たなおろし

母ヨシノさんとのことを中心に、感じたことを書いていこうと思います。

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少し前のヨシノさんとの会話

三十年近く前のことでカミングアウトをされた。

当時ヨシノさんに持病があり、手術を受けることになった。緊急性は無いので日程の希望は可能。
私の成人式の5日ほど前に手術だった。当時からずらしてくれないんだなーとは思っていた。

先日、そのときの入院の話になった。
そんな時期に手術をぶつける母になんだかなとは思っていたが、それでも成人式の日に一時帰宅してくれていた。それがあったのでそれ程恨みがましく思っていなかったのだが…

実際は、一時帰宅なんてしたくなかったそうだ。常に便秘気味だったのに病院にいるとお通じが良いから。と。
なのに親類が、成人式には帰った方が良いと医師に伝えてしまったから帰らざるを得なかったのだそうだ。医師に帰りたく無い理由を言ったが聞き入れられなかったから仕方がなかったと。

成人式の着物にも言い及んだ。
あんな着物を選んだけど自分は入院しちゃうから好きなものを選ばせようと思ったそうだ。
私としては、遠慮して低価格なものから選び、伝統的な柄で低価格だとあまりにも安っぽかったので現代風な柄を選んだ。
それはそれで気に入っていたのだが、「あんな着物」を選んだと思っていたのかと、一気にケチがついてしまった…

ヨシノさんは私をがっかりさせる天才だ。

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先月のヨシノさん

何年か前にフラつきを訴えた。
かかりつけ医が大学病院の耳鼻科を紹介。三半規管の衰えが原因とのこと。リハビリのやり方を教わり、それを行うと多少だが改善すると言っていた。

ここ１年ぐらいでフラつきが強くなったらしいので大学病院で脳と脊髄の画像診断をしたが問題なし。神経科の診察で、大腿部の筋肉の低下が著しい。それと片耳の難聴があること。この辺りが原因かと考えられるとの事。
次は耳鼻科に回してもらえるようにお願いしたところでこの日はおしまい。

動かないと筋肉が落ちること、三半規管の運動を行うように。は、繰り返し伝えてきたのだがやらない。ヨシノさんは脳に腫瘍ができたのかも？神経科に回されたのだから神経の病気かも？　と何か重大な病気に救いを求めている様子。苦手なことを努力しなくてはいけない行為はなるべく避けたい様子。

医師に言われたのでもう一押しと思い、運動と耳のリハビリについての話しをしたら、
「耳のリハビリで改善したことなんて無いのよ。」
と言い出した。
これまでは、やったあとだけは調子が良い。と言う話を繰り返してきたのに？
「今までのは嘘だったの？」
「そう言うこと。やると気持ち良かっただけ」

口うるさく感じてわざと違うことを言ったのだろうか、本当に違うことを伝え続けていたのだろうか。

どちらでも構わないのだがイヤな気分を引きずっている。

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ワタシが子供の頃のヨシノさん

小さい頃のワタシは足が速かった。５０メートル走でまあまあ良いタイムを出したのでお母さんに走っているところを見てもらいたかった。

夕食後にちょっとつまむお菓子を2人で買いに行く時に「走るから見ててね！」と、並んで歩いていたのを先へ走り出す。
あとから追いついてきたので、どうだった？と感想を求めたところ「ヘンな走り方」とひと言。
走るのが得意なヒトに言われたならまだいい。極端に運動音痴の人なのだ。知識的に陸上に精通しているわけでも無い。

恥ずかしいのとがっかりしたのとで惨めでヘラヘラ笑って誤魔化すしかなかった。

近ごろのワタシはどういうわけかやたらと感傷的。こんな思い出に傷つけられてしまう。

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最近のワタシ

幼いころから、愛情が欲しかった。寂しがり屋の欲しがり屋。

できれば母であるヨシノさんからの愛情が欲しかったのだと思う。
小学校の低学年だったと思うけど、母のことが嫌いでしょうがなかった。二階の自室で布団をかぶって母に対する悪口雑言を叫んでたのを覚えている。ある時母に聞かれてそれからは少し控えるようになった。
トイレの木の窓枠にチョークでお母さんのバカと書いて、読めないけどうっすら何か書いたなというのがわかるぐらいに消しておいた。
お店に見本で置いてあったおもちゃの一部を持って帰った。
母の財布から小銭をちょいちょい盗んだ。これはある時母にバレて持ち物検査をされたが、怒られなかった。それは残念なような愉快なような悲しいような思いだった。

父のことは楽しくて好きだった。
母が夕食を作る時、父は近くのテーブルでビールを飲んでいる。私は父と遊びたくて膝の上に乗ったりしている。
父と母はしょっちゅう口論している。大した内容には思えないことでお互い突っかかっている。私は仲裁に入る。2人のうち
母の機嫌をとる方が効果的だった。

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小学生の頃友達が、お母さんが編んでくれたセーターをすごく嬉しそうに愛おしそうに着ていた。
ワタシは内心びっくりした。
その子は他の友達と違って、家庭でのことを温かく話すタイプではなかったから。
幼いワタシには同類に見えていたのだ。
家に居心地の良さを感じていない少し寂しい子なんじゃないかと。
ワタシはヨシノさんが編んでくれたセーターを疎ましく思っていた。
そんな自分が冷たく出来損ないの人間のように思っていた。今でもそう思う。
でもね、ワタシ、たぶんそうなってしまうような関係だったのだよ。残念ながらワタシはヨシノさんの温もりを感じられる環境じゃなかったのではないかな。
だから、ワタシ、そこまで自分を卑下しなくてもたぶん大丈夫だよ。
確信はない。でも、たぶん、ワタシは自分で思っているほどは酷い人間ではない。
欠陥は色々とあるけど、たぶん、大丈夫。

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低学年の頃父が仕事から帰ってきてダイニングで晩酌をしながら話していると、必ずヨシノさんと言い争いになっていた。
ワタシは父と気が合っていたから父によくまとわりついていた。
そうしているうちに諍いが起こる。
幼いワタシはこう認識した。父とワタシが仲良くすると諍いが起こる。と。
これが真実なのか、間違った認識なのかはわからない。
ただ、幼いワタシにはこれが真実だった。
父を毛嫌いしてヨシノさんに迎合すると諍いが収まるように思った。
実際にそうだったのか、たまたまだったのか、気のせいかはわからない。
それでも幼いワタシはそうやって過ごすようになった。
大人になっても、家を出ても、結婚しても。
子を産んで育て始めるまでずっと。
何ということだ。

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おそらく、色々と間違った認識をしている。
まだ間違えているところがたくさんあるように思う。
こうなってくると、間違った認識だと思っていることも、間違えなのかもしれないと思う。
なぜこんなにこんがらがった記憶なのだろう。
記憶力の問題なのか、認識を歪めないと生きていけない環境だったのか、私の認知能力の欠陥なのか。
こんな悩み、皆抱えているのか？
大した事ではないのに、ワタシ勝手に混乱してしまっているのか？

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平穏な家庭を目指すために幼いワタシがとった行動は、自分を洗脳すること。父が悪いのだと、ワタシは父が嫌いなのだと、この家庭は父がいなければ平穏なはずなんだと、こう洗脳することだったみたいだ。
自分で自分にかけた洗脳はちょっとやそっとじゃ解けないみたいだ。薄皮が剥けるように少しずつ少しずつ解けているが、一生かかっても解き放たれることがあるのかどうか…

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かつて15年近く愛し合ってきた人がいた。
あらゆる愛情をくれた人。
恋人であり、母親であり、父親であり、友人でもあり、同志である。
魂が響き合い繋がっていると信じていた人。今でもそれは変わらなく思える。
ただ一つ足りなかったもの。夫婦にはなれなかった。結婚していたし、親子以上に歳が離れていた。
でもそれは相手が望んでいたことでもあるけれども、心の奥底では私も望んでいたのではないか。
そういう相手だから安心して愛情を注ぎ愛情を欲したのではないか。
今ではそう思う。

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ワタシは復讐をしたいのかな？
ヨシノさんをなじりたい。
生きているうちに、まだ判断ができるうちに。
そういう欲求が表在化してきている気がする。
少し前まではワタシの辛さをわかって欲しかった。できれば反省してほしかった。
いまは、そな感情も残ってはいるのだが、嫌な気持ちにさせたい。
年寄りになって嫌な思いをしたくないと願っているヨシノさんに、ワタシが孤独で、なんとか愛されるようになるために歪んだ認知によって間違った行動をとってきてしまった苦しみを少しでも味合わせたいと思っているのだろうか。

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でもそれをすればヨシノさんと同じ土俵に立ってしまう。
ワタシが嫌がることを言って支配してきたヨシノさんと同じになってしまうのではないか？
それは嫌だ。

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どちらが後悔が少ないのだろうか。
ヨシノさんに気持ちをぶつけないこと。ヨシノさんをボロボロにしてやること。
リスクが高いのは後者。
前者は後悔が湧いてきても時間をかければ浄化できるかもしれない。
でもワタシはすでに老いに向かっている。浄化できるだけの時間は残されていないかもしれない。それならば

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