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傷
SUNの小説三作目
皆さん、あまり期待しないでください
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このこどこのこねこ
午前8時。まだ外ではクラブの朝練が続き、教室にまだ生徒が誰もいない時間だ
俺は、そんな人気のない教室に入った。
誰もいないことを確認して、早起きした甲斐があった、と少し心が弾んだ。
俺は、朝、外で朝練をしている音しか聞こえない教室の中で本を読みたいがために、朝早く起きているんだ。誰かがいては、意味がない。
しかし、昨日、少し夜更かしをしてしまったせいか、かなり眠い。
誰もいない中で眠るのもいいかもな、と思って、顔を伏せたとき後ろのドアを開ける音がした。驚いて後ろを振り向くと、同じクラスの女の子がそこにいた。
彼女、玉木瑠美は、俺が教室にいることにかなり驚いたらしく、目を見開いていた。
「本庄君!何でこんな朝早くに?」
そりゃこっちのセリフだよ。という心の声を隠し、(俺自身、こんな朝早くに来ている以上言える立場じゃないから)
「いや、ちょっと早起きしちまったからさ、家にいても暇だから、ここで勉強してたんだよ」
と言っておいた。(本当の理由は口が裂けても言えない)
彼女は納得したのか、軽く頷き
「そうなんだ。なんか奇遇だね。私も早起きしすぎちゃってさ。」
彼女はハハッと笑いながら言った。
何故か俺にはわざとらしく見えたが気にしないことにした。
その後、ただ黙って二人教室にいるのも変なので、当たり障りのない会話をした。
すると、突然彼女は、
「あのさ…、野良猫って何あげたらいいのかな?」
と聞いてきた。
こんにちは
SUNさんにオススメの本があります。
SUNさんにオススメの本は作家フランツカフカが執筆した「城」や「変身」です。
SUNさんの作風に最も近いかな?と思います。電子書籍(携帯)で買えるので、
興味があれば読んでみてください。念のためにいっておきますが、
面白くはありません。言い回しも昔の解釈なので、分かりづらいです。
備考
ビデオ屋で、映画版「審判」と「カフカの城」がレンタルできます。
- << 6 すみません・・・肝心なところが抜けていました。作品作りの参考に、 という意味でレスさせていただきました。お互い、創作活動を続けてゆきましょう。 SUNが素敵な作品にめぐり合え、創作時間が安息のひとときとなることを、心から 願っています。
俺は最初、質問の意味が分からなかった。
いや、意味は分かったが、話の流れを無視した、唐突すぎる質問に言葉を失ってしまったんだ。
わかるだろ?
そんな俺の様子を察したのか彼女は笑いながら、
「ごめん!今の質問やっぱ無しってことで。」
と謝った。
それから少しして、朝練を終えた、クラスの騒がしい奴らが教室に入ってきた。
それを皮切りに、彼女は自分の席に戻っていった。
あと数分で教師が来るな、と考えていたとき、俺はあることに気づいた。
(そういや、本ぜんぜん読めなかったな。)
退屈以外の何でもない授業が終わり、次の授業の授業という名目の休憩が始まった。
俺のクラスでは、各々好きな奴らで集まったり、まじめに次の授業の準備をしている奴もいる。
今は、5月。そろそろ新しいクラスにも慣れ、いくつかのグループができあがる頃だ。
現に、この一週間で同じような性格の奴らが集まって行動しているのをよく見かける。
だが、俺はどちらかというとグループの間を行ったり来たりするという立場をとっていた。
俺は割といろんなことに詳しかったから、誰とでも話は合わせられた。
成績も、それほど良くはなかったから、成績が良くてクラスで浮くということもなかった。
だから、そんなフラフラした状態の俺を不快に思う奴はたぶんいないし、そして逆に、好ましく思っている奴もたぶんいないだろう。
そんな状況を良くないと思い、焦り始める奴もいるが、俺は一人でいることが気楽なのであまり気にしていなかった。
ふと、読んでいた本から目を離し、クラスの様子を眺めた。
(どいつもこいつも、馬鹿みたいな声量でしゃべりやがって。)
声を張り上げたりするのがあまり好きでない俺からしたら、あいつらはキャンキャンほえてるただの犬と大差無い。
会話の内容も、昨日のドラマの主演俳優の話や、俺の方が確実に上手いとしか思えないほどの歌唱力(俺は割と歌える方だが、おそらく、世間一般の奴らにも劣っているだろう。)しかないアイドルの話。
最近発売されたRPGの話が聞こえたかと思いきや、明らかにオタク向けとしか思えないアニメ雑誌を広げている、ある意味最強な集団もいた。
どいつもこいつもくだらねぇ、俺は心の中で毒づいたが、あることに気づいた。
(あれ、玉木さんがいないぞ。)
たぶん、朝に話していなければ気づかなかっただろうが、彼女はグループ(玉木さんは、別段かわいい子がいないグループで、クラスでもかわいい部類にはいる容姿をしていた唯一のメンバーだった)にはいなかった。
たぶん、そのときの俺は退屈していたんだろう。
今読んでいる本も、あと残り数ページとなっており、まだまだ終わりそうにない昼休みをどうしようか考えていたところだった。
(玉木さんを探してみるとするか。)
俺は、誰にも悟られないように喧噪の中にある教室から去った。
なんで、誰にも悟られないようにしたかって?
野次馬精神の固まりのような奴に捕まりたくなかったからさ。
ああいうのは、本当のことを聞き出すまで話しやがらないんだ。
面倒だろ?
「キツい…。」
自分でしようとしたとはいえ、やはり人捜しは興味本位でするものではないと気づいた。
この学校はわりと広い。
全学年で、二十を越えるクラスが存在しているため、それに対応するかのように校舎もバカみたいに広い。
おまけに、五月とは思えない暑さが廊下を歩く俺をさらに苦しませていた。
確かニュースで地球温暖化は急速に進んでるとか言ってたな。
と自分にいって納得させようと試みるも、暑いものは暑い。
夏が大嫌いな俺にとって、この暑さはイライラを増大させるのに一役買っていた。(買わなくていいのに)
これだけきつい思いをしているのに、肝心の玉木さんだけ見つからない。
イライラはピークに達しようとしていた。
探すのも面倒くさくなった俺は、お決まり(誰が決めたかわからないが)の体育館裏を探してみて、いなければ教室に帰ろうと決めた。
自分のクラスから体育館は少し遠いようで、結構きつかった。
(これでいなけりゃ怒るぜ。)
と理不尽に近い怒りを覚えていたとき、玉木さんを見つけた。
しかも、なんだか黒い生き物と一緒に
俺は、悪いことをしているわけではないのに、なぜか隠れてしまった。
俺は、隠れながら彼女の行動を覗いていた(端から見れば、変態扱いされるだろう)
どうやら、彼女はその黒い生物に餌付けを試みているらしく、手にパンのようなものを持っている。
しかし、その黒いのは用心深いようで、彼女の差し出すパンには見向きもしない。
ただでさえ暑い中、ガンガンに日差しが当たる体育館裏で、じっと座っているのはきついのだろう。
彼女はイライラしてきているように見えた。
いや、していなかったら変人だ。
俺なら軽く発狂している。
さて、この状況をどうしようか。
俺はそれを思索していた。
ケース1
偶然出会った。
絶対に無理がある。
確実に話にぼろが出る
ケース2
彼女を尾行していたことにする
一瞬でストーカー扱い決定
行き着く先は生徒指導部か、最悪精神病棟。
ケース3
事実を正直に話す
理由を求められたらどうしよう
なんて答えるんだ?
暇つぶし?
どこの世界に、暑い中、頼まれもしないのにあまりしゃべったことのない子を探すバカがいるんだよ…。
ああ…俺か
俺は、この場から静かに立ち去るという選択をした
音を立てぬように後ろを振り向こうとしたとき、俺は背後に人の気配を感じた。
やばい。
俺は心臓の鼓動が速まるのを感じた
もし、生徒指導の教師とかなら俺は間違いなく不審者として扱われてしまう。
振り向こうとしたまま固まっていると、その影から、
「な~にやってんだ、ジョーちゃん」
と声がした
俺は聞き覚えのあるこの声にため息をついてから返事をした
「なんでもね~よ、真中」
背後にいたのは生徒指導とはかけ離れた男だった。
こいつの名前は真中。
日本全国どこのクラスにもいそうな騒がしい奴で、クラスの奴にやたらとあだ名を付けたがる。
俺も本城という名前から、ジョーというあだ名を付けられてしまった
「何にもしてない奴が、こんな人気のないところにいるのかな~?白状しちまえよ」
軽薄な男だが、勘は鋭い。
俺もその勘だけは一目おいていた
下手に嘘をつくよりも、ある程度本当のことを話すほうが良いと思った俺は
「実は、人捜しをしててさ。ここら辺にいるって聞いたから探してたんだ」
と返してやった
真中は納得したような顔をしていた。
話を逸らすチャンスと思った俺は、
「んなことより、真中の方はどうしたんだよ。おまえも人のことを言えねーんじゃないか」
そう訊ね返したら、真中は押し黙ってしまった。
「何もねぇよ。大体、俺がなにしようがジョーちゃんに関係ないじゃん」
とだけ言うと、その場から立ち去った。
そんな反応が返ってくるとは予想していなかったので、俺はしばらく唖然としてしまった。
そのとき、俺はあることに気がついた。
(そういや玉木さんはどうしたんだ。)
先ほど、彼女がいた場所に目を向けるとそこには、彼女もあの黒い生物もいなくなっていた。
「何処へ行ったんだ?」
あたりを見渡したとき、チャイムが鳴ってしまった
急いで教室に向かわなくては
俺は、何とか授業には間に合った。
玉木さんの方をみると、彼女は落ち着いた様子で席に座っていた
あの黒い生物が何なのかは気になっていたものの、今の状況で彼女にそれを訊ねるのは、ナンセンスだということを認識することはできるので、しばらく放っておくことにした。
「じゃあ、今日はここまで。予習はきっちりしておくように。」
日直に、礼をさせると担任の教師はそそくさと教室を出ていってしまった。
そんな、教師の態度に、怒る生徒などいるわけもなく、皆、部活動や帰宅の準備をしていた
俺は部活動には所属していなかったのでさっさと帰る準備をしていた
鞄に荷物をまとめながら、俺は昼に見かけたあの黒い生物の正体を、無性に暴きたくなったので、あの体育館裏に行ってみることにした
放課後の体育館裏は、昼休みと違い暑さは、かなりマシになっていた
パッと見たところ、玉木さんの姿はなかった
あの黒い生物の正体を暴くには絶好のチャンスだ
俺は、彼女がその生物に餌を与えていた場所に座った
しかし、その生物はいっこうに現れず、俺は途方に暮れてしまった
さらに、俺が座っている場所は日差しがかなり当たる場所で、座るだけでかなり暑い。
(…暑い。何でこんなことしてんだ俺は…)
少し日陰に入ろうとその場から去ろうとしたとき、不意に呼びかけられた
「本庄君?何でここに?」
俺は、冷や汗をかなりかいていたと思う。
その声は今のこの状況で一番聞きたくない声だった
そう、声の主は玉木さんだった
ぶっちゃけ、あり得ないだろ。
この状況を誰が予測したよ。
さあ考えろ。
どうやってこの状況を乗り切る?
「やっぱり本庄君。何してるの?こんなところで」
どう説明すりゃぁ、納得してくれんだろうか?
俺の頭の中はそればかり考えていた。
何とも返事できない俺を彼女はどう思っているだろう。
しかし、その状況を打破したのは彼女だった。
「もしかして、本庄君もクロ助にごはんをあげにきたの?」
彼女は俺にそう聞いてきた
「クロ助?なんだそれ」
思わず、そう返事してしまったが、直ぐに公開した
これを皮切りに、いいわけを考えればよかったのだ
「違うの?てっきりそう思ったんだけど…」
やばい。彼女はいよいよ、俺を怪しく思い始めた
俺の額に流れる汗は、暑さだけではなかった
そのとき、玉木さんが突然、「クロ助!」と叫びだした
彼女の叫んだ方向を見ると、そこには真っ黒な毛に覆われた子猫がいた。
彼女がえさを与えていた、黒い生物はこいつだったようだ
玉木さんは、その子猫に近づくと、ポケットに忍ばせていた煮干しをばらまいた。
子猫は、煮干しに鼻を近づかせ匂いをかぐ。
玉木さんはその光景をほほえましく眺めていた。
その顔は、普段の彼女の表情と違っていて、ほんの少しドキッとした。俺だって男だ。可愛い女の子にドキドキするのは当然だろ?
俺はふと我を取り戻し、玉木さんに
「どうしたんだ?こいつは?」
と、問いかけることができた
「一週間ぐらい前かな、学校の中でこの子を見つけたの。私は寮生だから、家には連れて帰れないからここでごはんをあげてるの」
俺は少し驚いた。
彼女が体育館裏で、子猫を育てていることもそうだが、寮生であることにはもっと驚いた。
公立ながら、スポーツ推薦などの制度に優れた高校なので、他府県からも生徒が集まるため、一応寮が用意されているが、それは入ることができて男女十人ずつぐらいなので、寮に入るにはそれなりの成績と理由が必要になる
彼女がそんな内の一人とは知らなかった
「驚いた?」
彼女は俺の様子を見てそう訊ねた。
彼女の顔を見ると、俺のような反応になれているみたいで、明らかに表情を楽しんでいた
認めるのも悔しいので、「別に」とだけ言った
事情は知らないが、特殊な環境は俺も負けないつもりだった。
玉木さんは、少し勝ち誇った顔をしていたが何も言わなかった
俺は、会話の流れを戻すため、子猫に目を向けた。
「それで、こいつはどうするんだ?ここにずっと飼うわけにもいかんだろ」
と言うと、彼女はむっとして
「それぐらい考えてるもん。大体、こんなにかわいいのにコイツとか言わないで。」
と言った
「呼び方なんて何でもいいじゃね~か。それで、コイツをどうするのか考えてるって言ったけど」
まだ玉木さんは怒ったような表情をしていたが、怒っても仕方ないと思ったのか渋々と言う感じで話し始めた
彼女の説明は、黒猫の自慢から始まり、要領を得なかった。
内容をまとめると、学校の近くには猫屋敷があり、そこで飼われている猫は、避妊手術がされていないため、この季節になるとたくさんの猫が生まれる
ある程度は知り合いや新聞広告等で募集した飼い主に引き取られるが、残ってしまった子猫は、道に捨てていくのだという。
その証拠に、猫屋敷の近くにすんでいる人は、屋敷に住んでいる女性が、何かが動いている箱をおいたりするのを、見ていた人が居たのだという。
そして、彼女はその元飼い主の家に殴り込みに行くらしい
「だって、ムカつかない!?
子猫がいきなり外に放り出されて生きらんないのは誰の目にも明らかでしょ!!
なのに、何で捨てちゃうのか私には理解出来ない!」
彼女は、話の最後を、こう締めくくった
俺は、半ばあきれながら話を聞いていた。
俺にしてみれば、何でたかが黒猫ごときに、そこまで熱くなれるかがわからない。
確かに、猫屋敷の主人のことをおかしいと思うのはわかる。
だが、そんな話は世界中にありふれているし、テロや、世界中で起きている内戦や飢餓といった、もっと重大なこともこの世界にはある
それらからしたら、彼女の怒りはひどく個人的だし、どうでもいいことだ。
しかし、彼女はまるで自分が捨てられたかのように怒っている。
彼女のそんな様子を俺は、なぜか微笑ましく思っていた。
そして、今日何度目だろうか。
後々、後悔するだろう選択をとってしまった
「まさか、本庄君がこんなことに付き合ってくれるとは思わなかったよ」
彼女はさっきまでとは違い、嬉しそうな顔でいった。
一方、俺は何でこんなところにいるのか、自分でも理解できずにいた
話は、一時間前に遡る
「それで、その猫屋敷の場所はわかってんのか?」
彼女が、話終えてしばらくしてから俺は聞いた。
彼女はなぜそんな質問をするんだという顔をしていたが、
「ここから割と近いけど、」
と答えてくれた
「近いって、どれくらいの距離なんだ?」
「多分、ここから30分もあればつくんじゃない」
「じゃあ、行こう」
俺は、彼女から時間を聞いた瞬間即答してしまった
彼女は、最初俺が何を言っているのか理解できない様子だった。
だから俺は、改めて言い直してしまった
「その猫屋敷に行こう。
行って、避妊手術を受けさせるか、これ以上猫を捨てるのをやめさせるんだ」
どうも俺は、玉木さんに影響を受けているようで、いつもの俺とは違う感覚を抱いた。
いつもならば、彼女の話もよくあることと割り切るのだが、今日はなぜか、彼女の意志に同調してしまっている。
俺は、そんな感情の変化にかなり戸惑いを覚えていた
彼女、玉木さんだからそうなってしまうのか。
もしくは、いつも表に出していないだけで、奥底でははらわたが煮えくり返りそうなぐらいの怒りを抱えていたのか。
前者はないと思う
玉木さんは、今日たまたま話しかけられただけで、大して他の感情を抱いていない(ハズだ)
後者でもないと思う
俺は、彼女の話よりもかなりややこしい事態に巻き込まれたこともあるし、自分で言うのもあれだが、割と冷静で残酷な性格をしていると思っている
俺のこの突発的な感情は、なんなのだろう
そんな葛藤が、心の中で渦巻いていることに気づかない、葛藤を引き起こしている張本人は、猫屋敷の前で何を言おうか迷っている様子だった。
「何を悩んでるんだ?」
「だって、いきなり、あなた猫を捨てたでしょ、何て言ったらおかしいじゃない」
驚いた。
てっきり俺は、勢いに任せて怒鳴り込むものだと思っていた
少し、彼女に対する考えを改める必要がありそうだ。
「どうしよう。せっかくここまで来たのに…。」
玉木さんは、自分の愚かさにかなり嘆いているように見えた
そんな彼女の様子を見ていた俺は、腹をくくるしかあるまいと、屋敷のベルを押した
「本庄君!?」
玉木さんはかなり驚いたようだ。
まさか、いきなりベルを鳴らすとは思わなかったのだろう
おれだって、面倒なことは避けたいさ。
でも、避けたくても避けられないことも社会にはある。
今はそのときさ。
そうだろ
「は~い。どちら様かしら?」
玄関からでてきた家主は、傍目からみれば優しそうな中年の女性だった
女性は(見ず知らずの他人にオバサンと言うのは、俺には抵抗がある)俺たちを見て怪訝な顔をしていた。
それはそうだろう。
いきなり、会ったこともない高校生に家に来られたら、誰だって驚く。
だが、俺はうれしくないことに、こういうタイプの大人が、子どもにどんな対応を期待しているか理解し尽くしているので、
「突然申し訳ありません。
ここで子猫をもらえると聞いたのですが…。」
こういうタイプは、俺たちぐらいに『子ども』を求めていない。
自分たちと同じゾーンにたっていて、なおかつ自分よりも弱いように見えるのが一番いい。
いわば、『子ども』と『大人』の境界を完全に分けようとしていて、俺たちのように、両方兼ね備えたような半端者が強いということを認めたくない輩だ。
だから俺は、言葉遣いなどは大人に近づけ、なおかつ意志が弱そうに見えるように、少し目を泳がせてみた
いきなり弱腰になった俺を見て、玉木さんは焦り始めた。
玉木さんには悪いが、焦れば焦るほどある意味好都合だ
俺はすかさず
「すいません!実は彼女人見知りする性格で、猫がどうしても欲しいけど、猫をもらえるように交渉できるかどうかわからないから、来てくれって言われてついてきたんです」
この言い訳なら、俺がいる理由や彼女が焦っている理由を説明できる
女性は、納得したのか頷き、
「あらそうなの
最近物騒でしょ?特に、あなたたちぐらいの年代が、一番危ないって言うじゃない?
だから、少し警戒しちゃって。ごめんなさいね」
と笑いながら言った
話の内容の失礼さに、少しムッとしたが顔には出さなかった
不思議なことに、世間ではたくさんいる学生という身分のうち、一握りが悪さをすると全てを悪く見てしまう。
「人は人、自分は自分」
そんな言葉を作り出しているのは大人なのに何故だろう。
とにかく、女性の警戒心を解くことに成功した俺たちは、彼女の家に上がることとなった
オバサン(だいぶ話したので、呼びやすくなった)の家の中は、玉木さんの情報通りの猫屋敷だった
黒猫、白猫、ブチなと様々な柄や毛の長さをした猫が、俺が見た限り十匹以上いた
「残念だけど、この部屋にいる子たちはあげられないの。二階にいる子たちならあげられるから、ついて来て」
オバサンは、そういうと俺たちを二階に案内した
二階にいたのは子猫ばかりだった
この部屋にいる子猫は、見たところ五匹ぐらいか
皆産まれたばかりという感じで、猫好きならたまらず抱きしめたくなってしまうかもしれない(俺はそうは思わなかったが)
しかし、この子猫を見る限り、拾ってきたわけではなさそうだ。
つまり、下にいた、あの猫たちから産まれたのだろう
「どうかしら?
この子たちから一匹つれていくのわ?」
オバサンは笑いながら俺たちに聞いた
しかし、オバサンはわかっていない。
今、玉木さんはかなり怒りにふるえている。
そんなときに、笑いながらそんなことを言ったら、彼女の逆鱗にふれるのはまちがいない
「いいかげんにしなさいよ!」
案の定、玉木さんはオバサンに怒鳴り始めた
「この子たちにもし貰い手がいなかったらどうすんの!?
捨てちゃうんでしょう?
あんた大人なのに捨てられた子猫がどうなるか、分からない訳じゃないよね!?
かわいそうっていって拾ってくれる人なんてほんの一握り。
大抵は、事故に遭うか、ご飯が食べれなくって餓死しちゃうんだよ!
そんなかわいそうな子たちを増やすぐらいなら、避妊手術受けさせなさいよ!
それが飼い主の責任じゃないの!?」
オバサンは、玉木さんがいきなり怒鳴りだしたことに、かなり動揺していた
それはそうだろう。
俺からは、彼女は人と話すのが苦手だと聞いていて、それを信じきっていたのだ。
玉木さんの怒りの爆発は、オバサンにとって予想できなかった出来事だったろう
それらが相まって、オバサンはしばらく固まってしまっていた
しかし、徐々に気持ちを取り戻し始め、玉木さんに言われた言葉に対しての怒りが沸いてきた
「な、何よ!あなた、いったい何を言っているの!?」
オバサンはほとんどヒステリーになりながら言った
それに呼応するように、玉木さんの怒りもヒートアップしていった
「アンタみたいな自分勝手人間がペットを飼う資格が無いっていってんのよ!
そんなこともわかんないの!?」
「わかるわけ無いでしょ!!
それに資格がどうのなんて、あなたみたいな馬鹿っぽい女の子に言われたくないわよ!」
「馬鹿っぽいって何よ!
そういうふうに、人をけなさないと会話を始められないの!?
だからオバサンは嫌いなのよ!!」
俺は、その高校生と大人の会話とは思えない二人の会話を聞いていた
頭が痛くなる思いがしながらも、俺は幼稚な言い争いをしている二人の間に割って入った
そのときに、
「ああ~。
とても平和的な会話してる途中すみませんけど…」
という風に嫌みを加えるのを忘れない
嫌みの意味が分からないほどに、頭に血が上っているわけではないらしく、二人とも押し黙ってしまった
「じゃあ、平和的な話し合いも終わったことだし、事情を説明しましょうか」
俺は、今が好機とオバサンにここにきた目的を話した
「つまり、僕たちはあなたの家の猫に去勢手術を受けさせるために、ここに来たわけです」
俺は、玉木さんが見つけた黒猫、クロ助の話と、彼女が怒り出した理由を話した
オバサンは少し落ち着いてきたが、俺の話について、いささか以上の反感を持っているように見えた
オバサンは、俺や玉木さんがなぜ怒っているのか、説明しても理解できないようだ。
「確かに事情はわかったわ。でも、それであなたたちに迷惑をかけたかしら?」
という発言を聞く以上、反省はおろか話を理解しているとも思えない。
当然、玉木さんの怒りは収まるどころか、激しくなっていってしまった
「迷惑って何よ!あんたは、生きてるうちで守らなくちゃならないルールも分からないわけ!?
飼っているペットを捨てちゃいけないって事すら、あんたにはわからないわけ!?」
とかなりご立腹だ
しかし、怒りが爆発しているのは玉木さんだけではない
怒りの元凶であるオバサンもヒートアップしていた
「そんなセリフが言えるってことは迷惑はしていないんでしょう?だったら、私の家のことに口出ししないで!子供のくせに!」
「子供のくせにって、あんたみたいな奴はそればっかね!それ以外に人との会話ができないの?」
俺は、またもや幼稚な言い争いをし始めた二人に対して、呆れを通り越し、怒りがこみ上げてきた
だが、今俺までもがキレたら、この場の話し合い(言い争いだろうか)の収拾がつかなくなるので、俺は怒りをできる限りセーブするようにし、何とか頭を冷静に保つことが出来ていた
しかし、玉木さんは何を意地になっているのだろう。
確かに、ここの状況を放っておけないことは理解できるが、それは、オバサンを無理やり説得してまで問題を解決する必要はない。
日本には、このような事態に備えるべく、様々な機関がある。
警察や、ボランティア団体がそれにあたる。
それらの機関に頼めば、こんな状況はいくらでも何とかなるだろう
先ほど話を聞いただけで思いついたのだから、しばらくあの黒猫の面倒をみていた彼女なら、容易に思いついただろう
だが、玉木さんはそういう機関に相談することなく、この家に直行した
端から見れば、通常の行動かもしれないが、普段の玉木さんの行動からすれば、少しおかしい。
俺は、普段からクラスの雰囲気にあわせるため、クラスメートがどんな性格で、どんな行動をするのかをある程度把握している。
俺の把握している彼女は、これほど直情的ではなかったはずだ
彼女の何がそうさせるのだろうか
俺が、数秒間このように物思いに耽っている間にも玉木さん達は、不毛な言い争いを繰り広げていた
いい加減に鬱陶しくなった俺は、二人の話し合いに終止符を打つことにした
「玉木さん、そういえば警察には連絡したのかい?」
俺がそう言うと、二人は突然話し合いをやめ、俺の方をみた
「その人が近所に猫を捨てていることを迷惑に思っている人がいたら、立派な犯罪になるだろう」
犯罪という一言に、玉木さんもオバサンも驚いていたようだ
「俺の知る限りでは、その人がしていることは確か軽犯罪法に違反しているはずだ。詳しい罪状は忘れちまったが
警察じゃなくても、市民団体に訴えれば、彼女は近所での面目丸つぶれ間違いないだろうな。
さあ、どちらがいいですか?」
俺は、二人が反論できないことをいいことに、二人に一気にまくし立てた。
玉木さんもかなり呆然としていたが、オバサンはその上をいき、口をあんぐりと開けたままで、完全にフリーズしていた
さらに、最後に俺が質問を投げかけたことで、オバサンはどうしようもなくなってしまっていた
「じゃあ、俺らが決めてしまっていいですかね?玉木さん、どっちがいい?」
玉木さんは、いきなり話を振られてかなり動揺していた。
オバサンはというと、玉木さんの方をちらちら見ていた
玉木さんの決断によっては、彼女の一生に関わってくる可能性があるのだ
気にして当然だろう
そして、俺はそれ故、玉木さんに選択権を与えたのだ
先ほどまで、自分でバカにしていた彼女に、自分の運命(少々大げさかもしれないが)を決定されるのだ
これは、精神的にかなりのダメージを与えることができるだろうと、俺は考えた
その俺の目論見通り、オバサンは自分の状況に、下唇を噛みながら、屈辱に耐えているように見えた
おそらく、もともとプライドが高い人間なのだろう
たかが学生に、自分の運命の選択を委ねなければならなくなったり、完全に屈服させられる経験も無かったのだろう
一方、玉木さんは決めあぐねているようだ。
自分の決断によって、一人の人間の人生を変えてしまいかねないのだ。
迷わずに決めることができる方がおかしい。
そして、二人が完全に膠着状態にある今こそ、俺の真の目論見を始めることができる
「二人とも決められないのなら仕方ない。
じゃあ、俺が決めるしかないな」
俺はわざと芝居掛かりながら二人に言った
二人とも、俺の次の言葉を聞き逃すまいとしている
「まず、俺たちはあんたのしたことを誰にも言わないことを約束する。」
そういった瞬間おばさんは、心から安堵したように息をついた
しかし、俺が
「ただし」
と話を続けたことで、顔をまた強ばらせた
「もちろん、あんたにも条件はある。
もしもそれを破ってしまった場合は、すぐさまそれ相応の対応をさせてもらう。
どんな対応をするかは…言わずともわかるだろ?」
俺は、少し声を低くしておばさんに言ってやった
案の定、オバサンはビクビクしながら俺の言葉を待っている
果たしてなにを交換条件にするのか、おばさんにはそれがわからないため、ただ怯えるしかないのである
「なにも難しいことじゃないですよ」
俺は、ここで敬語に変えることで、プレッシャーを与えることにした
「俺らは、金を要求するわけでもないし、あんたを辱めることもしない。俺たちがしてほしいことは……」
「それで、あの辺りの捨て猫は減ったのか?」
あの一件から、二週間ほど経過した
俺と玉木さんは、時々あの家の経過について、話し合っている
彼女の情報によると、あの猫屋敷の近辺で子猫の類が捨てられることは無くなったらしい
まだ二週間なので油断はできないが、とりあえず安心しても良さそうだ
「まあ何にせよ、これで猫騒動も、ある程度は終了したってことかな」
「騒動ってなによ。
ほんとに頭にきてたんだからね!
今度もう一回捨ててたら、まず一発ブン殴ってやるんだから!」
玉木さんは拳を振る動作をしつつ言った。
彼女に話は合わせたものの、俺はそんなことはないだろう、と確信していた
あのとき俺はこう言ったのだ
「まず、この家にいるすべての猫に去勢手術を受けさせてください。
確かに今はお金がかかりますが、こどもが産まれたときに生ずる金額を押さえることができるから、多分、トータルで見たらそう変わらないと思います。
あと、捨てるのももちろんだめです。
これらが守られなければ、警察に連絡します」
俺は、恐らく普通の高校生が行うには、あまりにも残酷な行為をオバサンにしているのかもしれない。
一度相手を精神的に追い詰め、あえて救いの道筋を作ってやることで、こっちの思惑通りに事を運ばせる
これは一種の洗脳だ
俺は、オバサンのプライドの高さを利用してこの行為を実行した
普通の高校生なら、相手を洗脳に近い状態にしてまで、自分の目的を果たそうとはしないだろう
俺は、オバサンを追いつめているとき、彼女に対してある程度の哀れみに近い感情を持っていたし、自分自身に、「ここまで追い込む必要はないだろう?そろそろやめよう」とブレーキをかけようとさえ試みていた。
だが、そんな俺の良心や哀れみの気持ちは、オバサンに対する激しい感情に押し込められてしまった
俺は、あのときの俺は、別人格の俺ではなかったろうかと思うことがある。
それほどまでに、あのときの俺は、普段の俺と異なってしまっていた
今でも思う。
あのとき、あの人に向けてしまった激しい感情は果たしてなにが原因なんだろうかと
あのときの感情は、怒りであろうか
苛立ち?それとも……
しかし、今の俺はあのときの感情の正体を知ることはできない
何であれ、俺は…
いや、俺たちは当初の目的であったオバサンの猫を捨てるといった行為をやめさせることが叶ったのだ。
そのことに関しては、喜ばしいことだろう
これが、俺が名付けた『猫騒動』のことの顛末だ
そして、俺と玉木さんの己の心の内に潜む『傷』に関する話の序章でもある
もちろん、そのときの俺はそんなことには気づかなかったし、玉木さんもわからなかったのだが……
ああ、そうだ
この騒動を解決したことで、俺の生活が少し変化してしまった
原因はまたしても玉木さん
「はあ!?君はバカか!なに勝手に話進めて…」
「だって、寮じゃペット禁止なんだもん
君なら、この子を責任を持って育ててくれると思うんだけど……」
そう、俺は玉木さんに押し切られる形であの黒猫を引き取ってしまったのだ
まったく、俺は玉木さんだけは苦手だ……
このこどこのこねこ
完
間章
お昼休み
それは、高校生が学校で一番楽しみな時間だと、私は思っている
でも、ある意味私はこの時間は苦手だ
何故なら…
「ねぇー、留美チャンって本庄クンと付き合ってるの?」
あの『猫騒動』(本庄君命名何だけど、私はあまり気に入ってない)から1ヶ月経った
もともとあまり接点がなかった私と本庄君が、いきなり仲良くなったもんだから、みんな不思議がってしまって、ありもしない噂まで流れてしまう始末だ(内容については、私の口ではとても言えない、破廉恥きわまりないモノまであった)
わたしはともかくとして、本庄君に迷惑だと私は思う
だって、こんな私と恋人だなんて思われてしまって…
その笑顔はまるで瑠璃のように
最近、俺は機嫌が悪い
第一に、野次馬精神が全開のクラスメートに、玉木さんと恋愛関係にあるのではないかと疑われいることだ
ここ一週間で、まだマシになってきたが、未だに聞いてくる奴もいるからイヤになってくる
現に今でも
「なあ、いい加減吐いちまえよ~、楽になんぜ?ジョーちゃんよ?」
俺は、今目の前にいる男を殴りかからないことを誉めてほしかった
「何度も同じことをいわせんじゃねー。違うつってんだろうが、このボケ」
「ボケとはなんだよ!ああ~、傷ついた!今日は家帰って引きこもってやる!」
「お前に、そんな傷つくような神経があるとは知らなかったぜ。真中」
そこまで言われても、真中はまだヘラヘラしてやがった
多分、クラスで一番長生きするのは、多分このバカだろう
俺はそう確信している
だが、これらは可愛いものだ
俺が、本当に機嫌が悪いわけは他にある
そして、それも、俺の苦手とする、噂の玉木さんが根本原因なのだった
その日の授業が終わると、俺は別れの挨拶もそこそこに、自転車を急ピッチで漕いで帰宅した
あいつは、見張っていないと何をしでかすか、わかったもんじゃない
ある時は、学校に行っている数時間の間で、ふすまをボロボロにされ、またある時は、机に置いてあった牛乳のパックを倒し、あたりを牛乳まみれにしたり、さんざんな目に遭っているのだ
そんなことを思い出していたら、より早く家に着きたいという思いにかられた。
そして、俺は生涯最速をマークし、家に着くことができた
自転車に鍵をかけ、家にすぐさま入り、異常がないか点検した(おそらく、深夜の学校を見回るオッサン達よりは見ていたはずだ)
ついでにあいつの姿も探した
一階には見あたらないため、二階に上がってみるとそいつは日のよく入る場所で、暢気に昼寝と洒落込んでやがった
(こっちの気持ちも知らずいい気なもんだ)
俺は、俺を不機嫌にする最大の要因である奴を見下ろしながら、心中で毒づいた
そこには、玉木さんに無理矢理押し切られ飼うことになった黒猫がいた
俺は、何故断固としてこいつを飼うことを断らなかったのか、と一月経った今でも後悔している
こいつのせいで少なくとも一時間以上は、睡眠を削られている
こいつは何を考えているのか、朝の五時とかに俺を起こしにくるのだ
無視しようものなら、枕元で暴れ出したり、耳元で鳴き叫んだり、手段を選ばない
観念して俺が起床すると、もう気は済んだのか、またどっかへ行きやがる
時間が時間なので二度寝もできず、前以上に早く学校に行く羽目になってしまうのだ(一番最初の方に話したと思うが、俺は朝早くに学校に行くことは確かにあるものの、ここの所はほぼ毎日だ)
とりあえず、こいつの無事(さすがに家で死なれては後味が悪い)を確認したので、俺は自分の部屋に向かう
俺は、部屋に置いてあるベットに腰掛け、本棚から一冊の本を取りだし、読み始めた
その本は、自殺した人の遺書ばかりを集めたあまり人にはお勧めできない本だが、俺は気に入っていた
よく、人は死ぬと無になるというが、俺はそうは思わない
この本を読むと、それが確信に変わった
これに書かれている文章は全て、今は死んでしまっている人物が書いたものだ
それが今、俺の目に入り、死んでしまった者の感情が入り込んでいるように錯覚し、そして文章に混ざり込む『死』という気配に魅入られてしまう
おそらく、それは彼らが死んでしまっているから起こる感情であり、まだ生きている奴らがこれを書いたところで、俺は何とも思わない
有名な芸術家は、死してから名を馳せるという話を聞いたことがある
それはつまり、『死』というものが『生』とは違う輝きを持っているからではないかと俺は思う
俺が本を読みながらそのようなことを考えていたとき、ポケットに入れていた携帯が振動した
「誰だよ人がシリアスってる時に…」
俺は、メールの送信者を見てため息をついた
そいつは、俺が読んでいるような本の世界とはまるで対極のようなやつ
アホの真中その人だった
半ばイライラしながら、俺はそのメールをみた
タイトルには『大発見!』とあり、写真も添付してあった
本文を読んでみると、なんだか絵文字や顔文字だらけで、とても読めたものじゃない
何とか読める部分から内容を掻い摘んでみると、どうやらこの写真の人物がクラスの誰かにそっくりだったらしい(あのバカは、クラスの誰かの部分を一番、暗号みたいな文字で表しやがった)
読書を邪魔されたこともあり、俺は携帯を閉じて読書を再開した
すると、また携帯が鳴り始めた
今度は誰だよ、と思い携帯を取ると、真中からの電話だった
そのとき俺は確信した
こいつは完璧に空気が読めない
いっちょ文句を言ってやろうと俺は通話ボタンを押した
「もしもし」
「オイ!!ジョーちゃん!!メールみたかよ」
真中はよほど興奮しているのか、かなり声が大きい
携帯から少し耳をはなして、会話を続けた
「一応見たけど」
「一応って何だよ!画像見てねぇのかよ!」
「俺にもいろんな事情があるんだ。おまえに合わせてばかりできるわけねぇだろ」
「いいからいっぺん見ろって!絶対ビックリすっから」
「見るかみないかは、俺が決める」
「ああ~もう!メンドクサイ奴だな!騙されたと思って見てみろって!ていうか見なかったら、お前の机に落書きしまくってやる」
騙されたくはないんだか、と言おうと思ったら、真中はもう切ってやがった
俺は気が乗らなかったが、明日俺の机に落書きがあるのは嫌なので(真中はバカなので、本当にやりかねないのだ)メールに添付されてた画像を見ることにした
俺は、一目見て何かの見間違いかと思った
そして、あのバカが俺に見るように念を押した理由がわかった
その画像には、玉木さんにそっくりな女の子の姿があった
その画像の女の子は、本当に玉木さんそっくりだった
いや、似ているなんてレベルじゃない
下手したら、本人と間違えそうだ
実際、この女の子の髪が玉木さんの倍ぐらいの長さでなければ、間違えていたかもしれない
だが、画像の衝撃から少ししてから俺は冷静になった
あのバカが俺を驚かせるために作った合成画像かもしれないし、玉木さんが、ウィッグ(合ってたっけ)をしていたのかもしれない
考えてみれば、こんなマンガみたいな偶然が起こるとは思いづらい
たまたま町で歩いていた真中が、たまたま歩いていた、玉木さんのそっくりさんに遭遇する
こんな奇跡的な偶然を信じられる程、俺はバカでも、お人好しでもなかった
くだらない、と思い俺は携帯を閉じた
そのとき、足下で鳴き声がした
見ると、クロ助が(新しい名前を付けるのが面倒だったので、玉木さんが呼んでいた名前を使っている)物欲しげな顔をしている
餌箱を見ると、中身が空だった
「腹が減ったのか?」
解るわけないと思いながらも聞いてみる
クロ助は、「ニャー」と返事した
なんだか、すべてがどうでもよくなったので、俺はクロ助に餌をやることにした
今日、初めてこいつに感謝したかもしれない
翌朝、学校に行くと真中がマジックを持ちながら俺に、
「画像みたかよ」
と聞いてきた
「見てやったから、そのマジックを離せ。落書きしやがったら、どうなっても知らん」
俺の声色に本気さを感じたのか、マジックをポケットにしまった
「冗談じゃんか~。本気にしないでよジョーちゃん!」
「お前はバカだから、本気かどうかが解りづらい」
「ああ~!またバカっつったな」
「お前を表すのにこれ以上ピッタリな単語はないと思うけど」
またしても俺が本気で思っていたのが伝わったのか、真中は半ば本気で文句を言い始めた
だが、もちろんそんな抗議には全く興味がないので、俺は話の核心にいきなり触れることにした
「で、どうやってあんな写真を作ったんだ?」
俺は、あの写真は確実に合成だと思っていたので、そう訊ねた
すると真中は、やはりというべきか、ムキになって
「作ってねーよ!何だよ!そんな目で見てやがったのかよ!?」
と反応してきた
「当たり前だ。たまたま町で出会った人が、たまたまクラスメートにそっくりだったなんて、バカみたいな偶然があってたまるか」
「あったんだから、しゃーねーじゃんか!大体、こんな上手くできた合成写真を作れるだけの技術が、俺にあると思うか?」
俺は、その言葉に少し考えさせられた
成る程、よく考えたら、このバカにそんな高等技術があるとは考えづらい
すると、まさかこいつは本当に…
「真中」
改めて呼びかけた声は、少し低くなってしまった
俺の声の調子が変わったのを感じ取ったせいか、真中は少しうろたえていた
「な、なんだよ、ジョーちゃん?急にまじめな顔して」
「この写真が嘘じゃないなら、一体どこで撮ったんだ?」
まただ
また俺は、バカみたいに強い好奇心だけで、面倒なことに首を突っ込もうとしている
あの『猫騒動』もそうだった
頭の冷静な部分では、必死に自分を止めようとしているのに、心が、体が好奇心に支配される
まるで、面倒ごとに巻き込まれることを、本能で望んでいるかのように
おれが、そんな思考をしていることを察することが出来ないのか、真中は脳天気に
「ほらほら~、気になってきたんじゃないかジョーちゃん?」
と馴れ馴れしく肩を叩きやがる
俺は、一瞬でさっきまで脳内で行われていた思考の中止を余儀なくされた
「一応聞くだけだ。百%信じる訳じゃない」
「またまた~、そんな照れんなよ!」
また肩を叩きやがった
万倍返しくらいで、顔面に一発入れようと、少し席から離れたら、
そのとき、真中が突然大声を出した
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