冷蔵庫
19時
「ただいまぁ」
………
まだ帰って来てないのか…
うちの玄関は朝から電気がつけっぱなし
返事のないリビングは真っ暗
エアコンのスイッチを入れながらテレビをつける
ピッピピピッ…
『ママ職場』
プルルルルッ…プルルルルッ…
『もしもし…いつもお世話になってます松下の娘ですが…はい…お願いします』
…お腹空いた
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【広瀬さん家の晩御飯】
酢鶏の野菜あんかけ
ほうれん草とエノキのお浸し
玉葱と馬鈴薯の味噌
枝豆ご飯
「あい、最近…何も変わった事はないか?」
「変わった事……そう言えば先月より1㎏太った…えっっ、分かりますか!?」
「…いや……そう言う事じゃなくて」
調剤薬局と病院
似たような時間に仕事が終わる私達は
こうして自然に夜の食卓についている
外泊…したのはあの日だけ
『ちゃんと家には帰れ』
と…うるさい
「その他には…広瀬さんがちょっとだけ素直になってカワイイです。ホントにちょっとだけだけど」
「…もういい」
「あっ、可愛くない」
「…困った事が起きたら直ぐに言って」
「困った事?はい、その時は」
明日私は
塔子に会います
【料亭 かづき】
その歴史ある佇まいに圧倒的された
私が気軽に来れるような場所ではない事は…確か
赤紫に銀色の下弦の月が刺繍された大きな暖簾をくぐり中に入った
「いらっしゃいませ」
着物姿の女性が丁寧に迎え入れる
「すみません…香月 塔子さんとお約束していた者です」
「松下様ですね。お待ちしておりました。どうぞ御上がりください」
用意された履物に履き替えた時…正面の壁から天井に続く何かの模様のようなものを見つけた
思わずそれを目で追う
これは…桜……
正面の壁から長く続く廊下に向かって、天井や壁一面に満開の桜の絵が描かれていた
広い廊下はまるで桜のトンネルのよう…
「松下様…?」
「あっ、はい…すみません」
「女将がおります部屋へご案内致します」
私は塔子に向かってそのトンネルを抜ける
長い廊下を歩き何度か角を曲がり…大きな硝子越しに静かな庭園を眺めたところで女性の足が止まった
重厚な扉をノックする
「失礼致します。松下様をご案内致しました」
その扉を開け私に中に入るよう促す
「失礼します」
部屋の中は風情あるこの建物とはまるで違い、都会的な無駄のない部屋だった
真っ白なスーツ姿の塔子は私を見る事なくパソコンを打つ手を止めない
「急ぎの仕事があるの。そちらに掛けて…」
言われたソファーに座った
暫くするとさっきの女性がお茶と和菓子を出してくれた
静かな部屋にパソコンのキーを叩く音だけがする
私、緊張…してない
この空気は…
広瀬さんと同じ
「お茶頂きます」
15分くらい経ったところで声をかけてみた
「…」
返事なし
温くなったお茶に口をつける
ピピピッ…
『香月です、今送りました。はい…えぇ、えぇ……搬入は予定通り?…解りました。日程が決まり次第連絡します』
ピッ…カチャ
携帯が切られたと同時に塔子が私の目の前に座った
慌ててお茶を置きすっかりソファーに沈んでいた身体を直した
「お待たせしました」
「いえ、こちらこそお忙しい時にすみません」
「忙しくてあまり時間がないの。…3年振りよね。まさか貴女から連絡を頂くとは思っていなかったわ。ご用件は?」
…少し痩せた?
淡々と話す目の前の塔子は変わらず…綺麗だった
塔子はテーブルに置かれたシガレットケースから細く長いタバコを取り出し火をつけた
「私、広瀬さんが好きです」
形の良い唇から小さく煙を出す
「…知ってるわよ。今更それが何かしら?」
「広瀬さんと一緒に生きていきたいと思ってます」
瞬きをせずに塔子は私を見ている
「尚人と会ったの?」
「はい、広瀬さんには私の気持ちは伝えました」
「貴女…尚人の母親が死んだのを知ってて会ったのね?」
「はい、偶然でしたが」
「その弱味につけ込んで尚人の寂しさを自分が埋めてあげようとでも?…笑っちゃうわ」
…本当に笑いながら塔子は硝子の灰皿にタバコを押し付け吐き捨てるように言った
「くだらない。貴女に何が出来るって言うの?」
「極々…普通の事です。一緒にご飯を食べたり、時々喧嘩したり、仕事の愚痴を言い合ったり、涙が出るくらい一緒に笑ったり。そんな普通の…当たり前の事です」
「そんな事…そんな事で尚人が満足するとでも思ってるの!?貴女と尚人は違うの!」
「そうです。私と広瀬さんは違います」
「それが解ってて…どうして尚人なの」
「…塔子さんからすれば私は普通のどこにでもいる人間だと思います。貴女は綺麗で仕事でも成功してて可愛い子供までいる。同じ女性として…正面憧れます。でも、私は貴女にはなれない…それを解ってます」
「だから…?」
「だから無理をしないで…私に出来る普通の事で一緒にいます。誰かの代わりじゃなく…私は広瀬 尚人じゃなきゃダメだから」
「貴女を…尚人が受け入れるかしら?尚人が大事なのはあの母親よ、死んでもきっとそれは変わらないわ」
「それも広瀬さんなんです」
プルルルルルッ…プルルルルルッ…
塔子の携帯が鳴る
『…はい。…はい、解りました。今から伺います』
ピッ…
テーブルに携帯を置き塔子は静かな目で私を見た
「まだ仕事があるの」
「はい、お邪魔しました」
スッと立ち上がり品の良い鞄に書類の束を詰め始めた
独り言のように塔子が話し出す…
「年が明けたら…私…シンガポールに行くの。あっちに店を出す事が決まって。父である会長からの命令よ」
「…」
「私は…ずっとこんな風に生きてきた。今更それを変える気もない。この生き方が私に出来る事だから」
カチャ
『お客様がお帰りになります。お見送りを』
そう内線をかけ電話の受話器を置いた塔子は私の目の前を通り過ぎる
「着物に着替えるから」
私は綺麗にのびた背中に向かって言う
「塔子さん。貴女も誰の代わりでもない…ひとりの香月 塔子として生きてください」
「生意気ね」
振り向かずそう言うと部屋の奥に消えて行った
「なぁ…やっぱり俺の車で行かないか?」
「どうしてですか?」
「ほら、あっちの方が…広いし」
広瀬さんは親指を立てて自分の四駆を指差す
「えぇっ、ガソリンだって満タンにしてきたし、CDだってお気に入りをたくさん持ってきたし…」
「CDなんて俺の車でも聴けるだろ…」
助手席側の窓に頭を突っ込み運転席を覗き込む広瀬さん
「もしかして…私の運転を信用してないとか?」
「…いや、そう言う訳じゃぁ…」
ヴィーン…
「ばか!危なっ…!」
「乗って!」
助手席の窓を閉めた
彼は渋々乗り込む
「道は解ってるのか?」
「ナビがあるから」
「はっ?どこに」
「ここに!」
彼の頬っぺを指で突く
「……水流の方だろ?高速で行った方が早いな」
「了解です!」
「高速乗った事あるんだよな?」
「初めて!」
彼が慌ててシートベルトを締めた
『一緒に行く』
…まさか彼がそう言うとは思わなかった
「何年振り?」
「11年です」
順調に高速を走りこじんまりとしたレストランのあるパーキングで休憩
「…広瀬さん…どうして一緒に来たんですか?」
「あいのDNAの成り立ちに興味があった」
「へっ?」
「それに…生きて来た半分は一緒にいたんだろ?お前の構造を知るヒントになる」
「…あのぉ……もっと普通の言い方出来ません?」
彼がコーヒーを飲み干した
「簡単に言えば…あいの親父さんに会ってみたい」
「それで良し」
「生意気だな」
高速のお陰で2時間ちょっとで目的地に着いた
「高速初めてって言う割りには…飛ばすなぁ…」
「速く走らなきゃ高速じゃないですよ」
「…そうだな。なんか緊張して肩凝った」
「緊張のせいですか?…それは歳のせいじゃ……」
銀縁のメガネを光らせた広瀬さんの視線
「あいは…肩凝る事はないな」
サッと私の胸に視線を移し直ぐに窓の外を見た
「ご飯抜き!」
「……正直者なもので」
正直者!?
…そうよね、正直者だけどひねくれ者なのよね
自分の答えに妙に納得
「待ち合わせ場所までは…探さないとさすがの俺にも無理」
「ここからそう遠くはない筈なんで……車でぐるぐる探してたら見つかりそうですけど」
とりあえず車が向いている方向に走り出した
「あい」
「はい」
「逆だ。2つ目の信号右」
携帯を見ながら彼が言った
「ついて来て正解。俺の働きに飯宜しく」
『ねぇ兄貴。パパの連絡先を教えて欲しいんだけど』
『えっ、あっ、うん』
『会いに行こうと思って』
『そうか、行って来いよ』
『会って…くれるかな』
『会うよ。待ってたんだから』
兄貴は今、私の家でひとりソワソワしてると思います
ママは…
『宜しく言っといて』
だって
「あい、着いた」
慣れない土地の運転にしびれを切らした広瀬さんがハンドルを握っている
「…緊張してるのか?顔色が良くないぞ?」
「違う……トイレ!!」
「はっ?」
バンッ…
駐車場に呆れる広瀬さんを残し店に駆け込んだ
はぁ~…
ほっと一息
あっっ、広瀬さん置いてきちゃった…
鏡の中の【あい】と目が合う
…私の事
見つけられる…?
私はね
直ぐに見つける自信があるよ
口元の同じほくろに触れた
ねぇ
私の事
大切だった?
化粧室のドアを開けると、壁に寄りかかり腕組みをした広瀬さんの後ろ姿を見つけた
そ~っと近づく
「わっ!!」
彼の背中を両手で押した
「…小学生かよ」
…つまらない
「まだ来てないな」
「えっ?」
「親父さん」
広瀬さんの位置からは店内が見渡せた
「会った事ないじゃないですか…」
「解るよ。あいの親父さんくらい。あそこの席にしよう」
「あっ…はい」
広瀬さんは私の手を取り、駐車場が見える窓側の席に向かって歩き出した
大きな手は
『大丈夫』
と…言ってくれてる
4人掛けのテーブルに向かい合って座った
「広瀬さん…これじゃぁ…ち、父が来た時にどこに座るんですか?」
「俺が移動する」
「失礼致します。ご注文はお決まりでしょうか?」
「待ち合わせをしてるので後から」
「かしこまりました。またお申し付けください」
広瀬さんが壁の時計を見ながらオーダーを断った
「そろそろ…だな」
待ち合わせは11時
サッと店内を見るとひとりで座っている女性客は3人…
そのうち私と同じ年代くらいの女性が2人
パパには『広瀬さん』と一緒に来ている事を伝えていなかった
「あい」
「はい?」
「会いたかったんだろ?」
「…」
「だったら、それよりも小さな事に拘るな。その時の気持ちのままに動くのがあいだ」
見透かされてたみたい
「生意気だなぁ」
広瀬さんの口真似をした
「仰る通り」
広瀬さんが柔らかな笑顔で応える
その時スッと…私の横を通るひとがいた
あっ…
広瀬さんが私の視線に気付きまた笑った
「パパ、ここ!」
「あい」
振り返る…パパ
「パパ…」
「ごめん、あい!…先にトイレに行って来る」
パパはそのままキョロキョロしながらトイレを探し『あった!』と言う顔をしながら奥の方へ消えて行った
「あはは、親子だな」
広瀬さんが声を出して笑った
「…すみません」
恥ずかしい…
暫くするといそいそとジャケットを脱ぎながらパパが戻って来た
「ごめん、ごめん」
先ず初めに…なんて言ったら良いんだろう
目を細め笑顔で私を見るパパの前髪には私の知らない白い筋が出来ていた
「元気でしたか?」
思わず丁寧語…
「ああ、遠いところをよく来てくれたね、ありがとう」
パパの口元がお月様のようになる
「ここまでどれくらいで……」
と言いながら私の前に座ろうとしたパパが止まった
「…あい……この方は!?」
今頃かよっ!
きっと私も広瀬さんも心の中で同時に突っ込んだと…思う
「……初めまして小川さん。広瀬と申します」
パパが固まった
「パパあのね…」
パパは私の声に我に返ったのか座りかけてた腰をあげ慌てて立ち上がった
広瀬さんも立ち上がる
「初めまして…あいの……父です」
広瀬さんは軽く会釈すると私の隣に席を移動した
沈黙が流れる……
「失礼致します。ご注文はお済みでしょうか?」
店員の声にパパと私は慌ててメニューをめくった
「ご飯はまだだろう?」
「はい」
「何でも好きなものを頼むと良いよ、あぁこれは!?」
パパが指差したのは国旗が立ったハンバーグセット
それ…お子様ランチ
「ひろ…広瀬さんはどれにしますか?」
パパの額には季節外れの汗……しどろもどろに会話を続ける
「私はBランチで」
「の、飲み物は?」
「ホットコーヒーを」
「じゃぁ、私も同じもので…あいは?」
「私もBランチで良いです」
「飲み物は?ああ!分かったこれだな!」
パパが得意気に指でトントンとする
メロンソーダ……
そしてまた沈黙
「いきなりお邪魔してすみません」
頭を下げ口を開いたのは広瀬さんだった
「あぁいや…その…広瀬さんはあいの…」
「お付き合いさせて頂いてます」
「そう………」
パパがハンカチで汗を拭いながら俯いた
「ママがパパに宜しく伝えてって…言ってました」
「そうか…お母さんは元気か?」
「はい、兄貴も今うちに来てます」
「彰も?…暫くうちに寄りついてないんだけど」
…兄貴…
「パパ、これ…ありがとうございました」
私はバッグからあの通帳と印鑑を取り出し差し出した
「これは…」
「半分、遣わせて頂きました、あの車に」
窓の外
ちょうど真ん中に見える赤い車に視線を移した
「ありがとうございました」
私は通帳と印鑑を差し出したまま頭を下げた
「いや、これはそのまま持っていなさい」
「もう十分です。私もちゃんと…看護師として働いてるから」
「それとこれとは別だよ」
「失礼致します!お待たせ致しましたぁ!」
運ばれて来た3つのBランチに広瀬さんが私の手を引っ込めた
「いただきます」
そう初めに言ったのはやっぱり広瀬さんだった
「さ、冷めないうちに食べようじゃないか」
「はい、いただきます」
カチャカチャとフォークとナイフの音だけがする
私の頭の中は…混乱していた
このまま何を話したら良いだろう
『奥さんは元気?』
とか…おかしいし
パパってこんな感じだったっけ…?
背も…もう少し高かったような
あぁ…私が大きくなったのか
「これ、あいが作ったやつの方が美味いな」
「へっ?」
カチャンッ…
パパがフォークを落とした
「あいさん、料理がとても上手なんですよ」
パパはまた慌ててフォークを拾う
「そ…そうなんだね。良いお嫁さんに……」
はっとした表情でパパは続きを言うのを止めた
「良い嫁さんになってもらおうと思っています」
広瀬さんがフォークとナイフを静かに置いた
なってもらおうって…なるに決まってるじゃない!
……えっっっ…!?
カチャンッ…
私までナイフを落としてしまった
「広瀬さんは…あいとそう言う付き合いを?」
パパの視線は広瀬さんに真っ直ぐに向けられていた
「はい、私は初めからそのつもりです」
…初耳だ
「失礼ですが…あいより少し歳上ですよね?」
「かなり歳上です。38です」
「今までずっとお一人で?」
「はい、それが何か不都合がありますか?」
「いや……その歳までひとりでいたのには何か理由があるのかと」
「個人的な理由はありますがあいさんとの今後には…関係ありません」
「ご両親は?」
「母は亡くなりました。父親は訳あって一緒に暮らした事はありません」
「訳あって……不躾だが…広瀬さんには理由や訳が色々あって貴方の事が私にはよく解らないんだが」
「パパ、それは…私達には関係ない」
「…関係ない事ないだろう?あい…ちゃんと考えての事なのか?結婚はそんな勢いや感情だけでするものじゃないぞ?」
「…何?なんでパパがそんな事言えるの?…じゃぁ、パパとママは考えないで結婚したの?だから…私を置いて出て行ったの!?」
「それは……」
パパが口ごもる
「いらなくなったんでしょ?」
勢いに任せて言ってしまった
「いらないなら…正体不明のこの私が…このまま頂きます」
広瀬さんはの顔は…挑戦的に笑っていた
「いらない訳ないだろっ!どれだけ…どれだけ大事な娘だと思ってるんだ!いらないならって…ひとの娘をモノみたいに…!私とこの子の母親は確かに離婚した。それを失敗と言うのかも知れない。だが…あいが私の娘である事は…ある事は…私の生き甲斐なんだよ!私の事を誰がなんと非難しようと、この子が拒否しようと…あいは私の娘だ」
パパの顔は真っ赤になり…目も充血していた
私は…知らないうちに涙が出ていた
「それをお聴き出来て良かったです。私の無礼をお許しください」
広瀬さんは深々と頭を下げた
…親子でこの
広瀬 尚人にはめられた
小さな泡を踊らせた鮮やかなグリーン
メロンソーダなんて…いつ振りだろう
それから…広瀬さんはパパに自分の話をした
彼の人生に起こったひとつひとつの事は知ってはいたけれど…本人の口からそれらが繋がって話されるのは初めてだった
感情の起伏もなく
淡々と話される
【広瀬 尚人】が
かえって物悲しく… 私の心は震えた
「ありがとう」
広瀬さんの話を聴き終えたパパが最初に言った言葉
そして…
「私の娘と…幸せになりなさい」
と…言った
因みに…
【本日のBランチ】
牛すね肉の赤ワイン煮込み
セロリと檸檬の冷製スープ
こんなの…作った事ありません
パパは私達が見えなくなるまで道路端から身を乗り出し見送ってくれた
『また会おう』
って…鼻を真っ赤にグズつかせながら言った
「そっくりだな」
片肘を窓の縁にのせ窓の外を見る広瀬さんは笑っていた
「あぁぁっっ!!」
「なっ何だよ!?」
「通帳と印鑑……返しそびれた…」
「貰っておけよ」
「でも……」
「大事な娘の為に汗水流した愛情の証だ」
それは…ただ単に金に姿を変えた『愛情』
「広瀬さん」
「ん~っ?」
「私と結婚してみませんか?」
「してみるか」
「…何しに来たの?」
1月…
シンガポールへ旅立つ塔子の見送りに来た
広瀬さんと二人で…
「帰って来るんですよね?」
「いつになるか解らないわ」
「待ってます、広瀬さんと」
塔子は広瀬さんに視線を移した
「尚人、待たないわよね?」
「待たない。もういいだろ?」
「ふふ…初めてね。私を拒否するのは」
塔子の長い指が広瀬さんの髪に触れる
「さよなら、尚人」
「さよなら…姉さん」
塔子が別れ際ギリギリに私に渡してくれた物があった
【桜の形の帯留め】
それは広瀬さんが美桜さんに贈ったものだった
6月
私と希呼は一緒に式を挙げる事になっている
ママと兄貴に挨拶を終えた広瀬さんから 『お泊まり』
も許された
でも…結局家には帰っている
「やばい!遅刻するっ!」
冷蔵庫のホワイトボードに慌ててメッセージを書き込む
『ママへ
昨日、鰯の煮付けを作って持って帰りました
冷蔵庫に入ってます
温め直して食べてね!
いってきます!!あい』
‐END‐
🍀キキより🍀
長い時間お付き合い頂きありがとうございました
また改めて
『後書き』をつけさせて頂きます
読んでくださったすべての皆様に
🍀感謝🍀🙊
被災地の皆様の復興とご健康を心よりお祈り申し上げます
キキ
🍀後書き🍀
これはフィクションです
登場する人物名、団体名は実在するものとは一切関係がございません
ご了承ください
尚、『諭さん』につきましてもキキにより創られた『その後』になります
キキがこの『冷蔵庫』を書こうと思ったのはある女の子との出会いがきっかけでした
ご存知の方もいらっしゃると思いますが 『秘密』『時間』を書く中でキキに対し
『なぜ?』
『どうして?』
を心のままにぶつけてきた女の子です
その時キキにはそれに応える事が出来ませんでした
『秘密』『時間』はあまりにも…彼女の閉ざされていた部分を抉り過ぎた
直接的な因果関係は無くとも…それを書くキキに彼女の疑問に応える資格も術もありませんでした
【大人ってズルい】
その通りです
『冷蔵庫』に登場する
『広瀬 尚人』
彼にはモデルがいます
キキの【心友】
設定は勿論フィクション
彼にも長年問い続ける疑問があります
『【俺】は必要?』
『【俺】は何?』
彼がこのような疑問に縛られている経緯は伏せさせて頂きますが…
『貴方は必要なの』
ただ…それを言いながら彼を抱き締めるひとはいません
彼がそれを望んでいるのはキキではありません…誤解のないように
それはこの世にたったひとりの女性
叶わない望みです
キキに解く事が出来ない二人の疑問を
『冷蔵庫』で考えてみる事にしました
『尚人』は【心友】
『あい』は…貴女です
その女の子は『冷蔵庫』にハッピーエンドを求めました
【ハッピーエンド】に向けて
これはあの時応える事が出来なかった…キキが出来る精一杯です
これを貴女があの時くれた【手紙】の返事にさせてください
そして大切な【心友】
まだ時間がかかりそうですが…貴方が誰かと笑って一緒にいる事をキキはいつも願っています
これは『続けて来た事の【変化】を恐れない始まり』です
バランス
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必ず
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キキ
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