NO TITLE②
本編満レスとなりました。
長々とお付き合い頂き心から感謝致します。
引き続きどうぞ宜しくお願い致しますです。
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城の意識が戻って
俺の名を呼んだ
もう大丈夫
城は強い奴だから!
そう思った鏡は徹に
任せたと一言置いて
浴室を出た
暴力はいけません
暴力は暴力しか生まず
暴力によって得られるものは
何にもございません
分かってます
分かってますよ…
昔アホやってた俺自身が
一番よく理解しています
城には見えない
この場所だからこそ
たった1度いま1度だけ
許してください…
痛みを知れ
傷は勿論…心の痛みを
テメェが親父にやられた時の痛み
それを虐待だと
親父を責めるくらい
痛かった記憶があるなら
テメェでストップかけろ
そうすれば
世の中こんな連鎖なんか
悲しい連鎖なんか
生まねぇんだ!
頑張れシンジ!
もう遅いけど
城を泣かせた分
城を傷付けた分
城を裏切った分
城を愛さなかった分
全ての怒りをこの右手に込め
俺はお前を打ちのめす!!
テーブルに腰掛け溜息をつく
血の気の引いた男の顔
目を赤く潤ませた
赤い野獣の鋼のような拳は
彼の顔面めがけて
炸裂した…!
徹は城の肩から湯をかけ
温めながら体温を調整
冷え切った体は
段々と火照り血色を取り戻す
よく見れば
下半身にうっすらとした
火傷の痕…
あんなに
熱湯や火を怖がっていたのに
また火傷…
前までは無かった
あったとしても
区別がつかなかった白髪…
城のことだから
この先ずっとまた
気にしていくんだろうと
そう思うと辛くなる…
過去の傷痕の上に
更に刻まれた傷
腫れた頬
切れた唇
きっとまた1人
ずっと耐えて戦い続けたんだ
胸が締め付けられた
手足を拘束され口にテープ
浴槽に浸かった姿
正直もう手遅れで
全て遅かった
終わったと思った…
よく生きていてくれたと
思った途端
自分でも驚くほど
涙が溢れてきた
『虐待なんて言葉じゃ片付かねー…。』
突然また城が目を覚ます
今度は焦点も定まり
大きな目で徹を見詰めた
『徹、泣いてる…。』
『泣いてないよ。顔洗ってたんだ。城君、俺達来るまで戦ったろ。部屋とあいつの顔見ればわかる。男だな。格好良すぎる(笑)。俺も見習う。』
その言葉に
顔を歪ませて唇を震わす
そしてまた
ガクッと落ちてしまった…
『…痛てぇ…!』
男の口と鼻から血
立てずに四つん這いになり
伏せて悶える
鏡はまた近付いて
髪を引き顔を上げさせた
『痛み感じるのか。テメェみたいな奴でも。』
『これだから力しか無いバカの低脳職は…!』
『職種は関係ねぇ。。』
『訴えてやるからな。』
その言葉に鏡は
言葉を詰まらせた
『…本気かよ…?』
『当たり前だ!不法侵入と傷害、恐喝、殺人未遂…何でも取り上げてやるってんだよ!』
また胸倉を掴んで立たせ
壁に叩き付ける
『そういう意味じゃねぇんだよ…!自分のしてきた事はどうだって話だ!何テメェがやってきた犯罪並べてんだ、正真正銘の馬鹿!!これ以上呆れさせんな…訴えた所でテメェが城にやったこと暴露して終わり!俺が持ってる証拠品で完敗!なぁ…マジで言ってんのかって。答えろ!本気かって!!そんなことも理解出来ねぇほどオツムの味噌腐ってんのかって!!俺が言いたいのはそういうことだクソッタレ!!』
そしてまた床に投げ飛ばした
徹が城を洗い
抱き抱えてソファーに寝かし
バスタオルを取りに行く…
『徹…意識は…?』
『オチた。病院行くか?』
『…いや。』
暗闇になっては光がさして
何度もそのくり返しで
ずっと考えてたこと
光がさしたときは
鏡と徹が来てくれた
いつもの格好で
見つけてくれたんだ
やっぱり格好いいでしょ
おれの父さんと兄貴…
おれのじまんだった
鏡があいつをうちのめす声が
たくさん聞こえて
もっともっとやってって
ずっと思ってたよ
徹がおれの体を大事に
痛まないように動かして
服を着せてくれてるのも
わかってた
おれのために来てくれた
おれを大事にしてくれてる
それだけで幸せ…
そしてまた暗闇が来たとき
どうして見つけたの
どうして水から助けたの
どうして
死なせてくれなかったの
もうすぐで
おれ気持ちよく死ねたのに
もうすぐであいつら
世間から冷たくされたのに
鏡と徹を恨みました
病院も警察も嫌だ…
がんばって起きるから
病院でたくさんの人に
見せないで
警察呼んで
おれの話を大きくしないで
こわいんだ
鏡と徹がいれば
それだけでいいんだって
暗闇と光の
変な感じの中で
ずっとずっと思ってて…
起きろ頭
動けよ体
がんばれ
がんばれよって
変な感じの中から
逃げだそうとしてたんだ…
城の意識が無いと知った鏡は
また男に視線を落とす
服を掴み引き上げ城の方へ…
『見ろよ、テメェがしたこと。』
『…。』
『信じて許して期待を持って一緒になることを選んだ結果が…純な心を裏切った結果の姿だ。死ぬ所だったんだぞ!』
男は思い出すように言う
『…死にたかったんだよこいつ。殺せって喚いてたし…手に負えない。死んで捕まってもそれでもいいかって思えてつい…抵抗の仕方が半端無いから疲れて…。』
体を拭きながら徹が睨んだ
鏡も抑えられない怒りを
またぶち撒いた
『人の命を何だと思ってんだよ!!勝手に終わらせんな!自分がやってきたことの結果じゃねぇか!…お前とジジィと…どれだけ自分可愛いんだ…被害者ぶるなよ!!この城が手に負えない抵抗をしたくなるほどの傷を負わせたんだよ、テメェが!!』
男をまた壁に叩き付ける
渾身の力で…
そのまま床に倒れた所を
また掴み起こす
『休む暇なんか与えるか!城はもっともっと痛くて恐怖だったんだ!!』
また打ちつける…
何度も繰り返したところで
男は起き上がれなくなった
徹が城を呼び続ける
体温が少し低いと
毛布を運び必死に温め続けた
『城の苦しみ…悲しみ…絶望に比べたら…これからの精神面での…心の傷との格闘に比べたら…テメェなんか…俺がこの手で息の根止めたとしても…それでも足りないくらいだ!』
息を切らしながら吐き捨てる
車のエンジンをかけ
暖めてくると徹に言い
出て行った
静まり返った部屋に
徹の声だけが響く
『起きろ…目、覚ませよ…起きて俺を安心させてくれ…。』
男は痛々しく立ち
徹に声を掛けた
『…寝てるだけじゃないのか…水…そんな長時間浸かった訳でもないから…。』
『時間の問題じゃないだろ?こんな脂肪も無く骨みたいになった体で、傷を負って…芯まで冷え込むのどれだけ速いと思う。本人がもう生きたくないなんて気力すら失ったら体だって頑張りはしねーぞ?体温が上手く上がらない…手足が冷えて…体温計あるか?』
徹は渡された体温計を挟み待つ
鏡が戻ると同時に病院を勧めた
『…いや…病院は本人が…もう少し何とか…。』
『手遅れになったらどうすんだよ。最悪の事態になったら。』
鏡も城に触れ様子を伺う
35度…
男は毛布をもう1枚出し
城の足元に巻いて呟いた
『手足、さすってみるか…?少しは違うかな…。』
城の頭側から
両手で頬を温めながら
顔を覗き込む鏡…
『城~起きろー。帰れるんだぞ!せっかく迎えに来たのに。寝るなんて失礼じゃねぇ?もしかして怒ってんの?今頃遅いんだバカ!バカ徹!って。ごめんな~徹なんかのために謝りたくないけど、仕方ねぇ。代わりに謝るわ(笑)!』
『は?…城君、起きて言ってやれ。鏡が通報されたくらいで逃げ出さなきゃもっと早く来れたんじゃないの?34にもなって俺よりお子ちゃまなんだね、いい加減しっかりしてくれないと俺、鏡と歩くだけで恥さらしだよ、勘弁してよね!って(笑)。』
徹が顎を上げて
鏡を嘲笑いながら見下す
『な…お前だって逃げたろ!』
『当たり前だ。アンタなら1人で勝手にひとの車で逃げかねない。現に運転席乗ろうとしたじゃないか!』
『運転してやろうとしただけだって。気遣い!』
『無い無い!昔何度置いてかれたことか。』
『何度って、学ばないお前にも問題あるだろうが!』
『学ぶ学ばない以前に、逃げ足だけは速いから追い付けなかっただけだ!』
『自分の鈍足をひとのせいにすんなって!』
『何かムカつくな。』
『あ?』
『…やるか?』
2人はフンとそっぽを向いた
意識がなかったんじゃない
寝てたわけでもないんだ
どんなにがんばっても
体が動かなかった
がんばれがんばれって
自分に言ってたけど
全然ダメで…あきらめた…
あいつらのせいで
やっぱりおかしくなった
やっぱりこのまま死んで
嫌な思いさせてやろうって
あきらめた…
おれが死んで
警察につかまるのは平気でも
世間に冷たくされるの嫌だろ?
だからやっぱり…
そう思って
暗闇が広がった時
急に顔が温かくなった
前におれを
見つけてくれた時と同じ
温かい鏡の手だってわかった
鏡と徹のいつものやり取り
ずっと聞こえてた
鏡、通報されたの?
つかまらなかったんだ…
良かった!
徹も逃げたのか
2人の昔はわからないけど
ずっと一緒だったんだね
それなのにどうしてケンカになる?
おれも一緒に話してたんだけど
2人には聞こえなかったみたい…
光に変わった
明るくなってきて
やっぱり鏡と徹といたい
生きたいって
死ぬのはやめよう
痛くて苦しいからって
そう思った時…
体が一気に温かくなって
気持ちよくなって…
体が…軽くなりました
そしてやっと
目が開きました
男は2人のやり取りを尻目に
汚れた顔を洗い流してから
水枕を荷物から探し出し
熱めの湯を入れ
言い合いをする鏡と徹の間に
割り込んだ
毛布をよけ
城の背の下に置き
またサッと毛布を戻す
そして
すぐその場を離れ
少し距離を置いて床に座り
壁によりかかった
一切口を開かずに…
唖然とする2人
徹が振り向いて言う
『得点稼ぎか?こんなことしても俺は許さない。意識戻って落ち着いたら警察に引き渡してやるよ。機関利用してやる。』
鏡は徹の肩を押さえ男を見る
『そういうこと出来るんじゃねぇか。今の城の本当の父親だった。まぁ、言わせてもらえば本当の父親以上の、城にとっての最強の父親は俺だけど!』
そう言ってハッと後悔する鏡
俺にヤキモチ妬いてるのに
助長させちまった!
ま、どうでもいいや(笑)
城に視線を戻し呼びかける…
『これでだいぶ温まってきたかも…あ…あぁっ…城!』
『起きた!城君おはよう。』
城の目は
覗き込む鏡をしっかり捉え
次に徹を捉える
徹の挨拶に
小さな小さな声で反応
『…お…はよう…。』
鏡と徹は
満面の笑みで城をクシャクシャに撫で
沢山沢山褒め続けた…
鏡と徹が笑ってた
今まで見たどんな笑顔より
ずっとずっと嬉しそうな顔で
沢山褒めてくれた
やっぱり
死ななくて良かったって
生きてていいんだって
安心したんだ
体が言うこと聞かなくて
暗闇が広がったあと
鏡の手と2人の会話で
周りが明るくなって
体が一気に温かくなったとき
やっと動けたって話したら
あいつが背中に温かいやつ
置いてくれたからだって
鏡に教えてもらっておどろいた
本心はうれしかった…
でも2度と信じないよ
許すことはないし
大嫌いな気持ちは変わらない
一緒にはいられない
一緒にいたくない
顔も見たくないんだ
もうこんなの嫌だ…
おれは自分で自分のことを
片付けなきゃと思って
あいつに言わなきゃと思って
起き上がろうとした
でもまだ起きれなかった
鏡と徹が
手伝って起こしてくれたけど
ひどい頭痛で倒れそうだった
でも自分で1度
鏡たちをうらぎったから
次は自分から言わなきゃ
進めないことだからって
あいつの目を見て
最後に…
最後に
大きい声ではっきり
あいつに言ってやったんだ…
:
男の家を出て運転席に座る徹
鏡も続いてドアを開けた
城の荷物は着ている衣服のみ…
今度は間違いなく3人
城は頭痛がするからと
うつ伏せに倒れ込むように
後部座席に横になる
…徹の車の懐かしい良い香り
徹が鏡に何か話しながら
ダッシュボードから封筒を取り出し
渡しているのを見ていた
『鏡…上着…ちょうだい。』
『ん?上着?…ホレ、鼻水つけんなよ(笑)!』
つけないよ!と言いたげに
膨れた顔の城は仰向けになって
頭から上着を被って寝たフリ決行
…鏡のタバコの匂いが染みた上着
タバコは怖いけど
この匂いは落ち着くんだ
『城、10分くらい徹と待ってろよ!寒くねぇか?』
『…寒くな…い。』
上着を被ったまま
弱々しく返事をするその姿に
鏡はまた笑う
上着に隠れて
泣いてるのを知っていたから…
徹は音楽のボリュームを下げて
そっとしておいた
また階段を上がり
男の部屋へ上がる鏡は
まるで自分の家のような態度で
ソファーに座らせる
『いいから、グダグダ言わねぇで座れって!』
『…今度は何だ…。』
『ただの確認だけどよ。』
『確認?』
封筒を開けて紙を広げた
『最後の最後まで城を泣かすなんて…もう溜息すら出ねぇし。少しでもさっきの父親らしい行動に感心してしまった自分を悔やむよ俺は…。契約書…違うな、宣誓書…念書…念書って言うのか。要するにこれ見ろ。んで、サインと印!』
男は徹がこの日の為に作成した
紙面の内容を読む
私こと父親・佐伯シンジは息子・城に対し、証拠品に収められた虐待行為・内容を全て認め、希望通り神崎鏡矢と共に生活することを許可し、本人が望み許すまで決して近付かないこと~…を約束します…
そういった約束事が
紙面一杯に書いてあった
『こんなの…!』
『いや、さっき認めたことだろ(笑)。お前の口ほど信用性に欠ける口はこの世にはない!』
テーブルをバンと叩きながら言う
『城が望んで、お前が許可した。そのままだ。口約束で済ませて、後々身に覚えが無い、誘拐だ何だなんて騒がれてもこっちが迷惑!内容自体は間違い無いだろう?』
男はもう1度読み直す…
『シンジ。さっきお前、城になんつった?何ならそれも付け足そうか!?』
鏡は身を乗り出して
強い口調で問う
『何て言った、最後に!』
『…どこでも行けゴミ…か。』
『どっちがゴミだよ!その一言で今、車で泣いてんだぞ!“私は最後に息子に対して、ゴミはどこでも行くようにと言ったことも踏まえ、神崎鏡矢さんに城の全てを託します”って付け足そうか?どうせもう傍に居ることすら嫌なんだろ。』
おもむろにペンを取りサインをする
『何が嫌なんだよ…城の。』
『…もう扱いすら分からない。確かに最初は…頑張ろうという気もあった…あったのにお宅の名前を連呼し興奮し出すと…手に負えなくなって…殺せと喚く姿の裏に俺に対しての殺意も感じるようになって恐怖すら覚えた…。』
『そんなの…俺の傍から離そうとするからじゃねぇか。城は自らお前と居ることを選んだんだ。変に壁作らないで、自由にこっちとそっちを行き来させてやれば良かった話だろ。そうなることを思って信じての選択だったのに、踏みにじるからあいつだって不安になる。あれだけ酷い虐待してきた奴と2人の世界なんて。そりゃあ、俺が恋しくなるさ。俺しかいねぇから。短期間でも俺と城は互いを信用して深い関わりを築いてきたんだからよ。』
『お前結局いつも、自分で自分の首締めてんだ。』
男は頭を抱えた
『父親にはなれない…もう無理だ…なりたくない…一緒に居てもどうせ繰り返してしまうし…病気かも…。』
『…そうやって逃げてる内は無理だな(笑)。シンジ君。君を見てると昔の自分思い出して腹立たしいんだよ。俺も城くらいの息子いたっつったよな。君と同じく若くして出来婚、愛の無い生活を続けた上、息子は自殺未遂、見放された。浮気もしたし邪魔臭いと思ってた…可愛いとか思わなくなってた。名前で呼んだ事もそうなかったしよ。だから当然だと思ってる。失敗して初めてわかることもある。時間が経てばゆっくり振り返ることも出来る。嫌でも反省する時間を与えられる。そこで初めて向き合える…その頃には遅いけど(笑)。中には、1人になれて良かったと清々する奴もいるだろうけど…そんな人間にはなって欲しくない。なりたくない。』
黙って聞く男
『子どもなんて母親寄りに育つし、父親なんて金入れりゃいい存在程度にしか思わなかった。俺の親父が仕事で家に殆ど居なかったからな。そういう意識が身に付いてた。』
鏡は話すつもりは全く無かった
息子の話をした
車で徹と城が待っているのを
気にしつつ…
テーブルに置かれた小箱と手紙
城に話してどう慰められたかも
全て話した
城に出逢い
何故ここまでして
首を突っ込んで来たのか
城の存在にどれだけ救われたか
どれだけ自分も成長出来たか
所々 鏡独自の
冗談や笑いを含めながら
ユニークに語った…
男の沈んだ表情も
鏡のペースに引き込まれ
少しずつ明るくなり
どこか笑顔も
垣間見えた気がした…
『俺は城を完全に奪うつもりはねぇんだ。親はあんただからよ、シンチャン。ただ、やっぱりあんたとジジィがやってきたことの傷は深過ぎるから…少し距離置いて時間を掛けてゆっくり見守ってやらねぇと。自由がきかなかった城に、これら果てしない自由を与えてやって欲しい。城の思う通りに行動させてやってくれ。これだけ、俺と城はお互い必要とし合って来た訳だから、俺と居たいって気持ちも汲んでやって欲しいんだよ…。鳶になりたいって、俺の1番弟子になるのが夢だって言ってる。1人の少年の夢を叶えさせてやりたい。俺らみたいな大人でも、それくらいは実行出来るだろ。』
『…シンチャン…って俺はお宅の友達じゃないんだけど。』
『え?気にすんなよそんなの!てかさ、突っ込むの?そうやって!しかもこの真剣な熱い話の中で、言うところはそこ!?話聞いてた?シンチャンが駄目ならバカとかクソしか付けられない…いいのか?』
『いや…(笑)。』
『だろ!?外でバッタリ会ってよ、おぅクソシンジ!なんて呼ばれたら恥ずかしくねぇか?呼ぶ俺は別に気にしねぇぞ?』
『それは…嫌かな…(笑)。』
何だか可笑しく思えるのか
引きつり笑う男は顔を歪ませた
『あまり笑わせんな…顔が痛てーんだから。』
『ざまあみろ。正面狙おうとしたけど前歯無くしたら喋れねぇだろうからソコにした(笑)!』
その時
徹が勢いよく部屋に入って来た
『鏡、大丈夫か?…あぁ、残念…無事か。』
『何で無事が残念なんだよ!』
『あまり遅いから負けてボコられてんのかと。面白くない。』
男に敵意を剥き出した態度で
城のいた部屋に行き
衣服の山の中から何かを拾った
『服取りに来たのか?』
『違う。城君に頼まれてさ。』
車に戻ろうと再び玄関に向かう
男の脇を通ると転倒…
拾った物を落とした
『徹がコケた(笑)!』
『痛…何だよこの床!ちゃんと掃除しろよな!汚いし異臭するしマジ最悪!』
『作業服で良かったろ(笑)!』
腹立たしげに怒る徹
鏡は大笑いしていたが
男が手にした小箱を見て沈黙…
『あ…城君に回収するように言われたんだ。返せ。』
男は鏡をチラッと見て
徹の腕をかわし箱を見つめた…
『返せって!』
『…徹、いいから。』
『いいからじゃない。城君の意思に反するだろ。見つからないようにって言われたんだ。開けるなよ!』
【お父さんへ】
幸せそうに笑う自分の顔と
優しく笑う父親の顔
『俺の似顔絵か…。』
箱のテープを剥がし開ける
鏡と徹も息を飲む…
内容は大体想像つく
2人共もう止めなかった…
深い溜息をつき
ザッと全部見てテーブルに置く
決して上手くはない絵が数枚…
包丁・ピストル・金槌・やかん・火
父親らしき人物の
その腹から血が飛散ったような
グロテスクに表現された絵…
自分が息子から受取った以上の
その絵に
鏡も言葉が全く出なかった
少し大きめの紙にメッセージ…
これが見つかるころ
おれは死んでると思います
殺してくれることを
望んでたから
あなたに15年生きてきて
初めてお礼します
死んでずっと
呪い続けたかったから
殺してくれて
ありがとう
城
『…。』
『…。』
『…。』
ショック…誰も口を開けなかった
『…呆れる。あの子をよくここまで追い詰めた。』
徹が箱に紙を全てしまい
蓋を閉めた
『鏡、ちゃんとサイン貰ったか?法の力は無くても、後々またイチャモン付けられてトラブル起きた時には約束したって証明になるんだからな!あ、印鑑じゃなくて拇印がいい。指紋残そう、指紋!意味は無いけど何となく!気分的に!』
男に朱肉を投げ渡すと
言われるがままに印を押す…
『あと言いたいこと…あるか?城とは本人が望むまで会えなくなるんだ。城が望んでお前が許可した。これでまだ誘拐だの拉致だの言うようなら、その時は俺らも受けて立つぞ。』
『…今…車か?』
『寝てる。話し掛けたって無駄だと思うけどね。』
立ち上がって玄関へ向かう男を
鏡も慌てて追う
『おいおいシンチャン!どうするつもりだよ!?』
『【最後】に挨拶するだけだ。寝てるならそれでもいい。』
3人は部屋を出た
階段を降りてくる足音
城は寝たフリをしながら
耳を澄ましていた
運転席に回った徹が鍵を開け
城に話し掛けた
『起きてるか?城君、ごめん。箱…見られちゃったよ。』
その言葉に上着をよけて
飛び起きる
『本当に!?開けたの…読んじゃった?あいつ…。』
男がいるのに気付き
怯えた顔でまた上着を被って
横になる
鏡もドアを開けて一言
『遅くなってごめん!シンチャンが【最後】に挨拶したいんだと。聞いてやって。』
最後?挨拶?
どうせまた
どこでも行けゴミってんだろ
反発するように
シートを一発…蹴った
男は助手席に座り
後ろを向いて
躊躇しながら話し掛けた
『城…ゆっくり…1人で反省…するからさ…神崎さんと梶谷さんと…好きなだけ居たらいい。どこかで見かけても邪魔しないし…爺ちゃんにもそう言っておくから。好きに街中歩いて自由にしていい。箱は…あんな風に思わせてしまって…悪かった。ショックだった。でもお前の気持ちを、これからも忘れないように…箱…貰ってもいいかな…。』
『暫く会えないし顔見せてくれよ…散々なことして勝手だけど…。』
小さな声で返事する
『どうせ汚いしベソとか言うんだろ…ゴミとか…嫌だ。わかったから。いいよ、あっち行って。』
『…。』
『箱…箱の中は…今はあんなこと思ってないし…見られたくなかった…だから捨てるんだ…見たなら…悪い息子でごめんなさい…もう行って。』
『今思ってなくても、一時的にでもそう思わせたからさ…貰っていいだろう?』
『…いいよ。』
『ありがとう。』
そう言うと
徹から箱を受け取り車を降りた
鏡は苦笑いして言う
『何、今生の別れみたいなシケた挨拶してんだよ。普通よ、反省して良い親父だって認めてもらえるようになったら一緒に住もうとか説得するだろ?』
『自信無い…。』
『暗ッ。まぁ、城が会いたいって言ったら連絡するし。城に何かあっても連絡するし。出ろよ、電話!お前は取りあえず、気張って働いて借金やら返済して、身の回り整理しろ。そしたら心にゆとりも出来て、人を思いやる気持ちも出てくるだろうし。周り居なくて寂しかったら良い店連れてってやっから(笑)!』
男の肩を叩いて
鏡も車に乗り込んだ
:
『あー…長かった。』
『本当にな。でもこれで今日の所はお終い!』
『後からどうかは分からないけどね。ああいうの。俺は一生信じない。』
『俺だって信用なんかしてないし心底安心もしてない。こんな結果だったんだ。でもお互い憎しみ募らせて戦中断みたいな状態よりゃいい。後はその時その時だ。これ以上今あそこに居ても意味無い。今日は親から確実な許可を得て終わった。一緒に行けって。それだけだ!俺は早く城を恐怖の対象から引き離して休ませてやりてぇって話。なぁ、城!』
寝たフリ…?
不安がまた押し寄せる
『何、もしかしてまた迷ってんのか?おい!返せ上着!』
表情が見えない不安から
無理矢理上着を引き剥がす
目は開いているが
鏡と徹を見ないようにしている
『城…具合悪いか?笑顔で戻る約束ですよ?』
『どうした?』
『反応無い…(笑)。』
諦めて前を向く鏡
徹がルームミラーで様子を見ながら
声を掛けた
『城君、これ以上心配させんなよ!返事くらい出来るだろ!結果、不満か?何か悩んでんのか?どうなんだ。』
『…不満じゃないよ…迷ってない…でもどうしていいか分からない…あいつが分からない。』
『分からない?確かに。ハッキリ言えば俺も分からない。考えても分からない。何話しても分からない。だから、今日はこれ以上居ても意味が無いっての。平行線だからな。俺はお前を連れ戻せて嬉しいだけ!んで、帰ったら、お前にもじ~っっくり言い聞かせなきゃならないこともあるし。あいつだけじゃなくてお前にも!』
『城君、俺も!』
『徹は嫌だ!』
『嫌?何で。』
『怖いから…鏡だけでいい。』
大笑いする鏡
苦笑いする徹
『どれだけの印象なの?俺。まぁ、俺の言いたいことは鏡が言ってくれるだろうし(笑)。明日仕事だ。2人降ろしたら帰るよ。』
『ごめん…。』
『気にするな(笑)。鏡の話、しっかり頭に入れるんだよ。大事な話だ。だから賢い君に言うんだ。』
『はい…。』
怒られるんだ
きっと説教だろ
だって沢山心配させたし
箱にあんなこと書いた…
2人にも見られたくなかった…
城はまた黙り込んで
寝転がってしまった
マンションの入口前に車を着ける
『徹、お疲れ。いつも助かってる。本ッ当にありがとうございました!』
『これからまた2人だな。良かった。でも油断するなよ。』
『勿論。自分の異常に気付いてた…この前の話し合いの時に比べたら少し違うし。あいつはあいつで何か葛藤してんだろ。自分に勝つか負けるかあいつ次第。本当に更正する努力をするか、また同じく攻撃してくるか。それは様子見なきゃ今の段階じゃ分からないんだ…まっ、城にはもう俺が居る訳だから。2度と同じ結果にはしない。』
『それだけが安心だけどね。』
2人は後ろを向いた
傷だらけの少年は
起き上がって2人を見返す
『徹に礼。』
『うん、徹、本ッ当にありがとうございました…。』
『いや俺の真似しなくていいから(笑)!』
徹はバイザーのアクセに挟めていた
サングラスをひとつ城に渡した
『1人、俺達が来るまで戦った褒美。たった1人の兄貴からたった1人の大切な弟へ。』
『…いいの!?』
笑顔で返す徹
城は早速掛け辺りを見回す
『似合う似合う(笑)!』
『徹、俺は?』
『アンタは余計に迫力出るから必要無い!てか持ってるだろ。』
車を降りるのも一苦労
鏡が手伝って時間をかけて
ゆっくり…ゆっくりと
車に掴みながら立つ
眉間にシワを寄せて…
前までは見かけなかった
メッシュが入ったような白髪
衣服で見えはしないが
薄く滲んだ背中の血
袖から見える腕は
枝のように細く
幾つもの痛々しい青い痣
指先は腫れて赤くなり
顔にもまた大きな痣
切れた唇は血が固まって
こびり付いたまま変色…
もう夜も遅く
街灯とマンションの明かりしか
そこに光はなかったけど
くっきりと浮かび上がっている
その姿があまりにも悲惨で…
鏡と徹は悲しげな表情で
目を合わせた
城が突然
おれの部屋まだある?なんて
組んだ足場に上がった時と同じ
【弾んだ声】で言うから
思わずグッとくるのを堪え
2人は笑ってごまかした
『無い訳ねぇだろ(笑)!お前の家なんだからよ!』
『安心出来る場所でゆっくり休んで早く治せよ。治ったら行きたい所連れて行ってやるからさ(笑)。』
その言葉に城も笑った
…そんな気がしたが
笑顔が見たいという
2人の願いのせいで
単にそう見えただけだった
短いクラクションを鳴らし徹は帰った
貰ったサングラスを頭に乗せて
痛々しく歩き出す
『また抱えてやっか(笑)?』
『いい!俺はこんなんでも、もう15歳だし男だから自分で出来ることは自分でやるんだ。』
鏡はその台詞に驚いた
辛い体験ばかりの日々
それなのに
城なりに成長してるんだなと
感心した
エレベーターでは沈黙…
早く部屋に入りたくて
うずうずしてるのが
目に見えて分かる
ドアが開くと真っ先に降り
鏡が鍵を差し込まず
ドアを開けると
やっぱり真っ先に入る城
靴を脱ぎながら問う
『鍵…掛けてないの?』
『お前が合鍵持たずに消えた時はいつも開けてた。いつでも避難したり帰って来れるようにな。どうせ盗まれるモンもねぇしよ(笑)!』
その言葉に
自分がどれだけ心配かけたかを
痛感する…
自分の部屋を開け
1番気に入っている場所
窓際のベッドに座り
窓を全開にした
『何か食う?あいつ、どうせ飯すらろくに食わせなかったんだろ!』
チッと最後に舌打ち
『要らない…明日からはちゃんと食べます…。』
『そ(笑)。疲れたか?寝るなら寝てもいいぞ。』
『疲れてないけど頭痛い…さっきよりはいいけど…薬飲んだら良くなる?ある?』
『頭痛か、あるある!至急お持ちしますよ。ちょっと待っててくださいませ城様(笑)!』
窓から顔を出して空を見上げる
星や月は全く見えなかったが
これからはまた
日も入るし鳥も見える
そう思うだけで嬉しかった
最高 おれの部屋
鏡が薬と水を持って来る
城に渡してすぐ
ハッとしてまた奪い返し
飲み過ぎ用の胃腸薬だこれ
見ないで持ってきたと
苦笑いしながらまた取りに行く
男の家で
風邪を引いた時を思い出す
鏡とのあまりの違いに
また苛立ちを覚えた
だけどあんなヤツでも
結局薬は持ってきてくれた
飲みはしなかったけど…
そこも思い出し
憎たらしい気持ちを
抑えようと努力する
今度はちゃんと頭痛薬
鏡も黙って城のベッドに腰掛け
一連の動作を見ていた
切れた口で
水を飲む姿が痛々しい
コップを鏡に返し
窓から離れて鏡の隣に座り直す
『話、あるんだろ?あいつへの手紙のこと…?あ、あれはね…。』
言い終えない内に
城の肩を力強く抱き寄せた
『違う!生きててくれてありがとう…そしてごめんな…。』
おれがあの日
鏡と徹の言うことを聞けば
こんなことには
ならない話だったのに
生きてたことに感謝して
おれに謝ってきた
説教されるんだって
覚悟してたのに…
『服…脱いで背中見せて。消毒してやるから。』
おれを何ひとつ
責めることはなく
一番先に傷の消毒と
ねんざの手当てをして
痛い所は全部見てくれたんだ
なぐられた顔の傷
困った顔でため息ついて
手を当ててきた
『これは…2日くらいで腫れ引くからさ…痣は暫く残るけど。骨折れてなくて良かった…あいつグーでやったろ。』
『わかんない。気付いたら倒れてたんだ…。』
困った顔から
悲しそうな顔になった
今度は手をとって
関節の腫れたのを見る
鏡の手がふるえてた
『うん、折れてない。』
『大丈夫だってば!』
『俺は見なきゃ安心できねぇの。せっかく回復しても…また…体だってせっかく肉付いたのに…また食えよ、沢山。明日は取りあえず肉は無理だけど。』
『どうして。』
『暫く食ってないだろ。そんな良いモン急に食ったら胃が驚いて腹壊すから!』
『それは嫌だ。分かった。』
また汚くなったから
見ないで欲しかったけど
…だまってた
鏡は優しいんだよ
わかってくれる?
おれ鏡の子なら良かった
鏡と同じ血なら良かった
鏡の子どもが…羨ましかった…
鏡の震える手を見ながら
そう思ってた
そう思って…
勝手に涙が出てきた
見られないように下向いてた
だってベソで面白い顔だから…
『泣け、沢山。知ってたか?お前、泣く度に強くなってるの。俺は知ってた…。』
その言葉でもっと泣いた
笑って言わなかったから…
抑えられなくて
両腕で顔を隠して泣いたんだ
外に聞こえてたかもしれない…
泣きながらあやまった
鏡と徹の言うことを聞かなくて
たくさん心配かけて
チャンスはあったのに逃げなくて
綺麗にしてもらったのに
健康になってきたのに
せっかく1番弟子になるために
たくさん食べて体重増えたのに
またダメな体になって
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい!!
汚くて臭くて気持ち悪くて
みにくくてばい菌だらけで
ガリでウミキズ(膿傷)だらけで
女抱けなくて何も出来なくて
生まれた時からベソで
どうか嫌わないで
がんばってまた良くなるから
そう言って
あお向けになって
叫んだんだ…
そしたら窓の外から
上か…となりか分からないけど
うるせーな!
虐待してんのか
通報するぞ!
怒鳴り声が聞こえて
鏡は笑いながらそっと窓閉めた
おれのせいで
鏡が怒られたことに
すごく悲しくなって…
だんだんまた
気持ちが抑えられなくなった
窓に向かって
あいつと一緒にすんなバカヤロウ!
TVの簡単な内容でしか
何も知らないくせに!
すぐ虐待虐待いうなクソヤロウ!
知りたかったら
見に来いおれの体!
鏡は助けてくれたんだぞ!
通報しないで!
そう叫んで窓を叩いたら
鏡が力一杯
窓から引きはなしたんだ
それでも抑えられなくて
鏡に当たった…
おれが悪いの?
あいつが鏡をバカにしたんだ
あいつが知りもしないで
勝手に…!
どうして止める!って
腹が立って
座ってる鏡の足を何回もけった
おれがいたら
やっぱり鏡にめいわくかける
すぐ気持ちが落ちて…
息が苦しくなって…
こんな悪いおれなのに
『城、城、大丈夫だから俺は。通報もされないから!夜中だから静かにしよう、それだけ…俺もお前も何も悪くない!』
泣きそうな顔で
おれを抱き締めてくれたんだ…
汚くて汗臭いから触るなって
本当はうれしかったけど
そう思われたくなくて
突き放した
『城。俺の目を見て。』
なつかしいその言葉と
顔に伝わる温かい手に
また落ち着いて…
『あいつに言われたんだろ。全部。いいか、聞け!それは言葉の暴力!手足や道具を使って体に傷を付けられたように、言葉を使ってわざと心に傷を付ける暴力。心は手足や道具で傷付けること出来ないからな。お前が望んでそうなったんじゃない。お前はあいつらの勝手な気分で傷だらけの体にされて、それを利用して心も虐められてきたんだ。大人の勝手な理由で、何も悪くないお前を、社会で上手くやっていけない鬱憤を晴らすのに、まだ子どもで弱いお前を利用してストレス解消してきたんだ。それだけ!お前は何もしてないだろ?』
料理が出来なくて
怒らせたことを話した…
『火や熱湯が恐ろしいと思わせたのはジイサンと親父。あんなことされたら、俺だって台所になんか立ちたくない!お前はおかしくない。当然なんだ。悪くない!無理してやらなくても良し!わざとお前に向けた言葉の暴力!ヘナチョコボールだと思え。そんなもんバットで打ち返せ!お前は断然、綺麗です!』
言葉も暴力になる…
どうしてわざと傷つける?
体の傷は治っても心は治らない
ずっとずっと
その場所に行ったり
ちょっとしたきっかけで
すぐ思い出して悲しくなるのに
それがどれだけ苦しいか
あいつらは分かってくれない…
反省したのにしてないし
必要としてくれたから残った
変わるかもしれないって
やっと本当に
学校のみんなが持ってるみたい
家族らしい家庭に
戻るかもしれないって
信じてみたのに…
信じても裏切るし
平気で嘘もついた
たくさんなぐられて
たくさん怒鳴られて
前と全然変わらない
悔しくて悲しくて
憎くて!憎くて!憎くて!!
たくさん怒らせて
おれを殺すように仕向けた話
言ったんだ…
鏡がまた泣いてた
黙っておれを見たまま
涙が流れただけなんだけど
おれのために泣いてくれる人
それをすごく感じて
感謝の気持ちとは別の
自分では抑えられない気持ちが
一気にあふれてきて
また当たり散らした…
鏡は悪くないのに
鏡なら何言っても
おれから離れないって
知ってたから…
おれは他に言えない
心の悪魔を吐き出した…
1人じゃ抱えきれなかった
鏡しかいなかったから…
父さんは父さんに戻らない
父さんが父さんになれないのに
鏡がおれの父さんになんか
なれるわけないよ
絶対いつかジャマになるんだ
鏡は優しいから笑ってるけど
心は分からないからね!
信じることも許すことも
何一つ良いことない
その結果がこれだからね!
ねぇ 鏡
あんたもいつか裏切るんだろ
今はこんな【可哀相】な
おれだから泣いてくれるけど
ずっと居れば嫌になるよ!
ジジィとババァだって
最初は優しかった
絶対いつかジャマって思うよ!
鏡だって虐待するよ!
徹だって分からない
鏡も徹も2人は仲間だからな!
お前たち大人はひきょう者だ!
おれは逃げ場が無かった!
虐待されて死んだ子も
みんな逃げ場が無くて死んだ!
あんな奴らでも家族だから
そこしか世界が無かった
他は分からないから怖くて
言うこと聞くしか無かった
なのに酷いことばかり!
酷いことして急に優しくなって
その度におれは
怖がったり喜んだり…
でもすぐまた酷いことばかり!
どっちだよ!
中途ハンパに優しくするな
いつか嫌になって裏切るなら
今の内に追い出せよ!
自分でも何言いたいのか
わからなくなったけど
優しい鏡に当たることで
バクハツしそうな心を保った
思ってもいないこと
鏡には関係ないこと
何でもいいからぶつけた
頭は落ち着いてた
感情が落ち着いてくれなかった
おれは泣きながら
ベッドの上に
あぐらをかいて座っている
鏡のひざをずっと
蹴ってなぐって叩いてた
それでも怒りがおさまらなくて
カベを蹴ろうとしたんだ…
今思うとすごいバカ…おれ…
カベを蹴る前に
鏡は自分の涙ぬぐったあと
急におれの脇を抱えて
黙って居間に連れてった
夜中の寝室じゃ響きすぎるから
…だと思う
おれは力一杯抵抗した
バカとかクソとかテイノウショク…
鏡をたくさん傷付ける言葉
浴びせた…
抱えられながら
鏡の体をたくさんなぐった
落ち着いた頭は
もしかしたら
これで本当におれを嫌うかも
また捨てられるかも…
2人目の父さんに…
本気でそう思ってて
怖くて仕方なかった…
ソファーに座ってから
それでもまだ鏡を見上げて
たくさんバカにした
お前もあいつらも
信用出来るか!
いいこと言うのは今だけだろ!
それなら
優しくなんかしなくていい!
鏡は自分の家族とは
仲良しじゃなかったとしても
ちゃんと育ててもらった
おれの深い気持ちなんか
分かるはずない!
徹だって
家族の話は知らないけど
大事な妹がいて
妹も大事にされてて…
徹の体には
火傷やタバコやアザや
汚い傷の痕なんてなかった!
先輩もお母さんは違ったけど
いつも明るいし
酷いことされてなかった
自由だった!
ユウナだって…ユウナなんか
美味しいご飯がたくさん
残るくらい冷蔵庫にあって…
この前家から見た時なんか
おしゃれして楽しそうで
友達と笑ってて…
どうしておれだけ!?
どうしておれが!?
どうしておれを!?
何が違うのみんなと!
みんなが憎いよ!
口先ばかりの大人も憎い!
小学校も中学校も
先生達だってクソだったんだ!
教えてよ!
おれを助けたいなら教えてよ!
鏡!!
…父さんなんか要らないよ…
…兄貴も…
…家族はもう要らない…
おれには元々
無かったものなんだ…
『…何て言えばいいか…分からない…城…。』
その一言で
おれはソファーに寝転がって
ずっと泣いてた
止まらないんだ…
泣き止まない…
止められない…
サワの子が羨ましい
おれだってあんなだったんだ…
母さんが道間違えたから…
キスして抱き締めて
あいつから守ってくれた時の
母さんのままだったら…
おれだって…
おれだってきっと…!
今は…母さんも…憎い…
憎いよ…憎い…憎い!
普通に毎日ご飯もらえて
殴られないで
綺麗な体の奴らが憎い…!!
生まれたとき
スタートはみんな一緒なのに…!
お前ら大人がこんなにした
あいつらも
おれも治らないよ絶対
何回良くなっても
何回もダメにされる…!
畜生、畜生!
鏡と徹、どうして助けたの
やっぱり死んであいつら
苦しめてやりたかった…!
いつか鏡だって嫌になる…
いつか嫌われるなら
死んでしまえば良かった!
あいつらから離れてた時も…
よく何で生きてるんだろうって
急に思って勝手に涙出てくる
治らないんだ…!
勝手過ぎるよ
しつけって言えば
何でも通ると思いやがって
逃げられないし
こんなことされてんの
助けてなんて言えるかよ!
横になったまま
足で何度もソファーを蹴るおれの
頭に手を置きながら謝る声…
鏡は悪くないのに
鏡はいつも見付けてくれたのに
どうして謝るの…
おれが今たくさん傷付けたから
謝るんだよね…
次に押し寄せる後悔の波
おれも勝手でしょ?
あいつらと同じ血
おれももう少しで大人になる
…なりたくない
鏡は悪くないよ
ごめんなさい
鏡しかいないから当たっただけ
分かって…嫌わないで…
鏡は大好きなんだ
分かって…
ねぇ どうしたらいい
こんな自分が嫌いなんだ
ヒクツな気分ていうのかな
色々な黒い気持ちでいっぱいで
前に進めなくなったんだ
時が止まるってこういうこと
あいつらにされたこと
ずっと付きまとって
新聞で勉強した…
フラッシュバックっていうんだろ
ささいなことでよく出てくる…
呪われたんだ おれ
あいつら悪魔に…
悪魔なのに
薬持ってきて炒飯作ってくれた
炒飯なんか
すごく美味しくておどろいた
適当とは思えなかった
それだけで感動して
憎たらしい気持ちが消えた
悪魔でも
完全な悪魔じゃなかった
時々は…父さんの顔だった…
そういう部分思い出すと
憎みきれてないのかな…
鏡はまだ黙って聞いてた
右手をおれの頭に乗せたまま
床に座り込んで
うつむいて…
涙が何粒か落ちたのも見たんだ
でも絶対に手は離さなかった
温もりと震え…伝わってたよ
どれだけ困ってるか知ってた
聞きたくないよね
見たくないよね
おれを大事にしてくれた
鏡だからさ
仕事のあと助けに来て
ずっとおれのために一生懸命で
体はきっと疲れてるのに
こんな時間…
こんな姿…
やっと2人帰れたのに…
すごくうるさかったし
早く疲れ果てて
寝てしまえとか思ったかも
だってまるでおれ
小さい子みたいに
鳴き声も暴れ方も酷かった…
どうして叩かないの?
どうして怒鳴らないの?
どうしてバカにしないの?
どうして?
同じ人間で
1人の子どもを持った
あいつと同じ【父親】なのに
どうしてこうもちがうの?
困らせてごめんなさい
心の中でずっとおれも謝ってた
でもね…鏡
おれのが苦しかったぞ
ずっと辛かったんだ
こんなもんじゃない
こんなのでおれを嫌うなよ
こんなことで嫌うくらいなら
お前はおれを助けられない
誰も分かってくれない
絶望におちいるだけだ
暗闇がまた広がった…
…目の前にいる
15歳に見えない小柄な少年が
やせ細って傷だらけの体と心で
俺に全力で打ち付ける怒りを
どう受け止めればいいのか
全然分からない
ただただ謝るしか術がなくて…
城の言う通り俺は
【虐待】とは無縁な世界
そこで育ち大人になったから
深い気持ちなんか
分かるようでも
分かってやれなくて…
返す言葉も無くて…
悔しくて…悔しくて…
情けない自分に腹立たしく
悔し涙が自然と溢れて…
ただひとつ確信していたのは
どんなに俺を悪く言っても
俺しかいないから
俺に当たるしかないから
俺に受け止めて欲しいから
甘えてるんだと
やっと今こういう形で
全ての遣り場の無い怒りを
誰にも言えない助けを
俺にぶつけて
試してもいるんだろうかと…
前にも似たようなことがあった
だからそう思ってせめて
出てこない言葉の代わりに
手で伝わればと…
触れることでその温もりから
漠然とでも気持ちは伝わるはず
そう思ってずっと
手を当てて聞いていた…
こんなに長く泣き喚く城を
初めて見た
鏡だって虐待する
徹だって分からない
俺達は大丈夫だと思っていた中
この台詞には驚いたんだ…
城は叫びの節々で俺を罵倒した
バカ鏡! クソ鏡!
お前なんか幸せなんだ!
やっぱり父さんなんか
ならなくていいよ!
必要無い!
幸せに育ったやつらに
分かってたまるかよ!
どうせ大人なんか嘘ついて
やること同じなんだ!
鳶なんかなれねーよ
おれなんか!
お前みたいな体にもならないし
どうせテイノウショクなんだろ!
こうなったのは
お前ら大人のせいだからな!
…何で俺に当たるんだよ…!
逢って間もないなら
そう勘違いしたかもしれない
本心だけど
本心ではないことは承知
ただ城の顔で城の口から
直接言われると
やっぱり辛いものがある
暴力がここまで傷刻んだこと
憎しみがここまで募ったこと
城にここまで言わせたこと
俺も佐伯一家を憎んだ…
怒りをぶちまけて
何かを思い出したように
謝りだして
それでもおさまらない怒りが
また溢れて
錯乱している姿が
凄く…俺も苦しくて
対応の難しさに
脳味噌が硬直し出して
上手く言葉が繋がらなくて
やっと出てきた言葉
それで
大きな地雷
踏んだんだよな…俺…
大人になると複雑な社会の中で
自分の力で生きなきゃならない
嘘や妬みという毒を武器に
自分を正当化して
更に弱い者を踏み台にして
自分を庇いながらでないと
生きられない弱い奴も
沢山いるから
シンジもそういう
環境だったのかもしれない…
そういう事を踏まえて
大人代表として
【謝る】つもりだったが
単なる大人の言い訳にしか
聞こえないかも
あえて言う必要もないかと思い
簡潔に述べただけだった
『大人の事情もあるから…』
『おれはその勝手な事情でこうなったんだよ!!』
そして噛み付かれた
頭に乗せた俺の腕を咄嗟に掴み
思い切り…
もう言葉や手足じゃ
ダメージも与えられない
自分の痛みなんて分からない
そう感じたんだろう
凄い力で
本気で噛みついてきたんだ…
悲鳴を上げて
頭叩いて振り払う
そんなこと出来る訳ない
出来る立場じゃない…
肉を食い千切られても
仕方ないと思ったから
耐えてた…
城の言う通り
全ては大人の勝手な事情から
始まって狂わされた人生だから
さっきのはやっぱり
勝手な言い訳だっただろうから
今の言葉の懺悔だと思い
気が済むまで
そのままでいた
基本的なことを…
ごめん…城
本当にどうしていいか
わからないんだ
むしろこんな馬鹿な男
神崎鏡矢に教えて欲しい
どうしたら泣き止む?
どうしたら笑ってくれる?
どうしたらまたお前から
抱き付いてくれる?
俺に出来ることは何かな…
俺がどうしっかりすれば
いいんだろうか…
俺はお前をまた幸せだって
思わせること出来るのかな…
自信持って任せろなんて
もう言えねぇんだ…
だけど自信持って
愛することは出来る
今まで1度もお前を
手放したいと思ったことは無い
今でさえお前が毎日笑う姿を
想像するよ
今のこの姿や言葉から
この先のお前の苦悩を思うと
腕より胸が痛てぇんだ
1人にしたくないです
1人で泣かせたくないです
俺みたいな
虐待についての知識もない
中途半端で父親が終わった男が
お前を見守りたいだなんて
おこがましいにも程があるな
素人が何も持たず
道の無い樹海に踏み入るようで
凄く不安で潰れそうになる
だけどいつもの
俺の名を呼ぶ声だけを頼りに
迷いながらも
死にかけながらでも
絶対命落とさずに
お前に辿り着きたい
城…そのままでいいから
聞いて…
お前のことだから
また頭で沢山ゴチャゴチャ
言い合ってるんだろ
なぁ、優勢なのは誰だ?
家族を憎む気持ちの奴か?
家族を許したい気持ちの奴か?
俺に怒る気持ちの奴か?
俺に謝る気持ちの奴か?
自分を悔やむ気持ちの奴か?
憎む気持ちが優勢なら
憎めばいいんだ
憎む感情はみんなあるから
持ってて当然
悪いことじゃない…俺にもある
上手く言えないけど…
憎しみの感情をもってこそ
反省させることも出来るし
気付かせてやることも出来る
あの箱の手紙だって
ざまあみろって思ってて良し!
良かった部分を思い出して
許しますなんて言って
憎しみがまだまだ大きいなら
許したことにもならない
お前がされたこと…
小さい内から
怒鳴られて暴力されて
恐怖と痛みで一杯だったことは
躾じゃなく虐待という
れっきとした【犯罪】だから
お前は被害者で
許さなきゃならない権利は無い
本来ならもう
あいつらは逮捕されて
裁かれてるのが普通なんだから
家族だからって
理解しようと苦しむ必要無し!
嫌なら見なくてもいい
自分が悪い所あったからって
好かれようとしなくてもいいと
俺は思うんだ…
お前は何一つ悪い所はないから
そもそもそんな努力必要無し!
説明下手なんだけど
分かるかな…
同じ血であそこで育ったから
あそこしか世界がなくて
ただあそこに
関わらなくなることに
何か罪悪感を感じるなら…
それを感じてまた
苦しみ悩み続けるなら
1人抱え込まずに教えて欲しい
今みたいに吐いて欲しい
言いにくいなら
また紙でもいいから…
でないと気付いてやれない
俺、鈍感だからよ
そのために
あいつらから引き離して
傍に居る決意したんだ
そんな気持ちになったら
俺がもっともっと努力して
もっともっと外の世界
見せてやるから
俺と徹…
もっと上手い方法で
お前を何度も
こんな目に合わせなくて
済んだかもしれない…
お前の危機を敏感に察知して
ガツンとやれたかもしれない
それは…謝るから…
謝って済むなら簡単な話だけど
そこだけは毎日毎晩
反省してるよ…
いつか俺達が裏切る…
そう思うのも仕方ない
ただ俺
ヘマはこいたりしたけど
お前に逢って今日まで
信用失うことは
しなかったつもりなんだ
そこだけ忘れないで欲しい…
そこだけは…城…
自分で言いたくないけど(笑)
俺に謝る必要も無い
お前が俺に対して思ってること
大体想像つく
あー…俺が泣いたから
駄目なんだよな
歳とると涙もろくて参るわ
ってか俺まだ30前半だから!
人生の半分も行ってないから!
まぁお前くらいの歳から見たら
30代はオッサンだよな
徹が兄貴ってのがたまに
ズルイとか思うけどさ
いやいいんだ俺は親父で(笑)
城の親父
凄く嬉しかったんだ…本当に
お前から告白されて…
俺いつも自分から
グイグイ行く方だからよ
受け身って
こんな気持ちなんだって
ドキドキしたんだよな…
うん 悪い…何だっけ…
何でこんな話…?
あぁそうそう
お前が俺を信用どうこう以前に
俺しか傍にいないからって
だから
全部ぶちまけてくれてるの
理解してるから
まだあるなら
吐き出していいんだ
鳶になれない奴なんかいない
夢だろ?
体はまた俺の特製シリーズで
作り直せるから
ほら 筋トレグッズも寂しがって
転がったまんまだぞ?
徹やサワ、俺の仲間だって
待ってんだ
俺と同じヘルメット被って
超超ロンはいて
髪赤くして顎髭生やして
イカした鏡矢2世の誕生を!
いや、首振るな(笑)
どうして俺
真剣に話したい場面なのに
こんなふざけた内容になるのか
いつも自分で謎なんだ
ふざけてるつもりは勿論ない
こういう所で差が出るんだ
徹、ズルイよな?
あいつだって実はかなり
中身ふざけた奴なのに
パッとしたかんじクールだろ?
呑みに行くと
徹さんて知的でクールねって
女の子に言われてんの見ると
何クールぶっちゃってんのお前!
とか思うワケだ(笑)
なぁ、これどう思う?
どうでもいいんだけどよ(笑)!
あーほらまた…
お前の話をしてるのに
お前に相談してどうすんだ俺
城…伝わってるかな
そこが非常に心配なんだけど
ただ
お前の家族がやってきたことに
お前が悔やんで反省すること
しなくていいんだってこと
思った通り感情のままに
自由にしていいんだよって
言いたかったんだ
もうお前を苦しめる人間は
いないから
シンジも言ってただろ
【最後】の挨拶で
俺達と好きなだけ居ろって
見かけても邪魔しない
爺さんにも言っておくってさ
それこそ信用なんねぇかも
しれないけど
それはこれから
俺がちゃんと専属用心棒となり
お前を必ず守るから…
シンジにはさ…
お前が会いたいって言ったら
連絡するとは言ったけど
シンジからお前に会いたいって
連絡が来ても俺は拒否
城は城が城の判断で
関わればいいと思った
ただ今回の一連の事件の結果…
俺は2人きりで
勝手に会うことは許さない
もしバッタリ会ったら
すぐその場を離れて…
会いたいと思ったら
俺に相談して…
何だか俺
娘を彼氏に取られるの
嫌がる親父みてぇだけど
そのくらい城が大事ってこと…
理解して…
もう見たくない…
名を呼ばれて
やっと見付け出したら
その度に死と隣合わせの状況…
虐待虐待って
簡単に軽く騒ぎ立てる今の時代
俺もニュース見ると
またかよ
酷ぇことすんなぁ
可哀相になぁ
痛かったろーによ
なんて親だ
その程度でしか見てなかった
お前にあの日出逢って
深く関われば関わるほど
その程度の言葉で片付くような
済ませられるような
犯罪じゃないことを知った
だから
今 俺がそんな城に出来ることは
城の1番の理解者になるよう
努力すること
これからずっとずっと
傍にいて助け守り続けること
俺こんなんだけど
そう したい させて欲しい…
城…
>> 99
…鏡の腕は
おれの歯型がくっきり付いて
血がにじんで変色して
見る見るはれ上がってきた
大人の事情…
その後も話を続けたかったと
思うけど
感情が言うこときかなくて
頭ではこんなことしちゃ
ダメなんだって分かってたのに…
もう暴走しちゃって…
すごく…痛かったと思う…
叩いてでも離したかったと
思うんだ…
そうしてくれて良かったのに
そうしなかった
どうしてだろう…
だって鏡が話している間
ずっと噛み続けていたんだ
これ以上
泣くのも話すのも叩くのも
疲れて
噛むことでおれの
痛みを発散させたんだ
悲鳴を上げてたけど
腕に力入れて
おれに必死に話しかけてた
ちゃんと聞いてたよ
話がそれながら
一生懸命分かってもらおうと
不器用なのに一生懸命…
1番の理解者になってくれる努力
しなくてももうなってるのに
おれが自分を
おさえられないだけなのに
おれのために
努力するって言ってくれて
それがやっぱりうれしくて…
口を鏡からはなした
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フーリーヘイド ~読む前の注意書きと自己紹介~
500レス 5755HIT saizou_2nd (40代 ♂) -
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おとといきやがれ
9レス 284HIT 関柚衣 -
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ウーマンニーズラブ
500レス 3232HIT 作家さん -
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やさしい木漏れ日
84レス 3697HIT 苺レモンミルク
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20世紀少年
1961 生まれは 東京葛飾 駅でいうと金町 親父が働いて…(コラムニストさん0)
2レス 112HIT コラムニストさん -
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ウーマンニーズラブ
聖子の旦那が有能な家政婦さんを雇ったおかげで聖子不在だった機能不全の家…(作家さん0)
500レス 3232HIT 作家さん -
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フーリーヘイド ~読む前の注意書きと自己紹介~
やはり女性は私に気が付いている様である。 とりあえず今は、 …(saizou_2nd)
500レス 5755HIT saizou_2nd (40代 ♂) -
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今日もくもり
たまにふと思う。 俺が生きていたら何をしていたんだろうって。 …(旅人さん0)
41レス 1328HIT 旅人さん -
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おとといきやがれ
次から老人が書いてる小説の内容です。(関柚衣)
9レス 284HIT 関柚衣
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