今後の私
✨始めに(注意事項)✨
🍀主な登場人物や場所等の名称は仮名・もしくはイニシャルで話を進めていこうと思います。
🍀この話は自分が経験した過去の出来事から回想を始め、今という時間を経由してこれからいずれなる三十路のまでの話を書いていこうと思います。経験談と架空の話を織り交ぜて書くので宜しくお願いします。
🍀毎日更新は出来ないかもしれません。時折、間が空く事もありますが御理解下さい。
🍀約束事として誹謗中傷はやめて下さい。
ではこれからスタートです🙋
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「S!おめでと~!」真夏のある晩、数少ない友人達に祝って貰い、小さな店の一角で私の誕生日会が開催された。
バースデーケーキが用意され、周囲にいた客からも拍車を貰った。
友人の中にはEもいて、誕生日会という名目で私を含めた女4人で久々に飲んで騒いで楽しんだ。
私とEは中学の頃からの友人で、同じ高校に進学して新たに出会ったのが今いるメンバーのKとTである。
高校卒業後、4人とも進学や就職をして進む道は違ったが、今でもこうしてたまに会っていた。
Kはモデルのような長身でスレンダーなイメージに対して、Tは背が高くも低くもなく、容姿や服装の好みも私と類似する点があった。
Eは相変わらずフェミニンさを失わず、小柄で可愛さにより磨きがかかったような気がする。
私と言えば特に容姿が変貌する訳でもなく、これまで通りで、ただ以前より更に髪が伸びただけの変化であった。
「Sはどこまで髪伸ばすの?」Eが私の頭を撫ぜながら聞いてきた。
「特に決めてないな~…」ソファに寄り掛かると、ふと天井を見上げるようにして私は答える。
テーブルを挟み、ソファ席にEと私、KとTが隣同士で座っていた。
「あのさ、二人とも…」Eと私の会話が終わるのを待っていたかのようにTが言い出した。
そんなTを肘を立てながらKは横から眺めるように見ていた。
「同窓会?!」
T以外の3人が声をハモらせ驚いた。
私は高校時代の友人が少ないため連絡網があまりなく、Eは今だに長い付き合いの彼がいるため、高校時代の友人とは疎遠になりつつあった。
「あれマジでするの?」Kは顔を上げ、姿勢を正すと何か知っているような言い方をする。
「えっ?」Eと私は互いに顔を見合わせ2人してKを見た。
「同学年全クラスじゃないんだけど…」Kは話しながら頭を掻きつつ今度はTに視線を送る。
Tは頷くと「仲間内だけで同窓会しないかって話があるの」Kの話を引き継ぐように話始めた。
誕生日から数日たったある日、Kから1通のメールがきた。『開催決定~✌盆休みに集まれるメンバーだけで👍🌟』
“なんか文章がハジけてるな~…”と思いつつ、『了解~、詳しい詳細求む✋』と私はKにメールを送った。
すると『当日は一緒に行こうね~🎵』とまたKからすぐにメールがきた。
後日談だが、どうやらKは私の誕生日会があったあの日、Tが同窓会の話をする前から風の噂で知っていたらしい。
ただKはホントに同窓会を開催する気でいた事は知らなかったらしく、
ビックリしたとこの時、私に話していた。
また後日、今度はTからメールで詳しい詳細を明された。当日は30人近く来るらしい。
“盆休みにも関わらず、1クラス分程の人数をよく集められたな”と感心した。
同窓会の日が刻々と近付く中、日差しの強い炎天下の下、私は自転車に乗り馴染みの美容院に行く事にした。
どうせなら少しでも変わった姿を久々に会う同級生達に見せようと思い付いたからだ。
「今日はSさんどんな髪型にしますか~?」
馴染みの美容院で美容師が私の髪を触りながら聞いてきた。
席に座り、美容院にあるヘアカタログの本を手にしながらサッと探す。
「これって私の髪質でも大丈夫ですか?」
写真を見ながらあるページに指を差して美容師に尋ねてみた。
私は思いつきで、ゆるふわウエーブヘアに挑戦しようとした。
美容師は私の髪を見つつ、雑誌を丹念に確認すると「そうですね~…」「長さも割とあるし、大丈夫ですよ~」と言い、笑顔で答えてくれた。
美容院を出る頃には日中の暑さも多少は和らぎ、夕方になりつつあった。夕方といっても外はまだ明るい。
店の前に止めてあった自転車に乗り、私はペダルを走らせた。
髪が軽やかに風に靡く。単純な発想だが、初めてのパーマに女子力がアップしたかのような気分になっていた。
運良く自分のイメージ通りにヘアスタイルが決まったからかもしれない。
まだ別れた時の傷が癒えた訳ではないが私は久々に心弾んだ。
Yと付き合っていた頃、私の世界の中心はYだった。その頃は恋愛のみに全てを費やし、それ以外に夢中になるものがなかったのかもしれない。
別れた日に心に秘めた
自分に自信がつく何か…をまだ私は見つける事が出来ずにいる。
別れてからまだ日は浅く、そう簡単に見つかれば苦労はしないだろう。
ただ心に何か変化があるとすれば、自分の誕生日の日に何かが私の中で生まれたのは確かで、
同窓会の話を聞いたあの日、この気持ちに対して今後のヒントが隠されているような気がしてならなかった。
盆休みに当たる8月中旬、晩の午後7時半にチェーン店の居酒屋の一部を貸切、高校を卒業してから6年振りに仲間内だけで同級生が集まった。
私はKと一緒に行く約束をしていたので2人で同窓会が開かれる居酒屋にやってきた。店に入り、店員に案内されると目の前には既に懐かしい顔触れが何人かいる。
顔を合わすなり、「元気~?」「久しぶり~!」と似たような言葉が飛び交う中、私とKは空席を見つけるととりあえずそこに座る事にした。
因みにTは私達2人よりも早くに違うグループと到着しており、楽しそうにそのグループと談笑している最中だった。
Eは彼の手前もあるので…っていう理由で不参加だった。
同窓会開始の時間より遅れてくる者もいたが、
予定の人数全員が集まる頃には開始から1時間程過ぎようとしていた。
貸切時間は120分、
飲み放題付きのコースを頼み、料金は各自折半する事になっている。
男女の比率は男が4で女が6ぐらいの割合だろうか?当初は30人近くと聞いていたが実際集まったのは24人だった。
正直この人数で120分は物足りないとさえ感じてしまう。
どうやらそれは周囲も感じていたようで2次会に来れるメンバーだけで、また飲もうという話が出始めつつあった。
KもTも思い思いに色んな人と話していた。
2人とも違う場所に席を移動して盛り上がっていたため、私は当初いた席に取り残されたような形になってしまった。
“私も席を移動しよう”
そう思った矢先、「Sは2次会参加すんの?」と後ろから声をかけられ、私は後ろを振り返った。
そこにいた人物は見覚えのない男だった。
「……?」
しばらく無言になり、首を傾げる私に対しては
「あれ?もしかして誰かわかってない?」と男は慌てるように言う。
「…あっ!Aッ!?」私はようやく思い出すと苦笑を浮かべながら
「マジで気付いてなかった?」とAは言った。
私は「卒業して以来会ってないし、なんか雰囲気違うからわからなかった」と冗談混りに言うと
「そんな変わったか~?」とAは笑いながら答えた。
Aとは特に親しい友人という訳ではないが、Eと同じで中学からの同級生でもあった。
Aは高校生になった途端、持前の愛嬌とその容姿から全学年の女子から人気があり、ファンクラブも発足されたという伝説さえ残っている。
確かに相変わらず格好良いと言えば格好良いが、私は特にAには今も昔も興味はない。
当時はどういう訳か
「Sちゃん」と呼ばれ、
何度か同じクラスの女子からAとの関係について呼び出される事もよくあった。
「変われば変わるもんだな~…」マジマジとAは私を見てきた。
テーブルには私とA以外にも数人が席に座っており、Aの言葉に席にいた何人かが反応した。
「確かショートだったりセミロングだったりだよね~?」皆、端々から言葉が出てくる。
誰かが「昔と比べたら垢抜けたよ」と言った言葉に私は内心手応えを感じていた。美容院に行った甲斐がある。
例えその場凌ぎでも
「全然変わってないね」
…なんて言葉だけは聞きたくなかった。
会計を済ませ、居酒屋を出ると相変わらずの外の暑さと色んな意味を含めてうんざりした。
ただ暑さだけではなく、既に酒に酔い潰れた者も何人かいるからだ。足は千鳥足だったり、笑い上戸だったりして愉快な事になっている。
私はあまりお酒が得意ではないため、こういう時は素面で淡々としていた。携帯で時刻を見ると結構いい時間のように思える。
Aに2次会の事を聞かれなければとっくに帰っていたが、KもTも2次会に行くと聞いたので私も友人の付き合いで行く事にした。
時刻は夜10時を回ろうとする頃、居酒屋から駅に向う方向に数分程歩いた先にカラオケ店があり、そこで2次会を始める事になった。
人数は更に減りまだ13~4人程残っている。団体なので次の居酒屋に行っても席があるかもわからなければ、予約もしていない。となればカラオケ店が妥当な線だろう。
店に到着すると待ち時間もなく、運良くすぐに部屋に案内された。
席に座れると何故かAが私の隣に座った。
さっきまで別行動をしていたKとTも私の近くに座る。
面白い事になんだか2人共、ソワソワしてるように見えた。
ここだけの話だが、私とKとTが友人になったキッカケはなんとAである。Aはその事を知らないが、当時KとTはAのファンだった。
なんだか久し振りに見るその光景に高校時代の懐かしい思い出が私の中で甦ってきた。
今まで連絡先も知らなければ、仲が凄く良かった訳でもなかったが、この同窓会の日をキッカケに互いにメアドを交換し、Aとメールをするようになった。
心の傷がまだ塞ぐ事のないまま、少しずつまた新たに自分の世界が広がっていく。
Aとの再会を機に偶然にも私には目的が2つ出来たのでだった。
24歳ぐらいからそろそろ結婚適齢期に入る頃だろうか?この時点で相手もいなければ、そんな予定など私には到底ない。
小さい頃はこのぐらいの歳には結婚していると思っていたが世の中そんなに甘くはなかった。
楽しかった同窓会もあっという間に過ぎた。自分の中では真夏のメインイベントが誕生と同窓会だったからだ。
夏が過ぎ、秋に入ったばかりの頃、Aと2人で会う約束を交わしていた。丁度その日が今日であり、Aは私の住むマンションまで車でやってきた。
互いに住んでいる家は知っており、まだ地元に住んでいたため、会うには便利が良かった。
Aの車に乗ると市内中心部まで向かった。向かった先は有名なホテルが建ち並ぶオフィス街に近い場所だ。
その周辺にはそれなりに歴史のある建築物の美術館もあり、更に周辺には個展を開いている所も幾つか目にした。
実は同窓会があったあの日、当時生徒から慕われていた恩師も来ていた。今日はその恩師が個展を開いているとの事で招待された訳である。
開催時刻は午後1~5時まで。開催開始時間に間に合わせるため、Aは車を走らせた。
恩師は国語の教諭で、
趣味で油絵や写真を撮っていた。数年に1度のペースで個展も開いており、メジャーな雑誌に載った事もある。
しかしながら掲載された雑誌は主婦向けのマイホーム雑誌であり、
旦那は趣味でこんな事をしてますって感じの紹介記事だった。それでも当時学生の頃、散々自慢されたような記憶が私の中で残っている。
個展が開かれている小さな展示場に着くと「また珍しい組み合わせだな~!」と言いながらAと私を恩師は笑顔で出迎えてくれた。
「Sはわかるが、Aはどうした?」
恩師は笑いながらAの頭を豪快に撫でた。
Aは芸術には無縁なタイプだからだ。
今の時代の教科の種別はわからないが、当時私が高校生だった頃は選択科目というものがあり、美術・音楽・書道のどれか1つを選ばないといけない教科があった。
「Sは昔から授業中もノートに絵(落書き)描いてたもんな~」
Aの次に今度は私がターゲットにされそうになり、慌てて私はその場を離れるように逃げ出した。
昔、私は絵を描くのが好きだった。昔は趣味でコミックタッチのイラストや水彩を使った風景画、油絵も描いていた。
写真も好きで、
撮影から現像まで手掛けた経験もある。恩師が写真の機材(一眼レフ等)を貸してくれた事もあるぐらいだった。
だが、働き始めた頃には絵を描くのも写真を撮るのも私は時間がない事を理由にその趣味を辞めてしまっていた。
「2人共、今なんの仕事をしてるんだ?」
恩師がAと私に質問を投げ掛けた。
「俺は建築現場で働いてるけど」「私は総合病院で受付の仕事してるよ」とそれぞれ答えた。
Aも私も高校卒業後、就職の道を選んだが互いにどんな職業に就いたのかは今初めて知った。
私の場合、受付の仕事が初めての職場ではない。初就職した時は製造関係の会社で3年近く事務の仕事をしていた。
今の職場は21歳の頃に就職してもう3年を過ぎた頃だった。
「Aについてはわからなくもないが、Sの場合は予想外だったな~…」
恩師は顎を掻きながら呟いた。
「なんで~?」その言葉に私は反応した。
「絵が好きだったからそういう仕事すると思ってた」そう恩師が言った。
“どういう仕事だ?”とも思ったが、恩師にしては何気ない一言だったのかもしれないが私の中で電撃が走った 。
恩師とは同窓会の時に席が離れていたため、
会話も満足に出来なかったが、個展を覗きにやってきて本当に良かったと思う。
恩師は全員ではないが、生徒の数人に個展のチケットを渡していて、Aも貰った内の1人だった。
同窓会の席では結構な人数がいたので個々に全員に渡す事は出来なかったらしい。
恩師はその渡した数人に数枚のチケットをまとめて渡していたお陰でこうやって私は個展にくる事が出来た。
時刻は午後3時を回った頃、恩師の個展を後にしてまたAと車で走り出した。
まだ昼食を摂っていなかったため、遅めの昼食を摂る事になったのだ。
Aは行きたい店があると言い、私は特に要望がなかったので快諾して今その店に向かっている最中だった。
店に到着したのはいいが、市内中心部に程近い場所にあると思えない程、小さく古ぼけた感じの店だった。
中に入ると外観と印象は全く変わらず、一層年季が入った感じがする。
私の様子に気付いたのか?「職場の先輩に教えて貰った店だけど、味はお墨付き!」と自慢気な顔してAは言った。
「ふ~ん‥‥」
それに対して素っ気ない返事をしたものの、私は内心“ホントか?”とAを疑ってしまった。
意外にも客入りは多く、時々店の外を見ると客が並んでる事もあった。
Aと私はそこで店の定番メニューを注文した。デミグラスソースのかかったオムライスが目の前に置かれると恐る恐る一口口にした。
「…旨ッ!!」
私のその反応に笑いながらAは私の頬を軽く突いた。昼食後、Aとはあっさり別れた。
しかし中途な時間に食事を摂ったので昼食というより、夕食に近いような気もする。その加減で晩になってもお腹が減る事はなかった。
紅葉の葉が少しずつ紅く染まろうとする頃、Aとよくバイクの話をするようになっていた。
私は元々車より、バイクに興味があったので話だけでも充分楽しかった。Aから電話が掛かってきた時の事である。
「Sってなんか免許持ってたっけ?」
「車の免許ならあるよ」
互いに些細な日常会話が進んでいく。
「そんなに興味あるならバイクの免許取れば?」
「それが~…」
私はAの問いに対して言葉を詰らせた。
昔、車の免許が取れる歳になった頃、車より先にバイクの免許を取ると私の親に伝えると、
「危ないから!」
と親に猛反対され、
渋々車の免許だけを取った苦い思い出が私にはあった…。
当時、私は親に反対された話をAに話すとAはサラリと言いのけた。
「それなら内緒で免許取ればいい」
「バイクの免許は取った者勝ちだし!」
私はAのその言葉に目から鱗だった。こんなに簡単な事に今まで気付かなかったというなんとも間抜けな話である。
秋が深まりつつある日、親に内緒で私は昔通った教習所に電話で問い合わせる事にした。
教習所の受付の話ではバイクの場合、倒れたバイクを起こせないと受講資格がないらしく、
教官の前でバイクを起こせるか試しに来て下さいと言われた。
その時、私は念のために受講資格がある場合の手続きの詳細も聞いておいた。受講資格は当然のものと何故か自分の中で確信していた。
空が澄んだ秋晴れの中、仕事が休みの日に久々に教習所を訪れた。
ここにはもう来る事はないと思っていただけに懐かしい。
教習所内に入ると早速、受付に向かった。教習所の教官に案内され、バイクを起こしに向かう。
教官からバイクの起こし方のコツを聞くとすぐに起こさせるか試す事になった。
初めての経験だったが実際に体感してみて予想以上にバイクは重かった。
起こす事に運良く成功するとそれを確かめた教官から「良かったですね、今日手続きされますか?」聞かれたので「はい!」と私は直ぐさま返答した。
この日を機にまた教習所にしばらく通う事になった。
教習所に通い始まると私の中で不思議と充実感があった。
好きなバイクに乗れる嬉しさと小さい事かもしれないが前に進むための目的が出来たように思えたからだ。
今まで夢も目的もなく、ただ時間だけが流れる毎日を送っていたのが嘘のようで、
目的が出来ただけでここまで心境の変化が表れたのにも私自身が驚いた。
季節が過ぎるのは早いもので教習所に通い始めてから季節は秋から冬へと移り変わっていた。
外に出ると当然のように北風が吹き荒れ、時々雪がちらつく日もあった。
そんな天候の中、私は凍える手をカイロで温めながら地道にバイクの講習をこなす日々をまだ続けており、こんな日々を続けていたせいか?
気が付けば世間では既にクリスマスの装飾が施され、クリスマスの時期が到来していた。
年末の慌しさが見え隠れしつつもきっと子供達を始め、家族や恋人達にすれば楽しい季節だろう。
私はというと、クリスマスに予定を立てる事もなければ、仕事か教習所のどちらかしかない毎日を送っていた。
そう、今年は一人ぼっちのクリスマスを迎えようとしていたのだ…。
真冬の夜、仕事から家に帰ると家の明かりは燈っておらず私は自分の手で部屋の明かりを付けた。
クリスマスイブ当日、
家族は旅行に出掛けており、私だけが仕事の都合で家族と予定が合わなかった。
仕事以外に予定を立てれなかった私は、コンビニで小さなケーキを買ってきて1人で食べようとしていた。
去年と違い、なんとも寂しいクリスマスである。
テレビの電源を入れ、賑やかそうな番組を選ぶと外に出る気もせず、私は呑気に家で寛いでいた。
こんな日に誰に連絡しても繋がらないと思っていたからだ。そうは思いつつも携帯を手にしてみる…。
“あれ‥‥?”
携帯には知らないアドレスから1件のメールが届いた。見覚えがないだけに恐る恐るメールを開いてみると…
『メリークリスマス』
なんとも簡素な文が添えられ、メールの中には1つの添付データが入ってて、開くとクリスマスソングがオルゴールの音で優しく流れてきた。
この憐れな私を不憫に思い、誰かが気を利かせた悪戯メールでも送ってくれたのだろうか?
時期が時期だけにやさぐれモード全開だ。
しかしアドレスを変えてまで手の込んだ事をする人物も思い浮かばない。
疑問に思い、もう1度メールの内容を確信してみた。よく見ると文章にはまだ続きがあった。
「嘘‥‥」大袈裟かもしれないがクリスマスの奇跡と言うべきか?私は信じられずにいた。
『メリークリスマス』の文章の後に長い改行が続き、スクロールバーを下ろしていく。
『元気にしてたか?』
また続きがあり短い文章が添えられていた。
送り主不明で最終的に誰が送信したものかメール内容では明さずに終わっているが、私はようやく最後の文で気付く事が出来た。
この送り主はYからだと。
別れてから互いに連絡は一切取らずにいた。
私はメアドを一切変更する事はしなかったが、Yは別れてからすぐにメアドを変え、私から連絡が出来ないようにしているはずだと思っていたからだ。
現にメアドが変わっているのはその証拠であるが、何故今頃になって私にメールを送ってきたのか?その事に対して私は不思議に思った。
私はこの謎のメアド先に返信しようか迷った。Yからだと思うものの確証がない。
それにもしYだったとしても元カノと寄りを戻しているはずなので、逆にこんな時期に私に連絡する事もないだろう。
でも何故かわからないがこの機を逃すと私はYとは一生連絡する事は出来ないと感じていた。
Yとは梅雨の時期に別れてからもう半年になる。まだ想いがあると言えば正直私の中でまだ残っていた。
散々迷い、それでも連絡を取る事にした。
『もしかしてY?』
私は短い内容のメールを送信する。すぐにはメールが返ってこなかったが数時間後、今度は電話がかかってきた。
日付は変わり、24日から25日へと変わった深夜の事である。
まるでサンタの贈り物のような心境で見覚えのある番号の電話に出る事にした。電話の主が誰だか断定されたからだ。
色褪せる事も風化する事もなく、今だに色鮮やかに色んな思い出や当時の想いが残っている。
懐かしくもあり、切なくもあるその気持ちを私はまだ抱いており、久々に聞いたYの声は私の心の奥で深く浸透していった。
年が明け新年を迎えた、三が日が過ぎた4日目。私はこの日、ある歩道橋の上にいた。
街中にいる訳だが正月休みという事もあり、普段より人で溢れてはいない。前方を見ると私のいる橋の反対側から見覚えのある姿が見えてきた。
心の整理が出来ないまま、Yとの距離がどんどん近付いてゆく。
そしてYは一度私と擦れ違い、至近距離にいるにも関わらず私に気付いてくれなかった。
クリスマスの日に電話越しで再会を約束した訳だが、待ち合わせ場所にお互い到着してその距離僅か1メートル足らず…。
何かアクションを起さないと話は進まず、Yが私に気付かれない事に業を煮やした私は自分から思い切って声を掛ける事にした。
「久しぶりだね‥」
私なりに精一杯考えて出た言葉は至って単純なものだった。
「え‥‥?」
かすかに声が漏れたかと思うと私を見てYは小さく瞬きをする。
「S‥‥?」
私を指差し、自分の口元にYは手を当てた。
「へぇ~‥‥」
まるで感心したかのような声を出すとYは私をあらゆる角度から見た。
「何してるの…?」
久しぶりの感動?の再会なのだが、意表を突かれた私はその場に立ち尽くした形になる。
「全然わからなかった、変わり過ぎて…」
Yは自分の腕を組みながら私にそう言ってきた。
この時の私の容姿は夏頃にかけたゆるふわウエーブヘアの髪型のままだった。
髪も相変わらず伸ばし続け、髪色は夏と比べれば少し明るめの色になっている。
Yと付き合ってた頃はストレートのセミロング。付き合っていた頃、あまり履かなかったスカートも別れてからたまに履くようになっていた。
因みにYは私と別れてから髪を染めていなかったみたいで、髪の長さは以前と同じだが、別れてから私と離れていた分だけ頭の天辺の黒髪が伸びた感じだった。
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小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
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432レス 16774HIT 旅人さん (20代 ♀) -
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36レス 953HIT コラムニストさん -
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キマッたっ!!!!!!!!!(;^ω^) いやぁ~~~~!!我な…(saizou_2nd)
347レス 4103HIT saizou_2nd (40代 ♂)
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20世紀少年
2レス 116HIT コラムニストさん -
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500レス 5786HIT saizou_2nd (40代 ♂) -
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84レス 3710HIT 苺レモンミルク
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500レス 3259HIT 作家さん -
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500レス 5786HIT saizou_2nd (40代 ♂) -
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