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不純愛

No.450 13/03/05 23:46
ゆい ( vYuRnb )
あ+あ-

その日は、午前中の講義が教授の都合で休講になった。

何と無く友人の誘いを断って、私は中庭のベンチで一人本を読んでいた。

「あれ、先客だ。」

手元が暗くなり見上げると、そこには彼が頭を掻いて立っていた。

西島先輩…だ。

白衣のポケットに片手を入れて、気怠そうに私を見ている。

「ここ、先輩の陣地でしたね。
失礼しました。」

私は、本を閉じて教科書の入ったクリアケースを手に立ち上がる。

「あ、大丈夫だよ。
ごめんね、気を使わせて…」

初めて、彼の声をちゃんと聞いた。

とても優しくて穏やかな声に、私は彼をジッと見つめてしまった。

「ん?何?
僕…何か変かな?」

少しはにかんだ顔が可愛いらしいと思った。

「あ、もしかして僕臭う?」

クンクンと自分の腕を嗅ぐ仕草に、私は堪らずクスっと笑った。

「参ったな…この所まともに風呂にも入れてなくて…」

恥かしそうにクシャクシャと髪を掻くから、目元が隠れてしまう。

「ふふっ…先輩、髪の毛クシャクシャですよ?
それじゃぁ、お顔が見えません。」

そう笑いながら、目に掛かった髪をかき分けた。

彼の澄んだ瞳が、私を捉える。

「うわぁ!!
ちっ…近ッ!!」

「え?」

「ご、ごめん…君の平穏な一時をジャマして!ほんと、ごめんな!!」

顔を真っ赤に染めて、慌てて逃げる様に彼は去ってしまった。

あまりにも焦って行くものだから途中で鳩にぶつかり、挙句、その鳩にもぺこりと頭を下げて謝っていた。

遂に、私はお腹を抱えて笑いながら彼の背中を見送った。

何あの人…

「可愛いー!」

吉宗は、私が出会った人の中でも特に純粋で、汚れのない人だった。

あの瞳の様に、心までもが美しい人。

私が恋い焦がれるのも無理は無かった。

腕に抱えた本。

この遺伝子学の本の通り、人はパートナーを選ぶ基準として、自らにはない分子を相手に求めるとある。

私に足りない物…

それは、純粋さ。

吉宗は、私にとって化学的にも運命の人だと言う事。

だから、惹かれるのは仕方ない。

これはきっと、必然なのだと思った。





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