―8月の決心―
2000年8月2日。
その日から始まった。
いや…。
その日で終わったと言うべきか
とにかく
8月2日は私にとって運命の日だった。
この決断は正しかったのだろうか?
(誹謗中傷のコメントは止めて下さい。
不快な方は読まないで下さい)
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実家に戻り、
理人は外出中なので明日再び迎えに行くと両親に伝えた。
両親は、「離婚の報告も兼ねて、浩二さんと浩二さんのご両親が理人を連れてくるべきだろう?」と怒ったが
「私や理人の荷物も残っているから、私が迎えに行く方が都合がいいから。お義母さんたちに【私が迎えに行きます】と言ったの」と両親をなだめた。
もちろん、先ほどのお義母さんとのやり取りは、両親には言わなかった。
翌日、私は改めて理人を迎えに言った。
両親に言われた通り、養育費の話もするつもりだった。
しかし・・・
その席で夫の口から意外な言葉が出た
「親権は、俺が貰う」
「親権は俺が貰う」
「え・・・?」
想定外の言葉に、私はただただ驚いた。
親権は、当然私に与えられるものだと思っていた。
私はパニックになった頭を、必死で働かせる。
フル回転で、夫が親権を取れない理由を探す。
あった!!
「親権って・・・だって浩二さんには安定した収入がないし・・・」
これは浩二さんが傷つく言葉だと分かっていたが、私は必死だった。
夫は気まぐれで言っているに過ぎないだろうが、一秒でも早く「親権は冷花に渡すよ」と言い直して欲しかった。
だから私は、浩二さんになくて私にあるもの・・・【安定した収入】を挙げた。
私の苦肉の一言に、浩二さんとお義母さんの口元が僅かに緩んだ。
「冷花は知らないと思うけど・・・」
浩二さんがイヤミを含ませながら言った。
「先月から、親父の会社を継ぐことになったんだよね、俺。
だから俺、自営業の経営者。
安定した収入と、自営業ならではの融通も効くわけ」
嘘!!
つい先日まで、夫は昼間家でゴロゴロしてたじゃない!!
それに自営業を継ぐのは、浩二さんではなく慎太郎さん(浩二さんの兄。長男)じゃないの!?
パニックになった私は思わず「慎太郎さんは?」と的外れなことを聞いていた。
「慎太郎はね…」
待ってましたとばかりに、お義母さんが口を開いた。
「慎太郎はね、音信不通なの。
大学を中退して家を飛び出して・・・もう5年以上音信不通。
だから、浩二が事実上の長男なの」
私の中で、全てが繋がった。
予想もしなかった展開に、私は頭が真っ白になった。
不意に気づいた。
理人は!?
理人は、本当に奥に居るの!?
私が義両親宅を訪れた際、最初に「理人は奥の部屋で寝ていると」言ったお義母さんが急に信じられなくなり、
私は勢いよく襖を開けた。
・・・
居ない!!
理人が居ない!!
私はパニックになった。
「理人は!?
理人はどこ!?
理人を返して!!」
私は泣きながら浩二さんに殴りかかった。
義両親がそれを制した。
私が落ち着くのを待って、お義母さんがゆっくりと話し始めた。
「別に、一方的に冷花ちゃんから理人を取り上げるつもりはないのよ。
でもほら・・・
冷花ちゃんは人の話を冷静に聞けないし、現にこうやってパニックになってるでしょう?
私たちはそれを見越してたから、今日は理人を親戚(お義母さんの妹さん)に預けてきたの」
お義母さんは得意気だった。
「離婚の為に迎えに来た子供が二度も不在でおまけに『親権を渡さない』みたいに言われたら・・・冷静でいられないのは当然でしょう!?」
私は泣きながら訴えた。
私のパニックを予想していたのか、義母は常に冷静で穏やかだった。
「ねぇ冷花ちゃん。
母として、子供と離れるのがどんなに辛いかは、私にもよく分かるわよ。
でも良く考えてみて。
理人は生まれからずっと、ここで暮らしている。馴染んだ家、馴染んだ保育園、馴染んだ家族。理人の家はここ。
そして・・・
育児してるのは誰かしら?
浩二が夕方、理人と散歩とし買い物に行く。風呂に入れる。
私が風呂から上げる。
私が夕食を作り、浩二が理人にそれを与える。
三人で遊ぶ。
あなたが帰宅し、浩二を寝かせつける。
あなたはそれだけ。
育児してるのは、ほとんどが浩二じゃない?」
私は返す言葉がなかった。
浩二さんは、昼間家に居るから・・・
私だって、理人に朝食を与え保育園に送るという「育児」をしている。
しかし、そんなことが充分な「育児」に値しないのは重々承知だった。
【浩二さんの収入が安定していれば、私は働かずに育児が出来た】
それは言えないし、結局は水掛け論だ。
黙り込む私にお義母さんが言った。
「浩二は融通が効く自営業だし、収入もあなたより上。
育児をサポートするのは、産まれた時から毎日理人と接している私。
あなたは今、情緒不安定みたいだし
新しい保育園に新しい仕事・・・理人を育てる環境は何ひとつ整っていない。
理人の親権は浩二が持つ。これが自然な流れじゃないかしら?」
夫が、薄っぺらい紙を私に差し出した。
離婚届けだった。
理人の親権者の枠には、夫の名前があった。
夫が言った。
「署名してくれないか」
⚠お詫び⚠
No.46で「理人を連れて実家に帰った」とありますが、間違いです。
正しくは「理人を連れず実家に帰った」です。
文才がない上に
誤字脱字、記入変換ミスが多く申し訳ないです。
今後は注意します。
すみません。
冷花
放心状態で離婚届けをぼんやり眺める私に、お義母さんがトドメを刺した。
「母子家庭にしろ父子家庭にしろ、結局は冷花ちゃんか浩二が働かないといけないのが現実よね。
じゃあ、最終的には【誰が理人の世話を見るのか】という問題じゃないの?
理人の世話をするのは、冷花ちゃんのお母様より私が適任ではないかしら?」
黙り込む私をよそに、お義母さんは続けた。
「冷花ちゃんが納得いかないなら、親権の裁判をしてもいいのよ」
私は、理人を手放すつもりは一切ない。
だから、親権について裁判をする旨を告げた。
私は母だ。
しかも
浮気も借金も虐待もしていない。
すんなり親権を取れるという自信はあった。
根拠もない自信だったが、「母」という権力を信じていたから簡単だと思った。
しかし・・・
裁判は、思いも寄らぬ方向へと流れてしまった・・・
その日は理人を連れ帰ることを諦め、私は実家に戻った。
もちろん、来週末に必ず理人を返して貰うよう約束は交わしていた。
まずはその約束が果たされた上で、理人の親権をどうするかを前向きに考えます、と私は返答した。
夫と夫の両親は、私の気持ちに理解を示し、来週末に理人を渡すと返答してくれた。
私は前向きに検討するつもりはなかったが、とりあえず理人を返して欲しくてとりあえずそう言ったに過ぎなかった。
義親と夫は、すんなり納得してくれた。
【検討なんかしない。理人は私が育てる。
一度私が引き取れば、あとはどうにかなるだろう。
とりあえず、来週末までの我慢だ】
若くい私は、来週末には全てがうまくいくと思っていた。
しかし義親と夫は、私の浅はかな考えを完全に見破っていた
その週の木曜日。
私の実家に、私宛ての内容証明が届いた。
母より早く仕事から帰宅していた私が、それを受け取った。
その内容は、
【理人の母親であるあなたはずいぶん前から育児を放棄している。
夫・浩二との離婚に伴い、あなたの親権を放棄して欲しい】という内容のものでした。
私にも母として至らない点はたくさんあったのは事実。
でもとりあえず週末に理人を取り返せば何とかなるだろうという打算があった。
しかし、それを見透かされたような内容証明。
しかも、【育児放棄】と謳われている・・・
私はすぐさま夫に電話を掛けた。
私は夫の自宅に電話を掛けた。
夫は多分不在だろう。
万が一夫が在宅であっても、夫は電話には出ない人だ。
私は、お義母さんと対峙することになるであろう覚悟を決めて電話を掛けた。
電話の呼び出し音が鳴る。
プルルル・・・
プルルル・・・
プル
予想より早く、応答があった。
「もしもし」
その声は、意外にも夫のものだった。
「私。冷花です・・・
今、内容証明が届いて・・・びっくりしてるんだけど・・・」
夫は黙っている。
「意味が分からない。
不安だから、今から理人を迎えに行きたいんだけど」
続く沈黙。
「・・・こっちから掛け直すから」
夫が言った。
約1時間後、
私のもとに弁護士と名乗る男性から電話が掛かってきた。
折り返しの電話を掛けてきた弁護士は、
「冷花さんも息子さんの親権を主張するなら、これから調停をするしかないですね。
ただ・・・
調停期間中、息子さんはご主人側に預けておいた方がいいのではないですか?
あなたには、息子さんを引き取る基盤が何ひとつ整っていない。」
弁護士と名乗る男性は、そんな内容のことを一方的にまくし立てて電話を切った。
私は呆然としたまま、いつまでも受話器を握りしめていた・・・
理人を、奪われるかも知れない・・・
私は、底知れぬ不安と恐怖を感じた。
両親は、私の離婚に対して非難めいた言葉はひとつも言わなかった。
その代わり、こと細かに聞いてきたり心配することも皆無だった。
しかし両親は、決して心配していない訳ではない。
大人としての私、理人の母としての私を認め、両親は敢えて私に口出しをしなかった。
私はそんな両親の期待を、これ以上裏切りたくなかった。
離婚した上に、親権も奪われそうだなんて・・・
そんなこと、決して両親には言えなかった。
そして長い長い調停が始まった。
両親には
「理人と暮らす環境(保育園や私の新しい仕事)が整うまで、夫と義母に理人をお願いすることにした」と嘘の説明をした。
最初は私の考えを尊重してくれた両親だが調停期間が長引くに連れて私は両親に真実を隠しきれなくなった。
3回目の調停を終えたある日、
私は親権を巡り夫と争っていることを両親に正直に告げた。
両親は怒り狂った。
「理人は絶対に渡さない」と。
その言葉は、両親が孫を思った言葉ではなかった。
理人の母である私を思った言葉でもなかった・・・
両親は改まってこう言った。
「理人は絶対に(浩二さん側に)渡さないで欲しいの。
ママとパパが、理人を養子に貰いたいの。
冷花はまだ若い。
自分の人生をもう一度謳歌して欲しい。
その為にも、ママとパパが理人を養子に貰いたいの。うちには跡継ぎも必要だし・・・
理由はたくさんあるけど、一番は冷花の未来。そして理人が可愛いから。。
ママとパパが、理人を育てたいの。養子に欲しいの」
予想もしていなかった両親の言葉に、私はただただ驚いた。
✏匿名さん、凹み屋さん✏
読んで下さってありがとうございます。
「8月の決心」大筋は事実に基づいていますが・・・幾分10年以上前の話。細かい会話などは脚色があるかも知れません。
この先は倫理違反の人生になりますが、温かく見守って頂ければ幸いです。
コメント、とても嬉しかったです。
ありがとうございました。
調停は肉体的な労力以上に、半端ではない精神的労力を使う。
「いかに駄目な親か」ということを、調停員に1時間近くダメ出しされるのだ。
もちろん、正確に言えば調停員がダメ出ししているのではない。
調停員は、別室に居る夫の発言を私に伝えているだけに過ぎない。
しかし何往復もしながら夫の発言を私に告げる調停員を見ていると、調停員に責められている気分になる。
学校の先生はもちろん親にも責められた経験のない私が
私のことを何も知らない調停員に毎回毎回責められないといけないのか・・・
調停を重ねる度、私は「私には、母を名乗る資格はないのかも知れない」とすら思えてきた。
しかし私の両親は、「理人を養子にしたい。だから必ず親権を取るのよ!」と強く私に訴え続けていた。
理人に会いたい。
理人を抱きたい。
理人の香りに、顔をうずめたい・・・
私の望みは、それだけだった。
調停は、ほぼ月イチのペースで執り行われた。
離婚宣言から1年近く経過していたが、理人の親権が定まらないので私と夫の正式な離婚は成立していなかった。
7回目の調停を迎える頃には1999年になり、理人は間もなく2歳を迎えようとしていた。
調停の度に、「母親失格」と告げられているような屈辱。
両親から「親権はまだなの?」という催促。
輪までの願いは、ごく平凡なこと。
理人を抱きたい。
理人の匂いを満喫したい。
毎日理人と一緒に眠りたい。
私の根本的願望はただそれだけだった。
しかし
長引くだけで平行線をたどる調停。
1年近く会えない我が子。
攻めるような調停員と自責の念。
親からのプレッシャー。
狂おしいぐらいに理人を抱きたい気持ち・・・
私は徐々に精神面で追い詰められていった。
調停で「母としての私の存在」を、徹底的に否定されているように感じた。
調停で味わう屈辱。
その屈辱を晴らし自らの自尊心を回復するかのように、私は仕事に没頭した。
残業も買って出た。
調停の度に私は母親としての自信を失う。
そして、それに反比例するかのように、私は仕事での評価と会社での居場所を確立して行った。
思うように進まない調停の苛立ちを、私は仕事にぶつけた。
幸か不幸か、会社での私の評価はグングン上がった。
私は現実から逃げるように、ますます仕事に没頭した。
そんな時、私は彼に出会った。
自分の人生の大きな決断を下すキッカケとなる男性に
私は出会ったのだ。
彼の名前は桜井秀(サクライ シュウ)
私より、8歳年上の32歳。
東京本社に勤務する営業人事部の課長だ。
彼は、「研修指導に関する新マニュアルの伝達と、指導者へのレクチャー」の為に、私の勤務先である札幌支社にやって来た。
彼が来る数週間前から、噂好きな事務の女の子達の間では、色々な桜井課長の情報が交錯していた。
「桜井課長は、若くてやり手らしいよ」
「なかなかの男前らしいよ」
「でも、残念ながら・・・本社でも有名なマイホームパパらしいよ~(泣)」
桜井課長の前評判は飛び交っていた。
桜井課長は1ヶ月間札幌に滞在する予定だった。
そして「新人研修」担当の私は私の直属の上司(女性)と共に、桜井課長から直接のレクチャーを受ける予定になっていた。
私と桜井課長は、
出会った瞬間からあれよあれよという間に惹かれ合い不倫関係に陥ってしまった。
不倫に至る経緯を美化するのは簡単だ。
桜井課長と私。
互いに抱える苦境を長々と綴り、不倫を正当化する手段もあるだろう。
でも私は、敢えてそれをしない。
不倫に至る経緯を同情がてらに語るつもりはない。
私たちの不倫はいかなる境遇であっても正当化できるものではなく、
いかなる理由があってもするべきではない行為であることは分かっている。
しかし、私たちは互いに深く求め合ってしまった。
私が桜井課長と肉体関係を持った時
「今から始まる」
私の中で直感が働いた。
桜井課長は既婚者。
しかも、東京本社から北海道に出向しているだけの人。
普通なら
「一度だけの関係」
「酒の勢いでの過ち」
それで済む程度の過ちだろう。
しかし私は、ここかは始まる「何か」を直感的に感じていた。
そして
桜井課長は私以上に、その「何か」を感じていたのだろう。
それは【運命】?
不倫者が言う【運命】
ありがちなセリフ。客観的には、お笑い草だろう。
しかし
出会ってたった数ヶ月で全て彼がを捨てる決断をしてくれたら?
それでも、
【不倫に溺れてるだけのバカップル】?
桜井課長は、私の為に全てを捨てると言ってくれた。
桜井課長が1ヶ月間の札幌出張を終える数日前に、私たちは初めてのセックスをした。
どちらが誘ったわけでもない。
ごくごく、自然にそうなった。
私が無意識に桜井課長に惹かれていたように、桜井課長も無意識に私に惹かれていたのかも知れない。
桜井課長が東京に帰るまでの数日間、私たちは激しく互いを求め合った。
そして、桜井課長の出向が終わった。
桜井課長は東京に帰ってしまった。
でも私には、不思議な確信があった。
「桜井課長とは、これで終わりではない」
二人で過ごす時間に、そんな濃厚な会話があったわけではない。
しかし、
「桜井課長と何かが始まる」という不思議な確信が、私にはあった。
削除はそんな批判内容だったんですか❓主さんもいっている様にこの話はだいたい事実に基づいているけど10年前のこと。しかも、倫理に反しているから、不快な方はスルーでとお願いしているじゃないですか。10年たって気持ちの整理がついた主さんの話は赤裸々で飾りなく好感もって読んでます。これからも見守らせていただきます。
主様
いつも楽しみに読ませていただいております。
そろそろ感想スレをお願い致します。
不倫ネタに噛み付く不快なレスが増えて削除レスがあると読みにくいし…
感想スレが出来たら自レス制限なされば良いと思います。
✏あぃさん
✏はやぶささん
✏ドットさん
✏ジプシーさん
ありがとうございます。
件の批判レス自体を私は見ていませんが、
あぃさん、はやぶささん、ドットさん、ジプシーさんのお気遣い、とても嬉しかったです。
ありがとう❤
感想スレを作り、こちらを自レスのみとさせて頂きます。
桜井課長が本社へ戻り、静かに日常が始まった。
私が感じた桜井課長との一方的な運命や、根拠のない自信。夢見心地な恋愛気分。
浮かれていた私は、徐々に現実に引き戻された。
うまくいかない仕事。
居心地が悪くなり始めた実家。
平行線を辿る調停。
メールすらない桜井課長。
私は正に八方塞がりだった。
そして調停も、佳境を迎えていた。
そして
10回目の調停。
私は自ら親権を放棄した。
仕事。
親との関係。
子供との関係。
夫との関係。
遊ばれた不倫ね関係。
私はにはどの関係もうまく築けない。
みんなから嫌われ、責められ、排除されているような気がした。
私はもう疲れ切っていた。
正常な判断が出来ないぐらい、疲れ切っていた
私が親権を放棄することにより、ようやく離婚が成立した。
【子供を手放すなんて】
親からはかなり責められた。
我が子供を捨てた私が、自分だけのうのうと実家に居座り親の世話になれるはずがない。
私は早々に実家を出て、会社の近くにマンションを借りた。
僅か数年とは言え、一緒に住んだ夫と義理両親との別れは、やはり辛くもあった。
実親に白い目で見られるのも辛かった。
しかし最も辛いのは理人を抱けないこと。
ちょっと臭いけど、何度も匂いたくなる理人の頭の匂い。
プルンとしていて、噛みたくなるような股。
寝ながら繰り広げられる百面相・・・
理人を失った悲しみは、半端ではなかった。
しかし、もうどうにもならない・・・
私はあらゆる空虚感を埋める為、目一杯仕事をし目一杯遊んだ。
一人暮らしも2ヶ月が過ぎていたある日。
桜井課長が再び札幌に来るという話を上司から聞いた。
桜井課長からは、4ヶ月前の肉体関係以来連絡すらない。
・・・私とは、遊びだったんだ・・・
私がようやくその事実を消化した頃、
桜井課長が再び札幌に出張してきた。
そして
その出張初日の食事会で、私は思いも寄らぬ事実を知った。
それは
私の上司である中原課長が発した、ごくごくありふれた話題から始まった。
「桜井課長の息子さん・・・勇気くんでしたっけ?
確か、うちの娘と同級生でしたよね?
じゅあ・・・勇気くん4月に幼稚園入園ですよね♪
制服とか合わせました?
親としての節目だから、感動しますよね~♪」
中原課長は小学生と保育園に通う娘さんを持つシングルマザー。
乾杯の音頭直後に中原課長が発した無難な話題。
中原課長が発した、場を和ませる為の当たり障りない一言。
その言葉に
「オレ、離婚調停中なんです。
だから子供にも会ってなくて・・・」
桜井課長はそう答えた。
飲み会の場が
シンと静まり返った。
中原課長が沈黙を破った。
「ほんとに⁉ごめん・・・知らないとは言え、私、辛いことを聞いてしまったね・・・本当にごめんね…」
「いえいえ・・・オレの方こそこんな場ですみません…
皆さん!!
初っ端からヘビー級な返答をしてしまいましたが・・・
いつも通り仕事はバリバリ、酒はガンガン行きますんで
札幌での2週間宜しくお願いしま~す♪」
桜井課長の仕切り直しの言葉に、皆は過大なまでに拍手をし盛り上がった。
しかし私の心はここにあらずだった。
「離婚調停中」
私は、その言葉が頭から離れなかった。
・・・離婚は、私との不貞行為が原因?
・・・マイホームパパで有名な桜井課長が、私のせいで息子さんと離れなければならないの?
・・・桜井課長は、私とのことを深く後悔しているだろうな・・・
・・・私のことを恨んでいるだろうな
頭の中で様々な考えが浮かんでは消える。
それらの考えにゆっくり落ち着いて向きあってみたいが、ここは飲みの席。
空のグラスにお酌。
空いた皿に次のオーダー・・・
下っ端の私は動き回りっぱなしで、考える時間はもちろんゆっくり座る暇もない。
とにかく早く飲み会が終わって欲しかった。1秒でも早く一人になりたかった。
一人で考え、冷静になりたかった。
とても長い飲み会に感じられた。
皆は二次会のカラオケへ向かったが
私は一次会だけで岐路に着いた。
足早にマンションへ帰り、化粧を落としてからシャワーを浴び、髪を乾かせる。
【あとは寝るだけ】という至福のスタイルを整えてからビールを開ける。
・・・今日はこのまま酔い潰れたい気分・・・
私はビールを一口すする。
今までの緊張は解けるが、疲れと不安と疑問が一気に押し寄せる。
もう一口缶ビールをすすると深い溜め息が出た。
無意識に携帯に目をやった瞬間、
私の携帯が動きなが受話を告げた。
桜井課長からの電話だった。
「二次会のカラオケ、どうして来なかったの?
こっち、もうすぐお開きになると思うんだけど、ちょっとだけ会えないかな?
近くまで出てきてくれないかな?」
「化粧落としたし、もう寝支度も整えたし・・・」
私は曖昧な答え方をした。
桜井課長からのもうひと押しがあれば、私は再び身支度を整えて外出するつもりだった。
しかし桜井課長はあっさりと引いた。
「了解。明日も仕事だしね。
じゃ、お休み」
電話は、あっけなく切れた。
私は一気にビールを飲み干してからベッドに潜り、眠るための努力をした。
離婚調停中ってなに?
私とのことがバレたから?
しかし
奥さんから私にコンタクトはない。
じゃあ、私以外の女性関係?
もしそうなら、私ってかなりおめでたい・・・
離婚は私とは全く関係ない問題?
私が考えても、答えが出るような内容ではない・・・
私は次第に睡魔に襲われた。
プルプル・・・
プルプル・・・
携帯の呼び出し音で目が覚めた。
【着信:桜井課長】
私は起き上がって、通話ボタンを押した。
「ごめん。冷ちゃん…寝てた?」
丁寧ではあるが、少し酔った桜井課長の声が飛び込んできた。
「冷ちゃん、ちょっと話したいんだけど、いい?」
「はい。
・・・私もお聞きしたいことがあります」
「だよね。いきなり離婚調停とか聞いて、冷ちゃんビックリしたよね?」
「・・・はい」
「別に、冷ちゃんのせいで離婚しするとかってことじゃないから安心して。
冷ちゃんとの関係と、離婚は無関係だから。
でも・・・
離婚が成立したら、俺と真剣に付き合ってくれないかな?
俺、冷ちゃんのことが好きなんだ」
離婚は私に無関係?
しかし
私のことが好きで、離婚成立後は私と付き合いたい?
こんなうまい話があるのだろうか?
・
・・なにか違和感がある
しかし、私も桜井課長が好きだ。
大好きだ。
でも・・・
どこかに違和感を感じる
私は寝起きの頭を必死に巡らせた。
「明日、夕食を一緒にどう?
ゆっくり話そう」
私の無言の思考を遮るように桜井課長が提案した。
「わかりました。
ゆっくり話せる店を予約しておきます」
明日になれば、全ての疑問は解ける。
どうするかは、それから考えればいい・・・
私は再び眠りに就いた。
翌日、7時半に私たちは半個室の居酒屋で待ち合わせをした。
少し早く着いてしまった私は、小一時間桜井課長を待った。
待つ間にビールを数杯飲んだお陰で、
私はちょうどいいぐらいの図々しさをまとうことができた。
「離婚の原因は私との浮気ですか?
それがバレて、離婚になったんですか?」
ようやく向き合った桜井課長に、私は率直に聞いた。
「あー・・・
うぅ・・・ん」
声にも返答にもならない桜井課長の答えが続いたが、少々のアルコールで強気になっていた私はきっちりした答えを求めた。
「私との関係がバレたから、奥さんに離婚を突きつけられたんですか?
私・・・
私、桜井課長に好意はありましたが、私のせいで離婚とか・・・私にはそこまで責任は持てません・・・
私、奥さんに謝罪します。慰謝料を求められたら応じます。
だから・・・もし修復出来るのなら・・・」
私は一気にまくし立てた。
片手を上げて、桜井課長はそれを制した。
私の気持ちは伝わったのだろう。
次は桜井課長の返答を待った。
「オレ、【理想的なマイホームパパ】とか言われてるけど、違うんだ…いや…家事育児する方だと思う自分でも。
でも・・・それが【マイホームパパ】と言うのかどうか・・・」
桜井課長は、ゆっくり語り始めた。
周りからはマイホームパパと言われる家庭の実態を、ゆっくりと語り始めた。
桜井課長は、
(どう話せばいいのか・・・)みたいなことを呟いてから言った。
「うちの奥さん、ほとんど家事をしないんだ・・・
まず彼女は、朝起きない。
だからオレが子供に朝食を作り食べさせ・・・
夜もオレがスーパーで買い物してから、夕食をつくる・・・」
「ふぅん・・・」
私はそっけない相槌を打った。
桜井課長は今から
浮気や不倫を正当化する「妻が悪い」論を繰り広げるつもりなのだろうか?
桜井課長は現に辛い結婚生活を送っているのかも知れない。
しかしそれと私との不倫は関係ない。
不倫を正当化するような夫婦の揉め事なんて、私は聞きたくない。
私はひたすらそっけない返事を返し続けた。
奥さんの欠点、夫婦の不和・・・
それを聞くに連れ、冷めていく私。
そんな私の様子に気付かないまま、家庭の不満をこぼす桜井課長。
とうとう私は爆発した。
「夫婦間の不和なんて聞きたくないんです!!
浮気した理由なんて聞きたくないです。
奥さんとうまくいってないから、何となく手頃な私と浮気したんですか?
それとも、私を好きになったから私と浮気したんですか?」
私は、イチかバチかで迫った。
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おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1414HIT 檄❗王道劇場です -
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今を生きる意味
迫田さんと中村さんは川中運送へ向かった。 野原祐也に会うことができた…(旅人さん0)
78レス 527HIT 旅人さん
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俺の彼女がクソすぎる
今日彼女とデートしてたんだけど、苦言を呈された 家泊まった時彼女が家事をやった時に俺がありがとうっ…
12レス 567HIT 恋愛好きさん (20代 男性 ) -
まだ若いのにおばあちゃんと言われた
当方女性です。まだ、30代半ばと若く、法令線シミシワがないのに肌が綺麗と言われるし、身長は174cm…
21レス 636HIT 匿名さん -
離婚の申し出、無視出来る?
離婚届を突きつけられても、無視してそのまま生活できると思いますか? 夫はすぐにでも離婚したいようで…
11レス 368HIT やりきれないさん (40代 女性 ) -
中2娘反抗期、愚痴です。しんどい
完全な愚痴です。 よろしくお願いします。 昨日の夕方、運動部を終えて汗びっしょりになりながら…
14レス 336HIT Jesus (30代 女性 ) -
離婚しても構わないでしょうか
現在結婚7年目、子供はおりません。 主人の行動に最近怒りが収まりません。 私は中学受験専門の家庭…
6レス 228HIT 離婚検討中さん (40代 女性 ) -
社会人の皆さんへ
何か資格等の勉強はしていますか?
7レス 190HIT 教えてほしいさん - もっと見る