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キミの手

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詩人知らず( mxeFh )
08/04/06 09:34(更新日時)

初めまして。

只今、『恋愛人生』という駄文を書かせて頂いております。


元々、飽き症で浮気者な性格の為。
もう一本書いてみたくなってしまいました。
誤字、脱字、打ち間違い等お見苦しい点はあるかと思いますが、

時間に余裕のある方は読んで頂ければ幸いです。

もっとお時間の許される方は、御感想や御指摘を頂ければ嬉しく思います。

厳しい御意見は参考にさせて戴きたく思っております。

何卒宜しくお願いします。

No.925662 08/02/16 08:40(スレ作成日時)

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No.1 08/02/16 08:44
詩人知らず ( mxeFh )

キミはいつから僕の隣にいたんだろう?



キミはいつからあんなに綺麗になったんだろう。



キミを護れる事が


あの頃の


僕の総て。



繋いだ手を先に放したのは。



どちらだったんだろう?

No.2 08/02/16 16:52
詩人知らず ( mxeFh )

>> 1 物心が付いた時から隣に。こんなに近くに。


それがどんなに大切だって、人は傍にあり過ぎると見えなくなるんだ。





『トモくん。あのね。


聞いて る?



ねぇ、聞いて。



華 ね。



大きくなったら



絶対。



絶~対っ



トモくんのお嫁さんになるんだぁ。』





可愛い華。


よく転んでは、泣いてたね。


僕の後を置いて行かれない様に、一生懸命追いかけて。


意地悪な僕は、キミをたくさん泣かせたね。

あの日


あの雨の夜、キミを抱き締められたなら


キミを失わずに済んだだろうか?





花のような、あの笑顔を。

No.3 08/02/16 17:27
詩人知らず ( mxeFh )

>> 2    side・華


~~高校一年 春~~


『華 いい加減に起きなさいッ!!

あんた入学早々、また遅刻する気!?』



いつも通りの騒がしい朝。


篠田家では。


年中通して、繰り広げられている光景。


しかし、今朝は少し様子が違った。


通常母親が『飛び蹴り』ぐらい仕掛けないと、起きてくる気配すら無い寝坊助娘だ。

しかし。

この時、既にベッドは、もぬけの殻だった。




AM 06:30


待ちに待った朝。高校生活4日目。


ゆっくり、なんて寝てられますかってのっ!!!


華は今にもスッキプしそうな勢いで、通学電車に飛び乗った。




『トモくん。 


トモくんはっ?とっ?


いたぁああ。』



まだ通勤ラッシュには早い時間帯。


空いている訳でも、混んでいる訳でもない車内。



お目当ての人物を見付けて、少し大きめの声を出す。

周りの視線が、真新しい制服に身を包んだ女子高生に集中する。

しかし、当の華は我、関せずだ。



『おまっ 何して!?!? こんな時間に?』

電車の中で注目なんて集めたくはない。

そんな迷惑さを隠しもせずに振り向いた想い人。

No.4 08/02/16 18:09
詩人知らず ( mxeFh )

>> 3 畑山 智樹。


華が将来、勝手に『お嫁さん』に立候補している。

お隣の、2つ年上のお兄さんだ。


『どぉして?』


『何がッ!?』


『せっかく。トモくんと一緒の高校受かったのにぃ。

いつも。

いつも。

こんな早くに行っちゃうんだもん。』

プゥッと頬を膨らませる。


『朝練だよ…。


お前こそ。

寝坊助なくせに、こんな時間に何してんだよ?』


智樹は、バスケ部のキャプテンだ。


『トモくんと


一緒に登校


しようと思って…。』

明らかに迷惑そうな、智樹の表情にシュンとなる。

まるで棄てられた、子犬ような目だ。



『あ~~ッ。
もぉ……。
分かったから…。

電車ん中で大声出すな。

大人しく座ってろよ。』


まるっきり、子供扱いだ。


智樹にとって、華はまだまだ子供に過ぎない。


それでも華は、智樹の隣に居られるだけで上気嫌だった。


わぁ~い。トモくんと一緒に初登校だ。


華の頭は、これから始まるであろう。

智樹との幸せな未来しか描かれていなかった。

No.5 08/02/16 19:04
詩人知らず ( mxeFh )

>> 4   side・智樹


~~高校三年 春~~


智樹は、朝練を終えたばかりだった。

蛇口から溢れ出る、心地良い水で顔を洗っていた。


キュッ。


突然水が止まった。


ふと顔をあげると、白いスポーツタオルが差し出されていた。


『どうぞ。』


声でマネージャー高瀬 円佳だと分かる。


『おぅ。サンキュ。』

『もぉ水浸し。髪の毛…。

ちゃんと乾かさないと、風邪引くわよ。』


『オッ。心配してくれるの?

嬉しいね。

ようやくオレの愛が伝わったんだ?』

『フッ。言ってれば?

大切なエースに、風邪引かれちゃ困るだけ。

マネージャーとしては当然でしょ?

鑑よね。あたしって。』

『言ってらぁ。

まぁ、マジで鑑だけどな…。』

真剣なまなざし。

智樹に見つめられ円佳は少し、たじろぐ。


『じゃあ、あたし先 教室帰るから。

タオル部室にでも掛けておいてね。』


逃げる様に、智樹の元から走り去る。


背中に痛い程、智樹の視線を感じながら―――。

No.6 08/02/16 21:16
詩人知らず ( mxeFh )

>> 5 一つ溜息を吐く。

円佳より5分程遅れて、教室に戻る。


ザワザワ。


いつもより廊下が騒がしい。


見覚えのある野郎共が、廊下に群がっていた。
智樹のクラスの男子連中だ。


『キミ一年生??誰か探してるの~?誰?誰?』


『ちっちゃくて。可愛いなぁ。お兄さんと今度デートしょ♪♪きっと、楽しいよッ。』


『何?誰かの彼女ちゃん?
乗り換えるなら、オレなんてお買い得よん♪』

『……  ト モくん…。』


怯えたような声で呟く。

『ト モ…?トモって智樹??
だってあいつって……確か』

『華!!?』


その声に、急に華の表情が一変する。


安堵の笑顔。


『ッ!?』


突然、智樹に腕を掴まれ、輪の中から引っぱり出される。


クラスメイトの視線を気にして、階段の踊り場へ。

『何やってんだよッ!?』

智樹に突然怒鳴られて、泣き出す一歩手前の表情になる。

男を一番、困惑させる顔だ。

『頼むからさ、オレの教室には来ないでくれる かな?』

華を刺激しない様に出来るだけ、ゆっくり話す。
『むさ苦しい男共に囲まれて、怖かったろ?』

まだ泣き出しそうなまま、唇を噛んで頷く。

No.7 08/02/16 22:05
詩人知らず ( mxeFh )

>> 6 ―――14年前―――

隣の真新しい家に、『篠田さん』一家が越して来た。


まだ1歳の華ちゃんは何故か、お隣の智樹くんが苦手みたい。


さっきまで笑ってたのに、智樹くんが頬に触れた途端、火がついた様に泣き出す始末。


3歳の智樹くんでも、なんとなく気付いてる。

僕、華ちゃんに嫌われてるのかなぁ?


ママは『そんな事無いのよ』って言うけど…華ちゃんは僕が触ると泣くんだ。

僕の手が嫌いなのかなぁ?




智樹くんは



スヤスヤ眠る華ちゃんの



柔らかなホッペに



触れてみたかっただけなんだ。

No.8 08/02/16 23:20
詩人知らず ( mxeFh )

>> 7 智樹が昔より、何倍にも成長した手で、華の頭を撫でる。


今にも泣き出しそうだった瞳に、少しだけ輝きが戻る。


トモくんの手は、華にとって魔法だ。


どんな哀しい気分でも、一瞬で吹き飛ばしてしまう。


智樹に見送られ、一年の教室へ戻る。

その姿に、先程よりも深い溜息をつく。

これから教室に戻る事を考えると頭痛がした。

あいつらに何を聞かれるやら。想像しただけで憂鬱だ…。

しかし、それ以上に気に掛かる事が今の智樹にはあった。


あ~ぁあ……もう、いっそ1限目サボッちゃおっかなぁ……―――ダメだ。もっと戻り辛くなる。


葛藤の末、やはり教室に戻る事にした。


入った瞬間。


円佳といきなり目が合ってしまった。

今、一番避けたい相手だ。

そんな時に限って目が合う。


『智樹ぃ。誰だよ?
さっきの?』


来たッ!


『あ あいつは  ぃ 妹みたいなもんだよッ!!』


わざとらしい大きめな声。

不自然……だった…よ な?

チラッと盗み見る。気になる人からの反応は見られない。

『マジ!?
なぁ、紹介して?』

『おめぇ、ズリィんだよ!
オレ。 オレに紹介してよ。智樹お兄様ぁ。』

No.9 08/02/17 00:12
詩人知らず ( mxeFh )

>> 8 『お前らのような弟はいらんわッッ!!!』

あっさり、切り捨てる。

『そんなぁ。君と僕の仲じゃない。

それとも妹とか言っといてホントは~~。』

どんな仲だよッ!?…と心の中で毒づきながら…。

『無駄だって。

 あいつ男嫌いだから 。』

ブーイングはシカトする事に決めた。



そう。華は男が苦手だ。



いつ頃からだろう。

オレは華を苛める悪ガキから、あいつを護るナイトを気取っていた。



小学校を卒業するまで、その関係は揺るがなかった。



中学に上がると同時に、バスケに熱中した。

隣に住んでいるのに、会う機会はめっきり減っていった。


それでも華は、たまに会うと『トモくん。 トモくん。』とオレに懐いてきた。


部活でヘトヘトの時には邪険に振る舞った事も、一度や二度ではなかっただろう。


華は本当に、こんな器の小さい男の『お嫁さん』になりたい。

などと、今でも本気で思っているのだろうか?

『ハハッ。まさか ね?』 

一人言の様に呟いた筈なのに。

『智樹ぃ。何一人で笑ってんだよ。気持ちワリィなぁ…。』

こんな奴らには、死んでも紹介せんッ。
と固く心に誓った。

No.10 08/02/17 06:28
詩人知らず ( mxeFh )

>> 9 side・華


~~放課後~~


体育館から聞こえる様々な部活動が、生み出す音。

掛け声や笑い声。時には怒声も。


あの中にトモくんがいるのになぁ…。


それは判っている。
しかし、今朝の事を思い出すと『体育館』には近付けないでいた。

今日はもぉ、帰ろっかなぁ~。またトモくんに怒られても悲しいし…。


『体育館』を見つめたまま。

まるで影を踏まれたら動けない遊びの如く、ソコを離れられないでいた。


『あら?
 あなた。』

思いがけず声を掛けられて、動揺する。


振り向くと、スラッと背の高い。

意思の強そうな黒目が、印象的な美人さんが立っていた。


『えっ あ ゎ。 あの? どこかで、あたし  お会い……』

こんな美人さん、一度会ったら忘れる訳が無い。


『クスクス……。』


『?? ぁ  ッの ッ?』


腰まであるストレートのサラサラヘアを肩で震わせて。
突然笑い出した、その美女に華は戸惑ってしまう。


『判るなぁ。
うん。うん。分かる 。分かる。』

一人で大いに頷いている。

何が何だか、全然判んないよぉお??


目を真ん丸にして不思議顔の華。

真顔に戻る美女。

No.11 08/02/17 07:21
詩人知らず ( mxeFh )

>> 10 『私  高瀬 円佳。

 確か …“華ちゃん ”
 だよね?』


突如、名前を当てられて、ますます頭が混乱する。


目の前の女性は、Tシャツにジャージ姿だと言うのに、どこか気品を放っていた。


『噂通り可愛いなぁ。
 ちっちゃくて。

 苛めたくなる気持ち 分かる なぁ。』


『あのッ 高瀬さん?…噂って??』


『あっ、別に変な噂じゃないか らね。
 円佳で良いわ。』

『先輩。何してるんですかぁ?』

遠くからもう一人いたらしい、少女が呼び掛ける。

『すぐ行くわ。

 またね。華ちゃん。 』


そう、笑顔で言うと。

爽やかな石鹸の香りを残して立ち去ってしまった。

高瀬 円佳 先輩…。

華はしばらくその場に立ち尽くしていた。



暗くなる前には、家に帰らなければならない。


何度も体育館の方を振り返りながら、帰路についた。

No.12 08/02/19 13:17
詩人知らず ( mxeFh )

>> 11   side・智樹

~~~告白~~~



高瀬 円佳は一年生の夏からバスケ部のマネージャーを務めている。


始めは

あぁ、美人な子が入って来たなぁ。程度にしか感じていなかった。

取り敢えず、思った事はハッキリ、キッパリ言う女だ。


何事にも物怖じしない。誰に対しても平等に優しい。


ある大会で都外の高校へ試合に行った時なんか、
迷子の子供の親を見付けるのに、必死になって。最終的には自分が迷子になる。


スランプに陥ってレギュラーが危うかった時。
遠方の〈願い事が叶う〉と有名な寺の御守りを手渡された。

それが決定打だったのかもしれない―――。
気付いた時には、彼女に惚れていた。

周りからは
『あの二人は、付き合っている』と噂をされている。

しかし現実は違う。



彼女には、遠の昔に



―――振られている―――


救いは…彼女が部を辞めなかった事とオレの申し出で、今まで通り接してくれている事だ。

だからだろうか?

今だにオレ達は、付き合っていると
勘違している奴もいる。

高瀬には申し訳無いが、悪い虫が付かなくて済むので。
敢えて否定はしない。少しだけ虚しいが…。
あいつも否定しない。

No.13 08/02/19 13:31
詩人知らず ( mxeFh )

>> 12 高瀬が否定しない理由は判っている。


悔しいが、オレの為などでは勿論無い。


彼女には長い間想い続けている男性がいる。

今は距離がある為、まだ想いは伝えていないが、
ほぼ両想いの様な状態らしい。



つまりオレは影武者。

他の男を寄せ付けない為の。


それでも、良いと思ってしまう自分が哀しい…。



何を言っても、女々しい男の戯言になる。



ただ――――



高瀬が幸せになれるなら本気で、良いと思っている。


それだけは揺るぎない真実だった。

  • << 17 ーーside・華ーー ~~~可憐~~~ ずっと見つめていた。 自分を護ってくれる。 優しい存在。 この先も離れる事は無い そんな風に無意識に感じていたかったのかも知れない。 いつ頃からだろう? 智樹が華の視界から少しずつ姿を消し始めたのはーーー? その事実を認めたくない。 そんな想いから 同じ高校を受験していたーーー。 それでも智樹との距離は 縮まる事はなかった。 2年という差は 思春期の二人にとって 超える事は難しい 壁となって立ちはだかっていたーーー…。 『今朝、トモくんには会えたの?』 母親から不意に聞かれ ご飯を進める箸が、停まっていた事に気付く。 『ーうッーーうん…。』 『…にしては 元気無いんじゃない?』 全てお見通しよ。と、でも言いた気な 言葉に俯いてしまう。 『あんた達 昔から凄く仲良かったものね…ーーー。』 『 お 母さん… 』 『なぁに?』 朝寝坊な娘には厳しいが、 恋愛に悩む年頃になった 娘を微笑ましく思い。 優しく見つめ聞く。 『 あたし ねーーー トモくんが……好きなの。』 『そう。』 周知の事実だ。 しかし、現実は違うのだーーー。

No.14 08/02/24 11:00
澪 ( 20代 ♀ ZnPK )

詩人知らずさんへ

「恋愛人生」と共に、こちらのお話も面白いですね。

これからの展開が楽しみですよ😃

No.15 08/02/24 12:01
詩人知らず ( mxeFh )

>> 14 澪さんへ。

勿体無い、御言葉ありがとうございます
(>_<*)

大変嬉しく思っております。


実はこちらの続きは、別の『小説サイト』に書かせて頂いておりますm(_ _;)m


こちらの都合・身勝手で読んで下さってる方には大変、申し訳ありません。


もし許されるなら、こちら(ミクル側)は全く【異なる結末】にして書こうかなぁと、思案中です←あくまで理想ですが。


その『小説サイト』には、もう一本 別の話しを書かせて頂いている為…

かなり遅い更新になるかもしれませんが…υ

宜しければ、気長に待って頂ければ幸いです。


勝手を言ってしまい 誠に申し訳ありません
m(_ _)m

No.16 08/02/24 16:44
澪 ( ♀ ZnPK )

>> 15 そうなんですか。

お気になさらないで下さいね😊

わざわざ教えて下さって有り難うございます😃

No.17 08/02/25 14:29
詩人知らず ( mxeFh )

>> 13 高瀬が否定しない理由は判っている。 悔しいが、オレの為などでは勿論無い。 彼女には長い間想い続けている男性がいる。 今は距離がある… ーーside・華ーー


~~~可憐~~~


ずっと見つめていた。

自分を護ってくれる。

優しい存在。


この先も離れる事は無い そんな風に無意識に感じていたかったのかも知れない。




いつ頃からだろう?


智樹が華の視界から少しずつ姿を消し始めたのはーーー?


その事実を認めたくない。


そんな想いから


同じ高校を受験していたーーー。


それでも智樹との距離は


縮まる事はなかった。


2年という差は


思春期の二人にとって

超える事は難しい

壁となって立ちはだかっていたーーー…。





『今朝、トモくんには会えたの?』


母親から不意に聞かれ
ご飯を進める箸が、停まっていた事に気付く。


『ーうッーーうん…。』


『…にしては 元気無いんじゃない?』


全てお見通しよ。と、でも言いた気な
言葉に俯いてしまう。

『あんた達 昔から凄く仲良かったものね…ーーー。』


『 お 母さん… 』


『なぁに?』


朝寝坊な娘には厳しいが、
恋愛に悩む年頃になった 娘を微笑ましく思い。
優しく見つめ聞く。


『 あたし ねーーー トモくんが……好きなの。』



『そう。』


周知の事実だ。
しかし、現実は違うのだーーー。

No.18 08/02/25 15:01
詩人知らず ( mxeFh )

>> 17 昔から

「『トモくんの お嫁さんになるッ!!』」
とあれ程 豪語していた娘の弱気な姿に


少し寂しさを感じた。


華だって馬鹿ではない。


幼い頃から伝え続けてきた気持ちを、相手がどの様に受け止めているかーーー


を、考えない訳ではない。


本気にされていない事など、
100%のうち60%ぐらいは理解していた。



しかし、今更 伝え方が分からないのであった。


どうしたら、ちゃんと気持ちって伝わるんだろぅ?



深く考え混んでしまった娘の箸は またまた停まったままだが…。

母親は小さい吐息を付いて、見守る事に決めた。



ーーー保健室ーーー



華は良く怪我をする。

何も無い所でコケる才能は天才的だーーー。

まぁ、そんな才能 在っても別段 役に立たないですけどねーーー。

いゃ むしろ無い方が、有り難いし…。



膝をすり剥き


絆創膏を貰う為。


入学して、間もないと言うのに常連になりつつある『保健室』を訪れた。

No.19 08/02/25 15:42
詩人知らず ( mxeFh )

>> 18 『先せ…ぃーーぁれっ?
いないのぉ?』

チビッコの華は、ピョコピョコと辺りを見回す。

自分で絆創膏を探そうとして

スカートの裾を何かに引っ掛けてひっくり返す。

派手な音を立ててーーー

救急箱が床に散らばる。

慌てて拾おうとする。
幸い落とした救急箱に 絆創膏を発見した。

その瞬間ーーー


保健室のベッドにぶら下がる、カーテンが勢い良く開いた。


『~~~ッ。ッるせぇ!!!』


ビクッ!!!!


手にした絆創膏を再び落とす。


『頼むからさぁ、少し寝かせてくれよっ…~~寝不足なんだょッ。』


明らかに、【保健室】を【安眠室】と履き違えている発言だ。


寝癖の付いた頭を、掻きながら。


華は固まったまま。


シャツのボタンが全開の男と目が合う。


『………あんた 小学生?』


制服を着ている華に問う。


寝惚けているのか、真剣なのかーーー


イマイチ掴めない。



『 一応 高校 生だと おも い ます…』


シドロモドロに答える。


『プッ。「一応」って何だよ?

しかも、「思う」って他人事かよぉ~~~。』


男子生徒は
先程までの不機嫌を忘れて、大声を出して笑い転げた。

No.20 08/02/25 17:00
詩人知らず ( mxeFh )

>> 19    side・智樹


~~~理由~~~




華が自分の通う「高校」を受験すると知った時。


心から喜べない事に気付いた。


華が「受からなければ良い…。」とさえ考えていた。


最低過ぎて認めたく無かった。


判らない振りをしていた。


しかし


思いとは裏腹に


答えはすぐに出た。


案外簡単だったーーー。



華に円佳の存在を知られたくなかっただけ…。



高瀬を好きだと思いながら、華の気持ちが離れるのも嫌だったのだろう。


幼稚過ぎる独占欲だーーー。



こんな男、高瀬に振られて当然だ と自虐的になる。


それから、ますます華とは意識して  距離を置く様に心掛けた。


〈朝練〉にしても あの早い時間の 電車に乗る必要は無い。


朝に弱い華が、起きられる筈が無いだろうと………高を括っていた。



しかし、華は現われた。


きっと入学してからの何日間で、オレの乗る電車を調べたのだろう。



ーーーごめんーーー。


オレにはキミにそこまで想って貰える 価値はないんだよ。


可愛い華。


もっと素敵な人を見付けて欲しい。


キミのその真直ぐな瞳に見合う、そんな相手をーーー。

No.21 08/02/25 17:38
詩人知らず ( mxeFh )

>> 20 『キャプテンッ!!危なッーーー』
       |
       |
       |
       |
       ・
       ・
       ・
気が付いたら、保健室で横になっていた。



顔には冷たいタオルが置かれている。


部活中に考え事をするもんじゃ無いなーーーと心の中で苦笑いする。


『気が 付いた?』


タオルを外し、


心配そうな顔で訊いてくる。



そんな顔しないでくれーーー。


と心の中で訴える。



高瀬がボールを顔面にぶつけた訳じゃないだろ?


100歩譲って、悪意があって ぶつけられたとしても 考え事をしていたオレが 全面的に悪い。



降参。白旗だ…。



『 どうしたの? どこか痛む?』



黙りこくっていたら
更に心配された。


『いや……ごめん。大丈夫だから。うん。』

『病院行った方が 良いわよ。』

『大袈裟だな。 大丈夫だよ。』


『 顔 酷い事 なってるから。』

悪戯ッぽく言う。

オレンジの夕陽を浴びた彼女は逆光で、その表情は読み取れない。

眩し過ぎるであろう その顔が見えなかった事に胸を撫で下ろす。

『まぁ、冗談抜きで、病院は行ってね。
頭は放っておくと怖いから。』

  • << 23   side・華 ~~~サクラ~~~ 『~~~ッ あたし…やっぱり  子供ッぽいですか ?』 華が一番気にしている所だ…。 好きで 小さく育った訳ではない。 小学生なんて失礼だょ!! 今更ながらに怒りが湧いてきた……。 少し、反応が鈍い…。 『 う ん 。』 間髪入れずに頷く シャツ開襟男。 ためらう様子も窺えない。 『ッ 授業 サボってる人に 言われたくないもんッ!』 反論の術が見つからず 全く 関係のない話を 引き合いに出す。 『今は 昼休みだから サボってねぇ~つのッ』 嘘だった。 2限目から4限終了のチャイムが鳴り響く 今の今までサボりまくりであった。 このトロそうな女なら 騙す事なんて 簡単そうだと言う判断だ。 まぁ…4限が終わってすぐなんだし、本気で騙されたりはしないだろぉ――と思ってはいた。 『……ごめんな さぃ。』 騙されたっ!!? この女…。大丈夫か?? 天然ぶってんのか? 本気か? もしそうなら、 こんなんで社会出たら 訳わかんねぇ男共に騙されまくりだな。こりゃ。 さっき会ったばかりの 女の将来を案じている自分に、首を傾げざるを得ない―――。

No.22 08/02/25 22:40
澪 ( ♀ ZnPK )

>> 21 詩人さんへ

登場人物 それぞれの複雑な心境が分かる作品ですね。

文章が上手くて羨ましいな。

「キミの手」も「恋愛人生」も両方、好きですよ(^艸^)

No.23 08/02/26 12:56
詩人知らず ( mxeFh )

>> 21 『キャプテンッ!!危なッーーー』        |        |        |        |        ・        ・…   side・華


~~~サクラ~~~


『~~~ッ あたし…やっぱり 

子供ッぽいですか ?』


華が一番気にしている所だ…。


好きで 小さく育った訳ではない。


小学生なんて失礼だょ!!


今更ながらに怒りが湧いてきた……。


少し、反応が鈍い…。

『 う ん 。』

間髪入れずに頷く


シャツ開襟男。


ためらう様子も窺えない。



『ッ 授業 サボってる人に 言われたくないもんッ!』


反論の術が見つからず

全く 関係のない話を

引き合いに出す。



『今は 昼休みだから

サボってねぇ~つのッ』



嘘だった。


2限目から4限終了のチャイムが鳴り響く

今の今までサボりまくりであった。


このトロそうな女なら
騙す事なんて 簡単そうだと言う判断だ。


まぁ…4限が終わってすぐなんだし、本気で騙されたりはしないだろぉ――と思ってはいた。


『……ごめんな さぃ。』


騙されたっ!!?


この女…。大丈夫か??

天然ぶってんのか?

本気か?

もしそうなら、

こんなんで社会出たら 訳わかんねぇ男共に騙されまくりだな。こりゃ。

さっき会ったばかりの 女の将来を案じている自分に、首を傾げざるを得ない―――。

No.24 08/02/28 13:37
詩人知らず ( mxeFh )

>> 23 サクラの花びらが



一枚。



開いていた窓から



風に乗ってヒラリと



舞い込んだ。




そいつが華に近付いてくる。



本来 男が苦手な華が、普通に会話出来たのは


本庄 庵


彼の その 異様なまでに

慣れ慣れしい態度のせいだったのだろうか――。



華の頭に舞い降りた花びらにそっと触れる。



トモくん以外に


頭に触れられる事は 好きでは無かったが


背の低い彼女の頭は


撫でられ易い。


嫌な気分になるのが常だった。


が、不思議と嫌では無かった。



失礼な発言をする。無神経男なのに。


首を傾げざるを得なかった。



『あんたさぁ。


 この花びらみたいだな 』


そう言って 保健室を後にする。



????



意味が判らない。





保健室の大きな鏡に自分の姿を映す。





サクラの花の様に


頬をピンクに染めた


自分の姿が映っていた――――

―――――…。

No.25 08/02/29 18:58
詩人知らず ( mxeFh )

>> 24    side・円佳


~~~不安~~~



今 何を しているんだろう ?



最近 余り鳴らなくなった携帯に 言い様の無い 不安を覚える。


他に誰か 好きな人が―――…?



そんな事を ふと考える。



――どうして 近くに居てくれないの?――


そんな事 言える訳が無かった。



彼の夢を 応援しているから…。



なんて 物分かりの良い振りをして。



心の中では、いつだって ウジウジ悩んでる―――…。



周りに、見せている あたしは いつだって造られた偽物で。



良い子ちゃんの優等生ぶって。



智樹は あたしを 買い被り過ぎてる。



だって あなたの好きになってくれたのは



本当の あたしじゃない………よ?



そもそも 本当の自分って



一体 何なんだろう?


いつから 周りの目を気にして 無理に背伸びして 大人な振りして。



こんな風だから




『好き』



って言う。



2文字さえも ちゃんと伝えられない―――。

No.26 08/03/02 06:39
詩人知らず ( mxeFh )

>> 25     side・智樹


~~~偶発~~~


例え 避けていたとしても 悲しいかな 会ってしまうのが、お隣りさん同士。



智樹だって毎日 毎日 あんな早い電車に 乗って行ける訳じゃない。



しかも そんな時に限って――

―…



隣から寝坊気味の 少女が顔を出す。



華は小さい身長を 気にしてか早足で歩こうとする。



見ていて 危なっかしい―――

…。



その上 よくコケる。


落ち着いて 行動しろッ…て言うのに―――



ほら



今朝も



オレを発見して



慌てて 走ってくるから



危なっ…―――!!



結局 転びそうになった華を 間一髪で抱き留める。



どうして キミは



放って措かせて



くれないかなぁ~?



『 あり が と 』


舌を出して 照れた様に笑う 華。



だからぁ。



可愛いんだって…。



そんな顔されたら 許さざるを得ない。



オレが逃げるから



華は追い掛けるのか―――…?



あ 関係無いか…。



華はオレがいる いないに関わらず 転んでるだろう。



思わず 笑ってしまう。

No.27 08/03/02 07:09
詩人知らず ( mxeFh )

>> 26 電車の中は 通勤ラッシュの 真っ只中だ。


朝練に 行く事が多くて気にした事は、無かったが―――……



華はこの人混みに 押し潰されたり しないのだろうか?



中学までは自転車だったし。



気にした事 無かったなぁ。



オレが気にする事じゃ 無いのかもしれないが…。



ギュウギュウ 鮨詰め状態な車内。



ふと 華に目を向けると………?



何だか様子が おかしい。



車内が混んでいて 暑いだけかとも 思ったが―――ッ!!?



くそッ!



『おいッ おっさん!』


華の背後に立っている 中年サラリーマンの手を なんとか 掴む。



『 なっ  な なんだね?き 君は!??いきなり―――』


『痴漢しといて 開き直ってんじゃねぇ。』


車内中に 聞こえる声で言ってやった。



華は涙目で ホッとした顔をしている。



周りの視線を集めたが、知った事ではない。


むしろ この中年オヤジの顔をよく覚えて 


同じ会社の人に噂を流して貰いたいぐらいだ。


よくある 冤罪などではない。


間違いなく 華のお尻を触っている奴の手を掴んだんだから。


次の 停車駅で駅員に突き出す。

No.28 08/03/02 20:05
詩人知らず ( mxeFh )

>> 27 駅員に事情を聞かれたが 華は怯え切ってしまって 代わりにオレが事情説明。


後日 警察にも付いて行く話しで、纏まる。





大幅に遅刻して教室に入る運びになった。



少し 躊躇う―――。



同じ車両に 学校の
若しくは、クラスの奴が乗っていたら、何となく…厄介な気がしたからだ。



ガラッ―――。



『よっ ナイト様ッ』


ヒューッと口笛の音。


ハーッ。やっぱりか…。



『えっ~。格好良いよ。畑山くん。』



女子の声。



『あたしも 護られたぁ~い。』



護る必要性のなさそうな 体格の良い子だ――…。



困った表情を浮かべていると高瀬と目が合った。



親指を立てて ウィンクしてみせる。



良くやったの 意味だ。



それだけで まぁ、良いか。という気持ちになる。



我ながら、現金なモンだ。




しかし―――さて



困った。



オレは毎朝 華と一緒に登校できる訳では無い。勿論…実際 朝練もある。



寝坊な華がオレの乗る電車に 乗り合わせるとは限らないし。



今日みたいな事態が、この先 起こらないとも言えない。



かと言って、オレが護り続ける事は 不可能に近いだろう―――…。

No.29 08/03/02 20:55
詩人知らず ( mxeFh )

>> 28    side・華


~~~動揺~~~



『華。体調、大丈夫?』


上原 奈摘が心配そうに聞いてくる。


痴漢に遭った事は、広まっていない。満員の車内で 小さな華は周りに埋もれていたからだ。


智樹に視線が集中したお陰もある。


担任の配慮で


体調不良で、遅刻した事になっていた。




『 …う ん。 ごめん ね。』


まだ、動揺の残る感覚を拭えず。反応が普段よりも更に鈍くなる。


しかし体調不良のせいだと 思って貰える。


華は、しっかり しなくちゃと最近強く思う様になっていた。


いつもトモくんにばかり 頼っていては「お嫁さん」どころか

「彼女」にすらなれない気がしていた―――…。



その 矢先の出来事だった。



落ち込んでしまう。



『 ホント 大丈夫 ?』


なっちゃんにまで、心配をかけて申し訳なく思う。



『 保健室 行く?』


少しは落ち付けるかも 知れないと 小さく 頷いた。

No.30 08/03/03 00:15
詩人知らず ( mxeFh )

>> 29 保健の先生は 優しくて大好きだ。


白い白衣が似合って。

少し消毒液の匂いがするのも 華には好きだった――。


『あらあら。篠田さん 今日はどうしたの?』


『体調が 良くないみたいなんです…。』


なっちゃんが、代わりに言ってくれる。


華の顔色の悪さを見て。


『少し 横になっておく?』


と 勧められた。


真っ白なシーツに包まれると


安心と抑えた恐怖で涙が込むあげてきた。


『篠田さん。先生少し職員室に用があるから。

中から鍵かけておいて貰っても 良いかしら?』


慌てて。涙を拭い


『ッ~~…は ぃ』


と返事をした。


先生が保健室を出る迄。


シーツから出る事が出来ずにいた。


泣くと顔がすぐ赤くなるからだ。


気持ちを落ち着けてから。

2~3分待って、鍵を閉めようとベッドから出た。


ガラッ。


んっ?先生もう戻って来たのかなぁ?忘れ物でもしたのかな?


『 先 生…―?―』


『あれ? あんた また コケたのか?』



サボり魔 本庄 庵が

華の目の前に、立っていた―――…。

No.31 08/03/03 02:49
詩人知らず ( mxeFh )

>> 30 ―――――体育館――――――

本日の3限目は、体育館でバスケ。

同じ体育館内の 女子の視線を気にしてか、張り切る奴らが続出――。

仮にもバスケ部キャプテンの 智樹の闘争心に火が付いた。

普段しない様な ダンクシュートを決めようとして―――失敗――………指をしたたか打って

突き指する 格好悪い始末…。


敢え無く保健室へ―――…。



―――――保健室――――――



本庄 庵が 華に近付いて来る。


甚だ失礼な話しだが…

今の

華にとっては今朝の痴漢と重なってしまう。

『~~~ッ…や…っ』


『? ん 何 そんな青い顔して…』


『…こ…な いで 』

震える足で―――

後ずさった

瞬間 何かに躓いて 尻餅を着いてしまう。


『おぃおぃ 大丈夫かょ?』


庵が腰を落とし 手を差し出す――――


ガラッ―――


『先生 付き指しちゃいッ? !!!? 』



気が付くと 庵は智樹に殴られていた。


『トモく 違っっ 違うのッ!!!』


涙目の華に必死で止められる。


智樹の目には華が襲われている様にしか 見えなかったのだ―――…。


丁度 戻って来たばかりの保健の先生が ビックリ顔で見つめていたーーー…。

No.32 08/03/03 03:32
詩人知らず ( mxeFh )

>> 31 しきりに 本庄に頭を下げる智樹。


『~いてッ。先生えぇ。もっと優しくやってよッ。

あ……あぁ――勘違いされる様な行動してた オレにも問題 有りッすから……~ッてて だからぁ先生 もっと優しくしてってば~!』


『そうそう。本庄くんは、保健室で安眠し過ぎだから 良い薬になったんじゃない?

はい。手当てお終いっ。』


と言って 庵の殴られた頬をポンッと叩く。

『~~~つッ!!痛ぃってばッ 先生の方が暴力的ッすょ?』


『はい。君も指出して~。』


すっかり 忘れていた 突き指した手を出す。


華はどうして 良いか分からず その場に立ち尽くしていた。


今日は午前中だけで、色んな事があり過ぎて…頭が付いて行かない。




『篠田さん…。』



優しく先生に声をかけられて顔を向ける。



『何か あったら いつでも聞くから いらっしゃいね。』



その優しい笑顔に少しだけ救われた気がした。



『ホラッ 篠田さんは 少し横になるんだから、あなた達は戻った。戻った。』


手で追い払われる。男二人。


渋々といった感じで 出て行く 庵。



保健室の扉が閉まる。

No.33 08/03/03 11:31
詩人知らず ( mxeFh )

>> 32 『ホント ごめん。かなりな 勘違いで。』

二人きりになってしまった 気まずさから饒舌になる。


『いえ。バスケ部のキャプテンの方ですよね。 なんか有名ですから。』


円佳の事だろうか?と思い当たる。

彼女の美貌は有名だろうな。


『あの ちっちゃい子と どっちが本命なんッすか?』


2年生の庵は

あくまで敬語だったが、無遠慮に聞く。


いきなり 核心に迫る質問に アタフタするが、別にどちらとも何も無い―――…事に今更ながらに気付かされた…。


何だか落ち込むなぁ。


『 あいつは 妹みたいな そんな感じで―――…。 』


自分でも何だか

煮え切らないなぁと 思いながらも答える。


勘違いから 殴りつけてしまった事に対する 罪悪感だろうか?


答える義務は 無い気もするのだが。素直に回答。


『ふ~ん。

妹……ねぇ―――。』


何か言いた気に見えたが


頬に湿布をされた少年は そのまま、教室へと戻っていった―――…。



って 教室はそっちじゃない。

どっかでサボるんだろッ!?

No.34 08/03/03 13:59
詩人知らず ( mxeFh )

>> 33     side・庵


~~~鋭~~~


しばらく屋上で時間を潰すかと考えた。


しかし、コンクリートの寝心地は良くない。


3限目終了のチャイムで 仕方無く 教室へ戻る事にした。






『い~おりッ』


入った途端


クラスメイトの


児玉 皐月が声を掛けてくる。



『…? 何!? あんた、保健

室行って

怪我して帰ってくるとか…

意味判んないしッ。かなり

ウケるんですけどぉ~』


庵のほっぺたにある湿布を指差して、爆笑。


『殴られた…』


『えっ!?

ついに川辺先生に、殴られたのッ!?

やるわねぇ~。

あんた 保健室で サボり過ぎ

だから。』

分かる。分かる。とばかりに 大きく頷いている。




…いや 違うから。と否定しようとして 馬鹿らしく感じ やめた。


皐月は 目に涙すら浮かべつつある。



中学時代からの 女友達だ



良い奴だが、笑い上戸で泣き上戸である。


こちらとしては、忙しくて敵わない。


『それにしても よっぽど、強く殴られたのね。

川辺先生に恨まれる事でもしたの?』



『~ッだからぁ 先生が オレを殴るかよ!?』


この暴走女には 川辺先生の為にも、否定しておこう。

No.35 08/03/04 11:22
詩人知らず ( mxeFh )

>> 34 事情を説明すると


更に皐月は笑い転げた。


『ひぃッ~。苦しッ。

あんた 女の子 襲いそうな

顔してるもんねぇ。』


『あのなぁ~~~ッ』


襲いそうな顔って どんな顔だよッ!!?



『安心しろ。


お前は、襲わね~。』



そっぽを向いて呟く。


『え~。あたし モテるんですけど?』



愛される事と性的対象は違うぞと注意して やりたかったが、敢えて言わない事にする。



確かに皐月は今ドキの女の子だ。



しかし そそるモノが無いのだ。



スカートを短くしてれば、男は寄ってくると思っている。



ふと 頭に先程の「天然ボケボケ女」が、思い浮かぶ。



あいつは あの男の事 好きっぽいよな。


妹ねぇ―――…。


殴られて 腫れ始めた頬を 擦りながらぼんやりと考える。



隣では 皐月が、まだ何か言いたそうな 顔をしていた。

No.36 08/03/04 12:45
詩人知らず ( mxeFh )

>> 35     side・智樹


~~~動~~~


『華ちゃん でしょ?』


突然その名前を 高瀬に出されて 動揺する。


『 な 何が…?』


『 ナイト様。』


ああ。やっぱり高瀬は、お見通しか。


『どうして そう思う?』


痴漢から助けた 相手は 全然 知らない人とは、考え無いのだろうか?


疑問に思ったので訊いてみる。


『ん~~~。 なんとなく。


智樹が助けるなら 華ちゃんかな? って』

『………オレ 高瀬にそんなに 華の事、話してる?』


『気付いてないんだぁ。』


クスクス笑う。



完全に無自覚だった―――…


『 失礼な男よね~。

人に告白しておきながら 他の女の子の 話しばっかり するとか――…』


言葉とは裏腹に楽しそうな笑顔。


オレをからかっているのだろうか?


今いち反応に困る。



『 あいつ は―――………』


ここ数日で 何度、口にしたか分からない 台詞を飲み込む。


『さぁて と あたし部活行くわ~。


智樹は華ちゃんと 帰ってあげなさいね。』


勝手に決められて 言い返そうとした が、包帯グルグル巻きの指を 差されて


『たぶん まだ一人で、電車乗るの 恐いと思うなぁ。』

No.37 08/03/04 13:47
詩人知らず ( mxeFh )

>> 36 一年生の教室に行くのは 少し勇気がいる。


華が、喜ぶ顔は想像できたが



自分の教室には、来るな と言った手前 余計だった。



円佳の言った通りに しているのが、少し悲しくもあるが…



その通りだなと 納得したからこそ。華と帰ろうと決めた。



幸か不幸か。この指じゃ 当分部活は、出来そうも無い。



しばらくは 華のボディー・ガードをしようと勝手に決めた。



一年生の下駄箱で待つ事にする。



此所なら見落とす心配も無いだろう。



『んっ?』



華が廊下の向こうから歩いてくるが…一人では無いらしい。



そりゃ。そうだ。華にだって、一緒に帰る友達ぐらい 居るだろう……………―――



当然だ。けど…。



ホッペタに湿布した男とか?



しかも 何か やたら楽しそうに 笑ってますけど?



いや。同じ方向とは限らない。



たまたま 会っただけとも考えられる。



【保健室】での 出来事を謝ってるうちに 話しに花が咲いて―――………って~~ぇえッ 何一人で、色々推測してるんだッ オレ?


はっ。思わず自分に突っ込み入れちゃったよ…。


考えてみれば いつか華にだって 彼氏ぐらいできるよな。

No.38 08/03/04 14:33
詩人知らず ( mxeFh )

>> 37     side・華


~~~芽~~~


『大分 顔色良くなったよねぇ~。』


安心した様に、なっちゃんが言う。


『じゃ、あたし部活行くから。明日ね。

気を付けて帰んだよ~。』


奈摘が立ち去ってしまうと 華には、漠然とした憂鬱さが残った。


『 帰りたくないなぁ~。』



今は、電車に乗りたくない。



一人言の様に呟いて



人通りの 少くなくなりつつある階段で、上の空。



『あれ 帰んね~~の?』



振り返る。



『あっ あの さっきは、 ご ごめんなさぃッ でした。』


いきなり ペコリ。



『ふっ。 何で あんたが謝んの?』



庵が、不思議そうに笑う。



『だっ だって あたしが あんな―――…』


『気にしてない。

だから、あんたが気にする事じゃ ない。』


『……………。』



二人きりになると やはり沈黙してしまう。


庵から立ち去ろうとする 気配が窺えない。


視線を落とす華の目に、ある物が飛び込んできた。



『 か 可愛ぃ……。 』


庵の鞄に、吊られていた小さなヌイグルミ。


フワフワのアライグマのようだ。



『あっ。ソレ。姉ちゃんに付けられて、そのままだった。』

No.39 08/03/04 15:31
詩人知らず ( mxeFh )

>> 38 『 良かったら やるよ。   ソレ。』



『―――…えっ?


良いんですか?』



華の鞄に付けてくれる。



あまりにも嬉しそうに笑う。



その笑顔は、男心を凶悪に狂わせる。



この男も 例外では無い。



『 名前 何てゆうの?』



『 は 華。篠田… 華です。』



『オレ 本庄 庵。

華は、帰りたく無い訳でも あんの?』



いきなり 呼び捨てである。



迷ったが 朝の出来事を話した。



『…そりゃ。帰りにくいわな。


どこ?』



『 ? 』



質問の意味が、分からない。



『 家 どこ? 』



やっと 意味が分かる。



同じ方向の電車だと判明。



智樹以外の男子と 下校する事に、多少の抵抗を覚えたが…



一人で電車に乗るよりは、良いかなぁと考え。庵と帰る事にした。


『 こういうの 好きなの? 』



鞄のアライグマを指差して訊く。



『 は い 。』



『でもさぁ。

このクマ 不細工じゃね?』



『 そんな事…… 可愛いですよ。

……クマじゃなくて アライグマだもん。』


『あぁ。華は 美的センスが悪いんだな。』


庵にからかわれて、頬を膨らませる。

No.40 08/03/05 16:27
詩人知らず ( mxeFh )

>> 39 電車内は まだ夕方という事もあって 学生が殆どであった。


それでも 華はなんだか 落ち着かない。


キョロキョロと辺りを見回してしまう。


『 不安 か?』


そう聞かれて 返事に困る。


こうして一緒にいてくれる庵に 悪い気がしたからだ。



『心配すんなって 変な奴が近付いてきたら
オレが一発殴ってやるって 

あの 先輩みたいに さ。』



悪ガキ の様に笑う。


『 暴力 はダメ…です。』



『あの人 なんての?』



『 トモ く んのこと? 
 
 畑山 智樹。』



さっきまでの 困り顔は何処へやら 

その名を口にする時は、最高の笑顔だ。



『 好き なんだ?  畑山

 先輩。』



『……う…ん…』



改めて 他の人に聞かれると 変な気分だ。


判り易いくらい 顔が真っ赤だ。



庵的には何だか 面白くない。



『 告白とか しないのか?』



そんな必要無さそうな事を 承知で訊く。



『……えっ?』



『 オレが 協力してやろっか?』



そんな気も無いのに 言う――

―…。

No.41 08/03/07 14:10
詩人知らず ( mxeFh )

>> 40     side・智樹


~~~微熱~~~


 どうして 隠れてしまったのだろうか?


普通に――笑って 話し掛ければ良かった――のでは、無いだろうか?




どうしようも無い 居心地の悪さ を感じる。




なんて 情けないのだろう。




『 どこが ナイトだよ…。』





『 あれ? 何してんの? 』




フラフラと歩いていたら、無意識に体育館に近付いていたらしい。


高瀬が 不思議な物を見る様な目を 向けてくる。



『 華ちゃんは ?』


『 ナイトは オレじゃなくても 良いらしい…。』



少し 卑屈な言い方をしてしまったのかも知れない。



高瀬の 哀しそうな視線が痛い。



そもそも高瀬は 華とオレが………付き合えば良い と思っているのだろうか?



関係無いか…。



振った男が、誰と付き合おうと―――…。



『 手伝って 』



唐突に言われて、理解出来ない。



『 突き指してても マネージャーの仕事だったら、
出来る事あるから。』


高瀬に手を引かれて そのまま体育館へ連れて行かれてしまった。

No.42 08/03/08 19:18
詩人知らず ( mxeFh )

>> 41 彼女の笑顔を 盗み見る。



高瀬は最近 妙にテンションが 高い。



良い事ではない。



良くない事が あったのだと 容易に 想像が付く。



時折 見せる 哀し気な瞳もそうだ。



彼女は〈気付かれていない〉と 思っていると思うので、知らない振りをしよう。



そう、決めている。



誰にだって、触れて欲しくない気持ちの一つや二つある。



オレは 尚更触れては、いけない気がする。



ただ



何となく 漠然と



そう 感じている。



真実のところは判らない。



がーーー…そう大差は、無いだろう。







『 キャプテ~ン 指 大丈夫ッすか?』



後輩が気に懸けて 訊いてくれる。



『 格好付けようとするから…  自業自得です。』



ピシャリと高瀬に言われて 叱られた 子供の様な気分になる。



彼女の大人びた 横顔を見詰めているうちに


全ては 自分の 杞憂なのかもしれない とさえ 思えてくる。



思い過ごしで、勘違い。



そうであって、欲しいと願う。



その反面ーーー…



己の中に潜む 矛盾だらけの 気持ちに ホトホト呆れ果ててしまう。

No.43 08/03/12 21:15
詩人知らず ( mxeFh )

>> 42     side・庵


~~~誘惑~~~




『 き ょ ぉ 力 ? 』




まるで その言葉を 初めて聞いたかの様に



ノンビリ 発音 する。




やはり 天然 純粋培養らしい。




思わず 笑いそうになる。




黒い 感情と天使の 顔が 戦う。




どちらが勝つかは 一目瞭然。




天使さんは 敢え無く敗退。




華には 申し訳無いが トモくん を諦めて戴く方向で――…




と 心の中で 勝手な



    悪魔の解釈




    赤い舌を出す



『 ん~~ッ。華はさぁ こ―んな可愛いのに

男心 分かってないんだよなぁ…―。』




最も らしく 言って



チラッ と 華を盗み見―――。




可愛いと 言われて 顔が真っ赤だ。




分かっていない 処か ツボを刺激しまくりである。




が―――…お構いなしに続ける。




『次の 日曜 暇?』



特に 用事は無い。



恐らく 嘘の吐けない であろう 彼女の 態度。



『決まり! 日曜は オレと 男心の 勉強なっ。』 



程の良いデート。を半ば 強引に決定。



戸惑う 華に自分の アドレスを 教えて去っていく。

No.44 08/04/04 13:34
詩人知らず ( mxeFh )

>> 43 久し振りに感情が高鳴る気がしていた。



暇つぶしのデートなら幾度も繰り返してきたが、念入りに服装をチェックしたのはどれぐらい振りだろうか?



待ち合わせ場所に遅刻しない。それどころか10分前に着いていた。



が、既にソコには小さくて可憐な少女が立っていて、少し気後れしてしまう。



『早いね。もしかしてオレとのデート楽しみにしてた?とか・・』


ッんな訳無いと気付きながら口にしている。



相変わらず、「?顔」の天然少女…まさかコレが「デート」とは感じていない御様子。











デートと言えば映画ッしょ?



と入って、終わってみたは良いけれど、ホトホト弱り果ててしまう。



そりゃ 選んだ映画も選択ミスだったかも知れない。切なくて哀しい「ラブ・ロマンス」―――



けど、感受性強過ぎですって。




先程から 泣き止んでくれない。




女の子を泣かせる趣味無いんだよなぁ。まぁ、オレが泣かした訳じゃないけど……さ。




ハンカチを差し出す。



『ご めんなさ・・ 』



小さく謝る華に、少しだけ、訊きたかった疑問を投げ掛けていた。

No.45 08/04/04 13:57
詩人知らず ( mxeFh )

>> 44 『華はさ なんであの人が好きなの?』



我ながら、かなり馬鹿気た質問をしたモノだ―――。



人を好きになるのに、的確な理由など存在する筈が無い。



気付いたら墜ちている。それが恋だろう。






『‥トモくんは・・・王子様だから。』



まだ少し涙目で、思わず耳を疑いたくなる様な事を言う。



『いつも 何かあるとすぐに、飛んできてくれるんだぁ。』



それは、王子様ではなく、スーパーマンでは?と口を挟みそうになる。



先程まで、あれ程泣いていた少女を…一瞬で笑顔に変える存在に、少しの苛立ちを感じた。



本当にピンチに助けてくれるのだろうか?



少しだけ 試してみたい衝動に駆られる。




そう 目の前の少女の貞操の危機を―――‥



少し嬉しそうな表情を浮かべて微笑む華をチラリと盗み見る。




『華さ 助け呼んでみてよ。』




細い手首を掴まえて、歩き出す。




『ちょ い 痛い ‥ッ。何???』



状況が理解出来ない、少女が困惑の声を出す。




庵の顔から 余裕の表情が消える。

No.46 08/04/06 09:34
桃ママ ( jzNIh )

❄を歩くとき、いつも貴方の手を借りていたけど🌸になって、もうその必要はなくなったもう貴方の手を握らなくても歩いていける。

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