いつかどこかで…
「それじゃ、マナの散歩に行ってくるね」
咲穂はそう言って、2歳になる牝猫のマナを手提げつきの猫ちぐらに入れた。虎模様の首に下げられた碧色の勾玉は、咲穂のバイト先の近くにいて、よく当たると評判の辻占い師が、「この勾玉は、一度だけ願い事を叶えてくれるよ」と、いつも贔屓にしてくれている咲穂へと、ささやかなお礼として貰ったものであった
「おぉ..」
洋介は、腕枕をした顔をテレビに向けたまま、尻を掻いて返事をした
咲穂は36才、昼間からでもビールの飲めるカフェでバイトをしている。洋介は40才で、印刷物を扱う中小企業で営業をして10年以上になるが、茫洋としているためか、はたまた出世欲がないのか、一向に出世を感じさせる気配はなかった
同棲をはじめて6年の歳月が流れていたが、結婚は敢えてしないことにしていた。6年も同棲をしていれば、お互いの気心も隅々まで手に取るように理解しあえていたが、経済的な事情や、家庭や子供に縛られるのは性に合わないと、ふたりで話し合った結論であった
咲穂は玄関脇に置いている鏡を軽く覗くと、風の強い日にはガタガタと音をたてる、安アパート特有のドアを押した。日曜の日差しは柔らかく、春らしいふんわりとした風が、咲穂の柔らかなスカートを包んだ。咲穂は、マナの首で揺れている碧色の勾玉に触れると、反射した光りに目を細めた
咲穂は、両手で猫ちぐらを胸元に抱えると、一歩足を降ろすたびに振動の伝わる階段をゆっくりと降りた
「早くどうにかしてほしいわね」
「ほんとそうよ..危なくてしょうがないわね」
階下のゴミ集積場で、階下に住む60代くらいのオバサン達が眉をひそめて話し込んでいた
「こんにちは」
咲穂は、軽く会釈をしながら肩を竦めるように足早に脇を通りすぎた。オバサン達は白い目を咲穂におくりながら、ほんの少しだけ頭をさげた。オバサン達の嫌悪な態度の理由は分かっていた。それは、このアパートに引っ越してきた頃に遡るが、咲穂は入居条件のペット可ということで、不動産屋と契約をしたのだが、どういうわけかアパートの住人達は、「ここはペット禁止ですよ!!」と、恐ろしい剣幕で怒鳴り込んできたのだ。咲穂は不動産屋に連絡をし、住人達に高価な手土産をちらつかせながら、どうにか話を着けてもらい、その場は何とか収まったが、咲穂に対する嫌悪な態度はその時から続いていた。
咲穂が猫ちぐらを片手に持ち直そうとすると、マナが、ひょっこりと顔を覗かせて小さく鳴いた
「どうしたの?」
咲穂も覗きこむようして、マナに微笑んだ。マナは捨て猫であった。ある日、バイト先近くの道端に段ボールの中へ捨てられているのを見つけた。咲穂は
次の日から、コンビニで小さなミルクを買うとマナに与えはじめた。5日目の金曜日は、午後から強い雨が降り始めていた。咲穂は客足の途絶えた店の窓から鉛色の空を見ていた。大粒の雨は通りを激しく打ちつけては、花火のように散っていった
咲穂はバイトが終わると、急いでマナのいる場所まで走った。マナは段ボールの真ん中に両足を踏ん張るようにして鳴いていたが、鳴き声はこの雨にかき消されていた。咲穂は迷うことなく抱き上げると片方の手で、マナを胸に押しつけた。
咲穂は、猫ちぐらから顔を覗かせているマナと公園に向かった。アパートからそれほど遠くない公園は、樹木に囲まれて、ひっそりとしている。
ブロック塀に囲まれた見通しの悪い路地にさしかかった。咲穂は用心するように、左右を確認した。この路地は去年頃から渋滞の抜け道としてネットで公開され、それ以来、車などの交通量が激増していた。1ヶ月前には、この路地で車が小学生と接触事故を起こしていた。事故は今年に入って4度目である。咲穂に白い目を向けていたオバサン達の会話の内容は、この事故の話であった。
咲穂は公園につくとベンチに腰かけ、猫ちぐらを横に置いた。マナは窺うようにして、辺りをキョロキョロとしていたが、おもむろに飛び出して虫か何かを追いかけはじめた。咲穂はベンチの木陰から空を見上げた。樹木にかじられたような真っ青な空があった。
「マナ、帰ろうか」
1時間ほど、公園でのんびりしていた。公園内にはちょっとした芝生の広場もあり、子供達が草野球をしている。マナは相変わらず、虫を見つけては跳びはねながら追いかけっこをしていた。咲穂の声に気付いたのか、マナはピタリと立ち止まると咲穂に振り向いた。
「帰ろう...」
咲穂は微笑んだ。マナは物足りなさそうに逃げた虫の方向へ顔を向けたが、トコトコと咲穂へ近づいてきた。
「楽しかった?」
咲穂はマナを抱くと、そっと猫ちぐらに入れた。
夕飯のおかずを買って帰ろうと、さっきとは違う路地へと足をのばした。路地の傍らには柔らかな綿毛をつけたタンポポがポツリポツリと咲いており、モンシロチョウが真っ白羽を瞬かせている。殺風景な路地に不釣り合いのようだった。そのタンポポの綿毛を薙ぐように乗用車が猛スピードで走ってきた。咲穂は、猫ちぐらわ持つ手に力を込め、壊れた側溝の蓋に気をつけながらブロック塀の脇に身を寄せた。
「危ないなぁ...」
咲穂は走り去った車を睨むように見送って歩き出した。マナは猫ちぐらから顔を出ている。ヒラヒラと飛びはじめたモンシロチョウが気になっているようだ。
後ろから車がエンジン音を唸らせながら近づいてくるのが分かった。日曜の午後はとくに車の往来が激しい。階下のオバサン連中ではないが、車の規制をしてもらわなければその内、死亡事故も起きるだろうと咲穂は思った。
「アッ!!」
マナが路地を横切っていくモンシロチョウを追いかけようと猫ちぐらから飛び出したのだ。
「マナッ!!」
咲穂は一瞬、後方から迫ってきた車へ目を向けようとしたが、何故か体が先に動き出していた。耳元に空まで切り裂くような音が近づいた。
「バカヤローッ!!死にてぇのかッ!!」
車は咲穂の50センチ手前で停止していた。
咲穂はようやく立ち上がることができた。恐怖で体が硬直していたのだ。
「ご、ごめんなさい」
咲穂はよろめきながら通り過ぎて行く車へ頭を下げた。そして、マナを抱いたままヨロヨロと後ろ向きにつんのめっていった。
「あ...」
身体が宙に浮いた感触がした。
「ゴツン」
―う..う..
壊れた側溝の蓋に足をとられ、ブロック塀に後頭部を強打したのだ。咲穂は、塀に持たれながら沈んでいった。首筋を生温かな液体が、雨に打たれたように伝ってきた。咲穂の意識がゆっくりと遠退いていく。
―だ..れ..か..
マナは行儀よく前足を揃え、咲穂をじっとみている。首に下げられた碧色の勾玉が、やわらかな午後の日差しを映している。黄色い花を咲かせたタンポポは、ゆらゆらと風に吹かれていた。
咲穂の身体を暗い闇が押し包んでいる。
―ここ...どこだろう...わたし...
咲穂は眼を閉じているのか、いないのかさえわからなかった。空中をゆっくりと上下している感覚だけがあった。
―わたし...あの時...後ろ向きによろけて..
まるで、意識と身体が分離しているようで、思考と記憶もまとまらなかった。咲穂はどうにか記憶を手繰ろうとするが思い出せない。
― 二ャァ…
咲穂の耳ではなく、心へ直接響くように聞き覚えのある鳴き声が伝わってきた。
―マ..ナ..
咲穂の脳裏にマナとの記憶が鮮明に急速に甦った。
―マナッ!!
咲穂は意識の中で叫んだ。すると闇の中で一点の碧い光りが、遠くから徐々に近づいてくるようだったが、光りが近づいてくるのではなく、咲穂の意識が碧い光りに向かっていたのだ。
― 二ャァ…
意識が光りの目前にきたとき、寂しそうなマナの鳴き声が咲穂に伝わった。
『マナッ!!』
咲穂は意識の声ではない叫びをあげた。その瞬間、身体中が、いや、意識が碧い光りに包まれた。意識と身体が繋がったと感じた。咲穂はゆっくりと瞼を開いていった。強烈な線香の匂いが鼻をついた。咲穂は顔を歪めながら辺りを見回した。
― なんか視点が...
咲穂は視界に違和感を感じた。目の前に喪服を着た人達がずらりと並んでいる。ほんの1メートル程の距離だったが、顔がぼやけてわからなかった。
― なんか..目が悪くなった...
「最後のお別れだよ..」
そう言って男は、咲穂の身体を軽々と両手で掴むと何かを覗きこませた。
『げぇぇッ!!』
そこには、顔の回りを綺麗な花束で覆われ、うっすらと化粧を施された咲穂の白い顔があった。
「まだ若いのにねぇ..」
「塀に頭をぶつけて、失血死したそうよ」
「咲ちゃん..小さい頃から、ぼんやりしてるところがあったもんね..」
咲穂の遺体を乗せた霊柩車を見送った後、手を合わせていた会葬者の間から、次々と咲穂の死を悼む声が聞こえてきた。咲穂は、洋介の腕に抱かれながら、遺影を抱えて霊柩車の助手席に座る母親を見送った。
『お母さん..』
咲穂は呟いた。洋介は咲穂の鳴き声に反応するように、頭をそっと撫でた。咲穂は洋介の腕からスッと飛び降りると、音もなくアスファルトの地面に着地した。
― ・・・・。
虎毛に埋め尽くされた手の甲を返すと咲穂は、見るからに柔らかそうな肉球をしげしげと見つめた。
― マナだ..この身体マナだ..
自分の手のひらを見つめる姿が可愛いのか、葬儀に連れられて来た子供達が集まってきた。
「かわいい!!」
そう子供達が口々に叫んでは、咲穂を抱っこしたり頭を撫でたりと玩具にした。咲穂はたまらず、子供達の手をすり抜けると建物の裏へ逃げた。
―私..猫なんだ..
咲穂は考えた。この現状を受け入れられず、また理解もできなかったが、現実にマナの身体の中に自分の意識がある事は認めざるを得なかった。心地良い風が、咲穂のひげに触れていく。
― イタッ..
軽い頭痛に襲われた。しばらくして「マナ」と、洋介が探している声が聞こえてきた。咲穂はゆっくりと声のする方へと歩き始めた。咲穂と呼ばれない哀しさが、オレンジ色の夕焼けに染められていくようだった。首に下げられた碧色の勾玉は光りを失い、灰色にくすんでいた。
「荻野、ノルマだけ達成すればいいってものじゃないんだよッ!!獲れるだけ獲るのが営業なんだよ!!」
「はぁ..すみません」
「はぁじゃないだろ、はぁじゃ!!」
洋介は、出社早々『オロチの加藤』と蔑まされている営業課長に、ねちねちとイビられて30分が過ぎようとしていた。ノルマを達成していて説教されている者は洋介以外にいなかった。洋介は何故自分だけが不公平な扱いを受けるのか分からなかったが、同僚達はその原因が分かっていた。
「ちょっと、荻ちゃんかわいそう..ここんとこ毎朝オロチに責められてるよ」
「うん..かわいそうだね」
机を隣り合わせに座っている石河優子と白瀬瞳が、パソコンを打つ手を止めて2人の様子を伺っていた。どこから情報を得たのか分からないが、洋介の同棲していた彼女が亡くなったという話が、葬儀の2日後には社内に広まっていた。
肩書はないが温厚で、男女問わず後輩達の面倒見の良い洋介を慕う女子は多かった。加藤のイビリは、女子から同情されている洋介への嫉妬からくるものであった。優子と瞳もそのうちの1人であったが、瞳はそれとは別に洋介へ特別な感情を抱いていた。そのひたむきな想いを知っているのは入社以来の親友である優子だけである。
「瞳..こんな事言うと不謹慎かもしれないけどさ..荻野さんの彼女..死んだんだから遠慮しないで告白したらどう?」
ふんぞり返って説教する加藤と、まるで暖簾に手押しのような洋介を交互に見ながら優子が囁いた。
「....」
瞳は顔を真っ赤にしながら洋介を見つめていた。
「マナ、行ってくるな」
『行ってらっしゃい・・』
と言っても、洋介には「二ャア」としか聞こえていない。両手を揃え、顔を見上げているマナの頭を撫でると洋介は玄関のドアを開けた。
マナの身体に咲穂の心が移ってから、数ヶ月が経っていた。咲穂の遺骨や位牌等は、洋介が責任を持って面倒をみると咲穂の母親の美恵子と相談したが、「早くいい人を見つけなさい」と、洋介の今後を考え、美恵子が頑として拒んだ。しかし、小さな遺影写真を貰い、テーブルの片隅に置いて毎日手を合わせていた。
猫の身体に馴染んできていた咲穂ではあったが、糞や小便は四角い箱の砂ではできなかった。もよおしてきたら、トイレのドアにガリガリと爪を起てれば、洋介がドアを開けてくれるようになり、便座に座って用を足していた。
今まで見たことのないマナの行動に、洋介も初めは不思議がってはいたが元来、何事にもあまりこだわらない気質のためか、気に留めなくなっていた。
『ごはんでも食べるか…』
咲穂は呟いて、トレーの置かれた部屋の隅へ、てくてくと向かった。可愛い虎の絵が描かれている。生前マナのために買ったものだ。
バリボリと少し噛んでは水を舐めた。
『美味しくない…』
幸か不幸か、肉体は朽ちても意識に刻まれてきた味覚は失われなかったようだ。
食事を終えると窓枠に近づいた。洋介は外出時に玄関以外に鍵をかけなかった。咲穂は爪を出し両手を枠に掛けると、全身の力を込めて横に引っ張った。スーッと窓が横滑りをした。
咲穂は格子で覆われた一畳程のベランダに出ると、小さな溜め息を洩らした。
『私..どうなるんだろ..』
ベランダには、咲穂のお気に入りだった赤い花柄模様のサンダルが転がっていた。咲穂の眼には黄色い花柄模様に映し出されていた。
咲穂はベランダに出ると、隣接する向かいの家の屋根へ「トンッ」 と飛び降りた。それから、ブロック塀へ飛び移り地上へと降り立った。咲穂がアパートのゴミ集積場の前を歩いていると、以前、咲穂が人間の躰でいた頃にマナの件で怒鳴り込んできた中原マサ子の叫ぶ声が聞こえてきた。
「ババァッ!!さっさと持ってこいよ!!」
男はマサ子の白髪混じりの髪を掴むと、激しく揺すった。年の頃は三十五、六歳で、ダボついたジーパンにブーツを履き、財布留めのチェーン。首筋からタトゥーを覗かせている男は、中原マサ子の一人息子、龍樹である。
龍樹は、叫び声を上げている母親の髪を掴んだまま、部屋へと押し戻した。暫くすると、クシャクシャに握られた一万札を数枚持ったマサ子がヨロヨロと龍樹の前に戻ってきた。龍樹はマサ子の手からその金を奪い取ると、肩をいからせながらどこかえ消えて行った。玄関の扉が閉まるとマサ子はその場に泣き崩れた。
── ま..人それぞれ、色んな事情があるわね
さっきまでの一部始終を見ていた咲穂は、特に何かを思うわけでもなく、トコトコと公園へ向かった。
公園に着くと、あちらこちらに春めいた景色が顔を覗かせている。まだ朝も早いためか、公園には年寄夫婦が草花を愛でながら散歩をしている姿しか見あたらなかった。咲穂は木製のベンチに飛び乗ると前足を揃え、顔をあずけて目を閉じた。
── 本当に..この先どうするんだろう..
咲穂は自分でも、ましてや他人には尚更理解できない問題を解決しなければならなかった。
── このまま猫として生きるのか..それとも人間に戻れる方法があるのか..いや、人間には戻れないだろうな..私の躰はもうこの世にはないのだから..
人間として生きる望みを絶たれた咲穂は、幾度となくした自問自答の末に、小さく溜め息をついた。
── 人間としては生きることができない..では何のために猫の躰に私の意識が移ったのかしら..神様の気まぐれかしら..
公園に幼い子供達の声が聞こえ始めていた。春の風は柔らかく公園を吹き抜けた。咲穂の形のよい髭もそっと揺れていた。
「ようやく明日は休めるか」
荻野洋介は時計の針が、午後六時を指すのを見ると大きく背伸びをした。印刷会社の仕事は時期的に多忙が重なることがある。洋介の勤める三光印刷でも、企業や出版社らとの打合せが重なり、連日深夜まで残業ということが続いていた。
「荻野さん、お疲れ様です」
白瀬瞳もこの時間まで残業していて、一段落したようである。周りを見ると、二人の他にまだ三人が机に向かいカタカタとパソコンを叩いていた。連日の深夜残業が続き明日が休日ということで、早めに仕事を切り上げる者が多かった。
「おぉ、お疲れさん」
洋介は背伸びをしたまま瞳に顔だけを向けて応えた。
「ようやく明日は休めますね」
「うん、今週は深夜残業が続いたからな..倒れるかと思ったよ」
そう言って笑うと、瞳も顔を赤らめながら笑った。
「さて、帰るとするか」
洋介がパソコンを閉じて、机の上を片付け始めると瞳が洋介の横へと近付いた。デニムの短めのスカートから白い膝が見えた。
「荻野さん、夕飯はどうしてるんですか」
瞳は帰り支度を済ませて洋介の仕事が終わるのを待っていたようだった。
「飯か..コンビニで弁当でも買ってかえるよ」
洋介はそう言って微笑むと、椅子から立ち上がった。
「あの、よければカレーを作ってあげたいと思うのですが」
「え...」
「あ、あの別に変な意味はありません..実家からジャガイモと人参がいっぱい送られてきて..実家が農業やっていて..荻野さんには色々と面倒かけていまして..その、せめてもの恩返しというか」
瞳が真っ赤な顔でシドロモドロに話す姿に、洋介は思わず吹き出した。
「俺の方は問題ないけど..」
鈍感な洋介だったが流石に、一回り以上も違う若い娘を独身男のアパートへ連れていくのはどうだろうかと思案した。
「だったら是非、お願いします」
そう言ってペコリと頭を下げる瞳に思わず「あ、あぁ」と返事をしてしまう洋介であった。
二人は電車に乗り込んだ。瞳は洋介の鞄を持ち、洋介の両手にはビニール袋にびっしり詰められたジャガイモと人参がぶら下がっていた。
「マナ、ただいま」
薄暗い部屋から咲穂は小走り玄関に駆け寄ると、ちょこんと前足を揃え扉が開くのを待った。
「わぁ、可愛い猫ちゃん」
瞳が洋介の背中から顔を覗かせた。
咲穂は呆然と固まっていた。
咲穂は洋介に促されながら部屋に戻って行ったが、片時も瞳から目を離さなかった。
「可愛いですね」
蛍光灯の明かりの下で、咲穂の顔をまじまじと見つめながら頭を撫でようと手を伸ばした。
咲穂はスッと頭を右に反らして瞳の手をかわした。
「えっ..」
瞳はその瞬間、思わず手を引いた。明らかに拒絶とみられる反応であったからである。それも、動物ではなく人間としての行動に感じたからだ。
── この猫..一体...
「どうした」
手を伸ばしたままで瞳が咲穂を見つめているのを、冷蔵庫を開けながら洋介が訊いた。
「あ、いえ、早速カレーを作りますね」
瞳は立ち上がるとバッグから、黄色地で花柄模様のエプロンを取りだし、簡易に造られた手狭な台所へと向かった。
洋介は、小さなテーブルにドカリと座り込むと、旨そうにビールを流し込んだ。
「あぁ、旨い」
「あ..おつまみも用意しておけばよかったですね」
包丁で野菜を手際よく切りながら、瞳は迂闊だったというような声をした。
「イヤイヤ、いつも帰るとビールだけだから..なぁ、マナ」
咲穂は応えるかわりに、瞳の後ろ姿をじっと見ていた。
「その猫ちゃん..マナっていうんですか」
瞳は手を動かしながら訊ねた。
「うん、捨てられているのを咲穂が拾ってきてね..」
「サキホ?」
「ん、あぁ、死んだ彼女だよ」
瞳のリズミカルに動いていた包丁がピタリと停止した。
「....」
この沈黙が気まずいことに、ようやく気付いた洋介は、「野球でもみるか」と独り呟くようにテレビをつけた。
この若くて感じのよい娘に敵意を燃やしている咲穂であるが、流石に洋介の女心を汲めないデリカシーのなさに、苦笑いせずにいられなかった。
それから洋介と瞳は、野球を見ながらカレーを食べ、世間話などしていると午後九時を回っていた。
「そろそろ帰りますね」
「駅まで送って行くよ」
「いえ、駅まで近いので大丈夫です」
「それじゃ、その辺りまで」
洋介と瞳が玄関を出ると鍵をかける音がした。咲穂はベランダから屋根、ブロック塀と伝い、当然のように二人を尾行した。
── 尾行してどうするんだろう..
咲穂は心の葛藤に苛まれながらも気になって仕方がなかった。人通りのない線路沿いを歩く二人。寂れた街灯が時折ぼんやりと二人の影を浮かび上がらせた。
「荻野さん、今日はありがとうございました。この辺りで大丈夫です」
洋介と肩を並べて歩いていた瞳が、立ち止まり頭を下げた。
「いえ、こちらこそ..沢山、ジャガイモと人参までいただいて」
「ご迷惑でなければ、またお料理作らせてくださいね」
瞳は暗がりの中で微笑んで歩き始めた。
「あ、ありがとう..」
洋介は、暫く瞳の後ろ姿をぼんやりと見送っていたが、やがてノロノロとアパートへと向かいはじめた。
咲穂は鼻じらみながら、一部始終を見ていた。
── 何が「お料理作らせてくださいね」だ..洋介も鼻の下伸ばしてさ..みっともない。あんなに沢山ジャガイモや人参もらっても、食べきれませんよーだ
── ・・・でも、
咲穂の小さな眼が足下に落ちていった。
── でも..いつかは洋介も、私の知らない誰かと一緒になるんだろうな..あの子なら洋介の面倒もしっかり見てくれそうだし..
女の勘ではなく、動物の勘であった。白瀬瞳という娘を知ったのは今夜がはじめての咲穂であるが、素直に好感を持てた。ただ、咲穂の女としての..いや、元人間の彼女としてのプライドが瞳を認めたくなかっただけなのである。
咲穂も洋介についていこうとしたが、ふと思い直した。
── 駅はもうすぐだけど..あの娘大丈夫かな
もう少し歩けば駅に着くが、通りは暗く人通りもなく駅は無人で数ヵ月前に強盗事件も起きていた。警察も一時はパトロールを強化し、注意を呼び掛けていたが、ほとぼりが冷めると次第に、夜間の巡回は無くなっていた。
「キャーッ!!」
暗闇の先で叫び声が響いた。瞳だ。咲穂は洋介の姿を探したがすでになかった。咲穂は全速力で走り出した。そして、瞳に覆い被さっている男の頭に勢いよく後ろからしがみつき、伸びに伸びた前爪を剥き出し、男の顔中を無茶苦茶に引っ掻き回した。
「ウワァッ!!」
男は何が起きたかもわからず逃げ出した。
「ニャー」
咲穂は倒れている瞳の側に近寄ると片足で軽く頬を叩いた。
「イタタ..あ..荻野さんの..カナちゃん..」
── 違う、マナだって
「ごめんマナちゃんだった」
瞳は上体を起こすと暫く呼吸を整えた。白い膝を少し擦りむいているだけで他にケガはないようだ。
「マナちゃんありがとうね。助けられちゃったね」
瞳の頬に遠い明かりが滲んでいた。
「チッ、クソ猫が」
そう言って中原龍樹は初夏の日差しに暖まった公園のベンチへゴロリと仰向けになると、絆創膏だらけの顔に指をそっとあてた。数日前、荻野洋介のアパートから帰宅する白瀬瞳に暴行を加えようとしたところ、マナに顔面をメチャクチャに引っ掛かれたのであった。平日の昼下がり、誰もいない公園を取り囲むように立ち並んでいる樹々が、時折流れてくる風に葉を震わせている。
「三十五..か」
龍樹はそう呟くと目を閉じた。龍樹は幼い頃、酒と博打に溺れていた父親が行方知れずになり、母親に育てられていた。中学生になると不良達と付き合うようになった。その仲間達も二十歳を過ぎはじめると、一人、また一人と更正とまではいかないが、まっとうに仕事につく生活を始めるようになっていった。そんな中、いつまでたっても仕事を探すわけでもなく、相変わらずチンケな悪さばかりする龍樹を見かねた不良仲間であった先輩が、親父の経営する塗装会社に龍樹を就職させたが、頭も悪く不器用なうえに労働意欲というものが欠如している龍樹に愛想つかすのは時間の問題であった。始めの頃は、先輩や同僚達も何かと庇ってくれていたのだが、半年程も経つと誰からも相手にされなくなり、自然に会社から消えていった。
ーー 世の中が悪いんだ
仕事をする気持ちはあるのだろうが、それを支える精神がまだ未熟で、この歳になるまで母親の脛をかじりながら生きているのだった。
ーー なんか..生きるのも飽きてきたな
龍樹は深く吸い込んだ息をゆっくりと吐き出した。生きるのに飽きたなどと格好つけてみるが、龍樹には死ぬ勇気などこれっぽっちもなかった。こういった輩が何かの拍子にリミッターが解除されると、「誰でもよかった」と、無差別殺人に走ってしまうのだろう。「誰でもいいならお前が死ねよ」と、事件が報道される度に憤りを感じていた。龍樹もその一人であったのだか、長く社会との交わりを断っていたためか、そういった感情も何処か遠い過去に置き忘れてきたようであった。
「タツくーん、お買い物にいくよ」
龍樹は目を覚ました。いつの間にか寝ていたようだ。声の方へ顔を向けると、まだ若い母親が砂場で遊んでいる小さな男の子を呼んでいた。男の子は大きな声で返事をすると母親のもとへ駆けていった。
「はぁい..」
龍樹もヤニ絡んだ声で返事をするとムクリと起き上がった。
カッカッカッ..
咲穂はウッと唸ると首根っこを掻いている後ろ足を、はたと止めた。
── 完全に猫化の一途を辿っている
スタンドミラーに寄ると、咲穂は自分の姿を見つめ嘆息をついた。日曜日の朝は静かで、近くの公園から聞こえてくる小鳥の囀ずりと車の音が時々、聞こえるくらいだ。洋介は早朝から何やら慌ただしく身支度を整え、トレーにキャットフードとミネラルウォーターを注ぐといそいそと出かけて行った。いつものように開け放たれている小さなベランダの窓から、やわらかな風がカーテンを揺らしている。
── なんだか..人間としての記憶も薄れていくような..最近、人の言葉が理解しづらくなってるよね..かといって猫の言葉が分かるわけではないけど..誰か相談出来る人がいないかな..
夏用の毛へと、ほぼ生えかわった虎模様を眺めながら咲穂は思案していた。
カッカッカッ..
咲穂はもう一度、後ろ足で首根っこを掻いた。灰色にくすんだ勾玉が小さく揺れた。
── この勾玉..辻占いの涼子さんに貰ったんだっけ..いつも贔にしてくれているからって。なんだか懐かしいな..元気にしてるかな。
咲穂は鏡に映っている勾玉を軽く揺らしながら、当時の事を思い返していた。
── 確か..貰った時は碧い勾玉だったよね..綺麗に輝いていて..
次の瞬間、咲穂はハッとした。
── そ、そうだ。この勾玉を貰うときに涼子さんが、ひとつだけ願い事が叶うとか言ってなかったっけ。
咲穂は頸を捻ったままで暫く考えていたが、何か決心するとニャン..いや、ヨシッ!と鏡に向かって意気込んだ。
足早に歩く人達の合間をぬぐいながら、咲穂は改札口の壁際へと身を寄せた。駅構内は休日ということもあり、若者や家族連れで混雑していた。その上、足下を気に留める人間なんて案外いないものである。三歳くらいの幼子が咲穂を見つけて、「ニャンニャン」と指差したぐらいだ。咲穂は誰にも阻まれることなく電車へと乗り込み、事情を察してくれるであろうと、辻占いの涼子のいる天子町へと向かった。
一年ぶりな味わう雑踏の空気に触れたためか、咲穂の眼から泪が溢れ出た。
── へへ..懐かしいな..。猫でも泣けるんだ..
「次は、天子町、天子町」
規則正しい電車の揺れにつられ、勾玉も小さく揺れていた。
天子町の街並みが、黄昏に染まりはじめていた。その黄昏は涼子の銀色の髪に反射してオレンジ色に輝かせている。
「涼子ちゃん、ありがとうね。あ、ごめんなさい!涼子ちゃんだなんて..」
「いいのよ、気にしないで」
そう言って涼子は微笑んだ。
涼子が天子町の一角で辻占いを始めたのは、今から三十年程前からである。あの『黒い糸』の主人公達であった、八波冴子、九鬼里美、と三人で戦い終えた後である。当時、三人共に四十路前後の齢であったはずであるから、涼子の年齢は優に七十歳を越えているであろう。頭髪こそ白に染まってはいるが、髪質は少女のような輝きを放ち、その凛とした容貌には小皺ひとつ浮かんでおらず、その艶やかな肌は二十歳の娘と見紛う程の張りを含んでいた。
「それじゃ、飲み過ぎにはくれぐれも気を付けてね。お野菜を温めて食べるようにね」
六十歳近い女はもう一度頭を下げ、丁寧に料金を手渡すと薄暗い繁華街へと消えた。
「さて..」
涼子は五芒星の描かれた白いテーブルクロスを畳もうとした手が止まった。目の前に虎毛の猫が涼子を見上げていた。
「・・・・」
涼子は右手の中指を自分の額に軽くあてると、直ぐに虎毛の猫を掬い上げ、五芒星のクロスの上に座らせた。
「ニヤァ...」
咲穂は弱々しく救いを求めるように鳴いた。
「あなた..咲穂..ちゃんね..」
涼子は揃えられた前足に左手を重ねると、咲穂の額に右手を翳した。何かピリッと電気が流れるような感覚が咲穂を襲った。
「うぅぅ...ん」
涼子は絞りだすように唸った。
─ 涼子おばさん..私..どうしたらいいの
「そうね..咲穂ちゃん、何て言えばいいのでしょう..」
─ あの..私の言葉がわかるの
「えぇ、わかるわよ」
そう言って、涼子はニコリと白い歯を覗かせた。
─ あ、ありがとう..
咲穂は小さな顔を震わせながら咽び鳴いた。涼子は優しく咲穂の頭を撫でた。人間の言葉は分かるのに、自分の言葉が通じない世界へと一人で踏み込んだ心細さは並大抵のものではないであろう。しかし、ようやくこの現状を理解し、相談出来る相手に巡り合えることが出来たのだ。
それから咲穂は、マナが自分を助けたいという一念が勾玉に通じ、咲穂の精神がマナに移り、マナの精神が天に召されたことを知るのだった。
標高二千メートル。山間の険しさは、鋭角な稜線を繋ぐ頂を見ればわかる。その頂を押し上げるように樹木が密生している。僅かな樹木の合間を縫うようにして、苔むした石段が涼子の目指す光尊寺まで続いていた。登り口の石段の脇に、朽ちかけた小さな郵便受けがポツンと置かれ、光尊寺と書かれている。
「ふぅ..」
涼子は頂上へ辿り着くと額の汗を拭うと一息ついた。どうにか判別できる光尊寺と書かれた門を見上げた。光尊寺は涼子の曾祖父である神樹将監の代からの菩提寺であった。この、光尊寺の住職であった宗仙は、この寺に独りで暮らしていた。宗仙は、代々類い稀な能力を受け継がれていく神樹家のよき理解者であり、また彼自身も秀でた能力者であったため、時には神樹一族と共に巷で人間に害を為す魑魅魍魎を、人知れず退治してきたのであった。
「御坊..ご無沙汰しておりました」
涼子は門前で手を合わせると、門戸を軋ませなが奥へと進んだ。
「流石に五年も人気がないと、凄いものね」
涼子は埃や蜘蛛の巣に覆われた堂内や庫裡を、肚を決めるように掃除を始めた。宗仙和尚は五年前に、百二十歳という高齢の大往生であった。さらに、毎朝日課として二千メートル下にある、石段の脇の郵便受けに新聞紙を取りに行っていたのだ。宗仙は石段を十段程登った所で力尽きたとみえ、右手には新聞紙がしっかりと握られていたという。
掃除を終えると涼子は縁側に腰を下ろした。そして二人分のお茶を淹れると、まるで隣に宗仙が座っているかのように、お茶を自分の傍らへ差し出した。
「私が勾玉を渡さなければ..」
今となってはどうにもならないが、涼子は悔やまずにはいられなかった。
─ あの子の身体はもう..この世から消えてしまっている
涼子は眼下に見える景色に気が付いた。青々とした樹々が太陽から命の受け、光が葉へと少しずつ浸透していくようにかんじていた。
─ 私に出来ることは..
静かに眼を閉じると、あらゆる物の息遣いが聴こえてくる。植物や動物..風、土、そして..人間。
太陽は傾き麓の町には明かりがポツポツと灯っている。涼子は門戸を抜けると振り返り、手を合わせた。
─ 御坊、また来ます。
涼子の微かな足音が、暗い闇の中へ沈んでいった。
「瞳、お願いがあるんだけどさ」
五月の陽気な日射し中、三件の得意先を立て続けに回ってきた優子が、額に滲んだ汗を手で拭いながら言った。
「ん、どうしたの?」
「このラフスケッチ、パソコンに入れといてくれない?」
そう言って優子は、顧客から預かってきた三件の広告デザインを乱雑な机の上に拡げてみせた。
「いいよ、お安いごよう」
スキャナーで読み取り、パソコンに転送するだけだ。瞳は小気味よくキーを叩いている指を止めた。
「サンキュ!これからもう三件、午前中に回らないといけなくてさ」
優子は肩を竦めながら両手を合わせた。瞳は優子の机から三枚のスケッチに眼を通すと、早速取り込みにかかろうと腰を浮かせた。
「ちょっと、ちょっと...」
優子に両肩を押さえられ、浮かせた腰を椅子へと戻した。
「な、なによ...」
「荻ちゃんと上手くやってるの?」
優子は瞳の頬にピタリと顔を寄せると囁いた。
「この前、荻ちゃんのアパートで料理作ってあげたんでしょ?」
「な、なんで知ってるの!」
瞳は、触れんばかりに近づけている優子の顔を見つめ呆然とした。そして、「あっ!」と小さな声をあげると、あの夜のことを思い出した。あの日、瞳と荻野の他にまだ残業していた三人がいたことを。
瞳は、ふと視線を感じた。顔を向けると通路向かいに座っている森口博美がパソコンの陰に隠れた。瞳がそのまま眼を注いでいると、博美はおずおずと顔をあげ、申し訳なさそうに両手を合わせた。
── 博美ったら...
今日はよく拝まれる日だと瞳は思ったに違いない。瞳は困ったように微笑んでみせた。博美は、お喋り好きがたまにキズであるが、優子、瞳と同期で気心の知れた間柄であった。
「で、どうなのよ」
「どうって、別に...」
優子はトマトのように真っ赤になった瞳の顔を、ニヤニヤしながら見ていた。優子としては、いつまでたっても彼氏のいない瞳を他人事ながら心配しているのである。
「優子..外回り大丈夫?」
「あ!」
時計の針は十一時半を差している。
優子は鞄へ書類を詰め込み、「続きは飲みに行ったときね!」と、瞳の肩を叩いて部屋を飛び出した。
「行ってらっしゃい」
瞳は優子の残像へ、ゆっくりと手を振っていた。
── 退屈...
大の字になり、天井を眺めていた。誰もいない平日...半分開いた窓からそよいできた風が、無防備な腹をくすぐっていく。咲穂は右手を伸ばすと、ボリボリと股をかきはじめた。身も心もすっかり猫である。
首には真新しい真紅色の小さな翡翠がぶら下がっている。占師の涼子へ会ってから一週間が過ぎていた。涼子は咲穂が紐解くことができないでいた謎を、一つ一つ理解できるように説明してくれた。そして、咲穂自身も認めたくなかった、人間の姿に戻ることができないことを改めて知らされると死の宣告を受けたように、この夜から今日まで心を閉ざし、塞いでいたのであった。
咲穂は翡翠を爪にかけると弄んだ。
この球状の翡翠は、効力を失いただの石化した勾玉の代わりに涼子からもらったものである。あの勾玉と同様に、何かしらの効力をもつ翡翠らしいが、何故か、その効力について涼子はあえて語らないでいた。また、咲穂も問うことはなかった。「知ったところで元の身体に戻れるわけもない...」という諦めがあったからだ。だが、不思議なことにこの石を身に付けてから、ザラつきかけてきた心が、人間でいた頃の平穏さを取り戻しつつあった。それだけではなく、翡翠を身に付けてから、何かが変わり始めてきたことを咲穂は感じずにはいられないでいた。
咲穂は、むくりと起きあがりスタンドミラーの方へ歩いていった。そして鏡の前に立つと、顔を右に左に動かすとアクセサリの見栄えやつけ心地を確かめた。
── フム。悪くない...
ご満悦である。
── 散歩にでもでかけるか...
咲穂はベランダを伝い地面に降り立った。一週間ぶりに外の空気を胸いっぱいに吸い込み、思いきり前足と後足をのばして猫伸びをした。
── あぁ...気持ちいいな...
見上げれば澄みきった青空がどこまでも拡がっている。咲穂は、その空をしばらく眺めると力強くうなずいた。
── マナ...ありがとう。私を助けようとしてくれたんだね...この身体...しばらく貸してもらうよ...
咲穂は、そう心で呟くと、なつかしいマナの鳴き声が聴こえたような気がした。
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