色んな出会いありますね…2…
機種変したら、どういう訳か投稿できなくなってしまったので、今までの「色んな出会いありますね」の続きのスレを立て直します…またまた宜しくお願いします。
感想スレもありますので、宜しくお願いします。
- 投稿制限
- スレ作成ユーザーのみ投稿可
仕事が手につかない…
この日から数日間は、俺は最低な人間になり下がった…千秋の気持ちも考えずに…
会社で顔を合わせる…千秋は精一杯の笑顔で皆に挨拶をする…それは俺にも変わらずに…
でも俺は千秋に…心配してますよ!という気持ちを押し売りするような態度…
「お腹大丈夫?気持ち悪くない?」
それは言い換えれば…
「生理来た?お腹痛くない?」
である…最低変態男…
『うん、平気…!』
明るく答える千秋に対し俺は腹の中で…
…痛くなきゃ困る!生理来い!…
と、手前勝手な思い…
「あそ…」
無愛想な言葉を残し仕事する俺…その場に取り残される千秋…
酷い事をしているのは分かっていた…でもどうしても優しい気持ちになれない…気持ちにゆとりが持てない…最低だ…それも分かっていた…
この日、顔を合わす度にお腹の事を聞いた…
千秋をどんどん傷つけている事にも気づかずに…
夜…千秋から電話がきた…
俺にとって朗報か?…と勝手な期待…
千秋はいつも通りの今日の出来事など世間話に終始する…俺は上の空…いつもより短目に話が終わる…で、最後に…
「お腹大丈夫?」
とこの日何度目になるか分からないくらいの問いに…
『うん…』
と静かな返事…
翌日から出張だというのに…
~翌日~
今回の出張はちょっとロングラン…
甲州街道で八王子~大月~甲府~松本~中央道駒ヶ根~飯田…松本に戻って穂高~大町~白馬~南小谷~大町に戻り~長野~中野~飯山~十日町~飯山に戻り~須坂~茅野~諏訪~会社夜中着…で3日間…帰宅せず、精算と翌日からの出張の準備をして会社泊…朝一番で中山道方面…大宮~東松山~秩父~群馬~新潟~福島~茨城~会社…殺人的なスケジュール…で1週間が終る…
その間、千秋と話したのは、注文とお腹の事のみ…夜は一度も電話をしなかった…
一番最後に注文の電話をした後に…
『日曜日会いたい…』
と千秋…
「うん…」
と俺…
土曜は社用車で出勤…前日遅くに戻ったので社用車での帰宅だった…千秋と話をしていなかったので、一人で出社…
千秋は休んでいるらしい…バカな俺は勝手に…
来た?
と思い込む…
そんな事を考えている俺の尻を思い切り蹴る奴がいる…
「痛っ!!」
振り返ると鶴川が怒った表情で立っていた…
「何すんだよ!!」
【何すんだよ!じゃねえよ!最低だよ!】
「何がだよ!お前に何かしたかよ!」
【バカ!佐山だよ!はなやま、酷いよ!】
「え…な、何でお前が知ってんだよ…」
【佐山、いつも明るくしてるのに、トイレでいつも泣いてるんだよ…】
「……………」
何も言えなかった…
【どうすんだよ…】
「……………」
何も分からなかった…
【信じらんない…】
鶴川はそう言い残してその場を去った…
日曜…
待ち合わせ場所の釣り宿吉田屋…朝早く向かう…
気持ちはまだモヤモヤ…
千秋がいた…
「おはよう…」
『おはよう…』
車に乗る千秋…
この日は特に行き先は決めてなかった…ひたすら西へ移動…する予定だった…
日曜だというのに、剣道の防具を持っていない…
「今日は剣道…」
と言いかけた…
『多分…!』
俺の言葉を遮り、千秋が声をあげる…
「多分?多分どうしたの?」
『多分…今日来ます…』
「何が?」
『……………生理。』
その単語を聞いた瞬間、俺は満面の笑みでニヤけてしまった…
千秋はそれを見逃さなかった…
『そんなに嫌でしたか?万が一でも二人の子供が出来ることが…』
軽蔑するような目で俺に聞く…
「……いや、そ、そんなつもりは…ごめん…」
何も反論できなかった…
でもこの期に及んでも俺は、千秋を失いたくない気持ちより、ほぼ間違いなく生理が来る…悩みがなくなる!という嬉しさの方が勝ってしまった…俺はこの後どう千秋をなだめるかに集中することにした…でも結果的にそれは上部だけの優しさ、その場凌ぎの言葉を発するに過ぎなかった…
最低な変態男…し~君。
『帰ります…』
車を走らせてまだ10分過ぎたぐらいだろうか…
突然千秋が言った…
別れを予感した…
「え?何で?」
理由なんか分かっているくせに、訳が分からないよ……といった表情を見せた…どこまでもオメデタイ変態男、し~君。
『帰ります!』
今度は強い口調…
「分かった…」
東京都に入りすぐにUターン…また釣り宿吉田屋に戻った…
「ごめん、そんなつもりじゃないんだ…」
『じゃあ、どんなつもりなんですか?』
「………………」
薄っぺらい考えだから言葉に詰まる…頭の悪い変態男、し~君。
車を降りる千秋の後ろ姿を見送り、オメオメと家に帰る…
月曜…
いつもの電車で出勤…千秋の乗る駅に着く…
千秋の姿が見えた…が、乗り込んでこない…更にモヤモヤ…千秋はもう俺の顔なんか見たくない…って思ってんだろうな…と思う気持ちを、次のこの駅始発で座って来るんだろうな…と自分に都合よく変えて解釈…
いい加減に目を醒ませ!
会社に着く…少しして千秋も着く…
『おはようございます!』
皆に笑顔で挨拶をする千秋…
「おはよう千秋ちゃん!…あ、ゴメン…」
会社では秘密だったね!…と、わざとらしい仕草の俺。
しかし千秋は…
『おはようございます!花山先輩!』
と、満面の笑みの他人行儀…
『あ、花山先輩、今日のお昼二人で行きませんか?』
まさかの千秋からのお誘い…
「いいよ!いいよ!」
もしかしたら許してくれるの?と、甘い考えのし~君。
昼…
会社を一緒に出る…
今までは、とりあえず社内では秘密だったので、俺が先に出て千秋が信号で追い付く…というように時間差で昼飯に出掛けていたが、もう千秋の中では一人の仲の良い先輩と昼飯に出掛ける…という感覚なんだろうな…
という諦めにも似た思いが頭のなかを支配し、都合の良い思いが入り込む隙間は無くなっていた…
「どこ行く?」
『天下一にしません?』
「いいよ…」
妙に明るい千秋に対して、俺はテンションを上げる事が出来なかった…
心が狭い男、し~君…
店に入る…
席に着くや否や…
『チャーハン!』
と、千秋…
ここのチャーハンは出てくるのが早い…長居したくないの?何か話があったんじゃないの?それともサクッと話をしておしまい!ってしたいのか…千秋の言った注文一つでネガティブになるチキンなし~君…
【ゴチュウモンハ?】
中国人ウェイターに、注文を促される…
「あ、あぁ…じゃあ俺もチャーハン…」
結局同じ…
ウェイターが水と一緒にチャーハンを持ってくる…
速い…
『来ましたよ………生理。もう、昨日の夜からお腹痛くて…あの時言えば良かったですね…生理前だから、終ってからにしようって…逆にすみません…』
年の割に大人な千秋…
余談……生理直前に中出しして着床してても、直後の生理は結構な確率で来るらしく、肝心なのはその次の生理だ…と、何かで聞いた時はビビったもんだ…千秋はどうだったのか…
このスレ読んだ方で、知識のある方は、感想レスまで…
「いや、もしそうしていても、同じ結果だったかも…ホントごめん…」
『あの笑顔はショックでしたよ…花山先輩との未来が見えないというか、もっと色んな経験を積まないといけないんだな…って思いましたよ。嫌いになった訳じゃないんです…先輩の事、好きは好きですよ…』
ここで本当に終りなんだな…って思った。
やっと気持ちに整理がつきそうだ…
「そかそか…本当にごめんね…俺も佐山の事好きだよ…これからも宜しくね!」
『はい!』
短いけど、濃い期間だった…
でもフラれっぱなしだな…サトミ、めぐみ、敦子、千秋…唯一振った形になったのは、鶴川だけ…
人間に問題ありか…
「もしもし…」
【あ、花山さんでしょうか?】
「はい…」
【あの、夜分に申し訳ないのですが、敦子…さんという女性をご存知でしょうか?】
「敦子?…はい、知ってますけど…どうかしましたか?」
【あぁ、良かった…】
「はい?」
【実はですね、こちらの敦子さん、酷く泥酔しておりまして、お友達とここに駆け込むや否や、あなたのお名前を連呼しまして…あなたのお電話番号以外、連絡先も身元も何も言わないでそのまま潰れてしまったんですよ…それで引き取りに来て欲しいのですが…】
「な、何で私が?」
【こちらとしても、ここにこのまま保護するわけにもいきませんので…何とかお願いします。】
「はぁ…」
そのまま敦子の自宅の電話番号を教えて、親に迎えに来させる…という選択肢もあった…でもあんな別れ方をしたにも関わらず、そんな時でも俺を必要としてくれた事に対して応えてあげたい…というお人好し…というか下心…みたいな顔が出た…
救えぬ変態男…し~君。
俺は日〇谷へ車を走らせた…
日〇谷…
深夜だが、週末の東京は眠らない…バブル初期…行き交うOLやサラリーマンは皆高そうで派手なスーツ…その中に、全く場違いなスウェットにビーサンの俺…今まで家で寛いでました…というような格好…事実そうである…
「すみません…花山ですが、厄介者を引き取りに来ました…」
冗談混じりに言う…
【ご苦労様です!こちらです…】
生まれて初めて警察官に敬礼された…何気に嬉しい。
派出所の奥に畳の部屋がある…そこに敦子は一人で横になっていた…
「もう一人いると聞きましたが…?」
【はい、あまりにも嘔吐が酷く、身元も言えない状態なのと、免許証も定期券も社員証らしき物も持っていなかったので、一晩病院で休んでもらって、落ち着いてから連絡してもらおうと、救急車で搬送していただきました…】
「え?そうなの?だったらこいつもそうして欲しかったな…」
【いや、花山さんは連絡がつきましたから…】
「あ、あぁ…そうね…他人ですけどね…」
そう言いながら、再会できたことにちょっと感謝…
敦子を車に乗せ、その場を後にした…
殆ど意識の無い敦子を家に送り届ける…
前以て電話をしておいたので、家の前で敦子のお母さんが待っていてくれた…
【あらぁ~!し~君久し振りじゃないの~!今日は本当にごめんねぇ~!何でこの子はし~君の連絡先しか言わなかったのかしらね~!】
「大丈夫ですよ!お久し振りです!」
そんな会話をし、敦子を引き渡した…
歩きながら話す…
「あ、そういえば名前聞いてないですよね?」
【そういえばそうね…じゃ、そちらから名乗って…】
「はいはい…花山です…」
【花山君ね!皆からし~君て呼ばれてたから、私も呼んでいい?】
「あ、はい…いいですよ。で、名前は何ですか?」
【私は坂城…坂城奈穂子…宜しくね!】
「奈穂子さんですか…そう呼んでいいですか?」
【いいよ~…】
そしてまた色んな話をした…
聞くところによると、さっき会った他の4人の内、2人は同じ大学の出身で、更にこの奈穂子さんと、同じ大学出身の2人の内1人は彼氏も同じ大学らしい…
奈穂子さんの彼氏ともう一人の子の彼氏は同じ野球サークルOB…同じ大学出身者は皆野球サークル…のマネージャーみたいな事をしていたらしい…今でも活動をしているようだ…
【し~君は、彼女とかいるの?】
「いや、いませんよ…モテないし…いるように見えます?」
【あ、意外…絶対にいると思ってた…私なんか多分終るわよ…】
「え?何でですか?えらく美人ですよ…」
今でいうところの、朝の番組『ZIP』のお天気お姉さんの佐々木もよこちゃんにそっくり…
【まぁ、色々あってね…マンネリだし、会っていてもつまらないし…】
「へぇ~…そんなもんすか?…てか、奈穂子さんていくつですか?」
【あ!失礼ね!女性に歳聞くなんて!】
「あ、すみません…つい…」
【嘘よ、嘘々…26よ…おばちゃんでしょ?】
びっくりした…年上に見えたけど、せいぜい3コ上くらいに見えた…6コ上とは…
「いや、全然…タメくらいかと思いました…」
それは嘘…
【大袈裟ぁ~…(笑)じゃあ、し~君は?】
「あ、俺すか?ハタチです!結構上に見られますけど…フケてんすかね?」
【え?そうなの?もしかして他の子達もタメなの?】
「そうすよ、タメです。」
【私もし~君とタメか、し~君が少し下なのかと思った…】
会話が弾み始めた…
楽しく話していると、やはり時間が経つのが早い…
奈穂子とは色んな話をした…
でも俺はこんなに綺麗で大人な女性と話したことがなく、終始緊張していた…ここらへんはまだイガグリ小僧だ…
分かったことといえば…通勤に使う最寄りの駅が一緒ってことと、名前と年ぐらいなもの…奈穂子は俺をどう思っているのだろう…そんなことを考えていると…
【あ、ウチすぐそこだから…そこ曲がってすぐの家…じゃね…】
ここでお別れ…なの?
「あ、はい…じゃあ…楽しかった、有り難う。」
【うん。】
そう言ってお互いに別れ歩き出した…
30m程歩く…もういないか…と思い振り返ると、奈穂子が自販機でジュースを買っているのが見えた…
ここで声をかけないと、二度と会えない気がした…
思わず…
「奈穂子さん!」
と叫び、何故か両腕を広げた…
奈穂子はこちらを見て、一瞬動きが止まった…
アホか…何やってんだ…軽く手を振られていなくなるに決まってる…
そう思っていた…
奈穂子は俺に向かって走り寄ってきた…!
俺は確信した…
俺も奈穂子に向かって走る…!
二人は真ん中でぶつかり抱き合った!
そして、どちらからともなく、キスをした…熱い熱いキスだ…
【年上の女、怖いぞ…!】
「平気です…」
もう一度キスをして別れた…
ベタなトレンディドラマのようだ…
奈穂子との付き合いが始まった…色んな事を教えてもらった…大人な付き合い、付き合いの一般常識、そしてセックスも…
朝は最寄りの駅から途中まで一緒に通勤…でも、奈穂子は小売業のため、早番遅番のシフト出勤もあれば平日休みの日もある…逆に日曜の出勤もある…毎日一緒に通勤というわけでもない…
一応、シフト表を貰って調整した。
ある日、奈穂子が眼帯をしてきた…
おはようの挨拶をしようとしたが、眼帯にではなく、奈穂子の表情にたたならぬ違和感を感じた…
奈穂子は俺と目を合わせようとしない…
「どうした?モノモライ?」
『…………』
俯いたまま黙っている…
駅のホームの片隅で肩を抱く…
電車を一本やり過ごす…
「言ってごらん…俺なら大丈夫だから…」
そう言うと、奈穂子は涙を流した…そしてゆっくりと眼帯を外した…
瞼が青く腫れている…
話を聞くと、(元)彼氏に別れ話をした…短気な彼氏は奈穂子を殴ったらしい…でも奈穂子はちゃんと別れを告げて終りにしたようだった…
俺は朝の通勤でごった返す駅のホームで奈穂子を抱き締めた…
ある日の帰り…
電車での帰宅途中…背後からポンポンと肩を叩かれた…
振り向くと、身長180cmを超す俺より更にでかい男が立っていた…
【お前、花山だな…】
物を尋ねる言い方ではなく、断定的な言い方にピンと来た…
「奈穂子の元カレのカズオか?」
【いや、彼氏のカズオだ。】
「女に手を上げる奴が、そんな事を言えるのか?」
【うるせぇな…このガキが…】
そう言うと俺の胸ぐらを掴んだ…俺も掴み返した…
二人の大男が、一触即発の状態に、車内の空気が一気に凍りついた…
電車が駅のホームに滑り込む…二人はその状態のまま電車を降り、その状態のまま改札を抜け、駅の裏へと歩く…
それを見ていた人間は、皆見て見ぬ振りをして、家路を急いだ…
駅と繋がっている二つの百貨店は既に閉店時間…駅の裏にある百貨店の立体駐車場も真っ暗だ…
線路と駐車場の間には細い路地がある…そこには街灯が一つあるだけの薄暗いところ…
カズオの手が離れた…カズオは街灯の下へ歩いた…
話し合いだけで済む筈はない…そう思い、俺も街灯の下へと歩んだ…その時…!
黒い物体が飛んできた…!!!
黒い物体は俺の上唇を直撃した…!カズオのアタッシュケースだ…!
俺はその衝撃と痛みで地面に倒れ悶絶した!!
【なめやがって!俺は空手有段者だぞ!】
そう叫びながら、倒れている俺の体を足で何度もスタンピングした!
「ぐっ!ぐっ!ぐぁっ!」
怒りと痛みで顔が歪む…
一瞬蹴りが弱まった…俺は咄嗟にカズオの裾を掴み引き上げた…!
バランスを崩したカズオが倒れた!俺はマウントポジションを取り、カズオの顔面に拳をを降り下ろしパウンド…
何発打ったろう…20くらいか…薄暗い場所だけに中々当たらない…当たった感触は半分くらいか…その内クリーンヒットは更に半分か…でも確実にダメージは与えた…
カズオは俺の胸ぐらを掴み力任せに引き込み横に倒した…
Yシャツのボタンが弾ける…形勢逆転…パウンドを浴びる…上唇からはまだ大量の流血…鼻血も出てる…もうボコボコ…
【オラァ!クソガキ!やってみろ!コラァ!】
死ぬ…
リアルに思った…
あまりの恐怖にたまらずカズオの太ももの内側をを思いきりつねる…
【ひぃぃ~~!痛ぇ痛ぇ痛ぇ痛ぇっ!!!!】
カズオは悲鳴をあげるが俺は止めない…!
もんどりうって倒れ、太ももを押さえうずくまるるカズオ…
容赦無く靴の爪先でカズオの全身を蹴る!!トドメの顔面!
【うぉぉぉぉっ!】
叫びながら顔面を両手で覆う…指の間から血が流れるのが見えた…
次に気が付いたのは…
ピ~~~~~~~!
と笛が鳴る…
【何してるんだ!やめなさい!!】
たまたま巡回していた4名の警察官…カズオと俺は引き離された…俺はKO寸前で、止められた警察官にもたれかかった…
しかしカズオは…
【ふざけんなコラァ!まだやんぞ!ぶっ殺してやる!】
俺を抑えている警察官は1人…カズオを抑えている警察官は3人…やっと抑えているようだ…俺は落ち着きを取り戻した…
「もう大丈夫です…落ち着いてます…」
やっと落ち着いたカズオと俺は、警察官達と駅の派出所へ移動した。
すれ違う人達は皆驚いた表情で振り返り、俺達を見る…
一体どんな状態になっているのだろう…不安になった…
とりあえず顔面が痛い…特に上唇…
明るい派出所内の鏡を見ると、酷い顔になっていた…まるで別人…両瞼は腫れ上がり、上唇はパックリ割れている…その回りが青白く腫れていて、タラコ唇どころの騒ぎではない程だ…
顔とワイシャツは、血と泥で酷く汚れている…奇跡的にズボンは破れてなく、汚れているだけだ…でもワイシャツはビリビリだ…
カズオはというと、鼻が変な方向を向いている…完全に折れている…顔とワイシャツは血だらけだ…こんな大男をここまでにしたという、少しの優越感があった…でも見た目完全に負けだった…
翌日、俺は会社を休んだ…
あまりにも顔の腫れが酷く、とても営業活動を出来る状態ではない上に、まともに喋れないから…
親は心配をしていた…
姉は何故か笑っていた…
一日家に閉じ籠って顔を冷し続けた…
翌日…
多少腫れは引いたが、ボコボコには変わりない…こんな日は奈穂子に会いたくない…
でもこんな日に限って会う…
駅に着くと、いつもと違う場所から電車に乗ろうとしたが、改札の手前で奈穂子に声をかけられる…
『し~君おはよう!』
「あ、おはよ…」
なんとなく手を顔にあてながら振り向き挨拶をする…
すぐに奈穂子の表情が変わる…
『ど、とうしたの?その顔…手も…』
「え?顔?手?あ、あぁ、階段から落ちた…かな?」
精一杯惚けてみた…でも大人な奈穂子には無駄だった…
『カズオでしょ?』
奈穂子の目は涙で一杯になっていた…
惚けても仕方ないか…
「うん、まぁ…でも向こうも相当怪我したよ…」
『アイツの事なんかどうでもいいよ!し~君が…こんな…どうしよう…ごめんね…』
奈穂子は改札の隅で泣いていた…
「俺なら大丈夫だよ…」
………奈穂子は暫く泣いていた…
悶々としながら、南へと車を走らせる…
色々と話していたが、結局下ネタになってしまう…
せっかくのデートだから、色々行きたい…無性にヤりたい気持ちを抑えながら、ドライブインへと入った…
『まだお腹空いてないよ~…』
「ん?いや、ちょっとトイレ…」
用を足す…モノを出すと、硬く太く熱くなっていた…
「ちっ…!参ったな…」
誰もいないトイレで一人呟く…
用を足し終える頃、背後に人の気配…ファスナーを上げ振り返ると、奈穂子が立っていた…
「な…何してんの?ここ男子トイレだよ!」
『し~君したいんでしょ?我慢しなくてもいいのに…』
奈穂子が少しニヤつきながら言う…
「そりゃしたいけどさ、たまのデートは色々行きたいじゃん…」
『私は別にどこでもいいよ~。し~君と一緒なら、一日ラブホでHしててもいいよ!』
そう言うと奈穂子は、俺の脇腹に手を滑らせ、ゆっくりと唇を重ねてきた…
互いの舌で、互いの舌を絡ませる…ゆっくりねっとりと…いつしても、奈穂子はキスが上手い…ついのめり込んでしまう…
「………っておいおい!危ねぇ危ねぇ!何してんだよ!だからここ男子トイレだよ!誰か来たらどうすんだよ!」
『いいじゃん、見せてあげれば?』
「バカ言ってんじゃねぇよ!」
そう言ってるうちに誰かがトイレに入ってくる気配がした…
思わず俺は、奈穂子とトイレの個室に身を隠した…
間一髪で人に見られずに個室へ入ることが出来た…3コある個室の一番奥の個室…
俺が洋式の便座に腰掛ける形になった…すかさず先程のキスの続き…
入ってきた人も個室に入ったようだ…一番入り口側…
奈穂子が俺の膝の上にまたがる…お互いに抱き締め合ってネットりとしたキスを続けた…
俺のモノが奈穂子の内腿に当たる…
『し~君、凄く硬くなってるよ…出したい?』
耳元で小声で呟く…
「うん…」
たまらず呟く…
『立って…』
俺が立ち上がると、奈穂子は素早く俺のジーパンと下着を下げた…
パンパンに膨れ上がった俺のモノを眺めながら…
『凄い…大きいよ…もしかしてかなり興奮してる?』
そう言うと、すぐに俺のモノを喉元まで飲み込んだ…
「くっ…あっ…」
思わず叫んでしまいそうになるくらいに気持ちがいい…
ゆっくり深く根本まで口に含み舌全体を使って裏側を舐め上げる…ゆっくりと…たまにリズムよく…首を動かし出し入れする…
もうイキそうだ…
「ヤバい…で、出そうだよ…」
“隣人”に聞こえないように小声で呟く…
奈穂子は小さく頷く…
出していいよ…のサイン…
相変わらず奈穂子のリズムは良く、音をたてないように舌と唇と口の中を上手く使う…
「あぁ、もうダメだ…出る…」
その声を聞いた奈穂子は更に速いリズムで首を動かす…
「あぁ!出る!……うぅっ!」
大量の液体を奈穂子の口中内へ放出…
落ち着くまで“繋がって”いた…
『出たねぇ~!暫くしてなかったもんね…』
せっかくのデートに、こんな場所で出したことに少し後悔…奈穂子は満足気…
やがて“隣人”もいなくなり、静かにトイレを出た…
お互いに若いんだな…
体から溢れ出す性欲…
俺達は車に戻っても、車を人目につかない場所へ移動して、互いを貪った…
「こんなんじゃ、何処にも行けないじゃん…」
『いいじゃん、たまにしか会えないし、遊びに行くのは私が生理の時にすればいいじゃん…』
「そういうタイミングじゃない時ばっかしだったら?」
『エッチする…でもその内ペースも落ちるでしょ?』
「まぁ、それもそうか…」
年上の妙な説得力で、結局俺は言いくるめられてしまった…
「じゃあ、これから何処に行く?」
『ホテル…』
「はいはい…」
そう言って俺は、ホテルを探しに国道を南に向かった…
『最初に出たホテルね…もう我慢できないから。』
「え?もうすか?」
『うん…』
そう言うと奈穂子は俺のモノに手を伸ばした…
何時間いたんだろう…
最初に出てきたホテルが、12時間いても\3,800と、この時代にしてはかなりお安いホテル…内装も、可もなく不可もない…
俺はクタクタ…奈穂子は艶々満足気…
外は暗く、既に夜…
『し~君頑張ったね♪』
「はい…でも疲れた…それに腹減った…」
『そうだね、お昼も食べないで水だけ飲んでしてたもんね~…』
「奈穂ちゃんはだいじょうぶなの?」
『う~ん、少しお腹空いたかな?』
「じゃあ、どっかで飯食おうよ…」
『うん!』
「何がいい?」
『何でも!』
「じゃあ、ラーメン」
『え~…ラーメン?』
「だって何でもいいって言ったじゃん!」
『じゃあ、ラーメン以外。』
「じゃあ、蕎麦…」
『え~…』
「おいおい!」
『蕎麦ならラーメン!』
「よし、決まり!ラーメンね!」
そんな会話をしながら、朝来た道を戻った…
お互い性欲もそうだが食欲も旺盛…
立ち寄ったラーメンショップで、俺は塩ラーメン、奈穂子は味噌ラーメン…プラス、お互いにチャーハン大盛&餃子…と、野菜炒めを二人で一枚…
運んでくる店員も唖然…
『ヤッた後はお腹減るね…!』
他の客もいる中、奈穂子が言う…
「バカ!声がでかいよ!」
言った直後の皆の視線が気になる…
俺も奈穂子も周りを見ずに黙々と食った…
慌ただしい食事を済ませ店を出た…
時間の許す限り、あちこちとドライブした…
奈穂子にも門限はある…といっても日付が変わる前に帰ってこい…との事。
5分前…
奈穂子の家の近所の小さな公園脇に車を停め、少し話す…
「楽しかった?」
『うん、凄く楽しかったし気持ち良かった!』
「気持ち良かった…そりゃ良かった…(笑)でも今度は色んなとこ行こうよ!」
『うん、行けたらね!頑張る!』
「いやいや、頑張らなくていいよ~!普通に色々行こう!」
『あははは!そだね!』
そんな話をしているうちに門限の時間…
お互い別れを惜しむように指を絡め、見つめ合う…
「もう、行かないと怒られちゃうよ…」
『うん、行くね…』
そう言って軽くキスして、奈穂子は車を降りた…
奈穂子は2、3歩歩いたとこで引き返してきた…俺は車の窓を開けた…
『し~君、浮気だけはしないでね…』
そう言うと、奈穂子は上半身を窓から車内に入れ、もう一度軽くキスした…
奈穂子の家に続く道、角を曲がり、姿が見えなくなるまで見送り、俺も家路についた…
梅雨も明け、暑い日が続く…
俺と奈穂子の付き合いも、大分落ち着いてきたある日曜日、一本の電話がきた…
「はい、もしもし…」
珍しく俺が受話器を取った…
【あ、し~君?】
敦子の声…
「お前さ、もし俺じゃなく、声が似てる俺の親父とかだったらどうすんの?」
【大丈夫、大丈夫!し~君の声は絶対に間違えないから!】
「はは!そんなに特徴的なの?俺の声って…」
【う~ん、そんなんじゃないけど、なんか分かる…よくあるじゃん!そんなの…】
「あ、あるの?まぁ、いいや…で、何か用?」
俺が復縁をお願いして、振ったくせに、よくそんなノリで電話なんかしてこれるな…という意味を込めて、少し無愛想に話した…
【あ、そんな声しちゃってぇ、嬉しいくせにぃ~!】
図星…
「んな事ぁねぇよ!用件は何だよ!」
【はは!何となく顔見たいな~っと思ってさ…今度飲みに行かない?】
思わぬお誘い…
若干の胸騒ぎがしたが、そのお誘いに乗ってみた…
即売会場は新宿の某ビル47F…
土曜の敦子との待ち合わせは、銀座に6時…即売会は5時まで…
当日閉店して、その後整理して、次の日の追加分をリストアップして、会社戻って商品出して、仮伝書いて値札付けをして、車に積んで、それから銀座…なんてしてたら間に合わない…千秋の協力が必要…頼みづらいな…
…なんて事を、搬入しながら考えていた…
初日…
振り袖の柄、色、にある傾向が見て取れた…
振り袖の全体が無地で裾、袖に暈しがあるものと、大正ロマン柄の二種類が主流になっていた…
初日が終り、当日の客の入り、売上、翌日から週末…という事を計算して、2日分の追加商品を準備することにした…
こういう計算を普段出来ないもんか…会社戻りの車の中で苦笑いした…
「千秋ちゃん、俺ちょっと土曜の夜に用事があるから、今日2日分の追加商品から…ちょっと時間かかるけど大丈夫?」
【あ、いいですよ…てか、女性ですか?】
あっさり…
「バ、バカ!違うよ!」
【いいじゃないですか、別に隠す事無いじゃないですか…】
ニヤける千秋…
「まぁ、色々ね…」
【はいはい、じゃあ会社戻って頑張りましょう!】
…そんな会話をしながら会社に戻った…
会社に戻り、早速追加商品の準備…
帯締め、帯揚げ、草履バッグセット、単品の草履、バッグ、重ね襟、刺繍襟、ショール、髪飾り等の雑貨小物類…特売用の浴衣帯等々…を出した。
ざっと見て、軽ワゴン車満載1台分…
「ごめんね、千秋ちゃん…偉い量になっちゃったな…」
【構いませんよ、そんな気なんて使わないで下さいよ…仕事なんですから…早くやっちゃいましょ!】
「うん、有り難うね!」
そう言うと二人は黙々と作業を続けた…
夜10時過ぎ、準備完了…
「有り難うね、助かったよ!何か食って帰る?」
【え?いいんですか?】
「いいよ、天下一だけど…」
【いいですよ!私、天下一大好きですから!】
「じゃあ、決まりね!」
そう言って、後片付けをして会社を出た…
朝7時…
最寄りの駅の改札を通過する直前、誰かが俺の肩を叩く…
振り返ると、奈穂子が立っていた…
『し~君おはよう!』
「あ、おはよう!今日は早いね!」
『うん、早番だから…眠ぅ~い…』
「俺も…」
『即売会、明日までだっけ?』
「うん、奈穂ちゃんとこから割と近いから、来ればいいじゃん!」
『行きたいけど、時間合わないじゃん…それに今日は皆で飲み会なんだ…』
「え?飲み会?どこで?」
嫌な予感…
『場所は決まってないけど、多分また新宿じゃないかな…なんで?』
「ん?いや、何と無くね…飲みすぎないようにしないとね~!」
飲みは新宿…と聞いて少し安心…
間も無く、お互い違う電車に乗り換える駅…
勘の鋭い奈穂子…電車を降りる間際に小声で一言…
『浮気は嫌だよ…』
とだけ言い残し、お互い別々のホームに別れた…
この日の客の入りは上々だ…俺も千秋も忙しく、あちこちと走り回っていた…
開店直後に売り場を離れて、昼前に戻ってきた…
次は化粧箱入れ作業…目の前に列をなす…
箱入れ作業が落ち着いたのは昼過ぎ…
千秋を先に食事に行かせ、俺は次のピークに備えた…
千秋が戻り、入れ換えで俺が食事に…
今日は銀座のどこに行こうか…最近知った店で、生バンドが聴ける店があった…確か銀座…そこにしよう。
そんな事を考えながら、売り場に戻った…
【そういえば花山先輩、今日は終ったらどこに行くんですか?飲みに行くんでしょ?】
「うん、まぁ…銀座なんだけとね…」
【女の人ですか?】
「気になる?」
【別にぃ~…ただ銀座で男同士ってのは無いな…って思いまして…】
「ははっ!鋭いね!」
【前の彼女さんですか?】
「え…えっ?な、なんで?」
【あっはは!正解なんだ!そこは適当に言ったのに~!】
「からかうんじゃねぇ!」
付き合ってた頃の様な楽しい会話…多分もう無いんだろうな…
前回会った時は、ベロベロに酔っ払って、警察に保護されていた時だったから、ちゃんとした姿を見ていなかったけど、こうして普通の姿を見ると、グッと大人の女性になっていた…
「お、おう!久しぶり!」
あたふた…
【なんかネクタイ似合うね…】
「あっちゃんこそ似合うよ~!すっかり大人だね…」
【そお…?有り難う…♪】
「じゃあ、行こうか…行ったことないけど、いいとこ知ってるんだ…」
【え?どこ?じゃあ、し~君の知ってるとこ行こう!】
「え?あっちゃんのとこはどこ?」
【いいよ、私のは…し~君のとこ行こう…】
「じゃあ、行ってみようか…」
そう言うと、どちらともなく手を繋ぎ歩き始めた…
信号を渡ると、飲食店ひしめき合うエリア…
【あ、私の知ってるとこもこっちかも…】
「そうなの?同じだったりしてね…(笑)」
暫く歩くとそこはあった…英語で『ケ〇〇ス』とネオンの蛍光灯が光る…
【あっはははははは…!】
突然敦子が笑い出す…
「どうした?」
【びっくりだよ~!私もここだよ~!】
「マジで?ホントびっくりだよ!」
二人は笑いながら店内へと入った…
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