闇のネット通販

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きる( lbwJnb )
12/04/15 23:38(更新日時)

どんなものでも

あなたの望んだ通りのものが届きます。

どんなものでも……

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No.1699335 11/11/04 23:04(スレ作成日時)

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No.51 11/11/18 23:04
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


こんなに気持ち良いものだったなんて……

こんなに淫らだったなんて……

溺れる自分にさえ酔う

リョウの言う通り
『女に生まれて良かった』のかもしれない

いや
知らないほうが幸せだったのかもしれない

感覚が麻痺し
判断がつかなくなってくる

本当に欲しいもの何なのか?

本当に大切なものは何なのか?


No.52 11/11/19 00:08
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


そして

届いた請求書に愕然とする

今回の金額は
20万

更にリョウと会うために揃えた服や靴の
カード請求もあった

ただ……
中途半端な蓄えがあったばかりに

今回も何とか切り抜けてしまう

『夜遊びに明け暮れることを思えば大丈夫
私なんて
まだまだ、かわいい方よ……』

何が
そこまで私を麻痺させたのだろう

騙すのも人の仕業
陥れるのも人の仕業
傷つけるのも
裏切るのも

なのに
人は人を
人の温もりを求める

人恋しい……



No.53 11/11/19 15:17
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


リョウから尽くされるほど
金額は上がる

サービスのすべてが商品だった

気分が上がるほど
気持ち良くなるほど
求めるほど
金額が上がる

こんな単位の支払いを続けていたら
すぐに底につく

そんなこと
当然わかっていた

何年も我慢して貯めてきたものを
湯水のように流してしまう

何故こんなことをしてしまうのだろう……

認めてもらえない
家族のために尽くすことが嫌になった

私の反逆
家族への復讐

私は……
才能や光るものが無く

今まで親からも特別ほめてもらえず育ってきた

どこの場でも地味で目立つことがなく

どちらかと言えば
馬鹿にされてきた

だから
例えお金で買ったものでも

大切にされ
尽くされ
そうされる心地良さから抜けたくなかった

張りつめていたものが
切れてしまったから

もう、どうでもいいと
投げやりになっていた

でも
止めたかった

欲望に溺れる自分を
止めたかった

揺れていた時に

リョウからプレゼントが届く



No.54 11/11/20 07:58
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


このプレゼントも……
純粋なプレゼントではない

最終的には『私自身が購入する』

それでも嬉しかった

届けられた綺麗なワンピース

『これが似合うようになりたい』

今まで目を向けなかったことに目が行くようになった

ヘアメイク、エステ、ネイル……

楽しかった

でも……
『自分のためだけ』の自己満足と欲求を満たす贅沢

美しくなりたいと思うこと
美しい妻
綺麗な母

それは悪いことではない

だが……
直接『誰かの役に立つ』わけではない

あくまで
自己満足と限りない欲求を満たす贅沢

どこかで
今の自分が間違っていることに気付いていた

だからなのか……
いつも何となく落ち着かなかった

リョウと関わる私は嘘の私

でも……
一度覚えた蜜の甘さは忘れてられなくて
一度覚えた贅沢からはなかなか抜け出せない

No.55 11/11/20 20:05
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


リョウ「リナ
綺麗だよ
本当に綺麗になった

オレのために?
嬉しいよ」

いつものリョウとは違った

激しく乱暴に攻められる

それが
かえって刺激的で興奮する

犯されるように……

プレゼントされたワンピースは
下品にめくられ

ショーツは外さず
脇から強引に指をねじ込まれ
激しく刺激される

リナ「ああんっ、あっ、あんっ……」

リョウは私の欲求に完璧に応えていた

絶妙なバランス感覚で
完璧に応える

私の内面を知りつくし

押しも引きも完璧だった

リョウは
『私の欲望そのもの』だった

だから
離れられなくなってしまった

今回の請求書額
プレゼント代を含み
50万

そんな馬鹿げた要求も
疑問に思うことなく
平然と振り込んでいた

それよりも私が恐れたことは
リョウが他の誰かのものになることだった


No.56 11/11/21 21:32
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


リョウを失いたくないばかりに
いつしか
リョウの言いなりになっていった

これが
どんなに恐ろしいことか……

既に
僅か一ヶ月ほどで
100万近くのお金を支払うほど馬鹿な私

『良いカモ』だ

リョウ「リナにもっと綺麗になってもらいたくてさ……
これサプリなんだけど
綺麗に痩せられるし
気分も良くなるから
飲んでみて」

リョウの言葉が嬉しくて
何も疑わず

『サプリ』を飲み始めた

No.57 11/11/22 10:40
らら ( ♀ ZfIHh )

>> 56 はじめまして。こういうところで(失礼)こんなは洒落た小説に出会うとは(≧∇≦) 斬新なアイデアにりょうに溺れるがごとく、ハマりそうです(笑)予想を裏切るラストに期待しています。

No.58 11/11/22 21:58
きる ( lbwJnb )

ららさんへ

きるです。

読んいただき
ありがとうございます。
本日の更新が遅れ申し訳ありません。

嬉しいコメントに心より感謝いたします。

お待たせいたしました。

今からスタートいたします。

本当に
ありがとうございます。


No.59 11/11/22 22:31
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


リョウから与えらるもの全てが私を『幸福』にした

今まで感じたことのない
不思議な幸福感で満たされる

特に抱かれる時の
最高な幸福感……

リョウと一緒にいる時だけが
『本当の私でいられる』

貪るように求め

自力で支払える能力を失った

『お金が無いなら我慢しなさい』
私には
もうそんな簡単で当たり前な理性がきかない

我慢出来ない

今すぐ欲しい

今すぐ
どうでも欲しい


No.60 11/11/22 23:04
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


リョウに会えることが
ただ、ただ楽しみで

純粋な少女のように『その時』を待ち

リョウのために自分を可愛く見せる努力をしたり

秘密を持つことの
家族への『負い目』から
家事をいつも以上に頑張ったり

心の余裕から
優しくなれたり

……そんな穏やかな小さな可愛さは

今はもう、無い

あるのは
狂った欲望と借金

家事をまともにこなせなくなり

ふさぎこんだり

無気力になったり

さすがに家族も
異変に気付く


No.61 11/11/23 00:40
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


夫は私に直接聞かなかった

私から話を聞かず
勝手に調べ
離婚の準備を整えていった

『結局最後までそんなものなのか』

夫と私
一体どうして結婚したのか未だにわからない

そのくらい
あっさりしていた

もともとお互い
特別好きだったわけでもなく

何となく知り合い
何となく年齢的に
何となく結婚……

じっくり話し合ったことが無かった

このまま一度も本気でぶつかることもなく

離婚するのか……

正直
夫への未練は無い

それほどにまでに
うすぺらい関係だったことは虚しい

だが今さら
ぶつかるほど関わりを深めてまで
繋ぎ止めたいと思えない

No.62 11/11/23 01:22
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


子供のことは
さすがに堪えた……

どんな理由があろうとも子供に罪は無い

原因は私
最低な母親

子供はいつも親の犠牲になる

思春期に差しかかる年齢にまで成長していただけに

私のことが絶対に許せず受け入れられなかった

当然だ

私は
子供の方からばっさりと切り捨てられたが

切り捨てるだけでは
子供は決して癒されない

子供の心に深く大きな傷を負わせた

ようやく気付いた

本当に大切な存在

でも、もう……

身体が思うように動かない今の私には

どうすることも出来ない

心と身体のカイリが始まっていた


No.63 11/11/23 12:31
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


夫による周到に整えられた離婚には
もう抵抗の余地は無かった

全てを失った私の支えは
リョウだけ

ここまで来て
まだ分からないのか……?

いや
分かっていた
十分に分かっていた

人間は弱い
ひとりでは生きられない
孤独は恐怖……

本当の孤独に追い込まれた時
生命の危機にさらされる

だから
分かっていたけれども
最後の最後まで
すがれる誰かを求めた

リョウ……

リョウは支えになる相手なんかではない

虚構の中の登場人物にしかすぎない

私を陥れた悪魔

でも

最初に踏み込んだのは
紛れもなく
この私

お願い……

もう一度キスしてほしい

もう一度抱きしめてほしい


No.64 11/11/24 00:08
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


『もう、リョウしかいない』

家を出された私はネットカフェで

必死になってお金を食いつないだ

借金で借金をまわし更にまた借金を重ね

とにかく
リョウとの時間と『サプリ』を買うために

必死になった

しかし
限界と終わりは近づいていた……

リョウは最後の最後まで
私から吸い取れるだけ吸い上げる
甘いキスで……

リョウに抱き寄せられ
リョウの顔が近づき
リョウの唇に触れ
舌が優しく入り絡まる……

この最高の感触が

正常な判断を狂わす

リョウは
私の限界を察知したのか……

このキスが最後となる

最後に
今まで見たことのない冷ややかなリョウの目……

その目が気になったが

その時はあえて気にしないようにした

リョウからも切り捨てられたら……

私の生命には
限界がくる……


No.65 11/11/24 14:01
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


『無い!無い!無くなっている!?嘘!!まさか!!……』

『通販サイト』が無くなっていた……

足から全身の力が抜けてゆく

涙がこぼれた……

初めて『サイト』を目にした時から今日までのことが

走馬灯のように
頭の中を駆け巡る

僅か数ヶ月でこんなことになるなんて

数ヶ月前までは考えもしなかった

多少の不満はあっても
このままの生活が続くことが
当たり前だと思っていた

今思えば
ありふれてはいたが
十分な幸せがあった

もう少し強かったら
もう少し精神的大人であったら

つまらない罠にかかることはなかったであろう

大人になり
妻となり
母にまでなることができたのなら

どうして
『今まで受けたものを次世代に受け継いで行く』
という人として大切な使命を果たすことに集中できなかったのだろう

大人になりきれず
いつまでも自分の欲を満たすことばかりだったがために
罠にかかってしまった

涙がとめどもなく溢れた


No.66 11/11/25 16:45
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


もう戻れない

もうやり直せない

どんなに悔やんでも

本当に取り返しのつかないこともある

全てを失った絶望の中で

私は

残念ながら

光を見つけることが出来なかった

ほんの一時でもいい

この孤独の恐怖から救われたかった

現実から逃げたかった

もう何も持っていない私に唯一残されたものが……

リョウからもらった
『サプリ』

あるだけ全部飲み込んだ

『熱い熱い熱い……
何なの?……
サヨナラ……かな……』


No.67 11/11/25 17:02
きる ( lbwJnb )

注文1恋人


「今日のニュースです

今日未明……で

身元不明の女性の変死体が発見されました。

詳しい状況はまだ分かっておりませんが

遺体の状況から、薬物中毒と思われます……」

……サヨナラ

リナ……



No.68 11/11/25 17:16
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


「あっ、あっ、あんっ……お願いもっと、ああんっ……」

『ホント、どうしようもねぇ雌ブタだな……

吸い取れるだけ吸いとってやる

傷つけられた分

お前らのような女から
オレは全てを奪い取ってやる』



No.69 11/11/26 00:34
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


オレは狂った人生を変えたかった

全ては『あの女』が原因
そう、馬鹿な母親のせい

オレは身勝手な親の犠牲になるしかなかった

まだ自立できる年齢ではなかったオレは従うしかなかった

そんな時、目にした

『どんなものでも
あなたの望んだ通りのもの……』って?

マジかよ?
おもしろそうじゃん


No.70 11/11/26 11:00
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


社長「ナオヤ、指名だ。今日もしっかり頼むぞ。」

『……はぁっ?誰……?あぁ、またあのババァ……しょうがねぇなぁ……』

この闇社会で仕事するようになって、どのくらいになるだろう……

……そう
『あの通販サイト』にアクセスして……

オレは
『別の人生』を注文した


No.71 11/11/26 18:31
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


女「ナオヤ会いたかった……ナオヤ……んっ、あっ、んっ……」

『……あの馬鹿女……オレの母親も、男にこんなツラさげてたのかよ?
マジ、キモイ、ウゼェ
そのせいでオレは、オレは……』

濃厚なキスをしながら

舌を噛みちぎってやろうと何度思ったか

首を絞めてやろうて何度思ったか

『お前のガキと旦那、かわいそうにな
一緒に地獄へ引きずりおろしてやる』


No.72 11/11/26 23:55
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


オレの母親……

ある時から様子が変わって

間もなく親父と離婚

そして……

死んだ

……全然、理解出来ない

ただ、急に母親がいない生活となり

散々だった

荒れた生活だった……


No.73 11/11/27 11:39
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


女「あっああんっ……ナオヤ……んっあんっ……ナオヤの全部がスキ……ああんっ……」

仕事だからな
完璧に仕上げてやるよ

最高の蜜を吸わせ
あとは……
食いモンにしてやる

女「あっあっあん、もうダメ、イッちゃう……ああんっ……」

女がイク最高のタイミングで
いっぱいに突き上げてやる

味わったことのない最高の味を教えてやる

女「……ナオヤ……また会える?」

ナオヤ「ええ、もちろん。あなた次第です。

ご連絡お待ちしております。」


No.74 11/11/27 18:04
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


贅沢で、欲深くて、傲慢で、見栄っ張りで、自分勝手な
女ども……

どうせ旦那なり親父なり
『男』に飼われていなきゃ生きていけないペットのような存在のクセに

「もっと愛してほしい」だと?

ふざけるな

お前ら本気で人を愛したことがあるのか?

何もかも求めるばかりで
決して与えることはしない

甘ったれるな



No.75 11/11/27 18:47
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


ナオヤ「……綺麗だ
凄く濡れて……
本当に綺麗だよ……」

女「……あんっ、いや……」

ナオヤ「……止めてほしい?」

女「あんっ、ちがう……意地悪……ああんっ……」

オレは……

別の人生を生きるために

『これ』を選ばなければならなかった

目をそむけたい現実をわざわざ見なければならなかった

それならば

『徹底的にやってやる』

No.76 11/11/27 22:35
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


オレが『別の人生』を注文して、しばらくたった頃だった

そもそも
そんな『通販』も、そんな『注文』も信じてはいなかった

そんなもの冗談に決まっている


それが
突然知らない男が現れ
訳のわからないことを言い出した

男「今まで随分ご苦労なされましたね。
さぞ大変だったことでしょう。
お察しいたします。

その分、これからは、思う存分、貴方の思い通りに生きましょう。

準備が整いましたので、お迎えにあがりました。
さあ、参りましょう。」

ナオヤ「はっ!?一体何なんだよ!?

訳わかんねーこと言ってんじゃねーよ!!

ふざけんな!!」

男「驚かれるのも無理ありません。

落ちてください。

わたくしは貴方の『ご注文』を承り、参りました。

ただ、このまま、わたくしを振り切っても何も変わりませんよ。

ご自分から踏み出さなくては、何も変わりませんよ。」


No.77 11/11/27 23:03
きる ( lbwJnb )

>> 76 訂正


No.76

「落ちてください」→
「落ち着いてください」

失礼いたしました。

きる


No.78 11/11/27 23:56
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


ナオヤ「えっ!?まさか!?
あの通販!?」

怪しいと思いつつも

紳士的な男の物腰
オレを気づかう態度
的を得た言葉に

複雑な思いになった

今までのオレ……

母親が突然いなくなり
父親と二人の生活……

親父には感謝しているが
仕事しか出来ない親父

家事の全てをオレがやらなければならなかった

幼児ではなかったものの
まだ小学生だったオレにとって
決して楽ではなかった

母親が突然いなくなるというショック

十分な食事も出来ない

一生懸命やっているつもりでも
身だしなみがだらしなくなる

勉強どころではなくなり
成績も落ちていった

そして……

いじめられるようになった……

そんなことが思い出され

悔しくて、悲しくて、虚しくて……どうしようもない思いになる

『変われるのなら
本当に変わることが出来るのなら
やり直して
見返してやる』


No.79 11/11/28 21:32
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


男「意志が固まってきたようですね。
光栄です。

失礼ながら、貴方のことを調べさせていただきました。

是非ともご契約いただきたく存じますが
今のままの貴方には、とても支払える額ではありません。

残念ながら、支払い能力のない方とご契約する訳にはいきません。

そこで、ご提案なのですが
貴方にはわたくしどもと同時に別の契約を結んでいただき
わたくしどもと一緒に『お仕事』という形で、お手伝いいただきます。

これは、貴方にとって少々辛い試練になるかもしれません。

しかし、その分多大な報酬と、必ずご満足いただける商品を保証いたします。

貴方には、やり遂げる才能があります。
素質があります。

必ずご満足いただけると存じます。

いかがでしょうか?」


No.80 11/11/28 22:18
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


『何ごちゃごちゃ訳わかんねーこと言ってんだ……』

反発しながらも

いろんなことが頭の中で駆け巡る

最初の第一声から、おかしい

何故、オレのことをそれほどにまで、よく知っているんだ?

『調べた』って、どういうことなんだ?

いづれにせよ、もう
『知り尽くされている』

この情報化社会では
『個人情報』が
どれほど価値ある金を生む手段となり得るか

握られたら最後
逃げられない

だったら、こっちだって
取れるだけ、取ってやる

どうせ狂った人生なんだ
今さら守るものもない

『やってやる』

No.81 11/11/28 23:15
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


ナオヤ「わかった。

やるよ。」

男「ありがとうございます。

良い人生にしましょう。」

オレは、本当に変われるのか?
そんなことがあり得るのか?

どうだっていい

引き返したって
おもしろいことなんて何も無い

そうしてオレは……

闇社会で全くの『別人』となり生きて行く

唯一『ナオヤ』という名前だけを残し

あとは全てを捨てて……

No.82 11/11/29 19:10
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


男「トップを目指すなら、まずは全てにおいて徹底的に一流を身に付けなければなりません。

生半可では通用いたしません。

その覚悟については、よろしいですね?」

想像以上にキツかった

知識、教養、マナー、常識、体力……
短期間に叩き込まなくてはならない

だが、後戻りも逃げ出すこともできない

一度が関わった以上、内部情報の漏洩を防ぐため

もう、まともに暮らすことは出来なくなる仕組みになっていた

生きたいのなら……

『やり遂げる』しか選択肢はない


No.83 11/11/29 19:57
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


男「ナオヤさん

貴方はもう、どこへ出ても恥ずかしくない。

『今の貴方に魅了されない女性はいない』と言っても過言ではないでしょう。

あとは、自信を持って堂々と振る舞ってください。」

ダークスーツに身を包み外見から中身まで装備したオレに『仕事』が与えられた

あらゆる手段を使って
女から金を巻き上げる……


No.84 11/11/29 20:39
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


信じられなかった
『オレを見ない女がいない
振り返らない女がいない』

オレは……
もともと大人しい性格で、決して目立つことのない垢抜けない外見だった
さらに、いじめられた経験から、自信も無くし、陰気な雰囲気だった

そのため、異性に相手にされることは
もちろん無かった

『いけるかもしれない……』

ここまでのオレに対する『設備投資』の返済
そして報酬を得るためには
どうにも『やるしかない』

覚悟と自信を得たオレは、次々に女を落とし、仕事をこなしていった

そうしているうちに
今まででは考えられない額の金が入ってくるようになった



No.85 11/11/30 04:29
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


『……女は、いつまでもお姫様でいたいものなのか……』

女に限ったものではないかもしれないが……
欲望は果てしない

だから、オレのような『仕事』が成り立つのだが
人間の欲深さに、うんざりする

そんな嫌悪感を押し殺し
サービスに徹する

相手に決して恥をかかせないよう
要求にはお望み通り、完璧に応える

最高の夢を見させてあげる

だが……
女を抱きながら
悲しくなる

『お前に愛されたくて必死な小さな魂が、家で膝を抱えて待っていることに、何故気付いてやれねぇんだよ?』



No.86 11/12/01 01:30
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


女「ナオヤ……あっ、あんっ、んっ……このまま繋がっていたい……ずっと、あっあんっ……」

都心ホテルの高層階
眼下にはキラキラ光る夜景が広がっている

クリスマスが近いこの時期はイルミネーションの光も加わり
街は一層輝きを増していた

そんな景色を
まるで自分だけのものに感じながら

この女はオレに抱かれる

窓ガラスに片手をつき

もう片方の腕はオレに絡み

オレにバックから突き上げられ

目を潤ませている

性器の絡み合ういやらしい音、艶かしい声、卑猥な臭いが部屋を満たしている

場所から体位に至るまで
全ての望みを叶えてやる

こうして
女達はオレに溺れて行く

『オレの母親もこんな風に溺れていたのか……
まだガキだったオレは
腹を空かせて、帰ってくるのを
ひたすら恋しく待っていたんだせ……』


No.87 11/12/01 23:12
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


社長「ナオヤ、ちょっといいか?」

ナオヤ「はい」

社長「おまえの客のひとりなんだが、金の振り込みが無い。

面倒だか、ちょっと探ってきてくれないか?」

ナオヤ「はい、承知いたしました」

『あいつか……たくっ、面倒かけやがって……』

今まで、多額にもかかわらず、振り込みは守られていた客だった

甘ったれたあばずれでムカつく女だった

様子を探りに行く

想像以上に、酷く、手入れをされていない古いマンション

留守のようだ……

んっ?違う

何か気配が……

オレの生い立ちから来る直感

子供だ

中に子供がいる

しかも様子がおかしい


No.88 11/12/02 04:57
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


もう夕刻から夜になろうとする時間で辺りは暗くなってきた

部屋の中はテレビがついているようでチラチラ光の色が変わるのが分かるが、電気はつかない……

時折、インターホンを鳴らしてみるが反応は無い

かなり古くて小さな、高級ではない建物でだったため、ドアに耳を近付けると、中の様子がうかがえた

子供向け番組のテレビ音

冬であるにもかかわらず、暖房している様子の無い冷気

咳き込む子供の声

『ヤバイな……』

ちょうど、隣人が帰ってきた

No.89 11/12/02 19:03
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


ナオヤ「すみません
突然に申し訳ありません

ちょっと、ここの部屋に住んでいる人のことをおうかがいしたいのですが……」

学生か?フリーターか?といった感じの若い男だった

オレに声をかけられたことが、明らかに迷惑そう

オレは持っていた万札を数枚、そいつににぎらす

すると

隣人「で、何?」

愛想無く口を開いた

ナオヤ「ここに住んでいる人、どんな感じ?」

隣人「……母親っぽい女とガキかな……

女は、ほとんど家にいねーよ、多分……

ガキの泣き声がたまに聞こえてた

最近は声しないけど……

面倒な事件とか、マジ勘弁してほしい」

『マズイ』


No.90 11/12/02 19:57
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


管理会社の連絡先を聞き出し、とにかく連絡する

管理会社「申し訳ございませんが、身元のはっきりしない方に、そういった対応はいたしかねます……」

ナオヤ「ごちゃごちゃ言ってんじゃねー!

命にかかわるかもしれねぇんだぞ!

事件になって報道されたいのか!

そうなったら、お前らもおしまいだ!

それでもいいのか!

とにかく、さっさと鍵持って来い!

来ないなら、警察に連絡する!」

管理会社側は渋々承諾し、15分ほどで来た

ガチャ……

『うっ、何なんだ、この悪臭』

No.91 11/12/03 01:13
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


ある程度の予想はしていたが、それ以上に荒れていた

『かなり酷い……』

掃除片付けなど、されているはずもなく

ゴミが散乱し、足の踏み場もない

悪いが靴を脱いで上がることを躊躇させる

換気もされず、淀んだ空気に悪臭

吐き気がする

決して広くない間取りであるにもかかわらず、奥の部屋までを遠く感じる

ゴミをかき分けながら、ドアを開けると

薄汚れた小さな人形のように倒れた姿が目にはいった

ナオヤ「おい!!しっかりしろ!!聞こえるか!!おい!!

救急車!!救急車呼べ!!」

管理会社の男は呆然と立ちつくしている

ナオヤ「何やってんだ!!この役立たず!!」

No.92 11/12/03 10:59
きる ( lbwJnb )

注文2ミクル


病院に運び込み子供の一命はとりとめた

ただ、オレは保護者でもなければ身内でもない

そんな『素性のわからない』奴に

これ以上、何も出来ない

もどかしく、悔しかった

『くそっ、何が保護者だ
血のつながりなんて、役に立ってねーじゃねーか!』

社長に状況を説明するために電話を入れる


社長がひとこと

社長「わかった。
もう、そこまででいい。深入りするな」

オレのことを知っている社長の優しさだった

だかオレは社長に従わず、女のマンションに戻った

『あの女、許さねー』


No.93 11/12/04 04:23
きる ( lbwJnb )

訂正


No.92

「注文2ミクル」→
「注文2別人生」

失礼いたしました。

きる


No.94 11/12/04 04:59
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


その日、女は帰って来なかった

『一体、どういう神経してんだ?
あのガキ、今日オレが来てなかったら
死んでたかもしれねぇんだぞ……』

この客はかなり若く、見た目は可愛い派手な女だった

多額の支払いも今まで出来ていたことから

まともな職業には就いていないことは明らかだ

まさか、子供がいたとは思わなかった

それから数時間待ったが帰って来なかった

オレは直接客と連絡を取り合うことは許されていない

トラブルになりやすくなるため、必ず事務所を通しての連絡に限られていた

今回の社長からの依頼も
『様子を探ってこい』というだけのもので
それ以上はするなということだった

携帯の番号も知らない

支払いを滞っているから向こうから依頼の連絡は無いだろう

女と接触するには待つしかなかった


No.95 11/12/04 11:02
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


『来た!』

どのくらい待っただろう……

女は辺りを気にしながら身を隠すように、こっちへ向かってくる

オレの社以外にも、支払いを滞っている何かがあるのかもしれない

女はオレに気付くと、ビクッとし『信じられない』といった表情だった

女「ひ、久しぶり……
あ、あの……あのね、ちゃんと払うから、ね」

ナオヤ「当然だ
だがな、今日ここでオレが待っていたのは、そんな理由じゃない!
ガキのことだ!」

オレは『客』に対してはソフトな対応しかしない

『接客中』はどんなことが起きようが、どんな要求をされようが

決して乱れず、怒るなどということはしない

そんなオレが怒りをあらわにしていることに、女は相当動揺している

女「えっ!?何、何言ってんの?ガキって、な、何なの?」


No.96 11/12/04 14:28
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


ナオヤ「ふざけるな!
あの子は今病院だ!
後少し処置が遅れていたら、死んでたんだぞ!」

女「……余計なことしやがって」

ナオヤ「は?
今、何て言った!」

女「余計なことしやがって!
あんなの死んでくれたら、良かったんだよ!
あんなの要らなかったんだ!
あんなのがいるから、男に逃げられるし、遊べないし、金だって好きなだけ使えない
おまけにギャーギャー泣くし
最悪なんだよ!!」

ナオヤ「……おまえ、正気か……?」

女「今だって、仕方がねーから、おにぎりとジュース置きに来てやったんだ!
いないなら、わざわざ見に来ることなかった!
あー、めんどくせ、損した!」

オレは言葉を失った

こいつは話にならない

すると見知らぬ男が現れた

女が近くで待たせていたようだ

女がなかなか戻らないことに苛立っていた


No.97 11/12/04 18:12
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


女「あーっ、ごめーん
何かさぁ、うっとーし奴に絡まれちゃってぇ
困ってたんだよねぇ」

男「おまえ何なんだよ!
何やってんだよ!
こいつはオレの女だ!
手出すな!」

ナオヤ「オレはこんな女に興味はねー!
そんなことのために、この女と話している訳じゃねー!!」

『ここで今こいつらと、まともな話は出来ない』

そう思ったオレは無視して、その場を立ち去ろうとした

ナオヤ「うっ、あっ……おまえ……ったく…な……んなんだ……」

脇腹に初めて感じる痛みが走り……

膝をつき……

倒れこんだ……

女「キャッ、キャーッ!!」


No.98 11/12/05 12:57
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


『マジかよ?なんてことしてくれたんだ……』

どうやらオレは刺されたらしい……

あいつらはオレの血を見て逃げ出した

薄れゆく意識の中でオレは謝っていた

『ごめん、ごめんな……』

病院に運んだ子供と約束したんだ

お互い名前も知らないが

『辛かったよな、寂しかったよな、心細かったよな
寒かっただろ?
お兄ちゃんが必ず迎えにきてやるからな
お兄ちゃんも寂しかったんだ
お兄ちゃんと暮らそう
お兄ちゃんは、おまえを一人ぼっちにはしない』


No.99 11/12/05 13:18
きる ( lbwJnb )

注文2別人生


『約束……守れそうにないな……本当にごめん……』

沢山の金を手にした

女に不自由することもなかった

この数ヶ月で大体やりたいことをやりつくした

だか、いつも、何か足りないものを感じていた

満たされない空洞があった

『母さん……』

オレは……

母さんに笑っていてもらいたかった

抱き締めて欲しかった

オレを捨てないで欲しかった

『母さん……もうすぐ会えるんだね……
……サヨナラ』



No.100 11/12/05 13:40
きる ( lbwJnb )

注文3子供


「あら?今、何週目?体冷やさないように大事にしてね」

「今、何ヵ月?女の子?可愛いわね」

結婚すれば
赤ちゃんは出来るものだと思っていた

結婚すれば
誰でもお母さんになるんだと思っていた


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