哀れ…
憎しみしか、残らなかったね…
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彼は驚いた顔をしていたが、私は何の躊躇も無く、彼にお金を貸すことを了解した。
金額は30万円。
私は彼の力になれることを純粋に喜んだ。
そのときは・・・
本当にその時はそうだった。
彼は、相変わらず私のメールや着信には無視したりしていることが多かったけれど、私は彼の行動や状況を知りたい気持ちを抑えることが出来なかった。
だから、構うことなく、着信履歴を残したり、メールを送ったりしていた。
最初は、私を好きでいてくれ、私を忘れず、あの時雑貨店まで来てくれ、私の気持ちにも応えてくれたことに只々感謝していた。
なのに・・・
少しずつ、彼が私を邪険に扱う様子にイライラが募り、きっと家に帰っている時間であろう時でも構わずメールを送ったりしていた。
彼女からの申し出は、正直有り難かった。
だから、有り難く借りた。それくらい精神的に追い詰められていたんだと思う。
「ちゃんと・・・ちゃんと返すから、ゴメン・・・」
「うん。分かってる」
彼女は封筒を手渡してくれた。
金を借りたから、早く返済しないと彼女に迷惑をかける、そう思った俺は、彼女には内緒で夜もバイトをした。
もちろん、昼間は本業に走り回っていたし、夜もそんな感じだったから、彼女からの着信やメールには正直応えることが出来なかった。
そんな暇があるなら仕事をしなければ、そんな時間があるなら眠っていたい、そう思っていた。
そんな俺の状況など知らない彼女は、構うことなく連絡を取ってきた。
イライラしている自分の感情を抑えきれず、とうとう彼を地獄に陥れることを実行しようとしている私がいた。
それは、私からのメールや着信に無反応な彼に、毎晩、夜中電話を掛けた。
もちろん、家に帰って寝ていることもわかっていたし、着信音が鳴ることで、家族にも不審がられることもわかっていた。
というか、それが目的だった。
彼が夜、アルバイトをしていたことは知らなかったので、当然、家族特に奥さんから何か言われているものだと思っていた。
なのに、相変わらず何の反応も無かったので、私は以前働いていた彼と出会った会社に彼が来そうな時間に行き、道の反対側で待ち伏せした。
しばらくすると、彼の乗った車が会社に入って行った。
つかさず私は彼の携帯に電話をした。
彼は私からの電話だと分かると出なかった。そんな反応をすることは分かっていたから、何度も何度も掛け直した。
仕事中なので、さすがに電源も切れない、マナーにも出来ないことを分かっての行動だった。
・・・・・彼は・・・ 出た。
彼女からの着信のすごさに正直背筋が凍るような感覚だった。
さすがに一緒に作業していたパートさんから怪訝な顔をされた。仕事中なので、電源は切れないし、マナーにするとバイブでも作業していると気が付かないので、出来なかった。
俺は、パートさんに断りをいれて、倉庫から離れた場所で彼女からの電話を取った。
「もしもし?」
「・・・どうして出ないの?私って分かってるから?」
「今、仕事中だからだよ。そんなの君だって分かってるだろ?」
「・・・今、あなたの居るところからすぐの場所に居るのよ?」
俺は、今いた場所から入口に向かって走った。
すると、会社の反対側の歩道に彼女が俺の方を向いて小さく手を振っていた。
不敵な笑みを浮かべ、何だか俺の知っている彼女ではないように感じた。
「何してるの・・・?」
そう、電話口に問いかけると
「会いに来たの」
彼女はそう言って、こちらに向かってきた。
「もしもし・・・?」
「君は、自分が何をしているのか分かってるの?」
「・・・・え・・・?」
「最近の君は異常だよ。メールだって着信だって、俺だって都合がある。仕事してる。だから出られないことの方が多い。君だってそんなくらい分かってるだろう?それに、夜中に電話なんて・・・・」
「私だって我慢しているわ。あなたに私の何が分かるの?独りであなたを待つ私の気持ちなんて・・・・!!!」
「・・・・そういうの、分かってると思ってたよ。君は、そういうのも全て受け入れてくれてると思ってたよ・・・」
彼は、大きくため息をついてこう言った。
「考えてたけど・・・俺と君は今のお互いの状況的に付き合っていくことは、無理があると思うんだ」
それって・・・・ 別れ・・・?
「俺は、君の事、本当に好きだった。放っておけなかった。いつも頑張ってる君がいじらしくて。だから、忘れようとしたけど、忘れられなくて、つい会いに行った。けど・・・俺は自分の気持ちに正直すぎたのかもしれない。正直すぎたから、今の状況に君を巻き込んでしまった・・・」
「・・・・いや・・・・ 嫌よ!」
「薫・・・」
「そんな自分勝手、許さない!!!」
彼の車が舗道に横付けされて、私は助手席側のドアに手を掛けた。
彼はいつもならこっちを見て「お疲れさん」と言ってくれるのに、前を向いたまま、表情が硬かった。
「こんばんわ」
「うん」
次に車が止まった少し郊外の公園まで、何にも話さなかった。
・・・というか、話す雰囲気では無かった。
公園の駐車場に車を止めた彼は、タバコに火をつけた。
・・・・長い沈黙の後、声を発したのは、彼だった。
「別れたいって言ったのは、本心なんだ。あれからも考えたけど、君の気持ちにはやっぱり応えられない。俺は、君の思い通りにはならない男だよ」
「・・・・」
「別れても、君から借りたお金は、きちんと返済する。今日は・・・これだけしか用意できなかったけど・・・。ありがとう。本当に感謝してる。けど、まだ全部返せなくてゴメン」
彼は車のダッシュボードから封筒を取り出し、私に手渡した。
見ると5万円が入っていた。
「・・・・全部・・・」
「・・・・え・・・?」
「全部返してよ・・・!」
「・・・・!!!」
「別れるんだったら・・・全部、耳をそろえて、今すぐ返しなさいよ!!!!」
彼女の、今まで見たこと、聞いたことのない表情と声に、俺は驚いて声を出そうにも出せなかった。
そして彼女はこう言った。
「返せないなら・・・全額今すぐ返せないなら、別れない!そんな自分勝手、私、許さないって言ったよね?それに・・・」
「こんなことしたくないけど、この事、みんなに話すことだってできるんだから!!!」
彼女の目は今の彼女なら本当に何をしでかすか分からない本気の目をしていた。
「・・・だけど、今の状況のまま、付き合って行っても、俺も、君も何にも良くはないと思う。お金は、今日はこれだけだけど、ちゃんと返す。借用書も書く。だから・・・!!!」
「あなたの・・・あなたの携帯を貸して・・・?」
「・・・!!! 何を考えてるんだ・・・???」
「決まってるじゃない?奥さんに連絡するの」
「・・・・薫・・・!!!」
「いつもの所に行って・・・?」
「え・・・?」
「聞いてくれるんでしょ?」
俺は、彼女といつも会う場所・・・hotelに車を走らせた。
着くと、彼女はタッチパネルの前に進み、手際よく部屋を選んでエレベーターのボタンを押した。
いつも俺に任せていた彼女だが、俺の前をどんどん先に進み、部屋にも先に入って行った。
「薫・・・ 俺、そんなことにはなれないよ」
「抱くの。あなたは私に従うの。従うしか無いの」
「・・・・!!!」
「でないと、私・・・」
彼女はさっき俺から奪った携帯を取り出し、操作した。
きっと自分の携帯に嫁の番号を入力したんだろう。電話を掛ける動作をした。
「うわぁ・・・・!!!!!」
俺は今まで出したことのない大きな叫び声をあげながら、彼女をベットに押し倒した。
彼女からの呼び出しや、束縛は一年近く、ほぼ毎日続いた。
あのいつも頼りなさげで、放っておけない雰囲気の彼女が、変わってしまった。
・・・というか・・・ 俺が変えてしまったんだと、思う。
身体を重ねても、心は満たされないことが解っているのに、彼女は、意地になっていたんだと思う。
何度もこんなことは止めようと言ったが、聞く耳を持たなかったし、揚句には土下座をして、
「私を独りにしないで・・・!!!」
と、言った。
お互いの精神状態も限界に達した。
それから・・・
彼女は、突然、姿を消した。
それは、彼女から借りていたお金を返す最後の日だった。
彼女は、いつもの場所には来なかった。
何時間待っても来なかった。
携帯や家に電話しても出なかった。
あんなに毎日鳴っていた着信音も、メールもぱったり無くなった。
今も・・・彼女がどうして突然姿を消したのか
わかっていない
終
レスありがとうございます。
この話は、私の知人(男)の経験談を基に私の頭の中で作ったものです。
だから、ホントにあった出来事と、私の想像や作った部分が交わり、この話が出来上がりました。
恥ずかしながら、私には想像力が乏しく、恋愛経験も乏しく(笑)、こういう修羅場チックなことを経験したことも無いので、話をふくらませることができず、最後はガッカリって感じだったと思います。
けど、たくさんの方が読んでくださっていたことはとっても嬉しかったし、感謝しています。
そして、こうして玲子さんのように、わざわざ感想を頂き、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。
今回、まだ見ていてくださってる方々も、本当にありがとうございました。
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