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20/02/25 23:37(更新日時)

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No.2993615 20/01/26 19:52(スレ作成日時)

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No.1 20/01/26 19:56
匿名さん0 

夫と結婚して7年目。

まだ、子供はいない。



夫は子供を欲しがった。
家族を欲しがった。


家庭は持った。

あとは、血の繋がった家族だけだった。


No.2 20/01/26 20:03
匿名さん0 

夫の仕事は俳優だ。

撮影で家を長期空ける。

仕事だから仕方ない。

その夫が今日帰ってくると連絡がきた。


夫を乗せた車の到着をまだかまだかと2階から眺めていた。


No.3 20/01/26 20:15
匿名さん0 

[....あっ!...来た...]


慌てて階段を駆け降りた。



[おかえりー!けんた....ろう]


あれ?女の人もいる。
なんだか、具合が悪そうね。

健太郎が優しく、いえ、大事そうに
女性を抱き抱えていた。


誰?

[ねえ、健太郎。その女の人大丈夫?
具合悪いの?]


健太郎は私の問いかけに
いや、、、私の存在すら眼中に無い感じだった。



二人はそのまま2階のゲストルームに向かって行った。


二人の後ろ姿を私は全身で見送り

いつの間にか私の周りは二人の荷物に囲まれていた。


No.4 20/01/26 20:22
匿名さん0 

健太郎!

まだ、ただいまのキスもしていないよ!

お帰りのハグもしていない!


お土産は?無いの?


半年間に及ぶ海外での撮影の話を聞きたいよ!


顔をもっと見せて!
あなたの匂いを嗅がせてよ!



ねえ、その人 誰?







No.5 20/01/26 20:34
匿名さん0 

コンコン....



コンコン....


[...ねえ、けん...た..]


ゲストルームのドアが少しだけ開いた。


[しおり、ごめん。後で説明するよ。
彼女ちょっと具合が悪くてさ。本当にごめん]

小声で話す彼。


[あ!ねえ、ちょっ.,..]


言いたい事だけ言った彼は私の声を遮るように直ぐに扉を閉める。

中の女の人に聞かせたくなかったのか?



だか、再びノックは出来ない。

彼は鍵をかけた。



No.6 20/01/26 20:42
匿名さん0 


ふうん、、、そっか。

なら、しょうがない。


そうね。彼も疲れているだろうし

明日の朝食時にでも、女の人を紹介して貰おっと!


今日は諦めたわ。

そうだ!彼にがっかりされない為に肌のお手入れをしなきゃ🎵

[ねー真美子さん手伝って~]


あわただしく荷物を運んでいる
お手伝いの真美子さんを呼んだ。


No.7 20/01/26 21:07
匿名さん0 

[奥様。おはようございます。今日も良い天気ですよー!

御加減は如何ですか?]


真美子さんはいつものようにカーテンを開ける。


[ん~...おはよう....なんだか興奮してて...寝たのか寝てないのか、よく分からないわ....

レースのカーテン越しの日射しが眩ししく感じた。



あ!そうだ!....]


健太郎が帰って来たんだった!



綺麗にしなくちゃ!久しぶりの一緒の朝食だもん!寝ぼけた顔なんか見せれないわ!]



最近お気に入りのアップ髪にし、最近買った白いTシャツを選んだ。



コーヒーの香りが階段を伝って感じる。

薄化粧をし、ダイニングルームへ向かった。



12人が座れる大きなテーブルには


昨日までと同じ
私1人ぶんの食事が用意されていた。


あら?

彼の朝食は?

そしてもう1人
女の人の朝食は?



No.8 20/01/26 22:02
匿名さん0 


ダイニングルームには重子さんがいた。


重子さんは私が嫁ぐ前からいる。
独身の健太郎の世話をしていた人だ。




[ねえ、重子さん。健太郎さんとそのお客様の食事は用意しないの?急に起きて来られても食器のセットが用意出来ないんじゃないかしら?]

いつものように重子さんは私の方もみず、テーブルに語りかけるように


[ご心配は無用です、奥様。
旦那様とお客様はお部屋でお召し上がりでございます]


[部屋で?そんなに具合が悪いの?
それなら家じゃなくて病院へ行けばいいんじゃない?]


[ですが、奥様。旦那様のいいつけ通りに従っておりますので]

そう言って一礼をし、奥へ引っ込んだ。

[あっ!....]



重子さんに聞きたい事沢山あるのに。

あの女性は誰なの?
何故具合が悪いの?
何故健太郎が側にいなくちゃいけないの?


コーヒーを一口飲み、12人掛けの大きなテーブルを見渡した。


このテーブルは健太郎と二人で選んだものだ。

俳優仲間達といつでも食事が出来る様に12人掛けを選んだのだ。


打ち上げの時、結束を深めたい時、監督や俳優人達と演技でぶつかりあって打ち解けたい時など、色んなシーンで活用してきた。

普段は画面でしか見ることが出来なかった有名人があの席に座っていたっけ.....



がっかりした気持ちがぼんやりとさせた。


半年間同じシーン。

大きなテーブルに私独り。











No.9 20/01/26 22:25
匿名さん0 


健太郎が帰って来た。

半年間待ち望んでいたこの日を
自分が思い描いていたのと違う
事についていけず、早くこの場から立ち去りたかった。


ダイニングルームの横には芝生が広がっている。
既に徳さんが手入れをしていた。


[徳さん。おはようございます]


[奥様、おはようございます。良い天気ですね~]



健太郎が留守の間は徳さんと重子さんが家を守ってきた。


私が嫁いだ時、大好きな薔薇を沢山育てたくて、芝生の奥を分けてもらい、小さな薔薇コーナーを作った。

病気になりやすい薔薇。
徳さんにアドバイスしてもらったっけ。


[そうだわ!徳さん。ちょっと手伝って]


あの女の人に薔薇を届けてあげましょう。

少しでも具合が良くなればいいわね。


トゲを綺麗に落とし、白とピンクの花束を作った。





No.10 20/01/26 22:43
匿名さん0 


コンコン....

何て言おう...

薔薇は口実。

本当は健太郎の顔が見たい。


コンコン...

もう一度ノックした。




ドアが開いた。



[.....何?...何か用?]


健太郎だった。
でも、その表情は健太郎ではなかった。


また不意を食らった。


[あ!....あの、....こ、これ、...
お見舞いなの。]


[...ふうん、ありがと。渡しておくよ]



ニッコリ笑った健太郎を見てちょっといつもの自分に戻った私は



[あ、あの、...具合はどう?
病院へ行かなくても....]


私がまだ話をしている途中なのに、奥からの呼び声に反応した健太郎は
そのままドアを閉めた。






No.11 20/01/26 23:13
匿名さん0 


その数時間後

2階の窓から重子さんが見えた。

重子さんは焼却炉の前にいた。

いつもなら気にも止めないシチュエーション

だけど、今日は違った。


重子さんの手には白とピンクの花束


ゴミと一緒に放り投げていた。


びっくりした。
そして、悲しくなった。

なぜそんなひどい事を?

聞かずにはいられない。


何もかも....


No.12 20/01/27 16:52
匿名さん0 


急いで階段を降りた。

外にある焼却炉に向かったが、重子さんはもう居なかった。


重子さん?どこ?


[重子さーん!重子さーん!]



キッチンの奥から重子さんが出てきた。

[ご用はなんでしょうか?]

[あの、、、さっき焼却炉の前に居たでしょ?]

[はい。それが何か?]

[見間違いなら申し訳ないんだけど、もしかして薔薇も捨ててたかしら?]


[......あぁ....はい。旦那様の言い付けで,...それが何か?]


[え?健太郎さんの言い付け?
なんで?]

[なんでもお連れ様がどうしても匂いが受け付けないとかで....]

[匂い?でもあの薔薇はそんなにキツい匂いはしないはずよ?]



一礼をし、重子さんはキッチンへ向かった。


匂い?


そういえば真美子さんは健太郎と違うメニューの食事をゲストルームまで運んでいるわ。


そうよ。昨日は粥だった。


わずか20畳程の狭い部屋で毎日何をしているのかしら。

寝たきり?

健太郎さんのせいで彼女の具合が悪いの?


一体何があったというの?









No.13 20/01/27 17:08
匿名さん0 


真美子さんに中の様子を聞いても
お休みになっておられます。

それしか言わない。

真美子さんも何も分からない感じだった。

重子さんも余計な事は何も言ってはくれない。




健太郎と私の部屋の隣がゲストルームだ。


寝室に居ても、隣のゲストルームの中の二人の様子をあれこれと考えてしまう。


ベランダから隣の様子を伺っても何も見えないし聞こえない。


自分だけ除け者の感じがしてきた。


私だけ。

私は健太郎の何なの?
結婚したからには夫婦でしょ?

何故健太郎はその女性と毎日一緒にいるの?



何もわからないまま半月が過ぎた頃、やっと医師が来た。



[もう大丈夫ですよ。安定期に入りました。おめでとうございます。澤乃井様]



季節は初夏。


窓が開いていたせいか、健太郎の喜びの声が隣から聞こえてきた。







No.14 20/01/27 17:23
匿名さん0 


何故健太郎が彼女の妊娠を喜んでいるの?


それなら、健太郎じゃなくて彼女のご主人が喜ぶべきじゃない。


私に説明もなくその女性に付きっきりだった健太郎。


最近は彼女の具合が良くなったからなのか朝から窓が開いているようだ。


二人の会話が良く聞こえてくる。


楽しそうだ。


そのうちに、耳を疑う様な会話がしてきた。








No.15 20/01/28 18:22
匿名さん0 

ありがとう!ありがとう!

これでやっと僕は父親になれる!

よく頑張ったな!三奈

あぁ、本当に嬉しいよ!


やったー!



え?父親?
誰が?

誰の子の父になるの?



ベランダ越しの窓がカタカタと揺れるくらい私の手は震えていた。


隣に向かおうとドアを開けたら健太郎と医師と重子さんが出てきた。


医師だけが私の方を見て頭を下げてくれた。


高笑いの健太郎の後ろ姿。

手を伸ばし腕を捕まえたい衝動にかられる。


それを見透かした重子さんが、遮る様に間に入ったように感じた。




No.16 20/01/28 22:25
匿名さん0 

いやだ!いやだ!

私以外の知らない人が健太郎の子供を産むなんて....

絶対に嫌!


いつからその人と関係を?

もしかして、今度の撮影で一緒だったの?


聞きたい....

沢山聞きたい事がある....



その人を愛しているの?

その人との子供を望んでいたの?



健太郎は医師の見送りで下にいる。


ゲストルームに入ろうか...

健太郎が教えてくれない事を彼女から聞こうか....



ドアノブに手をかけた。


けど、深呼吸をして止めた。




健太郎と私は、家庭は持てたけど血の繋がった家族はまだいない。


長い間待ち望んでいた妊娠。



嵐の様に現れた彼女の顔を正気で見れる自信が無かった。






No.17 20/01/28 22:55
匿名さん0 

その晩、久しぶりにワインを呑んだ。


ボトル一本空いている。
1人で一本空けた事はない。


けど、酔った感覚もない。

もっともっと呑んで酔いつぶれなくちゃ。

何も考えたくない。

アルコールで火照った体を冷やしにフラフラとベランダに出た。


ふと、横を見ると健太郎がいた。

こっちを見ていた。




「お?しおりじゃないかー。なんだ?珍しいなー!呑んでいるのか?」


陽気な健太郎。

1人で祝杯なの?


嬉しいんだね。
帰ってきてから初めて見る笑顔だね。


その笑顔を作った人って私じゃないんだね。

言いたい事聞きたい事沢山あるんだよ?健太郎


健太郎の笑顔を見て涙が溢れてきた。


「健太郎.....」



悔しくて悔しくて悲しくて情けなくて

私は部屋の中に戻った。



No.18 20/01/28 23:37
匿名さん0 


健太郎が私の後を追って部屋に入ってきた。


「どうした?しおり.....大丈夫かい?」


元々は夫婦の部屋。

健太郎が入って来ても違和感はない。


「慣れないワインで酔ったのかい?」



ベッドで横になっている私の背後に健太郎も横たえる。


彼の息、手が私の髪を優しく撫でてくる。


だんだんと心臓は激しさを増す。


違う....アルコールのせいよ....


うぅん......違う



ずっとこうして欲しかった。

抱きしめて欲しかった。


帰ってきたあの日から.....


私はくるりと健太郎の方に向きを変えた。






No.19 20/01/29 19:35
匿名さん0 

「...ねぇ、健太郎...」


「ん?なんだい?言ってごらん」


健太郎の顔は穏やかな表情をしている。

いつもの優しい健太郎だ。


「健太郎の子供が産まれるの?」


健太郎の目が大きく見開き、髪を撫でていた手が私の頬を包んだ。


「そうなんだよ!しおり。僕は父親になるんだよ。あぁ、この日をどんなに待ち望んだ事か!しおりも知っているだろう?」


口角が上がっている。


「......私との子供じゃなくてもいいの?健太郎の子供なら....健太郎の子供を産んでくれる人なら....誰でもいいんだ...」


「.......うん....まあ、僕達も頑張ったけど、ね。さすがに7年にもなると.,..無理なのかなって、さ」


「夫婦二人で生きていっても良かったじゃない。そんなに子供にこだわらなくても...」

「いや、さ。周りのみんな、子供の話をする人達が多いんだよね。そしたらさ、僕は中に入れないんだよ。分かる?この僕が除け者になるんだよ?

しかも、まだですかー?とか、周りが煩いし。......それに...」



「それに?」


「それに、どっちかが....」


「どっちかが?」


「悪いんだろうって...」


「そんな...そんな酷い事を」

「ま!でも、子供は出来たんだ!
やっと安定期に入ったし、予定日は10月だよ。
しおり、彼女とは結婚はしないよ。だってしおりが居るからね。だけど、子供の母親は三奈だから三奈とも一緒に暮らすよ。頼んだよ!しおり」


そんな事、平気で私に話すんだね。

聞かされた私がどんな気持ちになるのかも考えずに

涙が溢れて止まらなかった。

私だって欲しかった。
けど、出来なかった。

病院にも行った。

でも、出来なかった。


健太郎が涙を拭いてくれる。

そして、キスをしてくれた。




No.20 20/01/30 22:39
匿名さん0 


「おはようございます。奥様」


真美子さんがいつもの様にカーテンを開けた。


はっ!!....夢?


う"ぅ"...眩しいー!


「あら?珍しいですねーお酒呑まれたんですか?」


部屋が明るくなった事でテーブルの上のワインの空き瓶に気がついたようだ。


「.......」

頭が痛い....二日酔いかなぁ。


「あれ?奥様!もしかして二日酔いですかー?(笑)」


横目でテーブルの方を見たら、一瓶が空になっていた。

え?もしかして1人で一本空けたの?
覚えてないわ....

しかも、健太郎がこの部屋来た夢までみるなんて....あたし...どうかしてるわ。

ズキズキする頭に手をやる。


「あらやだ!奥様ったら(笑)体が熱くなって.....服まで脱いでますよ(笑)」


真美子さんが私の胸元を見てクスクスと笑っている。


え?!

布団を捲って覗き込んだ。


夢じゃない。


彼は昨日ここにきて、私は彼に抱かれたんだ。


酔いは醒めているはずなのに、身体中が熱くなる。

恥ずかしくなって布団の中に散乱している衣服を探した。









No.21 20/01/31 21:29
匿名さん0 


ごめんなさいm(__)m

季節は初夏なのに予定日が10月なんておかしいですね。

12月の終わり頃に予定日とします。

すみませんでした。


読み返してみると支離滅裂な文章でお恥ずかしい限りですが、とりあえず完成まで投稿します。






No.22 20/01/31 21:59
匿名さん0 

布団から微かだけど彼の匂いがしてくる。

真美子さんに気付かれやしないかドキドキしたけど、もう少し彼を感じていたい。

中に潜り込み深呼吸。


「奥様?大丈夫ですか?
二日酔いで吐きそうなんですかー?」


心配そうにベッドに近寄ってきた。


んもう....今いいところなのに...


「吐かないけど、もう少し寝たいわ」

布団の中から返事をした。


もうちょっと健太郎を感じていたい。


「わかりました。重子さんにそう伝えておきます。後でお薬とお水を持ってきますねー」



そう言って真美子さんは部屋を出て行った。



1人になってふと昨夜の事を思い返した。


さっきまでの幸せな時間から一気に奈落の底に落ちた気分になった。

あの人、三奈さんだっけ?


ここで一緒に暮らすんだ。


私、普通にいられるのかな?

どうしよう....


ズキズキする頭と不安と彼の匂いで混乱の中、また眠りに落ちた。








No.23 20/02/03 22:35
匿名さん0 


お昼近くに目が醒めた。

テーブルには薬と水が置かれていたが
もう頭痛も収まっていた。


真美子さん来たんだ....と、同時にぎゅるぎゅるとお腹が鳴った。


重子さんにお願いしてブランチとでも
いきますか!


Tシャツと短パンに着替え、健太郎と三奈さんがいる部屋の前を通った。

気になって気になって仕方がなかった部屋だったが、昨晩の余韻とお腹の空き具合も手伝って、今はそんなに気にもならないでいた。


「重子さーん。朝はごめんなさい。軽い食事をお願いできる?」

わざと大きめの声で話す。


私は平気よ。

だって正妻だもの。


法が私を守ってくれるわ。



けど、大きなテーブルに私1人分の食事。


これを見ると食欲も失せ気分も落ち込んだ。






No.24 20/02/06 22:30
匿名さん0 

あれからも変わらす健太郎は部屋から出てこないでいる。


朝食もランチもディナーも部屋まで重子さんに運ばせ、あの女の人と一緒に食べている。

安定期に入ったんじゃないの?



時折隣の部屋から二人の笑い声が聞こえるとイライラしてくる。



「病人じゃあるまいし、下で一緒に食事すればいいのに。少し図々しいんじゃないかしら?」

健太郎との一夜をまだ引きずっていた。


またここへ来てくれるかと待っていた。


ドレッサーの前で髪を整えながら、部屋の掃除をしている真美子さんに思わず愚痴をこぼした。



「あら?奥様。ご存知ないのですか?旦那様の言い付けですよ」

「え?なんの言い付け?」


「なんでも階段が危ないとか、で。
もし、踏み外して流産でもされたらたまったもんじゃないと。なんか、そんな話を重子さんがしてましたよ」


ブラッシングの手が止まった。


「旦那様も産まれるのを本当に楽しみにしてるんですねー」

私も楽しみなんですよー、みたいな顔をして話す。


思わず鏡越しに真美子さんを睨んだ。


「あ!いえ....あ、ではこれで....」


慌てた様に部屋から出て行った。



真美子さんも楽しみなんだ....

重子さんも、きっと徳さんまで....

健太郎の子供の誕生が待ち遠しいんだろう。

健太郎が独身の時からお世話をしてきた人達だもの。

当然よね....

誰が産もうと健太郎の子には変わりはない。




老け込んだ自分の顔を眺めた。

疲れてないのに、疲れた顔をしている。

健太郎の帰りを楽しみに待っていたあの頃の私は、どんな顔をしていたのだろう。


健太郎がまた不意に来るかもしれないわ...,

綺麗にしなくちゃ.....

健太郎にがっかりされてしまうわ....



綺麗に....




















No.25 20/02/08 22:21
匿名さん0 


今日もまた1人で朝食を頂いていたら
階段を下りてくる健太郎の声がした。


え?健太郎を見れる?

そう、健太郎に会える....ではなく見れる....そう思った。


食事中で行儀が悪いと思う前に席を立った。


紺色の麻のスーツ姿の健太郎。


相変わらず格好いいと思った。

「健太郎。おはよう!出掛けるの?」


なんだ、居たのか....そんな声がしてきそうな健太郎の表情。



「....あぁ、しおり。おはよう。
この前の撮影した映像の最終チェックなんだ。ちょっと行ってくるよ 」

「そうなの?でも朝食くらい取ったら?私のコーヒーとトーストあるわよ?あげるから」

「いや、向こうに着いたら何か軽く食べるから心配ないよ」

腕時計に目をやる。

「そう....なら、気をつけて行ってらっしゃい」


「あぁ、じゃ行ってくるよ」
そう言っておでこにキスをしてくれた。


後を追い玄関までお見送りした。

後部座席から後ろを向き手を振る健太郎。


私に?

ううん....違った。

目線は2階に向いていた。


きっと三奈さんがベランダから
手を振っていたのだろう。


食欲も失せた。

途中になっていた朝食はもう要らないと重子さんに言う気持ちもなくなり、そのまま2階に上がった。

足取りは重い。

朝なのに....


久しぶりの健太郎だったのに.....


健太郎の目線の矛先で、台無しの1日のスタートだった。






No.26 20/02/12 21:30
匿名さん0 

階段を上がって右に曲がるとゲストルーム。その奥が私達の寝室。


ゲストルームの前で足が止まった。

健太郎は出掛けた。

重子さんはキッチン。

真美子さんは私達の部屋の掃除をしている。


今がチャンスかもしれない....

ベランダに出ていたんだから起きているはずよね?

三奈さん、あなた何者?
うちの夫とはどういう関係?
こんなチャンスはもう無いわ!

聞きたい....
あなたの口から聞いてみたい...,

勇気を出してノックした。


コンコン....

コンコン....


「....はい?」

小さな声が聞こえた。

私の方からドアを開けた。

「おはよう。三奈さん。今大丈夫かしら?」


中を覗くとゆったりとしたワンピース姿の彼女が立っていた。

数ヶ月前、健太郎に抱き抱えられ具合が悪そうな彼女の横顔しか見ていなかったから、初めて真正面から見た。


透き通った肌に整った顔立ち、立ち姿も美しく、思わず息を飲んだ。

「おはようございます」

ニッコリ微笑む彼女は、つわりもなくなり元気そうに見えた。


「....あ、は、初めてまして。家内のしおりです。ご挨拶が遅れまして」



何を聞こう....
どれから聞こう....


緊張してきた。


No.27 20/02/14 23:24
匿名さん0 

「お加減はいかかが?今少しいいかしら?」


彼女自身が持つオーラに負けそうで思わず声がうわずった。

否応なしに緊張してきた。

だめよ、扉を開けたのは私の方なのよ....堂々としてなくちゃ....

背筋を伸ばした。


大丈夫。健太郎の妻は私よ!





「初めてまして。櫻井三奈です。私の方こそ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません」


そう挨拶して頭を下げた彼女は、私に対して悪びれる様子も、申し訳なく思っている感じもなくニッコリ微笑んだ。



ゆったりとしたワンピース
きゃしゃな体つきに似合わない
少しふっくらとしたお腹が目立った。


私が欲しかったもの


そこにあるのね....


目線が彼女のお腹から離れない。

健太郎が欲しがった家族がそこにある。


私ではなく三奈さんの体の中に....


何かを感じとったかの様に


「どうぞ!お掛けください」
と、ソファーの方へ促された。















No.28 20/02/20 22:31
匿名さん0 

「どうぞ!お掛けください」


「...え?..あ、...ど、どうも」


私の方が軽く会釈をして座った。
彼女も向かい合わせで座った。


座ったけど、なんだか変な気分だ。

....そうよ!ここは 私と健太郎の家。

そのソファーだって私が健太郎と一緒に選んだ物。

なのに、彼女は我が物の様に1人がけにゆったりと座った。


「何か飲み物でも頂きます?私はいつものハーブティーを頂くけど、、しおりさんは?」

「いえ、結構よ」

「あら?そう?それじゃ」

彼女は内線を回し重子さんに頼んた。

「あの?いつもそうやって重子さんに頼んでいるの?」

「ええ、そうだけど。何か?」


そうだった。健太郎が階段が危ないからって食事を運ばせていたんだっけ。


ソファーも重子さんも、そして健太郎も私の物.....

お腹に子を宿した彼女からそんな声が聞こえてきそうだった。

「そういえばご用件はなんでしょうか?」

「....あぁ....そうだったわね。ごめんなさい。突然お伺いして....あの、真美子さんからとか色々聞いてるんだけど、赤ちゃんが居るのかしら?その...あなたのお腹に」


待ってましたと言わんばかりに大きな目を更に大きくし、


「あら、しおりさんもご存知でしたの?ええ、そうなんです。もう少しで5ヶ月に入るんですよー」

大きな目を下に落とし、いとおしそうにお腹を擦った。


「....あの...,あの、その子の父親って.....もしかして...」


コンコン...


「あら!重子さんかしら?どうぞ!」

「お茶をお持ちしました」

そう言って入ってきた重子さんは
私が居ることにビックリした様子だった。


「...あの、奥様の分は....」

そうよね。頼まれたのは三奈さんのハーブティーだけなんだものね。


「いえ、いいの。直ぐに出るから」

「そうですか...でわ」


そう言って部屋を出て行った。


彼女はティーカップを持ち

「あぁー美味しい!重子さんが入れたハーブティーは格別ねー....あ!そういえばお話の途中でしたわね。えっと...」


気温と緊張と彼女の堂々とした態度で、私は喉がカラカラになっていた。


「率直に聞くわ。その子の父親は誰?もしかして健太郎なの?」




No.29 20/02/23 23:47
匿名さん0 

ティーカップに落とされていた目線が徐々に正面の私に向けられた。

「....そうですよ?」

そう言ってまた目線を下に落とした。


何か問題でも?
と、言いたげな質問の返事とそのふてぶてしい態度に思わず腰を浮かしそうになったが、


「あの....彼が私と結婚して...既婚者だって事は知ってるわよね?」


あの時は大々的にニュースやワイドショーで放送され、週刊誌にもどんな相手だとか、何処で知り合ったとか、色々賑わっていたわ。

ましてや、去年の結婚記念日なんて記者に追われてゆっくり楽しめやしなかったのに。


「ええ、知ってはいました。でも...」


「でも?」


「誘ってきたのは健太郎さんの方ですよ?」

そう言い放った瞬間、両端の口角が上がったのを見過ごさなかった。


「健太郎が?あなたを誘った?」

「ええ。まあ、半年も恋人役を見知らぬ街で、ましてや海外で演じてましたからね。まぁ、私の方もそんな気分になったというか....途中から演技なんか忘れて、いつの間にか本当の恋人の様な気がして...ウフフ」

にやけたその顔にイラついた。




No.30 20/02/25 23:37
匿名さん0 

「嘘よ!そんな事ない。健太郎が....健太郎からあなたを誘うなんて... 」


「あら?私が嘘ついているとでも?....まぁ、いいわ。でもね、本当なのよ?」


寒くは無いのに背中がゾクゾクした。



「健太郎さんも私と同じ気持ちだったんじゃないかしら?遠い異国の地で。

それに、既婚者とか彼女持ちとか、私そんなの気にしないし。フィーリングが合えば....ね」


「気にしないっ..て...」


分かっていた。

あの日あなたは健太郎に大事そうに抱えられここに来た。


その時から健太郎はあなたから片時も離れなかった。


あなたはその軽いノリで神様から子を授かったの?


不公平だ。

酷いよ、健太郎...


三奈に返す言葉もなかった。


寒気が軽い吐き気に変わり、もうここには居られない。


「お邪魔しました」

そう言って立ち上がると


「しおりさん?」


そのまま背を向けた。

「結婚はしないから。安心して。認知はして貰うけど」


振り返る気力がなかった。

「このままここで子供と健太郎さんと一緒に暮らせればそれでいいの。分かってね。しおりさん」


無言でドアを締めた。








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