男の手が離れると即座に首を絞める。

男は脇から武志の顔面に拳を叩きつける。
「ゴッ!」

だが、直撃を回避し手の力を緩めない。

男の顔は苦痛に歪み、目は血走る。そして、武志をなおも殴る。
「ガコッ」

武志の横面に直撃する。「ガッ!」
手の力は緩み、吹き飛ばされる。

その時、麻子と香奈が視界に入った。
(え?!)

No.56 08/02/17 22:30
ツクヨミ ( DdUN )

今度は男が武志の首を絞める。男は完全に息が上がっていて、武志は息ができない。

男は我を忘れ、殺しの快楽を味わい始める。

意識を失いかける武志は拳銃を足で蹴り飛ばし、床を滑らせる。

(撃て!)
武志は心で叫ぶ。

香奈は拳銃を拾うと、ぶるぶると震える手で構える。

「ダン!」

至近距離から発射された弾丸は、男の胸と武志の心臓を貫いた。

No.57 08/02/17 22:57
ツクヨミ ( DdUN )

男は武志に覆い被さるように倒れ込む。武志は目を見開き、その目線は天井を真っ直ぐ見つめていた。

麻子は香奈の後ろで力無く崩れ落ちる。
香奈は茫然と立ちつくしたまま、武志を殺してしまった事に後悔した。

やがて自責の念が肥大し、精神がガラスを割ったように壊れる。

「麻子ごめん…あんたの彼氏まで殺しちゃった」
泣き崩れる麻子は返答できない。

香奈は拳銃を自分のこめかみに向ける。

「武志…麻子…ごめんね…」

「香奈やめて!!」






「ダンッ!」

麻子の顔に血しぶきが飛び散った―

No.58 08/02/17 23:24
ツクヨミ ( DdUN )

――エピローグ――

テレビに廃病院が映し出されていた。
「こちらは凄惨な事件現場です」
「4人の大学生と麻薬密売の犯人2人、身元不明の遺体、計7体の遺体が発見されました」
「またこの建物へ続く山道にも、大学生1人の遺体が発見され―」

おやつを食べながら、二人の看護婦がテレビに見入っていた。

「この事件よ!これこれ!503号室の患者さんってこの事件の生き残りのお嬢さんらしいわよ」

「重度のPTSDを患っているって話しよ」

「どんな事を体験したのかしらねぇ~酷い事件ねぇ~」

二人の看護婦は煎餅をかじりながら、またテレビを見つめる。

No.59 08/02/17 23:55
ツクヨミ ( DdUN )

503号室では真っ白な光りが差し込み、穏やかな風がカーテンを揺らしていた。
彼女はベットに半身を起こし、遠くを眺める視線のまま少しも動かない。
「白川さん」

看護婦が語りかける。

「……………」

「後で体温を計りましょうね」
看護婦はニコリとして病室を出た。

視線は全く動こうとはしない。身体も硬直したように佇んでいた。

やがて病室に彼らがやって来て彼女を取り囲む。

「おい麻子!退院したら皆で桜見に行こうって計画なんだ」
明るい笑顔で晃は言った

「お前は飲むと厄介だからなぁ」
政人は晃に呆れたように呟く。

「麻子!早く元気になってね!今度おいしいスイーツ持ってくるね!」
香奈はニコニコで微笑む


武志も優しい眼差しで微笑む。


小鳥が窓の縁にとまると皆の姿は消えた…


彼女の口元に少し笑みが浮かび、頬に一筋の涙がこぼれ落ちた。

    ―完―

No.60 08/02/18 00:18
ツクヨミ ( DdUN )

最後まで読んで頂いた方、チラ見して興味無くした方、少し読んだ方もありがとうございました。🙇
特にそぅままさんには応援して頂き、深く感謝しております。

またヒョッコリ書き始めるかもしれませんが、その時はよろしくお願いします🌠

No.61 08/02/18 12:55
そぅまま ( 20代 ♀ LgfL )

遂に終わっちゃいましたね😱
予想外でした💦香奈と武志の2人が生き残るかと思っていたら、麻子だけだったとは…
幽霊が原因ではなかったのも💡
楽しみがなくなっちゃいましたぁ😢
楽しませて頂きました😊ありがとぉございました✨

No.62 08/02/18 23:08
ツクヨミ ( DdUN )

>> 61 そぅままさん⭐
最後まで読んでもらえて本当に嬉しいです。
応援レスが強力な励みになりました。ありがとうございました😊

よく見ると予定していたワンカットの書き損じ、文章自体のミスも多く、課題が多く残る結果になってしまいました(^-^;
最後の最後でもミスってます😩ハゥ…笑

またアイデアが浮かんだ時は書くかもしれません😤フンヌッ!
その時はよろしくお願いしますね♪😊

No.63 08/03/02 23:55
ツクヨミ ( DdUN )

  ―Missing―
 『失われた約束』

No.64 08/03/03 00:23
ツクヨミ ( DdUN )

『あたし、コーヒー牛乳は飲めないから、脩くん飲む?』
『良いの?君ちゃん』
脩が給食を自分の席まで運び、座ろうとした時、隣の席の君代がそう言って微笑んだ。
『じゃぁ貰うね』
脩は笑顔で答えると代わりに牛乳プリンを君代の御膳に置く。
『交換ね』
脩が目を細め、ニコリと微笑みながら言う。

日直が『いただきます!』と号令をかける。
『いただきます!』
教室中の生徒が一斉に手を合わせ、給食を食べ始めた。
君代は皆と同じように声を出す事ができなかった。咳が邪魔をしていた。『コン、コン』
他のクラスメートより少し遅れて箸を持つ。

No.65 08/03/03 01:07
ツクヨミ ( DdUN )

明野星小学校の校庭には桜が咲き乱れ、ふわりとする暖かい風に校舎は包まれていた。

君代は咳を鎮めようと胸を押さえる。
『大丈夫?』
脩は口にご飯粒をつけて心配そうに君代を見つめた。
『うん…大丈夫』
新学期が始まり、四年生に上がった二人だったが、クラス替えで離れる事はなかった。
君代は、また脩と一緒のクラスである事を心から喜んでいた。
『コーヒー牛乳嫌い?』脩は真っ直ぐに君代を見つめて問い掛けた。
『また喘息がひどくなってきたから、お薬飲まないといけないんだ。お母さんからコーヒーとか、紅茶は飲んじゃ駄目って言われてる。』
『そっか…』
瞳の奥にキラキラと星を忍ばせ、優しい脩の目を見るのが君代は好きだった。

No.66 08/03/04 00:40
ツクヨミ ( DdUN )

午後の授業は算数。
先生は分数の式を問題として黒板に書き込んでいる。教室にチョークと黒板のぶつかる音が響く。

私の前に座る脩くんは、鉛筆で頭を書く。

算数は苦手だと三年生の時から知っている。
サッカーが好きで体育の授業の時はニコニコなのに…机の横にはサッカーボールがぶらさがっていて、よく使いこまれているのが解る。表面がボロボロだから。

いつも後頭部に寝癖がついていて、後ろの席の私はクスリと笑ってしまう

背丈は私と同じくらい。少し私の方が高いかもしれない。顔立ちはスッキリしているし、サッカーでは一際輝いていてカッコイイ。結構クラスの女の子から人気があるのが心配。

脩くんは女の子とはあまり喋らないけど、私には喋りかけてくれる。
私は外見に自信は無い。目もパッチリしてないし、鼻ぺちゃだし、病弱で咳ばっかり。それなのに脩くんは心配してくれたり、喋りかけたりしてくれるのが嬉しい。

君代はボーっと目の前に座っている脩の後ろ姿を見つめていた。橘先生がこちらを見ている事に気がついた君代は、はっとした顔をして、そそくさとノートに目を移す。

No.67 08/03/04 01:43
ツクヨミ ( DdUN )

下校の時刻。
ランドセルに教科書やら、ノートを詰め込む。教室はガヤガヤと雑談や笑い声で賑わっていた。

ランドセルに帰り支度を済ませ、目線を上げると脩くんと目が合った。

「ねぇ…君ちゃん!
銀河鉄道999って知ってる?」
「え?」
「漫画なんだけどさ」
「…う~ん。何回か聞いたことあるような…」
「やっぱり知らないかぁ俺の周りで読んだことある人いないんだ…」
少しハニカミながら、脩くんは言った。

「僕等の生まれる前からある漫画なんだけど、最近読んでるんだ」

「どんな内容?」
私は知りたくなった。脩くんが好きな漫画なら私も読んでみたいからだ。

「銀河鉄道999…汽車が宇宙を走るんだ。機械の身体を手に入れるために鉄郎とメーテルが旅をするって物語」
「君ちゃんのお母さんやお父さんなら知ってると思うよ」
脩くんは微笑する。


「今度読んでみるね」と告げたかったが咳の衝動に負けてしまった。
「コンッ…コンッ」
咳と担任の美咲先生の声で、脩くんとの会話は途切れてしまった。

「ハイ!じゃみんな気をつけて帰るのよ。宿題忘れないように」
美咲先生はクラスの皆を見渡すように言った。

No.68 08/03/05 00:12
ツクヨミ ( DdUN )

校庭のグラウンドが、夕焼けに照らされて黄金色に染まっていた。

君代は正門を出て歩道を歩きながら、金網ごしにサッカーをしている脩を見る。

脩のコーナーから蹴ったボールは放物線を描き、ゴール前の人物へと向かう。息の合ったシュートでボールがネットへ突き刺さった。

「脩くんカッコイイよね」君代の目線の先を追っていた瞳が語りかける。
「うん…」
「君代ちゃんと脩くんって仲がいいから、羨ましいなぁ」
「席が近いし…三年生の時から知ってるから…」ハニカミながら君代は顔がほんのり赤くなっている事に自分自身で気付いていた。
しばらく海岸沿いの通学路を二人で喋りながら歩き、やがて瞳はバイバイと君代に手を振り、T字路を曲がった。

一人で海を眺めながら歩いていると、後ろからドリブルをしながら走ってくる脩が見えた。

No.69 08/03/05 00:51
ツクヨミ ( DdUN )

脩は君代に気付くと、ドリブルを止めてボールを手に持つ。
二人で目が合い、脩が元気な声で言った。
「君ちゃん一緒に帰ろう」

君代はまた顔に熱を持ちつつも、うつむき気味に頷いた。
無意識のうちに恋心を抱く君代は、鼓動の高鳴りと嬉しさを噛み締めていた。

「この先の駄菓子屋の横の階段を昇っていくと、今は使われていない駅があるんだけど、そこから眺める星空は最高なんだ。明野星駅…いつか天体観測に行こうよ!」
「行きたい!」
脩が何かを思い出すように語る横顔を見つめながら、君代は笑顔で返す。
この日の会話は大部分がサッカーと銀河鉄道999の話題だった。

会話に夢中になっていたため、二人の時間の進み具合は早かった。

No.70 08/03/05 01:46
ツクヨミ ( DdUN )

晩御飯の時間。

脩と脩の姉がテーブルに座りながらテレビを観ていた。母親が唐揚げの盛られた皿を置くと、すかさず脩が手を伸ばす。
「バチン!」
「痛っ」
「行儀悪いなぁ。素手で食べんな…」
姉の葉月が脩を叱る。

その時、テレビに臨時ニュースが流れた。

「予定を変更してお伝えいたします。先ほど、米航空宇宙局NASAより通達を受けたアメリカ、モッシュ大統領は地球の公転軌道と極めて近い距離を直径50kmの彗星が5日後に通過すると発表しました」

「マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所の合同グループが彗星を発見し、NASAと共同して正確な彗星の位置と軌道をシュミレートしたところ、現在火星の軌道付近を高速度で通過しており、深刻な問題となる地球との衝突の可能性は無いとしています」
「彗星の名前は第一発見者の名を取り、ミクール彗星と命名され、大規模な流星雨が肉眼でも世界的に観測できると予想されています」
「また、彗星の発見が遅れた事が問題視され、地球接近天体の探知システムの在り方が問われています」

「それでは映像を―」

脩は目を丸くして、テレビの臨時ニュースに釘づけとなった。

No.71 08/03/07 00:54
ツクヨミ ( DdUN )

君代の家は集合住宅の五階。父親と弟の三人で暮らしている。
和室に居た君代は、母の仏壇に手を合わせた後、宿題を終わらせようとテーブルに向かう。
教科書とノートをランドセルから取出した時、襖から弟が飛び込んできた。
「すげーよ姉ちゃん!星!星が近づいてきてるんだって!」
「何よ!星?」
「テレビ!早く」
弟の言葉に促され、居間のテレビに目を移す。

CGで描かれた彗星の映像が映し出され、地球へ向かっていた。
青緑色の巨大な岩の塊が暗黒の宇宙空間を移動している。
全体的にガスと塵を雲のようにまとい、太陽と反対側に尾を形勢している

君代は驚きと興奮を覚えつつ、ナレーションに耳を傾ける。
「ミクール彗星は、
時速575,000km。質量は数十兆トン。地球と最も接近するのは4月23日と予想されています」

と、不意に電話のベルが鳴った。
はっとした顔をして君代は受話器をとった。

No.72 08/03/09 01:05
ツクヨミ ( DdUN )

「もしもし上原です」
「………………」
「もしもし……」
「………………」
君代は気味の悪い無言電話に不快感を抱く。

「瞳だよ~ん。えへへ」「なんだ、瞳ちゃん悪戯は止めてよ…もう」
「あははは」
理解に苦しむ事をする瞳に君代は鼻で息をする。「どうしたの?」
「実はね…脩くんにラブレター渡そうと思うんだけど直接渡すの恥ずかしいから、君代ちゃんから渡してもらっていい?お願い!」
「えー!?」
「脩くんと仲が良いから君代ちゃんに頼もうと思ったの」
「う~ん……ごめん」
自分も脩くんが好きなのに、他人との橋渡しなんてできない。君代は断った。
「そっか…そうだよね」「そういう事はやっぱり…ちょっと」
雰囲気を変えようと君代は別の話題をふった。
「彗星が来るってね!」「そう!ビックリだよね!」
その後は、彗星の話しが続いた。

No.73 08/03/09 02:25
ツクヨミ ( DdUN )

次の日の放課後。
瞳は脩へ話しかける。
「あのさ、脩くんに話しがあるんだけど」
「何?」
「ちょっといいかな」
恥じらいも見せず、積極的に脩にアプローチする瞳。
脩は横目でチラっと私を見る。
私は目を逸らしてしてしまった。これからどんな内容を話し、どんな手紙を渡すのか知っていたから。その役目を断った自分は部外者であると認識していた。
瞳に誘導され、脩は屋上へと上がっていった。

君代は脩の気持ちが瞳へ傾く事が不安だった。どのような反応をするのか気にもなってもいた。
帰り支度を済ませ、ランドセルを背負うと、不安を打ち消すように小走りに学校を後にした。

帰り道、夕暮れの空を見上げると尾の付いた星が目に止まった。
(あ!彗星…)彗星から宇宙へのイメージが膨らみ、銀河鉄道999のことを思い出す。
(本屋さんに寄り道しようかな…)
君代はいつもと違う道へ歩き出した。

No.74 08/03/09 03:19
ツクヨミ ( DdUN )

君代は商店街の一角にある古本屋に着いた。中に入るとおじいさんが一人で店番をしていた。
「いらっしゃい」ペコリと君代は頭を下げてから、漫画の置かれているスペースを探す。

(スリーナイン…スリーナイン…)

本棚の上の方に置かれていた。「あった!」と思わず声が漏れる。手を伸ばしたが届かなかった。そこへおじいさんがヨタヨタと歩みより、一冊を抜き取ってくれた。
「お嬢ちゃんのお目当ての本はこれかな?」
「は…はい。ありがとうございます」「銀河鉄道999…ホホッ」老眼鏡を指で上げ、漫画の表紙を見てから君代に手渡した

君代はもう一度頭を下げると漫画を買おうと財布を覗く。(210円……)自分の財布の中身に「はぁぁ…」と、思わずため息が出る。
「ふぉっふぉっ此処で観ていくかい?」お金が無いことを察してくれたのか、おじいさんは笑いながら言ってくれた。


「いいですか?」少し照れながらも、君代はおじいさんの言葉に甘えた。椅子まで出してくれるとは思ってもみなかった。ちょこんと座り、ページをめくる…。

No.75 08/03/09 04:02
ツクヨミ ( DdUN )

一冊読み終えた頃だろうか…店に小学生が入ってきた。「チリン…」入口に付けられた鈴が鳴ると君代は漫画から目を移し、入ってきた人物と目が合った。
「あれ!?君ちゃん!」「脩くん」

ラブレターの件はどうだったのだろうか…君代は無性に気になっていた。「脩くん…瞳ちゃんから手紙を渡された?」
単刀直入に質問してしまった。
「瞳ちゃんには、ごめんって伝えた…今好きな人が居るからって…でも何で知ってるの?」
「あ…昨日、瞳から聞いてたんだ」
君代は内心ホッとしていた。しかし、瞳の心境を思うと痛々しさが残った。
(好きな人って誰かな…私だったら嬉しいな…)

No.76 08/03/09 13:08
ツクヨミ ( DdUN )

「コホン…コホン」咳で気管支が不快になる。
漫画を隣で読む脩は、君代に何かを閃いたように言った。
「君ちゃん!彗星が来たら、流れ星がいっぱい降るじゃん!」
「うん…」
「そしたら、君ちゃんの咳が治りますようにってお願いしようと思うんだ」
「流れ星にお願いしてくれるんだぁ」
二人はニコリと微笑み合う。
「23日…一緒に流星を見に行かない?」

初恋の相手に初デートを申し込まれた。
「うん」
君代は照れながらも小さく頷く。

脩は顔を赤くしつつ、照れ隠しに頭を掻いた。

No.77 08/03/09 14:07
ツクヨミ ( DdUN )

雨の中、大量の人間が傘をさし歩く。君代は煙草を灰皿に置くと、コーヒーをすすりながら渋谷の交差点を見下ろす。

電光掲示板の流れる文字をぼんやり見て、昔の事を思い出していた。
[ミクール彗星15年ぶりの再接近――二度目の大流星雨に期待が高まる――]

(思い出してしまったじゃない……)
悲しげな表情でぼんやりと雨で濡れた街を見る。
(彗星が来なければ初恋の相手、脩は死なずに済んだのに…私の生きる道も変えてしまった彗星)
携帯の着信音が鳴る。
「ごめん今日出れないかな…女の子全員出ててさぁ…コスモホテル503号室」

「……」

(なにもかもが嫌になる…この世から消えていなくなりたい)

君代は左手の手首の傷を見た。
「もしもし…聞いてる?」
返答もせずに携帯を切り、バックに入れる。

(脩…もうすぐあなたのそばに行くわね…あの約束の場所で…)

君代はヒールをコツコツと鳴らしながら、階段を降りていった。

No.78 08/03/09 15:29
ツクヨミ ( DdUN )

「君ちゃんパス!」
後ろから声がした。

驚いて振り向くとボールがアスファルトを伝って転がってきた。
慌てて足で受け止める。
「うまいうまい」
悪戯っぽく脩くんは笑う
「もう」
お返しに強めに蹴り返すと、脩の頭上を飛び越えそうになる。
「あ!」

脩は慌てた様子もなく、素早く後退して胸でボールを受け止める。

「今日の夜、迎えに行くからね!彗星があんなにハッキリと見えるよ」
太陽が沈みかけた海の遥か上には、月が滲み、彗星が尾をひきながらキラキラと輝いていた。

「待ってるね」

二人は肩を並べて歩く。

No.79 08/03/09 16:24
ツクヨミ ( DdUN )

夜の海岸沿いの道を自転車で走り抜ける。
運転する脩のお腹を掴み、後ろに君代が座る。

「すごい!!」

夜空を見上げて脩は叫んだ。
彗星が一直線に輝きながら東から西に凄い勢いで通り過ぎる。

「すごい!!」
「スリーナイン!!」

虹色に光りを放つ列車が星空を走るようだった。信じられない光景が目の前に広がる。
「うぉー!!」
脩は拳を振り上げて叫んだ。
「わぁー!!」
君代も声を張り上げる。

幻想的な彗星に照らされた道を二人は走り抜けていった。

No.80 08/03/10 00:03
ツクヨミ ( DdUN )

駄菓子屋の横に自転車を停めてから階段を掛け上がる。

君代がつまずきそうになると、脩は君代の手を握った。
すでに大量の流星が二人の頭上に降る。
彗星の尾の位置と地球が重なり、彗星の塵が大気に触れて発光していた。赤、青、黄、緑、紫と様々な色の星屑だった。

誰もいない駅につくと、二人共息を整える。
街灯が無く、まるで宇宙空間に浮かんでいるかのような錯覚が起こる。

「君ちゃん!すごいね」「こんな夜空見たことない」
君代は脩の横顔を見るとニッコリ笑顔で流星を眺めていた。

手を繋いだ二人が流星雨の夜に溶け込む。

No.81 08/03/12 03:05
ツクヨミ ( DdUN )

15年も前の事が色褪せる事なく記憶にある。

君代は電車の窓ガラスに映る自分を見る。
髪はライトブラウンのグラマラスカール。上品とは言えないメイクに肩の露出したカットソー。
(脩君が今の私を知ったら、何て言葉をかけるだろう…)

雨の水滴と灰色の景色が重なり、悲しげな表情が映る。
今まで関係のあった男はすぐに忘れられるのに…15年前の彼は記憶から消えたことはない。
初恋、彗星、流星雨、死別と印象が強かったから。

君代は東京を離れ、故郷の約束の場所へと向かっていた。

No.82 08/03/15 02:37
ツクヨミ ( DdUN )

「あ!そうだ」
脩は何かを思い出したように言った。
「お菓子もってきてたんだ。君ちゃん食べよう」
脩は背中にしょっていたリュックを開け、中から可愛い花の絵柄が描かれたアルミ製の小箱を取り出した。
中を開けると、彩り豊かに包装されたチョコレートや飴等、小さなお菓子が入っていた。

二人は星空がよく見える廃駅の片隅にあるベンチに座り、お菓子をつまむ。
すぐ側には一本の桜の木があり、時折吹く風にあおられてヒラヒラと花びらが舞う。

流星雨は途切れることなく降り続く。
「君ちゃんの病気がよくなりますように」
チョコレートを食べながら無数の流星に願いをかける。
「脩くん、ありがと」
二人で一緒に微笑み合う

「あのさ…もしもこの先二人が離ればなれになってたら、15年後の4月23日にまたこの場所で会わない?」
ひらめいたように脩が言う。

「いいよ。約束ね」
君代は脩の目をじっと見つめて言った。

……二人が約束を交わしたその時。
「ギュン!」
一筋の光が走った。
「ボン!!」
さほど離れていない藪の中へ空から何かが突き刺さるように落ちてきたのだ。

No.83 08/03/15 17:20
ツクヨミ ( DdUN )

「隕石!」
「え!?」
脩は驚いた表情で言う。その声に驚いた君代は後ろを振り返る。
「流星が落ちた!」
「ほんとに!?」
好奇心にあおられ、二人は何かが落ちた場所に向かった。

落ちた場所はすぐに分かった。草が薙ぎ倒され、白い煙りを上げている。その中心に輝く石を発見した。

「虹色に光ってる…」
「隕石…?」

二人は顔を見合わせ、恐る恐る近付く。

「彗星の破片かなぁ?」「星のかけら?」

にぎり拳ほどの小さな石だった。その石は所々に宝石が埋め込まれたかの様に七色に輝いていた。

No.84 08/03/15 18:39
ツクヨミ ( DdUN )

幼少時代を過ごした場所は、不自然なほどに15年前と何も変わっていなかった。
かつて君代の住んでいた集合住宅の前をバスで通り過ぎる。
小学高近辺にある海沿いの道でバスを降りた。

君代は小さなため息をつくと傘をさし、歩きだした。

脩が亡くなった後、良い事なんて何もなかった。
父親は再婚したが、継母の虐待に毎日のように苦しめられ、父が他界すると私と弟は捨てられた。
その後、親戚の家を転々とするが邪魔者扱いで肩身の狭い生活が続く。

弟は家出し、行方が分からなくなった。自分は高校を中退し、上京。

信用していた男に裏切られ、騙されて借金を作ってしまう。
昼はスーパーで働き、夜は売りをする生活。

「もう楽になりたい…駄目だな…あたし」

君代は伏し目がちに自らの人生を悔いる。

No.85 08/03/16 00:08
ツクヨミ ( DdUN )

脩は『星のかけら』を手にとる。
「うわぁ…」
「すごいね」

二人の瞳に七色の光が映りこむ。

「再会の約束と同時に落ちてきたんだね」
君代は不思議な石に見とれながら言った。

「じゃぁ15年後に再会する時までどこかに隠しておこうか!」
また脩はひらめいたように言った。
「え?持ち帰らないの」「あの桜の木の下に埋めて隠しておこう。15年後にまた二人が再会した時に掘りおこすってのはどう?」
「ん~分かった覚えておくね」
微笑しながら君代は頷いた。

それから二人は『星のかけら』をお菓子の小箱に入れ、桜の木の下に埋めた。

「タイムカプセルお菓子箱」
脩は君代と顔を合わせ満足げに微笑む

いつのまにか流星雨もすっかり流れなくなり、いつもの静かな星空に戻っていた。
「君ちゃん、帰ろうか」「うん」

二人は自転車の置いてある場所へ、石造りの階段を手を繋いだまま降りていった。

No.86 08/03/16 00:58
ツクヨミ ( DdUN )

コツコツとヒールが音を起てる。
(この石造りの階段を登るのは15年ぶり…天国への階段ね…)
君代は生気を無くした瞳のままゆっくりと階段を登る。

(15年前…脩くんは流星雨を観た後、自転車で私を家まで送ってくれた。それ以来、彼と手を繋ぐことも話すこともできなくなってしまった。なぜなら…その数十分後に事故にあい、帰らぬ人になってしまったから…)
酔っ払い運転のトラックに轢かれて即死だった…
君代はすでに花が散ってしまった桜の前に立つと、辺りを見渡した。

(ベンチもあるし…桜は散ってしまってるけど、ほとんどあの時と変わってないわね…)

桜の木の下にしゃがみ込むと鞄からスコップを取出し地面を掘る。

しばらくして、カツンとスコップがタイムカプセルに当たった。

ホッとした表情を浮かべ、お菓子の小箱を15年ぶりに手にする。

箱の表面の花柄は色褪せ、鉄の縁の部分は錆ついていた。君代は箱に付着した土を払う。

No.87 08/03/16 01:17
ツクヨミ ( DdUN )

君代は小箱を大事に抱えるとベンチに座り、鞄から睡眠薬とペットボトルの紅茶を取り出す。

小箱の蓋をとると、『星のかけら』が七色の鈍い光を放っていた。

(脩くん…もうすぐそちらに行きます…再会の約束は天国でね…)

小刻みに震える手で大量の睡眠薬を口に含むと、一気に紅茶で胃に流し込んだ。

「………」

『星のかけら』を両手にに持つと、自らの最後を待つ。

……と、その時

『星のかけら』が眩しく輝きだした。七色の光は瞬く間に君代を包み込む。

「な…なに?なんなの」
強力な重力が発生したかのように辺りの景色が歪みだす。

「きゃー!」

悲鳴の声を発した次の瞬間、君代の意識は時空を飛び越えた。

No.88 08/03/16 01:40
ツクヨミ ( DdUN )

「脩くんカッコイイよね」
15年前の同級生…瞳が語りかけてきた。

「は??」

「君代ちゃんどうしたの?」

「え??」

君代は身体が小学生に戻っていることに気がついた。

「一体、なんなの!?」
「大丈夫…?」

懐かしい顔の…まだあどけない姿の瞳が心配そうに君代を見つめていた。
「君代ちゃん?」
「あ…う…うん」
明らかに君代は動揺していた。心は変わっていないが、身体が過去の自分だった。

「君代ちゃんと脩くんって仲がいいから、羨ましいなぁ」

「15年前じゃない!」
全く意味の分からない君代の返答に瞳は困惑した。

No.89 08/03/16 02:12
ツクヨミ ( DdUN )

君代はパニックに陥っていた。
(夢?天国?あの世?違う…タイムスリップ)

「瞳ちゃん…ごめん…脩に会ってくる」

「うん…じゃぁ先に帰るね」
瞳は首をかしげると手を振った。

君代の心臓がドクドクと高鳴る。
(こんな事が…有り得ない…タイムスリップなんて)
夕暮れの校門の前でしばらくウロウロしながら脩が現れるのを待つ。

「あれ?君ちゃん」

懐かしい声が後ろから聞こえた。15年ぶりの再会だった。

「う…う…」
君代は言葉が出ず、目に涙を浮かべた。

No.90 08/03/16 02:48
ツクヨミ ( DdUN )

「さっき君ちゃんが見えたから、一緒に帰ろうと思ってたんだ…何で泣いているの?」
脩は君代の側に来て言った。
「う…うぅ…何で死んじゃったのよぉ」

「ははっ僕は死んでないよ!足だってあるし、何言ってるの?」
脩は屈託の無い笑顔で笑った。

君代はハッとした。

“過去を変えることができるかもしれない”

君代は鼻水を啜り、涙を拭いながら言った。

「流星雨の夜は自転車で来ちゃ駄目よ!死んでしまうわ!」

脩はキョトンとした顔で君代を見つめた。

そして、脩が何かを言いかけた瞬間…君代は七色の光に視覚を遮られ、意識が飛んだ。

No.91 08/03/17 00:46
ツクヨミ ( DdUN )

気がつくと25歳の君代に戻っていた。
ベンチ、桜の木、紅茶、睡眠薬、お菓子の小箱、星のかけら…。

(何も変わっていないか……)
君代は指を口に突っ込み、吐いた。(まだ死ねない…もう一度過去へ戻れるかもしれない…)

星のかけらを両手に持つと願いを込めた。

(過去へ連れていって)

星のかけらが輝きだすと自分の周りの景色が時間を逆行するように動きだし、やがて眩しい光に包まれた。

No.92 08/03/19 06:52
ツクヨミ ( DdUN )

気がつくと、君代は自宅の前にいた。
「頭が痛い…」
タイムスリップは身体に異変をもたらすのではないかと不安になる。

周りを見渡すと、自転車に乗った男の子がT字路を曲がり、見えなくなった。

「脩!」

(間違いない、最後に見送った姿だ!)

「待って!」

(トラックにひかれる前だ)

呼び止めることができれば未来が変わる。
君代は全力で走りだし脩の後を追った。

No.93 08/03/20 02:04
ツクヨミ ( DdUN )

10才の身体は思ったよりも早く走れない。
君代はすぐに躓き、道路の小脇に転倒してしまった。
「脩ー!」
掌と膝に擦り傷ができ、目に涙が溢れる。
「ゲホッゲホッ」
気管支が悲鳴を上げる。



しばらくうずくまっていると自転車のブレーキの音が聞こえた。

「君ちゃん!」
自転車から飛び降り、駆け寄ってきた男の子は脩だった。

「脩…よかった…戻って来てくれたんだ…」
「微かに君ちゃんが僕を呼ぶ声が聞こえたから戻ってきたよ」
脩は心配そうに君代の傷を見る。「大変だ血が出てる」
君代は嬉し涙を流し、顔をくしゃくしゃにしてニッコリと微笑む。

(脩の死を回避することができた…)

君代は安堵の溜息をついた瞬間、眩しい光りに包まれた。

No.94 08/03/21 00:29
ツクヨミ ( DdUN )

君代はタイムスリップに伴う光では無い事に気が付く。ヘッドライトの光が君代と脩を照らす。
「まさか…」

「何で!」
(事故現場はここじゃない!)
驚愕している暇はなかった。迫り来るトラックが自分達の方向へ真っ直ぐに向かって来ている。

「君ちゃん!」

脩は君代を抱き起こそうと手を伸ばす。

「駄目!!」

君代は脩を道の外れへ渾身の力で突き飛ばした。そして、ぎゅと目を閉じて一縷の望みに賭ける。



(未来へ戻ってぇ!!)


「ドン!」
鈍い音が耳に響いた。


脩の顔は絶望に満ち、言葉にならない叫び声を上げた。

No.95 08/03/22 00:07
ツクヨミ ( DdUN )

「無重力…」
君代はそう感じた。
脳の信号がまったく届かず、身体をピクリとも動かすことができない。

「あぁ…私…死んだのかな…トラックにひかれたから…」

視覚と思考はぼんやりと機能していた。

暗黒の空間にふわりと浮かび、身を任せるように身体の全ての力を抜く。
様々な色の小さな流星が沢山自分の身体の脇を通り過ぎて行く。

「きれい……」

その一つの流星が君代の身体と接触すると、脳に鮮明な映像が眩しい光と共に飛び込んできた。

「?…お葬式…脩…」

No.96 08/03/22 00:38
ツクヨミ ( DdUN )

その映像はお葬式だった。皆、喪服姿でしんみりとしている。
参列者をよく見ると脩と脩の両親、自分の父親と弟の啓二が居た。

「皆泣いている…」

遺影が視野に入った。

(私の顔…私のお葬式なのね…)

一瞬で場面が切り替わり、学校の教室の映像が飛び込んでくる。

机の上に綺麗な花が置かれ、その真後ろの席では脩がうつむき涙を堪えていた。ふとももの上で握りこぶしを作り、小刻みに奮えている。
先生は教卓に手を付き、暗い表情で口を動かしていた。

映像はそこで途切れた。自分に接触した流星は体を貫通して飛び去っていった。

(未来を変えちゃった…脩は死なずに済んだけど、あたしが死んじゃたみたいだね…)
「なんだか…眠たくなってきた…」
宇宙空間のような無重力の世界に身を委ねる。

No.97 08/03/23 02:22
ツクヨミ ( DdUN )

君代はゆっくりと目を開けた。
(どれくらい眠っていたのかな…)

ぼやけた視界が次第に鮮明になってゆく。

(はっ!)
(この人は?…誰?)

君代はベンチに横たわり男性の膝を枕にして頭を乗せていた。
真下から見るかぎり20代。首から肩にかけてしなやかにカーブしており男らしさと繊細さを醸し出している。
少し悲しげな表情を浮かべ、視線は遠くを見つめていた。
夜空には流星が無数に走り15年前の約束の日だと察しがついた。

君代はその男性を見つめながら脩の面影を感じていた。
「…脩?」

その声に反応するように下を向き、君代と目を合わせた途端、小学生の頃の脩に姿が変わってしまった。
「あの…」
「気がついたみたいだね」大人びた口調で少し嬉しそうに脩は言った。

「もしかして未来から来た君ちゃん?」
「そう!何故分かるの?」
「僕も同じように未来から来たから」
「え?どうゆう事?」

少し間を開けて脩は答えた。

「君がトラックにひかれて亡くなり、15年経った世界から星のかけらを使って過去を変えに来たんだ」
「あなたは未来の脩?」「そう。君に命を救われた未来から来た」

No.98 08/03/23 03:23
ツクヨミ ( DdUN )

「私も死んでしまったあなたを助けようとして過去に来たのよ!未来は一つじゃないの?」

脩は首を横に振った。
「そう。一つじゃない。僕も何度かタイムスリップして気がついたよ」

君代は起き上がり、ベンチに座り直す。

「タイムスリップして過去を変えても…元の未来は全く変わらないんだ」
「何で!?」
困った表情で脩に詰め寄る。

「過去を変えた時点で別の未来がそこから枝別れする。新しい平行宇宙が生まれるだけなんだ」
「そんな…」

「君代ちゃんの生きる未来では僕は死んでしまっているんだね…」
脩は残念そうに肩を落とす。

No.99 08/03/23 03:31
ツクヨミ ( DdUN )

「じゃぁ…今、未来の脩と話しているこの時間から離れてしまえば…もう話す事はできなくなってしまうのね…」

「うん……でもまさか約束した日にお互い15年ぶりの約束の再会になるなんて思いもしなかったよ」
そう言って脩は笑った。
「別の未来で生きるあなたと話しができて、とっても嬉しい…同じ未来じゃないのが残念だけど」
「僕も君ちゃんが生きている未来があることを知れてよかったよ」

流星雨が次第に止みはじめていた。

「そろそろかな…」
「戻ってしまいそうね」「君ちゃん元気でね」
「脩くんも…」
そう言って脩は君代の頬っぺたにキスをした。

天から七色の星のかけらが落ちて来た…と同時に二人の心はそれぞれの未来へと戻っていった。

No.100 08/03/23 04:05
ツクヨミ ( DdUN )

瞼を開けると鼻先にとまっていた蝶が飛び立っていった。
雲の隙間から光が差し込み、来た時の暗雲は消え去っていた。
花や雑草は水滴を纏い、太陽光を反射してキラキラと輝いていた。

ベンチから起き上がると自分の手首の傷を見る。
小さくため息をつき、立ち上がって大きく息を吸い込んだ。

君代は何か生まれ変わったような気がしていた。
(悔いる事の無い今を生きよう…)

七色の光をすっかり失った星のかけらを手にすると、お菓子の箱に入れて大事に抱え、君代はゆっくりと歩きだした。

―END―

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