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蒼き臨界のストルジア

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名無し
18/08/24 00:27(更新日時)

どこまでも続く無窮《むきゅう》の星々《ほしぼし》。

そこに僕を縛るものはない。

海辺《うみべ》の波の音が、
この世の苦悩の全てを溶かして漂っていた。

僕は夜の浜辺で寝転び、
潮騒《しおさい》の優しさに包まれながら、
満天の星空を見上げ世界の中に溶けて行く。

そこには僕を縛る全てのものはなく、
無限に続く自由の空だけが広がっていた。

無限に広がる宇宙の中に、
僕をとりまく全ての事象は溶かされ、
埋没《まいぼつ》し消えて行く。


空に浮かぶ無数の煌《きら》めき。

その中で一際《ひときわ》明るく輝き、
寄り添う二つ星を見つける。

僕が探していた星。

父《てて》星と、母《はは》星。

手を伸ばせば届きそうな位置で、
僕がそう名づけた二つ星は、
寄《よ》り添《そ》う様《よう》に僕を見つめていた。

両親は僕が13の時に死んだ。

交通事故だ。

それから僕は親戚じゅうをたらい回しにされ、
最終的に田舎の祖母に引き取られた。

僕は現在14歳。


僕がこの秘密の浜辺を見つけたのはつい最近の事だ。

何もない田舎の港町でゆいいつ僕が見つけた楽しみ。

それが夜、この秘密の浜辺で寝転び、
夜空を見上げる事だった。

都会では見えない輝く星空を。

町の光は星々の輝きを打ち消す。

田舎に最初に来て気付いた事だ。

その中でもこの浜辺は街灯の一つも無く、
完全な闇が支配する聖域だった。

そこから見上げる星々の輝きは、
見た人にしかわからないだろう。

全てが新次元の輝きで満《み》ちていた。

僕はその輝きにみいられ、
その星空を何時間も見上げていた。

父星《てて》と母《はは》星。

決して届かないけど、
確かにそこにある温もり。

現実の郷愁《きょうしゅう》は心に染み込み、
ゆるやかに呑まれて行く。

揺りかごに揺られる様な優しい波しぶきに抱《いだ》かれ、
いつの間にか僕は眠っていた。

唐突に辺りが騒がしくなる音で僕は目覚めた。

海辺で鳥達がギャーギャーと騒《さわ》いでいた。

誰か来たのか?

小山に挟まれ雑木林を抜けないと来れない
この場所を知る者は少ない。

とは言え警戒心は全くなかった。

都会に比べ田舎の防犯意識は極端に少ない。

近所のほとんどの家がカギをかけてないし、
だからこそ夜中でも、僕が家を抜け出して
この浜辺に来れるのだが。

僕は騒がしく鳥が群がる浜辺に近づいていった。

街灯がないとはいえ辺りは完全な闇ではなかった。

満天の星々が柔らかく辺りを照らしてくれている。

僕は足元から伝わる砂の感触を確かめながら、
その中を泳ぐように波打ち際まで歩いて行った。

砂利の感触が砂漠のそれに変わるのを感じながら
僕はその場に到着した。

鳥の群がるその場所に。

僕が近づく気配を察知し、波打ち際《ぎわ》で固また
鳥達が一斉に飛び立った。

白い影が一斉に夜空に飛び散るさまは幻想的で、
まるで線香花火のように夜空に弾《はじ》け、
消えていった。

そして鳥の山がいなくなったその場所には、
何かの残骸が転がっていた。

人魚!?

一瞬そう思ったそれは、もちろん人魚などでは無く見たことの無い生き物の屍《しかばね》だった。

まるで恐竜時代からタイムトラベルして来た様《よう》な、爬虫類《はちゅうるい》的なフォルムをした何か。

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No.2698082 18/08/24 00:27(スレ作成日時)

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