重い女

レス377 HIT数 920655 あ+ あ-


2012/06/10 20:59(更新日時)

当時は地獄だった…



今はその当時を思い出しても、怒りや憎しみ、それと負の感情は沸かなくなった



裏切られ続けた馬鹿な女の90%実話です。



駄文ではありますが良かったら読んで下さい。



どんな事でもコメント頂けるとありがたいです。

No.1711124 (スレ作成日時)

新しいレスの受付は終了しました

投稿制限
スレ作成ユーザーのみ投稿可
投稿順
新着順
主のみ
付箋

No.201



間取りや家賃等が記載されてる不動産屋の情報紙。


ネットからプリントアウトしている。


右端にメモ書きがクリップで止めてあった。



『ここどう思う?

広さは十分で綺麗なんだけど家賃高いしちょっと厳しいかなぁ…

他にも見てみるね!』



それを見ても顔色ひとつ変えずに夫が言った。



「西田が今年中に家を出たいらしくて、初めての事だから相談にのってるだけだよ」


「あのさぁ…もう少しまともな言い訳してくんない?

普通に考えて終わった相手にこんな相談する?」


「本当なんだって

まずいと思ったら破いて捨ててるよ。何もないから車に置いてたんだよ」


「置いてたって言うか落ちてたってのが正しいけど

あんたの車に忘れ物取りに行ったら後部座席の足元に落ちてた

自分もあった事を忘れてただけでしょ」


「だから本当だって

嘘だと思うなら西田に電話して聞いてみろよ」


「あんたら2人の事なんて信用できるはずないじゃん!

いつまで人を馬鹿にするのよ!

部屋でも何でも借りて2人で勝手に住んだらいいじゃんよ!」


「あほか

住むわけないだろ

本当に相談されてるだけなんだって」


「それが本当の話だったとしても無神経すぎる

散々嫌な思いさせた相手の相談にのるなんて私の事は何も考えてないって事なんだよ」


「あいつ、相談する相手が他にいないみたいで、それで俺に言ってきたんだ

本当それだけだから」


「……」


「確かにお前の言う通りだな…無神経だった。ごめん

もうやめるから」



「勝手にやってよ

もう疲れたから寝るわ」



「旅行は行くからな」



私はそれに答えず寝室に向かった。



西田が部屋を借りようとしてるのはメールを見て本当は知ってた。



それで西田が浮かれてる事も。



―――


独り暮らししたら会う場所ができるね😆💓

夢が膨らんじゃう⤴⤴

でも無理して来てなんて言わないから…

由美までうるさく言わないから😢

和也さんが疲れてる時に来たくなるような、そんな空間を作ってあげたい😌

でも独り暮らしなんて初めてでよくわかんないから、相談にのってね😁

メールボックスにこっそり入れとく✌

頑張って達成させるよ‼

和也が大好きだからゆっくりできる場所を作りたい❤


―――END



いつまでも終わらない2人の関係。



私もこの頃は何を見ても聞いても、またいつもの事と思うようになっていた。



だが、西田が独り暮らしするのは漠然とだが不安な気持ちになる。



今までは外で会うしかなかった2人に帰れる場所ができたら…



一度も口にしなかった離婚の言葉が夫から出てくるのか…




………もう!!!




未だ夫に依存する自分に気がつくと、自分で自分に腹が立って仕方がなかった。

No.202



そんな状態でも一番に旅行を楽しみにしている怜奈の事を思うと取り止める事はできず、足取りは重いまま旅行は決行されたのである。



「わぁ~おとー見て見て!

すっごく綺麗!

癒されるぅ~」



部屋の窓から見える深緑の山々とその下を流れる川。


遠くには赤色の大きなつり橋が見えるその景観は怜奈だけではなく私も癒された。


広くてゆったりできる12畳の和室で夫と怜奈がはしゃいでる。



「いつも海だけど山は初めてだよね

山菜ばかりだとやだなぁ」



夕飯の心配をしている恵美。



「そこはお母さんが抜かりない事知ってるでしょ(笑

リサーチ済み!楽しみにしてて

温泉入ろう!」


「暑いからなぁ」


「夏場の温泉も気持ちいいじゃないの~

早く行こ行こ!」



みんなで浴衣に着替え
温泉に入る事にした。



―――――――――



四季折々の料理が並ぶ夕食は見た目も味も抜群で心配していた恵美も大満足していた。



22時。



1日歩いた疲れで怜奈は熟睡、恵美もお酒が入り今にも寝そうな顔をして布団の中でケータイをいじっていた。


夫も同じく横になりながらテレビを見てるが、落ちるのは時間の問題といったところ。



私は窓際に置かれた椅子に座り月明かりに反射する川を見ながら煙草を吸っていた。



来たら来たでそれなりに楽しい旅行だけど、前とは明らかに違う私達夫婦。


昼間、買い物した袋をトランクに隠したのは知っている。


西田のお土産だろう。


その行為に溜め息を覚える。



そんな私も金井さんにお土産を買った。



これって2人と一緒?



冗談じゃない!



私と金井さんはそんな関係ではない!



いつもお世話になってるお礼と感謝の意味を込めて当然の行為だ!



そんな言い訳がましい自分にも溜め息が出た。



(金井さんは今頃何してるのかな…)



「…あ」



気づけば金井さんの事を考えてる自分がいて、それを振り払うかのように灰皿の上で煙草を強く揉み消した。

No.203



自分の気持ちに混乱していた。



私は夫を愛してる?



すぐに答えが出てこない。



なぜ私はこんなに夫に依存してしまうのか…



こんなに酷い仕打ちを受けても尚、なぜ離れる事ができないのか…



裏切られてきた経験が私の依存に拍車をかけているのはわかっている。



だが、ここまでされた事はない。



過去の夫達とは浮気が発覚した時すぐ離婚になった。


浮気ではなく本気だったから離婚に至ったのだとも思う。



おかしな言い方だが潔かった。



別れた夫も確かに自己中だったけれど浮気が発覚して、家庭が大事だのお前が一番だのと中途半端な事は言わなかった。



バッサリ切られ捨てられた。


私がどんなにすがっても駄目だった。



だから…



どんなに辛くても悲しくても前を向いて歩いてくしかなかった。



今の夫は違う。



何度も浮気を繰り返してきたが、必ず私が一番大事だと離婚はしないと言ってきた。



喧嘩はするけれど邪険にする訳ではなく、浮気の最中でも私に優しくする。



これで暴言を吐き続けられたり、あからさまに冷たくされたり、浮気相手の方が大事だと言われたら私もここまで我慢できていないはず…



中途半端な優しさ。


反省を見せる態度。


離婚はしないと言う発言。



それらの事が私の気持ちを縛り付けて離さないでいたのだ…



ずるい…



夫はずるいんだ…



家庭という土台がないと、安心して遊べない人なんだ。



和也を愛してるの?


西田に負けたくないだけなんじゃないの?


若い頃は勢いもあったけどこの歳になっての離婚は大変だと思う気持ちもあるんじゃないの?


経済的に楽だからじゃないの?



金井さん…



金井さんが現れたからではないの…?



でも離婚してまでなんて
思ってないでしょ?



そんなあんたもずるいんじゃないの…?



みんなの寝息が聞こえる中で、私の自答自問は朝方近くまで続いた。

No.204



会社や実家、友人らにお土産を買い、走行中目についた所に寄りながら帰路についた。



みんな疲れたのか
車内は静かになっている。



答えが出ないまま明け方近くまで起きてた私は、今頃になって眠気が襲ってきた。



怜奈も眠そうにしている。



「怜奈まだ着かないから
眠っちゃえば?」


と、私が言うと大あくびしながら


「ふぁぁ…眠い

もうお姉ちゃん、こっちに足伸ばさないでよぉ!」


既に寝てる恵美の足が自分にかかってるのを怒っている。



「もおぉ!いいよ!
怜奈一番後ろに行く!」




「だめーー!!!」




自分でも驚く程の大きな声だった。



運転してた夫が一瞬ブレーキを踏み、その声で恵美も起きた。



怜奈も驚いている。



「あ…怜奈ごめんね

一番後ろは酔うからやめた方がいいよ」



「うん…わかった」



怜奈はただよらぬ私の言い方が気になったのか後ろの席を覗きつつも素直に聞いた。


恵美は一瞬目が開いたが、またそのまま眠ってた。



夫は無言でいる。



私は助手席から夫を思いきり睨み付けた。



2人の行為が汚らわしく
心の底から軽蔑した。



私の視線に気づいてる夫は真っ直ぐ前だけを見ている。





本当に最低だ…




こんな汚らわしい空間に吐き気がする。




何も知らない子供達にも申し訳なかった。




「あんたがやってる事は
こういう事なんだよ」



私は後ろに聞こえないように小さな声で言った。



夫はやはり無言だった。




本当に最低…




苛つきで眠気は消えていた。




自宅に着くまで私達はずっと無言だった。

No.205



―――


ただいま😄


夕方自宅に到着して
今夜はもう寝るだけです🎵


ちょっと疲れたけど
楽しい旅行でした😄✌


娘さんとの海は満喫できましたか?😉


釣りはどうだった⁉


モチロン大漁だよね(笑)


お土産買ってきたょ✨


休み明け金井さんの都合のいい時に渡したいです😉


ではでは~お休みなさい💤


PS✨

金井さんからのメールがなくてちょっと寂しかったり…


私💦

何言ってるんだろ😱💦

おやすみなさい💦💦💦


―――END




私は家族旅行。



金井さんは娘と過ごす休暇。




暗黙の了解のようにお互いメールはしなかった。



くるかな?と少し期待してる自分もいた。




好き?



ううん。



これは錯覚でしかない。



一時でも辛さから解放されて笑顔になれる自分。



私を想ってくれる金井さんとの時間は、ふわふわしていて、どこかくすぐったいような感覚。



そこには現実味がない。



だけど金井さんの事を考える日が確実に増えている。



でも私は夫とは違う。



金井さんとは何もない。



辛い時の逃げ道になってくれてる。



彼もそれで納得してくれてる。



何もやましい事なんかない。



自分に言い訳をいっぱい作り金井さんとの付き合いを正当化させる私も、やってる事は夫と変わらないのだろうか…



違う…



絶対に違う!



私は



家庭を必死に守ろうとしてるんだ!



夫とは違うんだ!



だけど…



金井さんとの関係を奈緒美に言えないのは、やはりやましいと思う気持ちがどこかであるのではないか…



好き勝手ばかりして口をポカンとあけ、何も考えてないような顔をして寝てる夫の顔を見てたら無性に腹が立ってきた。



「…ったく」



ムカついたから夫の脛毛を何本か思いっきり引っこ抜いてやった。



悶絶する夫に背中を向けて私は目を閉じた。

No.206



経済的な理由から西田の独立計画は難航してるようだった。


―――


現実はキビシ-😱

家にお金入れなくちゃならないし、少し貯めないと部屋借りるのきついかも😣

このお盆休みに色々見てたらそう思ってしまった😢

でも由美がんばる⤴


―――END



普通ある程度の予算を準備して、そこから部屋探しじゃないの?


願望と妄想が入り交じった彼女の行動は絵空事に過ぎなかったのか。


ピンクのケータイは見当たらなくなり、メールのやり取りは夫のケータイでしている。


バレバレな状況でもシラを切り通すところから、見つかると言い訳のきかない物理的証拠は抹消したのか…



~♪♪♪



そんな事を思ってたら金井さんからメールが届いた。



―――


おはよう❗


昨日はメールくれてたのにごめんね😫


娘とはしゃぎすぎて帰ってきたらダウンだったよ😅


休みも今日で終わりだね


俺はゆっくりするつもり👍


涼子ちゃんも旅行の疲れをとって✋


俺は近場だったからお土産思い付かなくてごめんね⤵



寂しいと思ってくれてたんだ…


俺もだったよ


涼子ちゃんが困る事はしたくないし困らせる事も言いたくないから我慢してました😣


―――END




なんだろう…



このゾクゾクした感じ。



気持ちが満ちてくような感覚。



決して愛されてる愉悦なんかではない。



もっと純粋な気持ち。



会いたい…



素直に思った。



だけどそれを決して口にしてはいけない。



それはまるで腐食しきった今にも崩れ落ちそうな長いつり橋に足を踏み入れる怖さ。



つり橋の向こう側には自分の知らない世界が広がっている。



真っ青な空。


花々は咲き乱れ小鳥がさえずっている。


そこはきっと辛苦のない楽園。



その場所に行くにはつり橋を渡るしかない。



好奇心で行こうとしたらとんでもない事になるかもしれない。



腐食した木と共に真っ逆さまに堕ちていくかもしれない。



運良く渡りきったとしてもそこは自分が描いてた世界と違い茨の道が待っているかもしれない。



振り返るとつり橋はなく、引き返す事もできない。



自分に渡る勇気などなく、安全圏からそのつり橋を眺めるのが精一杯。



楽園を想像しながら。

No.207



「今日もあちいわ~」


9月を過ぎても残暑厳しい毎日が続いてたある日の職場。


社用で銀行に行ってた奈緒美がブラウスの襟をパタパタしながら戻ってきた。


「お疲れさま。早かったね~空いてたんだ?」


「うん。今日はラッキーだったわ」



私は奈緒美に麦茶を手渡す。


「ありがと~

あれ?綾香は?」


「○○工業に見積書届けに行ってもらったよ」


「そっか~
げー!!専務の車入って来た。さぼれないじゃん!」



そこですか(笑)



「あれ?

金井さんじゃない?」



「え?!」



ドキッとした。



もう一台会社の前に車が停まり、そこから降りてきたのは紛れもなく金井さんだった。


「か、金井さんが来るなんて珍しいね」


どもってしまった(汗)


「あ~さっき彼が別のとこでトラブルあって急きょそっち行くってメールで言ってたわ。それで金井さん来たんじゃない?新しい現場の打合せでしょ」



「そっか」



専務と金井さんが入って来た。


「お疲れさまです」


「お~ご苦労さん」


専務の後に入ってきた金井さんが明るい声で


「どもども!毎日暑いですね!これ皆さんでどうぞ」


と、アイスがたくさん入った袋を差し出す。


何かを悟るかのようにお互いの視線を絡ませ、私は丁寧にお礼を言い受け取った。



なんだか照れくさいような気恥ずかしいような不思議な感じがした。



奈緒美はかかってきた電話を受けていて笑顔で金井さんに会釈をしていた。



応接セットに座る2人の脇を通ってアイスコーヒーの準備をする。



妙にドキドキしてしまう。



深呼吸してからお盆にのせテーブルの上にそっと置いた。



「ありがとうございます」



笑顔の金井さんに軽くおじぎをして自分の席に戻った。




ひぃー


変な緊張しちゃった(汗)




私の席から金井さんの横顔が見えていた。

No.208


打ち込みをしパソコンの脇から、チラチラと金井さんの横顔を見てしまう。


いつも笑顔の金井さんが、真剣な顔付きで話し、私の見た事のない表情をしてる彼に、いつの間にか目がくぎ付けになっていた。


当然、奈緒美に指摘される。


ボソボソと小声で

「なにあんた、金井さんに興味でもあるの?」


私は冷静に

「まさか~ゼスチャー多い人だなぁと思っただけ(笑」


「ぷっ!言われてみたらそうだ(笑」



大変良くできました(汗)



本当は



(素敵…)



なんて思ってたりした。



仕事をする金井さんの横顔に見とれていたのだ。


そんな彼と私は誰も知らない2人だけの秘密の関係。


と、言ってもメル友に等しいけど(苦笑)



でもまたもゾクゾクする感覚。



(あ…!)



私はある事に気づいた。



夫と西田。



2人もこんな感じだったのだろうか…



誰も知らない秘密の関係。



2人にしかわからない視線を交わす瞬間は体中がゾクゾクし気持ちが高揚してしまう。



イケナイ遊びのような?



それが2人を燃え上がらせたのだろうか…



そんな事を考えてたら空気を無視した甲高い声が聞こえた。



「だだいまでーす!あっちい~外はマジ死んじゃいますよー!殺人的暑さ…」



「綾香、静かにな」


専務に言われてる。


「あ!すいませーん」


と、舌を出し自席についた。



1時間ほどして専務と金井さんが席を立つ。


「よろしく頼むよ」


「お任せ下さい」



専務に電話が入り金井さんは電話の邪魔をしないように専務に会釈し、私達にもいつもの明るい笑顔で、


「どうもお邪魔しました!
お仕事頑張って下さい」


と言い玄関に向かう。



とその時、綾香が金井さんの背中のシャツを軽く引っ張った。



「ズボンから出てますよ~
入れてあげましょうか?」


綾香がふざけたように笑う。


「とんでもないとんでもない(汗)

教えて頂いてありがとうございます

いやーお恥ずかしい

参ったな、あはは」


と苦笑してる金井さん。


奈緒美に

「金井さんどこかで脱いだんじゃないのォ」と、からかわれている。



私は…



なんだか面白くなかった。



綾香は初対面なのに、彼と楽しそうに会話している。


シャツも引っ張ってた。


私も触れた事ないのに…と、子供みたいな事を思ってる自分に呆れた。



明らかにヤキモチ。




気づいた。



ううん。



本当は前から気づいてる。



認めようとしなかっただけ。



私…



金井さんが好き。



認めるのが怖かっただけ。



でもやっぱ…



つり橋を渡る勇気はない…

No.209

>> 208
訂正😓



この前の頁の最後の部分。


でもやっぱ


つり橋を渡る勇気はない


は、



かと言って…



つり橋を渡る勇気はない



の間違いです💦💦💦



すみませんm(__)m

No.210



読者の皆様へ



いつも読んで頂いてありがとうございますm(__)m



更新が遅かったりバラつきがあって本当に申し訳なく思ってます💦


実は年明け早々に転職をし入社したばかりでいっぱいいっぱいな毎日を過ごしております(汗)


めちゃめちゃ言い訳しておりますが😱💦


更新や感想スレのお返事が遅くなって心苦しいのですがご理解頂けるとありがたいです😓


✏できる時はこの時とばかりに一気に書き留めたりしてるのですが最近は全然できずにいます(泣)


応援して頂いてる皆様のお陰で頑張れてるのに本当に申し訳ございませんm(__)m


必ず最後まで書き切りますので、どうぞこれからも宜しくお願い致します🍀



きら✨

No.211


ーーー


びっくりしたでしょ?

突然行って涼子ちゃんを驚かそうと思って事前にメールしなかったんだ(笑)

大の男がシャツ出してカッコ悪かったけど😫

でも涼子ちゃんの顔が見れたから今日これからも仕事頑張れるよ⤴


涼子ちゃんも頑張って👍


ーーーEND



「そうだ!」


出てからすぐ届いた金井さんのメールを秘かに読んでた時だったから奈緒美の声にドキッとした。



「今夜飲みに行こう!」


「わーい!賛成!」


間髪を入れず返事をする綾香。


「涼子もね」


「また急だね(汗
夕飯の支度してからになっちゃうし、恵美にも早く帰宅してもらわないと厳しいけど…」


「相変わらず過保護チックだね~あんたは(笑)
OK!んじゃいつもんとこに行くから後からおいで。
金井さんも呼んじゃお!
もち彼もだけどね~メールしとこっと!」


「え?」


「こんな暑い日の生ビール美味しいですよね!」


「そうよ!その為にとっとと仕事片付けて定時であがろ!」


「はーい!頑張ります!」



私の小さな驚きは見事にスルーされたが、今夜金井さんに会えるかもしれないと思うと素直に嬉しいと思う私がいた。



金井さんの参加の有無が知りたくて、今夜の事をこっそりメールし返事を待った。



すぐ返事が来た。



ーーー


涼子ちゃんが行くなら俺は勿論喜んで参加するよ😉


楽しみにしてます👍


ーーーEND



恵美にメールし、奈緒美達同様仕事に気合いを入れ出した私だったのである(笑)

No.212


恵美の帰りを待ってから家を出て、みんなが集まる居酒屋に着いた時は20時を回っていた。


「りょううこしゃん!
まずは一気れすよー」


完全に酔っ払いの綾香。


6人座れるテーブル席に、坂木さんと奈緒美、金井さんと綾香が隣り同士に座っていた。


お互いカップルのような座り位置に一瞬拗ねそうになったが、いくらなんでも大人気なさすぎる。



ので、


「遅くなってごめんねー」


と、私は笑顔で奈緒美の隣に座った。



みんなで乾杯し生ビールで喉を潤す。



「涼子さんどんどん飲んじゃって!今夜は俺の奢り~」


坂木さんが笑顔で言った。


「そんなそんな~割勘の方が気が楽だから気持ちだけで…」


と言ってる途中奈緒美が、
「気にしなくていーの!
今夜はあそこではなく男を立ててあげてよ(笑)
さぁさぁ飲んで飲んで~
生追加~!!」


「ははは!奈緒美の言う通りあっちは奈緒美に立ててもらうから、ここは遠慮なくやってよ」



坂木さん…


奈緒美に感化されましたね
(笑)


気取ってなくお互い自分の言葉で話してる仲のいい2人を見てると微笑ましいのと同時にちょっとだけ妬けてしまった。


「では遠慮なく~!」



ろれつが回ってない綾香は、金井さんに体を向け絡んでるように見えた。


「かなしゃ~ん。営業の人ってお口じょうじゅですよね~そのお口で綾香を口説いてもいいよ~きゃはは」



(綾香あんた酔いすぎですから…金井さんも困った顔してるじゃないの)


なぜか口に出すのは躊躇われて、心の中で突っ込みを入れる。



「そんな事ないんだよ
一生懸命喋るのが仕事だからこう見えて結構必死なんだよ~。な、坂木!」



坂木さんにふった金井さんは、昼間は綾香に丁寧に話してたのに今はタメ口になっていた。


綾香の方が全然年下だし、飲んでる席で打ち解けたらそれが自然かもしれないけど…


席の事といい話し方と言い私は1人でモヤモヤしていた。



ふーんだ!
私も飲んでやる!!



酔っ払い綾香を除いては、みんなでお酒を楽しみ馬鹿話で笑い和やかな雰囲気で時間が流れた。



たまに何か言いたげな金井さんの視線にちょっとドキドキしながら程よく酔いが回った頃にある事が起きた。




泥酔に近い綾香が金井さんに抱きつきキスをしたのだ。



それはほんの一瞬、ほんの数秒だったけど、綾香は唇に吸い付いつき、その音が聞こえてきそうなほど激しいキス。



金井さんはすぐ綾香の両肩を持ち引き離した。



「あんた
何やってんのよ!!」

No.213


言ったのは奈緒美。


「綾香あんた彼氏いるのにそんな事していいわけ?
判断がつかなくなるまで飲むんじゃないよ!」



「なに怒ってるんれすかー」


「今日はもう帰んな!
相手いるのにそういう事する奴あたし大嫌いだから」



ズキ…



奈緒美の言葉が胸に刺さる。



「綾香ちゃんちょっと飲み過ぎだね~俺は男だから得しちゃったのかな?あはは…」


大人の金井さん。


場の雰囲気を壊さないのと飲み過ぎた綾香を思っての発言だろう。



私は呼吸が少し早くなり、胸の奥がグツグツする。



「ったく…男いてそんな事する奴許せない」



奈緒美の言葉が痛く、いたたまれなくなった私はその場から逃げるようにトイレに立った。



鏡に映る私はアルコールで少し赤みがかった顔をしている。



自分でも予期しない嫉妬の感情に戸惑い、そして困惑していた。


金井さんを想う気持ちは確実なものになっている。


だけど私は夫とは違う。


金井さんとは何もない。


何も…?


何もないとはどういう事?


体の関係?


それがなければ何もないという事?



心の裏切りは体の裏切りより重罪ではないのか…



綺麗事ばかり並べても私の気持ちは既に夫を裏切っている。



私も夫と同じなのだ…



深い溜め息をつきトイレから出たら金井さんが立っていた。

No.214



「あ…」



私はどういう顔をしていいのかわからなかった。



「大丈夫?」



私に問う金井さんの言葉をどう受け止めたらいいんだろう…



酔いがまわってないかの大丈夫?



それとも…



さっきの…?



わからないのに笑顔を作り口が勝手に動いてしまう。



「大丈夫だよ」



だけど…



「彼女何か嫌な事でもあったのかな?」



頑張る笑顔が歪んでく。



「それとも若い子は気にしないのかな(汗
俺が歳な…

り、涼子ちゃん?!」



私は金井さんの胸にもたれるように額をつけた。



「涼子ちゃん…?」



金井さんの鼓動が伝わる。



「酔ったのかな…?」




ねぇ…金井さん。



私に伝わる鼓動の速さは
お酒だけのせい?



顔を上げ金井さんを見つめる。



「涼子…ちゃん?」




愛してくれますか?




そして…




愛していいですか…





「私…



金井さんが



…好き」




周りの喧騒が消え
ここだけ時間が止まった。

No.215



「怜奈ー!早くご飯食べないと遅刻しちゃうよ~」



「わかってるよー!」



部活の朝練がないとのんびりし過ぎる傾向にある怜奈が慌てて支度をしている。


「あ!今日塾じゃん
せっかく部活ないのになぁ」


「自分で行きたいって言ったんだからね」


「わかってるよーだ
今日も○○先生だったらいいな」


自宅から5分程の所にあるマンツーマン方式の塾に通う怜奈のお気に入りの先生は大学生のお姉さん。


異性よりも同性の方がいいと思うところはまだまだ子供なのかな(笑)



「行ってきまーす!」



バタバタしながら怜奈が出かけて、私はコーヒーを煎れホッと一息ついてから届いてたメールを開く。



―――


おはよう✨


よく眠れた?


今日は○○県まで行くから、ついでに紅葉でも見てこようかな(笑)


今日はちょっと寒いから、出かける時はちゃんと着こんで風邪ひかないように✋


朝からなんだけど…



涼子愛してる


―――END



―――


おはよ🎵


紅葉かぁ…いいなぁ


って、お仕事だったね😅


気をつけて行ってね❗


あっちゃんに会いたいです


私も大好き💓


―――END




あの居酒屋の時から1ヶ月半。



涼子ちゃんから涼子に。



金井さんからあっちゃんに。



お互い想う気持ちを素直に口にする関係になっていた。



自分が生きてきた中で、生まれて初めて夫となる人を私は裏切っていた。




それは心の裏切り…




罪悪感は全くなかった。


No.216



だけど…



何かが私にストップをかける。



これ以上はだめ。


進んだら後戻りできない。


堕ちていく…




心の奥底からそう言ってるのはそれもまた自分だった。



つり橋を渡る勇気はなく、ずっと入り口で躊躇している。



それは…



まだ私の心から完全に和也が出て行ってくれてなかったからだろうか。



ずるい自分。



それはきっと彼も気づいてる。



無理に誘ってくる事もしない。



何がしたいのかどうしたいのか自分でもわからない。



未だ逃げ道と思っているのか…



だけど…



彼がいないのはもう考えられない。



なんなの私!!



そんな自分に苛つきを覚えてる時に、ある事が起こった。



それは…



私が一番恐れていた事。

No.217



―――


自分の人生でこんな嬉しい事は他にはなかった


和也さんが何と言おうと
由美は産みます


授かった命を殺すなんてできない


お腹の赤ちゃんはどんな事があっても絶対に由美が守る


ずっとずっと望んでた
和也さんと由美の絆


こればかりは涼子にも邪魔はさせない


大切にしたいから…


―――END





ついに…



ついに…



いつかはこんな日が来るのではと



そんな日が来たら西田は引くはずがないと



絶対に産むと言い通すだろうと




思ってた事が現実になった。




2人の付き合いを黙認してたはずなのに、ケータイを持つ手が震え呼吸が乱れる。




どうしたらいいの…?



どうなるの…?



おとーはどうしようと思ってるの?




お風呂に入ってる夫があがってくるのを待つ。




聞かなくちゃ



言わなくちゃ



さすがにこれは黙認できない。




2人が付き合いだしてちょうど1年経った頃。




西田は妊娠した。

No.218



「西田が妊娠した」



溜め息混じりの声で夫の方から言ってきたので驚いた。



「どうするつもり?」



私は動揺を見せず冷静に言う。



「可哀想だけど…




可哀想だけど諦めてもらう」



「お腹の子を?」



「ああ…


産まれても困るだけだ」





なんなのこいつ…


自分でそんな事しておきながら困るだって?



先の事は考えず
その場逃ればかりする。



理性を持たない一時の快楽が招いた結果であっても、何の罪もない命を簡単に殺そうとする夫の発言に軽蔑した。




だけど…



矛盾する自分もいる。



夫の子が外にできるなんて考えられない。



産まれたらどうなるのか…



産んでほしくないと思う自分もいるくせに…




頭の中がぐちゃぐちゃで、何か言おうと思っても声にならない。



本当にどうしたらいいのかわからなかった。

No.219



「子供は諦めてもらう


これで本当に西田とは終わりにする」



夫の言葉ひとつひとつが、無責任で自分を守る事ばかりに聞こえ、そしてずるい男に見えて仕方がなかった。



「私、彼女と話すよ」



「お前らが話しても揉めるだけだから、俺が言うからいいよ」



「もうそういう問題じゃないでしょ!


あんたはいつもそうじゃない


俺が言う、俺がやるって、何一つ解決しなかった結果がこうなんだよ?


まだ自分の言う事きくとでも思ってるの!


いつまでも女を馬鹿にしてんじゃないよ!!」




夫は何も言い返さなかった。



「とにかく私が西田と話すから


こっちに来ないで」



そう言って私は寝室に入った。



煙草に火をつけ気持ちを落ち着かせてから西田に電話をかけた。

No.220



「…はい」


怪訝な声色の西田。


「なんで私が電話かけてるかわかるよね?」


「もう聞きましたか」


「西田さん

子供を武器と考えて産むつもりなら、そんな親のエゴで産まれてくる子は可哀想だよ」


「そんな事思ってない

私は一生誰とも結婚するつもりはありません

だけど子供はずっと欲しかった

それが誰の子でもいいと言う訳にもいかない

愛する人の子供が産めたら私はその子を生き甲斐にして頑張れるんです

奥さんには申し訳ないけど」


「1人で子供を育てていくのは本当に大変なんだよ?

そんな甘いものじゃない

よく考えた方がいいと思います」


「認知してほしいとか養育費ほしいとか、そんな事は言わないので安心して下さい。

私の子なんです

私の子供の事を奥さんにとやかく言われたくないのが正直な気持ちかな

そりゃ父親はいた方がいいけど和也さんはどうせ離婚はしないでしょうから

なので私1人で育てていくから心配しないで

和也さんが子供に会いたいと言えば私が拒否する理由はありません

父親なのですから」


「不倫の末にできた子供なのに私の子だって?

和也もあんたも人の痛みは感じず自分の事ばかり

だったら堂々と父親の事を名乗れる人の子供を産めばいいじゃない!

あんたがやってる事は間違いなく後ろ指を指される行為なんだから」


「もういいですよ

何とでも思って

私は和也さんの子を産みます

そこは奥さんにも絶対に邪魔はさせない

いくら言っても無駄ですからもう諦めて下さい

離婚するしないは和也さんに任せるしかないので

私は待つだけです


では」



「ちょっ…」




一方的に電話は終了した。

No.221



私は彼女に何を言おうとしていたのだろう…



夫と同じく諦めてもらうつもりでいたのか…



ズバリ私がそう言ったところで聞き入れるような相手ではないから、ほのめかす事が言えたんだけど…




彼女はこの時36歳。



焦りもあったように思う。



年齢的にもタイムリミットが近づいてる彼女が我が子を望む気持ちは、悔しいけれど理解ができてしまう。





だけど…



その相手がなぜうちの夫なの…




そんな事が許されるのか。



許していいのか。



一人で育てるとか迷惑かけないとか、そんなレベルの問題ではない。



一人の人間がこの世に生をうけるのだ。



その重みと責任。



本当に理解できてるのだろうか…



『私は和也さんの子を産みます』



西田の言葉に一点の迷いも感じなかった。



私はどうすべきか。



子供達の事を考えたら
簡単に離婚はできない。



かと言って、こんな状況を耐えていけるはずもない。



何をどうしたらいいのか答えが見つからず苦悩が続き時間だけがイタズラに過ぎていった。

No.222



西田のメールは悲痛だった。



―――


なんでそんなひどい事が言えるの!


赤ちゃんを殺すなんて由美にはできない


もう放っておいて


和也さんが怖い


赤ちゃんを殺そうとする和也さんが怖くてたまらない


由美の事は放っておいて!


―――


無理!


無理無理無理無理!!


絶対産む


由美の赤ちゃんなんだから


由美を選んできてくれたお腹の子は絶対由美が守る


和也さんにも涼子にも邪魔なんかさせない


和也さんの許可なんかいらない


由美が産んで育てるんだから


―――


お願い…


わかって…


絶対和也さんには迷惑かけないから


離婚だって望んでない


無理なのわかってるから


由美の生き甲斐を否定する言葉はもうこれ以上言わないで…


由美は大好きな和也さんとの絆である大事な大事な赤ちゃんを産んで育てる事で強く生きていけるの


もうひとりぼっちじゃないの


迷惑はかけない


わがままも言わない


だけどお腹の子を否定する事だけは言わないで…


聞こえちゃうよ


かわいそうだよ


由美は望まれない子だなんて思ってない!


由美がいっぱい愛して育てる


だからお願いします


これ以上否定的な事は言わないで下さい…


―――END




夫は毎日溜め息をつく。



そんな時に放った夫の言葉で私は完全に冷めた。



「放っておいてと言ってるからそうするよ


今まで本当に悪かった


俺達は頑張って家庭を修復させような」




こんな男…



もういらない。

No.223



離婚について何度も話し合った結果、怜奈の事を考えて学校を卒業し独立するまで待とうという事になった。


お互い親としてだけの関係で家庭を維持していく。



それなら私も納得できると離婚の先延ばしに同意。



夫はもう西田とは会わないと言ってたが、もうそんな事どうでもいい。



口だけの人間。



信じると馬鹿をみる。



幾度と繰り返された嘘や裏切りから解放される事が私にとって一番重要で必要だったから。




親としての関係でしかない。



そこにはもう愛情がない。




仮面夫婦の誕生。




正直な気持ち、西田のお腹の子はどうなるのか気にはなっていたけど、とにかく私はそんな狂った状況から逃げたかった。

No.224



「俺が涼子の人生変えようとしてるのかな…」



「あっちゃん


それは違うよ」



私達は小料理屋の座敷に座って話していた。



「今回は私自身でもう無理だと思ったから」


「子供まで…だもんな」


「もっと早く気づくべきだったのかもしれないけど…


勇気がなかった



だけど…」



うつ向き加減の顔をあげ、彼の目を見て言った。



「あっちゃんの存在がなければ、私はまだその狂った中に身を置いてたはず


どんなに辛くても理不尽でも夫を取り返そうと必死な形相で…


1人が嫌で、奪われるのが嫌で、そこにしがみつくしかできなかった


そんな惨めな自分はもう嫌だし、あんな夫いらない…


そう思えようになったのもあっちゃんの存在があったからなんだよね



私もずるいんだ…」



「涼子」


「うん…」



「慣れ親しんだ既存の物を壊すのは勇気がいる


それを壊したのは涼子ではなく旦那さん


多少傷みがあったとしても色んな思いを込めて夫婦で修復していく物だと俺は思う


彼は壊した事にすら気づいてなかったんだ


涼子は崩れたその瓦礫を一枚一枚拾って必死にくっつけようとしてた


しかし一度壊れた壁はもろくて崩れやすい


いつ崩壊するかわからない


そこから逃げるのは当たり前の事だろ?


自分を守る事は悪い事ではないんだよ」



「ありがとう


そう言ってくれて…」



「涼子は頑張ってきた


俺との距離もしっかりとって家庭を一番に考えてたね


だけど報われない頑張りはもうしなくていいと思う


俺は涼子が好きだけど自分の感情や欲目で言ってる訳ではないよ


同じ男から見ても旦那さんは涼子に甘えすぎて幼稚に見えて仕方がない


涼子もいけないんだよ?


風俗は許して浮気は許さないなんて道理があるはずないんだから


あ…ごめん


よく知りもしないで余計な事まで言っちゃったね」



「ううん…


あっちゃんの言う通りだもん


本当にもう疲れちゃった」




しばらく2人共無言になり私はすっかり冷めたお猪口の酒を指先で揺らしてた。

No.225



「飲もう!


嫌な事は忘れて今夜はパァーッといきませんか?!」



ちょっと落ち込み気味の私を元気づけてくれるかのような彼の笑顔。



「うん…



うん。飲もう!」




色んな話をする中で、何も心配がなく癒される空間。



醜く歪み執着してた自分自身への呪縛が解け、素直に笑い素直に喜べる。



なんて心地好いんだろう…



暖かい気持ちになれて
安らげる彼と過ごす時間。



彼の笑顔は私に元気をくれる。



彼の声は私に安らぎを与えてくれる。



彼の瞳は私を捕らえて離さない。





好き…



心が叫ぶ。




私は素直な気持ちを口にした。



「あっちゃん


私ね…


あっちゃんの事、自分が思ってた以上に好きみたい」



「なんだか微妙な表現だ(笑)


無理しなくていいよ


俺は自分の気持ちを押し付けたりしないし、涼子は自分が思うようにしていいんだから


まぁでも好きと言われたら素直に嬉しいけど(笑)」



「こんな中途半端な私に嫌な顔ひとつせず、いつも付き合ってくれた」



「俺って意外にいい奴でしょ(笑)」



「夫の事で泣いてるのに慰めてくれた」



「俺って健気~」



「いつもいつも甘えてばかりで、あっちゃんにもらってばかりだった」



「涼子…


それは俺が涼子を好きだからだよ


そりゃ俺だって独占したいって気持ちになる事だって正直あったよ


だけどそんな事言ったら困るのは涼子じゃん


困る事はしたくなかった


ん~~~


かっこつけすぎだな


本音は嫌われたくなかったから(汗」



「あっちゃん…」



「俺の前では無理しなくていいし、泣きたければ泣けばいいの


辛い時は辛いって言えばいい


勿論、笑顔の涼子が一番だけどね」



「あっちゃん…



私、お願いがある」



「うん?


俺にできる事なら喜んで
(笑」




「今夜は…




ずっと一緒いたい」

No.226



殺風景。


それが第一印象だった。


ベッドにテレビに冷蔵庫と小さなテーブル。


ワンルームマンションの一室。



私は彼の部屋にいた。



「暖房が効くまでちょっと時間かかって寒いけど適当に座って」


「う、うん」


ちょっと緊張する。


「涼子なんか固まってない?

とって食う訳じゃなし(笑)
もっとリラックスしてよ


コーヒー入れるからちょい待ってて」


「ありがとう」


テーブルの前に座り、ついキョロキョロしてしまう。


「あんまり見回わさないの(笑)」


「綺麗にしてるね」


「疲れて帰宅してガッカリするの嫌だからね

男の独り暮らしなんて侘しいもんだから、せめて快適な生活が送りたいじゃん」



熱めのコーヒーを2人で飲みながら、また色んな話をした。


彼が離婚に至った理由も初めて聞いた。


そこは彼のプライバシーなので書けないのは残念ですが(苦笑)


緊張してたのが嘘かのように話題が尽きる事はなく、時間が経つのを忘れた。



~♪♪♪


受信メールを知らせる私のケータイ。


顔を見合わせる。


時計を見たら0時を回ってた。


「夫だと思う」


私はメールを開いた。



―――


誰もいねーしどこに行ったんだよ


つか、飯は?


―――END



今日は金曜日。


恵美は友達と飲み会で泊まり。


怜奈は従姉と一緒に私の実家にお泊まりで行ってる。


夕飯の支度もせず、夫には何も言わず出てきてた。


何もなかったかのような当たり前のメールにイラッとする。


返信はせずマナーにしてから閉じた。


「大丈夫?」


「ん?
ぜ~んぜん大丈夫だよ」


心配そうに見つめる彼に笑顔で答えた。



コーヒーカップを包んでる両手に彼の手が重なった。



「俺の前では無理しなくていい

涼子らしくいたらいいんだ」


「うん…ありがとう」


彼の手の温もりが優しく伝わり、自然に唇が重なった。



強く抱きしめられる。



あぁ…



涙が出そう…



ずっと求めてた。



私だけを見てくれる愛情いっぱいの抱擁。



ずっと哀しかった。


ずっと寂しかった。


ずっと…


抱きしめられたかった。



夫に求め何度も歩み寄ろうとした…


愛した分愛されたい。


簡単なようで難しかった。


一方通行の愛情は虚しくて自分を卑屈にさせた。


見返りを求めるのはいけない事なのだろうか…



だけど…



夫に対してそんな気持ちはもう消えていた。



私は自分の人生で初めて、本当の意味で人を裏切った。



心の裏切りと重ね
彼とひとつになった夜。



やはり…



罪悪感はなかった。

No.227



「怜奈~映画でも観に行こっか」


「今日は穂香と遊ぶ約束してるから無理~」


「えーこの前もじゃん

たまにはお母さんと遊ぼうよ」


「部活が休みの日曜日しか友達と遊べないんだもーん」


「まぁ…そうだよね」


「たまにはおとーと2人で行ってくれば?デートみたいじゃん(笑」


「おとーは映画行っても寝るからもったいないし」



日曜日の昼前。



いつもまとわりついてた怜奈が段々と友達を優先するようになっている。


成長過程で当たり前の事なんだろうけど、ちょっと寂しい母。


そういえば恵美に彼氏ができて、そっちばかり行くようになった時も同じ寂しさがあったっけ…



夫はまだ寝ている。



西田とはどうなってるかはわからない。


あの日から夫のケータイを見なくなった。


だけど週に1度のペースで外泊をしてるところを見たら、続いているのだろう。


産まれてくる子供はどうするつもりでいるのか…


気がかりなのはそこだけであとはもうどうでも良かった。



何も言われなくなった夫自身が一番楽に感じてるのかもしれない。



子供達の前でいつもの夫婦を演じるのも慣れた。




仮面夫婦は確立していた。

No.228



ーーー


あっちゃんは何してるの?


私は軽く飲んでベッドに入ったとこ✋


もうすぐ桜が咲くんだね


あれから1年


去年の私は壊れてた…


1年後こうしてるなんて
夢にも思わなかったけど😅


なかなかゆっくり会えなくてごめんね😢


いつも心の中にあっちゃんがいます


本当に会えて良かった…


こんな幸せな気持ちにさせてくれてありがとう💓


あっちゃんが好き…


いい夢見てね


おやすみなさい✨


ーーーEND



結ばれた夜から数ヶ月が経っていた。



会う時間が少ない中でも、私達は愛を深めていた。



土曜日、彼の仕事の都合がつく日中の数時間か、今までもたまに飲みに出かけてたから、それを口実に会う時間を作ったりした。


それもまだ数回の事で、少ない時間でも彼と同じ空間にいると心が満たされた。



わかった事は


彼は意外に頑固だった(笑)



彼がよく言う。



『俺は、できない事は最初から言わない』



はっきりした性格の人。



『中途半端な事も言わない


駄目なものは駄目
無理な事は無理


浮気はしない


もし俺がそんな事したら、それは涼子に愛情がなくなったからできるんだ


やるなら隠す気なしで堂々とやる


だからバレて取り繕う事も絶対にしない


涼子がよっぽど豹変しない限り、俺が涼子に冷める事はないから(笑)


できない事は言わない主義だから、俺が自分で決めた事は自分でしっかり守る


浮気はしないと自分が口にした以上、俺は絶対に裏切る事はしない


それにもう…


そんな思いはさせたくないよ』



仕事柄か、いつもニコニコ笑顔の彼しか知らなかった私。



本当の彼は自分に厳しく、はっきり物を言う人。



ちょっとづつ素顔の彼を知っていくのは、プレゼントの箱を開ける時のワクワクした気持ちに似ていた。

No.229



~♪♪♪



(あっちゃんだ!)



メールを開いて驚く。



西田からだった。



何の用があって私にメールしてくるのか…



その内容に閉口した。



ーーー


今日和也さんが初めて言ってくれました


『元気な子を産んでくれ

俺が面倒みるから』


私…すごく嬉しくて…


5月いっぱいで退職します


経済的にも厳しくなるので和也さんの言葉に甘えてしまう事をお許し下さい


黙っていても金銭が絡むと奥さん抜きでは無理な話だと思い、こうしてメールしてしまいすみません


和也さんに奥さんには言わないように言われたのですが、それはできないと思ったので…


今まで勝手ばかりして奥さんを傷つけて苦しめた事を心からお詫びします


最後は子供まで作ってしまって本当にごめんなさい、ごめんなさい


和也さんはパパではあるけれどお腹の子は私の子なんです


私が愛情持って育てていく


和也さんにはほんの少し頼ってしまいますが、そこだけはどうかご了承下さい


離婚はしなくて構いません


産まれたら月に一度でいいので、パパを貸して下さいませんか?


本当に勝手ですよね💦


今舞い上がってしまって、うまくまとまらないですが奥さんに一言お詫びとお礼が言いたくてメールしました


本当に今まですみませんでした


これからも長い付き合いにはなると思いますが宜しくお願いします


ーーーEND



読み終わって思ったのが…



「は?」



だった。

No.230



俺が面倒みる?


離婚はしなくて構わない?


長い付き合いになる?



この2人…


本当に冗談抜きで馬鹿なんじゃないだろうか…


面倒みるってどうやって?


離婚しなくて構わないってなんで私があの女に上から言われてるの?


長い付き合いになるって
馬鹿にするのも程がある。


もう本当に勘弁してよ。


2人で勝手にやってよ。


狂った2人に私を巻き込まないでよ。


こんな状況やっぱり無理なんだよ。


いくら子供の為に我慢すると言っても限界がある。


そんな事でいつまでも言い争うのはもう御免だ。



西田のところに行けばいい。


この日を境に、私は具体的に離婚話を夫と毎日のようにするようになる。



夫はこんな状況下でも嘘ばかりだった。



「勝手にあいつが言ってるんだろ

どうやって面倒見るって言うんだよ」


「じゃあ彼女の言ってる事は全部嘘で自分には身に覚えがないと言う事なのね」


「……そうだよ」


「ねぇ教えてくれない?

なんでそんな頑なに離婚しないって言うの?

別れても子供達に会いたかったらいつでも会えばいい

こんな壊れた夫婦関係を維持していくより、彼女といた方があんたもよっぽど幸せになれるよ」


「あいつとは無理だ

一緒になりたいとはどうしても思えない」


「それが離婚しない理由?

西田はだめだけど一緒になりたい人が現れたら離婚を考える

そういう事?」


「そんな訳ないだろ」


「自分がやってる、事の重大さわかってる?

あんたの子が他で産まれるんだよ?

もう嘘で逃げられない問題なんだよ?

いつまでもそんなだらしない態度してんじゃないよ!」



煮え切らない夫と話せば話すほど苛々は募り、話は何一つ進展しないまま5月に入って西田は退職した。

No.231



世間はゴールデンウィークの真っ只中で、どこもかしこも人で溢れている。



そんな人混みから離れ海沿いにある小さなペンションの一室で絡み合う男女。




「…ん…ぁあ」



「愛してるよ…」



「私も…ぁ…ぁ…ん」



身体中の細胞が歓喜して躍り上がるように満ちていく女の私。



慈しみながら優しく包み込むように、私の全身に舌を這わせる彼の愛撫に素直に反応を示し潤う。



愛されてる実感を身体中で感じ、彼は私の中にゆっくり入ってきた。



お願い…


もっと愛して


もっと私を欲して


もっと強く抱きしめて



突き上げる彼の身体にしがみつき、溢れる蜜で私は溶けてゆく…



涙が出るほど愛しくて…


涙が出るほど幸せで…



何度も何度もキスをした。




―――――――――




「あっちゃん


愛してる」



「俺も愛してるよ


もう離したくないな…」



「私も…離れたくない」



窓を少し開け、壁にもたれて座る彼の足の間にちょこんと座る。



私のお腹に回す彼の手に触れながら2人で波の音を聞いていた。



静かに流れゆく時の中は、愛に満ち溢れていて背中に彼の温もりを感じ幸福に包まれながら、私はいつのまにか眠りに落ちた。

No.232



目が覚めて時計を見たら深夜の3時。



彼の腕枕で眠っていたようだ。



眠っている彼の顔をしばらく見ていた。



幸せは手に入れると霞んでしまうのだろうか…



なんで私は裏切られてばかりなんだろう…



男にとって私は鬱陶しくなる女なんだろうか…



あっちゃんにもいつかそう思われる日がくるのだろうか…



離婚しても、もう結婚はするつもりはない。



子供もいるしお互いの距離を保ち、ずっといい関係でいたいと思っている。



形には拘らず尊重しあって信頼しあって、お互いを必要としていけるようなそんな関係でありたい。



もし一緒に暮らすとしたら怜奈が独立した後、2人で静かに暮らせばいい。



そんな先の事までぼんやり考えてたら彼の目が開いた。



「どうしたぁ?」



「ちょっと目が覚めただけだよ


明日は早く帰らなきゃだし寝なくちゃね」



「怜奈ちゃんの迎えあるんだよね

ここを8時に出れば間に合うよ

もうちょっと寝よう」



「うん!」



キスをして彼の胸に包まれるとすごく安心して気持ちが落ちつく。



すぐ彼の寝息が聞こえてきた。



(クスッ 本当に一瞬目を覚ましただけだったのね)



ここに着いてから海を歩いたくらいで、あとはずっと部屋の中で2人で過ごしてた。



決めて来た訳ではなくそういう流れになって来た。




怜奈が部活の合宿で1日泊まりでいない為、本当は夜飲みに行くつもりだった。



恵美は連休に入り彼と出かけるから泊まりになるとメールが入り、家にいなくても平気で気兼ねもしなくていい状況になりドライブしながらここにたどり着いたのだ。



夫は知らない。



どこかに出かけて行ったけど、聞きもしなければ私も何も言わずに出て来てる。



そんな事もうどうでもいいのだ。




寝てるのにあっちゃんの腕に力が入った。



幸せいっぱいの中で私も眠りにつく。




あっちゃん



大好きだよ



おやすみなさい


No.233



5月下旬
ある土曜日の朝。



自分のケータイの送信メールを見て私は愕然としていた。



深夜2時頃に、送った覚えのないメールが5通、夫に送信されている。



必死に夕べの記憶を辿る。



昨日は久しぶりに友達と飲んで23時頃帰宅。


お風呂から上がりベッドに入る頃、夫が帰宅した。


若干酔いが回ってる私は眠かったが、食事だけ出して無言で寝室に入った。


眠い目を擦りながら、おやすみメールを入れようと彼の受信メールを開き…



返信ボタン…?



そこから記憶がない。



夫にバレた…



メールを開きっぱなしで眠ってしまったのだ。



私はひどく動揺した。



夫は、彼からの受信メールは転送していない。



私が彼に送ったメールだけをいくつか抜粋して自分に送信している。



それは私と彼が深い関係である事がわかる内容のものばかりだった。




「あっちゃんどうしよう」



私は彼に電話をしていた。



「どうした?」



私は動揺が隠せずつっかえつっかえ吃りながら経緯を話した。



「俺、旦那さんから電話きたら言うよ」



「だめ!何も言わないで

お願い

電話には出ないで」



私は自分がなぜこんなに動揺しているのかわからなかった。



今思えば…



私の非が見つかると
夫に何も言えなくなる。



離婚もできなくなる。



あの異様な場所にまた戻らなければならない。



そう感じてたように思う。

No.234



怒りが我慢できない夫の性格上、メールを見た時点で激怒するはずなのに…



てめぇも同じ事してるくせに偉そうな事言ってんじゃねぇよ!



そう思ってるに違いないのに。



朝5時頃目が覚めた時
夫の姿はなかった。



仕事で早く出掛けたと思っていたけど、もしかしたら夕べのうちから居なかったのかもしれない。



ずっと言われっぱなしだった夫は今、何を思っているのだろう…



西田。


彼女が知ったらどう思うのか。



自分には何ひとつ非がないような顔をして正論を振りかざしてきた私。



最低。


そう思うだろうな…



私がこうなったのは夫のせいだと、どこかでずっと思っていた。



自分を正当化させないにしても、言い訳には十分すぎる材料だった。



やっぱずるい自分。



後ろめたい気持ちに蓋をして、現実逃避をしていただけだったのか…



私の裏切りを知った夫が、何も言ってこないのが逆に不気味で怖く、私の思考を混乱させていた。

No.235



コールするが出ない。



夫は仕事中だから、電話は一度だけにして連絡を待つ事にした。



動いてる方が気が紛れると思い、布団を干したり家事をしていたら少し落ちついてきた。



ふと脳裏によぎる。



逆に言えば、これで離婚が一気に進むかもしれない。



自分の事は棚に上げて私の裏切りは許さないだろう。




私は私で浮気相手に子供ができて、それでもいい加減な夫の態度に愛想が尽き、愛情もなくなっている。



好都合ではないか。



だけど…



怜奈の事を考えると胸が痛む。



何も知らない怜奈は父親を慕い、夫も溺愛している。



だから怜奈が卒業して独立するまで離婚を先延ばしにした。



それでもやはりこの状況に我慢の限界を感じた私は、離婚を強く望むようになっていた。



いろんな考えが交差したが最終的には別れるのが一番いいと私は思った。



責められたっていい。



私はもう逃げない。



きちんと離婚に向けて夫と話そう。





振り向いたら




もう




吊り橋はなかった。

No.236



「俺にお前を責める資格ないよ」



意外な言葉に私は戸惑っていた。



1日連絡がなく23時頃帰宅した夫。



リビングには行かず寝室に入り、夫は煙草に火をつけベッド脇に腰掛けた。




「あのさ…」



私が言いかけた時にそう言ってきたのだ。



「らしくないね

本当にそう思ってる?」



「ショックだった…」



「え?」



「ショックなのが正直な気持ちだ

まさかお前がそんな事するとは思ってもなかった」



なぜだろう…



夫の言葉に痛みを覚えた。



愛情はなくなってるのに、どう思われてもいいはずなのに、体を丸めて煙草を吸う夫の姿が小さく見えたからだろうか…



「言い訳はしない

あんたを裏切ったのは事実だからさ」



「そりゃ誰だって嫌になるよな…

俺のやった事は最低だ

こんな俺は愛想尽かされて当然だよ…」



頭を抱え声もどんどん小さくなり、まるでらしくない夫の態度。



今にも泣き出しそうな顔を見てると、なんだか可哀想になってしまった…



だめだめ!



馬鹿な私はもういないの!



一時の情に流されない為にも、私は気を強く持ち平然とした顔で言った。



「私達…


夫婦として完全に終わったね


もう一緒には暮らせない


ちゃんと別れよう」

No.237



夫は何も言わずじっと一点を見つめたまま動かずにいる



私はドレッサーの椅子に座り、長い沈黙が続いた。




「俺…」



夫が口を開いた。



「俺本当に別れるから


勿論西田と


だからお前も男と終わらせてくれ」



何言ってんの…?



まだそんな事言ってんの?



言葉にならない私に夫は続けた。



「俺への当て付けだろ?


優しくされて勘違いしてるだけだ


寂しさに付け入り遊んだ事がないお前は男にとっては簡単で騙されてるんだよ


全部お前の勘違いなんだ」




体が…



震えた。




「当て付けで浮気するならとっくの昔にやってる


それで楽になれるんだったらいくらでもやってるよ


私の気持ちなんか何一つわかろうとしなかったくせに


私がどんなに歩み寄ろうとしてもシカトしたくせに!


ねぇ?私が今までどんなに辛かったか惨めだったかわかる?


どれだけあんたを欲してたかわかる?


涙が枯れるほど泣いても、喉から血が出るほど叫んでも、あんたは私を無視してあの女を抱いていた


欲求不満
干からびる前に死ね
産まれてから涼子に言え
長い付き合いになる


どれだけ私が西田から屈辱を受けてきたかわかる?


自分の女房がそんな思いさせられてるのを知っても、西田と別れなかった


人の痛み知ろうともしないで何も知りもしないで勝手な事ばっか言わないでよ!


私の勘違い?


それでも私は彼が好き


本気で好き


笑いたければ笑えばいい


あんたの言う通り騙されてたとしても、こんな地獄にいるより百倍マシ…


西田が言ってたね


お腹の子はあんたにも私にも邪魔はさせないって


私も同じ事言う


彼との事はあんたになんか絶対邪魔させない!


私は彼の言葉を信じる




もう…



あんたなんか



いらない…」

No.238



エンジンをかける音が聞こえる。



夫は無言で出て行った。



興奮していたのか手のひらが汗でじっとりしている。



私は立ち上がり
大きく深呼吸をした。



これでいいんだ…



浮気相手は夫の子供を産むし、私も夫以外の人を愛してしまった。



私が彼と終わらせ我慢して家庭を維持させたとして、それが子供達にとっていい環境だとはどうしても思えなかった。



産まれた我が子を慈しみ、頻繁に会いに通う夫の姿を想像する。



何も知らない子供達にも今まで通り普通に接する父親の顔。



異母兄弟。



私達親子を無視した
西田の幸せそうな顔。




自分が壊れてゆく恐怖…





離婚しても子供達に会いたければ会えばいい。



大変でも子供と3人で暮らす方が精神衛生上どんなにいい事か…



どう頑張っても夫の言葉が一切信用できないこの状況はもう無理だった。



私を大きく前進させてくれた彼の存在は確かに大きい。



だが…



それを抜きにしたとしても私達夫婦は既に修復不可能なところ迄きていたのだ。




後悔はなかった。

No.239



日曜日。



朝になっても夫は帰宅しなかった。


西田と一緒にいるのだろう。


夫の外泊はもう当たり前になっていたから気にも止めなかった。



彼に電話をかけた。



「大丈夫?!」



心配する彼の第一声。



「心配かけちゃってごめんね

大丈夫だから」



「俺のところには電話もメールもなかったけど…」



「番号とか控えたと思って夫の性格からして、キレてあっちゃんに電話するかと思ってたんだ」



「昨日話したの?」



「うん…

私の予想に反して自分が悪かったって言ってた

でもその後喧嘩しちゃって出て行ったよ」



「喧嘩か…」



この時、彼に昨日の詳細を言わず喧嘩をしたと伝えた。



「心配かけてごめんね」



「俺はいいけど涼子ばかり嫌な思いさせるのはやだよ

俺が出て行ったらまずいのかな?」



「ごめん…

大丈夫だから」



「…そっか」



しばらく沈黙が続いてしまう。



「あっちゃん今日は何するの?

お掃除の後、昼酒かな?笑)」



私はなんだか重い空気を変えようと、いつも通りの会話にもっていった。



「涼子」



「ん?」



「俺は涼子のただの浮気相手だとは思ってない

そんな軽い気持ちで涼子と付き合ってないから

涼子に負担をかけたくないから今まで言わないようにしてたけど」



「あっちゃん…」



「俺は誰よりも涼子を愛してるし守ってやりたいとも思う

旦那さんにバレて身を潜めるような間男になるつもりもない

俺にその覚悟がある事だけはわかってほしい」




彼の声は真剣その物だった。

No.240



彼が続ける。



「俺自身、家庭ある女性を好きになるとは思いもしなかった


涼子が器用に遊ぶ女性だったらきっと好きにはなってない


辛い状況でも旦那さんを一途に思う気持ちにいつからか惹かれていた


だから涼子が好きだと言ってくれた時は躍り出したい程嬉しかった」



彼の言葉にじっと耳を傾ける。



「最初は寂しさからそうなったとしても、今は涼子が俺を想う気持ちに嘘はなく真剣だと信じてる


怜奈ちゃんに寂しさを感じさせないように、今までと同じく会う時間が少なくても、そんなのはいくらでも我慢できるし合わせる事もする


だけど旦那さんに振り回される涼子はもう見たくないし我慢できないんだ…」



「あっちゃん…」



「決して焦らせてる訳ではないけど…


俺の本気をわかってもらいたいたかった


だから…旦那さんの事では我慢できなくなってる自分がいて、ついこんな事言ってしまった


今までは負担になると思って言えなかったんだ


俺、涼子と会う前の自分にはもう戻れないな…」




なんだか自分が中途半端な人間に思えて彼に申し訳なかった。



「あっちゃん本当はね…


昨日…」



私はここで昨日の事を話した。



「そうだったんだ…


言ってくれたらいいのに」



「ハッキリしてから伝えたかったから…


今まで色んな事話しても決めても、いつも何かしらでなかった事になったりしてたからさ


だからきちんと形にしてから言いたかったし、そんなんであっちゃんを振り回したくなかった


…ごめんね」



「いや、俺こそごめん


自分の気持ち押し付けないなんて言ったくせにね


ちょっとだけ我慢できなくなってしまった」



「ううん。あっちゃんは本当に大人だよ…


私なんてすぐ感情的になってしまうから…


少し見習わなきゃ」



「俺には暴言吐かないでね?」



「暴言吐かせるような事しないでね?」



2人で笑い、この後少し話してから電話を終えた。





まさか…



あんな事が起きるなんて…



この時は想像すらしてなかった。


No.241



恵美は外食してくるとの事で怜奈と2人で夕飯を終えた後、テレビを観たり怜奈とふざけたりして過ごした。



怜奈が寝て私がお風呂から上がり22時を回った頃、玄関で鍵を開ける音がして夫が帰って来た。



なんだか夫は疲れた顔をしていた。



洗面所でドライヤーをかけ髪の毛を乾かしてからリビングに行った。



夫はケータイをいじってる。


メールをしてる風に見えた。



堂々とやるって事は腹を決めたのか…



そんな事を思ってたら、夫がケータイを差し出し言った。



「ほら、見ろよ

暗証番号○○○○だから」


「は?なんで?」



夫の意図が何なのか全くわからなかった。


「見ていいから」


「別に見たくないし何言ってんの?

意味わかんないんだけど」



「男とも別れなくていいし付き合ってろよ」



なんなの…



ヤケになってるのか…



「つか、離婚の話


ちゃんと進めたいから」



「明日紙貰ってこいよ

書いてやるからよ」



完全にヤケになってる。


そう感じた。



「そんな態度しないでさ

きちんと向き合うとこは向き合って話さないとだめじゃん」



「どうせ俺が何言っても信用できないんだろ?

俺がどう言ったって無駄なんだよな

その男が好きなんだろ?

だったらその男に面倒見てもらえよ」



駄目だ…



今は話にならない…



ぶつぶつ何やら言ってる夫を無視して私は寝室に入った。



あー!もう!!



なんなのあの態度は!



苛々してなかなか眠れなかったが、色々考えてるうちにいつの間にか眠っていた。

No.242



朝方4時頃目が覚めた。



夫の姿がなくリビングに行くと明かりはついたままだった。



トイレのドアの小窓から
電気の明かりが漏れている。



人影が見えたので夫がトイレに入ってると思った。




「?」



なんだか小窓から漏れる明かりが不自然な気がして、私はトイレのドアを開けた。





必死だった。






頭で考えるより手が先に出ていた。





本当にそれは刹那的で…




一瞬の事だったのに




スローに感じた。







夫が首を吊った。

No.243



私は泣きじゃくっていた。



夫の背中を叩きながら
叫ぶように言っていた。



「何してんのよ!


あんたがそんな事していいと思ってんの!


思ってん…のぉ…ウッ…ウウ


わぁあああああ」



夫は顔を真っ赤にして噎せかえり、えずいてはいたが命に別状はなかった。




今思い出しても体が震える光景。




ドアを開けたと同時に夫が上から落ちて来た。



天井の電球のコードにネクタイを巻き付けて首を吊った夫。



体重の重みで伸びた電球のコードを、私は咄嗟的に力任せに思いっきり引っ張った。



それは本当に一瞬の事だった。



よく瞬間的に手が伸びたと本当に本当にそう思う。



多分落ちてきたと同時ほどの早さ。



その一瞬の中でも、白目を剥いた夫の顔は今でも目に焼き付いて離れない。



火花を散らしショートした電球のコードは私の肩位まで伸びきり、夫は苦しさから無意識に掴んだのかドアの上に設置していた棚が落下してトイレの中は散乱した。




私が目を覚まさなかったら…



あと何分か遅ければ…




考えただけでも恐ろしかった。




ガタガタ震える体。




腰が抜けたように、
その場に座り込んだ。

No.244



「俺なんか…俺なん…か


生きてても無駄な人間だ…


お前に愛想尽かされ…


生きてたって…クッ


ウウ…ウウゥ…」





私がここまで夫を追いつめた…




さっきの光景が目に焼き付いて…



恐ろしくて…



恐ろしくて…



悲しかった。




私が…



私が夫をここまで追いつめてしまったんだ。



今までされてきた事の悔しさから、私はまるで仕返しでもするかのように言い放った夫を突き放す言葉。



裏切られるその辛さは自分が一番知ってたはずなのに…



自責の念にかられる。




私は他に言葉が見つからず泣いてる夫に自分も泣きながら言った。




「もうやめるから!


彼とはもう会わないから!


あんたはどんな事しててもいいから


お願いだから


こんな事しないでよ…


お願い…


しないでよぉ……」




「ごめん…ウッ


本当にごめん…ウウ…」




夫の背中に頭をつけて
2人でずっと泣いていた。

No.245



私は仕事を休んだ。



夫も休むつもりでいたが、社長から電話がありトラブルもあって行かなくてはならない。



玄関先で夫が言った。



「本当にごめんな…


もうあんな馬鹿な事はしない


俺本当に気持ち入れ替えるから


だから…


とりあえず行ってくるよ」




「気をつけてね

いってらっしゃい」




だから…の、あと




わかってるから…




子供達が起きる前にトイレを片付けた。



延びきったコードはどうする事もできず業者に頼むしかない。



「どうしたのこれ?」



当然不思議に思う恵美に聞かれて、電球が切れて取り替えようとして引っ張ってしまったと誤魔化した。




子供達が出掛けたあと、リビングのテーブルの椅子にもたれ掛かるように座った。



再び恐怖が襲ってきて体が震える。



夫を助けろと何かが私を導くように、あの時間に目が覚め、起き上がったのは不思議に思う。



いつもなら明け方に目が覚めても時計を見る程度で、またすぐ寝てしまうのに。



なぜかさっきはトイレだった訳でもないのに、起き上がったのか本当に不思議だった。




でも…



目が覚めなかったら…



目が覚めたとしても
起き上がらなかったら…



今頃…



激しく頭を振った。




~♪♪♪



「あっちゃん…」



―――


おはよう☀


ぐっすり眠れた?


昨日は旦那さん帰って来たのかな?


何でもそうだけど1人で考えたら駄目だよ✋


涼子はすぐ凹むし(笑)


今日は天気いいね


お互い頑張ろう❗


いつも涼子の事思ってるよ😌


―――END




涙が溢れ落ちる。




あっちゃん!



あっちゃん!



あっちゃんが好き!



誰よりも愛してる!





あっちゃんが…



好き…




でも




ごめん…





こんな私で





ごめんなさい…

No.246



泣き腫らして放心状態。



気づくとお昼になろうとしていた。



マナーにしたケータイがチカチカ点滅している。



開くとメールマークが表示されていた。



あっちゃんに返信はしていなかった。



きっと心配してる…



なんて返せばいいのか…



ブーブーブー…



急なバイブの音で心臓が止まる程驚いた。



着信を見てまた驚く。



あっちゃんだった。


私が会社を休んでるのは知らないはず。


私の仕事中に電話をかけてくる事も今まで一度もなかった。



ブーブーブー



心配の度合いが伺い知れた。



あっちゃん…




あっちゃんの声が聞きたい!



今すぐにでも会いたい!



そして…



抱きしめられたい…




こんなに彼が好きなのに



こんなに彼を欲してるのに




封印しなくちゃいけないの…?




彼の気持ちは…



私の気持ちは…



どこに持っていったらいいの…




これが罰なのか。



夫以外の人を愛し
弱い自分が招いた罪。




神様…



私はどんな罰でも受けます…



お願いします…



彼を傷つけないで…



私を憎ませて下さい…



最低な女だと心底憎ませたのち、一瞬で私の存在を彼の記憶から消し去って下さい…



私は自分の罰を受け入れます。



地獄の底で、彼を求め想い続ける苦しみこそが…




私の罰…

No.247



午後3時
ある公園の駐車場。



私は彼の車の助手席に座っていた。



沈黙が続く車内は
重い空気が漂っている。



「旦那さん…」



あっちゃんの声に体が小さく反応した。



「無事で良かったと思う


これが最悪の事態になってたら涼子は今以上に自分を責める


そっちの方が俺は辛い…」



罵倒された方がどんなに楽だろう。



彼の優しさが胸に突き刺さる。



「誰だってそんな場面に直面したら動揺するし、俺も涼子の立場だったら同じ事を言ったかもしれない」



「あんな事するなんて…


一瞬でも、白目を剥き、苦しむ夫のあの時の顔が目に焼き付いて離れない…


あんな…


なんであんな事…」



少しでも思い出すと体が震えた。



「だけど


旦那さんは


ズルいな…」



前を見つめ、いつも冷静な彼が語気を強めて言った。



「どうしてこうなる前に涼子の気持ちに気づいてやれなかったんだ!


どうしてそれでまた涼子が苦しまなくてはならないんだ!


どうして解放してやらないんだ!」



「…ごめんなさい…ウッウッ


本当にごめんなさい」



「涼子が悪いんだったらいくらでも責める事ができるのに…


今腹が立って仕方がない


いくら酷い男でも涼子の旦那さんだから言うのを控えてたけど、旦那さんがずるくて汚い人間にしか見えないよ


言い方悪いかもしれないが俺もそこまでいい人にはなれない」



「あっちゃん…


ごめん…ウッ


ごめんね」



「謝らないでくれないか


謝られると俺との事を否定されてる気になる


俺と涼子は浮気なんかではない…


お互い真剣だったんだ」



「…あっちゃん


あっちゃん…


あっちゃん!」



彼に抱きついた。

No.248



「あっちゃん怖い…


怖くて怖くてたまらないの


またあんな事されるのも怖い


狂った日常に戻るのも怖い


あっちゃんがいなくなるのが怖い…


どうしたらいいの?


私どうしたらいいのかわかんない…ウウ…」



彼は抱きしめながら
私の頭を撫でてくれた。



数分そうしたのち、迷いを感じさせない声でゆっくりと話し出した。



「現場を目撃してしまったのだから、また同じ事されたらと怖くなって当然だよ


でもその旦那の行動で自分を責めるのは違うよ


涼子の目を他に向けさせたのは、他の誰ではなく旦那自身なんだよ


涼子は旦那を一途に想って家庭を元に戻そうと必死に努力してただろ?


それを見ようともせず傷つけるだけ傷つけておいて、手元から離れそうになると究極の行動を起こした


涼子の幸せは何一つ考えてなく、そういう行動により涼子がどう思うか予測し縛り付ける。


全てが自己中心的


俺と終わらせようとしてるのも涼子の意志ではない


だから腹立たしいんだ


自分を責める必要は一切ないと俺は思う


だけど最終的には涼子自身が考えて決めるしかない


中途半端な事をしても涼子がきつくなるし、それを見てる俺も辛い


俺にとってどんな最悪な結果であっても、それが涼子の意志であるならば、俺はその現実をしっかり受け止め、そして潔く諦めよう」



「あっちゃん…」



「俺は今、無理やり涼子を人生の分岐点に立たせたのかもしれないね


このまま俺と終わるにしても涼子が幸せになるとはどうしても思えなく、だからと言って子供もいるし無責任な事も言えない


だから…


どっちに進むかは涼子が自分で決めるんだ


その代わり選んだ道を信じて進み、もう後ろは振り向かない事


振り向いてたら涼子が幸せになれないから


焦らなくてていい


ゆっくりでいい


だから絶対に後悔しない道を選んでもらいたい」




彼の手を握り私は泣いた。



彼の優しさ強さが身に染みて、どう言葉にしていいのかわからず彼の手を強く握り泣いていた。

No.249



「どんなに時間がかかってもいいからさ


ゆっくりよく考えて決めて欲しい


こんな状況になってしまったから、今までと同じではケジメがつかないのと中途半端な事もしたくないから俺からは連絡はしない


それは俺が真剣に考えてると取ってもらいたいな…」



「うん


あっちゃん…ありがとう」



「だからと言って辛い時は辛いと吐き出すんだよ?


苦しくてどうしようもなくなったり泣きたい時も一人で抱え込まないで連絡してきて欲しい


俺は涼子に毎日笑顔で過ごして欲しいと思ってる」




あっちゃんはやっぱり大人だ…



彼も辛いはずなのに、
私の気持ちを優先する彼。



私ももう甘えてたらいけないと思った。



自分できちんと考えなくてはいけないと思った。




楽園を信じ橋を渡った先は茨の道だった。



無傷では通る事など出来ない。



傷を追いながらも前に進まなくては、そこから抜け出せない。



抜け出した先にあるのは分かれ道。



どちらの道に進むのか、それを決めるのは彼の言う通り自分でしかないのだ。



後悔しない為にも流されず自分が選んだ道を信じ、振り返らずしっかり前を向いて歩いていきたい。

No.250



夫は21時頃帰宅。



「おとーおかえり~
今日は早いんだね!

お母さん!お父さん帰ってきたよ~」



洗濯物を室内に干してた私に大きな声で言ってる怜奈。



「今日は早く終わったんだよ。怜奈、日曜日どっか行くか」


「日曜は部活で練習試合あるんだもん

でも3時頃終わるよ!」


「お父さんが送り迎えするから終わったらイ○ンでもブラブラしようぜ~」


「やった!怜奈洋服欲しかったんだぁ」


何事もなかったように父娘は今まで通りの会話を交わしていた。



「先お風呂でしょ?」



私も何事もなかったような顔で聞く。



「うん。入ってきちゃうよ

怜奈お父さんのパンツとパジャマ取ってくれ~」


「やだぷー(笑」


「服買ってやんねーぞ」



いつもは私が当たり前のように出す着替えを怜奈に頼んでる夫。



違和感。



やっぱお互いで感じてる。



夫がお風呂に入ってる間にいつも通りご飯を温める。



「今年の旅行はどこ行こうかな~」


怜奈が言う。


「旅行、行きたい?」


「行きたいよ!美味しい物食べられるし楽しいし~」


「そっか。そうだよね」



怜奈に冗談っぽく聞いてみた。



「ねぇねぇお母さんとお姉ちゃんと怜奈の女3人で行くってどう?」


「ええ!おとーは?
かわいそうじゃん!」


「怜奈はおとーがいなかったかったらやなんだ~」


「嫌に決まってるじゃん

あ~さてはお母さん!

お父さんに何かムカついた事あるんでしょ!

また好きなアイス出せば機嫌直るって!」


「アイスはまだ時期が早いでしょ(苦笑」


「おとーは冬でも食べるじゃん!

お母さん達はいつも仲良しだから、たまに喧嘩もいいね~どっち強いのかなぁ」


「そりゃお母さんに決まってるでしょ(笑」


「わかる気がする~」




こんな状態でも、怜奈から見て両親は仲良く見えてるんだ…



見せてた…が正解か。



はぁ…


温めてるお味噌汁の鍋の前で怜奈に聞こえない溜め息をつく。




まずは話そう…




うん。




きちんと夫と話しをしなくては。

投稿順
新着順
主のみ
付箋

新しいレスの受付は終了しました

小説・エッセイ掲示板のスレ一覧

ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。

  • レス新
  • 人気
  • スレ新
  • レス少
新しくスレを作成する

サブ掲示板

注目の話題

カテゴリ一覧