📖✏🚀parallelworld🌏

のそり

その男は、崖の上で腹ばいになり双眼鏡を覗いていた…。

195㎝の大柄で浅黒い肌をしている…全身黒装束を身につけている。その傍らには、一本の奇妙な形の刀が置いてある。

｢ふぁ～あ!｣

白髪の頭をボリボリ掻くと、仰向けになり空を眺めた。

｢城は平和じゃのぅ…あの大戦から35年か…儂も年を取ったな。｣


ZZzz....

鳥のさえずりと暖かい風に包まれているうちに男は、眠ってしまった。


『…ち…ん』

『じ…ちゃん』

『爺ちゃん!!』

｢んっ!｣

目を擦りながら、ゆっくり起き上がると声の主を見た。

｢なんだ、砕(ｻｲ)じゃにいか…どうした。｣

｢俺との修業は…｣

｢おっ、忘れておった最近物忘れが酷くての。｣

｢頼むぜ！爺ちゃん
…｣


地面に置いていた刀を持つとゆっくり立ち上がった。

スーッ

黒い鞘から刀を抜くと鋭い眼孔で砕を睨む。

｢…いつもは、馬鹿な事やってるのに、修業になると背筋が凍りそうだぜ!｣

砕は唾を飲むと、祖父に剣で挑んでいく。

ガキーン
ガキッ

｢ふぉっふぉっ、まだ、踏み込みが遅いのう砕。｣

｢ふんっ!まだまだっ!｣

しかし、砕は刀で軽くあしらわれる。

ガキガキガキッ

｢くっ、こいつでどうだ…｣
｢うおぉっ!｣

剣を構えオーラ(気)が体に漲(みなぎ)らせる。

｢三重残像おぅぅっ｣
｢ふん甘いわ、砕。｣
そう言うと

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>> 1 祖父は刀を構え直した。
｢七重残像…みねうちじゃ｣

バシバシビシビシッ
｢いたっ、げはっ、うぐ～っ｣

砕は、体のあちこちを叩かれうずくまってしまった。

｢みねうちじゃ。死にはせん。｣

砕は、頭のたんこぶをさすりながら
｢お～痛っ爺ちゃんの負けず嫌い…この前やっとオーラ(気)の溜め方と三重残像の分身習ったのによぉ…｣

｢ふぉっふぉっ、そうじゃったかの、忘れっぽいもんでの。｣

｢もう日が沈んで来たの…ふむ、暗くなる前に家に帰るとしょう。｣

(糞じじい、絶対あんたを抜いてやるぜ)

砕は、改めて心に誓った。

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>> 2 祖父は、山道を歩き小さな小川を軽くジャンプする。

｢おっとと…早く、こんか…日が暮れてしまうぞい。｣

砕は、澄んだ水を手でくんで飲むと、頷いた。

(70歳過ぎてるのに、達者すぎだぜ…若い頃はそうとう暴れたらしいが…)


祖父の家に着いたころには、辺り一面真っ暗闇になっていた。街からは山一つ離れた奥地に二人は住んでいる為、砕はいつも嫌でたまらなかった。

祖父はランプに火を灯すと、自分の木製チェアーに腰掛けると、椅子を漕ぎ出した。

｢なあ爺ちゃん、何で街に降りないんだ?｣

｢ふっ儂は一匹狼が好きだからの…｣

｢何、訳分かんねぇ事言ってるんだよ!不便でしょうがねぇよ。｣

｢何事も自然から学ぶのじゃ…砕よ!｣

｢信じられるのは、昔の仲間とこの妖刀…そして、お前じゃ。｣
｢サムソンと儂の娘、沙羅は良い夫婦じゃった…じゃが国の仕事で無理やり未確認の惑星探索に行かされ…｣

ｽﾞｽﾞｽﾞ

｢お前の五才の時に両親が、行方不明になって10年か…早いものじゃわい。｣

祖父は、椅子を漕ぐのを止めうつむいた。

｢爺ちゃん…｣

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>> 3 ｢砕よ、酒をくれっ!｣
｢ったく、毎日飲み過ぎだ…｣
｢殺生な儂の生きがいを取らんでくれっ。うっうっうっ｣

(泣いてるのか泣いてねぇのか…多分、嘘泣きだな。)

ドンッ
｢やれやれ、ほらよ!爺ちゃん。｣

瓶(かめ)から酒を花瓶みたいなコップに注ぐとテーブルに置いた。
｢ふぉっふぉっ、ありがたい。｣
ｺﾞｷｭ ｺﾞｷｭ ｺﾞｷｭ

(やっぱり、嘘泣きか…)
砕は、天窓から見える双子の月を見上げ溜め息をついた。

ぐ～っ
(昼から、何も食べてなかったな、焼いたパンとチーズを食べるか。)

砕は、棚から取り出すと椅子に座りパンをほうばるとミルクで押し流し祖父と話そうとした。
その時…

ドンドンドン

扉を叩く音が鳴り響いた。

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>> 4 (誰だ、こんな時間に…道にでも迷ったか…)
｢ちょっと待ってな、今開けるからよ。｣

ｺﾞﾄｺﾞﾄ
砕は閂(かんぬき)をずらすと、扉を開けた。
そこには、二人の鎧を着た兵士が立っていた。

(何で、こんな所に兵士が来るんだ。)

｢でっ、うちに何の用だい?｣

｢城に行っても、居ないと聞いて…この辺りに住んでいるはずだからと…やっとこの小屋を見つけたのです。｣
｢あの、この方はいますか?｣

見せられたのは、祖父であろう若かりし頃の写真だった…。
｢爺ちゃん、お客さんだよ！｣

ｷﾞｨｯ
｢よいしょっ｣

コップをテーブルに置き面倒くさそうに立つと、玄関までゆっくり歩いてきた。

｢儂に何の用じゃな。｣

二人の兵士は祖父の顔を見るなり、左手を胸に当て敬礼した。

(兵士から敬礼されるなんて、爺ちゃん一体何者…)

｢はっ！貴方様に我が星の女王が助けて欲しいとの事です。｣
｢最近、未知の惑星から侵略されているのです。どうか、我が星に来て下さい。｣

｢未知の惑星じゃと…｣
｢やれやれ、女王になっても昔と全然変わらんのう…嬢ちゃんは…｣

祖父はﾆﾔﾘと小さく笑った。

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>> 5 ｢で、どうすればいいんじゃ?｣

｢はい、私たちの小型船がこの近くの宇宙港に停泊してますので、そちらに乗っていただければ。｣

｢ﾌｯ!ならば、儂は自分の小型船で行きたいのじゃが…それでも、宜しいかな？｣

｢はい、それでも構いません。我が星に来て頂さえすれば。｣

｢爺ちゃん、そんなもの持っていたのかよ!｣

｢お前には、内緒じゃったがの。｣

そう言うと、祖父は小屋の外に出て歩きだした。
その後に砕と兵士二人が続く…２･３分歩いたところに茂みがあり、それを掻き分けると一つの切り株があった。

｢これじゃ!これこれ。｣

切り株の横を興奮したように祖父は掘り出した。

(何やってるんだ…)
砕と兵士二人は、ただその様子を見守るばかりだった。

｢あった!これにこうして…。｣

ｶﾞﾁｬ
ウイーン

地面が割れ地下に下りる階段が現れた。
｢ほれ、下りるぞ！｣
ｶﾂｺﾂ ｶﾂｺﾂ

そこには、最新の設備が整った船工場があった。

｢爺ちゃん、これは…。｣
砕は、ただただ驚くばかりであった。

(こんなのが、あったのか…初めまして知ったぜ！)

そこには、シルバーメタリックの小型艇があり、シャドーmkⅢと船の名前が記されていた。

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>> 6 ｢すっげーっ!!こんなもん爺ちゃん地下に持ってたのかよ。｣

砕は、目をキラキラ輝かせながらメタリックの装甲を触っている。

｢ふおっふおっふおっ!砕、たまげたかの爺ちゃんの船じゃ。｣

祖父は、船の真ん中程までゆっくり歩くと、手を当てた。

ｳ"ｨｰﾝ
シューウ

ハッチが開き階段が出てきた。

後ろから付いてきた兵士二人も、辺りを好奇心で見て回っている。

｢これは、前の大戦の時のものですか?｣
｢ああ、そうじゃ…だが、儂が少しずつ改良を加えたのじゃ。その辺の小型艇に負けんぞい。さぁ、中へ…｣

PPP
｢ｵｶｴﾘﾅｻｲ!ｺﾞｼｭｼﾞﾝｻﾏ!｣

｢ふっ船がしゃべった…すげぇ。｣

｢驚くのは、まだ早いぞ。こっちじゃ。｣

(然し、普段は街へ行かず自然と暮らせとか言ってる癖に…)
ﾁﾗｯ
｢砕、何か言うたかの。｣

｢いや、別に。｣
(変なところは、勘が鋭いんだからよ)

｢お話しの途中で、すいませんが宇宙港に停泊している船に戻るので我々はこれで。｣

祖父に左手を胸にあて敬礼すると兵士二人は、階段を上がり外へと出て行った。

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>> 7 ｢さて、我々も行くかの!この入り口のハッチから左が操縦室、右が寝室とバトルルームなんかじゃ。｣

｢爺ちゃん、なんかワクワクしてきたぜ。けどよ、その女王と何で知り合いなんだ?｣

｢ﾌｯ 昔の戦友じゃよ。｣

(ふ～ん。爺ちゃん昔は凄い人だったのか…)

｢遠出になりそうじゃから、出掛ける荷物をまとめて小屋から持ってくるんじゃ。｣

｢分かったぜ!｣

そう言うと砕は勢いよく階段を駆け上がって行った。

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>> 8 ｢ふぉっふぉっ!砕め余程この星から旅立てるのが嬉しいと見える。儂は今まで街に行かせなかったのは両親みたいに、お前までいなくなったら…

ｸﾞｽｯ!おっと、儂は飛び立つ前のメンテナンスでもするかの…｣
PPP
｢ｵﾏｴｻﾝﾓ ﾄｼﾄｯﾃ ﾅﾐﾀﾞﾓﾛｸﾅｯﾀﾝｼﾞｬﾅｲ｣
｢シャドー、五月蝿いわい。メンテナンスしてやらんぞい。｣
｢ｵ～ｺﾜｯ!ﾜｶﾘﾏﾘﾀﾖ ｺﾞｼｭｼﾞﾝｻﾏ!!｣

祖父はぐしゃぐしゃの顔を服で拭うと、小型艇のエンジン部分に歩いて行った。


ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｯ
｢爺ちゃん、小屋の物ありったけ持ってきたぜ!!｣

ｶﾞﾁｬｶﾁﾞｬ ﾋﾞ～ｯ
｢寝室に置いて、ちょっと儂の所に来て手伝ってくれんかの。｣

｢ああっ、直ぐ行く。｣
砕は、寝室の棚飾ってある二枚のセピア色に古ぼけた写真を手に取り眺めていた。
うっすら、記憶に残っている顔だった。
(これは、行方不明になった親父とお袋の写真…もう一枚はと…)

それは、35年前の大戦で仲間と肩を組んだり、おどけて笑ったりしている祖父の写真だった。

｢お～い!まだかの?｣
｢直ぐ行くよ。｣
(ったく、せっかちな爺だぜ)

眺めていた写真を棚の上に戻すと、祖父の方へ駆けて行った。

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>> 9 ｢おっ、やっときおったか。そこのスパナと圧縮ボンベを取ってくれ。｣

ｶﾞﾁｬ
｢これか、ほらよっ。｣

｢砕よ儂がやっている事を良く見て覚えるのじゃ…剣技にしても又同じじゃ。｣

｢わかってるって、爺ちゃんに、耳にたこが出来るぐらい聞かされてるからなっ…後は、『見て覚えたのを基本にし、応用出来るように工夫そして、鍛錬するんじゃ。』だろっ。｣

｢ふぉっふぉっふぉっ!分かってれば宜しい。｣

ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬガチャン

｢これでメンテナンスはOKじゃ。砕よ泥壁の柱に青いスイッチがあるじゃろ、押してみなさい。｣

｢んっ、これか!?｣
ﾎﾟﾁｯ
ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞゴゴ…
何処からともなく振動が鳴り響く。

ゴゴゴゴゴゴ…

｢うぉっ!なんだっ!!｣

祖父は、ﾆﾔﾘと小さく微笑んだ。

メタリック調のシャドーmkⅢの目の前の大きな岩盤が横に動くと、何処まで続いているのか分からない、大きなトンネルが現れた。

｢何ぼ～っとしとるんじゃ。さぁ、船に乗って操縦室に行くぞい。｣

｢お、おうっ｣
砕は、我にかえると慌てて船に乗り込んだ。

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>> 10 ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ

｢砕よ、ここは最新の設備がある工場じゃがの、オートマチックのロボットアームで修理しても、この船の大事な部分は人の感覚(勘)でなければならんのじゃよ。｣

｢それは、船の操縦も同じ事なのじゃ…｣

ｳｨｰﾝ

ｽﾁｬｯ
祖父は、シートに座りベルトをした。
｢お前は、儂の横のシートに座り四点シートベルトをするのじゃ。｣

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ
祖父は手馴れた動作で頭上のボタンを入れていく。
ｶｼｬｶｼｬｶｼｬ
続いて目の前のスイッチを目に見えない早さで打ったかと思いきや、左右のレバーを握っている。

(爺ちゃん、すげー早業だぜ…)

｢ふぉっふぉっ、10年ぶりの操縦じゃわい。｣
｢えっ、今なん…｣
左右のレバーを引くガシャｯ
｢mkⅢ、発進じゃーっ!!うほ～っ、砕しっかり捕まっておれよ！｣｣

シュゴーーッ
一気にトンネルの中を抜けていく…

｢ぐをっ!｣
初めての体験で砕は体が凄まじいＧで持っていかれそうになる。

(くっ苦しい…体が千切れそうだ…)
そう思ったとき、

パーッ

っ目の前が明るくなった。

｢爺ちゃん、すげぇ空飛んでる。この船空飛んでるよぅっ!｣
街が段々小さく見え、遠くには自分が住んでいる小屋も見えた。


｢砕よ、これからが本番じゃ！｣
そう言うと違うレバーに手をのせた。

｢えっ！?｣

｢ブースター並びに大気圏シールドONじゃっ｣
ﾋﾟｯ ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬ
ボシュ
ギュオーーッ

(椅子に押しつぶされる～っ)

ﾌﾞｸﾌﾞｸ ガクッ
砕は、気絶してしまった…

｢ふぉっふぉっふぉっ。何とも、情けない孫じゃわい。｣

砕が目を覚ました頃にはもう、そこは宇宙の大海原に出ていた。

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>> 11 ｢うっ!｣
(そうか、余りのGで気を失ったんだったぜ)

｢すっ、すげー!綺麗だ…｣

初めて自分の星から出た砕は、シートから立ち上がり、満天の星空を見回すと感嘆の声をあげた。

ｳｨｰﾝ
ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ

｢やっと目が覚めたようじゃの。ほれっ｣

祖父は、アツアツの飲み物を手渡した。
ｽﾞｽﾞｽﾞッ
｢あちっ!ふうーっ、ふうーっ。でも、生き返るぜ!サンキュー、爺ちゃん。｣
(気が利くじゃねぇか)

｢ふおっふおっふおっ!さっきまで、気絶していたみたいじゃがの。｣
砕の顔を下から覗きこんだ。

｢あれは…いやその～あれだ、急に眠たくなったんだ…｣
しどろもどろに答えた。

｢ふおっふおっ、儂が初めての時は、ワクワクして大丈夫じゃたがの。｣
祖父は小さく微笑んだ。

ｽﾞｽﾞｽﾞ
(じじい…前言撤回だぜ)

｢これからバトルルームに来てくれ!｣

｢そこで、何するんだよ!｣

｢来てからの、お楽しみじゃ。｣

ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ
ｳｨｰﾝ

飲み物を、一気に飲み干すと砕は、祖父の後に続き操縦室を出て行った。

• << 15 バトルルームの中に入るとすぐ横の長椅子に祖父は横たわると ｢砕よ、この部屋は儂が自分を鍛える為に使った場所じゃ。レベル20まであるが、お前のレベルはまだレベル３といったとこじゃな。｣ ｢…。｣ 砕は、黙り込んで祖父の話しに耳を傾けた。 ｢シャドー、バトルレベル３ 重力５Ｇ 敵ホログラム二人 スピード1.5倍 武器は剣 じゃっ!!｣ PPP ｢ﾘｮｳｶｲ ﾊﾞﾄﾙﾊﾞｶﾉ ｺﾞｼｭｼﾞﾝｻﾏ｣ ｢馬鹿者!!一言多いわい!!｣ ｢おっと、砕よ頑張るのじゃぞ。｣ ｢へんっ、爺ちゃんそんなの楽勝だぜ!｣(俺の凄さを見せつけてやるぜ) 砕は、やる気満々で自分の剣を腰の鞘から抜くと構えた。 ｢さあ、どっからでも、かかってきやがれ!!｣ 祖父はﾆﾔﾘと笑うとシャドーに特訓開始を命じた。

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>> 12 あ…続きが書いてある。これ面白いっすね。「話つく」読んでます。両方とも頑張ってくださいね。

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>> 13 😂ありがとう！
｢話つく｣と外伝を読んで貰えて、感謝感激雨霰💦
地道に更新するけどこれからも応援お願いします。
m(_ _)m
アル🍺

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>> 12 ｢うっ!｣ (そうか、余りのGで気を失ったんだったぜ) ｢すっ、すげー!綺麗だ…｣ 初めて自分の星から出た砕は、シートから立ち上がり、… バトルルームの中に入るとすぐ横の長椅子に祖父は横たわると

｢砕よ、この部屋は儂が自分を鍛える為に使った場所じゃ。レベル20まであるが、お前のレベルはまだレベル３といったとこじゃな。｣

｢…。｣
砕は、黙り込んで祖父の話しに耳を傾けた。

｢シャドー、バトルレベル３ 重力５Ｇ 敵ホログラム二人 スピード1.5倍 武器は剣 じゃっ!!｣
PPP
｢ﾘｮｳｶｲ ﾊﾞﾄﾙﾊﾞｶﾉ ｺﾞｼｭｼﾞﾝｻﾏ｣
｢馬鹿者!!一言多いわい!!｣

｢おっと、砕よ頑張るのじゃぞ。｣

｢へんっ、爺ちゃんそんなの楽勝だぜ!｣(俺の凄さを見せつけてやるぜ)

砕は、やる気満々で自分の剣を腰の鞘から抜くと構えた。

｢さあ、どっからでも、かかってきやがれ!!｣

祖父はﾆﾔﾘと笑うとシャドーに特訓開始を命じた。

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>> 15 ｽﾞﾝｯ
軽い重力が砕にかかる。

｢ふんっ!これくらいヘでも無いぜ。｣

カキィン ｶｷｯ
カキィ

｢うっ…｣

ホログラム二人の連続攻撃に徐々に押され、防戦一方になっていく。

カｷｯカンカンカｷ－ｯン

｢うわあっ!｣
砕の剣が弾かれ相手の剣が喉もとをとらえる。
｢そこまでじゃ。｣

ﾌｯ ﾌｯ
ホログラムが消えると祖父は言った。

｢ふおっふおっ、お前は一対一なら、その辺の兵士には楽勝じゃろう…然し、これから先そんなことは、まずめったに無いじゃろう。｣

｢極める為には、『見る』のでは無く『視る』、『聞く』のではなく『聴く』のじゃ!!心身ともに己を鍛えるのじゃぞ。そして、友と呼べる仲間がピンチの時は、体を張ってでも助けるのじゃ。｣

｢はぁ、はぁ。あぁっ…｣

頷くと、ぐったり座り込んでしまった。

｢まぁ、その内に分かってくるわい。｣

そう言うと、祖父は長椅子からゆっくり立ち上がり砕にタオルをかけた。

｢隣りの部屋にシャワールームがあるから、汗を流しとくのじゃぞ、風邪引くからの。儂は、寝室で横になろうかの…｣
ｶﾂｺﾂ ｶﾂｺﾂ
ｳｨｰﾝ

(くっ、俺は井の中の蛙だな…だが、爺ちゃんが言う通り、もっと己自身を鍛えて絶対レベル20をクリアーしてやる。そして、爺ちゃんあんたを超えてみせる)

握り拳を握り締め、新たな決意をする砕であった。

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>> 16 ｢ふうむ、まだまだじゃの…｣

ｳｨｰﾝ ｶｼｭ

白髪の頭を掻きながら祖父は部屋に入ってきた。

棚から写真立てを取ると寝室のベットに腰掛けた。

(愛娘、沙羅…。サムソン…。お前たちが行方不明になってから10年…砕は、立派に育ったかの…)
ｽﾞｽﾞｯ
いつの間にか、目に涙が溜まっていた。
PPP
｢ﾎﾝﾄ ﾄｼﾄｯﾀﾗ ﾅﾐﾀﾞﾓﾛｸﾅｯﾀﾐﾀｲﾀﾞ｣

｢ﾌｯ儂らしくもないな。」

袖で拭うと、棚から一升の酒瓶を取り出し、一気に飲み干した。

｢ぷは～っ!この近くにあいつの星があったの、ちょっくら寄り道するかの。｣

｢シャドー、予定変更じゃっ!!Ｓ座標1191ポイントに向かってくれ!!｣

｢ﾔｯﾄﾗｼｸ ﾅｯﾃｷﾀ!｣

｢ふん、五月蝿いわい。｣
言葉と裏腹に祖父は笑っていた。

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>> 17 『砕、今すぐデッキに来るのじゃ。』

祖父は、操縦室のマイクに叫ぶと、操縦レバーを握りまだかまだかと砕が来るのを待ちわびている。

ｳｨｰﾝ ｶｼｭ

｢何か、あったのかよ!｣
髪を拭きながら、慌てて部屋に入ってきた。

｢いや、何!友人の星に寄り道するからの。早くシートに座ってベルトをするんじゃ。｣

｢はいはい、分かったよ！｣
(ったく、王女様のところに急ぐんじゃ無かったのかよ!)

PPP
｢ﾀｲｷｹﾝ ﾄﾂﾆｭｳﾏﾃﾞ 1ﾌﾟﾝﾏｴ｣

｢大気圏耐熱シールド ON!!｣


｢ﾀｲｷｹﾝ ﾄﾂﾆｭｳ｣
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

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>> 18 水と森が綺麗な惑星…35年前の大戦で四つに分かれていた国が一つにまとまり、新たな王国となっていた。

｢爺ちゃん、綺麗な星だなっ!｣

｢ふおっふおっ。ああ、そうじゃよ。空気がうまいところじゃ。｣

ﾌｼｭｳ
祖父は貿易宇宙港に小型船を止めた。

ｻﾞﾜｻﾞﾜ
｢まもなく、ＷＡ便が出航します。搭乗手続きのまだの方は…｣
ｻﾞﾜｻﾞﾜ

宇宙航行パスを機械に通すと、中央待合い場まで二人は歩いた。

砕は初めての事だらけで、しゃべりもせずただ辺りをキョロキョロ見ているだけであった。

ｻﾞﾜｻﾞﾜ
｢安いよ、安いよ！この星特産のレンバスが三個でたったの1000サーナ!!食べたら、ほっぺが落ちるよ…そこのお二人さん試食どうぞ。｣

｢おっ、サンキュー。んぐんぐっ、うめ～っ!｣
｢これ買っていこうぜ。爺ちゃん!!｣

｢ふおっふおっ、帰りにじゃな。｣
ｻﾞﾜｻﾞﾜ

大戦後、一致団結し復興させ昔の賑わいを取り戻していた。

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>> 19 この星の種族は耳が尖っていて、真っ白い肌か大半で茶褐色の肌は少ない。ここは皮で出来た製品が多く丈夫に加工してある衣類や鎧にバックなどの小物が、貿易宇宙港にところせましと売ってある。
ｻﾞﾜｻﾞﾜ
｢これも、あっこれもいいなぁ!｣

砕は、あちこちの店を覗いては品物を手に取っていた。

ｻﾞﾜｻﾞﾜ
｢ほりゃ、砕行くぞい!ふおっふおっ、まあ、分からんでもないがの。ちょっと、会いたい人が居るんでの、先を急ぐぞ。｣

｢え～っ!ねぇねぇ、爺ちゃんもっと見ていこうぜ。｣

砕は祖父に襟首を掴まれ引きずられていった。

宇宙港の外に出ると、無人タクシーに乗り込んだ。

(うわっ、少し宙に浮いてる)

『ドチラマデ、イカレマスカ?』

｢王宮までじゃ!｣

『カシコマリマシタ』

ｳ"ｨｰﾝ
走り出すと砕は、祖父に尋ねた。

｢爺ちゃん、王宮って…この星の偉い人がいる所じゃ…｣

｢偉いかどうか分からんが、着いてからのお楽しみじゃ。それまで、一寝入りするかの…｣

｢くうっ、じゃ俺も寝る。｣

二人とも直ぐに寝息をたてていた…

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>> 20 ﾋﾟﾛﾛｯ
『トウチャクシマシタ!』

｢着いたみたいじゃの。よく寝たわい。砕、起きるんじゃ!着いたぞ。｣

｢ふぁ～っ。よく寝た!｣
寝ぼけた目をこすると、背伸びをした。
ｶﾞﾁｬ
二人は、無人タクシーに料金を払うと車から降りた。
ﾊﾞﾀﾝ
『ドウモ アリガトウゴザイマス』
無人タクシーは、今来た道を戻っていった。

ズ ン !!

｢凄えぇーっ!!｣
砕は、目の前のあまりに高い城壁に圧倒された。
だが祖父は、何事も無かったように門番が居る方へ歩いて行く。
｢爺ちゃん、待ってくれよっ!｣

大きな門の前に銃を掲げ皮鎧を装備した門兵が立っている。
｢何だ貴様等は、ここは王の許可がないと通れんぞ!｣

二人の門兵は銃を構える。

｢うっ!｣
(おいおい、大丈夫かよ…)
砕は、腰の剣に手をかけようとする。

｢砕、待ちなさい。ちょっと、王に会いたいのじゃが。通してくれんかの…｣
そう言うと、祖父は腰袋からこの星の紋章と同じブローチを出して見せた。

｢まっ、まさか!貴方様は…顔を知らぬとはいえ失礼いたしました。おいっ｣

｢はっ!只今、門を開けます。この事は、王にはご内密に…｣

｢ふおっふおっ、門を開けてもらえば、何もいわんよ。｣

｢有り難うごさいます。｣

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>> 21 『開門!!』

ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞゴゴゴゴ

ゆっくりと大きな扉が開いていく。

｢お二人さん、すまんの。｣

｢いえ、とんでもありません。｣
｢ささっ、お通り下さい。｣

門兵は深々と頭を下げた。

｢さあ、行くかの。｣
｢ああっ｣
(やっぱり爺ちゃん、ただ者じゃねぇな)
ｻﾞｯｻﾞｯ
二人は門をくぐって中庭へと進んだ。

中庭は綺麗にガーデニングしてあり、砕はさっきのブローチと同じ青い薔薇が目についた。

｢なあ、爺ちゃん。さっきのブローチは何なんだ。気になってしょうがねぇよ!｣
｢ふおっふおっ、これか…これは35年前に友情の証しでここの王に貰ったものじゃ。｣
祖父は、懐かしげにブローチを見つめる。
｢ふ～ん。｣

ｻﾞｯｻﾞｯ
しばらく歩くと王宮に着いた。

｢お久しぶりですじゃ!｣
不意に二人の横からしゃがれた声をかけられる。

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>> 22 ｢あんたは…懐かしいの。｣
｢爺ちゃん、誰だい?｣

｢初めましてじゃな!儂はタカと言いますじゃ。｣
髪はなく白髭をたくわえ焦げ茶色のフードを羽織り、右手で杖をついている老人だった。
｢して、ここには何用で?｣

｢いや、用事で久しぶりに宇宙(そら)に出たんでな、ついでじゃ。｣

｢王も、さぞ喜びになられるじゃろ。｣
｢ささっこっちへ。｣
二人は、老人に案内され、だだっ広い赤絨毯の上を歩いて行く。

｢ここは、昔のままじゃな。｣
辺りを祖父は見回しながら歩く。

壁にはひびが入り昔の大戦の爪痕をのこしたままだ…

｢王が、また戦(いくさ)が起こらないように、戒めの為この王宮だけ建て替えていないのですじゃ。｣
｢ふおっふおっ、あいつらしいの。｣

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>> 23 王の間に着くと、扉の両端に、体の大きな衛兵が立っている。
｢通してくれ、数十年振りに、王の知人が訪ねて来たのじゃ。｣
老人が言うなり
｢はっ！｣｢はっ！｣
と両端の衛兵は敬礼した。

ぎぃぃぃっ

扉が開くと、老人は足早に中に入って行った。その後に祖父等も続く。

｢おおっ…｣
祖父を見るなり玉座から立つとマントを翻し、５･６段の階段を飛び降りて、駆け寄ってきた。
背丈は170㎝半ばの
髪は金髪で色白く凛とした美声年だ。緑をベースにした金の草花が刺繍してある服を纏っている。

ｶﾞｼｯ
｢久しぶりじゃの…35年前と全然姿が変わらんの…羨ましいわい。｣

｢本当に久しぶりだよ！でっ、こちらの方は、似てるけど…まさか…｣

｢はっ初めてまして、砕と言います。｣
(緊張するぜ!)
｢ふおっふおっ、儂の孫じゃっ!!｣

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>> 24 (然し、王様って言うより王子様だな)

｢孫か…私は結局誰とも結婚しなかったからな…憧れるよ。｣
王は少しうつむきながら話す。

｢儂はあの姉ちゃんと結ばれるもんじゃと思っていたからの。ふおっふおっふおっ!｣

｢あの～っ、爺ちゃん昔話で盛り上がっているとこ済まねえんだがよ。王様が昔と姿が変わらないってどういうことだ?どう見ても二十後半にしか見えないぜ。｣

｢儂等と時間の流れというか十倍以上寿命が違うのじゃよ。｣
｢だから、こやつの年齢は290歳近くなのじゃよ。｣

｢…。｣
砕は、王を見ながら言われた年齢とあまりのギャップの違いに驚いて言葉を失った。

｢で、孫を連れてここまで着たって事は何かあるんだろ。｣
王はﾆﾔﾘと笑った。

｢おっ、さっしがいいわい。流石は、王になったことはあるの。｣

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>> 25 砕の頭をﾎﾟﾝﾎﾟﾝと叩きながら
｢こいつに、ちょっとした魔法に対しての戦い方を教えて欲しいんじゃ。｣

｢えっ!!｣
(そんな事、聞いてないぜ)

｢ああ、良いよ。せっかく来たんだ。｣
ﾆｺﾆｺしながら、横にいる老人に話しをする。
老人は王の間を出てどこかに行ってしまった。
(一体、何をさせるんだ…)

｢砕よ！何事も勉強じゃ。｣

｢砕、ちょっと左手を出してご覧。｣
王は人差し指に指輪を嵌めた。
｢これは、少しだがオーラ(気)を高める事が出来る。｣

ﾊﾞﾀﾝ
｢失礼します。｣
一人の砕と同じ位の年の茶褐色で肩までの黒髪の女の子が入ってきた。

｢王様、何用でしょうか?｣

｢ああ、ちょっと知人の孫と普段魔法学校で習っているみたいに戦って貰いたい。｣

｢えっ、あの方とですか!?｣
女の子は、チラッと砕の方を見る。

｢ふんっ、俺は、女とは戦わねえ!｣
ﾌﾟｲｯと横を向く。

｢貴方、女だと思って馬鹿にしないでよね!｣
｢分かったわ！相手させてもらいます！｣
右手を前にし炎の呪文を唱える。

｢ふおっふおっ、面白くなってきおったわい。｣

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>> 26 玉座に王は座り、その横に腕を組んで祖父は立ったまま観戦する。

｢あの娘は、魔法学校で一番の優等生だからね。ただ、負けん気が強いのがたまに傷だけど…｣

｢お前さんが好いとった誰かさんみたいじゃの!｣

｢うっ、それは…｣

｢まぁ、これくらいにしといて…砕は、苦戦しとるみたいじゃの。ふおっふおっ｣
祖父は、眉毛をいじりながら話している。

｢魔法を知るには、直に戦った方が感覚がつかめるからね。誰かに、昔教わったからね。｣
微笑みながら、祖父の方を見る。

｢儂か!そんな事もあったかの…まあ、実戦あるのみじゃな。｣


ﾎﾞｼｭ ﾎﾞｼｭ ﾎﾞｼｭ
｢女に手を出さない
んじゃなく、出せないんじゃないの。｣
次々と女の子の右手から火の玉が襲う。
｢くっ!!｣
(なめやがって…)
砕は、火球を避けながらオーラ(気)を練っていく。

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>> 27 ｢やっぱり、私に反撃することも出来ないの!｣
まだまだ、火の玉の連続攻撃は続く。

ﾌﾟﾁｯ
｢怪我したって知らねぇぞ!!｣

剣を腰から抜くと段々剣先にオーラを溜めだした。
ﾋﾟｶｯ
更に、先ほど王にもらった指輪が輝きだす。
(何か、気が湧いて来るようだぜ！爺ちゃんから習ったブレイドの応用した技を試してやる)

｢いくぜっ!!
スティンガー･ブレイクウゥゥ－ッ!!!｣
砕は剣を槍のように突き一気にオーラを放出させる。

｢きゃっ、何!?｣
女の子は避けられそうにない。

ドゴオオォォ―ン

｢しまった!!｣
ふっと我にかえる砕
(やべっ、手加減するの忘れた)

ズゴゴゴゴｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ
地響きがおさまり土煙りが消えていく…オーラが当たった、王宮の壁に穴が開き外の景色が覗いていた。

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>> 28 ｢おい、大丈夫か!?｣
砕は慌てて、女の子の場所に走って近づく。
だが、その場に倒れているはずの女の子の姿は見当たらなかった。


ﾁｬｷ
｢うっ!!何だと…｣
(いつの間に、俺の背後へ)
喉元に冷たく鋭い感触があたる。
｢ふふっ、私の勝ちね!｣

｢勝負あり!そこまで!!｣
王の言葉で女の子は、氷で作った短剣を引っ込める。

｢ふおっふおっ、どうじゃな砕!女の子にしてやられた感想は!｣

｢…。｣
(馬鹿な、確かに相手をとらえたと思ったのに…)
砕は、訳が分からず跪(ひざまず)いていた。

｢貴方、何故って顔をしてるわよ。｣

｢一体どうやって…｣

｢イリュージョンの魔法よ。途中から貴方に幻を見せてたのよ。｣

｢魔法には、色々な種類があるそれを知って貰うために、お前をここへ連れて来たのじゃよ。｣
階段を降りながら話す。

｢たまには、いい薬じゃ!こういった戦いがこれから先あるかもしれんからの。｣
砕の肩を軽く叩くと祖父は女の子ににこやかに言った。
｢見事なもんじゃ、これほどの使い手とは。｣

｢あっ有難うございます。｣
女の子は照れながら頭を下げた。

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>> 29 それから目を輝きさせながら、まじまじと祖父の顔を見ると

｢私、ラリスと言います。35年前の大戦の時まだ小さくてよく分からなかったんですけど、冬の国の【冬の大吹雪】を魔法学校の歴史で習いました。まさか、王様以外に、ここでこの星の英雄の一人に会えるなんて夢にも想いませんでした。握手して下さい。｣

女の子は、一気にまくし立てると、右手を衣服で拭き、祖父の前に差し出した。

｢はっはっは、暴れん坊も、今じゃ英雄か。｣
王は、その光景を見て笑いながら言った。

｢ああ…儂みたいな爺の握手でいいならいくらでも…｣
祖父は白髪の頭を掻きながら、握手に応える。

｢けっ!｣
女の子に負けた砕は、ふて腐れていた。

ﾊﾞﾀﾝ
その時、王の間の扉が勢いよく開き二人の男が入ってきた。

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>> 30 ｢おお～っ!久しぶりだな！元気にしてたか? 然し、老けたなっ。｣
白いフードを羽織っている男は一番に近づくと祖父の背中をバシッと叩いた。

｢珍しい奴が来たもんだ。｣
次に鼻髭をした皮鎧を身に付けている男は言う。

｢おおっ!久しぶりじゃの。元夏国の王に元秋国隊長!!｣
三人は堅い握手をする。

｢さっき、長老にラリスと一緒に二人を呼んで貰ったんだ。懐かしいだろ。｣
王は祖父に言うと、玉座から降り召使いに宴の準備を伝えた。


｢ねぇねぇ!貴方の名前何て言うの?戦った中でしょ。教えてよ。｣
にこやかにラリスは尋ねる。

｢…さ… 砕だ。｣

｢砕、良い名前ね。私は、ラリス宜しくね。｣
｢宴まで時間があるから、王宮の外案内してあげる。｣
ラリスは砕の手をとると引っ張った。
ﾄﾞｷｯ
｢ああっ｣
(さっき、戦っててきずかなかったが…よく見ると、可愛いじゃねぇか…)
砕は、どぎまぎしていた。

｢爺ちゃん、ちょっと見物に行ってくるぜ。｣

｢わかった。宴には帰ってくるんじゃぞ!｣

｢はいはいっ。爺ちゃんは、昔話で盛り上がってくれ!｣｣
(ったく、小せえガキじゃないんだからよ)
頭を掻きながら答えた。

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>> 31 ｢うふふっ!｣
ラリスは口に手を当て笑っている。
｢てめぇ～何笑ってやがる。｣
｢だって…さあ、行きましょう。｣
二人は王に挨拶すると王の間から出て行った。
ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ
｢ねぇ貴方、此処の星に来たって事は、宇宙(そら)を飛んだんだよね。どうだった?｣
｢初めて出た時、凄え綺麗で…宇宙に吸い込まれそうだった…｣
ﾋﾟﾀｯ
｢はあっ、私も出てみたいなぁ…宇宙へ。｣
ラリスはため息をつくと渡り廊下の窓から空を眺める。
｢その気持ち分かるぜ。俺様の場合、どこにも行けなかったからな…良かったら、一緒に来るか?俺、爺ちゃんに頼んでやるぜ！｣
真面目に砕は答える。
｢本当に!!行きたい。 あっ、でも王の許可が無いと駄目だわ。｣
ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ
再び、二人は歩きだす。
｢私ね、王の親戚の子何だけど…大戦で両親を亡くして、その後、身よりのない私を王が親代わりで引き取ってくれたんだ…｣
｢でも、何か冒険してみたいって言うか…女の私が言うのもへんかな?｣
｢いいや、全然おかしくねぇよ。俺も五歳から両親が行方不明で爺ちゃんに育てられたんだ。修行は厳しいが良い爺ちゃんだぜ。｣
｢くすっ、何か似た者同士だね。｣
ｷﾞｲｨｰｯ
｢良い天気だ!ん～｣
王宮の外に出ると砕は背伸びをした。

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>> 32 一方…

｢でっ、宇宙に久しぶりに出たのには、何か理由があるんだろ?｣
王はウインクしながら祖父に尋ねる。

｢うっ、それは…じゃな…｣
祖父は口を濁す。

｢お前らしくないな。一緒に戦った仲だろ。｣
｢そうだ、白状しろ。｣
後から来た二人にどやされると、大戦仲間の姫が謎の惑星から攻撃を受けているのを渋々話した。

｢何故それを早く言わない!!｣
王は怒鳴ると、扉の方に向かう。

｢はあ～っ!やっぱりじゃ…だから、話したくなかったんじゃ。｣
祖父はため息をつく。

｢王、どちらへ!｣

｢旅支度をしに行くんだ。｣
ﾊﾟｼｯ
二人の手を振りほどく。

｢然し…｣
二人は戸惑いながら王を止める。そして、衛兵を呼んだ。

ｶﾞﾁｬ
『総隊長お呼びで…』

｢王を止めるんだ!｣

『はっ！』

｢離せ～っ!!｣
ようやく四人掛かりで止める事ができた。

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>> 33 ｢王よ!そなたは、この星の統率者じゃ。昔ならともかく、今は、この星の為に連れていかれんのじゃ。分かってくれ…｣
祖父は肩を震わせている。

『王っ!!』
魔法学校理事長(元夏国王)と総隊長(元秋国隊長)は叫んだ。

｢くっ…｣
王は肩を落とした。
｢ならば条件がある。私の代わりにラリスを連れて行って貰おう。あいつは、ある程度の魔法と弓の腕は育ての親の私が認める。きっと役に立つはずだ。｣

｢然し…分かった。そうするかの…｣
少し悩んだが了解した。

｢それと理事長。至急、例の薬を持って来てくれ。｣

｢はい。｣
理事長は挨拶をすると扉から出て行った。

｢総隊長。今日は旧友の為の宴、全兵士も参加するように伝えてくれ。｣
｢はっ！｣
敬礼すると総隊長も扉から出て行った。

｢それから、娘を頼んだぞ！可愛い子には旅をさせろって言うからな。｣

｢ああ、分かっておるわい。孫も同じ気持ちで、連れて行きよるわい。｣
｢よし、今日は何もかも忘れて飲むぞ！お主も、王ではなく昔の戦友として飲むぞ！｣
祖父はﾆﾔﾘと笑った。
｢ああ、そうだな…｣王も笑い返した。

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>> 34 王宮で宴が始まる直前まで砕とラリスは街で見学していた。
街は賑わい、近代的建物と古い建物が入り混じっていた。
通りは、隙間がないくらい布テントの屋根に地面には絨毯を敷き、日用雑貨や果物、獣の肉を吊ったりした出店など色々な物が所狭しと売られている。

二人は、そこの果実ジュースを片手に店を回っていた。

｢いいな、こういう雰囲気好きだぜ。｣

｢そうね、私も大好き。でもね、毎日の光景もいいけど、私他の惑星に行って、どんな物があってどんな暮らししてるか、この目で実際見てみたいの。｣

｢そうだな!俺も、刺激がほしい。んっ…｣
砕は何気なく、街の時計に目をやり驚いた。

｢やっべ～っ!もうこんな時間だ。｣
｢本当だわ。急がなくちゃ！｣
ﾋﾟｭｳ
ラリスは一時的動きが速く補助魔法をかけ、二人は王宮を目指し駆け出した。

夕方王宮に到着すると宴は始まり祖父は皆と飲んでいた。

｢ふおっふおっ、遅かったの。でっ!デートは楽しかったかの。｣

｢ばっ、馬鹿やろう！爺ちゃん、ただの街見学だぜ。｣
顔を赤らめ慌てて砕は答える。
(確かに、楽しかったけどよ)
｢図星じゃの。｣

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>> 35 ｢何が、図星なんだよ!｣
(変な勘働かせるなよなっ)

｢お前が、あの娘に好意を抱きだしたということじゃ!ふおっふおっふおっ｣
そう言うと祖父はグラスの葡萄酒をグイッとあけた。

｢別に…｣
砕も負けじとグラスに注ぎ、空にしたがむせてしまった。
｢ゲホゲホっ!｣

｢ぷは～っ!まだまだ強い酒は飲ませられんの。｣
(糞じじいっ)
祖父は次の瓶に手を伸ばし栓を抜いている。

砕は辺りを見回すと、天井には、巨大なシャンデリアが五つあり眩い光を放っていて、床は赤い絨毯で敷き詰められており、壁は大理石で出来ている。三十ちかくあるテーブルには、今まで見たことがない肉料理や果物など並べられている。そして、心地よいクラッシックの演奏が聞こえてくる。
真ん中では数組の男女が、手を取り合いその曲に合わせ踊っている。

と、そこへ王とラリスが近づいて来た。

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>> 36 ﾁｨｰﾝ
祖父と王はグラスを合わせ乾杯する。

｢相変わらず飲むのは強いな。昼間の話しをラリスにしたら、直ぐにいい返事を貰えたよ。｣

｢ふおっふおっ、それは良かっふたの。｣
チーズを口に入れたまま喋る。

｢まさか、王(父)の口から砕と話したものが出るなんて、思いも寄らなかったからビックリしちゃった。これから、お世話になります。宜しくね。明日、出発だから準備しなくちゃ!｣
ラリスは砕に近づくと、王から聞いた祖父との会話の一部始終を一気にまくし立てた。

｢本当か!?良かったじゃねぇか。｣

｢うんほんと、夢みたい。じゃ私部屋に行って来る。｣
ラリスは、そう言うと行ってしまった。

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>> 37 砕は、ラリスが船に乗ることに胸を躍らせた。

(早く、明日が来ねぇかな)
一人テラスに出て、双子の月を眺めた。風が優しく砕を包んでいく。

その様子を見ていた王が隣りに近づく。

｢私は35年前の大戦で、戦いを通じて仲間ができ、そして色々な事を経験し成長できた。君もそしてラリスもこれから先、私たちのかわりに時代を引き継いでいくだろう…あの子にも色々と経験してもらい成長してほしい…砕、ラリスは気が強い娘だが、優しい子だ。旅の間宜しく頼んだぞ！｣
王は、月を見ながら言った。

｢はっはい！｣

王は、砕の返事に微笑むと、宴に戻って行った。

砕は、王の言葉を胸に刻み、ラリスを守ることを心に誓った。

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>> 38 深夜になり宴も終盤にさしかかった頃、魔法学校の理事長が何か袋を持って近づいて来た。

｢この薬を使ってくれ。これは、お主しか飲んだら駄目だぞ!!｣
理事長(元夏国王)は、10本の青い瓶を皮袋から見せる。

｢なんじゃこれは…｣祖父は青い瓶の蓋をとり中身を覗く。

｢これは、専用に調合した若返りの薬だ。大体40歳は若返る。｣
｢なかなか、本数ができなくてな。一本の効果は一時間が限度だな。｣

｢然し、どうしてこれをくれるのじゃ。｣
瓶を袋に入れると理事長に尋ねた。

｢はっはっはっ!お主があんまり老けてたから、王が見ていられないと、我が種族は年を取るのが遅いからな…人間と違いハーフのお主はその年の割には、動きが若いが顔はしわくちゃ爺だ。これからの戦いに何か役に立つだろ。｣

｢ふおっふおっ、アイツらしいの…｣
祖父は、苦笑いをしていた。

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>> 39 次の朝…

ﾄﾝﾄﾝ
｢おはよう！砕、起きてる?｣
ノックする音が聞こえる。

(んっ、もう朝か…)
｢入っていいぜ。｣
頭をボリボリ掻くと、大きく背伸びをした。

ｶﾞﾁｬ
｢おはよう！昨日はみんなに飲まされてたわね。ふふっ｣

｢ああ、頭がガンガンするぜ。｣
(王が酔うと泣き上戸とは思わなかったが…)
砕がベットに腰掛けると
｢これからの旅、宜しくね。｣
ラリスは右手を差し出す。
｢ああ…｣
砕は戸惑ったが、右手を差し出し握手をした。

｢じゃ、私の荷物を門の前まで運ぶから手伝って。｣

｢へっ何で俺が…｣

｢当たり前でしょう。男なんだから!じゃあ、この部屋を出た廊下の突き当たりの右の部屋で待ってる。｣
そう言うと扉から出て行ってしまった。
｢はぁ～｣
(先が思いやられるぜ)
ため息を吐くとベットから立ち上がり、新しい黒装束に着替え枕元に置いていた剣を腰に装備すると、ラリスの後を追いかけて行った。

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>> 40 ｶﾞﾁｬ
砕が廊下に出ると、隣りの部屋の扉が開く。

｢爺ちゃん、おはよ!｣

｢砕か、儂は王に挨拶したら門まで向かうぞい。｣
｢お前は、どうするのじゃ? 王の所についてくるか、門の所で待ってるか?｣

｢俺は、ラリスの荷物運びを手伝わなくちゃならねぇ…｣
ボソボソと話す。

｢ふおっふおっ、もう尻に敷かれておるのか。｣

｢そんなんじゃねぇよ!｣

祖父は笑って王の所へ行ってしまった。

ラリスの部屋に着くと、一応ノックをする。
返事があり中へ入ると、十畳ほどの部屋には沢山の荷物がある。

｢これ全部持って行くのかよ…｣
余りの荷物の多さに、あ然とする砕であった。

｢そうよ。レディとしては、これでも少ないほうよ。｣

｢あのな、この部屋の物殆ど全部じゃねぇか!｣

｢いいから、運ぶの手伝ってくれないの…お願い…手伝って!｣
ラリスはうるうるしながら、砕の目を見つめる。

｢うっ…｣
｢分かったよ!手伝えばいいんだろ、手伝えば…｣
砕は、さっき祖父に言われた、尻に敷かれるという言葉を思い出していた。

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>> 41 ようやく、門の前まで荷物を運び終わると祖父がやって来た。その後からは王と長老･理事長･総隊長が続く。

｢ラリス、この旅は危険だが、あえてお前の成長の為に出す。しかと、自分の目で見て感じてくるのだ。｣
王は両肩を掴むとラリスを抱きしめた。
｢はい…ありがとう…王様。いえ、お父様…｣

｢二人とも頼んだぞ!!｣
祖父と砕に深々と頭を下げる。

｢ふおっふおっ、心配するな大丈夫じゃよ。｣
祖父は微笑むと王の肩をポンと叩いた。

｢門の外に宇宙貿易港に行く大型車を用意してますじゃ。今度、来られる時はゆっくりしていって下され。｣

｢これは、総隊長と私からの贈り物だ。｣
理事長が言うと、肩に担いでいた大袋を総隊長は目の前にドサッとおいた。

｢ここの特産物だ。船の中で食べてくれ。｣

｢特産物…まさか…｣
ｺﾞｿｺﾞｿ
｢やっぱりだぜ！ひゃっほ～!!｣
袋を覗くと砕は声を上げた。
中身は、食べるとほっぺが落ちるレンバスが山ほど入っていた。

大型車に荷物を全て積み終わると、皆に別れを告げ港に向かった。

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>> 42 宇宙港に着いた三人は荷物を港職員に渡し、パスを通すとシャドーmkⅢまで自動通路で進んでいく。
ｽﾙｽﾙｽﾙｽﾙ

｢わぁ～楽しみだわ！生まれて初めて宇宙船に乗るんですもの。｣

｢ふおっふおっ、誰かさんも目をきらきら輝かせておったの。｣
祖父は砕の方をちらっと見る。

｢へんっ!宇宙に出るのが夢だったからな。｣

｢本当は嬢ちゃんの頼みが無かったら、宇宙(そら)には出ないつもりだったんじゃが…この旅は遊びじゃないからの。二人とも肝に銘じとくのじゃぞ。｣

｢はい！｣
｢分かってるよ。爺ちゃん。｣
やれやれといった表情をする砕。
｢おっ、もうすぐ船に着くぜ!あの26番ゲートの銀色いのがそうだ。旧型だが速いぜ。｣
｢凄いわ。早く乗りたい。｣
二人は自動通路を飛び出すと駆けていった。

｢危ないぞい! ふおっふおっ、一体誰に似たのやら…｣
祖父の目は微笑んでいた。

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>> 43 シャドーmkⅢに乗り込むと、ラリスは船の中を見て回った。一つ一つ部屋を見るたび砕に質問する。

『そろそろ、デッキに来てシートに座ってもらうかの。』
船内スピーカーから祖父の声が聞こえる。
｢さあ、こっちだ!｣
｢ええ！｣
砕は、ラリスの手を引っ張って行った。
ﾌﾟｼｭｰ

｢やっと来たの。｣
｢そこのシートに座って四点ベルトをするのじゃ。｣

｢大気圏を突破したら、コスモワープするから、そのつもりでいるんじゃぞ。｣

｢コスモワープって何だよ?爺ちゃん。｣
シートに座りベルトをしながら質問する。
｢確か、時空間を通って距離を短くする事を言うんですよね。ただ、長時間走行すると今いる宇宙に戻れる保証は無いって聞いた事があります。｣

｢良く勉強してるの。誰かとは大違いじゃ。｣
祖父はチラッと砕を見る。
｢悪かったな!出来の悪い孫で…ふんっ!｣

PPP
｢ﾀｲｷｹﾝ ﾄｯﾊﾟ｣

ラリスは、自分が住んでいる惑星を見て感嘆の言葉をあげた。

｢さあ、しつかり捕まっとくのじゃぞ!｣
｢いつでもいいぜ!｣
｢はい！｣
素早く操作すると、レバーを引いた。

｢コスモワープ!!｣

ギュオォーーッ

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>> 44 凄まじいＧが体にかかりシートに押し付けられる。周りに見えていた星ぼしが線のように流れていく。

｢きゃっ！凄いＧが体にかかるわ。でも、窓の外は綺麗…｣

｢大丈夫かの?娘さん。砕は初めての大気圏突破で気を失ったがの。｣
祖父はﾆﾔﾘと小さく笑った。

｢ぐうっ!｣
(女の前で気絶なんか出来るか)

ﾌｫﾝﾌｫﾝﾌｫﾝ
ランプが点滅し警戒音がなる。

｢どうしたのじゃ?｣
PPP
｢ﾋﾀﾞﾘｺｳﾎｳｶﾗ ｾﾝﾄｳｷｶﾞﾂｲﾃｷﾏｽ!｣

｢なんじゃと!?だれじゃコスモワープに付いて来ているのは…スクリーンパネルに拡大して映してくれ!｣

｢ﾘｮｳｶｲ!｣

そこには見覚えのある船が映っていた。
砕とラリスは分からず、顔を見合わせている。

｢ｱｲﾃｶﾗ ﾂｳｼﾝｼﾃｷﾃﾏｽ｣
｢パネルに切り替えてくれ。｣

ﾌﾞｰﾝ
『久しぶりだな!』

｢ふおっふおっ、やっぱりお主か久しいのう。｣

そこには懐かしい顔が映っていた。

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>> 45 ｢然し、どうしてここにいるのじゃ?｣

『いや何、最近未確認の戦闘鑑が姫の惑星を攻撃してると聞いてな、近くのアイツの惑星に寄ろうしてたら懐かしい船が通り過ぎたんで、後を追って来たんだ。』

｢儂は、その嬢ちゃんから助けを求められての向かっているところじゃ。｣

『分かった、私も同行しよう。話しの内容は、後で我が王に通信しておく。』

｢そりゃあ頼もしいわい。｣

『姫がいる惑星の手前でコスモワープを止め普通走行に切り替えよう。未確認の敵がいるかもしれない。』

｢そうじゃな、手前の小惑星の港で落ち合うぞい。｣

『分かった!では…』
ﾌﾞｰﾝ

｢爺ちゃん、今の人は…寝室の写真に写っていた…｣

｢ああ、そうじゃ。35年前に一緒に戦った戦友の一人じゃ。｣

ギュオォーーッ

PPP
｢ｺｽﾓﾜｰﾌﾟ ｶﾝﾘｮｳ! ﾉｰﾏﾙﾓｰﾄﾞﾆﾓﾄﾞﾘﾏｽ｣

焦げ茶色の戦闘機もシャドーmkⅢの後を追ってくる。

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>> 46 小惑星の港に着いた船からみんな降りる。

ｳｨｰﾝ ｶｼｬ
焦げ茶色のハッチが開くと中から手足を鋭いウロコで覆われ背中には羽が生えている。腰には、長剣をさし柄の部分が竜の顔になっている。背丈は祖父より少し高い。

がしっ
二人は熱い握手を交わす。
｢いや～懐かしいのう…昔と全然かわらんな。｣
｢ふっ、お前は老けたなっ。｣

｢まだまだ力は衰えておらんぞ!むお～っ!｣
祖父は袖を捲り力こぶを作って見せる。
｢で、後ろにいる二人は誰かな?｣

｢孫の砕に、アイツの養女のラリスじゃ。｣

｢砕です。｣
(なんか、凄い感じの人だな…)
｢初めまして、ラリスと言います。 竜人族の惑星の方とは友好条約を結んで貿易していると父から聞いてます。｣
二人はぺこっと頭を下げた。

｢お前の孫にアイツの養女か…時を感じるな。｣

｢ふおっふおっ、子や孫と次の世代へとバトンタッチかの。｣
祖父は白髪の頭を掻く。

｢お前も本当に年取ったものだ。｣
竜人は笑った。

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>> 47 ｢お前たち、話しとる間、その辺を見物してていいぞい。｣
砕とラリスの方を見ると祖父は言った。
｢ラリス、街を見に行こうぜ。｣
｢ええ。｣
二人は、小さい子供のようにはしゃぎながら港を出て行った。

｢で、何か作戦を立てて姫の所には行っているのか?｣

｢そんなもんありゃせんわ!取り敢えず、嬢ちゃんの城に様子を見に行って、敵がいたら倒す。それだけじゃ!｣

竜人はシャドーmkⅢを指さすと
｢ふっ、お前らしいな…まあ、良いだろう。それと船は、一台で行った方が見つかりにくいだろ。お前の船に乗せてくれ。｣

｢それはいいが、お主の船はどうするんじゃ?｣

｢ここに置いて行く。俺の船も自動操縦が出来るんでな、ある程度の距離なら自分のところへ飛んで来てくれる。｣

｢ふおっふおっ、まずは、船に乗る前に酒樽を沢山買わんとな。｣
祖父は竜人にウインクした。
｢はっはは!昔話を肴に飲みながら行くか。｣
二人は大笑いをしながら酒屋に向かった。

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>> 48 ﾊﾟﾝﾊﾟﾝ
｢これで、酒樽は全部積んだかの。｣
手をはたき10個の酒樽を確認する。

｢ったく、見物してたらいきなり酒樽運べだもんな…参ったぜ。｣
砕はブツブツ文句を言っている。

｢ふおっふおっ、年寄りは大切にするもんじゃ。｣

(何が年寄りは大切にだ…樽を二個担いで歩いてたくせに…)

｢少しは、見物出来たからいいじゃない。｣

｢ちぇっ!｣
地面の小石を蹴飛ばした。

｢あれぐらいでフラフラしてたら駄目だな。まだ、足腰を鍛えなきゃいけないな。｣
竜人は笑いながら砕の腰を叩いた。

｢さて、みんな行くかの!嬢ちゃんが首を長くして待っとるわい。｣

｢そうだな、急いで姫を助けに行かなくてわ。｣

シートに座りベルトをすると船は走り出した。

小惑星の大気圏を突破し、女王がいる惑星に座標を合わせると自動操縦に切り替えた。
皆、シートから立ち上がって会話をしていると
船のハッチが開いた。
｢!?｣

｢だれじゃ!?｣
祖父は背中の奇妙な刀に手をかけ、鋭い眼孔でハッチを睨む。
竜人も腰の竜剣に手をかけハッチを睨む。

砕とラリスも構えをとっさに取っていた。

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>> 49 ﾋｭﾝ
ハッチから一つの影が素早く動く。
ｼｭﾝｼｭﾝ
祖父と竜人はそのスピードについて行く。
ｷｨｰﾝ
相手の剣を竜人は受け、祖父は横から斬りにいく。
ｶﾞｷｨｯ
相手は祖父の刀を弾き竜人の腹に蹴りを放っていた。

(はっ速い…)
砕とラリスは、その素早い攻防をただ見るので精一杯だった。

｢ふおっふおっ、久しぶりじゃの。｣
｢腕は落ちてないようだ。｣
ﾁﾝｯ ｶｼｬ
二人は鞘に収める。
ﾁﾝｯ
｢あんたまだこの船に乗ってたんだ。｣
髪が茶色く短めで背は165㎝で五十代の女性だ。

｢姉ちゃんも年をとったの。皺が…はぐわっ…｣

女性のボディブローが祖父の腹にめり込んでいた。

｢誰が年取ったって…｣
｢痛いのう…老人は優しくせんと罰が当たるぞい。｣
腹をさすりながら言う。
｢相変わらずだな。｣その二人のやり取りを見て竜人は笑った。
砕とラリスは何の事か分からずキョトンとしていた。

• << 51 久しぶりの再開に三人は酒盛りをしだした。 ｢然し、姉ちゃんはあの大戦の後、旅に出て音信不通だったが…今、何故ここにいるのじゃ?｣ ｢私は、自分の心の弱さと剣技を磨く為に旅に出ていた…最近、姫のいる惑星が攻撃を受けていると聞いて一番近い小惑星で情報収集をしてたのさ。｣ 女性は拳を握り締めた。 ｢自分の宇宙船があるんじゃないのか?｣ グイッとコップの葡萄酒を飲み干すと尋ねた。 ｢いや、その星ぼしで仲良くなった連中の船に乗っけて貰って旅をしていた。｣ ｢ふおっふおっ、姉ちゃんらしいの。｣ ｢それから、こっちはアンタに似てるけど…｣ ｢砕です。孫になります。｣ ペコっと頭を下げる。 ｢へ～っ!アンタが結婚するとは以外だね。こっちは耳が尖って浅黒いからダークエルフだね。名前は?｣ ｢ラリスです。｣ 砕と同じようにペコっと頭を下げた。

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