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みんなでつくろうストーリー⑩

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小説大好き
16/10/17 01:55(更新日時)

みんなでつくろうストーリー⑩

複雑な家庭環境で育ち

心に傷を負った千夏は

農場の寮に住むことになった。

そこで歌穂、上畠、川上と出会う…





No.2287612 15/12/27 22:00(スレ作成日時)

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No.301 16/06/04 23:06
旅人1 

>> 300 千夏「ひとりって…、なんで?」



富子「最近黒田さん、あんまり会いに来てくれないのよ。いつまでたっても奥さんと別れてくれないし、もうなんだか疲れちゃってね…」




千夏は、



やっぱりね




ゴリが嫁と別れて母さんと一緒になるわけないのに



と思ったが、富子があまりに悲しそうな声を出していたので言えなかった。



富子「ごめんね。つまんないことで電話して。元気そうで安心したよ。じゃあね…」



と言って電話を切った。




千夏は、



お母さんのあんな悲しそうな声をはじめて聞いた…




と思っていた…



No.302 16/06/04 23:14
旅人1 

>> 301 富子が電話を切ったあと、富子の家の電話が鳴った。



「もしもし…」




と富子が電話に出ると、



「俺だよ」




と、黒田の声が聞こえてきた。



「今からお前のとこに行くから、酒と、何かつまめるもの用意しといてくれないか?」



と言われて富子は嬉しくなり


「わかったわ。待ってるから」



と言っていそいそと電話を切った。



寂しくて、千夏の声が聞きたくて寮に電話したことなど、富子はすっかり忘れ、黒田のためにいそいそと酒の肴の支度をはじめた。



黒田は黒田で、富子とそろそろ手を切る時期かもな と思っていたが、気まぐれに電話してみると、富子の嬉しそうな声を聞いて



やっぱり、富子とは離れられないな…




と思い直していた。




その夜、黒田は久しぶりに富子のアパートに泊まった。



富子はもう、千夏のことなどすっかり忘れていた…







No.303 16/06/04 23:21
旅人1 

>> 302 しかも黒田は



「結婚はできないけど、お前のために家は用意したんだ。ここから少し遠くになるが、中古の借家だけど綺麗に使ってあるから、来月にでも引越しだな。それまでに荷物はまとめておけよ」



と、寝物語で富子に言った。




富子は、



結婚することはできない とはっきり黒田に言われたことは少なからずショックではあったが、



家を用意する約束はきちんと守ってくれたんだわ

黒田さんと離れるぐらいなら、もうそれでもいい



と思い直していた。




千夏は寮にいるから、学校のこととか心配せずに来月引越しすればいいし




富子は千夏のことはすっかり忘れて幸福な気持ちになっていた…



No.304 16/06/04 23:26
旅人1 

>> 303 そして翌月、富子は、黒田の用意した借家に移っていった。



千夏には、アパートを引きはらったことも、黒田が借家を用意してくれたことも、何も連絡せずに…。




しかし、まだそれは先の話であるので、ひとまずは話を戻そう。



千夏と川上が、無料で水族館やレストランを利用したことを、上畠と歌穂はかなりうらやましがっていたので、ふたりはやや得意気になっていた…



No.305 16/06/06 22:06
小説大好き 

>> 304 上畠は水族館デートから

急に距離を縮めた川上と千夏に

負けてはいられないと感じていた。

次なるデートはどこに行こうか?

と上畠は考えていた…




No.306 16/06/08 22:09
小説大好き 

>> 305 上畠は歌穂が野球が好きだと言っていたのを思い出した。

そうだ!野球観戦に誘ってみよう…




No.307 16/06/08 22:59
旅人1 

>> 306 ずっと前に、何かの話のきっかけで歌穂が、野球好きというのを記憶していたのだった。



上畠は、覚えていてよかった と思った。




歌穂が野球好きになったのは、初恋の宮下が、中学時代野球部に所属していたためだったのだが…



No.308 16/06/10 12:54
小説大好き 

>> 307 歌穂を野球観戦に誘おうと考えた上畠は財布を覗き込んだ。

『はぁ…。ダメだ。』

今月は野球観戦はやめておこうと考えた上畠は

『そうだ!』

と机の引き出しをゴソゴソとして

『あった!』

と手にとったのは野球のボールだった…



No.309 16/06/10 13:22
旅人1 

>> 308 中学時代は、バスケットボールに夢中だった上畠だが、小学校時代からの親友が野球部にいたこともあり、よくキャッチボールの相手もしていた。


高校が別になり、上畠が入寮してからはほとんど連絡も取らなくはなったが、懐かしい親友だった。



中学の卒業式の日、その親友の近藤が


「これ、お前にやるよ、元気でな」



と、一緒にキャッチボールしていた時のボールを上畠に渡したのだった。





上畠は、もうずっと会っていない親友の近藤を思い出すと同時に



持ってきててよかった…




と思った…



No.310 16/06/10 14:31
小説大好き 

>> 309 そして上畠は歌穂に週末のデートを申し込んだ。

上畠『今度の日曜日、公園に行かないか?』


歌穂は公園という場所に始め驚いたが

歌穂『楽しそうね。いいわよ。』

と笑顔でこたえた。上畠は思わずガッツポーズをした…




No.311 16/06/10 15:16
旅人1 

>> 310 そして、歌穂と公園デートのために、またも和子に外出許可をもらいにいった上畠だった。



和子は許可してくれたが



「最近、みんな外出が多いわね。まあ、そういう年頃だから仕方ないかもしれないけど…。外出しても節度のある振る舞いをしなきゃダメよ。私たちはあくまでも、あなたたちの親御さんからあなたたちを預かっている立場なんだから。
ちゃんと門限までには帰ってくること。変な場所には行かないこと、お酒飲んだりタバコ吸ったり変なことしたりしないこと、ちゃんと守らないと外出許可は今後は出さないわよ」


と笑いながら言った。



上畠は



「ち、ちょっと公園に行くだけだから大丈夫ですよ…」



と照れながら言った…



No.312 16/06/10 22:27
小説大好き 

>> 311 そして公園デート当日。

和子は気を利かせて歌穂に弁当作りを促していた。

歌穂は大きなお弁当を抱えて

大きなつばの麦わら帽子をかぶり

水色のストライプのTシャツにジーンズ姿で

上畠と待ち合わせに選んだバス停にいた…




No.313 16/06/12 12:43
小説大好き 

>> 312 上畠は歌穂より少しだけ遅れてバス停に到着した。

バス停は田園風景の中にあり

そこに立っている歌穂は

よく風景に馴染んでいて

まるで一枚の絵画を見ているようだった。
上畠『おまたせ!』…





No.314 16/06/13 15:48
旅人1 

>> 313 歌穂は、上畠を見て、綺麗で完璧な微笑をみせた。



上畠が



なんて綺麗な微笑なんだろう…





と感動するほどだった…

No.315 16/06/14 14:30
小説大好き 

>> 314 バスが来るまであと5分位ある。

上畠は何か楽しい話でもしようと

あれこれ考えていた。
すると一台の車が2人の前で止まり

窓が開くと、中から中年の女性が

『松本農場へはどう行ったらよいのかご存知ですか?』

と上畠に声をかけた…




No.316 16/06/14 22:43
小説大好き 

>> 315 上畠『そこの交差点を左に曲がってすぐです。』

女性『ありがとう。』

車の後部座席には高校生位の女の子が座っていた。

車が走り去ると

上畠『もしかして、新入りなのかな?』

歌穂『そうかもね。』…




No.317 16/06/14 22:57
旅人1 

>> 316 上畠「チラッと見たけど、色白で、病弱そうな感じの子だったな。結構かわいかったし」



歌穂「バカ!」



と、上畠を小突いた。



上畠「でも…、歌穂のほうが美人だ…。歌穂は、美人って言われるの嫌がるけど、俺にとっては…、世界一美人だ…」




上畠は、真顔で歌穂に言った。



歌穂は、上畠から、美人と言われても嫌ではないことに気づいた。



上畠も、チャラい部分はあるものの、よく見れば顔立ちも整っているし、イケメンの部類に属するほうだと、歌穂は思った。



上畠は、歌穂の肩を抱きよせ、素早く唇にキスをした。


唇と唇だけが軽くふれあうさわやかなキスだったが、心は満たされた…




No.318 16/06/15 22:24
小説大好き 

>> 317 その頃、車は松本農場へ到着していた…




No.319 16/06/17 22:55
小説大好き 

>> 318 『お嬢様、到着いたしました。』

運転していた執事が後部座席の麗奈に言った。

『さあ、麗奈、降りるわよ。』

母親の慶子が言った…





No.320 16/06/19 13:50
小説大好き 

>> 319 麗奈は一言も言葉を発する事はなかった。
慶子は和子達に麗奈を託し丁寧に挨拶を済ませると

再び車に乗って帰って行った。

残された麗奈はやはり

何も喋らなかった…





No.321 16/06/19 22:37
小説大好き 

>> 320 デートからルンルン気分で帰宅した

歌穂と上畠も和子から麗奈を紹介された。
2人はとっさに

〃あ、今朝の車に乗っていた人だ!〃

と思いながら麗奈を見た。

しかし麗奈の顔に笑顔は無く

2人が

『宜しくね。』

と言っても黙ってうつむいているのであった…





No.322 16/06/20 23:52
小説大好き 

>> 321 その夜。

皆食堂で夕食を食べていたのだが

麗奈の姿だけ見当たらない。

歌穂『沢井さん(麗奈)はどうされたの?』

和子『それがね…皆と一緒に食べたがらないのよ。』

歌穂『え?じゃあ部屋で1人で食べてるの?』

和子『まあ…ね。沢井さん、ちょっと訳ありでね。』…





No.323 16/06/21 08:36
小説大好き 

>> 322 和子『麗奈ちゃん、学校で酷いいじめにあって、家に引きこもるようになったらしいのよ。』


歌穂『そうなんですか。』


和子『麗奈ちゃんのお父さんは大会社の社長をしておられる程の方で

麗奈ちゃんには甘いらしくて

麗奈ちゃんのわがままや欲する事全てやってあげてしまうんですって。

それを見かねたお母さんが

麗奈ちゃんの為にはあのお父さんから引き離すのが一番いいだろうって思っての事なのよ。』


歌穂『確かに、挨拶すら出来ないようだと社会で生きていけませんよね。』…






No.324 16/06/21 23:09
旅人1 

>> 323 女子の部屋で、麗奈は机に向かってひとりで夕食を食べていた。



母親の慶子が


「えっ!ここの寮って、個室はないんですか?!」



と驚いた様子だった。


和子は


「そうなんですよ。共同生活をするため、そしてひとりで孤立してしまうのを防ぐため、あえて、男子は男子、女子は女子で、ひと部屋で寝起きしてもらうことになっているんです。それがうちの寮の規則ですので、申し訳ありませんが、特別な理由なく個室をあてがうことはできないんです」



と、慶子に説明した。



慶子は麗奈に



「麗奈ちゃん、あなた、ほかの人と共同生活って、大丈夫なの…?」



と聞いてみると、麗奈は無言だったが、コックリと頷いた…



No.325 16/06/21 23:15
旅人1 

>> 324 ちょうど歌穂は上畠と出掛けていていなかったので、和子が女子の部屋に案内し、ふたつある二段ベッドを指さし


「ふたつのベッドがあいてるから、あいてる好きなほうを使ってね。この部屋にはあとふたり女の子がいるけど、その子たちもこの二段ベッドを使ってるから」



と麗奈に言った。




麗奈は、慶子には頷いたものの、内心は共同生活に不安だった…



No.326 16/06/22 22:40
小説大好き 

>> 325 麗奈は夕食を食べ終えると

食器を持って出る事すら

億劫でしばらくベッドに横になっていた。
そこへ歌穂と千夏が帰って来た。

2人は和子から事情を聞いていたから

引きこもりの麗奈に対して驚く事はなかったが

食べ終えた食器を放置してあることには我慢出来なかった。
そして遂に

歌穂『麗奈ちゃん!食べた食器はキッチンに持って行って頂戴!それに、1人で食べるより皆で一緒に食べた方がずっと美味しいわよ。』

と麗奈に言った…




No.327 16/06/24 07:07
旅人1 

>> 326 麗奈は、ベッドから起き上がり、食器の乗ったトレイを持つと無言で部屋を出ていった。



麗奈が部屋を出ると、千夏が


「なんかひとことぐらい言えばいいのに…」



と歌穂に言った…



No.328 16/06/25 21:47
小説大好き 

>> 327 千夏の言葉はまだドアの外にいた麗奈にも聞こえていた。

これまで周りからちやほやとされ、全て思い通りに暮らしてきた麗奈にとって

この寮はまるで監獄のように思えた。

麗奈はキッチンにいる和子に食器を差し出した。

無言の麗奈に和子が大声で怒鳴った。

『ご馳走ぐらい言いなさい!』

その声は歌穂達の部屋にも聞こえた…




No.329 16/06/25 22:20
旅人1 

>> 328 麗奈は、和子に一喝されたにも関わらず、やはり無言で、和子に対してペコリと頭を下げただけだった。




和子は


「口を利きたくないのなら、それでもいいけど、せめて挨拶だけはしなさい…」




と麗奈に言った…



No.330 16/06/26 10:21
小説大好き 

>> 329 それまで人に叱られた事がなかった麗奈は

部屋に駆け込み自分の部屋のベッドに

潜り込んだ。

歌穂と千夏は顔を見合わせた。

歌穂はベッドの中の麗奈に向かって

歌穂『麗奈ちゃん、和子さんに謝ってきなさい。』

と落ち着いた口調で言った。

麗奈はベッドから目だけ出して歌穂を見た。

麗奈の目は涙で濡れていた…




No.331 16/06/26 22:02
小説大好き 

>> 330 千夏も心配そうに言葉をかけた。

千夏『共同生活なんだから皆がルールを守らなきゃ秩序が乱れてしまうのよ。』…



No.332 16/06/29 15:12
旅人1 

>> 331 千夏の言葉にも、麗奈はただただ泣きじゃくるばかりだった。




無言のまま、泣きじゃくる麗奈に、歌穂も千夏も途方に暮れた…



No.333 16/06/29 22:44
小説大好き 

>> 332 歌穂は和子に

麗奈が落ち着くまで
別室にしてもらえないかと頼んだ…





  • << 335 和子は深呼吸をすると 『分かった。麗奈の面倒は当分私が見るわ。』 と意を決して言った。 そして麗奈は和子と一緒の部屋に行くことになった…

No.334 16/07/01 22:02
旅人1 

>> 333 しかし、和子はふたりの頼みを聞き入れなかった。



麗奈が甘えで泣きじゃくっているのが、和子にはわかっていたからだった…


No.335 16/07/01 22:08
小説大好き 

>> 333 歌穂は和子に 麗奈が落ち着くまで 別室にしてもらえないかと頼んだ… 和子は深呼吸をすると

『分かった。麗奈の面倒は当分私が見るわ。』

と意を決して言った。
そして麗奈は和子と一緒の部屋に行くことになった…




No.336 16/07/02 22:52
小説大好き 

>> 335 和子『ただし、今夜だけね。これは特例よ。』


初めは聞き入れなかった和子は

一晩だけ麗奈を自分の部屋に泊める事にした。

和子は元スケバンだっただけあって

ここぞという時には凄い迫力があった。

和子は何時も自分がやっている仕事を

麗奈に手伝わせた。
麗奈が気怠い素振りを見せると

和子『怠けるな!』
と活を入れた…




No.337 16/07/03 12:36
小説大好き 

>> 336 麗奈は予想だにしなかった和子の迫力に
驚いたのか泣き始めた。

麗奈『私は…今までこんな風に叱ってくれる人がいませんでした。』

和子『麗奈ちゃん…』

麗奈『いつもほったらかしにされ、上辺だけの愛情で…』

麗奈は涙で言葉に詰まった…





No.338 16/07/03 22:32
小説大好き 

>> 337 和子は麗奈をぎゅっと抱きしめた。

和子『いいのよ、思いっきり泣きなさい。』

麗奈はしばらく泣き、落ち着くと

麗奈『皆…お金持ちだからって、私のことを羨ましがるんです。

でも、私は普通の家庭に産まれたかったです。』

和子は静かに頷きながら麗奈の話を聞いた…





No.339 16/07/03 22:40
旅人1 

>> 338 麗奈は、子供の頃から


「金持ちの子はいいわね」


と言われ、麗奈が頑張って勉強して、テストで100点をとった時も



「どうせ先生たちに、裏でお金でも渡してるんだろう」



と、心ないことを言われたこともあったのだ…


No.340 16/07/04 22:41
小説大好き 

>> 339 麗奈は和子に苦しい胸の内を聞いてもらい

嬉しかった。

和子『さあ、そろそろ寝ましょう!』

麗奈『はい!』

その時雷が

〃ゴロゴロゴロゴロ!〃

と鳴り響いたと思うやいなや

すごい勢いで雨が降り出した…




No.341 16/07/05 22:23
小説大好き 

>> 340 和子と麗奈が寝ようとした時再び大きな雷が鳴り響き

次の瞬間停電した。
和子は松本と一緒に建物内の見回りをすることにした。

麗奈は暗い部屋に1人残る恐怖に耐えかね

和子達の見回りについていく事にした。
各部屋からは停電というアクシデントを楽しんでいるかのような笑い声が聞こえてきた。

一通り見回って異常は無く

部屋に帰ろうとしていた時

和子がいきなり悲鳴を上げた。

麗奈は和子の悲鳴にびっくりして悲鳴をあげた。

2人が悲鳴をあげると暗い廊下の先の方で何かが動いた。

『どうしたんですか?』

暗い廊下の先の方から声がした。

和子『その声は直人?』

だんだんと近付いて懐中電灯でその先を照らすと

直人『まぶしいよ!』

和子『こんな暗がりで何してるの?』


No.342 16/07/05 22:29
旅人1 

>> 341 「直人、あんたいつ日本に戻ってきたの?」


和子が尋ねると、直人は


「3日前だよ。しばらく友達んとこでのんびりしてて、きょうこっちに来たんだ」


と、和子に言った。



麗奈が呆然としていると、和子は

「この子は、直人っていって、あたしの姉の息子…、つまり甥ってわけ」


と、直人を紹介した…



No.343 16/07/05 22:35
旅人1 

>> 342 松本夫妻には子供がなかったので、和子は、たったひとりの甥である直人をわが子のように可愛がっていた。



直人も一時期、和子の姉である母親の死で、手のつけようもない程ぐれていたことがあった。


その頃、和子は、直人をこの寮に入れ、面倒をみたことがあった。



規則で、高校卒業と同時に寮を出た時には、暗い影はすっかり直人から消えていた。


そして、やりたいことを見つけるため、アメリカへ渡っていたのだった…


No.344 16/07/06 20:42
旅人1 

>> 343 死んだ和子の姉の昌子(まさこ)は、たったふたりきりの姉妹だった。


両親は、昌子が高校3年、和子が中学に上がろうとする頃、交通事故で二人とも他界した。


昌子は、大学進学を諦め、和子の面倒をみたが、和子は、いきなりの両親の他界のショックや、昌子がスナックで働きはじめて夜いないさびしさから、非行に走り、中学を卒業する頃にはいっぱしのスケバンとなっていた。


昌子も、何度も警察に謝りに来てくれたが、その頃の和子には、感謝の気持ちがなかった…


No.345 16/07/10 15:17
小説大好き 

>> 344 直人は麗奈に

『宜しく!』

と人差し指と親指をピストルのようにして麗奈に若者向けの挨拶をした。

麗奈『よろ…しくお願いします。』

挨拶が苦手な麗奈だったが

頑張ってこの環境に慣れようと

小さい声ながらも直人に挨拶を返した。
端から見れば小さな出来事であったが

麗奈にとっては清水の舞台から飛び降りるくらいの

勇気がいることだった…


No.346 16/07/10 15:25
旅人1 

>> 345 和子は


「この子は、この前入寮したばかりなのよ」



と直人に言った。



直人は


「ふーん…、でも俺も、一時期ここにやっかいになってだけど、みんないい奴ばっかりだし、兄イや姉ちゃんたちも優しいしさ。すぐ慣れるから心配いらないよ」



と明るく麗奈に言った…



No.347 16/07/13 21:18
旅人1 

>> 346 麗奈は、直人にそう言われて、少し心がほぐれるのを感じた…


No.348 16/07/13 22:26
小説大好き 

>> 347 その時、電気が回復して灯りがついた。

よく考えたら麗奈はパジャマであった。

麗奈は初対面の直人にパジャマ姿を見られる事が恥ずかしくて

もう一度停電してくれないかな…と内心思った…




No.349 16/07/14 22:45
小説大好き 

>> 348 麗奈のパジャマは白地に真っ赤なイチゴ模様だった。

麗奈は母親が選んだこのパジャマが嫌いだった…




No.350 16/07/15 23:06
小説大好き 

>> 349 麗奈『お…やすみなさい。』

麗奈は小さな声で言った。

直人『おやすみ!イチゴちゃん!』

麗奈は直人の投げかけてくれる言葉が嬉しかったが

嬉しい気持ちをどう表現してよいのか分からぬまま

小走りで部屋に帰った。

そんな麗奈を見ながら和子は

『直人…しばらくここにいてくれない?』

直人『良いけど…何で?』

和子『麗奈…あんたの言葉に初めてほんのちょっと笑ったの。』

直人『え?笑った?』

和子『よ~く見なきゃ分からないけどね。』

直人『へ~!まあ、俺はしばらく自由だから居てやるよ。』
和子『全く偉そうに!』

直人『はっはっはっ!俺様は偉いのじゃ!』

和子『そうね。偉いから麗奈の心開かすのを手伝って欲しいのよ。』…




  • << 351 和子は、そう言いながら、甥の直人が、この寮にいた頃のことを思い出していた。 和子がスケバンだった頃、何度となく警察に補導されたが、いつも姉の昌子は嫌な顔もせず和子を迎えに来て、刑事に謝っていた。 和子は、姉の気持ちはわかっていたのだが、今さら素直にもなれなかった。 ぐれつづけていた和子に、ある日、昌子が 「お姉ちゃん、今月でスナックの仕事辞めるわ。多少お金は減っても、夜はあんたと一緒にいられる昼間の仕事を探す」 と和子に宣言した。 そして、和子を抱き締め 「今までごめんね…。父さんと母さんが一度に死んじゃって、お姉ちゃんも、あんたとの生活をなんとかすることに必死で、あんたのことをちゃんと見ていてあげられなかったわ。本当に、本当に、ごめんね…」 と言って泣いた。 和子は、昌子に抱き締められ、胸がいっぱいになった。 まもなく、宣言通り、昌子は昼間の仕事を見つけ、夜は和子と一緒に過ごすようになった。 和子も、スケバンから足を洗った…
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