返信待ちの女
ステラには、好きな人がいる。
その人とメール出来る様になり、とても嬉しかった。
彼には何気ない一言でも、ステラにとっては幸せな気持ちになる。
所が‐‐
ある日、突如として
彼からのメールが途絶えた。
忙しいの?
体調不良?
怪我でもした?
そんな思いを抱えながらも、返事を待った。
だけど‥返っては来ない。
どうして?
どうして‥!?
そんな不安が膨らみ続けそれは、彼女を立ち上がらせた。
目には涙を。
心には‐ 凶器 ‐を潜ませて。
新しいレスの受付は終了しました
- 投稿制限
- スレ作成ユーザーのみ投稿可
ステラは、決して孤独な人間で無かった。
相談出来たり、バカ騒ぎしてみたり・笑い合える友達も、そこそこに居る。
恋愛経験は少ないけれど、それでも人並みの付き合いはしていたのだ。
ほんの数ヶ月前まで、交際していた人が居たものの、相手は優柔不断で煮え切らないタイプで有り ステラは、会う度に嫌気を差していた。
また、その相手も彼女のペースに着いて行けなくなり‥
2人は別れたのだ。
その後、ステラは女友達と楽しく過ごしていた。
そんな中、ちょっとした切っ掛けで知り合った男性と仲良くなる。
名前はハワード。
ステラよりも年上で、
大人な印象。
交流を重ねてく内に、彼女はハワードへの想いが大きくなった。
>> 1
‥一番、仲が良い友達に相談する。
その結果‐‐
勇気を出し気持ちを伝える事となった。
胸が爆発しそうな位に。
周囲に心臓の音が聞こえそうな位に。
“緊張”
と言う言葉だけでは済まない程の心境だった。
ステラが携帯を手に取った時の事‐‐。
メールの着信が鳴り響く。
ハワードからだ。
取り敢えず、彼女は受信ボタンを押して中身を読む。
そこには
思っても無かった言葉が綴られていた。
《 昨日はメールありがとう。
ステラと知り合えて、良かったと思える程 楽しい!
これからも仲良くして行きたい位、好きになってるよ。》
本心なのか‥
社交辞令なのか‥
分からない。
それでも、ステラは嬉しかった。
自分が想ってる人からのメッセージ。
心に温かみが広がる様な気持ち。
本当に
本当に‥
幸せな気分になる。
>> 2
‥ ハワードは、どちらかと言えばマメな方かも知れない。
それとも、今まで付き合って来た男の人がメールよりも電話。
メールは必要な時だけの連絡手段。
そこ迄の考えは無くても、メール自体が苦手。
‐‐と言う人ばかりだったから、そう思えるのか‐‐
とにかく よくメールをくれた。
たまに期間が空く時も有ったが、せいぜい3日か4日程度だったし
お互いに送り合う回数も 頻繁では無く、まぁまぁそれぞれが負担にならない程度のもの。
ステラがメールを出せば、必ず返してくれる。
ちょっとした悩みを打ち明ければ、優しい言葉と共にアドバイスもしてくれる。
時には、下系の話も冗談と軽いノリで互いに楽しく交わし合っていた。
毎回とは行かないが、ハワードは大概のメールに
“好き”
“愛してる”
そう入れてくれていた。
>> 3
‥ 最初は、大好きなハワードとメール出来るだけでも充分だと思っていた。
住んでいる所も、お互い遠く離れている事。
彼は仕事を持っていて、ステラ自身も働いていた事。
つまり会いたくても、そう簡単には会える訳じゃない。
コミュニケーション・ツールはメールが主となっていたのだ。
遣り取りして行く内に、ハワードを好きになって行くステラ。
こうして月日が経つ毎に、気持ちにも変化が出始める。
(ハワードは本当に、私を好きで居てくれてるのかな。
私の気持ちは、本物だけど‥彼は実際の所どうなんだろう?)
知りたくて。
知りたくて。
でも聞けない。
聞くのが怖い。
もしもハワードの言葉が、表面的なものだったら‥
気持ちを確かめた事で、引かれてしまうかも知れないから。
>> 4
‥ そんな不確かな心を持っていても、やっぱり ハワードからメールが届くだけで嬉しくなってしまう。
ステラは、素直に自分の気持ちを書いて送る。
《ハワードがメールを、くれる度に嬉しくなるし“好き”って言われると 幸せな気分になれる!
私もね、ハワードの事が大好きだから》
そう‥。
表面的な気持ちでは無くて
【 素直に 】
想いを書いて。
ハワードから返信が来た。
《ありがとう!
俺もステラからのメールは嬉しい。
仕事も頑張れるんだ。
大好きだよ》
相変わらず彼女は、大喜び。
人から見れば滑稽だろうがステラは、またまた幸せ気分に浸ってしまう。
だけど肝心な事。
その言葉が本心かどうか迄、読み取れない。
そこでステラは、再び携帯を取り画面を開く。
そして‐検索‐
恋愛に関するサイトを探し、自分に合ってる(知りたい事が)より多く載っている占いを見付けた。
>> 5
‥ 相手の生年月日と自分の生年月日を入力。
血液型に出生地も。
先ず、2人の相性を占ってみた。
結果‐
普通で有ったが、悪くは無いと書かれてた為に
ステラは少し安堵感を覚える。
次に“相手の本心”を、見る事にした。
本心なんて、彼自身にしか分からないものなのに‥。
だけどステラには、そんな単純で簡単な事にすら気付かない。
もう取り留め無い不安や思いが、胸を占め過ぎていたからだ。
*******
その占い項目をクリック。
すると怪し気なイラストが描かれたカードが登場。
適当な場所または直感で決めた位置にカーソルを合わせて、決定ボタンを押す。
(一体どんな結果が出るのだろう)
期待半分・不安半分。
占い結果は僅か数秒で、答えが出る。
ドキドキしながら、それに目を向けた‥。
>> 6
‥ ‐結果‐
彼が貴女に、好意を持っている事は確かでしょう。但し それが本心から来るものとは限りません。
もっと貴女と連絡を取り合い、自然な形で親しくなって行きたいと感じている様です。
‐本心とは限らない‐
結果内に書かれて有り、少々ガッカリしてしまったステラだったが、それ以外の内容に元気を取り戻す。
‐好意を持っている‐
‐連絡を取り合いたい‐
‐親しくなって行きたい‐
(そうよ。嫌われてる訳じゃ無いんだ。
これから又、交流を深めてけば良いだけ)
と考えた。
そして、もう一度ハワードからのメールを読み直す。
応援メッセージでも無いのに‥
(明日から又がんばろう!)
と言う前向きな気持ちにもなれた。
(本当に‥
ずっとずっと、こんな風にして仲良くして行きたいな)
そう願う。
強く
強く
強く‥。
>> 7
‥ 翌朝、ステラは時間通りに起きる。
(あぁ~。もう少し寝ていたい)
(このまま時間が止まって、好きなだけ眠れたら良いのに)
(今日が休日だったらなぁ‐)
なんて‥考えるだけ無駄な思いを持ちつつ、着替えてキッチンへ向かった。
一人で暮らしているから、食事も簡単な物だ。
トーストにサラダ、コーヒー。
テレビを見ながら口に運ぶ。
人気アーティストのアルバムが発売されると流れて来た。
ステラも好きなので、ちょっと嬉しくなる。
(〇日に発売なら‥会社帰りに買って帰ろうかな。でも人気あるし、直ぐ売り切れそうだから予約しておこう)
と思い、天気予報のチェックをして食器の後片付け・洗顔・メイク。
これも、普段と変わらぬ行動。
慌ただしく出勤するのが嫌なので、少し時間に余裕を持たせていた。
>> 8
‥ メイクも終了。洗濯物も干し終わってから、また ちょっと一息。
時計を見て
(そろそろ行かなきゃ)
そう思いソファーから立ち上がり掛けた時に、メール着信。
ハワードから。
(この時間に?
何だろ?珍しいな)
携帯の画面を開いた。
《おはよう!
朝早くに御免。
この間
“週明けの仕事は必ず残業になる”
ってメールくれてたよね。
ステラの事だから、頑張ると思うけど無理ない様 程々に。
俺は、いつも応援したい気持ちで居るから❤
今日も愛してるよ!》
毎週月曜日‥一週間の中で、一番キライな曜日。気分的に憂鬱な曜日。
別に、何か言って欲しくて週明けの仕事の話をしてた訳じゃない。
確か取り留めない内容のメールをしていた時、
会話の流れで伝えたもの。
送ったステラ本人でさえ、忘れかけてた位だ。
>> 10
‥職場に着いて、周囲と挨拶を交わす。
自分のデスクへ向かう時に、距離は離れていたが上司の姿が見えた。
何が遭ったのか知らないけど、朝から御機嫌ななめムードを漂わせている。
(うわ~!最悪)
心の中で思う。
この上司は、自分の機嫌が悪いと そこら中で八つ当たりを炸裂させるのだ。
それでも全員同じ様に、当たり散らすので無くて 気に入ってる人には、普通の態度か優しく接する。
しかし、そうでも無い者には とことん追い詰めるかの様に八つ当たりをするのだ。
ステラは後者だった。
会社で波風を立てたく無くて、余計な事を言わぬ様に‥と言う考え方で、出来る限り 大人しくしていたのが仇になったのと、単に上司の好みのタイプじゃ無いと言った理由が原因。
だからと言って、何かの意見を求められ言葉遣いに気を付けて、話しても嫌味が返って来る。
そんな上司の好みのタイプになろう!努力しょう!
‥なんて思えない。
ステラも、上司が嫌いだった。
>> 12
‥しかし、今日は運が悪かったのか・・その仲間は外回りに出ていたり、違う部署から応援依頼が来た為、そちらへ1日だけ行く事になってた人も居れば、風邪で休んだ者‥‥他にも様々な事情で、ステラがいる職場(部署)から離れていたのだ。
つまり、彼女の味方となってくれる者や共感者達が居ない中で今日1日、働かないとならない訳だ。
(今日だけ‥。
今日だけの話だもの。
明日には皆、戻って来るんだから!)
と自分で自分を励ます様、心に言い聞かせた。
(此処には、仕事をしに来てるんだから精一杯がんばろう)
そんな風にも考えて、ミスの無い様に。
なるべく早く・的確に!
懸命に働いた。
しかし、上司はステラの やる事・なす事、全てにケチを付けて“努力”を、ことごとく踏みにじる。
お気に入りの子が、大きなミスをしても
『間違いは誰でも有るからな』
笑顔で済ます。
なのに一つのミスも無し。無駄口すらしないステラには粗を探してでも嫌味を言う。
>> 13
‥(こんなの今に始まった事じゃない。
落ち込む時間が勿体無い位よ!)
また自分に言い聞かせる。
しかし、仕事上とは違う話題で
“無神経な発言”
“暴言”
“嫌味”
それらを、自分1人にだけ言われ続けると胸が痛んで来た。
黙って無いで、言葉を返したって余計反撃され、また何かの折に それを持ち出されるであろう。相手に、今後の八つ当たり材料を与えるだけ。
だから、グッと堪える。でもステラは聖人で無い。
ここ迄 当たられて、穏やかな気持ちで受け止められず‥
(男のくせにネチネチ‥。自分が居ないと、私が困るとでも言いた気な事ばっかり言うんだから!
困惑するどころか、アンタが1日会社に来ないだけで、どれだけ平和な事か!)
と本気で思っていたのだ。
>> 14
‥やっと残業が終わり、会社を出ると開放感に満たされる。
家に帰り、ソファーに身を投げ出し鞄から携帯を取り出した。
仲良しの友達からのメールを読み、返信。
‥‥
いつもだったら、その子に理不尽な怒りや愚痴を聞いて貰ってるし 友達も又ステラに愚痴を零す時が有るのだ。
だけど今日は、会社で起きた事を伝え無かった。
ハワードに聞いて貰いたくなったのだ。
上司も男。
男の心は、やっぱり同じ男が一番よく理解するものだろう。
ひょっとしたら、ターゲットを決めて八つ当たりをする心境も彼なら、分かるかも知れない。
時計に目を向ける。
(22時か‥。
ちょっと、悩みや愚痴を聞いて貰うにしては遅い時間かな。
明日は早目に帰れるし、その時に送ろう)
携帯を閉じて、体を起こしバスルームへと向かった。
>> 15
‥一時間ほどして、ステラはナイトウェアーに着替えて、また携帯を手にする。
(充電しなきゃ‥)
今日は、精神的に疲れて夕食も食べて無い。
食べたいとも思わなかった。
だから、髪を乾かし肌の手入れを済ませれば寝るつもりでいたのだ。
(あれ?メールだわ)
入浴中に来ていたのだろう。
メールのアイコン表示を確認して、それを開く。
《 残業お疲れ!
もう帰ってるのかな?
無理するなよ。
今夜は、ゆっくり休んで。》
(ハワード!!!)
今朝も、そうだったけど今も この時間に連絡が来るなんて思わなかった。
仕事は、本当に疲れていたけれど それが飛んで行く様な気分だ。
明日する筈だったメールに返信した。
でも、時間を考えて短めに。
《朝も今もメールありがとう。
嬉しくって仕方ないよ!
残業‥と言うより、今日はね1日中・辛かった。
けど、また明日から頑張ろうと思ってるの》
と書いて。
>> 16
‥翌日。
いつもの様に起きて、朝食・後片付け・身支度をする。
今日は雨。
洗濯物を干さずに会社へ出勤。
職場までは、最寄りの駅から2駅+バスで1区間と、近からず遠からずの場所にある。
車も持っているが、道が混んでしまうので公共機関を利用していた。
‐電車待ち‐。
(今日は、奴〈上司〉の機嫌どうだろう‥。
あ~あ!
何で、あんなのが
“部長”になれたんだろ?
就任させた輩が、先ず理解出来ない)
朝から考えたくも無いけど、どうしても嫌悪感で一杯になって行く。
そんな時に鳴るメール着信音。
この曲は‥!
そう。ハワードから。
直ぐに携帯を開く。
《おはよう!
ステラ。昨夜のメール、今見たんだけど。
何か遭った!?
俺で良かったら話してみて。
力になりたいんだ》
優しい
優しい言葉。
涙が出そうになる。
大好きなハワード‥。
>> 17
‥直ぐに返信するステラ。
《おはよう!
気にしてくれて有り難うね。
仕事が終わったらメールするので、その時にでも良かったら聞いて(読んで)ね》
送信。
******
その日は、特に問題も無く無事に仕事を済ませる事が出来た。
しかし、朝から降り続いていた雨は時間が経つ毎に激しさを増して、帰る頃にはドシャ降りになっていたのだ。
『ステラ。
私の車に乗って良いよ!
送ってあげる』
職場仲間の1人からの言葉。
『いいの?じゃあ、そうさせて貰うね。
どうも有り難う』
御礼を言い、車に乗り込む。
車内では、上司への不平不満トークで盛り上がった。
お互いに口が堅いので、安心して話せる。
その途中でメール着信。
>> 19
‥『ううん。違うよ。
友達から。
ビリー(旦那の名前)は 私から連絡しないと、返して来ない。
自分から送って来たとしても、用事が無いと出して来る事ないわ。
電話も似た様なもんね』
とステラ。
『あ‐!
分かる。分かる!!
私は、まだ結婚して無いけど 彼がそんな感じ。
メールを出しても、なかなか返って来ないしさ。
頭に来る位、待った時も有るの。
“忙しい”のは分かる。でも、メールを打つのなんて5分あれば充分でしょ。
つい、そんな怒りをぶつけた事も有るんだ。
そしたら‐
オレにとっては、用件以外の話しに文章を考えたり、打ったりするのは時間が掛かるんだよ。
大体、もっとメール欲しいって言うけど、直ぐに出さないとならない事
(話し)でも無いだろ
‥とか言われてね。
喧嘩になった事あるよ。
一回じゃ無く、何度か繰り返してる内に段々と
分かって来た事はね
>> 20
‥彼にメールの返事を、期待しない事!
忙しい時は、ほんの数分でも別の事に手が付けられない!
って思う様にしたの。
本心は、今でもメールぐらい たった一言だったら打てる筈だって気持ちあるんだけどね。
“待つ”のが、どれだけモヤモヤするのか‥
理解し難いみたいだし』
メイ(会社仲間の名前)が、運転しながら話した。
『そうよね。
気が付いたら、こっちばかりメールを送ったり
電話したり。
たまには、向こうからも連絡して欲しいよね。
用件だけじゃ無くて。
でも男の人には、その気持ちが分からないって所が、理解できないな。
私は。』
と答える。
ついさっき迄は、上司の話題が満載だったのに、今は“メール”“電話”“連絡”“する”“しない(して来ない)”の話しに花が咲いていた。
ステラは、メイにハワードの事を伝えて居ない。
どんなに仲良しでも、職場の人間には何処か一線を引いてしまうから。
彼との事を知っているのは、ステラの親友だけ。
>> 21
‥やがて、彼女の家の前に車が到着した。
『送ってくれて有り難う。色々、話せて楽しかった』
御礼を言い、メイと別れた。
*******
家に入り、寛ぎながら
またハワードの事を考える。
夫・ビリーとの比較。
(ハワードは、メールを自分からも送ってくれる。
話しも聞いてくれるし、用件以外の話題も有るわ。)
そして
‥過去‥
他の人との恋愛も思い出して行った。
(みんな、みんな連絡は私からばっかりだったな‥)
ますます、ハワードに好印象を持つ。
‐ビリーが居ながら、違う人へ想いを寄せる。
でも、彼だけじゃ無く
他の人とも体の関係は一切もたなかった。
いや・・ステラの性格上・持て無かったのだ。
彼女は、携帯を手にした。
昨日あった上司からの八つ当たり。
上司への気持ち。
会社自体への事や仲間の事。
簡潔に書くつもりだったのに、感情が入り込み長くなっていく。
(ハワードなら‥
ハワードなら
私の気持ちを分かってくれる)
>> 22
‥メールを打ち終えて、部屋を何気なく見渡す。
そして、漠然と思いを起こした。
結婚する前から、ビリーの仕事は出張が多くて
時に海外への勤務も有る事は承知済みだったのだ。
でも好きだったから、一緒に暮らしたいと思ったし、ビリーも
『仕事先・出張先から戻った時には、自分の両親や兄弟がいるよりも・一人暮らしの味気ない部屋へ帰るよりも‥‥ステラが居てくれる方がいい』
と言って、キスしてくれた。
今、思えば あの頃が一番の幸せだったのかも知れない。
まだ結婚に対する
“憧れ”“夢”“希望”が、心を支えてくれてた気がする。
式を挙げて、ハネムーンに行き そして新居へ。
夫婦となり、些細な喧嘩もしたが 大きな問題になる程じゃない。
よく有る事。
ビリーも出張が多いとは言え、仕事が終われば直ぐにステラの元へ帰って来る。
その日の夜は、必ず夫婦の営みを交わし愛情を感じて‥。
ビリーは浮気も不倫も、しない男。そして優しい。
生活費も入れてくれるし 家計もステラが握る。
悪くない家庭。
世間から見れば‥。
>> 23
‥出張が多いビリーでも、365日どこかへ行ってるのでは無い。
仕事によって、一般家庭の様に会社で働き帰宅する時も有る。
今日が、その日だ。
出張先から会社へ向かい、仕事して帰って来る。
新婚当初は、寂しい思いをした時も有るけれど
自分も働いてる事や、他の男性と電話で話したり、お茶だけでもしたり‥で気を紛らわしていた。
勿論、女友達との付き合いも放っておかず良好だ。
結婚後‥
1年‥
2年‥
そして3年目。
もうステラには、ビリーに対して “寂しい”
感情が薄れていた。
“慣れ”の様なものかも知れない。
今、彼女が楽しみにして待っているのは・・
夫の帰宅じゃない。
ハワードからの返信。
>> 24
‥ステラは立ち上がり、冷蔵庫を開けて夕飯の支度に取り掛かる。
結婚して間もない時期は、短期・長期に関わらず出張からビリーから帰って来るのが、楽しみだったりしたものである。
また出張が無く、会社へ行き・その日の内に帰宅する時も‥ごくごく当たり前の事なのに嬉しく思った時期だって有った。
しかし、月日・年月(と言っても3年だが)経つ現在(いま)となれば、ほぼ一人暮らしをしている様な状態が続いていたせいか、その“気楽さ”を日々 味わい・ビリーの帰宅を少々 億劫に思う様になっていたのだ。
(私、一人だったら食事も簡単に済ませられるのにな‥)
鶏肉を取り出しながら思う。
別に、料理に手が込んでないからと言って、ビリーは文句も言わないし
特に何も思わないだろう。
夫は、そんな人間だから。
でも‥それで、本当に
お惣菜とかインスタントの様な簡単すぎる物を出すのは、何故だか気が引けてしまう。
>> 25
‥料理を作りながら、今度は又ハワードの事を考えていた。
彼も結婚をしていて、家庭を持っている。
メールの遣り取りの中で 滅多にハワードが自分の家族の話題をする事は無い。
最初の頃、奥さんと子供さんを連れて遊園地に行って来た‐‐とか言う様な内容の話が有った位だ。
夫婦仲の事‥
家庭内の事‥
“気にならない”と言えば嘘になる。
でも、会った事も無くて 電話番号の交換もして居ない・当然、付き合ってる訳でも無い自分が、アレコレ聞くのも良く無いから、黙っていた。
メールだけの交流。
他人から見れば、ちっぽけな・・薄い付き合い。
しかしステラには、大切な絆で壊したくないものだ。
(隣の芝生は‥って言うし、家庭なんて中に入ってみなきゃ分からない事も有るけど・・
ハワードの奥さんが羨ましいなぁ。
いいな!
幸せだろうな)
そんな風に思っていた。
>> 26
‥これ迄の遣り取りで、彼はハッキリと言って来ないが、大体の内容・話しの流れで ステラは、こう見受けていた。
仕事に精を出していて、収入も沢山ある。
家の大きさ迄は分からないけど、一戸建てに暮らしている様だ。
休日は、家族サービスをしている様子。
優しくって頼り甲斐が有ってマメ。
(‥その上、子供にまで恵まれて。
ハワードの奥さんは、贅沢だな。
いいなぁ。
いいなぁ)
と羨む。
だが、別に嫉妬心は無いのだ。
彼と不倫に走っていない為なのか‥分からないけれど。
*********
全ての話しが嘘とまで、行かなくとも‐
メールだけなら、誰だって何とでも言える。
だから、そう言う付き合いならば・話題も半々にして受け止めておく位で、丁度いいのに。
いつしか、ステラは
ハワードの言葉を全て信じ始めていて‥
心が壊れて行く。
>> 28
‥夕食時
会話の中、ビリーが一週間ほど 会社勤務で出張は無いと言った。
そして、その後に続いた言葉。
『今週末、実家へ帰ろうと思うからステラも一緒にな』
‥
『え?
そう‥。そうね』
と答えたものの、彼女の心は暗雲が立ち込めて
嫌な‐‐
嫌な気持ちになった。
“実家”は、ビリーの生まれ育った家。
夫にしてみれば、そこに行って寝ようが転がろうが自由きまま。
だけど、ステラにとっては
“他人の家”
ビリーと同じ様には出来ない。
気を遣う。
気疲れ。
気の張り
しんどい‥。
(あ‐!
嫌だ。嫌だ!!!
行きたくない!)
彼女は胸中で、叫び声を上げる。
まだ、ビリーがステラの実家へ同じ様な頻度で、顔を出してるなら 話しは違うけど、そうじゃない。
>> 29
‥ビリーが、ステラの実家へ行くのは年に一度。
でも、ステラが夫の実家へ連行されるのはビリーの出張が一段落する度。
どう計算してみても、
月に一度‥
(出張が長引いたとしたって)
2ヶ月に一度‥
は確実。
とっても理不尽な気がする。
以前、ステラも同じ様に同じ頻度でビリーを自分の実家に連れてこう‥と考えた時がある。
そうすれば、夫だって
相手側の実家は どんなに“負担”に感じるか分かるだろう。
そう思ったから。
しかし、そんなに甘くなかった。
ビリーの両親は、2人が来ると‥
少しでも長く、長く、長く家に引き止めるのだ。
お昼前から夕食時・・
後片付けの手伝いを含めて、1日の大半 夫の実家で過ごす嫁の心境。
どんなに苦痛で長い事か!!
世間には、義理の実家でも 自分の家族の様に気兼ね無く過ごす妻もいるが、ステラは そんな風に出来ない方だった。
正直な所、ビリーの実家が有る地域へ入っただけで、大きな溜め息が出てしまいそうになる位だったのだ。
>> 30
‥話しが逸れてしまったが、本当ならビリーの実家へ行った後 その帰りにステラの実家に向かう予定だった。
しかし、相手の両親が長々と引き止める為、その分 彼女の実家に帰る時間も遅くなる。
ビリーは、そんな状況でもヘラヘラ笑ってるか、何も言わない。
ステラの立場(嫁)から
『もう帰ろう』
なんて言える筈も無く。
‥やっと、ビリーが腰を上げて実家から出る時は 夜も少々おそく、ステラの実家に着いても お茶をして一時間内には、自宅へ帰る。
そんな事が、数回あった為・次第に彼女の実家へ行く時は、年に一度。
その日ぐらい、ゆっくりする‥程度だ。
それでも昼食を一緒に取り、ほんの一時間弱 滞在するだけで帰宅。
ビリーも、ステラの実家には気を遣うのだろう。
それは分かる。
でも、自分の実家には
彼女を1日の大半・一緒に居させといて、何で
此方の実家には ほんの数時間で帰ろうとするのか。
身勝手としか思えない。
(ハワードなら、きっと こんな事しないわ)
そう“思い込んだ”
何の確信も無いのに。
>> 31
‥食事を終えて、後片付けをする。
その間にビリーはバスルームへ。
‐‐メールの着信音が鳴った。
ステラは、直ぐに携帯へ駆け寄る。
ハワードから貰ったメールの内容は、上司の事で悩んでいたステラに、対しての気持ちを汲み取った上で対処法も書かれてあった。
そして最後には、こんなメッセージが加えられていたのだ。
《いつも力になりたいと思ってるよ。
ステラを、心から愛してるからね》
この言葉だけで、抱えている様々な重荷が軽くなってしまう
‥‥様な気持ちになる。
あくまでも
“そんな気がするだけ”
しかしステラ自身は、その事に気付かない。
心に根強く残っている、‐根本的な問題‐から
ハワードが伝える優しい言葉に逃げてるだけなのに‥。
*****
早速、御礼のメールを送信して再びキッチンへ向かう。
食器を全部、洗い終えて シンクの周りを拭いているとビリーが バスルームから出て来た。
>> 33
‥「セクシーな下着が有ったろ?
それを着てる姿を見たい」
「ん‥。分かった」
そう受け答えをし、ステラは一旦 二階にある部屋に行った。
クローゼットからランジェリーを取り出す。
仕事やプライベート等では、動き易くシンプルだけど可愛い物を身に着ける事が多い。
だけど、今 彼女が手にしている下着は それらとは 全くイメージが違うものだ。
艶っぽい‥
‐大人の女‐
の様なイメージ。
そしてナイトウェアーも取り出した。
こちらは、真っ白で清楚な感じだ。
ワンピース型で前にジッパーが付いてある。
‐‐大人しそうで、控えめに見えていて‐‐‐
その内面‐気性‐は異なる。
ステラの“性質”そのものを表したかの様な‥
‐ 夜の姿 ‐
‐‐‐‐‐。
>> 35
‥ビリーが好きな姿。
長くてサラサラの、ブロンドヘアーを揺らし‥
ビリーが好きな飲み物を手にして、
ビリーが好きな演出をして‥
寝室へ向かう。
扉を開けて、ベットまで行くとビリーが眠っていたので、ステラは少し揺り起こした。
「う~ん。
やっぱり、今夜は疲れたから寝るよ」
彼はステラの姿や演出など、ロクに見もせず 再びベットに潜り込んだ。
(何それ?)
(何なの!?)
(自分から誘っておいて!!)
彼女は
“ビリーが好きな事”
を全て行った。
(私だって仕事と家事で疲れてるのに)
そんな気持ちにもなる。
しかし、その反面
(‥誘われたからと言っても、ビリーは出張帰り。
だから、こうなっても仕方ない。
断らなかった、私にも思いやりが無かったな‥)
とも感じていたものの‐‐‐
やっぱり心の何処かでは納得出来ない自分も居た。
(この寒い中、こんな格好までして!
こんな演出までしたのに!!
私バカみたい‥!)
何とも言えぬ心境が渦を巻き、寝室を出る。
新しいレスの受付は終了しました
お知らせ
小説・エッセイ掲示板のスレ一覧
ウェブ小説家デビューをしてみませんか? 私小説やエッセイから、本格派の小説など、自分の作品をミクルで公開してみよう。※時に未完で終わってしまうことはありますが、読者のためにも、できる限り完結させるようにしましょう。
- レス新
- 人気
- スレ新
- レス少
- 閲覧専用のスレを見る
-
-
わたしはあなたたちがきらい5レス 146HIT 瑠璃姫 (10代 ♀)
-
勉強する皆、すとぷり、アイドリッシュセブン、嵐0レス 40HIT 小説好きさん
-
満員電車とアタシとイケメン痴漢43レス 1611HIT 修行中さん
-
君は私のマイキー、君は俺のアイドル9レス 197HIT ライターさん
-
タイムマシン鏡の世界9レス 234HIT なかお (60代 ♂)
-
満員電車とアタシとイケメン痴漢
ん?… あの会社…ブラック?… インターネットの口コミを見…(修行中さん0)
43レス 1611HIT 修行中さん -
神社仏閣珍道中・改
私どもの神社仏閣巡りも、最初はやみくもにあちらのお寺さん、こちらの神社…(旅人さん0)
359レス 12289HIT 旅人さん -
私の煌めきに魅せられて
「はい、あげる。じゃ、私いくから」 私はオフィスを出た。だが 「鈍…(瑠璃姫)
84レス 1068HIT 瑠璃姫 -
わたしはあなたたちがきらい
こっそり充電するために電気を使わせてもらっていた。 いやでもほんと、…(瑠璃姫)
5レス 146HIT 瑠璃姫 (10代 ♀) -
北進
酉肉威張ってセクハラ(作家志望さん0)
26レス 570HIT 作家志望さん
-
-
-
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②4レス 151HIT 小説好きさん
-
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?11レス 168HIT 永遠の3歳
-
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令1レス 204HIT 小説家さん
-
閲覧専用
また貴方と逢えるのなら16レス 487HIT 読者さん
-
閲覧専用
今を生きる意味78レス 539HIT 旅人さん
-
閲覧専用
また貴方と逢えるのなら
『貴方はなぜ私の中に入ったの?』 『君が寂しそうだったから。』 『…(読者さん0)
16レス 487HIT 読者さん -
閲覧専用
🌊鯨の唄🌊②
母鯨とともに… 北から南に旅をつづけながら… …(小説好きさん0)
4レス 151HIT 小説好きさん -
閲覧専用
人間合格👤🙆,,,?
皆キョトンとしていたが、自我を取り戻すと、わあっと歓声が上がった。 …(永遠の3歳)
11レス 168HIT 永遠の3歳 -
閲覧専用
酉肉威張ってマスク禁止令
了解致しました!(小説好きさん1)
1レス 204HIT 小説家さん -
閲覧専用
おっさんエッセイ劇場です✨🙋🎶❤。
ロシア敗戦濃厚劇場です✨🙋。 ロシアは軍服、防弾チョッキは支給す…(檄❗王道劇場です)
57レス 1430HIT 檄❗王道劇場です
-
閲覧専用
サブ掲示板
注目の話題
-
不倫相手を忘れらず、家庭に向き合えません
昨年から今年の1月まで社内不倫をしていました。妻にバレてから会社を辞めましたが、彼女のことが忘れられ…
20レス 1043HIT しゅん (30代 男性 ) -
父の日のプレゼントまだ決まってない…
6月16日は父の日ですね、皆さんはお父様に恩返しする事は決まりましたか? 私は最近忙しくて父の日の…
22レス 274HIT 東雲絵名 (20代 女性 ) -
友人に裏切られ、どう対応して良いのか分かりません。
大切な友人に裏切られました。 ショックで食事も喉を通りません。 涙ばかり出て、1日塞ぎこんでいま…
8レス 261HIT 匿名さん -
付き合ってもないのに嫉妬する人って何?
男女問わず付き合ってもないのに嫉妬する人っていますよね? ちょっと他の異性に親切にしただけで不機嫌…
10レス 247HIT 恋愛好きさん (20代 男性 ) -
駅でおかしな人に遭遇
朝から駅で気持ち悪い出来事がありました。 駅のイスに座っていて、しばらくしたら男性が近くに座り…
8レス 208HIT 気になるさん -
近所の家が出入り激しい ドンドンカラカラ
今の家に引っ越してきて2年くらいになるんですが、家が密集してて音や話し声が響きます。 それはいいん…
7レス 184HIT おしゃべり好きさん - もっと見る