忘れたいのに忘れられない。。。

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2013/04/08 08:44(更新日時)

人生には、忘れたくても、忘れられないことがあるものだ。

忘れられないために、苦しむ。

まさかの夫の不倫から、裁判まで。

長い長い、そして忘れられない苦闘の日々。

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No.1713887 (スレ作成日時)

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No.1

お正月。

息子がインフルエンザで寝込み、娘は実家に避難。
お祝いどころでない年の初めだった。

夫は、暢気に寝ていたはずなのに、どうやら、寒い中、ベランダで携帯で電話をしていたようだ。

部屋に入ってくる時、私と目が合うと、なんとなく携帯をしっかりと握りしめた。

おかしい。。。

とっさに、私は直感した。

「ちょっと貸して」

主人は素直に携帯を渡した。

これが、まさかの苦闘の日々の始まりだった。

No.2

>> 1 携帯の通話履歴や、メール等を見る。

送信メールを開けた。
「また、会いたいね。キスしたいね。」

主人が年末に送ったメールだ。

「何なの?これは!!」

「いや、相手がキスしてきたのを俺がよけたから、未遂に終わってて。だから、次はねって一応書いたんだよ。」

そんな話あるわけがない。

夫はメールを消し忘れたのだ。

No.3

夫は、保険の仕事をしていた。

「車の保険の仕事をくれる人だから、余計なことをするなよ。しかも、中国人だからな」
メールアドレスの登録名は「LEE」になっていた。

なるほど、中国人か。

No.4

息子も元気になり、実家に娘を迎えがてら、向かう。

道中も夫の携帯をいじっていた。

あれはどこのファイルだったかー。

クリスマスのイルミネーションの前で女とくっついている写真。。。

「何?これ?」

夫はまたまた消し忘れたのか、見つかるはずもないと大事にとっていたのか。

馬鹿な男。

No.5

実家で息子をおろし、近くの公園の前に車を停めた。

女の電話やアドレスの登録を削除し、写真を私の携帯に転送した。
夫はクリスマスも仕事で、結局、友達家族と子供達と教会に行ったというのに。

しかも、その数ヶ月前、娘は意識不明の大怪我をして、奇跡的に回復してきている最中だった。

女とデートしてる時ではなかったはず。

娘が怪我をしたのは、自分のせいだと泣いていたはずなのに。

No.6

夫は体の関係は断固として否定した。

家にも行ったことがないと言った。

私は絶対嘘だと思いながら、夫の言うことを信じたいところもあった。

その日、夫は私や息子を実家に送り、自分は自分の実家に行き、夜のバイトまで過ごすことになっていた。

でも、そのまま、放すわけにはいかない。

私の携帯と夫の携帯を取り替えることにした。

No.7

母にも話すまいと思っていたが、耐え切れず話してしまった。

「体の関係、絶対あるって。間違いないわよ。」

やっぱりそうか。。。
実家にいる主人と話す。

「やっぱり、体の関係があったのよね?」

「・・・」

大きくため息をついたあと。

「あったよ。」

やっぱり、夫は信じちゃいけない人だった。

No.8

その晩は眠れなかった。

いろんな思いが沸き上がって。

夫は、その晩は深夜1時からの勤務だった。
9時過ぎ、夫から電話。

「今から、兄貴と兄貴の彼女と外に食べに行くから。」

こんな時間から?

不審に思ったが、どうにもできない。

その後、電話には出なくなった。

No.9

深夜4時。

ふと、夫は仕事に行っていない気がした。

仕事場に電話する。

「えっと、今日はシフト入ってないので、来てないですよ。」

やっぱり。。。

電話をしてもでない。

一体どこに?

やはり、女のところ?

No.10

早朝、子供達を実家に残し、私は自宅に戻った。

自宅に着くとメモしていた女の携帯番号に電話をするが、留守番電話。自宅の電話も同様だ。

卑怯者だ

夫の洋服をゴミ袋に詰め込んだ。靴もかばんも何もかも。

泣きながら詰め込んだ。

No.11

すっかり夜が明けた。
結局一晩一睡もしないまま。

狂ったように夫に電話をかけ続けた。不倫相手にも。

やっと、夫が電話に出た。

「どこに行ってたの?仕事入ってなかったじゃないの。電話したんだけど。」

「知ってるよ、電話したの。シフト入ってると思ったら、入ってなかったんだよ。」

(うそばっかり。最初から分かってて、女のうちに行くつもりだったくせに。)

内心そう思いながら、「で、どこにいたわけ?」

「小学校の前に行った。」

「はぁ?なんで!」

「死のうと思った。」
死ぬ勇気さえないくせに、どの口がそんな作り事を言うのか。

No.12

夫には、膨大な借金があった。

稼ぎもないのに、派手な人々と飲食を毎晩のようにしていたからだ。
名前の知れたピアニストやら、その愛人のマスコミ関係の女やら。。。

ピアニストは既に三回目の結婚中というのに、愛人と自分の店でよく飲んでいるというとんでもない男だった。才能はあるかもしれないが、人間としては、最低な男だった。

その男に夫は犬のように仕えていつも機嫌をとっていた。

夫の不倫相手もそのピアニストにあてがわれたのではないかと直感していた。

No.13

夫が自宅に帰ってきた。

一睡もせず、何も食べれない私はフラフラだった。

横になったまま、夫の話を聞く。

夫は、自分の行為を詫びた。

一応。

私は二人の関係を尋ねた。

「なんで、知り合ったの?」

「保険の仕事もらってたから。。」

「家には泊まってたのね?」

「一度も行ったことはない。あげてくれなかった。」

「いつからの関係なの?」

「秋くらいからだよ。」

「自分の子供が怪我して、死にかけたのに、よくできるね、そんなこと。」

「俺は俺なりに、ショックで現実逃避してたんだ。」

「娘が現実と向き合って、後遺症と戦ってるっていうのに、親の自分は現実から逃げてるわけ?ずいぶんな励ましね。」

「もう、二度と会わないし、連絡も取らない。もう、年末には別れる話になってたんだよ。」

「また、会いたいね。キスしたいねとは、ずいぶん、未練がましいわね。」

延々と不毛な話が続く。

No.14

私は夫の借金のため、三つの仕事を掛け持ちしていた。

節約はもちろんのこと。

ところが、節約した分、私が働いて借金を減らそうとした分は全て、不倫相手に流れていたわけだ。

やりきれない気持ちだった。

とにかく、家を出てもらうことにした。

夫は本当に珍しくおとなしく家を出て行った。

No.15

でていったはずの夫がほどなく戻ってきた。
「こんな機会もないから、飯食いに行かない?」

子供達がいない時はまずないからということだとは思うが、どこまで暢気なんだろうか。
元々食べ物のことばかり考えていて、結婚から20キロ太り、100キロ超えの巨体だ。糖尿病のサラブレッドと言っていいぐらいの家系なので、食べ物の管理もしていたが、外でたらふく食べてくるので、どうにもならなかった。

どこまで、脳みそ、食べ物なんだろうか。

呆れて、「行かない。」と言うのがやっとだった。

No.16

主人の携帯に登録のあった女の番号に電話するが、留守番電話ばかり。

卑怯者だ。

やっと、呼び出し音が鳴る。

心の準備をした。

「リーさんですね?」

「違いますよ。」

「えっ?リーさんじゃないんですか?」

「違いますけど。」

「そうですか。。。」

おかしい。

「なんか、リーさんですかって聞かれてるんだけど。。。」と近くにいる人に話している。

近くで男性が何か言っている。

やっぱり違うのか?

確かに、あの写真の女にしては歳のいった感じの声だ。

「すみませんでした。。。」

納得いかないまま、私は電話を切った。

No.17

子供達は実家に預けたままだった。

パパがいなくなることはなんて話そうか。

昼間の仕事はくびになっていた。

とりあえず、仕事で外国にいくことになったとでも言うしかない。
でも、いつまでも、そんな嘘は通らないだろうけど。

私はどうしたらいいのか。

とにかく、一度女と話さなきゃ。

メールもしたし、引き続き電話もしたが、無視されたままだった。

No.18

きっと、なんの罪悪感もなく不倫のできる女なんだろう。

でなきゃここまで、無視しないだろう。

それか私が番号やアドレスを間違えて登録したのかもしれない。

夫の携帯から女の登録は削除したが、どこかに残っているかもしれない。

夫を呼び出した。

No.19

夫の携帯。

二度と連絡を取らない。会わないと言っていたのに。

案の定、消し忘れのメール。

「今、○○線の中」

連絡取ってたことは間違いないし、会おうとしてたにちがいない。

だが、夫は「会社に電話があって、電話下さいって言われたから、電話したけど、出ないからメールしたんだ。」と言った。

そして、「家族が大事なので二度と会わない。」と言ったと。

「仕事で食事はいいでしょう?」と言われたけど、「それもダメ」と言ったのだと。

アドレスは私がメールを送っているアドレスだ。

おかしい。

また、連絡してくるかもしれない。

夫の携帯を預かることにした。

No.20

♪♪♪

夫の携帯が鳴る。

夫の親友からだ。

どうしよう。。。

切れた。

あー良かった。


♪♪♪

また、かけてきたようだ。

会う約束があったのかもしれない。

どうしよう。。。

意を決して電話に出る。

「もしもし」

No.21

相手に色々尋ねられる前に、自分から話す。

「ご無沙汰してます。ちょっとと色々あってね。というか、不倫してたらしくて、主人の携帯を預かってるのよ。出ようかどうしようか迷ったんだけど、会う約束してたら申し訳ないなと思って。」

「いや、会おうとは言ってたけど、決まってはなかったから。」


つい最近、奥さんが不倫していて、相手が家に乗り込んできたという話しは夫から聞いていた。

だが、数年前、自らも不倫して家庭を何年かほったらかしにしていた。

「俺も他人のことを言える立場じゃないんだけどさー。」

何故だか分からないが、尋ねたことだけじゃなく、尋ねないことまで饒舌に話してくれた。

「あいつに彼女ができたとは聞いてた。あのピアニストの店で手伝いしてて、一回会ったことあるけど、眼鏡かけて、じみーな女だったよ。」


やっぱり、あのピアニストが関わっていたんだ。。。

彼からの情報は、後々私を助けることになる。

No.22

私はあまり携帯の色々な操作に詳しくなかった。

最低限の電話とメール、携帯に元々入っている絵文字を使うのがやっとだった。

夫の携帯には不倫女が残したあとが満載だった。

見たこともないような絵文字やデコメール。

全て保存されていた。

「泊まってね!」

「一緒に寝よ!」

だののデコメール。


とりわけ驚いたのは、避妊具がキャラクター化されてピコピコ動いているデコメだった。
40にもなる、とても若い子とは言えない女も独身だとこんな感じなのか。

私には考えられなかった。

No.23

メールも受信や送信のボックスには保存されていなかったが、デコメテンプレートや携帯データお預かりセンターには残っていた。


「願い事」
と題されたメールには、
「ダーリンとずっと一緒にいられますように」

日付は6月。
夫が言っていた10月くらいに知り合ったと言う嘘はあっさりひっくり返った。

No.24

デコメテンプレートには、

「ダーリン、お疲れ様。ゆっくり休んでね。少し休んだら、また・・・・ね!」

と肉体関係を匂わせる内容のメールも、夜景のデコメテンプレートに白い字で書いてあった。

日付は同じく6月。

6月には既に肉体関係があったらしい。

No.25

夫の誕生日は七月だったが、

「お誕生日おめでとう。来年も再来年もその先もずっとずっと、一緒にお祝いできますように。」

とあった。


そういえば、誕生日、子供達は手作りのカードを作って、待っていたのに、帰ってきたのは深夜だったな。

No.26

電話もメールも無視されたまま。

ふと以前、夫のメール着信音がして、気付いた私が携帯を取ると、慌て携帯をひったくりメールをみないまま削除したことがあった。

夫は「車の保険の相手だから、余計なことすんなよ!」と怒鳴った。

でも、私はなんとなくメール着信履歴から、アドレスを控えておいたのだ。

(あのメールの相手だったかも。。)

私は、アドレスを控えてあった紙を探した。

あった!

夫の携帯に登録のあったアドレスにすごく似ているが、少しだけ長かった。

二つアドレスを使っているということなのか。

どちらのアドレスにもまたメールを送ってみることにした。

No.27

翌日。

不倫女から、初めてメールがきた。

私が控えておいたアドレスからだった。

「わたくしにもわたくしの生活や人生があります。
既に連絡先は全て消去しました。
今後一切関わりたくありませんし、関わりません。」


まるで自分が被害者かのような内容だった。
謝罪の一言も全くなかった。

この時、一言でも嘘でも謝罪が含まれていたら、不倫女は不貞行為の損害賠償で裁判を起こされることもなかったのだ。

No.28

確か、夫は新しくフリーメールのアドレスを最近はよく使っていたな。

パソコンを開けてみる。

あっさり、メールを見ることができた。

そこには・・・驚愕の事実が満載だった。

たまたま、この不倫女だけが、そうなのかもしれないが、夢見る少女が二人の思い出を日記のように書いていた。


私には驚きばかりだったが、後にこれが、不倫女が足掻いてつく嘘をつき崩すことになる。

No.29

何よりも驚いたことは、

相手の名前だった。

「高田 里香」

私の名前は

「里香子」

でも、親族や友達は「子」がついていることも忘れがち。
親兄弟も「里香」と呼んでいた。

夫も私を「里香ちゃん」と呼んでいた。

同じ名前の相手と不倫できるなんて。

凄すぎる。

No.30

そういえば、いつか夫の携帯を見た時、着信履歴が「里香」だらけだった。

なぁんだ、私かと思ったのだった。

だが、あれは、私からの着信履歴ではなく、不倫女からの着信だったのだ。

No.31

もう一つ思いあたることがあった。


お盆の時、夫と子供達は避暑地に旅行に行っていた。

私は仕事で行けなかったのだ。

子供達は当時、携帯を持っていなかった。

パパの携帯が鳴り、着信「里香」と出たため、「ママだー♪」と娘が喜んで、「もしもーし!」とふざけた調子で電話に出たら、いきなり切られたということがあったらしい。

その直後だったのだろう。

娘が私に泣きながら電話をしてきたことがあった。

「『里香』って出てたから、ママだと思って出たら、パパにすごく怒られて。。。パパは『里香社』(りこうしゃ)だって言うんだけど。でも、私は見たの!『里香』って出てたんだ!」


娘は泣きじゃくっていた。

たぶん、殴られたんだろう。

ひどい父親だ。

娘が不憫でならなかった。

No.32

メールの内容は、全ていずれ証拠となる。

里香
「ヤッホーアドレスも教えていただけるのですね?
まず、お互いの呼び方から変えなきゃね。
栗原君って言うのも変だものね。
私は、よくリーって呼ばれることが多いかな。」

そして、自分の生い立ちから経歴がかかれていた。

田舎から上京し、音楽大学のピアノ科を出ていた。どうも、ピアノ講師もしているらしい。だから、あのピアニストの知り合いだったんだ。。。

No.33

里香「どうしても、あの日のことを思い出してしまう。
初めて手を繋いで、ドキドキした。
それから、後から抱きしめられてずっとお話したよね。
そして、初めてのキス」
詳細に逢瀬の内容が綴られていた。

後々、全てが動かぬ証拠となるのも知らずに。。。

No.34

里香「オペラにダーリンと行けるなんて、夢みたい!」

そういえば・・・ちょうど、同じ時期だった。

夫が突然、「ただで券をもらえるから、オペラ行かない?」と聞かれたことがあった。

私はオペラが大好き。
「行きたいけど、子供達預けられないし。。」
夫の飲食で、借金がすごくて、私はいくつかの仕事を掛け持ちし、自転車で配達の仕事もしていた。

いくらただの券があっても、子供達を誰かに預けるお金がなかった。

No.35

里香からのメール
「『英雄ポロネーズ』の譜読みがあってね。」

そういえば、ある日突然「あなた、『英雄ポロネーズ』って弾ける?」と尋ねられたことがある。

「譜面があって、練習したら弾けると思うけど?」と答えた記憶があった。

夫は、いつも不倫女と私を比べていたのだろう。

No.36

里香のメール「今日はカレーをおいしいって食べてくれて嬉しかった。お鍋をかかえて食べてる姿がたまらなく愛しい。」

里香のメール「今日はご飯タイマーかけてきたからね。」

里香のメール「昨日は床で寝ちゃってお子ちゃまでごめんなさい。」

夫は家に行ったことはないと頑なに否定していたが、どう考えてみても、家に行ったてとしか考えられない内容のメールばかりだった。

しかも、そのようなメールは4月から6月に集中していた。

No.37

家族でよく行くとんかつ屋。

仕事の帰りに、ちょっと寄るような近場にあるような店ではない。

夫は、その店に飾られている絵についてメールで高田里香に詳しく説明していた。

あの店にも連れて行ったんだ。。。

私と夫が初めてデートした店。

とんかつ好きの父が、最後に行ったとんかつ屋だった。

様々な思い出が一気に汚された気がした。

夫と高田里香に。

そういえば、4月ころ、カードの利用明細に丁度二人分の請求がその店からきていた。

不思議に思った私は夫に尋ねたが、
夫は、「森さんと行ったんだ。」と言った。

おかしいと思ったが、ちょうどその頃
私は仕事を始めて、忙しくなり、そのままになってしまっていた。

No.38

とにかく、高田里香は、ヒマなのか、性分なのか、長文メールを山と送ってくる。

里香

わかる、その気持ち。言いたいことを伝えたくて、書き連ねたいんだけど、陳腐になる気がする気持ち。痛いほどよくわかるを。
だーかーらーお代官様は許してあげまっシュ(*^^*)(DAIGO風にね♪)
あんなふうに伝えた私のことも許して下さーい、ダーリン様!

安心して、許すも許さないもないから。
一緒にいると、本当に幸せな気持ちになるね。あの幸せ感も今までにない。
今日も昨日より愛しています(*^_^*)


メールのやりとりの間に、電話や実際の会話があるので、意味が分からないメールが時々あった。

夫は、メールが嫌い。まわりくどいのも嫌い。

愛してるとか、なんだとかうだうだかくのは面倒な人だった。

素っ気ない内容の返信に文句をつけたのだろう。

それからのちの夫が高田里香に送ったメールは、別人かと思うほど、くさいくらいの内容のメールになっていく。

No.39

夫のメール


○○での夜の出来事は、本当にふたりのたからものだね。

東京タワー、レインボーブリッジ、流れ星その他の自由の女神をはじめとするエキストラのみなさんが素敵なふたりのこころのアルバムのページを創ってくれたね。

抗わない方がよい時には抗わないようにしましょう。2人ともO型だからお互い気をつけよう!

それにしても知れば知るほどReeの事が好きになります。

僕も大切な大切なReeとの関係を育みたい気持ちです。

そういえばショックな事にReeがつけてくらたKissマークが消えそうです。。。



本当に、あり得ないほどくさいメール。。。高田里香に相当文句を言われたので、夫なりに頑張ったのだろう。

今では、滑稽にさえ感じるけれど、当時の私の怒りのボルテージを夫のこの類のメールは一気にあげてしまう。


Kissマーク。。。。このメールは4月末。Kissマークは身体の関係がなかったら、普通はつけないものだろう。、既に4月の末には、関係があったということになる。

No.40

夫がくさいメールを書くようになってから、1ヶ月後のメールも、くささ全開だった。

里香のメール

逢う度に、ダーを好きと私の心が確認します。もちろん今日もそうだったの。
あっという間の少しの時間でも、一緒に居られるのが幸せ。
次に逢えるまでに、ダーへの想いが育ちます。そして、逢えた時の嬉しさや喜びは言葉で言い表せない。
END


それに対して、夫は

りぃの可愛い笑顔を見ると嬉しい気持ちに
なります。
手をつないだり、りぃのおしゃべりを聞いたりすると心が満たされます。昨夜ちょっと寝たフリをしてりぃを困らせちゃったけど、自然体のReeを見て可愛いいなぁと思っていました。自然体と言っても普段のReeと違うわけでなく更に、Reeの事が好きになりました。僕もテレビは好きだし、Reeと一緒にくっついてテレビを見るのも好きな時間だよ。正直言って来週の生肉の会、おっさんの会は、Reeに逢えないから気が進まないんです。でも友達も仕事も大切にすればReeとの時間も、もっと楽しく幸せな時間になると思います。Reeも友達や仕事の集いを大切にしてね。本当は一秒でもReeと一緒に居たい気持ちがあるけれどふたりの為を考えて敢えて言っておきます。
End





高田里香は田舎からでてきたこともあり、友達がいなかったので、夫の浅く広いこつきあいの会合出席には言い訳が必要だったのだろう。

No.41

二人のメールのやりとりは、私が心を決めるには、充分すぎた。

メールを見るために、パソコンを操作する指は、震えていた。

寒さのせいではない。

ここまで裏切り続けられてきたという事実を目の当たりにして、悲しみ、怒り、衝撃、色んな感情が混じり合い、呼吸さえままならない。

No.42

皮肉なことに、新年の集まりに、実家の近くに食事に行くことになっていた。

母が早くから、計画、予約し、楽しみにしていた集まり。私のせいで、迷惑はかけたくない。

とても行ける気分ではないが、僅かに残る力を振り絞って、子供達を連れ、実家へ母を拾いに車で出発した。

決心をしたからには、子供達には伝えなければならない。

なんと伝えたらいいのだろう。

私は迷った。

No.43

決心…

夫とは、家族を続けられないということ。


不倫相手に本気であったかどうかは分からない。
離婚を拒絶したことから考えると、遊びだった可能性は高い。

しかし、とにかく、家族の主としての義務を怠り、家族を守ることより、自らの快楽を何よりも優先させていたのだ。


子供の怪我、限度までの多額の借金。

家庭の危機にありながら、夫は自らの快楽のみを追求して暮らしていたのだ。

経済的な問題で、離婚を踏みとどまる夫婦は珍しくない。

しかし、私の場合は、かつてから離婚したほうが、せめて私達の生活は守れるような状況にあった。

その上、真面目に働きもせず、お金は不倫に流れていたわけだ。

もう、私達夫婦の未来については迷うことはは何もなかった。

No.44


でも、子供達には・・・

単なる別居と思っていた時は、「パパはお仕事で外国に行くことになったの。」でも済むと思っていた。

離婚となると、そうはいかないと思った。


車に乗った子供達は、大好きな私の母や、従姉妹達に会えるので、はしゃいでいる。


子供達は、どう思うだろうか。

でも、これは現実。

辛い現実。

逃げることはできない現実。

現実から目をそむけずに受け止めて、生きていかなければならない。

父親の自覚もなく、好き勝手やるような人間が自分達の父親であるということは、彼らにとっては、何があっても逃れることのない現実なのだ。


重い口を開いた。

「実は、ママはあなた達に話さなければいけないことがあるの。」

「え? 何々?」
無邪気に尋ねる子供達の様子に、これから伝える残酷な話を思うと、涙が頬を伝ってしまった。

「どうしたの? ママ?」

でも、いつかは、話さなければならない。

私は、勇気を振り絞った。

「あのね。パパとママはもう一緒には暮らせないの・・・」

「え? なんで?」


「それは・・・・」

「なんで? ママ、なんでなの?」

「パパには、ママよりも好きな人がいて、パパはこれからはその人と一緒に暮らすの。ずっと前からそうだったの。」

「え?ママ、どういうこと?」

子供達に、話してよい話だったのか・・・私は話しながらも悩んでいた。
でも、離婚までの過程で何故、離婚に至ったのか、また、パパと暮らせなくなることを納得してもらうためには、それしかないと私は考えた。今でも、それが正しかったのかは分からない。



No.45

「ママ、どういうことなの? その女と私が話す!!」

「それは、無理。大体、ママが話そうと思って電話しても、出ないもの。それに、あなたが話すのはダメ。」

「じゃあ、ママ、今、私たちの前で電話してよ。」

「でも、出ないんだってば!!」

「とにかく、電話して!! 出るまで、100回でも電話してよ!」

子供達の反応は、父親に裏切られた悲しみよりも、不倫女にパパを取られたという気持ちで、憎しみと怒りを不倫女に向けていた。

子供達の怒りはおさめることができなかった。

電話をして、電話に出なければ子供達もあきらめるはずだ。

そう考えた私は、電話をかけた。

No.46


案の定、留守番電話。

「ほら、出ないのよ。だから、ママも話せないのよ。」

「出るまでかければいいよ。」

もう一度かける。 

やはり、留守番電話。

「ママ、留守電に残そうよ。かけてくるかもしれないじゃん。」

「何言ってるの? 話したくないから、出ないんだよ。かけてくるような人間じゃないんだってば。」

「とにかく、残して!!」

もう一度かける。

留守番電話。

「桑原です。主人のことでお話したいと思って、お電話しました・・・」

後ろで、子供達が不倫女に怒りの言葉を怒鳴っている。

突然、「もしもし・・・」

高田里香が電話に出た。

初めて聞く高田里香の声は、私より若いはずなのに、年配の女性のように低い声だった。

No.47

今まで、散々電話してきても出なかったのに、何故このタイミングで、電話に出たのか…

私にとってはまさかのタイミングでしかなかった。

突然のことに、何から切り出していいのか。


私「今まで、電話していたのに、何故ずっと無視してきたんですか?」

高田「どうしようかと思っていて…。今日は、歯医者に行って今帰ってきたんです。」

私「どういうつもりなんですか?」

高田「ほんとに知らなかったんです、結婚してるって。ほんとなんです。」

私「年齢を考えたら、まず結婚してないかって思わない?」

高田「私は、指輪で判断するんです。してなかったから…。」

私「あれは、太り過ぎて入らなくなったからしてなかっただけです。結婚してるのか尋ねなかったわけ?」

高田「ききませんでした…」


母との約束の時間は過ぎていた。


私「あとで電話しますから、必ず出て下さいね。」


約束の時間は過ぎていたが、急ぎ母の所へ向かった。

No.48

母は、私達が来ないため、心配していた。

遅刻の理由を話せるはずもない。

とにかく、急いでお店に向かう。

有り難いことに、姉の家族はまだ到着していなかった。

娘は、高田里香と直接話したいと、母の目を盗んでは、私に訴え続けた。

諦めさせるために、電話したというのに。

姉の家族が到着するまでには、少し時間がある。

車に忘れ物を取りに行くと言って、娘と車に向かった。

No.49

車の中。

さっき、必ず電話に出てとは言ってから切ったけれど、本当に出るだろうか。

とりあえず、電話をした。


「もしもし。」


観念したのか、電話に出た。


私「桑原ですが。どういうことなのかお話頂きたいんですが。」

高田「ご主人とは仕事で知り合いました。でも、メールに書いたように、連絡先はもう削除しましたし。」

私「でも、あなたの家に行ったり、泊まったりしていたんですよね?」

高田「いいえ。家に来たことはありません。」

私「でも、メールには、カレーをおいしいって食べてくれて嬉しかったとか書いてますけど?」

高田「それは、共通の友人の家でのことです。」

私「共通の友人って誰ですか?」

高田「それは、迷惑がかかるといけないので、言えません。」


とっさに、私は、例のふしだらなピアニストのことを思い出した。共通の知り合いであったことには間違いない。

私「誰だかわかりましたよ。」

高田「誰ですか?」

私「私があなたに教える必要はないわよね?」


若干、高田が焦ったようだった。


私「結婚してたって知らなかったって言うけど、娘があなたから主人にかけた電話に出たことがあったはずだけど? それは、夏ごろで、半年くらい前になるわよね?」

高田「その時、初めて知りました。でも、それまでは本当に知らなかったんです。」

私「でも、それから後は知ってたわけじゃない?」

高田「そうですけど。」

私「あなただけの責任ではないけれど、娘はそのことで、主人に殴られてるわけ。娘はすごく怒っていて、直接、謝ってほしいって言ってるので、代わりますね。」


娘は、何を話すのかとても不安だった。
でも、私が話している間、ずっと早く代われと合図していた。
不安な中、電話を代わる。

No.50

娘は、物おじせず、興奮した様子で話していた。

どこで知り合ったんですか?

とか、

どういうつもりですか?

とか、

どうするつもりですか?

とか。


相手が何をしゃべっているのかわからないので、どうなっているのかさっぱりわからない。


だが、最後に

「赤ちゃんじゃないんだから、自分の頭で考えたらどうですか!!!」

と怒鳴っていた。


何がそんなに娘を怒らせたんだろう。

想像もできなかった。

No.51

娘から携帯を受け取る。


私「ちゃんと謝っていただけたんですか?」


高田「子供を出すのはどうかと思いますけど。」


たぶん、娘に「赤ちゃんじゃないんだから、自分の頭で考えたらどうですか?」と言われたのが相当堪えたんだろう。
そして、この娘の言葉が、後々私を助けることになる。


私「子供は一番の被害者じゃないでしょうか? 主人も悪いけれど、娘はあなたのせいで、殴られたって思ってるわけですから。」


お店に残っている母から、何度も電話が入っていた。
まだまだ話したりないが、待たせるわけにもいかない。

私「ちょっと行かなければならないので、とりあえず電話を切ります。」


すっきりしないまま、電話を切り、お店の中に戻った。

No.52

お店に戻ると、姉家族も到着していた。

母が「なかなか来ないから心配したわよ!」と言った。


お食事は美味しかった。

食欲のない私でも、美味しいと感じた。

久しぶりのまともな食事。


しかし、胃が小さくなっていたのだろう。子供達よりも食べることができなかった。


夫も来るはずだった。

食べるのが大好きな夫は、きっと喜んだだろう。

皆で楽しく過ごすはずだった夜。

一瞬にして、一変してしまった。


馬鹿な夫。

そして、騙され続けていた馬鹿な私。

可哀相な子供達。

No.53

食事が終わり、姉家族と別れ、母と子供達と共に実家に帰った。

翌日は祝日で子供達は休み。

しかし、私は仕事だったため、子供達を実家に預け、私一人が自宅に戻った。



高田里香にはまだまだ話したいことがたくさんあった。

聞きたいこともたくさんあった。


幸い、子供達もいないので、電話もできる。

ただ、出るだろうか。。。。

自宅の固定電話だから、出かけていたら出られないし。



初めて、高田里香と電話に出た時、私は現実でない気がした。

この女が夫と。

その女と私が会話をしている。

本当に、この女は夫と不倫していたのだろうか。

うまく表現できないが、現実じゃない、冗談なんじゃないかという思いがあった。


きっとまた話したら、私の知らない真実が出てくるだろう。

私はまた衝撃を受けるのだろう。

でも、これは起きてしまったこと。

過去は変えられない。

受け止めるしかない。

受け止めるのには、辛い現実だが。

受け止めるしかない。

前に進むしかない。

No.54

高田里香に電話をする。


「もしもし。。。」


電話に出た。今のところ、逃げるつもりはないらしい。


私「まだお尋ねしたいことがあってお電話しました。私は、今回のことで眠れないし、食べれないので、すっかり痩せてしまって。私は子供達のこともあるし、仕事もあるんですよ。ちゃんと本当のこと話してください。主人はあなたの家に行ってましたよね?」

高田「いいえ。来たことはありません。」

私「でも、ごはんのタイマーかけてきたからねってメールしてましたよね?お友達の家で、ご飯のタイマーかけますか?」

高田「・・・メール、全部読んだんですか?」

私「ええ、読みましたよ。」

高田「じゃあ・・・そうです。」

私「何故、嘘をつくんですか? 主人にそう言うように言われたんですか? それとも、私が家に踏み込むのを避けるためですか?」

高田「・・・後者のほうです。」


不倫できる女だけあって、保身のためには平気で嘘をつける女らしい。しかも、私を「あなた」と呼んだ。私は「奥さん」なんだけど。


私「夫は、職場も首になって夜のバイトをしているんですよ。飲食に浪費して、どこにもこれ以上借金できないほど借金をかかえていて。」

高田「とても、そんなふうには見えませんでした。派手に飲食する仲間がいて・・・私はお金がないから、その仲間ではなかったけれど。夜の仕事がとは話していたけれど、そんな仕事だったのは知りませんでした。」

私「私は正直、もう主人には未練がないの。借金がすごいから、たぶん月に100万くらいかかるし、主人は夜のバイト以外は無職だから、収入はないけれど。借金や荷物と一緒に引き取ってもらえたら、それでもういいんだけれど。」

高田「そのくらいの金額なら、頑張ればなんとかなるかも・・・」

私「じゃあ、荷物も送りますから。考えておいてください。」


ガタン


物音が電話口から聞こえた。

私「え?」

高田「こんなこと言える立場じゃないですけど、先月から私も痩せてしまって。
ちょっと椅子から落ちました。」


なんで、高田が痩せなきゃならない? 高田は痩せた理由については話さなかったし、私も尋ねなかった。


この本題と全く関係ないようなやり取りが、いずれ私を救ってくれることになるとは、この時は私も気が付いていなかった。

No.55

さて、、、どうしよう。

夫は自分のやりたいことは、意地でもやり通す人だ。
周りの人に迷惑かけることなんか全く気にしない。
夫の荷物がある限り、それを口実に家に扉を壊してでも入ってくる、必ず。

まずは、荷物をなんとかしなきゃ。

高田が夫の引き取りを拒否したら?

本来なら実家だ。
でも、あの気性の激しい姑のことだし、元々自分の息子なのに、私の実家に面倒は押し付けて、知らん顔だった。

今回も、いくら事情を話しても、荷物も引き取らないだろう。

母も無理矢理にでも押しはいってくるだろうし、その結果、暴力をふるってくることを懸念していた。

母は元々、夫の尻拭いを押し付けておきながら、知らぬ存ぜぬの姑と関わるのを嫌がっていたが、私や孫たちに危害が及ばぬようにと電話をして頼むと言ってくれた。

母が頼む話ではないのだが。

No.56

仕事を終え、実家に子供達を迎えに行った。

到着すると、出迎えたのは、母でなく、娘だった。

「おばあちゃま、今ばばと電話してるの。」

家に入ると、母が丁寧に話していた。

憎き婿の母。しかも、面倒は押し付けて知らん顔。

なのに、母は責める言葉一つ言ってない。

母はすごい。

母「里香子が帰ってきたので、代わります。」


えー私、話したくないんだけど。

困った。

また、きっと桑原が不倫したのもあんたのせいだくらいのこと言われる。

嫌だな。。。

恐る恐る電話に出た。

No.57

私「もしもし・・・」

姑は、私にしゃべらせまいとするかのように、いきなりまくし立てた。

姑「もう、里香子さん達だけ幸せになってくれていいから。三人だけ幸せになって!あいつは、野垂れ死ねばいいから!この恩知らずが!!」


私は圧倒されて、言葉が出なかった。

姑の言葉をどう受け取っていいのか。

別れていいと言っているのか。

自分の息子の不始末で、大変になっているのだがー。

姑という立場の人としては当然の発言なのかもしれないが、息子の不始末を詫びるような感じは全くなかった。

もともと恐ろしいほど勝ち気な人なので、責めるような言葉を言わなかっただけ、まだ良かったかもしれない。

だが、その語調は、私を責めているようなものだった。

私「でも、そちらが受け入れて下さらない限り、どんな手を使ってでも、家に来ますから。」

姑「とにかく、一度ゆっくり話しますから。」

No.58

姑は、激情型で自分中心を絵に描いたような人。

おまけに、勝ち気なので、何が何でも頭を下げるようなことは死んでもしない。

母が呆れて言った。

「息子が嫁さんから連絡あったら実家に泊まったことにしてくれと言われたりしたけれど、ただの一度も泊まりにきたことはありません!」と姑が言っていたと。


夫のアリバイ工作だったのだろうが、それをここで暴露するのは、何のため?

自分が息子の不倫を援助していた、いわば公認だったと言いたかったのか?

息子のきたないやり方をともに罵ったことにして、自分が私達の仲間だとアピールしたかったのか。。。

単に興奮して、やたらとしゃべりたかったただけなのか。

姑の意図は全く分からなかった。

とにかく、自分が非難される側にたたされたことが負けず嫌いの姑は、許せなかったんだとは思う。

No.59

母は続けた。

「荷物のことを話したら、そんなもの捨てちゃって下さい!と怒鳴られて、そんなことしたら、逆上して何されるか分かりませんからといったら、やっと冷静にこっちの話を聞き始めた感じでね。」

母はとても理性的で、穏やかな人だからか、激情型の姑と話して疲れた様子だった。

私は母に本当に心配をかけ、苦労をさせて、最低な娘だ。

でも、母だからまだ話を聞いたのだろうけれど、嫁の立場の私から、息子の不始末を聞かされたら、逆上して会話にさえならなかっただろう。

母には本当に申し訳なかったけれど、本当にありがたく思った。

No.60

子ども達は、居間で大人しくDVDを見ていた。

息子が首に湿布を貼っていた。

私「どうしたの?」

息子「首が痛くて、おばあちゃまが貼っておきなさいって。」

私「ふーん。変な格好して、ずっとテレビ見てたんでしょう?」

息子「そうかなー」

私「とにかく、早く寝なさい!」


この時は、まさか後にあんなことになるとは思ってもいなかった。

No.61

子供達と自宅に戻る。

想像すらしなかったとんでもない冬休みが終わる。

子供達は学校へ。

今まで、私は駅まで子供達を送っていたが、これを機に自分達で行ってもらうことにした。

娘は意識不明の怪我から痙攣発作を起こす可能性があるので、人のたくさんいる駅まではと思っていた。

冬の早朝はまだ薄暗い。息子はまだ一年生。手放すには少し不安もあったが、これからの三人だけの生活を考えたら、息子に
も頑張ってもらわなければと思った。

私も仕事もあるが、今後のことを考えなければ。

子供達と私の新しい生活が始まった。

No.62


明日は金曜日。
あと1日頑張れば、休みだ!

息子「ママー。やっぱり首が痛い!湿布貼りたい!」

寝る準備を終えた息子が泣きべそをかきながら訴えた。

私「うーん。でも、寝る時貼ると冷えて風邪ひきそうじゃない?」

息子「でも、すごく痛い。」

私「明日の朝、貼ろうね。」

息子は納得して、寝に行った。

No.63

翌朝。

その冬は、新型インフルエンザが流行り、検温して、記録して登校するきまりになっていた。

朝は低体温の息子は36℃ないのが日常。

ところが、37℃だった。

微妙な発熱。

ふと見ると、左右の差がはっきり分かるほど、片側の首が腫れていた。

私「あーこれ、おたふくかもね。予防接種したのにね。今日は休まなきゃダメだ。」

幸い、仕事は休み。

すぐ近くの掛かり付けの病院へ行った。

私「おたふくじゃないかと思うんですが。」

先生は何故か非常に冷静にゆっくり話した。

「お母さん、これね、おたふくと全然場所が違うのよ。」

私はおたふくにかかったことがない。

私「えっ???」

先生「紹介状書くから、すぐに大学病院行って。悪性リンパ腫の可能性もあるから。」

・・・?

悪性リンパ腫?


頭がまっ白になった。

息子「ママー。僕、立てない・・・」

私「え?」

一年生と言っても、息子は身体が大きい。

おぶってはいけない。

私「ママ、急いで車取ってくるから。」

先生「僕の駐車場があるから、そこにとめなさい。それまで、ここで息子さん預かっておくから。早く行って!」

息子が心配なのと、気が動転しているのでまごつく私を先生は急ぐように促した。

No.64

どうしよう。。。。

息子は、ガン?


家までの坂を駆け上りながら、頭はフル回転していた。



息子はパパっ子だった。

パパに裏切られた上、病気の自分を心配してさえくれないと思ったら、病気と闘う意欲を失うかもしれない。


夫になんて連絡したくない。

でも、息子は・・・

私は迷った。


今は息子が最優先だ。

私の気持ちを封印した。


夫に電話をかけた。

No.65

電話をかける。

「留守番電話に接続します。」

再度、電話。

「留守番電話に接続します。」


やはり、女のところなのか。


嫌だけど、夫に連絡つけるためには高田里香に電話するしかないのかも。


この世で一番話したくない人間。

でも・・・

高田里香に電話をする。

やはり、出なかった。
故意に出ないのかもしれない。

仕方なく、留守番電話にメッセージを残す。

「息子が大病を疑われ、今から大学病院に行きます。夫を出してもらえませんか?」



ほどなく、夫から電話がかかってきた。

「悪性リンパ腫かもしれないから、急いで大学病院に行けって。もう、歩けないって。もう・・・ダメなのかも・・・」


「病院に行くから。何科なんだ?」


「行ってみないと分からない。」

No.66


車をとり、病院に着く。

息子は待合い室の椅子で、看護婦さんに付き添われて、ぐったりして座っていた。

先生が診察室から現れた。


「病院終わったら、電話してね。」

「分かりました。お世話になりました。」


看護婦さんが、心配そうに見送って下さった。


あまりに急な出来事に、現実でないような気がして、不思議な感じだった。

しかし、その表情に、やはりただ事ならない事態なのだと再確認する。

なんで、こんなことに?

いや、そんなこと言っても仕方ない。

私がしっかりしなければ。

No.67

待合いで、息子は一人で座っていられない状況なので、私の膝に座らせた。普段は
おしゃべりの止まらない息子が無言だった。
息子はどうなってしまうのだろうか。


夫が現れた。

息子は朦朧としながら「パパ・・・」とだけ言った。

様々な検査が行われた。

用紙に押された至急の赤いはんこが、私の不安を煽る。

「桑原さん、医師からお話がありますから、小児科のほうに来て下さい。」


小児科に行くと、すぐに診察室に通された。

入ると、医師は一人でなく、その様子がさらに不安を煽る。

医師達は私には分からないことを話し合っていた。

息子はやはり・・・?

No.68

「まず、リンパ腫ではないと思います。エコーでも、これだけボコボコありますからねー。入院と思ったんですが病室の空きがないんですよ。ご自宅も近いですから、何かあったら救急で来て下さい下さい。
ただ・・・血液検査の値が悪いんですよね。これは、ほっとけない。」

「そうですか・・・」

ホッとしたような、でも、やはり悪いことには変わりなく、なんとも言えない気持ちだった。

でも、息子は死なない、たぶん。

それが何よりありがたかった。

何故、子供達ばかり辛い目にあうのだろうか。

漠然と、何の根拠もないのだが、高田里香の怨みの気がした。

高田里香にとって、子供達は何より邪魔な存在。

例え、私と離婚しても、夫とは一生親子であり、高田里香はそこには一切立ち入れないのだから。

夫とは病院で別れた。

No.69

自宅に戻り、息子の熱を計ると39度を越えていた。

様子が分からないのは心配なので、居間に寝かせた。

熱が高いのは脱水症状?

水分を取らせようとするが、一切受け付けない。
もちろん、食べ物は全く受け付けない。
食べるのが大好きなのに。

本当に入院しなくて大丈夫だったんだろうか。

とにかく、しばらく学校も、私も仕事は無理だ。

学校の担任の先生から電話があった。

「桑原くん、皆勤だったから、どうしたのかと思って。」

「私もおたふく風邪だと思ってたんですが。一応、悪性ではないようなので。でも、当分、学校には行かれないと思います。」

そう話しながらも、学校に行ける日が来るのか不安で仕方なかった。

No.70

息子の熱は翌日も高いまま。

そして、薬以外は何も受け付けない。

夫から電話があった。

「子供達に携帯を買おうと思って。何色がいいかな?」

どんなに子供達がせがんでも、「だめ!」と言い続けてきたというのに。

子供達の点数稼ぎか、私に阻止されずに、自由に子供達と連絡とるためか。

どちらにしても、本当に自分勝手な男だ。

No.71

携帯電話を渡したいと現れた夫。

既に、電話帳には夫の携帯の番号やアドレスが登録されていた。

やっぱり・・・

自分が自由に子供達と連絡取れるようにするためだった。

どこまでも自分中心な男でしかなかった。

子供達は念願の携帯に大喜び。

早速、写真を撮ったりと、すぐに使い方を覚えた。

息病気の息子には、いい退屈しのぎにはなった。

子供は機械ものは大人より早く覚えてしまう。

私達の携帯をいじっていたのもあるかもしれないが。

だがしかし、この携帯がいずれ、高田里香が子供達を攻撃する材料に利用されることになるのだ。

No.72

夫は、もう終わったから、二度と高田里香には関わらないと言った。

ちゃんとやるから、見ていてほしいと言った。

だけど、散々騙された私は、また騙されて傷付くのが恐怖で、ただ怖くて仕方なかった。

インターネットで、不倫に関するサイトを見た。

何故、不倫をするのか、等々不倫に関することを知りたかったからだ。

自分の不倫を赤裸々に当たり前のように書いているブロガーに、疑問を批判でなく冷静に尋ねたこともある。

不倫で検索し、よく行き当たるのは探偵だった。

だが、探偵を雇うようなお金がないとあきらめていた。

だが、ある日「相談無料」の文字に動かされ、フリーダイアルに電話をした。

感じのいい女性が応対してくれた。

「一度、相談員と直接会ってお話してみて下さい、契約しなくても構いません」と言われ、私の連絡先を伝えた。

No.73

息子は、死んでしまうのではないかと思うくらい何も受け付けず、黙ったままだった。

数ヶ月前、娘が怪我をさせられ意識不明だった時のことが思い出されてしまう。

このまま、二度と目を覚ましてくれないんじゃないかとたまらない恐怖に襲われたこと。

息子は元気になるんだろうか。。。たまらない恐怖に襲われた。


しかし、今回も神様が救って下さった。

少しずつ、言葉を発し、飲み物を勧めると飲むようになった。

あの時の安堵感は今でも忘れられない。

No.74


息子は、少しずつ元気になり、会話をするようになった。

やっと、医師から登校の許可が出た。
但し、薬を引き続き飲み続けることと、週に一度の検査を受けることになった。
血液検査の結果は、変わらず悪かったのだ。

すっかり痩せてしまった息子。
しかし、頸はまだ腫れていて、制服のYシャツの第一ボタンをしめることができないほどだった。
 
元気になってくると携帯でパパに電話もするようになっていた。

No.75

そうこうするうちに、調査会社から連絡が入り、日程が調整され相談員に会うことに
なる。

相談員から連絡があり、最寄り駅まで来てくれることになった。

お互いに自らの持ち物や服装等を伝え合い、待ち合わせをした。


調査会社の人って、どんな感じなんだろう・・初めてのことに不安が過ぎる。

お金もないのに、何故面談することにしたのか。

今思えば、誰かに全てを聞いてもらいたかったからだったのかもしれない。。。

約束の時間、ほぼぴったりに待ち合わせの駅に行くと、黒いロングコートを着た女性に「桑原さんですか?」と声をかけられた。

No.76

「この度は、無理申しまして申し訳ありません。」


子供達のことを考え、自宅近くまで行くと言ってくれたからだ。


近くのコーヒーショップに連れ立って向かう。

相談員の方は小田さんという名前だった。


どう切り出したか覚えてないが、ろくに働きもせず、私や私の実家のお金で豪遊し、挙げ句の果てに不倫となったこと、子供達の怪我や病気のこと全て話した。



今思うと私は本当に無知だった。

合法的に「慰謝料が請求できる」ということを彼女に会うことで初めて知ったのだ。

No.77

相談員である小田さんは、気さくで話しやすい方だった。

姉御肌的な方で、躊躇なく洗いざらい話せてしまった。

「ご主人、酷すぎるね。許せない。」


自信を失い、進む道すら分からなくなっている私は、何が正しく何が間違っているかの判断にも自信がなかった。既にこの時病んでいたんだと思う。

小田さんは、営業トークの一部として発した言葉だったかもしれない。

だが、当時の私は「私、おかしなこと言ってないんだ。」と励まされたような感じがした。

「主人は、もう終わったから二度と会わないとは言ってますが、信じることができないんです。」

「そりゃそうよね。でも、必ずしも、調査するっていうのは、離婚が前提ではないの。修復するにしても、離婚するにしても、現実を確認したいよね。それから、ゆっくり考えて決めればいいのよ。」

確かにそうだ。

どうするにしても、やってみる価値はあるのかも。

営業トークにのせられたのかもしれないが。

私の気持ちは動いていた。

ただ、金銭的なことが、問題だった。

No.78

「お願いしたい気持ちは山々です。でも、そんなんで生活費ももらえないですから、お金がないんです。」


「働いているんだったら、ローンも組めるわよ。」


「働いてますが、パートですし、主人の借金ですが、もう借金はたくさんなんです。」


「そうよね。借金は嫌よね。どのくらいなら、用意できそう?」


「○○万円くらいです。。。」


「実はね。」
と言いながら、黒いファイルを取り出して開いた。


「本当は最低がこの金額なの。」


その金額は、私が提示した額の1.5倍だった。


とても、無理だ・・・


「でも、大変なのよく分かるし、それでやってみましょうよ。その金額で受けますから。
何も出ないなら、それはそれでいいわけだし。」


大変な思いで働いて貯めたお金をこんなことに使うのは、どうなんだろうと躊躇われた。

でも、今のどこにも進めない状況は何かしら動くかもしれない。

「分かりました。お願いします。」

私は調査を依頼した。

No.79


小田さんは、色々教えてくれた。

離婚する、しないに関わらず、慰謝料が請求できること。

金額の相場や、時効、証拠は既に色々あったが、証拠が必要なことなど。


とにかく、私は本当に無知だった。

「これは、私のアドレスですから。」

小田さんは小さな紙を私に差し出した。

「ありがとうございます。」

コーヒーショップで別れ、私は自宅に帰った。

No.80


家に帰ってから、今日の小田さんとの話を思い返した。


まず、夫の写真がほしいと言われたのだが、一人で写っているものがないし、子供たちの写真は出したくなかった。

あるのは、夫の携帯に消し忘れられていたクリスマスイルミネーションの前で撮った高田里香との写真だった。


調査の日程について。

お金のない私は、一日しか調査を依頼できない。だから、調査の日程を決めるのは慎重にしなければならなかった。
最も動きそうな日・・・週末とは思うが、どうだろうか。


そして、慰謝料について。

弁護士を雇えば、もちろんお金がかかる。でも、自分で請求できるとも言っていた。
慰謝料をもらえば、嫌な思いをさせた子供達にもおいしいものを食べさせたり、ディズニーランドくらい連れて行ってやれるかもしれない。
でも、証拠は、二人の自白とメールのやりとり、それに写真くらいだ。
携帯の通話記録もまだ来ない。
なんとかもっと証拠を見つけて、慰謝料くらいはなんとかできないものだろうか。

No.81

翌日。

調査会社に振り込んだ。

口座の残高は、ほぼなくなった。

私は何故、こんなことしているんだろうか?


小田さんに、振込終了のメールをした。

早速、調査の日程やらの調整が始まった。


と同時に、どうしても慰謝料の支払いをしてもらいたいという気持ちが強くなった。


今思えば、調査会社に調査を依頼したのは慰謝料を請求するための証拠集めのためというよりは、夫を信用していいのかどうかを知りたかったためだと思う。


私は、高田里香に慰謝料の支払いを求める内容をファックスで送った。

無理な金額は請求しなかった。

とにかく、我が家として高田里香に費やしたと思われる金額を提示した。

No.82

慰謝料100万。。。

その金額にしたのには、わけがあった。

以前、夫は無職で借金だらけで一月そのくらいかかると言った時、高田里香は「頑張ればなんとかなるかも。」と言ったからだ。

それも一度に払えとは要求せず、分割でよいと伝えた。

返事を聞くため電話をすると、態度は一変して、お金がないので払えないと言い出した。

私は「我が家が毎日、大変な思いをして生活し、私も必死に働いて稼いだお金は全てあなたが使っていたんです。今も食べるものにも困ってます。」と言うと、

高田里香は「私だって今日は家にあるもので食べなきゃって思っていたし。」と言った。

私は「私は自分は食べなくても子供達は食べさせなければなりません。」と言った。


私は呆れた。

あまりにも幼稚な反応だったからだ。

夫にとっては、この幼稚さが都合が良かったのだろう。

そして、小学生の娘も呆れた理由だったのだろうと理解できた。

No.83

小田さんと調査に関して、打ち合わせをし、日程も決まった。

ドキドキしながらも、その日が待ち遠しかった。

調査の結果が全てではない。

だが、客観的な結果がほしかった。


とうとう、その日がやってきた。

深夜の仕事を終えた夫が電話をしてきた。

「電池ないから、電源切るから。今からじじいの見舞いに病院に行くから。」と夫は言って電話をきった。


調査開始。

No.84

その日は、冬晴れのいいお天気。

子供達と家で過ごす予定になっていた。

不眠で体調の悪い私は、食事を作る以外は横になっていた。

高田里香の家に行けば、証拠となり、今後のことについては、私にとって有利になる。

だが、私は何故だか行かないでくれ、逃げてくれと願っていた。

女とは一切関わらないと約束したことを守ってくれると信じたかった。

夫が私を裏切らないと思いたかった。

No.85

…♪♪♪♪

携帯が鳴った。

小田さんからだ。

胸騒ぎがする。

「ご主人ね、やっぱり相手の所に向かっていて。ただ、電動自転車はやっぱり厳しくて、見失ったみたいなの。住所分からないのよね?」


「…分かりません…」


「せめて、町名だけでもわからない?」


「すみません。分かりません。前にお伝えしたように、最寄り駅しか。」


にわかには、信じられない事実だった。

いや、信じたくなかった。


私は、あんなに騙され利用されてきたのに、夫を信じようとしていたのだ。


私は打ちのめされた。

私は本当にお人好しの馬鹿だった。

No.86

小田さんに尋ねた。

「どの辺りまで追跡できていたのか分かりますか?」

「聞いてないけど、調査員に尋ねてみようか?」

「お願いできますか?」

「折り返し電話しますから、ちょっと待っててね。」

小田さんは、それを知ってどうするんだ? という雰囲気だったが、承諾してくれた。

確かに、それを聞いても役には立たない。だが、私はこの期に及んでも、夫が自分の言葉を守らずに高田里香の家に行ったとは信じたくなかった。

高田里香の自宅から離れた場所で夫の姿を見失ったのなら、他の所に向かう途中だったとも考えられる。

私は僅かな可能性も捨てたくはなかった。

私はどこまでも、どこまでも馬鹿な女だった。

No.87

夫に電話をしてみたが、やはり電源を切っている。

高田里香にも電話をするが、もちろん出ない。

しばらくすると、小田さんから電話があった。

「○○○駅前まで行ったところまでは確認してるのよ。」


「そうですか。。。」


駅は、高田里香の自宅の最寄り駅だった。


私は行ったこともない土地だし、夫にも何のゆかりもない土地だ。

可能性は無惨にもあっさり消された。

夫は二度と関わらないとの自らの言葉を自ら違えて、高田里香に会いに行っていた。

私はどこまでも馬鹿にされた女だった。

No.88

夫に電話がつながったのは、それから一時間くらい後だろうか。

その時は、夫の父の病院にいた。

「どこにいたの?」と尋ねると、

「だから、病院にいたって言ってるだろ?しつけーな!」と繰り返した。


根負けして「違うよね? 中○○駅に行ったよね?」と言うと。

「金がないから血を売りに行ったんだよ!」と言った。

確かに中○○駅の近くに、大学病院はあるが。

夫のはなしでは、病院の周りにそういうブローカーがウロウロしているという。

どこまで、ファンタジーの世界に生きているのやら。

そこを追及しても仕方ないので、そのファンタジーは取り沙汰せずに

「血を売りに行ったかもしれないけど、高田里香に会いに行ったよね?」と尋ねた。

夫は何度でも根気よく否定した。

私も諦めなかった。

しかし、とうとう夫は「でも、いなかったから帰ってきた。」と白状した。

実は会ったのかもしれない。

でも、そんなことはどうでも良かった。

夫は高田里香に会うために向かった。

その事実だけで充分だった。

No.89

小田さんから再度連絡があった。

「この前は最後まで追跡できなかたので、料金は頂かないで、調査をさせて頂きます。日程を決めてお知らせ下さいね。」

私は正直、もう結果に満足していた。


自分で決めたことを守ろうともしない。

高田里香がそんなに必要なら、そっちに行けばいい。


むしろ、行ってほしい。

払うあてのない借金ごと。


払うあてのない借金の支払いのために、父の形見の金貨を全て勝手に持ち出して売却してしまっていた。

初めはなくなったことに気付いた時、子供達がおもちゃにして、おもちゃ箱に持って行ったと思って、子供達を疑った。
その様子を見ていた夫は黙っていた。

私は盗人と一緒に住んでいたのだ。


子供達のためにも、自分のためにも、こんな人いらない。

No.90


私の気持ちは、離婚へと一歩一歩進んでいた。

家も半分は私の持ち物だが、自分が住んでいない家のローンを自分中心な夫が払い続けるかどうかは、かなり怪しい。

私は家を空けることを考え始めた。

最初に思いついたのは、数年前死んだ飼い犬の遺骨を埋葬することだった。

まず彼をしかるべき所に収めよう。

火葬した所に共同墓地があることが分かり、埋葬することになった。

子供達は拒否したが、まずは彼だけでも落ち着いた場所で安らかに眠ってもらいたかったので、説得した。

子供達は、どうしてもパパと一緒に埋葬に行くと言って、譲らない。

私は夫の顔は見たくなかったが、そこは私が譲歩することにした。

No.91

約束の日

出発の時間がきても、夫は現れない。

携帯に電話するが、出ない。

埋葬の時間も予約が必要で、遅れるわけにはいかなかった。

子供達は必死にパパに電話したが、出ない。

「パパと一緒に皆で見送るんだ!」

子供達はパパを待たずに出発することを頑なに拒絶。

とにかく出発しようと説得し、犬の遺骨と家を出た。

車に乗ってからも、子供達はパパに電話をし続けた。

「どこにいるんだろう。。。」

子供達は必死だった。

「電話に出られないのかもしれないし。」と私が言うと、

「まさか。でも、もしかしたら」と子供達はどこかに電話をかけた。

「出ないよ!」

「留守電に残そう。」

まさかと思った私は「一体、どこにかけてるの?変な所に電話しちゃだめよ!」


「ママは黙ってて。」


「あのー桑原ですが、お父さん出してもらえますか?いい加減にしてもらえませんかね。」

子供達は高田里香に電話していたのだ。

「やめなさい!」

後部座席で電話する子供達を運転する私が制止することは難しい。

「やめなさい!」

繰り返し叫ぶしかなかった。

No.92


子供達は、私が叫ぶのも無視し、繰り返しダイアルしていたようだった。

あの時、電話をひったくり取り上げていたらと後々後悔した。

だが、埋葬の予約時間にただでも遅刻気味だったことで、わざわざ遠くまで行くのに、門前払いされたら困るという気持ちで車をとばしていたため、あまり運転の得意でない私には、運転に集中し制止しきれなかったのだ。


無事に到着。

焦っているのに、娘は遺骨を抱きかかえて、車から降りてこない。

娘は遺骨を抱きしめて涙を流していた。

娘は諦めることなくパパに電話をしていた。

受付の人に到着を知らせ、娘が遺骨を離さないことを伝えた。

受付の人は一緒に車まで来てくれ、娘の様子を見て涙ぐんだ。

娘が愛犬との別れが辛くて拒否していると思ったからだろう。

実際は、愛犬との別れが辛いだけでなく、パパが約束を守らなかったことがつらかったのだ。

娘は長い説得ののち、車から出てきた。

親子三人で、それぞれ色んな思いの涙を流して、愛犬を埋葬した。

No.93


納骨し、家に帰る途中、夫から電話が入る。

夫の父が入院する病院で寝入ってしまったと言い訳した。

そんな話があるわけがない。

夫は何の罪悪感も躊躇もなく嘘をつくが、とにかく嘘は下手だった。


めったに会えなくなった子供達との約束も守らず、子供達は、パパを少しずつ諦めていった。

No.94

それから、ふと気付くと、子供達は度々高田里香に電話をしていた。

わざとなのか、たまたまなのか高田里香は電話には出なかったようだった。

子供達は留守電に長々と文句を言っていたようだった。

仕事で留守番が増えたことで、彼らの行動を監視、抑制しきれていなかった。

そこまで、子供達が高田里香を恨んでいたということなのだが、卑劣な女は子供達をも平気で攻撃してくるような人間だった。

No.95

娘が代休の日。娘は大学病院で検査だった。

私は仕事が休めず、気になりながらも病院に送り仕事に行った。

職場にいると娘から着信。

何かあったのかと焦って電話すると、「ママ、電源切ってたんだけどね。中国人から電話があったみたいで。」

夫が最初、高田里香のことを中国人だと言ったことで、子供達は中国人と呼んでいた。

「え?なんで?」

「分からないけど。」

娘は不安げだった。

No.96


急いで、高田里香に電話をした。

珍しくすぐにでた。

「娘に電話したそうですけど、何か?」

「えー。共通の携帯かと思って。」

「娘は病院にいて、一人で検査を受けていて。やめてもらえますか?あれは、子供達の携帯ですから。」

「ごめんなさ~い。分かりました。」

「私、仕事中なので、失礼します。」


どう考えたら、共通の携帯っていう考えが浮かび、確信までしてしまうのか。

それまでも度々感じてきたが、高田里香は頭のきれるタイプではなかったようだ。

No.97


その頃、私は夫とのことをどうするつもりだったのか。

夫はとにかく離婚を拒否した。

見栄張りな夫だから、バツイチにはなりたくなかったんだろうし、物欲の塊だから、家も半分私が持っていたので、そういう物質的なことが理由だったのだろう。

私は…どうすべきか迷っていた。

ただ、二度と騙されたくなかった。


息子にGPSのついた機械?を安全のために持たせていた。

それを夫に持たせたら?

でも、気付かれないようにしなければ。

初めは、電動自転車につけようとしたが、見つかる可能性もあるし、落ちてしまうかもしれないので諦めた。

幸い(?)夫はだらさしなく、カバンの中を整理したりはしない。

夫を昼間、家に呼んだ。

夫は喜んで現れ、深夜の仕事に備えてすぐに寝入った。

夫の靴下に機器をいれ、かばんのポケットに入れた。

充電が切れるまでは、位置確認できる。

夫は何も気付かないまま、そのカバンを持って出て行った。

No.98

位置確認の機器は順調だった。

だが、時々、充電しなければならなかった。

仕方なく、時々、夫を家に入れた。

寝入っている間に充電。 

また、カバンに戻した。

夫は全く気付いていなかった。


高田里香とのことはそのままになっていた。。

謝罪も慰謝料の支払いも拒否。

探偵に使ってしまったので、弁護士さんを雇うお金などない。

インターネットを見ると、行政書士が内容証明を作成し、送付してくれるらしい。

費用も払えない額ではなかった。

不安もあったが、連絡をとってみることにした。

No.99

行政書士に連絡をしてみると、すぐに返事をくれた。

資料もすぐに届いた。

費用もさほどではない。

とにかく頼んでみよう。

しかし、一つ大きな問題があった。

住所が分からなければ、内容証明を送ることはできない。

調査会社に頼むのは、もう金銭的に厳しい。

直接聞くしかない。

No.100

もう、高田里香とは話したくなかった。

でも、仕方ない。

私は電話をした。


「書類をおくりたいので住所を教えて下さい。」


「住所は教えられません。」


「別に家に行くつもりはありません。だいたい、引っ越すって言っておきながら、まだ田舎に帰ってないんですね。夫は家に来たことがないとか、本当に嘘が多いですね。」

嘘つきという言葉が高田里香のスイッチを入れたのかもしれない。突然、逆切れし始めた。

「あんたこそ、嘘つきじゃないよ!子供が死にそうとか言いながら、私に電話してきて、なぁんだ、生きてるんだって。」

「息子が難治の病気の可能性があると言われたのは本当のことですよ。病院で聞いてもらっていいですけど?」

高田里香は、自分が分が悪いと思ったのか、「もう、いいです!」とまたもや逆切れだった。

「あなたは、不法行為をしたんですよ。自分の立場を考えたら、どうです?」


「じゃ、教えますけど、変なことしないでよね!」


「私にはあなたみたいに自分のことだけを考えていたらいいわけじゃなくて、守らなきゃならないものがありますから。」


高田里香は逆切れしたまま、怒鳴るように住所を言った。

これが高田里香との最後の会話となった。

No.101


早速、行政書士に住所を連絡すると、すぐに高田里香に送付する内容証明の原稿を作成して送ってくれた。

一方、夫はGPSが正確ならば、特に怪しい動きはなかった。

夫は、基本、夜は10時から朝まで、牛丼屋で働いていた。

週に一回だけ深夜12時からの時がある。

夜10時前。夫に確認しなければならないことがあり、連絡した。

何気なく尋ねた。本当に何気なく…

「今からどうするの?」

「いつもどおり仕事だよ!じゃあな!」

元々短気だが、怒鳴って電話を切った。

GPSで検索すると、職場から少し距離がある場所にいるらしい。

仕事に遅刻しそうで、焦って苛々していたのか?

夜12時。再びGPSで検索すると、さっき検索した時と同じ場所にいる。

仕事には行ってない!


この場所…

あのバツ2ピアニストの店だ。


身体中の血が頭にのぼり、手が震え、動悸がする。

鼓動とともに口から心臓が飛び出そうなほど。

インターネットでレストランの住所を調べた。

スッピンのまま車に乗り込む。

No.102

レストランには、初めて行った。

飲酒運転を奨励するかのように、隣りに大きな駐車場があった。


寂しい場所だった。

駐車場に車を停めた。

レストランに乗り込むのは、ちょっと躊躇した。

でも…

勇気を振り絞った。

フロントの男。
いかにも軽そうだ。

「桑原呼んで下さい。」

男は平常を装っていたが、明らかに動揺していた。

男は高田里香と共にここで働き、ある意味、同僚であり、夫の愛人であることを知っていた。

男は階下に降りて行った。

No.103

読者の皆様へ

長らくお休みし、申し訳ありませんでした。
後々出てくることですが、当然のことのように私は病になり、更に他の病が発覚し、しばらくお休みさせていただいてました。
お休み中も立ち寄ってくださった方がいらしたこと嬉しく思い、また少しずつですが、続きを書きますのでよろしくお願いいたします。
りか

No.104

夫が現れた。隣の駐車場に移動する。
「なんで、ここにいるわけ?仕事なんじゃなかったの?」
「なんで、こんな不倫しかしないバカな男のレストランに出入りしてるわけ?やめてって言ったよね?」

背の高い夫の顔を背伸びして、ひっぱたいた。
夫はやり返さなかった。
叩かれっぱなしだった。
私は、中にも聞こえるように大声で、何度も「こんな不倫するしかできないバカ男のレストランに借金まで抱えて、お金をつぎ込むわけ?」と怒鳴り続けた。
夫は「聞こえるだろ!」と、不安そう。
お構い無しに、私は怒鳴り続けた。
「今すぐ帰りなさい!」

結局、夫はそのまま電動自転車で実家へ帰って行った。

それが原因ではないとは思う。元々、採算があってなかったせいだとは思うが、つい最近閉店した。新しく多分、小さくして店を出したようだが、これも時間の問題だろう。これは、慰謝料や養育費を元に元妻が出した店なのかもしれない。元々、離婚を繰り返し、お金のかかることばかりして、派手な生活ばかりしているような人間が片手間に店をうまく回せるはずもない。 従業員からも不満の声は出ていたし。不倫相手を度々連れてきて、飲んだくれてる経営者を見てたらさすがに苛立ちもしただろう。

No.105

>> 104 書き忘れたが、私がレストランに乗り込んだ後、ピアニストは×3になっていたらしい。当時の三人目の妻が、慰謝料を元に今回の店を出したのかもしれない。
とにかく、女好きなので、結婚しなければ問題ないのにとお節介ながら思ってしまう。
結婚していながら、コンサートを開いたコンサートホールの女の子を度々ナンパしていたらしく、その事情を詳しく知る人に度々結婚していることを話すと結婚したことがあること自体に驚愕していたくらいだ。
芸術家はそういうものなのだろうか…私には理解できないが。
四人目の犠牲者がないといいけれど。

No.106

探偵事務所が追跡中に夫を見失ったことで、再調査が行われる日がやってきた。
しかし、結局、その日はたまたま子供の行事がある日で、午前中はそこに現れてしまった。
たぶん、今日はヒットしない。。。
別の日を設定すべきだったと後悔した。

No.107

行政書士さんと何度かメールでやり取りし、内容証明が送付されることになった。

内容証明が届けられたかどうかがネットで調べられるシステムになっている。
行政書士さんは、そのシステムで相手が受け取ったかどうかが調べられるように送付した詳細を知らせてくれた。

いよいよだ。
これで、無視はできないはずだ。

一方、GPSは順調に作動していたが、怪しい動きはなかった。。。あの日までは。

No.108

内容証明が届く予定の日。
ネットで調べると、配送には行ったのだが、相手は受け取っていなかった。

留守だったのか?

受け取り拒否か?

留守の可能性もある。

私に何ができるわけでもなく、待つしかない。

待つということはこんなにしんどいことなのか…これほど待つことを苦痛に感じたこともない。

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