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10/11/04 23:57(更新日時)

いっぱい泣いて、いっぱい傷ついて、
たまには雨宿りもいいかもね。
雨上がりに虹が見えるかもしれない。
止まない雨はないからーーー。

※この物語は前田千花子を主人公とした小説です。
初めてということで、誤字脱字や文法の間違い、
読みにくいといった事、不快に思われる表現等があると思いますが
その時はお許し下さい。

マイペースに書きたいと思います。
最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

No.1319966 10/05/12 19:28(スレ作成日時)

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No.1 10/05/12 19:30
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●01

私は前田千花子(マエダチカコ)。


高校3年生の夏。

蝉の鳴き声が校舎の壁に反響し うるさく教室に鳴り響く。

体は汗ばみ 腕や手がノートや教科書にベタベタ張り付く。

ちっとも集中できない授業。

左手で頬杖をつき ぼーっとしながら黒板を見つめる。

制服の胸ポケットがブーッと振動した。

No.2 10/05/12 19:32
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>> 1 ●02

別の高校に通う小学校からの友達のユミからメールがきた。

『同じクラスの男子にチカの話をしてプリクラ見せたら、
チカの携帯の番号とアドレス教えてほしいって言われたんだけど教えてもいい?』

突然のメールの内容びっくりした。

『悪い人じゃないから大丈夫だと思うんだけど、
 チカがイヤなら断るよ(^▽^)』

その時 私には特に彼氏とか好きな人はいなかったから軽い気持ちでOKした。

その男の子の名前はトシ。

携帯番号とアドレスを交換した日から たまにメールのやりとりをするようになった。

No.3 10/05/12 19:34
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>> 2 ●03

『授業たるい。』
『テレビ何見てる?』
『友達とカラオケ行くよ!』

そんな他愛もない普通のメール。


メールをするようになって何日か経ったある日、トシから

『今週のテストが終わったら一緒に遊ばない?』と誘われた。

迷った末『ユミも一緒ならいいよ』と答えた。

No.4 10/05/12 19:36
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>> 3 ●04

ユミに携帯でトシから誘われた事を話しユミも一緒にと誘った。

「え~、私 邪魔じゃない?」とユミ。

「見た事も話した事もない人と2人だけで会うなんてヤダよ~。
 お願い!トシくんはユミの友達でしょ?」と私。

ユミ:「うん!分かった!いいよ!で、どこに行くの?」

私 :「トシくんがカラオケって言ってた」

ユミ:「了解!でも私歌苦手だからずっと聴いてるね!」

私: 「あ、そっか、ゴメンね。忘れてた。ユミ カラオケあんまり好きじゃなかったよね」

ユミ:「大丈夫だよ!最近、同じ高校の友達とたまに行くから。それにチカの歌聴くの好きだし♪」

私: 「ありがとぉ!で、もぉ1コお願いがあるんだけど・・・」

ユミ:「なになに?」

No.5 10/05/12 19:38
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>> 4 ●05

私たちは駅で待ち合わせをしていた。

トシと約束した時間の30分前にユミと待ち合わせをした。

ーーーまだユミは来ていないーーー

バックから携帯を取り出し『今着いたよ~』とユミにメール。

そのまま携帯を閉じずユミに電話でお願いして送ってもらったトシの写メを見た。

・・・あんまり期待しないでいよう。

すぐにユミが着いた。

「チカ!久しぶり!」

私たちはトシとの約束の時間まで その場でおしゃべりをしていた。

No.6 10/05/12 19:49
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>> 5 ●06

「あ!そろそろ時間だね!」

ユミはそう言って携帯を見て時間を確認した。

少し緊張する。

二人で辺りをキョロキョロ見回すが見当たらない。

「あれ~?私電話してみるね。」とユミが携帯にかけるとすぐにトシは出た。

「もしもし?トシ?今どこにいんの?」

「ココ」と言ったトシの声は私たちの背後から聞こえた。

振り返るとすぐ後ろにトシが立っていた。

No.7 10/05/12 19:52
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>> 6 ●07

「ちょっと アンタ何やってんの!?びっくりするじゃん!」

ユミは携帯を切った。

「実は15分前くらいに着いて2人を見つけたんだけど、
 めっちゃ話し込んでたから声掛け辛くてさぁ。」

「そうなんだ(笑)。
 じゃぁ、紹介するね。こちらチカコちゃん。私の小学校からのお友達です。
 で、こっちはトシ。私のクラスメイトです。」

「ども」とトシは笑った。

「チカです。」と私も笑った。

緊張していたのでかなり顔はひきつっていたと思う。

No.8 10/05/12 19:54
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>> 7 ●08

そのまま3人でカラオケに行った。

トシの第一印象は、想像をしていたより良かった。

細身で身長は170cmくらい。

150cmの私からすると大きい。

顔も私好みでカッコ良くてびっくりした。

写メと違う。

場を盛り上げるのが上手く、話もおもしろかった。

カッコ良くておもしろい人、それがトシの印象だった。

No.9 10/05/12 19:55
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>> 8 ●09

それから、私とトシはメールの回数も増え、電話もよくするようになり、

2人で学校帰りに遊ぶようになった。

マックに行ったりプリクラとったり公園で話しをしたり。

出逢って1ヵ月 トシから告白された。

No.10 10/05/12 19:58
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>> 9 ●10

見た目も良くて、おもしろくて、趣味はバイクと船の運転。

スロットは負け知らず。

そんなトシのことをどんどん好きなっていった。

トシは社交的で男女ともに友達が多く、よく女友達の話を聞くこともあった。

でも、何故か他の女子に女としての興味はなくて不思議なくらい私に夢中だった。

また私も、もともと束縛はしない主義だったので

私に夢中なトシを見て信頼し、他の女の子の話しをされても妬くことはなかった。

No.11 10/05/12 20:00
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>> 10 ●11

デートは 平日は学校帰りに会い、

土日はトシの家でDVDを見たり

たまに 映画を見たり買い物をしたりカラオケに行ったりしていた。



でも、私は高校3年生。

受験生なのだ。

遊んでばかりいられないのが現実だ。

No.12 10/05/12 20:03
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>> 11 ●12

私の家は裕福ではなかったけど、

どうしても絵の勉強する為に進学したくて

県立の専門学校を受験しようと毎日勉強していた。



一方トシは両親が小さなお弁当屋さんを経営していて、

高校を卒業したらすぐ手伝う予定だったので

とくに受験勉強も就職活動もせずに、

バイトをしたり友達と遊んだりスロットをしたりしながら

運転免許の教習所に通っていた。



この頃からお互いの生活にズレが生じるようになったが、
それをトシは理解してくれていると信じて私は必死に勉強していた。

けど、私の気持ちとは違う方向へトシの気持ちは少しずつ動いて行っていた。

No.13 10/05/12 20:06
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>> 12 ●13

「ミナコに遊びに誘われたんだけど いい?
 てゆーかもうOKしちゃったんだけど いいよね?」とトシに電話で聞かれた。

ミナコとは最近トシの話の中でよく登場してくる教習所の事務員の年上の女性だった。

今まで話を聞いた限り、おそらくミナコはトシに好意を持っているようだった。

私は一瞬心配になったが

「ミナコはちゃんと彼氏がいるから大丈夫だよ。心配すんな。」

と、トシに言われたのでその言葉を信じようと思った。

束縛するなんて格好悪いと思っていたし。

でも 本当は、少し不安だった。

No.14 10/05/12 20:08
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>> 13 ●14

シャーペンを持っている手を止め、椅子に座ったまま伸びをした。

時計は夜の8時半を指している。

携帯が鳴った。

トシからの着信だ。

私はすぐに出た。

「もしもし チカ? 今、電話大丈夫?」

「うん。 今、ちょうど休憩してたとこー。」

「ベンキョーはかどってる?」

「それなりねー。 ・・・昨日の・・・どうだった?」

「え?何?」

「昨日はミナコと遊んだんだよね?」

「よく覚えてるなぁ(笑)」

No.15 10/05/12 20:11
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>> 14 ●15

「それで、どうだったの?」

「普通にメシ食って、カラオケに行っただけだよ。」

「そっか。」

「それでさ、俺 アイツにコクられちゃった。」

「えっ・・・」

「もちろん断ったよ!彼女いるからって。
 でもさー、ミナコ彼氏と別れてきたらしくてさー、マジびっくりしたよ。」

私もびっくりだよ。

やっぱりミナコはトシのことが好きだったんだ。




トシとの電話を終え勉強を再開したけど、

ミナコからの告白を話した時の、トシのミョーに嬉しそうな声が頭に残っていた。

No.16 10/05/12 20:18
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>> 15 ●16

1月を過ぎ、私は無事に受験を終えた。

合格発表は2月。

「これでやっとトシとたくさん遊べる!」そう胸を弾ませていた。

土曜日にトシの家に遊びに行った。

トシは変わらず笑顔で迎えてくれた。

カッコ良くておもしろい、いつものトシだった。

だけど、

ーーーあれ?ーーー

少し違和感を感じた。

でも、久しぶりに長時間遊べる事に舞い上がっていた私はその違和感に気付かないフリをした。

No.17 10/05/12 20:23
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>> 16 ●17

また、トシとよく遊ぶようになったけど、どうしてもあの違和感を忘れることができなかった。

それだけじゃない。

アレから一緒にいても何かが不自然だった。

態度?行動?話し方?

考え出すと全てが不自然に思える。



家に帰りお風呂に入り、色々思い出して考えてみる。

少し会わない間に、何かあったのかなぁ・・・。

もしかして浮気?

そう言えば最近ミナコの話しを聞かないなぁ・・・。

前だったら色んな話しを聞かせてくれたのに。



ピンと来た。

No.18 10/05/12 20:26
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>> 17 ●18

たぶん、トシには他に好きな人ができたんだろう。

それはミナコだ。

実はもう二人は付き合っているのかもしれない。

でも、友達のユミの手前 なかなか私に別れを切り出すことができないんだ。



そっか・・・。



涙がでてきた。

No.19 10/05/12 20:31
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>> 18 ●19


信じてたのに。

大丈夫だって。

私がバカだったの?

もっと束縛すれば良かったの?

浮気しないでって言えば良かったの?

違う。これは浮気じゃない。

ただの心変わりだ。

あの人の好きな人が 私じゃなくなっただけ。

それだけ。




自分の中で 気持ちに整理をつけようとアレコレ考えるけど、涙はなかなか止まってはくれなかった。

No.20 10/05/12 20:34
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>> 19 ●20

私は別れを覚悟した。

それでもトシは何も言ってこない。

デートも キスも エッチもした。

ーーーどうして何も言ってこないんだろうーーー

混乱する。

No.21 10/05/12 20:49
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>> 20 ●21

2月14日。
バレンタイン。

私はトシの為にチョコを作り、太くてゴツいデザインのピアスを買った。



トシの家で会う約束になっていて、

トシの部屋でチョコとピアスを渡した。

喜ぶトシに聞いた。

「もうすぐ高校卒業したら春休みだね。どっか遊びに連れてってよ。」

「そーだなー。
 でもさ、俺 卒業したらすぐ家の手伝いしなきゃいけないし、
 あんまり会えないかも。」

「えー、そうなの?」

「悪いな。」

「じゃぁ、あのカレンダーに印がついてる3月○日は何するの?」

トシはカレンダーを見て慌てた。

No.22 10/05/12 20:52
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>> 21 ●22

私は束縛するのがキラいだったので、今までトシの事をあまり詮索してこなかった。

トシからは「鈍感な女だ」と思われていたのかもしれない。



「あの印ついてる日は、先輩とバイクで走りに行くんだよ」

「あれ?おかしいな。
 トシ忘れちゃったの?この前の電話では教習所に行くって言ってたよ?」

「まじで?俺そんなこと言った?」マズイという顔をした。

「うん。それで、どっちが本当なの?」

「先輩とバイクだよ」動揺しているのがよくわかる。

「ウソ。ミナコでしょ?」

トシの顔が凍り付いた。

No.23 10/05/12 20:56
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>> 22 ●23

「私は今でもトシの事が大好きだよ。でも、トシが好きなのは私じゃない。
 好きじゃないのに傍にいるのってただの同情でしょ?それがすごく辛いの。
 一緒にいて苦しいの。」

私は泣きながら続けた。

「私はトシの事が大好きだったし、信頼してた。
 でも人の心が変わっちゃうのは仕方ないと思う。 だから、もう終わりにしよう?」

私からの精一杯の バレンタインのプレゼントだった。

No.24 10/05/12 20:59
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>> 23 ●24

トシも泣き始めた。

「チカ、ごめん、ごめん」

トシが泣くのを見たのは初めてだった。

「俺、本当にチカの事が好きだったんだ。
 一緒にいて楽しかったし、思い出もだくさんあるし。
 でも、自分でも自分の気持ちがよくわからくて・・・。」

「ミナコのこと、好きなの?」

「ミナコとは本当にまだ何でもないんだよ!」

「ふーん。ユミには私から言っておくから。」

「ホントにごめん!」

「じゃぁね。」

そう言い残し私はトシの家を後にした。

No.25 10/05/12 21:09
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>> 24 ●25

家に帰ってからもずっと泣いていた。

悲しいのと、まだ別れた実感がないのと半分だった。

本当に、本当にトシが好きだった。

でも、もう・・・。



こんなに人を好きになることは もうないと思った。

No.26 10/05/12 21:10
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>> 25 ●26

2月×日。

合格発表の日。

合否の通知が家に郵送されてくる。

私は学校で授業。

母からメールがきた。



『合格おめでとう!』

No.27 10/05/12 21:12
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>> 26 ●27

家に帰ると母が私の好きな食べ物でご馳走を作ってくれていた。

食卓を囲み、家族みんなで私の専門学校の事を色々と話す。


「授業楽しみだね」

「仲良い友達ができるといいね」


など、話は盛り上がったいた。

夕飯を食べ終わり、自分の部屋に戻る。

ベッドにうつぶせに寝転んだ。

コンコン。

「チカコ?入るよー?」

姉の美花子だった。

No.28 10/05/12 21:25
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>> 27 ●28

「どうしたの?お姉ちゃん」

私は起き上がる。

美花子は私の隣に腰掛けた。

「本当に合格おめでとう。チカコ、いっぱい頑張ったもんね。 
 人生、辛い事だけじゃないね。」

そう言って私の肩を抱き寄せ頭を撫でた。

「トシくんのこと、本当に好きだったもんね。 
 もう、受験も終わったし頑張らなくていいから、いっぱい泣いて いいよ?」

美花子の言葉に張り詰めていた緊張が一気にとけ

幼い子供のように、わんわん大きな声で泣いた。

No.29 10/05/12 21:27
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>> 28 ●29

卒業式を無事に終え、春休みに入った。

トシと別れてしまったので、予定がガラ空きだ。

でも、なかなか会えなかった友達と遊んだり、

新しいバイトを探したり、

原付の免許をとったり、

それなりに忙しく過ごせた。

ユミも心配してたくさん連絡をくれたし遊びにも行った。



でも、まだ、ふと トシの事を思い出す。

ーーーもう、ミナコと付き合ってるのかなぁ・・・?ーーー

No.30 10/05/12 21:37
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>> 29 ●30

春休みも終わり、専門学校生活が始まった。

学校は電車で片道1時間半のところにあった。

私の住んでいる街と 大分違い都会の真ん中にある。

新しい環境にもすぐに慣れ、勉強も含め全てが楽しい。

合コンの機会も増え、友達も何人も男の子を紹介してくれる。

でも、心の中にはいつもトシがいた。

No.31 10/05/12 21:41
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>> 30 ●31

ゴールデンウィークを目の前に控えた4月のある日、

知らない番号から授業中に 2回 電話が掛かってきた。

ーーー誰だろう?ーーー

授業が終わり、帰りの電車を待つ駅のホームでその番号に掛け直す。

「もしもし?」

「あ、俺だよ。分かる?」

「・・・トシ?」

「そう!携帯変えたから登録しといて!
 あとでメールもするからアドレスも登録しといてな」

「うん、わかった」

トシからの久しぶりの、しかも突然の連絡にかなり驚いた。

その日の夜、トシからさっそくメールが届いた。



『トシです。今から電話してもいい?』

No.32 10/05/12 21:44
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>> 31 ●32

「さっきは突然 電話しちゃってごめんな。」

「ううん。大丈夫だよ。突然どうしたの?何かあった?」

「とくに用があったわけじゃないけど、どうしてるかなーと思ってさ。」

「私のコト 気になっちゃった?(笑)」

「気になっちゃった(笑)」

「専門学校 楽しいよ。友達もたくさんできたし、みんな仲良いし。
 授業も自分の好きなことだから、大変だけど辛くはないよ。」

「そっか。楽しいんだ。よかったな。チカ頑張ってたもんな。」

「トシはどう?家の手伝いは大変?」

「こき使われまくりだよー。ちょいしんどい時もあるけどね。」

私とトシは別れてから1度も連絡をとっていなかったので、お互いの近況を報告していた。

No.33 10/05/12 21:45
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>> 32 ●33

ミナコとはどうなったの?

新しい彼女はできた?

本当は1番聞きたかった。

けど聞けなかった。


小さいプライドがあったのかもしれない。

元カレに執着している可哀想な女になりたくなかった。

逆に、トシも聞いてこなかった。

私に興味がないのかな。

まぁ、別れたんだし、わざわざお互い言うことでも聞くことでもないよね。

No.34 10/05/12 21:48
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>> 33 ●34

「そーいやーもうすぐゴールデンウィークだね。 チカは何か予定あんの?」

「え・・・あると言えばあるけど・・・」

「あのさ、一緒に遊園地に行かねー?」

「遊園地~!?」

「付き合ってる時、連れてってあげられなかったし、
 俺免許とったから車で連れてってあげられるよ。」

胸がドキドキした。びっくりしたのと嬉しいのと。

「・・・うん。行く。」

「よし!じゃ、俺詳しい事 調べとくから、また連絡するわ!」



トシとの電話を終え、私は胸がドキドキしているのを必死で抑えようとした。

No.35 10/05/12 21:49
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>> 34 ●35

トシ、どーゆーつもりなんだろう。

でも私たちは別れたんだし、ただの友達。

また携帯が鳴る。


「もしもーし。チカちゃん?今家?」

「あ、う・・うん!今家だよー」


電話は国昭くん(以下クニくん)だった。

クニくんは専門の友達に紹介された男の子で、

知り合ってすぐに告白されて、友達に強引に付き合わされた。

No.36 10/05/12 21:52
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>> 35 ●36

クニくん自体はとてもいい人で、穏やかで優しい人だった。

中学・高校と野球部で社会人になった今でも草野球をやっているらしく、

肌はこんがり焼けていてとても爽やかで笑顔が素敵だった。

身長は180cmをこえていて、私から見たら巨人だった。


「ゴールデンウィークどこに行く?チカちゃん忙しいかな?」

「えっと、待ってね。今手帳見るから。」


私は手帳をパラパラとめくって予定を確認する。


「あ・・・○日しか空いてない」

「○日だね!じゃあ、その日一緒に遊ぼう?」

「うん。わかった。じゃぁ、昼に駅で待ち合わせでいい?」

「了解です!バイクで迎えに行くね!」

クニくんと遊ぶ日・・・トシと遊園地へ行く日の翌日となった。

No.37 10/05/12 21:55
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>> 36 ●37

トシが家まで迎えにきた。

トシの車に乗り込み、遊園地へと向かう。

車中トシは機嫌が良く、大きな声で歌ったり、モノマネしたり、

おもしろい話しをたくさんしてくれた。


トシの耳には私がバレンタインの時にあげたピアスがあった。

実は私も服の下に、トシからクリスマスの時にもらった 赤いハートの石のネックレスをしていた。

気付かれないようにそっと。

No.38 10/05/12 21:57
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>> 37 ●38

遊園地に着く。

チッケットを買い入場した。

遊園地にテンションが高くなりはしゃいでいると、トシが私の手を握った。

「え?」

驚いてトシの顔を見る。

「ま、細かいことは気にしない。せっかくだしいいじゃん。」

そのまま 園内を回った。

誰も 別れた元恋人同士とは思わなかっただろう。

No.39 10/05/12 21:59
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>> 38 ●39

もう夕方になっていた。

「どっかでメシでも食って帰ろうか」

「うん。」

遊園地を後にした。



着いたのはファミレスだった。

ファミレスで食事を終えた後、私の家へと車を走らせる。

辺りはもうすっかり暗くなっていた。

トシが口を開く。

「なぁチカ。もう1軒寄りたい所があるんだけど行ってもいい?」

「?いいよ?」



トシが車を走らせた先はラブホだった。

No.40 10/05/12 22:00
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>> 39 ●40

「ねぇ、トシが寄りたいって言ってたとこって、あのラブホ!?」

「そうだよ。」

私は言葉をなくした。

トシは構わずラブホの中へ入り車を停める。

「チカ、行くよ。」

そう言って私の手を引く。

私は困惑し黙ったまま助手席に座り込む。

「どうした?チカ。イヤなの?」

不機嫌そうにトシが言う。

「そういんじゃなくて・・・私たち別れたよね?」

「そんなのどうでもいーじゃん。行こう。」

No.41 10/05/13 00:13
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>> 40 ●41

「先にシャワー浴びてくるから」

トシはバスルームへ行った。

ーーーどうしようーーー

とおりあえずソファに座りテレビをつける。

ーーーこんな事になるなんてーーー

テレビを見るが頭には全く入ってこない。



私は まだトシの事が好きだ。



クニくんへの罪悪感なんてすぐに消えてしまい

トシの事で頭がいっぱいになった。

No.42 10/05/13 12:43
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>> 41 ●42

トシは一体何を考えてるの?

ミナコとはどうなったの?

新しい彼女は?



そんな事ばかり考えている間にトシがバスルームから出てきた。

「チカも入りなよ。遊園地で汗かいたから気持ちいいよ。」

「う・・・・うん・・・。」

私もバスルームへむかった。

No.43 10/05/13 12:44
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>> 42 ●43

これは喜んでもいいことなの?

私はトシが好き。

今日は、付き合ってる時みたいに楽しかったけど、

別によりを戻そうとか言われてない。

トシは私の事 好きなの?

ただやりたいだけ?



複雑な気持ちでバスルームを出た。

No.44 10/05/13 12:46
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>> 43 ●44

「チカ、こっち。」

トシはベッドに座っていて、隣をポンポンと叩いた。

言われるまま そこに座ると トシが覆い被さりキスをしてきた。

「ちょっと待って!私たち別れたよね!?」

「ああ・・・」

「何でこんなことするの?」

「何でって、したいから。
 付き合ってるとか付き合ってないとか、もう別にいーじゃん。
 俺は今 チカを抱きたいの。チカは俺にどうされたい? それだけだよ。」

「私は・・・」



もう何も言えなかった。

「明日の朝まで一緒にいような」

そのまま流れに身を委ねた。

No.45 10/05/13 12:52
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>> 44 ●45

ラブホで朝をむかえ、私は仕度をしていた。



「ん・・・チカ?もう仕度してんの?」

トシが目を覚ました。

「うん。用事があるから。」

「そうか。じゃー俺も仕度しよー」

全裸のトシは洗面所に行き歯ブラシを加えて戻ってきた。

「コレまだ持っててくれたんだね。洗面所んトコに置きっぱなしになってたよ。」

とトシは言って、私の首に赤いハートの石のネックレスをつけた。

ネックレスをしてたことがバレてしまい恥ずかしかった。

私はそそくさと仕度を終え

「じゃぁ、私行くね。」と言う。

「待って。駅までおくってくから。」とトシが言ってくれた。

No.46 10/05/13 12:55
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>> 45 ●46

トシに駅まで送ってもらい、クニくんと約束している駅へむかう。

トシの温もりがまだ体に残ってる。

その温もりを愛おしく感じながらも、疑念を抱いていた。




ーーー結局、しちゃったけど、トシは1度も好きとは言ってくれなかった。
やりたかっただけなのかな。ーーー



そう思うと、胸は裂けそうに痛んだ。

No.47 10/05/13 12:58
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>> 46 ●47

駅に着くと改札口の前でクニくんは待ってくれていた。

「ごめんね~!待たせちゃったかなぁ?」

「大丈夫だよ。偶然 高校の頃の先輩に会って さっきまで話してたから」

「そうなんだ」

「彼女と待ち合わせしてるって言ったら 先輩驚いてた!」

クニくんは嬉しそうに言った。

「ここに来る途中、美味しそうなパスタ屋があったから 今から昼 食べに行かない?」

「いいね!私お腹すいてるんだ♪」

私たちはパスタ屋へ向かった。

No.48 10/05/13 13:03
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>> 47 ●48

着いたのは お洒落なパスタ屋さんだった。

お店の外観から、インテリア、メニュー表のような細かいところまでお洒落だった。



私はカルボナーラ、クニくんはボロネーゼを注文し食べた。

味はもちろん良くてお腹もいっぱいになり、

次は街中をブラブラしようということになった。

No.49 10/05/13 15:34
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>> 48 ●49

洋服を見たり、CDを見たり、本屋に行ったり…。

「俺行きたい所があるんだけど いい?」とクニくんが言った。

連れて来られたのはシルバーアクセサリーの店だった。

「お揃いで何か買わない?」

クニくんが笑顔で聞く。

「・・・うん。」

とは言ったものの 内心は複雑だった。



クニくんと私との間には明らかに温度差があった。

クニくんが私を好きな気持ちに 私はちっとも追い付いてない。

私の心の中にいるのはトシだった。

No.50 10/05/13 15:36
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>> 49 ●50

「リングとネックレスとブレス、チカちゃんはどれがいい?」

「う~ん・・・」

「ピアスは?」

「え、クニくんピアスの穴あけてないよね?」

「だからコレをキッカケにあけようかな♪」

マジで?

「そんなことしなくていいよぉ!」

「大丈夫だよ。いつかは あけたかったし。ね?」

「ん~・・・」

しかめっ面の私をよそに クニくんはピアスを見始めた。

No.51 10/05/13 15:37
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>> 50 ●51

「コレなんてどうかな?」

「どれ?」

クニくんが指したのは、赤い石のシンプルなピアスだった。

「これだったら、チカちゃんが今してるネックレスとお揃いみたいだし、よくない?」

このネックレスは、元カレからのプレゼントだなんて言えない。

どうしよう。

「でもでも、赤なんて クニくん恥ずかしくない?」

「さすがにハートだと恥ずかしいけどね。
 でも赤色自体は平気だし、このデザインなら大丈夫!」

クニくんはピアスを私の耳にあてた。

「可愛いね。コレにしよう!」

と、レジへピアスを持って行った。

No.52 10/05/13 15:39
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>> 51 ●52

私とクニくんは 1セットのピアスを片耳ずつ2人で分けてお揃いにした。

と言ってもクニくんはピアスをあけていないので、まだつけてはいない。

私だけが片耳にピアスをつけていた。

嬉しそうなクニくんの顔を見る度に 私の心は雲っていく。

「早く俺もあけにいこ~♪」

クニくんは嬉しそうに言い 私の手を握った。

No.53 10/05/13 15:42
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>> 52 ●53

遅くなるといけないから と、クニくんのバイクに2ケツして私の家へとむかった。

私の分のヘルメットも ちゃんと用意してくれていた。

クニくんのバイクはトシが持っていたのよりも大きくて、ちゃんと2人乗り用だった。



途中、大きな公園へ寄った。

「この公園から見える夕日がすごくきれいなんだ」

手を繋ぎ、夕日が見える場所へと歩く。

キレイな夕日だった。

「ホントだー。キレイだねぇー。」

No.54 10/05/13 15:43
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>> 53 ●54

その公園は小高い丘の上にあって、夕日に染まる街を一望できた。

心が癒されるな・・・・。

「チカちゃん」

クニくんが呼ぶ。

「ん?」とクニくんの顔を見上げる。


すると、


クニくんと私の唇が触れた。




キスされた。

No.55 10/05/13 17:25
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>> 54 ●55

クニくんは私の肩をギューッと抱き寄せた。

痛いくらい。

クニくんとの初めてのキス。

心は何も感じない。

トキメキはなかった。



やっぱりトシのことが好きだ。



そう思った。




帰り道、家に着くまで バイクを走らせるクニくんの体に ただ ぎゅうっとしがみついていた。

No.56 10/05/13 18:37
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>> 55 ●56

無事に家に着いた。

長時間バイクに乗ったのは初めてで、

少し疲れたけど風が気持ちよくて気分は良かった。



「家までおくってありがとう。今日は楽しかった。」

「よかった!俺も楽しかった。」

「帰り道、気を付けてね?」

「うん。・・・あの・・・」

クニくんは何か言いたそうだったけど、

「何でもない。じゃ、また。」とバイクを走らせた。

とても名残惜しそうな顔をしてた。

No.57 10/05/13 18:40
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>> 56 ●57

私は一体どうしたいんだろう?

クニくんは私の事がすごく好きみたい。

でも、私が好きなのはトシ。

こんな気持ちのまま付き合っててもいいのかな。

キスされても何も感じなかった。

私、酷い事してるよね。

サイテーだ。




頭の中がぐちゃぐちゃになりながら、その日は夜を過ごした。

No.58 10/05/13 18:42
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>> 57 ●58

ゴールデンウィークも終わり、また専門の忙しい日々に戻る。



「チカコ~!クニくんから聞いたよ!」

1時間目の授業が終わると即、友香が声をかけてきた。

友香はクニくんと私をくっつけた張本人。

「詳しくは教えてくれなかったんだけど クニくんめっちゃ喜んでたよ。」

「へー そう。」

私は素っ気なく返事した。

「上手くいってるみたいで良かったぁ。クニくん 本当にいい奴だからさぁ。」

友香は満足そうにニコニコしている。

私の憂鬱な表情にも気付かずに。

「昼休憩のときに、話聞かせてね!」



話すことなんてないよ・・・。と、頭の中でつぶやく。

No.59 10/05/13 18:43
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>> 58 ●59

昼休憩。

仲良くなった同じクラスの女の子6人で食堂へ行く。

1つのテーブルを6人で囲み、お昼ご飯を食べながら話しをする。

友香がクニくんの話しを聞きたそうだったが、

その話しをふられそうになると すぐ話題を変えた。




誰かが自分の携帯を見る。

するとみんなも同じように自分の携帯を見始めた。

私も。

No.60 10/05/13 18:45
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>> 59 ●60

メールがきてる。

クニくんとトシからだった。



クニくんからは

『仕事忙しいよ。残業してけって課長に言われた~』とあった。


トシからは

『今日、夜 メシ一緒に食わない?』とあった。




クニくんへ返信する前にトシにメールしていた。

『いいよ』

No.61 10/05/13 19:38
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>> 60 ●61

授業が全て終わると地元の駅へと急いだ。

駅前に路駐してある車へ駆け寄った。

車の中でタバコを吸いながら待っているトシがいた。

ドアの窓を コンコン と軽く叩く。

気付いたトシが中からドアをあけてくれた。

No.62 10/05/13 20:21
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>> 61 ●62

トシの車の中はタバコ臭かった。

私はタハゴが苦手。

あの臭いと煙で頭が痛くなる。

付き合ってるときは、私の前ではタバコはやめてくれていた。

でも 今は構わず吸っている。



やっぱり 付き合ってるワケじゃないもんね。


少し頭が痛い。

No.63 10/05/14 13:04
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>> 62 ●63

レストランで食事中

「俺、今実家の手伝い以外に夜コンビニでバイトしてるんだ」

「何で?」

「専門学校行こうと思ってさ」

思いがけない告白だった。続けて言った。

「実家はアニキがつぐし、アニキが結婚したら 家 出てかなきゃいけねーし。
 企業に就職するために資格がほしいんだよね。」

真面目に将来を話すトシを初めて見た。



ねぇ、トシ。

その未来に私はいるのかな?



「だからさ、受験の事でまた相談にのってほしーんだよね。」

「いいよ。相談にのれることなら。」

「マジ?ありがとな。」

トシが笑顔を見せてくれた。

美味しい食事がさらに美味しくなった。

No.64 10/05/14 15:14
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>> 63 ● 64

食事を終え 車に乗る。

「まだ時間あるよな? 少しゆっくりできるところに行かない?」

トシはまたラブホに行く気なのかな。

「どっちでもいいよ。トシに任せる。」

「わかった」

行き先を言わず車を走らせる。

No.65 10/05/14 15:18
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>> 64 ● 65

この前とは違うラブホに着いた。


「チカ。今日はおまえ先にシャワー浴びなよ」
「うん。」


今日こうなることは会う前からなんとなく想像できた。


トシは最初からそのつもりで誘っていたんだろう。



タハゴを吸う時点で 私の事を気遣う優しさはなくなっていた。

別れたんだもんね、私たち。



でも、好きなんだよ。

トシ。


声にならない 本音。

No.66 10/05/14 17:16
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>> 65 ●66

私がバスルームから出ると入れ代わりにトシが入った。


「何かテキトーに飲んで待ってて」

「うん」


バスローブを身にまとい濡れた髪の毛をタオルで拭く。

冷蔵庫から烏龍茶を出しテーブルに置き、

バッグから携帯を取り出しソファに座った。

クニくんからの着信とメール。

No.67 10/05/14 17:18
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>> 66 ●67

『仕事終わって帰ります!』

『チカちゃん今何してる?あとで電話してもいいかな?』

そして着信。




ごめんね。クニくん。

私 今、元カレとラブホにいるよ。

ホントにごめんね。



携帯をバッグにしまった。

No.68 10/05/14 17:27
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>> 67 ●68

トシがバスルームから出てきた。

「お。烏龍茶うまそー!俺にもくれー。」

「どーぞ。」

飲んでいた烏龍茶をトシに差し出す。

私の右隣に座り烏龍茶を飲む。

「あーうまい!」

左手を私の肩へまわした。

そしてキス。

嬉しい。

No.69 10/05/14 17:29
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>> 68 ● 69

「このピアスいいね」

クニくんからもらったピアスをつけたままにしていた。

「そ、そお?」内心慌てた。

「似合ってる」

「ありがと」

「彼氏から?」

ーーーえ?クニくんのコト 言ってないのに・・・

「そんなんじゃないよ」慌てて否定する。

「そうか」



トシはピアスも一緒に耳たぶごと口に含み 舐めた。

No.70 10/05/14 17:31
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>> 69 ●70

何だかクニくんを汚された気がした。

汚しているのは自分なのに。



罪悪感が激しく胸を襲う。

けど、トシの指、口、体が触れてくると 心も体もトシでいっぱいになった。



そのままソファで体を重ねた。

No.71 10/05/14 18:05
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>> 70 ●71

心のどこかで期待していた。

トシがまだ私のことを好きでいてくれるんじゃないか とか、

トシの口から「よりを戻そう」と言われるのを。

しかし トシの口からそれらしい言葉が出ることはなく不安が募る。



ただの都合のいい女じゃないか。

やりたいだけじゃないか。



でも 体が繋がっている時だけはそんな不安から解放された。

安心できた。

愛されているかもしれないとさえ思えた。

No.72 10/05/17 11:42
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>> 71 ●72

家に帰り自分の部屋に戻りベッドに寝転びながら、クニくんへ電話をする。

「ごめんね、全然連絡しなくて。高校の友達と会ってて。」

「そっか。なら良かったよ。事故にあってないか心配だった~」

「ホントにごめんね!」

クニくんと何事もなかったかのように話をした。




次の土曜日にクニくんの家へ遊びに行くことになった。

No.73 10/05/17 11:47
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>> 72 ●73

今日は金曜日。夜の10時。明日はクニくんの家へ行く日。

今私はラブホにいる。

トシと一緒に。



事が済み、トシはベッドに座り その膝の中で私はひざを抱えて座っていた。

トシの温もりと抱かれた喜びとで 心は満たされていた。



トシが背中からワキの下、胸へと両手を滑らせ最後に先をつまんだ。

そして口を開く。

「やっぱりチカはスタイルいいね。肌もスベスベだし、胸もツンと上をむいてる」

その言葉を聞いた瞬間、満たされていたものは一瞬でどこかへ消えてしまった。




ーーー誰とくらべてるの?ーーー

No.74 10/05/18 17:25
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>> 73 ●74

その言葉から察するに他に女がいることは明らかだった。



彼女?

それとも 私みたいなバカな女が他にもいるの?



惨めさと虚しさで胸は傷む。

それでも トシを責めることはできない。



今のこういう関係になったのは自分の責任でもあるから。

例え体だけでもいいから大好きなトシに求められたかった。

  • << 76 ●76 「ピアノだー。クニくんが弾くの?」 ピアノへ駆け寄った。 「そうだよ。我流なんだけどね。就職してから自分で買って、時々弾いてるんだ。」 「へぇー、私もピアノ習ってたよ。全然うまくないけど。  ねぇ、クニくん。何か弾いて?」 「いいよ。でも、期待しないでね(笑)。何の曲がいい?」 ピアノの上に置いてあった楽譜の本を手にとりパラパラと捲る。 「あ。この曲がいい」 私はページを捲るのを止めた。 「どの曲?」 開いたページにあったのは ショパン 別れの曲

No.75 10/05/18 17:27
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>> 74 ●75

約束の土曜日、私は駅からクニくんに連れられてクニくんの家へと遊びにいった。


「ただいまー。」と クニくんが言って玄関の扉をあけると中からお母さんがむかえてくれた。

「国昭おかえり。」そして私の顔を見て「こんにちは、いらっしゃい。」と微笑んでくれた。



家にあがり2階のクニくんの部屋へ案内された。


もともと8畳の部屋が2つL字状に隣同士だったのを壁をとって1つにしたのがクニくんの部屋だった。

フローリングの床に白い壁。

開いた出窓から気持ちの良い風が吹きこんでくる。

とても整理されていた。


部屋に入ると 電子ピアノが目に映った。

No.76 10/05/18 17:33
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>> 74 ●74 その言葉から察するに他に女がいることは明らかだった。 彼女? それとも 私みたいなバカな女が他にもいるの? 惨めさと… ●76

「ピアノだー。クニくんが弾くの?」

ピアノへ駆け寄った。

「そうだよ。我流なんだけどね。就職してから自分で買って、時々弾いてるんだ。」

「へぇー、私もピアノ習ってたよ。全然うまくないけど。
 ねぇ、クニくん。何か弾いて?」

「いいよ。でも、期待しないでね(笑)。何の曲がいい?」

ピアノの上に置いてあった楽譜の本を手にとりパラパラと捲る。

「あ。この曲がいい」

私はページを捲るのを止めた。

「どの曲?」

開いたページにあったのは



ショパン 別れの曲

No.77 10/05/18 17:34
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>> 76 ●77

「あ、深い意味はないよ。ただこの曲が好きなんだー。
 昔ちょっとだけ練習してた。クニくん弾ける?」

「楽譜見れば多分弾けると思う。」

クニくんの部屋がピアノの音で充満する。



我流だけあって指の使い方はおかしかったけど、

我流とは思えないくらい上手かった。



パチパチーーー。

演奏が終わり、私は拍手をする。

「クニくんすごい!私なんかより、ずっと上手だよ!」

「そうかなぁ・・・」

クニくんは照れて笑った。

No.78 10/05/18 17:35
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>> 77 ●78

「こんなのもあるよ。」

とクニくんは別の楽譜を取り出した。

流行の歌謡曲を集めた楽譜だった。

「何か好きな曲ある?」

私は自分の好きなアーティストのスコアを見つけ譜面台に置いた。

「俺はコードで伴奏を弾くから、チカちゃん歌える?」

「え?歌うの?」

「うん。歌詞も譜面にのってるし。じゃ、いきまーす。」



クニくんのピアノの音色に私の声がのる。

恥ずかしいけど楽しい。

No.79 10/05/18 17:36
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>> 78 ●79

1番を歌い終えたところで、ストップした。

「チカちゃん、歌うまいね!」

「そんなことないよ。でも、楽しいね。」

「今度は何の曲にするーーーー?」

とクニくんが楽譜を手に取ろうとすると


コンコン。


ドアをノックする音。

「国昭、入るわよー」

クニくんのお母さんだ。

No.80 10/05/18 17:38
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>> 79 ●80

お母さんは紅茶とケーキを持ってきてくれた。

「国昭が女の子連れてくるなんて初めてだから、ケーキ焼いてみたの。
 口に合わないかもしれないけど、よければ食べてね」

優しそうなお母さんだなぁ・・・。

「ありがとうございます。すみません。」

「母さん ありがとー」

紅茶とケーキをテーブルの上に並べると

「それじゃ、私は今から出掛けるから。帰りは夜になると思う。ゆっくりしていってね。」

お母さんは1階へと戻り、家を出て行った。

No.81 10/05/19 17:33
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>> 80 ● 81

「そうだ!チカちゃん。高校のアルバム見る?」

「うん。見たい!」

私たちはお母さんが用意してくれたパウンドケーキと紅茶を頂きながら、クニくんの卒アルを見ることにした。


「クニくんは野球部だったんだよね。」

「うん。」

真っ黒に日焼けして、ユニフォームを着たクニくんの写真があった。

「友香の写真もあるよ。これ」

クニくんは写真を指した。

そこには、チアリーダーの格好をした友香がいた。

「友香ってチアリーダーだったの!?」

「そうだよ。短いスカートはいてポンポン持って元気に応援してくれてたよ」

「今の友香からは想像できなーい!すごく今大人っぽいのに。」

「高校生だったしね(笑)」

No.82 10/05/19 17:34
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>> 81 ●82

お母さんが焼いてくれたケーキを食べながら、クニくんと他愛ない話しをする。

のんびりとした時間。



窓から吹く風が少し冷たく感じた。

「ごめん。窓しめていいかな?私ちょっと寒くなっちゃった。」

「いいよー。」

立ち上がり出窓へといき、窓を閉める。

すると後ろからクニくんの手が伸びカーテンをシャッとしめた。

そしてそのまま私を背中から抱き締めた。

No.83 10/05/20 15:54
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>> 82 ●83

「クニくん・・・」

「チカちゃん。好きだよ。」

次の瞬間、クニくんにお姫様だっこしされた。

「きゃっ!」

クニくんはくるっと向きを変え私を抱えたまま歩き、ベッドへと降ろした。

そして私の上にのり、軽くキス。

次は、舌を絡ませてきた。


私は自ら選択しないことと、抵抗しないことを心に決めた。

私が決めたんじゃない、全部相手が勝手にしてることだ、と思うと気が楽になるから。


流れに身を任せる。

されるがままに。




クニくんと初めて一つになった。

No.84 10/05/20 15:55
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>> 83 ●84

キスも前戯も、クニくんとのエッチはどこか ぎこちなかった。

ーー多分慣れていないんだろうな。ーー

そんな風に思ってしまう。




幸せな気持ちになるどころか、虚しさで支配される。




愛しているけど、愛してくれない男に抱かれるのと

愛していないけど、愛してくれる男に抱かれるのと

どちらが辛いのかな。

No.85 10/05/21 17:44
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>> 84 ●85

クニくんと幸せなカップルを装い、

その裏でトシと体を重ねる。



こーゆーのを世間では二股というのではないか?



でもトシは別に私の事を好きなワケじゃない。

私も体を重ねる以上の事は望まない。

望めばトシは去っていってしまうだろう。

ただ、彼のものを中にいれ、出したものを飲み込むだけ。



これって 単なるセックスフレンドかな。



こんなこと、ユミにも友香にもお姉ちゃんにも相談できない。

心と体のバランスが崩れていく。



結局、トシからもクニくんからも離れられないでいた。

No.86 10/05/21 17:45
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>> 85 ●86

いつから こんな尻軽女になったのだろう。

彼氏でもない人と、好きでもない人と、何回も体の関係をもってしまった。



トシと寝れば寝るほどダメ男だと分かり、

そんな男にしがみつくほど惨めな気持ちで苦しくなる。


クニくんと寝れば寝るほど気持ちは冷め、

彼の優しさに触れるほど罪悪感と虚しさで苦しくなる。



もうどちらといても辛く苦しいだけだった。

No.87 10/05/21 17:46
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>> 86 ●87

誰か助けて。

もう どうしたらいいか分からない。

私はどうしたらいいの?

私はどうしたいの?




トシともクニくんとも関係を絶てずに3ヵ月が過ぎようとしていたとき、

ユミから久しぶりの電話があった。

No.88 10/05/27 16:26
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>> 87 ●88

「チカー元気ー?」

「うん、ぼちぼちかなー」

と、おしゃべりに花が咲く。



「ところでさ、チカ、もしかして最近トシと会ってたりする?」

突然の質問に驚いた。

トシとのことは誰にも言っていないはず。

「え~?何で?」

「この前、トシとチカに似た人が一緒にいるとこ見ちゃって。

 実はさ、最近トシの良い話 聞かないんだよねぇ。」

「そうなの?」

「うんー。チカと別れた後、すぐ年上の女と付き合ってさぁ。
 今は今でその女がいるのに他の女と遊びまくってるみたいー。」

「そうなんだ・・・」

  • << 90 ●90 小さく胸で膨らませていた淡い期待は はじけて溶けて消えた。 私と付き合った頃のトシはずいぶん前にいなくなっていたみたい。 ミナコもかわいそーに。 私からトシを奪ったけど、今ではその元カノと浮気をされている。 お互いバカな男を好きになっちゃったね。 頭の中がハッキリとした。 その夜、私は決意する。

No.89 10/05/27 16:28
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>> 88 ●89

「チカに紹介しといてなんだけどさ、
 アイツ高校卒業してから人が変わったみたいに調子乗ってるらしくて。
 チカと付き合ってる時はイイ奴だったのにさー。」

「ふ~ん・・・」

「だから、チカもくれぐれもトシには気を付けてね!」

「うん。」

「何かあったらすぐ私んとこに連絡するよーに!
 チカを傷つけるようなことしたら私が許さないから!(笑)」

「ありがとー(笑)」



やっぱりな。想像通りだ。

No.90 10/05/27 16:29
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>> 88 ●88 「チカー元気ー?」 「うん、ぼちぼちかなー」 と、おしゃべりに花が咲く。 「ところでさ、チカ、もしかして最近トシと会って… ●90

小さく胸で膨らませていた淡い期待は はじけて溶けて消えた。


私と付き合った頃のトシはずいぶん前にいなくなっていたみたい。


ミナコもかわいそーに。

私からトシを奪ったけど、今ではその元カノと浮気をされている。

お互いバカな男を好きになっちゃったね。


頭の中がハッキリとした。

その夜、私は決意する。

No.91 10/05/27 16:31
いくら ( yZVonb )

>> 90 ●91

カーセックスがしてみたいというトシからの要望で、車を川の堤防に停めていた。

鍵をロックしカーテンをしめ、後ろの座席を倒し平らにする。

窓ガラスは曇り、車体はギシギシと揺れる。

外からみればいかにも「最中の車」だった。

トシは今まさに私に腰を振っていた。

感じているフリはする。

でも頭はいたって冷静だった。


ーーどのタイミングで切り出そうーー


そんな事を考えトシの様子を伺っていた。

No.92 10/05/27 16:32
いくら ( yZVonb )

>> 91 ●92

気持ちよくなってきたのか、腰の動きがだんだん速くなってきた。

「ねぇ、トシ?」

「ん?」

「ミナコとも車でよくするの?」

「は?」

腰の動きがピタリと止まる。

「ミナコと今付き合ってるんだよね?」

「ぇえ?あ~・・・・」

うろたえながらも またゆっくり腰を動かし始めた。

「ホントの事言って大丈夫だよ。うちら付き合ってるワケじゃないし。
 言ってくれなきゃ、もうエッチやめる。」

No.93 10/05/27 16:34
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>> 92 ●93

起き上がり、トシのモノを抜こうとすると

「分かった!言うから!」

と言い、私の体を押さえ付けた。

「ミナコとは車でしたことねーよ。今ビミョーな関係だし。」

「そうなの?」

「アイツさぁ、チカと違ってワガママだしヒステリーですぐキレんだよね。
 エッチもアッサリしててさぁ、”しゃぶって?”って言ったら”イヤダ”って言うし。」

トシはベラベラと喋り始めた。

「仕事でストレス溜まんのかしんねーけど、会ってる時もずっと愚痴ってんだよ。
 俺が来年専門行くって言えば、学生なんて金がなくなるからヤメロとか言うしさー。
 相性悪いんだよね。」

「そっか・・・」

No.94 10/05/27 16:35
いくら ( yZVonb )

>> 93 ●94

「別れ話してもすぐ泣いてキレて話になんねーし。」

「今、ミナコとは連絡とってるの?」

「一応な。
 でないと、泣いて家まで押し掛けて来るから。マジうぜー、めんどくせー。
 あ、思い出したら萎えてきたじゃん。」

腰の動きを速くする。

「俺さー、チカとまた会って思ったよ。
 俺が好きなのはチカだって。別れた時だって辛くてさ。かなり落ち込んだんだぜー」

「ホントに?」

「ああ。ヨリ戻してーなって思ったよ。でもなー、アイツが別れてくんねーからなぁ。」

「・・・・・」

「好きだよ。チカ。」

トシは腰を激しく動かし、果てた。

No.95 10/05/31 18:22
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>> 94 ●95

洋服の乱れを直し、帰る準備ができた。

「今日は駅までおくってもらっていいかな」

「家じゃなくていいの?」

「うん。今日は駅でいいよ。」



駅へ向かう車中、あの時の決意が揺らがないようにトシの顔は見ないようにした。

外の景色を眺めながら、1回 軽く深呼吸して口を開いた。

「実はね、言ってなかった事があったんだけどね、私、今 彼氏がいるの。」

「はぁ?」

「だから、トシと会うの今日が最後。」

「マジで言ってんの?」

「うん。だからさっきのが最後。」

「うそだろー・・・」

「ホント。最後にトシの口から好きって聞けて嬉しかった。
 私もトシの事が好きだったから。」

No.96 10/05/31 18:24
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>> 95 ●96

「そっか・・・。何となく彼氏がいるかもって思ってたけどな・・・。」

トシは淋しそうな顔をした。

「お互い、ちゃんと他に恋人がいるんだから、こーゆー風に会うのはやっぱり良くない。」

「・・・・うん。」

「あ、でも、受験の事で相談があるなら、いつでも言ってね。
 エッチもチュウもなしでよければだけど(笑)」

「ハハ。ありがと。」


駅に着き、車を路駐する。

「今までありがとう、トシ」

「チカ・・・。」

ぐいっと私の腕を寄せ、軽く唇と唇を重ねた。

No.97 10/05/31 18:26
いくら ( yZVonb )

>> 96 ●97

「じゃあな、チカ。」

「うん。バイバイ。」

車を降り駅の改札へと向かう。

後ろを振り返ると 遠目に運転席に顔をうずめるトシの姿が小さく見えた。

もしかして 泣いてくれてるの? バーカ。

大好きだったよトシ・・・。



涙が溢れるけど、気分はスッキリしていた。

もう、トシの事で泣かない。

もう、会う事もない。


私は涙を拭き、力強く一歩を踏み出した。


家に帰り、その日の夜にクニくんへ連絡し、明日の夜会う約束をした。

No.98 10/05/31 18:27
いくら ( yZVonb )

>> 97 ●98

クニくんが学校の近くまでむかえに来てくれた。


「チカちゃん、今日は何が食べたい?」

「何でもいーよ」

「何でもいい時は、何でもあるファミレスにしよう!」


私たちはファミレスで夕食を終え、近くの公園へ散歩することにした。

No.99 10/05/31 18:29
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>> 98 ●99

公園に着き、ベンチに腰掛ける。

夜空を見上げた。

「全然星見えないねー」

「うん。ここは空気悪いからねー。もっと田舎に行けばたくさん見えるかな。」

「私ん家の近く、星空とってもキレーに見えるとこあるよ」

「へー、チカちゃんち街から外れてるもんね。
 うちのじーちゃんちも山の中にあるから、星キレイに見えるよ。
 今度チカちゃんに見せてあげたいなー。」



少しの間、二人でぼーっと星の見えない夜空を眺めていた。

No.100 10/05/31 18:31
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>> 99 ●100

クニくんが私の肩に手をまわす。

もう片方の手で頭を撫で、軽くキスした。

ーーーこのままじゃいけないーーー

「あのね、クニくん。今日は大事な話があるの。」

「・・・うん。何?」

クニくんは手を自分のひざへ戻し、体を私の方へ向けた。



「今日で、終わりにしたいの。」

No.101 10/08/26 18:20
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>> 100 ●101

「終わりにするって、俺たちの関係を?」

「そう・・・。突然こんな事言ってホントにごめん。」

クニくんは私から目をそらし正面を向いた。

「他に好きなヤツいるんだよね?」

「え?」

「何となく分かってたんだ。一緒にいても上の空ってこともあったし。
 実は、いつフラれるんだろうってビクビクしてた(笑)」

「そんな・・・ごめん・・・。」

「まー最初がかなり強引だったし。
 でも、いつか本気で振り向かせてやるって思ってたんだけど、ま、それも無理だったか。」

「ほんとに ごめんなさい。」

「俺の事は気にしなくていいから、そいつにちゃんと幸せにしてもらいなよ?」

私は黙って頷いた。



その人とは もう終わったんだけどーーー。

No.102 10/08/26 18:24
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>> 101 ●102

クニくんに駅までおくってもらう。

「改札まで一緒に行くよ。あと少しだけ一緒にいさせて?」

改札口まで手を繋いで歩いた。

「電車何時のがある?」

「えっとね~・・・あ!あと5分で電車くる!」

「すぐだね」

クニくんと私は顔を見合わせた。

すごく悲しそうで泣き出しそうな顔をして人目も気にせず抱き締められた。

No.103 10/08/26 18:27
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>> 102 ●103

「チカちゃん。大好きだよ。幸せにね。」

涙声だ。

「ごめんね、ごめん、ごめん、ありがとう・・・」

目から涙が溢れた。

クニくんを手で押し離し、泣きながら改札を抜けホームへと向かう。




また一つ、罪悪感が増えた。

トシに終わりを告げた時とは違う。

クニくんは私を一言も責めなかった。




クニくんがくれた気持ち、優しさ、愛情を私は踏みつぶしたんだ。

サイテーだ。

傷付けた重みが 鈍く背中にのしかかってくる。




ーーーどうか、クニくんに素敵な彼女ができますようにーーー



心の中で祈る。

その日の夜、クニくんを想ってたくさん泣いた。

No.104 10/08/26 18:29
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>> 103 ●104


クニくんと別れた翌日、携帯ショップへ行き、新規で契約し、今までの携帯は解約した。

そして、トシとクニくんの番号を削除した。




本当に、これで2人と終わったんだ。




もし次に、誰かと付き合うことができたなら、

ちゃんとお互いに好きになってから付き合いたいな。

絶対、中途半端な気持ちでは付き合わない。

背伸びしたり、無理はしない。

そう、心に誓った。




8月の終わり。

No.105 10/08/26 18:31
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>> 104 ●105

トシとクニくんとの関係で かなり疲れてしまっていた。

傷付いたり、傷付けられたり。

小さなプライドを守る為に、嘘を重ね 自分もヒトも傷付けた。

何の為のプライドだろう。

こんなの守る価値もないよ。




もう恋愛は しばらく いいや。 やめとこう。

トシのコトが 私の中で ちゃんと消化できるまで 次の恋はしない。

誰かを傷付けたり、誰かに傷付けられたり そんなコト もうしたくない。

いつか純粋な恋ができたらいいな。



そう思うようになっていた。

No.106 10/08/26 18:33
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>> 105 ●106

授業が終わり、学校から駅へと歩く途中、後ろから自転車に乗った友香が来た。

「チカコ。少し話さない?」

自転車を降り、手で押しながら歩く。

「2人の事、クニくんから少し聞いたよ」

「・・・そう。なんて言ってた?」

「詳しい事は教えてくれなかったんだけど、
 
 ”俺が悪いんだから、チカちゃんに余計なこと絶対言うな”ってクギ刺された。
 
 私どんなイメージなんだろーね(笑)」

「おせっかいねーさん?」

「アホ。 でね、クニくんからコレ預かってきた。」

そう言い、バッグから取り出したのは赤い石のピアスだった。

No.107 10/08/26 18:35
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>> 106 ●107

「”ピアスの穴をあける事はもうないから、チカちゃんに持っててほしい”って。

 ”いらなかったら捨ててもらって構わない”って。」

無言でピアスを受け取った。

「じゃあ、私、急ぎでバイト行かなきゃいけないから。じゃーね!」

自転車を勢いよくこぎ始め、友香はバイトへと向かった。





家に帰ると、その赤い石のピアスと、トシからもらったネックレスを

タンスの1番下の引き出しの奥にしまった。

No.108 10/08/26 18:36
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>> 107 ●108

しばらく恋愛禁止!

と決めてすぐ、ユミから合コンの誘いがあった。

正直、全く乗り気じゃなかったけど、

親友のユミのためだし、人数合わせのつもりで参加した。



合コン相手は、ユミがバイトしている飲み屋の先輩とその友達だった。

No.109 10/08/26 19:05
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>> 108 ●109

課題に追われていた。

提出日が重なり、かなりテンパっていた。

私だけじゃない。

クラスのみんな ほとんどが同じ。

時間がどれだけあっても足りない。

返ってこの忙しさが、トシの事を一時的にでも忘れさせてくれた。



時計を見ると 7時になる手前だった。

「ヤバイ!!」

今日は8時からユミと合コンの約束をしてるんだった。

地元の駅まで どう頑張っても1時間半はかかる。

「完全に遅刻だ!」

慌てて画材を片付け 急いで合コンへと向かった。

No.110 10/08/26 19:07
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>> 109 ●110

ユミは私が課題で忙しいのを知っていたので、

遅刻しても怒りはしなかった。

むしろ「忙しいのにごめんね」と言ってくれた。

4対4の合コンらしい。

女の子の2人はユミと仲の良い 私も知っている中学の同級生。

相手は、1人はユミのバイト先のセンパイで他の3人はその人の友達。




この合コンで 学(マナブ)と出逢うことになる。

No.111 10/08/26 19:18
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>> 110 ●111

合コンは楽しかった。

男子たちもノリが良く、話上手で盛り上がった。

料理も飲み物も美味しい。

気分転換できた。

参加してよかった。

ユミありがとー と思う。

No.112 10/08/26 19:20
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>> 111 ●112

いい時間を迎え、そろそろお開きにしようとなった。

会計を済まし、みんな店の外へ出る。

私はユミと一緒に帰ろうとした。

「チカコちゃん!待って!」

私をよんだのは学くんだった。

学くんとは、昨日の合コンで一番盛り上げてたやたら明るくておもしろい人。

No.113 10/08/26 19:21
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>> 112 ●113

「連絡先交換しない?」

恋愛禁止宣言した私としては教えたくなかったけど

みんなが見てる手前 断るワケにもいかず、

しぶしぶ連絡先を交換してしまった。




これが学との長い付き合いの始まりだった。

No.114 10/08/27 12:17
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>> 113 ●114

学のことは、適当にあしらって疎遠になろうと思っていた。

理由は2つ。

恋愛をしばらくしたくないということと、学が私のタイプではないから。



学は、髪の毛は短く金色に染めていた。

肌は少し焼けていて、ヒゲが無造作にはえている。

左耳には輪っかのピアス。

身長は170cmくらいで、体は少し筋肉質だった。

煙草をたくさん吸い、声はしゃがれていた。

男っぽいと言えばそうなのだが、私的にはむさ苦しくて軽そうで好みではなかった。




しかし、世の中思い通りにはいかないもんだ。

学はしぶとかった。

とゆーか しつこかった。



※112で誤字がありました。訂正します。
最後の行の一文にある「昨日の合コン」が正しくは「今日の合コン」ですm(_ _)m

No.115 10/08/27 12:41
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>> 114 ●115

メールも電話もマメ。(←私からの返信なくても電話に出なくても連絡してくる)

会うのを断ると駅やバイト先で待ち伏せする。(←一歩間違えばストーカー)

そんなこんなで 学のしつこさに根負けしてしまい2回会った。

そして、事態は私の回避したかった方向へと進んでしまう。

No.116 10/08/27 19:53
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>> 115 ●116

バイト終わりに二人で飲みに行った。

二人で会うのは3回めだった。

その帰り。

私は家の場所を知られたくなくて、家から歩いて5分くらいの道で車を停めてもらった。

車を降りようとすると





「俺と付き合って!」



告白されてしまった。

No.117 10/08/27 20:21
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>> 116 ●117

「ダメかな?」

「えーと・・・お断ります」

「何で!?」

学は意外という風に驚いた。

そんな学に飽きれてイライラしながら理由を伝えた。



「じゃー1つずつ説明したげる。

 私の都合や私の気持ちを全く考えずに、

 自分の感情優先で電話してきたりメールしてきたり会いにきたり

 勝手に何でも決めるところがイヤ!

 煙草臭いのも嫌い!

 強引なところがイヤ!

 たかが3回あっただけで付き合おうと思う軽さが嫌い!

 わかった!?」





 学は泣きそーな顔をしていた。

No.118 10/08/29 08:18
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>> 117 ●118

「これだけ言われてもまだ付き合いたいと思う?」

「・・・・・・うん。
 悪いところは直すから、だから付き合ってよ!
 好きになるのに会う回数は関係ない!」

確かにそれも一理ある。でも、私にはその一理もないの。

「無理だって。本当に直せると思ってるの?

もう20歳でしょ?性格なんて変わらないよ」

「絶対変えるから!」

「てゆーかさ、今の聞いて分かったでしょ?

 私学くんのこと全然好きじゃないんだよね。」

「好きにさせてみせるから!」

何なんだコイツはぁーーーー。

ドラマじゃないんだって、そんなクサい台詞痒いだけだってば。

結局、付き合う 付き合わないのやりとりを1時間もしていた。

No.119 10/08/29 08:21
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>> 118 ●119

本当にしぶとい、とゆーかしつこい。

いい加減にしてよ。

もう0時まわってる・・・。

眠たいよ。

「OKしてくれるまで、帰さねーから」

それじゃ監禁だよ。

飽きれて何も言えない。

とにかく帰りたい、お風呂に入りたい、寝たい、その本能の方が勝とうとしていた。

何とかして上手く誤摩化せないか・・・

考えた末の返事。

「わかった。友達からならいいよ」

No.120 10/08/30 17:21
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>> 119 ●120

友達からってのはとても曖昧で、その時の私にとっては都合の良い言葉だった。

それでも学は「本当!?やった!!ありがと!!」と喜んでいた。

あと5分の道のりを よーやく学から解放されて帰る事ができた。

あれだけ言われて私のどこがいいんだろう?

恋愛感情は本当にわからないなぁ。

  • << 122 ●122 恋愛感情を抜きなら、学と過ごすのは楽しかった。 楽しくておもしろい話をして笑わせてくれる。 色んなところへ連れてってくれる。 お金は全部 学が出してくれる。 学といるのは とても楽だった。 気付けば学と遊ぶことが増えていた。

No.121 10/08/30 17:22
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>> 120 ●121

それから、私と学は「お友達から」の付き合いを始めた。

それにあたり色々と条件をつけた。



私を束縛しない。

わがままを極力きくこと。

私のする事に文句を言わない。

「俺の事好き?」と聞かない。

私の前で煙草を吸わない。

私に他に好きな人ができたら諦めること。




こんなわがままな条件を学は快諾した。

No.122 10/08/30 17:23
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>> 120 ●120 友達からってのはとても曖昧で、その時の私にとっては都合の良い言葉だった。 それでも学は「本当!?やった!!ありがと!!」と喜ん… ●122

恋愛感情を抜きなら、学と過ごすのは楽しかった。

楽しくておもしろい話をして笑わせてくれる。

色んなところへ連れてってくれる。

お金は全部 学が出してくれる。

学といるのは とても楽だった。

気付けば学と遊ぶことが増えていた。

No.123 10/08/31 19:25
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>> 122 ●123

「お友達から」の付き合いを始めて3ヵ月。

学とは仲良くなったけど、それだけだった。

冗談で軽く頭を叩いたりとかはあったけど、

男女としての行為は一切なかった。




我慢してるのかなぁ・・・?




ふと疑問に思う。

No.124 10/08/31 19:29
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>> 123 ●124

聞いてしまった。

「学は私とエッチとかしたいと思わないの?」

「はぁ!?」

唐突な私の質問に 学はふいた。

「女の子がそーゆー事 聞くかなぁ?しかも、店(レストラン)で。しかも食事中に。」

「えーーーーだって、気になったから・・・」

「・・・・・・・あのね、俺だって好きな子とそーゆーことしたいよ。

 だけどさ、無理矢理するのは好きじゃないし。

 俺は、チカコが俺の事 ちゃんと好きになってからがいいの。」




そんな風に考えてたんだ・・・。

私の中で 新たな感情が芽生えた。

No.125 10/09/01 18:24
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>> 124 ●125

ずっと、条件を守ってくれた。

一緒にいて楽しいし、楽だった。

情なんてとっくにあった。

見た目のことなんて もうどうでもよくなっていた。

私は学を好きになっていた。



「もう、いいからね。」



そう言って、帰りの車中 学の手を握った。



学は驚き私の顔を見て、嬉しそうに笑った。

もうすぐ、季節はクリスマスを迎えようとしていた。

No.126 10/09/01 18:25
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>> 125 ●126

クリスマス、ホテルで学と初めて結ばれた。

学はシルバーリングをくれた。

私はピアスをあげた。

トシとの苦い記憶はどんどん薄れていく。

また人を好きになる事ができた。

学に感謝しなきゃ。




でも、この時はまだ 学の本性を知らなかった。

No.127 10/09/02 19:07
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>> 126 ●127

専門1年の冬休み。

遠い大学へ行った友達が帰省したり、

高卒で社会人になった友達とか、

なかなか会えなかった友達と久しぶりに会える。

私はそんな友達と遊ぶ約束をした。



学に携帯で冬休みの予定を聞かれたので、その事を伝えた。

すると、

「はぁ?何ソレ!?
俺はね、チカと冬休みに たくさん遊ぶのをすっげー楽しみにしてたんだよ!
何勝手に 予定入れてんだよ!」



予想もしない言葉が返ってきた。

No.128 10/09/02 19:10
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>> 127 ●128

初めて学が怒った。

その事に驚いた。



そして、

何でそんな事で怒るの!?

と、イラッとした。



でも、なるべくもめたくなかったし、

妬いてると思えば可愛く感じる事もできたから、

優しく下手に、友人と遊ぶ事の承諾を求めた。

No.129 10/09/03 17:16
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>> 128 ●129

学はしぶしぶ承諾した。

「わかったよ・・・。でも、送迎はさせて。」

「うん。お願いするね。」

そして、電話を切った。





学が束縛してきたのは初めてだった。

しかも、あんなに怒って。

少し 戸惑った。

No.130 10/09/03 17:17
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>> 129 ●130

久しぶりに会う友達との飲み会当日。

私は今 その飲み会に向かう学の車の中にいた。




気まずい雰囲気。

お互い 話そうとしない。

この前の電話を引きずっていた。

先に口を開いたのは学だった。

「今日の飲み会、久しぶりに会う友達なんだよね。楽しいといいね。」

何だかよそよそしい。

「・・・うん・・・」

私もテキトーに返した。

No.131 10/09/03 17:19
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>> 130 ●131

「今日の飲み会って、男もいるの?」

私は幹事でもないし、誰が参加するのか詳細は聞いていなかった。

「さぁ、わかんない」とだけ答えた。


しばらく沈黙して、学がポツリと言った。





「やっぱり、今日、行ってほしくない」





え!?




「だって、他に男がいるかもしれないんだろ?

 チカが他の男と楽しく話してるなんてイヤだ!!」

そう言い、右折車線から強引に左折車線へ進路変更した。

No.132 10/09/06 17:59
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>> 131 ●132

「何 勝手なこと言ってんの!?」

「ホントにイヤなんだよ!!チカコに他の男が寄ってくるのが!」

「そんなに私が信用できないの?」

「チカコにその気がなくても、男がどう思ってるかなんてわからないだろっ!?」

学はハンドルを両手で




バンッ!!!!!!




と力強く叩いた。




恐くなった。

No.133 10/09/06 18:01
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>> 132 ●133

交差点で信号が赤になり、車は停止した。

その瞬間を見計らって私は車から降りた。



「もういい、自分で行く。帰りも来なくていい。じゃあね。」



学の顔も見ずに、歩き始めた。



「チカコ!待って!!」

後ろで学の声が聞こえるが無視した。

No.134 10/09/07 19:14
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>> 133 ●134

友達に連絡して、迎えにきてもらい飲み会に参加できた。

久しぶりに会う友達との時間は楽しかった。




飲み会の最中、学からメールが来ていた。

”さっきはごめん”

”まだ怒ってる?”

”飲み会、楽しんでるかな?”

”今日は楽しんできてね!”

”帰り、迎えに行くからね!”

”俺も今 友達と飲んでるよ!”

”チカコがいなくてさびしーよー”

”チカコに会いたいよー”

”今 飲み会はどんな感じかな?”

”飲み会何時に終わる?”

”まだ終わらないの?”

”いつまでやってるの?”

”今から迎えに行くから”




どのメールにも返信しなかった。

No.135 10/09/08 19:10
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>> 134 ●135

飲み会に参加したのは私を入れて10人。

その中には男もいた。

学には言えないな。




「チカ 今日何時まで大丈夫なの~?」

ヒトミが聞いてきた。

ヒトミは学の車を降りた後 迎えに来てくれた友人。

「何時でも大丈夫だよー!」

親には久しぶりに会う友達なのでオールになるであろう事は伝えてあった。

「そっか、よかった!二次会はカラオケだからね!最後まで付き合えよ~!」

「うん!」

「帰りは私が送ってくから、心配すんな!だから飲め~~!!」




その間も、学からメールが送られていた。

No.136 10/09/18 13:20
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>> 135 ●136

学からの

”今から迎えに行くから”のメールが気になっていた。

本当に、こっちにむかってるのかな・・・。



”二次会にも参加します。帰りは友達が送ってくれるので、学は来なくていいです。”


とメールした。



二次会はカラオケに行くことになった。

飲み屋の駐車場で、当たりをキョロキョロするが、学の車はなかった。

来ていないんだ。

ほっとした。

No.137 10/09/18 13:23
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>> 136 ●137

二次会のカラオケもかなり盛り上がった。

私は学の事なんか忘れて携帯もカバンにしまったまま楽しんでいた。

カラオケも終わり、時間は明け方の5時。

みんなで、ファミレスへと場所を移動した。

  • << 139 ●139 こんなに束縛する人だったんだ・・・。 恐くなった。と同時に、苛ついた。 「チカぁ、そろそろ帰る?送っていきますか?」 「うん。お願いします!」 私は他の友人とともに、ヒトミに家まで送ってもらった。

No.138 10/09/18 17:35
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>> 137 ●138

眠たい目をこすり、あくびをしながら、みんなファミレスでまったりしていた。

カフェオレを飲みながらゆっくりボーッとしていると、

カバンの中の携帯がブルブル振動した事に気が付いた。

携帯を見る。

不在着信十数件。






学・・・・


メール十数件。

”もう、店の近くにいるよ。”

”一緒に帰ろう。”

”二次会って何。”

”どこ行くの?”

”もう、迎えに来てるんだけど。”

”電話に出て”

”何で 電話にでないの?”

”男?”

”何時まで遊んでるつもり?”

”今どこ?”

”電話出て”

”彼氏 ほっといて何遊んでんだよ”

”電話に出ろ”

”いい加減電話でろ”

”無視やめろ”

”俺も二次会行くわ”

”何様のつもりだ”

”シカトしてんじゃねえぞ”





かなり引いた。

No.139 10/09/24 18:28
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>> 137 ●137 二次会のカラオケもかなり盛り上がった。 私は学の事なんか忘れて携帯もカバンにしまったまま楽しんでいた。 カラオケも終わり、時… ●139

こんなに束縛する人だったんだ・・・。

恐くなった。と同時に、苛ついた。

「チカぁ、そろそろ帰る?送っていきますか?」

「うん。お願いします!」

私は他の友人とともに、ヒトミに家まで送ってもらった。

No.140 10/09/24 18:30
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>> 139 ●140

家に着き、シャワーを浴び、ベッドに寝転ぶ。

携帯を見返した。

学からの着信とメールは朝の4時過ぎまで続いていた。

すごく、複雑な気持ちになる。

迷惑な人と思うのか、それともこんなに私を愛してくれてる、ととるのか。

前者の気持ちの方が強かった。

No.141 10/09/25 17:20
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>> 140 ●141

7時前。

一応学にメールをする。

”今帰ってきたよ。オールで疲れたから今から寝るね。オヤスミ☆”

メールを送ると すぐに学から電話がかかってきた。

げっ!今まで起きてたの?

戸惑いながら 電話に出る。

No.142 10/09/25 17:22
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>> 141 ●142

「もしもし・・・」

「チカ、すげー遅かったね。」

学の声は明らかに不機嫌だった。

「何で連絡くれねーの?」

「みんな会うの久しぶりで盛り上がったから。
 みんなのいる前で携帯いじるのって、失礼じゃん。久しぶりに会うのに。」

「チカは俺より友達の方が大事なんだ」


学ってこんなにネチネチしてたっけ?

眠たい上に学のネチネチしたセリフでイライラしてくる。

No.143 10/09/25 17:26
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>> 142 ●143

「飲み屋の近くのコンビニで待ってたんだよ!」

あっそう。

「チカの事 待ってたんだよ!」

へぇ。

「何で、連絡くれないんだよ!?」

・・・・。

「彼氏放っといて平気なのかよ!?」



「いいかげんにして!!
 私、帰り迎えに来なくいいって言ったし、
 友達に送ってもらうってメールしたよね!?」



怒りが爆発した。

No.144 10/09/27 18:39
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>> 143 ●144

「全部 学が勝手にやった事でしょう!?
 私の都合考えずに、メールも電話もしてきて。
 久しぶりの友達に会ってんだから気ィ使ってよ!!」

「・・・・・」

「あと、私束縛されるの嫌いって言ったよね!?
 こんなに束縛されるの、無理なんだけど。
 約束守れないなら もう別れる。」

「チカ!?」

私が こんなに怒るとは思っていなかったようだった。

「疲れてんだよね。眠いから、電話切るわ。」

「待って!チカ!ごめん!!」

「しばらく連絡してこないで。」

そう言って、私は電話を切り、携帯の電源をオフにし眠りについた。

No.145 10/09/28 08:52
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>> 144 ●145

眠りについたといっても、昼からバイトだったので

10時には起きて早めのお昼ご飯を食べてバイト先へ向かった。

携帯は電源を切ったまま家に置いてきた。




私のバイト先はCDショップ。

10分前に着き、急いで着替えてレジへ向かう。

「おはよーございまーす」

社員さんと前のシフトのバイト仲間へ挨拶した。

No.146 10/09/28 09:27
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>> 145 ●146

私と同じシフトの村井くんはすでに出勤していた。

「おはよう、前田さん!」

「おはよう 村井くん」



村井くんは私と同い年で、背は165cmくらいで少しぽっちゃりめの男の子。

かっこいいタイプではないけど優しくて愛嬌があって

バイトの先輩たちからも弟みたいに可愛がられていた。

私と同じデザイナー志望だったけど、学校の先生とソリが合わず中退してしまい、

今では自分で描いたイラストを路上で売ったりしている。

二人ともデザイナー志望だったから、何かと話が合った。

No.147 10/09/28 11:17
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>> 146 ●147

今日はお客さんが少ない。

寝不足でフラフラするからちょっとホッとする。

私はレジでぼーっとしていた。



「前田さん、今日元気ないね」

村井くんが話しかけてきた。

「そう見える?」

「うん。体調 悪いんじゃない?大丈夫?」

「実は、オールで飲み会だったから寝不足なんだぁ」

「そうなんだ。なら安心したよ。」

No.148 10/09/28 13:26
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>> 147 ●148

「実はさ、今日、前田さんに渡したいものがあるんだ」

「何何?ラブレター?」

「ちっっっちがうよ!!!」

その慌てっぷりにびっくりした。

冗談のつもりで言ったんだけど、ウブなのね、村井くん。

「そうじゃなくて・・・イラスト描いてきたから前田さんに見てほしいんだ」

と言った村井くんの顔は赤かった。

No.149 10/09/28 17:59
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>> 148 ●149

バイトが終わり、事務所で村井くんが自分のトートバッグから

茶封筒に入ったイラストを取り出して見せてくれた。




女の子と男の子が屋根の上で夜空を眺めているイラストだった。

「ステキだねー」

「ホント?ありがとー!それ、前田さんにあげるね!」

「え?もらっちゃっていいの?」

「うん!そのつもりで持ってきたから」

「じゃーありがたくいただくね。」



こんな感じで村井くんとは仲が良かった。

No.150 10/09/29 11:19
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>> 149 ●150

バイトを終え、家に着いた。

携帯の事なんて珍しく忘れて、姉に久しぶりに会った友達の話をしたり

村井くんのイラストを見せていた。



夕食を済ませお風呂に入る。


自分の部屋に戻ると、ベッドの上に放置されたままの携帯が転がっていた。

ベッドに座り、携帯を手にとり、電源を入れた。

No.151 10/09/29 11:33
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>> 150 ●151

携帯の電源を入れると思いも寄らぬ事態が待っていた。



ブーッ・・・

ブーッ・・・

ブーッ・・・

ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ・・・



メールを受信し続けてバイブが止まらない。

学からのメールだった。

No.152 10/09/29 12:12
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>> 151 ●152

”ごめん、本当に反省してる”

”許して下さい”

”電話に出てくれるまで、電話もメールもやめない”

”お願い、電話に出て”

”何でもいいから連絡下さい”

”ごめんなさい”

”本当にごめんなさい”

”何でもするから許して”

”何でも言うこときくから”

”どげざします”

”反省してます”

”約束守るから”

”別れないでください”




こんな内容のメールが50件以上も送られてきて、

さらに送られ続けている。



ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ・・・・




携帯の振動が部屋に響く・・・。

No.153 10/09/29 14:31
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>> 152 ●153

寒気がした。

一体いつまで受信し続けるの?

鳴り止まない携帯が恐かった。

電源を切っても同じ事になるからバイブにしたままクッションにはさんで

バイブの音が聞こえないようにした。

それでも、かすかに聞こえるバイブの音。



ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ
ブーッ・・・・



まだ受信してる・・・。

30分以上も鳴り止まない。

・・・・恐い・・・・・!!!



携帯がまるで生き物みたいに思えた・・。

No.154 10/09/29 16:06
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>> 153 ●154

携帯が鳴り止んだ。

ほっと胸を撫で下ろす。

メールは100件以上も送られていた。



このまま 学を無視し続けたら またこんな状態になるのかなぁ。

やだなぁ・・・恐いなぁ・・・。




携帯を手に持った。

すると、ブーッブーッとバイブが鳴った。

心臓がキュッとするぐらい驚いた。

学からの電話だった。

  • << 157 ●155 無視すればまたメールを死ぬ程送られるかもしれない・・・。 嫌だったけど電話に出た。 「もしもし・・・」 「やっと、連絡がとれた・・・、よかった・・!」 私は返事をする気力がなかった。 「チカ、ごめんなぁ。俺が悪かった。もう、チカを困らせたりしないから・・・」 悪気なく学はそう言った。 今も充分困ってるよ。何で分からないの? 「頼むから別れるなんて言うなよ・・・」 学のすすり泣きが聞こえた。

No.156 10/09/29 19:47
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>> 155 主の、いくらです。

レスありがとうございます!
読んで下さっている方がいるなんて嬉しいです😃

ハイペースだったり、まったく更新がなかったりムラがありますが、今後もお付き合いよろしくお願いします😍

No.157 10/09/30 09:22
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>> 154 ●154 携帯が鳴り止んだ。 ほっと胸を撫で下ろす。 メールは100件以上も送られていた。 このまま 学を無視し続けたら またこ… ●155

無視すればまたメールを死ぬ程送られるかもしれない・・・。

嫌だったけど電話に出た。


「もしもし・・・」

「やっと、連絡がとれた・・・、よかった・・!」


私は返事をする気力がなかった。


「チカ、ごめんなぁ。俺が悪かった。もう、チカを困らせたりしないから・・・」

悪気なく学はそう言った。

今も充分困ってるよ。何で分からないの?

「頼むから別れるなんて言うなよ・・・」

学のすすり泣きが聞こえた。

No.158 10/09/30 09:39
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>> 157 ●156

何であんたが泣くの?

私が泣きたいんだけど。


「わかったから。もう いいから。」


早く電話を切りたかった。


「チカコぉ、今から会える?」


え!?

時計を見た。

もう、夜中の0時を過ぎている。



「今っていったって、もう夜遅いよ?」

「実はもうチカの家の近くにいるんだ」


何!?


部屋のカーテンをあけ、窓から家の前の道路を見渡した。

近くに学の車が見えた。







そんな・・・







コイツは別れたらストーカーになる・・・!

No.159 10/09/30 11:01
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>> 158 ●157

家族はみんな寝ていて、家の中は静かだった。

私はパジャマの上にジャケットを着て、そっと家を出て学の車に向かった。

車の前まで行くと窓があき、中から「乗って」と学が言った。

助手席に乗ると学が車を発進させた。





「どこいくの?」

「ドライブ」




恐さと寒さで体が震えていた。

No.160 10/09/30 12:23
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>> 159 ●158

車を走らせること30分。

湖に着いた。

外は寒いので、車から湖を眺めていた。

車中から続く沈黙を破ったのは学だった。



「チカコぉ、ホントにごめんなぁ・・・」

「・・・もういいよ・・・」
恐い、帰りたい。

「あのままチカと連絡とれなくなったらどうしようって、会えなくなったらどうしようって考えたら頭パニクって」

「そっか・・・」
だからってあんなにメールするなよな。

「メールとか電話とかすげーたくさんしちゃった」

「そだね・・・」
ホントにね。


「俺うざい?」

「・・・・・」

「俺の事、嫌いになった?」
うん、なんて言えるはずないじゃん。

「そんな事ないよ」と少し笑顔を作った。

「俺の事、好き?」


ホントはもう分からなかった。

けど、黙って頷いた。


「よかった・・・。ホント、ごめんな・・・」



学は静かに泣き始めた。

No.161 10/09/30 12:54
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>> 160 ●159

時折、鼻をすする音が聞こえる。

大の大人が泣かないでよ。

こっちが悪い気がしてくるじゃないか。

「もう、なんとも思ってないから。泣かないで?」

何だか哀れに思えてきて学の左手に右手を重ねた。

すると、待ってましたと言わんばかりに私の右腕を強く引っ張り、

自分の方へと引き寄せ、唇を重ねてきた。




イヤだった。

気持ち悪かった。





でも、学はやめる事なくそのまま車で最後までした。

No.162 10/09/30 16:18
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>> 161 ●160

学の異常なまでの執着心と嫉妬心に困惑したけど、それからしばらくは平穏に過ごせた。

というか、私が学に優しく接すれば学は異常な行動はしなかった。




嫉妬心が強いのも束縛が激しいのも、私を大好きが故。

だからしょーがない。




そう割り切った。

割り切って付き合えば楽しい時間を過ごせ、仲の良いカップルでいられた。

私が我慢さえすれば、学は優しい恋人だった。

No.163 10/09/30 17:36
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>> 162 ●161


学は、嫉妬心が強く束縛が激しいものの、人前ではベタベタすることを嫌がった。

友達の前では亭主関白を気取り、二人になると子供のように甘えてくる。

そのギャップが気持ち悪かった。



でも、私が冷たくしたりキツくあたると また異常な行動に走ってしまう。

それが恐くて学が不機嫌にならないように、色んな事を学に合わせ、

学中心の生活になっていった。

学が異常な事をしてしまうのは、私が悪いからって・・・。




付き合うときとは違う関係になっていった・・・。

No.164 10/09/30 19:02
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>> 163 ●162

服装も髪型も化粧に関してもも学はアレコレ口出しする。

「子供っぽい服だと一緒に歩くの恥ずかしいからヤメロ」

「髪型は、流行のコレにして」

「○○(芸能人の名前)みたいな化粧して」

なるべく学の言う事をきいた。

どんどん学に忠実な女になっていく。

No.165 10/10/20 18:35
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>> 164 ●163


はぁ・・・。



学との付き合いに疲れていく。

当たり前だよね。

全部 学に合わせてるんだもの。

学に合わせて、学の言う事きいて。

こんなの私じゃない。

学に作られた学の為の彼女人形だよ。



こんなんでいーのかなぁ・・・。



そんな風に考える事が増えていく。

No.166 10/10/20 18:39
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>> 165 ●164

今は3月。

今月末には春休みに入る。

春休みが明け、専門2年生になったら就職活動が待っている。

その就職活動に向けて新たな作品作りや、今までの作品をまとめなければならない。

専門生活で1番忙しい時期を迎えようとしていた。





学は大学3年生になる。

切羽詰まった私とは違い、まだまだ時間に余裕があり、

将来のビジョンも曖昧だった。

そんな中、学が本気になったのは音楽だった。





進級試験も無事に終え、2年生になり、就職活動が始まった。

私はデザイナー志望だったので、デザイン会社や広告会社・印刷会社などの説明会に参加していた。

時代は不景気まっただ中で、どこも採用人数がごくわずか。

ちゃんと就職できるのか、本当に不安になる・・・。

No.167 10/10/20 18:47
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>> 166 ●165

授業と就活と就活用の勉強と作品作りで、多忙な毎日だった。

学と遊ぶ時間はかなり減ってしまった。

だけど、そのことで怒ってきたりしなかった。

以前なら、理由が何であれ自分を最優先させないとおかしくなっていたのに。




学が怒らなかった理由は

音楽という夢中になれるものが見つかったから。

No.168 10/10/20 19:02
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>> 167 ●166

学は中学生の頃から、趣味でギターを弾いていた。

でも、それは本当に趣味程度で家で一人で楽しむくらい。



大学生になって、先生の紹介で知り合った翔太くんと二人で軽音サークルに入ったけど、

あんまり栄えていなくって、人もあまり集らずまともな活動はできなかった。

部室で翔太くんと二人で弾き語りをしていた。



でも、この春、新入生が10人近く入部し、それに伴って2年生や、

幽霊部員だった同級生が部室に集るようになった。

念願のバンド活動ができるようになったのだ。

No.169 10/10/30 09:11
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>> 168 ●167

淋しいという感情はなかった。

学に夢中になれるものが見つかって嬉しく思った。

おかげで私も自分の事に集中できる。




バランスのとれた付き合い方ができそう。




そんな淡い期待をした。

No.170 10/10/30 09:16
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>> 169 ●168

バンドに夢中なものの、連絡は怠らなかった。

バンドについて、どーしたこーしたと

少年のように話す学は微笑ましかった。



私は、企業展や会社見学した中で気になる会社をいくつかピックアップし、

いよいよ試験を受ける段階に進んだ。




不景気な中、幸運な事に一社目で私は内定をもらえた。


従業員9名の小さなデザイン会社。

初任給16万。

他の会社と比べて良いわけじゃないけど、自分の好きな事を仕事にできる。

そう思えば安い給料も気にならない。



5月の話。

No.171 10/10/30 09:22
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>> 170 ●169

就職活動にもキリがつき、あとは無事に卒業するだけ。

クラスメイトが不景気で就職難の中、私は最後の学生生活を満喫するつもりでいた。



学はバンドがおもしろいらしく、オリジナル曲を作ったり、

ライブをしたり、積極的に活動していた。

でも、私は騒音と煙草が苦手で、どれだけ学に何度ライブに誘われても

見に行く気にはなかなかなれなかった。




ライブハウスは

うるさい

臭い

汚い

恐い



そう思い込んでいた。

No.172 10/10/30 09:39
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>> 171 ●170

ある日、学と携帯で話していた時のこと。

「ねぇーーーー、1回でいいからライブ見に来てよ」

「イヤ。」

そんなやりとりを繰り返していた。

「チカコ、ちょっと待っててな」

そう学は言うと、携帯を誰かに渡したようだった。

「もしもし?チカコちゃん?はじめまして、翔太です。」

「あ、はじめましてー!」

翔太くんの事は学から話を聞かされるだけで、直接話したり会ったりしたことがなかった。

自分じゃ説得させられないから、学は翔太くんを使ってきたわけ。

ずるい奴だ。

「あの、ライブ、よかったら見に来て下さい」

翔太くん 緊張している・・・。かわいそうに・・・。

No.173 10/10/30 09:46
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>> 172 ●171

「ん~~~~、イヤです。恐いもん。」

「・・・あ、そうですか・・・。」

翔太くんは、携帯を誰かに渡したようだ。

受話器の向こうでヒソヒソ話が聞こえる。



「あの、はじめまして!!」

次に携帯に出たのは、なんと女の子だった。

No.174 10/10/30 09:50
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>> 173 ●172

「は、はじめまして・・・・・」

誰だろう?

「私、翔太の彼女です。」

「あ~~~~!マリコちゃん・・・ですよね!?」

学から何度か話 聞いたことがある!

「そーです、マリコです!あの、一緒にライブ見ませんか?
  私も最初恐かったんですけど、意外に平気ですよ♪」

「そーなんですか・・・」


そうして、学・翔太くん・マリコちゃんの3人に代わる代わる説得され、

ライブを見にいくハメになった。

No.175 10/10/30 10:01
いくら ( yZVonb )

>> 174 ●173

翔太くんが車で迎えに来てくれた。

その車には、学とマリコちゃんと他のメンバー二人がいた。



学はメインギター。

翔太くんはギターボーカル。

ケースケはベース。

しんちゃんはドラム。



これが、学のバンドのメンバー。

みんな大学のサークルの仲間。

No.176 10/10/30 10:12
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>> 175 ●174

ライブハウスに着き、機材や荷物を楽屋に運ぶ。

中にはすでに、何人か他のバンドの方がいた。

挨拶をして、荷物を置く。



やっぱり臭い。楽屋は煙草の煙が充満している。

壁やソファに臭いが染み付いている。

頭が痛くなりそーだ。



うちらの後にも、他のバンドが楽屋に続々と入ってきた。


シャツからのぞく腕にはタトゥーがびっしり。

顔面ピアス。

頭の色はカラフルで、みんな髪をツンツンに立てている。

鋲ジャン・革ジャン。



見るからに恐い人達ばっかりだよ。

私の人生に、今まで接点のない人種だ。

No.177 10/10/30 10:42
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>> 176 ●175

学は他の恐そうなバンドの人達と話し始めた。

それにケースケも加わった。



しんちゃんはイヤホンをつけて、

何か聞きながら丸いゴム板みたいなのにスティックでリズムを刻んでドラムの練習をしている。



翔太くんはマリコちゃんと二人で楽しそうに話している。

二人だけの世界。そして、仲良く手を繋いで出掛けて行った。




私・・・・・一人じゃん。

No.178 10/10/30 11:25
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>> 177 ●176

学とケースケはまだ他のバンドの人と楽しそうにしゃべっていて終わる気配はない。

しんちゃんはもくもくとひたすらドラムの練習。

翔太くんとマリコちゃんは、まだ戻って来ない。



何の為にここに一緒に来たのかな・・・。

必死に説得したくせに、放置って・・・。

私来なくてもよかったんじゃん。




すごく、疎外感。

私の居場所ないし。

やっぱり、来るんじゃなかった。

No.179 10/10/30 11:26
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>> 178 ●177

疎外感に耐えきれなくて、楽屋を出た。

ライブハウスを出た。

街をぶらついた。

洋服を見たり、小物を見たり、一人で時間をつぶしていた。



学たちのライブだけ見たら、電車でさっさと帰ろう。

No.180 10/10/30 11:27
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>> 179 ●178

そろそろライブが始まる時間かなぁ、と携帯で時間を確認。

すると、着信があった。

学と、翔太くんと、マリコちゃんから。



あ、そっか。

誰にも何も言わずに出てきちゃったからな。

心配させてるかも。

急いで、学に連絡した。

  • << 184 ●179 「今どこ!?」キレ気味に学が言った。 「えっとー・・・・○○ビルのところを歩いてるよ」 「迎えに行くから待ってて!!」 5分くらいして、学が走って迎えにきた。 「あのさー・・・何やってんの?」あからさまに不機嫌な態度。 「何って・・・散策かな」 「何勝手にいなくなってんだよっっ!!」 大きい声で怒鳴られた。すごい形相で。 びっくりして、恐くて、何も言い返せなかった。

No.182 10/10/30 17:01
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>> 181 秋扇公主さん、こんにちわ😃

読んで頂いてありがとうございます!

感想スレですか・・・。

あんまりアクセス数も増えないので必要ないかな、と思ってました💦

でも、これをキッカケに感想スレ立てますね👍

No.183 10/10/30 17:17
いくら ( yZVonb )

主のいくらです。

感想スレ作ってみました!

こちらです↓
http://mikle.jp/threadres/1453975/

感想やアドバイス等、何かご意見がありましたら感想スレの方にお願いします🌷🌷🌷

※誹謗中傷が酷くなったときはソッコー閉鎖します。その時はごめんなさいm(_ _)m

No.184 10/10/30 17:20
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>> 180 ●178 そろそろライブが始まる時間かなぁ、と携帯で時間を確認。 すると、着信があった。 学と、翔太くんと、マリコちゃんから。 … ●179

「今どこ!?」キレ気味に学が言った。

「えっとー・・・・○○ビルのところを歩いてるよ」

「迎えに行くから待ってて!!」



5分くらいして、学が走って迎えにきた。

「あのさー・・・何やってんの?」あからさまに不機嫌な態度。

「何って・・・散策かな」

「何勝手にいなくなってんだよっっ!!」

大きい声で怒鳴られた。すごい形相で。

びっくりして、恐くて、何も言い返せなかった。

No.185 10/10/30 17:31
いくら ( yZVonb )

>> 184 ●180

「行くぞっ!!!」

「あ・・・うん・・・」

「さっさと歩けよな!!!」

学はそう言ってスタスタ歩き始めた。

私は小走りでついてった。


その間、すごく淋しかった。


私が出ていった事にも気付かなかったくせに。

何でそんなに怒るんだよ。

No.186 10/10/30 17:39
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>> 185 ●181

ライブハウスに着くと、入り口で翔太くんとマリコちゃんが待っていてくれた。

学が不機嫌なオーラをガンガン発していたので、翔太くんとマリコちゃんは戸惑っていた。

「ごめんね、ちょっとブラブラ買い物してたんだ」二人に言った。

学は翔太くんとマリコちゃんがいるにも関わらず、

怒りオーラをそのままに私の事を無視してスタスタと中に入って行った。

「学くん・・・怒ってるみたいだけど大丈夫?」

マリコちゃんが心配して小声で聞いてくれた。

「うん、大丈夫だと思う。気にしないで。」と笑ってみせた。

No.187 10/10/30 17:51
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>> 186 ●182

「あ、そーだ、チカコちゃん!美味しそうなクレープ屋さんがあったから、後で食べに行かない!?」
とマリコちゃんが言った。
「クレープ?」

「うん。さっきマリと二人で歩いてたら見つけてさ」

「いいね!行きたい!」

「うん!じゃあ、ライブが終わって一息ついたら行こうね♪」

翔太くんもマリコちゃんも私に気を遣ってくれたんだよね。

悪い事したなぁ。

No.188 10/10/31 11:05
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>> 187 ●183

ライブハウスがオープンして、1つめのバンドの演奏が始まった。

そして、2つめ・・・。

学たちは3番目だった。

それぞれメンバーは準備を始めている。

マリコちゃんは翔太くんの専属スタッフみたいになっていて、あれこれ準備をテキパキと手伝っていた。

私は 何にもできずに ただ見ていた。



煙草の臭いで頭が痛い。

No.189 10/10/31 11:46
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>> 188 ●184
また、襲ってくる疎外感。

もうすぐライブが始まるから、あと少しの辛抱だ。

私は楽屋を出て屋上へ続く階段で座って待っていた。

ここからだったら、楽屋の人の出入りも見える。

あんなに、疎外感を感じるくらいだったら 一人でいる方が楽だわ。

頭も痛かったので壁にもたれてしばらく一人でぼーっとしていると、楽屋から学たちが機材を持って出て行く姿を見た。


そろそろかな。

No.190 10/10/31 11:49
いくら ( yZVonb )

>> 189 ●185

階段を下りてみんなの後をついていった。

マリコちゃんの姿もあり、後ろから方をポンと肩を叩いた。

「あ!チカコちゃん!今からだよ!」

「うん、そーみたいだね。」

「私とチカコちゃんは、一般客の入り口から入るんだよ」

「あっちの入り口?」

「そう!」マリコちゃんはくるっと振り向き、

「翔太!頑張ってね!
!」

と舞台袖に続くドアの前で準備している翔太くんに手を振った。

翔太くんも笑顔で手を振った。

仲が良くてうらやましいな・・・。

No.191 10/10/31 17:58
いくら ( yZVonb )

>> 190 ●186

いよいよ ライブが始まった。

スポットライトを浴びギターを弾きながら歌う翔太くんはめちゃくちゃカッコ良かった!

学は、ど素人の私でも分かるようなミスを連発していた。

みんなの足を引っ張っているように見える。

でも得意のトークでライブを盛り上げようと必死になっていた。

若干空回り気味にも見えたが楽しそうな学の姿を見ることができてよかった。

そう思いながら見守っていた。

No.192 10/10/31 22:04
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>> 191 ●187

学たちの出番が終わり、いそいそとみんな機材を持って楽屋へ戻った。

メンバ-みんな汗だくで、椅子や床にへばりついていた。

そこに、先に演奏したバンドやこれからの出番のバンドの人たちが入ってきた。

「お疲れ様ーーー!すげぇよかったよ!」

「楽しかったッスよ!!」

などと、また会話が始まっていた。

賑やかな楽屋を私はこっそり抜け出し、ライブハウスを出た。

「チカコちゃん!」

追いかけてきたのは翔太くんとマリコちゃんだった。

No.193 10/10/31 22:08
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>> 192 ●188

「どこ行くの?」

「もう、ライブ見たし帰ろうかと思って」

「一緒に帰らないの?」

「うん、頭痛くなってきちゃったから」

「そっかぁ・・・」

マリコちゃんは残念そうな顔をした。

「一応、自分で学にはメールするけど、翔太くんからも私が帰ったこと伝えておいてもらっていいかなぁ?」

「いいよ。気を付けてね」

「ありがと、また今度クレープ食べようね」

私は駅へ向かう。

No.194 10/11/01 00:59
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>> 193 ●189

「ただいまー」

家に着き、キッチンへ向かうと母が椅子に座ってテレビを見ていた。

「アレ?チカコ、今日遅くなるんじゃなかった?」

「うん、その予定だったけど頭痛くなってきちゃって、早く切り上げてきた」

「晩ご飯は?」

「食べてない」

「そうなの?食べてくると思ったから、用意してないよ」

「うん、自分でテキトーにするから、気にしないでー」

私はバスルームへ向かった。

No.195 10/11/01 09:58
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>> 194 ●190

・・・臭い・・・。


髪の毛にしみついた煙草に臭いがなかなか消えない。

学は、私の前では煙草を吸わない約束だった。

けど、そんなのどこかにいってしまったみたい。

楽屋でプカプカ他の人達と吸っていた。


こうやって最初にした約束がアッサリ破られていくんだな。


私を束縛しない。
わがままを極力きくこと。

私のする事に文句を言わない。

「俺の事好き?」と聞かない。

この4つはもう既に守られていない。

No.196 10/11/01 10:01
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>> 195 ●191

付き合うという事は、どちらかが上とか下とかじゃなくて、対等な関係が理想だっていうのは分かってる。

だから、長く付き合うのなら尚更 約束を少しずつ緩和していくことは仕方ないと思っていたし、そうあるべきだとも考えていた。



だけど、こんなにアッサリ、私への配慮もなく約束を破られると情けなくなってくる。


約束を守れない学に対して。

約束を守ってもらえない私に対して。

No.197 10/11/01 10:41
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>> 196 ●192

バスルームを出た。

体はスッキリしたけど、気持ちは晴れない。

夜の10時過ぎ。

お茶漬けをささっと食べ自分の部屋に戻る。



携帯には学ぶからの着信とメールが何件かあった。

メールは私が早く帰ったことを責める内容だった。

頭が痛くなったから帰るとメールしたのに、それを心配する言葉はどこにもなかった。



学にとって、私はその程度の存在なのか。

No.198 10/11/01 11:27
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>> 197 ●193

電気を消しベッドに入るが、頭が妙に覚めていて寝付けない。


何でかなぁ・・・。


今日の出来事が頭の中をぐるぐる駆け巡る。

頭痛とともに。




ベッドに入ってどれくらい時間がだっただろう。

携帯が鳴った。

学からの着信だった。

No.199 10/11/01 13:44
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>> 198 ●194

学からの着信を無視した。

でも、またしばらくすると鳴り始める。

その後も続けて5回電話を掛けてきた。



この人は、本当に私の事が心配ではないんだ。

5回も電話して出なければ、寝てるとか体調が悪いとかって思わないかなぁ。



15回目の着信で電話に出た。

No.200 10/11/01 17:47
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>> 199 ●195

学の第一声「もう寝てた?」。

そう思うなら電話してくるなよ。15回も。

「うん・・・」眠たそうな声で答えた。

「あのさ、何で先に帰るの?」不機嫌そうな声で学が続ける。

「俺の面目丸つぶれじゃん。すげー恥かいたんだけど。彼女が彼氏置いて先帰るってどーよ?」



こいつは・・・文句を言うためだけに、夜中に何回も電話してきたのか。

少しずつムカムカしてきた。

No.201 10/11/01 18:18
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>> 200 ●196

「あのね、メールでも伝えたし翔太くんにもお願いしたから分かってると思うけど、私ね頭がすごく痛かったの」

「だから?そんなの我慢すりゃいーじゃん。」



・・・え・・・何だって・・・?



「頭痛ぐらい我慢できんだろーよ。そんなんでいちいち先帰るなよ。こっちが恥かくんだよ。彼女だったら彼氏を尊重するのが当たり前だろ。」



怒りを通り越して飽きれてしまった。

No.202 10/11/01 22:45
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>> 201 ●197

「でさ、今日の俺 どうだった?」

「はぁ?」

「だから、今日の俺のライブはどうだった?」

私の気持ち・体調 全く無視なんだ・・・。

何だかやりきれなくて、相手するのも面倒臭くって、つい本当に思った事を言ってしまった。



「ミスが目立ってた。」



この一言が学の逆鱗に触れたらしい。

No.203 10/11/02 00:35
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>> 202 ●198

「何分かったような口ぬかしてんだよ!!

音楽の事何にも知らないくせに!!

いい加減な事言うな!!

俺が1番努力してんだよ!!

俺が1番練習してんだよ!!

俺がライブを盛り上げてるんだよ!!

何も分かってないくせに、偉そうなこと言うな!!」

No.204 10/11/02 08:20
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>> 203 ●199

え?何で学がキレてんの?

聞かれたから思ったこと素直に言っただけなのに。

通り過ぎた怒りがまた逆戻りした。



「はぁー・・・・、もういい加減にしてくんないかな?」

「何がだよ!?」

「私のこと散々責めてるけどさ、自分はどうなのよ?」

「は?」

私の反撃が始まった。

No.205 10/11/02 10:44
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>> 204 ●200

「私は聞かれたから思った事を素直に言っただけ。その回答が気に入らないからってキレないでくれる?むしろ、率直に受け入れなきゃいけないんじゃないの?音楽知らない私にミスを指摘されるなんて、よっぽど演奏ひどいって事でしょ。それってマズくない?」

「でも・・・」

何か言おうとした学を無視してさらに反撃続行する。

「あとさ、さっき彼女だったら彼氏を尊重するのが当たり前って言ってたけど、じゃあ彼氏は彼女を尊重しなくていーの?大切にしなくてもいーの?頭痛いって言ったよね?どうして気遣ってくれないの?私の事心配じゃないの?これって全然大切にしてないよね?」

まだまだ続く。

No.206 10/11/02 13:06
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>> 205 ●201

「翔太くんはね、ずっとマリコちゃんの傍にいたよ。二人で仲良く話ししたり、手繋いで出掛けたり・・・すごく羨ましかったし、淋しかった。だって学は私の事なんで全然見てなくて、ライブハウスを抜け出した事すら気付いてない。私の事なんてどーでもいいんでしょ?」

「そんなこと・・・」

「あるよね。だからこの電話かけてきた時もキレてたんだよね。私の気持ち考えてないから、キレることができんだよ」

まだまだ続く。

No.207 10/11/02 16:10
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>> 206 ●202

「付き合う時にした約束だって全然守ってくれないし。約束は守らないし、大切にしてくれないし、もうさ、ホント無理かも」

「え、無理って・・・」

「こんなんじゃ付き合っていけない。」

「ちょっと待って・・・」

学は泣きそうな声になった。

逆に私はハキハキとしゃべっていた。



もう、鳴り止まない携帯が恐いとか言ってらんない。

学との未来なんて私には見えない。



「別れよう」と伝えた。

No.208 10/11/02 17:46
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>> 207 ●203

学の返事を聞く前に、携帯を切って電源をオフにした。

言いたい事はいったし、すごくスッキリした。

携帯はしばらく電源を付けるのをやめよう。

携帯使えないから、変わりの目覚まし時計を探さなきゃ。


押し入れの中から、昔使っていた目覚まし時計を取り出しアラームをセットして寝た


のもつかの間。



プルルルルッ・・・・



家の電話が鳴り始めた。

No.209 10/11/02 20:58
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>> 208 ●204

まさか!

と思ったけど、とりあえず放置した。


切れた・・・と思ったら またすぐかかってきた。


やっぱり・・・きっと、学だ・・・



まさか自宅の電話にかけてくるとは思わなかった。

時間は深夜2時を過ぎている。

家族は全員寝ていた。


こんな時間に家の電話にかけてくるなんて非常識な男だ。

何考えてんだ。

付き合い始めのまだ上手くいってるときに、互いの家の番号を教えあった。

その事をとても後悔した。

No.210 10/11/02 21:38
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>> 209 ●205

電話は1階のリビングにあり、子機はキッチンにあった。

リビングに降り電話機の前でどうしようか迷っている間に、母が起きてしまった。

No.211 10/11/02 21:46
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>> 210 ●206

「あれ?チカコ?電話鳴ってるみたいだけど・・・」

「うん、私の用事だから気にしないで!ごめんね、起こしちゃって。」

「あんたも早く寝なさいよ」

と母は寝室へと戻って行った。




くっそーーーー!!!

バカ学!!

私は携帯の電源を入れて学にかけようとした。

が、

またバカみたいに大量のメールを送ってきているので、電話をかけようとしても、メールの受信とぶつかるようでかけられない。

だから、仕方なく家へ掛けてきた電話をキッチンの子機で出た。

No.212 10/11/02 21:51
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>> 211 ●207

「もしもし!?学!?」

「チカぁ、よかったぁ。出てくれたぁ。」

ちっともよくねーよ!!

「携帯が繋がらないから、家に電話したんだよ」

と、悪びれなく学は言いやがった。

はぁーーーっ

深い深いため息が出る。

「私の携帯に掛け直して」

「わかった!」

No.213 10/11/04 12:17
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>> 212 ●208

自分の部屋に戻り、学からの電話に出て ブチ切れた。


「いーかげんにしてよ!こんな時間に家の電話にかけてくるなんて非常識過ぎる!!」

「ごめん・・・だって、チカとどうしても別れたくなくて・・・」

「こんなことされたら どんどんイヤになるよ!何で分からないの!?」

「ごめん・・・俺も必死で・・・わけわかんなくて・・・」

ホントに、自分のことしか考えないんだな・・・この人は。

「俺別れたくないよ・・・どうしたら許してくれる?」

私に別れる権利はないの?

「・・・少し、離れたい。」




私には一人で考える時間が必要だと思った。

学とこれからどうやって付き合っていくのか。

そもそも付き合っていけるのか。

No.214 10/11/04 12:46
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>> 213 ●209

「少しってどれくらい?」

「わかんない・・・1週間とか、長ければ1ヵ月くらい」

「やだよ!!!もう絶対チカに迷惑かけないから許して下さい!!」

これじゃ話が全然進まないよ。

「・・・・・・・・・・・・・もういいよ。別れたりしないから、でも、時間が欲しい」

「時間?」

「1週間とは言わない、少しでいいから・・・私から連絡するまで学からは連絡してこないで」

「別れないんだよね?」

「うん」

「じゃあ、わかった。なるべく早く連絡してよね。」

「・・・・・・・・うん」

No.215 10/11/04 13:16
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>> 214 ●210

うんざりしながら、学との電話を終えた。

少しは学も変わってくれるといいな・・・そんな事を思いつつ眠りについた。



が、学は何にも変わっていなかった。



朝起きると

”おはよう、昨日はごめんね。頭痛大丈夫かな?”とメールがきていた。

あれ?私、昨日、私が連絡するまで連絡してくるなって言ったよね?

心底飽きれた。

返信はせずにバイトに向かった。

No.216 10/11/04 13:25
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>> 215 ●211

夜7時。

バイトが終わり、携帯を見た。

やっぱり・・・・。

学からのメールが何件も来ていた。



”昨日は本当にごめんなさい。”

”今日はバイトだったよね。がんばってね!”など・・・。


でもそれらのメールは昼過ぎで終わっていた。

アレ?

珍しいな。長時間にかけてもっとメールしてくると思ったのに。

まぁ いいか。

気にしない。

家へ帰った。

No.217 10/11/04 15:26
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>> 216 ●212

家族そろってテレビを見ながら夕食。

学の事を考えなくていいって、こんなに楽なんだとリラックスできた。

が、それもつかの間だった。

ご飯を食べ終わり、お風呂に入る。

その間に、学からの電話とメールがあった。

お風呂を出て、携帯を片手に髪の毛をタオルで拭きながら部屋へ戻る。

「はぁ・・・」とタメ息をつきながら、学からのメールを開いた。




”電話しちゃダメだとわかってるけど、もう、堪えられない。”

”チカの声が聞きたい。”

”電話に出てよ。”

”もう、辛いよ。”

”堪えられないよ。”

”声を聞かせて。”

”俺にはチカが必要なんだよ”



と、弱音から始まった。

No.218 10/11/04 16:02
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>> 217 ●213

メールの内容は、どんどんねちっこちというか、ネガティブというか、被害妄想めいた内容になっていった。


”もう俺のことキライなった?”

”もう、うんざりしてる?”

”本当は別れたいんだよね”

”俺なんか迷惑だよね”

”ダメな人間でごめんね”

”生きてる価値ないよね”




そして



”もう、俺死ぬわ。”

”今、風邪薬大量に飲んだよ。”

”このまま楽に死ねるかな”

”頭がボーッとしてきた。”

”さようなら”



と、自殺をほのめかすメールで終わった。

No.219 10/11/04 17:17
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>> 218 ●214

学のことだから、本当にやりかねないと思って急いで携帯にかけた。


でも、出ない。


何回かけても出ない。

焦りながら翔太くんに電話をした。

「どうしたの?チカコちゃん。」

「あのね、実は学ぶに距離をおきたいって言ったら、自殺するような内容のメールがきて、今連絡とれないの💦」

「えっ!?」

「翔太くんとこ、学から連絡きてないかなぁ?」

「うん、俺んとこには何にもきてないけど・・・」

「そっかぁ・・・。どうしようぅ・・・・・」

「とっとりあえず、学の家に1回 電話してみよう? 本当に何かあるようだったら一緒に学の家に行こう?」

「うん・・・ありがとう。そーるす。また、連絡するね。」

No.220 10/11/04 17:40
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>> 219 ●215

学の家に電話をした。

「もしもし、前田です。」

「あら、こんばんわぁ」

お母さんが出た。声のトーンは普通だった。

「あの・・・学くん、今家にいますか?」

「学?いるよ?ご飯食べ終わって、みんなでテレビ見てるよ」




・・・・・は・・・・・??????




「学にかわろうか?」

「・・・いえ、いいです。じゃあ、おやすみなさい・・・」




バカ学!!

嘘つき学!!!

最低だ!!!信じられない!!!


学に”嘘つき”とメールした後、翔太くんに謝罪の電話をした。

No.221 10/11/04 18:20
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>> 220 ●216

「ごめん・・・学のウソだった・・・」

「ぇえっ!?」

そりゃ驚くよね。ホント迷惑で恥ずかしい男だよ。

「心配かけてごめんね・・・」

「いやっ・・・まぁ・・・無事で良かったね」

「うん・・・」

「あのさっ、さっきマリと電話で話してたんだけど、チカコちゃん大変そうだから、俺らでよかったら愚痴とか悩みとか聞くからね」

「え・・・」

「無理とかしないでね」

「ありがと・・・」


翔太くんとマリコちゃんの優しさが素直に嬉しかった。

  • << 224 ●219 すぐに、掛け直してきた。 そりゃそーだよね。ホントに救急車よばれたら困るもんね! 「何!?今から救急車よぶんだけど!」 「・・・・」 「なんにも言わないなら切るから!!」 「待って!!」 「なんなのよ、もーーーーーー!」 ゥキーーーーーッ!じれったいなぁ!!! 「・・・飲んでない・・・」 「なにっ!?聞こえない!」 「薬・・・飲んでないから・・・」 よーし!やっと白状した! 「ふぅん。 もしかして、心配してほしいとかゆー理由でくだらない嘘ついたの?」 「うん・・・」 女々し過ぎるぅ~~~~。はぁ。

No.222 10/11/04 18:26
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>> 221 ●217

学のやつ、どうしてくれようかっっ!!!

怒りで頭の中がいっぱいだった!

ベッドにもぐりながら両足をジタバタさせて、この怒りをどうやってぶつけるかで悩んでいると学から電話がかかってきた。

「もしもし!!」すぐ出てやった。

「・・・・・・」

無言っすか!

「もしもし!?」

「・・・・・・」

まだ無言っすか!

「用ないなら切るからね!!バイバイッ!!」と言うと

「待ってよ!」と学がとめた。

No.223 10/11/04 19:43
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>> 222 ●218

「あれー?随分元気そうだね。自殺したんじゃなかったの?」

嫌味を言ってみた。

「・・・・」

さすがに何も言えないだろうなと思ったけど学はポツリと言った。

「・・・今、薬飲んだ」

は!?

「さっき、メールしたときはまだだったけど今飲んだから」

!!!!!

この期に及んでまだウソつく気!!!!?

「本当に飲んだの!?」

「うん、本当。俺死ぬから」

「ふ~ん・・・わかった。それじゃ、救急車よんどくわ。あと、学のお母さんにも連絡しとくね」

「えっ!!!」

「何、『えっ!!!』って。だって、薬大量に飲んだんでしょう?今から私が学の家に向かっても30分はかかるし、救急車よんだ方が早いじゃん。じゃね。」

ブチっ。と電話を切った。

さて、学はどうでるか・・・。

No.224 10/11/04 20:19
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>> 221 ●216 「ごめん・・・学のウソだった・・・」 「ぇえっ!?」 そりゃ驚くよね。ホント迷惑で恥ずかしい男だよ。 「心配かけてごめんね… ●219

すぐに、掛け直してきた。

そりゃそーだよね。ホントに救急車よばれたら困るもんね!

「何!?今から救急車よぶんだけど!」

「・・・・」

「なんにも言わないなら切るから!!」

「待って!!」

「なんなのよ、もーーーーーー!」

ゥキーーーーーッ!じれったいなぁ!!!

「・・・飲んでない・・・」

「なにっ!?聞こえない!」

「薬・・・飲んでないから・・・」

よーし!やっと白状した!

「ふぅん。 もしかして、心配してほしいとかゆー理由でくだらない嘘ついたの?」

「うん・・・」

女々し過ぎるぅ~~~~。はぁ。

No.225 10/11/04 20:52
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>> 224 ●220

「小学生じゃないんだから、そーゆーのが迷惑だって分かるよね!?」

「うん・・・」

「私、翔太くんにも学が自殺したかもって電話しちゃったんだよ!?」

「・・・え・・・翔太に連絡したの?」

「そうだよ!」

「何で翔太に言うんだよ!?」

「嘘つきの学に言われたくない!悪いのは学でしょ!?変な嘘つかなければいいじゃない!!本気で心配して損した!!バカみたい!!」

「・・・本気で心配してたの?」

「当たり前でしょ!だから、嘘だってわかって怒ってるんじゃない!!」

「本気で心配してくれたんだ・・・」

おや? 違うところに食い付いてきてる。

「心配してくれてありがとな」と、学は嬉しそうに言った。

んんんんん~~~~違うぅ~~~そうじゃないってば!!

No.226 10/11/04 23:57
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>> 225 ●221

「とにかく、こんなくだらない嘘、二度とつかないでよね!?」

「わかったよ」

「絶対だからね!!!約束だからね!!!」

「もう、こんな嘘つかねーよ。迷惑かけてごめん。」

「ほんとにやめてよね・・・。」

・・・・あーーーー  疲れたー・・・・。

「チカコ、嘘ついたこと許してくれる?」

もう、怒りでいっぱいになっちゃってて、許すとか許さないとか そんな事 頭になかった。
本音で言えば許したくない。こんなうっとーしい奴!

でも、またうだうだやり取りするのは面倒くさいよなーーーー。

考えて考えて悩んで悩んで、出した答え。

「1回殴らせて」

「え?それでいいの?」

「うん、思いっきり殴りたい。それでもう今回の事は終わりにする。」

「いいよ!じゃ、今度思いっきり殴ってくれ!」



・・・変な会話・・・。

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