注目の話題
彼女が欲しかったな…
子供を作る事は親のエゴ?
🔥理沙の夫婦生活奮闘記😤パート1️⃣😸ニャン

落ちこぼれの天使

レス6 HIT数 1290 あ+ あ-

旅人
15/10/15 02:19(更新日時)

プロローグ


この世に偶然はない


なにかの本に書かれていた


ん…ほんとかな?!


むろん、その頃の私には当然理解できるはずもなく…




※注

文中の名称等は全て架空です




タグ

No.2264551 15/10/11 11:48(スレ作成日時)

投稿制限
スレ作成ユーザーのみ投稿可
投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.1 15/10/11 12:33
旅人0 

突然電話が鳴った。

電話というのはいつの時代も突然鳴る。(笑)


「突然の電話ごめんなさい」

受話器の中から聞こえてきた声。

聞いたことあるような、ないような。

電話の中の主は言葉を続ける。

「あの~わかるかな?…斉藤だけど…」

頭の中をふる回転させ…

「あっ!」

電話の主は同じ学部、同じクラスの…そう、斉藤だった。


「ごめん、突然電話しちゃって…。」

「うん、大丈夫だよ。」

内心大丈夫でもなかったけど
「突然のご用はなーに?」っていう心境だ。

私の心中をよそに、彼は言葉を続けた。

「あの、会って話したいことがあるんだ…明日の授業3時までだったよね?…」

「うん、そうそう」

「ん?話?なんじゃらほい?」とは言葉にはしなかったけど…。

斉藤とは同じ学部、同じクラス。
顔も知ってはいたが、会えば挨拶を交わす、その程度の間柄だ。

確か仲間数人でお茶したこともない。

彼はモゴモゴしながら更に言葉を続けた。

「明日、3時半に六本木で待ってる。…なつみが来てくれるまで、ずっと待ってる。」

そこまで言うと電話はプツンと切れた。

本当に電話というものは、突然鳴り突然切れる。(笑)

私の頭の中は混乱していた。

な、なんなんだろう…

話?

しかもこっちの都合も聞かずに…。

まぁ、とりあえず行ってみるか…。


No.2 15/10/11 14:10
旅人 

>> 1 六本木、とある喫茶店。

昼と夜では、違う顔をもつ六本木。

あまりにも有名な、喫茶店の片隅に斉藤の姿があった。

私の姿を見つけると、突然彼は立ち上がった。
まるで機械仕立てだ。

機械仕立ての、まるでロボットのようなぎこちなさ。

いや、ロボットの方がスムーズか?。

「あ!あ、ありがとう…来てくれて…あり、がと…」

言葉も機械仕立てのようだ。

いや、まぁいい…。

真面目を絵に描いたような、とはまさに、彼のような人をいうんだろうな…。
いやいや、わからないぞ…真面目そうに見えるだけかもしれない…。


小学生の頃

おとなしそうに見られることが多かった。

人と争うことが好きじゃなかった。

あまり自分の気持ちを表に出さなかった。

と言うより、出せなかった。

東北の田舎から家族と共に、上京し

転校先の都会の学校に、馴染むまで相当な時間がかかった。

常に葛藤だった。

田舎もんだと馬鹿にもされた。
ひとり、声を殺して泣いたこと、一度や二度じゃない。

けれど人前では涙は見せなかった。

悔しかったから、がむしゃらに勉強した。

負けるもんか!

今思えば、それだけが私の『プライド』だったのかもしれない。

その『プライド』がなかったら、生きていけなかった。

子供ながらにも…。

喫茶店の中の、まるで機械仕立てのような彼は
少しずつ落ち着いたかのように、ゆっくりと話し始めた。

笑顔はまだまだぎこちない。

顔、ひきつってないか?!



No.3 15/10/12 15:15
旅人 

>> 2 ゆっくりとぎこちなく腰を降ろすと

突然彼は早口言葉を発するかのような、頼りない小さな声で言った。

「なつみは、横井とつきあってるの?」

えっ?!

ハトが豆鉄砲食らったような…

予期せぬ言葉に私は、まさにハトに豆鉄砲だ。

横井とはやはり同じ学部の同じクラスの学生だ。

話はよくした。

そういえば、私が欠席した時の授業のノートも貸してくれたっけ。

なんとなく好意はわかっていたけど…。

「つきあってないよ」

私がそう言うと彼は、少し驚いたような目を向けて、そして口を開いた。

「あの、あ、の…」

またモゴモゴだ。

ゆっくりとゆっくりと時が流れる。

けれど、喫茶店のこの片隅だけ時が止まったままのように、静かだ。

ただ、斉藤の目だけは忙しなく動いていた。



No.4 15/10/13 01:03
旅人 

>> 3 人はなぜ嘘をつくのだろう

小さな嘘。
それが次々に重なりあって、いつの間にか巨大化して、まるで真実なような顔をしている。


どうやら、私と横井はつきあっていて結婚も考えている…

と、いうことになってるらしかった。

斉藤の話から、横井が言っていたということもわかった。

ハァ…どうしたらそういうことになるんだ?

「違うの?」斉藤は小さな目を大きく見開いて私の顔を覗きこんだ。

「違うよ。全然違う。」

「じゃ、横井の話は嘘だってことだね?」

斉藤は少し安堵の表情を見せた。

あれ?今ちょっと笑った?

「あの、あ、その…」

またモゴモゴ君だ。

でも、彼の話し方に懐かしさと優しさを感じた。

お国訛りだ。

方言は心地よい。
同じ東北だな…きっと。

そんなことを考えていると、また突然斉藤は、口を開いた。

「ぼ、僕と結婚してください」

「へっ?」

ハトに豆鉄砲だ!
しかも百発だ!

No.5 15/10/14 21:37
旅人 

>> 4 いきなりもいきなり、しかも結婚って…。

この人は頭大丈夫か?

私の困惑した様子を見て斉藤も、困惑顔でうつむいた。

じっとテーブルに目を落としている。

これから卒業し、卒業後には働きたいと思っていた私だ。

大きな夢などなかったが、何か仕事を持ちたいと思っていた。

初恋は高校生の時だ。

決して、今で言うイケメンではなかったけれど、笑顔の似合う素敵な人だった。

常に前を向いていて、努力することの大切さを私に教えてくれた。


初恋の彼はずっと、私の心の引き出しの中に、住んでいた。

地方の大学へ行ってしまったあとも…。


急に引き出しの中の彼が顔を出した。

「ごめんね、私には好きな人がいるんだ。」

私はそう応えていた。


No.6 15/10/15 02:19
旅人 

>> 5 どのくらい時間が経ったのだろう。

陽がすっかり傾いて街のあちこちに、灯がともり始めている。

あぁ、急がないと。ラッシュにぶつかったら大変だ。

少し急ぎ足で、地下鉄の駅まで歩いた。

歩きながら、いろんなことを思い出していた。

好きで好きで、大好きな人。でもあきらめるしかなくって…。

でもでも、本当によかったのだろうか…。

不意に涙がこぼれ落ちた。

さぁ、空を見上げよう。
涙がこぼれ落ちないように。

どんよりとした空。
あの人の住む空は、どんな空なんだろう。

元気にしてるんだろうか?
頑張ってるんだろうか?

うん!きっと頑張ってるね。

無理やり微笑んでみた。

空は繋がってるんだ。

「なつみ、おまえも頑張れよ!」
雑踏の中で声が聞こえた。

涙を拭って髪を撫でると、たった今、発車ベルが鳴り終わった電車へと、すべり込んだ。


投稿順
新着順
主のみ
付箋
このスレに返信する

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧