産んでくれてありがとう☆『愛より』(ノンフィクション)
ある日の個人産院。
「臍の緒首に巻き付き、骨盤狭くて出られなく、赤ちゃんの頭が曲がってきてるので帝王切開します。」
陣痛が弱いまま局部麻酔。
「…あれっ。お母さん昨日お酒のんだ?麻酔の効きが悪い…。」
「いぃえ。私お酒なんかのんでません。アルコール私苦手で…。」
麻酔が効くまで待った。
「お母さん、ココ感覚ありますか?」
「あります。」
さらに麻酔。
「お母さん、これ以上麻酔できない!赤ちゃん弱って来てるから!私の手をおもいっきり握って!頑張ってよ!お母さんっ!!」
「ーっ!!!」
「痛ぁいぃーっっ!!!!」
あたしが産声をあげた。
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相変わらずのヒロヤ家。
「ちょっとー!
愛ちゃん手伝ってー!
早くー!!」
お風呂中のあたしに
義母が言う。
あたしは リンス中。
流さないまま とりあえずさっと体を拭き義母のもとへ急ぐ。
「ジャガ芋、床下から出して袋に入れてちょうだい!お隣にあげるから。」
……。
事を終え、お風呂に戻ろうとしたあたしに
後ろから義父の罵声が飛んだ。
「どしたのよー!さっさと風呂片付けろ!」
「あたし、まだお風呂の途中で…。」
「風呂に浸かったんだべ?
ならもう十分だ!
水道代いくらかかってると思ってるのよ?」
……。
あたしはリンスがついた髪を流せないまま義父が見張る中 風呂掃除をし、
自分の部屋に戻った。
「ヒロヤ…。
あたし、髪にリンスついたまま流せなかった…。
どうしよう…。」
「オヤジ寝た後こっそり風呂行って流してこい。」
「わかった…。」
夜中1時。
こっそり髪を流した。
3時間後。
「おはよー。
昨日、どしたの?
なんかお父さん炸裂してたけどぉ…。」
チカが起きてきた。
チカは最近あたしに普通だ。
チカのお腹はそろそろ産まれそう。
…そして
男の子が誕生した。
赤ちゃんにメロメロのヒロヤ家。
さすがに可愛い。
『うらやましい。
あたしも授かりたい…』
毎日そう思う。
そんなヒロヤは、まだ働き口が見つからないらしい。
子供なんて無理だ。
可愛い赤ちゃんを観察しながら変わらず日々を過ごした。
しいていえば、
あたしのお風呂の時間がさらに待たされるようになったくらい。
赤ちゃんがお風呂で排泄しちゃうから、皆の後にチカと入る。
…そして、あたしは最後の風呂掃除担当だから一番最後だと言われる。
もちろんあたしは、
湯舟に浮かぶもの次第で
湯舟に入れない事も多々あった。
『世の中にはこんないびりくらいの事されてる人、いっぱいいるょきっと!
だからあたし、すぐに逃げだしたりなんかしないもん。いつかきっとあたしを好きになってくれるまで頑張ってみせる。』
あたしはひたすら耐えた。
そんなある日の事。
あたしは出張から帰宅した。
「ただいまー。」
『…。皆の視線が冷たい。まっ、いつもの事か!』
これが義父の攻撃ラストスパートの始まりだった…。
『ヒロヤ、
いつもイビリからあたしを思いっきりかばってくれるのに、今日はなんか違う…。』
ヒロヤの態度で あたしは気づいた。
「ねぇ、今日いつもより皆すごぃ勢いで無視するし、ヒロヤも…。
どぅしたの?」
「愛。お前、本当に仕事に行ってるんだょな?」
「??
何言ってんの??
仕事してるじゃん。」
「…。ならいぃんだけど…」
「なに!?何なの??
またあたし!?今度は何なの!?」
「お前…。今日どこ行ってた?」
「だから出張行ってまっすぐ帰ってきたじゃん!」
「ふぅん…。愛?
本当の事言っていぃぞ。
今ちゃんと本当の事言ってくれたら俺、許すから。」
「!?
何の事??」
「……。
お前さ…、今日出張からの帰りの列車、乗ってなかったんだってな?
オヤジとオフクロ、
言いづらそぅに俺に教えてくれたぞ…。」
『!?!?!?』
わけわかんなぃ。
教えてくれた。 って何!?
あたしは必死に頭を回す。
「ヒロヤ、一体なんなの??」
しばらく、ヒロヤからの疑わしい目つきのまま沈黙が続いた…。
そして、
「オヤジとオフクロな、今日お前が列車から下りるか見張りに行ったんだって。
[改札口をずっと見てたけれど、愛が出て来なかった。]って…。
今日どうやって帰って来たんだ?
本当に仕事行ってたのか?それとも、男の上司と仲良く車で帰ってきたのか?」
『……。』
『また浮気ネタ……?
もぅ嫌だ…。あたし…そんなに異性にだらしのないように見えるのかな…。
そんな事、ただの1度だってした事ないじゃん…。
っていうか、
[見張りに来た]って何!?
迎えに来たとかじゃないの? ……。
もぅ意味わかんなぃ。
一体 何がしたいの?あんた達…。
何が楽しいの…?
どんな事でも耐えられる と思ってたけれど、
[嘘]は あたし、許せない…。
ひど過ぎる。
もぅこんな人達と一緒になんか暮らせない。』
あたしは決心した。
次の日。
あたしはヒロヤに言った。
「あたし、この家を出る!
もぅ耐えられない!
ヒロヤ、あんたもあたしをここまで信じられなぃなら、もぅ好きにすればいい!
がむしゃらに働いて
お金だってあたしかなり入れてんのに…。
あんたもあの人達も皆ひど過ぎる!!
あたしに一体、なんの恨みがあるの??
ここまでされる理由って何!?
あたし、あんた達にそんなひどい事 なんかしたの!?
……。」
涙が溢れる…。
『ヒロヤとずっと一緒にいたいょ…。』
「ヒロヤ…。
申し訳ないけど、あたしは この家を出てく。
あんたに嫁として
酷い選択肢をつきつけるけれど…。
親を取ってもいいから。
実親を捨てるなんて辛いでしょ。
だからあたしは1人で出てく。
今まで、ありがとう…。」
ヒロヤは 我にかえった。
「ちょっとまってくれょ! 何もそこまで思い詰めるなょ!
……。正直、俺。
今回の事は半信半疑だょ。…オフクロも、
[言いたくないけど…]って感じだったから。
…でも、お前を信じるよ!愛がこの家出るなら、俺も一緒に出る!!」
あたしは 嬉しかった。
『…でも、
ヒロヤ、あなた仕事しないじゃなぃ…。』
「信じてくれるのは、ありがとう。
でも、ヒロヤ…。
あんた働かなぃじゃん…。
例えどんなに良い男だとしても、そもそも働かないなんて論外なんだょ普通…。
例え給料が安くたって、
自分なりに頑張ってどんなところであっても働き続ける意欲のある男なら
この先もあたしついていけるけど、
今のヒロヤは…
またあたしが食べさせるなんて、もぅ嫌。
ごめん…。」
『ヒロヤと一緒に居たいょ…
ヒロヤと別れるの嫌だょ…
ヒロヤ、なんで働かなぃの…
あたしとは どうでもいぃからなんだょね…
じゃなぃと、ここまで働かないなんて ありえないょね…
ヒロヤ…。
嫌だ…離れたくなぃょ…。ヒロヤ…。ヒロヤ…。
愛してる…。』
心臓にハッカが入ったみたくなって、息が苦しぃ…。胸が潰されてく…。
あたしは近寄るヒロヤから離れた。
「ぁぃ……。」
泣いた事が無いヒロヤ。
今、あたしの目の前で泣き崩れてる…。
「……。
ごめん…ごめんな…。
俺どうしても愛を疑ってしまぅんだ…。
愛だけじゃなぃんだ…。
オヤジやオフクロやチカも…。
皆俺を ハメようとしてるんだ…。
だから俺…愛に捨てられたら生きて行けなぃ…。」
泣き崩れるヒロヤに
あたしは……。
ヒロヤを受け入れてしまった。
[恋は盲目]とは よく言ったものだ。
この時のあたしは いろんな事が見えなくなっていた。
[皆が俺をハメようとしている]
この時ヒロヤに迫っている病の このサインさえ、
あたしは 見失った…。
そしてこれが、
あたしのこの先の人生、
ヒロヤの病と戦う日々の幕開けとなった…。
[必ず働く] これを約束に 2人で家を出る事にした。
『もう1度だけ、ヒロヤを信じてみよう』
そして明日の夜、皆に告げる事を決めた。
翌日。
あたしたちは 意を決してリビングに向かう。
「愛ちゃん、私達からちょっと話があるのょ。」
義母に呼びとめられた。
「なぁに?」
「あのね、あんた達が…」
「いい!俺が話す。」
義父が口を挟む。
「あのよ。あんた、うちの家族になるのを拒否してるだろ? そんなんなら、好きにしてもらってもいいから。」
そして義母。
「…。愛がそんなんなら、 私達、チカに面倒見てもらうから!! 好きにしなさい!」
『????』
いきなり、わけのわかんない総攻撃を受けた。
あたしは キョトンとした。
「ぇ…?何?
[そんなんなら]って、何?なんなの一体!
あたし、何をしたっていうの? あたしがどうしたって?」
あたしは義父母に初めて怒りをあらわにした。
『もぅこの際言ってやる!』
「なんでお義父さん、あたしをそんなに目の敵にするの!?
あたし、お義父さんにそんなに恨まれるような事 何かした!?」
「あんた、
家事もろくにしないでフラフラしてるだろ!
それにまた、チカの悪口言ってるっていうじゃなぃか!」
「??
家事もしないでフラフラ??チカの悪口??
今度は何なの!?
あたし…」
ヒロヤが入ってきた。
「おぃ!いぃかげんにしろ!愛が何したっていうんだ!少しやり過ぎだぞ!!」
義父はとても興奮しだした。
「!!
…お、お前も愛の味方か!わかった!!…もういぃ!!」
「何がいいんだ?
俺達、この家出てくよ!!」
こうして
あたしたちは ヒロヤ家を出る事になった。
『この家に移る時、
お義母さんに 念おしたら
[大丈夫。私がいるから]
って言ってくれたのに…。
また引っ越し費用…。
どうしよう…。
ひどいょ…。
あたしの収入無くなっても大丈夫な[何か]ができたんだ…。
じゃないと お義父さんは
利益がまるまる無くなる事は絶対しない人だし…。
お義父さん、次々とでたらめ並べて平然とあたしに言ってきた…。
なんて人なんだろ…。
あたしに出ていって欲しくてこんなひどい事までするなんて…。
入れって言った以上、出てけ とは言えないから
自主的に出てくれるように仕向けてたんだ…。
今までの事、全部つじつま合うもん。
あたしがお金、しぶった時から始まったっけ…。
……。』
あたしはいろいろ考えた。
考えた事、ヒロヤに話した。
「愛が思った事は、その通りだと思う。
昔からオヤジは、自分の都合の良いように人を駒として使う奴なんだ…。
オフクロは、純粋すぎるからいつもオヤジに洗脳されるんだ…。
俺も今まで散々やられたよ。
今度こそ優しくしてくれると期待した俺がバカだったよ…。ごめんな…。」
『ヒロヤ…。お父さんに愛されたかったんだね…。
あたしも…。』
家を探しだしたあたしたち。
見つかるまでは 当然ヒロヤ家にいる。
だから、一刻も早く見つけなきゃ!
「ヒロヤ…。引っ越し費用どぅしよぅ…。」
「…本当。
ごめんな愛…。
入れって言って俺ら家引き払って、今度は出てけなんてょ…。
オヤジ、出てけとは一言も言わないで
俺らに是が非でも出てくように仕向けたから、たてまえは 俺らが自分達で出てく事になったしな…。
こんなのオヤジが俺らに引っ越し費用出すべきだろ!!
…ごめんな 愛…。」
そして、
見つけた借家。
古いから すごく家賃が安かった。
あたしたちは そこに決めた。
出ていく日。
荷造りするあたしたち。
異様な空気がヒロヤ家に漂っている。
「愛ちゃんこれ、あなたたちの物じゃなぃ?
段ボールに入れとくね。」
義母が荷造りを手伝ってくれている。
義母。
本当に純粋でまっすぐな人…。
あたしに対して申し訳ないという気持ちが
表情や行動から イヤというくらいに にじみ出ている。
引っ越し用のトラックを
レンタルし、
ヒロヤが戻って来た。
ヒロヤとあたしは
荷物をどんどん乗せる。
義母も乗せてくれている。
そんな義母を、遠くからにらみつけている義父。
義母は乗せるのを止めた。
最後の段ボール。
あたしは持ち上げ歩く。
ソファーに座って
あたしたちを見ていた義父とチカ。
義父の突然の大きな声で
あたしは 振り向いた。
「チーちゃぁん。お前はお父さんの可愛い子ちゃんだもなぁ~♪
よしよし。
なぁ、チーちゃぁん♪」
………。
チカが義父に頭をなでなでされている…。
胸がツキーンとなった。
父を亡くしたばかりのあたし。
悔しさに涙が溢れる。
ヒロヤもまた 辛かったに違いない。
義父は あたしたちに 最後の最後まで辛い仕打ちをした…。
あらたな家に引っ越したあたしたち。
引っ越し費用は
あたしの給料と、
足りない分は初めて作ったクレジットカードで借りた。
「愛、本当にごめんな…。
ボロ家になっちゃったけど、でもこれからは俺ら2人だし、
もうあんなひどい事される事から解放されたしさ。
俺も絶対仕事見つけるから。」
「これでいっけんらくちゃくぢゃ無いんだからね!
あたし、ヒロヤん家出る前、
[ヒロヤが働かないなら離婚する。一緒に住まない!]
って約束したのを、絶対忘れないでね!!」
「もちろんだよ愛。」
こうして あらたな生活が始まった。
ヒロヤは 毎日仕事を探しに出かけ、
あたしは 今までの仕事を続行。
『あたし仕事頑張って、
あたしたちの人生の太いレール引いておくから…。
ヒロヤ、仕事見つかったら
いつでもあたしが引いておくレールに乗っかってね。
そしたら2人で新しい家族を作って幸せになろうね。』
あたしは これから軌道に乗ると信じてた…。
でも あたしたちには 悲痛が待っていた…。
引っ越してから1週間後…。
ヒロヤの様子がおかしい。
「オヤジは俺が嫌いなんだ。
昔俺が小学生の時、
部活でやってた野球のレギュラーに選ばれたんだ。
俺、めちゃくちゃ嬉しくて試合を見に来てくれたオヤジに 何度も照れ笑いしてたんだ…。
俺の番がまわって来た時、オヤジは俺を見ていなくて、他の親達の中にいたんだ。
そして『こんなクソオモシロクナイ試合なんて見てられるか!!』って
皆いる中で怒鳴りちらしたんだょ…。
親達は白い目で見るし、
先生もタジタジしてさ…。
次から俺、レギュラー外されたんだょ…。」
さらにヒロヤは話す。
「俺がすごく小さい頃、
オヤジが仕事から帰って来た時、『おかえりぃ~♪』ってオヤジに玄関で飛びついたらオヤジ、
『あっちいけ!!』って
俺を手でぶっ飛ばしたんだ…。
中学ん時も、
寝ている俺の腹をいきなり蹴飛ばしたり、ヤカンで水ぶっかけたりしてたんだ…。
……。俺…。
結婚して親と同居して子供ができて…。
皆で楽しく暮らすのが夢だったんだ…。
年月経ったし、オヤジも変わったと思いたかった…。」
ヒロヤ…。
泣いてる…。
「ヒロヤ…辛かったね…。
そっか…。
お義父さんホントひどいね…。
ヒロヤ? お義父さんに執着するのもぅやめよう…。
可哀相だけど、執着したらまたヒロヤが傷つく…。
ヒロヤの夢、あたしも実現させたかった……。」
ヒロヤは涙を落としながら
赤い顔して必死に涙をこらえてる。
胸が痛かった。
そんなヒロヤ…。
あたしの言葉は通じなかった。
悔しさからか、
お義父さんへの気持ちが
日を追うごとに
どんどん攻撃的なものへと変わってく…。
そして…。
ヒロヤは
ヒロヤ家を出て2週間後、
人格が変わってしまった。
今、あたしの目の前にいるヒロヤ。
何もしゃべらない…。
しきりに 外を気にして
何故か外を怖がり、
1歩も外に出なくなった…。
そんなヒロヤを あたしは
なだめながら会社に出かける。
「ヒロヤ?1人で大丈夫?
お昼作っておいたから、きちんと食べてね。」
変わり果てたヒロヤを目の前にすると、
[仕事してよ!]という気持ちをあたしは言えなかった…。
「行ってくるね…。」
会社に向かったあたし。
ヒロヤが気になる。
『ちゃんとご飯食べてくれるかな…。』
会社に着き、仕事を始めた。
『んっ…。なんか吐き気する…。気持ち悪ぃ…。』
あたしは 吐き気がひどくなりトイレに急いだ。
『…。
全然よくならないな…。
なんか2日酔いみたいな気持ち悪さ…。
お酒なんかのんでないのにな…。』
1日中吐き気が治まらないまま仕事を終えた。
『ヒロヤの事心配しすぎてるから精神的なもんかな?』
あたしは さほど気にしなかった。
「ただいまぁ」
ヒロヤはベッドにいる。
「きちんとご飯食べた?」
「…ぅん。」
冷蔵庫には、食べかけのお昼ご飯が入ってる…。
「全然食べてないじゃん。ダメだよちゃんと食べないと…。」
『ん…。気持ち悪い…。
なんで吐き気治まらなぃのかな…。』
次の日も、その次の日も、吐き気は治まらない。
それどころか 日に日に酷くなる。
精神的なものだと思っていたあたし。
10日も続き、女の子の日も来ない。
精神的なものでもこんな事になるって 聞いた事あるけれど…。
でももしかして…。
妊娠検査薬。
[陽性]
あたしは妊娠していた。
「ヒロヤ…?
あたし毎日気持ち悪いって言ってるでしょ…
あたしね…
妊娠してるみたぃ…。」
青ざめてくヒロヤ。
あたしは こんな反応わかってた。
今の状況じゃ当たり前だもん…。
でも…
悲しかった…。
「俺…。ごめん…。」
あたし…。
どうしたらいぃの…。
ねぇ…
どうしたらいぃの…。
翌日。
あたしは病院へ行った。
「おめでとうございます。
もうスグで3ヶ月ですね。」
あたしは
ヒロヤ家に住んでいる時に
妊娠していた…。
エコーに映るあたしの赤ちゃん…。
『あたし…。
どんな事してでも産む!』
無謀だとわかってる。
でも、命をあきらめるなんて絶対にイヤ。
赤ちゃんに罪なんて無い。
『ママの出来る限り、あなたを幸せにする。
ママどんな事だってするから!』
心に決めた瞬間だった。
お腹の赤ちゃんを育てていく為には
今まず、どうしなきゃいけないのか。
育てていける環境にする為には どうしたらいいのか。
必死に考えた。
数日経った頃。
あたしのお腹に激痛が走った。
『ぃた…ぃ……。』
凄まじい出血。
胸がツキーンとした。
『まさか……!?』
病院へ走った。
『嫌だょ……
お願い…お願い…
赤ちゃん頑張って…』
…。
あたしの赤ちゃんは
天国へ行ってしまった…。
ヒロヤは、あたしに何を言う訳でもなく
変わり果てたヒロヤのまま
ただベッドで横になっている…。
……。
あたし……。
もぅ嫌だ……。
なんでこんな事ばっか…。もぅ嫌…。
赤ちゃん…。
ごめんね……。
ママが弱いから悪かったんだょね…。
ママ…あなたのとこに今行くね。
ここにいても ママ悲しい事ばかりだから
あなたのとこに行ってもいい?
そばにいって一緒に楽しく暮らしたいな?
ママ、あなたが必要とする限りあなたのそばから離れないから、
いっぱい甘えてね。
……あたしは 包丁を手に
自分の首に持っていき
切りかかった。
次の瞬間、
別の部屋にいたハズのヒロヤがうしろからあたしの手を
わしづかみ、包丁を取り上げた。
あたしは不意をつかれ、
少ししか首を切れないまま、見事に包丁を取られた。
「ぁぃ………。」
ヒロヤが泣き崩れてる…。
『ぁたし……。
赤ちゃん………。』
「ぅ゛わーーんっ!」
あたしは大声で泣いた。
あたしたちは ボロボロになっていた。
ヒロヤは なにも話さず、
あたしを抱きしめた。
『ねぇヒロヤ…?
あたしたち、どぅなっちゃうの…』
あれから数日…。
あたしは しばらく会社を休んだ。
会社も あたしの吐き気でなんとなく察していたらしい。
休みを取っても
会社は優しかった。
「もしもし愛?
お母さん鍵なくしちゃって家入れないの。
迎えにきてー。
お父さん家にいるから淋しがってるから、
早く来てー。」
母から電話が来た。
『あたし それどころじゃなぃょ…。
[お父さん家にいる]って
何言ってんの!?
お父さん死んだでしょ!!
頭おかしいんじゃない!?』
母に即座に苛立ったあたし。
「鍵なくした!?何やってんの!?
お父さん家にいるって!?
お母さんっ!
いいかげんにしてっ!!」
小さくなった母の声。
「…。だって…
お父さんいるんだもん。
私お父さんと話してるもん。だから鍵…。」
……。
あたしは 母を迎えに行った…。
あたし25歳。
ヒロヤは 引きこもったまま
外に出ない。
出ないというより、
出られないらしい。
8ヶ月間 ヒロヤは引きこもった。
あたしは現実を
何がなんだかわけがわかんなくなり、
[離婚]という言葉すら考える隙間がなくなったまま
ひたすら仕事を続け、
ヒロヤの世話をし、
母や妹を助ける日々が続いた。
ヒロヤは 8ヶ月引きこもったのち、
だいぶ外に出られるようになった。
『きっとヒロヤ、欝状態だったんだょな…。』
……。
これから待ち受けるヒロヤの現実は、
そんなんじゃなかった…。
『お母さんも、お父さんしんじゃって少し欝状態になっちゃったんだょきっと…。』
……。
これから先に待ち受ける
母の現実も、
もっともっと辛いものだった…。
「お前、仕事帰り実家に寄ってきたとか言って、
ホントは浮気してるんだろ!」
「オヤジは俺を
おとしいれようとしてる。愛をいびって俺と離婚させて、結局は俺がオヤジの駒にならないからって
俺を気に食わないから、
俺の人生が落胆するのを楽しんでやがるんだ!」
「チカの旦那は確信犯だ!
あいつは建てたばかりの家欲しさにチカを妊娠させて、兄貴の俺を追い出したんだ!」
…義父は、
「おまえらが離婚しないなら、おまえらの子供は孫とは思わんからな!!」
とチカを脅しにかかり、
現在、
チカ夫婦を離婚させて
チカは母子手当、
チカの旦那は地方に働きに行かされて、給料を根こそぎ取られているらしぃ。
義父は、とことん腐ってる。
あたしは腹が立つのを通り越してる。
ヒロヤ…。
毎日、そんな事ばかり言ってどうしちゃったの?
ヒロヤは毎日毎日、
[今までの流れからしたらそんな気もするが、根拠も証拠も無い勝手な妄想]
を、さも
現実のように興奮して話している。
あたしがいつものように仕事に行っていたある日。
あたしのケータイがなった。
『お義父さん!?』
何故義父から今 電話がきてるのか
わけがわからないまま
あたしは電話に出た。
「もしもし…」
「もしもし。愛か?
久しぶりだな。元気か?」
『…1年半もご無沙汰のあたしに、今さらなに』?
「ぁ、ぅん…。
どぅしたの…?」
「……。あのさ、愛に話があるんだよ!」
『家追い出された時、…ってか、たてまえ自分で出たけど
そん時あたしに[あんた]呼ばわりしてたくせに
今また[愛]って名前で呼んでるし…。
話?あたしはあんたに話なんか無いけど…。』
義父に対するあたしの心の悪態が吹き出る。
「今日、時間あるか?」
「今日は仕事です!最近休みはありません!」
本当に休みがなかった。
「じゃぁ、休憩は何時だ?」
…こうして義父は
あたしの休憩時間に現れた。
「おっ。久しぶりだな。」
「ぅん…。お義父さん、
あたし45分しか休憩ないから…。」
「そっか、車に乗って話そう。」
義父の車に乗った。
「…ヒロヤ元気か?」
『元気じゃなぃよ!!あんたに痛めつけられて、ヒロヤ
ボロボロだよ!!』
「…ぁ、ぅん。
…ていうか、今日どぅしたの?」
「…。ぃゃ…。
あのよ!俺ら家族じゃなぃか!!」
『はっ??何このタイミングで、あたしとあんたが家族!?』
「……。ぅん、どしたの?」
「ぃやさっ、愛の通帳と印鑑を俺に預けてくれなぃか?」
『はぁっっ!?!?』
意味わかんなぃ!!
家族だから通帳と印鑑預けろ!?
『どういうことなんだろ!?』
「お義父さん。理由聞かせてもらっていぃ?」
「いやさー!!
あんたの悪いようにしないから!!
ちゃんと迷惑かけないように 俺らで返してくから大丈夫だから!!」
『はーぁっ!?!?
返してく!?大丈夫だから!?何それ!
あたしの通帳と印鑑使ってお金借りるつもりなの!?
ってか、またあたしの事、[あんた]って呼んでるし』
「ちょっちょっと待って!
お義父さん、何に使うの?」
『こうなった以上、あたしには聞く権利がある!』
「ぃや俺ら家族でしょー。
大丈夫だから!!
通帳と印鑑預けてくれるだけでいいから!!
今日来た事は誰にも内緒でな。」
同じ返答の繰り返し。
この人、ラチがあかない。
あたしは 「一つ返事はできません。」
と、義父にお引き取り願った。
『あんな状態でお別れして1年半も音信不通だったのに、いきなり無茶苦茶!』
仕事に戻ったあたしは、
イライラしていた。
帰宅したあたし。
義父の[内緒でな!]なんて一方的な言葉、守る気は無い!
ヒロヤに話した。
ヒロヤは大激怒。
そりゃそうだ…。
ヒロヤは怒鳴りながら
すぐさま実家に電話し、
翌日実家に出向く事になった。
実家に出向くと決めたはずの義父から、また電話がきた。
「悪いけど、明日都合が悪くなった。他の日に会わないか?」
あたしたちは違う日に合う事になった。
でもヒロヤの怒りはおさまらない!
ヒロヤは 電話を切った足で、すぐさま実家に飛んで行ってしまった。
あたしを置いて…。
夜12時半。
戻って来たヒロヤ。
「おかえり。遅いょ…。」
「あのさ、オヤジお前の職場に来た。って本当の話?」
『えっ!?!?』
「俺、怒鳴り込んで実家に入ったらオヤジにびっくりされて、
あまりに冷静にびっくりしてたオヤジだったから、
俺もきちんと愛に聞いた事話して、
オヤジとオフクロにキレたら、
オヤジ、
[愛の会社になんか行ってないぞ。愛は、そんな嘘まででっちあげるのか!!]
って逆に怒り狂ったぞ。」
『はぁ!?なんなの!?
…あっ、内緒とか言ってたから、あたしの会社に来た事が皆にバレたらまずかったんだ…。
だからシラバックレテ、逆ギレしたんだ!!』
「お義父さん、皆に内緒って言ってたから、あたしんとこに来たのが家族に知れたらまずかったんじゃなぃ?だから、小芝いしたんじゃなぃ?」
「…。あのさ、オヤジとお前の間に挟まるの疲れたよ。どっちが本当の事言ってるか、毎回考えるの疲れる…。」
「はぁ!?あたしがまた信じられないの!?
もぅ嫌だ!知らないっ!
あたしがもぅ疲れたよ!
別れるわあんたと!
もぅ、うんざりっ!!」
「ぃや、そうじゃなくて…。お前をもちろん信じてるけど、なんでオヤジと愛は
ここまで馬があわないのかと思って…。」
『ヒロヤ、意味わかんない。
ヒロヤだって同じでしょ!』
あたしは 興奮で頭が整理つかなくなっていた。
今までヒロヤもあたしも
義父からいろんな事されてきたのに、
それでも頭からあたしを信用してくれないヒロヤに腹が立ってヒロヤに冷たくあたるあたし。
数日後、
ヒロヤのケータイに義母から電話がきた。
「近いうちに会えない?」
そしてあたしは怒りがおさまらないまま
外で義父母とおち合った。
『なんで外なんだろ…。』
ヒロヤとあたしと義父母4人。異様な空気だ。
腹が立ちすぎて、あたしは言葉を出さず、
黙って話を聞く。
「あのね…。
どうにか通帳貸してもらえないかしら…。
愛ちゃんに絶対迷惑なんてかけないから……。」
『どうやら義父母2人での話だ。
どうにかあたしに貸して欲しいらしぃ。
たぶん、
義母には何も言わず、義父は独断であたしの会社まで来たのだろう。』
義父は一言も話さず、義母ばかりあたしに話す。
ヒロヤがたまらず口を出す。
「おぃ!何なんだよ!!
通帳と印鑑なんて、貸す訳ないだろ普通!
何考えてんだよ!!」
あたしは口をはさんだ。
「お義母さん?一体どういう事か説明して欲しいんだけど…。」
「私達仕事が無いし、
チカも仕事してないし、
タカヒロさんも仕事が安定した会社じゃないから、銀行から融資出来なかったの…。
今お金が必要で…。
愛ちゃんなら、きちんとした会社に長い間勤めてるから融資できると思って。」
『は??お金が必要!?
あたしにあんな事しておいて、このうえさらにあたし名義で借金するって事!?
ふざけるのもいぃかげんにしてよ!!』
「…。ごめんなさい。
あたし実は、いろんなところから借りていて、
今 融資不可能になってるの。
だから、銀行はおろか、どこからも借りる事は出来なくなってる状態で…。」
あたしは嘘をついた。
本音を言ってやろうと何度も思った。
でも、こんな両親でも
紛れも無くヒロヤの実親…。
例え どんな親であっても
実親ならいつか息子に優しくしてくれるかもしれない。
いつか 親子が和解する日が来るかもしれない。
だから…。あたしは、
あたしだけの感情をこの人達に押し付ける事をせず、あたしごとでヒロヤ親子のシコリを少しでも作らないようにしてあげたぃ…。
あたしは義父母に嘘をつきとおした。
義母が話す。
「…愛ちゃん、なんとかならなぃのね。
……。仕方ないよパパ…?」
義父は沈黙する。
そしていきなり義母が大きな声で言った!
「愛ちゃん!
愛ちゃんがそんな状態じゃなければ、お願いするとこなんだけれどっ!!」
『……!?
…なんでそんな強引な言い方!?』
この人達、凄すぎる。
『何かしらで切羽詰まったのはわかるけれど、
今まであたしにしてきた事を棚に置いちゃって
あたしに頼む事じたい
びっくりだし、
そもそも頼むっていうよりこの人達のやり方や言い方、半ば恐喝じみてるょ…』
あたしは腹立ちを通り越し〔この人達、あっぱれ〕
という感情がめばえた。
あたしはヒロヤを見た。
『ヒロヤ…。お願い、あたしに話を合わせて…』
ヒロヤの表情が怒りに満ちている…。
「俺ら、そういう事だから。悪いけど!!」
こうしてあたしは、
通帳と印鑑を渡す事を拒否できた。
帰宅後…。
ヒロヤは怒り狂っている。
「愛、あいつらに近づいたらダメだ!
ホネのズイまでしゃぶられるぞ!!
俺の親にはもう近づくな!あんなの親じゃなぃ!!」
そしてあたしたちは
再び義父母と距離を置いた。
あれからヒロヤは、
ヒロヤなりの[攻撃的な話]が多くなった。
「オヤジ、今静かにしてるだろ?また水面下で俺たちを狙ってきてるぞ!」
「チカの旦那は、今頃俺達を追い出したからウハウハしてるぞ!」
……。ヒロヤの話は、
〔そうに違いない〕
では無くて、
〔そうなんだ!!〕
という 確信を得た話し方をしている。
全てを〔そうなんだ!!〕と決め付けてる…。
日に日にエスカレートするヒロヤ。
「俺達の目の前にある家あるだろ?
俺気づいたんだ!
俺達が出掛けたら青いフキンを外にかけて、
俺達が家に居たら赤いフキンをかけてるぞ!
俺達がいなくなったら、俺達の話をするのに近所で集まる為なんだ!」
びっくりしたあたしは
ヒロヤに話を返した。
「そんな訳ないでしょ。
あたしたちをそこまで集中して見張って、何があるっていうの?」
「お前はバカだから気づかないんだ!近所は俺達の親世代だろ?俺達が若いから、[何か悪い事してる]って皆監視してんだぞ!」
『……。』
>> 249
死亡届けは葬儀屋が出す❓
そんなバカな😱
普通で考えて…身内が出すに決まってるじゃないですか💨
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