366日目

レス32 HIT数 8501 あ+ あ-


2009/09/07 01:46(更新日時)

毎日が精一杯




子供のお世話に
旦那のお世話に
近所付き合いに
学校の付き合いに
家事をしながら
仕事をしながら
義母との攻防戦に
ママ友との接近戦



どうだ




これでもまだ


『お前はいいなぁ』



そう言うなら変わろうよ



夢にまで見た妻と夫の『1日交代券』



ぐうたら主婦の忙しさ



世の中のパパ達に味わってもらいましょう




そしてママ達にもパパのやるせなさを味わってもらいましょう



ももんがの短編コメディです😺



なんとなしげに書いていみます


それでは


はじまりはじまり🌱

No.1162166 (スレ作成日時)

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No.1

夢にまでみた『1日交代券』



もしもあったらいつつかいますか?



世の中のパパも



世の中のママも




本とは一息どころか


二息も三息もつきたい位せわしない



ママとパパの前の



あの頃の気持ちを思い出してみましょう



ただ好きだった頃



相手に見返りを求めましたか?



大好きで結婚したはずなのに



いつの間にか



見返りを求めていませんか?




二人の手の中にはいつの間にかもう1つの手が入り




守るものへの愛情にいっぱいいっぱいで



知らぬ間に少しずつ


見えない痛みに鈍感になってはいませんか?




今回描くのは



そんなママとパパのお話




『小川和幸34歳』
『小川幸35歳』
『小川まな6歳』



そんな家族の不思議なお話

No.2

『お前はいいよなぁ』


結婚して7年


和くん、もとい『パパ』からこの台詞を聞かない日は1日たりともない


同時に


『飯は?』
『風呂は?』
『着替えは?』
『新聞は?』

これもいつもワンセット


朝起きて寝るまでいつもあたしは『お母さん』



で『何でも用意する人』



あたしが『お母さん』でも『ママ』でもないのは唯一職場かトイレの中だけだ



1日でいい



1日でいいからその羨ましい主婦の大変さのぞいてみてほしい



『あ―あなんか虚しいなぁ』




みんなを見送ったあといつものように積み重なったお皿を洗い


掃除機をかけて


洗濯を干して


お風呂を洗って


床を拭いて


たった一人ならお茶漬けで充分


朝昼を兼ねた食事をしている時初めて腰をおろして一息つける


テレビの前のタモリさんが今日初めて会う人だとは多くの旦那衆はご存知ないだろう


『うきうきなんかしてらんないよタモさん…


うきうきなんてどれくらいしてないだろう…』


食べ終わった茶碗をさっと洗って水を一杯飲み干した



旦那は7時過ぎにしか帰らないし


娘も2時過ぎまで帰らない

No.3

『さて、ちょっと寝るかな…』



その時だった



『ガコン…』



玄関の新聞受けに何かがはさまった



『ん―



何だろ』





玄関に落ちた白い封筒をめくると



『1日交代券』なるものが入っていた



『お好きな人とお好きな時間



あなたとの生活を交代いたします



ただし期間は1日限り



利用法方は簡単




なりたい人の名前となりたい日にちを書いてポストに投函して下さい



あとは手続き不要です




素敵な1日をお過ごし下さいね』



封筒にはそれだけしか書かれていなくて少し気味が悪かったが




『何だかおもしろそう』




遊び半分でポストに投函してみた




名前は勿論あたしの生活にあこがれる旦那




期間は1日




明日の朝から夜まで



本当ならどんなに楽しいんだろう




あたし会社に行くのかな?





夜いつもより早く布団に滑り込むと久しぶりの『わくわく感』が胸をよぎった




つないでいた小さな手の暖かさと


1日の疲れであたしはあっと言う間に眠ってしまった



(明日は娘の授業参観だ…った…)

No.4

『なんなんだ…


なんで俺が一番早く目が覚めてるんだ?


まだ6時前じゃねぇか……


でも何か飯作らなきゃいけない気がする


なんだ?



何だかわからんが今日は俺が家を守る日なんだ…



一体どうなってるんだ…


ユキはまだ寝てるし



子供もまだ起こしちゃいけない…



この感情はなんなんだ…?



『とりあえず起きるか…』




時計は朝の5時15分




いつもの俺なら二度寝の時間



だが今日は何だか勝手が違う



心の中では非常事態


なのに頭の中では『俺は今日は母さんだ』




と指令を出している


眠たい目を擦りながらエプロンをつける



何が楽しくて朝から飯なんぞ作らなきゃなんねぇんだよ



みんな寝てんのにつまんねぇなぁ…




って朝飯って何作りゃあいいんだ?




米洗って
野菜切って
卵割って味噌汁作って…

慌ただしく用意してたらあっと言う間に7時過ぎだ



眠そうな目をこすってサチが起きてきた



『おはよ…ねぇ新聞は?』



は?

新聞位自分でとれよ


っつか飯運ぶの手伝えよ


『ふぁ―ご飯の前にシャワーしてくるね…あの子よろしく』

No.5

サチが風呂に入っている間にまなが起きてきた


『パパ…まなのお洋服は?



いつもの水玉のパンツは?




ピンクの靴下は?





まなプリキュアのゴムじゃなきゃいやだ』



あ―もうめんどくせぇ



マンションの下に行くまであと30分





飯と着替えと歯磨きとユキの飯にまなの飯…



『お風呂上がったよ―



ねぇあたしのパンツは―?』




まじでやめてくれ…


『自分で出せよそれくらい』



『だって寒いもん


あ、シャツも用意しといてね



アイロンも宜しく』



『ねぇパパ!まなの服!!



髪は?



ハンカチや給食のナフキンないよ~』



『早くパンツ』




……なんだよ


なんだよみんなして自分でやらずに何でもかんでも俺に言うなよ



サチのパンツに
サチのシャツ
アイロンかけて


まなの洋服にゴムにハンカチにティッシュに給食の用意



二人の朝食をセット…




その間に寝室の布団をベランダに移動…


ベランダの花に水やり…




俺の朝御飯は?
エプロンっていつはずすんだ…?

No.6

『いってきま~す』


まなが靴を履いて振り替える



『早くパパもきてよ』



『何で?俺も?』



『何いってるの?ママは毎日下まで見送るんだよ?』



まじかよ…


もぅ座らせてくれよ


って見送りってすんだなぁ



『わかったよ


まなちょっと待ってて』



俺がエプロンをはずすと背後からス―ツに着替えたサチが追い越す



『ほんならいってくるわ



今日は可燃だから頼むね』



『ええ?!



ごみ出しもあんの?』



『うん、勿論

じゃあ行ってきま―す』




内心ムカムカしながら手を降る



『…いってらっしゃい』



まなを下の集合場所まで見送ると


家中のゴミを集める


8時までになんか無理なんだよ…




ブツブツいいながら分別を終わらせながら集積場へ

No.7

『はぁ―…やっと終わった…』


テ―ブルに座るとみんなの食べたお皿が山積みだ…



なんで流しに運ばねぇんだ…?

段々疲れてきた



いつもなら途中で缶コ―ヒ―買いながら携帯いじくって


空いた電車の席でiPod聞いてる頃なのに…



何か

何か全然むくわれねぇなぁ…



ため息をつきながら台所につまれた皿を一枚一枚洗う



そういや二人とも旨いとも不味いとも言わずに全部食べたけど結局どうだったんだ?



あんなに早く起きて朝飯用意したのに…


新聞もひろげっぱだし


使った風呂もそのまんま


バスタオルも床に置きっぱ…


これも俺の仕事なのか?

No.8

皿を洗い終わると床に散らばったホコリや足の裏の油で床がめちゃくちゃ汚い



しかも



まなの机の上に『授業参観のお知らせ』がある



時間は…10時40分までに教室




いかねばならんのだろうなぁ…



とりあえず掃除機をかけてモップ




すでに汗だくなんだけど…





俺はまたエプロンをかけると念入りに掃除を始めた




以外と朝の主婦は大変なんだな




家でゴロゴロしてる暇なんかねぇなぁ…



飯に着替えに準備に送り出しなゴミだしに掃除に…



『あとは洗濯か…』



俺はまなのちっさいパンツを伸ばしセンタクバサミで何枚もはさんだ





『あ―あ



今頃サチはみんなと打ち合わせ顔してんだろうなぁ…』

No.9

全ての洗濯を干し終わると時刻はもう10時をまわっていた


『いっけねぇ…学校


着替えなきゃな



確か去年の授業参観に一度出たときはス―ツだったなぁ…』




寝室のクローゼットを開けると1つずつス―ツには袋がかけてあった




『いつもこうやってクリーニングしてあんだな…』




よくみるといつも無造作に当たり前に着ているシャツにはアイロンが当ててあった



ネクタイもピシッとしてる




見渡してみればまなのハンカチも給食のナフキンもだ…




俺の知らない間に綺麗にしてくれてんだな…




そう言えば俺も朝飯食うときに新聞見たままだし



飯食ってもなんも言わないし片付けないよなぁ




………そっか



ユキが毎日してる事って『当たり前』なんかじゃねぇんだな


毎日誰にも何にも言われなくても



黙ってこなさなくちゃいけねぇんだ




そっか…




俺たちは会社で飯食ったり休憩したり飲みに行ったりできんけど





ユキはへたすりゃ1日この家の中で仕事してんだよな



………そっか

No.10

なんとなくアンニュイな気持ちになりながらお気に入りのス―ツに着替えてまなの学校に向かった




『えっ…と


一年四組は…』




俺がキョロキョロしてると4人組みの綺麗めなママ達が歩みよってきた



『まなちゃんパパ~久しぶり~



今日の参観さんすうなんだって!知ってた?』



『そう言えばはるくんママがね~英会話はじめたんだって!駅前のEECキッズ!


早期教育必至よね』



みんなウンウン首をたてにふっている



なんだ?ユキのコミュニティか?



何かこういうグループ苦手なんだけどな~…



めっちゃ疲れる




たわいもない話をしながらいざ教室へ



中にはカメラやら携帯やら取り出す母親がたくさんいた



(運動会や学芸会かよ…)



一生懸命なのはわかるけど限度があるだろ…



何にせよまなが楽しそうに勉強できてるのがわかるのは嬉しいけど



子供に一喜一憂だな


母親って



ほんでもって

みんながみんな似たり寄ったりだ


男はポケモン
女はシュガーバニ―


イオンの文具売り場みたいやな

No.11

授業参観が終わると近くの喫茶店に誘われた




というか連れ去られた




『みんな塾はいかせないの?』


『今日の服はどこのやつ?』



『あいさつとかしつけとかってどうしてる?』



わかんねぇし別にどうでもいい質問ばっかで非常に気がつかれる



アイスコ―ヒ―が全然減らねぇ…



女同士はにこにこ話してても


以外と疲れるもんなんだな…




『今日ねまながね…


もぅ聞いてるの~?』


そう聞くたびうなずきながらDSばっかしてたな俺…




サチは『もぅいいや』ってすぐ諦めて部屋に戻るから気にもとめなかったけれど



あいつのイライラや悩み事なんか



俺、聞いてやった事あったっけな…




黙っててもわかるなんて傲慢なんかな



長く一緒にいるからって何も言わなくてもいいわけじゃない…





そうじゃないよな…


うん

No.12

『小川―


まだあの会社の了解でねぇのか


お前、営業向いてないんじゃねぇか?』



『すいません


次の来社までには必ず落としますから』




っつ―かこのうすらはげ嫌み言い過ぎ



部下のやる気のモチベーション上げるのも上司の役目だろうが



っとに




最初は久しぶりの会社にうきうきしてたけど席についた途端に外回りだし



昨日の報告に今日の予定



机に座っても電話やメールのチェック



これじゃああたしがメールしても返せないわけだわ…




結婚する前は何年もOLしてたし



今も土日だけ喫茶店でバイトしてるけど



マスターは優しいし

立ち仕事だけどジュースやお茶は飲み放題だし



お客さんも優しいし



こんな数字と結果ばっかり突きつけられたら仕事なんて全然おもしろくないよね

No.13

かずくんの仕事は朝のあたしの忙しさとはまた違う



ため息がでるような仕事の連続



1日の大半を頭を下げて回り



このくそ暑い中半袖にもなれない



隣にいる人も前にいる人も背中がびっしょりになりながら仕事してる




いつも帰った瞬間に『疲れた―』ってお風呂場に直行する気持ちが少しわかった気がする




かずくんはうちだけなんだね



何もかも脱いで心から仰向けになれるのは




パンツいっちょでうろうろしたり



やたら子供とじゃれたがるのは



きっとそうやっていろんなモノに癒されてるのかもね

No.14

『小川さん

頼まれていた会社の資料仕上げました



遅れて申し訳ありません』



華奢な体にでかい胸


絶対やつの好みだ




ヤバイな



こんな可愛い子入ってたんだ



防衛線はっとくか?




『あっ



それからこの間の指輪…ありがとうございます



なんか感動しちゃいました




二人の秘密


ちゃんと守りますからね』




えりちゃんと呼ばれているかわいこちゃんはあたしの耳元でとんでもない爆弾発言をして去っていってくれた




えりちゃんの右手の薬指に




綺麗なダイヤモンドが輝いていた




かずくん




あたしこの7年



プレゼント一個ももらってないよ




結婚記念日も誕生日もクリスマスも



いつからかなくなったそのイベントに



あたしが目を伏せて友達に『よかったね~』って言ってるの



知ってた…?

No.15

完全にやる気をそがれても目の前の資料はなくなりはしない



家族のため
生活のため
自分のため



やらなくては給料はでないし



生きて行けない




くやしくて涙がでそうだ



いやだよかずくん



なんであんな子に指輪あげちゃうの?



なんであたしには指輪ないの…?



『お母さん』だから?


『嫁さん』だから?



もう好きじゃなくなっちゃったのかなぁ


あたしの事…




毎日毎日こんな仕事して




癒せないあたしに嫌気がさしちゃったのかなぁ…

No.16

『うわぁ



なんだこのおばはん達は…』



出てくるとき冷蔵庫がからっぽに近い状態だったので近所のス―パーに来たが俺は今もみくちゃだ



『こっちよこっちよ!!!』



『お兄さんこっちに投げてよ!!』



毎週火曜日恒例の10円タイムセ―ル




白いトレイに入った魚が俺の左右を華麗に舞う




こんなん毎週きてんのかユキ…




こんなんできりつめたレシートがいっぱい詰め込んである




毎日知らん顔してた食事




もっと旨そうに食べてやればよかったな…




ユキ




ごめんな

No.17

鬼のような奪い合いを経てゲットした白身魚二点に野菜と珍しく白ワインを買った




まなが産まれてから当たり前のように家で飯を食うのが日課になっていて俺は誉めることも感謝することもおざなりになっていた気がする




ユキが独身時代に大好きだったワインもいつの間にか飲んでいる姿を見ることはなくなった




勿論二人で外に飯を食いに行くこともない




俺の中でユキは


『ユキちゃん』から『嫁さん』になり



『嫁さん』から『まなのママ』になっていた




変わったのはユキだ



そう思っていたが変わらなきゃいけなかったのは



むしろ俺の方なのかもしれない




ユキの髪が無造作に伸びて



いつしか髪をおろしているユキを見ることはなくなっていた



俺は独身の時のまま少し不自由になったがライフスタイルはさほど変わらない



でもユキは違う



会社を止めて嫁になり母になり



ユキがユキである時間なんかおそらくなかったのではないだろうか…

No.18

『お―い小川


昼飯いくぞ



そのまま外回りもう一件あるからな


下の喫茶店先にいってるぞ』




『あ…はい


わかりました

急ぎます』



あたしは少し乾いたシャツに長袖のジャケットを羽織った



まだじんわり汗が滲むがそんなことは言ってられない



鞄の中から財布を取りだし中身をこっそりチェックする



『四千…三百円ちょい



こんなもんしかないんだ



まぁ月に三万だとこんなもんか…



次のお小遣いまで6日だしね』




あたしが小銭を寄せ集めていると隣のサラリーマンが声をかけてきた




『貯まりました?貯金』





『貯金…?』



『小川さん


いつも小銭が余ると集めて貯金してるじゃないですか』



『あ…ああ


まぁまぁ貯まったけどまだまだかな』



かずくんめ…



家でへそくり見つかってからおとなしいと思ったら会社貯金をしていたとは



………ひょっとしたら…さ



そのお金であの子に指輪買ってあげたのかな…



……あの子可愛いし


かずくんおっぱい星人だし…



同じ職場だし…




何でもないよね…



信じてていいんだよね…?

No.19

ビルの地下に降りるとこじんまりとした喫茶店がありさっきの男の人が座っていた




男の人は軽く右手をあげるとあたしを手招きした



『小川こっちこっち

A定もう頼んどいたからな


それでいんだろ?』



メニューを見ると



『日替わりA定食ドリンクなし500円』



『日替わりB定

飲み物、デザート付き750円』



かずくんうちでは絶対に食事のあとはコ―ヒ―飲みたがるくせに



なんか偉いな…




こういうとこで少しずつ切り詰めたりしてるんだね…



たまには『暑いからしっかり水分とりなよ』ってお小遣いあげたりしてもよかったかな…




この夏暑かったし…



こうやってかずくんと同じように過ごしてみて



ちょっとだけかずくんの気持ちに近づけたかな…



うちでダラダラするのも



『ちょっと休ませて』の口癖も




黙ってご飯たべるのも…




なんだかちょっと理解できてきた




かずくんにとって



無心になれる場所



それが『家庭』なんだね



無心と無関心



誤解しやすいけど


もっと大きく構えて見ていてあげればよかったのかな…



いつもこうやって美味しそうにジュースのむ先輩や後輩の前で水…飲んでたのかな…

No.20

昔からかずくんのおおらかな所が大好きだった



細かいことも気にしない



食事にしても
育児にしても
家庭の中の事は私にまかせて



完全に自分の時間に打ち込んでいた



多少おおざっぱでも何も言わないかずくんに



どれだけ救われたかわからない




でも



いつからだろう…



その良いところが


『ただの気の使えない人』



そんな風に感じてきたのは…


ご飯を食べても何も言わない



シャツもパジャマもどこに何があるのかわからない



労いや感謝の気持ちなんか聞いたこともない



私だって365日24時間いつも働いている



お金なんかもらえない


だって主婦だもん



みんながその『当たり前』を毎日をもくもくとこなしている



ただ一言



『ありがとう』



そんな風に言われたかったのかも知れない

No.21

うち帰った俺はポストを確認して近所のおばちゃん達に挨拶をしながらいえの周りを掃除しだした



もうじきまなが帰ってくる



そしたら間違いなくおやつだろ?



宿題みて洗濯たたんで夕方の飯を作って


風呂洗って…




ユキってすげぇ




あいつっていつ座ってるんだろう…



ユキにホッとする時間なんかあんのかな…



俺はユキの笑った顔を必死で思い出していた



何だか今ユキに無性に会いたいな

No.22

俺はユキに会った日の事を思い出していた


ユキとあって今年でちょうど10年



ユキと俺は三年間の遠距離恋愛だった



営業先にいった時会社の受け付けにいたのがユキだった



目がくりっとして髪の短い色白の可愛い子だった



知り合ってすぐ俺に3年の出向命令が出た



『あたしも行く

絶対行くから』



泣き虫で甘えん坊のユキは片時も俺から離れたくないとだだをこねた



しかし付き合いも間もないしお互いを尊重したかった俺は同棲を拒んだ



なしくずしの『結婚』になりそうで嫌だったからだ



一ヶ月に一度は新幹線で帰ったし




電話やメールも毎日した




俺の中でユキが大切な存在になりはじめた頃に




『結婚』の二文字が頭をよぎりはじめた

No.23

ユキと結婚した事を後悔しているわけじゃあない



まなが産まれた時は本気で泣いたし



『家族』っていう守っていくものの目標もできた



だけど



俺は少し




贅沢になっていたかもしれない…



ユキに…

この生活に…



いつも隣にいる二人


いいときも
悪いときも



自由に飲みに行ける後輩や


可愛い女の子達との飲み会


無意味なばか騒ぎに
背中を向け続ける人生に

『この先の未来』にあぐらをかいてしまったのかもしれない

それが今日


たった1日の事で少しわかったきがするよ




ユキとの思い出を探りながらアルバムをめくっていると元気のいいまなの声が聞こえてきた



『パパただいま―!』




『お帰り!まな』



『パパ…まな疲れたよ


おやつは?』




『はいはい



そう言われると思って用意しといたよ



ポケモンパンと牛乳だぞ』




『…いいの?


ママはいつも甘いものは気を付けようね~って野菜のパンやさつまいもとかしかまなにくれないよ?



ポケモンパン食べてもいいの!?』



まなの目がキラキラしている




しまったなぁ…

No.24

『じゃあ今日だけな


歯磨きもちゃんとしような』



『うん!あのね、まな約束は守るからね


いただきまぁす』




嬉しそうにポケモンのシ―ルをめくる娘に目が細くなる



家族の笑顔はやっぱり宝だ



こうやってユキも俺も『家族』を守ってきたんだなぁ…




携帯にメールはない




ユキは今頃何をしてるのかな?



何時に帰ってくるのかな…




朝干した洗濯物をたたみながらそんな事を考えていた




時刻は3時を回り



夕飯の仕込みに
風呂掃除
まなの水泳教室に
回覧板まわし
一息つくまもなく時間は一気にせまってくる




今日だけは


今日くらいは



俺がユキをもてなしてやんなきゃね




朝は何で自分ばっかりで…って思ったけど



『喜ぶ顔』が見たいから




みんなの為に頑張れるんだもんな



『お母さん』ってすげぇな

No.25

『そんじゃあみなさんお疲れ様でした




また明日な 』



『小川!明日までに例の会社頼むぞ!



それから今日の報告書にも判子もらっといてな。お疲れ~』



『……お疲れ様です』




結局あれからずっと外回り




背中も頭もシャワーみたいな汗



しかも足が超痛い




営業職ってやっぱり大変だ…





不意に誰かがあたしの肩を叩いた




彼女だ




『あの…




指輪のお礼がしたくって…



今日は時間空いてますか?



食事もご馳走したいし…




どうですか?』



あたしはゴクリと唾を飲み込んだ




かずくんの浮気…




この目で確かめるチャンスかも




あってほしくはないけど




それが無いことを祈って確かめたい




あたしたちは一緒に席を立つと駅前の可愛いカフェに立ち寄った




席につくや否や昼間一緒に仕事をした彼がやってきた



『待ったか?』



『ううん、今小川さんときた所だよ』




二人はなか良さそうに隣に並んだ



『しかしありがとうな



お前が一緒にいってくれなかったら



この指輪



買い損ねるところだったよ』

No.26

『結局秘密じゃなくなっちゃったけどね』



彼の横でえりちゃんが幸せそうに笑う




『お前がえりのほしがってた指輪をさりげなく聞き出してくれてさ



俺に付き合って指輪売り場なんぞについてきてくれなきゃ



プロポーズに間に合わなかったもんな』




二人は顔を見合わせて微笑んだ



『いや…大したことないよ』



そういいながら胸のつかえが洗い流される気がした




(なぁんだ)



(なぁぁんだ~)




『そういう事かぁ…』




ゆるんだ口元に冷たいコ―ヒ―を流し込む




にやにやしていりあたしにえりちゃんが声をかけた



『次は小川さんの番ですね』


『喜んでくれるといいなぁ



嫁さん



ずっと楽しみにしてんだろ?



すげぇよなぁ』



『…なにが?』



あたしがそういうと二人は顔を合わせてきょとんとしてみせた



『なにが…って


指輪だよ



お前も嫁さんに買ってやんだろ?



毎日毎日コツコツとまぁ100円玉をよくも七年も集めたもんだよなぁ




俺も郵便局での両替はずかしかったぜ~



今日だろ?指輪のサイズ直し




嫁さん喜ぶといいな』

No.27

二人の言葉にしばし言葉を失った



『指輪』




それはあたしが憧れてやまなかったもの



結婚して7年



結婚式はおろか指輪も旅行もいかなかった




経済的な問題もあるが




それよりも生活にゆとりがほしかった



『指輪…』




あたしの知らないところで




こんな風にあたしの事を思ってくれていたの?




ランチの飲み物もケチって



お札を崩したりして



結婚してからずっと



あたしに『形』をみせようとしてくれてたの…




なのにあたしは不満ばっかり言って…




『ごめん



あたしやっぱり帰るね



二人ともお幸せに!』




あたしはカバンとジャケットを手に取るとその場を走り去った




会いたくて会いたくて




抱き締めたくて



気持ちはもう



『お母さん』でも『嫁さん』でもなかった



『あたし』が一番大切なのは





一番守りたかったものは



自由なんかじゃない
『あたし』はとっくに



あの頃のあたしではなくなっていたんだ



それは悲しいことでもなんでもなく




『新しいあたし』



やっとわかったんだ

No.28

ウチに着くともう夜の8時をまわっていた



部屋の中に入るとまなは小さな寝息をたてていた




かずくんはあたしの為にあったかいお風呂と料理を用意してくれていて



昔から大好きだった白ワインまで用意されていた



『ユキお疲れ様



疲れただろ


風呂に入って足休めろよ



出てきたらマッサージしてやっから』



『いいよいいよ


かずくんこそ家事大変だったでしょ?



ゴミだし手伝わなくてごめんね



あとはあたしがやるからかずくんお風呂入って』




お互いに何も言わないけど




今日一日でお互いの大変さや



お互いの言い分も少しわかったんだと思う




あたしたちはやっぱり腐っても夫婦なんだね




かずくんがハゲたおじいちゃんになっても



あたしがいつかシワシワのおっぱいになっても



お互いに笑いとばせる二人でいようね




その日は久しぶりに肩を寄せてリビングのソファーで眠った




繋いだ手は


きっと明日からも繋がっていますように…

No.29

『ん…朝かぁ…



あれ?まな…



何であたし布団で寝てるんだろう』



寝室からリビングに移動すると昨日食べたお皿がキッチンに積まれたままだ



何かおかしい




ソファーにかずくんの姿はない




あたしは確かめるように書斎に足を向けた




そっと開いたドアの向こうにはパンツいっちょに高いびきのかずくんがいた




『なんだ…



ただの夢だったんだ

都合よすぎるよね



かずくんがあたしに何かしてくれるなんてさ』




あたしは肩で息をはくといつものようにエプロンを後ろでキュッと結んだ



あと一時間もしたら


『新聞は?』
『風呂は?』
『パンツは?』
『飯は?』



の四本柱が待っている



『そんくらい自分でやってよ!くそ忙しいんだから』




そういいながら


文句を言って



でもね
新しい『あたし』は実はそんな生き方は嫌いじゃないはず




ほらね




あくびをしながらタオル片手にかずくんが起きてきた




またいつもみたいな慌ただしい一日が始まる



365日慌ただしくたって



それでもまた新しい一日を目指して頑張るのも悪くないよね

No.30

『よぅ、おはよう』


『おはよ、新聞出してあっからね』


『うん、風呂は?』


『沸いてるよパンツは洗濯機んとこ』



『うん』こうやってまた当たり前の一日が始まる


二人分の朝ごはんを用意して


まなとパパの洋服を用意して


髪をとかしてランドセルを背中にしょわせたらエレベーターで一階までみんなで降りる




『いってらっしゃい気を付けて』



『ママいってきまぁす』



まなが両手で手を降たびに顔がほころぶ


『ユキ、行ってくるわ』


『あ、パパ待ってはいこれ、暑いから水分はしっかり取ってね』



『何?この3百円』


『ん?頑張るサラリーマンにボ―ナスだよ』


あたしがかずくんの肩を叩くとかずくんがス―ツのポケットから小さな箱を取り出した



『じゃあ頑張る主婦にもボ―ナスな』


照れくさそうにそう言った



中身は秘密



ご褒美だからね



みんなのウチにももしも『一日交代券』が来たら使ってみてね



何かいいことあるかもよ?



相手を変えるにはまず自分から!



世の中のお母さん頑張ろうね!!



ユキの短い内緒の話はこれにて終了🌱



みんなにも幸せが訪れますように…

No.31

何だかきゅうに思い立って書きはじめた超短編



お楽しみ頂けたら幸せです😺



読んで頂いたみなさんに心からの感謝をこめて🌱🙇




ももんがより

No.32

🌱お話を読んでくださったみなさまへ🌱



今日ももんが旦那に『366日』を私が書いたとは言わず



『こんな話があるんだよ』って携帯を見せました(サイトの名前は伏せてあります)


そしたら





そしたら





…お母さん
台所の机動かすの手伝おうか?




だって😹💦




掃除も
家事も
育児も



まぁぁぁったく


しなかったのに



ももんが含み笑い😸

(にやり😸)



多少は刺激になったかな?



でもまぁそれっきりですがね🙀💨



旦那を突き動かす小説でも書かねばなぁ…



なんて思う今日この頃のももんがでした



🙇🌱

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