鈴木由里さん ともしび

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2026/04/15 15:00(更新日時)

ミクル最期の時をこの日記で締めくくりたい。

26/04/15 15:00 追記
2026/04/15 追記

ミクル 今までありがとう!

No.4441133 (スレ作成日時)

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No.1

昭和47年8月29日、骨肉種でこの世を去った、当時17歳の鈴木由里(ゆり)さんが、その半年前から「ともしび」と名付けて書き始め、度重なる手術、苦痛と、死への恐怖におびえながらも、友人たちや周りの人たちの温かい励ましに、最後まで「がんばらなくちゃ」と病に立ち向かっていった、いのちの手記です。

No.2

昭和47年2月25日 金曜日 曇
起床6時20分 就寝8時30分 体温36.8度 体調普通

きょうからこの「ともしび」のノートに、何でも思ったことを記すことにする。
いつの日か退院して笑いながら、この「ともしび」を読み返すことができたら。
そう思って。

目のオペが近づいている。
1か月前、それを飯岡先生から聞いたとき、
私は本当に、本当に死んだほうがいいと思った。
片目のない生活なんて、私には考えられなかったから。
なくなるのは片足だけでたくさんだと思ったから。
弱虫だったなあ、由里あの頃は。
でも、今はそんな由里じゃない。
くさった目なんかいらないよ。
早くオペが終わって元気になりたい。

そうそう、きょうパックの小島一慶さんに手紙を書いた。
ラジオで読まれることはないと思う。
あんな手紙、一慶さんに迷惑だったかな? ちょっと後悔。

妹が熱を出したという。
お母さんごめんね、疲れているのに。
早くオペを終えて元気にならなくちゃ。

与えられた命を精一杯生きよう。

No.3

昭和47年2月29日 火曜日 晴れ ラジオで私の名前が出たの!
起床8時50分 就寝7時30分 体温36.4度 体調良好

オペが終わってから初めてこれに書く。
先生はまだ何もしてはいけないと言うけれど、うれしくって。

一慶さんありがとう。

目の麻酔はまだ完全に切れてないみたい。
私の目、どこに行っちゃったの?

中央大学のお兄様、鶴をありがとう。
私、元気になります。

No.4

昭和47年3月1日 水曜日 晴れ
起床6時10分 就寝9時 体温37.5度 体調頭痛

ちょっと熱がある。
そのためか頭が重たい。

ゆうこさんはきょうから期末テストだそう。
私も学校に行きたい。
田中さん、のんこ、みみ、どうしてるかな。
学校に通ってるとき、あれだけいやだった試験が妙になつかしい。

目が痛い。
なぜ私だけ苦しまなければならないのよ。

No.5

昭和47年3月2日 木曜日 晴れ
起床6時30分 就寝9時10分 体温36.8度 体調普通

きょう隣のベッドのひろこさんが退院していった。
今は部屋に一人。
彼女から、早く良くなってねと大きなぬいぐるみをもらった。

私も早く退院したい。

目の上の白い包帯が妙に痛々しい。
いつ包帯取れるんだろ。早く取りたい。
でもこわい。

窓の外のネオンがきょうはとても冷たい。

No.6

昭和47年3月3日 金曜日 晴れ
起床6時20分 就寝8時5分 体温36.5度 体調良好

きょう隣のベッドに17歳の女の人が来た。
こうのゆきこさんという、とっても明るい人。
何の病気かわからない。私も聞こうとは思わない。
とっても気が合いそう。
でも、ゆきこさんあまり元気過ぎて、話していると苦しくなる。

私は少々意地悪女になっているのかな? さびしい。

きょうは3月3日ひな祭り。
私も女の子、赤いひな段を飾りたいな。

No.7

昭和47年3月4日 土曜日 晴れ
起床6時5分 就寝9時半 体温36.7度 体調良好

午前中レントゲンを8枚撮った。
レントゲンを待っていると、全然知らない人に話しかけられた。
古顔だからよくこういうことがある。

片足がないのがどうしたっていうの?
そう叫んでやりたい気がする。
口ではおかわいそうにとか何とか言ってるけど、本当は人の不幸を喜んでいる。
他人が自分より重病なのを知って変に、安心する。
人ってそんなもの。

いつ天国に行けるんだろう。

No.8

昭和47年3月5日 日曜日 晴れ
起床6時20分 就寝9時40分 体温36.6度 体調良好

午前中、髪がすいぶん伸びて、枝毛ができていたので美容院に行く。
スパッとショートにしようと思ったけど、
ひろしくんが長いほうがいいと言ったのを思い出し、そろえるだけにする。

お昼を食べてテーブルクロスを編んでいるとひろしくんが来院。
手術のあと初めてで、顔を合わせるのがこわかった。
でも彼、シクラメンを持ってきてくれた。
赤い、とってもきれいなシクラメン。
花言葉は、はにかみ、内気。
そうかな、4つも上の人なのに、ひろしくんじゃいけないかな。
また、来週来ることを約束して帰った。

また今夜、目がさえて寝られそうにない。

No.9

昭和47年3月6日 月曜日 晴れ
起床6時10分 就寝9時50分 途中で起きてパック聞く
                体温36.4度 体調良好

ゆうこさんの来院。
きょうでテストが終わったそうだ。
クラブが忙しいらしく、来たのは7時ごろ。

いつも私のことを考えてくれることがうれしい。
彼女の話を聞いていると妙にほっとする。
私の病気、きっと良くなるって励ましてくれた。
私もそう思いたい。

テーブルクロスが編み上がった。

No.10

昭和47年3月7日 火曜日 晴れ
起床6時50分 就寝8時 体温37.4度 体調普通

きょう包帯を取る。
義眼ていうのは変に冷たい。
やっぱり、自分の目じゃないんだなあと感じた。

病院にいるといろんな人生を見る。
10年も寝たきりの人。病気になってすぐ夫と離婚された人。
失明して点字を習っている人。
そんな人に比べれば、私には片目がなくても、もう片方の目がある。
だから、そんな人につくしてあげたい。
つくせることはどんなに幸せなことか。

心からありがとうと言われる、愛される人になりたい。

No.11

昭和47年3月8日 水曜日 曇
起床6時15分 就寝9時40分 体温36.7度 体調良好

突然、ひろしくんとお兄さんのまさひこさんの来院。
うれしかった。
優しすぎる彼がこわい。
「急に会いたくなってね」と快活に笑う彼を見て、胸が熱くなった。

あの雨が降らなければ、学校をもう一歩早く出ていたら、
私は彼を知らなかったろう。
彼を知らなかったらまさひこさんも、そしてゆうこさんも知らなかったろう。

私に良い人たちをめぐり逢わせてくれた神様、ありがとう。

No.12

昭和47年3月9日 水曜日 晴れ
起床6時20分 就寝8時半 体温36.4度 体調良好

4時頃、ゆうこさんの来院。
パックで私のことを知って手紙を下さった、
おしおつねよさんという人、なんて優しい方なんでしょう。

ゆうこさんに、
「ほら、みんなあなたのこと応援してる」って言われて、涙が出た。

今までの自分が恥ずかしい。
精一杯生きていかなくちゃ。

つねよさん、ありがとう。

No.13

昭和47年3月10日 木曜日 曇
起床6時5分 就寝7時20分 体温36.5度 体調良好

突然ひろしくんの来院。
「こんなにたびたび来て、大学の勉強にさしつかえないの」
と聞いたら、もう大学お休みなんだって。
「そうとわかれば毎日来させちゃうぞ」と言って笑った。
彼はギターがうまい。歌謡曲でもフォークでもポップスでもひける。
でも、私の好きな「悲しきジプシー」はひけないらしい。
夜になるまで歌っていた。

彼が帰ったあと、ゆきこさんが
「愛と死を見つめて」の「ミコ」と「マコ」みたいだねと言った。
でも私はいやだった。
そんな悲しいことは言わないで。
私は死にはしないんだから。

No.14

昭和47年3月11日 金曜日 曇
起床6時半 就寝9時5分 体温37.5度 体調不快

朝から微熱がある。
ずっと寝ていて、ゆきこさんに迷惑かけちゃった。ごめんね。

夜、大きな注射2本する。
佐藤先生だったので
「痛い」といつものように大声でわめくわけにはいかなかった。
すてきな先生だから。
「これで大丈夫だよ、ゆっくり休みたまえ。きょうは私が泊まるから。」
と言われてポーッとして、また熱が上がったんじゃないかな。

No.15

昭和47年3月30日 木曜日 晴れ
起床6時20分 就寝9時半 体温36.2度 体調良好

20日間近くもこのノートに書けなかった、だめな私。
11日から熱が続いて、きょうやっと下がった。
「まあ、微熱だから大丈夫だ」と先生は言われたけど。

つねよさんからの手紙を、ゆうこさんが持ってきてくれた。
これで彼女からの手紙が4通になった。
一度ならず、何度も書いてくれてうれしい。
私も手紙の返事、書かなくちゃ。

No.16

昭和47年3月31日 金曜日 曇のち晴れ
起床6時20分 就寝9時半 体温36.3度 体調普通

ゆうこさん来院。
4枚の封筒を持ってきた。
「あなたのところに来た手紙よ、これ」と言って渡された。
うれしかった。
みんな私のこと考えてくれている。

ありがとう。

No.17

昭和47年4月1日 土曜日 晴れ
起床6時10分 就寝9時15分 体温36.2度 体調良好

父、母、弟、妹が来院。
いつになく明るいひとときが過ごせた。
私一人が病気のために、家中を暗くしているようですまない気がした。

健康が欲しい。

MSさんから病院に直接手紙が来た。
なぜわかったんだろう。病院に来られるのがこわい。

先生といっしょに大声で笑った。
顔だけで笑った。

No.18

昭和47年4月2日 日曜日 晴れ
起床6時10分 就寝9時半 体温36.8度 体調良好

田中さん、みみ、のんこの来院。
とてもうれしかった。
まったく中学時代と変わっていない。
こうしてお見舞いを受けると、中学時代の友達っていいなあと思う。

前の私だったらこんな姿、恥ずかしくて人前には出せないのに、
今は何でもない。
健康な人を見てもうらやましくなくなった。
それだけ、自分の限界を知ってきたからだろうか。

No.19

昭和47年4月3日 月曜日 晴れ
起床6時15分 就寝9時20分 体温36.3度 体調良好

午後6時半頃、ゆうこさんとまさひこさんが来院。
鎌倉にお寺めぐりと桜見に行ってきたそうである。
他の人だと変に気を使って、彼など連れてこないのに、
病人扱いなどしないゆうこさんがうれしい。
私にだって、人並みにボーイフレンドぐらいいるんだもの。
病気だからで済ませないでもらいたい。
まさひこさんは22だったかしら。
「とてもお似合いよ」って冷やかしたら、二人とも真っ赤になってた。
あーあ、今夜は熱い。

まさひこさんに、「ひろしくんどうしてる?」って聞いたら、
逆に二人に冷やかされた。

幸せな私。

No.20

昭和47年4月6日 木曜日 曇
起床6時15分 就寝8時5分 体温36.8度 体調普通

ゆうこさん来院。つねよさんの手紙持ってきてくれる。

はや4月、もうそろそろ入学式がどこの学校でも行われる季節になった。
ただただ日が早く過ぎていくのに驚くばかり。
こうして一日一日、貴重な日々が過ぎていくのが、少々おセンチになる。
私も普通通り生きていれば高校2年の17歳になるのに。

つねよさんが雨の中、近くのお寺に願かけに行ってくれたそうだ。
涙が出るほどうれしい。

がんばらなくちゃ。

No.21

昭和47年4月14日 金曜日 晴れ
起床6時10分 就寝8時半 体温37.1度 体調普通

7日から1週間熱が出っぱなし。
どうなっちゃってんだろう、私のからだは。
きょうやっと落ち着いたんだけど、まだ熱がある。

目が痛い、なぜ?
先生は季節の変わり目だからと言うけど、
片目を取ったら、この痛みもとれる、病気も治るはずなのに、なぜ?
うそつき。

No.22

昭和47年4月27日 木曜日 晴れ
起床6時半 就寝7時50分 体温36.4度 体調良好

ゆうこさん来院。つねよさんの手紙受け取る。

足のオペ、5月27日土曜日にやろうと先生から言われた。
私の足、どこまで切れば治るのよ。
もう切りたくない、死んでもいい。

ゆうこさんに怒られた。
「あなた一人の命じゃないよ」って。

つねよさんの、星空のことを書いたところを読んでたら、ぽろぽろ涙が出た。
私にもなぜだかよくわかんない。

手術がこわい。

おかあさん、ごめんね。

No.23

昭和47年4月28日 金曜日 晴れ
起床6時20分 就寝8時50分 体温36.6度 体調良好

ひろしくんから電話あり。
ゆうこさんからオペのこと聞いたとのこと。
寂しかったとき思いがけなかったので、涙が出ちゃった。
「がんばれよ」って。

オペ、やることにする。
ここまで来たんだもの、こんな肉腫なんか私のからだから、追い出してやる。
私一人のからだじゃない、みんな私のこと見守ってくれてるんだ、
がんばろう。

負けたくない。

No.24

昭和47年4月29日 土曜日 晴れ
起床6時半 就寝8時20分 体温36.2度 体調良好

火曜パックに手紙を出す。

病人が、深夜放送のディスクジョッキーに憧れちゃっていけないこと?
何だかとても寂しくって、手紙を書いちゃっていけないこと?
私の心のどこかに手紙が読まれることをひそかに喜んでいる何かがある。
いやな由里。大っ嫌い。
一慶さんへの手紙ももうこれっきりにしよう。

そんな、甘えちゃだめよ、由里。

No.25

昭和47年4月30日 日曜日 晴れ
起床6時50分 就寝9時5分 体温36.7度 体調普通

平凡な奥さんになりたい。

朝、5時に目を覚ましてお味噌汁を作ります。
中身はお豆腐とわかめが彼好みです。
自分で漬けた漬物をかわいい鉢によそおいます。
厚焼き卵を上手に焼いて、焼のりも出しましょう。
朝の準備ができたら、彼と子供を起こします。
子供は小学校の2年生、成績は悪いほうです。
でも私は怒りません。だってその子はとても心が優しいから。
彼と子供を門まで送って、お掃除、お洗濯をします。
午後になると子供が帰ってきて、
前の公園に勉強もせずに遊びに行きます。
私は夜ご飯のお買い物に駅前のマーケットまで、自転車で行きます。
そして、彼のためにお酒のさかなをまず初めに買いましょう。
それから急いでうちに帰って夕ご飯を作ります。
彼は6時に戻ります。
3人で夕食を済ませ、子供といっしょに漫画を見ます。
子供が寝たら、二人でお酒を飲みながら昔のことを話します。

そんな平凡な奥さんになりたい。

No.26

昭和47年5月1日 月曜日 雨のち晴れ
起床6時15分 就寝8時 体温37.1度 体調普通

きょうから手術前の精密検査が始まる。
退屈な一人の私にとって、この検査は一日中忙しく張り合いがある。
きょうは足のレントゲン7枚撮る。

あしたは内分泌の検査なので、食事はとれない。
色気より食い気の私にとってはちょっと厳しい。

No.27

昭和47年5月3日 水曜日 晴れ
起床6時20分 就寝9時10分 体温37.8度 体調頭痛

朝からだがだるい。
目も、前のように痛む。
頭の左側がなんとなく重いような気がする。
検査はひとまず中止。
病院の検査もろくに受けられない私がみじめでならない。

ああ、外に出たい。

No.28

昭和47年5月4日 木曜日 晴れ
起床6時20分 就寝9時5分 体温37.1度 体調良好

きょう、ひろしくんから絵はがきが来る。
このゴールデンウィークを利用して、友達と信州へ行っているとのこと。
絵はがきの山の緑が初夏を語っていた。

ああ私も旅に出たい。
今度、旅に出られるのはいつのことだろうか。

元気になったら、やっぱり九十九里に行ってみたい。

No.29

昭和47年5月5日 金曜日 雨のち晴れ
起床6時半 就寝9時半 体温37.5度 体調普通

母が来院。5月5日の柏餅を持ってきてくれる。
早いなあ、もう5月になってしまったんだ。
何にもしないで年をとっていくのがこわい。

退院したら中学からやり直そう。
人の二倍努力しなくては。
だから、今は早く退院できるようにがんばらなくては。

No.30

昭和47年5月6日 土曜日 晴れ
起床6時20分 就寝8時15分 体温36.1度 体調良好

午後、ゆきこさんのプレゼントの手提げを編んでいると、妹の来院。
やっぱり兄弟だなあとつくづく思う。
こんな私に相談してくれるなんてうれしい。
妹のために、何もしてあげることができない私がいやだ。

私はどうしたらいいのよ、まり。

No.31

昭和47年5月7日 日曜日 晴れ
起床6時45分 就寝9時40分 体温36.7度 体調良好

夜、ひろしくんの来院。
信州のお土産、かわいいこけし30センチくらいの。
とてもうれしかった。
彼、真っ黒になってた。
ああ、わたしも太陽の下に出たいなあ。
海のにおい、しばらくかいでないもの。

九十九里に行きたい。

No.32

昭和47年5月18日 木曜日 晴れ

あと十日足らずで手術。
この足もなくなってしまうのかと、ちょっとセンチになる。
由里らしくないぞ、こんなことでどうするんだ、という心と、
かなりしんみりした心の二つがある。
私もやっぱり弱い女。
もっと強くなりたい。
もう17歳なんだから。

No.33

昭和47年5月25日 木曜日 晴れ
起床6時5分 就寝9時20分 体温36.9度 体調良好

あさってオペなので精密検査もきょうで終わり。
きょうは心電図を撮った。
どこか異常があるのか2度やられた。
きょうはゆっくり休もう。

もうこわくなんかない。

No.34

昭和47年5月26日 金曜日 晴れ

オペが延期となる。

張り詰めていた糸がぷっつり切れてしまったようでこわい。
もう手術なんかしたくない。どうにでもなれ。
死ぬならきれいなからだで死にたい。
頭が痛い。もうなにも考えたくない。
このままずっと眠れ続けられたら。

幸せになりたい。

No.35

昭和47年6月3日 土曜日 曇

準備すべてOK。
もうすぐ注射されて手術室へ。

お母さん、お父さん、ひろしくん、
一慶さん、つねよさん、MSさん、ゆうこさん。

私、がんばってくる。

No.36

昭和47年6月15日 木曜日 曇

注射をして寝ると4時だった。
目を覚ますと、ひろしくんと、父、母と、ゆうこさんが見えた。
がんばってねの声に首をふった。

ベッドからストレッチャーに、病室を出る。
麻酔の注射はこの間の時よりよく効いているよう。

両手をしばられて手術台へ。
あの、ひんやりした冷たさは忘れられない。

麻酔の先生が数を数えてと言われた。
これで眠りから覚めたら、もう私の病気治る。
そう思って十数えた。
あとはもうわからない。

目が覚めたら朝だった。
足が痛い。下半身が麻酔のためか動かせない。
涙が出た。

6月3日のこと。

No.37

昭和47年6月16日 金曜日 曇
起床8時10分 就寝6時 体温37.2度 体調悪快

足のガーゼを取り替える。
その痛いの何の、もういやだ。こんな姿で生きてるなんて。
睡眠薬でも飲んで静かにしていたい。

でも、今の私にはその薬を取ってくる足さえない。

No.38

昭和47年6月22日 木曜日
起床6時20分 就寝9時20分 体温36.5度 体調普通

7月から東京の病院に移ると、きょう先生から言われた。
東京の病院の方が先生としても都合がいいからと言われた。
私にはそれしか言わなかったけど、お母さんたちは移ること知っている。
別に気にしない。
今は先生に従っていなくちゃ。

No.39

昭和47年6月25日 日曜日 曇
起床6時10分 就寝8時20分 体温36.5度 体調良好

午前中、身のまわりの整理をする。
いろいろ余計なものがあるのにびっくり。
このノートを読み返して、まあずいぶん成長してきたなあと思う。

午後からひろしくん来院。
来て早々アルバムのことでけんか。怒って帰っちゃった。
いま思うと馬鹿みたい。なぜ?
あーあ、寂しい夜。
あしたの朝、電話であやまろう。

No.40

昭和47年6月30日 金曜日 曇
起床6時 就寝9時 体温36.3度 体調良好

きょうでこの病院ともお別れ。
ゆきこさんや、前、部屋が同じだったので気が合うみどりさんや、
さっちゃんたちに送別会をしてもらった。
ああ、これが退院の送別会だったらなあなんて思っちゃう。
送別会を終えて、窓から見慣れた夜景を見ていると涙が出てきた。

あしたからこの景色も見られなくなる。

No.41

昭和47年7月1日 土曜日 晴れ
起床9時 就寝8時 体温36.8度 体調普通

きょうから東京の病院。
車でゆられて1時間半。
横浜の病院より小さいけれど、それだけにかわいくてきれいな病院。

来て早々、新しいこっちの先生に今までの病気のことを聞かれた。
先生が替わるたびに同じことを言わなければならないので、
おっくうで仕方がない。

きょうは、飯岡先生は来られなかった。

夜になって窓を開けると星が少ししか見えない。
きたない空なんだなあと思う。

横浜の空が妙に懐かしい。
きょうは眠れそうにない。

ゆうこさん、ひろしくん来院。

No.42

昭和47年7月2日 日曜日
起床6時 就寝8時5分 体温39.2度 体調不快

朝から熱がある。
こっちに来て早々なので、上がったんだろうと先生は言ってらしたが、
多量の鼻血を見た。
三度も。どす黒い血。

私のからだ、どうなっているのよ。

No.43

昭和47年7月4日 火曜日 晴れ
起床6時15分 就寝8時20分 体温37.5度 体調普通

きょうからセシウムをかける。
何のためかよくわからない。

通いのおじさんがセシウム室の前の待合室で
「今はこの病気を恐れません。きっと良くなって見せます。」
と言ったのを聞いて、ここに誰もいなかったら声を出して泣き出したかった。
あのおじさんの明るさがこわい。

 心の支えがほしい。

No.44

昭和47年7月5日 水曜日 曇
起床6時20分 就寝10時 体温37.2度 体調普通

院長先生の診察を受ける。
これはいかんと言われた。
先生のことばを、何の感情もなく聞いた。

部屋に帰ってベッドに入ったまま過ごす。
一人部屋だと、考えないでいいことまで考えてしまってやり切れない。
そんな気持ちでいっぱいだ。

ひろしくん来院。
いつものようにすらすら話しができず、苦しい。
このごろ、みょうに二人とも黙りこくってしまう。なぜだろう。

生きるって、大変なこと?
でもその尊さを知りたい。

No.45

昭和47年7月11日 曇
起床6時25分 就寝9時10分 体温36.2度 体調普通

初夏のころ、雨だれの話をしてくれましたね。
あの頃の日記に記してありました。

一人でいるとね、
何でもないことまで気がめいってしまうの。
例えば、雨だれがね、
ぽつんと落ちるでしょ、
するとだめなのよ。
気をつけないといけない、
一人はね。
寂しくないことまで
寂しくなってしまうんだもの。

No.46

昭和47年7月18日 火曜日 晴れ
起床6時20分 就寝7時5分 体温37.2度 体調普通

久しぶりにゆうこさん来院。
学校がお休みだそう。
話がつきなくて、一日とっても楽しかった。
ありがとう。

いまごろ、足がひどく痛む。
夕方、涼しい風が吹くころなんか特に。
めまいもする。

私のからだ、大丈夫なのかしら。

No.47

昭和47年7月20日 木曜日 曇
起床6時25分 就寝8時10分 体温37.5度 体調普通

このごろ、手足のむくみが気になる。
先生に言うと、薬の副作用だろうと言われた。

こんなぶくぶくになっちゃって、私だって女の子なのに。

No.48

昭和47年7月28日 金曜日 晴れ

25日午前1時ごろ、意識不明。

ときどき意識が戻ると、お母さんとお父さんと、まりとしげると、
そのほかたくさんの人たちの顔が見えた。
目を覚ましたのが26日の夜だった。
みんなが、先生が、もうだいじょうぶだよと言った。
それから今もベッドの中。

どうしたっていうのよ。みんなそんな顔をして。
私は平気よ。
死ぬの? いや!
私は死にたくない。

私はまだ死んじゃいけないのよ。
神様、私はみんなに迷惑をかけてきた。
だから、この病気を早く治して、
迷惑をかけた分みんなにつくさなきゃいけないの。

死んじゃいけない。

No.49

昭和47年7月29日 土曜日 晴れ

 涙ばっかりぽろぽろ出て、一人が妙に寂しくて
 涙ばっかりぽろぽろ出て、一人が妙に悲しくて

愛と死を見つめてという本を読む。
死んでいったミコは本当に幸せだったんだろうか。
人は死ぬ直前まで、
自分の人生が幸せだったのか、不幸だったのかわからないものだと、
誰かに聞いたことがある。

死んでもいい。
でも、今はだめ。
もっとしなくちゃいけないことがあるんだもの。
しなくちゃいけないことが。

No.50

昭和47年7月30日 晴れ

私はあとどれくらい生きられるんだろう。

私のからだのこと、お父さんもお母さんも、
そしてひろしくんも知っているんだろうか。
一日中ベッドの中で過ごす。
先生に聞いてみようかなと思う。でも、何を言われるかこわい。

あと一年の命。いえ半年。
ううん、3か月。
考えただけでもぞっとする。

きょうは寝られそうにない。

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