生きる意味2

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2016/04/19 00:03(更新日時)

生きる意味の続きです。


更新も遅くダラダラと書いてる文章ですが良かった前回に続きよろしくお願いします🙇


いつも読んでくれてる皆様へ✨

生きる意味2になりました。長くてごめんなさい💦なるべく更新頑張って早く完結頑張りますので最後までお付き頂ければ嬉しいです😃
また感想レスにもコメント頂ければ嬉しいです✨

No.1450926 (スレ作成日時)

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No.117

完結できないまま放置してごめんなさい。
感想スレの方にレスをもらい勇気を出してきました。

こんなに長い間放置していたのに覚えていてくれてレスくれるここの皆様に感謝しています。
そして、ほったらかしのままですみませんでした。
最後まで書きたかったけどこんな無責任な私にその資格はありません。
閉鎖、削除しようかとも考えてます。

本当に無責任でごめんなさい。

No.116

付き合いが1年を過ぎたあたりから月1回くらい香取さんは週末泊まっていった。
優心達が香取さんにお泊まりの要求をするのだった…(笑)



その頃にはあたし達は香取さんの事をよっちゃんと呼んでいた。



よっちゃんが泊まりに来て優心達と一緒に寝た後に一人とてつもない不安が襲う。



幸せなら幸せなほどそれは余計に…



起きてたらネガティブな事ばっかり考えてしまってダメだ…
そう思い眠剤をのんで寝ようと思った。それでもこの日は寝れず缶ビールも飲んだ。


あたしはフラフラしながら気持ち良く眠った。

No.115

しばらくは本当に幸せだった。



贅沢は出来ないけれど3人で本当にあたしが憧れていた普通の生活を送っていた。



朝ご飯を3人で食べて保育園送って仕事行って…夕方お迎えに行き買い物をして、お風呂に入って温かいご飯を3人で色々話しながら食べて、温かい布団で一緒に寝る。
週末は公園やショッピングに出掛けたり…



こんなごく普通な事が幸せなんて…



普通の人には理解出来ない事だったと思う。



やはり母や義父と絶縁して良かった…



そう思う反面



この幸せがいつまで続くのか…


血のつながった母を見捨てた報いがいつか必ず降りかかるんじゃないだろうか…


そんな不安は尽きなかった。

No.114

香取さんと付き合ってから週末は優心達を連れて遊びに行く事が多くなった。



公園だったり、ショッピングモールだったり、ドライブだったり。



2回に1回は西山さんと美月も一緒に(笑)



この人達のおかげであたしは
優心達から父親を奪ってしまった…
という罪悪感が薄れていた。



美月はハルよりも大きな愛で優心達を包んでくれたからだ。



みんなの愛情のおかげで優心達もまっすぐ素直に成長してくれた。

No.113

香取さんは付き合う前にこう言った。



【優ちゃんの事も優心達の事も大好きやけど、正直子供とあまり接した事がないから接し方が分からない。でも自分なりにそれを見つけていこうと思ってる。もし優心達と接してる中でそれは違うよって事は教え欲しい。】



あたしは素直で正直な人だなぁって思った。



取って付けたようにあたしにいい印象を与えるだけの為に優心達をちやほやしても子供は本能で感じるとる。



子供ってやっぱすごい。

No.112

西山さんと美月が仲を取り持ってくれ香取さんとお付き合いする事になった。



義父やハルの事で男なんてこりごりしてたのに…


自分でも勝手な女だなぁ…



懲りない女だなぁ…


そう思った。




香取さんはあたしより一回り年上だった。無口だけど優しく年上だけど母性本能がくすぐられる…そんなタイプだった。


何より香取さんと付き合うと決めたのは優心達を大事にしてくれた事。



それは、付き合う前も付き合った後も変わらなかった。



正直離婚してから会社の人や昔のお客様など何人か告白された。

どの人もみんな取って付けたように優心達の事を大事にするから!自分の子供だ!…そう言った。



あたしは何故か軽々しく言われる事が信用出来なかった。

No.111

それから3人組は少しだけ大人しくなった。

少しだけね(笑)



会社で色々あったけれど私生活の方も色々変わっていた。



美月は西山さんと付き合いラブラブ全開だった♪



西山さんはかなり美月に惚れていて凄く大切にしてくれた。あたしは自分の事のように凄く嬉しかった。



そしてあたしも…

No.110

結局、坂本は奥様を選んだ。


当たり前だけど失いそうになってから大切だったと気付くなら何故その前に気付いくれないのだろう…



そうすれば誰も傷つかなくて済むのに。



田中は納得いかないのかずっと文句を言っていた。



『なんで!?私の方が好きじゃなかったの?嘘つき!!』



専務は凄い怖い顔をして



『いい加減にしろ!これ以上騒ぐならもう来なくていいぞ!それが嫌なら悔い改めてキチンと仕事をしろ!』



『坂本!お前も二度と奥さんや家族を泣かす事をするなよ!次こんな騒ぎを起こしたらクビだからな!』



坂本は立ち上がり

『もちろん分かっています!これから一生懸命に働かせて頂きます!!』



そう言って奥様共々、頭を下げた。




あたしにも坂本と奥様は頭を下げてくれた。



田中だけがふてくされた態度のままだった。

No.109

その言葉を聞き、田中は立ち上がり


『何を!何であんたにそんな失礼な事言われなきゃいけないの!!』



どーして浮気女って自分は失礼な事するくせに
自分がされたり言われたりしたら猛烈に怒るんだろう…



謎だ…



そんな事を1人冷静に考えてた。



『まぁまぁ…落ち着いて…話ししょうよ…』



情けない声で坂本は言った。



『田中さん、あなたどうしたいの?この人と一緒になりたいの?』




『もちろんです!奥さんさえ別れてくれたらすぐにでも結婚しますよ!』




『ちょっ…ちょっと待ってくれ!俺は妻とは別れないから!別れるなら田中くんと別れるよ!!』



『何言ってんの!?奥さんとは別れて私と結婚したいって言ったでしょ!』



3人で話している間、あたしは専務と黙って話しを聞いていた。

No.108

『失礼します…』



少し怯えながら田中が入ってきた。



『そこに座って。
何で呼ばれたか分かってるだろ?』



『………………。』



専務の問いかけに黙る田中。




『あたなが主人の愛人ですか?』



落ち着き毅然とした態度で奥様は話した。




『何の事ですか?言ってる事が分かりません。』



始めこそシラを切ろうとしていたが持ち前の非常識さですぐに開き直った。



『バレちゃいました?』



悪びれず笑う田中に同じ女として嫌悪感が湧いた。




『じゃあ、電話もあなた?優さんのせいにして?』



奥様の問いかけに



『そう!すぐばれちゃったか~』



『初めは信じたけど優さんと話してて違うって分かったわ。そしてあなたが来てすぐに愛人って分かったの。あなたはその程度のレベルよね』




うっすら笑いなら淡々と話す奥様にあたしはゾクッとした。
怖い訳じゃなく、凄い…妻の貫禄と言うか何とも言えない感情だった。

No.107

諦めたように坂本は不倫相手の名前を口にした。



『田中さんです…』



やっぱり3人組のリーダーだった。



専務は応接間の電話から内線で
『田中を呼べ!』

少し怒ってるかのように言った。



『多分…奥様に私と不倫してると電話したのは田中さんだと思います。
あの人は私の事をかなり嫌っているので…陥れようとしたと直感で思いました。』



あたしの話しに奥さんは頷きながら



『あなたみたいな勝手な男そのくらいの女しか相手にしないわよ』



そう言い放った。



その時



応接間のドアがノックされた。

No.106

坂本は諦めたように口を開いた。



『スマン!!』



『やっぱり…相手は誰よ!会社の人って 言う事は分かってるんのよ!!』



『もう終わりにする!遊びだったんだよ!家での居場所が無く…つい…スマン!』



『居場所…?ふざけないでよ!自分の不貞を家族のせいにする気?!どこまで自分勝手なの!!
あなたと話しててもらちがあかないから相手も呼んでよ!!』



二人の押し問答がしばらく続き、専務が坂本に話した。



『もうここまで来たら君だけの問題じゃ済まされないよ。君が黙っててもいつかはバレるだろう。社内中に噂になってる事は分かってるよね。』



坂本は諦めたように頷いた。

No.105

『あなた!浮気してる事は確実だけど相手はこの子じゃないわね。この子のような若く賢い子があなたなんか相手にしなわよ。


優さんだったわね。 さっきは取り乱してごめんなさい。痛かったでしょ…ごめんなさい。』



そう言い頭を深々と下げてくれた。



『いえいえ!私は大丈夫です!もう頭を上げて下さい!』



あたしは坂本に言いようのない怒りがこみ上げた。


坂本の事は正直どんな人なのかもよく知らない。
でも、長年連れ添ってきた奥さんをここまで追い詰めこんな事させる事に凄く腹が立った。

No.104

『浮気してるって言うのは本当の事か?』



重い空気の中専務が口を開いた。



『いやっ…えーっと…その…浮気と言うか…あー…何て言うか…』



しどろもどろはっきりしない坂本に専務が怒りだした!



『ハッキリしろ!君のせいで巻き込まれてる人もいるんだよ!こんな風に奥さんにまでこんな事させてけじめをつけろ!見に覚えがない事ならハッキリ否定しろ!』



普段温厚な専務の怒鳴り声に坂本は驚いた。



『坂本さん!私本当に坂本さんと不倫なんかしてないですよね?ハッキリ言って下さい! 』



『奥様!私の元旦那は私が妊娠中に浮気をしました…それも離婚理由のひとつです。浮気で自分が傷つき苦しんだのに…よそ様のご主人に手を出すような事はしません!』



あたしは坂本と奥さんにそう話した。

No.103

しばらくして坂本がやってきた。



バツ悪そうに椅子に座った。



坂本は俯いたままでしばらく沈黙が続き


『坂本くん、どういう事かキチンと説明してくれ』


専務に言われた。



『説明って言っても僕にも何の事か分からないんですけど…』



『今更何言ってんのよ!本当の事言いなさいよ!こんな自分の娘と歳も変わらない若い女と…バカにしないでよ!!』



奥さん怒りは凄まじく坂本も専務もあたしも黙って聞くしかなかった。

No.102

専務がどうしたのか訳を聞くと

前々から坂本さんが浮気してると疑っていたが昨日見知らぬ人から電話がかかってきたらしい。



そしてその人に
『ご主人浮気してますよ。相手は同じ会社の優と言う若い子持ちの女です。その女かなりのしたたかな女なので奥さん捨てられてご主人その女と一緒になる準備してますよ。』



なんか漫画みたいな話にあたしはバカバカしくなった。



『私、坂本さんって方と部署も違うし正直な話顔もほとんど知らないんですけど。』



『もうここまでバレたのにまだシラを切るき?!主人が浮気してるのは薄々気付いてたのよ!それに会社内の女じゃないかって疑ってたわ!』



『いい加減にして下さい!!証拠はあるんですか?!専務!坂本さん呼んで下さい!』



あたしは電話をかけた相手が誰だか分かっていた。


そして坂本って男が浮気してるのも社内では有名な話。
あたし自身、坂本がどんな人か顔すら分からないけど浮気してるって言う話は知っていた。



何故なら






浮気相手は3人組のリーダーで不倫してる事をベラベラ喋り回ってたのも当事者のその女だった。

No.101

ある日の事だった。


お昼休憩中に見知らぬ女性がわたしを訪ねてきた。



あたしは事務所まで行くと見た事もない女性にいきなり平手打ちをくらった。



あたしを始め事務所にいた人達全員が驚いてると女性は叫び狂った。



『この泥棒猫!ちょっと若くて可愛いからって人の旦那に手出していいのかよ!』



『………!?ちょっ…ちょっと待って下さい!言ってる意味が分からないんですけど!』



『とぼけるな!教えてくれる人もいるんだよ!お前なんか人間じゃないよ!』



『ほんとに!本当に言ってる事が分からないので落ち着いて説明して下さい!』


事務所にいた男の人が女性を止めてくれ


『とりあえず落ち着いて下さい。こちらでお話して下さい』


と、あたしと女性を応接室に通してくれた。



女性はかなり興奮した様子だった。



専務が来てくれ3人で話しをしたらその女性は坂本さんと言う50代の男性社員の奥さんだった。

No.100

次の日、身体は痛かったけれど仕事は休まなかった。
本音は行きたくない…でも負けたくない…複雑は思いで出勤した。



会社に着くと3人組はニヤニヤと笑いコソコソと話していたがあたしは無視をした。
何にも悪い事してないのにあたしが逃げる事ない!
堂々と胸を張って仕事をした。
サブリーダと言う立場上その3人組にも仕事を指示する事もある。


もちろん無視されたらリーダーか上司に言い直接指示してもらった。


そんな可愛げないあたしに3人組の怒りは増すばかりだったと思う。



その後も執拗な嫌がらせは続いた。



No.99

とにかく落ち着き震えが止まった頃に美月の家に優心達を迎えに行った。



美月に悟られたらまた心配かける…
なるべく平常心を保った。



『美月ゴメンね!助かったよ~ありがとう!』



『いつでも言ってよ!あたしも優心達に癒されたよ~』



『時間あるならファミレスでも行かない?お礼におごちゃう♪』



『お礼なんていいよ~でもファミレスは行く♪♪』



あたし達は近所のファミレスに行った。


美月と楽しく話して今日の事は忘れる!


負けない!



そう思った。

No.98

その日はとても優心達を迎えに行ける状態じゃなく、美月に電話した。



『美月~忙しいとこゴメン!もし行けるなら優心達のお迎えお願いしたいんやけど…』



『OK♪OK♪あたし今日出勤遅いから行けるよ~迎えに行って家で待ってるわ♪』


『ゴメン!お願いします!』



とりあえずあたしは落ち着き、まずは傷の確認をした。
さすがに顔や見えるとこに目立った傷は無かった。



ただ服に隠れてる部分はあちこちが痛かった。



そんな痛みより殴られた事で過去の暴力を思い出し手足が震えてた。


痛みより怖さが大きかった。



あたしはしばらく放心状態で座っていた。



何で頑張ってもこんな目に合うのか…
やっぱりあたしは幸せになれない…なっちゃいけないのか…


克服すべく頑張り周りに支えられ徐々に癒されてきた心の傷をこじ開けられた思いだった。

No.97

あたしはそんなレベルの低い人に負けたくない!
そんな思いで嫌がらせされても、辛くても仕事を続けた。


周りはもちろん口ばっかり動かし仕事の出来ない3人組よりもあたしを信頼してくれた。



勤め始めて1年後にはあたしが配属になった部署のサブリーダにまでしてもらった。
サブリーダになれば少しだけど時給もアップした。
あたしは自分の頑張りを分かって貰えた嬉しさからますます仕事を頑張った。


それを余計に気に入らない3人組は仕事を終えた後にあたしを呼び出した。



『あんたマジで生意気!』


そう言いながら髪の毛を引っ張られた。


『ちょっ…痛い!止めて!』



『後から入ってきてサブリーダ!?ふざけるな!ちょっと若いからって調子にのるなよ!どんな手使って媚びたんだよ!』



『媚びてなんかいない!ただ一生懸命に仕事しただけです!その結果です!』



『ちっ!生意気!』


3人組のリーダー格があたしの頬を叩き


『こうゆう女の多い職場でしゃばる事したらこうなるって事分からしてやるよ!』


それからは3人に殴られ蹴られ暴行を受けた。



『言っとくけどこれはお前が悪いからした事だからな!人に言ったらもっと酷い目に合わす。それが嫌なら辞めろ!』



怖かった。


3人共、狂ってる…
そう思った。

No.96

無視は当たり前、仕事の大事な連絡もあたしには伝えてくれなかった。


上司と休憩に話してると後から


『やっぱ夜のお仕事してた方は男に媚びるのがお上手ね~あっ!もしかして今でも身体は売ってるとか?だから社長も専務も山本(直属の上司)も、あんたにヘラヘラして優しいんだ~』



『こんな母親もって子供が可哀想~』


『私達もシングルだけどあんたと一緒だと思われたら最悪!』


シングル3人組は次々とそう言いあたしを侮辱した。



あたしより平均10歳も上の人達なのに子供じみた嫌がらせをしてきた事になんだか可哀想な人達と…
失礼ながらそんな感情を持った。

No.95

次第に悪口だけでは収まらず、嫌がらせをうけるようになった。
それも周りには分からないような卑怯なやり方で…


No.94

長い間放置してごめんなさい。
放置した理由は言い訳がましいので書きませんが、楽しみにしてくれていた方、励ましてくれた方、本当にごめんなさい。


優★

No.93

同じパートでスゴく仲良しのりさちゃん。


りさちゃんとは親子くらい歳は離れているけど、若くて話しもスゴく合って面白いりさちゃんをあたしは大好きで、いつもお昼を一緒にしていたり、メールをしたりしていた。


そんなりさちゃんが昼休みに


『何かあの子らが優ちゃんの悪口を言ってるのを耳にしたんよ…何かあったの?』



『ん…何か良く思われてないみたい…
悪口ってどんな事言ってた?』



『優ちゃんと仲良しなのを知ってるから私にはあの子らも直接は言ってこないけど、悪口って言うかイイコぶりっこしてるとか…生意気でムカつくとか…ほんとくだらない事ばっかみたい。』



『そうかぁ…何か嫌われてるんかなって思った事はあったけど…あたしもあの人達が苦手だから嫌な思いさせたのかも知れないから気を付けるわ。』



初めはそんな感じの些細な事だった。

No.92

平凡な幸せ…



そんな矢先、順調に頑張っていた仕事場で異変がおきた。



あたしは、こんな悪条件の自分を雇ってくれた会社にスゴく感謝をしていた。
少しでも雇ってもらった恩返しがしたいから仕事も一生懸命に覚えた。


人に嫌われるのが嫌いなあたしはいつもニコニコしてみんなが嫌がる大変な仕事も笑顔で引き受けた。



そうしていく中で上司や社員、パートのおばちゃんからは厚い信頼を得てとても良くしてもらった。



それが一部の女の人の反感を買う事になってしまった。




あたしより少し前から働いていた同じ条件のバツイチ子持ちの3人組だった。



あたしより歳上のその人達は遅刻や無断欠勤は当たり前。
注意されればふてくされる。
口癖は『パートの安い時給で一生懸命になんて働けないわ。』



あたしはそんな3人組とは初めから合わずあまり関わる事は無かった。



そんな彼女たちと正反対なあたしは彼女たちからしたら目障りだったのだろう…


次第に辛い仕打ちを受けるようになった…

No.91

あたしは今は恋愛をしている場合じゃないから、優心達の事、自分の身体の事、親の事…



そう言い聞かせて香取さんとの連絡も疎遠になった。



これでいいんだ。



心の奥底にある寂しさやもどかしさをごまかすように言い聞かせた。



そんなあたしに美月も何も言わなかった。



やっと平凡な生活に落ち着いたからこの生活を大切にしよう…優心や優人の顔見ると強く思えた。
そう決心した。

No.90

数日後。


美月から電話でご飯の誘いがあった。


『西山さんからご飯行こうってメールきたよ。優や優心達も一緒にって♪香取さんも来るから♪』



正直…
逢いたい!って思ってしまった。


だからこそ余計に逢ったらこの想い止まらなくなるかも…
ハッキリと香取さんがスキだ…って自分を止められなくなりそうで怖かった。


『うーん。美月と西山さん2人でご飯行きなよ。せっかくのチャンスじゃん!』


あえて美月と西山さんを理由に断ってみたけど、あたしの事を良く分かってる美月にはバレバレだった。



『怖い?優。
香取さんを好きになりそうだから?好きって認めてしまうから?だから逢いたくない?』



心を見透かされたようだった。



『それもある…
あたしは恋愛なんかしちゃいけないの。これ以上、浮かれた気持ちになりたくない。』



美月は少しため息混じりで


『ん…分かったよ。あんまりあたしが色々言っても優の気持ちもあるし、今回は優は用事あるからって断っておくけどあんまり深く考え過ぎないでよ。』


『分かってる。ごめんね。』



美月との電話を切った。

No.89

美月は
『優こそ焦らずにゆっくり香取さんと連絡取りながら人柄とか見たらいいよ。
優…
香取さんの事スキなんでしょ?』



『えっ…スキとか…そんなんじゃ…』



『隠さないでいいって!何となく分かるよ。優を見てたら(笑)あたしも香取さんって無口だけど見た目から優しさって滲み出てる人だからいいと思うよ!』



『えへへ…そうだね。』



あたしはとりあえず笑ってごまかした。



まだ自分の気持ちが分からないから…



この日は色々な話をし、美月と別れた。

No.88

『そんな事ないよ!そんな言い方したら優心達にも香取さんにも失礼だよ!』



美月はちょっぴり怒った口調で続けた。


『子持ちの女は恋しちゃいけないの?そりゃ、子供をほったらかしにして男とフラフラしてるような女はダメだよ!
でもさ、子供も含め愛してくれる人が現れたら恋愛したっていいんじゃない?
ドラマのようにそんな簡単に子供も含め愛してくれる人なんてそんなに居ないと思うけどそんな人に出逢えたら美月には幸せになって欲しいよ。』



美月は優しくあたしに笑いかけた。


美月の言ってる事は分かってる。


でもあたしは自分の幼い頃と優心達を重ねてしまう。
初めはニコニコして優しくても所詮は他人の子供。気にいらなかったら殴ったり蹴ったり苛められる…


あたしみたいに。

No.87

『そうだね。ゆっくり考えさせてもらったらいいよ。まずは友達からでご飯とか遊びに何回も行ってからでもいいと思うよ。あたしは美月と西山さんはお似合いだと思うよ♪』


『そうだよねっ!西山さんにはそんな風に返事するわ♪前向きに考えてみる♪』


美月はきっと西山さんがスキなんだ。


西山さんの話をする時の美月の顔はスゴイ恋する乙女の顔だった。


あたしはちょっと羨ましかった。


『優はどうなのよ?香取さん♪♪あたしも香取さんと優はお似合いだと思うよ♪』


突然の美月の言葉に一瞬戸惑い

『あたしは…優心達も居るしね。愛だ恋だ言ってたら優心達に悪いし…
それに子持ちの女なんか香取さんにも悪いよ』



そう言って笑ってみた。

No.86

そんなある日。


美月と一緒に家でご飯を食べていたら


『ねぇ…優。
あたし、西山さんに告られた。』



突然の美月の告白にコントのように思わず持っていた箸を落としてしまった…(笑)



『えーっっ!!本当に!?うっそ!?いつ??』



『ちょっ…ちょっと落ち着いてよ!優!』


あまりのあたしの驚きぶりと追及にビビる美月(笑)



『昨日…電話で。
初めはいつものようにたわいのない会話だったけど、いきなり真剣な口調になって…びっくりしたよ』



『それで??美月何て返事したの??』


西山さんはチャラく見えるけど凄く気配りの出来る人だし、面白く優しい。それにイケメン(笑)美月ともスゴイお似合いだと思っていたからあたしは驚いたけれど嬉しかった。



『んー。
ちょっと考えさせてって言った。あたしも西山さんと遊んだりするの楽しいし、気にはなってるんだ。だから優に相談しようと思って。
西山さんもゆっくり考えてって言ってくれたよ。』


美月も見た目は派手な感じの今時の女の子だけど中身は芯のしっかりした真面目な子だからこそ慎重になったのだと思う。

No.85

自分の感情を抑えようとすればするほど、香取さんの事が気になって仕方なかった。


どんどん好きになっていく…
ダメだと頭では分かってるのに気持ちはついていかない。


もどかしい気持ちだった。


(香取さんの事はただの友達。
優しいからちょっと気になっただけ。ただの友達として遊ぶのが楽しいだけ。)


毎日そう言い聞かせてはいたけど、香取さんからの連絡を心待ちにしていた。

No.84

自分勝手ですが、また少しずつ更新したいと思います。


今まで放置していてすみません。
待っていてくれた皆様ありがとうございます🙇

優★

No.83

更新を楽しみに待ってくれていた皆様へ。


長い間の放置にもかかわらず感想スレにメッセージを残してくれたり、ありがとうございます。


完結せずに放置していた事を本当に謝りたいです。

ごめんなさい。


色々な出来事が重なり、携帯を触る事も出来ませんでした。


でもこのスレは皆様が励ましてくれたり心配してくれたりしていたのでどうしてもきちんと謝りたくてやっと心身共に落ち着いてきた今、こうしてレスしました。


長い間、ほったらかしですみませんでした。

放置中も優しいレスありがとうございました。


優★

No.82

それから香取さんは2、3日に1回の割合で電話を掛けてくれた。



ただ…



口数が少ない香取さんの電話は無言かあたしの会話に頷くのがほとんどだった…(笑)



それでもあたしは香取さんの電話が嬉しかった。




でも…



嬉しかったけど…





これ以上の感情が芽生えないように自分の中で抑えるのに必死だった。




優心達を1番に考えよう、恋愛なんて必要ない。




母親のあたしがシッカリしなきゃ子供が可哀想。
あたしの二の舞にしちゃダメだ!




強く心で思った。

No.81

『あっ…そうだったんだ!あたしも会社でも会わなくなって避けられてるかも…!って思って連絡しにくかったんよ!』



笑ってそう答えると




『これでお互いに勘違いって分かってやろ?じゃあ仕切り直してもう一回乾杯~!』



西山さんの合図で6人でもう一回乾杯をした。



その後の時間は本当に楽しかった。


相変わらず口数は少ない香取さんだけど美月や西山さんも居て優心達も楽しい時間を過ごせた。

No.80

個室に通され色々と注文を済ましみんなで乾杯する事にした。


『久しぶりの再会に乾杯~!』


西山さんに続き優心達も

『ぱんぱーい!』

と、小さいコップを高くあげて喜んでいた。


次々に運ばれる料理を口に運びながら美月と西山さんはわいわい話していた。



あたしはどうしていいか分からず美月達の会話に頷きながら子供達にご飯を食べさせていた。



そんな中で気まずい雰囲気を感じた西山さんが香取さんに話かけた。



『香取!優ちゃんに言わなきゃいけない事あったやろ』



その言葉に思い出したように


『あっ!そうだった。別の仕事になったから優ちゃんの会社に行かなくなったんよ。時間帯も変わって夜中から仕事で…連絡交換したのになかなか連絡出来なくてごめんなさい。』



えっ!




あたしは香取さんの話を聞いて妙な気持ちになった。



【避けられて無くて良かった…】



そんな感情が溢れ出した。

No.79

『おまたせ~!待った?』




『こっ!こんばんわ!お久しぶりです!』




『優ちゃん久しぶりだね。元気だった?チビ君達も元気そうだね!』




そう言い優心のほっぺをツンツンする西山さん。





『本当久しぶりだね。』




控えめに話す香取さん。





香取さんを良く知らなかったこの時は本当に嫌われてると思いあたしまで香取さんにギクシャクした態度をとってしまった。





『ほ、本当ですね。』




そんなあたしに美月は苦笑いしながら




『とにかく中に入ろうっ!』





あたしの手を引っ張り中に入った。

No.78

バーベキューから1ヶ月くらい過ぎた頃に美月からご飯の誘いがあった。




優心達を連れて美月と近所に出来たファミリー向けの居酒屋へ向かうと





居酒屋の入口に香取さんと西山さんが立っているのが見えた。






『ちょっと!美月!』




『えへへへ…今日は西山さんから誘われてたんだ。香取さんも呼ぶから優も呼んでって言われてさっ!』





『でも…あたしあれから全然連絡とかもしてないし…会社でも会わなくなったし…きっと避けられてるから迷惑だって!!』





『それスッゴい優の勘違いだから!とにかく大丈夫!行こう!』



美月に腕を引っ張られながら二人の前まで行った。

No.77

あたしはと言うと…





自分からも香取さんに連絡はしないし…





香取さんからも連絡なし…





しかも何故か会社でも会わなくなり

もしかしたら…




避けられてるかも。





そう思い始めていた。

No.76

【お疲れさま😃今日は楽しかったよ🎵またみんなで遊ぼう🎵】



ニコニコしながら返信する美月をあたしは少し羨ましかった。




『優!西山さんまた遊ぼうって!優心達も喜ぶね!』





『あたし達行ったらお邪魔でしょ?』





『何言ってんの!絶対に香取さんも来るって!』





そんな話をしながら美月は西山さんと本当に遊ぶ約束をしていた。

No.75

香取さん達に挨拶をしてあたし達は美月の家に帰った。





たっぷり遊んでもらい疲れた優心達を昼寝さしあたし達は今日の話で盛り上がった。





美月は意外と西山さんに好感を持っていた。




『西山さんって何かチャラそうに見えるけど凄い気つくし話してみたら意外と真面目でギャップに驚いたわぁ~』




嬉しそうに話す美月にあたしも嬉しくなった。




『優は?香取さんどう?』





『うーん。実は香取さん無口だからあんま話してないだよね。でも凄い優しい人なんだなって言うのはあんまり話さなくても伝わってくるかな。』






そんな話をしている時に西山さんから美月にメールがきた。

No.74

その日あたしは香取さんと
美月は初めに声を掛けてくれた西山さんとそれぞれ連絡先を交換した。





連絡先を交換してる時に香取さんから思いもよらない事を言われた。





『実は俺メールした事無くて分からないから番号だけでいいかな?』





え…?





これだけ日常生活に浸透しているメールをした事ないとか嘘でしょ…?





『メールした事ないんですか?一回も?アドレスとか分かります?』





『一回もないです。アドレスって…??』





メール出来ない事に驚いたけど真面目で口数少ない彼らしいな…と思った。

No.73

バーベキューは予想以上に楽しかった。



香取さんを始め運送会社の人達が優心達を凄く遊んでくれた。




普段男の人となかなか接する機会のない優心達は初めはかなり人見知りをし戸惑っていたがやっぱりそこは男の子。





男の人のダイナミックな遊び方にすっかり喜び遊んで貰っていた。




美月も持ち前の明るさや可愛らしさですっかり人気者だった。





優心達にもあたしにも充実した休日を美月や香取さん達のおかげで過ごせ嬉しかった。

No.72

『ちょっと…美月!どういうつもりよ。』



優心達の手を引きコソコソ美月に話しかけた。




『いーじゃない♪片付け大変なの嫌だしあの人達…特に香取さん!いい人そうだしね♪あたしの勘だけど…あの人、優の事好きだね♪』





美月の予想外の言葉に驚き




『な…っ、何言ってんのよ!!』





かなりの大声で叫んでしまった…





周りの視線が恥ずかしかった…(笑)




あたしは美月の腕を掴み小声で


『ちょっと美月!変な事言うの止めてよぉ…』




『ただの勘だから気にしないでっ♪』




イタズラっぽく笑う美月。




その日、美月のせいで変に香取さんを意識してしまった。

No.71

話をすると香取さんは運送会社のバーベキューに参加していたようで偶然の出会いに驚いた。



『え?ヨシ知り合いなの??』




始めに声をかけてくれた男の人が香取さんに尋ねた。





『俺がいつも行ってる会社の人だよ。』




口数少なく説明してる彼を見て仕事で会社に来てる時と同じだと思い裏表のない人なんだなぁと何だか嬉しかった。




『じゃあ俺達の所で一緒にしようよ。女の子二人だったら片付けも大変だよ。』





『いえっ!そんなご迷惑な事出来ません。火だけ点けてもらえれば後は大丈夫です!』





そう言ったけどあんまり大丈夫な自信は無かった…(笑)




『そう言わないで!ヤローばっかで面白くなかったんよ。ほら!ヨシからも言えよ~』





『女の子だけじゃ片付け意外と大変だから嫌じゃ無かったら一緒に…。』





彼の同僚と比べ対象的に控えめな彼が何だか可愛かった。




あたしがそんな事を思ってると


『じゃあ…お言葉に甘えてご一緒していいですか?』



いきなり返事した美月に驚いていると




『オッケー!じゃあ行こう!』




あたし達の荷物を持ち彼達は先に歩いた。

No.70

ある日の休日、美月と優心達と河原にバーベキューに出かけた。




あたし達の他にもたくさんの人で賑わっていた。





その賑やかさに優心達は興奮し、あたし達はバーベキューの準備に取り掛かったけどなかなか思うようにいかなかった。





まず炭に火が点かない…





意外と不器用な二人(笑)





悪戦苦闘してると誰かが声をかけてくれた。




『どうしたんですか?』




声をかけてくれた男の人に炭に火が点かない事を話した。





『着火材持ってないの??俺達あるから点けてあげるよ。』




そういい近くで大人数でバーベキューしてる方に向けて叫んだ。





『おーい!ヨシ!そこにある着火材持ってきてくれよ!』





一人の男の人が着火材を持って近づいてきた。




その人の顔を見てあたしは驚いた。




『かっ…香取さん!?』




いつも会社で声をかけてくれた運送会社の香取さんだった。

No.69

気持ち的に少し楽になってからは前のように明るさを取り戻せた。




休日は美月と優心達を連れて公園やバーベキューに出掛けた。






自分の殻に綴じ込もっていた時はどんどん落ち込み外出も必要最低限で優心達にも笑顔を見せなかった。





母親失格だったと思う。



でもそんなあたしでも優心達は必要としてくれ『ママだいすき』と笑顔をいっぱいくれた。





そんな優心達の為にも殻を破れて良かった…まだまだ精神的に安定したとは言えないけれど自分が悪くてこうなったんじゃない…
必ず克服出来る…



そう信じていた。

No.68

先生と自分を傷つけない事なども約束した。



貴方は悪くない。
自分を否定しないでいいの。今苦しいのは貴方のせいじゃない。





先生にそう言われいつかはこの病気から克服出来る。




そんな強い気持ちを持てた。





一歩前に進めた気がした。

No.67

何ヶ月間か病院に通い診察やカウンセリングを受け続けた。




時間をかけてやっと診断された病名は



PTSD【心的外傷後ストレス障害】



と診断された。




今苦しんでる事は過去に負った心の傷から引き出された色々な症状だった。




例えば不眠…




寝ている時に暗闇で殴られた過去を心が忘れられない。



だから暗闇が怖い、夜が怖い、眠れない…






大きな声や音を聞くと動悸が激しくなり呼吸がしにくくなる…





怒鳴り声や物が壊れる音…幼い頃の恐怖が今も残って起こる症状。




他にもいくつか先生は話をしてくれた。





今はまだパニック障害までには至っていないが症状が進むとそうなる可能性もあると…





そうならないようにこれ以上ストレスを溜めない、頼れる人がいるなら話を聞いてもらい甘えられる事は甘えるなどの改善策を教えてもらった。

No.66

美月と辛い時などは連絡する事を約束して自宅に戻った。





でもこの美月と過ごした1日で凄く気持ちに変化が表れた。





前ほど意味も無く落ち込む事が少なくなった。





リストカットの傷も増えなかった。





病院に通い、美月に助けてもらいながら乗り越えようと強い気持ちも持てるようになった。





いつもピンチの時にあたしを助けてくれる美月に心から感謝していた。

No.65

その日は美月の家に泊まる事にした。



一緒にご飯を食べ、飲みながら色々な話をした。





久しぶりに薬を飲まなくてもグッスリ眠れた。





朝食を食べながら美月にグッスリ眠れた事を話すと




『優には支えてくれる人が必要なんだよ。誰かいい人居ないの?』



そう聞かれた。





もちろん彼氏など居なかったあたしは居ないよと答えた。





『誰か紹介しようか?でも、優や子供達を大切にしてくれそうなあたしの眼鏡にかなった人じゃなきゃしないけどねっ』





そう言われ笑ったけど何故かその時に運送会社の彼が頭に浮かんだ。

No.64

病院に通ってる事や




不安になるとお酒や薬を飲み手首に傷をつくる事




何でこんな気持ちになったかを美月に話した。





美月は静かに話を聞いてくれた。





『優…もっと頼って来てよ。あたし何のために近くに住んでるんよ。』






『ずっと…美月には…迷惑かけっぱなしで…これ以上…情けない自分を見せるのが…恥ずかしかった…ごめん…』





泣きながら謝るあたしを抱きしめ



『一人だと思うから余計に精神的に不安定になるんだよ。一人で優心達抱えてるんだから頼れる人がいるなら頼ればいいの!甘えれる人がいれば甘えればいいの!じゃなきゃ優だけじゃない、優心達も可哀想なんだよ!』





久しぶりに人に甘えて泣いた気がした。

No.63

『どうしたって何が?』




『何がじゃないよ!そんなに痩せて、顔色も悪いしそれにこれは何!?』






リストバンドをしている手を美月に捕まれた。





『………あたし痩せたかな?ダイエット頑張ってるんだ……。』






『違うよ!あたしを誤魔化そうとしても無駄だよ!こんな優初めて見たよ!この手首はリストカットでしょ!?』





美月はリストバンドをずらした。






びっしりついた無数の傷を目にした美月の目から涙が溢れた。








『何でこんなになるまで我慢するの!?何で言ってくれなかったのよ!』






美月に怒られあたしも涙が溢れた。

No.62

でも特にあたしも彼に何かする事も無く、忙しい毎日の中で不安定な自分をカウンセリングや薬で誤魔化して過ごしていた。





不安に襲われる度に相変わらず繰り返しているリストカットを隠す為にいつも手にはリストバンドを身につけていた。





自分の殻に綴じ込み忙しさを理由にメールや電話のみでしばらく会っていなかった美月に久しぶりに会った時の美月の反応に驚いた。





『優…?どうしたん?』





何故美月がそんな事聞いたのか分からなかった。

No.61

そんな毎日を過ごしていたあたしに一つの出会いがあった。





会社に荷物を配達する運送会社の人だった。





顔に優しさがにじみ出ているような人だった。





物腰の優しい静かな彼は会社にくる度に

『元気ですか?』



『毎日暑いですね。』

『今日は雨ですね。』


などの本当にたわいのない一言、二言の言葉を必ずあたしに掛けていった。





食事に誘われた訳でも無く、気があるような素振りをされた訳でもないのにあたしの心の奥で何故か彼が気になっていた。

No.60

カウンセリングを受け薬を服用しながら普段通りの生活をしていたがあまり変化は無かった。






夜、子供達が寝た後に薬を飲み酒を飲んだ。




絶対に一緒に飲んだらダメだと言われていたが良く寝れるので毎晩そうした。






涙が止まらなくなり、気分はかなり落ち込み気を失うように毎晩眠りについた。






こんな自分が嫌で嫌で仕方なかった。

No.59

荻さんとのカウンセリングで自分自身を見つめる事が出来た。






でもなかなか自分を変える事は出来なかった…






幼い頃に母の顔色ばかり見ていた。
辛い生活の中でせめて周りに嫌われないようにするのが幼いあたしが身につけた生きていく術だった。






でもそれが自分自身を苦しめてるとは…





とことん自分はついてないな…

そう思えた。

No.58

自分の人生振り返ると確かにいい子だったかも知れない…





泣きたいのを我慢した子供の頃。
弟の為にあたしは頑張った。
物分かりのいい子だった。






あいつに虐められた時も母を捨てきれず犠牲になった。

【お母さん、あたしが守るから…だからあたしを見て…】

そんな思いでいい子を演じてた。






良太の時も…

大好きだった。あたしを理解し、守り、愛してくれた。
そんな良太や家族を苦しめたく無くて別れを選んだ。


愛してるからこそいい子になれた。






ハルの時も…

温かい家庭を夢見て、信じて、義母の酷い仕打ちにも耐えた。

最後は我慢しきれず離婚を選んだが結婚生活でもいい子を演じていた。

No.57

あたしが書いた絵を見た先生は





『ストレスが溜まると自分に攻撃を向ける。そしてそのストレスを吐き出す出口が狭くなかなか出せない。人に嫌われるのを恐れていつもニコニコ笑ってるいるが本当は周りを寄せ付けたくない気持ちが強い。それが絵に表れてるね。』






当たっている事ばかりで凄く驚いた。






『信頼出来る人や自分を分かってくれる人には自分の気持ちをぶつけてみたらいいと思うの。周りの人全てに好かれる必要はないんだよ。あなたが気持ちをぶつけても本当に分かってくれる人は離れていかないから。いい子でばかりいる必要ないよ。』







いい子…






荻さんの言葉はあたしの心に突き刺さった。

No.56

帰りに出された薬は3種類。




不安感が強くなる夕方に飲む安定剤が2種類。






寝る前に飲む眠剤が1種類。






あたしはこの薬を毎日服用したが効き目はあまり感じられなかった。






寝る前の眠剤はなかなか効かず病院に行くと先生にお願いして何回か変えてもらっていた。






カウンセリングも話をしたり絵を書いたり色々な事をした。

No.55

泣き止み顔をあげると


『辛かったですね。よく今まで頑張りましたね。』





そう言ってくれた。






今の不安な気持ちや母や子供に対する気持ちなど一つ一つに共感し頷き聞いてくれた。





ただそれだけの事なのに嬉しかった。







この日は過去の自分の話をして終わったが次のカウンセリングの予約を入れ、この日から毎週通う事になった。

No.54

『ゆっくりでいいからね。落ち着いてから話してくれてもいいのよ。』





手が震え、唇が震え…




それでもあたしは話し続けた。






過去からの呪縛から解き放たれたい一心で…





全てを話終えた時に机に顔を伏せて大声をあげて泣いた。







泣き止むまで荻さんは待ってくれた。

No.53

しばらく待っていると女性が部屋にやってきた。





『こんにちわ。お待たせしてすみません。カウンセラーの荻です。よろしくお願いします。』





荻さんは小柄で優しそうな人であたしは安心した。





『こちらこそ、よろしくお願いします。』






さっそく荻さんから話を聞かれた。






今の状況の根本にあるあたしは幼い頃の辛い思い出を話した。






荻さんはメモを取りながらあたしの話を聞いた。






時々言葉に詰まり、涙を堪えるあたしに優しく微笑みながら…

No.52

話し終えてから先生は



『眠れない事や不安感にはお薬を出すけど、一回カウンセリング受けてみない?薬だけで眠るのじゃなく心の奥底にある不安な気持ちや複雑な気持ちをカウンセラーにぶつけていって取り除けたら良いと思うんだけど、どうかな?』






あたしはカウンセラーが女性と聞きカウンセリングを受ける事にした。






また別室に連れて行かれしばらく待たされた。






また不安や緊張で手が震えた。

No.51

うつむき涙を堪えていると名前を呼ばれた。




顔を上げると気が付いてくれた看護師さんが優しい笑顔で診察室に案内してくれた。






診察室に入ると優しそうな先生が笑顔で座っていた。






『おはようございます。どうぞ座って。』






『おはようございます…よろしくお願いします。』






あたしは先生の前に座った。





どうしていいか分からず、うつむくと




『よく来てくれたわね。ゆっくりで良いから話してみて?』






あたしは自分の今の状況を少しずつ話し出した。

No.50

仕事の休みを貰い、優心達を保育園に連れて行きあたしは病院に向かった。






待ってる間かなり緊張して手が震えた。






目に見えない、自分でも分からない心の病気なのか…






不安で仕方無かった。




心の病気だと言われたら優心達を育てる資格がないと言われないだろうか…
元旦那や施設に取られないだろうか…






本当に不安で待合室で涙を堪えていたのを今でもハッキリ覚えてる。

No.49

色々探した結果隣の市にある心や精神を専門にした病院に行ってみる事にした。





ここに決めた理由は二つ。





一つ目は何人か先生がいる中で女医さんがいる事。






二つ目は病院が凄く綺麗だった事。






勝手な思い込みだけど精神科などは暗く、閉ざされた病院…




そんな偏見があたしの中にあったから…





綺麗な所なら行きやすい、女の先生なら話しやすい






その思いで決めた病院だった。






予約制なのでまず病院に電話をして受診する日時を決めた。

No.48

心療内科は結婚前に受診した事はあったが事務的で薬だけ貰う事に疑問を感じ数回行くだけで終わった。





今度は事務的じゃ無くもっと話を聞いて貰える病院に行きたい。





あたしは近くの心療内科や精神科のある病院を片っ端から調べた。





自分が納得出来る所で今度はきちんと自分の心の闇と戦おう…






そう決めていたから。

No.47

あたしもこの状況から抜け出したかった。





この闇から抜け出さなければ優心達まで不幸にしてしまう。






これ以上、不幸の連鎖を繋げる訳にはいかない。






優心達にはあたしのような思いをさせたくない。






【産まれてこなければ良かった】






【何故、産まれてきたのだろう】






こんな事を子供に思わせたらいけない。






優心達への思いと、園長先生の言葉が背中を押しあたしは心の病院に行く決意をした。

No.46

あたしはとりあえず今の辛い状況を泣きながら話した。






先生はあたしの背中を擦りながらゆっくり話を聞いてくれた。






全てを話終えた後、先生は優しく話をしてくれた。





『よく話してくれたね。辛かったね。よく頑張ったよ。でも優ちょっと頑張り過ぎて疲れちゃったんだね。頑張り過ぎなくていいからもう少し肩の力を抜いてごらん。』





黙って頷くあたしに先生は続けた。






『それとね、心の傷や心の病気は目で見えない分、人には理解してもらいにくいし自分自身も気付きにくいものなの。優、一回心の専門の病院に行ってみるのも先生良いと思うよ。怪我をした、風邪をひいたと同じ事で心が傷付いているなら治して貰おうよ。それは恥ずかしい事じゃないよ。』







当日、精神科や心療内科などに行く事が恥ずかしい、変な目で見られないか…




そう思っていたあたしの心を読んだかのように先生はあたしに諭した。

No.45

気さくで優しく、時に厳しく保護者にも接してくれる大好きな園長先生だった。





平日に仕事が休みだったある日、あたしが保育園に送って行くと園長先生が職員室から出てきた。





『優、今日時間あるならちょっと中でコーヒーでも飲もう。』





優しく声を掛けてくれた。






田舎のアットホームな保育園だったのであたしは先生達ともかなり親しくなっていた。






あたしは職員室に入り先生の入れてくれたコーヒーを口にした。






『何かあるなら聞くよ。一人で溜め込んでたら病気になって優心達も可哀想だよ。』






あたしは黙って俯いていると






『最近の優の様子見てたら誰でも分かるよ。前と全然違う。育児だけじゃなくて悩みがあれば言って。解決できるように一緒に考えるから。ねっ。』






優しくそう言われ、涙がこぼれ落ちた。

No.44

友達からの結婚報告や出産報告を聞くたび自分と比べ羨ましかった。






心の奥では素直に祝福出来ない自分もいた…





そんな自分が大嫌いだった。






眠れない…





食べたくない…





人に会いたくない…





仕事だけは優心達の生活の為に頑張って行っていたが他は脱け殻のようだった。






夜になるとカミソリを手に何度も手首を切った。






血が流れるのが嬉しかった。






生きてるのか分からなくなっていた自分が血が流れるのを見て生きているんだな…と思っていた。






そんなあたしの異変に気付いてくれたのが保育園の園長先生だった。

No.43

きっとその頃のあたしは何もかもが必死だったんだと思う。






優心達の為に頑張って働かなきゃと思っていた。





父親を奪ってしまった分、優心達をあたしが幸せにしなきゃと思っていた。






保育園のイベント事で家族連れを見るたび心が折れそうだった。






幼い頃に自分が欲しかった幸せな温かい家庭を築く事が出来ず優心達に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。






この頃…一人深い闇に取り残された気分だった。





出口が見えず手探りで泣きながら出口を探した。

No.42

心が荒んでいくのが分かった。






笑う事が辛くなった。





四六時中、幼い頃の自分が頭から離れなくなった。






優心達を寝かしてから泣いてはお酒を飲み、お酒を飲んでは泣く…




それを繰り返していた。






何故、生きてきたのだろう…






何故、産まれてきたのだろう…





何故、母はあたしを産んだのだろう…






前を向きたい。






優心達の為に後ろばかり振り返っていられない。






分かっているのに…






幼い自分に固執するように…






変えようない過去の記憶に縛られていた。

No.41

あたしは眠れないようになった…





自分自身が親になり子供の愛しさを知った。




我が子が可愛かった。





親になりあたしが幼い頃の母の気持ちが少しでも理解出来るかもと思った。







でも自分が母になった事で余計に母の気持ちが理解出来なくなった。






あたしと言う存在は母にとって何だったんだろう…






疎ましいだけだった?






可愛くなかった?






憎かったの?







産まなければ良かった…?






いい歳をして幼い頃の愛情を求め、探してる自分が苦しかった…

No.40

子供が出来てからは余計に過去の幼い自分が可哀想に思えた。






小さい我が子を目の前にし、自分された事をこの子達に出来るだろうか…?






そう思うだけで涙が止まらなかった。






出来る訳がない!






こんな幼い我が子に…





そう思えば思うほど幼い自分が不憫になり、母のした事が理解出来なかった。






その事が凄くあたしを苦しめた。

No.39

昔の忌まわしい記憶に悩まされながらも母に逆らえない自分がいる…





母やあいつ…





共に歳をとったせいか優心達にはあたしにしてきたような酷い事はしなかった。





むしろ、母は孫を溺愛し可愛がってくれた。





そんな母達の態度に自分の中に違和感は残るが優心達に良くしてくれるなら自分の辛さや過去は忘れよう…






何度も…






何度も…





そう思ったがそれはそんなに簡単な事では無かった。

No.38

長い間、放置していてごめんなさい。

言い訳ですが私事で色々あり更新出来ませんでした…


今まで応援してくれた皆様に完結を約束していたので、もうご覧になっていないかも知れませんがケジメの為にまた完結まで頑張ります。

もう一度目に止めて頂けたら幸いです🙇


優★

No.37

ハルからの連絡は無くなったものの…



悩みは尽きず、今度は母からの強い依存に悩まされた。



孫を可愛いく思ってくれるのはあたしも優心達にとっても有り難い…



あいつの存在がなければ…




母は事ある事に電話をしてきた。



『優心達に会いたいから連れてきて。お父さんも会いたがってるから~』



あたしが断ると


『機嫌損ねたらどうなるか知ってるでしょ!』


と…あいつの機嫌の事ばかり。



『あいつには会わせたくない。あたしがあいつにどんな目に合わされたか…お母さんよく連れてこいとか言えるよねぇ!』



嫌味を込めて言ったけど母は諦めなかった。

No.36

警察に相談に行ってからしばらく平穏な日々だった。



ハルからの連絡も頻繁では無くなったので美月の家から自宅に戻り前みたいに落ち着いた生活に戻った。



これでやっと普通の生活を送れるはずだった…

No.35

あまりにしつこいハルのメールや電話攻撃に不安になったあたしと美月は近くの警察署に相談に行った。



昔の記憶で警察は頼りにならないと分かっていたが…



美月が相談だけでも…と連れて行ってくれた。





警察に行きそこで驚いたのがきちんと話を聞いてくれた事だった。




親身なお巡りさんで家の周りもパトロール強化してくれると聞き凄い安心、心強い気持ちになれた。




あの幼き日にこんなお巡りさんが居てくれた良かったのに…



そう思うくらい警察のイメージが360度変わった。

No.34

着信拒否をしても番号を替えて掛けてくる。


恐怖を感じたあたしは美月に相談した。



『優それヤバイよ…怖いからしばらく優心達連れて家においでよ。』



あたしも一人で心細かったし優心達も心配だったから美月に甘えさせてもらう事にした。



美月が大好きな優心や優人は大喜びだった。



美月も我が子の様に可愛がってくれてあたしも嬉しかった。




美月の家に居る間もひきりなしのハルからの無数の着信や復縁を迫るメールを見て美月は


【ハルちょっとおかしいんじゃない?本当に気をつけた方がいいよ。普通じゃないよ…これ。】


と、心配してくれた。

No.33

あたしは返信せずに無視していると今度は着信が入った。



知らない番号だけど絶対ハルだと思い無視した。



何度も…
何度も…

しつこい着信…



たまらず留守電に切り替えるとメッセージが残されていた。



【無視するなよ。会いたい。優に会いたい。優がまだ好きなんだ。忘れられないんだ。会いたい…】




自分勝手な言い分…



子供の事なんて微塵も思っていない…



メッセージを聞いてるだけで気持ち悪くなった。







その日からハルの執拗な電話攻撃が始まった。

No.32

新しい生活にも、仕事にも慣れてきた頃にハルからメールがきた。



離婚して携帯もアドレスも変えたのに何故メールが来たのか不思議だった。




内容は


【やり直したい。】



それだけだった。



子供達の様子を聞くわけでも無く、離婚後のあたし達を心配する訳でも無く、自分の要求だけのメール…



ハルは相変わらずだった。

No.31

優心達も保育園に慣れ毎日楽しそうに行ってくれた。



仕事が終わり迎えに行くと満面の笑みを浮かべ駆け寄ってくれた。



その笑顔を見てまた明日も頑張ろう…
そう思えた。




あたしは仕事
優心達は保育園
それぞれの慣れない環境の中で一生懸命に頑張った。

No.30

条件の悪いあたしを雇ってくれた事に感謝し一生懸命に仕事を覚えた。



会社のみんなも凄くいい人達ばかりだった。


子育てが一段落した世代の人が多く小さい子供を抱えながら働くあたしの状況を凄く理解してくれた。



『子供が小さい時はよく病気なるよ~保育園でも病気貰ってくるし兄弟いると移っちゃうしね~そんな時はしっかり看病して甘えさしてあげなよ。』



子供が病気で休んでもそう言ってくれた。



保育参観や親子遠足などの行事でも快く休ませて貰えた。




パートの給料は親子3人生活するのにギリギリだったけれどこの有り難い環境には変えられなかった。

No.29

そして…


34社目の食品工場に面接に向かった。



面接では素直に自分の状況を話した。


小さい子供がいる事。

子供が病気になったら面倒見てくれる人が居ない事。



嘘をついて雇って貰っても意味が無い。



後々で会社に迷惑かけるだけ…
そう思いあたしはきちんと話した。



すると面接をしてくれた社長と奥さんは


『パートで良かったらいつ休んでくれても構わないし、休日出勤もしなくていいよ。それで良かったら明日から来てよ。』



『本当ですか!?パートでもいいです!よろしくお願いします!!』



正社員じゃないけれど子供の事考えれば病気なった時に休まして貰えるのはありがたかった。



さっそくあたしはクラブを辞めさせてもらい昼の仕事だけに専念した。

No.28

優心達が入園してからあたしは必死に面接を受けまくった。



夜の仕事を続けながらだったのでヘトヘトだったがここで頑張らなきゃこの生活から抜け出せない!


昼も夜も預けられてる優心達が可哀想だったが少しの辛抱だから…と自分に言い聞かせとにかく仕事を探した。


出来そうな仕事は何でも受けた。



が…


20数社受けたが不採用だった。



保育園との約束の期限が近づいてきていてあたしは焦っていた。

No.27

引っ越しからしばらくすると役所から入園出来るとの連絡が来た。


条件に入園3ヶ月以内に昼の仕事を見つける事…


見つからなかったら即退園と言われた…



あたしはとにかく昼の仕事を探した。


職安に通い仕事を探し面接に行く。



面接に行くとシングルマザー、子供が小さい、子供が病気になったりした時に頼れる親が居ないなど話すと必ず


『もう少しお子さんが大きくなってからの方がいいですね。』



そう言われ不採用だった…

No.26

夜の仕事も自分が思っている程ブランクは感じなかった。



嫌な事があっても優心や優人の顔を思い浮かべると耐える事が出来た。




そうやって頑張り、離婚から半年がたった頃にあたし達は美月の家を出て近くのハイツに引っ越しした。



半年間、美月のおかげで引っ越し費用なども貯められたし、精神的にも肉体的にも助けてもらった。



美月はずっと居てくれたらいいと言ってくれたがいつまでも甘える訳にはいかない。


きちんとケジメをつけたい。


そう思い引っ越しを決めた。



だけどお互い行き来しやすいように美月の家から近くの場所に決めたが、たったそれだけでも凄く心強かった。


後は昼間の仕事を見つけなきゃ…



あたしは少し焦っていた。

No.25

託児所は清潔で広くきちんと資格を持った保育士が面倒を見てくれ少し安心した。



ただ…朝方に迎えに行く時に寝ている優心達を起こすのが辛かった。



それ以外は優心達も先生になついてくれてあたしも安心だった。



昼はあたしと散歩したり、公園行ったり…
あたしはなるべく普通の生活を送れるように頑張った。


それに同じ仕事をしている美月を起こしたらいけないと思い、なるべく美月が寝ている時間は子供達が騒いでもいいように外で遊んだ。


自分の睡眠時間は2時間ほどだったが子供を犠牲にしている分、周りに迷惑かけてる分、頑張らなきゃいけない!その思いが強かった。

No.24

しばらくは生活出来るくらいの貯金は持っていたがこれからの事を考えるとなるべく貯金には手をつけたくなかった。



悩んだ末に…
あたしは託児所付きのクラブで働く事にした。



美月のいる店は残念ながら託児所は無かった。



どうせ夜の世界に戻るならママや美月のいる店に戻りたかった…
その方があたしも心強かった。



ブランクがあるから前みたいに上手く接客出来るか…


子供達に申し訳ない…

などの不安はあったが働かない事には子供達を育てられない。



色々な事を考え決断した答えだった。




もちろん、なるべく早く昼の仕事にしたいので探しながら…

No.23

あたし達はしばらく美月の家にお世話になる事になった。



修は家に帰ってこいって言ってくれたけど母が居るあの家に戻ったらいつあいつが来るか分からない…


子供達にまで被害が及ぶ事を考えると帰れなかった。



地元に戻りすぐに役所で色々な手続きを済ませ保育園の入園手続きもしたがすぐには入園は出来ないと言われた。


とにかく働かないといけないのであたしは託児所付きの仕事を探したがあるのは夜の仕事だった。



あたしは夜の仕事をする気はなかった。

勿論、水商売が嫌なんじゃない。



自分が子供の時に味わった夜に母親の居ない恐怖を子供達にさせたくなかった。
いくら託児所があっても…

No.22

あたし達は役所に立ち寄り離婚届けを提出し問題なく受理された。


たった紙切れ一枚だけれど…



提出した途端に


身体が…


心が…



色々な重さから解放された気がした。



でも…


それと同時に今度は一人で子供を立派に育てなければいけない…

幸せにしてあげなければいけない…


その責任感が怖い程のしかかってきた。

No.21

『でもね、あたし思うけど両親揃ってるからって絶対に幸せとは限らないよ。ましてハルなんかと一緒に居たら優にも子供達にも悪影響しかないって!あのババァもいるしね!』


少し興奮気味に話す美月にあたしは頷いた。

『優なら子供と温かい家庭を築く事が出来るよ!今は離婚する事に迷いや戸惑いもあるけどこれで良かったって必ず思う日が来るから!!』



美月の力強い言葉に背中を押された気がした。



『そうだよね!まだ分からない事を悩んでても仕方ないよね!美月のおかげで元気出たよ!ありがとう!』



もう後悔はしない。



これで良かったんだ。


美月のおかげでそう思えた。

No.20

姉もそんな美月を庇う事なく両親と同じ様に扱った。



気に入らない事があると美月とは関係ない事でも


【あんたはいらない子。】



そう言い美月を殴る蹴るして苛めた。



そんな辛い思いをしてきた美月だからあたしの気持ちを誰よりも理解してくれ…
誰よりも助けてくれた。

No.19

『ゆ…うぅぅ…』


かすかに聞こえるハルの声も無視した。



走り出した車の中で何故か涙が溢れ…
止める事が出来なかった。



『優…?大丈夫…?』


心配そうに美月が話かけた。



『ハルと別れる事が悲しいんじゃないよ。ただ…どうして…こうなちゃったんだろうって…。
幸せな家庭に憧れて、子供も二人授かって…これからなのに…
優心にも優人にも申し訳ないと思ったら…何か泣けてきちゃったよ。』



『そうだよね…あたし達は人一倍、普通の家庭に憧れが強いから…こういう形になったら人一倍、辛いよね…』


美月はあたしと同じ少し複雑な家庭環境で育った。


あたしと違い本当の両親だが出来のいい姉ばかり可愛がり美月にはほとんど目もくれなかった。


着るもの、食べるもの、与えるもの、全てにおいて姉と美月の差をつけた。


【お姉ちゃんさえ居れば美月はいらない…】

両親が口癖の様に美月に言った言葉だった。

No.18

『急にどうしたんですかぁ…』


泣き出すゆきに義母は平然と答えた。


『ハルを優と別れさす為に貴方が必要だっただけよ。』



心の底から腐ってる…


あたしも美月もそう思った。




でも、もうそんな事どうでもいい。
後は勝手にやってくれ…そんな感じであたし達は子供達をチャイルドシートに乗せてあたしは助手席に乗った。




『じゃあ…行くね。今までありがとう。ゆきさんとお幸せに。』



窓を開けて皮肉を込めてハルに最後の別れを告げた。




あたし達は家を後にした…

No.17

『美月そろそろ行こっか。役所にも寄って色々と手続きしたいし。』



『そうだね。こんな所にいつまでも居ても優が嫌な思いするだけだしねっ!』



あたしは優人を
美月は優心を抱き、車に向かった。




玄関では義母が待ち構えていた。



【また何か言われるんかな…面倒くさいわ…】



心の中でそう思いながら



『じゃあ、あたし行きます。お世話になりました。』



そう言って頭を下げた。



『はいはい。さよなら。』



そこにゆきが来て

『お義母さ~ん。この2人が意地悪な事言うんです~』



義母に泣きついたが義母はこれまでと打って変わって冷たくあしらった。



『そんな事、私に言われても知らないわよ!優もこうして出て行ってくれたからあんたにも用はないの!!』



義母の仕打ちにゆきは唖然としていた。


『そ…そんなぁ~お義母さん急にどうしたんですか…?』



『あんたにお母さんなんて呼ばれる筋合いないわよ!』


ゆきは泣き出した。

No.16

それでも美月はさらに続けた。



『あんたハルと結婚したいわけ?』



『したいわよっ!ハル君の事好きだもん!お義母さんも私なら良いって言ったもん!』



勝ち誇った顔で言い返すゆきにあたしは話した。



『ゆきさん、あたしは妊娠するまで家の仕事を手伝いながら朝は5時に起きて義兄妹達のお弁当を作り、家の家事は全てあたしがしていました。お義母さんは家事が苦手なので何もしませんよ?何もしないけど口は出してきますよ。』



あたしの話を聞き一瞬ゆきは黙ったが



『だ…大丈夫よ!あんたは嫌われてたからそういう扱いだったの!あたしは好かれてるから大丈夫よ!一緒にしないで!』



『そうですか。なら良いんですけど。頑張って下さいね。』



あたしはそう言ってゆきに微笑んだ。

No.15

コソコソ2人で笑っていると

『何をコソコソしてんのよ?言いたい事あるなら言えば!』


ゆきは怒り口調で言った。



美月は笑いながら


『浮気するならもっとマシな女居なかったんか?って言ってたの~あんた頭悪そうだし、ブスだし、化粧濃いし、おばさんだしさ~。ハルのタイプも変わっちゃったんだねぇ~』


ゆきの口調を真似して話す美月にあたしは爆笑した。



ゆきは顔を真っ赤にし激怒した。



『あんた初対面なのにずいぶん失礼じゃない!!』




『浮気女がノコノコ不倫男の家に来る方があたしの100倍失礼だよ!!』




カッコイイ美月♪♪




美月の言葉にゆきは黙りこんだ。

No.14

『そうだよ…優が悪いんだ。俺が浮気したのも優が優心の事ばっかだから寂しくて浮気したんだよ!俺は悪くない!!だから離婚はしない!!』




訳の分からない言い訳ばかりするハル。

もう話にならないと思いあたしも美月も何も言わずに黙々と車に荷物を運んだ。



ハルはずっとブツブツ言っていたがそれも無視した。



そして、全て運び終わった時にゆきが現れた。



『お義母さんに聞いてくれた~?私あのドレッサー欲しいから置いて行ってくれな~い?』



相変わらずイライラするブリッコな喋り方にあたしはムカついていたが
あたし以上に美月が怒っていた。



美月はあたしの耳元で
『あいつ?ハルの浮気相手?』

と、聞いてきた。



あたしが頷くと

『もっとマシなん居なかったんか?』


美月の言葉に思わずあたしは吹き出した。

No.13

『もういいよ!優!こんな奴に何言っても無駄だよ!!傷つくだけだよ!』



泣き崩れるあたしを美月が抱きしめた。



『あんた!!これで分かったでしょ!優がどれだけ傷ついてるか…あんたに傷付けられたか!!』




『でも…優も悪いんだよ…。オカンと仲良くしてくれなくて俺も間に挟まれて辛かったんだ!!』




とうとうハルは逆キレを始めた。

No.12

『あたしがどれだけ温かい家庭を望んでいたか…
どれだけ幸せになりたかったか…

お父さんとお母さんが家に居て、みんなで笑いながらご飯を食べて一緒に寝る…
自分の子供にはそういう当たり前の…普通の家族の中で育って欲しかった!
それがあたしの夢だったし、願いだった!

ハルはそんなあたしの気持ち全部知ってたよね!
なのに…

なのに…』



もう最後は言葉にならなかった…

No.11

部屋で美月と荷物を運ぶ準備をしているとハルが入ってきた。


美月はハルを見るなり『優がどうもお世話になりました!!』
と、低い声で睨みながら言った。



ハルは黙ったままあたし達の事を見ていた。


『優心…』



ハルが珍しく優心を抱こうとしたが優心は激しく拒んだ。



首を横に振りながらあたしのそばに駆け寄った。



『ハル…これが現状だよ。今まで優心に見向きもしなかったよね。面倒みてくれた事も遊んでくれた事も数える程だよ。今さら優心が喜んでハルに抱かれる訳ないよね。』



黙って俯くハル…



『ハルにとって優心はあたしと結婚する為の道具だったんでしょ?だから…結婚してしまえば優心も…
そしてあたしも用はなくなったんだよね!!』



今まで頑張って抑えてきた感情がとうとう抑えきれず激しい口調でハルに思いをぶつけた。

No.10

しばらくすると美月から電話が掛かってきた。



『優~今着いたよ。荷物あるでしょ?運ぶよ♪』



『わざわざごめんね。ありがとう美月♪助かります。今行くね。』



優心を抱き玄関外まで出ていくと美月が笑顔で待っていてくれた。



その顔を見ると涙が込み上げてきた。
ぐっと泣くのを我慢していると



あたしの顔を見て気持ちを察してか美月は優しくあたしの頭を撫でた。



『よく頑張りました。大変だったね。』




その言葉でもう涙を堪える事が出来なかった…



ただ黙ったまま涙を流すあたしを
美月も黙ったまま頭を撫で続けた。



あたしが少し落ち着くと
『話は車でゆっくり聞くからねっ♪だからこんなとこから早く立ち去ろっ!』



あたしは頷き美月と荷物を運んだ。

No.9

部屋に戻ると二人ともまだ寝ていた。



寝顔を見ていると、この離婚が正しいのか…
この子達から父親を奪っていいのか…



正直まだ悩んでしまうあたしは…弱い人間だった。



これから一人でこの子達を育てられるか…
そんな不安も大きかった。




でももう後には引けない。
覚悟を決めて親子3人頑張ろう。




何度も何度も自分に言い聞かせた。




不安を振り払うかのように…

No.8

『もう美月着くから…。』




『ほら!ハル!こっちから別れてやるんだからそんな情けない事しない!』



座りこんでいるハルの腕を持ち、立ち上がらそうとする義母をハルは振り払った。




『ほっといてくれ…』



『もう!何なの!この子は…優!あんたのせいよ。ハルはこんな子じゃなかったのに…あんたと結婚したから変わったのよ!』




『もう止めろよ!』




『とにかく今までありがとうございました。美月が来るまで部屋で待たせてもらいます。』



あたしは頭を下げリビングを出た。



あのままリビングに居ても同じ事の繰り返しで意味がない。



ハルに離婚を止められ…
義母には責められ嫌味を言われる…



もう何を話しても無駄だった。

No.7

しばらく沈黙が続いた。



あたしはハルの涙を見て少し離婚に対する気持ちが揺らいだが

やっぱり今ここで戻るわけにはいかない。



ゆきという女の存在。
義母の嫌がらせ。

何よりこの最悪な環境から子供達を守らなきゃいけない。



それには離婚しかないんだ。
ハルが本当に変わったなら…
あたしや子供が大事なら…
離婚してからでもハルの変わった姿を見る事は出来る。



そんな事を考えていた時に



【~♪~♪♪】



沈黙を破ったのはあたしの携帯のメール着信だった。



【あと30分くらいで着くからね~♪】



遠い所をあたし達の為にわざわざ来てくれてる美月に感謝した。

No.6

『もういいでしょ…?これ以上何を話しても無駄だよ。』



ハルはただ黙ったまま泣いていた。



その涙は本当なの…


泣くほど離婚したくないの…


本当ならやり直せるかも知れない…


今からでも温かい家庭を築く事が出来るかも知れない…



あたしの心の中でそんな迷いもあった…



今まで我慢する事が当たり前
自分を犠牲にする事が当たり前の人生だったから


我慢が足りないかも…まだ頑張れるかも…


そんな事も考えていた。

No.5

確かに義母はかなりキツイ性格だった。
正直あたしは人として同じ女として義母の事は軽蔑してるし大キライだ。




確かにこの生活に耐えれない理由に義母の事も入ってはいるが、離婚する原因全てが義母のせいとは思わない。



むしろ義母の事はハル次第でどうにでもなったかも知れない。



散々知らん顔して来て離婚になった途端に全ての責任を義母に押しつけるハルに無性に腹が立った。



『いい加減にしてよ!子供じゃあるまいし何でも親のせいにしてる場合じゃないでしょ!』



あたしの声に驚いたハルは黙りこんだ。



『お義母さんだけのせいじゃないでしょ…?ハルがあたしや子供達から逃げてたんじゃない…面倒くさい事に背を向けてきた結果が今なんだよ。人のせいばかりにしないで…』



義母もハルも黙っていた。

No.4

それでもハルはしつこかった。



『頼む!チャンスをくれ!好きなんだ!本当に優が好きなんだよぉ…頼むよ…』






とうとうハルは泣き出した。




そんなハルに義母は


『やめなさい!男のくせに情けない!!お母さんに逆らうような嫁は居ない方がいいのよ!!』




『オカンは黙ってろよ!!元々はこうなったのは全部オカンのせいじゃないかっ!』



ハルの怒りの矛先は義母に向かった。



『あの女を俺に会わせたのもオカン!優を苛めたのもオカン!俺に優の悪口ばかり言って俺達の仲をおかしくしたのもオカン!全部が全部オカンのせいだ!』



ハルのヒステリックな怒鳴り声に義母は呆然としていた。

No.3

今までいくらでもチャンスはあったはずた。


あたしは今まで黙って耐えてきたんだから…


義母にイビられても…嫌味を言われても…



体調が悪くなり入院した時も…



優心や優人を産む時も…



ハルの浮気を聞かされた時も…




ずっと黙って我慢してきたのに…



本気で変わる気があるなら…

本気であたしと温かい家庭を築くつもりだったなら…



何でもっと早く行動に移してくれなかったの…



もう何もかも
今さら遅いんだよ…




『ハル…今さらもう無理だよ。ごめん。』

No.2

荷造りが終わりがあたしは義父や義兄妹に挨拶をした。




そして義母にも…




『短い間でしたがお世話になりました。』




『本当っ、貴方に振り回されたわ。これで縁が切れると思ったら嬉しくなっちゃう。』




もうここまで嫌われ、嫌味を言われるとある意味笑えてくる。




何故ここまで嫌われたか…
今だに考えても答えは出ていない。





『この離婚届けは今日帰る途中に役所に出しておくから。』




ハルは青ざめた顔で昨夜に続き土下座をした。




『優!!頼む!!もう一回考え直してくれ!これからはちゃんとするから!子供の面倒も見るし、暴力も奮わない!オカンからも守るから!頼む!』





必死に懇願するハルをあたしは冷めた目で見ていた。




あたしの中ではどうして今更…
そういう感じだった。

No.1

翌朝…あたしは早くに起きて出ていく用意を始めた。




ハルは無言でうつむいていた。




とりあえず、すぐに必要な物は今日持って行き慌てない物は後から送ってもらう事にした。




荷造りしていると義母が部屋に入ってきた。




『ハル!優に何もかも持っていかれないように見とかなきゃダメよ!!』




まるであたしが泥棒でもするような言い方…



ハルの部屋にある物はほとんどがあたしの貯金で買ったものなのに…





『あっ!それとゆきちゃんがそのドレッサー欲しいみたいだから置いて行ってね。』




この期におよんでまだそんな事ばっかり言う義母にあたしは呆れて言葉が出なかった。

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