私の天使
「りこ!早く起きないと仕事遅刻するよー!」
毎日、お母さんに起こされるだらしない私…。
私は26才になっていても起こされている。
「あぁーだるい…。」そんな独り言を言いながら煙草に火を付ける。
昨日、飲み過ぎたかなぁー。
頭が痛い…。
煙草を一服して、リビングに行き用意された朝食を口にする。
「りこ!いい加減自分で起きなさいよ!昨日だって夕食いらないなら、もっと早く連絡してくれれば、作らなくてよかったのに!だいたいりこは!」
「あぁー!もう朝からうるさい!別に頼んでないし!作りたくないなら作らなきゃいいでしょ!」
「そんな事誰も言ってないでしょ!いらないなら」
あぁーうざい…
無視して部屋を出て洗面所に行き顔を洗う。
「お弁当ここにおいてるからね!」はいはい。と心の中で返事をし、無視してさっさと家を出た。
私は、ある美容院の雇われ店長をしている。
家から店まで、車で20分。その間ヘビースモーカーの私は煙草を吸い続ける。
新しいレスの受付は終了しました
店に着いて、店の鍵をポケットに手を入れて探していると、店の女の子が、
「りこさん!おっはよーごさいます!」と大きな声。頭が痛い。
山田さんだ…朝から元気がいい…。
山田さんは25才の仲の良い女の子。
「おはよう。」
と返事をして仕事を始める私。
「りこさん、昨日のドラマ見ましたー?」
「そういえば見てない!」
忘れてた!昨日は友達と久々に大酒飲んで、すっかり忘れてた。「なぁんだ、おもしろかったのに。」と、昨日のドラマの話しをしたそうな山田に、「二日酔いで頭痛いんだよね…。」
と言ったら、「また、飲み会ですかぁー!いいっすね!」
「良くない…。頭痛いもん。最近、疲れてるのか酒飲まないと、睡眠薬ないと寝付き悪くって。」
「体大事にしてくださいよ~!りこさんあってのお店なんですから!」
「はい、はい。」
なんて、たわいのない話しをしながら仕事する。
仕事が終わり夜7時。帰宅準備をしていると、携帯が鳴る。
ユウスケからだ。
「お疲れ!」
「おぅ!お疲れ!今日は来いよ。」とユウスケ。
「一回家に帰ってから行くね。家出る前又かけるね」
家に着くと、真っ先にお風呂に入り、着替えをして「ちよっと出てくる。」と言うと、「毎晩、毎晩、りこは一体何を考えてるの!」とお母さんが口をだす。うるさい。クソババァ!
と、言いたいところだが、面倒なので無視。
さっさと、家を出てユウスケに電話をかける。
「ユウスケ、今家出たけど、コンビニ寄ってくけど、なにかいる?」
「弁当買って来て、あと、菓子も適当に。」
「分かった。」と、電話を切って、あぁ、いつも私が買ってあげてる。私は貢ぐ女!なんかイライラする。ユウスケは付き合って5年の4才年上の彼氏だけど、とんでもない人だった。まず、働いているが消費者金融6社に合計300万借金、体には手首からほぼ全身と言っていいほど入れ墨が入ってる。地元の友達では、知らない人はいないぐらいやばい人。大麻もほぼ毎日吸っている。6年まえは覚醒剤にも手を出し、死ぬんじゃないかと思うほどやってた時もあったらしい。私なんでこんな人と付き合ってるんだろー。
なんて考えながら、コンビニに寄り部屋に入る。テーブルには煙草と大麻とビール。「はい、これ。」弁当と菓子を渡す。「サンキュー開けて。」と言って私が開けてあげるとテレビを見ながら食べだし、私はボッーとしながら煙草に火を付けた。いつもこんな感じ。後はたわいのない話しをしながら、DVDを見たりしている。ユウスケと居ると落ち着く。その後は、たまにSexしてユウスケが寝たらそっと家に帰る。私の友達はみんな声を揃えて「なんで、あんな人と付き合ってるの?りこ、このまま付き合ってると、幸せになれないよ!結婚出来ないよ!」そんな事は分かっている。私もユウスケと結婚する気は全くなかった。けど、カッコイイし、楽しかったし、私の事好きって言うユウスケと別れて他の人と付き合いたい。なんて思わなかったし、その時独りになりたくなかった。私の家はお父さんはサラリーマンで休日には近所で子供達に剣道を教える厳格な父親だった。お母さんは、保育園の先生。料理が得意で、とてもきれい好き。小さい頃から、ピアノや塾、家庭教師、いろいろ習い事させられたけど、結局私は、地元で馬鹿な女子高に入った。
高校生活はコギャル時代、毎日が楽しかった。
学校をサボって、援交してお小遣を稼ぎ、欲しい化粧品は万引きして、カラオケ8時間なんて当たり前。
要領良く遊んでたから、両親は知らない。
ただ、毎日が楽しかった。
家に着いて、そっと玄関を開け自分の部屋に入る。メイクを落としながら、なにげなくカレンダーを見た。
そういえば、今月、生理きてない。まさか…。いやいや、最近、中出ししてないし。まだ、5日しか過ぎてないし。なんて、自分に言い聞かせながら、机の引き出しを開けた。
引き出しの奥には、3年前友達の妊娠騒動で使った妊娠検査薬が1本残っていた。
裏を見てると、使用期限が2年前で、切れてた。
……。
なんか、最近、やけにイライラするし、まだ二日酔いみたいに気分悪いし。
でも、気のせいだよね。と自分に又言い聞かせながら、その妊娠検査薬を手にとり、トイレに行った。トイレに行き検査薬に尿をかける。
尿をかけて判定窓を見る。
使用期限切れてるし、妊娠なんてありえないし…。
3分まつんだよね。
1分もたたず、陽性のラインが、くっきりと出た。
えっ………。
ありえない!
ありえない!何度も判定窓を見る…。いや、避妊してなかったから、当たり前だ…。
私の心臓はバクバクして、何を考えていいのか?
どうするのか?
頭が混乱している。妊娠してない可能性だってあるよね。
なんて思いながら、私の頭の中は、
グルグルと
どうしよう?
妊娠…。
赤ちゃん…。
と考えていた。
考えているというより、その言葉が、駆け巡っていた。トイレから出て、部屋に戻る。
………。
落ち着け!私。
妊娠…。
赤ちゃん…。
どうしよう…。
悩む事ない。
赤ちゃん堕すしかないよ。
私、子供なんて大嫌いだし。
それに、ユウスケの子供だよ。
育てられない。
お父さんとお母さんが許すわけない。
それに、お父さんは彼氏の存在自体知らない。
でも、使用期限2年も過ぎてるんだ!
まだ、分からないよね。
妊娠してない可能性だってあるよね。
なんて思いながら、私の頭の中は、
グルグルと
どうしよう?
妊娠…。
赤ちゃん…。
と考えていた。
考えているというより、その言葉が、駆け巡っていた。
結局、一睡も出来ないまま、朝になった。
いつもと変わらない朝。
「りこ!早く起きない!」
お母さんが部屋のドアを開ける。
「……。あら、珍しい、起きてたの…。」
「起きてるし…。もぅー!いいからあっちいってよ!朝からうるさい!」
「はい、はい。朝からヒステリックなこと。朝ごはん食べなさいよ。」
食欲ないし、仕事にも行きたくない。ない。
けど、変に勘繰られても嫌だ。
無理して少し食べ、いつもの様に仕事に行った。
煙草がない。
コンビニに寄る。
別に本当に妊娠してても産むわけないし。
関係ない。
煙草を買って、車に戻る。
煙草に火を付け吸った。
美味しくない。
っていうより、気持ち悪かった。ありえないんだけど…。
私は高校2年生からずっと一日2箱マルメンを吸っていた。あまりのまずさにびっくりした。
仕事をしていても、頭の中は妊娠の事でいっぱいだった。
話かけられても上の空…。適当な返事をする私に山田が
「なんか今日のりこさん変ですよ。何かあったんですか?」
と聞いてきた。
「別に…。」
「何かあったのなら聞きますよ…。」
「……。妊娠したかも。」
「えっ!!マジっすか!」
「マジ…。冗談でこんな事言えない。」
「彼氏さんには言ってないんですか?」
「まだ、言ってないけど、今日言うつもり…。」
「どうするつもりですか?」
「産める訳ない!山田さんだって私の彼氏どんな人か、知ってるでしょ!?」
「……。」
しばらく沈黙が続き、山田が一言。
「よく、考えて結論出して下さいね。ちゃんと話合って。後悔しない様に…。」
「分かってる…」
仕事が終わりユウスケに電話をかける。ユウスケが出た。「今日も来るんだろ?」
「……。」
私は黙ってしまった。
「…?どした?何かあったんか?」
「ううん。なんでもない。今から家に帰らず、このまま行く…。」そう伝えて電話を切った。
ユウスケの部屋に着いて、ドアを開ける。「お疲れ!どした?りこ、何かあったんか?」私はしばらく黙ったまま下をうつむいていた。そして、「あのね、私、妊娠したかも…。」ユウスケの目が大きくなり、びっくりしているのが分かった。「……マジ?……ってゆうか堕ろすしかないだろ…。」堕ろすしかない…。ユウスケがそう言った瞬間、何故か分からないけど、一気に涙が溢れ出した。産むなんて考えられない。って思いながらどこかで殺すなんて出来ない!ユウスケと私の赤ちゃん…。「どう考えても、無理だろ…?産んだら子供がかわいそうだろ…?俺借金まみれなのに生活出来ないだろ…?」ユウスケが言った。「そんな事分かってる!分かってる。けど、自分でもどうしていいかわかんないんだもん。」しばらく、泣きながら考えてた。ユウスケも黙ったまま…。一人で産んで育てる?私みたいな何もした事ない人が出来るわけない。家事、育児、仕事、全部一人で出来ない。両親にはなんて言う?料理、洗濯した事も一度もないくせに。どんな顔して言うんだ。 お父さんは怒るだろう。男を連れて来い!って怒鳴ると思う。お母さんは泣くだろう。仕事はどうする?赤ちゃんいたら出来るわけない。
堕ろすしかない。
と思えば思うほど、仕方ない理由が頭に浮かぶ。
私は、ユウスケと付き合い始めてから今までかなり大麻吸ってたし、
ここ2ヶ月寝付けないから、睡眠薬も飲んでいた。
赤ちゃんに障害がない。って限らない。
仕方ないんだ。
どうする事も出来ない。
生活出来ないのに、産まれて来る赤ちゃんがかわいそう…。
諦めよう。堕ろしたら、ユウスケとは今までみたいに付き合えない。
黙っていたユウスケが、
「病院には行ったのか…?」
「…まだ…。昨日の夜、検査薬で調べた。明日休みだから行ってみる。」
「分かった。一人で大丈夫か?」
「…一人で行く。」
「ごめんな…。」
「帰るね…。」
いつもは泊まるけど、そんな気になれなくて、ユウスケの部屋を出た。帰る途中、ずっと泣いてた。
涙が止まらない。
なんで、涙が止まらないの!
泣いても、仕方ない!
ごめんなさい。赤ちゃん…。
家に帰ってすぐお風呂に入った
昨日まで気にしてなかったお腹が気になる…。
本当に、ここに 赤ちゃんいるんだ。
昨日まで、使用期限2年過ぎてた検査薬だから、大丈夫。って思ってたくせに、今、私は妊娠してる。って確信してた。
お風呂から上がって、ベットに横になるが、寝れない…。
ごめんね。
ごめんね。
私の赤ちゃん。
結局、また一睡もできず、朝が来た。
鏡を見るとひどい顔…。
おい!私!いつまでメソメソしてんだ!私らしくないぞ!
自分にそう言い聞かせ、ベットから起き上がった。
病院に行く支度しなきゃ!
私は支度して、家を出た。
家から車で40分の小さな産婦人科に行った。
ちょっと遠いが、その病院には内科もあったので、万が一、知り合いや、店のお客さんに会っても、なんか安心できた。
病院に着くと、たくさんの妊婦さんが待合室にいた。
受付に行くと、看護婦さんに、問診表を渡された。
初めての産婦人科に私はすごく、緊張していた。
問診表に記入して、受付に持って行く。すると、紙コップを渡され、
「尿検査するから。」
と言われ、トイレに行く。
それを済ませ、また待合室に戻る。
妊婦さんを見ると、胸がとても苦しかった。
お昼前になってようやく、
「斎藤さん、斎藤りこさん、診察室にお入り下さい。」
と、名前を呼ばれた。
診察室のドアを開ける。
すごく優しそうな先生だった。
看護婦さんが
「下着を脱いで診察台に上がってね。」
私は診察台に上がった。
カーテンをそっと看護婦さんが閉めると、先生が、
「診察台は初めてかな?力抜いて…。」
私はものすごく、緊張していた。すると、真っ暗だった画面に豆粒みたいな物が映った。
「これはね、赤ちゃんの袋だよ。まだ、早いから赤ちゃんは見えないね。」
「これが…赤ちゃん…。」
「妊婦してますよ。」
私は吸い込まれる様にずっと画面を見ていた。
先生が
「では、隣の診察室に移りましょう。」
私は診察台から降りて隣の診察室に行った。
「先生、私…。
赤ちゃん産めないんです。
煙草だって1日2箱吸ってたし、睡眠薬だってずっと飲んでる。
それに、産める状況じゃないんです。」
初めて会った先生に私は大泣きしながら言った。
先生は、
「煙草は今から辞めればいいよ。睡眠薬は、市販の薬かな?それなら、心配ないよ。産めない理由はいろいろあるだろうから…。大丈夫?」私は泣いてうまく言葉に出来ないけど精一杯、先生に伝えた。
結婚もしてない事。彼に多額の借金がある事。
彼も堕ろすしかない。と言ってる事。
今考えると、あんなに大泣きしながらよく言えたな。と思う。
先生も困っただろうな。
しばらく泣いて、少し落ちついたら先生が
「まだ悩んでるんだよね。でも、産まない選択するなら、早い方がいいんだよ。赤ちゃんが大きくなると、手術も大変になるから。いろいろ事情があるだろうけど、産めないなら必ず、避妊するんだよ。悩んでいるなら彼と、もう一度よく考えて…。」
「ごめんなさい…来週にはちゃんと決めて来ます……」「…この写真持って帰る?」
私が頷くと
先生はそっと私の手に渡した。
病院から出ると、2月中旬だというのにポカポカ天気。
赤ちゃん、なんか今日暖かいね。ねぇ、赤ちゃんなんで私のところに来たの?
あなたのパパは恐い人なんだよ。
ママにはすごく優しいけど…
赤ちゃんに話かける。
私、子供嫌いだったのに…
何、話し掛けたりしてんの。
変な私。
でも、やっぱり産めない。
ごめんね。
ごめんね。
ごめんね。
ごめんね。赤ちゃん。
あなたが居るって知って、泣いてばかりだね。
ダメなママで
ごめんね。
ただ、ただ過ぎる毎日…。
何も変わらない。
仕事に行って家に帰る。そしてまた、仕事に行く。
変わった事といえば、煙草をやめた事。やめたって言うより、全くダメ…。
友達の煙草を吸った後の口の臭いにも吐き気がした。
ユウスケからは毎日電話がかかっているが、出てない。
私はユウスケに話をした次の日、仕事を早退して病院に堕胎手術の予約に行っていた。もう、堕胎手術は明後日だ。同意書にユウスケのサインが必要だから電話に出ないといけない。
明日こそ、ユウスケの電話に出て会おう。
それで最後にしよう。
そう決めてベットに入る
私は赤ちゃんの写真を貰ってから毎日写真を見ながら話し掛けてた。
赤ちゃん、ママね、本当にあなたを初めて見た時、すごいって思ったし、すごく感動したし、愛おしいって思ったんだよ。
子供嫌いだったのが信じられないね…
ママいつも素直になれないけどあなたには本当の気持ち知ってて欲しい。
あなたが大好き。
あなたに逢いたい。
産んで幸せにしてあげたい。
ママ。
ママ。
って呼ばれたい。
泣きながら赤ちゃんに伝えた。
朝が来た。
今日はちゃんと電話に出て、ユウスケに会おう。
支度をして、早めに家を出る。
「あら。もう、仕事に行くの?」
ここ一週間、私は仕事から帰ってから毎日家に居る。そんな私を見てお母さんは何も聞かず、見守ってくれてた。
だから私も少し素直になれた。
「今日ちょっと、帰るの遅くなるかも…。」
「…。そう、気をつけて仕事行ってらっしゃい。仕事頑張るのよ!」
「行ってきます!」
少し元気が、出た。私には大好きな仕事がある。私指名のお客さんもたくさんいる。
私は仕事辞めれない。みんなにも迷惑かけれない。仕事がんばろう!そう、心に決めて、家を出た。
店に着き、今日の予約を見る。
私の指名客今日多いなぁ。
よし!!頑張ろっ!
気合いを入れ、仕事をする。
あっという間に、お昼になっていた。
2時すぎにお店が少し落ち着いたので、休憩しょうと、スタッフルームに入った。
携帯を見る。
着信17件!!
はぁ?何、これ!?
見ると、全部ユウスケからだった。
お昼12時すぎからかけてきてた。
電話に出ないからと いってこんなにかけてくる事は今まで一度もない!
何かあったのかも!? と、思い慌てて私は電話をかけた。
「どうしたの!?何かあったの!?」
「りこ!子供産め! 産んで一緒に育てよう。結婚しよう。」
私はすぐに理解ができない。 何言ってんの!?この人?
「意味分かんないんだけど。」
「意味分からんって
今、言っただろ!!俺と結婚して子供産んでほしい。」
あまりにびっくりして、言葉が出ない。
「聞いてんのか!?」
「聞いてるけど、そんなの無理でしょ!!急に何言ってんの!」
「じゃあ、何が無理か。言ってみろ!?」
「借金はどうするのよ!!月々20万ちかく返済してんのよ!!どうやって生活してくつもり!!それに、市民税、国民保険料、国民年金、所得税だって滞納してるでしょ!!こんな状況で、よくそんな事言えるよね!?」
また、泣き出しそうだった。
ユウスケが、
「借金はなんとでもなるだろ!!債務整理して、税金なんか分割出来んだよ!!今まで以上に働くし、大麻もやめる。苦労かけるかもしれない。けど、俺ずっと考えてた。このままじゃいけない!なんとかなる!大丈夫だ。」
普通ならこんな事言われても、絶対産まないだろうし、わざわざ、苦労するかも。ではなく、必ず苦労するのに子供が可哀想。絶対産まない方がいい。って思うだろう。
でも、もしかしたらなんとかなるかも。
私は思った。
ユウスケとなら出来る気がする。
「何があっても、どんな事があっても、絶対俺が、子供と、りこを幸せにする!」
私はこの人と幸せになりたい。
そう思った。
「ユウスケ、これから大変だね。」
「今日仕事終わって、りこの家行く。伝えておいて。」
「今日!? 」
「今日!!いいから伝えて!!グズグズしてる暇はない!!」
モンチッチさん、ありがとうございます😃今朝、誤って閉鎖してしまって😢初めて自分の事を書いてるので日記を広げ、思い出しながら書いてますので読みにくく、分かりにくいと思いますが、よろしくお願いします🙇
字誤、脱字お許しください🙇
ユウスケとの電話を切る
とりあえず、お母さんに電話しなきゃ!
そう思ったが、
何から言えばいいの?
なんて言おう?
そんな事考えている場合じゃない!
私はお母さんの携帯に電話をかけた。
出ない…。
すぐにさくら保育園に直接、電話をかけた。
「はい、さくら保育園です。」
「斎藤ですが、お母さん居ますか?」
「あら!?斎藤先生の娘さんのりこちゃんでしょ!?美容師頑張ってるんだってね!
今度、私もお店に行っていいかしら!?私みたいなおばさんはだめ?」
園長先生の声だった。私は小さい頃さくら保育園に通っていたのですぐ分かった。
早くお母さんを呼んでほしかったが、
「いいえ!そんな事ないです!お待ちしております!」
「ごめんね!いらない話して、なんか懐かしくって。ちょっと待ってね!すぐ斎藤先生呼んでくるから!」
「仕事中にすみません…。」
しばらく待つと、お母さんが電話に出た。
「りこ!?どうしたの?保育園にかけてくるなんて?何かあったの?」
「…妊娠した。」
「はぁ!? 誰が!?」
「誰が!?って…私以外誰がいるのよ!」
私は強い口調で言った。
お母さんはびっくりしたのか、黙った。
「今日、ユウスケが、家に来るから…。」
私がそう言うと、お母さんは、
「お父さんには、お母さんから、なんとなく言っておくから。」
「分かった。言っておいて。」
そう言うと、電話を切った。
お父さん怒るだろうなぁ。
私は高校1年の夏に煙草がばれてものすごく怒られた事以外今まで一度も怒られた事がない。女は妊娠したり、大事な体なのに!と怒鳴り、普段は物静かなお父さんなのに私は一発蹴られぶっ飛んだ。
そんなお父さんは結婚4年目にやっと私が出来て煙草をスパッとやめたらしい。
ばれていただろうけど、それでも私は二十歳になるまでこっそり吸い、二十歳からは堂々と吸っていた。
あぁ、怖い。だいたい彼氏いる事すら知らないのに、いきなり妊娠だもん。
お父さんは私が毎日夜出ていく姿を見てお母さんに、
「りこは、毎晩どこに行ってるんだ!」
と、イライラしながら聞いてくる。とお母さんからいつも聞いていた。お母さんは、
「友達じゃないの。
自分で、りこに聞いたらどう?」
お父さんは、直接聞けないし、聞きたくもないので、結局私に聞いてもこなかった。
あぁ、今夜の事考えるだけで頭がいたい…。
私はお母さんとの電話を切って仕事中ずっと考えてた。
もちろん、考えてもどうにもならない事ばかりだが…。
仕事が終わりさっさと、車に乗りユウスケに電話をかけた。
「今から帰るから、 様子見て連絡するね」
「様子って、様子見てもどうにもならないだろ。今、俺もう家出たし。」
ユウスケはいつも自分で一度決めた事は何があっても突き進む。
そんな人だ。
今家出たって事は私の方が早く家に着く
私は車のスピードを上げた。
家に着く。ドキドキしながら家に入ってリビングのドアを開けた。
ソファーにはお父さんと、お母さんが座っていた。
お父さんは機嫌悪そうな顔して私の顔見るなり、ため息を吐いた。
私は、
「ごめんなさい。赤ちゃん堕ろそうと思ったけど、やっぱり出来ない。産みたい。」
「相手は今から来るんだろ。来てから話をする。」
それから沈黙が5分ぐらいだっただろうけど、私には長い長い沈黙だった。
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
お母さんがすぐ、玄関に向かいドアを開けた。
「こんばんは。」
リビングまで聞こえるほど大きな声で挨拶するユウスケ。普段から目上の人には丁寧ではっきりした大きな声で、話す人だった。
「主人も居ますから。どうぞ。」
「おじゃまします。」
リビングに入って来た。
お父さんが、
「まぁ、座りなさい。」
そう言うと、ユウスケは、
「失礼します。」
と言って腰を下ろした。
「君、名前は?」
「内藤祐介と言います。自分には借金があります。」
えっ!?借金から普通言う!?私は焦った。
両親を見ると二人とも目が点…
そりゃそうだ。
妊娠は私から聞いていたがさすがに借金の事まで私は言えなかった。
「…借金…。りこは妊娠して、その彼氏には借金がある。と言う事なのか?」
お父さんさんはユウスケに確認した。
「すみません。借金は300万あります。債務整理をすればかなり減らせると思います。時間かかっても必ず、りこを幸せにしますのでよろしくお願いします。」
お父さんさんから一度も目をはなさずソファーから降り土下座するユウスケ。
「本当にごめんなさい。堕ろそうと思ったけど、出来ない。
私絶対産みたい。私も頑張るから。」
私もそう言ってユウスケの隣に行き土下座した。
お母さんが、
「お父さん、もう、仕方ないじゃない。
信じて見守ってあげましょうよ。それに産みたいって言っている、りこに堕胎なんて私は絶対させません。」
すごく嬉しくて涙が出た。
今まで反抗ばかりして、何も出来ないこんな私の味方をしてくれたお母さんに心からありがとう。って思った。
「二人とも、顔をあげなさい。…りこを何があっても、絶対、幸せにしろ。泣かしたら許さんからな。りこもこれから大変だぞ。」
あまりにすんなり許してくれたので、夢かと思った。
後でお父さんはあの時のユウスケの目を見て許した。とお母さんから聞いたが、今考えてもよく許してくれたな。と思う。
- << 47 読みました。涙が出て止まりません。
次の日私は朝早く起き産婦人科に急いで行った。一番だったので、すぐ診察室に呼ばれ、先生の挨拶も待てず、すごい勢いで、「先生私赤ちゃん産む!産んでいいって!今から大変だけどこの子となら、何でもできそうな気がする!」先生がにっこり笑って、「良かったですね。いろいろ大変かもしれないですけどお母さんになったんですから頑張って下さいね。」私が大きく頷くと先生が「うちは、産めないので近くの産婦人科に紹介状を書きましょうか?」と言われたので、「私ギリギリまでここに来たいです。臨月までよろしくお願いします!」「分かりました。あまり無理せず頑張って下さいね。」診察してもらい、予定日を聞いた。10月18日だった。
帰りの車の中で私は赤ちゃんに
ママこれからすごく大変だと思うけど、絶対頑張って何があっても負けないであなたを守るから!
そう誓った。
お昼にユウスケから電話がかかってきた。
「りこ、病院どうだった?」
「大丈夫!心配ないよ!」
「そっか、良かった!俺、りこに話がある。夜、バイトするから!工場なんだけど、少しでも金になるかなって!まぁ、俺もオヤジになるし!
りこにもあんまり無理させたくねーしなっ!」
少し照れてそう言った。
「私は大丈夫だよ!それにお店のみんなやオーナーにも迷惑かけれないし、ギリギリまで働くつもりだよ!ユウスケも朝早いんだし、あんまり無理しないでね!」
私達は二人で[親]になる!って決めたからには当たり前だけど、お互い中途半端な気持ちでは絶対出来ないって思ったし、これから二人でガンガンいくぞ!!ユウスケも私もそんな気持ちでいっぱいだった。
それから一週間ぐらいたった頃から私はかなりひどい悪阻に悩まされた。
全く食べれない。
何か食べないと…。
そう思うが、少しでも口にするとすべてそのまま吐いてしまう。
毎日、仕事はフルタイム。
顔面蒼白。
仕事中も何度もトイレに行き吐く。
頑張れ!私!赤ちゃんが元気な証拠だ!!
あの頃、私はそう自分に毎日言い聞かせたが、本当につらく、しんどかった。
悪阻がひどい為、仕事が終わったら夜に 点滴をしてもらう毎日。
先生は時間外でも、イヤな顔せずに毎日話を聞いてくれた。
ユウスケは朝6時に家を出て、夜7時頃まで土木業をして帰り、夜9時から夜中2時まで工場でバイトの毎日。
私は一週間に一度の休みの日は、検診か債務整理の弁護士に相談に行った。
時間を見つけては、お互い毎日一回は短い時間だけど電話で話をした。
そんな生活が続いてたある日。私達は2ヶ月ぶりに会う事になった。お腹の赤ちゃんは4カ月になっていた。
付き合い始めてからこんなに長い間会わない事がなかったので、すごく朝から楽しみで悪阻も少し落ち着いている気がした。
仕事が終わり、ユウスケの家に向かった。
「お疲れ!久しぶっ…」
部屋に入って私はビックリした。ユウスケは坊主頭で痩せてた。
「何!!その頭!!」
「お疲れ!頭はけじめ。りこ痩せすぎってゆうか激痩せ。大丈夫なのか?」
私は悪阻でこの時-6kgユウスケも同じぐらい痩せていた。
「私は大丈夫だよ!それにしてもその頭。けじめね~。変な顔ってゆうか逆に犯罪者みたい…(笑)」
「そこまで言うか?」
久しぶりに笑った気がした。
ユウスケが、
「そういえば籍いつ入れる?住む所はどこにする?」
「私ここに住むよ!!
籍は5月14日の母の日に入れたいな。」
「はぁ!?ここに住むって俺は嫌だ!籍はそうしょう!でも、ここに住むのだけはやめよ。」
私は、そう言われて分かった。なんて言う女じゃない。
「何言ってんの!!ここなら六畳の部屋二つあるし、ただより安い事はない!しかも食費も2人分で三万円払ったらお母さんが夕飯作ってくれるし、私もバリバリ働ける!だいたい、ユウスケだって今の生活だってかなり痩せてるし、ずっとは出来ないよ。出産資金も貯まってないし、水道光熱費はいらないからユウスケの借金を完済してお金貯まるまで心配だからここに居て欲しいって言われたから甘えようと思ってるんだよ…。それでも嫌だって言う?
ユウスケのお父さん、お母さん心配してるんだよ!」
「…分かったよ。借金完済して金貯めるまでだからな…。」
私達は籍を入れたらここに住む事を決めた。無理やりだけどユウスケも分かってくれてたと思う。
読ませて頂いてます😃✨
親はいつも子どもの見方なんだなぁっていうのが、ユウスケさんが挨拶に来た場面で思いました💡
私は親に彼氏が居る事言っていなぃんですが、コレを見て、言おうかな…と思いました😊
子育てをしながらの更新で大変だと思いますが、頑張って下さい💪
5月14日(日曜日)
私達は朝早くに市役所に行き籍を入れた。その日に引っ越す事になってたので忙しい1日だった。
自分の部屋を片付けていると、お母さんが、
「なんか手伝おうか?」
と声を掛けてきた。
「大丈夫。あとは、ユウスケに軽トラに積んでもらうだけだから!」
「じゃあ、リビングでお茶でも飲みなさい。」
私はそう言われお父さんとお母さんが居るリビングに行き、
「お父さん、お母さんいつもわがままばかりで、ぶっきらぼうで素直に口に出して言えなかったけど、本当に今までありがとう。これからも沢山大変な事が山積みだけど私頑張るから…。これからもよろしくお願いします。そして、こんな娘でごめんなさい。」
泣きながらそう言うと、お母さんも泣きながら、
「何言ってるの!お母さんとお父さんはいつもりこの見方よ!何か困った事があったらいつでも言いなさい。」
そう言われて涙が止まらなかった。
すると、お母さんが、
「お母さん、りこに一つ聞きたい事あるんだけど、りこ赤ちゃん産んだら、すぐ仕事復帰したいって言ってたじゃない?お母さんに孫の世話させてくれたら嬉しいんだけど?ダメかしら?」
お母さんが少し笑って聞いてきた。
私はビックリして、
「えっ!?世話って!? 保育園は?」
「もぅいいのよ!出産予定日は10月18日でしょ?りこの性格からすれば1ヶ月ぐらい休んだら働きたいんでしょ!?」
そう思ってはいたけど1ヶ月から預かってくれる保育園はないし、お母さんが保育園の仕事辞めて見てくれるなんて本当に私にとってこれ以上の事はない。
「本気で言ってるの? 仕事本当に辞めるの?」
「嘘でこんな事言わないわよ(笑)お母さんいつか孫が産まれたら仕事辞めて世話したかったの。だから園長先生にお願いしたら、いちおう保育園の生活発表会が、11月にあるからそれが終わったら大丈夫よ!お母さん副担任だし!」
本当にすごく嬉しかった。
そしてお母さんなら 赤ちゃん預けても安心出来るし心強かった。
「こんにちはー!」
ユウスケの大きな声。
荷物を取りに来たようだ。
私はリビングから大きな声で、
「二階の私の部屋にまとめてあるからお願いね!」
「了解!!」
ユウスケは急いで二階に上がった。
荷物を軽トラに次々と積み込んでいく。
私はこれからユウスケと一緒に住む事が楽しみ。というより初めて実家から出るので すごく寂しかった。
今までは、一人暮らししたい!ユウスケと同棲したい!家を出たい!って思っていたけど、本当に家を出る事になると、すごく寂しかった。
まぁ、そんな事言ってる場合じゃないんだけど…。
お父さんと、お母さんも手伝ってくれて私の荷物はあっという間に片付いた。
「ありがとう。」
両親にそう言って実家を後にした。
車に乗るとまた涙が出た。でも、泣いてる自分をお母さんに見せたくなくて実家が見えなくなるまでは我慢した。
実家とユウスケの家は同じ市内なのに自分でも今考えたら大袈裟だと思う。
でも、本当にこの時の私は情緒不安定でよく泣いていた。
ユウスケと新しい生活が始まった。
ユウスケのお父さん、お母さんはとても良くしてくれる。
債務整理も順調に進み、サラ金に支払いは直接しなくて良いので、弁護士さんの口座に月々3万円振り込んだ。それだけでもかなり気持ちも楽になった。
しかし、ユウスケは国民健康保険、所得税、市県民税、国民年金すべて滞納していたので、問題は山積みだった。
私は仕事休みの日も朝早く起きて、検診がある時は朝一番に検診に行き、終わるとすぐに、債務整理の弁護士さんに早く借金完済したいので話に行き、市役所、税務署にも何度も通って、金額が大きいのは分割したりして払った。
でも赤ちゃんの為に貯金も必死にした。
そんな時、税務署で最後の税金を払って、
「これで最後ですよね!」
「そうですね。すべて支払われました」税務署の人がそう言った。私はやっと税金から解放された!
すごく嬉しかった。
来月からもぅ少し貯金が出来る!
早く出産資金貯めなきゃ!赤ちゃんに安心して産まれてきてほしい。そんな願いで貯金していた。
そんな時、税務署からまた封筒が届いた。
開けて見るとまた税金!しかも30万!はぁ!?何これ!?
慌てて税務署に行くと先日対応した職員がいたので怒った口調で、
「これが届いたんですけど!私この間全部支払いましたよね!あなたすべて支払い終わったって言いましたよね!!」
職員は封筒の中を見て、
「あぁ、これ予定納税ですね。これも支払わないといけませんよ。国民の義務ですから。」
むかついた。
それと同時に
「ふざけんな。一体いつになったら支払い本当に終わるんや。出産資金貯めなきゃいけないのに!もぅ嫌だ!」
最初は威勢が良かった私だが、なんか悔しくて涙が出てきた。
「そうは言われても義務は義務ですから。」
その職員の顔が馬鹿にした様に私を見るので腹が立って仕方なかった。
私はしばらく黙り冷静になって考えた。
こんな事で泣いてちゃダメだ!私が決めた事だ!私はママになるんだから!
「分かりました。この予定納税を払ったらすべて支払いが終わるんですね。今から銀行に行って今日一括で支払います。」
私はそう言って、30万銀行から引き出しその日のうちに支払った。
支払い終えた通帳の残高は5万円もなかった。
大丈夫!もぅすぐ給料日!今まだ6ヶ月だから赤ちゃん心配しないでね!ちゃんとお金貯めるから!ごめんね。
ごめんね。
絶対大丈夫。
ママとパパ頑張るから。
そう赤ちゃんに言いながら私は家に帰った。
家に帰ってユウスケに、
「やっと税金終わったけど、通帳に5万円もないんだ。今日むかついたから全部払っちゃった。でももぅすぐ給料日だから頑張ろうね!!」
ユウスケが、
「本当にごめんな…。俺のせいで…。」
「過去は過去!今頑張ってるんだからそれでいいじゃん!ユウスケらしくないよ!」
ユウスケは本当にこの時申し訳ない気持ちだったらしい。
元気がないユウスケに私は、
「一個づつ片付けていこ!!赤ちゃんの為にねっ!!」
ユウスケが、
「よしっ!!明日も翔の為に稼ぐぞ~!!」
「…!!! しょう…?って赤ちゃんの名前?」
「俺、絶対男だと思うんだ。名前は翔に決めた!」
ユウスケはすごい笑顔でそう言った。
「まだ分かんないのに(笑)」
赤ちゃんの名前は翔に決まった。
女の子だったらガッカリするだろうな~
来週の検診待ち遠しいな~。
待ちに待った検診日。
私はドキドキしながら病院に行った。
ユウスケは男の子って言ってたけど、私は女の子がいいな~。なんて思っていた。
ユウスケのお父さんやお母さんも女の子がいいな~。なんて言ってたし、ユウスケは男二人兄弟。お父さん達が女の子に憧れる気持ちも分かる。
私の両親も女の子がいいな~。なんて言ってた。
実際元気に産まれてくれたらどっちでもいいのだろうけど。
希望としては女の子!
あぁ~ドキドキする~。
「内藤さん、診察室にお入り下さい。」
先生がエコーで赤ちゃんを見る。
「今日も元気な赤ちゃんだね!性別希望だったよね!」
「はい!!教えて下さい!」
「ばっちり見えますよ!これおちんちんね!!」
「…おちんちん!?」
えっ!!男の子!?
夢にまで女の子が出てきたのに…。
まぁ
翔くん!これからよろしくねっ!!
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