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黄昏の時 vol . 2

レス4 HIT数 2317 あ+ あ-

@白猫@( 34BTnb )
13/10/12 17:23(更新日時)

晴代は上半身を腕ごと縛られたまま、奈々原の後を、これから刑を執行される囚人のような足どりで続いた

仄かな白光を帯びた満月の光が、四角く窓の型に切り取られ、階段の手摺にまで細く延びていた

「お前..あの女を庇ったんだろう?」

奈々原は、立ち止まると階段へ足を運びかけた晴代に振り向いた

晴代の身体中に戦慄がはしった

足下に落ちていた視線が、暗闇に浮かんでいる影へと移ると、そこには物でも見ているような奈々原の眼が、蒼白い光に浮かんでいる

「ようやく、あんたの顔を思い出したぜ..御河商事の前の茶店で何度かみかけたな」

「...」

晴代は何も応えず、月明かりに照らされている自分の顔を隠すように叛けた

「ククク..まぁ、そんなに嫌うんじゃねぇよ。いい女だと思いながら見ていたんだぜ」

奈々原は、唇の端を歪めると晴代の内股に手を伸ばした

晴代は目一杯、身体をくねらせて抗った。奈々原は、伸ばした手を弾かれたように引っ込めると、高笑いをしながら一階へと降りて行った

晴代も、深い闇へと続く階段を一歩一歩降りて行った




13/09/30 20:35 追記
【追記】

黄昏を読んで頂いている方様、ありがとうございます。スマホに変えてから投稿しにくい状況です。削除もできねば、修正もできねぇ..揚げ句のはてには『マイスレッドはありません』ときたもんだ..じゃぁ、誰が黄昏書いてんだ!?

No.2004640 13/09/23 16:30(スレ作成日時)

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No.1 13/09/24 21:21
@白猫@ ( 34BTnb )

「たくっ..人使いが荒すぎだっての」

哲夫は工場裏に、三人の死体を埋め終えると汗だくになったシャツを脱いだ

無造作に置かれた鉄骨に腰掛けて、煙草に火をつけた。鉄の冷たさが心地よい。少し冷えこんできたせいか、哲夫の背にある鮮やかな色彩をした彫り物から昇る熱気が、靄のように夜空に吸い込まれていった。哲夫は自分の身体を犬のように嗅いだ

「くせぇな..」

死体を埋めた穴は、リフトで何度も踏み固め痕跡はわからなくなっていたが、血の臭いだけは周りの壁や土、草木にまで染み込んでいるようで、どうしても消えなかった

雨が降り、太陽が昇る。風が吹いて、また雨がふる。それを繰返して、少しずつ血の臭いも消えていくのだ

「ん!?」

哲夫は背後に何か気配を感じた。振り向くと闇の中に、大きな影が哲夫の背に張り付いていた。哲夫は叫んだ

「ヒューヒュー」

哲夫はもう一度叫んだが、喉元からヒューヒューと空気が漏れる音が聞こえるだけであった。哲夫は喉に手をあてた。ぬるりとした感触が指先に絡んできた。それから血の臭いが鼻腔に溢れかえった。哲夫はこの血の臭いが誰のものなのか、わからなかった

No.3 13/10/01 20:19
@白猫@ ( 34BTnb )

【レス No.2 の途切れた冒頭部】

半田辰蔵は、『shell』というネオンの消えた店の前に立った。扉のノブには、close と札がかけられていたが、辰蔵は構わず扉を開けた。日曜日は店休日だが 、景子が独りで飲んでいることは分かっていた。shellは、元妻である景子が経営するラウンジで、昔はよく御河商事の若い連中を連れて飲みに来ていた。辰蔵と景子の間に子はなく、景子の姪と甥である晴代とコウを、自分たちの子のように可愛がっていた。辰蔵と景子は数年前に何となく離婚したという感じで、辰蔵は別れてからも時折、景子の店へ飲みに来ていた。店は晴代が高校の時に開店しており、もう二十年以上経っていた。夏休みなどに、晴代はここでよくバイトをしていた。店は十五階建ビルの八階にあった。ビル自体は老朽化しているが、店内は数年おきに改装しており、寂れた雰囲気は感じさせなかった

No.4 13/10/12 17:23
@白猫@ ( 34BTnb )

「ところでコウ..突然帰って来たのは、どうしてだ。何かあったのか」

辰蔵は手話を交えずに、声だけを出して訊ねた。辰蔵はコウが、意味もなく日本へ戻って来たとは思っていなかった。辰蔵は、数年前からある噂を耳にしていた。それは、聴力を失っている殺し屋が世界で暗躍しているといったものであった。その暗殺者は、聴力は失ってはいるが、残された感覚を超人的に鍛えあげ、また、エスパーでもあるかのような洞察力を兼ね備えているらしい


辰蔵は、コウが聴力を失いながらも生命の片鱗に触れるような、世界に生きる意味を探していることを見抜いてていた。コウのように、ハンディを背負った者が、一瞬で血の雨が降りそそぐ世界で生き残るためには、よほどの幸運か人智を越えるほどの能力を身につけている者であろう。辰蔵は、コウとその暗殺者を結びつけずにはいられなかった。それに、もう一つ気掛かりなことがあった。コウの実父であり、前御河商事の代表取締役であった、岡崎玄一郎が辰蔵に実権を譲り、海外へ多角的な事業を展開し、軌道にのり出した時期が、噂が耳に入り始めた時期と重なるのだ。辰蔵も、表舞台はもとより裏社会にも豊富な人脈を持っており、あらゆる情報はすぐに得ることができたが、岡崎玄一郎に関する情報だけは、何故か一言たりともわからなかった

コウは、そんな辰蔵の気配に反応したように、辰蔵の視線を受け止めた。コウには、辰蔵の自分を見る眼が酷く哀しげに映った。コウはその瞬間に悟った

― この人はすべてを知っている

『晴姉さんは元気?』

コウは、辰蔵の思惑から逃れたいように
その場には不釣り合いなほどの笑顔で、手話を送った

辰蔵は、フッと視線を落として微笑んだ

『晴代は、相変わらず元気だ..まだ嫁にも行っとらん』

辰蔵の手話が、終わらないうちにコウは声もなく笑い出していた

辰蔵が、バーボンの入ったロックグラスに指先をかけると、携帯が鳴り出した

「叔父さん、私、晴代。ちょっと調べてもらいたい事があるんだけど」

と、言い残すとブツリと電話が切れた

「何だ?」

辰蔵は着信を確かめると、すぐに晴代へ電話をしたが機械的なアナウンスが、繰り返されるだけであった

「誰から?」

景子が、酔いの回った口調で辰蔵の携帯を覗き込んだ。コウも気になったらしく、手話で誰からだと訊ねた

「晴代からだ..」

そう言って辰蔵は晴代の自宅にも電話をしたが、留守電に繋がるだけであった

― 子供じゃあるまいし..何もないと思うが..

辰蔵は、何故かこの時ばかりは晴代の途切れた電話が妙に気になった

コウは、そんな辰蔵を暫く見続けると、晴代の車とナンバー、交友、社内関係や最近、仕事上のトラブルや異変がなかったかを辰蔵に訊ね始めた

コウの眼は辰蔵の知っているコウの眼ではなく、標的を捕らえようとする獰猛な獣のような眼に似ていた




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