悲しい女
短編小説です…
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加奈は自分で立ち上がった
雨は強く振り続いている
『…こら悪い事してもうた…かんにんや…よっぽど、嫌なめにあったんやな~ねぇちゃん、
嫌な事や、嫌な人間の事は捨ててしもうたらええねん…新しくうまれかわったらええねんやで!』
加奈にはもう誰の言葉も、耳には響かなかった
まして前向きの説教なんかたくさんだった
部屋へ入ってカギをかけた
タクシーのドアが閉まる音がして、エンジンが遠くへ消えて行った
そしてザーザー雨の音だけが残った
加奈の運命を変えた、昨日からの長い長い時間が過ぎて行った…
加奈はシャワーに入った
正人は工場のために、この加奈の体を利用したのだ…
加奈は、石鹸をつけた体を、何度も何度も洗い流した
森田やママ…そして…正人の裏切り…
心が張り裂けそうに痛い…
この先なんの為に、何を信じて生きていけばいいのだろう
もう無理だ!
何もかも無くした!
生きて行けない!
風呂を出るなり、脱いだ服をゴミ箱へ投げ捨てた
そして 包丁を取って 手首にあてた…
冷たい刃先を肌に押し当てた…
思いっきり引いたら、動脈から赤い血が吹き出るだろう…
だけど…
怖くてできなかった…
殺す事も、死ぬ事もできない…
加奈は子供のように声をあげて泣いた
そして週は明けた
もう会社へは行く気力もない
携帯には友達からと正人からのメール、正人からの着信があった
もう正人の顔など見たくもなかった
誰とも会いたくなかった
正人に最後のメールをした
加奈↓
しばらく休みます
それだけ送ると
正人からの返事を待つ事もなく、アドレスを変え、正人の携帯番号も拒否した
何回か正人がアパートのベルを鳴らして、加奈を呼ぶ声がしたが
返事は一切しなかった
加奈は全てから心を閉ざした
食欲もなく、なにもする気もなく布団から出られなくなった
一週間過ぎたころ…
体重は減り、起き上がると、ふらふらになった
ふと死を意識した
このまま餓死してもいいやと思った
このまま加奈が死んでしまったら…
あの三人は、どう思うだろう
おそらく反省などはしないだろう…
私利私欲に走り、邪魔な者は排除された…三人は、酒盛りでもするのだろうか?
もう…どうでもいいや…
目が自然に閉じた
ふと、いつかのタクシーの運転手の言葉を思い出した
『嫌な事や嫌な人間の事は捨ててしもうたらええねん…
新しくうまれかわったらええねんやで!』
あの運転手のおっさん、優しかったなぁ…
あの関西弁、癒やされる…
雨の日は、せっかく転んだ私を気づかってくれたのに…悪いことした…
加奈は、今度会ったら謝ろうと思った
ふと、コンビニでも行ってみようという気になった
久々のコンビニは眩しかった…
商品を探す人、レジに並ぶ人、店員の笑顔
活力が伝わってきた
カップ麺と サンドイッチ、おでんにおにぎり
帰って来て モリモリ食べた…
満腹になってふと思った
そうだ あの三人が居ない所へ行こう…
いや、自分の事を誰も知らない、遠い土地へ行って暮らそう…
新しく生まれかわりたい
出来るだろうか?
何処へ行こうか?住む所も探さなきゃ…
加奈は久しぶりにパソコンを開いた
正人との結婚資金にと、頑張ってかなりお金は貯めていた…
アパートを借りて新しい仕事を見つけるまで、当分の生活費も充分足りる
工場の再建資金に使われなくて良かった
あんな男…結婚する前に、分かって良かった…
もう一度生まれ変わりたい!
こんな事で死んでしまうのは悔しい!
でもこの先、何があるか分からない
でも今よりはましだ!
あの地獄の出来事から1ヶ月が過ぎた頃
引っ越し荷物を乗せたトラックを見送ると
加奈は新幹線に飛び乗った
引っ越し先は京都にした
これといった、たいした理由もなかったが、関西弁が妙に気に入ったせいでもある
それに、東京の思い出は消したかった…
久々の新幹線は、音も静かで快適だった
窓の景色を見ながら、見知らぬ土地への不安がよぎった…
一人ぼっちでこの先どうなるか…気持ちが沈みかけた時…
ふいに声をかけられた
『あんときの、ねぇちゃんやないか?!』
見ると、なんとあのタクシーの運転手だった
加奈「あ~ッ」
『元気になりはって、よろしおましたな~…あら?わしの座席……ねぇちゃんの隣ですがな~奇遇でんな~アハハ…』
運転手は、勝手に陽気に話し出した
『へ~ねぇちゃんも京都ですか?わしも京都までですねん!奇遇でんな~アハハ…』
加奈もつられて笑った
久しぶりの笑顔になった
元気を出そう
色んな人に出会って、楽しく生きて行こう!
加奈は前を向いた
…完…
佐藤隆史は30歳
同年代の妻と、幼稚園へ通う4歳の娘との3人家族
さほど裕福でもないが、平凡で幸せな毎日が続いていた
隆史は、その日会社の懇親会へ出席していた
夕方6時に乾杯で始まり、9時には一応オヒラキになった
当然のように、同期の仲間4人で二次会へ行く事になるわけだが
仲間の一人、鈴木がこう言い出した
「今夜は、合コンだぞ!綺麗どころがズラリ~」
隆史はそんな話しは聞いていなかったが、手筈はすでに整っていたらしい
その鈴木と、もう一人の中山は独身
隆史と池田は、妻子持ちだ
池田 「なぁ佐藤、たまには、独身になろうぜ!」
池田はそう隆史に悪戯っぽく囁くと、これ見よがしに薬指の指輪を外して、背広姿のポケットに入れた
隆史は、あまり気乗りはしなかったが、この雰囲気を、邪険に断ることもできず
…途中で適当に帰ろう…
そう思って、この三人に付いて行った
カラオケで賑わうわりと広くて感じのいい店だった
合コン相手の女達はもう来ていた
ボックス席に、4人ずつ向かい合って座る形になった
女達は、今風におしゃれで20代前半なのか、みんな初々しくて、綺麗だった
カンパーイ
華やかな雰囲気に宴は盛り上がってきた
隆史は、自分は独身ではないのに、こんな所に居ていいんのだろうか?という罪悪感
それでいて、既婚者だと思われたくない…という相反する、2つの気持ちに挟まれていた
女達との会話は、普段の平凡な生活とは、違って隆史の気持ちをワクワクさせた…
ちょっとくらい羽目をはずしてもいいんじゃないか
隆史は、そう勝手に自分を許していた
ふと妻子持ちの池田に目をやると
すでに気に入った女の子の手をとり、手相を見てあげる などと盛り上がっている
隆史は、指輪をそっとはずして、背広のポケットへ入れた…
やがて、段々カップルが決まって
次々店を移動して行った
隆史は、最初から向かい側に座っていた景子と必然的に二人だけになった
二人はカウンターへ移動してゆっくり話しをしながら飲んだ
景子は控え目で聞き役だった
そして、キレイな目をしていた…
気がつくと12時になっていた
景子 「私、酔っちゃった、佐藤さん、送って…」
景子が愛らしく言う
タクシーで送って、そのまま自分も帰ろう
久々の合コンは楽しかった~
そして 店のマスターにタクシーを頼んだ
やがてタクシーが来て二人は乗りこんだ
楽しかった余韻を残して、名残惜しい気もしたが
まじめに千佳子と真子が待っている家へ帰ろう…
そう思った
隆史「景子ちゃん、今日はホント楽しかったよ…」
そう隆史が言うと…
景子は隆史にぴったり体を寄せてきた
「あれ?景子ちゃん酔っちゃったの?」
景子はミニスカートの艶めかしい太ももを隆史の膝の上に絡めてきた
隆史は見て見ぬ振りをしたが
景子はふいに隆史の手をとると、自分の太ももに押し付けた
隆史は、はっとして手をはなした
すると今度は景子がいきなりキスをしてきた
隆史は驚いて景子の肩をそっと押して自分から離した
隆史は景子の柔らかい唇の感触にドキドキした
こんな久々の新鮮な興奮に、隆史の下半身は熱くなってしまった…
景子が隆史の耳元で囁く
「ねぇ…お茶でも飲んで行って…」
隆史はますますドキドキした
タクシーが止まり
隆史は景子に引きずり込まれるようにアパートへ入って行った
どちらかとも無く激しいキスになった
景子は隆史のズボンのベルトをはずすと、ファスナーをゆっくりおろした
そして興奮した隆史のそれを、口に含んだ
『あぁ…』隆史は小さく嗚咽をもらした
快楽に酔いした隆史にはもう、理性のかけらなど微塵もなかった
二人は獣のように、無我夢中で愛し合った…
…
どのくらいの時間がたったのだろう
全てが終わった
隆史はシャワーへ入った
隆史の脳裏に
妻と娘
千佳子と真子が浮かんだ
俺はなんと言う馬鹿な事を!…
千佳子以外の女とこんな事…!
時計を見ると午前2時
隆史は、服を着る
景子がシャワーに入ったのを確認すると
隆史は部屋を飛び出した
急いでタクシーを拾い家へ着いた
千佳子と真子が安らかな寝息を立ててる
二人はぐっすり眠っている
隆史はほっとして布団に潜り込んだ
景子は初めて会った男と、すぐあんな事をする女だから、自分との事は、きっと一夜のアバンチュールに違いない…
もう会う事もないだろう
隆史はそう高をくくって眠りに着いた
朝になって
幼稚園が休みの真子が
真子「パパ~ゲームセンター行きた~い」
せがまれて、妻の千佳子と三人で出かけた
ゲームセンターはショッピングモールの中にあった
隆史と千佳子の間で真子が手をつなぐ
ぶら下がったり、歩いたりして真子は、はしゃいでいる
真子と千佳子の顔を見て、隆史は昨日の景子との熱い夜を思い出し、罪悪感でいっぱいになった
何も知らないこの二人は、俺をいい亭主、いい父親だと信じて疑わない…
もう二度とあんな事はするまいと固く心に決めた
遊んだ後は、レストランで食事をとり、家へ帰ろうと三人は駐車場を歩いて行く
一台の赤い車が少し放れた先で止まり、女が降りた
長い髪、短いコートの下はミニスカート…そしてサングラスをしている
あれはまさか!
まさか!
景子?!
隆史は、背筋に冷たい矢がつき刺さる思いがして固まった
女は三人に近寄り、そのまますれ違ってやがて通り過ぎた
隆史には女の視線は感じなかった
違ったか?違った!あぁ…良かった!
そうだよ…昨日のタクシーの距離からしたら、隆史の家から千佳子のアパートまでは、10キロはあった
景子は都会に住んでいるし、わざわざこんな田舎まで買い物に来るなんて考えられない
隆史は、ほっとした…
家に着き千佳子と真子が先に家の中へ入る
最後に隆史が車から一人降りる
ロックした車はピカピカと光った
その時、携帯電話がなった
見覚えのない携帯番号…
仕事関係の人で登録してない人もいるからめずらしい事ではない
そう思って隆史は電話に出た…
隆史「もし、もし…」
「…」
隆史「もし、もし?どちら様ですか?」
景子「佐藤さん?景子です…昨日はどうも…」
隆史は驚いた
いつ?俺の電話番号を?頭が真っ白になった
景子「結婚してたの?楽しそうな家族の休日?…フフ…」
さっきの女は、やっぱり景子だったのか…
今もどこからか見ているのか?
隆史「…」
景子「それでもいいの…私…佐藤さんの事…忘れられない…
佐藤さんも景子の事…愛してるって言ってくれたよね…
…また会ってくれるでしょう?」
隆史「頼むよ…電話は止めてくんないかな?…」
景子「うん…分かった…だったらメールする…アドレス知ってるから!」
隆史はまた仰天した
アドレスまで知ってる?
あの時、隆史がシャワーに入った時携帯を盗み見たのか?…
隆史は焦った
どうしよう…
また氷の槍が体につきささった…
背筋が固まった
真子「パパ~」
玄関で真子が呼んでいる
隆史は携帯の電源を切って家の中へ入った
やがて夜になった
寝つきの悪い真子がやっと眠った
隆史は眠ったふりをしていたが、千佳子の寝息が聞こえてくると
起きあがった
リビングへ行き ウイスキーに氷を入れて飲んだ…
携帯の電源を入れてみた
景子からのメールが12件
… 昨日はいつの間に帰ったの?
…奥さんそばにいて、返事できないんだね😅いいよ気にしないで…
…愛してる隆史さん❤
…気持ちがいい…こんなの生まれて初めてだ…なんて言ってくれたよね~❤
…今度いつ会えるの?
隆史はまた背筋が寒くなった…もう見たくなかった
全て削除した
景子はもうすっかり恋人気分だ
俺はなんて馬鹿な事をしたんだろう
携帯の電源は、相変わらず切ったまんまだった
朝会社に着くと電源を入れた
大量のメール…
見ないで全て消去した…
池田 「よ~昨日どこに行ってたんだ?何回も電話してんのに全然繋がらなかったぞ…
…てか…あれからどうした?あの夜だよ…」
隆史「帰ったよ…」
池田「まじかよ!ほんとお前は真面目だよな~…俺は…やっちゃったよ!いい女だった最高のボーナスだったぜ!」
お気楽な奴だと隆史は思った
自分も池田のような性格なら、気楽に、あと腐れなく…女と遊べたかも知れない…だが違う
最悪な状況だ…
その夜は真子の5歳の誕生日だった
隆史は気分を変えて真子にバースデープレゼントを抱えて帰った
ケーキと料理が並んでいる
ろうそくを立てる千佳子、吹き消す真子…
隆史はこの幸せはどんな事があっても守ろうと思った
そんな時
ピンポーン
千佳子「誰かしら今ごろ?」
少しして玄関から千佳子が大きなピザの箱を抱えてくる
千佳子「誰からかしら…私頼んでないわ…あなたなの?お金も払ってあるって…」
…もしかしたらあいつか?!
真子の誕生日までなんで知ってんだ?!
隆史は平静を装って、すかさず答えた
隆史「あ、俺だ…頼んでおいたのすっかり忘れてた…」
真子「パパ~ありがとう、ご馳走いっぱいだね~」
千佳子と真子は何も知らずに喜んでいる…
隆史はもう限界だった…
早く景子に会って、はっきりさせよう
隆史は景子にメールを初めて送った
隆史↓
今日仕事の帰りに会ってくれないかな?話しがある
5分もしないうちに返事が来た
景子↓
嬉しい❤
千佳子には、
得意先をまわってから帰るから、少し遅くなる、先にご飯食べてて
そう電話をすると
隆史は景子の指定してきた喫茶店へ向かった
そこは、景子の住む街にあった
景子はもう来て、店の奥の窓側のテーブルにいた
景子はあの時と同じミニスカートをはいて足を組んで座っている
景子 「佐藤さん、こっちこっち」
あどけなく手を振っている
隆史はニコリともせず座った
コーヒーを注文すると隆史は景子をまっすぐに見すえた
そして生つばをごくりと飲みこんだ
隆史 「実は…君に謝らなければならない事があって…」
景子 「どうしたの?どうして謝るの?」
隆史「その…俺は結婚しているし、子供もいる、君との事は、…その…なかったことにして欲しい……」
景子の顔はみるみるゆがんで行く
景子「…家族があるなら、いえ!家族あってもいい…大切なのはお互いの気持ちでしょう…」
隆史 「いや、俺は君と付き合うつもりはないよ!」
景子「なに言ってんの?愛してるって何度も言ってくれたじゃない!」
隆史「いや…それは……」
景子の目に涙が溢れている
隆史「お願いだから、俺の事は忘れてくれ!メールも電話も止めてくれ、そしてもう、俺をつけ回すのも…お願いだから…止めて欲しい…」
景子は泣き出した
隆史は辺りを気にしながら
隆史「ごめん ごめん…」
そう何度も繰り返した
景子「じゃ私とはただ…遊んだだけだったって言うの?!」
隆史「…」
景子「あんな事しておいて今更…ひどい!ひどすぎる…」
隆史「その…誘ったのは君の方だろ…君だってそのつもりだったんじゃ?…」
景子「はぁ?…」
隆史「いや、悪いのは俺だ!とにかくもうこれっきりにしてくれ…」
隆史は立ち上がった、
景子「待って!」
隆史は、呼び止める景子の声にも、気付かないふりをして
喫茶店から出て行ってしまった
そして、気持ちの落ち着かない日が過ぎて行った
2・3日たっても景子からメールも電話もない…
諦めてくれたんだろうか…
そして3日目の日曜日だった
いつものように、家族三人で買い物をして車は家の前に着いた
先に降りた千佳子がなにかに驚いて悲鳴をあげた
「キャー!」
見ると、真子の三輪車に血がベットリ、大量についていた
三人は呆然とした
真子は泣き出して千佳子にしがみついている
隆史が三輪車に近づいた
隆史「これケチャップだよ…」
千佳子「誰がこんないたずらを!ヒドい!」
千佳子は玄関前の水道のホースで水をかけ始めた
まさか?!
景子の仕業か?
俺に断られた祓いせに…
隆史は愕然とした
そして、また何日かして…
隆史が会社へ出かけ、千佳子は真子を幼稚園に送っていった
そして、ゴミを出しに行って家の中へ戻った
千佳子が家を開けた、ほんの2・3分の間にそれは起こった
ビニールの焼けるような焦げ臭い匂いが家中に充満している
あわてて台所へ行くと
火がついたガスの上に、置いたはずのない、フライパンがかけてあり
その中に、熱で焦げた真子のビーチサンダルが入って煙りを出してくすぶっている
千佳子はすぐガスを止めた
あわてて換気扇をつけ、窓を開けた
千佳子は、恐怖に打ちのめされた
誰がこんな事を?!
体中ワナワナと震え出した
夜、隆史は真子の寝顔を眺めると…ドアを閉めた
千佳子は昼間のその出来事を隆史に話した
景子だ…景子に決まってる!
隆史はそう思って胸が張り裂けそうになった
千佳子は、ショックで食事を作る気にもならず
コンビニ弁当の食べかけがテーブルにあった
千佳子は椅子に座ったまま憔悴しきって動かない
千佳子「なんで?なんでこんなひどい目に合うの?私なんにも悪いことしていないのに…」
思い詰めたようにポツリと言った
隆史は横に座って黙って千佳子の頭を撫でている
だが隆史には、千佳子に、全て話してしまう勇気なんてなかった…
千佳子 「この間の三輪車、今回はビーチサンダル、真子に対してやってるとしか思えないよ…真子がかわいそう…怖いよ…」
千佳子は隆史にすがって泣いた
全て俺のせいだ
景子に激しい憎悪を抱いた
隆史は家を飛び出した
千佳子「あなたどうしたの?あなた!」
隆史の怒りは爆発した!
そして景子のアパートへ向かった
怒りでハンドルを両手で何度もバンバン叩いた
景子の部屋のインターホンを鳴らした
景子が出てきた
隆史は景子の胸ぐらを両手で掴むと
隆史「てめえふざけやがって!」
景子「止めて…お願い…!」
隆史「殺すぞてめえ!!」
景子「苦しい…」
隆史は、はっとして手を放した
隆史「なんであんな嫌がらせするんだよ?!!娘になんの恨みだ!」
景子「あら、なんの事かしらね~」
景子はしらばっくれて首を痛そうに撫でている
隆史「頼むよ、もう金輪際俺達には、関わらないでくれ!!」
隆史は涙を流して哀願した
景子「よく分からないけど、私に逢いに来てくれたの?嬉しい…」
隆史は唖然として景子を見た
隆史「バカか!…お前はまだ若い、こんな俺よりいい男がいっぱいいるだろう!」
景子「…」
隆史「 この次なにかやってみろ…本当に殺すぞ!!」
アパートのドアが壊れるくらい思いっ切り閉めて
隆史は帰っていった…
家へ着くと
千佳子はまだ椅子に座ったまま動かない
隆史「千佳子大丈夫か?」
すると千佳子が手に何かを握りしめていた
千佳子「あなた、これ…」
隆史「どうした?手の中になにか入ってんのか?」
千佳子は手を開いた
それは、隆史の結婚指輪だった
隆史の顔色が変わった
千佳子「この指輪、あなたの背広のポケットから出てきたの…」
隆史は、合コンの時に外してそのままだった事を思い出した
千佳子「あの夜よねぇ朝方帰ってきたでしょうあなた…ピンときたわ!いつ言ってくれるか待ってたよ…」
隆史にまた旋律が走った
千佳子 「この間のピザね~あれは、私が頼んだの…あなたが頼んだなんて言い出して…あれで確信したわ…フフフ…」
隆史「じゃケチャップもビーチサンダルもか?」
千佳子「やり過ぎかも知れなかったけど、あなたがきっと彼女を懲らしめてくれると思ってね…」
さっきまで泣いてすがったあの弱くておどおどした千佳子とは、もはや別人の千佳子だった
隆史「ほんの出来心だったんだよ…許してくれ千佳子!」
千佳子「…」
隆史「たった一度の間違いじゃないか…もう絶対あんな事はしない…許してくれ…」
床に座って両手をついて隆史は謝った
千佳子「一度だけ?甘いよ一度やる人は必ずまたやるわ…貞操観念がないのよあなたは!もう終わりよ…」
それから何日かして隆史は大きなバックを両手に持ち家を出て行った
真子「パパ、遠くでお仕事?ママ…真子寂しいよ…」
千佳子「大丈夫よ、月に一度は、会えるから…」
隆史の車は遠ざかって行った
…完…
読んで下さっている方へ
始めまして秋子です
(*^_^*)✋
秋に書き始めたので秋子にしました
特別な意味はありませんです😅
初めて短編小説を書いています
何度も読み返して書いているつもりですが、誤字や脱字そして話しに辻褄のあわない箇所もあり、ハラハラドキドキ…反省しきりです😆
まだまだ未熟ですが、これからも書いて行きたいと思っています
よろしくお願いします
(*⌒▽⌒*)
それは、幸男が法事で実家に行き
その帰り道での事だった
長い高速を降りて、一般道へ出たのはもう夜10時近かった
自宅まではまだかなりある、夜道は暗くすれ違う車もまばらなになってきた
やがて、前方にいつも通勤で渡る橋が見えてきた
もう少しで着くと安心した時…
よく見るとなにやら前方左側に人影が見えた
ライトで照らされその人影は白く光った
そしてその白は、一瞬で近付いた
慌ててブレーキを踏んだ
アッ〰〰!!
ひいてしまったか?
動転して背筋が寒くなった
だが車に衝撃はなかった
幸男は急いで車から降りた
恐る恐る、あたりを見渡した…
だが、何もない
四つん這いになって車の下も覗き込んたが…
誰もいない…
橋はしんと夜の闇に包まれている
こんな時間、寂しい橋の上に人がいる訳がない
長時間運転して目が疲れたのか?
幸男はほっとしてまた車に乗って走り始めた
アパートに着いたのは11時近かった
シャワーに入ってビールを飲み
ベッドへ入った
ウトウトし始めた頃
誰かが布団の上に居る
その重圧で目が覚めた
目を開けると
目の前に 頭から血を流した女の顔があった
幸男は驚愕した!
「うッ…う…」
声がでない…
か…体が…動かない…
お化けだ!
助けてくれ!
助けてくれ!!!
心の中で必死に叫ぶが、誰にもどこにも届くはずもない
女はゆっくり枕元に座った
幸男は、夢か幻か…わけもわからないまま
底知れない恐怖にもがいていた
「おどろかないで…」
女が言葉を発した…
それは音として聞こえてくるのか
この女が伝えるテレパシーのようなものなのか?
幸男には確かに女の声が聞こえた
今まで味わった事のない不気味な空気
頭の中は恐怖の思考回路に支配された
ただ、この女はもう死んでいるのだと…
それだけは、分かった
「私はもう、死んでしまったのでしょうか……」
また女の言葉に恐怖が駆け巡ったが…
それは、涙をこらえるような…
悲しみがにじみ出るような弱い声だった…
幸男はこれが金縛りというものか?
動かない体のまま、そっと女を見た…
長いストレートの黒い髪、整った顔立ち…
年は20代だろうか?
女と目が合った
いくら美人でも血だらけの顔は流石に恐ろしい
幸男は、再び目を閉じた…
死んでいるのならさっさと、あの世へ行ってくれ!
なんで俺にとりつくんだ?
俺があんたに何をした?
お願いだから早く消えてくれ!
心の中で叫びつづけた
すると…
女は、ティッシュで顔の血を拭き取っている
なんと、そこにはキレイな女の顔が現れた
「ごめんなさい…驚かせて…あなたにはなんの怨みもありません…」
お化けが謝った…
ふいに幸男の体が少し軽くなった…
だがその分、緊張は現実味を帯びてきた…
まさか 俺がさっきやっぱり車でひいちゃったのか?
「いえ…あなたはひいてません、あなたの車が止まったので、私が勝手に乗ってしまいました…」
俺の車に乗っていたのか?
俺が連れて来てしまったのか?
ギョっとした
だが、まるで幸男の心の声が分かるのか、
女は幸男の疑問に答えてくる
お化けと不思議な意志の疎通が始まった…
別に幸男に対して悪さをする感じではなさそうた…
でも相手は幽霊だ油断はできない
「こんなに急に死んでしまうなんて…」
そう言うと、女はうつむいた…
泣いているのだろうか?
幸男は48歳で独身、仕事が忙しくてそのうちそのうちと思っているうちに、婚期を逃し
こんな年になってしまった
人並みの幸せではないかもしれないが、独りでのんびり暮らしてきた
多分この女は俺の人生の半分も生きてはいないのだろう
あまりに早すぎる死だ
気の毒っちゃ気の毒だよな…
俺になんか頼み事とか、誰かに伝えたい事とかあるのだろうか?
まるで江原さんみたいだが…
そう思った時
「お願い聞いてもらえますか?…」
どんな願い事なんだろう、皆目見当もつかない
だが、とにかく一刻も早くこの女お化けには、出て行って欲しい!
その一心だった
お…俺に出来る事なら…
女は話し始めた
女 「…実は、あるものを私が住んでいたアパートの部屋においたまんまなんです…気になって…死んでも死にきれないのです…」
幸男「…それはなんですか?」
女 「恥ずかしくて…とても…」
女は顔をそむけた
幸男は困惑している
女は意を決して
言った
「実は…その…バイブ…なんです…」
女は両手で顔を隠した
幸男 「はぁ?!…あの…一人で…その…?…バ…バイブですか?」
幸男は、恐怖もへったくれもどこかへ吹っ飛んだ
女は親族が片付けに来る前に…それを処分して欲しい…そう必死に頼んだ
そして自分の住んでいたアパートの住所と、説明を補足すると
「お願いします…」
そう言って、やがて消えた…
幸男はホッとすると、酷く疲れて深い眠りについた…
朝になった
昨日の事が蘇ってきた…
夢だったのか?
だが…
ゴミ箱の中には血のついたティッシュが あった
幸男はしばし放心した
そうだバイブだ!
誰も来ないうちになんとかしなきゃ
やがて ゆっくり起き上がると
出かける準備をした
女の住んでいたアパートの前に来た
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1405HIT 檄❗王道劇場です -
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今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 523HIT 旅人さん
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【愚痴】スーパーで起きた理不尽な出来事【聞いて欲しい】
スーパーで商品棚上部にある品物に手を伸ばしながら『手が届かなくて〜💦』と見知らぬおばさまに声をかけら…
20レス 512HIT 聞いてほしいさん -
美容院での会話が苦手
美容師と会話するのすごく苦手なんですけど、事前に会話なしでってお願いするの大丈夫だと思いますか?そう…
9レス 247HIT おしゃべり好きさん (20代 女性 ) -
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膝下ワンピースって人気ないんですか? ショートパンツやミニスカートにヒールをはいていた時代は声…
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10レス 287HIT 恋愛好きさん (20代 女性 ) -
これからの時代子ども作っても大丈夫?
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