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匿名さん
20/09/04 10:15(更新日時)

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No.2993615 20/01/26 19:52(スレ作成日時)

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No.101 20/07/31 11:48
匿名さん0 

真美子は興奮気味に続けた。

「だいたい三奈さんとの旅行から帰ってきた時点で居なくなっている事に気が付くもんですけどねー!

あぁぁぁぁ、私だって同じ事されたら奥様の様にふらっと出掛けたくもなりますよ!」


三奈がこの家に来てからの事を思い返すと、しおりに対する健太郎の行動に段々と腹が立ってきて


「そういえば、奥様の旅行も長くなりましたねぇ。今何処にいらっしゃるんだろう....もう三奈さんも居ないし、帰ってくればいいのに。
そうよ!三奈さんが産んだ赤ちゃんは違う人の子だったって!早くお知らせしたーい!」
口を尖らせた。

重子は、こんな事なら旅行から帰って来た時に、無理にでも健太郎の耳に入れておけばよかったと後悔していた。

けど、本当に奥様は旅行なのだろうか?
旦那様に連絡もせず、こんなに長い旅行は考えられなかった。


「あのね、真美子さん。奥様が旅行に出る前、なにか変わった様子とかなかった?」


「んー....そうですねぇ....特に変わった様子とかは...」


再び宙を見つめ


「私も長く奥様にお仕えしてきましたからね....何かあれば気がつきますって」

「....そぅ...」


「あ!でも、三奈さんが来てからの変化なら分かりますよ」


No.102 20/07/31 12:00
匿名さん0 

「例えばどんな?」

重子はレタスをちぎる手を止めた。


「んーと、まずは毎日欠かさず飲んでいた珈琲をオレンジジュースに変わった。まあ、これは三奈さんの安産祈願とか言ってました。あとは...,太られたし....まあ、これも夏バテで食欲が落ちその反動かと....あー!そういえば、重子さん、これ重要です。多分ですけど、夏バテと三奈さんの出現のショックで生理が止まって通院されてましたが止まったままでした」


あ~ん、奥様リフレッシュできてるのかなー。

「電話1本寄越さないなんてねー」


しばしの沈黙


「ん?」
「....ん?」


二人は顔を見合せた。


もしかして?
えええええええ??

いやいや、まさか、ね。


二人は正面をじっと見つめ再び無言になった。



No.103 20/07/31 12:08
匿名さん0 

いやいや、違う違う。

だって撮影で海外に行ってたし、撮影から帰ってきた時には既に三奈がいて、そして旦那様は三奈と三奈のお腹の赤ちゃんにしか興味が無かったんだもの。


三奈に付きっきりで過ごしてて....


多分同じ事を考えたと思った重子と真美子は


「まさかねー」

二人向かい合い笑った。


だが、真美子は真美子でもしかしてと思い
重子は重子で、しおり奥様もまさか旦那様以外の人と?それで極秘出産の為の長期旅行を?と思っていた。


そして健太郎はしおりの行方を探している。


一体どうなっているのか?


二人は無言でサラダを作っていた。


No.104 20/08/06 23:59
匿名さん0 

しおりを探し始めて1ヶ月が過ぎた頃。
健太郎はまた海外で撮影のオファーが入っていた。

本当は日本に留まりしおりを探したかったが、妻が行方不明なんてマスコミが嗅ぎ付けると、三奈の事とかも含め色々と面倒だと思い、ヨーロッパ地方の特集番組出演を引き受けた。

スケジュール的にも3ヶ月は日本に戻れないだろう。

日本の探偵は優秀で出発前には見つかると思っていたが、それでも見つからなかった。



健太郎が日本を出国したその日の夜、しおりは男の子を出産した。


名前は健。

健太郎から一文字をもらった。


健、ごめんね。
ママはあなたからパパを奪ってしまった。

パパを知らずにあなたはこれから生きていかなきゃいけない。



本当にごめんなさい。

これはパパからの贈り物。




その証として。











No.105 20/08/07 00:08
匿名さん0 

それから三年の月日が流れた。

健は3才になった頃、それは突然やってきた。




「しおり」



しおりと健は保育園から帰宅途中の公園で遊んでいた。



「ママー」


しおり?背後から私を呼ぶ懐かしい声。

嫌いじゃない....

ベンチに座っている私めがけて健が走ってくる。


「しおり」


背後からまた声がした。

今度は背筋が凍った。


「ママーママー」


健!来ちゃだめ!
来ないで!
だめ!健



「しおり」

背後から聞こえた声の主は私の左隣に立っていた。




No.106 20/08/07 12:34
匿名さん0 

「ママー!」

健は駆け足でこっちに向かっている。

健を止めなきゃ...
顔を見られてしまう....

健の手を取って逃げなくては....

頭ではそう考えながらも体は動かない....

あ!...

すでに健はしおりの腕の中に飛び込んでいた。


「ママー」
しおりの体に顔を埋め腰回りを抱きしめた。


「ママ、このおじさん、だれ?」

健は顔を上げた。


しおりの左隣にいた健太郎は一歩前に出て、目線を健の身長に合わせた。


「こんにちは」

「....こんにちは」
知らない見たこともないおじさん。

強ばった表情のしおりの顔を再び見て

「ねぇだれなの?」
小さい声でまた聞いた。

さぁ、ママも知らないわ...,

そう答えたいのに声にならない。
自分の体なのに自由が効かない。

まるで催眠術にでもかかった気分だった。


「お名前は?なんていうの?」

「たける」

「そうか、たける君かぁ」

懐かしい健太郎の声。
仕事柄声帯は鍛えられている。

この声を毎日聞いていた日を思い出した。


しおりの視界にはぼんやりと健太郎が写り込んでいた。





No.107 20/08/09 00:50
匿名さん0 

「たける君かぁ、かっこいい名前だね。何歳になったのかな?おじさんに教えてくれる?」


健はしおりを抱えたまま、じっと知らないおじさんの顔を見つめ

駄目よ、健。
ねぇ、ママと知らない人に声をかけられても話をしないと約束したじゃない!

声にならない自分が歯がゆい。

そんなしおりの気持ちを知ってか知らずか、健は

「....さん...」

指三本を差し出した時

「たけるくーん!」

さっきまで一緒に遊んでいた美佳ちゃんが、ブランコから降りて健を呼んだ。

「あーそーぼー」

その美佳ちゃんの声に助けられたしおりは突然の出来事の呪縛から解き放たれ


「ほ・ほら、健。美佳ちゃんが呼んでるよ!さぁ、はら、行っといで」

腰に回っていた健の腕をほどいた。

それにつられて健もこの場から去って行ってくれた。


ほっとしたのもつかの間


「....僕の子?」

「違うわ」

「そうかなぁ?僕にそっくりだ」

健太郎の声は嬉しい時のトーンだった。


「違います!違うに決まってるでしょ!」

健太郎が立ち上がった。

健を追いかける?
連れ去る?


嫌だ!

誰にも渡さない!







No.108 20/08/10 16:33
匿名さん0 


健太郎の体が健を追いかけそうになった時、17時を告げるメロディーが流れた。

田舎ではよくある町全体のスピーカーから流れるメロディー。

しおりはベンチから立ち上がり

「健~、帰る時間だよー」

さっきとは考えられないくらい機敏に動いた体。

ブランコに乗ってる健の腕をつかみ
美佳ちゃんママと他数人、グループになってみんなで公園の出口に向かった。


ママさん達は、健太郎の事は思いの他、気になっていないようだった。

みんなと少し離れて座っていたのがよかったのかもしれない。

(あ~、今から夕飯作らなきゃ。みんな何にするのー?.....)


(うちはねー....)

みんな話に夢中だ。


この輪の中にいても後方の健太郎が気になって仕方がなかった。


家まで追いかけられる?
家がばれたらどうしよう?

硬く握ったしおりの手に反応したのか、健は後ろを振り向き健太郎にバイバイと、手を振った。


「あのね、美佳ちゃんママ。お願いがあるんだけど」

「なになに?どーした?」

「優子さんちまで車で乗せてって欲しいんだけど」

「あー、いいよ。帰り道の途中だしお安い御用!さー、乗って乗って」


「ありがとう。助かります」


健太郎につけられないよう優子さんの家で時間稼ぎをしようと考えた。


この3年間、健が産まれてからも今も何かとお世話になっている。

この町で唯一信頼できるのは優子さんと旦那さんだけ。

おおまかな事情は話してあるが、相手があの澤乃井健太郎だとは言ってない。

その健太郎がここを調べてやって来たのだ。

この3年間で

やっとこの地で落ち着いてきた矢先の出来事。


優子さんに相談したかった。








No.109 20/08/12 15:12
匿名さん0 

「優子さんごめんなさい、ちょっといいですか?」

「はーい!....あれあれ、どうしたの?」

「ゆうこせんせー、こんにちはー」
健はしおりの手をほどき、我が物顔で中に入って行った。


「はーい!いらっしゃい....あら?顔色悪いわね。中入って」


健はすでに椅子に座り、保育園で借りてきた絵本を読み始めてた。


たどたどしい健の音読。
絵本を見つめるその横顔に思わず涙が溢れた。

守りたい!この子を、今を、健太郎から守りたい!

そう思えぱ思う程、恐怖心が襲ってきた。


「どした?まずは座ろうよ」
優子にお茶と健太郎にジュースを出した。


長い間忘れていた健太郎の突然の出現にかなり動揺している事に気が付く。

息が荒くなり、優子さんに何からはなせばいいのだろうと考えるも

「あの、....あの」


「しらないおじさんとママがお話してたの」

いつの間にかジュースを飲みはじめた健が言った。


健にとってよほど印象深い出来事だったのか、それとも、普段と違うしおりを感じ取って優子に話たのかは分からない。


「ふ~ん、んじゃ健君、その知らないおじさんはママを叩いてた?」

「たたいてないよ。でも、ママの顔は怖い顔をしていたよ」

「そっかぁ、教えてくれてありがとう。先生とても助かったぞ!偉い偉い!」

優子は健の頭を撫で、それで満足したのか健はジュースを飲み終え、テレビの前へと移動した。






No.110 20/08/12 15:40
匿名さん0 

「もしかして、健君のお父さん?」

声に出してしまうと泣いてしまいそうで、うんうんと頷いた。


渇ききった口の中をスッキリさせたくてお茶を一口飲んだ。


「え?でも健君の事知らないんだよね?もしかしてしおりさんに会いに?」


お茶を一口飲んで少しは落ち着きを取り戻した。

首を左右に振り
「違うと思うわ。私に今更用事なんて...だってあの人には....」

「別の女性とその間に出来た子供がいるんだっけ?」


「そうなの。だから、私は....」

「ここで独り産んだんたよね。妊娠も告げずに、ね」


頭がモヤモヤしはじめた。
何故今更?
ここから逃げなくちゃ。
でも今度は何処に?

私1人ならなんとでも出来るけど今は健がいる。


「でも何故今更来たのかしらね?何か思い当たる事はないの?」

首を横に振った。


「あの.....」

「ん?なに?」

「まだ言ってない事が....」

「言ってみて」

「健の父親は...澤乃井健太郎なの」

「澤乃井健太郎?....どっかで聞いた名前だなー」


「優子さん、ごめんなさい。健に聞こえちゃう」

「あー、ごめんごめん....ん?待って!....もしかしてあの?」

しおりは頷いた。

「まじかー!有名人かー、だから。成る程ねーしおりさんから聞いてた話も理解出来たわ」


腕を組み椅子に仰け反った。

「でもさ、しおりさんが本妻さんでしょ?なんで逃げたのよ?そんな奴ら追い出せば良かったじゃない」


優子は続けた。

「もう少し詳しく話してくれない?私も何が何やらでさ。分からないと相談にものれないしアドバイス出来ないよ」


しおりは今までの経緯を話した。




No.111 20/08/13 16:38
匿名さん0 


しおりは今までの経緯を、思い出せる限り話は出来たと思った。


「しかし聞けば聞くほど酷い男だねぇ!....私には理解出来ないよ」

「そう思うのが普通ですよね」
しおりは目線を落とした。

「芸能人だからって、好き勝手してもいいのか?その女の子だって被害者みたいなもんじゃない。その、澤乃井健太郎だっけ?その人の子供さえ産んでくれる人なら誰でもいい、みたいな!あー感じ悪いっ!」

反論は出来なかった。

優子さんはボソボソと
(あとで映画をレンタルして女の顔を拝んでやる!)
と、息巻いていた。


実際健が出来てみると、健太郎の子供を欲しがった気持ちも分からなくはなかった。

まぁ、健太郎の場合は自分の子は道具、子供の話を共演者としてみたい的な、あくまで自己都合。

そして三奈は結婚は望んではいないと言っていたっけ。


優子さんに説明した後、振り返ってまた考えてみると、悔しさより、情けないと思えた。

そうよね、私には追い出す事も出来たかも。
逃げる必要もなかったのかも。

三奈と旅行に出掛けた健太郎を家で待っていれば良かったのかしらね。

実際、健から父親を奪ってしまった。

健に心から謝る日
父親の日

保育園では健は園長先生の似顔絵を書いている。


健も三歳になったことだし、そのうちどうして僕にはお父さんがいないの?と、聞いてくるかしらね。

健太郎と三奈と二人の子供から逃げた情けない私。

テレビを観ている健の小さな背中を眺めた。



No.112 20/08/13 17:02
匿名さん0 

ふと時計を見た。
8時を過ぎていた。

「優子さんごめんなさい。遅くなっちゃったね」

「あら、本当だ。健君お腹空いたでしょ?先生の家でごはん食べていく?」

健はわーい\(^-^)/と飛んでいたが

「いえ、帰ります。明日も保育園だし」

ちぇッと呟き健はまたテレビを観始めた。


「そっかー、あー、じゃ旦那に送らせるから。ね、そうして!また元旦那が現れると嫌じゃない?」

「助かります。お願いします」

優子さんの旦那さんに送ってもらった。


健を寝かしつけている時


「健?ママとお約束して!」

「なぁに?」

「知らない人とお話しない!」

コクンと頷く健。

「知らない人が一緒に行こうって言ってきても、ついて行かない!ね?約束できる?ママと」


「うん。わかった。ママとやくそくす
る」


「ゆびりげんまん」

ゆびりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった!

「約束ね。ママは健の事が大好き」

「ママだーいすき」



健は健太郎の話をしてこなかった。

このひとだれ?

その返事をまだしていない。


優子さんに話したから僕はもう関係ないとか思っているのかな?

再び聞かれたらなんて答えようかと考えてたけど、その必要も無さそうだった。



色んな意味で疲れた今日


直ぐ眠りに落ちた。




No.113 20/08/15 00:06
匿名さん0 

翌日、健を迎えに保育園へ行った。

お遊戯室でみんながお迎えを待っている中、健と美佳ちゃんが何やら話込んでいた。

「健~、お待たせ~帰るよ!」

「あ!ママーきたー!」

健は満面の笑みで駆けてきた。


「ママ、あのね、きょうもみかちゃんとこうえんにいくのー」

「え?今日も?」

「ねえ、いいでしょ~?」

本当は健太郎がまた公園に居そうで避けたかった。

「健、今日はママと一緒にお買い物に行こう。お菓子買ってもいいよ!」

健の隣で美佳ちゃんがじっと健を見つめてた。

健がなんて返事をするのか気になっている様だ。

美佳ちゃんの視線を感じてか健は

「んでもね、みかちゃんがいっしょにあそぼって」

「健、お願いだから今日はママとお買い物に行こう!ね!お願い」


このやり取りを見てた美佳ちゃんママが気をきかしてくれて

「美佳、公園へは別のお友達にしたら?ほら、もう誰か公園に居るかもしれないよ?健君とは明日園で遊べばいいじゃん?」

美佳ちゃんママがしおりにウインクした。


「健君、また明日美佳と遊んでね。ほら、美佳、健君にバイバイは?」

「....ばいばーい」

「じゃあね、しおりさん。また明日」

半ば引きずられ気味に美佳ちゃんが先に帰っても


「あーん、こうえんいきたいーー」

健は駄々をこねていた。


玄関で靴を履いていた時、優子さんから着信が入った。


「もしもし?優子さん、昨日は遅くまでありがとう。何かありました?」

「ちょっと!今から家においでよ。見せたい物があるの。時間ない?」


「見せたい物?なんだろう?今保育園なので、今から向かいます」

「待ってるから!」

こんなに興奮した優子さんの声は珍しい。きっと何かあったんだわ。

もしかして健太郎が優子さんの家まで?

段々と私の大切なものが健太郎に犯されていく気がした。


「健、優子さんちに行くよ」

公園じゃないことで健はまた頬を膨らませた。






No.114 20/08/15 00:39
匿名さん0 

突っ込みどころ満載のフィクションですが、おもしろいですか?

大丈夫ですか?

なんか突然気になりまして。

No.115 20/08/19 11:28
匿名さん0 

2名様 共感をありがとうございました。
共感をどう解釈すればよいのか分からなかったのですが、とりあえず続けてみます。
ありがとうございました。




「こんにちは。優子さん?しおりです」

「来た来た!中に入って」

「ほら!健....ごあいさつは?」

「....こんにちは」

「あら?元気ないね。具合悪かった?」

「いえ、公園へ行きたいのを私が....あの...また居そうな気がして、それで」

「あ~、成る程。いや、それより早く座って!健君、ショートケーキあるよ。健君の大好きな苺だよー食べる?」

うつむいていた健はぱぁぁぁっと満面の笑み返し


「うん!たべるたべる」


自らテーブルにいつもの定位置に座った。


「しおりさんコーヒーでいいわね」

キッチンにいる優子に向かって

「何かあったんですか?もしかして優子さんの家まで...?」

「違う違う」

コーヒーと一緒にテーブルに置いた物。



「これよ、これ」

え?・・・これって!?


コーヒーの隣には一冊の週刊紙。

表紙には大きく澤乃井健太郎不倫!?と書かれていた。






No.116 20/08/19 11:58
匿名さん0 

健を見た。

健の目に入れたくなかった。
まだひらがなしか読めないけど、それでも澤乃井健太郎の文字を無意識にでも健の頭に残したくなかった。

健は夢中で苺を食べていた。


「今日さ、例のほら、あの映画のビデオをレンタルしに行ってきたのよ。それでね、その間、旦那は本を立ち読みしてたんだけど、その時に見つけたらしくて」


確か、健太郎と三奈の事務所がバレない様、あちこちに手を回していたはず。
それが今頃に?

しおりは週刊紙を手に取った。

澤乃井健太郎不倫!?
その横に櫻井三奈インタビューと書かれてた。

「どうする?しおりさん」

「どうするって....」

「読んでみる?」

「私がですか?」

「そう!しおりさんの話と違う事とか書いてあるかもよ?」

「......」

家にテレビは置いていない。
健太郎は俳優だし、ふいにつけた番組に出演でもしてたりするのかと思うと購入には至らなかった。
ましてや、週刊紙なんて....。



別居3年程で離婚は成立するんじゃ?

健太郎は私との離婚を発表して三奈さんと結婚してないの?

私の籍を抜いてないの?

突然の健太郎の訪問に三奈のインタビュー。

今までのように、これからもそっとしておいて欲しかったのに。



「優子さん、これ、預かってもいいかしら?」


No.117 20/08/24 22:50
匿名さん0 

健を寝かしつけた後、そっとテーブルに移動した。

バッグから優子さんから借りた週刊紙を取り出した。
読む事にまだためらいはあった。

澤乃井健太郎の文字を見ただけで胸元がざわつく。

もう私には関わりを持たない人達だと思っていたが、健太郎は突然私達の前に現れた。

何故今更私を探し始めたのだろうか。理由がここに書かれているのか。


もう一度健の寝顔を見てコーヒーを入れた。



数本の映画出演をし、引退発表もなく、忽然と消えた櫻井三奈をこの週刊紙の記者が追っていたようだった。

健太郎との共演作品での三奈の評価は高かった。

期待の新人扱いだった。



ある日、実家近くでベビーカーを押している櫻井三奈に記者は声をかけた。



No.118 20/08/26 22:33
匿名さん0 

「こんにちは」

「...?」

ペコリと頭を下げるも知らない人だ。

「櫻井三奈さんですよね?」

「?!い・いいえ!違います」

「澤乃井健太郎さんと一緒に海外で撮影されてましたよね?」

「ひ・人違いです」

誰?誰?この人、私を知っている。
映画を見たファンかしら?

それでも今はいい気がしない。
なにより子供がいる。

ベビーカーを握る手が汗ばむ。

「出産されたんですか?」

しつこい!
なんなのよ、一体!

「いい加減にして下さい」

足早に立ち去りたかったがベビーカーが憚る。

「もしかして舞台挨拶も試写会の挨拶にも出席されなかったのは妊娠してたからですか?」


「.....」

「その子の父親は?まさか....あの澤乃井健太郎ですか!?それで表舞台に出てこれなかったんですか?」

もしかしてこの人は記者なの?
なんで今頃?

もう私の事なんて忘れさられていたと思ってたのに。

記者だとしたら....

何て言おうか...
けど、あの時は事務所が体調不良って発表したはず。


けど、何も言わないと適当に書かれてしまう?


健太郎さんに連絡しようかしら?
いえ、駄目ね。彼の子供を産んだ訳じゃないもの。

どうしよう...
誰に相談すれば?



「これ...」


三奈の目の前に一枚の写真。

三奈の足が止まった。








No.119 20/08/30 10:05
匿名さん0 


健太郎とふっくらとしたお腹の私。

腕を組み温泉街を歩いている写真だった。


「?!...これって...」

あぁ、これ△△温泉の時だわ。
撮られているなんて知らなかった。


それにしても私の顔。
幸せの絶頂期ね。

あの時はこんな顔してたんだ。


「私、◯△雑誌の加納と申します。ずっと追いかけてたんですよね。舞台挨拶にも雑誌のインタビューにもどこにも出てこない。あなたの評価は高かったのに、その後もさっぱり」


「....」

黙ってうつむいたまま動く事が出来ない三奈。

「事務所側は体調不良と発表してましたね。けど、それにしても変というか....なんかおかしいなーって思いましてね」


「......」

「撮影から帰国した時も、私空港まで行ってるんです。その時のお二人...,なんて言うか....ピーンと来たって言うか」


子供がぐずり始めた。


記者がベビーカーを覗いた。


「やめて!警察を呼びますよ!」

「おっと、これは申し訳ない。たが、また来ます。この写真の説明が未だですのでね。では、これで」






No.120 20/09/04 10:15
匿名さん0 

怖い...
初めてそう思った。

芸能界から遠ざかっていたし、私の事なんて忘れさられていたと思っていたのに。

吐き気すら感じた。


「では、失礼します」
加納はそう言って頭を下げた。


またやって来るに違いない。


もしかしたら実家も調査済みなの?
実家にも迷惑がかかるの?

怖い....怖い....

帰らなきゃ...でも何処へ?

ベビーカーを押し始めるも足が思う様に動かない。

今度は子供の顔を確認するのかな?

そしたら誰の子?と、好き勝手に書かれてしまう?

ぼんやりと考え足が止まった時、加納が戻って来た。


「もしよろしければこれだけ払いますよ。お考え下さい。では」


三奈の左手には殴り書きのメモ。
映画の出演料より遥かに高い金額が記されていた。


後ろを振り返り加納が居ない事を確認し、再び歩き始めた。

ベビーカーを押す左手に挟まれているメモ紙。

話すだけでこんなに貰えるの?


記された金額を見て気持ちが動いた。

芸能界で稼いだお金なんてとっくの昔に使い果たした。


話すだけでこんなに....


この子の為に少し欲しいな。

そして、これをきっかけにまた芸能界に復帰出来るかな。

また、あのきらびやかな世界に入ってちやほやされたいな。


三奈の表情が変わっていった。








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