生きる意味2

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2016/04/19 00:03(更新日時)

生きる意味の続きです。


更新も遅くダラダラと書いてる文章ですが良かった前回に続きよろしくお願いします🙇


いつも読んでくれてる皆様へ✨

生きる意味2になりました。長くてごめんなさい💦なるべく更新頑張って早く完結頑張りますので最後までお付き頂ければ嬉しいです😃
また感想レスにもコメント頂ければ嬉しいです✨

No.1450926 (スレ作成日時)

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No.1

翌朝…あたしは早くに起きて出ていく用意を始めた。




ハルは無言でうつむいていた。




とりあえず、すぐに必要な物は今日持って行き慌てない物は後から送ってもらう事にした。




荷造りしていると義母が部屋に入ってきた。




『ハル!優に何もかも持っていかれないように見とかなきゃダメよ!!』




まるであたしが泥棒でもするような言い方…



ハルの部屋にある物はほとんどがあたしの貯金で買ったものなのに…





『あっ!それとゆきちゃんがそのドレッサー欲しいみたいだから置いて行ってね。』




この期におよんでまだそんな事ばっかり言う義母にあたしは呆れて言葉が出なかった。

No.2

荷造りが終わりがあたしは義父や義兄妹に挨拶をした。




そして義母にも…




『短い間でしたがお世話になりました。』




『本当っ、貴方に振り回されたわ。これで縁が切れると思ったら嬉しくなっちゃう。』




もうここまで嫌われ、嫌味を言われるとある意味笑えてくる。




何故ここまで嫌われたか…
今だに考えても答えは出ていない。





『この離婚届けは今日帰る途中に役所に出しておくから。』




ハルは青ざめた顔で昨夜に続き土下座をした。




『優!!頼む!!もう一回考え直してくれ!これからはちゃんとするから!子供の面倒も見るし、暴力も奮わない!オカンからも守るから!頼む!』





必死に懇願するハルをあたしは冷めた目で見ていた。




あたしの中ではどうして今更…
そういう感じだった。

No.3

今までいくらでもチャンスはあったはずた。


あたしは今まで黙って耐えてきたんだから…


義母にイビられても…嫌味を言われても…



体調が悪くなり入院した時も…



優心や優人を産む時も…



ハルの浮気を聞かされた時も…




ずっと黙って我慢してきたのに…



本気で変わる気があるなら…

本気であたしと温かい家庭を築くつもりだったなら…



何でもっと早く行動に移してくれなかったの…



もう何もかも
今さら遅いんだよ…




『ハル…今さらもう無理だよ。ごめん。』

No.4

それでもハルはしつこかった。



『頼む!チャンスをくれ!好きなんだ!本当に優が好きなんだよぉ…頼むよ…』






とうとうハルは泣き出した。




そんなハルに義母は


『やめなさい!男のくせに情けない!!お母さんに逆らうような嫁は居ない方がいいのよ!!』




『オカンは黙ってろよ!!元々はこうなったのは全部オカンのせいじゃないかっ!』



ハルの怒りの矛先は義母に向かった。



『あの女を俺に会わせたのもオカン!優を苛めたのもオカン!俺に優の悪口ばかり言って俺達の仲をおかしくしたのもオカン!全部が全部オカンのせいだ!』



ハルのヒステリックな怒鳴り声に義母は呆然としていた。

No.5

確かに義母はかなりキツイ性格だった。
正直あたしは人として同じ女として義母の事は軽蔑してるし大キライだ。




確かにこの生活に耐えれない理由に義母の事も入ってはいるが、離婚する原因全てが義母のせいとは思わない。



むしろ義母の事はハル次第でどうにでもなったかも知れない。



散々知らん顔して来て離婚になった途端に全ての責任を義母に押しつけるハルに無性に腹が立った。



『いい加減にしてよ!子供じゃあるまいし何でも親のせいにしてる場合じゃないでしょ!』



あたしの声に驚いたハルは黙りこんだ。



『お義母さんだけのせいじゃないでしょ…?ハルがあたしや子供達から逃げてたんじゃない…面倒くさい事に背を向けてきた結果が今なんだよ。人のせいばかりにしないで…』



義母もハルも黙っていた。

No.6

『もういいでしょ…?これ以上何を話しても無駄だよ。』



ハルはただ黙ったまま泣いていた。



その涙は本当なの…


泣くほど離婚したくないの…


本当ならやり直せるかも知れない…


今からでも温かい家庭を築く事が出来るかも知れない…



あたしの心の中でそんな迷いもあった…



今まで我慢する事が当たり前
自分を犠牲にする事が当たり前の人生だったから


我慢が足りないかも…まだ頑張れるかも…


そんな事も考えていた。

No.7

しばらく沈黙が続いた。



あたしはハルの涙を見て少し離婚に対する気持ちが揺らいだが

やっぱり今ここで戻るわけにはいかない。



ゆきという女の存在。
義母の嫌がらせ。

何よりこの最悪な環境から子供達を守らなきゃいけない。



それには離婚しかないんだ。
ハルが本当に変わったなら…
あたしや子供が大事なら…
離婚してからでもハルの変わった姿を見る事は出来る。



そんな事を考えていた時に



【~♪~♪♪】



沈黙を破ったのはあたしの携帯のメール着信だった。



【あと30分くらいで着くからね~♪】



遠い所をあたし達の為にわざわざ来てくれてる美月に感謝した。

No.8

『もう美月着くから…。』




『ほら!ハル!こっちから別れてやるんだからそんな情けない事しない!』



座りこんでいるハルの腕を持ち、立ち上がらそうとする義母をハルは振り払った。




『ほっといてくれ…』



『もう!何なの!この子は…優!あんたのせいよ。ハルはこんな子じゃなかったのに…あんたと結婚したから変わったのよ!』




『もう止めろよ!』




『とにかく今までありがとうございました。美月が来るまで部屋で待たせてもらいます。』



あたしは頭を下げリビングを出た。



あのままリビングに居ても同じ事の繰り返しで意味がない。



ハルに離婚を止められ…
義母には責められ嫌味を言われる…



もう何を話しても無駄だった。

No.9

部屋に戻ると二人ともまだ寝ていた。



寝顔を見ていると、この離婚が正しいのか…
この子達から父親を奪っていいのか…



正直まだ悩んでしまうあたしは…弱い人間だった。



これから一人でこの子達を育てられるか…
そんな不安も大きかった。




でももう後には引けない。
覚悟を決めて親子3人頑張ろう。




何度も何度も自分に言い聞かせた。




不安を振り払うかのように…

No.10

しばらくすると美月から電話が掛かってきた。



『優~今着いたよ。荷物あるでしょ?運ぶよ♪』



『わざわざごめんね。ありがとう美月♪助かります。今行くね。』



優心を抱き玄関外まで出ていくと美月が笑顔で待っていてくれた。



その顔を見ると涙が込み上げてきた。
ぐっと泣くのを我慢していると



あたしの顔を見て気持ちを察してか美月は優しくあたしの頭を撫でた。



『よく頑張りました。大変だったね。』




その言葉でもう涙を堪える事が出来なかった…



ただ黙ったまま涙を流すあたしを
美月も黙ったまま頭を撫で続けた。



あたしが少し落ち着くと
『話は車でゆっくり聞くからねっ♪だからこんなとこから早く立ち去ろっ!』



あたしは頷き美月と荷物を運んだ。

No.11

部屋で美月と荷物を運ぶ準備をしているとハルが入ってきた。


美月はハルを見るなり『優がどうもお世話になりました!!』
と、低い声で睨みながら言った。



ハルは黙ったままあたし達の事を見ていた。


『優心…』



ハルが珍しく優心を抱こうとしたが優心は激しく拒んだ。



首を横に振りながらあたしのそばに駆け寄った。



『ハル…これが現状だよ。今まで優心に見向きもしなかったよね。面倒みてくれた事も遊んでくれた事も数える程だよ。今さら優心が喜んでハルに抱かれる訳ないよね。』



黙って俯くハル…



『ハルにとって優心はあたしと結婚する為の道具だったんでしょ?だから…結婚してしまえば優心も…
そしてあたしも用はなくなったんだよね!!』



今まで頑張って抑えてきた感情がとうとう抑えきれず激しい口調でハルに思いをぶつけた。

No.12

『あたしがどれだけ温かい家庭を望んでいたか…
どれだけ幸せになりたかったか…

お父さんとお母さんが家に居て、みんなで笑いながらご飯を食べて一緒に寝る…
自分の子供にはそういう当たり前の…普通の家族の中で育って欲しかった!
それがあたしの夢だったし、願いだった!

ハルはそんなあたしの気持ち全部知ってたよね!
なのに…

なのに…』



もう最後は言葉にならなかった…

No.13

『もういいよ!優!こんな奴に何言っても無駄だよ!!傷つくだけだよ!』



泣き崩れるあたしを美月が抱きしめた。



『あんた!!これで分かったでしょ!優がどれだけ傷ついてるか…あんたに傷付けられたか!!』




『でも…優も悪いんだよ…。オカンと仲良くしてくれなくて俺も間に挟まれて辛かったんだ!!』




とうとうハルは逆キレを始めた。

No.14

『そうだよ…優が悪いんだ。俺が浮気したのも優が優心の事ばっかだから寂しくて浮気したんだよ!俺は悪くない!!だから離婚はしない!!』




訳の分からない言い訳ばかりするハル。

もう話にならないと思いあたしも美月も何も言わずに黙々と車に荷物を運んだ。



ハルはずっとブツブツ言っていたがそれも無視した。



そして、全て運び終わった時にゆきが現れた。



『お義母さんに聞いてくれた~?私あのドレッサー欲しいから置いて行ってくれな~い?』



相変わらずイライラするブリッコな喋り方にあたしはムカついていたが
あたし以上に美月が怒っていた。



美月はあたしの耳元で
『あいつ?ハルの浮気相手?』

と、聞いてきた。



あたしが頷くと

『もっとマシなん居なかったんか?』


美月の言葉に思わずあたしは吹き出した。

No.15

コソコソ2人で笑っていると

『何をコソコソしてんのよ?言いたい事あるなら言えば!』


ゆきは怒り口調で言った。



美月は笑いながら


『浮気するならもっとマシな女居なかったんか?って言ってたの~あんた頭悪そうだし、ブスだし、化粧濃いし、おばさんだしさ~。ハルのタイプも変わっちゃったんだねぇ~』


ゆきの口調を真似して話す美月にあたしは爆笑した。



ゆきは顔を真っ赤にし激怒した。



『あんた初対面なのにずいぶん失礼じゃない!!』




『浮気女がノコノコ不倫男の家に来る方があたしの100倍失礼だよ!!』




カッコイイ美月♪♪




美月の言葉にゆきは黙りこんだ。

No.16

それでも美月はさらに続けた。



『あんたハルと結婚したいわけ?』



『したいわよっ!ハル君の事好きだもん!お義母さんも私なら良いって言ったもん!』



勝ち誇った顔で言い返すゆきにあたしは話した。



『ゆきさん、あたしは妊娠するまで家の仕事を手伝いながら朝は5時に起きて義兄妹達のお弁当を作り、家の家事は全てあたしがしていました。お義母さんは家事が苦手なので何もしませんよ?何もしないけど口は出してきますよ。』



あたしの話を聞き一瞬ゆきは黙ったが



『だ…大丈夫よ!あんたは嫌われてたからそういう扱いだったの!あたしは好かれてるから大丈夫よ!一緒にしないで!』



『そうですか。なら良いんですけど。頑張って下さいね。』



あたしはそう言ってゆきに微笑んだ。

No.17

『美月そろそろ行こっか。役所にも寄って色々と手続きしたいし。』



『そうだね。こんな所にいつまでも居ても優が嫌な思いするだけだしねっ!』



あたしは優人を
美月は優心を抱き、車に向かった。




玄関では義母が待ち構えていた。



【また何か言われるんかな…面倒くさいわ…】



心の中でそう思いながら



『じゃあ、あたし行きます。お世話になりました。』



そう言って頭を下げた。



『はいはい。さよなら。』



そこにゆきが来て

『お義母さ~ん。この2人が意地悪な事言うんです~』



義母に泣きついたが義母はこれまでと打って変わって冷たくあしらった。



『そんな事、私に言われても知らないわよ!優もこうして出て行ってくれたからあんたにも用はないの!!』



義母の仕打ちにゆきは唖然としていた。


『そ…そんなぁ~お義母さん急にどうしたんですか…?』



『あんたにお母さんなんて呼ばれる筋合いないわよ!』


ゆきは泣き出した。

No.18

『急にどうしたんですかぁ…』


泣き出すゆきに義母は平然と答えた。


『ハルを優と別れさす為に貴方が必要だっただけよ。』



心の底から腐ってる…


あたしも美月もそう思った。




でも、もうそんな事どうでもいい。
後は勝手にやってくれ…そんな感じであたし達は子供達をチャイルドシートに乗せてあたしは助手席に乗った。




『じゃあ…行くね。今までありがとう。ゆきさんとお幸せに。』



窓を開けて皮肉を込めてハルに最後の別れを告げた。




あたし達は家を後にした…

No.19

『ゆ…うぅぅ…』


かすかに聞こえるハルの声も無視した。



走り出した車の中で何故か涙が溢れ…
止める事が出来なかった。



『優…?大丈夫…?』


心配そうに美月が話かけた。



『ハルと別れる事が悲しいんじゃないよ。ただ…どうして…こうなちゃったんだろうって…。
幸せな家庭に憧れて、子供も二人授かって…これからなのに…
優心にも優人にも申し訳ないと思ったら…何か泣けてきちゃったよ。』



『そうだよね…あたし達は人一倍、普通の家庭に憧れが強いから…こういう形になったら人一倍、辛いよね…』


美月はあたしと同じ少し複雑な家庭環境で育った。


あたしと違い本当の両親だが出来のいい姉ばかり可愛がり美月にはほとんど目もくれなかった。


着るもの、食べるもの、与えるもの、全てにおいて姉と美月の差をつけた。


【お姉ちゃんさえ居れば美月はいらない…】

両親が口癖の様に美月に言った言葉だった。

No.20

姉もそんな美月を庇う事なく両親と同じ様に扱った。



気に入らない事があると美月とは関係ない事でも


【あんたはいらない子。】



そう言い美月を殴る蹴るして苛めた。



そんな辛い思いをしてきた美月だからあたしの気持ちを誰よりも理解してくれ…
誰よりも助けてくれた。

No.21

『でもね、あたし思うけど両親揃ってるからって絶対に幸せとは限らないよ。ましてハルなんかと一緒に居たら優にも子供達にも悪影響しかないって!あのババァもいるしね!』


少し興奮気味に話す美月にあたしは頷いた。

『優なら子供と温かい家庭を築く事が出来るよ!今は離婚する事に迷いや戸惑いもあるけどこれで良かったって必ず思う日が来るから!!』



美月の力強い言葉に背中を押された気がした。



『そうだよね!まだ分からない事を悩んでても仕方ないよね!美月のおかげで元気出たよ!ありがとう!』



もう後悔はしない。



これで良かったんだ。


美月のおかげでそう思えた。

No.22

あたし達は役所に立ち寄り離婚届けを提出し問題なく受理された。


たった紙切れ一枚だけれど…



提出した途端に


身体が…


心が…



色々な重さから解放された気がした。



でも…


それと同時に今度は一人で子供を立派に育てなければいけない…

幸せにしてあげなければいけない…


その責任感が怖い程のしかかってきた。

No.23

あたし達はしばらく美月の家にお世話になる事になった。



修は家に帰ってこいって言ってくれたけど母が居るあの家に戻ったらいつあいつが来るか分からない…


子供達にまで被害が及ぶ事を考えると帰れなかった。



地元に戻りすぐに役所で色々な手続きを済ませ保育園の入園手続きもしたがすぐには入園は出来ないと言われた。


とにかく働かないといけないのであたしは託児所付きの仕事を探したがあるのは夜の仕事だった。



あたしは夜の仕事をする気はなかった。

勿論、水商売が嫌なんじゃない。



自分が子供の時に味わった夜に母親の居ない恐怖を子供達にさせたくなかった。
いくら託児所があっても…

No.24

しばらくは生活出来るくらいの貯金は持っていたがこれからの事を考えるとなるべく貯金には手をつけたくなかった。



悩んだ末に…
あたしは託児所付きのクラブで働く事にした。



美月のいる店は残念ながら託児所は無かった。



どうせ夜の世界に戻るならママや美月のいる店に戻りたかった…
その方があたしも心強かった。



ブランクがあるから前みたいに上手く接客出来るか…


子供達に申し訳ない…

などの不安はあったが働かない事には子供達を育てられない。



色々な事を考え決断した答えだった。




もちろん、なるべく早く昼の仕事にしたいので探しながら…

No.25

託児所は清潔で広くきちんと資格を持った保育士が面倒を見てくれ少し安心した。



ただ…朝方に迎えに行く時に寝ている優心達を起こすのが辛かった。



それ以外は優心達も先生になついてくれてあたしも安心だった。



昼はあたしと散歩したり、公園行ったり…
あたしはなるべく普通の生活を送れるように頑張った。


それに同じ仕事をしている美月を起こしたらいけないと思い、なるべく美月が寝ている時間は子供達が騒いでもいいように外で遊んだ。


自分の睡眠時間は2時間ほどだったが子供を犠牲にしている分、周りに迷惑かけてる分、頑張らなきゃいけない!その思いが強かった。

No.26

夜の仕事も自分が思っている程ブランクは感じなかった。



嫌な事があっても優心や優人の顔を思い浮かべると耐える事が出来た。




そうやって頑張り、離婚から半年がたった頃にあたし達は美月の家を出て近くのハイツに引っ越しした。



半年間、美月のおかげで引っ越し費用なども貯められたし、精神的にも肉体的にも助けてもらった。



美月はずっと居てくれたらいいと言ってくれたがいつまでも甘える訳にはいかない。


きちんとケジメをつけたい。


そう思い引っ越しを決めた。



だけどお互い行き来しやすいように美月の家から近くの場所に決めたが、たったそれだけでも凄く心強かった。


後は昼間の仕事を見つけなきゃ…



あたしは少し焦っていた。

No.27

引っ越しからしばらくすると役所から入園出来るとの連絡が来た。


条件に入園3ヶ月以内に昼の仕事を見つける事…


見つからなかったら即退園と言われた…



あたしはとにかく昼の仕事を探した。


職安に通い仕事を探し面接に行く。



面接に行くとシングルマザー、子供が小さい、子供が病気になったりした時に頼れる親が居ないなど話すと必ず


『もう少しお子さんが大きくなってからの方がいいですね。』



そう言われ不採用だった…

No.28

優心達が入園してからあたしは必死に面接を受けまくった。



夜の仕事を続けながらだったのでヘトヘトだったがここで頑張らなきゃこの生活から抜け出せない!


昼も夜も預けられてる優心達が可哀想だったが少しの辛抱だから…と自分に言い聞かせとにかく仕事を探した。


出来そうな仕事は何でも受けた。



が…


20数社受けたが不採用だった。



保育園との約束の期限が近づいてきていてあたしは焦っていた。

No.29

そして…


34社目の食品工場に面接に向かった。



面接では素直に自分の状況を話した。


小さい子供がいる事。

子供が病気になったら面倒見てくれる人が居ない事。



嘘をついて雇って貰っても意味が無い。



後々で会社に迷惑かけるだけ…
そう思いあたしはきちんと話した。



すると面接をしてくれた社長と奥さんは


『パートで良かったらいつ休んでくれても構わないし、休日出勤もしなくていいよ。それで良かったら明日から来てよ。』



『本当ですか!?パートでもいいです!よろしくお願いします!!』



正社員じゃないけれど子供の事考えれば病気なった時に休まして貰えるのはありがたかった。



さっそくあたしはクラブを辞めさせてもらい昼の仕事だけに専念した。

No.30

条件の悪いあたしを雇ってくれた事に感謝し一生懸命に仕事を覚えた。



会社のみんなも凄くいい人達ばかりだった。


子育てが一段落した世代の人が多く小さい子供を抱えながら働くあたしの状況を凄く理解してくれた。



『子供が小さい時はよく病気なるよ~保育園でも病気貰ってくるし兄弟いると移っちゃうしね~そんな時はしっかり看病して甘えさしてあげなよ。』



子供が病気で休んでもそう言ってくれた。



保育参観や親子遠足などの行事でも快く休ませて貰えた。




パートの給料は親子3人生活するのにギリギリだったけれどこの有り難い環境には変えられなかった。

No.31

優心達も保育園に慣れ毎日楽しそうに行ってくれた。



仕事が終わり迎えに行くと満面の笑みを浮かべ駆け寄ってくれた。



その笑顔を見てまた明日も頑張ろう…
そう思えた。




あたしは仕事
優心達は保育園
それぞれの慣れない環境の中で一生懸命に頑張った。

No.32

新しい生活にも、仕事にも慣れてきた頃にハルからメールがきた。



離婚して携帯もアドレスも変えたのに何故メールが来たのか不思議だった。




内容は


【やり直したい。】



それだけだった。



子供達の様子を聞くわけでも無く、離婚後のあたし達を心配する訳でも無く、自分の要求だけのメール…



ハルは相変わらずだった。

No.33

あたしは返信せずに無視していると今度は着信が入った。



知らない番号だけど絶対ハルだと思い無視した。



何度も…
何度も…

しつこい着信…



たまらず留守電に切り替えるとメッセージが残されていた。



【無視するなよ。会いたい。優に会いたい。優がまだ好きなんだ。忘れられないんだ。会いたい…】




自分勝手な言い分…



子供の事なんて微塵も思っていない…



メッセージを聞いてるだけで気持ち悪くなった。







その日からハルの執拗な電話攻撃が始まった。

No.34

着信拒否をしても番号を替えて掛けてくる。


恐怖を感じたあたしは美月に相談した。



『優それヤバイよ…怖いからしばらく優心達連れて家においでよ。』



あたしも一人で心細かったし優心達も心配だったから美月に甘えさせてもらう事にした。



美月が大好きな優心や優人は大喜びだった。



美月も我が子の様に可愛がってくれてあたしも嬉しかった。




美月の家に居る間もひきりなしのハルからの無数の着信や復縁を迫るメールを見て美月は


【ハルちょっとおかしいんじゃない?本当に気をつけた方がいいよ。普通じゃないよ…これ。】


と、心配してくれた。

No.35

あまりにしつこいハルのメールや電話攻撃に不安になったあたしと美月は近くの警察署に相談に行った。



昔の記憶で警察は頼りにならないと分かっていたが…



美月が相談だけでも…と連れて行ってくれた。





警察に行きそこで驚いたのがきちんと話を聞いてくれた事だった。




親身なお巡りさんで家の周りもパトロール強化してくれると聞き凄い安心、心強い気持ちになれた。




あの幼き日にこんなお巡りさんが居てくれた良かったのに…



そう思うくらい警察のイメージが360度変わった。

No.36

警察に相談に行ってからしばらく平穏な日々だった。



ハルからの連絡も頻繁では無くなったので美月の家から自宅に戻り前みたいに落ち着いた生活に戻った。



これでやっと普通の生活を送れるはずだった…

No.37

ハルからの連絡は無くなったものの…



悩みは尽きず、今度は母からの強い依存に悩まされた。



孫を可愛いく思ってくれるのはあたしも優心達にとっても有り難い…



あいつの存在がなければ…




母は事ある事に電話をしてきた。



『優心達に会いたいから連れてきて。お父さんも会いたがってるから~』



あたしが断ると


『機嫌損ねたらどうなるか知ってるでしょ!』


と…あいつの機嫌の事ばかり。



『あいつには会わせたくない。あたしがあいつにどんな目に合わされたか…お母さんよく連れてこいとか言えるよねぇ!』



嫌味を込めて言ったけど母は諦めなかった。

No.38

長い間、放置していてごめんなさい。

言い訳ですが私事で色々あり更新出来ませんでした…


今まで応援してくれた皆様に完結を約束していたので、もうご覧になっていないかも知れませんがケジメの為にまた完結まで頑張ります。

もう一度目に止めて頂けたら幸いです🙇


優★

No.39

昔の忌まわしい記憶に悩まされながらも母に逆らえない自分がいる…





母やあいつ…





共に歳をとったせいか優心達にはあたしにしてきたような酷い事はしなかった。





むしろ、母は孫を溺愛し可愛がってくれた。





そんな母達の態度に自分の中に違和感は残るが優心達に良くしてくれるなら自分の辛さや過去は忘れよう…






何度も…






何度も…





そう思ったがそれはそんなに簡単な事では無かった。

No.40

子供が出来てからは余計に過去の幼い自分が可哀想に思えた。






小さい我が子を目の前にし、自分された事をこの子達に出来るだろうか…?






そう思うだけで涙が止まらなかった。






出来る訳がない!






こんな幼い我が子に…





そう思えば思うほど幼い自分が不憫になり、母のした事が理解出来なかった。






その事が凄くあたしを苦しめた。

No.41

あたしは眠れないようになった…





自分自身が親になり子供の愛しさを知った。




我が子が可愛かった。





親になりあたしが幼い頃の母の気持ちが少しでも理解出来るかもと思った。







でも自分が母になった事で余計に母の気持ちが理解出来なくなった。






あたしと言う存在は母にとって何だったんだろう…






疎ましいだけだった?






可愛くなかった?






憎かったの?







産まなければ良かった…?






いい歳をして幼い頃の愛情を求め、探してる自分が苦しかった…

No.42

心が荒んでいくのが分かった。






笑う事が辛くなった。





四六時中、幼い頃の自分が頭から離れなくなった。






優心達を寝かしてから泣いてはお酒を飲み、お酒を飲んでは泣く…




それを繰り返していた。






何故、生きてきたのだろう…






何故、産まれてきたのだろう…





何故、母はあたしを産んだのだろう…






前を向きたい。






優心達の為に後ろばかり振り返っていられない。






分かっているのに…






幼い自分に固執するように…






変えようない過去の記憶に縛られていた。

No.43

きっとその頃のあたしは何もかもが必死だったんだと思う。






優心達の為に頑張って働かなきゃと思っていた。





父親を奪ってしまった分、優心達をあたしが幸せにしなきゃと思っていた。






保育園のイベント事で家族連れを見るたび心が折れそうだった。






幼い頃に自分が欲しかった幸せな温かい家庭を築く事が出来ず優心達に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。






この頃…一人深い闇に取り残された気分だった。





出口が見えず手探りで泣きながら出口を探した。

No.44

友達からの結婚報告や出産報告を聞くたび自分と比べ羨ましかった。






心の奥では素直に祝福出来ない自分もいた…





そんな自分が大嫌いだった。






眠れない…





食べたくない…





人に会いたくない…





仕事だけは優心達の生活の為に頑張って行っていたが他は脱け殻のようだった。






夜になるとカミソリを手に何度も手首を切った。






血が流れるのが嬉しかった。






生きてるのか分からなくなっていた自分が血が流れるのを見て生きているんだな…と思っていた。






そんなあたしの異変に気付いてくれたのが保育園の園長先生だった。

No.45

気さくで優しく、時に厳しく保護者にも接してくれる大好きな園長先生だった。





平日に仕事が休みだったある日、あたしが保育園に送って行くと園長先生が職員室から出てきた。





『優、今日時間あるならちょっと中でコーヒーでも飲もう。』





優しく声を掛けてくれた。






田舎のアットホームな保育園だったのであたしは先生達ともかなり親しくなっていた。






あたしは職員室に入り先生の入れてくれたコーヒーを口にした。






『何かあるなら聞くよ。一人で溜め込んでたら病気になって優心達も可哀想だよ。』






あたしは黙って俯いていると






『最近の優の様子見てたら誰でも分かるよ。前と全然違う。育児だけじゃなくて悩みがあれば言って。解決できるように一緒に考えるから。ねっ。』






優しくそう言われ、涙がこぼれ落ちた。

No.46

あたしはとりあえず今の辛い状況を泣きながら話した。






先生はあたしの背中を擦りながらゆっくり話を聞いてくれた。






全てを話終えた後、先生は優しく話をしてくれた。





『よく話してくれたね。辛かったね。よく頑張ったよ。でも優ちょっと頑張り過ぎて疲れちゃったんだね。頑張り過ぎなくていいからもう少し肩の力を抜いてごらん。』





黙って頷くあたしに先生は続けた。






『それとね、心の傷や心の病気は目で見えない分、人には理解してもらいにくいし自分自身も気付きにくいものなの。優、一回心の専門の病院に行ってみるのも先生良いと思うよ。怪我をした、風邪をひいたと同じ事で心が傷付いているなら治して貰おうよ。それは恥ずかしい事じゃないよ。』







当日、精神科や心療内科などに行く事が恥ずかしい、変な目で見られないか…




そう思っていたあたしの心を読んだかのように先生はあたしに諭した。

No.47

あたしもこの状況から抜け出したかった。





この闇から抜け出さなければ優心達まで不幸にしてしまう。






これ以上、不幸の連鎖を繋げる訳にはいかない。






優心達にはあたしのような思いをさせたくない。






【産まれてこなければ良かった】






【何故、産まれてきたのだろう】






こんな事を子供に思わせたらいけない。






優心達への思いと、園長先生の言葉が背中を押しあたしは心の病院に行く決意をした。

No.48

心療内科は結婚前に受診した事はあったが事務的で薬だけ貰う事に疑問を感じ数回行くだけで終わった。





今度は事務的じゃ無くもっと話を聞いて貰える病院に行きたい。





あたしは近くの心療内科や精神科のある病院を片っ端から調べた。





自分が納得出来る所で今度はきちんと自分の心の闇と戦おう…






そう決めていたから。

No.49

色々探した結果隣の市にある心や精神を専門にした病院に行ってみる事にした。





ここに決めた理由は二つ。





一つ目は何人か先生がいる中で女医さんがいる事。






二つ目は病院が凄く綺麗だった事。






勝手な思い込みだけど精神科などは暗く、閉ざされた病院…




そんな偏見があたしの中にあったから…





綺麗な所なら行きやすい、女の先生なら話しやすい






その思いで決めた病院だった。






予約制なのでまず病院に電話をして受診する日時を決めた。

No.50

仕事の休みを貰い、優心達を保育園に連れて行きあたしは病院に向かった。






待ってる間かなり緊張して手が震えた。






目に見えない、自分でも分からない心の病気なのか…






不安で仕方無かった。




心の病気だと言われたら優心達を育てる資格がないと言われないだろうか…
元旦那や施設に取られないだろうか…






本当に不安で待合室で涙を堪えていたのを今でもハッキリ覚えてる。

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