📖✏🚀parallelworld🌏

のそり

その男は、崖の上で腹ばいになり双眼鏡を覗いていた…。

195㎝の大柄で浅黒い肌をしている…全身黒装束を身につけている。その傍らには、一本の奇妙な形の刀が置いてある。

｢ふぁ～あ!｣

白髪の頭をボリボリ掻くと、仰向けになり空を眺めた。

｢城は平和じゃのぅ…あの大戦から35年か…儂も年を取ったな。｣


ZZzz....

鳥のさえずりと暖かい風に包まれているうちに男は、眠ってしまった。


『…ち…ん』

『じ…ちゃん』

『爺ちゃん!!』

｢んっ!｣

目を擦りながら、ゆっくり起き上がると声の主を見た。

｢なんだ、砕(ｻｲ)じゃにいか…どうした。｣

｢俺との修業は…｣

｢おっ、忘れておった最近物忘れが酷くての。｣

｢頼むぜ！爺ちゃん
…｣


地面に置いていた刀を持つとゆっくり立ち上がった。

スーッ

黒い鞘から刀を抜くと鋭い眼孔で砕を睨む。

｢…いつもは、馬鹿な事やってるのに、修業になると背筋が凍りそうだぜ!｣

砕は唾を飲むと、祖父に剣で挑んでいく。

ガキーン
ガキッ

｢ふぉっふぉっ、まだ、踏み込みが遅いのう砕。｣

｢ふんっ!まだまだっ!｣

しかし、砕は刀で軽くあしらわれる。

ガキガキガキッ

｢くっ、こいつでどうだ…｣
｢うおぉっ!｣

剣を構えオーラ(気)が体に漲(みなぎ)らせる。

｢三重残像おぅぅっ｣
｢ふん甘いわ、砕。｣
そう言うと

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>> 1 祖父は刀を構え直した。
｢七重残像…みねうちじゃ｣

バシバシビシビシッ
｢いたっ、げはっ、うぐ～っ｣

砕は、体のあちこちを叩かれうずくまってしまった。

｢みねうちじゃ。死にはせん。｣

砕は、頭のたんこぶをさすりながら
｢お～痛っ爺ちゃんの負けず嫌い…この前やっとオーラ(気)の溜め方と三重残像の分身習ったのによぉ…｣

｢ふぉっふぉっ、そうじゃったかの、忘れっぽいもんでの。｣

｢もう日が沈んで来たの…ふむ、暗くなる前に家に帰るとしょう。｣

(糞じじい、絶対あんたを抜いてやるぜ)

砕は、改めて心に誓った。

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>> 2 祖父は、山道を歩き小さな小川を軽くジャンプする。

｢おっとと…早く、こんか…日が暮れてしまうぞい。｣

砕は、澄んだ水を手でくんで飲むと、頷いた。

(70歳過ぎてるのに、達者すぎだぜ…若い頃はそうとう暴れたらしいが…)


祖父の家に着いたころには、辺り一面真っ暗闇になっていた。街からは山一つ離れた奥地に二人は住んでいる為、砕はいつも嫌でたまらなかった。

祖父はランプに火を灯すと、自分の木製チェアーに腰掛けると、椅子を漕ぎ出した。

｢なあ爺ちゃん、何で街に降りないんだ?｣

｢ふっ儂は一匹狼が好きだからの…｣

｢何、訳分かんねぇ事言ってるんだよ!不便でしょうがねぇよ。｣

｢何事も自然から学ぶのじゃ…砕よ!｣

｢信じられるのは、昔の仲間とこの妖刀…そして、お前じゃ。｣
｢サムソンと儂の娘、沙羅は良い夫婦じゃった…じゃが国の仕事で無理やり未確認の惑星探索に行かされ…｣

ｽﾞｽﾞｽﾞ

｢お前の五才の時に両親が、行方不明になって10年か…早いものじゃわい。｣

祖父は、椅子を漕ぐのを止めうつむいた。

｢爺ちゃん…｣

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>> 3 ｢砕よ、酒をくれっ!｣
｢ったく、毎日飲み過ぎだ…｣
｢殺生な儂の生きがいを取らんでくれっ。うっうっうっ｣

(泣いてるのか泣いてねぇのか…多分、嘘泣きだな。)

ドンッ
｢やれやれ、ほらよ!爺ちゃん。｣

瓶(かめ)から酒を花瓶みたいなコップに注ぐとテーブルに置いた。
｢ふぉっふぉっ、ありがたい。｣
ｺﾞｷｭ ｺﾞｷｭ ｺﾞｷｭ

(やっぱり、嘘泣きか…)
砕は、天窓から見える双子の月を見上げ溜め息をついた。

ぐ～っ
(昼から、何も食べてなかったな、焼いたパンとチーズを食べるか。)

砕は、棚から取り出すと椅子に座りパンをほうばるとミルクで押し流し祖父と話そうとした。
その時…

ドンドンドン

扉を叩く音が鳴り響いた。

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>> 4 (誰だ、こんな時間に…道にでも迷ったか…)
｢ちょっと待ってな、今開けるからよ。｣

ｺﾞﾄｺﾞﾄ
砕は閂(かんぬき)をずらすと、扉を開けた。
そこには、二人の鎧を着た兵士が立っていた。

(何で、こんな所に兵士が来るんだ。)

｢でっ、うちに何の用だい?｣

｢城に行っても、居ないと聞いて…この辺りに住んでいるはずだからと…やっとこの小屋を見つけたのです。｣
｢あの、この方はいますか?｣

見せられたのは、祖父であろう若かりし頃の写真だった…。
｢爺ちゃん、お客さんだよ！｣

ｷﾞｨｯ
｢よいしょっ｣

コップをテーブルに置き面倒くさそうに立つと、玄関までゆっくり歩いてきた。

｢儂に何の用じゃな。｣

二人の兵士は祖父の顔を見るなり、左手を胸に当て敬礼した。

(兵士から敬礼されるなんて、爺ちゃん一体何者…)

｢はっ！貴方様に我が星の女王が助けて欲しいとの事です。｣
｢最近、未知の惑星から侵略されているのです。どうか、我が星に来て下さい。｣

｢未知の惑星じゃと…｣
｢やれやれ、女王になっても昔と全然変わらんのう…嬢ちゃんは…｣

祖父はﾆﾔﾘと小さく笑った。

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>> 5 ｢で、どうすればいいんじゃ?｣

｢はい、私たちの小型船がこの近くの宇宙港に停泊してますので、そちらに乗っていただければ。｣

｢ﾌｯ!ならば、儂は自分の小型船で行きたいのじゃが…それでも、宜しいかな？｣

｢はい、それでも構いません。我が星に来て頂さえすれば。｣

｢爺ちゃん、そんなもの持っていたのかよ!｣

｢お前には、内緒じゃったがの。｣

そう言うと、祖父は小屋の外に出て歩きだした。
その後に砕と兵士二人が続く…２･３分歩いたところに茂みがあり、それを掻き分けると一つの切り株があった。

｢これじゃ!これこれ。｣

切り株の横を興奮したように祖父は掘り出した。

(何やってるんだ…)
砕と兵士二人は、ただその様子を見守るばかりだった。

｢あった!これにこうして…。｣

ｶﾞﾁｬ
ウイーン

地面が割れ地下に下りる階段が現れた。
｢ほれ、下りるぞ！｣
ｶﾂｺﾂ ｶﾂｺﾂ

そこには、最新の設備が整った船工場があった。

｢爺ちゃん、これは…。｣
砕は、ただただ驚くばかりであった。

(こんなのが、あったのか…初めまして知ったぜ！)

そこには、シルバーメタリックの小型艇があり、シャドーmkⅢと船の名前が記されていた。

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>> 6 ｢すっげーっ!!こんなもん爺ちゃん地下に持ってたのかよ。｣

砕は、目をキラキラ輝かせながらメタリックの装甲を触っている。

｢ふおっふおっふおっ!砕、たまげたかの爺ちゃんの船じゃ。｣

祖父は、船の真ん中程までゆっくり歩くと、手を当てた。

ｳ"ｨｰﾝ
シューウ

ハッチが開き階段が出てきた。

後ろから付いてきた兵士二人も、辺りを好奇心で見て回っている。

｢これは、前の大戦の時のものですか?｣
｢ああ、そうじゃ…だが、儂が少しずつ改良を加えたのじゃ。その辺の小型艇に負けんぞい。さぁ、中へ…｣

PPP
｢ｵｶｴﾘﾅｻｲ!ｺﾞｼｭｼﾞﾝｻﾏ!｣

｢ふっ船がしゃべった…すげぇ。｣

｢驚くのは、まだ早いぞ。こっちじゃ。｣

(然し、普段は街へ行かず自然と暮らせとか言ってる癖に…)
ﾁﾗｯ
｢砕、何か言うたかの。｣

｢いや、別に。｣
(変なところは、勘が鋭いんだからよ)

｢お話しの途中で、すいませんが宇宙港に停泊している船に戻るので我々はこれで。｣

祖父に左手を胸にあて敬礼すると兵士二人は、階段を上がり外へと出て行った。

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>> 7 ｢さて、我々も行くかの!この入り口のハッチから左が操縦室、右が寝室とバトルルームなんかじゃ。｣

｢爺ちゃん、なんかワクワクしてきたぜ。けどよ、その女王と何で知り合いなんだ?｣

｢ﾌｯ 昔の戦友じゃよ。｣

(ふ～ん。爺ちゃん昔は凄い人だったのか…)

｢遠出になりそうじゃから、出掛ける荷物をまとめて小屋から持ってくるんじゃ。｣

｢分かったぜ!｣

そう言うと砕は勢いよく階段を駆け上がって行った。

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>> 8 ｢ふぉっふぉっ!砕め余程この星から旅立てるのが嬉しいと見える。儂は今まで街に行かせなかったのは両親みたいに、お前までいなくなったら…

ｸﾞｽｯ!おっと、儂は飛び立つ前のメンテナンスでもするかの…｣
PPP
｢ｵﾏｴｻﾝﾓ ﾄｼﾄｯﾃ ﾅﾐﾀﾞﾓﾛｸﾅｯﾀﾝｼﾞｬﾅｲ｣
｢シャドー、五月蝿いわい。メンテナンスしてやらんぞい。｣
｢ｵ～ｺﾜｯ!ﾜｶﾘﾏﾘﾀﾖ ｺﾞｼｭｼﾞﾝｻﾏ!!｣

祖父はぐしゃぐしゃの顔を服で拭うと、小型艇のエンジン部分に歩いて行った。


ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｯ
｢爺ちゃん、小屋の物ありったけ持ってきたぜ!!｣

ｶﾞﾁｬｶﾁﾞｬ ﾋﾞ～ｯ
｢寝室に置いて、ちょっと儂の所に来て手伝ってくれんかの。｣

｢ああっ、直ぐ行く。｣
砕は、寝室の棚飾ってある二枚のセピア色に古ぼけた写真を手に取り眺めていた。
うっすら、記憶に残っている顔だった。
(これは、行方不明になった親父とお袋の写真…もう一枚はと…)

それは、35年前の大戦で仲間と肩を組んだり、おどけて笑ったりしている祖父の写真だった。

｢お～い!まだかの?｣
｢直ぐ行くよ。｣
(ったく、せっかちな爺だぜ)

眺めていた写真を棚の上に戻すと、祖父の方へ駆けて行った。

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>> 9 ｢おっ、やっときおったか。そこのスパナと圧縮ボンベを取ってくれ。｣

ｶﾞﾁｬ
｢これか、ほらよっ。｣

｢砕よ儂がやっている事を良く見て覚えるのじゃ…剣技にしても又同じじゃ。｣

｢わかってるって、爺ちゃんに、耳にたこが出来るぐらい聞かされてるからなっ…後は、『見て覚えたのを基本にし、応用出来るように工夫そして、鍛錬するんじゃ。』だろっ。｣

｢ふぉっふぉっふぉっ!分かってれば宜しい。｣

ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬガチャン

｢これでメンテナンスはOKじゃ。砕よ泥壁の柱に青いスイッチがあるじゃろ、押してみなさい。｣

｢んっ、これか!?｣
ﾎﾟﾁｯ
ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞゴゴ…
何処からともなく振動が鳴り響く。

ゴゴゴゴゴゴ…

｢うぉっ!なんだっ!!｣

祖父は、ﾆﾔﾘと小さく微笑んだ。

メタリック調のシャドーmkⅢの目の前の大きな岩盤が横に動くと、何処まで続いているのか分からない、大きなトンネルが現れた。

｢何ぼ～っとしとるんじゃ。さぁ、船に乗って操縦室に行くぞい。｣

｢お、おうっ｣
砕は、我にかえると慌てて船に乗り込んだ。

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>> 10 ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ

｢砕よ、ここは最新の設備がある工場じゃがの、オートマチックのロボットアームで修理しても、この船の大事な部分は人の感覚(勘)でなければならんのじゃよ。｣

｢それは、船の操縦も同じ事なのじゃ…｣

ｳｨｰﾝ

ｽﾁｬｯ
祖父は、シートに座りベルトをした。
｢お前は、儂の横のシートに座り四点シートベルトをするのじゃ。｣

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ
祖父は手馴れた動作で頭上のボタンを入れていく。
ｶｼｬｶｼｬｶｼｬ
続いて目の前のスイッチを目に見えない早さで打ったかと思いきや、左右のレバーを握っている。

(爺ちゃん、すげー早業だぜ…)

｢ふぉっふぉっ、10年ぶりの操縦じゃわい。｣
｢えっ、今なん…｣
左右のレバーを引くガシャｯ
｢mkⅢ、発進じゃーっ!!うほ～っ、砕しっかり捕まっておれよ！｣｣

シュゴーーッ
一気にトンネルの中を抜けていく…

｢ぐをっ!｣
初めての体験で砕は体が凄まじいＧで持っていかれそうになる。

(くっ苦しい…体が千切れそうだ…)
そう思ったとき、

パーッ

っ目の前が明るくなった。

｢爺ちゃん、すげぇ空飛んでる。この船空飛んでるよぅっ!｣
街が段々小さく見え、遠くには自分が住んでいる小屋も見えた。


｢砕よ、これからが本番じゃ！｣
そう言うと違うレバーに手をのせた。

｢えっ！?｣

｢ブースター並びに大気圏シールドONじゃっ｣
ﾋﾟｯ ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬ
ボシュ
ギュオーーッ

(椅子に押しつぶされる～っ)

ﾌﾞｸﾌﾞｸ ガクッ
砕は、気絶してしまった…

｢ふぉっふぉっふぉっ。何とも、情けない孫じゃわい。｣

砕が目を覚ました頃にはもう、そこは宇宙の大海原に出ていた。

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>> 11 ｢うっ!｣
(そうか、余りのGで気を失ったんだったぜ)

｢すっ、すげー!綺麗だ…｣

初めて自分の星から出た砕は、シートから立ち上がり、満天の星空を見回すと感嘆の声をあげた。

ｳｨｰﾝ
ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ

｢やっと目が覚めたようじゃの。ほれっ｣

祖父は、アツアツの飲み物を手渡した。
ｽﾞｽﾞｽﾞッ
｢あちっ!ふうーっ、ふうーっ。でも、生き返るぜ!サンキュー、爺ちゃん。｣
(気が利くじゃねぇか)

｢ふおっふおっふおっ!さっきまで、気絶していたみたいじゃがの。｣
砕の顔を下から覗きこんだ。

｢あれは…いやその～あれだ、急に眠たくなったんだ…｣
しどろもどろに答えた。

｢ふおっふおっ、儂が初めての時は、ワクワクして大丈夫じゃたがの。｣
祖父は小さく微笑んだ。

ｽﾞｽﾞｽﾞ
(じじい…前言撤回だぜ)

｢これからバトルルームに来てくれ!｣

｢そこで、何するんだよ!｣

｢来てからの、お楽しみじゃ。｣

ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ
ｳｨｰﾝ

飲み物を、一気に飲み干すと砕は、祖父の後に続き操縦室を出て行った。

• << 15 バトルルームの中に入るとすぐ横の長椅子に祖父は横たわると ｢砕よ、この部屋は儂が自分を鍛える為に使った場所じゃ。レベル20まであるが、お前のレベルはまだレベル３といったとこじゃな。｣ ｢…。｣ 砕は、黙り込んで祖父の話しに耳を傾けた。 ｢シャドー、バトルレベル３ 重力５Ｇ 敵ホログラム二人 スピード1.5倍 武器は剣 じゃっ!!｣ PPP ｢ﾘｮｳｶｲ ﾊﾞﾄﾙﾊﾞｶﾉ ｺﾞｼｭｼﾞﾝｻﾏ｣ ｢馬鹿者!!一言多いわい!!｣ ｢おっと、砕よ頑張るのじゃぞ。｣ ｢へんっ、爺ちゃんそんなの楽勝だぜ!｣(俺の凄さを見せつけてやるぜ) 砕は、やる気満々で自分の剣を腰の鞘から抜くと構えた。 ｢さあ、どっからでも、かかってきやがれ!!｣ 祖父はﾆﾔﾘと笑うとシャドーに特訓開始を命じた。

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>> 13 😂ありがとう！
｢話つく｣と外伝を読んで貰えて、感謝感激雨霰💦
地道に更新するけどこれからも応援お願いします。
m(_ _)m
アル🍺

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>> 12 ｢うっ!｣ (そうか、余りのGで気を失ったんだったぜ) ｢すっ、すげー!綺麗だ…｣ 初めて自分の星から出た砕は、シートから立ち上がり、… バトルルームの中に入るとすぐ横の長椅子に祖父は横たわると

｢砕よ、この部屋は儂が自分を鍛える為に使った場所じゃ。レベル20まであるが、お前のレベルはまだレベル３といったとこじゃな。｣

｢…。｣
砕は、黙り込んで祖父の話しに耳を傾けた。

｢シャドー、バトルレベル３ 重力５Ｇ 敵ホログラム二人 スピード1.5倍 武器は剣 じゃっ!!｣
PPP
｢ﾘｮｳｶｲ ﾊﾞﾄﾙﾊﾞｶﾉ ｺﾞｼｭｼﾞﾝｻﾏ｣
｢馬鹿者!!一言多いわい!!｣

｢おっと、砕よ頑張るのじゃぞ。｣

｢へんっ、爺ちゃんそんなの楽勝だぜ!｣(俺の凄さを見せつけてやるぜ)

砕は、やる気満々で自分の剣を腰の鞘から抜くと構えた。

｢さあ、どっからでも、かかってきやがれ!!｣

祖父はﾆﾔﾘと笑うとシャドーに特訓開始を命じた。

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>> 15 ｽﾞﾝｯ
軽い重力が砕にかかる。

｢ふんっ!これくらいヘでも無いぜ。｣

カキィン ｶｷｯ
カキィ

｢うっ…｣

ホログラム二人の連続攻撃に徐々に押され、防戦一方になっていく。

カｷｯカンカンカｷ－ｯン

｢うわあっ!｣
砕の剣が弾かれ相手の剣が喉もとをとらえる。
｢そこまでじゃ。｣

ﾌｯ ﾌｯ
ホログラムが消えると祖父は言った。

｢ふおっふおっ、お前は一対一なら、その辺の兵士には楽勝じゃろう…然し、これから先そんなことは、まずめったに無いじゃろう。｣

｢極める為には、『見る』のでは無く『視る』、『聞く』のではなく『聴く』のじゃ!!心身ともに己を鍛えるのじゃぞ。そして、友と呼べる仲間がピンチの時は、体を張ってでも助けるのじゃ。｣

｢はぁ、はぁ。あぁっ…｣

頷くと、ぐったり座り込んでしまった。

｢まぁ、その内に分かってくるわい。｣

そう言うと、祖父は長椅子からゆっくり立ち上がり砕にタオルをかけた。

｢隣りの部屋にシャワールームがあるから、汗を流しとくのじゃぞ、風邪引くからの。儂は、寝室で横になろうかの…｣
ｶﾂｺﾂ ｶﾂｺﾂ
ｳｨｰﾝ

(くっ、俺は井の中の蛙だな…だが、爺ちゃんが言う通り、もっと己自身を鍛えて絶対レベル20をクリアーしてやる。そして、爺ちゃんあんたを超えてみせる)

握り拳を握り締め、新たな決意をする砕であった。

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>> 16 ｢ふうむ、まだまだじゃの…｣

ｳｨｰﾝ ｶｼｭ

白髪の頭を掻きながら祖父は部屋に入ってきた。

棚から写真立てを取ると寝室のベットに腰掛けた。

(愛娘、沙羅…。サムソン…。お前たちが行方不明になってから10年…砕は、立派に育ったかの…)
ｽﾞｽﾞｯ
いつの間にか、目に涙が溜まっていた。
PPP
｢ﾎﾝﾄ ﾄｼﾄｯﾀﾗ ﾅﾐﾀﾞﾓﾛｸﾅｯﾀﾐﾀｲﾀﾞ｣

｢ﾌｯ儂らしくもないな。」

袖で拭うと、棚から一升の酒瓶を取り出し、一気に飲み干した。

｢ぷは～っ!この近くにあいつの星があったの、ちょっくら寄り道するかの。｣

｢シャドー、予定変更じゃっ!!Ｓ座標1191ポイントに向かってくれ!!｣

｢ﾔｯﾄﾗｼｸ ﾅｯﾃｷﾀ!｣

｢ふん、五月蝿いわい。｣
言葉と裏腹に祖父は笑っていた。

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>> 17 『砕、今すぐデッキに来るのじゃ。』

祖父は、操縦室のマイクに叫ぶと、操縦レバーを握りまだかまだかと砕が来るのを待ちわびている。

ｳｨｰﾝ ｶｼｭ

｢何か、あったのかよ!｣
髪を拭きながら、慌てて部屋に入ってきた。

｢いや、何!友人の星に寄り道するからの。早くシートに座ってベルトをするんじゃ。｣

｢はいはい、分かったよ！｣
(ったく、王女様のところに急ぐんじゃ無かったのかよ!)

PPP
｢ﾀｲｷｹﾝ ﾄﾂﾆｭｳﾏﾃﾞ 1ﾌﾟﾝﾏｴ｣

｢大気圏耐熱シールド ON!!｣


｢ﾀｲｷｹﾝ ﾄﾂﾆｭｳ｣
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

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>> 18 水と森が綺麗な惑星…35年前の大戦で四つに分かれていた国が一つにまとまり、新たな王国となっていた。

｢爺ちゃん、綺麗な星だなっ!｣

｢ふおっふおっ。ああ、そうじゃよ。空気がうまいところじゃ。｣

ﾌｼｭｳ
祖父は貿易宇宙港に小型船を止めた。

ｻﾞﾜｻﾞﾜ
｢まもなく、ＷＡ便が出航します。搭乗手続きのまだの方は…｣
ｻﾞﾜｻﾞﾜ

宇宙航行パスを機械に通すと、中央待合い場まで二人は歩いた。

砕は初めての事だらけで、しゃべりもせずただ辺りをキョロキョロ見ているだけであった。

ｻﾞﾜｻﾞﾜ
｢安いよ、安いよ！この星特産のレンバスが三個でたったの1000サーナ!!食べたら、ほっぺが落ちるよ…そこのお二人さん試食どうぞ。｣

｢おっ、サンキュー。んぐんぐっ、うめ～っ!｣
｢これ買っていこうぜ。爺ちゃん!!｣

｢ふおっふおっ、帰りにじゃな。｣
ｻﾞﾜｻﾞﾜ

大戦後、一致団結し復興させ昔の賑わいを取り戻していた。

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>> 19 この星の種族は耳が尖っていて、真っ白い肌か大半で茶褐色の肌は少ない。ここは皮で出来た製品が多く丈夫に加工してある衣類や鎧にバックなどの小物が、貿易宇宙港にところせましと売ってある。
ｻﾞﾜｻﾞﾜ
｢これも、あっこれもいいなぁ!｣

砕は、あちこちの店を覗いては品物を手に取っていた。

ｻﾞﾜｻﾞﾜ
｢ほりゃ、砕行くぞい!ふおっふおっ、まあ、分からんでもないがの。ちょっと、会いたい人が居るんでの、先を急ぐぞ。｣

｢え～っ!ねぇねぇ、爺ちゃんもっと見ていこうぜ。｣

砕は祖父に襟首を掴まれ引きずられていった。

宇宙港の外に出ると、無人タクシーに乗り込んだ。

(うわっ、少し宙に浮いてる)

『ドチラマデ、イカレマスカ?』

｢王宮までじゃ!｣

『カシコマリマシタ』

ｳ"ｨｰﾝ
走り出すと砕は、祖父に尋ねた。

｢爺ちゃん、王宮って…この星の偉い人がいる所じゃ…｣

｢偉いかどうか分からんが、着いてからのお楽しみじゃ。それまで、一寝入りするかの…｣

｢くうっ、じゃ俺も寝る。｣

二人とも直ぐに寝息をたてていた…

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>> 20 ﾋﾟﾛﾛｯ
『トウチャクシマシタ!』

｢着いたみたいじゃの。よく寝たわい。砕、起きるんじゃ!着いたぞ。｣

｢ふぁ～っ。よく寝た!｣
寝ぼけた目をこすると、背伸びをした。
ｶﾞﾁｬ
二人は、無人タクシーに料金を払うと車から降りた。
ﾊﾞﾀﾝ
『ドウモ アリガトウゴザイマス』
無人タクシーは、今来た道を戻っていった。

ズ ン !!

｢凄えぇーっ!!｣
砕は、目の前のあまりに高い城壁に圧倒された。
だが祖父は、何事も無かったように門番が居る方へ歩いて行く。
｢爺ちゃん、待ってくれよっ!｣

大きな門の前に銃を掲げ皮鎧を装備した門兵が立っている。
｢何だ貴様等は、ここは王の許可がないと通れんぞ!｣

二人の門兵は銃を構える。

｢うっ!｣
(おいおい、大丈夫かよ…)
砕は、腰の剣に手をかけようとする。

｢砕、待ちなさい。ちょっと、王に会いたいのじゃが。通してくれんかの…｣
そう言うと、祖父は腰袋からこの星の紋章と同じブローチを出して見せた。

｢まっ、まさか!貴方様は…顔を知らぬとはいえ失礼いたしました。おいっ｣

｢はっ!只今、門を開けます。この事は、王にはご内密に…｣

｢ふおっふおっ、門を開けてもらえば、何もいわんよ。｣

｢有り難うごさいます。｣

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>> 21 『開門!!』

ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞゴゴゴゴ

ゆっくりと大きな扉が開いていく。

｢お二人さん、すまんの。｣

｢いえ、とんでもありません。｣
｢ささっ、お通り下さい。｣

門兵は深々と頭を下げた。

｢さあ、行くかの。｣
｢ああっ｣
(やっぱり爺ちゃん、ただ者じゃねぇな)
ｻﾞｯｻﾞｯ
二人は門をくぐって中庭へと進んだ。

中庭は綺麗にガーデニングしてあり、砕はさっきのブローチと同じ青い薔薇が目についた。

｢なあ、爺ちゃん。さっきのブローチは何なんだ。気になってしょうがねぇよ!｣
｢ふおっふおっ、これか…これは35年前に友情の証しでここの王に貰ったものじゃ。｣
祖父は、懐かしげにブローチを見つめる。
｢ふ～ん。｣

ｻﾞｯｻﾞｯ
しばらく歩くと王宮に着いた。

｢お久しぶりですじゃ!｣
不意に二人の横からしゃがれた声をかけられる。

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>> 22 ｢あんたは…懐かしいの。｣
｢爺ちゃん、誰だい?｣

｢初めましてじゃな!儂はタカと言いますじゃ。｣
髪はなく白髭をたくわえ焦げ茶色のフードを羽織り、右手で杖をついている老人だった。
｢して、ここには何用で?｣

｢いや、用事で久しぶりに宇宙(そら)に出たんでな、ついでじゃ。｣

｢王も、さぞ喜びになられるじゃろ。｣
｢ささっこっちへ。｣
二人は、老人に案内され、だだっ広い赤絨毯の上を歩いて行く。

｢ここは、昔のままじゃな。｣
辺りを祖父は見回しながら歩く。

壁にはひびが入り昔の大戦の爪痕をのこしたままだ…

｢王が、また戦(いくさ)が起こらないように、戒めの為この王宮だけ建て替えていないのですじゃ。｣
｢ふおっふおっ、あいつらしいの。｣

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>> 23 王の間に着くと、扉の両端に、体の大きな衛兵が立っている。
｢通してくれ、数十年振りに、王の知人が訪ねて来たのじゃ。｣
老人が言うなり
｢はっ！｣｢はっ！｣
と両端の衛兵は敬礼した。

ぎぃぃぃっ

扉が開くと、老人は足早に中に入って行った。その後に祖父等も続く。

｢おおっ…｣
祖父を見るなり玉座から立つとマントを翻し、５･６段の階段を飛び降りて、駆け寄ってきた。
背丈は170㎝半ばの
髪は金髪で色白く凛とした美声年だ。緑をベースにした金の草花が刺繍してある服を纏っている。

ｶﾞｼｯ
｢久しぶりじゃの…35年前と全然姿が変わらんの…羨ましいわい。｣

｢本当に久しぶりだよ！でっ、こちらの方は、似てるけど…まさか…｣

｢はっ初めてまして、砕と言います。｣
(緊張するぜ!)
｢ふおっふおっ、儂の孫じゃっ!!｣

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>> 24 (然し、王様って言うより王子様だな)

｢孫か…私は結局誰とも結婚しなかったからな…憧れるよ。｣
王は少しうつむきながら話す。

｢儂はあの姉ちゃんと結ばれるもんじゃと思っていたからの。ふおっふおっふおっ!｣

｢あの～っ、爺ちゃん昔話で盛り上がっているとこ済まねえんだがよ。王様が昔と姿が変わらないってどういうことだ?どう見ても二十後半にしか見えないぜ。｣

｢儂等と時間の流れというか十倍以上寿命が違うのじゃよ。｣
｢だから、こやつの年齢は290歳近くなのじゃよ。｣

｢…。｣
砕は、王を見ながら言われた年齢とあまりのギャップの違いに驚いて言葉を失った。

｢で、孫を連れてここまで着たって事は何かあるんだろ。｣
王はﾆﾔﾘと笑った。

｢おっ、さっしがいいわい。流石は、王になったことはあるの。｣

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>> 25 砕の頭をﾎﾟﾝﾎﾟﾝと叩きながら
｢こいつに、ちょっとした魔法に対しての戦い方を教えて欲しいんじゃ。｣

｢えっ!!｣
(そんな事、聞いてないぜ)

｢ああ、良いよ。せっかく来たんだ。｣
ﾆｺﾆｺしながら、横にいる老人に話しをする。
老人は王の間を出てどこかに行ってしまった。
(一体、何をさせるんだ…)

｢砕よ！何事も勉強じゃ。｣

｢砕、ちょっと左手を出してご覧。｣
王は人差し指に指輪を嵌めた。
｢これは、少しだがオーラ(気)を高める事が出来る。｣

ﾊﾞﾀﾝ
｢失礼します。｣
一人の砕と同じ位の年の茶褐色で肩までの黒髪の女の子が入ってきた。

｢王様、何用でしょうか?｣

｢ああ、ちょっと知人の孫と普段魔法学校で習っているみたいに戦って貰いたい。｣

｢えっ、あの方とですか!?｣
女の子は、チラッと砕の方を見る。

｢ふんっ、俺は、女とは戦わねえ!｣
ﾌﾟｲｯと横を向く。

｢貴方、女だと思って馬鹿にしないでよね!｣
｢分かったわ！相手させてもらいます！｣
右手を前にし炎の呪文を唱える。

｢ふおっふおっ、面白くなってきおったわい。｣

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>> 26 玉座に王は座り、その横に腕を組んで祖父は立ったまま観戦する。

｢あの娘は、魔法学校で一番の優等生だからね。ただ、負けん気が強いのがたまに傷だけど…｣

｢お前さんが好いとった誰かさんみたいじゃの!｣

｢うっ、それは…｣

｢まぁ、これくらいにしといて…砕は、苦戦しとるみたいじゃの。ふおっふおっ｣
祖父は、眉毛をいじりながら話している。

｢魔法を知るには、直に戦った方が感覚がつかめるからね。誰かに、昔教わったからね。｣
微笑みながら、祖父の方を見る。

｢儂か!そんな事もあったかの…まあ、実戦あるのみじゃな。｣


ﾎﾞｼｭ ﾎﾞｼｭ ﾎﾞｼｭ
｢女に手を出さない
んじゃなく、出せないんじゃないの。｣
次々と女の子の右手から火の玉が襲う。
｢くっ!!｣
(なめやがって…)
砕は、火球を避けながらオーラ(気)を練っていく。

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>> 27 ｢やっぱり、私に反撃することも出来ないの!｣
まだまだ、火の玉の連続攻撃は続く。

ﾌﾟﾁｯ
｢怪我したって知らねぇぞ!!｣

剣を腰から抜くと段々剣先にオーラを溜めだした。
ﾋﾟｶｯ
更に、先ほど王にもらった指輪が輝きだす。
(何か、気が湧いて来るようだぜ！爺ちゃんから習ったブレイドの応用した技を試してやる)

｢いくぜっ!!
スティンガー･ブレイクウゥゥ－ッ!!!｣
砕は剣を槍のように突き一気にオーラを放出させる。

｢きゃっ、何!?｣
女の子は避けられそうにない。

ドゴオオォォ―ン

｢しまった!!｣
ふっと我にかえる砕
(やべっ、手加減するの忘れた)

ズゴゴゴゴｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ
地響きがおさまり土煙りが消えていく…オーラが当たった、王宮の壁に穴が開き外の景色が覗いていた。

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>> 28 ｢おい、大丈夫か!?｣
砕は慌てて、女の子の場所に走って近づく。
だが、その場に倒れているはずの女の子の姿は見当たらなかった。


ﾁｬｷ
｢うっ!!何だと…｣
(いつの間に、俺の背後へ)
喉元に冷たく鋭い感触があたる。
｢ふふっ、私の勝ちね!｣

｢勝負あり!そこまで!!｣
王の言葉で女の子は、氷で作った短剣を引っ込める。

｢ふおっふおっ、どうじゃな砕!女の子にしてやられた感想は!｣

｢…。｣
(馬鹿な、確かに相手をとらえたと思ったのに…)
砕は、訳が分からず跪(ひざまず)いていた。

｢貴方、何故って顔をしてるわよ。｣

｢一体どうやって…｣

｢イリュージョンの魔法よ。途中から貴方に幻を見せてたのよ。｣

｢魔法には、色々な種類があるそれを知って貰うために、お前をここへ連れて来たのじゃよ。｣
階段を降りながら話す。

｢たまには、いい薬じゃ!こういった戦いがこれから先あるかもしれんからの。｣
砕の肩を軽く叩くと祖父は女の子ににこやかに言った。
｢見事なもんじゃ、これほどの使い手とは。｣

｢あっ有難うございます。｣
女の子は照れながら頭を下げた。

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>> 29 それから目を輝きさせながら、まじまじと祖父の顔を見ると

｢私、ラリスと言います。35年前の大戦の時まだ小さくてよく分からなかったんですけど、冬の国の【冬の大吹雪】を魔法学校の歴史で習いました。まさか、王様以外に、ここでこの星の英雄の一人に会えるなんて夢にも想いませんでした。握手して下さい。｣

女の子は、一気にまくし立てると、右手を衣服で拭き、祖父の前に差し出した。

｢はっはっは、暴れん坊も、今じゃ英雄か。｣
王は、その光景を見て笑いながら言った。

｢ああ…儂みたいな爺の握手でいいならいくらでも…｣
祖父は白髪の頭を掻きながら、握手に応える。

｢けっ!｣
女の子に負けた砕は、ふて腐れていた。

ﾊﾞﾀﾝ
その時、王の間の扉が勢いよく開き二人の男が入ってきた。

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>> 30 ｢おお～っ!久しぶりだな！元気にしてたか? 然し、老けたなっ。｣
白いフードを羽織っている男は一番に近づくと祖父の背中をバシッと叩いた。

｢珍しい奴が来たもんだ。｣
次に鼻髭をした皮鎧を身に付けている男は言う。

｢おおっ!久しぶりじゃの。元夏国の王に元秋国隊長!!｣
三人は堅い握手をする。

｢さっき、長老にラリスと一緒に二人を呼んで貰ったんだ。懐かしいだろ。｣
王は祖父に言うと、玉座から降り召使いに宴の準備を伝えた。


｢ねぇねぇ!貴方の名前何て言うの?戦った中でしょ。教えてよ。｣
にこやかにラリスは尋ねる。

｢…さ… 砕だ。｣

｢砕、良い名前ね。私は、ラリス宜しくね。｣
｢宴まで時間があるから、王宮の外案内してあげる。｣
ラリスは砕の手をとると引っ張った。
ﾄﾞｷｯ
｢ああっ｣
(さっき、戦っててきずかなかったが…よく見ると、可愛いじゃねぇか…)
砕は、どぎまぎしていた。

｢爺ちゃん、ちょっと見物に行ってくるぜ。｣

｢わかった。宴には帰ってくるんじゃぞ!｣

｢はいはいっ。爺ちゃんは、昔話で盛り上がってくれ!｣｣
(ったく、小せえガキじゃないんだからよ)
頭を掻きながら答えた。

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>> 31 ｢うふふっ!｣
ラリスは口に手を当て笑っている。
｢てめぇ～何笑ってやがる。｣
｢だって…さあ、行きましょう。｣
二人は王に挨拶すると王の間から出て行った。
ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ
｢ねぇ貴方、此処の星に来たって事は、宇宙(そら)を飛んだんだよね。どうだった?｣
｢初めて出た時、凄え綺麗で…宇宙に吸い込まれそうだった…｣
ﾋﾟﾀｯ
｢はあっ、私も出てみたいなぁ…宇宙へ。｣
ラリスはため息をつくと渡り廊下の窓から空を眺める。
｢その気持ち分かるぜ。俺様の場合、どこにも行けなかったからな…良かったら、一緒に来るか?俺、爺ちゃんに頼んでやるぜ！｣
真面目に砕は答える。
｢本当に!!行きたい。 あっ、でも王の許可が無いと駄目だわ。｣
ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ
再び、二人は歩きだす。
｢私ね、王の親戚の子何だけど…大戦で両親を亡くして、その後、身よりのない私を王が親代わりで引き取ってくれたんだ…｣
｢でも、何か冒険してみたいって言うか…女の私が言うのもへんかな?｣
｢いいや、全然おかしくねぇよ。俺も五歳から両親が行方不明で爺ちゃんに育てられたんだ。修行は厳しいが良い爺ちゃんだぜ。｣
｢くすっ、何か似た者同士だね。｣
ｷﾞｲｨｰｯ
｢良い天気だ!ん～｣
王宮の外に出ると砕は背伸びをした。

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>> 32 一方…

｢でっ、宇宙に久しぶりに出たのには、何か理由があるんだろ?｣
王はウインクしながら祖父に尋ねる。

｢うっ、それは…じゃな…｣
祖父は口を濁す。

｢お前らしくないな。一緒に戦った仲だろ。｣
｢そうだ、白状しろ。｣
後から来た二人にどやされると、大戦仲間の姫が謎の惑星から攻撃を受けているのを渋々話した。

｢何故それを早く言わない!!｣
王は怒鳴ると、扉の方に向かう。

｢はあ～っ!やっぱりじゃ…だから、話したくなかったんじゃ。｣
祖父はため息をつく。

｢王、どちらへ!｣

｢旅支度をしに行くんだ。｣
ﾊﾟｼｯ
二人の手を振りほどく。

｢然し…｣
二人は戸惑いながら王を止める。そして、衛兵を呼んだ。

ｶﾞﾁｬ
『総隊長お呼びで…』

｢王を止めるんだ!｣

『はっ！』

｢離せ～っ!!｣
ようやく四人掛かりで止める事ができた。

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>> 33 ｢王よ!そなたは、この星の統率者じゃ。昔ならともかく、今は、この星の為に連れていかれんのじゃ。分かってくれ…｣
祖父は肩を震わせている。

『王っ!!』
魔法学校理事長(元夏国王)と総隊長(元秋国隊長)は叫んだ。

｢くっ…｣
王は肩を落とした。
｢ならば条件がある。私の代わりにラリスを連れて行って貰おう。あいつは、ある程度の魔法と弓の腕は育ての親の私が認める。きっと役に立つはずだ。｣

｢然し…分かった。そうするかの…｣
少し悩んだが了解した。

｢それと理事長。至急、例の薬を持って来てくれ。｣

｢はい。｣
理事長は挨拶をすると扉から出て行った。

｢総隊長。今日は旧友の為の宴、全兵士も参加するように伝えてくれ。｣
｢はっ！｣
敬礼すると総隊長も扉から出て行った。

｢それから、娘を頼んだぞ！可愛い子には旅をさせろって言うからな。｣

｢ああ、分かっておるわい。孫も同じ気持ちで、連れて行きよるわい。｣
｢よし、今日は何もかも忘れて飲むぞ！お主も、王ではなく昔の戦友として飲むぞ！｣
祖父はﾆﾔﾘと笑った。
｢ああ、そうだな…｣王も笑い返した。

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>> 34 王宮で宴が始まる直前まで砕とラリスは街で見学していた。
街は賑わい、近代的建物と古い建物が入り混じっていた。
通りは、隙間がないくらい布テントの屋根に地面には絨毯を敷き、日用雑貨や果物、獣の肉を吊ったりした出店など色々な物が所狭しと売られている。

二人は、そこの果実ジュースを片手に店を回っていた。

｢いいな、こういう雰囲気好きだぜ。｣

｢そうね、私も大好き。でもね、毎日の光景もいいけど、私他の惑星に行って、どんな物があってどんな暮らししてるか、この目で実際見てみたいの。｣

｢そうだな!俺も、刺激がほしい。んっ…｣
砕は何気なく、街の時計に目をやり驚いた。

｢やっべ～っ!もうこんな時間だ。｣
｢本当だわ。急がなくちゃ！｣
ﾋﾟｭｳ
ラリスは一時的動きが速く補助魔法をかけ、二人は王宮を目指し駆け出した。

夕方王宮に到着すると宴は始まり祖父は皆と飲んでいた。

｢ふおっふおっ、遅かったの。でっ!デートは楽しかったかの。｣

｢ばっ、馬鹿やろう！爺ちゃん、ただの街見学だぜ。｣
顔を赤らめ慌てて砕は答える。
(確かに、楽しかったけどよ)
｢図星じゃの。｣

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>> 35 ｢何が、図星なんだよ!｣
(変な勘働かせるなよなっ)

｢お前が、あの娘に好意を抱きだしたということじゃ!ふおっふおっふおっ｣
そう言うと祖父はグラスの葡萄酒をグイッとあけた。

｢別に…｣
砕も負けじとグラスに注ぎ、空にしたがむせてしまった。
｢ゲホゲホっ!｣

｢ぷは～っ!まだまだ強い酒は飲ませられんの。｣
(糞じじいっ)
祖父は次の瓶に手を伸ばし栓を抜いている。

砕は辺りを見回すと、天井には、巨大なシャンデリアが五つあり眩い光を放っていて、床は赤い絨毯で敷き詰められており、壁は大理石で出来ている。三十ちかくあるテーブルには、今まで見たことがない肉料理や果物など並べられている。そして、心地よいクラッシックの演奏が聞こえてくる。
真ん中では数組の男女が、手を取り合いその曲に合わせ踊っている。

と、そこへ王とラリスが近づいて来た。

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>> 36 ﾁｨｰﾝ
祖父と王はグラスを合わせ乾杯する。

｢相変わらず飲むのは強いな。昼間の話しをラリスにしたら、直ぐにいい返事を貰えたよ。｣

｢ふおっふおっ、それは良かっふたの。｣
チーズを口に入れたまま喋る。

｢まさか、王(父)の口から砕と話したものが出るなんて、思いも寄らなかったからビックリしちゃった。これから、お世話になります。宜しくね。明日、出発だから準備しなくちゃ!｣
ラリスは砕に近づくと、王から聞いた祖父との会話の一部始終を一気にまくし立てた。

｢本当か!?良かったじゃねぇか。｣

｢うんほんと、夢みたい。じゃ私部屋に行って来る。｣
ラリスは、そう言うと行ってしまった。

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>> 37 砕は、ラリスが船に乗ることに胸を躍らせた。

(早く、明日が来ねぇかな)
一人テラスに出て、双子の月を眺めた。風が優しく砕を包んでいく。

その様子を見ていた王が隣りに近づく。

｢私は35年前の大戦で、戦いを通じて仲間ができ、そして色々な事を経験し成長できた。君もそしてラリスもこれから先、私たちのかわりに時代を引き継いでいくだろう…あの子にも色々と経験してもらい成長してほしい…砕、ラリスは気が強い娘だが、優しい子だ。旅の間宜しく頼んだぞ！｣
王は、月を見ながら言った。

｢はっはい！｣

王は、砕の返事に微笑むと、宴に戻って行った。

砕は、王の言葉を胸に刻み、ラリスを守ることを心に誓った。

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>> 38 深夜になり宴も終盤にさしかかった頃、魔法学校の理事長が何か袋を持って近づいて来た。

｢この薬を使ってくれ。これは、お主しか飲んだら駄目だぞ!!｣
理事長(元夏国王)は、10本の青い瓶を皮袋から見せる。

｢なんじゃこれは…｣祖父は青い瓶の蓋をとり中身を覗く。

｢これは、専用に調合した若返りの薬だ。大体40歳は若返る。｣
｢なかなか、本数ができなくてな。一本の効果は一時間が限度だな。｣

｢然し、どうしてこれをくれるのじゃ。｣
瓶を袋に入れると理事長に尋ねた。

｢はっはっはっ!お主があんまり老けてたから、王が見ていられないと、我が種族は年を取るのが遅いからな…人間と違いハーフのお主はその年の割には、動きが若いが顔はしわくちゃ爺だ。これからの戦いに何か役に立つだろ。｣

｢ふおっふおっ、アイツらしいの…｣
祖父は、苦笑いをしていた。

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>> 39 次の朝…

ﾄﾝﾄﾝ
｢おはよう！砕、起きてる?｣
ノックする音が聞こえる。

(んっ、もう朝か…)
｢入っていいぜ。｣
頭をボリボリ掻くと、大きく背伸びをした。

ｶﾞﾁｬ
｢おはよう！昨日はみんなに飲まされてたわね。ふふっ｣

｢ああ、頭がガンガンするぜ。｣
(王が酔うと泣き上戸とは思わなかったが…)
砕がベットに腰掛けると
｢これからの旅、宜しくね。｣
ラリスは右手を差し出す。
｢ああ…｣
砕は戸惑ったが、右手を差し出し握手をした。

｢じゃ、私の荷物を門の前まで運ぶから手伝って。｣

｢へっ何で俺が…｣

｢当たり前でしょう。男なんだから!じゃあ、この部屋を出た廊下の突き当たりの右の部屋で待ってる。｣
そう言うと扉から出て行ってしまった。
｢はぁ～｣
(先が思いやられるぜ)
ため息を吐くとベットから立ち上がり、新しい黒装束に着替え枕元に置いていた剣を腰に装備すると、ラリスの後を追いかけて行った。

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>> 40 ｶﾞﾁｬ
砕が廊下に出ると、隣りの部屋の扉が開く。

｢爺ちゃん、おはよ!｣

｢砕か、儂は王に挨拶したら門まで向かうぞい。｣
｢お前は、どうするのじゃ? 王の所についてくるか、門の所で待ってるか?｣

｢俺は、ラリスの荷物運びを手伝わなくちゃならねぇ…｣
ボソボソと話す。

｢ふおっふおっ、もう尻に敷かれておるのか。｣

｢そんなんじゃねぇよ!｣

祖父は笑って王の所へ行ってしまった。

ラリスの部屋に着くと、一応ノックをする。
返事があり中へ入ると、十畳ほどの部屋には沢山の荷物がある。

｢これ全部持って行くのかよ…｣
余りの荷物の多さに、あ然とする砕であった。

｢そうよ。レディとしては、これでも少ないほうよ。｣

｢あのな、この部屋の物殆ど全部じゃねぇか!｣

｢いいから、運ぶの手伝ってくれないの…お願い…手伝って!｣
ラリスはうるうるしながら、砕の目を見つめる。

｢うっ…｣
｢分かったよ!手伝えばいいんだろ、手伝えば…｣
砕は、さっき祖父に言われた、尻に敷かれるという言葉を思い出していた。

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>> 41 ようやく、門の前まで荷物を運び終わると祖父がやって来た。その後からは王と長老･理事長･総隊長が続く。

｢ラリス、この旅は危険だが、あえてお前の成長の為に出す。しかと、自分の目で見て感じてくるのだ。｣
王は両肩を掴むとラリスを抱きしめた。
｢はい…ありがとう…王様。いえ、お父様…｣

｢二人とも頼んだぞ!!｣
祖父と砕に深々と頭を下げる。

｢ふおっふおっ、心配するな大丈夫じゃよ。｣
祖父は微笑むと王の肩をポンと叩いた。

｢門の外に宇宙貿易港に行く大型車を用意してますじゃ。今度、来られる時はゆっくりしていって下され。｣

｢これは、総隊長と私からの贈り物だ。｣
理事長が言うと、肩に担いでいた大袋を総隊長は目の前にドサッとおいた。

｢ここの特産物だ。船の中で食べてくれ。｣

｢特産物…まさか…｣
ｺﾞｿｺﾞｿ
｢やっぱりだぜ！ひゃっほ～!!｣
袋を覗くと砕は声を上げた。
中身は、食べるとほっぺが落ちるレンバスが山ほど入っていた。

大型車に荷物を全て積み終わると、皆に別れを告げ港に向かった。

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>> 42 宇宙港に着いた三人は荷物を港職員に渡し、パスを通すとシャドーmkⅢまで自動通路で進んでいく。
ｽﾙｽﾙｽﾙｽﾙ

｢わぁ～楽しみだわ！生まれて初めて宇宙船に乗るんですもの。｣

｢ふおっふおっ、誰かさんも目をきらきら輝かせておったの。｣
祖父は砕の方をちらっと見る。

｢へんっ!宇宙に出るのが夢だったからな。｣

｢本当は嬢ちゃんの頼みが無かったら、宇宙(そら)には出ないつもりだったんじゃが…この旅は遊びじゃないからの。二人とも肝に銘じとくのじゃぞ。｣

｢はい！｣
｢分かってるよ。爺ちゃん。｣
やれやれといった表情をする砕。
｢おっ、もうすぐ船に着くぜ!あの26番ゲートの銀色いのがそうだ。旧型だが速いぜ。｣
｢凄いわ。早く乗りたい。｣
二人は自動通路を飛び出すと駆けていった。

｢危ないぞい! ふおっふおっ、一体誰に似たのやら…｣
祖父の目は微笑んでいた。

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>> 43 シャドーmkⅢに乗り込むと、ラリスは船の中を見て回った。一つ一つ部屋を見るたび砕に質問する。

『そろそろ、デッキに来てシートに座ってもらうかの。』
船内スピーカーから祖父の声が聞こえる。
｢さあ、こっちだ!｣
｢ええ！｣
砕は、ラリスの手を引っ張って行った。
ﾌﾟｼｭｰ

｢やっと来たの。｣
｢そこのシートに座って四点ベルトをするのじゃ。｣

｢大気圏を突破したら、コスモワープするから、そのつもりでいるんじゃぞ。｣

｢コスモワープって何だよ?爺ちゃん。｣
シートに座りベルトをしながら質問する。
｢確か、時空間を通って距離を短くする事を言うんですよね。ただ、長時間走行すると今いる宇宙に戻れる保証は無いって聞いた事があります。｣

｢良く勉強してるの。誰かとは大違いじゃ。｣
祖父はチラッと砕を見る。
｢悪かったな!出来の悪い孫で…ふんっ!｣

PPP
｢ﾀｲｷｹﾝ ﾄｯﾊﾟ｣

ラリスは、自分が住んでいる惑星を見て感嘆の言葉をあげた。

｢さあ、しつかり捕まっとくのじゃぞ!｣
｢いつでもいいぜ!｣
｢はい！｣
素早く操作すると、レバーを引いた。

｢コスモワープ!!｣

ギュオォーーッ

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>> 44 凄まじいＧが体にかかりシートに押し付けられる。周りに見えていた星ぼしが線のように流れていく。

｢きゃっ！凄いＧが体にかかるわ。でも、窓の外は綺麗…｣

｢大丈夫かの?娘さん。砕は初めての大気圏突破で気を失ったがの。｣
祖父はﾆﾔﾘと小さく笑った。

｢ぐうっ!｣
(女の前で気絶なんか出来るか)

ﾌｫﾝﾌｫﾝﾌｫﾝ
ランプが点滅し警戒音がなる。

｢どうしたのじゃ?｣
PPP
｢ﾋﾀﾞﾘｺｳﾎｳｶﾗ ｾﾝﾄｳｷｶﾞﾂｲﾃｷﾏｽ!｣

｢なんじゃと!?だれじゃコスモワープに付いて来ているのは…スクリーンパネルに拡大して映してくれ!｣

｢ﾘｮｳｶｲ!｣

そこには見覚えのある船が映っていた。
砕とラリスは分からず、顔を見合わせている。

｢ｱｲﾃｶﾗ ﾂｳｼﾝｼﾃｷﾃﾏｽ｣
｢パネルに切り替えてくれ。｣

ﾌﾞｰﾝ
『久しぶりだな!』

｢ふおっふおっ、やっぱりお主か久しいのう。｣

そこには懐かしい顔が映っていた。

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>> 45 ｢然し、どうしてここにいるのじゃ?｣

『いや何、最近未確認の戦闘鑑が姫の惑星を攻撃してると聞いてな、近くのアイツの惑星に寄ろうしてたら懐かしい船が通り過ぎたんで、後を追って来たんだ。』

｢儂は、その嬢ちゃんから助けを求められての向かっているところじゃ。｣

『分かった、私も同行しよう。話しの内容は、後で我が王に通信しておく。』

｢そりゃあ頼もしいわい。｣

『姫がいる惑星の手前でコスモワープを止め普通走行に切り替えよう。未確認の敵がいるかもしれない。』

｢そうじゃな、手前の小惑星の港で落ち合うぞい。｣

『分かった!では…』
ﾌﾞｰﾝ

｢爺ちゃん、今の人は…寝室の写真に写っていた…｣

｢ああ、そうじゃ。35年前に一緒に戦った戦友の一人じゃ。｣

ギュオォーーッ

PPP
｢ｺｽﾓﾜｰﾌﾟ ｶﾝﾘｮｳ! ﾉｰﾏﾙﾓｰﾄﾞﾆﾓﾄﾞﾘﾏｽ｣

焦げ茶色の戦闘機もシャドーmkⅢの後を追ってくる。

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>> 46 小惑星の港に着いた船からみんな降りる。

ｳｨｰﾝ ｶｼｬ
焦げ茶色のハッチが開くと中から手足を鋭いウロコで覆われ背中には羽が生えている。腰には、長剣をさし柄の部分が竜の顔になっている。背丈は祖父より少し高い。

がしっ
二人は熱い握手を交わす。
｢いや～懐かしいのう…昔と全然かわらんな。｣
｢ふっ、お前は老けたなっ。｣

｢まだまだ力は衰えておらんぞ!むお～っ!｣
祖父は袖を捲り力こぶを作って見せる。
｢で、後ろにいる二人は誰かな?｣

｢孫の砕に、アイツの養女のラリスじゃ。｣

｢砕です。｣
(なんか、凄い感じの人だな…)
｢初めまして、ラリスと言います。 竜人族の惑星の方とは友好条約を結んで貿易していると父から聞いてます。｣
二人はぺこっと頭を下げた。

｢お前の孫にアイツの養女か…時を感じるな。｣

｢ふおっふおっ、子や孫と次の世代へとバトンタッチかの。｣
祖父は白髪の頭を掻く。

｢お前も本当に年取ったものだ。｣
竜人は笑った。

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>> 47 ｢お前たち、話しとる間、その辺を見物してていいぞい。｣
砕とラリスの方を見ると祖父は言った。
｢ラリス、街を見に行こうぜ。｣
｢ええ。｣
二人は、小さい子供のようにはしゃぎながら港を出て行った。

｢で、何か作戦を立てて姫の所には行っているのか?｣

｢そんなもんありゃせんわ!取り敢えず、嬢ちゃんの城に様子を見に行って、敵がいたら倒す。それだけじゃ!｣

竜人はシャドーmkⅢを指さすと
｢ふっ、お前らしいな…まあ、良いだろう。それと船は、一台で行った方が見つかりにくいだろ。お前の船に乗せてくれ。｣

｢それはいいが、お主の船はどうするんじゃ?｣

｢ここに置いて行く。俺の船も自動操縦が出来るんでな、ある程度の距離なら自分のところへ飛んで来てくれる。｣

｢ふおっふおっ、まずは、船に乗る前に酒樽を沢山買わんとな。｣
祖父は竜人にウインクした。
｢はっはは!昔話を肴に飲みながら行くか。｣
二人は大笑いをしながら酒屋に向かった。

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>> 48 ﾊﾟﾝﾊﾟﾝ
｢これで、酒樽は全部積んだかの。｣
手をはたき10個の酒樽を確認する。

｢ったく、見物してたらいきなり酒樽運べだもんな…参ったぜ。｣
砕はブツブツ文句を言っている。

｢ふおっふおっ、年寄りは大切にするもんじゃ。｣

(何が年寄りは大切にだ…樽を二個担いで歩いてたくせに…)

｢少しは、見物出来たからいいじゃない。｣

｢ちぇっ!｣
地面の小石を蹴飛ばした。

｢あれぐらいでフラフラしてたら駄目だな。まだ、足腰を鍛えなきゃいけないな。｣
竜人は笑いながら砕の腰を叩いた。

｢さて、みんな行くかの!嬢ちゃんが首を長くして待っとるわい。｣

｢そうだな、急いで姫を助けに行かなくてわ。｣

シートに座りベルトをすると船は走り出した。

小惑星の大気圏を突破し、女王がいる惑星に座標を合わせると自動操縦に切り替えた。
皆、シートから立ち上がって会話をしていると
船のハッチが開いた。
｢!?｣

｢だれじゃ!?｣
祖父は背中の奇妙な刀に手をかけ、鋭い眼孔でハッチを睨む。
竜人も腰の竜剣に手をかけハッチを睨む。

砕とラリスも構えをとっさに取っていた。

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>> 49 ﾋｭﾝ
ハッチから一つの影が素早く動く。
ｼｭﾝｼｭﾝ
祖父と竜人はそのスピードについて行く。
ｷｨｰﾝ
相手の剣を竜人は受け、祖父は横から斬りにいく。
ｶﾞｷｨｯ
相手は祖父の刀を弾き竜人の腹に蹴りを放っていた。

(はっ速い…)
砕とラリスは、その素早い攻防をただ見るので精一杯だった。

｢ふおっふおっ、久しぶりじゃの。｣
｢腕は落ちてないようだ。｣
ﾁﾝｯ ｶｼｬ
二人は鞘に収める。
ﾁﾝｯ
｢あんたまだこの船に乗ってたんだ。｣
髪が茶色く短めで背は165㎝で五十代の女性だ。

｢姉ちゃんも年をとったの。皺が…はぐわっ…｣

女性のボディブローが祖父の腹にめり込んでいた。

｢誰が年取ったって…｣
｢痛いのう…老人は優しくせんと罰が当たるぞい。｣
腹をさすりながら言う。
｢相変わらずだな。｣その二人のやり取りを見て竜人は笑った。
砕とラリスは何の事か分からずキョトンとしていた。

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>> 50 久しぶりの再開に三人は酒盛りをしだした。

｢然し、姉ちゃんはあの大戦の後、旅に出て音信不通だったが…今、何故ここにいるのじゃ?｣

｢私は、自分の心の弱さと剣技を磨く為に旅に出ていた…最近、姫のいる惑星が攻撃を受けていると聞いて一番近い小惑星で情報収集をしてたのさ。｣
女性は拳を握り締めた。

｢自分の宇宙船があるんじゃないのか?｣
グイッとコップの葡萄酒を飲み干すと尋ねた。

｢いや、その星ぼしで仲良くなった連中の船に乗っけて貰って旅をしていた。｣

｢ふおっふおっ、姉ちゃんらしいの。｣

｢それから、こっちはアンタに似てるけど…｣

｢砕です。孫になります。｣
ペコっと頭を下げる。
｢へ～っ!アンタが結婚するとは以外だね。こっちは耳が尖って浅黒いからダークエルフだね。名前は?｣

｢ラリスです。｣
砕と同じようにペコっと頭を下げた。

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>> 51 ｢ラリスか…何か私の名前に似てるけど!?｣
女性は笑うと目尻に皺ができた。

｢ぷは～っ!そりゃあそうじゃ。養女に引き取った時に、名前が分からないんで、アイツと姉ちゃんの名を合わせて付けた名前なんじゃから。｣

｢えっ!?｣

｢まだ、未練があるのかもな!｣
竜人は笑って女性のコップに葡萄酒を注いだ。

｢私は…アイツと幸せになるのが怖かったのかも知れない…だから、アイツの前から姿を消した。｣
立ち上がると窓の外を眺めた。

｢ふおっふおっ、今じゃいい思い出じゃわい。｣
それから、祖父は砕とラリスの振り向いた。
｢お前たち、退屈じゃろ。バトルルームでコンビネーションを鍛えるのじゃ!儂等は、惑星に着くまで飲むからの。｣

｢はい！｣
二人は、デッキから出て行った。
三人の酒盛りは続く…

｢ねぇねぇ、あの女の人の事を父(エルフ王)はまだ想っているはずよ…｣
両手を組んで前に突き出して歩いている。
｢えっ、何でそんなこと分かるんだよ?｣

不思議そうな顔をしながら砕は尋ねた。
｢だって、何年か前の夜中に、父の部屋から灯りがもれているから覗いた事があるの…そしたら、あの女の人の写真片手にお酒をしみじみ飲んでたから…｣
ラリスは下を向きながら歩く。

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>> 52 ｢今この船にいるの知ったら、王様は多分コスモワープですっ飛んで来るぜ！｣

｢ふふっ、そうかもね。今頃、くしゃみしてるかも。｣
二人はクスクスと笑い出した。


一方…
｢ハクション!!｣

｢風邪ですかの王よ?｣
長老が尋ねる。

｢いや、誰かが私の事を噂しているな…｣
エルフの王は鼻を啜った。

……
ｳｨｰﾝ
｢さぁ、着いたぜ。｣
｢どんなコンビネーションを試そうかしら…う～ん｣
｢一つ目は、私が使う魔法は上級魔法になればなる程、呪文の詠唱が長くなるから隙が出来るの。だから、砕にはその間頑張って守って貰いたい。｣

｢ああ、まかしとけって!｣
ドンと胸を叩く。

｢二つ目は、反対に砕がオーラ(気)を溜めている間に私がサポートするわ。｣

｢宜しく頼む…さぁ、修行しようぜ!｣
シャドーに開始を頼んだ。

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>> 53 バトルルームに入って一時間が過ぎていた。

｢はあはあ…何とかなりそうね…｣

｢ああ…ｾﾞｰｾﾞｰ…｣

二人は汗びっしょりになって長椅子に座っていた。

｢砕のオーラは凄いわ!鍛えられば鍛える程強くなる感じ…でも、もっと分散させるんじゃなく、一点に集中させると技の威力が増すんじゃないかしら…｣

｢ああ、そうだな…もっと神経を集中させてみるぜ!｣
汗を拭いながら、剣先を見つめる。

｢後は、ラリスは連続攻撃をした後、足をとられるから体力をつけねぇといけないぜ。｣

｢分かったわ。この部屋でもっと体力つけるわ。｣

｢さぁ、シャワーを浴びようぜ。気持ち悪いからな。｣
黒装束の胸のところを引っ張りながら、パタパタさせる。

｢ふふっ、賛成!!｣
あどけなく笑うとバトルルームから出て行った。
ﾄﾞｷｯ
(可愛いじゃねぇか…)
砕は、胸がドキドキしていた。

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>> 54 だんだんと目的の惑星が見えてきていた。
｢本当に、嬢ちゃんの星は攻撃を受けているのかの…｣
白髪を掻きながら祖父は言う。

スクリーンパネルを、三人はくまなく見ていた。

｢確かに、戦艦の一つや二つ見えても良さそうなものだが…｣
腕を組みながら竜人も不思議そうな顔をする。
｢まあ、何はともあれ姫に会いに行けば分かるわ。｣
｢まあ、そうじゃな!｣
デッキの床には、酒樽が転がっている。
ﾌﾟｼｭｰ
｢うっ!酒くせ～っ!｣
(これから、戦いだってのに…)
｢本当だわ。酔っちゃいそう。｣
シャワールームで汗を流し着替えてきた二人は、鼻を摘んだ。

｢どうじゃ砕、少しは体で覚えたかの。｣
｢ああ、まだ覚えることはまだあるが、何とかな。｣

｢後は、実戦で覚えるしかないな。｣
壁にもたれながら竜人が言う。

｢ふふっ。まあ、いいんじゃない。誰かさんは、昔強い奴みると一人で敵に突っ込んで行くんだから。｣
チラッと祖父の方を見て女性は話す。

｢んっ、儂の事か!?｣自分を指差しおどけてみせた。
ﾊﾞｼｯ
｢アンタ以外誰がいるのよ!｣
｢まったくだ。｣
二人は、笑った。

砕とラリスは、三人のやり取りを、ただ聞くばかりであった。

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>> 55 PPP
｢ｱﾄｽｺｼﾃﾞ ﾀｲｷｹﾝﾄﾂﾆｭｳｼﾏｽ｣

｢みんな、シートに座ってベルトをはめるのじゃ!｣

『了解!!』
皆、素早くシートに座った。

ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞゴゴゴゴ



緑が美しく、湖があった場所は干からび大きなクレーターだらけだった…ところどこにろに船の残骸が散らばっている。昔の面影がそこには無かった。

旧友の三人はスクリーンパネルを見て言葉を失った。

35年前、平和宣言をしその象徴である巨大な女神像はひび割れ右肩から無くなっていた。

祖父は、シャドーmkⅢを着陸させるとハッチを開け皆外に出た。

｢35年前、パレードの後、ここでみんなと、写真を撮ったんだよな…｣
ｷﾞｭｵｯ
女性は、拳を握り締めた。
｢そうじゃ、みんなバラバラになるから記念にと…｣
祖父は、ひび割れた女神像を下から見上げる。
｢くっ!未確認の敵とは一体…｣
ｶﾞｼｯ
竜人は地面を殴った。

｢女王様は大丈夫なんでしょうか?｣
ラリスは心配そうに言う。
｢爺ちゃん、行こうぜ。｣
砕は、祖父の手を引っ張った。
だが動かず祖父は無言で指差した。

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>> 56 それは、巨大な瓦礫の山だった。

｢あそこに、嬢ちゃんのいる城があったんじゃよ…｣

｢えっ！それじゃあまさか…｣

｢…。｣
皆、黙ってしまった。
その沈黙を破るかのように祖父のブレスレットがなる。

PPP
｢ｵﾏｴｻﾝｶﾞｲﾙ ｱｼﾓﾄﾆ ｾｲﾀｲﾊﾝﾉｳｱﾘ｣

｢何じゃと!!｣
祖父は左手首のブレスレットに叫んだ。
｢みんな、何か下に降りれないか探そう。｣
女性は、希望に満ちた目をしている。
｢そうだな、敵か味方か分からんが…何もしないよりいいだろう!｣
竜人は女神像を調べだした。
｢俺とラリスは、城の瓦礫辺りに入り口が無いか調べてみるぜ!行こうぜ、ラリス。｣
｢うん。｣
二人は駆けていった。

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>> 57 ｢どうだあったか?｣
地面の土埃を手ではらいながら女性ははなす。

｢いいや、無いのう…隠し通路の入り口がどっかにあってもよさそうじゃが…｣

ﾊﾞｻｰｯ
ドラゴンの羽根を広げ巨大な女神像を調べていた竜人が戻ってきた。
｢こっちには、それらしきものは無いな!?｣

｢砕、そっちはどうじゃ!｣
瓦礫の下を探している二人に、祖父は声をかける。


ｶﾞﾗｶﾞﾗ
｢うおぃしょっ!｣
砕は、大きな瓦礫をどかしていた。
｢ふう～っ、なかなかねぇなぁ…｣
｢こっちも、なかなかないわ。｣
小さく短い杖で呪文を唱え瓦礫をどかしていく。
｢何処に入り口なんてあるだよ。｣
腰掛けた地面に座った。
ﾎﾟﾁｯ
ｽﾞｽﾞｽﾞズズズ
地面がずれ階段が現れる。
｢うぉっ!｣
｢砕ーっ!!｣
砕は階段を転がって落ちていった。

• << 61 ｢いててっ…｣ 頭と腰をさすりながら立つと辺りを見回した。 ｢砕っ!大丈夫!?｣ ラリスは心配そうな顔をして階段を下りてきた。 騒ぎに気付いて、その後から三人が続いて下りてくる。 ｢ふおっふおっ、砕よ注意力が足りんのう。｣ ｢うるせえっ。｣ (誰のおかげで地下通路を見つけたと思ってるんだ) 周りは赤レンガで敷き詰められランプがところどこにろに灯っている。 ｢さあ、いくわよ!｣ 女性は先頭を切って歩いていく。 ｢ったく、せっかちじゃの。｣ 白髪を掻きながら後をついて行く。 ｢敵か味方か分からんのに…相変わらずだ。｣ 竜人は気配を探りながら前を見つめる。 ﾊﾟﾝﾊﾟﾝｯ 砕も土埃をはらうとラリスと歩いた。 曲がり門にさしかかると、数人の影が揺らいでいる。 皆、気配を殺し女性と祖父が見つからないように覗きこむ。 ｢あれは、確か…｣ ｢嬢ちゃんとこの大臣じゃ!35年前の面影があるわい。年とったの～っ。あとの数人は城のもんじゃろ。｣ 顔を引っ込めると小声で話した。 ｢後は、誰もいないみたいだわ。｣ ｢嬢ちゃんは、何処に行ったんじゃろ｣ 祖父は首を傾げた。 ｢話しを聞きに行くぞい。｣ 皆は、大臣へ歩いて行った。

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>> 59 ﾋﾞﾘｹﾝ㍼💀さん、応援有り難うございます。
m(_ _)m
本編の｢話つく｣の方も去年の１０月からスタートしてやっと🈵レスになり｢話つく②｣をみんなで頑張ってます。この｢話つく｣から35年後の番外編も頑張って書いていきたいと思います。😁
｢話つく｣で関西弁を喋るキャラ出したのはいいけど、佐世保なもんで言葉で苦戦しとります💦
お互い仕事しながら更新していきましょう。
💪😤 むは～っ
アル🍺

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>> 58 ｢どうだあったか?｣ 地面の土埃を手ではらいながら女性ははなす。 ｢いいや、無いのう…隠し通路の入り口がどっかにあってもよさそうじゃが…… ｢いててっ…｣
頭と腰をさすりながら立つと辺りを見回した。

｢砕っ!大丈夫!?｣
ラリスは心配そうな顔をして階段を下りてきた。
騒ぎに気付いて、その後から三人が続いて下りてくる。

｢ふおっふおっ、砕よ注意力が足りんのう。｣
｢うるせえっ。｣
(誰のおかげで地下通路を見つけたと思ってるんだ)

周りは赤レンガで敷き詰められランプがところどこにろに灯っている。

｢さあ、いくわよ!｣
女性は先頭を切って歩いていく。
｢ったく、せっかちじゃの。｣
白髪を掻きながら後をついて行く。
｢敵か味方か分からんのに…相変わらずだ。｣
竜人は気配を探りながら前を見つめる。
ﾊﾟﾝﾊﾟﾝｯ
砕も土埃をはらうとラリスと歩いた。

曲がり門にさしかかると、数人の影が揺らいでいる。
皆、気配を殺し女性と祖父が見つからないように覗きこむ。
｢あれは、確か…｣
｢嬢ちゃんとこの大臣じゃ!35年前の面影があるわい。年とったの～っ。あとの数人は城のもんじゃろ。｣
顔を引っ込めると小声で話した。

｢後は、誰もいないみたいだわ。｣

｢嬢ちゃんは、何処に行ったんじゃろ｣
祖父は首を傾げた。

｢話しを聞きに行くぞい。｣
皆は、大臣へ歩いて行った。

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>> 61 ｻﾞｯ
｢誰だ…｣
大臣はビクビクしながら音が鳴る方を見る。
数人の兵士は一斉にレーザー銃を構え、女子供は通路の陰に隠れる。

ランプの灯りから現れた顔は面影があった。
｢おお、そなたらは…皆、銃を下げるんだ。｣
ホッとすると左手を胸に当て挨拶した。

｢まさか、35年前の英雄たちにあうとは…平和パレード以来ですな。｣
大臣の頭には烏帽子みたいなものをかぶり、茶色い膝まである服を羽織っていが、中肉中背の為パンパンになっている。

｢姫は、何処だ!｣
声をあらたげて、女性は言う。
｢儂は、嬢ちゃんの遣えが来たから、この星まで来たのじゃが…｣
｢まさか…俺たちが着く前にこの様な状況になっていようとは…｣

｢俺も女王を助けに来たんだぜ！｣
｢私も父の代わりに…｣

｢…。｣
大臣は重い口を開いた。

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>> 62 ｢そう、あれは…我々が一度目の攻撃を受けた後、あなた様に使者を送った後の事でした。｣
皆は、大臣の言葉に耳を傾けた。

｢それは、我が星がどれくらいの戦力があるのかを調べる先見隊だったのでしょう…その後、普通では考えられない事が起こりました。この星雲では小型宇宙船クラスのコスモワープは出来ても、戦艦クラスのコスモワープをさせるだけの開発はまだ実験の段階です。｣

ｺﾞｷｭ ｺﾞｷｭ
腰に下げていた水筒の水で喉を潤すと、続けて話し出した。
｢未確認の数十隻の艦隊が突如現れて、攻撃し出したのです。我々は為すすべが無く、昔から各地にある地下通路に逃げ込みました。｣

｢で、嬢ちゃんはどうなったんじゃ!?早く言うのじゃ!｣
祖父は大臣の襟首を両手でつかむと揺さぶった。

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>> 63 ｢くっ…｣
だんだん大臣の顔が真っ赤になっていく。
｢爺ちゃん!｣
砕は祖父の手をやっとの事で振りほどいた。
｢ぷは～っ!死ぬかと思った…｣
首をさすりながら大臣は言う。

｢女王はさらわれました。未知の惑星から来た者は我々人間族と変わらない格好をしていました。然も、あの大戦で生き残った連合軍の元将軍が居たのです。忘れもしません。35年前、我が王国を裏切り連合軍についた、左腕に黒光りした機械を持った男を…そして、『女王の仲間に復讐を…その為の餌だ!』と。｣
ワナワナと体を震わせながら大臣は話した。

｢あいつは戦いの中で死んだ筈では…｣
｢姫が確か最大火炎弾で奴を葬った筈だ!｣
旧友三人は、大臣の話しをまだ信じられずにいた。

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>> 64 ｢彼奴が、まだ生きとったとはの…｣

黙り込む三人を見て大臣は話題をかえた。
｢こちらのお二人さんは初顔だがどちらかな?｣

｢砕と言って儂の孫じゃ！｣
｢ども、砕です。｣

｢道理で、似てると思いました。して、こちらのお嬢さんは?｣

｢大臣、挨拶遅くなりました。エルフ王の養女でラリスと言います。｣
ペコッと頭を下げると質問をした。
｢何か手掛かりになるようなことは無いのですか?｣

｢おおっ!王の養女とな。王はお元気かな？｣
｢はい、父は元気にしてます。｣

｢そうか元気で何よりだ。それから、さっきの質問に答えよう。｣
汗を拭うと真顔になり話し始めた。

｢ちょうど元将軍に女王がさらわれる時に、あっちの兵士達の会話するのがチラッと聞こえたんだが、確か『…太陽系…に帰還準備…』と。｣

｢太陽系ですか。どこですか、その場所は…｣

｢いや、そこまでは分からぬ。｣
大臣は首を振った。

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>> 65 ｢私が旅しているときに噂で聞いたことがある。そう、太陽系には青く綺麗な惑星があると。｣

ｷﾞｭｵｯ
｢儂の娘夫婦も青い未知の惑星の探査に行って行方不明になったのじゃ!｣
祖父は拳を握り締めた。

｢早速、我が王にも連絡をとり竜人族の艦隊を出して貰うよう話してみる。｣

｢有難うございます。私も行きたいのですが、この王国を復興させる為に立ち上がります。皆さん、くれぐれも女王をお頼みします。｣
大臣は深々と頭を下げた。

｢ああ、儂らに任しとけ!必ず嬢ちゃんは連れ戻すわい!｣
祖父はドンと胸を叩いた。｣

皆は、大臣達と挨拶を交わすと地下通路から地上へ出た。

｢爺ちゃん、未知の惑星の行き方分かるのかよ?｣

｢いや知らんのう、嬢ちゃんを助けると大臣にたんか切ったもののどうするかのう…昔は裏の情報屋がいたから良かったんじゃが、この前、寿命で死んでの…はぁ～っ困ったのう。｣
大きな溜め息をつく。

｢あんたは、昔から後先考えず言うんだから。｣
女性は呆れた顔をする。

｢あ～っ!!｣
突然、ラリスが声を上げた。
皆は、一斉にラリスの方に注目した。

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>> 66 ｢そういえば私、宇宙地図を持ってます。さっき歩いてる時にこっちの星雲では見たこともないホログラフマップを拾ったんですけど色々ボタンを押してたら今までの宇宙地図と違うなぁと思って通路探しで忘れてました。｣
一気にまくし立てるとｺﾞｿｺﾞｿと皮の腰袋からホログラフマップを取り出した。

｢はぁ～っ、何でそんな大事なこと言い忘れるかねぇ。｣

｢何よ、砕だってドジな癖に!｣

｢んだと、このアマっ!｣

｢まあまあ、二人とも。それよりもホログラフマップを…｣
竜人は二人の間に割って入る。

｢あっ、すいません…｣
竜人に手渡した。

｢ふおっふおっ、夫婦喧嘩は犬も食わないっていうからの。｣

｢誰が夫婦だって!｣
｢こっちこそ願い下げだわ!｣

『ふん!』
二人はそっぽを向いた。

｢やれやれ…｣
祖父は白髪の頭を掻ながら呟いた。

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>> 67 皆、シャドーmkⅢに乗り込みデッキのシートに座った。

｢ふ～む!このマップのデータを船にインプットすれば、太陽系の星の配置や航行の仕方が分かるじゃろ。｣
祖父は竜人から受け取るとホログラムマップと船のコンピューターを接続した。
Zi… Zi… PPP
｢ﾃﾞｰﾀｰﾆｭｳﾘｮｸ ｶﾝﾘｮｳ｣
｢パネルに映してくれ!｣
ﾌﾞｰﾝ

｢これより、T1118513ポイントが太陽系みたいじゃの。｣
皆は未知の惑星のことを思い唾を飲み込んだ。

｢んっ、この赤い点滅している惑星がそうじゃないのか…｣
女性はパネルを指差した。
｢嬢ちゃんは、ここに連れられた可能性が大じゃの。｣

｢なる程、この一つの太陽を中心に八個の惑星と外枠に一個の惑星があるのか。｣
腕組みをしながら竜人は言う。

｢ねぇねぇ、この点滅している場所は、太陽から三番目みたい。｣
ラリスは砕に話しかける。
｢ここから一番近い場所は、この外枠の……なんて読むんだ…｣
｢バカね！私にも分からないわよ。こっちの文字じゃないんだから!｣

｢私たちにも読めないわ。｣
女性は溜め息をつくと、ラリスに向かって首を振る。

｢んっ、そういえば寝室の棚の中に…
｣
やり取りを見ていた祖父はデッキから飛び出して行った。

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>> 68 ｶﾞｻｺﾞｿ
｢おおっ、これじゃっ!｣
古びた一冊のノートを寝室の棚から取り出すとギュッと胸に抱いた。

｢沙羅…サムソン…お前達の探索、無駄じゃ無かったぞい!｣飾ってある二人仲良く微笑んでいる写真を見つめると、デッキの方に走って行った。

ｶｼｭｰｯ
｢どうしたんだ爺ちゃん!｣

｢文字が分かったわい。この娘夫婦の書いたノートでな。｣

｢で、何て書いてあるんだい?｣
女性は祖父が開いてるノートを覗きこむ。

｢ふおっふおっ!まぁ、慌てるでない。ノートをシャドーにスキャンさせ当てはめて貰うからの。頼んだぞ！｣

PPP
｢ｶｲｾｷﾁｭｳ…
…
…
…
ｼｭｳﾘｮｳ!｣

｢俺の両親が残したやつで分かるんだろ!、外枠の惑星の名は?｣
メインパネルに叫んだ。

｢ﾒ･ｲ･ｵ…｣
チュドーン!!
ｸﾞﾗｸﾞﾗ
チュドーン!!!
｢な、何事だ。｣
竜人はシートに掴まりながら叫んだ。

｢ﾐｶｸﾆﾝ ﾋｺｳﾌﾞｯﾀｲ ｶﾗﾉ ｺｳｹﾞｷﾃﾞｽ｣

｢何じゃと、この船のレーダーに反応無かったぞい。｣
船は激しく揺れる。

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>> 69 チュドーン
チュドーン
ゴゴゴゴゴゴ…

｢シャドーっメインパネルに映すんじゃ！｣
｢ﾘｮｳｶｲ!｣

ﾌﾞｰﾝ
青い戦艦が二隻と真ん中に紫の戦艦が一隻がスクリーンに映っていた。
三隻の船はこちらに向かって三連の主砲と副主砲を撃ってきている。
チュドーン チュドーン チュドーン

｢でけぇ…｣
初めて見る戦艦の大きさに砕は圧倒されていた。
ラリスも声が出ない。

｢みんな、シートに座って、四点ベルトをはめるんじゃ！｣
祖父はそう言うと、素早くスイッチとボタンを押し操縦レバーを引いた。

｢垂直上昇!メインエンジン点火じゃっ!｣ｼｭｺﾞｰｯ

シャドーmkⅢは、敵鑑の無数のレーザービームを上下左右にかいくぐり、青い戦艦に左右のレーザーキャノン砲をぶち込んでいく。
ﾊﾞｼｭﾊﾞｼｭ
ﾊﾞｼｭﾊﾞｼｭ

｢ﾌｯ!腕は落ちてないようだな。｣
｢ふおっふおっ、当然じゃ。｣
チュドーン
祖父は手慣れた手つきで操縦レバーの横のボタンを押していく。｣
｢あいつを使うのか?砕、ラリス、イスに掴まってた方がいいわよ。｣
そう言うと、女性も掴まった。

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>> 70 ｢ハイパーブースターON!!｣
ｶﾞﾁｬ
｢レーザーシールド、フルチャージャー!!｣
横のシールドメーターが100％より上昇し150％のMAXになった。
ﾋﾟｶｰﾝ
｢久々に行くぞいっ!フェニックス･ガンナーーーーッ!!!｣
祖父は生き生きした顔でレバーを前に倒す。
ブオォォォォッ
シャドーmkⅢは不死鳥の形をした青白いオーラに包まれ、青い戦艦の船首から凄まじい勢いで突っ込んで行く。


『何をモタモタやっておる。』
紫の戦艦から青の戦艦に通信が入る。
｢ﾊｯ!銀色の小型船がすばしっこいもので…｣
『そんな言い訳は聞かん!我が冥王星前線部隊が、恥をかくではないか。』
ﾌﾞｰﾝ
｢中佐だからって、言いたい放題いいやがって。｣
ﾄﾞﾝｯ
｢少佐!銀色の船が…｣
｢何だっ!こっちはﾑｼｬｸｼｬしてるんだっ!｣
｢それが、青い炎みたいになってこっちへ、突っ込んで来ます。｣

｢それを、早…
ドゴオオォォォォッ
｢全員退避…ぐはっ!｣
ﾁｭﾄﾞﾁｭﾄﾞﾝ
カァーーーッ


祖父の小型船が船尾から青白いオーラに包まれたまま出てくると、青い戦艦は内部から爆発が次々と起き、そして赤い光りに包まれ消滅した。

｢すっ、すげぇ!｣
｢この船には、こんな機能も付いていたんですね。｣
砕とラリスは手に汗握っていた。

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>> 71 ｢ふおっふおっ、まだあるが、その内じゃ。｣
｢多分、戦艦の配置からして紫の戦艦がここの大将じゃろ。｣
にこっと微笑むと、鮮やかな操縦レバー捌きで相手の攻撃をかわし、紫の戦艦にキャノン砲を連続で撃ち込んでいく。

｢年を取っても、相変わらず無鉄砲な奴だ。｣
｢ふふっ、ほんと、全然かわんないわね。｣
竜人と女性は顔を見合わせ笑った。

｢ちょっと酔いそうだぜ。｣
｢私も…｣
二人とも青い顔をして、ぐったりとなっていた。


｢うぬぬ、連合の生き残りに聞いてはいたが…まさに、これほどまでとは…『生け捕りにせよ！』と大佐からの命令だったがしかたがない。｣
｢冥王星前線基地に帰還する。180度転換だ!巡洋艦の奴らにも伝えろ。｣

｢ﾊｯ!｣
中佐に敬礼すると兵士は扉から出て行った。


｢爺ちゃん、紫色の戦艦なんか逃げてるぜ。｣
｢好都合じゃわい。｣
｢えっ、なんでだよ?｣
｢鑑を乗っ取るんだろ。｣
女性はﾆﾔﾘと笑った。

｢ふおっふおっ、それが嬢ちゃんの近道だからの。｣
｢後は、情報を仕入れないといけないからな。腕がなる。｣
竜の形をした柄をﾁｬｷっと親指で押し上げる。

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>> 72 ｢もう一つの青の戦艦に突っ込むぞい!衝撃が強いかもしれん、頭を引くするんじゃ。｣

ｶﾞﾁｬ
ギューン

ｽﾞｺﾞｺﾞゴゴゴ…

火花を散らしながら戦艦の甲板に船は乗り上げる。

｢おーいてて。｣
(ったく!じじい後で覚えとけよ)
砕は頭を打ちつけ涙目で頭のこぶをさすっている。
｢もう～砕はドジなんだから。｣

｢さぁ、戦闘に備えたら行くよ。｣
女性はかけ声をかけると、皆、ベルトを外し身につけている装備品を点検する。

｢いつでも、大丈夫だ。｣
竜人は、常に身につけている、熱に強いドラゴン鎧の胸をドンと叩いた。

｢砕よ!黒装束の上にこれを着るんじゃ。ラリスは、これじゃ!昔、娘が着ていた鎧じゃ。｣
ｶﾞﾁｬ
祖父はロッカーから黒い鎧と白い鎧を出し二人に手渡した。

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>> 73 ｢有難うございます。砕のお母様の鎧大事にします。｣
｢爺ちゃん、サンキュー!｣
二人とも皮の鎧を脱ぎ捨て、目を輝かせ鎧を身につけた。

｢砕のやつは儂と同じタイプじゃ。貴重種ブラックドラゴンから作られた漆黒の鎧といい、オーラ(気)を増幅できアンチマジック(魔法防御)も施されておる。｣
｢ラリスのはホワイトドラゴンから作られ白光の鎧といい、逆に魔法を増幅する力を秘めておる。｣
｢ただ、それ以上の敵には布きれ同然じゃ、過信するでないぞ。｣
そう言うと、祖父も漆黒の鎧を身につけ背中に刀をからった。

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>> 74 ｢な、何事だっ!今の凄い衝撃は…?｣
残りの青の戦艦の少佐は、揺れの酷さにデッキの台に掴まる。
｢ﾊｯ!銀色の小型船が衝突したものだと思われます。｣
兵士は敬礼すると慌てて報告した。

｢直ちに、甲板の方を修理班に向かわせろ！冥王星に行く為のネオ･コスモワープに支障が出るかもしれん。｣
｢ﾊｯ!｣

｢それから、銀色の船に生き残ってるかもしれん戦闘班は二班に別れ10名ずつ組め。｣
｢ﾊｯ｣
各兵士は敬礼を再びするとデッキから出ていった。

少佐はドガっと椅子に座ると剣の手入れをしだした。

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>> 75 シャドーmkⅢのハッチを開けると、甲板を小走りに竜人を先頭に女性、祖父、砕、ラリスの順に進む。
ｶﾁｬｶﾁｬ
甲板の扉を軽くいじくりロックを外すと、竜人は顔を覗かせ中の様子を伺う。
手で皆に敵がいないのを伝えると、扉の中に入っていった。
通路に出て左右を見回しても誰もいない。身構えながら、壁沿いに歩いて行くとＴ字路になり二つに別れている。

｢このままじゃ埒があかん。お主と姉ちゃんは右、儂とコイツ等は左に別れるがどうじゃ?｣
竜人と女性は頷く。
｢この戦艦の操縦室で落ち合おう。｣
ｶﾞｼｯ
祖父と竜人は互いの拳をぶつけた。
｢砕、ラリスこれは本物の戦いだ命を落とすんじゃないよ。｣
女性はそう言うと歩いて行った。

｢儂等もいくぞい。｣
二人は緊張しながら祖父の後をついて行く。
ｺﾞｳﾝ ｺﾞｳﾝ ｺﾞｳﾝ

戦艦のエンジンか何か分からない音だけが鳴り響く。

(然し、誰もいないな…)
少し歩き、砕がそう思っている矢先に銃を持った兵士達が現れた。

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>> 76 ｢少佐!発見しました。｣
ｶﾞｯ
『よし、ある程度傷つけても構わん。確保したら、牢屋にぶち込んどけ!』
ｶﾞｯ
｢了解しました。｣
ｶﾞｯ
隊の後方にいる兵士が砕らに気づかれないよう無線で話す。

｢爺ちゃん、敵のお出ましだぜ！｣
腰にある剣を抜くと身構えた。
｢砕、ラリス、儂が取りあえず敵を殺さずに倒す。情報を手に入れんと、いかんからの。お前たちは、儂の援護をしてくれ!｣
ｼｭﾝ
そう言うか言わないうちに祖父の姿は消えていた。

｢私が、小火炎弾で相手を翻弄するわ。砕、あなたは、私に敵が近づかないようにフォローして!｣
｢おおっ!｣
ラリスは、呪文を唱えると、杖を前に掲げた。
ﾎﾞｼｭﾝ ﾎﾞｼｭﾝ ﾎﾞｼｭﾝ
｢三重残像…｣
ﾌﾞｰﾝ
祖父の体が三体に分身する。
｢うっ、早い!皆、撃て!｣
隊長らしきものが叫ぶと、十人ものレーザー銃から一斉に発射された。
ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ

｢ふん、甘いわ。｣
軽々と紙一重でかわすと、レーザーは通路の壁に当たり、かすりもせず兵士達の目の前に祖父は立つ。
｢ばっ化け物!?｣
兵士たちは、たじろいでいた。
ﾁｬｷ
背中の奇妙な刀を抜くと、反対に構えた。

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>> 77 ｢うわ～っ!｣
｢来るな～っ!｣

ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ
ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ
兵士たちは、圧倒的力の差に恐怖し闇雲に発砲した。

｢ふおっふおっ、そんなﾍｯﾋﾟﾘ腰じゃ当たらんわ。｣
一気にその中を駆け抜けると、刀を鞘に収めた。
ﾁﾝｯ

｢ぐっ…｣
｢ぬわっ!｣
｢ごっ｣
ドサドサ
兵士たちは何が起こったのか分からず床に倒れていた。

｢ふん、みねうちじゃ。安心せい。｣

(爺ちゃん、すげぇぜ…いつか俺も…)
｢流石は、大戦の英雄の一人ですわ。｣
二人は尊敬の眼差しで祖父を見ていた。

｢ちょうどコイツ等、腰にワイヤーロープを持っておる。これで、縛り上げるとするかの。｣
祖父は手際よく、兵士たちをぐるぐる巻きにし、うなだれている隊長らしき人を背中に活を入れ、目を覚まさせる。

｢ぐっ!｣
目を覚ますと、周りに仲間が縛られているのを見て祖父の顔を睨んだ。

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>> 78 ｢隊長の私に貴様らこんなことをして、ただで済むと思うな。後で少佐に連絡する。｣

｢ふおっふおっ、元気がいいのう。｣
そう言うと、祖父は刀を抜き隊長の喉元に刃を突きつけ猛獣のような鋭い目で睨んだ。
｢今度は手加減無しじゃ。色々と話して貰おうかの。｣

｢ううっ!｣
諦めたのか、隊長は視線を下に落とし話し出した。
｢我々は太陽系の第三惑星から来たのだ。ある時、流星群が急に軌道を変え我が惑星に多大なダメージを与えた。攻撃しても数が多すぎａplanは破棄、もう一つのｂplanは我が惑星と同じ空気や気候を持った場所に移住する事。
｣
｢そんな時に左腕に機械をはめている元連合軍の男が現れたのだ。初めは信用しなかったが、惑星がヤバくなると藁にもすがる思いで上層部は話しを聞いた。｣

｢で、私たちの銀河系にたどり着いた訳ね。でも、だからと言って星の人を攻撃する何ておかしいわ!｣
ラリスは怒りで体をﾜﾅﾜﾅと震わせた。

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>> 79 ｢我々は、一介の兵士上層部には逆らえん。｣

｢だがよ、この星の女王様は何処に連れて行ったんだ?｣

｢元連合軍の男が、我が母星に連れて行った。そこで、貴様らを討つと言ってた…｣

ｽﾞﾊﾞｯ
｢ぐっ!｣
隊長の背中から胸に剣が突き刺さる。
｢しょう…｣
隊長は息絶えた。

｢誰じゃ！?｣
祖父は見回すが辺りには誰の姿も見当たらない。

｢そこだ!!｣
砕は、一瞬揺らめいたのを見逃さなかった。
ｶﾞｷｨｰﾝ
火花が散る。

｢ほう。勘が鋭いのがいるな。このステルススーツに気付くとは。｣

｢ラリス!｣
｢ええ!｣
砕が跳び退くと、ラリスは火炎弾を放った。
ﾎﾞｼｭ

｢生憎、耐熱性なんでね。そんなものは効かない。｣

｢儂の勘も鈍ったの…｣
｢爺ちゃん、んなこと言ってる場合じゃねぇぜ。｣

ｻﾞｯ
｢くっ!｣
砕の左頬から血が滲む。
(見えない相手にどうすれば…)

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>> 80 ｢砕よ。目に頼るでない、心で視るのじゃ。｣
祖父は、小さな声で話す。

｢だが、どうやって?｣
｢全てを感じるのじゃ…後は、己で戦いながら覚える、そうしないと身につかないからの。実戦あるのみじゃ。｣
祖父はそれだけ言うとラリスのそばに行った。

(心の目か…)

ｼｭﾊﾟｼｭﾊﾟｼｭﾊﾟｼｭﾊﾟ
｢手も足も出ないか、若僧。｣
砕の漆黒の鎧が装備されて無い場所のあちこちから血が滴っている。

｢砕っ!｣
ラリスは砕の方へ駆け寄ろうとしたが、祖父に制止された。
｢大丈夫じゃ、あやつは儂の孫じゃからの。きっと、やってくれる。｣
｢でも…｣
｢信じるのじゃ。｣

(感じる･感じる･感じる、一か八かやるか)
砕は剣を鞘に納めるとスーッと目を閉じた。

｢馬鹿めっ!血迷ったか。死ねーっ｣
見えない相手が砕に襲いかかる。
ｼｭﾝ

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>> 81 ﾋﾟﾀｯ
｢何だと!!｣

砕は、目を瞑ったまま一瞬で両手にオーラを溜めステルスソードを真剣白刃取りで受け止めていた。
｢朧気ながら、あんたが見えてきたぜ。｣
｢ふん、一回のまぐれでいい気になるな!小僧｣
ソードから手を離し、ゆらっとステルススーツを纏っている男は動いた。
その時には既に漆黒の鎧にオーラを溜めていた。

｢これでも喰いな!!
スティンガー･ブレイクウゥーッ!!!｣ 剣を抜きそのまま突き出し気を放出させた。
ドゴゴゴｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ
相手は、勢いよく通路奥に飛ばされた。ﾄﾞｶﾞｯ
｢何だ、これは…ぐあっ熱い。｣

｢耐熱性スーツでも、俺のオーラは防げなかったみたいだな!｣
｢不覚。このスーツの力に頼り過ぎたかっ…｣
ｶﾞｸｯ
同時に砕も、通路の壁にもたれかかったまま、ｽﾞﾙｽﾞﾙとへたり込んでしまった。
｢なんとなくだが、爺ちゃんの言葉理解したぜ。｣

｢ふおっふおっ、それでこそ儂の孫じゃ。｣
｢大丈夫、砕。｣
ラリスは砕の元へ駆け寄ってくる。

｢へへっ何とか生きてるぜ。｣
｢私、簡単な治癒魔法なら使えるから…｣
エルフの尖った耳がﾍﾟﾀｯと下がり少し涙ぐんでいた。
(こいつ、こんな表情するんだ…)
砕は、ﾄﾞｷﾞﾏｷﾞした。

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>> 82 一方、祖父等と違う通路を進んでいる竜人と女性にも10人の兵士が遭遇していた。

｢いたぞっ!｣
｢侵入者だ。やれっ！｣
レーザー銃を一斉に構える。

｢私に任せてくれ。久々に腕が鳴る。｣
女性は言霊を唱えた。
｢風よ…｣
ﾋｭｰｯ
女性を風は柔らかく包まれると同時に、目にも止まらない超スピードで兵士を薙ぎ倒して行く。
次々と腹を押さえながら兵士たちは倒れた。

｢ふぅ～っ、俺の出番は無さそうだ。｣
通路の壁にうっかかると、竜人は腕を組んだ。いかにも、戦闘がしたい素振りだ。
｢んっ!?｣
竜人は、背後から気配を感じ振り向くと通路の片隅に、小さい男の子が立っていた。

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>> 83 ｢坊主何故、こんな所にいるんだ。｣
竜人が近づくと男の子はｸｽｸｽと笑らい通路の角を曲がって行ってしまった。

｢おい！｣
追いかけると、そこには男の子の姿はもう無かった。

｢今のは一体…｣

女性が後ろから、追いかけて来た。
｢いきなり、走って行くからビックリしたよ。どうしたんだ?｣

｢いや、これくらいの坊主がいたんだ。｣
竜人は手で高さを示すと、辺りを見回した。

｢誰も居ないじゃない。あんたの見間違いだよ。さぁ、操縦室に急ごう。｣

｢ああ…｣

二人は通路を進んだ。
その後ろからは、さっきの男の子が笑って見ていた。

ﾎﾞｼｭﾝ
男の子だったのが、スラッとした黒い毛に覆われた青年になった。見た目は…そう悪魔…

｢はぁ～いいもん食えると思って、エルフの惑星から小型船に乗り込んで、ついて来たのに…酒樽がいっぱいなだけだもんな…あぁ腹減った…｣
｢この船の食料庫はどこかな。｣

そう言うと、悪魔は鼻をｸﾝｸﾝならし歩いて行った。

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>> 84 ｢A班とB班からの連絡が途絶えたか!｣

少佐は無線を再び持つと残りの戦闘班に指示を出した。

｢少佐!中佐から入電です。｣
敬礼し通信兵は報告すると自分の持ち場に戻って行った。

ｼﾞｼﾞｯ
『どうした? まだ、雑魚どもに手こずっているのか。』
スクリーンパネルごしに紫の戦艦の中佐が映る。

｢はっ！なかなか侵入者に手こずっておりまして…｣

『馬鹿者、このことが上層部に漏れたらどうする。軍法会議ものだぞ!監督不行きで私の責任になってしまう。』
スクリーンごしに台を叩くのが見える。
『何としても、捕らえて元連合軍の奴に引き渡さないといけない。奴は上層部のお気に入りだからな。必ず、捕らえよ。それまで、本鑑は大気圏上空で待機する。』

｢はっ！｣
ﾌﾞｰﾝ

｢くっ…特殊隊(ステルス)はどうした!｣

｢はっ！１人重傷で残り２人です。｣

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>> 85 ｼｭ－
ラリスは簡単な回復をかけ終わった。
｢これで、大分違うはずよ。｣

｢ふう～っ、助かったぜラリス。｣
そう言うと右親指を突き出した。

｢でも、左頬の傷は深かったみたいね。後が残るわ。｣

｢大した事はねぇよ。初めての戦闘だったからな、この傷跡はこれからの気を引き締める戒めにするさ。｣
自分の左頬を触りながら言うと、立ち上がった。

｢ふおっふおっ、儂も傷だらけじゃ。｣
祖父はお尻をﾍﾟﾛｯと出してみせた。

｢きゃあーっ｣
ラリスは慌てて両手で顔を覆った。

｢爺っ!きたねぇケツ見せてんじゃねぇよ!｣
ﾄﾞｺﾞｯ
｢ぐはっ!!｣
祖父の尻を蹴飛ばした。
｢ったくよぉ。｣

｢お～ｲﾁﾁ、年寄りは大切にするもんじゃわい。一体誰に似たんじゃか…｣
祖父は尻をさすりながらﾌﾞﾂﾌﾞﾂ言い出した。

(爺っ、あんただよ。ア･ン･タ)
砕は心の中で叫んだ。

｢お二人さん、早く操縦室に向かって合流しましょう。｣

｢おおっ、そうじゃった。漫才なんかしとる場合じゃないわい。｣

｢……。｣
三人は走り出した。

• << 88 祖父は、走りながら、先ほどの戦闘で兵士から手に入れた、ホロクラブマップのチップを抜き自分が持っているマップに入力し直した。 ｶﾁｯ ﾋﾟﾋﾟｯ ｢これで、儂等の言葉になり、どこが操縦室か分かるわい。｣ ｶｼｬｶｼｬ ｢後は、アイツ等に送信すればオッケーじゃ。｣ ﾋﾟｯ ｢よし、完了!｣ 腰袋に入れると、通路を走るスピードを上げた。 ｢早いわ。追いつくのでやっとよ。｣ ラリスは補助魔法で足を早くしているが、祖父の方が早い。 ｢ゼーゼーッ｣ (この化け物じじい…70歳過ぎの走り方じゃねぇぞ!然も、相手の兵士を七重残像剣で倒しながらだからな…俺の出番がねぇ) 三人が通ったあとは何十人もの兵士が通路に倒れていた。 同じく、祖父からホロクラブマップの受信をした竜人等も圧倒的力の差で、マップを頼りに、走りながらこの鑑の兵士を倒していた。 特殊隊(ｽﾃﾙｽ)の二名の兵士も、砕があれだけ苦戦したが、大戦の英雄の前では、赤子も同然だった。

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>> 86 †作者がレスし終わって、俺が見直したら文字が勝手に小さくなってるから参ったぜ…
もし、読んでる奴がいたら、見づらくてすまねぇ。許してくれ。
　　　　〆　
m⊆(_ _)⊇m
砕より
作者からもお詫びします。
m(_ _)m
アル🍺

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>> 86 ｼｭ－ ラリスは簡単な回復をかけ終わった。 ｢これで、大分違うはずよ。｣ ｢ふう～っ、助かったぜラリス。｣ そう言うと右親指を突き出した。… 祖父は、走りながら、先ほどの戦闘で兵士から手に入れた、ホロクラブマップのチップを抜き自分が持っているマップに入力し直した。
ｶﾁｯ ﾋﾟﾋﾟｯ
｢これで、儂等の言葉になり、どこが操縦室か分かるわい。｣
ｶｼｬｶｼｬ
｢後は、アイツ等に送信すればオッケーじゃ。｣
ﾋﾟｯ
｢よし、完了!｣
腰袋に入れると、通路を走るスピードを上げた。

｢早いわ。追いつくのでやっとよ。｣
ラリスは補助魔法で足を早くしているが、祖父の方が早い。
｢ゼーゼーッ｣
(この化け物じじい…70歳過ぎの走り方じゃねぇぞ!然も、相手の兵士を七重残像剣で倒しながらだからな…俺の出番がねぇ)

三人が通ったあとは何十人もの兵士が通路に倒れていた。

同じく、祖父からホロクラブマップの受信をした竜人等も圧倒的力の差で、マップを頼りに、走りながらこの鑑の兵士を倒していた。

特殊隊(ｽﾃﾙｽ)の二名の兵士も、砕があれだけ苦戦したが、大戦の英雄の前では、赤子も同然だった。

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>> 88 ﾋｭﾝ ﾋｭﾝ
｢何なんだ!｣
ステルススーツとステルスソードを装備して姿が見えないにもかかわらず、竜人は攻撃をステップだけでかわしていく。
｢甘い。｣
竜剣を振った。
ズバズバッ
ｶｼｬﾝ ｶﾗｶﾗ

｢ぐぐっ、何故…我らの位置が分かる!?｣
特殊隊の二人からの手からステルスソードが落ちる。そして、そのまま倒れた。

｢当然だ。それだけの殺気を放てば、何処にいるか手に取るように分かる。｣
竜人は竜の柄の付いた長剣を豪快にグルグル回すと腰の鞘に納めた。

｢あんたらが、何人かかって来ようが、倒す。それだけだわ。｣
ﾁﾝ
女性は、通路前方から来た兵士数十人を倒していた。

｢じゃあ、行くか。｣
｢ああっ!｣
ｺﾞﾝ
二人は互いの拳をぶつけると走り出した。

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>> 89 厨房の冷蔵庫前…
｢はぐはぐ、んぐんぐ｣
ﾄﾝﾄﾝﾄﾝ

ｺﾞｷｭｺﾞｷｭ ｺﾞｷｭｺﾞｷｭ
｢ぷは～っ!食った食った。｣
全身黒い毛で覆われている悪魔はｽｸｯと立ち上がると、口を手で拭い体をﾌﾞﾙﾌﾞﾙと震わせた。

｢お腹もいっぱいになったし、アイツ等を驚かせるか。｣
そう一人ごとを言うと厨房のハッチから出て行った。
ﾌﾟｼｭｰ

通路に出ると何人かの兵士と出くわした。

｢ひっ!何だこの化け物は…｣
｢構わん、撃ち殺せ。｣

兵士たちは顔をひきつらせ悪魔にレーザー銃を発砲する。

ﾋﾞｼｭﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭﾋﾞｼｭ

｢やれやれ…珍獣の王にそんなものは効かないよ。｣
体毛を硬化させレーザーを跳ね返した。
｢今、お腹いっぱいで気分がいいんだ。邪魔しないでくれよ。｣
ﾋﾞｼｭ
体毛が伸び周りを囲んでいる兵士は全員串刺しになった。
ﾄﾞｻﾄﾞｻ
｢操縦室がアイツらどうとか言ってたな。｣
ぐにゅう
体を蜘蛛のように変形させると、臭いを嗅ぎｻｶｻｶと走って行った。


一方…
操縦室の前で祖父等と竜人等が合流し、ハッチ中に入って行き少佐を拘束していた。

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>> 90 ｢お前等、こんなことをして只で済むと思うなよ！絶対、死刑にしてやる!!｣
少佐は、ﾍﾟｯと唾を吐いた。

｢只で済まないって…｣
ｷﾞﾘｷﾞﾘ
｢ぐっいたたたっ｣
女性は少佐の右腕を後ろに締め上げた。
｢この鑑は我々が占拠した。これ以上血を流さない為にも、速やかに投降するよう鑑内放送で呼びかけてくれ。｣
竜人は、少佐の首元に剣を当てながら話す。
｢ふおっふおっ、それから、もう一つお願いがあるんじゃがの。この鑑のハイパーブースターの設計図が欲しいんじゃが。｣
祖父の顔は笑っていたが、目の奥底は鋭かった。

｢ぐぅっ、そんなものどうする?｣

竜人に祖父はｳｲﾝｸし、竜人はその意図に気が付いた。
｢なるほどな。｣

｢全然分かんねぇよ。爺ちゃん!｣
｢砕、馬鹿ね、私分かったわ。｣
ラリスは皮肉たっぷりで言った。

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>> 91 少佐と他の兵士等を一つの広い会議室に拘束すると、さっき聞いたハイパーブースターの設計図を竜人はコンピューターから引き出した。

｢ふおっふおっ、流石じゃ。｣

｢なぁ、設計図なんかどうするだ?｣
砕は不機嫌そうに尋ねた。

｢俺の星に送信して、このネオハイパーブースターを製造して、我が竜人の戦艦全てに組み込むんだ。｣
コンピューターを操作しながら、竜人は答えた。

｢分かったか、坊主。｣
女性はｸｸｸと笑った。
｢へんっ!｣

｢ふふっ分かった～っ。｣
ラリスも女性の真似をしながら言った。

｢まぁ我々の星なら一週間でこの新型ブースターを完成出来るはずだ。幸いうちのメカニックには不精だが腕が確かな奴がいるからな。｣

｢しばらく、アイツと会わないと思ったら、竜人の惑星に居たのか。メカニックばかりやって自慢の銃も老眼で駄目だろうな。｣
女性は腹を抱えて笑った。

その時…
ｳｨｨｰﾝ
突然、操縦室のﾊｯﾁが開いた。
皆は一斉にﾊｯﾁの方を向くと構えをとった。

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>> 92 ｢みんな、お久～っ!｣
皆がそれぞれ武器を構えてるのを見て、悪魔は慌てて小さい子供になった。

｢……。｣

｢何で、ここに居るんだ。｣
女性はｼﾞﾛｯと悪魔を睨んだ。

｢だって、食い物にありつけるかなって思って。｣

｢そんな事を聞いてるんじゃない。大戦後にエルフ城の地下ラビリンスの封印の扉を監視してる筈じゃなかったか。｣
更に、女性は睨みつける。

｢え～っだって飽きたんだもん。それに、違うやつに任せてきたよ。｣
全然、反省の色が見えない悪魔であった。

｢この方って、あの魔法学校の歴史で習った大食いの悪魔さんですか。｣
ラリスは隣りに居る祖父に尋ねた。

｢ふおっふおっ、そうじゃな一応、大戦の英雄の一人じゃ。珍獣族の王でお前さんの城の地下を守っているはずじゃたんだが…｣
顎をさすりながら祖父は答え悪魔に近寄った。

｢えっえっ、何!｣

｢まぁいいわい。その代わり一緒に嬢ちゃんを助けに行くぞい。いやなら、またエルフの惑星に送り返してやるわ。｣

｢そんな～っ｣
悪魔はしょげて小さな黒い毛玉になった。

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>> 93 ｢さぁ、この鑑のシステムはジャック出来た。この後どうする?｣
竜人は祖父の方を見上げる。

｢そうじゃな、すぐ嬢ちゃんの元へ行きたいところじゃが、取り敢えずシャドーmkⅢを格納庫に誘導し、さっきの兵士の情報じゃ大気圏上空で紫色した戦艦が待機中じゃから、ぶっ潰すかの。ふおっふおっふおっ。｣
祖父は頭を掻きながら言うと砕の方に向き直した。

｢砕よ!今回の闘いで分かったな、お前はまだ修行が足りん、シャドーmkⅢのバトルルームにラリスと行ってくるのじゃ!｣

｢ああっ分かったよ!行けばいいんだろ!行こうぜ、ラリス。｣

｢うん。｣
砕の後ろからついて行く。

｢儂に追いつき、追い抜くのは、いつの事じゃろか。｣

｢ふんっ!｣
(ったく、初めての戦いだから、ちょっと褒めても良いじゃねぇか)

｢私も行こう。機械には限度があるからな。｣
コンピューターの操作が終わった竜人は椅子から立ち上がった。

｢ふおっふおっ、有り難い。手厳しく頼むぞい。｣

｢ああ、分かってる。｣

ﾌﾟｼｭｰ
三人は操縦室から出て行った。


｢!?｣
ｽﾞﾝｯ
祖父はハッチから出て行くのを見送ると床に片膝を着いた。

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>> 94 ｢おい、大丈夫か？｣
女性は心配そうに駆け寄った。

｢ｺﾞﾌｯゴフッ!!｣
ﾎﾞﾀﾎﾞﾀﾎﾞﾀｯ
手で口を押さえるが隙間から血が滴り落ちる。

｢何時からだ?｣

｢大戦の後からじゃよ!アヤツとの最後の闘いで闇のエネルギーを喰らいすぎたのじゃろ…砕には、内緒じゃぞ。一人前に成るまでは、死んでも死にきれんからの…｣

｢アンタはいつまでも馬鹿、いや大馬鹿野郎だね…｣
女性は涙ぐんた。

｢35年もあれから生きてるんじゃ…体が悲鳴を上げるのも無理ないの。｣

｢血を拭いとかないとね。｣
女性は目に溜まった涙を拭うと、床を綺麗にしだした。

ｽﾙｽﾙ
悪魔の毛が祖父の目の前に伸びて来た。その先には小さな小さな袋がかかっている。

｢これは、珍獣族代々からある薬だよ。煎じて飲むと少しは闇の痛みを和らげてくれるよ。｣

｢すまんの…｣


少しは治まったのか椅子に座って、コンピューターを操作しだした。

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>> 95 グゥォン グゥォン
グゥォン グゥォン
大気圏上空…

｢中佐、戦闘鑑ブルースカイからの通信途絶えました。｣

｢何をやっておるのだ少佐わっ!!｣
ドンッ
怒りにまかせ机を叩いた。

｢ﾊｯ! 船を乗っ取られた模様です。｣
通信兵は怯えながら伝えた。

｢拡散粒子砲 用意!!目標 冥王星戦闘鑑ブルースカイ｣
中佐はデッキの兵士に叫んだ。

ｻﾞﾜｻﾞﾜ
｢然し、中佐!まだあの鑑には仲間が乗ってます。｣
他の兵士も騒ぎ出す。

｢構わぬ、上層部もそうするだろう。敵に捕まったものには死を…急がんか!!｣

｢…ﾊｯ!!｣
｢軌道修正35…サイドブースター点火｣
ｼｭｺﾞｰｰｯ
｢軌道修正誤差0.5異常無し｣

｢鑑首 砲門を開きます。エネルギー充電発射三分前…｣

ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ
紫の戦艦の動力部が激しく回転しだす。

｢ﾌﾌﾌｯ…貴様等もこれで終わりだ。元連合軍の生き残りの意見など知るものか。｣
ﾋﾟｷｰﾝ
｢エネルギー充電
30％｣

ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ

徐々にエネルギーメーターの目盛りが上がっていく…

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>> 96 PPP
｢ｺﾉｾﾝｶﾝﾉ ｼﾞｮｳｸｳ ﾀｲｷｹﾝﾉ ﾎｳｶﾞｸｶﾗ ｺｳｼｭﾂﾘｮｸｴﾈﾙｷﾞｰｦ ﾀﾝﾁ! ｷｹﾝﾀﾞ｣

祖父の左手首のブレスレットにAIのシャドーから通信が入った。

｢なんじゃと!｣
ｶｼｬｶｼｬ
祖父は慌ててスクリーンパネルに映し出した。

そこには、紫色の戦艦が反転して鑑首にエネルギーの塊が集まっていた。

｢どうすればいいんじゃ…｣

｢慌てなさんな。だいたいのこの鑑の操作は頭に叩きこんだわ。｣
ｽﾁｬ
女性は、シートに座り操縦桿を握り鑑の速度を上げると、何やらコンピューターのキーボードに入力した。

｢どうするつもりじゃ?｣

｢まあ見てなさいよ。今までの経験上、取り敢えず相手鑑のエネルギー波が来るはずだから、この星から軌道をずらさないとね。｣

ｸﾞｵﾝ ｸﾞｵﾝ ｸﾞｵﾝ

｢そうじゃな、この惑星に傷でもつけたら、後で嬢ちゃんから何と言われるか分からんからの。｣

ｶｼｬｶｼｬ
｢これでよし、座標確認OKだわ。軌道もそれたみたいだし。｣
女性はﾆﾔｯと笑うと操縦桿を引いた。

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>> 97 大気圏上空…

｢こちらの動きが分かった模様です。ブルースカイが全速力で動き出しました。｣

｢かまわぬ。オートロックオンをしているのだ何の問題もあるまい。｣
中佐は余裕たっぷりの表情で兵士に言った。

ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ

｢エネルギー充電80％!! 残り1分で拡散粒子砲撃てます。｣
兵士は目盛りが上がるのを確認すると中佐に報告した。

｢はっはっはっ!我等の力思い知るがいい。｣

ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ
紫の戦艦の動力源が激しく回転し船首には凄まじいエネルギーが凝縮されていく。

｢この拡散粒子砲を喰らい塵となるがいい。｣

ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ

ｳｨｰﾝ ｶﾞｼｬ
中佐の座っている目の前の台に銃の形をしたスイッチがせり上がった。
それに手を当て、まだかまだかと中佐はエネルギーが溜まるのを待った。

ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ
ﾋﾟｷｰﾝ

｢エネルギー充電120％ 鑑に異常無し!中佐いつでも撃てます。｣

｢我等に逆らった事を後悔するがいい。
拡散粒子砲 発射!!!｣

ｶﾁｯ

ドゥギューン!!!

眩い光の塊がブルースカイ目掛け、凄まじい勢いで発射された。

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>> 98 ドゥギューン

ブルースカイの目の前に凄まじい勢いでエネルギー波が迫って来た。

｢来たぞい!｣
｢うわーっ!!｣
祖父は両腕を上げ顔を隠した。

ｷﾞｭｰﾝ
ﾌｯ

そして祖父は、次の瞬間には轟音と衝撃で床に顔から叩きつけられた。

ドカッ!!
｢ぐげっ｣

｢大丈夫かい。｣
女性は祖父に言葉を掛けながら、キーボードを打っていた。
｢今のエネルギー波はどうなったんじゃ…!?｣
キョトンとしている祖父に女性は答えた。

｢この鑑をショートコスモワープさせ紫色の鑑の鑑首にぶち当てたのさ。敵さんも、まさかって思っているだろうよ。それから、エネルギー波は、この星の山を削っただけで、大きな被害が出なくて良かったわ。｣

｢流石じゃの。｣
おでこのタンコブをさすりながら言うとシートに座り直した。
｢ふう～っ、死んだかと思ったわい。｣

｢本当だよ!｣
どこに隠れていたのか、手のひらサイズになった黒い毛むくじゃらの悪魔は、ﾎﾟﾖﾝと祖父の肩に乗っかった。

｢お前さんは、何処にいたのじゃ。
まぁ、良いとして…凄まじい威力じゃの…かすってる場所は 跡形も無いわい。もし喰らっていたらと思うとゾッとするわい。｣
スクリーンパネルを見ながらエネルギー波の威力に驚いた。

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>> 99 ﾌﾞｰﾝ
『どうしたんだ、爺ちゃん!この揺れは…』
シャドーmkⅢから砕の連絡が入った。
『何かあったんですか？』
パネルごしに、砕の後ろからﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝジャンプしながらラリスが話し掛ける。

｢今、紫色の敵鑑にぶつけたところじゃわい!｣祖父と女性はニヤッと笑った。

『この後はどうする?やっぱりアレか…』
竜人は腕組みをとくと、自分の剣を触った。
『アレって…』
砕とラリス二人は口を揃えて言う。

｢そうだ、乗っ取るぞ。｣
｢じゃな。｣

『え～っ!またっ。』
パネルに映っている二人はうなだれた。
｢じゃあ切るぞい。｣
『あっ!まっ…』
ﾌﾟﾂﾝ

｢また、忙しくなって来たわい。大変じゃ。｣

｢その割には、顔は笑っているぞ。｣

｢留守番頼んだぞい!｣
ｳｨｰﾝ ｶｼｬ
黒い毛むくじゃらの悪魔を祖父の肩からシートに乗せ、二人は操縦室から出て行った。

ﾎﾞﾌｯ
｢あ～あぁ いっちゃったよ…また、厨房で何か食べよ。｣
子供の姿に戻った悪魔は又食べ物を求め出て行ってしまった。

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>> 100 謎の惑星…

｢…で、あるからにして、これからどの様にされますかな、冥王星プルート将軍。｣
ルナ老議長は尋ねる。
議長を囲むように９個のモニターが置かれている。

｢……。｣
プルートと呼ばれた将軍は、紫色のマントに黒い軍服を着ており、灰色の瞳と皮膚に髪は真っ白である。

｢大丈夫ですよ!貴君があの銀河の惑星人にやられても、私がいますから。ﾊｯﾊｯﾊｯ｣
青いマントにやはり黒い軍服を着ている別の将軍が言った。灰色の瞳と皮膚に髪はｺﾊﾞﾙﾄﾌﾞﾙｰである。

｢…ふん！このプルートの部隊が捕らえてくるから心配無用だ!!海王星ネプチューン将軍。｣

｢どうだか。｣
ネプチューンは手を広げてみせた。

モニターごしに鋭い眼孔でプルートは睨んだ。

｢近いもの同士仲良くせんか。｣
ずんどうで髪が茶色く黄色いマントを羽織っている天王星ウラノス将軍が怒鳴る。

｢まあまあ、落ち着いて下さい。｣
ルナ老議長は汗をかきながらなだめた。

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>> 101 ｢今、我々の母星は流星群の衝突により移住することが出来る銀河を探索していた。そして、その銀河系の元連合軍人に助言してもらい、ようやく見つける事が出来た。｣
黒い軍服に白いマントを羽織ったアース将軍は、なおも話し続けた。

｢水星マーキュリー将軍と金星ビーナス将軍と火星マルス将軍が率いる部隊には、母星の復興に当たって貰いたい。｣

｢木星ジュピター将軍と土星サターン将軍と天王星ウラノス将軍の率いる部隊には、あるものを建造して貰いたい。｣

｢海王星ネプチューン将軍の部隊は他に移住出来る惑星が無いか探索を、冥王星プルート将軍の部隊は引き続き今の任を遂行してもらいたい。｣

｢異議はありませんね…。｣
ルナ老議長は各将軍に尋ね、異議が上がらないので会議を終了した。

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>> 102 ﾌﾟﾂ
｢ﾌﾝ!ネプチューンめ。｣
モニターを消すと、冥王星プルート将軍の灰色の目は怒りに燃えていた。

｢冥王星前線基地の鑑全てを出せ!!私も出る。船造中の大型戦闘鑑を発進出来るように急げ!!｣

｢ﾊｯ!｣
兵士は慌ててハッチから出て行った。

｢アース総将軍に気に入られた元連合軍の生き残りの奴は、人質を取って第三惑星に向かったらしいが、私は生け捕りにするつもりはない。｣

｢我が前衛鑑隊を破壊した忌々しい奴ら目…｣
目の前のモニターを引きちぎり上に投げると、脇にさしていたレイピア(細身の剣)を抜き、高速の突きを出した。

ｼｭﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟｯ
モニターは跡形も無くなってしまった。
｢ﾌﾌﾌｯ!お前等もこうなる運命だ。｣
ﾁﾝｯ
レイピアを鞘に戻し、腰まである長髪をかきあげるとプルート将軍はマントを翻しながらハッチから出て行った。

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>> 103 ｢ふう～っ!こやつらは弱いのう。｣
祖父は、腰をﾄﾝﾄﾝと叩くと背伸びをした。

｢ウォーミングアップにもなりゃしない。｣

｢我々が強く成りすぎたんだよ。｣
竜人は女性に言った。

(いやいや、あんたら本当に化け物だぜ)
砕はデッキのシートに息を切らしもたれていた。

｢私、全然役にたたなくてすいません。｣
ラリスは大戦の英雄三人の戦いに唖然とするばかりであった。

｢ラリス、心配するんじゃねぇよ!爺ちゃん等が強すぎるだけなんだから…｣
砕は、辺りを見回した。
後ろで両腕を縛られた中佐以外、紫色の鑑の兵士は、全てのされていた。

｢あぁっ貴様等、こんなことをして、このことがプルート将軍の耳にでも入ったら私は生きていられん。｣

｢ほうプルートとは何者だ。｣
ﾁｬｷ
中佐の喉元に女性は剣をあてた。

｢ぐっ、太陽系冥王星前線基地を任せられておられる将軍だ。あの方は、いっけんクールだがキレると手が付けられなくなる…｣

｢ほう、そいつは、怖いな。｣
女性は剣を鞘に納めると言葉とはうらはら笑っていた。

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>> 104 ｢さぁて、この鑑もオートマチックでも運航出来るみたいじゃの。お前等、このパープルスカイとブルースカイの兵士は解放してやるぞい。小型艇で帰るのじゃ。｣

｢えっ、でも爺ちゃん…｣

｢初めの青色の鑑は撃沈したが、こやつらも好きで戦っているのじゃなかろう。罪を憎んで人を憎まずじゃ!｣

｢敵の情けなどいらん。｣

｢お前さん強がりはそのくらいにして。ただし、この次に儂等に刃を向けることがあったら…｣
ｷﾞﾛｯと祖父は睨みを利かせた。

｢うっ…｣
中佐は蛇に睨まれた蛙のようになり押し黙ってしまった。

｢皆、それでいいかの?｣

｢あんたは、昔から言い出したら聞かないタイプだからね。｣

｢そうだな、こっちの意見はどうせ聞かないで、勝手に話し進めるから同じだ。｣
二人はﾊｧｯとため息をつき手を広げてみせた。

｢じゃ良いんじゃな。砕、ラリスもよいな。｣

｢ああっいいぜ。ﾌﾝどうせ、ついでに聞いただけだろ!｣
｢はっはい!私は、皆の意見に従います。｣

｢よし決まりじゃ。｣ﾊﾟﾝと手のひらを叩いた。

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>> 105 冥王星戦闘鑑パープルスカイとブルースカイの兵士等は解放され、小型艇に乗ると一斉に発進し自分たちの基地に戻って行った。

｢爺ちゃん良かったのかよ。｣

｢無駄な血を流さなくてもいいんじゃ…35年前の連合軍との大戦で嫌というほど儂は多くの仲間を失ったからの。｣
砕は、生まれて初めて祖父の悲しげな表情を見た。

｢そうだな。姫を助ければ、それでいいわ。｣

｢ああっ、それでいい。｣

女性も竜人も宇宙の遠くを見つめていた。

｢もし、相手が襲ってきたら…｣
ラリスは、祖父に尋ねた。

｢矛盾してるかもしれんが…その時は、全力で相手を葬る。｣
戦艦のコンピューターを操作しながら祖父は答えた。

｢ｹｰｽ ﾊﾞｲ ｹｰｽってことですか。｣

｢まあ、そうじゃな…じゃが、無闇に人の命をとるものじゃないぞ。戦いは、守る人の為にするのじゃ。その為には、修行をして日々精進するのじゃ。自分に力が無いと後悔するぞい。｣

｢はい！｣
｢あぁ、分かったよ爺ちゃん。｣

戦艦パープルスカイとブルースカイは一度、惑星の地表に降り立った。

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>> 106 戦艦を着陸させると女性と砕とラリスはシャドーmkⅢのバトルルームで更なる修行をし、祖父と竜人と悪魔は地下通路に居る大臣の元へ行った。

｢大臣、この惑星の復興も大事じゃが女王がさらわれた今、助けに行かぬかの。｣

｢私は、行けません。やはり、この惑星の復興が女王様の意志だと思います。｣

｢そうか…｣

｢ですが、私も助けたいという気持ちは、皆さんと一緒です。｣
大臣は汗を拭うと
側近の者に一人の戦士を呼び寄せた。

｢初めまして、アルミ＝スタンフォードです。お見知り置きを…｣
全身黄金の鎧に包まれ顔は見えない。
だが、体全体から凄まじい闘気を祖父は感じた。

｢偶にこやつは無鉄砲なところがありますが、女王様を助けに行かせるには適任かと思われます。｣

｢なかなかの戦闘力を持ってそうだな。｣
竜人はアルミの頭の上から足のつま先まで見ながら言った。

｢そんなことは無い。｣
アルミはぶっきらぼうに答える。だが、全身から放たれる闘気は隠すことは無かった。

｢まあ、いいじゃろ。嬢ちゃんを助けに行くのに、少数精鋭の方が相手に突っ込むのにはいいじゃろ。大臣、アルミをお借りするぞい。｣
祖父は礼を言うと、作戦会議を始めた。

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>> 107 それから、１時間が経ち祖父らと大臣を含む数人の会議は終わった。

｢ねぇねぇ、お腹空いたよ。｣
悪魔は祖父のわき腹をﾂﾝﾂﾝとつついた。
｢待っとれ。では、アルミはお借りするぞい。｣

｢砕等もバトルルームの修行が進んだろう。｣
大臣と兵士が見送る中、竜人は地下通路の方へ歩き出した。
ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ

｢で、女王様を直ぐに助けに行くんだろ！?｣
アルミは祖父に尋ねた。

｢あぁ、じゃが竜人の部隊が来ぬと話しにならんわ。｣

ｶﾂｺﾂｶﾂｺﾂ

｢つまり、竜人部隊の戦闘鑑が相手を翻弄している間に、我々が姫を助ける。然し、一週間はハイパーコスモワープのエンジンを組み込むのに時間がかかる…｣
竜人はそう言うと階段を上がった。

｢そんな暇は無い。直ちに俺たちだけで行こう。｣
アルミは作戦を聞いていたにも関わらずそう言った。

｢ふおっふおっ!まあ、儂もその案は嫌いじゃないがの。じゃがアルミよ、慌てるでない。相手は未知の攻撃力を持っておる。こちらも、それなりの兵力がいるのじゃ。｣
祖父は、白髪の頭をﾎﾞﾘﾎﾞﾘと掻いた。

• << 111 ｶﾞｷｨｰﾝ ｢まだまだ、無駄な動きが多い!!｣ ｢くそっ!うりゃあっ!｣ ｶｷｯ 砕の剣はいとも簡単に女性に跳ね返される。 (大戦の英雄ってのは、うちのｼﾞｼﾞｲといい、化け物揃いかよ…) ｢えい!｣ ｺﾞｵｳｩｯ 砕の攻撃をサポートしているラリスは間髪入れず小型火炎弾を放つ。 ｻﾞｼｭ ｢ラリス、そんなノロマな詠唱じゃ素早い相手に通じないよ。｣ 残像だけを残しいつの間にか、ラリスの喉元に紋章の入った剣が当たっていた。 ｢うぐ…｣ ラリスの背中は冷たい汗が流れる。 ﾌﾞｰﾝ ｢三重残像剣!!｣ その背後から三人に分身した砕が同時に斬りかかる。 ｢風よ剣に鋭さを…｣ ガギギッン 女性はラリスを突き飛ばすと、同時に繰り出された砕の剣を受け止めた。 そしてそのまま、腹に蹴りをお見舞いした。 ｢ぐへっ…｣ 砕は腹を押さえ後ろにのけぞった。 ﾁﾝ ｢よし、今日はここまでだな。｣ そう言って剣を鞘に納めると女性は長イスにｷﾞｼｯと座った。然し、汗一つ掻いていなかった。

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>> 109 一気に読んで貰って光栄です。

流石は同世代😂
よく分かってらっしゃる💦
これからも、宜しくお願いします。
m(_ _)m

ばってん💚ことアル🍺より
んっ!出演依頼料は、おいの👛空けんが、｢白銀翼｣のミー兄から貰ってちょ☝
😁ﾆﾔﾘ

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>> 108 それから、１時間が経ち祖父らと大臣を含む数人の会議は終わった。 ｢ねぇねぇ、お腹空いたよ。｣ 悪魔は祖父のわき腹をﾂﾝﾂﾝとつついた。 … ｶﾞｷｨｰﾝ
｢まだまだ、無駄な動きが多い!!｣

｢くそっ!うりゃあっ!｣
ｶｷｯ
砕の剣はいとも簡単に女性に跳ね返される。

(大戦の英雄ってのは、うちのｼﾞｼﾞｲといい、化け物揃いかよ…)

｢えい!｣
ｺﾞｵｳｩｯ
砕の攻撃をサポートしているラリスは間髪入れず小型火炎弾を放つ。

ｻﾞｼｭ
｢ラリス、そんなノロマな詠唱じゃ素早い相手に通じないよ。｣
残像だけを残しいつの間にか、ラリスの喉元に紋章の入った剣が当たっていた。
｢うぐ…｣
ラリスの背中は冷たい汗が流れる。

ﾌﾞｰﾝ
｢三重残像剣!!｣
その背後から三人に分身した砕が同時に斬りかかる。

｢風よ剣に鋭さを…｣
ガギギッン
女性はラリスを突き飛ばすと、同時に繰り出された砕の剣を受け止めた。
そしてそのまま、腹に蹴りをお見舞いした。
｢ぐへっ…｣
砕は腹を押さえ後ろにのけぞった。

ﾁﾝ
｢よし、今日はここまでだな。｣
そう言って剣を鞘に納めると女性は長イスにｷﾞｼｯと座った。然し、汗一つ掻いていなかった。

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>> 111 ｢ありがとう…ございました。｣
ラリスはまだ床に倒れたまま挨拶をした。砕も一時間の特訓で剣を杖代わりにして立ってるのがやっとだった。

祖父と別れシャドーmkⅢのバトルルームで、砕とラリスはレベル11のﾎﾛｸﾞﾗﾑ相手に特訓をしていたが、｢私が相手だ!｣と30分前ほどから女性が闘い方を教えていた。

｢何そんな所でボケッとしてるんだ。二人とも早くシャワールームで汗を流してきな。風邪引くぞ。｣
女性は二人にそう言うと、イスの横にあるボックスのｽｲｯﾁを押した。
ｼｭｲｰﾝ
ｷﾝｷﾝに冷えた果実ジュースがせり上がってきた。女性はそれを取ると一気にそれを飲み干した。
｢くう～っ!このキーンと痛くなるのがたまらないわ。｣
両手でｺﾒｶﾐの辺りを押さえつけた。

｢ｾﾞｰｾﾞｰ…ありがとうございました。｣
砕は女性に挨拶をするとラリスと一緒にシャワールームに向かった。

｢ラリスの裸覗くんじゃないよ。｣
｢だっ誰がラリスの裸なんか…俺は、ラリスよりﾎﾞﾝ!ｷｭｯ!ﾎﾞﾝ!がいいの!｣
｢へーっ!｣
ｺﾞﾂｯ
砕は、後ろから殺気を感じた時には、頭にﾀﾝｺﾌﾞが出来ていた。
｢ぐを～っ｣
｢ふん！失礼しちゃうわ。｣
ﾂｶﾂｶとラリスはシャワールームに行ってしまった。

その光景を見て女性は微笑んでいた

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>> 112 大臣たちと会議の結果、戦艦パープルスカイを大臣に預ける事にした祖父等は地下通路を抜け戦艦に向かった。
黒い体毛で覆われた悪魔だけは、地下通路に残りこの惑星の食料調達係として残った。食料を食いつくさないか心配しつつ、戦艦ブルースカイに乗り込んだ。

ｶﾝｶﾝｶﾝｶﾝｯ
｢ふおっふおっ、竜人部隊が到着する前に、この星の食料を食いつくさなければいいんじゃがの…｣
｢本当に困った奴だ!｣
竜人はタラップを上がって行く。
｢……。｣
その後から全身黄金の鎧で身を包んでいるアルミが無言で付いて行った。

｢格納庫のシャドーmkⅢで孫の砕はちゃんと修行してるかの。｣

｢心配するな大丈夫だ！あいつがスパルタで鍛えてる筈だ。｣

｢ふおっふおっ、それも、そうじゃな。｣
ｳｨｰｯ
冥王星の兵士たちと戦闘中は止まっていた自動通路に乗った二人は笑いながら格納庫の船に向かった。

｢……。｣
アルミは尚も沈黙したまま付いて行くだけだった。

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>> 113 ｳｨｰﾝ
祖父等は、シャドーmkⅢのバトルルームのハッチをくぐり中の様子を見回した。祖父は、長イスに座っている女性を見つけると、その横にゆっくりと座った。

｢どうじゃな? 砕は…｣

｢ああ、荒削りだが良いもの秘めてる。だがまだスタミナが足りない。まだ銀狼族の覚醒はしていないようだな。｣
女性はシャワー室の方に目をやった。

｢そうじゃな。血が薄れているのは確かじゃ。｣

｢それは、そうと凄い闘気を放っている奴がいるみたいだが。｣
二杯目のジュースを飲みながら竜人の横に立っている全身黄金の鎧を身につけている人物を横目でﾁﾗｯと見ると長イスから立ち上がった。

ｺﾂｺﾂ ｺﾂｺﾂ
｢一つ、手合わせ願いたい。｣

｢ああ、いいだろう。大戦の英雄の力を私も見てみたいと思っていたんだ。｣
アルミは部屋の中央に歩き出す。

｢おい!｣
竜人は二人の間に割って入ろうとするが、祖父がそれを制した。

｢ふおっふおっ、面白くなってきおったわい。｣
白い顎髭をつまみながらﾆﾔﾘと笑った。

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>> 114 ｢こちらから、行かせて貰う!｣
そう言うか言わないうちに黄金の剣を抜き女性に斬りかかっていた。

ガギッ
アルミの剣圧は重く、並みの者ならば剣ごと真っ二つになっていたであろう一撃であった。

｢なかなか、良い踏み込みだ。だが、甘いな。｣
軽く剣をいなすと
｢風よ!剣に鋭さを…｣
剣に白い光りを宿した。そして、連続の剣技を繰り出して行く。

｢流石は、女性でも大戦の英雄の一人か…私もこれで全力で行く事が出来る。｣

｢はああぁぁぁっ!!｣ドン!!!
アルミの全身を黒い闘気が覆う。

｢こっ、これは…｣
女性が怯んだ隙を見逃さなかった。

｢あの技は…暗黒龍剣…｣
竜人は呟いた。

｢ダーク･スラッシュ…｣
黄金の剣から真っ黒い光りを放ち、女性を斜めに斬った。
バトルルームの床に亀裂が入った。

｢この星雲で一番堅い材質で作ってある床が割れるとは…凄まじい威力じゃ…｣
祖父も驚愕した。

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>> 115 ｢ふう～っ!あんたやるね。でも、その太刀筋は知っているわ…｣
紙一重でかわしていたが、女性の鎧の左ショルダーパッドは跡形も無く消しとんでいた。戦闘体制をとき、そして、紋章が彫ってある剣を握り締め、この技の持ち主を思い出していた。

｢やはり、今一歩及ばなかったか。｣
アルミは、黄金の剣を鞘に納めると黒い闘気を抑えた。

｢確か、その暗黒龍剣の剣技は一歩間違えれば、己をも喰らうので昔に封印された筈だが!?｣
竜人は腕組みして壁にもたれながらアルミに尋ねた。

｢これは、ある人物から教わったものだ…今はその師がどこにいるか分からない。｣

｢そうだろうな、その技は十年前に行方不明になった連合軍総将軍…私の兄の技だからな…｣

｢そうか、道理で見たことがある筈じゃわい。｣
祖父も三十五年前に女性の兄と初めてエルフの惑星冬の国で闘い圧倒的強さで皆が震撼したのを思い出した。

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>> 116 女性は語り出した。
｢世界の剣豪の一人私の父、剣豪雷神ダリルから『神剣』受け継いだのは、私と兄だけ…兄は更に強さを求め暗黒龍剣の文献を探す為に、手っ取り早く35年前に連合軍に入隊し、私と再びあった時には、強さを認められ連合軍総将軍の地位を得ていた。しかも対峙した時には暗黒龍剣を修得していた。私は兄の暗黒の技を喰らい、コイツ(祖父)の銀狼族の幼なじみの医者に治療して貰い、一命を取り留めた…｣
一気に話して、喉が渇いたのか冷えたジュースを飲み干した。
｢そういえば、そんな事もあったのう…まあ、その星雲の政府軍(人間族)と宇宙海賊(銀狼族)の戦争に巻き込まれ、更に儂等の星雲の連合軍まで入ってめちゃくちゃだったの…｣
祖父は白髪の頭をﾎﾞﾘﾎﾞﾘ掻いた。

｢その暗黒の技を受け継いだのはお前だ!アルミ…この技は、己自身に勝たないといけない。兄のように闇に墜ちるなよ！｣
ｽｸｯと長イスから立ち上がると女性はアルミの肩をﾎﾟﾝと叩いた。

｢……。｣
アルミは無言のままだった。

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>> 117 ｳｨｰﾝ
｢ふう～っさっぱりしたぜ。｣
砕とラリスがタオルで髪を拭きながらシャワー室から出て来た。
｢んっあんた誰だ!?｣
全身黄金の鎧で包まれている人物に気付き直ぐに尋ねた。
｢アルミ･スタンフォードだ!｣
チラッと砕を見て無愛想に答える。
｢はじめまして、ラリスです。アルミさん宜しくお願いします。｣
ﾍﾟｺｯと頭を下げると握手しようと手を出した。
｢私にはそういう慣れあいは要らない。｣
｢え!?｣
ラリスの尖った耳がｼｭﾝと垂れ下がった。
そのやり取りを見た砕は激怒した。
｢いくら何でも、そりゃないぜ。｣
いつの間にか握り拳を作っていた。
｢性格まで兄に感化されたか。｣

｢まあまあ、手っ取り早く説明すると、ここの大臣が行けないから、代理で嬢ちゃんを一緒に助けに行くんじゃよ!みんな、仲良くじゃ…｣
｢自分より弱い者に握手する手は持ち合わせてない。｣
黄金の鎧で包まれている顔の表情がわからない。
｢この野郎～っ!!うおおおおぉぉぉぉぉっ!!!｣
砕は壁に立てかけていた剣を掴むと一気ににオーラを増幅させた。
｢ふおっふおっ、怒りで漆黒の鎧を身に着けずに威力が上がるとは…昔の儂みたいじゃの。隔世遺伝とは良く言ったものじゃ。｣
祖父は嬉しそうに呟いた。

• << 125 ｢ﾑｯ!オーラの質が変わっていく…｣ アルミは砕のオーラ(気)が凄まじい勢いで増幅しているのに反応し、直ぐに黄金の剣を鞘から抜き中段に構えた。 ｢ふおっふおっ、砕のオーラがエルフの王から貰った指輪によって、更に増幅されよるわい。｣ ｢やはりお前の孫だな。気の質が良く似ている。｣ ｢そうだな、ﾌﾟｯﾂﾝきれるところもな…｣ 竜人と女性は祖父を見てﾆﾔｯと笑った。 ｢砕…｣ ラリスは心配そうに二人を見ていた。 ｢三重残像剣んっ!!｣ﾌﾞｰﾝ 砕は三人に分身した左手を開いたまま突き出し右手の剣は突きを出せるように後ろに腕を弾いている。 ｢何をしようとしているか知らんが、そんなもの私には効かんぞ。｣ ｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞｯ 砕の剣にオーラが溜まったその瞬間、三人の砕は剣をアルミに向かって勢い良く突き出した。 ｢ラリスに謝れえぇぇっ!!スティンガーーｯ･ブレイクウゥゥゥッ!!!｣ バジュシャーーッ 凄まじいオーラの光線がアルミを襲う。

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作者のアル🍺です。｢話つく｣からの読者は知っていると思いますが、この🚀parallelworld🌏から読んでいる方の為に人物紹介と主人公等の🌏の場所を書きたいと思います。

∮砕
10年前の謎の惑星探索に行き行方不明になったサムソンと沙羅の子
祖父の凱に男で一つ育てられ日々修行中の銀狼族と人間族の子

∮祖父<凱>
35年前の大戦の英雄の一人
元賞金稼ぎの忍者マスター
ﾋﾟﾝﾀｺﾞ星雲ｳﾏﾝﾀﾞ星の政府軍の父(人間族)と108の小惑星の宇宙海賊の母(銀狼族)を持つハーフ
このﾋﾟﾝﾀｺﾞ星雲最強の一族と謳われるｳﾏﾝﾀﾞ星の寺院に住む弧人フォックスの弟子

∮サムソン
大柄で気の優しい地質学者砕の父親の人間族
10年前の謎の惑星探索で行方不明

∮沙羅
ナイスボディーで美しいが気が強く父親の凱に弧人の技を叩き込まれる砕の母親の銀狼族
10年前の謎の惑星探索で行方不明

∮女王<セレナ>
35年前の大戦の英雄の一人
ﾌﾗｸ星雲ﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ星のﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ王国第一王女で風の大賢者ハーク(故人)に魔法を教わる
35年前闇の黒幕ﾌﾗｸ星雲ﾚｲｶ星のドイスと連合軍を打ち破り惑星をまとめる平和宣言をした王国女王の人間族
今回はさらわれた…

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>> 119 ∮ラリス
ﾌﾗｸ星雲ｼｰﾗ星の魔法学校のエリート
幼い頃大戦で両親を亡くしエルフ王の養女となる 砕といるうちに恋心を抱くようになるダークエルフ族で砕を怪我させたく無いため隠れてバトルルームで魔法のレベルアップをしている

∮エルフの王<ライオネル>
35年前の大戦の英雄の一人
ﾌﾗｸ星雲ｼｰﾗ星の現王寿命が長く冬の国王子の頃クリスに恋心を抱いていたがいつもはぐらかされ独身を貫く今もクリスを思っているエルフ族名もなき養女の名前はライオネルとクリスを合わせたものでラリスはこの事を知らない

∮魔法学校理事長<夏国王サマー>
35年前まで春･夏･秋･冬国と昔四つに別れていた夏の国の王で実験に興味を持つようになり今ではラリスが通う魔法学校理事長のエルフ族
ｼｰﾗ星の戦いで大戦の英雄と一緒に戦った凱の老けた顔を見て若返りと体力と魔力を回復する治癒力が高い魔水を開発する蒼い小瓶に魔水をいれ凱に渡した。銀狼族に有効で普通の人間族が飲むと治癒力が高いだけの飲み物になる中には副作用がある場合も…

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>> 120 ∮エルフ族総隊長<秋の国隊長>
35年前ｼｰﾗ星の戦いで大戦の英雄と一緒に戦った秋の国隊長で冬の国隊長と仲が良かったが雷の圧倒的力に為す術もなく斬られた意思を継ぎ総隊長となったエルフ族

∮長老タカ
今はﾖﾎﾞﾖﾎﾞしているがクリスと雷の父親(雷神剣豪ダリル(故人))と永遠のライバルであり風神剣豪タカと謳われていたエルフ族で賞金稼ぎ７に息子がいる

悪魔<デビル>
35年前の大戦の英雄の一人
ﾌﾗｸ星雲ｼｰﾗ星冬の国の城地下にあるラビリンスに住んでいる珍獣族の王
戦闘力はあるが直ぐに腹が減り食料を探し出す子供型(魔力封印)と魔力溜まると普段の10倍に魔力がなる成人型(魔力解放)とあるが普段は子供型であるヤバい時は拳ぐらいの黒い毛玉になって誰かの肩に乗る珍獣族

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>> 121 ∮女性<クリス>
35年前の大戦の英雄の一人
35年前にﾌﾗｸ星雲ﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ星ﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ城へセレナの用心棒として雇われる
世界で指折りの剣豪雷神ダリルの娘で神の加護を受け全ての自然の力を自分のものにする神剣の伝承者の一人でもある 兄の行方を探し再び旅に出ていた
大戦の英雄の中でも一番の剣の使い手の人間族

∮？？<雷>
35年前、修道院のあの事件から強さを求め連合軍総将軍の地位を持ち妹クリスの前に立ちはだかる。父剣豪雷神ダリルの神剣と封印された文献を探し出し暗黒龍剣をも修得した強者 普段は何を考えているか分からない人間族
現在行方不明

∮メカニック<セロ>
35年前の大戦の英雄の一人
銃を使わせたら世界でも指折りの銃使い独自に船などの整備をしメカニックのうでを買われ現在ﾌﾗｸ星雲ｲｰｽ星の竜人族の惑星で戦艦の設計担当を任されている人間族 クリスと雷とは幼い頃修道院からの幼なじみでオトボケキャラ

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>> 122 ∮竜人<キック>
35年前の大戦の英雄の一人
竜人族の皇子で竜の硬い皮膚で圧倒的防御力を誇る背中には竜の翼が生えており自ら空中からの攻撃が唯一出来る(魔法使いの上級ｸﾗｽも空中遊泳ができる)相手の気を察知しる能力も鋭く父竜王から譲り受けた竜剣を腰に差している竜人族普段はクールだが中身は熱い

∮竜の王<竜王>
ﾌﾗｸ星雲ｲｰｽ星の竜の頂点に立つ キックの父親で普段は人型だが竜になると大戦の英雄と比較にならないほどの戦闘能力を持つ竜人族
冷酷無比のところがある

∮アルミ=スタンフォード
クリスの兄雷<ﾗｲ>から唯一暗黒龍剣を学びﾌﾗｸ星雲ﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ星にたどり着いた謎の戦士 黄金の剣と全身黄金の鎧に身を包み何を考えているか表情を読み取る事が出来ない人間族
プライドが高く無鉄砲なところを持っている
この戦いでこれからどう変わるのか

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>> 123 ﾌﾗｸ星雲惑星位置
　　　🌏
　　ﾚｲｶ星



　　　🌏
　　ﾑｰｸ星
　　🌏　　　　　　ﾗｲｼﾞﾝｸﾞ星
　　　　　　　　🌏
　🌏　　　　　ｲｰｽ星
　ｼｰﾗ星　　
🌏
ﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ星



ﾋﾟﾝﾀｺﾞ星雲惑星位置　　。 　　　〇
青の小惑星　　　。
　。　　　　黒の小惑星
赤の小惑星　　
　　　　
〇　　🌏
　ｳﾏﾝﾀﾞ星　


。 。

　。

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>> 118 ｳｨｰﾝ ｢ふう～っさっぱりしたぜ。｣ 砕とラリスがタオルで髪を拭きながらシャワー室から出て来た。 ｢んっあんた誰だ!?｣ 全身黄金の鎧で… ｢ﾑｯ!オーラの質が変わっていく…｣
アルミは砕のオーラ(気)が凄まじい勢いで増幅しているのに反応し、直ぐに黄金の剣を鞘から抜き中段に構えた。

｢ふおっふおっ、砕のオーラがエルフの王から貰った指輪によって、更に増幅されよるわい。｣

｢やはりお前の孫だな。気の質が良く似ている。｣

｢そうだな、ﾌﾟｯﾂﾝきれるところもな…｣
竜人と女性は祖父を見てﾆﾔｯと笑った。
｢砕…｣
ラリスは心配そうに二人を見ていた。

｢三重残像剣んっ!!｣ﾌﾞｰﾝ
砕は三人に分身した左手を開いたまま突き出し右手の剣は突きを出せるように後ろに腕を弾いている。
｢何をしようとしているか知らんが、そんなもの私には効かんぞ。｣
ｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞｯ
砕の剣にオーラが溜まったその瞬間、三人の砕は剣をアルミに向かって勢い良く突き出した。

｢ラリスに謝れえぇぇっ!!スティンガーーｯ･ブレイクウゥゥゥッ!!!｣
バジュシャーーッ
凄まじいオーラの光線がアルミを襲う。

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>> 125 ｢ﾌﾝｯ｣ドンッ!!
暗黒の闘気を出すとアルミは黄金の剣を斜めに振り下ろした。
｢ダークスラッシュ…｣

ドゴオォォォォン!!!!!

二人のオーラがぶつかりバトルルームは爆煙が巻き起こる。
凄まじい爆風の為、皆は腕で顔を隠した。

｢砕め！なかなかやりおるわい。｣

爆煙の中…
｢効かぬ!やはり大したことないな。｣

そう言った瞬間アルミの頭上に砕が飛んでいた。

｢何んだとっ!｣
アルミが驚くのも無理はなかった。

砕の瞳は金色(こんじき)に輝き狼の瞳になっていた。頭からは耳が突きだし、全身白銀色の体毛で覆われ黒装束のお尻の部分からは白銀の尻尾が出ていた。

｢グウオォォォルルルゥゥゥ…｣
砕は低い唸り声をあげる。
そう、銀狼族の血を引く砕は最も銀狼族の中で強い白銀狼に覚醒していた。

ﾌｯ
｢消えた…｣

ｻﾞｼｭｯ
｢ぐはっ｣
アルミは腹部に強い衝撃を喰らった。
砕の蹴圧で壁に叩きつけられる。

｢いかん！砕の奴、初めての覚醒で暴走しとるわ!｣

｢アンタも初めての覚醒はそうだったわね。ﾌﾌｯ｣

｢あの時は大変だった。｣

｢何、昔の事をほじくり返しとるんじゃ。あれは、若気の至りじゃ。ったく｣
祖父は白髪の頭をﾎﾞﾘﾎﾞﾘ掻いた。

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>> 126 ｢あれが…砕…｣
砕の覚醒した姿を見てラリスは驚きを隠せなかった。
ﾎﾟﾝと後ろから肩を叩かれると女性が立っていた。

｢大丈夫よ。心配しなくても、そのうちに慣れるわ。｣

｢でも…｣

｢ラリス、まあ暴走して怖いのは分かるけど砕を信じなさい。今直ぐにとは無理だけど、アイツのように強い意志で必ず克服するわ。｣

祖父の方をｸｲｸｲｯと親指で指した。

｢はい!砕を信じます。｣
ラリスは砕をジッと見つめた。


｢いつまでも好きなようにはさせない!!｣
ドンッ!
アルミの闘気が更に上がった。
そのアルミを中心に円を描くように鋭い眼孔で獲物を狩るように剣をﾌﾞﾗﾌﾞﾗさせながら砕は歩く。

｢グウロオォォォルルルゥゥゥ…｣

｢暗黒龍剣…闘牙猛龍波斬を受けてみよ！｣

｢いけない！あの技は私が35年前に兄に喰らったものだ!｣
女性は慌てた。

｢内部から破壊されるあの技か…｣
竜人も女性が倒されたのを思い出した。

｢何じゃと!?｣

｢砕…｣

｢行くぞ!｣
｢グウロオォォォゥ…!?｣

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>> 127 ｻﾞｼｭｯ
ガギィィーーッ
目の前で激しい火花が散る…

｢グルルッ!!?｣
｢何だと!?｣
砕とアルミは弾かれた。

｢ふう…何とか相討ちは防げたみたいじゃの……｣
何と二人の間に入って奇妙な刀で二人の攻撃を受けていた。
｢ぐふぉっ…｣
ﾄﾞｻｯ
口から鮮血を撒き散らし、祖父はその場に前のめりに倒れた。
｢大丈夫かっ!!｣
女性と竜人が慌てて駆け寄る。

｢私の技は暗黒の気を送るもの。刀如きではかわせん。｣
アルミはゆっくり祖父に近づいた。

｢貴様っ!!｣
竜人は腰の鞘に手をあてる。
｢止めて下さい。今は、治療が先です。｣
ラリスは泣きながら手を翳し治癒魔法を祖父の体にあてていた。

｢グルルッ…｣
砕はまだ暴走しているがさっきより大人しくなっていた。

｢私だけの魔法力では力が足りないわ…あっ、父が言っていた魔水なら…｣
そう言うと、祖父の腰袋から青い小瓶を探し取り出した。
祈るような気持ちで、ラリスは魔水を祖父の口に移した。

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>> 128 PPP｢ｵｲ ｷｲﾃｸﾚ ｺﾉﾜｸｾｲﾉ ﾀｲｷｹﾝｼﾞｮｳｸｳﾆ ﾃﾞｰﾀｰﾌﾒｲﾉ ｶﾝﾀｲﾎｿｸ｣
シャドーmkⅢのAIｺﾝﾋﾟｭｰﾀｰ ｼｬﾄﾞｰからの鑑内放送があった。
｢ｸｯ!こんな時に、俺はブルースカイのデッキに行く!!｣
竜人は吼えた。
｢私は、暴走している砕を連れて行くから先に行ってくれ!人手不足だ。アルミもデッキに連れていけ。｣
女性は砕に近づき何やら神秘的な言霊を唱えた。

｢ｺｲﾂとだと…ﾌﾝ!しょうがない状況が状況だからな…｣
少し間が空いたが竜人はアルミの方を見ると顎で促した。
｢……。｣
状況を理解したのかアルミは黙ってそれに付いて行った。

｢私は、この方をベッドに寝かせてからブルースカイのデッキに向かいます。｣
唸っている祖父を肩に担ぎ上げゆっくりと歩いて行った。

｢ああ、頼んだよラリス。｣
｢ふうっ、さて、私の言霊でも自分を取り戻すには、もう少しかかるわね…でも、敵さんも来たし頑張りますか…｣
獣人化した砕の方を見て溜め息をついた。

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>> 129 ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ…

｢プルート様、間もなく、冥王星前線基地から偵察に出ていた我が軍の鑑と連絡が途絶えたポイントに入ります。｣

｢そうか、直々に私が出向いたんだ強者はいるんだろうな…｣
真っ白な長髪に黒い軍服と紫色のマントを身に纏い、その下には灰色の皮膚そして灰色の瞳に力がこもる。

｢先ほど、連絡が入り小型艇にて解放された模様です。話しによると、左手に機械をはめ込んだ元連合軍の男が連れ去った女王の仲間『大戦の英雄』は凄まじく強いとの事です。｣

｢そうか…それは、楽しみだ。それから、解放された腰抜けどもは基地に着き次第、処刑しろ！｣

｢はっ然し…｣

｢お前から先に逝くか…｣
鋭い眼孔で睨んだ。
｢りょ、了解しました。｣
兵士は敬礼すると走るようにデッキから出て行った。

｢ﾌｯ!腕がなる。｣
腰にぶら下がっている細身の剣レイピアをプルートは撫でていた。

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>> 130 ｢ふう～これでよし。何とか、銀狼族のﾋﾞｰｽﾄﾌｫｰﾑからﾋｭｰﾏﾝﾌｫｰﾑに戻ったわね。｣
女性は元に戻った砕を寝室に抱きかかえて祖父のベッドの横に寝かせた。

｢もう、ラリスはブルースカイのデッキに向かったみたいね。｣
辺りを見回したがラリスの姿は無かった。

｢まったく、手の焼ける二人だこと…｣
ﾌｯと笑うと祖父と砕を交互に女性は見た。


その時だった！
ﾋﾟｶｰｯ
隣に寝ている祖父の体が光り輝いた。

｢ぐあぁぁぁぁっ｣
ﾊﾞｷﾊﾞｷ ﾒｷﾒｷ
祖父の体中の骨の軋む音にｼﾜｼﾜの皮膚が引っ張られ血管が浮き出ていき、白髪の毛が抜けていく。

｢こっこれは…｣
女性はその変たいを見て少し驚いていた。

｢ぬおぉぉぉぉっ｣

カーーーッ!!!

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>> 131 ｢ふう、体中痛かったぜ…ったくあのライオネルの野郎!エルフ王になったからってなんてもん土産に持たせやがる。今度シーラ星に行ったらｷﾞﾀﾝｷﾞﾀﾝにしてやる。いや、作ったのはサマーの野郎か!魔法学園理事長だか何だか知らねぇが人を実験台にしてんじゃねぇよ!｣
祖父は一人一気にまくし立てﾊﾟｷﾎﾟｷと指を鳴らす。

横でその様子を見て佇んでいる女性を見上げた。
｢んっ!クリス何だ驚いた顔してんじゃねぇよ。｣

｢凱、鏡見てみな。｣
女性はｸｨｯと親指で鏡を指した。

そこには、三十代前半の若返った祖父の姿があった。筋肉隆々で立った黒髪、身体からは湯気がたっている。
｢力が漲ってきやがる。やっぱ、俺様はこうでなくちゃいけねぇぜ！なぁクリス。｣
ｷﾞｭｵｯ
祖父は握り拳を作り女性にｳｲﾝｸした。

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>> 132 ｢さぁてと、クリスお前は急いでキック等三人がいるブルースカイのデッキに向かって合流してくれ!そして、このシャドーmkⅢを出したいからよ、格納庫のハッチを開いてくれ。頼んだぜ！｣
そう言うと、祖父は叫びながら小型艇のデッキに走りだす。
｢ふん！昔を思い出すね。｣
女性はそう独り言を言うと全力で走り出した。

ｶｯｶｯｶｯ
｢シャドー、直ぐ発進出来るようにハイパーブースターを温めといてくれ!｣
PPP
｢ﾏｯﾀｸ ﾋﾄﾂﾞｶｲｶﾞ ｱﾗｲﾝﾀﾞｶﾗ…｣

｢だから、てめぇは人じゃねぇって言ってるだろうがよ!ったく!｣

｢ﾅﾝｶ ﾅﾂｶｼｲ…｣

｢ちっ｣
祖父は頭をﾎﾞﾘﾎﾞﾘ掻いた。



ｳｨｰﾝ
｢キック、状況は…｣
｢クリス、敵鑑20隻が大気圏上空に集結しつつある。｣
竜人はレーダーを見ながら、コンピューターのボードを指でｶｼｬｶｼｬと叩いている。
｢アイツ、復活したから格納庫のハッチを開いてやって。mkⅢで暴れたいらしいわ。｣
その言葉にﾋﾟｸｯとアルミが反応しシートから立ち上がった。

｢あの奥義を喰らってもう動けるだと!｣
｢魔水って薬のおかげだ。私は昔あの技を喰らって酷い目にあったからな…｣
少しの間、女性は遠くを見つめた。

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>> 133 ｢まあ、そんな事は今はどうでもいい。アルミ、あんたは女王様助けるんだろ。生き残る為には攻撃は最大の防御って昔、凱が言ってたわ。攻撃準備!全砲門を開いて!任せたわよ。｣
アルミはｺｸｯと頷きシートに座った。

｢ラリス、多分このﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ星に相手は移住したいなら、あの粒子砲は凄まじい力を持っているから今は撃って来ないはず、もし撃つなら必ず接近戦を仕掛け私たちの鑑と惑星の軌道をズラしてからだわ。坂手にとって、なるべく相手の鑑が一列になった時こっちの拡散粒子砲を叩き込めるように計算しといて。｣

｢はい、分かりました。｣
ラリスは慣れない手つきで緊張しながらボードを押しだした。

女性も別のシートに座り拡散粒子砲や他に何かこの戦艦に装備されてないかマニュアルをチェックしだした。

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>> 134 ﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ星大気圏上空…

｢ﾌｯ!これで二十隻の鑑が揃ったな。｣
真っ白な腰まである白髪を掻き揚げプルートは指示を出す。

｢十隻の巡洋艦は乗っ取られたブルースカイの左右サイドに周り攻撃開始!!五隻の護衛鑑は我が鑑を守れ。残りの戦艦は正面から副主砲で攻めろ!!!全ての鑑に告げる惑星には傷をつけるな。最高指令官サンからの伝達だ!!｣

『ハッ!!』

｢巨大戦艦の建造は間に合わなかったが…これだけの戦力があれば十分勝てる戦いだ。｣
紫のマントを翻すとﾄﾞｶﾞｯとデッキのイスに座った。

(ﾌﾝ!大戦の英雄とやら、実力を拝見させて貰おう。私を楽しませてくれよ)
パネルを見て嘲笑った。

ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞゴゴゴゴ…

静かにスカイブルーに冥王星前線基地艦隊が前進していく。

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>> 135 ｸﾞｲｨｨｨﾝ
｢よしゃっ!格納庫のハッチが開いたぜ。シャドーmkⅢ発進!!｣
凱は左右のレバーを引いた。
ｶﾞﾁｬｯ
シュゴーーーッ

｢何隻、戦艦がいようが関係ねぇ！この船で全部沈めてやる。｣
PPP
｢ﾊ～ｯ ﾏｯﾀｸ ﾜｶｶﾞｴｯﾀﾗ ﾑﾁｬﾊﾞｯｶﾘｽﾙﾝﾀﾞｶﾗ ｺｯﾁﾉﾐﾆﾓﾅｯﾃﾖﾈ…｣

｢シャドー、何か言ったか。｣

｢ｲｴ ﾍﾞﾂﾆ…｣

ﾌﾞｰﾝ
『凱、あんまり無茶するなよ。』
クリスからの通信が入る。

｢俺様はいつでもクライマックスなんだよ!切り込み特攻隊長の俺様はこのまま敵鑑にカイザーフェニックスで突っ込んで道を開く。大臣に連絡してパープルスカイを援護にまわすよう伝えといてくれ!!｣

『…いつも我が道を行くんだから困ったもんだわね。』
クリスは呆れかえった。

｢んじゃ行くぜ！｣

戦い好きの凱の目は爛々と輝いていた。

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>> 136 PPP
｢ｶﾞｲ ｻﾝﾎｳｺｳﾆﾜｶﾚﾀ ｶﾝﾀｲｶﾞｾｯｷﾝﾁｭｳ!!｣

｢ﾁｯ!まだ大臣の戦艦パープルスカイはまだ発鑑してねぇな…ふん!まぁいいクリス等が援護するだろう多分…｣

｢ﾏﾀ ﾀﾀｶｲﾆﾅｯﾀﾗ ﾑﾁｬｼﾀﾞｽ｣

｢しゃあねぇなあ～っ!昔、黒魔剣と妖刀覇王を融合させた。【魔神刀】を使うか。｣
<黒魔剣:地水火風のｴﾚﾒﾝﾄを秘めた魔剣>
<妖剣覇王:最強の種族が打った宇宙最強と謳われている刀の一つ>

ﾁｬｷ
｢うおおぉぉぉぉっ!｣
祖父は背中から奇妙な形の刀を抜くと、自分のありったけのオーラを魔神刀に注ぎ込んだ。

ｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝ
刀は祖父のオーラを吸い青白い稲光を帯びていく。

｢ｾﾞﾝﾎﾟｳ ﾃｷｶﾝｷｮﾘ 800｣



ｺﾞｺﾞｺﾞゴゴゴ…

｢小型艇がこちらへ突っ込んできています。｣
兵士が艦長らしき人物に叫ぶ。

｢ふん!五月蝿いハエなど撃ち落としてしまえ!｣

｢ﾊｯ!｣

｢全左巡洋艦!全砲門発射ーっ!!｣

ﾄﾞｼｭｰﾄﾞｼｭｰﾄﾞｼｭｰﾄﾞｼｭｰﾄﾞｼｭｰﾄﾞｼｭｰﾄﾞｼｭｰﾄﾞｼｭｰﾄﾞｼｭｰﾄﾞｼｭｰｰｯ



PPP
｢ｶﾞｲ ﾃｷﾋﾞｰﾑﾎｳ ｾｯｷﾝﾁｭｳ!!｣

｢シャドー、慌てんなよっ!!俺様に敗北の二文字はねぇ！フェニックス・ガンナーのパワーＵＰバージョン叩き込んでやる。｣
ｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝ
祖父の全身がオーラに包まれたその瞬間デッキ中央の穴に刀を思いっ切り差し込んだ。

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>> 137 ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ

祖父のオーラに呼応するかのようにシャドーmkⅢは青白く輝き、そして段々と増して真っ白い不死鳥の姿へとなっていく。

PPP
｢ﾋﾞｰﾑﾎｳｾｯｷﾝ ｷｮﾘ50 ｶﾞｲ!｣

｢よっしゃ～っ!!行くぜおらっ!!!｣

ガチャンッ

穴に突き刺した魔神刀を前に倒した。

｢うおおぉぉぉぉぉぉっ!!!カイザァァァァッフェニックスゥッ!!!!｣

ドギューーーン！！

その時、敵巡洋艦のビーム砲が直撃する。
ﾄﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞッ

｢ハッハッハッ!大戦の英雄恐るるに足らず!!｣
巡洋艦の艦長等は高笑いをした。

｢次は、ブルースカイに標準を合わせろ。｣

｢ﾊｯ!｣

｢んっ、爆炎の中から白い光が向かって来るぞ!?｣
艦長は目を擦った。

｢このままだとぶつかります！｣

ドンッ
｢コスモワープだ!!｣机を叩いた。

｢かっ艦長、間に合いません。｣

｢何だとっ…｣
チュドーーーン
｢助けっ｣
ﾋﾟｶｯ
｢うわぁ～っ｣
ﾄﾞｺﾞッ ﾊﾞﾘﾝ
ブォン
一気にフェニックスは突き抜ける。
隊列を組んでいた巡洋艦が次々と爆発していく。



｢へんっこんなもんだぜ!!｣
ｶﾞｸｯ
凄まじいオーラ(気)を放出させた為祖父は刀を掴んだまま片膝をついた。

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>> 138 ｢ﾌﾌｯ!アイツらしい戦い方だわ。アルミこっちの操作は覚えた?｣
女性は凱の小型艇が映っているスクリーンからアルミの方に向き直った。

｢ああ、大丈夫だ。｣
ｺｸｯとアルミは頷いた。動く度に黄金の鎧が眩しく光る。

｢キック、敵鑑の距離は?｣

｢300ってとこだな!｣
竜人は丸い赤色光の集まりが映っているレーダーパネルを指差した。

ｼﾞｼﾞｯ
『こちら、パープルスカイ。其方の援護射撃に向かう。』
ｼﾞｼﾞｯ
｢了解!!｣

｢アルミ、ブルースカイ全砲門を残りの巡洋艦に発射!!!｣

｢全砲門…発射!!｣
ｶﾁｯ
ﾊﾞｼｭｰ ﾊﾞｼｭｰ ﾊﾞｼｭｰ
ﾊﾞｼｭｰ ﾊﾞｼｭｰ ﾊﾞｼｭｰ
ﾊﾞｼｭｰ ﾊﾞｼｭｰ ﾊﾞｼｭｰ
ﾄﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｯ
｢全弾命中!!｣
敵鑑も撃ち返してくるが一発も当たらない。アルミの方が敵の動きをよんでいた。

｢ラリス、大臣が乗ったパープルスカイが援護に来たら、拡散粒子砲のエネルギーチャージを直ぐやってくれ!何せ五分間もかかるからな。』

｢はい！クリスさん｣
女性は指揮をとるとまたマニュアルを見出した。

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>> 139 ｢んっ、緊急時の拡散粒子砲…ﾅﾆﾅﾆ…三分で撃てるが威力は80%か…どうしてもの時は使えるわね。ｴｯと他には…｣
女性は敵鑑と交戦中というのにマニュアルを見ている。

｢流石、この娘以外みんなアンタら戦い慣れてるな。落ち着いている…｣
アルミは、敵巡洋艦にビーム砲を撃ちながら話す。

ｼﾞｼﾞｯ
『待たせました。援護射撃を致します。』
ｼﾞｼﾞｯ
｢有難う。助かるよ｣
ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞゴゴゴゴ…
左隣にパープルスカイが着くと全砲門からビーム砲を撃ちだした。

｢ラリス、拡散粒子砲エネルギーチャージ開始!!｣

｢エネルギーチャージ開始します。｣
ｶﾞﾁｬ




冥王星前線基地高速戦闘鑑ウ"ァイオレッド
｢うぬぬぬっぬわ～っ｣
この戦闘が楽勝と思っていたプルートはデッキで憤慨していた。

｢ふぅふぅ…たったアレだけの鑑と小型艇に苦戦するなどどういう事だ!!｣ ダンッ
台を思いっ切り叩き目を充血させていた。

｢こうなったら、白兵戦に持ち込み、私自ら乗り込んでやる!!｣
細身の剣レイピアを抜くと舌なめずりをした。

それを見ていた兵士等は恐怖を感じていた。

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>> 140 ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ

｢主要敵鑑補足 軌道修正23…｣
｢サイドブースター点火 オートロックオン開始｣

ﾊﾟﾁｯ ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁｯ
竜人はレーダーを確認しながらスイッチを押していく。
ｼｭｺﾞｰｰｯ

｢軌道修正0.6 異常無し｣
｢鑑首砲門オープン
発射五分前…｣
ラリスは緊張し鑑首を開いた。

ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ
ブルースカイの動力部が激しく回転をしだす。

｢巡洋艦の方は大臣がいるパープルスカイに任せて、私達は主要敵鑑と護衛鑑を潰す。｣
女性はエネルギーメーターを食い入るように見る。



ﾋﾟｷｰﾝ
｢エネルギーチャージ 30%｣
ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ

段々とエネルギーメーターの目盛りが上がっていく…

ｼﾞｼﾞｯ
｢凱、調子はどう?｣
ｼﾞｼﾞｯ
『久しぶりにやったら体が悲鳴を上げてやがる。』
ｼﾞｼﾞｯ
｢凱さん…砕、砕は起きて来ましたか？｣
ラリスが心配して横から尋ねる。
ｼﾞｼﾞｯ
『いや、まだ寝てやがる…早く手伝って欲しいぜ。』
祖父は頭をﾎﾞﾘﾎﾞﾘ頭を掻いた。
ｼﾞｼﾞｯ
｢そうですか…｣
ラリスはﾌｳと溜め息をついた。

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>> 141 ｶﾞﾀｯ
｢ブルースカイのあの動き…まさか拡散粒子砲を撃つ気かっ!!｣
スクリーンパネルを見てプルートは立ち上がると兵士に言った。

｢反拡散粒子バリア用意!!｣

｢ﾊｯ!反拡散粒子バリア用意!!｣
兵士等は慌ててバリアの準備をした。

｢このバリアはブルースカイやパープルスカイには搭載されていないからなっ｣
ﾆﾔｯと笑うと次の指揮をとった。

｢相手は拡散粒子砲を撃った後に隙が出来る。本鑑はバリアで弾きながら相手鑑に突っ込む!!｣

｢他の鑑は…｣
ｵﾄﾞｵﾄﾞと兵士が尋ねた。

｢ﾌﾝ…役に立たない鑑など鉄くずと同じだ。せめて、相手鑑と相討ちになってくれれば良いが…｣
皮肉な言葉を兵士等にかけるとシートに座った。
｢……。｣
兵士等はただ沈黙しバリアの準備をするだけだった。

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>> 142 ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ
｢ラリス、エネルギーチャージは何％だ!!｣

｢はい!今、80%です。後、三分でMAXになります。｣

｢前方、敵護衛艦隊接近中!距離300｣
キックはﾚｰﾀﾞｰをみて叫んだ。

｢三分が途方も無い時間に感じられるな…｣

ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ


パープルスカイは巡洋艦に挟まれ苦戦を強いられていた。

ﾄﾞｼｭ ﾄﾞｼｭ ﾄﾞｼｭ
ﾄﾞｼｭ ﾄﾞｼｭ ﾄﾞｼｭ

ﾄﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｫｯ


ｼﾞｼﾞ
『パープルスカイ右舷前方被弾!!』
ﾓｳﾓｳと煙りが立ち上る。

ｼﾞｼﾞ
｢よし待ってな。大臣、今行くぜ！｣
祖父はシャドーmkⅢの態勢を立て直し戦艦パープルスカイの援護に回ろうとした。
ｼﾞｼﾞ
『凱様、私等は大丈夫です。其れよりも大戦の英雄が載っている鑑をお願いします。』
ｼﾞｼﾞ
｢…分かった！じゃあ、俺様はクリス達を援護しに行く。おっとそれから、クリスは拡散粒子砲を撃つからショートコスモワープで逃げる準備してな。｣

ｶﾞﾁｬ
ｼｭｺﾞｰｰｯ
そう言うとレバーを入れ直し反転していった。



ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ ｷﾞｭﾝ
ﾋﾟｷｰﾝ
｢エネルギーチャージ160%。MAX200%まで残り一分です。｣ ラリスはじっとエネルギーの目盛りを見つめていた。

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>> 143 ｳｨｰﾝ ｶﾞｼｬﾝ
女性が座ってている目の前の台から銃の形をしたｽｲｯﾁがせり上がってきた。


｢キック、正面の敵鑑距離は?｣
女性は尋ねた

｢敵鑑距離150 段々近づいてきたな。｣
竜人は額の汗を拭う。

｢相手の装甲が厚いな…まだか…｣
拡散粒子砲を撃つ為に主砲が使えずｻｲﾄﾞから発射する遠距離ﾐｻｲﾙでアルミは護衛艦隊と応戦していた。

ｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝ

ブルースカイの動力部が今まで以上に回転する。

ﾋﾟｷｰﾝ
｢エネルギーチャージ180% 残り30秒！｣
女性はｶｰﾄﾞﾘｯｼﾞをしっかり握った。

｢対ショック!対防御!みんな、しっかり捕まって!!｣


ｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝ
ｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝｷﾞｭﾝ

ﾋﾟｷｰﾝ
｢エネルギーチャージ200%!!クリスさん。｣

皆、手に汗握り唾を飲み込んだ。

｢ｶｳﾝﾄ｣
｢10｣
｢9｣
｢8｣
｢7｣
｢6｣
｢5｣
｢4｣
｢3｣
｢2｣
｢1｣

｢拡散粒子砲発射あぁぁぁぁっ!!!｣

ｶﾁｯ

ドギュオオォォォォォォォォォォォォォォｯ

鑑首砲門から凄まじいエネルギー波がほとばしる。

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>> 144 ビガーッ
ギュオオォォォォォォｯ
凄まじいエネルギー波が迫って来る。

｢プルート様、拡散粒子砲来ます!!｣

｢よし、反拡散粒子バリア発動!!｣

｢ﾊｯ!反拡散粒子バリア発動します。｣
ｶﾞﾁｬ

ウ"オオオｵｵｵン

高速戦闘鑑ウ"ｱイオレッドの周りを赤紫色のバリアが覆う。

ドギュオオｺﾞｶﾞｶﾞｶﾞ
｢ひぃぃ～ｯ!助け…｣
｢プルートめっ自分だけ…｣

カｱーーーーｯ




ギュオオォォォォォォｯ

｢プルート様、巡洋艦隊、護衛艦隊から通信途絶えました。｣

｢ﾌﾝ！我が盾にもならんな。全速前進！ブルースカイにこのまま体当たりをしろ!!｣

｢ﾊｯ！全速前進！｣
ｽﾞｵｵｵｵｵｵｯ

拡散粒子砲は大気圏を突き破って宇宙(ｿﾗ)の彼方に消えていった。

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>> 145 スクリーンパネルには一瞬にして粉々に散っていく、敵艦隊が映っていた。

｢凄まじい威力だ！｣
女性だけでなく皆そう思っていた。
｢ﾌｯ!クリス、やったな。｣
竜人はﾋﾟｯと右親指を立て突き出した。
｢ああ。ラリス、アルミも良くやった。｣
女性はﾆｺｯと微笑んだ。
｢はい。緊張しました。｣
ラリスはまだ声が上擦っている。
｢まだ、もの足りない…｣
黄金の兜と仮面で表情が見えない。

｢んっ!まだレーダーに一つ反応が残っている!?｣
竜人は叫んだ！
｢キック、凱か大臣が乗っているパープルスカイじゃ…｣

｢いや、ショートコスモワープで俺達の鑑の後方にいる。然も、凄い速さでこっちに向かっている!!｣
食い入るように、竜人は丸いレーダーを覗きこんだ。

｢コスモワープじゃ間に合わない。ハイパーブースター点火!!｣

｢クリスさん、今の拡散粒子砲でエネルギーを使い、まだ一分間は動けません。｣
ラリスは女性に伝えると、沈黙している動力源に早く充電して動いてくれと願った。

｢遠距離ミサイルはいける。各遠距離ミサイル発射!!｣
ｶﾁ ｶﾁ
アルミは向かってくる敵鑑に全ミサイルを打ち込んだ。
ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ
ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ
ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ

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>> 146 ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ
ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ
ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ ﾎﾞｼｭｯ

｢ｸｯ…｣
アルミが撃ったミサイルは全弾とも赤紫色した光にぶつかって爆発し敵鑑まで届かない。

ｸﾞｳｫﾝ ｸﾞｳｫﾝ ｸﾞｳｫﾝ

｢ﾌﾊﾊﾊｯ!そんなﾁﾝｹな攻撃でこの反拡散粒子バリアには効かない。｣

｢プルート様、後30秒でブルースカイと激突します！｣

｢よし、全乗組員対ショックに備えよ!!｣

｢ﾊｯ!｣
ｶﾞｼｬｶﾞｼｬ
シートに座ると四点ベルトを締めた。

｢５秒前…｣

｢大戦の英雄よ!私に会ったのを後悔するがいい。｣
プルートの唇の角が上がった。

｢２・１・アタック!!｣

ドガガガガｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞ…
ﾊﾞｷﾊﾞｷﾊﾞｷﾊﾞｷﾊﾞｷｯ
ブルースカイの鑑首から装甲がｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬに曲がり押し潰され、剥き出しになった場所からﾊﾟﾁﾊﾞﾁｯと火花が散る。

ズズウゥゥゥン

｢ﾆｭｰチタンドリル接続!!｣
高速戦闘鑑ウ"ァイオレッドの動きが止まると、すぐブルースカイに穴を開け白兵戦を仕掛けるよう指示した。
ｶﾞｼｬﾝ
｢戦闘員三十名穴が開き次第、ブルースカイに潜入し各要点にタイマー爆弾を仕掛けるのだ。｣

『ハッ!!』

｢ﾛﾝ…｣
プルートは自分の影に向かって話す。

｢はい…｣

｢お前は、パープルスカイの奴らを抹殺しろ。｣

｢御意に…｣
ｽｽｯ

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>> 147 ｢駄目だ…こんなものでは効かない…｣
アルミは敵鑑のバリアでことごとくミサイルを潰されるのを見ていた。

｢みんな、相手さんはこの鑑に体当たりするみたいだから、急いでベルトを締めて頭を下げて!！｣
女性は叫んだ。

(砕…砕…早く助けに来て私怖い…)
ラリスは改めて戦闘の怖さを知った。

｢来るぞ!!｣
竜人はレーダー見て言うか言わないうちに、みんなの体が吹き飛ぶ程の衝撃が走った。

ズズウゥゥゥン

｢きゃーっ!｣
｢ぬうっ｣


ビィ ビィ ビィ ビィ
『Aﾌﾞﾛｯｸ損失』『Bﾌﾞﾛｯｸ損失』『Cﾌﾞﾛｯｸ損傷』『Fﾌﾞﾛｯｸ損傷』『……。』
けたたましいサイレンと船の状況が次々と無機質なｺﾝﾋﾟｭｰﾀｰの音声が流れる。
｢ラリス!怖がってる暇はないよ!この鑑の被害状況は。｣
女性は冷静に尋ねた。
ビィ ビィ ビィ ビィ

｢はい。ダメージ鑑首から右側面に被害増大。一番主砲、二番主砲、一番副主砲、右側面ミサイルポット全て破損、拡散粒子砲も駄目です。クリスさん、全体の45%がやられています。｣

ビィ ビィ ビィ ビィ

｢この鑑はもう駄目だな…｣
女性はベルトを外し立ち上がった。

｢そうだな…だが相手の鑑の奴らを叩き潰すチャンスだ。｣
アルミも立ち上がった。

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>> 148 ｢ﾁｯ!クリスが指揮しながら、何やってやがる。｣

ブルースカイに向かおうとした祖父であったが、クリスが拡散粒子砲を撃った為ショートコスモワープで回避し後方に移動していた。大臣が乗るパープルスカイも同じように回避していた。その直後ブルースカイの方から轟音が鳴り響きスクリーンパネルを覗いていた。

｢ったくよ!俺様がいねぇとアイツ等締まんねぇな。｣
黒煙を吐き出すブルースカイに向けてサイドブースターでシャドーmkⅢの方向転換をしようとﾚﾊﾞｰを持とうした時…ﾁﾘﾝ…凱の左耳に小さなﾁｪｰﾝで1cm垂れ下がっている鈴のﾋﾟｱｽが鳴った。

｢何か嫌な予感がするぜ…お前があの世から知らせてくれているのか…｣
そう呟くとパープルスカイの方へ舵を取った。

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>> 149 ｺﾞｺﾞｺﾞゴゴゴ……

｢ふ～っ、危なかった。凱様に聞いてなかったら我々の船も吹っ飛ばされていた。｣
大臣は背中に冷たい汗を掻いていた。

｢それにしても素晴らしい。｣
この敵から奪ったパープルスカイの科学力に感嘆した。

ドゴオォォォォォォッ

パープルスカイ後方から凄まじい音が聞こえた。

｢何事だ！?｣
大臣は直ぐにスクリーンパネルに目を向けた。

｢どうやら、ブルースカイに敵戦艦が体当たりをしたものだと思われます。｣
他のﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝの兵士等はざわめいた。

｢私等も大戦の英雄が乗っている船に向かうぞ。急ぐのだ。｣
｢分かりました。｣

そんなやり取りを大臣と兵士がした時だった。

ｶﾞｯ
『こちらＭﾌﾞﾛｯｸ!不審者が鑑内に侵入!!今、数名の仲間がやられました。至急応…』
ｶﾞｯ
｢おい！どうした!!｣
ｶﾞｯ
『ﾌﾌﾌｯ…次は貴様等の番だ！首を洗って待っているがいい…』
ﾌﾞﾂｯ
無線から背筋が凍るような不気味な低い声が響いた。

｢こっこれは…｣
ｺﾞｷｭ
大臣は唾を飲み込むと近くにいるﾌﾞﾛｯｸの兵士等に戦闘態勢をとらせた。

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>> 150 ﾌﾞｰﾝ
スクリーンパネルに祖父の顔が映る。

『大臣、そっちはどうもねぇか?何か俺様の勘がそう言ってるんでなっ!』
祖父の通信が入る。

｢はい…何者かがこの船に侵入した模様です。って凱様そのお顔は一体…さっきの無線で声が若いからどうしたかと…｣
大臣は35年前の平和ﾊﾟﾚｰﾄﾞで見た顔になっているので驚いていた。

『あぁ、ちょっと薬でな。然しやべぇ勘が止まねぇぜ。大臣、直ぐに格納庫のﾊｯﾁを開いてくれ。』

｢分かりました。｣
ｺｸﾝと頷くと兵士に指示を出した。

｢じゃあ、後でな。｣
ﾌﾞｰﾝ



Ｐﾌﾞﾛｯｸ…

ｻﾞｼｭ ﾄﾞｽﾝ
｢がはっ｣
ﾋｭﾝ ﾊﾞｷｯ
｢ぐぇ｣

ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ
ﾋﾞｼｭ ﾋﾞｼｭ
｢ﾚｰｻﾞｰが当たらない…｣
兵士等は黒いフードを被った人物にかすりもしなかった。

｢ぬるいわっ!ﾌﾝｯ｣
ﾊﾞｷｯ
｢ぐへっ｣
ﾄﾞｻｯ
次々とオーラを纏った素手で兵士等は倒されていく。

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>> 151 ｳｨｰ－ｯ
ガシャン
シャドーmkⅢをパープルスカイの格納庫に着鑑させた。祖父はデッキを出て寝室に行くと、ベッドに横たわっている砕の顔をはたいた。

ﾊﾞｼﾝ
｢おい！起きろ砕！寝てる場合じゃねぇ。｣
ﾊﾞｼﾊﾞｼ
｢お･き･ろ～っ!!｣

ﾊﾟﾁｯ
ｶﾞﾊﾞｯ
｢行くぜっアルミ!!｣
布団から勢いよく起き上がると砕は構えをとった。

ﾍﾞﾁｯ
｢何、寝ぼけてんだよ！｣
｢!?｣
砕は後ろから頭の天頂部を叩かれ振り向いた。

｢誰だあんた!?どっかで見たごとがあるような面だが…｣
砕は横に置いてある剣を握ると構えをとった。

｢砕、この恩知らず野郎がっ！爺ちゃんは、そんな風に育てた覚えはねぇぞっ!!｣
｢え!?｣

ﾌﾞｰﾝ
｢三重残像…百烈ﾋﾞﾝﾀ!!!｣
｢こっ、この技は…爺ちゃんがお仕置きで使う…｣

ﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼﾊﾞｼ
｢うぐっ｣ ｢ふげっ｣
｢ちょっ、まっ…｣
｢いたたたた…。｣

祖父の嵐のようなﾋﾞﾝﾀが砕の顔を襲った。

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｢爺ひゃん…まいっふた…｣
砕の顔は膨れ上がった顔を両手で触った。
｢まったく、目が覚めたか。｣

｢爺ひゃん何で若返っふぇんだ。｣

｢ｼｰﾗ星で貰った魔水でなっ。｣
祖父は、若返った筋肉隆々の力こぶを作ってみせる。

｢爺ひゃん、俺にも魔水くれひょ。｣
(これ以上、ジジイに強くなられてたまるかよ)
祖父の前に手を差し出した。

｢儂用にこの魔水は調合されてるってサマーに聞いたぜ。違う奴が飲んだら副作用か何かあるみてえだな。｣
腰袋から一本蒼い小瓶を取り出してみせた。

｢後、九本だからよ。大事に飲まねえとな。｣
小瓶を大事にしまった。

｢じゃ、大臣の護衛と洒落込むか。｣

｢寝てたから、全然状況がわかんねぇ…｣
漆黒の鎧を身に付け腰に剣を差し、祖父のあとを追いかけて行った。

• << 156 その頃ブルースカイでは、鑑首から少しズレた右側面に体当たりをした高速戦闘鑑ウ"ァイオレットからドリルで穴をあけられ、そこから冥王星前線基地精鋭部隊30人が侵入してきていた。 ビィ ビィ ビィ ビィ ビィ ビィ ビィ ビィ ｢各自五人編隊で攻撃を仕掛けろ！他の船の弔い合戦だ！｣ ﾁﾞｬｷ ﾁﾞｬｷ 『おおおぉぉぉっ!!』 皆、銃を掲げ叫びをあげる。 ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ クリス一行は全力で走りながら会話をしていた。 ｢なかなか、敵ながらやるな!｣ 竜人は感心していた。 ｢しかし、せっかく手に入れた船がボロボロだ…｣ 女性はﾊｧと大きく溜め息を一つつく。 ｢このまま敵鑑を乗っ取るか…｣ アルミはすました感じで話す。 ｢それもいいわね。｣ 女性はｸｽｯと笑うと後ろを見た。 ｢みんな、待って下さい。補助系魔法で足を速くしてるのに、追いつくので精一杯です。｣ ラリスは三人のｽﾋﾟｰﾄﾞにただ驚くばかりであった。 ｢柔に鍛えられてるからだ…｣ アルミは振り返らずに言う。 ｢何ですって…｣ ｢ｼｯ!｣ 女性は走るのを止めた。そして、気配がする方に耳を傾けながら忍び足で進み、 そっと通路の角から顔を覗き込ませた。

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>> 154 ｢おっ!ｷﾗ猫😺さんよ。このｽﾚに遊びに来たようだな。｣
若返った凱がｼｬﾄﾞｰmkⅢで出迎えた。

｢んでｺｲﾂがﾕｯｷｰで、声しか聞こえねぇがよ、『桜』って姉ちゃんか。主人公のｼｮｳが見えねぇが、どっかでﾌﾗﾌﾗしてやがんのか?｣
凱は頭を掻いた。

｢ﾕｯｷｰは俺様の幼なじみの格闘ﾊﾞｶのｶﾘｰﾅと関西弁同士、組み手でもやるか?｣
ｻﾞｼｭ
🔥ゴン ｢ガハッ｣
｢格闘ﾊﾞｶは余計や…ﾕｯｷｰ何引いてんねん。｣
ﾄﾝｺﾌﾞをさすりながら桜に話しかける。
｢俺様の魔神刀のｴﾚﾒﾝﾄにならねぇか…ﾃﾞｽ💀系でよ☝｣
｢…。｣
桜の気配が消えた。
｢せっかく遊び来たんだ。ｷﾗ猫😺さんこれ飲んでいきな…ただし一気が見たいな😁｣
ｷﾗ猫の目の前に九本の蒼い小瓶がﾄﾞﾝと置かれた。
｢…💧｣
｢又、遊び来てくれよ😉じゃあなっ。｣
🚀parallelworldの世界に戻って行った。
アル🍺

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>> 153 ｢爺ひゃん…まいっふた…｣ 砕の顔は膨れ上がった顔を両手で触った。 ｢まったく、目が覚めたか。｣ ｢爺ひゃん何で若返っふぇんだ。｣ ｢… その頃ブルースカイでは、鑑首から少しズレた右側面に体当たりをした高速戦闘鑑ウ"ァイオレットからドリルで穴をあけられ、そこから冥王星前線基地精鋭部隊30人が侵入してきていた。

ビィ ビィ ビィ ビィ
ビィ ビィ ビィ ビィ



｢各自五人編隊で攻撃を仕掛けろ！他の船の弔い合戦だ！｣

ﾁﾞｬｷ ﾁﾞｬｷ
『おおおぉぉぉっ!!』
皆、銃を掲げ叫びをあげる。



ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ
クリス一行は全力で走りながら会話をしていた。

｢なかなか、敵ながらやるな!｣
竜人は感心していた。
｢しかし、せっかく手に入れた船がボロボロだ…｣
女性はﾊｧと大きく溜め息を一つつく。

｢このまま敵鑑を乗っ取るか…｣
アルミはすました感じで話す。

｢それもいいわね。｣
女性はｸｽｯと笑うと後ろを見た。

｢みんな、待って下さい。補助系魔法で足を速くしてるのに、追いつくので精一杯です。｣
ラリスは三人のｽﾋﾟｰﾄﾞにただ驚くばかりであった。

｢柔に鍛えられてるからだ…｣
アルミは振り返らずに言う。

｢何ですって…｣
｢ｼｯ!｣
女性は走るのを止めた。そして、気配がする方に耳を傾けながら忍び足で進み、 そっと通路の角から顔を覗き込ませた。

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>> 156 ｶﾁｬｶﾁｬ

女性が覗くと相手の兵士等が何やら壁の側面に機械を取り付けている。


｢ﾖｼ！20分後に時限装置が働くようｾｯﾄするんだ。｣
ﾋﾟﾋﾟｯﾋﾟｯ
１人の兵士はタイマーらしきものをｾｯﾄするとｱﾀｯｼｭｹｰｽを持った。

ｻﾞｼｭ
｢待ちな！｣
｢何っ!?｣
女性の声に振り向いた時には兵士の横に立っていた。
その後に、竜人、アルミ、ラリスと続く。

｢ｺｲﾂ等は…｣
五人の敵兵がﾚｰｻﾞｰ銃を構えたが、一瞬のうちに四人の兵士が床にﾄﾞｻｯと倒れた。

｢貴方達、雑魚に用は無い。大将を出して貰おうか！｣
女性は兵士を締め上げた。
｢ぐぐぐっ｣

その時無線がなった。
ｼﾞｼﾞ
『こちら、第一隊。第五隊まで時限爆弾を設置した。後は、第六隊だけ連絡ないのだが。』

｢出ろ！｣
アルミが落ちている無線を拾い締め上げている兵士の口元に突きつけた。

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>> 157 ｼﾞｼﾞ
｢第六隊…捕まった…｣
ｼﾞｼﾞ
『今、助けに行く。』
ｼﾞｼﾞ
｢私は、アルミ=スタンフォードだ。今から、貴様等の船を乗っ取る。覚悟しておくといい…｣
ｸﾞｼｬ
無線を潰すと、剣を抜き兵士を切り裂いた。

｢ねぇアルミ、貴方はどういうつもりなの。｣
ラリスはアルミのやり方に激怒した。

｢別に…ただ手っ取り早く敵を沈黙させるだけだ。私はそう訓練されている。｣
そう言うと剣を鞘に納めた。

｢でも…｣
ラリスが食ってかかのを女性が制した。
｢確かに、戦場だから斬り倒すことはある。だが、今後、無益な殺生はしないで欲しい。｣

｢分かりました。大戦の英雄様。｣
皮肉たっぷりでアルミは返事をした。

｢ぬぅ！このまま、話してても拉致があかない。敵鑑に移るぞ。｣
竜人は皆に言うとドリルの穴に向かって行った。

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>> 158 人が三人ぐらい同時に通れそうなドリルの穴にはそのまま通路がつけられていた。

｢よし行くぞ!！｣
竜人とラリスが敵鑑に繋がっている剥き出しの通路を半分渡りクリスその後ろからアルミがついて来る。

｢結構高い…｣
ラリスは下を見ると普通の家が蟻みたいに小さく見え膝がｶﾞｸｶﾞｸ震えた。
｢大丈夫だ!!俺がいるから心配するな。｣
｢キックさん…｣
竜人は胸をﾄﾞﾝと叩き安心させた。

ｼﾞｬｷｼﾞｬｷ
｢このまま行かせはしない。｣
残りの精鋭部隊空中通路の前と後ろに現れ挟み撃ちの形になり構えたﾚｰｻﾞｰ銃から一斉に射撃され皆は、各々に攻撃をかわしていく。

ﾁｭｲﾝﾁｭｲﾝ
｢どうする？｣
黄金の剣でﾚｰｻﾞｰを弾きながら女性に近づいた。
｢強行突破だな。｣

竜人も竜剣にオーラを溜め次の攻撃に備え、その隣りではラリスが小型火炎弾の魔法で援護していた。

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>> 159 両側から敵精鋭部隊の攻撃を受ける中…
ﾊﾞｻﾊﾞｻﾊﾞｻｯ
上空から何かが降ってくる。

｢ﾌﾊﾊｯ大戦の英雄よ死ね!ブラッディーレイン。｣

ｼｭﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟｯ
ﾚｲﾋﾟｱの超高速の突きが竜人に襲いかかる。

｢くっ！｣

ｶﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞﾝ

辛うじて竜剣で防いだが左肩からはｼﾞｭﾜｼﾞｭﾜと血がにじみ出てきた。
｢キックさん!!｣
｢大丈夫だ。｣
ｽﾀｯ
手すりに軽やかにﾏﾝﾄを靡かせ舞い降りた。
｢私の名はプルート。流石は、話しどうりの動きだ。もっと楽しませてくれよ。｣
ﾍﾟﾛｯとﾚｲﾋﾟｱの先を舌なめずりした。

｢俺を舐めるな。おぉぉぉぉぉっ!!｣
竜人に紫のオーラが溜まる。
居合いの型を取ると
｢竜人剣一閃…｣
ｼｭｷｰﾝ
目に見えない早業で剣を繰り出しオーラを三日月状に飛ばした。
プルートは難なく紙一重でかわすとﾚｲﾋﾟｱで同じ技を繰り出した。
｢竜人剣一閃!!｣
ｼｭｷｰﾝ

｢そ、そんな馬鹿な…｣
竜人は驚いた。血の滲む努力をして修得した技を敵にいとも簡単に使われたからである。

｢ふんっこれならどうだ。怒号烈波!!｣
竜剣を下から上に振り被り衝撃波をプルートに飛ばした。

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>> 160 プルートも竜人と同じ構えをとり真似をした。

｢怒号烈波!!｣

ｼｭｺﾞｵｵｯ
二人の衝撃波がぶつかり合い空間が歪む。
｢きゃあっ。｣
近くにいたラリスは吹き飛ばされ、通路の外から下に落下していく。

｢くっ！ラリス!!｣
ﾊﾞｻ～ｯ
竜人は慌てて翼を広げ助けに行った。

｢ﾌﾝ！背を見せるとは馬鹿な奴だ。仲間など見捨てておけばいいものを…｣
呆れ顔で竜人の背中に狙いを定める。

｢ﾁｯ！アルミこっちの兵士たちは任せた。｣
女性は振り返り言霊を唱える。
｢風よ…｣

｢貰った！ブラッディーレイン!!｣
プルートは踏み込むと高速の突きを繰り出した。

ｼｭﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟﾊﾟｯ

ｶﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞﾝ

｢何だと…｣
女性がｷﾞﾘｷﾞﾘのところでプルートのﾚｲﾋﾟｱを防ぐ。

｢間に合ったな。ぐっ…｣
然し、何発かの突きを脇腹に女性は攻撃を喰らい呻いた。

｢キックさん有り難うございます。｣
ラリスはお礼を言うと抱えられたまま呪文を唱えた。

｢アイスシューティング。｣

ﾋﾞｭﾝﾋﾞｭﾝﾋﾞｭﾝﾋﾞｭﾝ

プルートの頬を尖った氷の粒がかすめる。

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>> 161 ｢小娘…よくもやってくれたな…｣
ｼｬｷｯ
左頬を拭うとプルートは右腰にも身につけているもう一本のﾚｲﾋﾟｱを抜くと
｢殺してやる!!｣
怒りで目を吊り上げた。

｢あんたの相手は私だよ。｣
女性は言霊を唱える。
｢風よ…｣
目にも止まらないスピードで剣を繰り出し続けた。

｢ふん！｣
二本のﾚｲﾋﾟｱをクロスさせ受け止める。然し、女性の繰り出す剣撃は重く激しい為、徐々にプルートは後退りした。

｢加勢するぞ…｣
ブルースカイ側の精鋭部隊を倒したアルミが近寄って来た。その反対側のウ"ァイオレッドに繋がっている方は竜人とラリスで粗方かたをつけている。

｢観念するんだな!｣
アルミがそう言った時だった…

ﾄﾞｺﾞﾝ ﾄﾞｺﾞﾝ
ﾊﾟﾘﾝ ｺﾞﾋｭ～ｯ
ﾄﾞｺﾞﾝ
ボファンガガｶﾞｯ

次々とブルースカイのあちこちで爆発が起こり通路が激しく揺れ皆が手すりに捕まった時をプルートは見逃さなかった。ﾏﾝﾄを靡かせ空中にｼﾞｬﾝﾌﾟすると両腕の筋肉が異様に盛り上がった。

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>> 162 ｢死ねっ!!秘技サウザントレイン!!!｣

ﾎﾞｼｭｼｭｼｭｼｭｼｭｼｭｼｭｼｭｼｭ

両腕から繰り出される音速の突きは凄まじくそれが雨のように降り注ぐ。

｢くっ…｣
女性とアルミは辛うじてかわしたがブルースカイとウ"ァイオレッドを連結させていた空中通路が粉々に砕け散った。

ドゴゴゴゴ……

｢クリスさん！｣
｢クリス!!｣
ラリスと竜人が叫んだ。

ｶﾞｼｯ
壊れた通路の端に何とかアルミが左手で捕まり右手には女性の手を握っていた。
｢アイツは自らの技で下に落ちたか…馬鹿な奴だ。｣
そう言うとアルミは闘気を溜め女性を一気に引き上げた。

その時…


ｼｭﾀﾝ

ｼｭﾀﾝ

｢まだだっ！｣
信じられない事に崩れて落下していく通路の瓦礫を次から次へと軽々ｼﾞｬﾝﾌﾟしてアルミの横に飛んできた。

｢何だと!?｣

｢隙が出来たな。｣
更に跳躍しプルートはすかさず技を繰り出した。

｢堕ちろ！黄金の騎士よ！ブラッディーレイン!!｣
｢しまった…｣
左手で通路に捕まっているアルミは一瞬遅れた。

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>> 163 ｻﾞｼﾞｭ
辺りに鮮血が飛び散る。

｢ぐっう。｣
｢!?｣

プルートの鋭く尖ったﾚｲﾋﾟｱが右胸を鎧ごと貫通していた。
｢終わったな。次は誰だ。｣
ﾚｲﾋﾟｱを抜くと二つのﾚｲﾋﾟｱを構え直した。

｢ﾊｱﾊｱ…う"っ…｣
ｺﾞﾎﾞｯ
口から血を吐き出す。

｢クリースッ!!｣
｢クリスさん…｣
｢…。｣

アルミが攻撃をかわせないのを見た女性はプルートの技の前に立ちふさがって庇ったのであった。
そしてアルミに微笑むと、ゆっくり前に崩れて倒れた。
竜人とラリスは残りの精鋭部隊を振り切りながら駆け寄る。

｢だから言ったろ仲間など要らぬと。｣
プルートは目の前に倒れている女性に唾を吐きかけた。


ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ…

ゴゴゴゴゴゴ……

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>> 164 ｢何だ!?｣

ドン!!!

凄まじい闘気を帯びたアルミが通路の上にいつの間にか立っていた。

｢くっ！｣

｢暗黒龍剣…｣
剣を横に構えると剣先が青白く光り出した。

｢これは一体…体が動かない！｣
プルートがどう踏ん張ってもビクともしない。

｢牙龍天昇…｣

剣を下から上に振り抜くとプルートの下から巨大な闘気の龍が現れプルートを噛み砕きながら遥か上空まで吹き飛ばした。

｢ぐぼっ…｣


アルミは剣を鞘におさめぐったりとなっている女性を肩に抱えると竜人とラリスの所まで歩いた。

ｷﾞｭﾙｷﾞｭﾙｷﾞｭﾙ
ドサッ
後ろの方にプルートがきりもみしながら通路に激突する。

｢この私が…敗北するなど…あ り え …｣
ｶﾗﾝｶﾗﾝ
がっくりうなだれると手からﾚｲﾋﾟｱが落ちていく。

｢うわ～っ!プルート様がやられたぞ!!｣

精鋭部隊の一人が叫んだ。もともとプルートの恐怖で縛られていた他の兵士達はそれを見て次々と降伏していった。

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>> 165 その頃…
祖父と砕はパープルスカイの鑑内部に侵入した暗殺者のﾌﾞﾛｯｸまで辿り着いていた。

ｶﾞﾎﾞｩｵｯ
｢うわ～ｯ｣
ﾎﾞｷﾞｯ
｢ぐひっ!｣

175cmの全身首までにﾋﾟｯﾀﾘﾌｨｯﾄした黒の服に体の形が浮き出ており細身の割に筋肉も隅々鍛えられているのが分かる。両手には、機械の手袋をはめ目には赤外線ｺﾞｰｸﾞﾙを装備している男が薄暗い中ﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ王国の兵士を顔から壁に叩きつけたり首の骨を折ったりと瞬殺していく。
｢ライトはどうした?｣
祖父は兵士に尋ねる。
｢はい、いつの間にかに全部割られ補助ライトもやられました。｣

｢ｳｯﾌﾟｯ…然し、凄いことになってるな爺ちゃん…｣
砕はよく目を凝らし辺りを見回すと吐き気をもようした。それは辺り一面が赤く血の海に染まっていたからだ。
ｺﾞｸｯ
砕は唾を飲み込んだ。

｢お前ら邪魔だ！このﾌﾞﾛｯｸから出ろ!!｣｢はっはい!｣
祖父がそう言うと生き残った十数人の兵士達は安堵の色を浮かべ急いでﾊｯﾁから出て行った。

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>> 166 ｢さぁ、いっちょいくか!!コイツは危険な奴だって闘争本能の野郎が頭の中でﾋﾞｲﾝﾋﾞｲﾝ警報鳴らしてるんだけどよ。｣
ｽｰｯ
祖父は魔神刀を鞘から抜くと刃を上にし刀を前に突き出すと左手で峰を支え腰を低くし構えを取った。そして、漆黒の鎧にオーラを溜め出した。

｢笑止…｣
暗殺者は不適に笑うと祖父の顔に右上段蹴りを放った。
ｼｭﾊﾟｯ
剃刀で切って落とすぐらいのスピードの蹴りを祖父は皮一枚で交わし左の頬から血が滴る。すぐ刀を横にはらったが暗殺者はブリッジで交わしその反動で左足を下から上に祖父の顎目掛け蹴り上げた。だが、後ろにｽｳｪｲしてオーラを放出させガイ・ブレイドを放つ。その技と同時に暗殺者は両手の機械のグローブからジェット噴射させ祖父の攻撃を避けた。

(すっすげぇ…)
余りにも二人の素早い攻防に拳を握り締め、ただただ砕は見とれるだけであった。

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>> 167 ｶﾞｼｯ
ﾊﾞｼﾝ
キィン

｢ﾋｭ～ｯ!あんたやるね。｣
暗殺者の鋭い攻撃を左右上下と交わしながら祖父は、ﾆﾔﾘと笑った。

(でたっ爺ちゃんのバトル中毒…)
砕はまたかと顔をしかめた。


｢なめるな！｣
急にｽﾋﾟｰﾄﾞが上がりいきなり祖父の目の前に現れた。

ｶﾞｷｯ ﾄﾞｽ ｻﾞｼｯ ﾄﾞｺﾞｯ
右ﾌｯｸ 左ﾎﾞﾃﾞｨｰ 右膝 左後ろ回転蹴りと暗殺者のコンボが繰り出された。

｢何っ!?｣
腕をクロスさせガードしているが、的確にその隙間を縫って攻撃が当たる。

｢野郎～ｯ！｣
その時、祖父の体がﾋﾟｶｰｯと光に包まれた。
｢ぐあ～～ｯ｣
叫ぶと体がｼｭｳｼｭｳ煙を上げている。
暗殺者も面食らって後ろに飛び退いた。

｢どうしたんだ、爺ちゃん?｣
砕は駆け寄った。

ﾊﾞｷﾊﾞｷ ｺﾞｷﾝ
ｼﾞｭｸｼﾞｭｸ
肉体の変動が起き骨が軋むそして煙りに包まれた。

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>> 168 ﾌｼｭｰｯ
｢むぐう～ｯ｣
祖父の体がみるみる老いていく…

｢いたたたた…魔水の効果が切れたみたいじゃの。｣
ｼﾜｼﾜの元の体に戻って祖父はがっかりした。

ｷﾞﾗﾘ
その一瞬の隙を見つけ暗殺者の目が鋭く光る。
｢ｷﾞｶﾞﾝﾃｽ・ﾊﾝﾏｰ！｣
祖父の背後に瞬時に移動し両方の手を組み機械のグローブに高圧電流を流してハンマーのように打ち下ろした。

ドゴッ
ﾊﾞﾘﾊﾞﾘﾊﾞﾘﾊﾞﾘ…

｢しまっ、ぐぎぃ～ｯ!!｣
祖父はバタッと倒れるとﾋﾟｸﾋﾟｸ痙攣している。
｢儂としたことが…不覚…｣

｢爺ちゃん!!｣
走りながら漆黒の鎧にオーラを溜め三人に分身した。
ﾌﾞｰﾝ
｢三重残像剣んっっ！｣
砕は暗殺者に近寄ると三人一斉に斬りかかった。

ｷｷｨｰﾝ

｢ふん、甘いわ。そこに倒れている奴の方が歯ごたえがあったぞ。｣
砕の攻撃をグローブで軽く交わすとﾁﾁﾁｯと指をふり遊ぶかのようにゆらゆら動いている。

｢そのくらい、分かってるさ！だが、俺は爺ちゃんに追いつき追い抜く。お前なんかひとひねりにしてやる。｣

｢ふん、笑わせる。｣
ﾊﾟｷｨｰﾝ
暗殺者は真剣白刃取りをし横に捻ると砕の剣が根元から折られた。

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>> 169 ｢くっ!!｣
砕は折られた剣にオーラを溜め暗殺者に投げつけた。

｢こんな物。｣
ﾊﾟｼｯ
ｶﾗﾝｶﾗ…
右手の甲で払いのけた瞬間に砕は祖父の方へ飛んでいた。

｢爺ちゃん借りるぜ。｣
気絶している祖父の手から奇妙な形の刀を取り手にした。

ｷｭｲｰﾝ
頭に誰かの声が響く。
<汝、我を求める者か>

(だっ誰だ!?)
砕は辺りを見回す。

<汝、我を求める者か>

(あぁ力が欲しいね)

<汝、我に力を示せ>

(でも、どうやって？)


<汝、力を注げ>

(オーラを注げってことか…)

<汝、力を示せ>

(ったく、うるせーなぁ)

(うおおおぉぉぉぉっ)
漆黒の鎧にオーラを溜めありったけのオーラを魔神刀に注いだ。
ｽﾞｽﾞｽﾞ
気を失いそうになるくらい注いだ時、刀は輝き砕の左手の甲に火の紋章が浮かび上がった。

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>> 170 <我が名はサラム！火の魔神なり>

(火の魔神…サラム…)

<主よ！我が名を呼ぶのだ>

ｷｭｲｰﾝ

｢はっ！幻覚か…｣
目の前の暗殺者を見ると、さっき砕が投げつけた折れた剣を払いのけていた。まだ、ほんの一瞬しか時が経っていなかった。 そして自分の手の甲を見ると黒い紋章が浮かび上がっている。

(幻覚じゃ無かったか…呼んでみるか)

｢サラム！｣

ｺﾞｵｯ
すると透き通った赤色の眼孔の鋭い男が現れ砕の体の中にｽｯと入っていった。
ｺﾞｵｯ
体の奥底からドンドン力が漲り、刀は炎を帯びた。

｢なんだ…こいつ急に体格が良くなったぞ…｣
ﾊｯと我にかえると暗殺者は攻撃を仕掛けた。

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>> 171 (何だ…相手の動きがゆっくり見える)

ﾋﾞｭｯ ﾋﾞｭｯ ﾋﾞｭﾝ

｢何だと!? 攻撃が当たらん。｣
砕は暗殺者の連続攻撃をいとも簡単に交わすと、炎を宿した刀で相手を翻弄する。

｢ﾁｯ!｣
暗殺者はﾊﾞｯｸ転をしながら交わすが所々衣服が焦げ臭い匂いが部屋に立ち込める。

(力が漲って爆発させたい…)
ﾌﾞｰﾝ
｢今なら出来そうだ。七重残像剣んっ!!｣
七人に分身すると暗殺者を円に囲った。
ｺﾞｵｯ
｢阿修羅爆炎斬りぃぃぃっ!!!｣
次々と阿修羅の如く炎の刀が襲いかかる。
オーラを溜めた一人が空中にジャンプし円の中心目掛け必殺技を叩き込む。

｢ファイヤースティンガーー――ッ!!!｣
ｼｭｺﾞｫｰｰｯ
炎の魔神の力が加わった鑓の形をしたオーラの光が暗殺者を包む。

｢そんな…馬鹿な…｣

トゴオオオォォォン
ｼﾞｭﾝ
暗殺者は超高熱で跡形もなく消し飛んだ。
ﾌｯ
分身が解け砕の力量不足か炎の魔神サラムは魔神刀にｽｰｯと戻っていった。
辺りは熱気を帯び分厚い鋼鉄製の床も超高熱でドロドロに溶け丸く穴が開き下のブロックが見える。

｢ふう…何とか倒したな。クリスとの特訓の成果だな。さぁ、大臣のいるデッキに向かいますか。｣
近くで気絶している祖父を背負い歩き出した。

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>> 172 ｳｨｰﾝ
｢ふうっ…よっこらしょと。｣
砕は大臣が居るデッキに着くと祖父をシートに座らせた。

｢んっ!?｣
ﾀﾞﾝﾃｽﾃｨﾝ王国の兵士等と大臣の様子がおかしい。

｢大臣どうしたんだい？｣

｢……。｣
一時の沈黙があり大臣は重い口を開いた。

｢ブルースカイは爆発をして大破したものの相手将軍を撃破し敵兵は投降、敵戦艦ウ"ァイオレッドを奪うことが出来ました。｣

｢何だブルースカイを失ったのは痛いけど後は良いことばっかりじゃ…｣
だが、大臣の顔は優れない。

｢然し、その代償は余りにも大きかった…｣
大臣は口を震わせながら話しを続ける。

｢クリス様が…アルミを庇い瀕死の状態…｣
｢なんじゃと!!｣
ガバッと祖父はシートから起き上がった。

｢爺ちゃん。｣

｢凱様、大丈夫ですか？｣

｢儂の事よりもクリスは…｣

｢はい、奪った敵鑑に医療ルームがありそこで治療をしていますが…｣

｢なんて事じゃ！｣
ｷﾞｭｵ ドンッ
祖父は握り拳を壁に打ちつけた。

｢アヤツに何て言えば…｣

祖父は空を見上げた
デッキ内は沈黙に包まれた。

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>> 173 ｳｨｰﾝ
｢クリースｯ!!｣
医療ルームに駆け込むと祖父は女性の名を叫んだ。
その後から砕、大臣と続く。

ﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯ…

竜人、ラリス、アルミと沈黙の中電子音だけが鳴り響く。

ﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯ…

女性は水溶液の透明なカプセルに全裸で入れられ呼吸器のﾊﾟｲﾌﾟと全身のｱﾁｺﾁに機械の線がつけられている。

｢クリス…アヤツにライオネルに何て言えば良いんじゃ…｣
祖父はカプセルの横にうなだれた。

｢爺…ちゃん…｣
砕も大臣もそれ以上祖父に何て言っていいのか分からず言葉に詰まった。

ﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟｯ…

また、長い沈黙が続く…





｢そうじゃ！｣
ﾎﾟﾝと手のひらをたたき突然長い沈黙を祖父が破った。
｢この魔水を飲ませたらどうじゃろうか？｣
腰袋から一本の蒼い小瓶を出す。

｢儂にあれだけの効果があったんじゃ。傷だけなら治せるかもしれん。｣
｢凱さん、それは専用に作られたもの。他の人が飲んだら副作用が…｣
ラリスが祖父の言葉を遮った。

｢じゃがこの右胸の傷は肺をえぐってしもうとる。このままじゃとクリスは助からん一刻の猶予も無い…一か八かこれに賭けるしかないんじゃ分かってくれラリス。｣
祖父は小瓶の蓋を開けた。

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>> 174 ｷｭﾎﾟ
ﾁｬﾎﾟﾁｬﾎﾟﾁｬﾎﾟ
ﾉｽﾞﾙの挿入口から魔水を滴らせる。
一瞬、透明カプセルの水溶液が光った様に皆感じた。
すると、驚異的な速さで細胞が再生していくのを目の当たりにし全員がその様子を息を呑みｼﾞｯと見つめた。骨、皮膚までもとに戻るまで五分も掛からず女性が目を覚ました。
｢うぅ…私は…｣

｢クリスっ!!｣
｢クリスさん｣

アルミ以外は全員声を掛けた。

｢お前はクリスに何か言うことは無いか。｣
竜人が肩をｸﾞｲｯと掴みﾄﾞｽの効いた声で言った。

｢別に…｣
ｺﾂｺﾂｺﾂ
ｳｨｰﾝ
アルミはそう言うと医療ルームのﾊｯﾁから出て行った。
｢くっ！｣
竜人も後を追う体制をとったが祖父が制し首を振った。

｢ふおっふおっ、キック若いとは良いことじゃな。昔、儂の一匹狼の頃を思い出すわい。アヤツも苦悩しとるじゃろて。｣
ﾆﾔｯと笑うと髭を撫でた。

ﾌﾟｼｭｰｯ
カプセルが開き女性が水溶液から出て来た。然も肌艶が二十歳位のﾋﾟﾁﾋﾟﾁした体で…

｢男性陣はあっち向いて下さい。｣
ﾊﾞｼｯ
｢うぐっ何で俺だけﾋﾞﾝﾀを喰らわせる…｣
｢いいから早くする!!｣
ラリスは砕の体を回れ右にした。

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>> 175 ｢クッ、クリスさん何ですかこれは…?｣
｢んっ、何だこれはっ!!｣
女性の慌てた声が聞こえる。

男性陣は一同に振り返った。

｢はぁ～ｯ…もう服を着とるわい…｣
女性は軽い服を着ていおり、祖父は溜め息をついた。
｢んっ!｣
皆は一斉に驚いた。栗色のショートカットのてっぺんに銀狼の耳と尾てい骨あたりから、やはり銀狼の尻尾が生えている。

｢副作用ってもしかして…｣

｢……。｣

｢くっくくくっ｣
祖父と竜人は後ろを向き笑いをこらえた。

｢凱～、キック～。｣ｻﾞｼｭ
ｶﾞﾝ ｺﾞﾝｯ
尻尾を靡かせ二人に拳を喰らわせた。

｢ぐっ、だってなぁ凱。｣
｢ｲﾁﾁﾁ…これでクリスも儂や砕と同じタフな銀狼族になったわけじゃ。あっ元々昔から顔は綺麗じゃがタフで性格は男みたいじゃたから関係…｣
ｷﾞﾛｯ
｢凱、もう一発欲しい。｣
横で手をﾍﾟｷﾎﾟｷ鳴らしている。

｢いっいや冗談じゃよ！冗談！なぁキック。｣
｢俺にふるな。｣

皆はその光景を見て笑った。

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>> 176 ｢クリス様が無事で何よりです。皆様、一旦船を降りてささやかですが地下の広場で食事を取りましょう。｣

｢私、何だかホッとしたらお腹がﾍﾟｺﾍﾟｺになりました。砕、行きましょう。｣
｢ああ。｣
二人はﾊｯﾁから出て行った。

｢若もんは回復が早いの。儂等も行くか。先に皆行っててくれ儂はアルミに声を掛けてから行くわい。｣

｢私が行く。｣
女性は祖父にそう言うとアルミを探しに行った。

｢俺はまだアイツを仲間とは認めてはいない。｣

｢まあまあ、キックそう言うな。そのうち儂等もアヤツも馴染む筈じゃ。｣
竜人の肩をﾎﾟﾝと叩いた。



｢こんな所にいたの。｣
女性はアルミに声を掛ける。
鑑首の先端に一人冷たい風を浴びながら蒼空を眺めていた。

｢気にしないで良いわよ。｣
鑑首の端に背を向け腰掛ける。

｢……。｣

｢アナタは私の兄に雰囲気が似ているわ。人に接するのが不器用で…でも心の根っこは純粋で優しい。｣

｢……助かって良かった……｣
アルミは女性に聞こえるか聞こえないぐらいの声でﾎﾞｿｯと言うとそのまま歩いて行った。

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>> 177 ｽﾞｺﾞｺﾞｺﾞゴゴゴゴ……
ｼｰﾗ星惑星付近…
海王星戦闘鑑クラーケン…

ｳｨｰﾝ
ｶｼｬ
室内は全て鏡のようにﾋﾟｶﾋﾟｶにしてあり光が反射している。床には赤い絨毯が引いてあり薔薇の花びらがﾊﾞﾗまいてある。そこへ下級兵士が慌ててﾊｯﾁから入って来た。

｢失礼します。ネプチューン将軍!!｣

｢何事ですか？私は、ワインを飲んで寛いでいるのですよ。｣
部屋の奥にある金色の机と椅子があり両足を組み机の上にのせ左手にワイングラスを持ち液体を回し座っている。

｢ﾊｯ!それが…｣
兵士は目線を落とす。
｢冥王星前線基地からの通信兵の情報によると、ﾀﾞﾝﾃｨｽﾃｨﾝ星の戦闘により冥王星艦隊は全滅…プルート将軍も敗北したと…｣

｢ほう～っ、あのプルート将軍が敗れたのか…だが、私には関係の無い事!これから先にあるｼｰﾗ星と言う惑星に侵略するのが私の任務。｣
そう言うとワイングラスを机に置きｺﾊﾞﾙﾄﾌﾞﾙｰのｳｪｰﾌﾞ調の長い髪を掻き上げた。

｢私の軍服を…｣
｢ﾊｯ!｣
兵士は敬礼するとネプチューン将軍の部屋から出て行った。
ｶﾂｺﾂ
｢プルート将軍を倒した相手がどれだけの使い手か分からないが…もし、合間見うる事があっても私に掛かればひとひねりにしてくれる。｣
灰色の瞳が怪しく光る。

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>> 178 ﾀﾞﾝﾃｨｽﾃｨﾝ王国地下通路から皆は大臣の後を付いて行った。色々な場所へ通じているから昔は知らない者が入ると迷ってなかなか地上へ辿り着けなかったり目的地とは違う所へ出たりした…と大臣の話しを聞きながら歩いていく。

｢今は、このﾎﾛｸﾞﾗﾑﾏｯﾌﾟがあるから助かるわい。｣
立体に浮かび上がった地図を見ながら祖父は言う。

｢本当に大臣がいなかったら迷子になりそう…｣
同じ造りの通路がいくつも枝分かれしているのを見てラリスは不安になった。

｢へっ、ラリスだらしねぇな!｣
｢いいじゃない。｣

｢凱、キック昔を思い出すわね。｣

｢ああっ。｣
｢そうじゃな｣

そんな話しをしているうちに、人々だ沢山集まっている広場に着いた。皆、アチコチ怪我をして手当てをした後が生々しい。

｢そういえば、デビルがいないな…｣
キックは辺りをｷｮﾛｷｮﾛ見回すがいない。
｢それが…｣
一人の兵士が話し出した。

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