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【醜人は勝ち組】

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作家
17/05/09 18:50(更新日時)

会社の仲間とボーリングに行った時の事だった。
地下鉄は空いていて、僕の向かいには後輩の女子社員が二人座っていた。
渡部貴和子と浅田広美である。
ふと、渡部が僕の方を見ながらニヤニヤ笑い、浅田に耳打ちしているのが目に入った。
顔なのか、服装なのか分からないが、私の何かを見て嘲笑しているのは明らかだった。
おかしな格好をしていた訳ではないが、渡部の無礼に不愉快な気分だった。
しかも、普通は相手に気が付かれたら耳打ちを止めるものだろうが、私が気が付いた事など気にも止める事なく、渡部は嘲笑と耳打ちを止めなかったのだ。

こちらは先輩であるが、この時、渡部が私を見下し、軽んじていた事を察知した。
でなければ、私が気が付いて見ているのに、こちらを見ながら嘲笑、耳打ちを続けるわけがない。
私はたまらない屈辱を感じていた。
なぜこんな無礼な事をされなければならないのか、怒りが込み上げてきた。

この日を境に、渡部に対する見方が変わった。
案の定、渡部の私に対する態度の悪さ、横柄さ、口の利き方の悪さは日増しに酷いものとなっていった。
タメ口は当たり前、「ちょっと邪魔なんだけど」と言って私を押し退けようとしたり、他の男性社員とワイワイやりながら、私を罵ってきたりと、度を超えた悪態が目につくようになった。

私は渡部に何もしていないし、事実、同じ女子社員でも浅田は私に対してそのような悪態をつく事はなく、全く普通に、先輩として接してくれており、勿論、私は渡部と浅田で接し方を変えたわけでもない。
確かに私は大人しい方で、控え目なタイプではあるが、どう考えても非は渡部にあると思い、少し態度を厳しくした。
すると渡部は、「そんな言い方する事ないしょやね」など、女を使って不貞腐れた態度を取り、更なる反抗を見せてきた。
先輩の私に対する悪態を棚に上げて、被害者ヅラするのである。この時、渡部という人間が女の腐った典型的な女である事を知ったのだ。

渡部は、人によって態度を変える女だった。勿論、誰だって多少はそうであるが、渡部の場合はあからさまだった。
課長や部長といった点数をつける人には汐らしい女を演じ、好きな男の先輩や同僚男性には女をフル活用して、「え〜、うそ〜、やだ〜、すごーい、そーなんだ〜(´∇｀)」と媚を売り、職場に二人しか女がいないのをいい事に、やりたい放題の女だった。

ある時、社員旅行だったのだが、他営業所(5箇所)の女子社員…全部合わせて7名くらいだろうか…が揃い、その中の渡部の豹変に驚いた。
普段は男所帯の中で、少ない女として自信満々で高飛車な態度を取っているのに、他の営業所の女子社員達の輪の中では急に大人しくなって、気を使っているのだ。
男性社員相手であれば、女という事でチヤホヤしてもらえるし、気に食わない男性社員を虐める事も出来るが、女同士は対等になるからか、急に大人しくなって、小さくなっている渡部が滑稽だった。

そして渡部は同僚の男性社員と社内結婚し、退職していった。
勤務したのは3年…結婚するまでの典型的な腰掛け仕事に過ぎない女だった。短大卒業後、3年ほど腰掛け仕事をして、男職場の中で女をフル活用して遊び気楽仕事をして、結婚して専業主婦に…渡部は生まれながらの勝ち組女だったのだ。

〜完〜