ＳＳ

>> 450 なん十件と見て周り、やっとここならと言うアパートと言うよりやはりマンションよりのワンルームを見つけた。

そこは、女性専用でしかも独身の女性しか入れない所。
管理会社も近くにあり、大家さんも駅から数分の所に住んでいた。

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>> 451 新入社員式が迫り、あとは引っ越しをするだけ。

生まれて初めての一人暮らし。

成美の心は未来の自分に酔いしれていた

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>> 452 都会に出てきて、仕事に没頭し悪戦苦闘を強いられる。

アパートに帰る頃には、ヘトヘトで正直、アパートには寝に帰る日々が続く。

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>> 453 ワンルームの部屋におしゃれなキッチン。おトイレはウォッシュトイレ。

自分だけのお城……

のはずが、初めの頃はインテリアにも懲り、可愛い小物やお揃いのバスダブセットに、少し高めの食器類などを女性らしい部屋作りをしていたが、こうも仕事中心に生活が回り始めると、コーディネートどころか、掃除も億劫、料理なんて、ここ数週間していない。

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>> 454 お風呂だってシャワーのみ。唯一洗濯だけは、かかさなかったが、改めて母の偉大さに感謝した。

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>> 455 お母さんの煮しめが食べたい。

スーパーにはおぞうさいコーナーがある。

母がよく作ってくれていた料理も買う事は出来たが、味は、雲泥の差である。

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>> 456 今日も残業が遅くまでありコンビニで買ったお弁当をボソボソと食べ、疲れきった身体を投げ出すように、ベッドに転がる。

一人暮らしって、皆こんな感じなのかな？

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>> 457 脱ぎ捨てたスーツがシワにならないように、ようやくハンガーにかけ、お化粧も落とすのも面倒臭い。

このまま寝たい…

でも、このまま寝たら、明日の朝はもっと辛い。

成美は挫けそうな心を、どうにか奮い立たせシャワーに向かう。

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>> 458 やっと、眠りにつける。電気を消し布団にうずくまる。最近、夢の中まで仕事をしている時がある。

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>> 459 上の階、天井から
がーがーっ
シュッシュッ
と、音が聞こえるようになった

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>> 460 物件を探している時に、特に注意した点は、となりとの物音。

なんにもない田舎から都会に行くのだ。

隣が雑木林とは訳が違う

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>> 461 父も母も入居にあたっては、隣近所は勿論、派出所のお巡りさんまで挨拶をした。大家さんは、ケラケラ笑っていたが、成美も少し恥ずかしかった。

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>> 462 大家さんも太鼓判を押すほど防音壁。

窓を開けると、車の行き交う雑音や喧騒などが聞こえてきたが、一旦窓全て閉めると、無音に等しかった。

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>> 463 じゃあ今聞こえる音は何？
上の階の人が掃除する音！
ピッピッというかすかな音もする。

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>> 464 あれから決まって夜中の１時になると、掃除の音が聞こえるようになった。

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>> 465 「成美ー大丈夫？不眠症？お化粧してても分かるよお！目の下のくま！……あっ失礼～」同僚の千賀子が、何やらニヤニヤして通り過ぎる。

えっ？
彼氏だっていないのに…

「成美さあ、最近疲れてない？たまには、女子会でぱーっと騒ごうよ！」

やはり、持つべきものは友である。

こっちに来てからは、地元には友人はいるが、皆それぞれの道を歩みだしている。しばらくメールでやり取りはしていたものの話は、逸れていく一方だった…

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>> 466 次の日が休日と言う事もあり、あまり飲めるほうではない成美が、もう一杯と、梅サワーのおかわりをする
「あのねえ…実はね？なんか部屋がおかしいんだ。それで、あんまり眠れなくてね」

「えっ？何？何？おばけとか出るの？うわっ、心霊スポット成美だわ！」

千賀子が大きな声で笑う。
そんな同僚を見て成美も安心する。

「今晩、泊まってあげてもいいよ！おばけ見たいもん」

さずが、ホラー大好きな友人だ。頼もしい。

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>> 467 「おばけとかじゃないのよ。上の階の人の事なんだけど…」

成美は、事の次第とうるさい苦情を言うのにはどうするばよいか？など話はつきなかった。
あとは、同じ職場の男性や先輩、上司の噂話に花を咲かせた。

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>> 468 終電もギリギリで間に合い、千賀子は酔った勢いと、まだ友人宅ご訪問がまだだとへんな理由をつけて、成美のアパートに泊まる事になった。

千賀子は、地元がここである。都会に生まれ都会で育ち都会で働く。都会人。

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>> 469 成美も偏見があった訳ではないが、都会の人たちに負けるものかと、片意地を張っていた事もあったが、毎日、顔を合わせ同じ話題、同じ仕事を何回も繰り返しているうちに溶け込めるようになった。上司や先輩にどやされるのも慣れた。いつの間にか、仲間意識が出来たのかもしれない。

千賀子は、気取らない。
明け透けなさっぱりした性格も成美にとっては、友人と呼べる、唯一の人にもなった。

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>> 470 アパートの近くのコンビニでおやつとビールを買い、二人で成美の部屋で話の続きをした。話はつきない。

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>> 471 「ねえ、そろそろなんじゃない？」
時計を見ると、１時近くになっていた。

それまで、見ていたDVDも消し、千賀子は何を思ったのか電気まで消そうとしていた。
「やーだあ。ホントおばけじゃないんだから、電気はつけておいてよ」

久しぶりに成美は、楽しさを感じる。

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>> 472 がーがー

ガーガー……

シュッシュッ
シュッシュッ…

まさにこの音だ。

二人は顔を見合わす…

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>> 473 千賀子が、キッチンに立つ。
成美は不思議がりながら
「どうして？そこから聞こえる？」

千賀子は、キッチンの排水口を指指している。

「音は、ここから聞こえてくるよ」

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>> 474 アパートやマンション、病院などは、配水管が壁づたいに張り巡らしている事がある。防音の壁や防音の窓では、防ぎきれない室内の音。
排水口や配管を通して聞こえてくる事がある。

今まさに、その状態だ。

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>> 475 「でもさあ。夜のこんな時間にねえ？毎日、掃除する？掃除機かける？おかしくない？上の人…」

千賀子は、鼻でフフンと笑う

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>> 476 「成美さあ。知らない？最新式の掃除機の事…
あれはねえ、タイマーとかついていてえ…
あとは、ゴミセンサーもあってえ……」
酔いの回った口調がやたらおかしかったが、最近発売された新型掃除機の説明をし始めた。

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>> 477 「そうだ！説明するのもめんどーだから、明日は休みでしょ？大型電器店に行ってみようよー」

「あー酔っぱらったあ。原因分かったし、おばけじゃなくて残念～」

と言いながら、フローリングに敷いた布団に寝てしまった

成美も、深い眠りにつく

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>> 478 翌日、二人は家電売り場にいた。

「これこれ！」

千賀子が、手に持っていたのは、円盤上になっている掃除機。

商品名は書かない

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>> 479 「きっとさあ。上の人は、フローリングじかなんだよ。それでこれを寝ているうちに作動させると～

朝、起きた時、掃除が完了って訳。なるほどねえ～」千賀子は感心している。

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>> 480 「成美もこれ買って、夜中に掃除！どう？」

手間が省けて、一石二鳥だよ！

上の音がうるさかったら、排水口に蓋が出来る便利グッズが売ってるよ！

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>> 481 千賀子は都会で生まれ都会で育ち都会で生きている。

隣人の生活音や車の騒音、クラクションの音。

音。音。音。

音には慣れっこだ。

しかし、自分自ら出す音には敏感だった。

ちょっとしたドアの開閉や階段を上がる靴音など。自分からは、絶対に出さない。

これが都会に住むと言う事なのかもしれない。

成美も、都会生活をエンジョイしようと心に決めた。

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【小休止】

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世の中って、不平と不満だらけ。

かく言う私も、くちを開けば誰かの愚痴。

噂話じゃないけど、話相手の共通の話題がそうなんだから仕方がない

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>> 484 いない人の噂話ほど、話が盛り上がるのも確かだよねえ

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>> 485 芸能人のあの人とあの人が結婚したなんて言う話より離婚した話の方が、盛り上がるわよ

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>> 486 今日もテレビで、結婚披露？婚約披露？した人たちいたけど、長く続かないんじゃないかとか、きっと来年には別れてるわよ。なんて話をした方が楽しい。

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>> 487 だからって
【他人の不幸は蜜の味】
なんてサラサラ思ってないわよ

ホントよ

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>> 488 痛ましい事件や事故のニュースなんか見ると心が痛くなるほど悲しいけど

心のどこかで、自分じゃなくてよかった、自分の家族じゃなくてよかったって思うもの…

よかったなんて、くちが裂けても言えないけど、思うのは勝手だわよね

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>> 489 今まで生きてきて、危機的状況に陥った事もない

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>> 490 そりゃあ何回かは、親戚の叔父や叔母。

祖父や祖母の死は見てきた

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>> 491 お葬式にも参加した事はあるけど、不慮の事故とかではない

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>> 492 病気にしたって、癌なんだなんて言ってた友達もいたけど、癌が見つかった時はこの世の終わりみたいに嘆いていた友人も、今ではケロッとしてる

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>> 493 癌の最新治療で、なんでもカプセルの中に抗がん剤を入れて、癌細胞の死滅どうとやらが、功をそうしたようだ。

今では、私より元気なんだからすごいなあ

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>> 494 癌なんて虫歯と一緒よ！

なんて言ってる友人

あんたも癌になったら、あたしの主治医を紹介してあげるわだって

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>> 495 影では、
「ねー。憎まれっ子よにはばかる」ってあの人の事じゃない？

なんて言われているのも知らないだろうなあ

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>> 496 そんな事なんて本人の耳に入れば大変な事になるのにねえ

でも私は言わないわよ

別のあの人が言ってたんだからねえ

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>> 497 なんだかんだ言っても、やっぱり他人の悪口って、いっちゃあいけないわよね？

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>> 498 私は、絶対に他人の悪口は言いません。

聞いた話はするけどね

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【最後に】
やっと満レスまでたどりつきました。

読んで下さり本当にありがとうございました。

また、機会がありましたら書いていこうと思ってます。誤字脱字が沢山ありました。読みづらい所も何ヵ所もありました。理解に苦しむ表現もあったかと思います。何はともあれ最後までお付き合いをしていただきまして感謝しております。

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